説明

IL−13に対するヒト抗体分子

特異的結合メンバー、特にヒト抗IL-13抗体分子、及び特にIL-13活性を中和するもの。IL-13関連疾患、例えば、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫の診断又は治療における抗IL抗体分子の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的結合メンバー、特にヒト抗IL-13抗体分子、及び特にIL-13活性を中和するものに関する。本発明はさらに、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫を含むIL-13関連疾患の診断又は治療における抗IL-13抗体分子の使用法に関する。
【0002】
本発明の好適な実施態様は、本明細書でBAK502G9と名付けた抗体分子、並びに本明細書中で定義されるBAK502G9系統及びBAK278D6系統の他の抗体分子の抗体VH及び/又はVLドメインを使用する。さらに好適な実施態様は、BAK278D6系統及び好ましくはBAK502G9の相補性決定領域(CDR)、特に他の抗体フレームワーク領域中のVH CDR3を使用する。本発明のさらなる態様は、本発明の特異的結合メンバーを含有する組成物、IL-13を阻害又は中和する方法(人体若しくは動物体の治療方法を含む)における当該組成物の使用を提供する。
【0003】
本発明は、IL-13の結合と中和において特に価値のある抗体分子と、本明細書の及び支持する技術文献中に記載される種々の治療のいずれかにおいて有用な抗体分子とを提供する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン(IL)-13は、114アミノ酸のサイトカインであり、約12kDaの非修飾分子量を有する[1,2]。IL-13はIL-4に最も密接に関連し、アミノ酸レベルで30%の配列類似性を共有する。ヒトIL-13遺伝子は、IL-4遺伝子に隣接して染色体5q31上に位置する[1][2]。染色体5qのこの領域は、GM-CSFやIL-5を含む他のTh2リンパ球由来のサイトカインの遺伝子配列を含有し、そのレベルは喘息やアレルギー性炎症のげっ歯類モデルにおいて、IL-4とともに疾患重症度と相関することが証明されている[3][4][5][6][7][8]。
【0005】
IL-13は最初はTh2 CD4+リンパ球由来のサイトカインとして同定されたが、IL-13はまた、Th1 CD4+T細胞、CD8+Tリンパ球NK細胞、及び非T細胞集団(例えば、肥満細胞、好塩基球、好酸球、マクロファージ、単球、及び気道平滑筋細胞)によっても産生される。
【0006】
IL-13は、IL-4受容体α鎖(IL-4Rα)(これ自体はIL-4に結合するがIL-13には結合しない)及び少なくとも2つの他の細胞表面タンパク質(IL-13Rα1とIL-13Rα2)を含む受容体システムを介してその作用を仲介すると報告されている[9][10]。IL-13Rα1は低親和性でIL-13に結合することができ、次にIL-4Raを動員して、シグナルを伝達する高親和性機能性受容体を形成する[11][12]。ジーンバンク(GenBank)データベースは、IL-13Rα1のアミノ酸配列と核酸配列をそれぞれNP_001551とY10659として記載する。STAT6(転写のシグナルトランスデューサーとアクチベーター6)欠損マウスでの研究は、IL-13は哺乳類においてIL-4と同様に、JAK-STAT6経路を利用してシグナル伝達することを証明した[13][14]。IL-13Rα2はアミノ酸レベルでIL-13Rα1と37%の配列同一性を共有し、高親和性でIL-13に結合する[15][16]。しかしIL-13Rα2は、既知のシグナル伝達モチーフが欠如したより短い細胞質テールを有する。IL-13Rα2を発現する細胞は、IL-4Rαの存在下でもIL-13に応答しない[17]。従ってIL-13Rα2は、IL-13機能を制御するがIL-4機能を制御しないおとり受容体として作用すると考えられている。これは、その表現型がIL-13に対する応答の上昇に一致するIL-13Rα2欠損マウスでの研究により支持される[18][19]。ジーンバンク(GenBank)データベースは、IL-13Rα2のアミノ酸配列と核酸配列をそれぞれNP_000631とY08768として記載する。
【0007】
シグナル伝達IL-13Rα1/IL-4Rα受容体複合体は、ヒトB細胞、肥満細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、好酸球、好塩基球、繊維芽細胞、内皮細胞、気道上皮細胞、及び気道平滑筋細胞上で発現される。
【0008】
気管支喘息は、肺の一般的な持続性炎症疾患であり、気道の高応答性、粘液過剰産生、繊維症、及び血清IgE高レベルを特徴とする。気道過剰応答(AHR)は、冷気のような非特異的刺激に対する気道の過度の収縮である。AHRと粘液過剰産生の両方とも、喘息発作の特徴である息切れ(悪化)を引き起こす気道閉塞の原因であると考えられ、これは、この疾患による死亡率(英国では年間約2000の死亡例)の原因である。
【0009】
近年、喘息の発症率は他のアレルギー性疾患とともに顕著に増加している[20][21]。例えば現在英国の人口の約10%は喘息持ちであると診断されている。
【0010】
現代英国胸部学会(Current British Thoracic Society)(BTS)と喘息に関する国際治療指針(Global Initiative for Asthma)(GINA)ガイドラインは、喘息の治療に対する段階的アプローチを示唆している[22,23]。弱〜中程度の喘息は通常、吸入コルチコステロイドをベータアゴニスト又はロイコトリエンインヒビターと組合せて使用することにより制御することができる。しかしコルチコステロイドの記載された副作用のために、患者は治療を守らない傾向があり、これが治療の有効性を低下させている[24-26]。
【0011】
喘息ガイドラインの推奨する高用量の吸入又は経口コルチコステロイドがあまり有効ではないより重症の疾患を有する被験体についての、新しい治療法に対する明らかなニーズが存在する。経口コルチコステロイドを用いる長期の治療は、骨粗鬆症、小児の成長の遅れ、糖尿病、及び経口カンジダ症を引き起こす[88]。コルチコステロイドの有益な作用及び有害な作用とも同じ受容体により仲介されるため、治療は安全性と有効性のバランスとなる。重症の悪化の結果としてのこれらの患者の入院(英国の喘息人口の約6%である)は、医療当局に対する喘息の大きな経済的負担の大半を占める[89]。
【0012】
喘息の病態は、無害な抗原に対する免疫系の不適切な応答により生じる継続しているTh2リンパ球介在炎症により引き起こされると考えられる。確立された気道疾患の病因の主要なメディエーターとして、古典的なTh2由来サイトカインIL-4ではなくIL-13が関与していることを示す証拠が蓄積している。
【0013】
投薬経験の無い非感作げっ歯動物の気道への組換えIL-13の投与は、喘息の症状の多くの面(気道炎症、粘液産生、及びAHRを含む)を引き起こした[27][28][29][30]。肺にIL-13が特異的に過剰発現されたトランスジェニックマウスで、同様の症状が観察された。このモデルでは、IL-13に対するより慢性の暴露も繊維症を引き起こした[31]。
【0014】
さらにアレルギー疾患のげっ歯動物モデルでは、喘息症状の多くの面がIL-13と関連した。可溶性マウスIL-13Rα2(強力なIL-13中和物質)は、AHR、粘液過剰分泌、及び炎症性細胞の流入(これはこのげっ歯動物モデルに特徴的である)を阻害することが証明されている[27][28][30]。補完的な研究において、IL-13遺伝子が欠失しているマウスはアレルゲン誘導性AHRを発症しなかった。これらのIL-13欠損マウスでは、組換えIL-13の投与によりAHRが再発する。これに対してIL-4欠損マウスは、このモデルで気道疾患を引き起こした[32][33]。
【0015】
より長期のアレルゲン誘導性肺炎症モデルを使用して、Taubeらは確立された気道疾患に対する可溶性マウスIL-13Rα2の有効性を証明した[34]。可溶性マウスIL-13Rα2は、AHR、粘液過剰分泌を阻害し、程度は小さいが気道炎症を阻害した。これに対して、IL-4に結合しこれと拮抗する可溶性IL-4Rαは、この系でAHR又は気道炎症にほとんど効果が無かった[35]。これらの知見は、Bleaseらにより支持され、彼らは喘息の慢性真菌モデルを作成し、ここでIL-4ではなくIL-13に対するポリクローナル抗体が、粘液過剰分泌、AHR、及び上皮下繊維症を低下させることができた[36]。
【0016】
IL-13の多くの遺伝的多型もまた、アレルギー性疾患に関連付けられている。特にアミノ酸130のアルギニン残基がグルタミンで置換されている(Q130R)IL-13遺伝子の変種は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、及び血清IgE高レベルに関連している[37][38][39][40]。この具体的なIL-13変種はまた、アミノ酸の数から20個のアミノ酸シグナル配列を排除する一部のグループにより、Q110R(アミノ酸110のアルギニン残基がグルタミンにより置換される)とも呼ばれる。Arimaら[41]は、この変種が血清中の高レベルのIL-13に関連していると報告している。IL-13変種(Q130R)及びこの変種に対する抗体は、WO 01/62933で考察されている。IL-13プロモーター多型(これはIL-13産生を変化させる)もまた、アレルギー性喘息に関連している[42]。
【0017】
IL-13の高値はまた、喘息、アトピー性鼻炎(枯草熱)、アレルギー皮膚炎(湿疹)、及び慢性副鼻腔炎で測定されている。例えばIL-13レベルは、対照被験体と比較して喘息患者の気管支生検、喀痰、及び気管支肺胞洗浄液(BAL)細胞で高かった[43][44][45][46]。さらにBAL試料中のIL-13のレベルは、喘息患者をアレルゲンで抗原刺激することにより上昇した[47][48]。さらに、CD4(+) T細胞のIL-13産生能力は、新生児のアレルギー性疾患の以後の発症リスクの有用なマーカーであることが証明されている[49]。
【0018】
Liら[114]は最近、喘息の慢性マウスモデルで抗マウスIL-13抗体を中和する作用を報告した。慢性喘息様応答(例えば、AHR、重症の気道炎症、過剰粘液産生)が、OVA感作マウスで誘導された。Liらは、各OVA抗原刺激時のIL-13抗体の投与が、AHR、好酸球浸潤、血清IgEレベル、炎症促進性サイトカイン/ケモカインレベル、及び気道リモデリングを抑制することを報告している[14]。
【0019】
要約するとこれらのデータは、IL-4ではなくIL-13がヒトアレルギー性疾患の治療のためのより魅力的な標的であることを示す。
【0020】
IL-13は、炎症性腸疾患の発症において役割を果たす。Hellerら[116]は、可溶性IL-13Rα2の投与によるIL-13の中和が、ヒト潰瘍性大腸炎のマウスモデルの大腸の炎症を緩和することを報告している[116]。これに対応して、潰瘍性大腸炎患者の直腸生検試料では対照よりIL-13発現が高かった[117]。
【0021】
IL-13は、喘息以外の他の繊維症症状に関連している。全身性硬化症患者の血清[50]及び他の型の肺繊維症患者からのBAL試料[51]中で、IL-13レベルの上昇(IL-4より最大1000倍高い)が測定されている。対応して、マウス肺中のIL-13(IL-4ではない)の過剰発現は顕著な繊維症を引き起こした[52][53]。肺以外の組織の繊維症へのIL-13の寄与は、寄生体誘導性の肝臓繊維症のマウスモデルで広範に研究されている。可溶性IL-13Rα2の投与又はIL-13遺伝子破壊によるIL-13の特異的阻害は、肝臓中の線維形成を阻止したが、IL-4産生の低下ではこれを阻止しなかった[54][55][56]。
【0022】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、種々の程度の慢性気管支炎、小気道疾患、及び肺気腫を有する患者集団を含み、現在の喘息ベースの治療にあまり応答しない進行性不可逆的肺機能低下を特徴とする[90]。近年COPDの発症率は劇的に上昇して、全世界の死因の第4番目になった(世界保健機構(World Health Organization)。従ってCOPDは、未解決の大きな医学的ニーズである。
【0023】
COPDの原因はよくわかっていない。「ダッチ(Dutch)仮説」は、COPDと喘息に対する共通の感受性があり、両方の障害の病理発生に同様の機構が寄与していると提唱している[57]。
【0024】
Zhengら[58]は、マウス肺中のIL-13の過剰発現が、肺気腫、高粘液産生、及び炎症を引き起こしており、ヒトCOPDの側面を反映していることを示した。さらに、アレルギー性炎症のマウスモデルでのIL-13依存性応答であるAHRは、喫煙者の肺機能の低下を予測できることが示されてきている[59]。IL-13プロモーター多型とCOPDの発症のし易さとの関連も確立されている[60]。
【0025】
従ってIL-13は、特にAHRと好酸球増加症を含む喘息様特徴を有する患者において、COPDの病理発生に重要な役割を果たす兆候がある。肺疾患が報告されていない被験体からの肺試料と比較して、COPDの病歴のある被験体からの剖検組織試料では、IL-13のmRNAレベルが高いことが証明されている(J. Elias, 2002年アメリカ胸部学会年会(American Thoracic Society Annual Meeting)での口頭通信)。別の研究では、COPD患者の末梢肺切片の免疫組織化学試験により、高レベルのIL-13が示された[91]。
【0026】
ホジキン病は一般的なタイプのリンパ腫であり、これは米国で年間約7,500症例がある。新生物性リードスターンバーグ(Reed-Sternberg)細胞(しばしばB細胞から得られる)は、臨床的に検出される塊りのほんの一部を占めるのみであるため、ホジキン病は悪性腫瘍の中では珍しい。ホジキン病由来細胞株及び原発性リードスターンバーグ(Reed-Sternberg)細胞は、しばしばIL-13及びその受容体を発現する[61]。IL-13は正常なB細胞中の細胞生存と増殖を促進するため、IL-13がリードスターンバーグ(Reed-Sternberg)細胞の増殖因子として作用する可能性が提唱された。Skinniderらは、IL-13に対する中和抗体がホジキン病由来細胞株の増殖をインビトロで阻害し得ることを証明した[62]。この知見は、リードスターンバーグ細胞がIL-13の自己分泌及びパラクリン・サイトカインループによりその生存を増強することを示唆した。この仮説に一致して、正常対照と比較した時、一部のホジキン病患者の血清で高レベルのIL-13が検出されている[63]。従ってIL-13インヒビターは、悪性のリードスターンバーグ細胞の増殖を阻害することにより、疾患の拡散を予防するかも知れない。
【0027】
多くのヒト癌細胞は、免疫原性腫瘍特異的抗原を発現する。しかし多くの腫瘍は自然に退縮するが、いくつかはT細胞性免疫を抑制することにより免疫系(免疫監視)をすり抜ける。Terabeら[64]は、初期の増殖後に腫瘍が自然に退縮し次に再発したマウスモデルで、免疫抑制におけるIL-13の役割を示した。可溶性IL-13Rα2によるIL-13の特異的阻害は、これらのマウスを腫瘍再発から防御した。Terabeら[64]は続けてIL-13が、抗腫瘍免疫応答を仲介する腫瘍特異的CD8+細胞障害性リンパ球の分化を抑制することを証明した。
【0028】
従ってIL-13インヒビターは、腫瘍再発又は転移を予防するために治療的に使用できるであろう。IL-13の阻害は動物モデルで抗ウイルスワクチンを増強することが示されており、HIV及び他の感染性疾患の治療に有益かも知れない[65]。
【0029】
本明細書において一般にインターロイキン-13すなわちIL-13に言及する時は、特に明記しない場合はヒトIL-13を示すことに注意されたい。これはまた、代わりに「抗原」とも呼ばれる。本発明は、ヒトIL-13に対する抗体、特にヒト抗体であって、非ヒト霊長類IL-13、例えばカニクイザル(cynomolgus)やアカゲザル(rhesus monkey)のIL-13と交差反応する抗体を提供する。本発明のいくつかの実施態様における抗体は、アミノ酸位置130のアルギニン残基がグルタミンに置換されたIL-13の変種を認識する。他の態様及び実施態様において本発明は、ネズミ(murine)IL-13、特にマウスIL-13、に対する特異的結合メンバーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の種々の態様と実施態様において、添付の特許請求の範囲の主題が提供される。
【0031】
本発明は、IL-13、特にヒト及び/又は霊長類のIL-13及び/又はIL-13の変種(Q130R)、並びにマウスIL-13に対する特異的結合メンバーを提供する。本発明の好適な実施態様は抗体分子であり、全抗体(例えば、IgG4などのIgG)又は抗体断片(例えば、scFv、Fab、dAb)でもよい。抗体VHとVLドメインのように、抗体の抗原結合領域が提供される。VHとVLドメイン内で、相補性決定領域(CDR)が提供され、これは、異なるフレームワーク領域(FR)内に提供されて、場合に応じてVH又はVLドメインを形成する。抗原結合部位は、抗体VHドメイン及び/又はVLドメインからなることもある。
【0032】
抗原結合部位は、フィブロネクチン又はチトクロームBなどの非抗体タンパク質骨格上のCDRの整列により提供される[115,116]。タンパク質内の新規結合部位を作成するための骨格は、Nygrenら[116]に詳細に総説される。抗体模倣物のタンパク質骨格はWO/0034784に開示されており、発明者らは、少なくとも1のランダム化ループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣物)を記載する。1つ以上のCDR(例えばHCDRのセット)を入れ込むための適当な骨格は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーにより提供される。
【0033】
本発明の好適な実施態様は、本明細書において「BAK278D6系統」と呼ぶものである。これは以下のようにBAK278D6の6つのCDR配列のセット:HCDR1(配列番号1)、HCDR2(配列番号2)、HCDR3(配列番号3)、LCDR1(配列番号4)、LCDR2(配列番号5)、及びLCDR3(配列番号6) について定義される。1の態様では、本発明はヒトIL-13に対する特異的結合メンバーであって、ヒト抗体VHドメイン及びヒト抗体VLドメインから構成され、かつCDRのセットを含む抗体抗原結合部位を含む、上記特異的結合メンバーを提供し、ここで当該VHドメインがHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、並びに当該VLドメインはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む(ここで、当該HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し、当該HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し、当該HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有し、当該LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を有し、当該LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を有し、当該LCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を有する)か;或いは、CDRのセットが、上記CDRのセット(HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有し、LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を有し、そしてLCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を有する)と比較して1つ又は2つのアミノ酸置換を含む。
【0034】
HCDR1が配列番号1のアミノ酸配列を有し、HCDR2が配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR3が配列番号3のアミノ酸配列を有し、LCDR1が配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR2が配列番号5のアミノ酸配列を有し、LCDR3が配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRのセットは、本明細書において「BAK278D6のCDRセット」と呼ぶ。BAK278D6のCDRセット内のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、「BAK278D6のHCDRセット」と呼び、BAK278D6のCDRセット内のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3は、「BAK278D6のLCDRセット」と呼ぶ。BAK278D6のCDRセット、BAK278D6のHCDRセット、又はBAK278D6のLCDRセット、或いはそれらの中の1又は2個の置換を有するCDRのセットは、BAK278D6系統であると言われる。
【0035】
前記のように、ある態様において本発明は、ヒト抗体VHドメインとヒト抗体VLドメインで構成され、かつCDRのセットを含む抗体の抗原結合部位を含む、ヒトIL-13に対する特異的結合メンバーを提供し、ここで当該CDRのセットは、BAK278D6のCDRセット、又はBAK278D6のCDRセットと比較して1つ又は2つの置換を含むCDRのセットである。
【0036】
好適な実施態様において1つ又は2つの置換は、カバト(Kabat)の標準的番号付け[107]を使用して、VH及び/又はVLドメインのCDR内の以下の残基の1つ又は2つにある。
HCDR1中の31、32、34
HCDR2中の52、52A、53、54、56、58、60、61、62、64、65
HCDR3中の96、97、98、99、101
LCDR1中の26、27、28、30、31
LCDR2中の56
LCDR3中の95A、97。
【0037】
好適な実施態様は、BAK278D6のCDRセットと比較して、HCDR3残基99とLCDR1残基27にて2つの置換を有する。これらの実施態様のうち好適な実施態様は、HCDR3残基99でNがSに置換され、LCDR1残基27でNがIに置換される。さらに好適な実施態様は、S、A、I、R、P及びKからなる群から選ばれるHCDR3残基99での置換と、I、L、M、C、V、K、Y、F、R、T、S、A、H及びGからなる群から選ばれるLCDR1残基27での置換とを有する。
【0038】
好適な実施態様において1つ又は2つの置換が、以下の可能な置換残基の特定された基:
置換の位置 以下からなる群から選択される置換残基
HCDR1中の31: Q、D、L、G、E
HCDR1中の32: T
HCDR1中の34: V、I、F
HCDR2中の52: D、N、A、R、G、E
HCDR2中の52A: D、G、T、P、N、Y
HCDR2中の53: D、L、A、P、T、S、I、R
HCDR2中の54: S、T、D、G、K、I
HCDR2中の56: T、E、Q、L、Y、N、V、A、M、G
HCDR2中の58: I、L、Q、S、M、H、D、K
HCDR2中の60: R
HCDR2中の61: R
HCDR2中の62: K、G
HCDR2中の64: R
HCDR2中の65: K
HCDR3中の96: R、D
HCDR3中の97: N、D、T、P
HCDR3中の98: R
HCDR3中の99: S、A、I、R、P、K
HCDR3中の101: Y
LCDR1中の26: D、S
LCDR1中の27: I、L、M、C、V、K、Y、F、R、T、S、A、H、G
LCDR1中の28: V
LCDR1中の30: G
LCDR1中の31: R
LCDR2中の56: T
LCDR3中の95A: N
LCDR3中の97: I
に従って、BAK278D6のCDRセット内の上記残基の1つ又は2つでなされる:
【0039】
好適な実施態様は、HCDR3の残基99でNがSに置換され、LCDR1の残基27でNがIに置換されたBAK278D6のCDRセットを有する。こうして定義されたCDRのセットは以下の通りである:HCDR1-配列番号7;HCDR2-配列番号8、HCDR3-配列番号9;LCDR1-配列番号10、LCDR2-配列番号11、LCDR3-配列番号12。このCDRのセットは本明細書において「BAK502G9のCDRのセット」と呼ぶ。
【0040】
さらなる好適な実施態様は、CDR内に1つ又は2つの置換を有するBAK278D6のCDRセットを有するが、ただし、HCDR3の残基99のNのSによる置換とLCDR1の残基27のNのIによる置換の対は含まれない。
【0041】
他の好適な実施態様は以下の通りである:BAK1166G2:HCDR1-配列番号67、HCDR2 -配列番号68、HCDR3-配列番号69、LCDR1-配列番号70、LCDR2-配列番号71、LCDR3-配列番号72。
【0042】
BAK1167F2: HCDR1-配列番号61、HCDR2-配列番号62、HCDR3-配列番号63、LCDR1-配列番号64、LCDR2-配列番号65、LCDR3-配列番号66。
【0043】
BAK1184C8: HCDR1-配列番号73、HCDR2-配列番号74、HCDR3-配列番号75、LCDR1-配列番号76、LCDR2-配列番号77、LCDR3-配列番号78。
【0044】
BAK1185E1: HCDR1-配列番号79、HCDR2-配列番号80、HCDR3-配列番号81、LCDR1-配列番号82、LCDR2-配列番号83、LCDR3-配列番号84。
【0045】
BAK1167F4: HCDR1-配列番号85、HCDR2-配列番号86、HCDR3-配列番号87、LCDR1-配列番号88、LCDR2-配列番号89、LCDR3-配列番号90。
【0046】
BAK1111D10: HCDR1-配列番号91、HCDR2-配列番号92、HCDR3-配列番号93、LCDR1-配列番号94、LCDR2-配列番号95、LCDR3-配列番号96。
【0047】
BAK1183H4: HCDR1-配列番号97、HCDR2-配列番号98、HCDR3-配列番号99、LCDR1-配列番号100、LCDR2-配列番号101、LCDR3-配列番号102。
【0048】
BAK1185F8: HCDR1-配列番号103、HCDR2-配列番号104、HCDR3-配列番号105、LCDR1-配列番号106、LCDR2-配列番号107、LCDR3-配列番号108。これらのすべては、重鎖CDR1とCDR2のランダム化によりBAK502G9から得られ、従ってBAK502G9系統である。
【0049】
任意のクローンのCDRのセット(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)を含むVHドメインを表1に示す。別に、表1に示すクローンのCDRのセット(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含むVLドメインも本発明により表1に示される。好ましくはかかるVHドメインはかかるVLドメインと対になっており、最も好ましくはVHとVLドメインの対は、表1に示すクローンと同じである。
【0050】
さらに本発明により、CDRのセットが、1つ又は2つのアミノ酸置換を有する表1に示す任意のクローンのものに対応する、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)を含むVHドメインが提供される。
【0051】
さらに本発明により、CDRのセットが、1つ又は2つのアミノ酸置換を有する表1に示す任意のクローンのものに対応する、CDRのセット(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含むVLドメインが提供される。
【0052】
VH及び/又はVLドメインを含む抗体の抗原結合ドメインを含む特異的結合メンバーもまた、本発明により提供される。
【0053】
本発明者は、BAK278D6系統を、IL-13に対するヒト抗体の抗原結合ドメインを提供する系統であるとして同定し、これは特に価値がある。この系統内で、BAK502G9が特に有用であると特定される。BAK278D6とBAK502G9のCDRのセットは、すでに上記で同定されている。
【0054】
構造/性質-活性相関に多変量データ解析技術を適用するコンピューター化学の進歩に従って[94]、抗体の統計的活性-性質相関、パターン認識と分類のような公知の数学的方法を使用して、抗体の定量的活性-性質相関を得ることができる[95〜100]。抗体の性質は、抗体配列の経験的及び理論的モデル(例えば、類似の接触残基の分析又は計算された物理化学的性質の解析)、機能的及び3次元構造から得ることができ、これらの性質は単独及び組合せで考慮することができる。
【0055】
VHドメインとVLドメインからなる抗体の抗原結合部位が、ポリペプチドの6つのループ(3つが軽鎖可変ドメイン(VL)から、そして3つが重鎖可変ドメイン(VH)から)により形成される。既知の原子構造の抗体の分析により、抗体結合部位の配列と3次元構造の関係が明らかにされた[101,102]。これらの関係は、VHドメイン中の第3の領域(ループ)を除くと、結合部位ループは少数の主鎖コンフォメーションの1つ(標準構造)を有することを示唆する。特定のループで形成される標準構造は、ループとフレームワーク領域の両方でそのサイズといくつかの残基の存在により決定されることが証明された[101,102]。
【0056】
配列-構造相関のこの研究は、既知の配列の抗体の残基の予測に使用することができるが、未知の3次元構造については予測できず、これはそのCDRループの3次元構造を維持し、従って結合特異性を維持するのに重要である。これらの予測は、リード最適化実験からの出力についての予測の比較により支持することができる。
【0057】
構造アプローチでは、自由に入手できるか又は市販のパッケージ(例えばWAM[104])を使用して抗体分子[103]についてモデルを作成することができる。例えばインサイト(Insight)II[105]又はディープビュー(Deep View)[106]のようなタンパク質の視覚化と分析ソフトウェアパッケージを使用して、CDR中の各位置の可能な置換を評価することができる。次にこの情報を使用して、活性への影響が最小であるか又は有益な置換が作成される。
【0058】
本発明者は、そのCDRのセットを表1に示すクローンのパネルの配列データを分析した。
【0059】
この分析は、scFv変種の記載のセットからのCDR中の記載のアミノ酸の変化の2成分の組合せは、少なくとも親scFv BAK278D6の出発力価を有するscFv変種を与えるという仮説を検定した。
【0060】
全てのscFv変種は、改良された親和性について選別され、そしてより高い力価を示すことが確認されている。
【0061】
観察されたアミノ酸の変化は、TF-1アッセイにおいてscFv BAK278D6の出発力価の44nMに対してのその作用が、好ましいか、好ましくないか、又はどちらでもない。
【0062】
任意の2つのアミノ酸の変化の間で関連は観察されず、任意の2つの選択されたアミノ酸の変化の間に「正」又は「負」の相乗作用が無いことが確認された。
【0063】
かかる2つの組合せが仮説を満足する4つのシナリオと、仮説が有効ではない3つのシナリオがある。関連は観察されなかったため、相乗作用的アミノ酸の変化は考慮していない。
【0064】
仮説は以下の場合
A1:変異1が好ましく、かつ変異2が好ましい
A2:変異1が好ましく、かつ変異2がどちらでもない
A3:変異1がどちらでもなく、かつ変異2がどちらでもない
A4:変異1が好ましく、かつ変異2が好ましくない(1の作用が2の作用より強い)
に有効である:。
【0065】
仮説は以下の場合:
B1:変異1が好ましくなく、かつ変異2がどちらでもない
B2:変異1が好ましくなく、かつ変異2が好ましくない
B3:変異1が好ましく、かつ変異2が好ましくない(2の作用が1の作用より強い)
に有効ではない。
【0066】
A4が可能であるためには、変異1は、力価についての変異2の負の作用を相殺できるほど極めて好ましいものでなければならない。かかる極めて好ましい変異は、選択に使用される変化のライブラリーには存在しないため、これは変種のパネルについて選択され、従ってそこにしばしば現れるであろう。相乗作用は排除することができるため、かかる変異は任意の種類の配列で有効であり、従って異なるscFv変種中に再出現するはずである。かかる高頻度のアミノ酸変化の例は、軽鎖CDR1の変化Asn27Ileの変化である。しかし(クローンBAK531E2中の)この変異自体は、力価に対してわずかに2倍の作用しか有さない(最終IC50は23.2nM)。それ自体でこれは極めて好ましい変異ではないため、A4に示すシナリオは不可能であろう。これは、1つ以上のさらなる変異とともに軽鎖CDR1のAsn27Ile変化を有する記載のIL-13結合クローンセット中の各クローン(表1)は、1本鎖の軽鎖CDR1 Asn27Ile変異を有する変種と少なくとも同等の力価であることを示唆する。他の変異はどちらでもないか又は正であるが、負若しくは有害な作用は無い。
【0067】
さらなる例は、重鎖CDR3のAsn99Serである(表1を参照)。この単一のアミノ酸変化を有するクローンは観察されていないため、かかるクローンの力価は、以下の理論により約12.0nMであると推定されている:
【0068】
BAK278D6力価は44nMである。VL CDR1 N27I + VH CDR3 N99Sの変化は、力価8nMのBAK502G9を与え、すなわち5.5倍の改良である。
【0069】
BAK278D6力価は44nMである。VL CDR1 N27Iの変化は、力価23nMのBAK531E2を与え、すなわち1.9倍の改良である。
【0070】
BAK278D6力価は44nMである。VH CDR3 N99Sの変化は、力価12.2nMの可能なクローンを与え、すなわち2.9倍の改良である(5.5/1.9=2.9)。
【0071】
重鎖CDR3 Asn99Serと軽鎖CDR1 Asn27Ileとの2成分の組合せは、力価が8nMのscFv BAK0502G9を与える。相乗作用が除外されているため、BAK502G9中の重鎖CDR3 Asn99Serの変化の寄与は付加的である。
【0072】
従って1つ以上のさらなる変異とともに重鎖CDR3のAsn99Ser変化を有するIL-13結合クローン(表1)の記載のセット中のすべてのクローンは、n=1〜2について許容アッセイウィンドウ2.5倍内で少なくとも12nM又はそれ以上の力価を有するであろう。
【0073】
すなわち本発明者は、優先的に選択される極めて好ましいアミノ酸の変化は観察されないと考えている。上記したように、主にscFv変種の表1中に示した2つの変化を詳細に分析した。1つ以上のさらなる変異とともにこれらの変異のいずれかを有する表1のscFv変種は、親BAK278D6中のこれらの2つの単一のアミノ酸変化の任意の1つを含有するクローンのように少なくとも改善していた。従ってシナリオA4を可能にするであろう極めて好ましいアミノ酸変化がこのパネル中に存在するという証拠は無い。
【0074】
この観察結果により本発明者は、このscFv変種のセットには好ましくない変異は存在しないと結論した。これは、シナリオA4及びB1〜B3が関係なく、この仮説が有効であることを意味する。
【0075】
従ってすでに記載したように本発明は、定義されたCDRのセット、特にBAK278D6のCDRセットと、BAK278D6系統のCDRセットを、CDRのセット(例えばBAK502G9のCDRセット)内の1つ又は2つの置換とともに含む特異的結合メンバーを提供する。
【0076】
