説明

IL−17拮抗薬を用いた線維症関連疾患治療の方法及び組成物

本発明は、線維症にかかっている患者のインターロイキン−17(IL−17)(例えばIL−17A又はIL−17F、又はそのムテイン)関連疾患を、IL−17拮抗薬を用いて治療するための方法及び組成物に関し、このIL−17拮抗薬は、小分子IL−17拮抗薬又はタンパク質IL−17拮抗薬、例えば、少なくとも1つのIL−17タンパク質、ムテイン、又はその断片に対して特異性を有する抗体(特定の部分又は変異体を含む)などであり、治療用製剤、投与及びデバイスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
優先権.本出願は、米国特許仮出願第60/951,270号(2008年7月23日出願)及び同第60/955,414号(2007年8月13日出願)に対し優先権を主張し、これらの出願はそれぞれ、全文を参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、小分子インターロイキン−17(IL−17)拮抗薬又はタンパク質IL−17拮抗薬、例えば少なくとも1つのIL−17タンパク質、ムテイン、又はその断片に対して特異性を有する抗体(特定の部分又は変異体を含む)のような、IL−17拮抗薬を用いて、線維症にかかっている患者のIL−17関連症状を治療するための方法及び組成物に関し、治療用製剤、投与及びデバイスを含む。
【背景技術】
【0003】
腎線維症は急性発作(例えば移植虚血/再潅流)(フリース(Freese)ら、Nephrol Dial Transplant、2001年、第16号、2401〜2406頁)又は慢性疾患症状(例えば糖尿病)(リッツ(Ritz)ら、Nephrol Dial Transplant、1996年、第11号、補遺9、38〜44頁)のいずれかから発現し得る。その病因は通常、腎糸球体濾過器官及び尿細管間質に最初に炎症反応が起こった後、線維化が持続することとして特徴づけられる(リウY(Liu Y)、Kidney Int、2006年、第69号、213〜217頁)。尿細管間質線維症は、末期の腎不全に対する腎損傷の病因において重要な役割を果たしていることが示されており、近位細管細胞が中心的媒介物質であることが明らかにされている(フィリップス(Phillips)及びステッドマン(Steadman)、Histol Histopathol、2002年、第17号、247〜52頁)(フィリップス(Phillips)、Chang Gung Med J、2007年、第30(1)号、2〜6頁)。尿細管間質区画における線維化は、部分的に、常在線維芽細胞の活性化により媒介され、この常在線維芽細胞は、炎症促進性のサイトカインを分泌し、これが近位細管上皮を刺激して、局所的な炎症及び線維化の媒介物質を分泌する。更に、走化性サイトカインが線維芽細胞及び上皮細胞によって分泌され、単核白血球/マクロファージ及びT細胞を尿細管間質へと湿潤させるよう導く方向付け勾配を供給する。炎症性湿潤により、更に線維化及び炎症性のサイトカインが生成され、更に線維芽細胞及び上皮サイトカインの放出を活性化し、同時に上皮も刺激して表現型移行を起こし、これにより細胞が過剰な細胞外マトリックス成分を沈積させる(シモンソンMS(Simonson MS)、Kidney Int、2007年、第71号、846〜854頁)。
【0004】
インターロイキン−17(IL−17)はT細胞誘導の炎症促進性サイトカインであり、ヒトの腎臓同種移植拒絶反応の際に上方制御される(ヴァン・クーテン(Van Kooten)ら、J Am Soc Nephrol、1998年、第9号、1526〜1534頁)(ルング(Loong)ら、J Path、2002年、第197号、322〜332頁)。IL−17は、近位細管上皮からの炎症促進性媒介物質IL−6、IL−8、補体成分C3、IL−17及びRANTESの産生を刺激する(ヴァン・クーテン(Van Kooten)ら、J Am Soc Nephrol、1998年、第9号、1526〜1534頁)(ウォルトマン(Woltman)ら、J Am Nephrol、2000年、第11号、2044〜55頁)。これらの因子が次に、他の炎症性細胞タイプの間質への補充を媒介し、これが炎症/免疫反応の維持に寄与し、抑制されない場合には線維症及び慢性同種移植腎症の発症に寄与する(ラクセン(Racusen)ら、Kidney Int、1999年、第55号、713〜23頁)(マノン(Mannon)、Am J Transpl、2006年、第6号、867〜75頁)。しかしながら、IL−17が上皮細胞機能に単に、有害な自己分泌又はパラ分泌活性を有する可溶性媒介物質の分泌誘発により間接的に影響を与えているのか、それともIL−17が近位細管上皮に対して直接的な受容体媒介の線維形成促進影響を有しているのかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、IL−17関連線維症の症候を軽減又は除去するための治療に使用するためのヒトIL−17に特異的なヒト抗体、並びに既知の抗体又はその断片に対する改良を供給する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、小分子IL−17拮抗薬又はタンパク質IL−17拮抗薬、例えば、少なくとも1つのヒトインターロイキン−17(IL−17)タンパク質(IL−17A、IL−17F、又はそのムテイン(例えば配列番号1〜4の1つが挙げられるが、これらに限定されない))、又はその断片に対して特異性を有する抗体(特定の部分又は変異体を含む)のような、IL−17拮抗薬を用いて、線維症にかかっている患者のIL−17関連症状を治療するための方法及び組成物に関するものであり、治療用製剤、投与及びデバイスを含む。
【0007】
本発明の方法は、少なくとも1つの線維症の形態にかかっている患者において少なくともインターロイキン−17(IL−17)を阻害するため、少なくとも1つのIL−17拮抗薬をIL−17阻害に有効な量投与することを含む、少なくとも1つのIL−17拮抗薬を用いる方法を提供する。IL−17拮抗薬は、小分子及びタンパク質から選択することができる。小分子は、任意のIL−17拮抗薬から選択することができる。
【0008】
本発明は、IL−17が、腎臓近位細管上皮に対して直接作用することができる線維形成促進因子であり、線維形成促進表現型への移行を誘発することを開示する。線維形成促進性の可溶性媒介物質を、IL−17誘発により分泌することで、腎臓線維形成を間接的に媒介するIL−17の機能についても、ここに示される。IL−17は、線維形成促進遺伝子CTGF、CD44及びTGFβR1の発現を刺激し、これと平行して、上皮形成促進マーカーであるe−カドヘリンの発現を低下させる。e−カドヘリンの下方制御によって示される上皮表現型の喪失は、腎臓線維症の発症における顕著な出来事としてこれまでに示されており、一方、CTGF、CD44及びTGFβR1は病因においてアクティブな役割を果たしていることが明らかにされている(トマス(Thomas)ら、Adv Chr Kid Dis、2005年、第12(2)号、177〜86頁)(アイトナー(Eitner)及びフロージ(Floege)、Curr Op Invest Drugs、2005年、第6(3)号、255〜61頁)(フロークイン(Florquin)及びローショップ(Rouschop)、Kid Int Suppl、2003年10月、第(86)号、S15〜20頁)。更に、IL−17は炎症促進性サイトカイン(IL−6及びIL−8)、並びに、常在上皮との免疫細胞相互作用の免疫細胞化学誘因物質及び媒介物質として作用するいくつかの因子(フラクタルカイン、GM−CSF及びG−CSF)の、分泌を刺激する(スティエバーノL(Stievano L)ら、Crit Rev Immunol、2004年、第24(3)号、205〜28頁)(ガッソンJC(Gasson JC)ら、Prog Clin Biol Res、1990年、第352号、375〜84頁)(アイルズJL(Eyles JL)ら、Nat Clin Pract Rheumatol、2006年9月、第2(9)号、500〜10頁)。腎臓線維化及び腎臓機能低下の主要な原因の構成要素は、正常な上皮構造を破壊することである(トマスMC(Thomas MC)ら、Adv Chron Kid Dis、2005年、第12(2)号、177〜86頁)。IL−17は、密着結合タンパク質である閉鎖帯−1(ZO−1)の減少によって示される、コンフルエントな上皮単層における、細胞間結合の破壊と上皮一体性の低下を実質的に起こす。予備的データでは、前述の、炎症促進性/線維形成促進性媒介物質のIL−17誘発分泌及びZO−1の下方制御は、ヒトIL−17に特異性を有する中和抗体の同時投与によって抑制することができることが示されている。よって我々は、IL−17活性の中和が、炎症性及び/又は線維形成構成要素を表わす腎臓病状の治療に有益であり得ることを提案する。
【0009】
タンパク質は、可溶性受容体、抗体、ペプチド、それらの断片、又はそれらの融合タンパク質から選択することができる。タンパク質は更に、そのタンパク質の血清半減期を増大させる化合物又はタンパク質を含み得る。
【0010】
このような1つの方法において、抗体は、少なくとも1つの重鎖可変領域及び少なくとも1つの軽鎖可変領域を含む、少なくとも1つの可変領域を含み得、そのIL−17抗体は、配列番号1〜3の少なくとも1つと結合する重鎖及び軽鎖可変領域の両方を含む。
【0011】
このような1つの方法において、抗体は、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12Mから選択される少なくとも1つの親和性でIL−17と結合する。抗体は、少なくとも1つのIL−17ポリペプチドの少なくとも1つの活性を実質的に調節することができる。小分子又はタンパク質は、少なくとも1つの製薬上許容できる担体又は希釈剤を更に含む組成物として提供することができる。
【0012】
この方法は更に、検出可能な標識又はリポーター、TNF拮抗薬、抗感染薬、心臓血管(CV)系薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸器薬、胃腸(GI)管薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡薬、血管系作用薬、抗腫瘍薬、免疫調整薬、眼、耳又は鼻用薬、局所薬、栄養製品、サイトカイン、又はサイトカイン拮抗薬の少なくとも1つから選択された、少なくとも1つの化合物又はポリペプチドを投与することを含む。
【0013】
このような1つの方法において、その阻害有効量は、その細胞、組織、器官又は動物に対し0.001〜50mg/kgであり得、例えば0.01〜20mg/kg、1〜10、1〜3、1〜5、0.1〜1、0.2〜2mg/kgなどであるがこれらに限定されない。
【0014】
このような1つの方法において、その投与が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺臓内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも1つの方法によって行うことができる。
【0015】
このような1つの方法において、線維症は器官特異性線維症又は全身性線維症のいずれであってもよい。器官特異性線維症は、肺線維症、肝臓線維症、腎臓線維症(又は腎線維症)、心臓線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症、又はその他の線維症のうち少なくとも1つに関連し得る。肺線維症は、特発性肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス、又は慢性閉塞性肺疾患のうち少なくとも1つに関連し得る。肝臓線維症は、肝硬変、住血吸虫症、又は胆管炎のうち少なくとも1つに関連し得る。肝硬変は、アルコール性肝硬変、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変の中から選択され得る。胆管炎は硬化性胆管炎である。腎臓線維症は、糖尿病性腎症、IgA腎症、移植腎症、又は狼瘡腎炎のうち少なくとも1つに関連し得る。心臓線維症は、心筋梗塞の少なくとも1つの種類に関連し得る。血管線維症は、血管形成術後動脈再狭窄、又はアテローム性動脈硬化の少なくとも1つに関連し得る。皮膚線維症は、火傷瘢痕化、肥厚性瘢痕化、ケロイド、又は腎性線維症皮膚症の少なくとも1つに関連し得る。眼線維症は、後眼窩線維症、白内障手術後又は増殖性硝子網膜症の少なくとも1つに関連し得る。骨髄線維症は、特発性骨髄線維症又は薬剤誘発性骨髄線維症の少なくとも1つに関連し得る。他の線維症は、ペイロニー病、デュピュイトラン拘縮又は皮膚筋炎から選択され得る。全身性線維症は、全身性硬化症及び移植片体宿主病から選択され得る。
【0016】