関連するCDRのセットが、抗体フレームワーク領域内又は他のタンパク質骨格(例えば、フィブロネクチン又はチトクロームB)に提供される[115,116]。好ましくは抗体フレームワーク領域が使用され、これらが使用される場合、これらは好ましくは生殖細胞系であり、さらに好ましくは重鎖の抗体フレームワーク領域は、VH1ファミリー由来のDP14でもよい。軽鎖の好適なフレームワーク領域はλ3-3Hでもよい。BAK502G9のCDRセットでは、抗体フレームワーク領域が、VH FR1については配列番号27、VH FR2については配列番号28、VH FR3については配列番号29、軽鎖FR1については配列番号30、軽鎖FR2については配列番号31、軽鎖FR3については配列番号32であることが好ましい。極めて好適な実施態様において、配列番号15のアミノ酸配列を有するVHドメインが提供され、これは「BAK502G9 VHドメイン」と呼ぶ。さらに極めて好適な実施態様において、配列番号16のアミノ酸配列を有するVLドメインが提供され、これは「BAK502G9 VLドメイン」と呼ぶ。本発明で提供される極めて好適な抗体の抗原結合部位は、BAK502G9 VHドメイン配列番号15と、BAK502G9 VLドメイン配列番号16で構成される。この抗体の抗原結合部位は、本明細書の別のところでさらに考察されるように、任意の所望の抗体分子フォーマット、例えばscFv、Fab、IgG、IgG4、dAbなどの中に提供されうる。
【0077】
さらに極めて好適な実施態様において本発明は、BAK502G9 VHドメイン配列番号15とBAK502G9 VLドメイン配列番号16とを含むIgG4抗体分子を提供する。これを本明細書において「BAK502G9 IgG4」と呼ぶ。
【0078】
抗体VHドメイン内にBAK502G9のHCDRセット(配列番号7、8、9)及び/又は抗体VLドメイン内にBAK502G9のLCDRセット(配列番号10、11、12)を含む他の抗体分子のように、BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)及び/又はBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)を含むIgG4若しくは他の抗体分子が本発明により提供される。
【0079】
本明細書で使用される「及び/又は」は、他のものを含むか又は含まない2つの特定の特徴又は成分のそれぞれの具体的な開示であると理解されることをここで指摘することが便利である。例えば「A及び/又はB」は、それぞれが個々に記載されるように、(i) A、(ii) B、及び(iii) AとB、のそれぞれの具体的な開示であると理解されたい。
【0080】
前記したように本発明は、ヒトIL-13に結合し、かつBAK502G9 VHドメイン(配列番号15)及び/又はBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)を含む、特異的結合メンバーを提供する。
【0081】
一般に、VHドメインはVLドメインと対になって抗体の抗原結合部位を提供するが、後述のように、抗原に結合するためにVHドメイン単独が使用されることがある。ある好適な実施態様においてBAK502G9 VHドメイン(配列番号15)はBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)と対になり、その結果、BAK502G9 VHとVLドメインの両方を含む抗体の抗原結合部位が形成される。他の実施態様においてBAK502G9 VHはBAK502G9 VL以外のVLドメインと対になる。軽鎖の無差別結合は当該分野において確立されている。
【0082】
同様に、単独で又はVLドメインと組合せて特異的結合メンバーとして使用されるVHドメイン中に、BAK278D6系統の任意のHCDRセットを提供することができる。例えば表1に示すように、BAK278D6系統の抗体のHCDRセットを有するVHドメインが提供され、かかるVHドメインがVLドメインと対になると、例えば表1に示すBAK278D6系統の抗体のLCDRセットを有するVLドメインが提供される。HCDRセットとLCDRセットとの対形成を表1に示し、表1に示すようにCDRのセットを含む抗体の抗原結合部位を提供する。VH及び/又はVLドメインのフレームワーク領域は生殖細胞系フレームワークでもよい。重鎖ドメインのフレームワーク領域はVH-1ファミリーから選択され、好適なVH-1フレームワークはDP-14フレームワークである。軽鎖のフレームワーク領域はλ3ファミリーから選択され、好適なかかるフレームワークはλ3 3Hである。
【0083】
BAK502G9 VH又はVLドメインから1つ以上のCDRが取られ、適当なフレームワークに取り込まれる。これは本明細書でさらに説明される。BAK502G9 HCDRの1、2、及び3は、それぞれ配列番号7、8、及び9に示される。BAK502G9 LCDRの1、2、及び3は、それぞれ配列番号10、11、及び12に示される。
【0084】
他のBAK278D6系統のCDRについても、表1に示すCDRのセットと同じことが適用される。
【0085】
本発明のさらなる実施態様は、VH及び/又はVLドメインを含む特異的結合メンバー、又は167A11(VH:配列番号23、及びVL:配列番号24)として示される抗体分子、及びその誘導体615E3(VH:配列番号33、及びVL:配列番号34)、BAK582F7(VH CDRの配列番号141〜143)、及びBAK612B5(VH CDRの配列番号147〜149)のVH及び/又はVLドメインのCDRを含む抗原結合部位に関する。これらはヒトIL-13を認識する。VH CDR3ランダム化からの167A11の誘導体は、力価の高いscFv分子である(5〜6nM)。167A11系統は、他の分子について本明細書に開示されたように本発明の任意の態様及び実施態様で使用され、例えば改良された力価を有する抗原結合部位の変異と選択方法に使用される。
【0086】
本明細書にそのアミノ酸配列が記載され、IL-13に対する特異的結合メンバーに使用することができるものを含む、本発明のVH及びVLドメイン並びにCDRの変種は、配列改変又は変異法及びスクリーニングにより得ることができる。かかる方法もまた、本発明により提供される。
【0087】
その配列が本明細書に具体的に開示されるVH及びVLドメインの任意の可変ドメインアミノ酸配列変種は、記載のように本発明に従って利用される。具体的な変種は1つ以上のアミノ酸配列改変(アミノ酸残基の付加、欠失、置換、及び/又は挿入)を含み、約20未満の改変、約15未満の改変、約10未満の改変、又は約5未満の改変、4、3、2、或いは1の改変を含む。改変は、1つ以上のフレームワーク領域及び/又は1つ以上のCDR中に作成される。
【0088】
本発明のさらなる態様において、抗原に結合することについて、任意の特異的結合メンバーと競合する特異的結合メンバー(ここで、両方が抗原に結合する)、本明細書に開示のVH及び/又はVLドメイン、又は本明細書に開示のHCDR3、又はこれらの任意の変種が提供される。結合メンバー間の競合はインビトロで、例えばELISAを使用して、及び/又は他の非標識結合メンバーの存在下で検出できる1の結合メンバーに対して特異的なレポーター分子を標識することにより、容易に測定でき、同じエピトープ若しくは重複するエピトープに結合する特異的結合メンバーの同定を可能にする。
【0089】
すなわち本発明のさらなる態様は、IL-13への結合について、BAK502G9抗体分子、特にBAK502G9 scFv及び/又はIgG4と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む特異的結合メンバーを提供する。さらなる態様において本発明は、IL-13への結合について、抗体の抗原結合部位と競合するヒト抗体の抗原結合部位を含む特異的結合メンバーであって、抗体の抗原結合部位はVHドメインとVLドメインから構成され、かつVH及びVLドメインはBAK278D6系統のCDRセットを含む、上記特異的結合メンバーを提供する。
【0090】
IL-13に対する抗体であり、IL-13への結合についてBAK502G9抗体分子、BAK502G9のCDRセットを有する抗体分子、又はBAK278D6のCDRセットを有する抗体分子と競合する抗体を得るために、種々の方法が当該分野で利用できる。
【0091】
さらなる態様において本発明は、抗原に結合することができる1つ以上の特異的結合メンバーを得るための方法であって、本発明の特異的結合メンバーのライブラリーと該抗原とを接触させ、該抗原に結合することができるライブラリーの1つ以上の特異的結合メンバーを選択することを含む方法を提供する。
【0092】
ライブラリーはバクテリオファージ粒子の表面上に表示され、各粒子はその表面に表示される抗体VH可変ドメイン、及び場合によって存在するなら表示されるVLドメインをコードする核酸を含有する。
【0093】
抗原に結合することができ、バクテリオファージ粒子上に表示される特異的結合メンバーの選択後に、該選択された特異的結合メンバーを表示するバクテリオファージ粒子から核酸が採取される。かかる核酸は、該選択された特異的結合メンバーを表示するバクテリオファージ粒子から採取される核酸の配列を有する核酸から発現させることによる、特異的結合メンバー又は抗体VH可変ドメイン(場合により抗体VL可変ドメイン)の以後の産生に使用される。
【0094】
該選択された特異的結合メンバーの抗体VH可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体VH可変ドメインは、かかるVHドメインを含む特異的結合メンバーのように、単離された型で提供される。さらにIL-13に結合する能力、またIL-13への結合についてBAK502G9(例えば、scFvフォーマット及び/又はIgGフォーマット、例えばIgG4で)と競合する能力もまた試験される。さらに後述されるように、IL-13を中和する能力が試験される。
【0095】
本発明の特異的結合メンバーは、BAK502G9抗体分子(例えば、scFv又は好ましくはBAK502G9IgG4)の親和性で、又はそれより強い親和性でIL-13に結合する。
【0096】
本発明の特異的結合メンバーは、BAK502G9抗体分子(例えば、scFv又は好ましくはBAK502G9 IgG4)の力価で、又はそれより優れた力価でIL-13を中和する。
【0097】
本発明の特異的結合メンバーは、BAK502G9抗体分子(例えば、scFv又は好ましくはBAK502G9 IgG4)の力価で、又はそれより優れた力価で、天然に存在するIL-13を中和する。
【0098】
異なる特異的結合メンバーの結合親和性と中和力価は、適切な条件下で比較することができる。
【0099】
本発明の抗体は、既存の市販のげっ歯類抗ヒトIL-13抗体、すなわちJES10-5A2(バイオソース(Biosource))、B-B13(ユーロクローン(Euroclone))、及びクローン321166(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))に対して、多くの利点を有する。本発明の抗体の力価を、市販のJES10-A2及びB-B13と比較した。クローン321166は以前の実験で、既知の市販の抗体より著しく力価が低いことが明らかだったため、評価しなかった。
【0100】
げっ歯動物の市販のIL-13抗体は、免疫原性応答を誘導する可能性が高く、従って体内からより速くクリアランスされるため、この抗体のヒトでの効力と使用は限定されるようである。非ヒト霊長類での本発明の抗体の動力学的解析は、これらの抗体が他の既知のヒト又はヒト化抗体と同等のクリアランス速度を有することを示唆する。
【0101】
本発明の種々の実施態様で提供される抗体は、非ヒト霊長類IL-13(アカゲザル(rhesus monkey)及びカニクイザル(cynomolgus)IL-13を含む)を認識する。非ヒト霊長類で抗体の効力と安全性プロフィールを測定することは、ヒトでの抗体の安全性、薬物動態、及び薬力学的プロフィールを予測する手段を提供するため、極めて有用である。
【0102】
さらに本発明の種々の実施態様の抗体はさらに、喘息に関連するヒトIL-13変種(Q130R)を認識する。変種IL-13との交差反応性は、本発明の抗体及び本発明の抗体を含む組成物を、野生型と変種IL-13を用いる患者の治療に使用することを可能にする。
【0103】
本発明の好適な実施態様は、BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)とBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)により形成されるIL-13抗原結合部位の力価と同等か又はこれより優れた力価で、天然に存在するIL-13を中和する抗体を含む。例えば本発明者は、BAK502G9、1167F2、及び1183H4のような代表的クローンが、既知の市販の抗体より天然に存在するIL-13に対してはるかに強力であることを示した。
【0104】
抗体配列以外に本発明の特異的結合メンバーは、他のアミノ酸を含み、例えばペプチド又はポリペプチド(例えば折り畳みドメイン)を形成するか、又は抗原に結合する能力以外に他の機能的特徴を分子に付与する。本発明の特異的結合メンバーは、検出できる標識物を有するか、又は毒素若しくは標的化成分若しくは酵素に、(例えば、ペプチド結合又はリンカーを通して)結合してもよい。
【0105】
さらなる態様において本発明は、本発明の特異的結合メンバー、VHドメイン及び/又はVLドメインをコードする配列を含む単離された核酸と、本発明の特異的結合メンバー、VHドメイン及び/又はVLドメインを調製する方法(これは、該特異的結合メンバー、VHドメイン及び/又はVLドメインの産生を引き起こす条件下で該核酸を発現させ、これを回収することを含む)とを提供する。
【0106】
本発明の特異的結合メンバーは、本発明の特異的結合メンバーの有効量を患者に投与することを含む、ヒト又は動物の体の治療又は診断法、例えばヒト患者の疾患又は障害の治療法(予防的治療を含んでもよい)で使用される。本発明で治療される症状には、IL-13が関与する任意の症状、特に喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、慢性閉塞性肺疾患、硬皮症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫がある。さらに本発明の抗体はまた、IL-13介在免疫抑制を阻害する[64,65]ため、腫瘍やウイルス感染症を治療するのに使用される。
【0107】
本発明のさらなる態様は、本明細書に開示のVH可変ドメイン及び/又はVL可変ドメインをコードする、一般に単離された核酸を提供する。
【0108】
本発明の別の態様は、本明細書に開示のVH CDR又はVL CDR配列、特に配列番号7、8及び9から選択されるVH CDR、又は配列番号10、11及び12から選択されるVL CDR、最も好ましくはBAK502G9 VH CDR3(配列番号9)をコードする、一般に単離された核酸を提供する。BAK502G9のCDRセットをコードする核酸、BAK502G9のHCDRセットをコードする核酸、及びBAK502G9のLCDRセットをコードする核酸もまた、BAK278D6系統の個々のCDR、HCDR、LCDR、及びCDR、HCDR、LCDRのセットをコードする核酸のように、本発明により提供される。
【0109】
さらなる態様は、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞を提供する。
【0110】
さらなる態様は、コード核酸からの発現を引き起こすことを含む、抗体VH可変ドメインの産生法を提供する。かかる方法は、該抗体VH可変ドメインの産生のための条件下で宿主細胞を培養することを含む。
【0111】
VL可変ドメイン、及びVH及び/又はVLドメインを含む特異的結合メンバーの産生のための類似の方法は、本発明のさらなる態様として提供される。
【0112】
産生法は、生成物の単離及び/又は精製工程を含有してもよい。
【0113】
産生法は、生成物を少なくとも1つの追加の成分、例えば薬剤学的に許容される賦形剤、を含む組成物中に製剤化することを含む。
【0114】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に詳述される。
【0115】
用語
特異的結合メンバー
「特異的結合メンバー」は、互いに結合特異性を有する分子対のメンバーを説明する。特異的結合対のメンバーは、天然に得られるか、又はすべて若しくは一部が合成されるものでもよい。分子対の1つのメンバーはその表面又は空洞に、分子対の他のメンバーの特定の空間的及び極性構成に特異的に結合し、従ってこれに相補的な領域を有する。すなわち対のメンバーは、互いに特異的に結合する性質を有する。特異的結合対のタイプの例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質である。本発明は、抗原-抗体型の反応に関する。
【0116】
抗体分子
「抗体分子」は、天然の又は部分的若しくは完全に合成された免疫グロブリンを記載する。この用語はまた、抗体結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質を包含する。抗原結合ドメインを含む抗体断片は、Fab、scFv、Fv、dAb、Fdのような分子、及びダイアボディ(diabodies)である。
【0117】
モノクローナル抗体及び他の抗体を取り、組換えDNA技術を使用して、元々の抗体の特異性を保持する他の自己抗体又はキメラ分子を産生することは可能である。かかる技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域又は定常領域+フレームワーク領域に導入することを含む。例えばEP-A-184187、GB2188638A又はEP-A-239400、及び多くの以後の文献を参照されたい。抗体を産生するハイブリドーマ又は他の抗体は遺伝的変異又は他の変化を受け、これは産生される抗体の結合特異性を変化させることも変化させないこともある。
【0118】
抗体は多くの方法で修飾することができるため、用語「抗体分子」は、必要な特異性を有する抗体の抗原結合ドメインを鵜鵜する特異的結合メンバー又は物質を包含するものと理解されたい。すなわちこの用語は、天然の又は完全に若しくは部分的に合成された免疫グロブリン結合ドメインを含むポリペプチドを含む、抗体断片及び誘導体を包含する。従って、他のポリペプチドに融合した免疫グロブリン結合ドメイン又は同等物を含むキメラ分子も含まれる。キメラ抗体のクローニングと発現は、EP-A-0120694及びEP-A-0125023、及び多くの以後の文献に記載されている。
【0119】
抗体工学の分野で利用できるさらなる方法が、ヒト及びヒト化抗体を単離することを可能にした。例えばヒトハイブリドーマはKontermannらが記載したように作成することができる[107]。特異的結合メンバーを作成するための別の確立された技術であるファージディスプレイ法が、Kontermannら[107]やWO92/01047(後述)のような多くの刊行物で詳述されている。マウス免疫系の他の成分を無傷のまま残して、マウス抗体遺伝子が不活性化されヒト抗体で機能的に置換されたトランスジェニックマウスを、ヒト抗原に対するヒト抗体を単離するために使用することができる[108]。
【0120】
例えばKnappikら、J. Mol. Biol. (2000) 296、57-86、又はKrebsら、J. Immunol. Meth. 254 2001 67-84に記載されているように、適当な発現ベクター内で合成され組み立てられたオリゴヌクレオチドを使用して作成された遺伝子から発現させて、合成抗体分子を作成してもよい。
【0121】
全抗体の断片は、抗原に結合する機能を果たすことができることが示されている。結合断片の例は、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHとCH1ドメインからなるFd断片;(iii)1本鎖抗体のVLとVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward, E.S.ら、Nature 341, 544-546 (1989)、McCaffertyら (1990) Nature, 348, 552-554);(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結したFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(vii)1本鎖Fv分子(scFv)、ここでVHドメインとVLドメインは、2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーにより結合される(Birdら、Science, 242, 423-426, 1988;Hustonら、PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988);(viii)二重特異的1本鎖Fvダイマー(PCT/US92/09965)、及び(ix)「ダイアボディ」、遺伝子融合により構築される多価又は多重特異的断片(WO94/13804;P. Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 6444-6448, 1993)。Fv、scFv、又はダイアボディ分子は、VHドメインとVLドメインとを連結するジスルフィド結合の取り込みにより安定化される(Y. Reiterら、Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996)。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディを作成することもできる(S. Huら、Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996)。
【0122】
二重特異的抗体が使用される場合、これらは従来の二重特異的抗体でもよく、これらは種々の方法で製造することができ(Holliger, P.とWinter G.、Current Opinion Biotechnol. 4, 446-449 (1993))、例えば化学的に又はハイブリッドハイブリドーマから調製されるか、又は上記の任意の二重特異的抗体断片でもよい。二重特異的抗体の例にはBiTE(商標)技術のものがあり、これは、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインを使用することができ、短い柔軟性のあるペプチドを介して連結される。これは、短い1本鎖ポリペプチド上で2つの抗体を組合せる。ダイアボディとscFvは可変ドメインのみを使用してFc領域無しで構築することができ、抗イディオタイプ反応の影響を低減する可能性がある。
【0123】
二重特異的全抗体に対して二重特異的ダイアボディはまた、容易に構築することができ大腸菌(E. coli)中で発現できるため、特に有用である。適切な結合特異性のダイアボディ(及び、抗体断片のような他の多くのポリペプチド)は、ライブラリーからファージディスプレイ(WO94/13804)を使用して容易に選択することができる。例えばIL-13に対する特異性を用いて、ダイアボディの1つのアームを一定に維持するなら、他のアームが変化したライブラリーを作成することができ、適切な特異性の抗体を選択することができる。二重特異的全抗体は、「ノブズ・インツウ・ホールズ(knobs-into-holes)」法により作成してもよい(J.B.B. Ridgewayら、Protein Eng., 9, 616-621, 1996)。
【0124】
抗原結合ドメイン
「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又はすべてに特異的に結合しかつこれに相補的な領域を含む抗体分子の一部を説明する。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合し、この部分はエピトープと呼ばれる。1つ以上の抗体可変ドメインにより抗原結合ドメインが提供される(例えば、VHドメインからなるいわゆるFd抗体断片)。好ましくは抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。
【0125】
特異的
「特異的」は、特異的結合対の1つのメンバーがその特異的結合対以外の分子に顕著な結合を示さない状況指すために使用される。この用語はまた、例えば抗原結合ドメインが、多くの抗原に運搬される特定のエピトープに特異的な場合にも適用され、この場合抗原結合ドメインを有する特異的結合メンバーは、エピトープを有する種々の抗原に結合することができる。
【0126】
含む
「含む」は、一般に含むと言う意味、すなわち1つ以上の特徴又は要素の存在を許容するという意味で使用される。
【0127】
単離された
「単離された」は、本発明の特異的結合メンバー又はかかる結合メンバーをコードする核酸が、一般に本発明に従っている状態を意味する。単離されたメンバー及び単離された核酸は、そうした調製が、インビトロ又はインビボで行われる組換えDNA技術によル場合、それらが元々関連している物質、例えば天然環境、又は当該メンバー及び核酸が調製される環境(例えば、細胞培養)において見られる他のポリペプチド又は核酸が存在しないか、又は実質的に存在しない状況である。メンバーと核酸は、希釈剤又はアジュバントを用いて剤形され、さらに実用のため単離されており、例えばメンバーは、イムノアッセイで使用されるマイクロタイタープレートを被覆するために使用されるなら、通常ゼラチン又は他の担体と混合されるか、又は診断又は治療で使用される時、医薬として許容される担体又は希釈剤と混合されるであろう。特異的結合メンバーは、天然状態で又は異種真核細胞(例えばCHO細胞又はNSO(ECACC85110503)細胞)系によってグリコシル化されることもあるし、又は(例えば原核細胞中での発現により産生されるなら)グリコシル化されないこともある。
【0128】
天然IL-13
天然IL-13は一般に、IL-13タンパク質又はその断片が存在する状態を意味する。天然IL-13は、コードする核酸を組換え技術を使用してあらかじめ導入することなく、細胞により自然に産生されるIL-13タンパク質を意味する。すなわち天然に存在するIL-13は、例えばCD4+ T細胞により天然に産生されるか、及び/又は哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯動物(例えばラット又はマウス))から単離されうる。
【0129】
組換えIL-13
「組換えIL-13」は、IL-13タンパク質又はその断片が生じる状態を意味する。組換えIL-13は、異種宿主中で組換えDNAにより産生されるIL-13タンパク質又はその断片を意味する。組換えIL-13は、天然IL-13とはグリコシル化の点で異なる。
【0130】
原核生物の細菌発現系により発現される組換えタンパク質はグリコシル化されず、一方真核生物系(例えば哺乳動物又は昆虫細胞)で発現されるものはグリコシル化される。しかし昆虫細胞中で発現されるタンパク質は、哺乳動物細胞で発現されるタンパク質とはグリコシル化が異なる。
【0131】
「実質的に記載されたように」とは、本発明の関連するCDR又はVH若しくはVLドメインが、配列が本明細書に記載された特定の領域と同一であるか又は極めて類似していることを意味する。「極めて類似している」とは、1〜5、好ましくは1〜4、例えば1〜3又は1若しくは2、或いは3若しくは4個のアミノ酸置換が、CDR及び/又はVH若しくはVLドメイン中に作成されていると考える。
【0132】
本発明のCDR又はCDRのセットを運搬するための構造は一般に、抗体重鎖又は軽鎖配列又はその十分な部分であり、その中にはCDR又はCDRセットが、再構成免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然VH及び/又はVL抗体の可変ドメインのCDR又はCDRセットに対応する位置に位置している。免疫グロブリン可変ドメインの構造及び位置は、Kabat, E.A.ら、「免疫学的興味のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第4版、米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services)、1987、及びこの更新版に記載されており、現在はインターネットで利用できる(http://immuno.bme.nwu.eduか又は任意のサーチエンジンを使用して「Kabat」により見つけられる)。
【0133】
CDRはまた、フィブロネクチン又はチトクロームBのような他の骨格により保持される[115,116]。
【0134】
好ましくは、実質的に本明細書に記載のCDRアミノ酸配列は、ヒト可変ドメイン又はその実質的な部分の中のCDRとして保持される。実質的に本明細書に記載されるHCDR3配列は本発明の好適な実施態様であり、これらの各々は、ヒト重鎖可変ドメイン又はその実質的な部分にHCDR3として保持されることが好ましい。
【0135】
本発明で使用される可変ドメインは、任意の生殖細胞系列又は再構成ヒト可変ドメインから得られるか、又は既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインでもよい。本発明のCDR配列(例えばCDR3)は、組換えDNA技術を使用してCDR(例えばCDR3)が欠如した可変ドメインのレパートリーに導入してもよい。
【0136】
例えばMarksら(Bio/Technology, 1992, 10:779-783)は、抗体可変ドメインのレパートリーを産生する方法であって、当該可変ドメイン内で、可変ドメイン領域の5’末端に向けられるか又はこれに隣接するコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーとともに使用して、CDR3を欠如するVH可変ドメインのレパートリーを提供する方法を記載する。Marksらはさらに、このレパートリーがいかに特定の抗体のCDR3と組合わされるかを説明する。類似の方法を使用して本発明のCDR3由来配列を、CDR3が欠如したVH又はVLドメインのレパートリーとシャッフリングし、シャッフリングした完全なVH又はVLドメインは同種のVL又はVHドメインと一緒になり、本発明の特異的結合メンバーを提供する。次にレパートリーは、適当な宿主系、例えばWO92/01047又は以後の多くの文献(Kay, B.K., Winter, J.及びMcCafferty, J. (1996)、「ペプチドとタンパク質のファージディスプレイ:実験室マニュアル(Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual)」、サンジエゴ:アカデミックプレス(Academic Press))に記載のファージディスプレイ系で表示され、その結果特異的結合メンバーが選択される。レパートリーは、104以上の個々のメンバー、例えば106〜108又は1010のメンバーからなる。他の適当な宿主系は、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、リボゾームディスプレイなどである。リボゾームディスプレイの総説については、Lowe DとJermutus L, 2004, Curr. Pharm. Biotech., 517-27、及びWO92/01047を参照されたい。
【0137】
類似のシャフリング又はコンビナトリアル法がまた、Stemmer(Nature, 1994, 370:389-391)により開示され、彼らは、β-ラクタマーゼに関連してこの技術を説明するが、このアプローチが抗体の作成に使用されることを観察している。
【0138】
別の方法は、1つ以上の選択されたVH及び/又はVL遺伝子のランダム突然変異誘発を使用して本発明のCDR由来配列を有する新規VH又はVL領域を作成して、全可変ドメイン内に変異を作成することである。かかる方法は、Gramら(1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580)により記載され、彼らはエラーの多いPCRを使用した。好適な実施態様において、HCDR及び/又はLCDRのセット内に1つ又は2つのアミノ酸置換が作成される。
【0139】
使用される別の方法は、VH又はVL遺伝子のCDR領域に突然変異誘発を誘発誘発することである。かかる方法はBarbasら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3809-3813)及びSchierら(1996, J. Mol. Biol. 263:551-567)により開示されている。
【0140】
上記のすべての技術は当該分野で公知であり、本発明の一部を構成するものではない。当業者はかかる技術を使用して、当該分野のルーチン的方法を使用して本発明の特異的結合メンバーを提供することができるであろう。
【0141】
本発明のさらなる態様は、IL-13抗原に特異的な抗体の抗原結合ドメインを得る方法を提供し、この方法は、本明細書に記載のVHドメインのアミノ酸配列に1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、VHドメインのアミノ酸配列変種であるVHドメインを提供し、場合によりこうして提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組合せ、そしてVHドメイン又はVH/VL組合せを試験して、特異的結合メンバー、又はIL-13抗原に特異的なかつ場合により1つ以上の好適な性質、好ましくはIL-13活性を中和する能力を有する抗体の抗原結合ドメインを同定することを含む。該VLドメインは、実質的に本明細書に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0142】
本明細書に開示のVLドメインの1つ以上の配列変種を1つ以上のVHドメインと組合せる類似の方法が使用される。
【0143】
好適な実施態様においてBAK502G9 VHドメイン(配列番号15)は変異を受けて、1つ以上のVHドメインアミノ酸配列変種、及び/又はBAK502G9 VL(配列番号16)を提供する。
【0144】
本発明のさらなる態様は、IL-13抗原に特異的な特異的結合メンバーを調製する方法であって、当該方法が以下の:
(a)置換されるCDR3を含むか又はCDR3をコードする領域が欠如したVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供し;
(b)該レパートリーを、VH CDR3について実質的に本明細書に記載されるアミノ酸配列をコードするドナー核酸と組合せて、該ドナー核酸をレパートリー中のCDR3領域中に挿入し、そしてVHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供し;
(c)該生成物レパートリーの核酸を発現させ;
(d)IL-13に特異的な特異的結合メンバーを選択し;そして
(e)該特異的結合メンバー又はこれをコードする核酸を回収する、
ことを含む方法を提供する。
【0145】
再度、類似の方法であって、当該方法において本発明のVL CDR3が、置換されるCDR3を含むか又はCDR3をコードする領域を欠如するVLドメインをコードする核酸のレパートリーと組合わされる、前記方法が使用される。
【0146】
同様に、1つ以上の、又はすべての3つのCDRがVH又はVLドメインのレパートリー中に移植され、これは次に、特異的結合メンバー又はIL-13に特異的な特異的結合メンバーについてスクリーニングされる。
【0147】
好適な実施態様において1つ以上のBAK502G9 HCDR1(配列番号7)、HCDR2(配列番号8)、及びHCDR3(配列番号9)、又はBAK502G9のHCDRセットが使用され、及び/又は1つ以上のBAK502G9 LCDR1(配列番号10)、LCDR2(配列番号11)、又はBAK502G9のLCDRセットが使用される。
【0148】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的な部分は、その介在フレームワーク領域とともに少なくとも3つのCDR領域を含む。好ましくはこの部分はまた、第1及び第4のフレームワーク領域のいずれか又は両方の少なくとも約50%を含み、この50%は第1のフレームワーク領域のC末端の50%と第4のフレームワーク領域のN末端の50%である。可変ドメインの実質的な部分のN末端又はC末端の追加の残基は、通常は天然に存在する可変ドメイン領域に結合していないものでもよい。例えば組換えDNA技術により作成された本発明の特異的結合メンバーの構築は、クローニング又は他の操作工程を容易にするために導入されたリンカーによりコードされるN末端又はC末端残基の導入をもたらしうる。他の操作工程は、本発明の種々のドメインをさらなるタンパク質配列(例えば免疫グロブリン重鎖、(例えばダイアボディの産生における)他の可変ドメイン、又は本明細書中のいたるところでより詳細に記載されるタンパク質標識)に繋げるために、リンカーの導入を含む。
【0149】
本発明の好適な態様において一対のVHとVLドメインを含む特異的結合メンバーが好ましいが、VH又はVLドメイン配列のいずれかに基づく単一の結合ドメインは本発明の他の態様を構成する。単一の免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインが特異的に標的抗原に結合できることは公知である。
【0150】
いずれかの単一の特異的結合ドメインの場合、これらのドメインは、IL-13に結合できる2ドメイン特異的結合メンバーを形成することができる相補的なドメインをスクリーニングするのに使用される。
【0151】
これは、WO92/01047に開示されているように、いわゆる階層的な2重コンビナトリアルアプローチを使用するファージディスプレイスクリーニング法により行われる。ここで、鎖(L又はH)をコードするクローンの完全なライブラリーを感染させるためにH又はL鎖クローンを含む個々のコロニーが使用され、そして得られた2鎖特異的結合メンバーが、文献に記載のようなファージディスプレイ法に従って選択される。この方法はまた、Marksら(既出)にも開示されている。
【0152】
本発明の特異的結合メンバーはさらに、抗体定常領域又はその一部を含む。例えばVLドメインがそのC末端で、ヒトCκ又はCλ鎖、好ましくはCλ鎖、を含む抗体軽鎖定常ドメインに結合される。同様にVHドメインに基づく特異的結合メンバーはそのC末端で、任意の抗体イソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、及びIgM、及び任意のイソタイプサブクラス、特にIgG1とIgG4)から得られる免疫グロブリン重鎖のすべて又は一部(例えばCH1ドメイン)に結合される。IgG4は補体に結合せず、エフェクター機能を生成しないため好ましい。これらの性質を有し可変領域を安定化させる合成又は他の定常領域変種はまた、本発明の実施態様での使用に好適である。
【0153】
本発明の特異的結合メンバーは、検出可能な又は機能的標識物で標識してもよい。検出可能な標識物には、放射線標識(例えば131I又は99Tc)があり、これらは、抗体イメージングの分野で公知の一般的化学を使用して、本発明の抗体に結合される。標識はまた、西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素標識を含む。標識はさらにビオチンなどの化学成分を含み、これは特異的な同種の検出できる成分(例えば標識されたアビジン)への結合を介して検出される。
【0154】
本発明の特異的結合メンバーは、ヒト又は動物対象(好ましくはヒト)の診断又は治療法で使用できるように設計される。
【0155】
従って本発明のさらなる態様は、提供された特異的結合メンバーの投与を含む治療法、かかる特異的結合メンバーを含む医薬組成物、及び投与される医薬の製造(例えば特異的結合メンバーと医薬として許容される賦形剤と配合することを含む医薬又は医薬組成物の製造方法)におけるかかる特異的結合メンバーの使用を提供する。
【0156】
治療効果を与えるために抗IL-13抗体が使用される臨床的適応症には、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、硬皮症、及びホジキンリンパ腫がある。すでに説明したように、抗IL-13治療はこれらのすべての疾患に有効である。
【0157】
抗IL-13治療は、経口、注射(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、又は筋肉内)、吸入、又は局所的(例えば、眼内、鼻内、直腸内、創傷内、皮膚上)に投与される。投与経路は、治療の物理化学的特性、疾患についての特殊な考慮事項、又は効力を最適化し副作用を最小にするための要件により決定することができる。
【0158】
抗IL-13治療は、診療の場での使用に限定されない。すなわち、針を使用しない器具を使用する皮下注射も好適である。
【0159】
併用療法を使用して、特に抗IL-13特異的結合メンバーを1つ以上の他の薬剤と組合せて、大きな相乗作用を得ることができる。本発明の特異的結合メンバーは、短期又は長期作用性ベータアゴニスト、コルチコステロイド、クロモグリク酸、ロイコトリエン(受容体)アンタゴニスト、メチルキサンチンとその誘導体、IL-4インヒビター、ムスカリン受容体アンタゴニスト、IgEインヒビター、ヒスタミンインヒビター、IL-5インヒビター、エオタキシン/CCR3インヒビター、PDE4インヒビター、TGF-ベータアンタゴニスト、インターフェロン-ガンマ、ペルフェニドン(perfenidone)、化学療法剤、及び免疫治療剤と組合せて提供してもよい。
【0160】
1つ以上の短期又は長期作用性ベータアゴニスト、コルチコステロイド、クロモグリク酸、ロイコトリエン(受容体)アンタゴニスト、キサンチン、IgEインヒビター、IL-4インヒビター、IL-5インヒビター、エオタキシン/CCR3インヒビター、PDE4インヒビターとの併用療法は、喘息の治療に使用される。本発明の抗体はまた、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、TGF-βとその下流のシグナル伝達経路のアンタゴニストと組合せて、繊維症の治療に使用することもできる。これらの抗体とPDE4インヒビター、キサンチンとその誘導体、ムスカリン受容体アンタゴニスト、短い及び長いベータアンタゴニストとの併用療法は、慢性閉塞性肺疾患を治療するのに有用である。同様の組合せが、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、硬皮症、及びホジキンリンパ腫の治療のための抗IL-13の使用に適用される。
【0161】
本発明において提供された組成物は、個人に投与される。投与は好ましくは「治療有効量」で行われ、これは患者に利益を示すのに充分な量である。かかる利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善である。投与される実際の量、投与の速度と経時変化は、治療される疾患の性質と重症度に依存する。治療処方(例えば投与量の決定など)は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内である。抗体の適切な用量は当該分野で公知である;Ledermann J.A.ら、(1991) Int. J. Cancer 47:659-664; Bagshawe K.D.ら (1991) Antibody, Immunoconjugates and Radipharmaceuticals 4:915-922を参照されたい。
【0162】
正確な用量は、例えば抗体が診断用であるか又は治療用であるか、治療される部位の大きさと位置、抗体の正確な性質(例えば、全抗体、断片又はダイアボディ)、及び検出可能な標識又は抗体に結合される他の分子の性質などの多くの因子に依存する。典型的な抗体用量は、全身性応用には100μg〜1gの範囲であり、局所的適用には1μg〜1mgである。典型的には抗体は全抗体であり、好ましくはIgG4アイソタイプである。これは、成人患者の単回治療の投与量であり、子供と幼児は比例して調整され、また抗体フォーマットについては分子量に比例して調整される。治療は医師の判断により、毎日、週に2回、週に1回、又は月に1回の間隔で繰り返される。本発明の好適な実施態様において、治療は定期的であり、投与間の期間は約2週間又はそれ以上、好ましくは約3週間又はそれ以上、さらに好ましくは約4週間又はそれ以上、又は月に約1回である。
【0163】
本発明の特異的結合メンバーは、通常医薬組成物の形で投与され、これは特異的結合メンバー以外に少なくとも1つの成分を含む。
【0164】
すなわち本発明の及び本発明で使用される医薬組成物は、活性成分以外に、医薬として許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、又は当業者に公知の他の物質を含む。かかる物質は非毒性であるべきであり、活性成分の効力を妨害してはならない。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存し、これは経口又は注射(例えば静脈内注射)でもよい。
【0165】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末又は液体形態、又は液剤型でもよい。錠剤は、固体担体、例えばゼラチン又はアジュバントを含む。液体の医薬組成物は一般に、液体担体、例えば水、石油、動物若しくは植物油、ミネラル油又は合成油を含む。生理食塩水、デキストロース、又は他の糖溶液又はグリコール(例えば、エチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、又はポリエチレン・グリコール)を含有してもよい。
【0166】
静脈内注射又は患部への注射用に、活性成分は、発熱性物質を含まず、適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形である。当業者は、例えば注射用塩化ナトリウム、リンゲル液、乳酸加リンゲル液のような等張溶媒を使用して、適当な溶液を調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/又は他の添加剤が含まれる。
【0167】
組成物は、単独で又は他の治療とともに、治療される症状に応じて同時に若しくは逐次的に投与される。
【0168】
本発明の特異的結合メンバーは、分子の物理化学的性質やデリバリー経路に応じて液体又は固体型で調製される。製剤は、賦形剤、又は賦形剤の組合せ、例えば:糖、アミノ酸、及び界面活性剤を含有してもよい。液体製剤は、広範囲の抗体濃度とpHを含む。固体製剤は、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、又は超臨界液技術による乾燥により製造してもよい。抗IL-13の製剤は、目的のデリバリー経路に依存する:例えば肺デリバリー用の製剤は、吸入により肺深部までの浸透を確実にする物性を有する粒子からなる;局所的製剤は、薬剤が作用部位に留まる時間を延長する粘度改変物質を含む。
【0169】
本発明は、本明細書に記載のようにIL-13への特異的結合メンバーの結合を引き起こすか又はこれを可能にする方法を提供する。上記したようにかかる結合は、インビボで例えば特異的結合メンバー若しくは特異的結合メンバーをコードする核酸の投与後に起きるか、又はインビトロで例えばELISA、ウェスタンブロッティング、免疫細胞化学、免疫沈降、親和性クロマトグラフィー、又は細胞ベースのアッセイ(例えばTF-1アッセイ)で起きる。
【0170】
IL-13への特異的結合メンバーの結合量は測定できる。定量は試験試料中の抗原の量に関連し、これは診断的に関心が高い。
【0171】
本発明の任意の態様又は実施態様の特異的結合メンバー又は抗体分子を含むキットはまた、本発明の態様として提供される。本発明のキットにおいて特異的結合メンバー又は抗体分子は標識されて、試料中での反応性の測定(後述)を可能にする。キットの成分は一般に無菌であり、密封バイアル又は他の容器に入れられる。キットは、診断分析又は抗体分子が有用な他の方法で使用される。キットは、方法、例えば本発明の方法中の成分の使用についての説明書を含有してもよい。かかる方法を補助するか又は実施することを可能にする付属の材料を、本発明のキット内に含めてもよい。
【0172】
試料中の抗体の反応性は、任意の適切な手段により測定される。放射免疫定量法(RIA)は1つの可能性である。放射能標識した抗原が非標識抗原(試験試料)と混合され、抗体に結合させられる。結合抗原は非結合抗原から物理的に分離され、抗体に結合した放射活性抗原の量が測定される。試験試料中により多くの抗原が存在するなら、抗原に結合する放射活性抗原は少なくなる。レポーター分子に結合した抗原又は類似体を使用して、非放射活性抗原による競合的結合アッセイを使用してもよい。レポーター分子は、スペクトル的に分離された吸収又は発光特性を有する蛍光色素、蛍光体又はレーザー色素でもよい。適当な蛍光色素には、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、及びテキサスレッドがある。適当な発色性色素にはジアミノベンジジンがある。
【0173】
他のレポーターには、巨大分子コロイド粒子又は粒状物質(例えば着色しているか、磁性又は常磁性のラテックスビーズ)、及び検出できるシグナルを視覚的に観察するか、電子的に検出するか、又は他の方法で記録することを直接又は間接に可能にする生物学的若しくは化学的に活性な物質がある。分子は、例えば発色するか若しくは色を変化させるか、又は電気的性質の変化を引き起こす反応を触媒する酵素でもよい。これらは、エネルギー状態の電子的遷移により特徴的なスペクトル吸収又は発光が起きるように、分子が励起可能なものでもよい。これらには、バイオセンサーとともに使用される化学物質がある。ビオチン/アビジン又はビオチン/ストレプトアビジン及びアルカリホスファターゼ検出系を使用してもよい。
【0174】
個々の抗体-レポーター結合体により生成されるシグナルを使用して、試料(正常な試料又は試験試料)中の関連する抗体結合の定量可能な絶対若しくは相対データを得てもよい。
【0175】
本発明はまた、競合的アッセイにおける抗原レベルを測定するための上記の特異的結合メンバーの使用を提供し、すなわち競合的アッセイにおいて本発明により提供される特異的結合メンバーを使用して試料中の抗原レベルを測定する方法が提供される。これは、結合抗原を非結合抗原から分離する必要が無い場合でありうる。結合により物理的又は光学的変化が起きるように、レポーター分子を特異的結合メンバーに連結することは、1つの可能性である。レポーター分子は、検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを直接又は間接に生成する。レポーター分子の結合は、直接又は間接に、共有結合的(例えばペプチド結合)又は非共有結合的でもよい。ペプチド結合を介する結合は、抗体とレポーター分子をコードする遺伝子融合体の組換え発現の結果でもよい。
【0176】
本発明はまた、例えばバイオセンサー系で本発明の特異的結合メンバーを使用して、直接に抗原のレベルを測定することを提供する。
【0177】
結合を測定するモードは本発明の特徴ではなく、当業者はその好みと一般的知識に従って適当なモードを選択することができる。
【0178】
上記したように種々の態様と実施態様において本発明は、IL-13への結合について、本明細書で定義される特異的結合メンバー(例えばBAK502G9 IgG4)と競合する特異的結合メンバーを包含する。結合メンバー間の競合は、例えば特異的レポーター分子をある結合メンバーに標識し、これは非標識結合メンバーの存在下で検出することができ、同じエピトープ又は重複エピトープに結合する特異的結合メンバーの同定を可能にすることにより、インビトロで容易に測定することができる。
【0179】
競合は、例えばIL-13をプレートに固定化し、第1の標識結合メンバーを1つ以上の非標識結合メンバーとともにプレートに加えるELISAを使用して測定してもよい。標識結合メンバーと競合する非標識結合メンバーの存在は、標識結合メンバーが出すシグナルの低下により観察される。
【0180】
競合を試験するには抗原のペプチド断片が使用され、特に目的のエピトープを含むペプチドが使用される。エピトープ配列+いずれかの末端の1つ以上のアミノ酸を有するペプチドを使用してもよい。かかるペプチドは、特定の配列から「基本的になる」。本発明の特異的結合メンバーは、その抗原への結合が、与えられる配列を有するか又は含むペプチドにより阻害されるようなものである。これを試験するには、いずれかの配列+1つ以上のアミノ酸を有するペプチドを使用してもよい。
【0181】
特異的ペプチドに結合する特異的結合メンバーは、例えばペプチドとのパニングによりファージディスプレイライブラリーから単離される。
【0182】
本発明はさらに、本発明の特異的結合メンバーをコードする単離された核酸を提供する。核酸はDNA及び/又はRNAを含む。好適な態様において本発明は、上記した本発明のCDR又はCDRセット又はVHドメイン若しくはVLドメイン、又は抗体の抗原結合部位又は抗体分子、例えばscFv若しくはIgG4をコードする核酸を提供する。
【0183】
本発明はまた、上記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写若しくは発現カセットの形態の構築体を提供する。
【0184】
本発明はまた、上記の1つ以上の構築体を含む組換え宿主細胞を提供する。提供される上記のCDR又はCDRセット又はVHドメイン若しくはVLドメイン、又は抗体の抗原結合部位又は抗体分子、例えばscFv若しくはIgG4をコードする核酸自体は、コードされる生成物の産生法(この方法はこれをコードする核酸からの発現を含む)のように本発明の態様を構成する。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより便利に行われる。発現による産生後に、VH若しくはVLドメイン又は特異的結合メンバーは、任意の適当な方法を使用して単離及び/又は精製され、次に適宜使用される。
【0185】
本発明の特異的結合メンバー、VH及び/又はVLドメイン、及びコードする核酸分子とベクターは、例えばその自然の環境から単離及び/又は精製されて、実質的に純粋な又は均一な型で、又は核酸の場合は、必要な機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸又は遺伝子を含まないか又は実質的に含まずに提供される。本発明の核酸はDNA又はRNAを含み、完全に又は部分的に合成される。本明細書のヌクレオチド配列への参照は、特定の配列を有するDNA分子を包含し、特定の配列を有するRNA分子を包含する(ここで特に明記しない場合は、Tの代わりにUが使用される)。
【0186】
種々の異なる宿主細胞中でのポリペプチドのクローニングと発現のための系は公知である。適当な宿主細胞には、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母、及びバキュロウイルス系、及びトランスジェニック植物と動物がある。異種ポリペプチドの発現のために当該分野で利用できる哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス黒色腫細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胚腎細胞、ヒト胚網膜細胞、及び他の多くの細胞がある。一般的な好適な細菌宿主は大腸菌(E.coli)である。
【0187】
原核細胞(例えば大腸菌(E.coli))中の抗体及び抗体断片の発現は、当該分野で確立されている。総説については、Pluckthun, A. Bio/Technology 9:545-551 (1991)を参照されたい。培養真核細胞中の発現もまた、特異的結合メンバーの産生のための選択肢として当業者に公知である。例えばChadd HEとChamow SM (2001) 110 Current Opinion in Biotechnology 12:188-194, Andersen DCとKrummen L (2002) Current Opinion in Biotechnology 13:117, Larrick JWとThomas DW (2001) Current Opinion in Biotechnology 12:411-418を参照のこと。
【0188】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び適宜他の配列を含む適切な制御配列を含む適当なベクターを選択し構築することができる。ベクターは、プラスミド、ウイルス、例えば適切なものとしてファージ、又はファジミドでもよい。さらなる詳細については、例えば「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第3版、SambrookとRussell, 2001, コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。核酸の操作のための多くの公知の技術及びプロトコール(例えば核酸構築体の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現、並びにタンパク質の分析)は、「分子生物学の現代のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、第2版、Ausubelら編、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、1988、「分子生物学の簡単なプロトコール:分子生物学の現代のプロトコールからの方法の概要(Short Protocols in Molecular Biology: A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology)」、Ausubelら編、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、第4版、1999に詳述されている。SambrookらとAusubelら(両方)の開示内容は、本明細書中に援用される。
【0189】
すなわち本発明のさらなる態様は、本明細書に開示の核酸を含有する宿主細胞を提供する。かかる宿主細胞はインビトロでも培養細胞でもよい。かかる宿主細胞はインビボでもよい。宿主細胞のインビボの存在は、本発明の特異的結合メンバーの「イントラボディ(intrabodies)」又は細胞内抗体としての細胞内発現を可能にする。イントラボディ(intrabodies)は、遺伝子治療で使用される[112]。
【0190】
さらに別の態様は、かかる核酸を宿主細胞に導入することを含む方法を提供する。この導入は任意の利用可能な方法を使用してもよい。真核細胞については適当な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔法、リポソーム介在トランスフェクション、及びレトロウイルス若しくは他のウイルス(例えばワクシニア、又は昆虫細胞についてはバキュロウイルス)を使用する導入がある。宿主細胞、特に真核細胞への核酸の導入は、ウイルス又はプラスミドベースの系を使用する。プラスミド系はエピソームで維持されるか、又は宿主細胞中に若しくは人工的染色体に取り込まれる[110,111]。取り込みは、単一又は複数の遺伝子座での1つ以上のコピーのランダム又は標的化組み込みである。細菌細胞については適当な技術には、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔法、及びバクテリオファージを使用するトランスフェクションがある。
【0191】
導入の後に、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を含有することにより、核酸からの発現を引き起こすか又はこれを可能にする。
【0192】
ある実施態様において本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば染色体)中に組み込まれる。組み込みは、標準的技術に従ってゲノムとの組換えを促進する配列を含めることにより促進される。
【0193】
本発明はまた、上記の特異的結合メンバー又はポリペプチドを発現するために、発現系で上記の構築体を使用することを含む方法を提供する。
本発明の態様及び実施態様を、以下の実験を参照して例示する。
【実施例】
【0194】
実施例1
抗IL-13 scFvの単離
scFv抗体レパートリー
20人のドナーの脾臓リンパ球から得られ、ファジミドベクターにクローン化した大きな1本鎖Fv(scFv)ヒト抗体ライブラリーを、選択に使用した[66]。
【0195】
scFvの選択
基本的に[67]に記載されるとおりに、組換え細菌由来のヒト又はネズミIL-13(Peprotech)についての一連の繰り返し選択サイクルによりファージディスプレイライブラリーからIL-13を認識するscFvを単離した。簡単に説明すると、ライブラリーを用いてインキュベーション後、常磁性ビーズにあらかじめ結合させた固定化抗原と結合ファージとを磁性分離により回収し、非結合ファージを洗い流した。次に結合ファージをVaughanら[67]が記載したように回収し、選択プロセスを繰り返した。異なる固体表面及び捕捉法を、異なるラウンドの選択で使用して非特異結合を低下させた。抗原をビーズ(ダイナビーズ(Dynabeads)M-270カルボン酸)に共有結合させたか、又は製造業者(ダイナル(Dynal))のプロトコールに従ってビオチン化により修飾し、その後ストレプトアビジン被覆ビーズ(ダイナビーズ(Dynabeads)M-280)により2次捕捉した。Vaughanら[67]とOsbournら[70]が記載したように、選択ラウンドの出力からのクローンの代表的な一部をDNA配列決定した。IL-13依存性細胞増殖アッセイにおいて、IL-13を精製scFv調製物として中和する能力について、固有クローンを評価した。
【0196】
リボソームディスプレイライブラリーを作成し、基本的にHanesら[113]に記載されるとおりに、組換え細菌由来のヒト又はネズミIL-13(Peprotech)を特異的に認識するscFvについてスクリーニングした。まず初期選択からのBAK278D6リードクローンをリボソームディスプレイフォーマットに変換し、この鋳型をグリコシル化ライブラリー作成のための使用した。DNAレベルでは、mRNAへの効率的な転写のために5’末端にT7プロモーターを付加した。mRNAレベルでは、構築体は原核細胞リボゾーム結合部位(シャイン‐ダルガルノ配列)を含有した。1本鎖の3’末端で停止コドンを除去し、gIIIの部分(遺伝子III)を、スペーサーとして作用するように付加した[113]。
【0197】
抗体相補性決定領域(CDR)の突然変異誘発によりリボソームディスプレイライブラリーを作成し、ここでPCR反応は非プルーフリーディングTaqポリメラーゼを用いて行った。親和性ベースの選択を行い、ライブラリーとインキュベーション後、ビオチン化ヒトIL-13をストレプトアビジン被覆常磁性ビーズ(ダイナル(Dynal)M280)により捕捉し、結合した3成分複合体(mRNA-リボゾーム-scFv-IL-13)を磁性分離により回収し、結合しない複合体を洗い流した。結合性scFvをコードするmRNAを、Hanesら[113]が記載したようにRT-PCRにより回収し、選択する間に存在するビオチン化ヒトIL-13の低い濃度(5ラウンドで100nM〜100pM)を用いて選択プロセスを繰り返した。
【0198】
誤りが出やすいPCRはまた、ライブラリーサイズをさらに拡大するために使用した。選択操作において、3種の間違い頻度 (製造業者(Clontech)のプロトコールに記載のように、標準的PCR反応後に1,000bp毎に2.0、3.5、及び7.2の変異) を使用した。最初の誤りを起こしやすいPCR反応を、100nMで開始される第1ラウンドの選択の前に行った。誤りを起こしやすいPCRの以後のラウンドは、10nMのビオチン化ヒトIL-13で第3ラウンドの選択前に行った。上記したように、選択ラウンドの出力からのクローンの代表的な一部を、Vaughanら[67]とOsbournら[70]が記載したようにDNA配列決定にかけた。IL-13依存性細胞増殖アッセイにおいて、IL-13を精製scFv調製物として中和する能力について、固有クローンを評価した。
【0199】
実施例2
IL-13依存性TF-1細胞増殖アッセイにおける抗IL-13 scFvの中和力価
ヒト及びネズミIL-13生物活性に対する精製scFv調製物の中和力価を、TF-1細胞増殖アッセイを使用して評価した。精製scFv調製物は、WO01/66754の実施例3に記載のように調製した。精製scFv調製物のタンパク質濃度は、BCA法(ピアス(Pierce))を使用して測定した。TF-1は、赤白血病患者から樹立したヒト前骨髄性細胞株である[68]。TF-1細胞株は生存と増殖について因子依存性である。この点でTF-1細胞はヒト又はネズミIL-13に応答し[69]、ヒトGM-CSF(4ng/ml、アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))を含有する培地中で維持された。IL-13依存性増殖の阻害は、分裂細胞の新たに合成されたDNA中へのトリチウム化チミジンの取り込みの低下を測定することにより決定された。
【0200】
TF-1細胞アッセイプロトコール
TF-1細胞を、アールアンドディーシステムズ(R & D Systems)から得て、提供されたプロトコールに従って維持した。アッセイ培地は、5%胎児牛血清(ジェイアールエィチ(JRH))と1%ピルビン酸ナトリウム(シグマ(Sigma))とを含有するグルタマックス(GLUTAMAX)I(インビトロゲン(Invitrogen))を有するRPMI1640を含んだ。各アッセイの前に、300×gで5分間遠心分離してペレット化し、培地を吸引して除去し、細胞をアッセイ培地に再懸濁した。この操作を、1mlのアッセイ培地中105細胞の最終濃度で再懸濁された細胞を用いて2回繰り返した。抗体の試験溶液(三重測定)をアッセイ培地で所望の濃度まで希釈した。IL-13に無関係の抗体を陰性対照として使用した。組換細菌由来のヒト又はネズミIL-13(Peprotech)を、96ウェルアッセイプレート中で100μl/ウェルの総量中の適切な試験抗体と混合した時50ng/mlの最終濃度になるように加えた。このアッセイで使用したIL-13の濃度を、最終アッセイ濃度で約80%の最大増殖応答を与えた用量として選択した。すべての試料を室温で30分間インキュベートした。次に100μlの再懸濁細胞を各アッセイ点に加えて、総アッセイ容量200μl/ウェルを得た。アッセイプレートを37℃で5% CO2下で72時間インキュベートした。次に25μlのトリチウム化チミジン(10μCi/ml、NEN)を各アッセイ点に加え、アッセイプレートをインキュベーター中にさらに4時間戻した。セルハーベスターを使用して細胞をグラスファイバーフィルタープレート(パーキンエルマー(Perkin Elmer))上で採取した。パッカードトップカウント(Packard TopCount)マイクロタイタープレート液体シンチレーションカウンターを使用して、チミジン取り込みを測定した。グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0201】
結果
ヒトとネズミ抗原との交互の選択サイクルにもかかわらず、交差反応性の中和抗体は得られなかった。選択により、2つの明確な抗ヒト及び1つの抗ネズミIL-13中和scFvが得られた。BAK278D6(VH 配列番号13;VL 配列番号14)とBAK167A11(VH 配列番号23;VL 配列番号24)はヒトIL-13を認識し、BAK209B11(VH 配列番号25;VL 配列番号26)はネズミIL-13を認識した。scFvとしてのBAK278D6(図2)とBAK167A11(図1)は、それぞれ44nMと111nMのIC50で、25ng/mlヒトIL-13を中和した。scFvとしてのBAK209B11(図3)は、185nMのIC50で25ng/mlネズミIL-13を中和した。
実施例3
IL-13依存性TF-1細胞増殖アッセイにおける親クローンの重鎖CDR3の標的化最適化からのリードクローンの中和力価
【0202】
Osbournら[70]は、重鎖CDR3中の残基の標的化突然変異誘発が、抗体の親和性を顕著に改善することを証明した。scFvレパートリーについて選択は実施例1に記載のように行い、ここでBAK278D6(配列番号6)とBAK167A11(配列番号57)の重鎖CDR3内の残基は突然変異誘発によりランダム化してあった。選択出力からの固有クローンを、実施例2に記載のようにDNA配列決定とTF-1細胞増殖アッセイにおけるscFvとして測定した中和力価により同定した。
【0203】
結果
両方の系統で力価の大きな上昇が達成された。BAK167A11系統からの最も高力価のクローンはBAK615E3、BAK612B5、及びBAK582F7であり、これらはTF-1細胞増殖アッセイにおいて25ng/mlのヒトIL-13に対して、scFvとしてそれぞれ3nM(図1)、6.6nM、6.65nMのIC50を有した。BAK278D6系統では、最も高力価のクローンはBAK502G9であり、これはTF-1細胞増殖アッセイにおいてscFvとして25ng/mlのヒトIL-13に対して8nMのIC50を有した(図2)。
【0204】
実施例4
TF-1因子依存性細胞増殖アッセイにおける喘息と関連する非ヒト霊長類IL-13とIL-13変種に対するBAK167A11とBAK278D6系統の中和力価
【0205】
BAK167A11とBAK278D6ヒトIL-13中和系統のいずれも、ネズミ交差反応性はなかった。従って本発明者は、さらなる最適化と臨床的進展のために選択した系統について以下の基準を決定した:好ましくは非ヒト霊長類IL-13と交差反応性であること、IL-13の変種を認識すること(当該変種では、アミノ酸位置130のアルギニンがグルタミンにより置換されている(Q130R))。この変種は、遺伝的に喘息と他のアレルギー性疾患に関連している[37,38,41,71]。交差反応性は、表面プラズモン共鳴(ビアコア(BIAcore))分析により、精製scFv調製物が非ヒト霊長類IL-13とIL-13変種とに結合する能力により測定した。機能活性は、TF-1細胞増殖アッセイを使用して測定した。
【0206】
野生型、変種、及び非ヒト霊長類IL-13の産生
野生型ヒトIL-13のcDNAをインビトロゲン(Invitrogen)から得て、部位特異的突然変異誘発(ストラタジーン(Stratagene)クイックチェンジ(Quikchange)(商標)キット)により修飾して、変種IL-13をコードするcDNAを得た。アカゲザル(rhesus monkey)とカニクイザル(cynomolgus monkey)IL-13のコード配列を、ヒトIL-13配列に基づく縮重プライマーを使用してゲノムDNA鋳型のPCRにより得た。非ヒト霊長類(アカゲザルとカニクイザル)配列は互いに同じであるが、ヒトIL-13とは7つのアミノ酸が異なった(図19)。次に、バキュロウイルス発現系(インビトロゲン(Invitrogen))を使用して、組換え野生型、変種、及び非ヒト霊長類IL-13を発現させた。発現構築体は、発現されたタンパク質にカルボキシル末端親和性タグを付与し、これは昆虫細胞調整培地からほぼ均一になるまで精製することを可能にした。
【0207】
ビアコアを使用する定性的結合アッセイ
非ヒト霊長類、変種及び野生型IL-13に対する精製scFv調製物の結合親和性を、Karlssonら[72]が記載したようにビアコア(BIAcore)2000バイオセンサー(ビアコアエービー(BIAcore AB))を使用する表面プラズモン共鳴測定により測定した。簡単に説明すると、約200Ruの表面密度で、アミンカップリングキット(ビアコア(BIAcore))を使用してIL-13をCM5センサーチップに結合させ、そして試験scFvの3の濃度(約350nM、175nM、及び88nM)を含むHHBS-EP緩衝液をセンサーチプ表面を通過させた。得られたセンサーグラムをビーアイエー(BIA)評価3.1ソフトウェアを使用して評価して、相対結合データを得た。