本発明は、当該技術分野において既知のものと組合せた形で、本明細書に記載され、可能にされた通りに、単離ヒト、霊長類、ゲッ歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化及び/又はCDR移植型抗IL−17抗体、並びにその他の免疫グロブリン由来のタンパク質、断片、分解産物及びそれらの、その他の特定の部分及び変異体、並びに抗IL−17抗体組成物、コードしている核酸又は相補的核酸、ベクター、宿主細胞、組成物、処方物、デバイス、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物並びにその製造及び使用方法を提供する。本明細書に記載されているような本発明の抗体の組成物に加えて、本発明の抗体は、ヒトIL−17に対するその親和性、ヒトIL−17に対する特異性、及びヒトIL−17の生物活性を遮断する能力により定義される。
【0017】
本発明は、本明細書に記載されているような少なくとも1つの抗体、抗体融合タンパク質、又は断片などの(ただしこれらに限定されない)少なくとも1つの単離抗IL−17抗体もまた、提供する。本発明に従った抗体には、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含むあらゆるタンパク質又はペプチド含有分子が含まれ、この免疫グロブリンには例えば、少なくとも1つのリガンド結合ドメインが含まれ(ただしこれらに限定されない)、このリガンド結合ドメインには例えば、重鎖又は軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部が含まれ(ただしこれらに限定されない)、更に所望により、ヒト免疫グロブリンの少なくともCH1、ヒンジ、CH2又はCH3が含まれ得る。少なくとも1つの抗体のアミノ酸配列は更に、所望により、本明細書に記載されているか又は当該技術分野において既知のような、少なくとも1つの特定の置換、挿入又は欠失を含み得る。
【0018】
本発明は、1つの態様において、少なくとも1つの特定の配列、ドメイン、部分又はその変異体を含む、特定の抗IL−17抗体をコードするポリヌクレオチドを含むか、これに対し相補的か、又はこれとハイブリダイズする単離核酸分子を提供する。本発明は更に、前記抗IL−17抗体核酸分子を含む組換えベクター、このような核酸及び/又は組換えベクターを含有する宿主細胞、並びにこのような抗体核酸、ベクター及び/又は宿主細胞の製造及び/又は使用方法をも提供する。
【0019】
本発明の少なくとも1つの抗体は、配列番号1〜3の少なくとも1つ中に提供されているもののような、少なくとも1つのIL−17タンパク質又は変異体又は誘導体に対して特異的な、少なくとも1つの特定のエピトープに結合する。この少なくとも1つのエピトープは、前記タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことができ、このエピトープは好ましくは、前記タンパク質の少なくとも1つの機能的、細胞外、可溶性、親水性、外部若しくは細胞質ドメイン又はその任意の部分といった(ただしこれらに限定されない)その少なくとも一部分の少なくとも1〜5個のアミノ酸で構成されている。
【0020】
少なくとも1つの抗体は、所望により、少なくとも1つの相補的決定領域(CDR)(例えば、重鎖又は軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、又はCDR3)の少なくとも1つの特定部分を含み得;かつ所望により更に、少なくとも1つの定常若しくは可変フレームワーク領域又はその任意の部分を含み、ここにおいてその抗体は、IL−17の細胞表面の受容体への結合、IL−17受容体インターナリゼーション、IL−17刺激によるCa2+可動化、又はその他任意の好適な既知IL−17アッセイのような(ただしこれらに限定されない)活性のうち、少なくとも1つを遮断、阻害又は防止する。このように抗IL−17抗体は、既知の方法によって、IL−17タンパク質に対する少なくとも1つの生物学的活性など(これに限定されない)の対応する活性によってスクリーニングすることができる。
【0021】
本発明は更に、本発明の少なくとも1つのIL−17抗体に対する少なくとも1つのIL−17抗イディオタイプ抗体を提供する。この抗イディオタイプ抗体は、本発明の抗イディオタイプ抗体の中に取込むことのできる、重鎖若しくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)若しくはそのリガンド結合部、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はその任意の部分などの(ただしこれらに限定されない)、少なくとも1つのリガンド結合部(LBP)などの(ただしこれらに限定されない)、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む、あらゆるタンパク質又はペプチド含有分子を包含する。本発明の抗イディオタイプ抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、ゲッ歯類、霊長類などといった(ただしこれらに限定されない)あらゆる哺乳動物を含むか、又はこれらに由来し得る。
【0022】
本発明は、一態様において、少なくとも1つの特定の配列、ドメイン、部分又はその変異体を含む、少なくとも1つのIL−17抗イディオタイプ抗体をコードするポリヌクレオチドを含むか、これに対し相補的か、又はこれとハイブリダイズする単離核酸分子を提供する。本発明は更に、核酸分子をコードする前記IL−17抗イディオタイプ抗体を含む組換えベクター、このような核酸及び/又は組換えベクターを含有する宿主細胞、並びに、このような抗イディオタイプ抗体核酸、ベクター及び/又は宿主細胞の製造及び/又は使用方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、少なくとも1つの抗IL−17抗体が検出可能かつ/又は回収可能な量で発現する条件下で、本明細書に記載されたような宿主細胞を培養する工程を含んでなる、宿主細胞中で少なくとも1つの抗IL−17抗体又はIL−17抗イディオタイプ抗体を発現させるための少なくとも1つの方法をも提供する。
【0024】
本発明はまた、(a)本明細書に記載されているような核酸及び/又は抗体をコードする単離抗IL−17抗体;並びに(b)適切な担体又は希釈剤を含む、少なくとも1つの組成物をも提供する。担体又は希釈剤は所望により製薬上許容できるものであってよく、既知の担体又は希釈剤に準じる。組成物は所望により、更に少なくとも1つの更なる化合物、タンパク質又は組成物を含むことができる。
【0025】
本発明は更に、当該技術分野で既知のような及び/又は本明細書に記載されているような、関連する症状の前後若しくはその間に、及び/又は細胞、組織、器官、動物若しくは患者の中の少なくとも1つのIL−17に関連する症状を調節若しくは治療するべく、治療上有効な量を投与するための、少なくとも1つの抗IL−17抗体方法又は組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明に従った治療的若しくは予防的有効量の少なくとも1つの抗IL−17抗体の少なくとも1つの組成物、デバイス及び/又は送達用方法をも提供する。
【0027】
本発明は更に、当該技術分野で既知のような及び/又は本明細書に記載されているような、関連する症状の前後若しくはその間に、及び/又は細胞、組織、器官、動物若しくは患者の中の少なくとも1つのIL−17関連に関連する症状について診断を下すための、少なくとも1つの抗IL−17抗体方法又は組成物を提供する。
【0028】
本発明はまた、本発明に従った少なくとも1つの抗IL−17抗体を診断するための少なくとも1つの組成物、デバイス及び/又は送達用方法をも提供する。
【0029】
少なくとも1つの抗体は所望により更に、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12Mから選択される少なくとも1つの親和性でIL−17に結合することと、少なくとも1つのIL−17タンパク質の少なくとも1つの活性を実質的に中和することのうちの、少なくとも1つのことを行うことができる。同様に提供されるのは、少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体をコードする単離核酸、単離核酸を含む単離核酸ベクター及び/又は単離核酸を含む原核生物宿主若しくは真核生物宿主細胞である。該宿主細胞は、所望により、NSO、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、Hep G2、YB2/0、SP2/0、HeLa、骨髄腫若しくはリンパ腫細胞、又はそのあらゆる誘導体、それらの不死化若しくは形質転換細胞から選択される、少なくとも1つのものであり得る。同様に提供されるのは、IL−17抗体が検出可能な又は回収可能な量で発現するように、インビトロ、インビボ又はインサイチュ条件下で核酸をコードする抗体を翻訳することを含んでなる、少なくとも1つの抗IL−17抗体の産生方法である。
【0030】
同様に提供されるのは、少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体及び少なくとも1つの製薬上許容できる担体又は希釈剤を含む組成物である。
【0031】
同様に提供されるのは、細胞、組織、器官又は動物内のIL−17に関連する症状を診断又は治療するための方法であって、(a)前記細胞、組織、器官又は動物を、有効量の本発明の少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体を含む組成物と接触させること又はそれらに対しこのような組成物を投与することを含んでなる方法である。
【0032】
同様に提供されるのは、本発明の少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体を含む医療デバイスであって、前記デバイスは、非経口、皮下、筋内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内又は経皮から選択される少なくとも1つの様式により、少なくとも1つの抗IL−17抗体を接触させる又は投与することに適する。
【0033】
同様に提供されるのは、本発明の少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体を溶液、微粒子又は凍結乾燥形態で含む包装材料及び容器を含む、ヒトの製薬又は診断用途向けの製造品である。
【0034】
同様に提供されるのは、抗体を回収可能な量で発現する能力をもつ宿主細胞又はトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物又は植物細胞を提供することを含んでなる、本発明の少なくとも1つの単離された哺乳動物抗IL−17抗体の産生方法である。本発明で更に提供されるのは、上述の方法により産生された少なくとも1つの抗IL−17抗体である。
【0035】
本発明は更に、本明細書に記載する任意の発明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ヒト腎臓近位細管上皮細胞の線維形成促進遺伝子発現に対するIL−17の影響。IL−17(10ng/mL)は上皮促進遺伝子e−カドヘリンの発現を顕著に低下させ(2.04倍、P<0.05)、かつ線維形成促進遺伝子CTGF及びCD44の発現を顕著に増加させた(それぞれ、2.67倍、P<0.0001、及び1.57倍、P<0.001)。
【0037】
IL−17(100ng/mL)はまた、TGFβR1発現を顕著に増加させた(1.49倍、P<0.05)。これらのデータは、IL−17がヒト腎臓近位細管上皮において線維形成促進反応を引き出す能力があることを示す。
【0038】
【図2】ヒト腎臓近位細管上皮細胞における可溶性の線維形成促進媒介物質の分泌に対するIL−17の影響。IL−17はすべての濃度において、IL−6(A)、IL−8(B)、VEGF(C)、フラクタルカイン(D)、GM−CSF(E)及びG−CSF(F)の分泌を顕著に増加させた(1、10、100ng/mL、P<0.05)。比較のため、TGF−β1(特徴がよく知られた強力な線維化因子)の影響が調べられた。TGF−β1はすべての濃度においてVEGF及びGM−CSFの分泌を顕著に刺激したが、IL−17刺激の強さほどではなかった。TGF−β1は1ng/mLでIL−8の分泌を、及び10ng/mLでG−CSFの分泌を、それぞれ増加させた。IL−6分泌に対する影響はなかった。興味深いことに、TGF−β1はすべての濃度においてフラクタルカイン分泌を阻害した。これらのデータから、IL−17は、直接的な線維形成促進の表現型移行に加え、上皮による可溶性炎症/線維形成促進媒介物質の分泌を媒介することにより、腎臓の炎症/線維化を推進するが、他の線維形成促進媒介物質とは異なる影響を有する可能性もある。
【0039】
【図3】IL−17刺激による線維形成促進因子分泌の抗体媒介による中和。この予備的研究は、炎症/線維形成促進媒介物質のIL−17媒介による分泌が、中和抗体治療によって阻害される可能性があることを示している。IL−17(10ng/mL)をモノクローナル抗IL−17抗体(120ng/mL)と共にプレインキュベーションすることにより、腎上皮によるIL−6(A)、IL−8(B)、VEGF(C)、フラクタルカイン(D)及びGM−CSF(E)の分泌のIL−17刺激が、未処理の対照標準に近いレベルにまで低下した。これらのデータは、炎症/線維形成促進因子の分泌に対するIL−17の刺激影響が容易に阻害されることを示唆し、これはIL−17が腎臓の炎症/線維症の減衰のための実行可能な標的であることを示している。
【0040】
【図4】ヒト腎臓近位細管上皮細胞におけるIL−17誘導によるZO−1の下方制御と、中和抗IL−17抗体による阻害。IL−17(50ng/mL)は、未処理の対照標準細胞(A)に比べ、ZO−1免疫活性(B)を実質的に低下させた。IL−17を、中和抗IL−17抗体(0.6mg/mL)と共にプレインキュベーションすると、IL−17誘導によるZO−1(C)の下方制御が防止された。IL−17をIgGlイソタイプ対照標準と共にプレインキュベーションしたところ、ZO−1の下方制御(D)の阻害に失敗し、これは、IL−17の作用と抗体阻害の両方の特異性を示している(倍率約×200)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、小分子インターロイキン−17(IL−17)拮抗薬又はタンパク質IL−17拮抗薬、例えば少なくとも1つのIL−17タンパク質(IL−17A、IL−17F、又はそのムテイン(例えば配列番号1〜4の1つが挙げられるが、これらに限定されない))、又はその断片に対して特異性を有する抗体(特定の部分又は変異体を含む)のような、IL−17拮抗薬を用いて、少なくとも1つの形態の線維症にかかっている患者のIL−17関連症状を治療するための方法及び組成物に関し、治療用製剤、投与及びデバイスを含む。
【0042】
本発明は、少なくとも1つの精製、単離、組換え及び/又は合成の、抗IL−17ヒト抗体、霊長類抗体、ゲッ歯類抗体、哺乳動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、改変抗体、又はCDR移植抗体、及びそれらに対するIL−17抗イディオタイプ抗体、並びに少なくとも1つの抗IL−17抗体又は抗イディオタイプ抗体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物及びコードする核酸分子を提供する。本発明は更に、このような核酸並びに抗体及び抗イディオタイプ抗体の製造並びに使用方法を含むが、これらに限定されない、診断用及び治療用組成物、方法及びデバイスを含む。
【0043】
引用:本明細書で引用される全ての刊行物又は特許は、本発明の時点の当該技術分野の状態を示すため、参考として本明細書に全体が組み入れられ、及び/又は本発明の説明及び使用可能性を提供する。発行物とは、任意の科学的又は特許公開、又は全ての記録、電子、又は印刷形式を含む任意のメディア形式で入手可能な任意の他の情報を意味する。以下の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:オースベル(Ausubel)ら編、「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)(ニューヨーク州ニューヨーク)、(1987〜2004年);サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989年);ハーロー(Harlow)及びレーン(Lane)、「抗体、実験室マニュアル(antibodies, a Laboratory Manual)」、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989年);コリガン(Colligan)ら編、「免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)ニューヨーク(1994〜2007年);コリガン(Colligan)ら、「タンパク質科学の最新プロトコル(Current Protocols in Protein Science)」ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)(ニューヨーク州ニューヨーク)(1997〜2007年)。
【0044】
略記
aa:アミノ酸;BSA:ウシ血清アルブミン;CDR:相補性決定領域;ECL:電気化学発光;HuCAL(登録商標):ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリ;HSA:ヒト血清アルブミン;IL−17:インターロイキン−17;Ig:免疫グロブリン;IPTG:イソプロピルβ−D−チオガラクトシド;mAb:モノクローナル抗体;PBS:リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);SET:溶液平衡滴定;VH:免疫グロブリン重鎖可変領域;VL:免疫グロブリン軽鎖可変領域。
【0045】
定義
本明細書で使用するとき、「抗CCL2抗体」、「抗IL−17抗体」、「抗IL−17抗体部分」若しくは、「抗IL−17抗体断片」及び/又は「抗IL−17抗体変異体」などは、本発明の抗体の中に取り込むことのできる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含むあらゆるタンパク質又はペプチド含有分子を含み、これには例えば、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部、重鎖又は軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖定常領域、フレームワーク領域又はその任意の一部分、又はIL−17受容体若しくは結合タンパク質の少なくとも一部分が挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は所望により、更に、特定のリガンドに影響を及ぼし、例えばこのような抗体は、インビトロ、インサイチュ及び/又はインビボで、少なくとも1つのIL−17活性若しくは結合、又はIL−17受容体活性若しくは結合を、調節、低減、増大、拮抗、作動、軽減、緩和、遮断、阻害、無効化、及び/又は干渉するが、これらに限定されない。非限定的な例として、本発明の好適な抗IL−17抗体、その特定部分、又は変異体は、少なくとも1つのIL−17又はその特定部分、変異体若しくはドメインを結合することができる。IL−17タンパク質の非限定的な例としては、IL−17A、IL−17F、又はそのムテインが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、配列番号1〜4の1つ、若しくは断片、又はそれらのムテインであるが、これらに限定されない)。
【0046】
本明細書で使用するとき、「エピトープ」とは、抗体に特異的に結合することができるタンパク質のセグメント又は特性を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性な分子表面基から成り、通常、特定の3次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。立体構造的エピトープ及び非立体構造的エピトープは、変性溶媒の存在下で、立体構造エピトープに対する結合が失われるが、非立体構造的エピトープに対する結合は失われないという点で区別される。IL−17の線形配列の様々な部分からのアミノ酸が3次元空間内でごく近接して集まるときに発生する、IL−17分子の立体構造的折り畳みの結果としてもたらされるタンパク質エピトープが含まれる。
【0047】
本明細書で使用するとき「ヒト抗体」という用語は、そのタンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えばCH1、CH2、CH3)、ヒンジ、(VL、VH))がヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の組換え事象に由来、又は、成熟ヒト抗体配列に由来する抗体を意味する。ヒトから単離された抗体に加えて、このようなヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系遺伝子との免疫反応を開始する能力をもつトランスジェニックマウスに免疫付与することによって得ることができ(ロンバーグ(Lonberg)ら、Int Rev Immunol、13(1):65〜93頁(1995年)、及びフィッシュウォルド(Fishwald)ら、Nat Biotechnol、14(7):845〜851頁(1996年))、又は、本明細書に記載されているようなヒト抗体レパートリーライブラリから選択することができる。このようなヒト遺伝子配列の供給源は、任意の適切なライブラリ内で見出すことができ、例えばヒト抗体遺伝子データベースであるVBASE(http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc)若しくはその翻訳産物、又はヒト抗体をそのアミノ酸配列類似性に基づいた群に分類しているhttp://people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s/に見出すことができる。この定義の範囲に入るのは、1つ又はそれ以上のヒト抗体配列からのフレームワーク領域、及び2つの異なるヒト又は非ヒト供給源からのCDR領域を含む、複合抗体又はヒト複合抗体の機能的断片である。「ヒト抗体」の定義には、生殖細胞系及び再構成されたヒト抗体配列の両方からのフレームワーク領域、並びに2つの異なる供給源抗体からのCDR領域を含有する、複合抗体又はヒト複合抗体の機能的断片が含まれる。本開示に従ったヒト複合抗体又はヒト複合抗体の機能的断片は、1つ又はそれ以上のヒト抗体配列からのフレームワーク領域、及びヒト若しくは非ヒト抗体配列由来のCDR領域を含み、又は完全に合成であってもよい。このように、ヒト抗体は、キメラ又はヒト化抗体とは区別される。ヒト抗体が、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現する能力をもつ非ヒト動物又は原核若しくは真核細胞により産生され得るということが指摘されている。更に、ヒト抗体が1本鎖抗体である場合、これはネイティブのヒト抗体の中に見出されないリンカーペプチドを含む可能性がある。例えば、Fvは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域を連結する2〜約8個のグリシン又はその他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含み得る。このようなリンカーペプチドはヒト由来のものと見なされる。
【0048】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する、実質的に置換された配列部分を有するキメラ抗体である。通常、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR(超可変領域としても知られている相補性決定領域)残基が、望ましい特異性、親和性及び能力をもつマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)からのCDR残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基により置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体内に見出されない残基を含むことがある。これらの改変は、抗体性能を更に高めるように行われる。一般にヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、このドメインにおいては、超可変領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、所望により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒトIgG免疫グロブリンの一部分を含むことになる。更なる詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature、第321号、522〜525頁(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、Nature、第332号、323〜329頁(1988年);及びプレスタ(Presta)、Curr.Op.Struct.Biol.、第2号、593〜596頁(1992年)を参照のこと。
【0049】