【0208】
TF-1アッセイプロトコール
このアッセイは以下の修飾を加えて基本的に実施例2に記載されたように行った:非ヒト霊長類IL-13、ヒト変種IL-13(Q130R)、及び野生型ヒトIL-13を、それぞれ50ng/ml、25ng/ml、及び25ng/mlの濃度で使用した。
【0209】
結果
ビアコア(BIAcore)結合アッセイデータは、BAK167A11系統ではなくBAK278D6が、さらなる治療薬開発に必要な交差反応性プロフィールを有することを示唆した(表2)。この知見は、BAK278D6(図4)とBAK502G9(図6)がTF-1細胞増殖アッセイでほぼ同等の力価でヒトIL-13、ヒトIL-13(Q130R)変種、及び非ヒト霊長類IL-13を中和できることを示すバイオアッセイデータにより支持された。これに対して、BAK615E3(VH 配列番号33;VL 配列番号34)は、TF-1細胞増殖アッセイにおいて、その親BAK167A11(VH 配列番号23;VL 配列番号24)に対するヒトIL-13に対して有意に高い力価を有した(図1)が、いずれのクローンもビアコア(BIAcore)結合アッセイで非ヒト霊長類又は変種IL-13に結合しなかった。
【0210】
BAK278D6とBAK502G9のフレームワーク領域の生殖細胞系列化(Germlining)
得られたBAK278D6 VH(配列番号13)とVL(配列番号14)のアミノ酸配列を、VBASEデータ[73]中の既知のヒト生殖細胞系列の配列と配列比較し、配列類似性により最も近い生殖細胞系列を同定した。BAK278D6のVHドメイン(配列番号14)及びその誘導体に最も近い生殖細胞系列は、VH1ファミリーメンバーであるDP14として同定された。BAK278D6 VHは、DP14生殖細胞系列に対してフレームワーク領域内で、9つの変化を有する。BAK278D6のVLの最も近い生殖細胞系列は、Vλ3 3hとして同定された。BAK278D6 VLドメイン(配列番号14)は、生殖細胞系列に対してフレームワーク領域内で5つの変化を有する。BAK278D6とその誘導体のフレームワーク領域を部位特異的突然変異誘発(ストラタジーン(Stratagene)クイックチェンジ(Quikchange)キット)により生殖細胞系列に戻して、未変性のヒト抗体と完全に一致させた。
実施例5
ヒトIL-13依存性TF-1細胞増殖アッセイにおけるBAK502G9の重鎖CDR1と重鎖CDR2配列の標的化最適化からのリードクローンの中和力価
【0211】
BAK502G9配列を使用して鋳型として生殖細胞系列化フレームワーク領域を用いて、第2相の最適化を行った。選択は基本的に実施例1に記載のように行い、ここでBAK502G9の重鎖CDR1又は重鎖CDR2内の残基は突然変異誘発によりランダム化してあった。選択出力からの固有クローンを、実施例2に記載のようにDNA配列決定とTF-1細胞増殖アッセイにおいて精製scFv調製物として測定した中和力価により同定した。Persicら(1997 Gene 187:9-18)が記載した方法を若干改変して、全ヒトIgG4抗体としての再発現を可能にするために、最も高力価のscFvクローンにベクターを構築した。ベクター中にoriP断片を含めて、HEK-EBNA 293細胞との使用を容易にし、エピソーム複製を可能にした。VH可変ドメインを、発現ベクターpEU8.1(+)の分泌リーダー配列とヒトガンマ4定常ドメインとの間のポリリンカー中にクローニングした。VL可変ドメインを、発現ベクターpEU4.1(-)の分泌リーダー配列とヒトラムダ定常ドメインとの間のポリリンカー中にクローン化した。
【0212】
プロテインA親和性クロマトグラフィー(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia))により、重鎖と軽鎖とを発現する構築体を用いてコトランスフェクトしたEBNA293細胞からの調整培地から、全抗体を精製した。精製した抗体分画を無菌ろ過し、4℃でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に保存し、その後評価した。タンパク質濃度は、BCA法(ピアス(Pierce))を使用して280nmの吸光度を測定することにより測定した。実施例2に記載のTF-1増殖アッセイにおいて、再フォーマット化ヒトIgG4全抗体を市販の抗ヒトIL-13抗体と比較した。
【0213】
結果
図5に示すように、市販の抗体B-B13(マウスIgG1-ユーロクローン5(Euroclone5))は、ヒトIL-13に対して市販のJES10-5A2(ラットIgG1-バイオソース(Biosource))より有意に高力価であることが示された(それぞれIC50は1021pMと471pMである)。BAK502G9由来(従って「BAK502G9系統」)の8つのクローン、すなわちBAK1111D10、BAK1166G02、BAK1167F02、BAK1167F04、BAK1183H4、BAK1184C8、BAK1185E1、BAK1185F8(ここで、重鎖CDR1又はCDR2が標的されている)は、scFvとして市販の抗体に対して改善された力価を示した。これらの改善は、全抗体ヒトIgG4に変換された際に維持された。これらのVH及びVLドメインは、それぞれ及びこれらの請求項に係る物の各ペアにおいて、本発明の態様又は実施態様を表し、それは、これらの1以上を含むIL-13に対する特異的結合メンバー、BAK502G9系統クローンからの1つ以上のCDRを含む特異的結合メンバー、好ましくはBAK502G9系統のHCDRセットを含むVHドメイン、及び/又はBAK502G9系統のLCDRセットを含むVLドメインと同様である。これらは、本明細書に開示のように本発明の任意のかつすべての態様で使用されうる。全抗体(IgG4)としてのBAK502G9の誘導体は、244pM〜283pMの範囲のIC50を有した。全抗体IgG4としてのBAK502G9は、384pMのIC50を有した。要約すると、BAK502G9の重鎖CDR1(配列番号7)又はCDR2(配列番号8)を標的化することにより、力価の大きな改善が得られるであろう。ANOVA後にダネット(Dunnett’s)後検定解析(インスタット(InStat)ソフトウェア)により、B-B13に対する統計的比較を行った。
【0214】
さらなる特徴解析
BAK278D6系統由来の選択された抗ヒト抗体をさらに特徴解析して、その特異性を測定した。これらには、BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)とその誘導体であるBAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)及びBAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)があり、これらは、BAK502G9のそれぞれ重鎖CDR1と重鎖CDR2に対する修飾を有するクローンの代表例である。
【0215】
実施例6
TF-1因子依存性細胞増殖アッセイにおける喘息に関連する非ヒト霊長類IL-13とIL-13変種に対するBAK502G9の重鎖CDR1と重鎖CDR2の標的化最適化からのリードクローンの中和力価
【0216】
抗ヒトIL-13抗体の交差反応性を、実施例4に記載のように非ヒト霊長類IL-13及びIL-13変種介在TF-1細胞増殖を阻害する能力により測定した。
【0217】
結果
最適化した抗ヒトIL-13抗体BAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)とBAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)は、その親BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)の特異性を維持した(図6)。野生型IL-13に対する力価の上昇は、実質的に同等の力価で非ヒト霊長類IL-13及びIL-13変種を中和する能力に反映された。ヒト、ヒト変種、及び非ヒト霊長類IL-13に対するBAK502G9のIC50は、それぞれ1.4nM、1.9nM、及び2.0nMであった。ヒト、ヒト変種、及び非ヒト霊長類IL-13に対するBAK1167F2のIC50は、それぞれ1.0nM、1.1nM、及び1.3nMであった。ヒト、ヒト変種、及び非ヒト霊長類IL-13に対するBAK1183H4のIC50は、それぞれ0.9nM、1.0nM、及び1.6nMであった。これらのクローンは治療的用途に適していた。
実施例7
HDLM-2細胞増殖アッセイにおける未変性のヒトIL-13に対するリード抗ヒトIL-13抗体の中和力価
【0218】
ヒトIL-13配列は4つのN-グリコシル化部位候補を有する。本発明者は、細菌又はバキュロウイルス発現系で発現される組換えIL-13を中和するBAK278D6とその誘導体の能力を証明した。哺乳動物系で知られている多くのプロセシングイベントは昆虫でも起きる証拠があるが、タンパク質グリコシル化、特にN-グリコシル化において大きな差がある[74]。
【0219】
本発明者は、BAK278D6誘導体がヒト細胞から放出された未変性のIL-13を中和する能力を調べた。
【0220】
Drexlerら[75]は、HDLM-2細胞をホジキン病患者から単離した。Skinniderら[76]は、HDLM-2細胞増殖が一部はIL-13の自己分泌及びパラ分泌性放出に依存性であることを証明した。リード抗ヒトIL-13抗体を、未変性の(又は天然に存在する)IL-13の放出により仲介されるHDLM-2細胞増殖を阻害する能力について評価した。
【0221】
HDLM-2細胞アッセイプロトコール
HDLM-2細胞をドイツ微生物と細胞培養物保管施設(Deutsche Sammlung Von Mikroorganismen und Zellkulturen)(DSMZ)から得て、提供されたプロトコールに従って維持した。アッセイ培地は、20%胎児牛血清を含有するグルタマックス(Glutamax)I(インビトロゲン)を有するRPMI1640で構成された。各アッセイの前に、細胞を300×gで5分間遠心分離してペレット化し、培地を吸引して除去し、細胞を新鮮な培地に再懸濁した。この操作を3回繰り返し、細胞を最終的に1mlのアッセイ培地中2×105細胞の最終濃度で再懸濁した。50μlの再懸濁細胞を96ウェルアッセイプレートの各アッセイ点に加えた。抗体の試験溶液(三重測定)をアッセイ培地で所望の濃度まで希釈した。IL-13に反応しない無関係のアアイソタイプ抗体を陰性対照として使用した。ウェル当たり総量50μlの適切な試験抗体を細胞に加え、各アッセイ点は総アッセイ容量100μl/ウェルを与えた。アッセイプレートを37℃で5% CO2下で72時間インキュベートした。次に25μlのトリチウム化チミジン(10μCi/ml、(NEN))を各アッセイ点に加え、アッセイプレートをインキュベーター中にさらに4時間戻した。セルハーベスターを使用して細胞をグラスファイバーフィルタープレート(パーキンエルマー(Perkin Elmer))上で採取した。パッカードトップカウント(Packard TopCount)マイクロタイタープレート液体シンチレーションカウンターを使用して、チミジン取り込みを測定した。グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0222】
結果
図7に示すように、BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)、及びその誘導体であるBAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)とBAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)は、他のバイオアッセイで観察されたものと同様の相対的力価で、細胞増殖の用量依存性阻害を引き起こすことができた。ヒトIgG4としてのBAK502G9、BAK1183H4、BAK1167F2のIC50は、それぞれ4.6nM、3.5nM、及び1.1nMであった。市販の抗体JES10-5A2とB-B13のIC50は、それぞれ10.7nMと16.7nMであった。
【0223】
実施例8
疾患関連初代細胞におけるIL-13依存性応答に対するリード抗ヒトIL-13抗体の中和力価
初代細胞及び気道疾患により関連のある読み出し情報を使用して、2次バイオアッセイを行った。これらは、正常ヒト肺繊維芽細胞(NHLF)からのエオタキシン放出、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の表面上における血管細胞接着分子1(VCAM-1)の上方制御であった。両方のIL-13依存性応答が、喘息症状の特徴である好酸球のリクルート[92]に寄与した。
【0224】
NHLFアッセイプロトコール
IL-13は、肺繊維芽細胞からエオタキシン放出を引き起こすことが示されている[77][78][79]。NHLFからの因子依存性エオタキシン放出をELISAにより測定した。
【0225】
NHLFはバイオウィッタカー(Biowhittaker)から得て、提供されたプロトコールに従って維持した。アッセイ培地はFGM-2(バイオウィッタカー)であった。
【0226】
抗体の試験溶液(三重測定)をアッセイ培地で所望の濃度まで希釈した。IL-13に反応しない無関係の抗体を陰性対照として使用した。次に、組換え細菌由来のヒトIL-13(ペプロテク)を、200μlの総量中の適切な試験抗体と混合した際に10ng/mlの最終濃度になるように加えた。このアッセイで使用されるIL-13の濃度を、約80%の最大応答を与えた用量として選択した。すべての試料を室温で30分間インキュベートした。次に96ウェルアッセイプレート中でウェル当たり1×104細胞の密度であらかじめ撒いておいたNHLFにアッセイ試料を加えた。アッセイプレートを37℃で5% CO2下で16〜24時間インキュベートした。アッセイプレートを300×gで5分間遠心分離して、剥がれた細胞をペレット化した。上清中のエオタキシンレベルを、製造業者(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))により提供された試薬と方法とを使用して、ELISAを用いて測定した。グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0227】
結果
BAK278D6系統クローンは、NHLFからのIL-13依存性エオタキシン放出を阻害することができた。相対的力価は、TF-1細胞増殖アッセイで観察されたものと同様であった(図8)。BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)、BAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)、BAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)は、10ng/mlのヒトIL-13に対してIC50がそれぞれ207pM、118pM、及び69pMであった。市販の抗体であるJES10-5A2とB-B13はIC50がそれぞれ623pMと219pMであった。
【0228】
HUVECアッセイプロトコール
IL-13は、HUVECの細胞表面上のVCAM-1の発現を上昇させることが証明されている[80,81]。因子依存性VCAM-1発現を、時間分解蛍光読み出しを使用してVCAM-1受容体細胞発現のアップレギュレーションの検出により測定した。
【0229】
HUVECをバイオウィッタカーから得て、提供されたプロトコールに従って維持した。アッセイ培地はEGM-2(バイオウィッタカー)であった。抗体の試験溶液(三重測定)をアッセイ培地で所望の濃度まで希釈した。IL-13に反応しない無関係の抗体を陰性対照として使用した。次に、組換え細菌由来のヒトIL-13(ペプロテク)を、200μlの総量中の適切な試験抗体と混合した際に10ng/mlの最終濃度になるように加えた。このアッセイで使用したIL-13の濃度を、約80%の最大応答を与えた用量として選択した。すべての試料を室温で30分間インキュベートした。次に96ウェルアッセイプレート中でウェル当たり4×104細胞の密度であらかじめ撒いてあったHUVECにアッセイ試料を加えた。アッセイプレートを37℃で5% CO2下で16〜20時間インキュベートした。次にアッセイ培地を吸引して除去し、ブロッキング溶液(4%の乾燥マーベル(Marvel)(商標)ミルク粉末を含有するPBS)で置換した。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBST・Tweenで3回洗浄後、100μl(PBST/1%マーベル(商標)中に1:500希釈)のビオチン化抗VCAM-1抗体(セロテック(Serotec))を各ウェルに加えた。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルをデルフィア(Delfia)洗浄緩衝液(パーキンエルマー)で3回洗浄後、100μlのユーロピウム標識ストレプトアビジン又は抗ネズミIgG1(デルフィア(Delfia)洗浄緩衝液(パーキンエルマー(Perkin Elmer)で1:1000希釈)を各ウェルに加えた。次にアッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルをデルフィア(Delfia)洗浄緩衝液(パーキンエルマー(Perkin Elmer))で7回洗浄した。最後に100μlの増強溶液(パーキンエルマー)を各ウェルに加え、ワラック(Wallac)1420ビクター2(VICTOR2)プレートリーダー(標準的ユーロピウムプロトコール)を使用して、蛍光強度を測定した。グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0230】
結果
BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)、BAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)、BAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)の全抗体ヒトIgG4としての典型的なデータを図9に示す。相対的力価はTF-1細胞増殖アッセイで観察されたものと同様であった。BAK502G9、BAK1183H4、及びBAK1167F2のIC50は、10ng/mlのヒトIL-13に対してそれぞれ235pM、58pM、及び55pMであった。
【0231】
実施例9
IL-1βとIL-4依存性VCAM-1アップレギュレーションに対する抗IL-13抗体の中和力価
BAK278D6系統のクローンの特異性をHUVECバイオアッセイを修飾して評価した。IL-13とともにIL-4とIL-1βの両方が、HUVECの細胞表面上のVCAM-1の発現をアップレギュレートすることが証明されている[80,81]。
【0232】
HUVECアッセイプロトコール
アッセイは、以下の変更を加えて基本的に実施例5に記載したように行った。ヒトIL-13の代わりに組換えヒトIL-1βとIL-4(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))をそれぞれ0.5ng/mlと1ng/mlで使用し、最大応答の約80%を与える用量であった。
【0233】
結果
BAK278D6系統からの評価したクローンのいずれも、ヒトIL-1βとIL-4に応答してVCAM-1アップレギュレーションを中和せず、従ってIL-13に対する特異性を示さなかった(図10)。IL-4はIL-13と最も密接に関連し、アミノ酸レベルで30%の配列同一性を共有する[82]。
【0234】
実施例10
ネズミIL-13依存性ネズミB9細胞増殖アッセイにおけるヒトIgG4としてのBAK209B11の中和力価
【0235】
実施例1に記載したようにscFvとして抗ネズミIL-13中和クローンとして同定されたBAK209B11を、実施例5に記載したように全抗体ヒトIgG4として再フォーマット化し、その力価をネズミIL-13依存性B9細胞増殖アッセイにおいて評価した。B9はネズミB細胞ハイブリドーマ細胞株である[83]。B9は生存と増殖について因子依存性である。この点でB9細胞はネズミIL-13に応答し、ヒトIL-6(50pg/ml、アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))を含有する培地中で維持される。ネズミIL-13依存性増殖の阻害を、分裂細胞の新たに合成されたDNAへのトリチウム化チミジンの取り込みの低下を測定することにより測定した。
【0236】
B9細胞アッセイプロトコール
B9細胞は、動物細胞培養物のヨーロッパコレクション(European Collection of Animal Cell culture)(ECACC)から得て、提供されたプロトコールに従って維持した。アッセイは以下の変更を加えて基本的に実施例2でTF-1アッセイについて記載したように行った。アッセイ培地は、5%胎児牛血清(ハイクローン(Hyclone))と50μM 2-メルカプトエタノールとを含有するグルタマックスI(インビトロゲン)を含むRPMI1640で構成された。組換え細菌由来のネズミIL-13(ペプロテク)は、ヒトIL-13を最終濃度1ng/mlで置換した。
【0237】
結果
ヒトIgG4としてのBAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)は、B9アッセイにおいて1ng/mlのネズミIL-13を776pMのIC50で中和した(図11)。従ってBAK209B11は、疾患のネズミモデルにおいてIL-13の役割を研究するための有用な手段である。これは明らかに実施例12で証明され、これは急性肺炎症のネズミモデルでBAK209B11の効力を証明している。
【0238】
実施例11
ビアコア分析による抗IL-13抗体の親和性測定
ヒトIgG4としての、BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)、BAK1167F2(VH配列番号35;VL配列番号36)、及びBAK1183H4(VH配列番号37;VL配列番号38)のヒトIL-13に対する親和性とBAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)のネズミIL-13に対する親和性を、基本的に[72]に記載のようにビアコア2000バイオセンサー(ビアコアエービー(BIAcore AB))を使用する表面プラズモン共鳴測定により測定した。簡単に説明すると、約500Ruの表面密度で、アミン結合キット(ビアコア)を使用して、抗体をセンサーチップに結合させ、そしてHBS-EP緩衝液中にIL-13を連続希釈(50nM〜0.78nM)した液を、センサーチップ表面を通過させた。得られたセンサーグラムをBIA評価3.1ソフトウェアを使用して評価して、動力学データを得た。
【0239】
結果
BAK502G9、BAK1167F2、及びBAK1183H4のIgG4は、それぞれ178pM、136pM及び81pMのKdの高親和性でヒトIL-13に結合し、細胞に基づいたアッセイにおける相対効力に一致した。BAK209B11はネズミIL-13に5.1nMの親和性で結合した(表3)。
【0240】
実施例12
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデルにおけるBAK209B11の効力
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
BAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)、つまり抗ネズミIL−13中和ヒトIgG4抗体の効力は、急性アレルギー性肺炎において調べられた。このモデルは、基本的にRiffo-Vasquezら[84]に記載されたように行い、その終点において、気管支肺胞洗浄液(BAL)IL-13の上昇(図12)、肺とBALへの細胞浸潤(図13)、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0241】
モデルプロトコール
メスのBalb/cマウス(チャールズリバー(Charles River)、英国)を抗ネズミIL-13抗体BAK209B11(12、36、119、又は357μgの用量)又はアアイソタイプ一致対照抗体(357μg用量)で処理した。0日と7日目に各群のマウスを、0.2mlの溶媒(アジュバントとして2% Al23(レヒドラゲル(Rehydragel))を含有する生理食塩水)中の10μgのオボアルブミン(Ova)の腹腔内注射により感作した。別の対照群の非感作マウスには、等量の溶媒を投与した。14、15、及び16日目にマウスにオボアルブミンで抗原刺激した。オボアルブミンは、滅菌生理食塩水中に1%(w/v)に希釈した後、噴霧した。すべての吸入抗原刺激物は、プレキシグラス暴露チャンバー中で投与した。Ovaを、1時間の間隔で分わけた20分間の一連の3回の暴露でデビルビスウルトラネブ(deVilbiss Ultraneb)2000ネブライザー(サンライズメディカル(Sunrise Medical))を使用してエアゾル化した。
【0242】
BAK209B11又は無関係のヒトIgG4を、最初の抗原刺激の1日前と以後の各抗原刺激(全部で4回投与)の2時間前に静脈内投与した。このモデルは、17日目に最後の抗原刺激の24時間後に終了した。血液(血清)とBALを採取した。総IgEについて血清を測定した。3回一定量の生理食塩水(0.3ml、0.3mlと0.4ml)を注射することによりBALを得て試料をプールした。BAL細胞から総白血球と白血球百分率を得た。
【0243】
結果
感作マウスのオボアルブミン抗原刺激は、非感作であるが抗原刺激した動物よりも、総BAL細胞動員の有意な(p<0.05)上昇を引き起こした。当該リクルートはBAK209B11により用量依存性に阻害された;有意な(p<0.05)阻害は、36μg以上のBAK209B11で見られたが、対照抗体ではみられなかった(図13)。同様の作用が好酸球(図14)と好中球(図15)についてみられ、BAK209B11の最小用量36μgで細胞流入の有意な(p<0.05)阻害が見られた。この阻害は対照抗体では見られなかった。リンパ球は抗原刺激された際に、感作マウスでは誘導されたが、非感作マウスでは誘導されなかった。この誘導はBAK209B11により用量依存性に阻害され、36μgのBAK209B11により最大の阻害が見られた。対照抗体は何の作用もなかった(図16)。非感作動物と比較した時、感作動物では単球/マクロファージは誘導されなかったが、バックグランドレベルは36μg以上のBAK209B11により抑制され、対照抗体では抑制されなかった(図17)。血清IgEレベルは、抗原刺激後の非感作動物と比較すると感作動物では有意に上昇した(p<0.05)。この上昇は、36μgのBAK209B11を用いる処理後に低下したが、対照抗体によっては低下しなかった。
【0244】
要約するとネズミIL-13中和抗体であるBAK209B11の全身性投与は、炎症性細胞流入を阻害し、アレルギー性炎症のネズミモデルでオボアルブミンによる感作と以後の抗原刺激により引き起こされる血清IgEレベルのアップレギュレーションを阻害した(対照抗体は阻害作用はなかった)。
【0245】
実施例13〜20は予測である。
実施例13
急性肺炎症のロイド(Lloyd)ネズミモデルにおけるBAK209B11の効力
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
ネズミIL-13中和抗体であるBAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)の効果を、急性アレルギー性肺炎症の第2のネズミモデルで研究した。このモデルは、基本的にMcMillanら[85]が記載したように行い、その終点でBAL及び肺組織IL-13の上昇、肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0246】
モデルプロトコール
メスのBalb/Cマウス(チャールズリバー、英国)に種々の用量の抗ネズミIL-13抗体BAK209B11又はアイソタイプ一致対照抗体を以下のように投与した。0日と12日目に各群のマウスを、0.2mlの溶媒(アジュバント[実施例12に記載のように計算される]として2mgのAl(OH)3を含有する生理食塩水)中10μgのオボアルブミン(Ova)の腹腔内注射により感作(SN)した。別の対照群の非感作マウス(NS)には、等量の溶媒を投与した。19、20、21、22、23、及び24日目にマウスにオボアルブミンを20分間抗原刺激した。オボアルブミンは、生理食塩水中に5%(w/v)に希釈した後、噴霧した。すべての吸入抗原刺激物は、プレキシグラス暴露チャンバー中で投与した。Ovaを、デビルビスウルトラネブ2000ネブライザー(サンライズメディカル)を使用してエアゾル化した。18、19、20、21、22、23、及び24日目にマウスに種々の腹腔内用量(237μg、23.7μg、又は2.37μg;図21でH、M、及びLとして示す)の抗ネズミIL-13抗体であるBAK209B11 muIgG1又はアイソタイプ一致対照抗体(237μg)を投与した。0日と25日目にメタコリン抗原刺激を増加し、意識下体積変動(conscious plethysmography)(ブクスコ(Buxco))を追跡して、気道機能を評価した。個々のマウスについて0日と25日目にメタコリン用量応答曲線の4パラメータ非固定カーブフィッティングから、PC50(ベースラインPenHを50%上昇させるのに必要なメタコリン濃度)を推定した。
【0247】
このモデルは、25日目に最後の抗原刺激の24時間後に終了した。血液、血清、BAL、及び肺組織を採取した。
【0248】
結果
0日(処理前)と25日(抗原刺激後)に個々の動物の肺機能を評価し、PC50値(ベースラインPenHを50%上昇させるのに必要なメタコリン濃度)を計算して定量した(図21A)。個々の気道過剰応答(AHR)を、25日目のlog PC50の0日からの変化(log 25日PC50-log 0日PC50)により測定した。このlog PC50の変化量は試験の1次終点であった;PC50データは終点ANOVAの必要性のためにlog変換した。個々の変化を群内で平均して、群平均のlog PC50の変化量を得た(図21Bに示す)。
【0249】
感作マウスのオボアルブミン抗原刺激は、非感作の抗原刺激マウスと比較して有意なAHRを引き起こした(p<0.01)。BAK209B11はAHRの明確で用量依存性の低下を引き起こしたが、対照抗体は何の作用も無かった。
【0250】
実施例14
急性肺炎症のゲラード(Gerad)ネズミモデルにおけるBAK209B11の効力
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
抗ネズミIL-13中和ヒトIgG4抗体であるBAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)の効果を、急性アレルギー性肺炎症の第3のネズミモデルで調べた。このモデルは、基本的にHumblesら[86]が記載したように行い、その終点でBAL及び肺組織IL-13の上昇、肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0251】
モデルプロトコール
メスのBalb/Cマウス(チャールズリバー、英国)に種々の用量の抗ネズミIL-13抗体 BAK209B11 又はアイソタイプ一致対照抗体を投与した。0、7、及び14日目に各群のマウスを、0.2mlの溶媒(アジュバント[実施例12に記載のように計算される]として1.125mgのAl(OH)3を含有する生理食塩水)中10μgのオボアルブミン(Ova)の腹腔内注射により感作(SN)した。別の対照群の非感作マウス(NS)には、等量の溶媒を投与した。21、22、23、及び24日目にマウスにオボアルブミンを20分間抗原刺激した。オボアルブミンは、生理食塩水中に5%(w/v)に希釈した後、噴霧した。すべての吸入抗原刺激物は、プレキシグラス暴露チャンバー中で投与した。Ovaを、デビルビスウルトラネブ2000ネブライザー(サンライズメディカル)を使用してエアゾル化した。
【0252】
このモデルは、25日目に抗原刺激の24時間後に終了した。血液、血清、BAL、及び肺組織を採取した。
【0253】
実施例15
肺炎症のロイド(Lloyd)慢性モデルにおけるBAK209B11の効力
慢性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
抗ネズミIL-13中和ヒトIgG4抗体であるBAK209B11(VH配列番号25;VL配列番号26)の効果を、慢性アレルギー性肺炎症のモデルで調べた。このモデルは、基本的にTemelkovskiら[87]が記載したように行い、その終点で肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0254】
モデルプロトコール
メスのBalb/Cマウス(チャールズリバー、英国)に種々の用量の抗ネズミIL-13抗体BAK209B11又はアイソタイプ一致対照抗体を投与した。0、及び11日目に各群のマウスを、0.2mlの溶媒(アジュバント[実施例12に記載のように計算される]として2mgのAl(OH)3を含有する生理食塩水)中10μgのオボアルブミン(Ova)の腹腔内注射により感作(SN)した。別の対照群の非感作マウス(NS)には、等量の溶媒を投与した。18、19、20、21、22、23、28、30、32、35、37、39、42、44、46、49、及び51日目にマウスをオボアルブミンで20分間抗原刺激した。オボアルブミンは、生理食塩水中に5%(w/v)に希釈した後、噴霧した。全ての吸入抗原刺激物は、プレキシグラス暴露チャンバー中で投与した。Ovaを、デビルビスウルトラネブ2000ネブライザー(サンライズメディカル)を使用してエアゾル化した。
【0255】
このモデルは、52日目に抗原刺激の24時間後に終了した。血液、血清、BAL、及び肺組織を採取した。
【0256】
実施例16
ネズミ空気嚢(air pouch)モデルに投与した外来性ヒトIL-13に対する抗ヒトIL-13抗体の効力
ヒトIL-13の炎症促進作用に対する抗ヒトIL-13抗体の効果を、基本的なネズミモデルで調べた。このモデルは基本的にEdwardsら[93]が記載したように行い、その終点で空気嚢への細胞浸潤により解析した。
【0257】
モデルプロトコール
0日目に2.5mlの無菌空気を皮下注射して、メスのBalb/cマウスの背中に空気嚢を作成した。3日目にさらに2.5mlの無菌空気を用いて空気嚢を再度膨らませた。6日目に0.75% CMC中の2μgのhuIL-13を直接嚢内に注入した。24時間後マウスを屠殺し、空気嚢を1mlのヘパリン化食塩水で洗浄した。抗体処理は、(嚢内で)huIL-13を用いて又は全身で行った。
【0258】
結果
溶媒(生理食塩水中0.75%のカルボキシメチルセルロース(CMC)、腹腔内)処理マウスに対して抗原刺激後24時間では、空気嚢に注射(腹腔内)したヒトIL-13は総白血球(p<0.01)と好酸球(p<0.01)の浸潤の有意な上昇を引き起こした。
【0259】
局所投与されたBAK502G9(嚢内に200mg、20mg、又は2mg)は、0.75% CMC中2μgのhuIL-13により誘導された空気嚢への総白血球(p<0.01)と好酸球(p<0.01)浸潤とを有意にかつ用量依存性に阻害した。
【0260】
全身性に投与したBAK209B11(30mg/kg、10mg/kg、及び1mg/kg)もまた、0.75% CMC中2μgのhuIL-13により発生した空気嚢への総白血球(p<0.01)と好酸球(p<0.01)浸潤とを有意にかつ用量依存性に阻害した。
【0261】
実施例17