本明細書で使用するとき、抗体のKdとは、既定の抗原についての抗体の解離定数KDを意味し、特異的標的に対する抗体の親和性の尺度である。高親和性抗体は、既定の抗原について、10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、更により好ましくは10-10M以下であるKDを有する。本明細書で使用するとき、「Kdis」若しくは「KD」又は「Kd」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味するよう意図されている。「KD」は、結合速度(k1)又は「オン速度(kon)」に対する、解離速度(k2)(「オフ速度(koff)」とも呼ばれる)の比である。よってKDはk2/k1又はkoff/konに等しく、モル濃度(M)で表わされる。当然、KDが小さくなるほど、結合は強くなる。よって、KDが10-6M(又は1マイクロM)とは、10-9M(又は1nM)に比べ、弱い結合を表わす。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「〜に対する特異性」及び「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、他の抗原又はタンパク質に対するよりも大きな親和性をもって、既定の抗原に抗体が結合することを意味する。典型的には、抗体は、解離定数(KD)が10-7M以下で結合し、既定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、又はその他任意の特定のポリペプチド)に結合するためのKDに比べ、少なくとも2分の1のKDで、既定の抗原に結合する。「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、ここでは「抗原に対し特異的に結合する抗体」又は「抗原特異的抗体」、例えばMCP特異的抗体、という用語と互換的に用いられる。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「IL−17拮抗薬小分子」とは、IL−17活性を阻害し、治療用に可能性のあるものとして用いることができる、任意の適切な化学的化合物を意味する。このような化合物は当該技術分野において既知であり、例えばインドール誘導体、環状アミン誘導体、ウレイド誘導体、複素環式化合物、アニリド、及び機能性ピロールであって、CCR2Bに対するCCL2結合を遮断する能力を有するもの、並びに/又はCCR1若しくはCCL2自体の阻害が挙げられ、これらは国際特許公開第9905279号(1999年)、同第9916876号(1999年)、同第9912968号、同第9934818号、同第9909178号、同第9907351号、同第9907678号、同第9940913号、同第9940914号、同第0046195号、同第0046196号、同第0046197号、同第0046198号、同第0046199号、同第9925686号、同第0069815号、同第0069432号、同第9932468号、同第9806703号、同第9904770号、同第99045791号に開示されており、これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
1.本発明の抗体の調製
単離及び/又はIL−17タンパク質若しくはその一部分(合成ペプチドなどの合成分子を含む)のような、ヒトIL−17タンパク質又はその断片に対して特異的なヒト抗体の調製は、当該技術分野において既知のあらゆる適切な技術を用いて実施可能である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知のさまざまな技術を用いて産生可能である。1つの実施形態において、ヒト抗体は、1つのファージライブラリから選択することができ、ここでそのファージライブラリはヒト抗体を発現するものである(ヴォーン(Vaughan)ら(et Io al.)Nature Biotechnology、第14号、309〜314頁(1996年);シーツ(Sheets)ら、PITAS(USA)、第95号、6157〜6162頁(1998年));フーゲンブーム(Hoogenboom)及びウィンター(Winter)、J.Mol.Biol、第227号、381頁(1991年);マークス(Marks)ら、J.Mol.Biol、第222号、581頁(1991年))。
【0053】
ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているトランスジェニック動物(例えばマウス)の中に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作成することもできる。例えば、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子、及び機能的再構成を受けることのできるヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウスは、ヒトIL−17又はその断片で免疫付与され、抗体の産生を引き起こすことができる。所望により、本明細書に記載されているように、及び/又は当該技術分野において既知のように、抗体産生細胞を単離し、ハイブリドーマ又はその他の不死化抗体産生細胞を調製することができる。別の方法として、抗体、特定の部分、又は変異体を、適切な宿主細胞内で、コードする核酸又はその一部分を用いて発現させることができる。
【0054】
適当な抗原に曝露したとき、遺伝子再構成、組立て及び抗体レパートリーを含む全ての面で、ヒトについて見られるものに非常に似ているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及びマークス(Marks)ら、Bio/Technology、第10号、779〜783頁(1992年);ロンバーグ(Lonberg)ら、Nature、第368号、856〜859頁(1994年);モリソン(Morrison)、Nature、第368号、812〜13頁(1994年);フィッシュワイルド(Fishwild)ら、Nature Biotechnology、第14号、845〜51頁(1996年);ニューバーガー(Neuberger)、Nature Biotechnology、第14号、826頁(1996年);ロンバーグ(Lonberg)及びヒューザー(Huezar)、Intern.Rev.Immunol.、第13号、65〜93頁(1995年)といった科学刊行物に記載されている。別の方法としては、ヒト抗体は、標的抗原に対応する抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化によって調製可能である(このようなBリンパ球は、個体から回収しても、又はインビトロで免疫してもよい)。例えばコール(Cole)ら、「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、アランR.リス(Alan R. Liss)、77頁(1985年);ベーナー(Boerner)ら、J.Immunol、第147(1)号、86〜95頁(1991年);及び米国特許第5,750,373号を参照されたい。抗体産生細胞は、対象とする抗原で免疫されたヒト又はその他の適切な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。その他の任意の適切な宿主細胞を使用して、本発明の抗体、特定の断片、又はその変異体をコードする異種の又は内因性の核酸を発現させることも可能である。選択的培養条件又はその他の適切な既知の方法を用いて、融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞を単離し、限界希釈法若しくは細胞選別、又はその他の既知の方法によりクローニングすることができる。望ましい特異性をもつ抗体を産生する細胞を、適切なアッセイ(例えばELISA)により選択することができる。
【0055】
1つのアプローチにおいて、適切な不死細胞株(例えばSp2/0、Sp2/0−AG14、NSO、NSl、NS2、AE−I、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SSl、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA−I、JURKAT、WEHI、K−562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL−60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2Aなどの骨髄腫細胞株があるが、これらに限定されない)若しくはヘテロ骨髄腫、その融合産物、又は任意の細胞若しくはそれらから誘導された融合細胞、又は当該技術分野において既知の任意のその他の適切な細胞株を融合させることによって、ハイブリドーマが作製される。例えばwww.atcc.org、又はwww.lifetech.comなどにおいて、単離若しくはクローニングされた脾臓、末梢血、リンパ液、扁桃腺、又はその他の免疫細胞若しくはB細胞含有細胞、又は、内因性若しくは異種核酸のいずれとしてであれ、又は、組換え若しくは内因性のいずれとしてであれ、重鎖若しくは軽鎖の、定常若しくは可変若しくはフレームワーク若しくはCDR配列を発現するあらゆるその他の細胞、ウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚類、哺乳動物、ゲッ歯類、ウマ、ヒツジ類、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、1本鎖、2本鎖若しくは3本鎖、ハイブリダイズされたものなど、又はこれらの組合せなどであるが、これらに限定されない、抗体産生細胞について、参照されたい。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれているオースベル(Ausubel)上掲書及びコリガン(Colligan)上掲書、Immunology、第2章を参照されたい。
【0056】
ヒトIL−17に結合し、定義された重鎖又は軽鎖可変領域を含むヒト抗体は、ファージディスプレイなどの適切な方法を用いて調製可能である(カツベ、Y(Katsube, Y.)ら、MJ Mol.Med、第1(5)号、863〜868頁(1998年))。用いることができる必要な特異性を有する抗体を産生する又は単離する、他の適切な方法としては、ペプチド又はタンパク質ライブラリ(例えばバクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどであるが、これらに限定されない、ディスプレイライブラリ;例えば、Cambridge antibody Technologies(イギリス・ケンブリッジシャー(Cambridgeshire));MorphoSys(ドイツ・マルティンスリート/プラネック(Martinsreid/Planegg));Biovation(英国スコットランド、アバディーン(Aberdeen));Biolnvent(スウェーデン、ルンド(Lund));Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite;Xoma(カリフォルニア州バークリー(Berkeley));Ixsysから入手可能なものから組み換え抗体を選択する方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願PCT/GB91/01134号;国際出願PCT/GB92/01755号;国際出願PCT/GB92/002240号;国際出願PCT/GB92/00883号;国際出願PCT/GB93/00605号;米国特許出願第08/350260号(5/12/94);国際出願PCT/GB94/01422号;国際出願PCT/GB94/02662号;国際出願PCT/GB97/01835号;(CAT/MRC);国際公開第90/14443号;国際公開第90/14424号;国際公開第90/14430号;国際出願PCT/US94/1234号;国際公開第92/18619号;国際公開第96/07754号;(Scripps);国際公開第96/13583号、国際公開第97/08320号(MorphoSys);国際公開第95/16027号(Biolnvent);国際公開第88/06630号;国際公開第90/3809号(Dyax);米国特許第4,704,692号(Enzon);国際出願PCT/US91/02989号(Affymax);国際公開第89/06283号;欧州特許第371 998号;欧州特許第550 400号;(Xoma);欧州特許第229 046号;国際出願PCT/US91/07149号(Ixsys);又は確率論的に産生されたペプチド又はタンパク質−米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590 689号(Ixsys、現在はApplied Molecular Evolution(AME)、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる)、又はトランスジェニック動物の免疫付与(例えばSCIDマウス、グエン(Nguyen)ら、Microbiol.Immunol.、第41号、901〜907頁(1997年);サンドゥ(Sandhu)ら、Crit.Rev.Biotechnol.、第16号、95〜118頁(1996年);エレン(Eren)ら、Immunol.、第93号、154〜161頁(1998年)を参照(それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる))に依存しているものを参照されたい。
【0057】
抗体を生産するその他の適切な方法
当該技術分野で既知であり、及び/又は本明細書に記載されている通り、ヒト抗体のレパートリーを産生することができる、本発明の抗体を産生するためのその他の方法。このような技術としては、リボソームディスプレイ(ヘインズ(Hanes)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第94号、4937〜4942頁(1997年5月);(ヘインズ(Hanes)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第95号、14130〜14135頁(1998年11月));単一細胞抗体産生技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、ウェン(Wen)ら、J.Immunol.、第17号、887〜892頁(1987年);バブコック(Babcook)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第93号、7843〜7848頁(1996年));ゲル微液滴とフローサイトメトリー(パウエル(Powell)ら、Biotechnol.、第8号、333〜337頁(1990年);ワンセルシステムズ(One Cell Systems)(マサチューセッツ州ケンブリッジ);グレイ(Gray)ら、J.Imm.Meth.、第182号、155〜163頁(1995年);ケニー(Kenny)ら、Bio/Technol.、第13号、787〜790頁(1995年));B細胞選択(B-cell selection)(スティーンバッカーズ(Steenbakkers)ら、Molec.Biol.Reports、第19号、125〜134頁(1994年);ジョナク(Jonak)ら、「プログレス・バイオテック(Progress Biotech)、第5巻、「ハイブリドーマ技術におけるインビトロ免疫(In Vitro Immunization in Hybridoma Technology)」、バレベック(Borrebaeck)編、エルゼビア・サイエンス・パブリッシャーズB.V.(Elsevier Science Publishers B.V.)(オランダ・アムステルダム)(1988年))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
非ヒト抗体又はヒト抗体を改変又はヒト化するための方法も同様に使用でき、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化又は改変された抗体は、例えばマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又はその他の哺乳動物などの(ただしこれらに限定されない)ヒト以外の供給源からの1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変領域、定常領域又はその他のドメインから取られる。既知のヒトIg配列は当該技術分野において周知であり、任意の既知の配列であり得る。改変されたヒト化抗体の結合、立体構造、及び減少した免疫原性を最適化するためのさまざまな戦略が、例えばプレスタ(Presta)ら、J Immunol.、第151号、2623〜2632頁、1993年、国際公開第200302019号及び国際公開第2005080432号で記述されている。
【0059】
このようなインポートされた配列は、免疫原性を減少させるため、又は、当該技術分野において既知のように、結合、親和性、オン速度、オフ速度、結合活性、特異性、半減期、又はその他の適切な任意の特性を低減、増強又は改変するために使用することができる。一般的に、可変領域及び定常領域の非ヒト配列がヒト又はその他のアミノ酸に置き換えられている一方で、非ヒト又はヒトCDR配列の一部分又は全てが維持されている。抗体は、所望により、抗原に対する高い親和性及びその他の有利な生物学的特性を伴い、ヒト化することもできる。この目的を達成するため、所望により、ヒト化抗体を、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用した、親配列及びさまざまな概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製することが可能である。3次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補の免疫グロブリン配列について、可能性の高い3次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基の役割として可能性の高いものの分析、すなわち候補の免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列から、FR残基を選択し組合せることができる。一般的に、CDR残基は抗原結合に対する影響において、直接的かつ最も実質的に関与している。本発明の抗体のヒト化又は改変は、任意の既知の方法を使用して実施することができ、例えばウィンター(Winter)(ジョーンズ(Jones)ら、Nature、第321号、522頁(1986年);ライヒマン(Riechmann)ら、Nature、第332号、323頁(1988年);ヴァーホイエン(Verhoeyen)ら、Science、第239号、1534頁(1988年))、シムズ(Sims)ら、J.Immunol.、第151号、2296頁(1993年);チョシア(Chothia)及びレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.、第196号、901頁(1987年)、カーター(Carter)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、第89号、4285頁(1992年);プレスタ(Presta)ら、J.Immunol.、第151号、2623頁(1993年)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願PCT/US98/16280号、US96/18978号、US91/09630号、US91/05939号、US94/01234号、GB89/01334号、GB91/01134号、GB92/01755号;国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号が挙げられ(これらに限定されない)、これらはそれぞれ、その中に引用されている参考文献を含め、全文が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0060】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを産生できるトランスジェニックマウスは、既知の方法で産生可能である(例えば、ロンバーグ(Lonberg)らの米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号;ジャコボヴィッツ(Jakobovits)らの国際公開第98/50433号、ジャコボヴィッツ(Jakobovits)らの国際公開第98/24893号、ロンバーグ(Lonberg)らの国際公開第98/24884号、ロンバーグ(Lonberg)らの国際公開第97/13852号、ロンバーグ(Lonberg)らの国際公開第94/25585号、クチェルラパテ(Kucherlapate)ら、国際公開第96/34096号、クチェルラパテ(Kucherlapate)ら、欧州特許第0463 151(B1)号、クチェルラパテ(Kucherlapate)ら、欧州特許公開第0710 719(A1)号、スラニ(Surani)ら、米国特許第5,545,807号、ブリュッゲマン(Bruggemann)ら、国際公開第90/04036号、ブリュッゲマン(Bruggemann)ら、欧州特許第0438 474(B1)号、ロンバーグ(Lonberg)ら、欧州特許公開第0814 259(A2)号、ロンバーグ(Lonberg)ら、英国特許公開第2 272 440(A)号、ロンバーグ(Lonberg)ら、Nature、第368号、856〜859頁(1994)、テイラー(Taylor)ら、Int.Immunol.、第6(4)号、579〜591頁(1994年)、グリーン(Green)ら、Nature Genetics、第7号、13〜21頁(1994年)、メンデス(Mendez)ら、Nature Genetics、第15号、146〜156頁(1997年)、テイラー(Taylor)ら、Nucleic Acids Research、第20(23)号、6287〜6295頁(1992年)、ツアイロン(Tuaillon)ら、Proc Natl Acad Sd USA、第90(8)号、3720〜3724頁(1993年)、ロンバーグ(Lonberg)ら、Int Rev Immunol、第13(1)号、65〜93頁(1995年)及びフィッシュウォルド(Fishwald)ら、Nat Biotechnol、14(7)号、845〜851頁(1996年)が挙げられ(これらに限定されない)、それぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。)一般に、これらのマウスは、機能的に再構成されているか、又は機能的に再構成され得る、少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座からのDNAを含む少なくとも1つの導入遺伝子を含む。このようなマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を分断又は欠失させて、内因性遺伝子によりコードされた抗体を産生する動物の能力を除去することができる。
【0061】
類似タンパク質又は断片への特異的結合に関する抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して、便利に達成することができる。この方法は、望ましい機能又は構造をもつ個々のメンバーについてペプチドの大規模コレクションをスクリーニングすることを含む。ペプチドディスプレイライブラリの抗体スクリーニングは、当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列の長さは、3〜5000個又はそれ以上のアミノ酸、しばしば5〜100個のアミノ酸、更にしばしば約8〜25個のアミノ酸であり得る。ペプチドライブラリを作成するための直接的な化学合成方法に加えて、複数の組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプには、バクテリオファージ又は細胞の、表面上のペプチド配列のディスプレイが関与している。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有する。このような方法は、国際公開第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。ペプチドのライブラリを作成するためのその他のシステムは、インビトロ化学合成及び組換え方法の両方の特徴を有している。国際公開第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。また、米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクター及びスクリーニングキットはインビトロジェン(Invitrogen)(カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad))及びケンブリッジ・アンチボディ・テクノロジーズ(Cambridge antibody Technologies)(英国ケンブリッジシャー(Cambridgeshire))などの供給業者から市販されている。例えば、エンゾン(Enzon)の所有する米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号;ディアックス(Dyax)の所有する米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、アフィマックス(Affymax)の所有する米国特許第5427908号、同第5580717号;ケンブリッジ・アンチボディ・テクノロジーズ(Cambridge antibody Technologies)の所有する米国特許第5885793号;ジェネンティック(Genentech)の所有する米国特許第5750373号、ゾーマ(Xoma)の所有する米国特許第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、コリガン(Colligan)(上掲書);オースベル(Ausubel)(上掲書);又はサムブルック(Sambrook)(上掲書)を参照されたい(上述の特許及び刊行物はそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0062】
2.本発明の核酸