肺アレルギー性炎症モデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力を評価するためのヒトIL-13ノックイン/ネズミIL-13ノックアウトトランスジェニックマウスの作成
【0262】
本発明者は、遺伝子ターゲティングにより、ネズミではなくヒトIL-13を発現するマウスを作成した。マウスIL-13遺伝子は、開始コドンから停止コドンまでヒトIL-13遺伝子の関連部分で置換されている。このマウス種は、内因性IL-13プロモーターとIL-13 pAテイルが変化していないため、野生型マウスと同じ刺激に応答してマウスIL-13ではなくヒトIL-13を発現する。ヒトIL-13はマウスIL-13受容体に結合しこれを介してシグナル伝達して、マウスIL-13受容体に結合するマウスIL-13により引き起こされるシグナル伝達と同じ生理学的結果を生成できることが証明されている。例えば外因性ヒトIL-13は、ネズミ空気嚢への炎症性細胞のリクルートを引き起こした(図18)。これらのトランスジェニック動物は、樹立された疾患のネズミモデルで非ネズミ交差反応性抗ヒトIL-13抗体を評価することを可能にする。
【0263】
このマウスは、急性アレルギー性気道炎症モデル(実施例18と19に記載)や慢性アレルギー性気道炎症モデル(実施例20に記載)で使用されており、アレルギー性気道疾患における抗ヒトIL-13抗体の薬理を評価することを可能にする。
【0264】
実施例18
急性肺炎症におけるhuIL-13トランスジェニックロイドネズミモデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
抗ヒトIL-13中和ヒトIgG4抗体の効果を、実施例17で作成したトランスジェニックマウスを使用して急性アレルギー性肺炎症のネズミモデルで調べた。このモデルは、基本的にMcMillanら[85]が記載したようにかつ実施例13に記載したように行った。このモデルは、その終点でBAL及び肺組織IL-13の上昇、肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0265】
モデルプロトコール
このモデルのプロトコールは、BAK209B11の代わりに抗ヒトIL-13抗体を投与した以外は実施例13と同じである。
【0266】
実施例19
急性肺炎症におけるhuIL-13トランスジェニックゲラード(Gerad)ネズミモデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力
急性アレルギー性肺炎症のネズミモデル
抗ヒトIL-13中和ヒトIgG4抗体の効果を、実施例17で作成したトランスジェニックマウスを使用して急性アレルギー性肺炎症の別のネズミモデルで調べた。このモデルは、基本的にHumblesら[86]が記載したようにかつ実施例14に記載したように行った。このモデルは、その終点でBAL及び肺組織IL-13の上昇、肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0267】
モデルプロトコール
このモデルのプロトコールは、BAK209B11の代わりに抗ヒトIL-13抗体を投与した以外は実施例14と同じである。
【0268】
実施例20
肺炎症におけるhuIL-13トランスジェニックロイド(Lloyd)ネズミモデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力
【0269】
抗ヒトIL-13中和ヒトIgG4抗体の効果を、実施例17で作成したトランスジェニックマウスを使用して慢性アレルギー性肺炎症のモデルで調べた。このモデルは、基本的にTemelkovskiら[87]が記載したようにかつ実施例15に記載したように行った。このモデルは、その終点で肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答(AHR)により解析される。
【0270】
モデルプロトコール
このモデルのプロトコールは、BAK209B11の代わりに抗ヒトIL-13抗体を投与した以外は実施例15と同じである。
【0271】
実施例21
アスカリス・スウム(Ascaris.suum)アレルギー性カニクイザル(cynomolgus monkey)における抗ヒトIL-13抗体の薬物動態と薬力学
502G9の薬物動態と薬力学を、10mg/kgの単回静脈内大量投与後の4匹のアレルギー性であるが非抗原刺激カニクイザル(cynomolgus)霊長類(オス2匹/メス2匹)で評価した。実験は29日間行った。血清-薬剤濃度曲線の幾何平均から抗体の薬物動態パラメータを決定し、これを以下の表4に示す。
同じ試験で、ヒトIgE ELISAキット(ベチルラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、米国)を使用して血清IgE濃度も追跡した。
【0272】
結果
血清IgE濃度はBAK502G9の10mg/kgの単回静脈内大量投与後に、100%対照レベル(投与前)から、投与の4日間後と5日間後に対照値の66±10%まで有意に低下した(p<0.05)。血清IgE濃度の低下は、22日目までに対照レベルの88±8%まで回復した(図20を参照)。再度これらのデータは、各動物の血清IgE濃度を投与前レベルに対して標準化(投与前濃度を100%とする)し、次に試験した4匹の動物からの曲線を平均して得られた。
【0273】
2匹のオスのサルは比較的低い投与前総血清IgEを有した(60ng/mlと67ng/ml)。これらのIgEレベルは、BAK502G9による治療後の傾向を示唆するようには変化しなかった(図20B)。2匹のメスのサルは比較的高い投与前総血清IgEを有した(1209ng/mlと449ng/ml)。これらのIgEレベルは、BAK502G9による治療後に低下し、7日目に最大60%まで低下し、投与後28日目までにほぼ投与前レベルまで回復した(図20B)。これらのデータはBAK502G9が、IgEの比較的高い循環IgEを有する動物の血清IgE濃度を低下させることを示す。
【0274】
実施例22
皮膚アレルギーのカニクイザル(cynomolgus monkey)モデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力
抗ヒトIL-13中和ヒトIgG4抗体の効果を、急性アレルギー性肺炎症の霊長類モデルで調べた。このモデルは、ヒトIL-13とアスカリス・スウム抗原とをカニクイザル(cynomolgus monkey)に皮内注射することにより行った。24〜96時間後、皮膚生検試料と血清試料とを取った。このモデルを、その終点で皮膚への細胞浸潤により解析した。
【0275】
実施例23
肺アレルギーのカニクイザル(cynomolgus)モデルにおける抗ヒトIL-13抗体の効力
抗ヒトIL-13中和ヒトIgG4抗体の効果を、急性アレルギー性肺炎症の霊長類モデルで調べた。このモデルは、アスカリス・スウム(A. suum)アレルギー性カニクイザル(cynomolgus monkey)霊長類に霧状にしたアスカリス・スウム(A. suum)抗原を暴露し、こうしてアレルギー反応を生成させることにより行った。このアレルギーは、その終点で肺とBALへの細胞浸潤、血清IgEレベルの上昇、及び気道過剰応答により解析される。
【0276】
さらにフローサイトメトリー法を使用して薬力学をエクスビボで評価した。CD23は高親和性IgE受容体であり、ヒト末梢血の単核細胞上で発現することができる。CD23発現は、CD23を発現する細胞の数と各細胞がどれだけ多くのCD23を発現するかという点で、IL-13とIL-4の両方により誘導することができる。IL-13(IL-4ではない)介在応答は、抗ヒトIL-13抗体により阻害されうる。
【0277】
この2相試験に参加させるための動物を、霧状にした抗原(アスカリス・スウム(A. suum)抽出物)の抗原刺激後のあらかじめ樹立したAHRに基づいて選択した。第I相気道機能は、1日目と11日目に静脈内ヒスタミン抗原刺激中に評価した。PC30(ベースラインを超える肺抵抗性(RL)の30%の上昇を引き起こすのに必要なヒスタミン用量)を、各ヒスタミン用量応答曲線から決定した。9日目と10日目に動物に、RLの40%上昇と動的コンプライアンス(CDYN)の35%の低下を引き起こすことがすでに証明されている霧状にした抗原の個々に調整した用量で抗原刺激した。このモデルでは従来、第1回より第2回のアレルゲン投与より、より大きいRLが観察され、これは抗原プライミングである。2回の抗原刺激は、1日目に比較して11日目にヒスタミン用量応答曲線下の面積の上昇と、PC30、BAL、並びに好酸球の低下により測定されるように、AHRを引き起こした。AHR症状を示す動物を選択して第II相に入れた。
【0278】
第II相は、すべての動物に1日目、5日目、及び9日目に30mg/kgのBAK502G9を注入した以外は、第I相と全く同様に行った。BAK502G9の効果は、個々の動物について第II相で見られた変化を第I相で見られた変化と比較して評価した。
【0279】
血液、血清、BAL、及び肺組織を採取した。血清IgEレベルはELISAにより追跡した。BAK502G9処理したカニクイザルの血清は、IL-13(IL-4ではない)により誘導されるヒト末梢血単核細胞上のCD23の発現を阻害することが証明された。この阻害の大きさは、PK ELISAにより予測された血清BAK502G9レベルと一致した。
【0280】
結果
L AUCにより測定すると、BAK502G9はAHRを有意に阻害した(p<0.05)(図26A;表7)。PC30により測定するとAHRに対するBAK502G9の阻害作用が観察されたが、統計的有意性には達しなかった(図26B;表7)。BAK502G9はまた、抗原プライミング(p<0.01)(図26C;表7)とBAL炎症とを有意に阻害した。BAK502G9は、BALへの総細胞(p<0.01)と好酸球(p<0.05)流入とを有意に阻害したが、マクロファージ、リンパ球又は肥満細胞の流入は阻害しなかった(図26D;表7)。
【0281】
実施例24
ヒトIL-13をマウス肺に投与する際に、発症する喘息症状に対する抗ヒトIL-13抗体の効力
気道過剰応答のネズミモデル
マウス肺へのヒトIL-13の投与後の気道過剰応答(AHR)の発症に対する抗ヒトIL-13中和抗体BAK502G9の効力を調べた。このモデルは、ネズミIL-13の代わりにヒトIL-13を使用した以外は基本的にYangら[119]により記載されたように行った。
【0282】
モデルプロトコール
症状を出現させるために、48時間の間隔でオスのBalb/cマウスを2用量のヒトIL-13に暴露した。簡単に説明するとマウスを、100μlのサファン(saffan)溶液(水で1:4希釈)の静脈内注射により麻酔した。マウスに22ゲージのカテーテル針を挿管し、ここからヒト組換えIL-13(20μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解した25μg)又は溶媒対照(PBS)を点滴注入した。IL-13の最後の投与の24時間後にメタコリン抗原刺激を上昇させて、意識下プレスチモグラフィー(ブクスコ(Buxco))を追跡して、気道機能を評価した。メタコリン用量応答曲線の4パラメータ非固定曲線適合から、PC200(ベースラインPenHを200%上昇させるのに必要なメタコリン濃度)を測定した。各IL-13投与の24時間前に、腹腔内注射により抗体処理を行った。
【0283】
結果
投薬経験の無い野生型マウスへヒトIL-13を気管内注入することは、PC200メタコリン濃度により測定すると、対照動物に対して有意な(p<0.05)気道過剰応答がもたらされた。全身に投与されたBAK502G9(1mg/kg)はAHRの出現を有意に(p<0.01)阻害し、一方ゼロ対照抗体は何の作用もなかった(図23)。
【0284】
実施例25
ヒトB細胞からのヒトIL-13依存性IgE放出に対するヒトIgG4としてのBAK502G9の中和力価
B細胞スイッチングアッセイプロトコール
IL-13は、インビトロでヒトB細胞中のIgE合成を誘導することが証明されている[120]。ヒトB細胞からの因子依存性IgE放出をELISAにより測定した。ヒトIgG4としてのBAK502G9の中和力価を、ヒトB細胞からのIL-13依存性IgE放出に対して評価した。
【0285】
1.077g/Lの密度勾配遠心分離によりヒト・バフィーコート(輸血サービス(Blood Transfusion Service))から末梢血単核細胞(PBMC)を精製した。B細胞はB細胞単離キットII(ミルテニビオテク(Miltenyi Biotec))を用いて製造業者が記載する試薬と方法とを使用してPBMCから精製した。アッセイ培地は、10%胎児牛血清と20μg/mlヒトトランスフェリン(セロロジカルズプロテインズ社(Serologicals Proteins Inc.))を含むイスコブ改変ダルベッコー培地(ライフテクノロジーズ(Life Technologies))で構成された。精製後、B細胞をアッセイ培地に最終濃度106/mlで再懸濁した。50μlの再懸濁細胞を96ウェルアッセイプレートの各アッセイ点に加えた。50μlの4μg/ml抗CD40抗体EA5(バイオソース(Biosource))を適宜アッセイウェルに加えた。抗体の試験溶液(6重測定)をアッセイ培地中に所望の濃度に希釈した。IL-13と反応しない無関係な抗体を陰性対照として使用した。50μl/ウェルの適切な試験抗体を細胞に加えた。次に、組換え細菌由来のヒトIL-13(ペプロテク(Peprotech))を加えて最終濃度30ng/mlにして総アッセイ容量200μl/ウェルを得た。アッセイで使用したIL-13の濃度を最大応答を得るように選択した。アッセイプレートを37℃で5%CO2下で14日間インキュベートした。上清中のIgEレベルを、製造業者(ビーディーバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)、ベチルラボラトリーズ(Bethyl Laboratories))が提供する試薬とプロトコールを使用してELISAにより測定した。グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0286】
結果
図24に示すように、BAK502G9(VH配列番号15;VL配列番号16)は、ヒトB細胞によるヒトIL-13依存性IgE産生を阻害することができた。ヒトIgG4としてのBAK502G9は、30ng/mlのヒトIL-13に対して1.8nMのIC50を有した。
【0287】
実施例26
初代ヒト気管支平滑筋細胞におけるヒスタミン誘導Ca2+シグナル伝達のIL-13介在強化に対するBAK502G9の効力
【0288】
IL-13は、気道平滑筋の収縮を直接調節することが示されている[121,122]。細胞内カルシウム動員は平滑筋収縮の必須要件である。最近の研究は平滑筋収縮性を改変するIL-13の能力が、一部は収縮性アゴニスト誘導Ca2+シグナル伝達の調節により仲介されることを証明した[123,124]。
【0289】
収縮性アゴニストであるヒスタミンに対する初代ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)シグナル伝達応答のIL-13介在改変に対する、IgG4としてフォーマット化した抗ヒトIL-13抗体であるBAK502G9の効力を、Ca2+シグナル伝達アッセイで調べた。
【0290】
BSMC Ca2+シグナル伝達アッセイプロトコール
ヒト初代BSMC、平滑筋増殖培地-2(SmGM-2)と平滑筋基礎培地(SmBM)をバイオウィッタカーから得た。BSMCは、販売業者の薦めに従ってSmGM-2中で維持した。BSMCを96ウェルマイクロタイター細胞培養プレートに2×104細胞/ウェルで撒き、24時間付着させ、次に再供給し、さらに24時間インキュベートした。Ca2+シグナル伝達実験の前に、BSMCを最終濃度50ng/mlのIL-13(ペプロテク(Peprotech))で抗体有り又は無しで刺激し、18〜24時間インキュベートした。BAK502G9とイソタイプ一致した無関係の対照モノクローナル抗体CAT-0001を、最終濃度10μg/mlで評価した。ヒスタミン(カルビオケム(Calbiochem))に応答した細胞にCa2+濃度(20μMから力価測定)を、Ca2+感受性色素Fluo-4(モレキュラープローブズ(Molecular Probes))と96ウェル蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)(モレキュラーデバイシーズ(Molecular Devices))を用いる標準方法を使用して測定した。ヒスタミンに応答したCa2+シグナル伝達応答の曲線下の面積(AUC)を、各前処理結合体について測定した。グラフパッドプリズム・ウィンドウズ(登録商標)用バージョン4(GraphPad Software)を使用してデータ解析を行った。
【0291】
結果
IL-13を用いるBSMCのプレインキュベーションは、ヒスタミンに応答したCa2+シグナル伝達を有意に増強した。IL-13によるBAK502G9のプレインキュベーションはヒスタミンに応答したCa2+シグナル伝達の強化を有意に阻害した(しかしIL-13を用いる無関係の対照抗体(図25A)は阻害しなかった)(図25)。
【0292】
実施例27
ヒトIL-13依存性PBMC CD23発現アッセイにおける抗IL-13抗体の中和力価
代表的IL-13抗体の力価をヒトILー13依存性末梢血単核細胞(PBMC)CD23発現アッセイで評価した。CD23の細胞表面発現を上昇させることにより、PBMCはIL-13とIL-4の両方に反応する[120]。CD23(FceRII)はIgEについての低親和性受容体であり、種々の炎症性細胞(単核細胞を含む)で発現される。ヒトIL-13依存性CD23発現アップレギュレーションの阻害を、PBMCへの蛍光標識CD23モノクローナル抗体の結合の低下をフローサイトメトリーにより計測することにより測定した。
【0293】
アッセイプロトコール
輸血サービス(Blood Transfusion Service)からヒト血液を得て、40分間のデキストラン-T500(ファルマシア(Pharmacia))沈降(最終濃度0.6%)により赤血球を取り除いた。次に白血球と血小板リッチな画分を、3mlの64%と5mlの80%(100%は9部のパーコル(Percoll)と1部の10×PBSである)の不連続パーコル勾配上で20分間1137gで遠心することにより分離した。64%層の上部からPBMCを採取し、アッセイ緩衝液(インビトロゲン(Invitrogen)RPMI1640、10% FCS、200IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L-グルタミン)に再懸濁した。アッセイは、2×106細胞、±80pM組換えヒトIL-13(ペプロテク)又は21pM 組換えヒトIL-4(アールアンドディーシステムズ)、±BAK502G9又は無関係のIgG4を最終容量500mcl中に含有する24ウェルプレート中で行った。細胞を37℃で48時間培養した後採取し、CD23-PE(ビーディーファーミンゲン)で4℃で20分間染色した。最後に、細胞をフローサイトメーター上で読んだ。CD23発現を、CD23「スコア」により測定した;CD23陽性細胞のパーセントに染色の「明るさ」を掛けた(幾何平均蛍光)。刺激物質の無いCD23「スコア」を引き、データをIL-13単独に対する応答(100%)のパーセントとして示した。データは、4〜6人の個々のドナーからの細胞を使用して各点を三重測定で行い、4〜6回の異なる実験から得られた平均±SEMとして表した。
【0294】
結果
PBMCと80pMのIL-13又は21pMのIL-4との48時間のインキュベーションにより、明らかにCD23が発現された(図27と図28)。BAK502G9は用量依存性にIL-13誘導CD23発現を阻害し、幾何平均は120.2pMであった(図27)。これに対してBAK502G9は、21.4pMのIL-4(個々のドナーからn=4、図28)により誘導されるCD23発現は阻害できなかった。無関係のIgG4は、PBMC上のIL-13又はIL-4依存性CD23発現を阻害しなかった(図27と図28)。80pMのIL-13と21.4pMのIL-4によるPBMCの同時刺激は、付加的CD23発現を引き起こした。BAK502G9(CAT-001ではない)は、CD23発現レベルをIL-4刺激単独で見られるレベルまで低下させた(図28)。
【0295】
実施例28
ヒトIL-13依存性好酸球形態変化アッセイにおけるヒトIL-13抗体の中和力価
【0296】
本試験の目的は、IL-13[125,126]、TNF-α[127]、TGF-β1[128]のような喘息患者の肺に存在する因子で刺激後に、NHLFから放出されるメディエーターにより誘導される好酸球形態変化に対するIL-13抗体の効果を評価することであった。IL-13はTNF-α[129]又はTGF-β1[130]と相乗作用して、エオタキシン-1を産生するように繊維芽細胞を誘導し、次にこれは直接好酸球を化学誘引するように作用することができる。白血球形態変化応答は細胞骨格の再配置により仲介され、微小循環から炎症部位への白血球遊走プロセスに必須である。NHLFによるIL-13依存性形態変化誘導因子放出の阻害は、ELISAによりエオタキシン-1分泌の低下とフローサイトメトリーにより好酸球の形態変化を減少を測定することにより測定した。
【0297】
アッセイプロトコール
NHLF細胞を、培地単独又は刺激物質[9.6nMのIL-13、285.7pMのTNF-α(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))及び160pMのTGF-β1(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))]を含有する培地とともに、BAK502G9(濃度範囲875nM〜6.84nM)の非存在下又は存在下で同時培養した。次に細胞を37℃でさらに48時間培養後、得られた調整培地を吸引し、-80℃で保存した。調整培地中のエオタキシン-1の濃度は、アールアンドディーシステムズ(R & D Systems)ヂュオセット(Duoset)ELISA系(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))を使用して評価した。
【0298】
輸血サービス(Blood Transfusion Service)からヒト血液を得て、40分間のデキストラン-T500(ファルマシア(Pharmacia))沈降(最終濃度0.6%)により赤血球を枯渇させた。次に白血球と血小板リッチな画分を、3mlの64&と5mlの80%(100%は9部のパーコル(Percoll)と1部の10×PBSである)の不連続パーコル勾配上の20分間の1137gの遠心により分離した。64%:80%界面から顆粒球を採取し、洗浄し、アッセイ緩衝液(シグマ(Sigma)PBS、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM ヘペス、10mM D-グルコース、0.1%シグマ(Sigma)BSA、pH7.3)に再懸濁した。アッセイはFACSチューブ中で5×105細胞、±3nM 組換えヒトエオタキシン-1(アールアンドディーシステムズ(R & D Systems))又は調整培地を用いて、最終容量400μlで行った。細胞を37℃℃で8.5分間インキュベート後、4℃に移し、固定剤(セルフィックス(CellFix)、ビーディーバイオサネンス(BD Bioscience))で固定し、最後にフローサイトメーターで読んだ。好酸球をそのFL-2自己蛍光により同定し、前進スキャター(FSC)パラメータを読んだ。好酸球FSCはエオタキシン-1と調整培地の両方に応答して変化し、形態変化が測定された。チューブを高流速でサンプリングし、1000の好酸球イベント後又は1分後(いずれか早い方)に採取を停止した。形態変化を、形態変化緩衝液単独により引き起こされたFSC(100%ブランク形態変化)のパーセントとして計算した。データは、4回の異なる実験から得られた平均%ブランク形態変化±SEMとして表した。各実験では、個々のバフィーコート(従って個々のドナー)からの細胞を使用して各点について二重測定で行った。
【0299】
結果
NHLF細胞を9.6nMのIL-13、285.7pMのTNF-α及び160pMのTGF-β1で同時刺激し48時間培養すると、9.6nMのエオタキシン-1を培地中に分泌した。これに対して維持培地のみで培養したNHLF細胞は、培地中に0.1nMのエオタキシン-1を分泌したのみである。IL-13/TNF-α/TGF-β1で同時刺激したNHLF細胞エオタキシン-1産生は、BAK502G9によりIC50が32.4nMで用量依存性に阻害された(図29A)ため、このエオタキシン-1産生はIL-13依存性であった。
【0300】
本試験のこの部分の主目的は、好酸球形態変化を調べることであった。3nM好酸球(陽性対照)に応答した好酸球形態変化の大きさは122.2±2.1%(n=4)であった。エオタキシン-1誘導形態変化は、100nMの抗好酸球抗体CAT-213により完全に阻害され、平均形態変化は101.0±1.0%(n=4)であった。
【0301】
9.6nMのIL-13、285.7pMのTNF-α及び160pMのTGF-β1で同時刺激し48時間培養したNHLF細胞から得られた培地(調整培地)は、明らかな好酸球形態変化を誘導した(図29B)。これに対してNHLF維持培地単独中で48時間培養したNHLFからの培地は好酸球形態変化を誘導しなかった(図29B)。
【0302】
NHLF培養前の同時刺激培地への抗IL-13抗体BAK502G9の添加は好酸球形態変化の用量依存性阻害を引き起こし、幾何平均IC50は1:16希釈で測定すると16.8nMであった(図29B)。
【0303】
NHLF細胞とともに培養していない刺激物質(IL-13、TNF-α及びTGF-β1)の、好酸球と好中球形態変化を誘導する能力も調べた。9.6nMのIL-13、285.7pMのTNF-α及び160pMのTGF-β1は、明らかな好酸球形態変化を誘導しなかった。これは、刺激物質とのNHLF細胞培養の間に発生する調整培地の好酸球形態変化能は、いずれかの刺激物質単独のせいでも又は組合せのせいでもないことを示唆する(図29B)。
【0304】
実施例29
ヒトIL-13上の抗IL-13抗体のマッピング
代表的なIL-13抗体BAK502G9のエピトープマッピングを、分子的アプローチと標準的ペプチド切断を使用して行った。
【0305】
分子的アプローチ
ヒトIL-13配列の一部がネズミ配列で置換されたIL-13キメラを作成した。これらのキメラは、特定のエピトープの同定を助けるために代表的IL-13抗体との結合試験で使用した。
【0306】
IL-13キメラの2つのパネルを作成した。第1のパネルは9つのキメラ(図30)を含み、エピトープの全体的位置を捜すために使用した。第2のパネルは10個のキメラ(図31)を含有し、エピトープを細かくマッピングするために使用した。
【0307】
PCRを使用してキメラIL-13配列を組み立て、ゲートウェイ(Gateway)(商標)エントリーベクター中にクローン化し、次にこれをデスティネーションベクターpDEST8(組換えタンパク質のC末端で検出タグと親和性タグとをコードするように修飾されている)と組換えを行った。これらの発現ベクターを使用して、化学処理によるDH10Bac(商標)のコンピテント大腸菌(E.coli)を形質転換して、バキュロウイルスシャトルベクター(バクミド)中へのタグ付きキメラIL-13の部位特異的転位を可能にした。組換えバクミドDNAを各IL-13キメラについて単離し、セルフェクチン (商標)試薬を使用してSf9(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))昆虫細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に組換えバキュロウイルスを採取し、Sf9昆虫細胞によりさらに2回継代した。
【0308】
昆虫の2000〜500mlの培養上清をアフィニティ・カラムで精製し、溶出した物質を16mlから1mlに濃縮し、最後の仕上げと緩衝液交換のためにサイズ排除スーパーデックス(Superdex)200HR10/300GLカラムにロードした。
【0309】
ビオチン化ヒトIL-13、ストレプトアビジン-アントフィオシアネート及びユーロピウム標識BAK502G9を使用する同種競合アッセイを開発した。このアッセイは以下の通りである:Eu-BAK502G9はビオチン化ヒトIL-13に結合し、次に複合体がストレプトアビジンAPC結合体により認識され、閃光が適用されると、エネルギーがAPC標識物から近傍のユーロピウムに転移し、時間分解蛍光を測定することができる。非標識ヒトIL-13(対照として)とキメラ構築体により、この結合の競合が導入される。この競合を定量して、IL-13抗体に対するIL-13変異体の相対的親和性を計算することにより、結合を変化させる変異を同定することが可能になる。
【0310】
結果
BAK502G9への結合について、キメラ構築体IL13-へリックスD(表5)はビオチン化ヒトIL-13に対する最も弱い競合物質であり、IL-13分子内のへリックスDがBAK502G9エピトープ結合に関与していることを示す(表5)。親配列の残基40、41、及び33、34がそれぞれ変化している40、41と33、34変異体について活性の低下が見られ、BAK502G9の認識におけるヘリックスAの関与の可能性を示している。ループ3はヒト分子と比較してこの変異体中のアミノ酸の数が減少しており、タンパク質の全体構造を変化させる可能性があるため、このループの活性低下は無視した。キメラIL-13分子がBAK502G9結合について競合する能力の他の低下は、かかるアミノ酸の変化には重要であると考えられなかった。
【0311】
次にへリックスD(図26)中のより標的化された変異のセットを試験した。得られた結果は表6に示し、以下の通りである:
【0312】
結果は、キメラ構築体116117TK(116位のリジンはスレオニンで置換され、117位のアスパラギン酸はリジンで置換されていた)、123KA(123位のリジンは置換されていた)、及び127RA(127位のアルギニンは置換されていた)は、少なくともBAK502G9への結合について競合することができる(123KAと127RAは1μMで競合しない)ことを示す。競合アッセイでの有効性の低下のためにBAK502G9へ結合するとされている他の残基には、へリックスD残基124Q(リジンはグルタミンで置換されている)と120121SY(ロイシンヒスチジン対はセリンチロシン対に変化している)がある。58L位のロイシンの変異はまた結合性を低下させ、3D構造の分析はこの残基がヘリックスDに対して集まり、BAK502G9により直接接触されるか又はヘリックスDの整列に影響を与えることを明らかにした。
【0313】
これらの実験は、ヘリックスD内の残基がIL-13へのBAK502G9の結合に決定的に重要であることを証明する。特に123位のリジンと127位のアルギニンは、このいずれかの変異がBAK502G9への結合を無くさせるため、この結合にとって決定的に重要である。
【0314】
エピトープ切断
またBAK502G9のエピトープマッピングを標準的ペプチド切断法を使用して行った。ここでIgGは固相に固定化され、IL-13リガンドを捕捉するようにされる。形成された複合体は次に、特異的タンパク質分解的消化を受け、この間アクセス可能なペプチド結合が切断されるが、IgG:リガンド界面により防御されるものは無傷のままである。すなわちエピトープを含有するペプチドはIgGに結合する。次にこれが脱着され、採取され、質量スペクトル(ms)により同定される。
【0315】
2つの相補的技術が使用され、最初の方法はサイファージェンプロテインチップリーダー(Ciphergen ProteinChip Reader)MALDI-TOF質量スペクトル計を使用し、ここではIgGを質量スペクトル計チップに共有結合させることができ、次にインサイチュで消化と抽出を行うことができる。第2の技術は、ストレプトアビジン被覆ビーズに結合したビオチン化BAK502G9を使用し、これは、タンデム質量スペクトル法(ms/ms)により配列確認のための充分なペプチドの採取を可能にした。
【0316】
2つの方法は絶対的な詳細とスケールが異なるが、基本的に同じ段階(IgGの結合、未反応結合部位のブロッキング、洗浄、リガンド捕捉、非結合リガンドの除去、消化、及び最後の洗浄工程)を含んだ。
【0317】
MALD-TOF msアプローチは、PBS中1〜2mg/mlのIgGを4℃で一晩結合させた遊離の1級アミン基に共有結合するカルボニルジイミダゾールで活性化した専用のmsチップを使用する。次にチップを室温で1時間エタノールアミン溶液でブロックし、次にPBS又はHBS+適当な界面活性剤を用いて充分に洗浄した。次に1ピコモルアリコートのIL-13をPBS又はHBS中でチップに適用し、化学的に固定化したIgGに室温で2時間結合させた。次に、界面活性剤有り及び無しのPBS又はHBSでさらに洗浄して、非特異的に結合したIL-13を除去した。PBS又はHBS中200〜3.1μg/mlの範囲のトリプシン溶液をIgG:リガンド複合体に適用し、室温で30分消化を進行させ、次にPBS又はHBS+界面活性剤で、PBS又はHBSで、そして最後に水でチップを洗浄した。適当なMALD-TOF ms マトリックスを適用後、チップを直接質量スペクトル計に入れて分析した。
【0318】
ビーズベースのアプローチは、NHSビオチン化合物を使用して、IgGのビオチン化(1・IgG対4・ビオチン分子のモル比)で出発した。次に、ゲルろ過を使用して、非結合ビオチンと反応の副産物を除去した。次にビオチン化IgGをニュートラアビジン被覆アガロースビーズに結合させ、ここでIgG捕捉を最大にするようにした。次にIgG被覆ビーズの一定量を濃縮スピンカラムに入れ、ダルベッコーPBS+0.05%Tween20で洗浄し、次にダルベッコーPBS+0.05%Tween20に再懸濁した。次にIL-13のパルスを再懸濁IgGビーズに適用し、さらに10分結合を進行させ、次に液相を遠心分離して除去し、ビーズをダルベッコーPBS+0.05%Tween20で洗浄し、次にダルベッコーPBS+0.05%Teen20に再懸濁した。
【0319】
次にビーズ:IgG:リガンド複合体をトリプシン又はキモトリプシンとともに室温又は37℃でインキュベートしてタンパク質分解に付した。次にビーズを再度ダルベッコーPBS+0.05%Tween20で洗浄し、次にさらに界面活性剤の無いダルベッコーPBSで洗浄した。次にビーズを水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸混合物に再懸濁し、上清を回収した。次にこれを、MALDI-TOF ms又は逆相HPLC質量スペクトル(例えば、ThermoQuest LCQ ESIイオントラップ質量スペクトル計を使用するタンデム(ms/ms)断片化)により、種々分析した。得られる断片パターンをヒトIL-13配列及びBAK502G9 IgGの別の重鎖と軽鎖配列に一致するようにした。
【0320】
実験工程の間、多くの対照(主にブランク表面、IgGのみ、イソタイプ対照)を使用して、同定されたペプチドがIgG捕捉IL-13から特異的に得られたものであり、BAK502G9の生成物又は非特異的に結合したIL-13消化の生成物ではないことを証明した。
【0321】
結果
この実験シリーズは一貫して、各消化について単一のIL-13特異的ペプチドを与えた。LCQイオン捕捉装置からのデータは、トリプシン断片が3258Da(MH+)のモノアイソトピック質量を有し、キモトリプシン断片が3937Da(MH+)のモノアイソトピック断片を有することを明らかにした。
【0322】
ヒトIL-13の適切なin silico消化に対するこれらの質量の検索は、分子のC末端部分の関連ペプチドとの密接な一致を与えた。
【0323】
トリプシンペプチド質量の一致:3258Da
1000ppmの許容誤差(tolerance)で、3258Daは106位のアスパラギン酸から132位のC末端アスパラギンまでの配列に一致する。この許容誤差(tolerance)では他の一致は無い。この領域を、以下のヒトIL-13の前駆体型の配列上で太字で強調する。
【0324】
【化1】