本明細書に提供されている情報を用いて、少なくとも1つの抗IL−17抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記述される方法又は当該技術分野において既知の方法を用いて入手することができる。本発明の単離核酸分子には、本明細書に記載されているように、及び/又は当該技術分野において既知のように、1つ又はそれ以上のイントロン(例えば、少なくとも1つの重鎖又は軽鎖のCDR1、CDR2及び/又はCDR3といった少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定の部分であるが、これらに限定されない)を所望により伴う読取り枠(ORF)を含む核酸分子;抗IL−17抗体又は可変領域のためのコード配列を含む核酸分子;及び、上記に説明されているものとは実質に異なるヌクレオチド配列を含むものでありながら、遺伝コードの縮退に起因して、少なくとも1つの抗IL−17抗体を依然としてコードする、核酸分子が含まれ得る。当然のことながら、遺伝コードは、当該技術分野においてよく知られている。したがって、当業者には、本発明の特異的な抗IL−17抗体をコードする、これらの変性核酸変異体を作製することは、日常的であるだろう。例えばオースベル(Ausubel)ら上掲書を参照されたく、このような核酸変異体は、本発明に含まれる。
【0063】
本明細書に記されているように、抗IL−17抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子には、単独で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの;全抗体又はその一部分についてのコード配列;1つの抗体、断片又は一部分についてのコード配列並びに付加的配列、例えばスプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む、転写、mRNAプロセッシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列(例えばリボソーム結合及びmRNAの安定性)といった非コード5’及び3’配列を含むが、これらに限定されない、付加的な非コード配列を伴う、少なくとも1つのイントロンなどの、前述の付加的なコード配列を伴うか否かを問わない、少なくとも1つのシグナルリーダー又は融合ペプチドのコード配列;付加的なアミノ酸(例えば付加的な機能を提供するものなど)についてコードする付加的なコード配列、が含まれる可能性があるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコード化する配列は、抗体断片又は部分を含む融合された抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列などのマーカー配列に融合させることができる。
【0064】
本明細書に記載されているポリヌクレオチドに対して選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド:本発明は、選択的ハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示されているポリヌクレオチドにハイブリダイズする単離核酸を提供する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、このようなポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、蓄積されたライブラリにおける部分又は全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。一部の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳動物の核酸ライブラリからのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0065】
好ましくは、cDNAライブラリは全長配列の少なくとも80%、好ましくは全長配列の少なくとも85%又は90%、及びより好ましくは全長配列の少なくとも95%を含む。cDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるために正規化され得る。ストリンジェンシーが低度又は中程度のハイブリダイゼーション条件が、典型的であり(ただし排他的ではなく)、相補的な配列に対して低い配列同一性をもつ配列を伴い、利用される。ストリンジェンシーが中程度及び高度の条件は、所望により、より高い同一性をもつ配列について利用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オルソロガス又はパラロガス配列を同定するために利用できる。
【0066】
所望により、本発明のポリヌクレオチドは本明細書に記載されているポリヌクレオチドによってコードされる抗体の少なくとも一つの部分をコードすることになる。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションのために利用可能な核酸配列を包含する。例えば、オースベル(Ausubel)上掲書、コリガン(Colligan)上掲書を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
核酸の構築:本発明の単離核酸は、当該技術分野において周知のように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はこれらの組合せを用いて作ることができる。
【0068】
核酸を構築するための組換え方法:例えば、RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組合せのような、本発明の単離核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング手順を用いて生物学的な供給源から得ることができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の望ましい配列を同定するために使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者にとって周知である(例えば、オースベル(Ausubel)上掲書又はサムブルック(Sambrook)上掲書を参照されたい)。
【0069】
核酸スクリーニング及び単離方法:本明細書で開示されているような、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを用いて、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。同じ又は異なる生体内の相同遺伝子を単離するため、ゲノムDNA又はcDNA配列とハイブリダイズするためにプローブを使用することができる。当業者であれば、アッセイ中でさまざまな度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかがストリンジェントであり得るということは明らかだろう。ハイブリダイゼーションのための条件がストリンジェントになるにつれて、二重鎖形成が生じるための、プローブと標的の間に必要な相補性の程度は大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドのような部分的な変性溶媒の存在のうちの、1つ又はそれ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば0%〜50%の範囲内のホルムアミド濃度の操作を通して反応溶液の極性を変えることにより都合良く変更される。検出可能な結合のために必要な相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーに従って変化する。相補性の程度は、最適には100%、又は70〜100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマー内のわずかな配列変動は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低減させることで補償できるということを理解すべきである。
【0070】
RNA又はDNAの増幅方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書中で紹介する教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用可能である。DNA又はRNA増幅の既知の方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び関連する増幅プロセスが含まれるが、これらに限定されない(マリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,202号(1987年);及びイニス(Innis)ら、「PCRプロトコル方法及び適用ガイド(PCR Protocols A Guide to Methods and Applications)、編、アカデミック・プレス社(Academic Press Inc.)(カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego))(1990年)。
【0071】
核酸を構築するための合成方法:本発明の単離核酸は、既知の方法による直接化学合成によっても調製可能である(例えば、オースベル(Ausubel)ら上掲書を参照)。化学合成は、一般に、相補的配列とのハイブリダイゼーション、又は単鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼでの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な単鎖オリゴヌクレオチドを生成する。当業者であれば、DNAの化学合成が約100以上の塩基の配列に限定され得る一方で、より長い配列は、より短い配列の連結によって得ることができることを認識するであろう。コード配列の化学的合成のための特に好ましい方法が、米国特許第6521427号及び同第6670127号に教示されている。
【0072】
3.ベクターと発現系
本発明は、抗IL−17抗体をコードする核酸を含有するか、又は、様々な抗体HC若しくはLC遺伝子又はそれらの一部分を含有するプラスミドを得るために使用可能なベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。本明細書で使用するとき、用語「ベクター」は、連結された別の核酸を輸送する能力をもつ核酸分子を意味する。ベクターの一種である「プラスミド」は、環状2本鎖DNAループを意味し、追加のDNAセグメントがこれに連結され得る。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントが、このウイルスゲノムに連結され得る。本発明は、本発明の単離核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子組換えされている宿主細胞、及び当該技術分野において周知であるような組換え技術による少なくとも1つの抗IL−17抗体の産生にも関連する。例えばサムブルック(Sambrook)ら上掲書;オースベル(Ausubel)ら上掲書を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
抗体又はその抗体断片の発現のためには、部分的な又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に、機能的に連結されるような形で発現カセット又はベクター内に挿入することができる。抗体をコードするカセットは、1つの構築物として組み立てることができる。当該技術分野において既知の方法を用いて、構築物を調製することができる。より大きなプラスミドの一部として、構築物を調製することができる。このような調製は、適正な構築物のクローニング及び選択を効率良い方法で可能にする。この構築物は、それらを残りのプラスミド配列から容易に単離できるような形で、プラスミド又はその他のベクター上の都合の良い制限酵素認識部位の間に配置することができる。
【0074】
一般的に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又はDEAE−デキストランの荷電脂質との錯体内に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。宿主細胞内へのベクター構築物の導入は、電気穿孔法又はその他の既知の方法により行うこともできる。このような方法については、サムブルック(Sambrook)上掲書、第1〜4及び16〜18章;オースベル(Ausubel)上掲書、第1、9、13、15、16章などのように、当該技術分野において記述されている。
【0075】
この文脈において、「機能的に連結される」という用語は、抗体遺伝子がベクターに連結されて、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するというそれらの意図される機能を果たすことを意味することが意図される。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、個別のベクターに挿入することができるが、又はより典型的には、両遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相捕的制限酵素認識部位の連結、又は制限酵素認識部位が存在しない場合には平滑末端連結)によって発現ベクターに挿入される。