【0325】
キモトリプシンペプチド質量の一致:3937Da
1000ppmの許容誤差(tolerance)で、3937Daは99位のセリンから132位のC末端アスパラギンまでの配列に一致する。この領域を、以下のヒトIL-13の前駆体型の配列上で太字で強調する。
【0326】
【化2】

【0327】
これらの一致の両方とも、抗体:リガンド複合体のタンパク質分解の間、BAK502G9 IgGがIL-13分子のC末端部分を保持することを示す。
【0328】
両方のペプチドの本体は、ms/msによりうまく確認され、いずれもBAK502G9との有意な配列類似物を示さなかった。Y又はBイオンを同定するように調整したms/ms断片地図は、トリプシンペプチドの1電荷状態の104の可能なイオンうちの26に一致し、キモトリプシンペプチドの128の可能なイオンのうちの19に一致した。すべての電荷状態を調べると、トリプシン断片の27アミノ酸残基のうちの23とキモトリプシン断片の33残基のうちの29の同定を示す。これは同一性を確認するのに充分である。
【0329】
全体としての実験配列は、ヒトIL-13上のBAK502G9エピトープの一部が、27個のC末端アミノ酸残基内に存在することを同定した。これらの知見は、前記で詳述した分子的アプローチの知見を確証する。
【0330】
【表1】