【0076】
本明細書に記載される抗体の軽鎖及び重鎖可変領域を使用し、望ましいアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコード化している発現ベクターにそれらを挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を形成して、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントに機能的に連結され、VIセグメントがベクター内のCLセグメントに機能的に連結されるようにする。更に又はあるいは、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進する、シグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、ベクターにクローン化されて、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるようにすることができる。シグナルぺプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであるか、又は異種シグナルぺプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0077】
原核又は真核宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞及び最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現は、原核細胞よりも、適切に折り畳まれ免疫学的に活性である抗体を、組み立てて分泌する可能性が高いため、このような真核細胞、及び特に哺乳動物細胞が、最も好適である。
【0078】
一般に、哺乳動物発現ベクターは、(1)通常、ウイルスプロモーター又はエンハンサー配列の形をしており、広い範囲の宿主及び組織により特徴づけられる調節エレメント;(2)プラスミドベクター内部の抗体コード配列を含むDNA断片の挿入を促進する「ポリリンカー」配列;及び(3)mRNA転写産物のイントロンスプライシング及びポリアデニル化に対応する配列、を含有する。プロモーター・ポリリンカー・ポリアデニル化部位の隣接領域は、一般に転写単位と呼ばれる。ベクターは、(4)大腸菌(E. coli)内の初期陽性形質転換体の選択を可能にする、抗生物質(例えばアンピシリン)に対する耐性をしばしば付与する、選択可能なマーカー遺伝子(例えばベータ−ラクタマーゼ遺伝子);及び(5)細菌宿主及び哺乳動物宿主の両方において、ベクターの複製を促進する配列、をも含む可能性が高くなる。プラスミド複製起点が、大腸菌内での発現構築物の増殖のために含まれており、Cos細胞内の一過性発現のために、SV40複製起点が発現プラスミド中に含まれている。
【0079】
プロモーターは、SV40プロモーター(例えば後期又は初期SV40プロモーター)、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセラートキナーゼ)プロモーター、EF−1アルファプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーターから選択され得る。
【0080】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むが、これは任意である。このようなマーカーとしては、例えば、メトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号)、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又は真核細胞培養に耐性のあるグルタミン合成酵素(GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号)、並びに、大腸菌及び他の細菌又は原核生物において培養するためのテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない(上記の特許は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、当該技術分野において知られている。適切なベクターは、当事者にとって容易に明白となる。
【0081】
真核宿主細胞が利用されるとき、通常、ベクター内にポリアデニル化又は転写ターミネーター配列が組み込まれる。ターミネーター配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含めることができる。スプライシング配列の一例としては、SV40由来のVP1イントロンがある(スプラーグ(Sprague)ら、J.Virol.、第45号、773〜781頁(1983年))。更に、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列を、当該技術分野において既知の通りに、ベクター内に組み込むことができる。また、重鎖分子の高い表面発現を回避するためには、膜貫通ドメイン変異体スプライスを排除するような発現ベクターを使用する必要があり得る。
【0082】
付加的な要素としては、エンハンサー、コザック配列、及びRNAスプライシングのためのドナー及びアクセプター部位により隣接された介在配列が挙げられる。高効率の転写は、SV40からの初期及び後期プロモーター、レトロウイルスからの長末端反復(LTRS)、例えばRSV、HTLVI、HIVI、及びサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターで達成可能である。しかしながら、細胞要素も同様に使用可能である(例えばヒトアクチンプロモーター)。本発明を実践する上で使用するための適切な発現ベクターとしては例えば、pIRES1neo、pRetro−Off、pRetro−On、PLXSN、又はpLNCX(クローンテック・ラブズ(Clonetech Labs)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto))、pcDNA3.1(+/−)、pcDNA/Zeo(+/−)若しくはpcDNA3.1/Hygro(+/−)(Invitrogen)、PSVL及びPMSG(ファルマシア(Pharmacia)、スウェーデン、ウプサラ(Uppsala))、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)及びpBC12MI(ATCC 67109)といったベクターが含まれる。
【0083】
別の方法としては、染色体内に組み込まれた遺伝子を含む安定した細胞株において、抗体配列をコードする核酸を発現させることができる。dhfr、gpt、ネオマイシン又はハイグロマイシンなどの選択可能なマーカーでの同時トランスフェクションにより、コードされた抗体を大量に発現するトランスフェクショトされた細胞の同定及び単離が可能となる。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーは、対象とする遺伝子の数百またあ数千ものコピーを擁する細胞株を開発するのに有用である。もう1つの有用な選択マーカーは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(マーフィー(Murphy)ら、Biochem.J.、第227号、277〜279頁(1991年);ベビングトン(Bebbington)ら、Bio/Technology、第10号、169〜175頁(1992年))。これらのマーカーを用いて、哺乳動物細胞を選択培地内で増殖させ、最高の耐性をもつ細胞を選択する。これらの細胞株は、染色体内に組み込まれた増幅遺伝子を含有する。抗体の産生には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びNSO細胞がしばしば用いられる。
【0084】
本発明の抗体の生産において用いられるDNA構築物は、所望により、少なくとも1つのインシュレーター配列を含むことができる。「インシュレーター」、「インシュレーター配列」及び「インシュレーター要素」という用語は本明細書では互換的に使用される。インシュレーター要素は、その活動範囲内に置かれた遺伝子の転写を遮断するものの、遺伝子発現をマイナス又はプラスのいずれにも動揺させない制御要素である。好ましくは、インシュレーター配列は、転写されるべきDNA配列のいずれかの側に挿入される。例えば、インシュレーターは、対象とする遺伝子の3’末端でプロモーターから少なくとも約1kb〜5kb、プロモーターから5’で、約200bp〜約1kbのところに配置することができる。プロモーター及び対象とする遺伝子の3’末端からのインシュレーター配列の距離は、対象とする遺伝子の相対的サイズ、構築物中で用いられるプロモーター及びエンハンサーに応じて、当業者が決定することができる。更に、2つ以上のインシュレーター配列をプロモーターから5’の位置、又は導入遺伝子の3’末端に配置することができる。例えば、プロモーターから5’の位置に2つ又はそれ以上のインシュレーター配列を配置することができる。導入遺伝子の3’末端にあるインシュレーターは、対象とする遺伝子の3’末端又は3’調節配列の3’末端、例えば3’非翻訳領域(UTR)又は3’隣接配列に配置することが可能である。
【0085】
適切な誘発性非融合大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc(アマン(Amann)ら、(1988年)Gene、第69号、301〜315頁)及びpET 11d(スタディア(Studier)ら、「遺伝子発現技術:酵素学における手法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology)」第185号、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)(1990年)60〜89頁)が挙げられる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存している。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現したたウイルスRNAポリメラーゼ(T7gn1)により媒介されたT7 gn10−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下で、T7 gn1遺伝子を擁する常在lプロファージからの宿主菌株BL21(DE3)又はHMS174(DE3)によって供給される。
【0086】
別の実施形態において、発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(バルダリ(Baldari)ら、(1987年)EMBO J.、第6号、229〜234頁)、pMFa(クルヤン(Kurjan)及びヘルスコウィッツ(Herskowitz)、(1982年)Cell、第30号、933〜943頁)、pJRY88(シュルツ(Schultz)ら、(1987年)、Gene、第54号、113〜123頁)、pYES2(インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)、カリフォルニア州サンディエゴ)、及びpPicZ(インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)、カリフォルニア州サンディエゴ)が挙げられる。
【0087】
あるいは、発現ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。培養された昆虫細胞(例えばSf9細胞)内でのタンパク質の発現のために利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(スミス(Smith)ら、(1983年)Mol.CellBiol.、第3号、2156〜2165頁)及びpVLシリーズ(ラクロウ(Lucklow)及びサマーズ(Summers)(1989年)Virology、第170号、31〜39頁)が挙げられる。
【0088】
更に別の実施形態において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞内で発現する。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(シード(Seed)(1987年)、Nature、第329号、840頁)及びpMT2PC(カウフマン(Kaufman)ら、(1987年)EMBO J.、第6号、187〜195頁)が挙げられる。哺乳動物細胞内で使用される場合、発現ベクターの制御機能はしばしば、ウイルスの調節要素により提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアンウイルス40に由来する。原核と真核の両方の細胞の他の好適な発現系については、サムブルック(Sambrook)ら、上掲書の第16章及び17章を参照のこと。
【0089】