【0331】
【表2】

【0332】
【表3】

【0333】
【表4】

【0334】
【表5】

【0335】
【表6】

【0336】
【表7】

【0337】
【表8】

【0338】
【表9】

【0339】
【表10】

【0340】
【表11】

【0341】
【表12】

【0342】
【表13】

【0343】
【表14】

【0344】
【表15】

【0345】
【表16】

【0346】
【表17】

【0347】
【表18】

【0348】
【表19】

【0349】
【表20】

【0350】
第I相でAHR(PC30)を示す21匹の動物と抗原プライミング症状を有する追加の動物を第II相の試験に進めた(全部で22匹)。AUCとPC30で測定されたように、必ずしもすべての動物がAHRをもってはいない。第I相でAHRを示し、そのAHRを第I相と第II相で評価した動物のみをAHRの結果に含めた。インスタット(InStat)を使用して統計的検定を行った。検定は両側スチューデントt検定を、終点は数0を含むという(すなわち、第I相と比較して第II相では変化がなかった)帰無仮説に対して行った;* p<0.05、** p<0.01。データは算術平均±SEMとして示す(n=14〜21)。
a 5匹の動物は第I相でAHR(AUC増加)を示さなかったため、AUC解析から除外した。
第II相の気道機能データ採取における技術的失敗のために、さらに3匹の動物を除外した。
b 3匹の動物は第II相の気道機能データ採取における技術的失敗のためにPC30解析から除外した(aと同じ動物)。抗原プライミング症状を有する追加の動物は第I相においてPC30 AHRを示さなかったため除外した。
c 第I相の気道機能データ採取における技術的失敗のために、2匹の動物を抗原プライミング解析から除外した。
d 試験の開始時の顕著なBAL炎症のために1匹の動物をBAL解析から除外した。
【0351】
【化3】

【0352】
【化4】

【0353】
【化5】

【0354】
【化6】

【0355】
【化7】

【0356】
【化8】

【0357】
【化9】

【0358】
【化10】

【0359】
【化11】

【0360】
【化12】

【0361】
【化13】

【0362】
【化14】

【0363】
【化15】

【0364】
【化16】

【0365】
【化17】

【0366】
【化18】

【0367】
【化19】

【0368】
【化20】

【図面の簡単な説明】
【0369】
【図1】図1は、TF-1細胞増殖アッセイにおける25ng/mlヒトIL-13に対するscFvとしてのBAK167A11(黒四角)とその誘導体BAK615E3(白四角)の中和力価(%阻害)を示す。三角は無関係のscFvである。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図2】図2は、TF-1細胞増殖アッセイにおける25ng/mlヒトIL-13に対するscFvとしてのBAK278D6(黒四角)とその誘導体BAK502G9(白四角)の中和力価(%阻害)を示す。三角は無関係のscFvである。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図3】図3は、TF-1細胞増殖アッセイにおける25ng/mlネズミIL-13に対するscFvとしてのBAK209B11(黒四角)の中和力価(%阻害)を示す。三角は無関係のscFvである。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図4A−C】図4は、TF-1細胞増殖アッセイにおけるIL-13に対するscFvとしてのBAK278D6(黒四角)の中和力価(%阻害)を示す。三角は無関係のscFvである。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。 図4Aは、25ng/mlヒトIL-13に対する力価を示す。 図4Bは、25ng/mlヒト変種IL-13に対する力価を示す。 図4Cは、50ng/ml非ヒト霊長類IL-13に対する力価を示す。
【図5】図5は、TF-1細胞増殖アッセイにおける抗ヒトIL-13抗体の力価の比較を示す。データは、25ng/ml ヒトIL-13に対する5〜7回の実験の平均中和力価を標準誤差棒とともに示す。市販の抗体(B-B13)と比較した性能を、ダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより、統計的に評価した。B-B13と比較して、* P<0.05、** P<0.01。
【図6A−C】図6は、F-1細胞増殖アッセイにおける標識IL-13に対するヒトIgG4としてのBAK502G9(黒四角)、BAK1167F2(黒三角)、及びBAK1183H4(黒逆三角)の中和力価(%阻害)を示す。白三角は無関係のIgG4である。データは、3回の異なる実験の平均を標準誤差棒とともに示す。 図6Aは、25ng/mlヒトIL-13に対する力価を示す。 図6Bは、25ng/mlヒト変種IL-13に対する力価を示す。 図6Cは、50ng/ml非ヒト霊長類IL-13に対する力価を示す。
【図7】図7は、未変性のIL-13依存性HDLM-2細胞増殖アッセイにおけるヒトIgG4としてのBAK502G9(黒四角)、BAK1167F2(黒三角)、BAK1183H4(黒逆三角)と、市販の抗ヒトIL-13抗体(B-B13-白四角;JES10-5A2-白逆三角)の中和力価(%阻害)を示す。白三角は無関係のIgG4である。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図8】図8は、NHLFアッセイにおける抗ヒトIL-3抗体の力価の比較を示す。データは、NHLFエオタキシン放出アッセイにおける10ng/ml ヒトIL-13に対する4〜5回の実験の平均中和力価(IC50 pM)を標準誤差棒とともに示す。市販の抗体(B-B13)と比較した性能を、ダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより、統計的に評価した。B-B13と比較して、* P<0.05、** P<0.01。
【図9】図9は、10ng/mlヒトIL-13に応答したHUVECの表面上のVCAM-1アップレギュレーションに対する、ヒトIgG4としてのBAK502G9(黒四角)、BAK1167F2(黒三角)、及びBAK1183H4(黒逆三角)の中和力価(%阻害)を示す。白三角は無関係のIgG4である。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図10A−B】図10は、1ng/mlヒトIL-4(図10A)又は0.5ng/mlヒトIL-1β(図10B)に応答したHUVECの表面上のVCAM-1アップレギュレーションからのエオタキシン放出に対する、ヒトIgG4としてのBAK502G9(黒四角)、BAK1167F2(黒三角)、及びBAK1183H4(黒逆三角)の中和力価(%阻害)を示す。白三角は無関係のIgG4である。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図11】図11は、因子依存性B9細胞増殖アッセイにおける、1ng/ml ネズミIL-13に対するヒトIgG4としてのBAK209B11(四角)の中和力価(%阻害)を示す。白三角は無関係のIgG4である。データは、同じ実験内の三重測定の平均を標準誤差棒とともに示す。
【図12】図12は、急性肺アレルギー性炎症のネズミモデルにおける、抗原刺激後の感作(s)(右の棒)及び非感作(ns)(左の棒)マウスからの肺ホモジネート中のIL-13の相対レベルを示す。感作の影響を、IL-13量のデータを使用してスチューデント(Student’s)t-検定により、統計的に評価した。非感作対照動物(n=5〜6匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図13】図13は、オボアルブミン感作マウスの肺へのオボアルブミン誘導白血球動員に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK209B11の静脈内投与の効果を示す。白血球の数を示す(×104)。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原刺激PBS対照動物(=0%阻害;n=5〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図14】図14は、オボアルブミン感作マウスの肺へのオボアルブミン誘導好酸球動員に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK209B11の静脈内投与の効果を示す。好酸球の数を示す(×104)。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原刺激PBS対照動物(=0%阻害;n=5〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図15】図15は、オボアルブミン感作マウスの肺へのオボアルブミン誘導好中球動員に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK209B11の静脈内投与の効果を示す。好中球の数を示す(×104)。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原刺激PBS対照動物(=0%阻害;n=5〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図16】図16は、オボアルブミン感作マウスの肺へのオボアルブミン誘導リンパ球動員に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK209B11の静脈内投与の効果を示す。リンパ球の誘導はBAK209B11により用量依存性に阻害され、3μg/mlのBAK209B11で最大の阻害が得られた。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原刺激PBS対照動物(=0%阻害;n=5〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図17】図17は、オボアルブミン感作マウスの肺へのオボアルブミン誘導単球/マクロファージ動員に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK209B11の静脈内投与の効果を示す。対照動物と比較して感作動物の単球/マクロファージレベルの有意な上昇は無かった。しかしこれらの細胞のかかるバックグランドレベルは、感作動物において≧36μg/ml BAK209B11により抑制された。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原刺激PBS対照動物(=0%阻害;n=5〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図18】図18は、細菌由来の組換えヒトIL-13の投与により誘発される、ネズミエアパウチへの細胞(白血球の数を示す(×104))の流入に対する、市販の抗IL-13中和抗体JES10-5A2の作用を示す。抗体処理の効果を、白血球百分率データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。CMC対照動物(=0%阻害;n=11〜13匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図19】図19は、ヒトIL-13アミノ酸配列に対するカニクイザル(cynomolgus)IL-13の配列の整列を示す。ヒトとカニクイザル(cynomolgus)IL-13とで異なる7つのアミノ酸残基を黒くしてある。アカゲザル(rhesus)とカニクイザル(cynomolgus)IL-13は同じアミノ酸配列を有する。
【図20】図20は、29日間の4匹のアレルギー性であるが非抗原刺激カニクイザル(cynomolgus)霊長類(オス2匹/メス2匹)の血清IgEレベルに対する、ヒトIgG4としてのBAK502G9の10mg/kgの静脈内大量単回投与の効果を示す。血清IgE濃度は、投与後4及び5日で、対照値の100%(投与前)から66±10%(p<0.05)に有意に低下している。血清IgE濃度のこの低下は、22日までに対照レベルの88±8%まで回復している。*=p<0.05、投与前IgEレベルとの比較、ANOVAの後にダネット(Dunnett’s)の多重比較検定を繰り返した(n=4匹の動物)。
【図20B】図20Bは、10mg/kgのBAK502G9の単回静脈内投与後のオスとメスのカニクイザル(cynomolgus)霊長類の相対血清IgEレベルの経時変化を示す。相対血清IgEデータは、ベースライン値の算術平均±SEM%として表される。
【図21】図21は、オボアルブミン感作及び抗原刺激マウスの肺機能に対する、イソタイプ一致IgG1無関係対照抗体と比較した、異なる量(H=237μg/日、M=23.7μg/日、及びL=2.37μg/日)のBAK209B11の腹腔内投与の効果を示す。図21Aでは肺機能は、処理前(0日)と感作、抗原刺激、及び薬剤処理後(25日)のlogPC50s(ベースラインPenHを50%上昇させるのに必要なlogメタコリン濃度)で示される。図21Aは、図21Bに示す試験の最終点(デルタlogPC50)を計算するのに使用される生データを示す。データは、n=8の平均を標準誤差棒とともに示す。 図21Bでは、変化する肺機能が個々のマウスのlogPC50の変化(デルタlogPC50)で示される。デルタlogPC50は、0日に対する25日のlogPC50の個々の変化として定義される。データは群平均デルタlogPC50(処理群内で平均した個々の変化)を標準誤差棒とともに示す。抗体処理の効果を、デルタlogPC50データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。オボアルブミン抗原感作及び刺激対照動物(n=8匹のマウス)と比較して、* P<0.01。
【図22】図22は、BALB/Cマウスのエアパウチへの総白血球動員(図22A)と好酸球動員(図22B)に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、異なる量のヒトIgG4としてのBAK502G9の局所的(腹腔内)及び全身性(静脈内)投与の効果を示す。データは、n=10の平均を標準誤差棒とともに示す。抗体処理の効果を、log変換データを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。huIL-13抗原刺激マウス(n=10)と比較して、* P<0.05、** P<0.01。
【図23】図23は、マウスの気道へのヒトIL-13の気管内投与後のAHRの発症に対する、イソタイプ一致IgG4無関係対照抗体と比較した、ヒトIgG4としてのBAK502G9の腹腔内投与の効果を示す。抗体処理の効果を、PC200メタコリンデータを使用してダネット(Dunnett’s)検定を用いる片側ANOVAにより統計的に評価した。ヒトIL-13陽性対照群(n=6〜8匹のマウス)と比較して、* <0.05、** <0.01。データは、平均を標準誤差棒とともに示す。
【図24】図24は、ヒトB細胞IgE産生アッセイにおける、30ng/mlのIL-13に対するIgG4としてのBAK502G9(黒四角)の中和力価(%最大応答)を示す。白四角は無関係のIgG4を示す。データは、別々の実験からの6匹のドナーの平均を標準誤差棒とともに示す。
【図25】図25は、気管支平滑筋細胞中のアゴニスト誘導Ca2+シグナル伝達のIL-13誘導増強に対するBAK502G9の影響を示す。各抗体+/-IL-13前処理条件について、Ca2+シグナル伝達応答の曲線下の面積(AUC)を測定した。3つの独立した実験の組合せデータを、AUC±SDの未処理細胞に対するパーセント差として、無関係の抗体CAT-001(a)とBAK502G9(b)について示す(ns=有意ではない(p>0.05)、* p<0.05、** p<0.01)。結果を、ボンフェローニ(Bonferroni’s)多重比較後検定を用いる片側分散分析(ANOVA)により統計的に評価した。
【図26】図26は、第II相で投与したBAK502G9の効果を示す。 図26Aは、ヒスタミン用量応答曲線下の面積で測定したAHRに対する効果を示す(n=14)。 図26Bは、PC30の変化により測定したAHRに対する効果を示す(n=18)。 図26Cは、抗原プライミングに対する効果を示す(n=20)。 図26Dは、BAL炎症に対する効果を示す(n=21)。
【図27】図27は、IL-13誘導CD23発現に対するBAK502G9の効果を示す。データは、IL-13単独(100%)に対する応答のパーセントとして示し、6匹の各ドナーからの6つの異なる実験(三重測定で行った)の平均±SEM%対照として表わす。
【図28】図28は、IL-13及び/又はIL-4誘導PBMC CD23発現に対するBAK502G9と無関係のIgG4の効果を示す。データは、IL-4単独(100%)に対する応答のパーセントとして示し、4匹の各ドナーからの4つの異なる実験(三重測定で行った)の平均±SEM%対照として表わす。
【図29A−B】図29Aは、IL-13/TNF-α/TGF-β1含有培地を用いる48時間培養により誘導されるNHLFエオタキシン-1に対するBAK502G9の効果を示す。データは、白血球の形の変化を誘導するためにこの試験で使用した培地の三重測定の算術平均±SEMとして示す。 図29Bは、1:16希釈の調整培地により誘導されるヒト好酸球の形態変化に対するBAK502G9の効果を示す。データ点は、4つの独立したドナーからの別々の実験の平均±SEM%ブランク培地形態変化である。
【図30】図30は、IL-13キメラの最初のパネルを作成するためのヒトIL-13に導入された変異を強調する、ネズミIL-13に対するヒトIL-13の整列を示す。4つのアルファらせんをボックスで強調してあり、ループ1とループ3を示してある。5つのキメラタンパク質が作成され、らせんB、C及びDとループ1及びループ3がネズミ配列で置換されている。さらに4つのキメラタンパク質が作成され、ヒトプレタンパク質中のアミノ酸に従って番号付けされ(上記の多重整列の番号付けではない)、残基30(上記34位)のアルギニンが変異され、残基33と34(上記37と38位)が変異され、残基37と38(VH)が変異され(上記41と42位)、そして残基40と41(TQ)が変異されている(上記44と45位)。
【図31】図31は、IL-13キメラの第2のパネルを作成するためのヒトIL-13に導入された変異を強調する、ネズミIL-13に対するヒトIL-13の整列を示す。ネズミ残基の代わりにヒト残基が使用された6つのキメラが作成された(ボックスで強調してある)。さらに4つのキメラタンパク質が作成され(番号付けはヒトプレタンパク質中のアミノ酸位置に従う)、残基58(上記図の62位)のロイシンが変異され、残基119(上記残基123)のロイシンが変異され、残基123(上記残基127)のリジンが変異され、そして残基127(上記残基132)のアルギニンが変異されている。
【図32】図32は、ヒトIL-13に作成した変異を示す。暗い灰色の変異はBAK502G9への結合を低下させ、明るい灰色の変異は結合を変化させなかった。プレヒトIL-13と変異残基との線状配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-13に対する単離された特異的結合メンバーであって、ヒト抗体VHドメイン及びヒト抗体VLドメインから構成され、かつCDRのセット、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む抗体抗原結合部位を含み、ここで当該VHドメインが、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、当該VLドメインがLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該CDRのセットが、以下の:
BAK278D6のCDRのセット、ここでHCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有し、LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を有する;
BAK278D6のCDRのセットと比較して1又は2のアミノ酸置換を含むCDRセット、及び
表1の個々のクローンについて示されるCDRの各セット、
からなる群から選択されるCDRセットからなる、前記メンバー。
【請求項2】
前記1又は2の置換が、カバトの標準的番号付けを使用して、CDR内の以下の残基:
HCDR1中の31、32、34
HCDR2中の52、52A、53、54、56、58、60、61、62、64、65
HCDR3中の96、97、98、99、101
LCDR1中の26、27、28、30、31
LCDR2中の56
LCDR3中の95A、97
の1又は2の位置にある、請求項1に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項3】
前記1又は2の置換が、下記の位置:
置換の位置 以下からなる群から選択される置換残基
HCDR1中の31: Q、D、L、G、及びE
HCDR1中の32: T
HCDR1中の34: V、I、及びF
HCDR2中の52: D、N、A、R、G、及びE
HCDR2中の52A D、G、T、P、N、及びY
HCDR2中の53: D、L、A、P、T、S、I、及びR
HCDR2中の54: S、T、D、G、K、及びI
HCDR2中の56: T、E、Q、L、Y、N、V、A、M、及びG
HCDR2中の58: I、L、Q、S、M、H、D、及びK
HCDR2中の60: R
HCDR2中の61: R
HCDR2中の62: K及びG
HCDR2中の64: R
HCDR2中の65: K
HCDR3中の96: R及びD
HCDR3中の97: N、D、T、及びP
HCDR3中の98: R
HCDR3中の99: S、A、I、R、P、及びK
HCDR3中の101: Y
LCDR1中の26: D、S
LCDR1中の27: I、L、M、C、V、K、Y、F、R、T、S、A、H、及びG
LCDR1中の28: V
LCDR1中の30: G
LCDR1中の31: R
LCDR2中の56: T
LCDR3中の95A: N
LCDR3中の97: I
で、各位置についての可能な置換残基の同定された群の中からなされる、請求項2に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項4】
BAK278D6のCDRセットと比較して、HCDR3の残基99とLCDR1の残基27で2の置換が存在する、請求項3に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項5】
S、A、I、R、P及びKからなる群から選択されるHCDR3の残基99での置換、及び/又は、I、L、M、C、V、K、Y、F、R、T、S、A、H及びGからなる群から選択されるLCDR1残基27での置換を有する、請求項4に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項6】
HCDR3の残基99にてNがSに置換され及び/又はLCDR1の残基27にてNがIに置換される前記BAK278D6のCDRセットを含む、請求項4に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項7】
前記VHドメインのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3が生殖細胞系列フレームワーク内にあり、及び/又はVLドメインのLCDR1、LCDR2及びLCDR3が生殖細胞系列フレームワーク内にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項8】
前記VHドメインのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3が生殖細胞系列フレームワークVH1 DP14内にある、請求項7に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項9】
前記VHドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3が生殖細胞系フレームワークVL vλ3h内にある、請求項7又は請求項8の単離された特異的結合メンバー。
【請求項10】
130位のアルギニンがグルタミンにより置換されているヒトIL-13変種に結合する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項11】
非ヒト霊長類IL-13に結合する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項12】
前記非ヒト霊長類IL-13が、アカゲザル(rhesus)又はカニクイザル(cynomolgus)である、請求項11に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項13】
BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)を含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項14】
BAK502G9 VLドメイン(配列番号16)を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項15】
BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)とBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)により形成されるIL-13抗原結合部位の親和性と同等か又はそれより優れた親和性でIL-13に結合する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーであって、ここで特異的結合メンバーの親和性と抗原結合部位の親和性は同じ条件下で測定されることを特徴とする、前記メンバー。
【請求項16】
ヒトIL-13を中和する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項17】
BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)とBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)により形成されるIL-13抗原結合部位の力価と同等か又はそれより優れた力価でヒトIL-13を中和する、請求項16の特異的結合メンバーであって、ここで当該特異的結合メンバーの力価と当該抗原結合部位の力価は同じ条件下で測定されることを特徴とする、前記メンバー。
【請求項18】
scFv抗体分子を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項19】
抗体定常領域を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項20】
全抗体を含む、請求項19の特異的結合メンバー。
【請求項21】
前記全抗体がIgG4である、請求項20の特異的結合メンバー。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの単離された抗体VHドメイン。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの単離された抗体VLドメイン。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー、抗体VHドメイン又はVLドメインと、少なくとも1つの追加の成分とを含む組成物。
【請求項25】
医薬として許容される賦形剤、溶媒、又は担体を含む、請求項24の組成物。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー又は特異的結合メンバーの抗体VHドメイン若しくはVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項27】
請求項26の核酸でインビトロで形質転換された宿主細胞。
【請求項28】
請求項27の宿主細胞を、特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVLドメインの産生のための条件下で培養することを含む、該特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVLドメインの産生方法。
【請求項29】
特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを単離及び/又は精製することをさらに含む、請求項28の方法。
【請求項30】
特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを、少なくとも1つの追加の成分を含む組成物に中に調製することをさらに含む、請求項28又は請求項29の方法。
【請求項31】
ヒトIL-13に特異的な抗体の抗原結合ドメインを産生する方法であって、
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む親VHドメイン[ここで親VHドメインのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3はBAK278D6のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有する)であるか、又はBAK502G9のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号7のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号8のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号9のアミノ酸配列を有する)である]のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、親VHドメインのアミノ酸配列変種であるVHドメインを提供し、場合によりこうして提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組合せて1つ以上のVH/VL組合せを得て;そして
親VHドメインのアミノ酸配列変種である該VHドメイン又はVH/VL組合せを試験して、ヒトIL-13に特異的な抗体の抗原結合ドメインを同定する、ことを含む、前記方法。
【請求項32】
前記親VHドメインアミノ酸配列は配列番号13と配列番号15からなる群から選択される、請求項31の方法。
【請求項33】
前記1以上のVLドメインは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む親VLドメイン[ここで親VLドメインのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3はBAK278D6のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を有する)であるか、又はBAK502G9のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号10のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号11のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号12のアミノ酸配列を有する)である]のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、その各々が親VLドメインのアミノ酸配列変種である1つ以上のVLドメインを産生することにより提供される、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記親VLドメインアミノ酸配列が、配列番号14と配列番号16からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ヒトIL-13に特異的な抗体の抗原結合ドメインを産生する方法であって、
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む親VHドメイン[ここで親VHドメインのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、BAK167A11のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号55のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号56のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号57のアミノ酸配列を有する)であるか、BAK615E3のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号153のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号154のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号155のアミノ酸配列を有する)であるか、BAK582F7のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号141のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号142のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号143のアミノ酸配列を有する)であるか、又はBAK612B5のHCDRのセット(ここで、HCDR1は配列番号147のアミノ酸配列を有し、HCDR2は配列番号148のアミノ酸配列を有し、HCDR3は配列番号149のアミノ酸配列を有する)である]のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、親VHドメインのアミノ酸配列変種であるVHドメインを提供し、場合によりこうして提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組合せて1つ以上のVH/VL組合せを得て;そして
親VHドメインのアミノ酸配列変種である該VHドメイン又はVH/VL組合せを試験して、ヒトIL-13に特異的な抗体の抗原結合ドメインを同定する、ことを含む、前記方法。
【請求項36】
親VHドメインアミノ酸配列は配列番号55と配列番号33からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上のVLドメインが、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む親VLドメイン[ここで親VLドメインのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3は、BAK167A11のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号58のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号59のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号60のアミノ酸配列を有する)であるか、BAK615E3のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号156のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号157のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号158のアミノ酸配列を有する)であるか、BAK582F7のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号144のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号145のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号146のアミノ酸配列を有する)であるか、又はBAK612B5のLCDRのセット(ここで、LCDR1は配列番号150のアミノ酸配列を有し、LCDR2は配列番号151のアミノ酸配列を有し、LCDR3は配列番号152のアミノ酸配列を有する)である]のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、その各々が親VLドメインのアミノ酸配列変種である1つ以上のVLドメインを産生することにより提供される、請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記親VLドメインアミノ酸配列は、配列番号24と配列番号34からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記親VHドメインのアミノ酸配列変種である該VHドメインアミノ酸配列がCDR突然変異誘発により提供される、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
親VHドメインのアミノ酸配列変種である該VHドメインアミノ酸配列がCDR突然変異誘発により提供される、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
IgG、scFv、又はFab抗体分子内に抗体の抗原結合部位をさらに提供することを含む、請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ヒトIL-13に結合する特異的結合メンバーを産生する方法であって、
VHドメインをコードする出発核酸又はそれぞれがVHドメインをコードする核酸の出発レパートリー(ここでVHドメインは、置換されるHCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3を含むか、又はHCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3をコードする領域が欠失する)を提供し;
該出発核酸又は出発レパートリーを、HCDR1(配列番号1)又はHCDR1(配列番号7)、HCDR2(配列番号2)又はHCDR2(配列番号8)、及び/又はHCDR3(配列番号3)又はHCDR3(配列番号9)をコードするか又はこの変異により産生されるドナー核酸と組合せて、該ドナー核酸を出発核酸又は出発レパートリー中のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域中に挿入し、そしてVHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供し;
該生成物レパートリーの核酸を発現させて生成物VHドメインを産生させ;
場合により、該生成物VHドメインを1つ以上のVLドメインと組合せ;
ヒトIL-13に特異的な特異的結合メンバーを選択し(該特異的結合メンバーは生成物VHドメインと、場合によりVLドメインとを含む);そして
該特異的結合メンバー又はこれをコードする核酸を回収する、
ことを含む前記方法。
【請求項43】
前記ドナー核酸は該HCDR1及び/又はHCDR2の変異により産生される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ドナー核酸はHCDR3の変異により産生される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
HCDR3(配列番号3)又はHCDR3(配列番号9)のアミノ酸配列をコードする核酸の変異によりドナー核酸を提供することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
核酸のランダム変異により前記ドナー核酸を提供することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
回収された特異的結合メンバー内に含まれる生成物VHドメインを抗体定常領域に結合させることを含む、請求項42〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
生成物VHドメインとVLドメインとを含むIgG、scFv又はFab抗体を提供することを含む、請求項42〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
ヒトIL-13に結合する抗体の抗原結合ドメイン又は特異的結合メンバーを、ヒトIL-13を中和する能力について試験することをさらに含む、請求項31〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
ヒトIL-13に結合しかつ中和する抗体断片を含む特異的結合メンバーが得られる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体断片がscFv抗体分子である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体断片がFab抗体分子である、請求項50の方法。
【請求項53】
全抗体中に抗体断片のVHドメイン及び/又はVLドメインを提供することをさらに含む、請求項51又は請求項52に記載の方法。
【請求項54】
IL-13に結合する特異的結合メンバー、抗体の抗原結合部位、又はIL-13に結合する抗体の抗原結合部位若しくは特異的結合メンバーの抗体のVH若しくはVL可変ドメインを、少なくとも1つの追加の成分を含む組成物に調製することをさらに含む、請求項31〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ヒトIL-13に結合する特異的結合メンバーをIL-13又はIL-13の断片に結合させることをさらに含む、請求項31〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のIL-13に結合する特異的結合メンバーを、ヒトIL-13又はヒトIL-13の断片に結合させることを含む方法。
【請求項57】
前記結合がインビトロで起きる、請求項55又は請求項56の方法。
【請求項58】
IL-13又はIL-13の断片への特異的結合メンバーの結合量を測定することを含む、請求項55〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における前記特異的結合メンバーの使用をさらに含む、請求項31〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜21のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの使用。
【請求項61】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療方法であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーを、当該疾患又は障害を有するか又は発症するリスクのある患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項62】
ヒト抗体VHドメインとヒト抗体VLドメインから構成され、そしてCDRのセット、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む抗体の抗原結合ドメイン部位を含む、ヒトIL-13の単離された特異的結合メンバーであって、ここで当該VHドメインはHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、当該VLドメインはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
ここでHCDR1は、以下の式:
HX1 HX2 G HX3
(式中、
HX1は、N、Q、D、L、G、及びEからなる群から選択され、
HX2は、Y及びTからなる群から選択され、
HX3は、V、I、F、及びLからなる群から選択される)
を有するアミノ酸配列であり、
HCDR2は、以下の式:
W I HX4 HX5 HX6 HX7 G HX8 T HX9 Y HX10 HX11 HX12 F HX13 HX14
(式中、
HX4は、S、D、N、A、R、G、及びEからなる群から選択され、
HX5は、A、D、G、T、P、N、及びYからなる群から選択され、
HX6は、N、D、L、A、P、T、S、I、及びRからなる群から選択され、
HX7は、N、S、T、D、G、K、及びIからなる群から選択され、
HX8は、D、T、E、Q、L、Y、N、V、A、M、及びGからなる群から選択され、
HX9は、N、I、L、Q、S、M、H、D、及びKからなる群から選択され、
HX10は、G及びRからなる群から選択され、
HX11は、Q及びRからなる群から選択され、
HX12は、E、K、及びGからなる群から選択され、
HX13は、Q及びRからなる群から選択され、
HX14は、G及びKからなる群から選択される)
を有するアミノ酸配列であり、
HCDR3は、以下の式:
D HX15 HX16 HX17 HX18 W A R W HX19 F HX20
(式中、
HX15は、S、R、及びDからなる群から選択され、
HX16は、S、N、D、T、及びPからなる群から選択され、
HX17は、S及びRからなる群から選択され、
HX18は、S、N、A、I、R、P、及びKからなる群から選択され、
HX19は、F及びYからなる群から選択され、
HX20は、D及びYからなる群から選択される)
を有するアミノ酸配列であり、
LCDR1は、以下の式:
G G LX1 LX2 LX3 G LX4 LX5 L V H
(式中、
LX1は、N、D、及びSからなる群から選択され、
LX2は、N、I、L、M、C、V、K、Y、F、R、T、S、A、H、及びGからなる群から選択され、
LX3は、I及びVからなる群から選択され、
LX4は、S及びGからなる群から選択され、
LX5は、K及びRからなる群から選択され)
を有するアミノ酸配列であり、
LCDR2は、以下の式:
D D G D R P LX6
(式中、
LX6は、S及びTからなる群から選択される)
を有するアミノ酸配列であり、
LCDR3は、以下の式:
Q V W D T G S LX7 P V LX8
(式中、
LX7は、D及びNからなる群から選択され、
LX8は、V及びIからなる群から選択される)
を有するアミノ酸配列である、前記メンバー。
【請求項63】
HX1は、D及びNからなる群から選択され、
HX2は、Yであり、
HX3は、Lであり、
HX4は、S及びGからなる群から選択され、
HX5は、T及びAからなる群から選択され、
HX6は、Nであり、
HX7は、N及びIからなる群から選択され、
HX8は、でDあり、
HX9は、N、D、及びKからなる群から選択され、
HX10は、Gであり、
HX12は、E及びGからなる群から選択され、
HX13は、Qであり、
HX19は、Fであり、
LX1は、N及びSからなる群から選択され、
LX2は、N、Y、T、S、及びIからなる群から選択され、
LX6はS、であり、
LX7はDである、請求項62の単離された特異的結合メンバー。
【請求項64】
HX1は、N及びDからなる群から選択され、
HX2は、Yであり、
HX3は、Lであり、
HX4は、S及びGからなる群から選択され、
HX5は、A及びTからなる群から選択され、
HX6は、Nであり、
HX7は、Nであり、
HX8は、D及びGからなる群から選択され、
HX9は、I、S、N、及びDからなる群から選択され、
HX11は、Qであり、
HX12は、E及びKであり、
HX14は、Gであり、
HX15は、Sであり、
HX16は、S及びNからなる群から選択され、
HX17は、Sであり、
HX18は、S及びNからなる群から選択され、
HX19は、Fであり、
HX20は、Dであり、
LX1は、N及びDからなる群から選択され、
LX2は、Iであり、
LX8はVである、 請求項62の単離された特異的結合メンバー。
【請求項65】
HX7は、N、S、T、D、G、及びKからなる群から選択され、
HX8は、D、T、E、Q、L、Y、N、V、A、Mからなる群から選択され、
HX9は、N、I、L、Q、S、M、及びHからなる群から選択され、
HX10は、Gであり、
HX11は、Qであり、
HX12は、Fであり、
HX13は、Qであり、
HX14は、Gであり、
HX15は、Sであり、
HX16は、N及びSからなる群から選択され、
HX17は、Sであり、
HX18は、N及びSからなる群から選択され、
HX19は、Fであり、
HX20は、Dであり、
LX1は、Nであり
LX2は、N及びIからなる群から選択され、
LX3は、Iであり、
LX4は、Sであり、
LX5は、Kであり、
LX6は、Sであり、
LX7は、Dであり、そして
LX8は、Vである、
請求項62に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項66】
HX1は、N、Q、及びDからなる群から選択され、
HX3は、L、V、及びIからなる群から選択され、
HX4は、S、N、A、及びRからなる群から選択され、
HX5は、A、D、T、G、N、及びYからなる群から選択され、
HX6は、N、A、P、S、D、及びIからなる群から選択され、
HX7は、N、T、D、及びGからなる群から選択され、
HX8は、D、Q、Y、及びNからなる群から選択され、
HX9は、N、Q、S、及びIからなる群から選択される、請求項65に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項67】
ヒトIL-13を中和する、請求項62〜66のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項68】
BAK502G9 VHドメイン(配列番号15)とBAK502G9 VLドメイン(配列番号16)により形成されるIL-13抗原結合部位の力価と同等か又はそれより優れた力価でヒトIL-13を中和する、請求項67の特異的結合メンバーであって、ここで特異的結合メンバーの力価と抗原結合部位の力価が同じ条件下で測定されることを特徴とする、前記メンバー。
【請求項69】
scFv抗体分子を含む請求項62〜68のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項70】
抗体定常領域を含む請求項62〜68のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー。
【請求項71】
全抗体を含む、請求項70に記載の特異的結合メンバー。
【請求項72】
前記全抗体がIgG4である、請求項71に記載の特異的結合メンバー。
【請求項73】
130位のアルギニンがグルタミンにより置換されている、ヒトIL-13変種に結合する請求項62〜72のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項74】
非ヒト霊長類IL-13に結合する、請求項62〜72のいずれか1項に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項75】
前記非ヒト霊長類IL-13はアカゲザル(rhesus)又はカニクイザル(cynomolgus)である、請求項74に記載の単離された特異的結合メンバー。
【請求項76】
請求項62〜75のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの単離された抗体VHドメイン。
【請求項77】
請求項62〜75のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの単離された抗体VLドメイン。
【請求項78】
請求項62〜77のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー、抗体VHドメイン又はVLドメイン、及び少なくとも1つの追加の成分を含む組成物。
【請求項79】
医薬として許容される賦形剤、溶媒、又は担体を含む、請求項78の組成物。
【請求項80】
請求項62〜77のいずれか1項に記載の特異的結合メンバー又は特異的結合メンバーの抗体VHドメイン若しくはVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項81】
請求項80に記載の核酸でインビトロにおいて形質転換された宿主細胞。
【請求項82】
特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVLドメインの産生方法であって、請求項81の宿主細胞を前記特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVLドメインの産生のための条件下で培養することを含む前記方法。
【請求項83】
前記特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを単離及び/又は精製することをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
特異的結合メンバー又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを、少なくとも1つの追加の成分を含む組成物に剤形することをさらに含む、請求項82又は請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ヒトIL-13に結合する特異的結合メンバーを、IL-13又はIL-13の断片に結合させることをさらに含む、請求項82〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
請求項62〜75のいずれか1項に記載のIL-13に結合する特異的結合メンバーを、ヒトIL-13又はヒトIL-13の断片に結合させることを含む方法。
【請求項87】
前記結合はインビトロで起きる、請求項85又は請求項86に記載の方法。
【請求項88】
IL-13又はIL-13の断片への特異的結合メンバーの結合量を測定することを含む、請求項85〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における特異的結合メンバーの使用をさらに含む、請求項82〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、炎症性腸疾患、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療のための医薬の製造における、請求項62〜75のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーの使用。
【請求項91】
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、繊維症、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患又は障害の治療方法であって、請求項62〜75のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーを当該疾患又は障害を有するか又は発症するリスクのある患者に投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−C】
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【図5】
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【図6A−C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A−B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A−B】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2007−537702(P2007−537702A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520001(P2006−520001)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003059
【国際公開番号】WO2005/007699
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504246085)ケンブリッジ アンティボディー テクノロジー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】