別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、リンパ腫細胞(例えばマウス骨髄腫細胞)などの特定の細胞型の中で優先的に核酸の発現を導く能力を有する。特定の細胞型においては、核酸を発現するために、組織特異的調節要素が使用される。組織特異的調節要素は、当該技術分野において既知である。適切な組織特異的プロモーターの、非制限的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;ピンカート(Pinkert)ら、(1987年)Genes Dev.、第1号、268〜277頁)、リンパ系特異的プロモーター(カラム(Calame)及びイートン(Eaton)、(1988年)Adv.Immunol.、第43号、235〜275頁)、特に、T細胞受容体のプロモーター(ウィノト(Winoto)及びボルチモア(Baltimore)、(1989年)EMBO J.、第8号、729〜733頁)、及び免疫グロブリン(バナージ(Banerji)ら、(1983年)Cell、第33号、729〜740頁;クイーン(Queen)及びボルチモア(Baltimore)(1983年)Cell、第33号、741〜748頁)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;バーン(Byrne)及びラドル(Ruddle)、(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第86号、5473〜5477頁)、膵臓特異的プロモーター(エドルンド(Edlund)ら、(1985年)Science、第230号、912〜916頁)、並びに乳腺特異的プロモーター(例えば乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州特許出願公報第264,166号)が挙げられる。例えば、マウスhoxプロモーター(ケッセル(Kessel)及びグルス(Gruss)(1990年)Science、第249号、374〜379頁)及びa−フェトタンパク質プロモーター(キャンプス(Campes)及びティルマン(Tilghman)(1989年)Genes Dev.、第3号、537〜546頁)などにより、発生学的に調節されているプロモーターも包含されている。
【0090】
本発明は更に、アンチセンス配向で発現ベクター内にクローニングされたDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、ポリペプチドをコードするmRNAに対しアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を可能にするような形で、調節配列に機能的に連結されている。さまざまな細胞型内でアンチセンスRNA分子の連続的発現を導くような、アンチセンス配向でクローニングされた核酸に機能的に連結された調節配列を、選択することができる。例えば、アンチセンスRNAの構成性、組織特異的又は細胞型特異的発現を導くような、ウイルスプロモーター及び/若しくはエンハンサー、又は調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミド、又は弱毒化ウイルスの形をしている可能性があり、これらにおいては、高効率調節領域の制御下でアンチセンス核酸が生成され、ベクターが導入される細胞型によって活性が決定され得る。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の調節の議論については、ワイントローブ(Weintraub)ら(「レビュー−遺伝子学のトレンド(Reviews-Trends in Genetics)」第1(1)巻、1986年)を参照されたい。
【0091】
骨髄腫細胞のクローニング及び発現
M−T412として知られている、ヒトCD4に対するキメラマウス/ヒトIgG1kモノクローナル抗体(欧州特許第0511308号、参照によりその全体が組み込まれる)が、トランスフェクトされたマウス骨髄腫細胞内で高レベルに発現することが観察された(ルーニー(Looney)ら、1992年、Hum Antibodies Hybridomas、第3(4)号、191〜200頁)。1990年、セントコア社(Centocor, Inc.)(ペンシルバニア州マルヴァン(Malvern))で、培養条件を最適化するのに多大な努力を払うことなく、500mg/Lを超える生成レベル(pg/細胞/日に基づく具体的な生産性は不明)が、容易に得られている。これらの発現ベクターの構成要素に基づき、遺伝子プロモーター/転写開始核酸配列、5’非翻訳配列及び翻訳開始核酸配列、シグナル配列をコードする核酸配列、シグナルイントロン及びJ−Cイントロンのためのイントロン/エキソンスプライスドナー配列、並びにJ−Cイントロンエンハンサー核酸配列を含む、HC及びLCクローニングに有用な抗体クローニングベクターが開発された。
【0092】
pUC19プラスミドであるプラスミドp139は、全マウスM−T412Abを分泌するC123ハイブリドーマ細胞からクローニングされた5.8kbのEcoRI−EcoRIゲノム断片を含む。この断片は、cM−T412HC遺伝子のプロモーター及びV領域部分を含有する。LC V領域ベクター改変用の出発材料は、C123ハイブリドーマ細胞からクローニングされた3kbのHindIII−HindIIIゲノム断片を含有するpUCプラスミドである、プラスミドp39であった。この断片は、cM−T412LC遺伝子のプロモーター及びV領域部分を含有する。P139及びp39由来の改変されたベクターは、1)V領域ベクター内の特別に調製された制限酵素認識部位間で対象とする配列をコードするDNAをクローニングし、これにより、V領域コード配列をベクターにコードされたシグナル配列のすぐ下流側、並びに遺伝子プロモーターの一部分又は全部の下流側に配置する工程と;2)V領域ベクターからC領域ベクターまで好適な配向で挿入された配列を擁する断片を移動させ、これにより、結果として得られたプラスミドが細胞内での発現に適した最終的発現プラスミドを構成する工程とを伴う、2段階プロセスにおいて、哺乳動物宿主細胞内で発現するのに適したHC又はLC遺伝子の好都合な組立てを可能にするように設計された(スキャロン(Scallon)ら、1995年、Cytokine、第7(8)号、759〜769頁)。
【0093】
CHO細胞内でのクローニング及び発現
プラスミドpC4は、プラスミドpSV2−dhfr(ATCCアクセッション番号37146)の誘導体である。このプラスミドは、SV40初期プロモーターの制御下でマウスDHFR遺伝子を含む。これらのプラスミドでトランスフェクトされるチャイニーズハムスターの卵巣又はその他の細胞で、ジヒドロ葉酸活性が欠如したものを、化学療法剤メトトレキサートを添加した選択培地(例えば、アルファマイナスMEM(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲイザーズバーグ(Gaithersburg))の中で細胞を増殖させることによって選択することができる。メトトレキサート(MTX)に対する耐性をもつ細胞内のDHFR遺伝子の増幅は、文献により充分に知られている(例えば、F.W.オルト(F.W. Alt)ら、J.Biol.Chem.、第253号、1357〜1370頁(1978年);L.L.ハムリン(L.L. Hamlin)及びC.マ(C. Ma)、Biochem.et Biophys.Acta、第1097号、107〜143頁(1990年);及びM.L.ページ(M.L. Page)及びM.A.シデンハム(M.A. Sydenham)、Biotechnology、第9号、64〜68頁(1991年)を参照されたい)。MTXの濃度の増加の中で増殖した細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として、標的酵素であるDHFRを過剰産生することにより、薬物に対する耐性を生じる。第2の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合は、通常、同時増幅され、かつ過剰発現する。当該技術分野において、増幅遺伝子の1,000コピー以上を擁する細胞株を発生させるために、このアプローチを使用できることが知られている。その後、メトトレキサートが除去された時点で、宿主細胞の1つ又はそれ以上の染色体の中に組み込まれた増幅遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0094】
プラスミドpC4は、対象とする遺伝子を発現するために、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)の強力なプロモーター(カレン(Cullen)ら、Molec.Cell.Biol.、第5号、438〜447頁(1985年))と、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期遺伝子のエンハンサーから単離された断片(ボシャート(Boshart)ら、Cell、第41号、521〜530頁(1985年))とを含有している。このプロモーターの下流側には、遺伝子の組み込みを可能にするBamHI、XbaI、及びAsp718制限酵素切断部位がある。このプラスミドは、これらのクローニング部位の後ろに、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン及びポリアデニル化部位を有している。発現のためには、例えばヒトb−アクチンプロモーター、SV40初期若しくは後期プロモーター、又は例えばHIV及びHTLVIなどの他のレトロウイルスからの長末端反復といった、その他の高効率プロモーターを使用することもできる。哺乳動物細胞内で制御された方法でIL−17抗体を発現するためには、クローンテック(Clontech)社のテットオフ(Tet-Off)及びテットオン(Tet-On)遺伝子発現系及び類似の系を使用することができる(M.ゴッセン(M. Gossen)及びH.ブジャード(H. Bujard)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第89号、5547〜5551頁(1992年))。mRNAのポリアデニル化のためには、例えばヒト成長ホルモン又はグロビン遺伝子からの他のシグナルを同様に使用することもできる。
【0095】
4.抗体産生用の宿主細胞
本発明の少なくとも1つの抗IL−17抗体は、所望により、当該技術分野において周知の細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団によって産生され得る。例えばオースベル(Ausubel)ら編、「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)(ニューヨーク州ニューヨーク)、(1987〜2004年);サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989年);ハーロー(Harlow)及びレーン(Lane)、「抗体、実験室マニュアル(antibodies, a Laboratory Manual)」、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク、(1989年);コリガン(Colligan)ら編、「免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)ニューヨーク(1994〜2004年);コリガン(Colligan)ら、「タンパク質科学の最新プロトコル(Current Protocols in Protein Science)」ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)(ニューヨーク州ニューヨーク)(1997〜2004年)を参照されたい。これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれている。
【0096】
生物薬剤製品を生産するためには、組換えポリペプチドを効率良く、再現可能に発現する能力がある生産細胞株が必要とされる。この細胞株は、安定していて確かなものである。さまざまな宿主細胞株を、この目的で利用することができる。細胞機構がどのように生物学的薬物製品の最終的な量及び組成に影響を及ぼすのかという複雑さを理解するにつれて、製品の生産及び組成に対し必要な属性を付与することになる宿主細胞株の選択は、より明白なものとなる。
【0097】
連続的ゲノムDNA配列から転写される大部分の遺伝子とは異なり、抗体遺伝子は、生殖系列内で広く分離され得る遺伝子セグメントから組立てられる。特に、抗体の可変(V)、多様性(D)及び連結(J)/定常(C)領域をコードする3つのゲノムセグメントの組合せにより、重鎖遺伝子が形成される。機能的軽鎖遺伝子は、V領域をコードするものとJ/C領域をコードするものとの2つの遺伝子セグメントを接合することにより、形成される。重鎖及びカッパ軽鎖遺伝子座の両方が、全長が1000kbをはるかに超えると推定される数多くのV遺伝子セグメント(推定値は100s〜1000sの間で変動)を含む。これとは対照的に、ラムダ遺伝子座ははるかに小さく、マウス内の16番染色体上で全長が約300kbであることが示されている。これは、2つの可変遺伝子セグメントと4つの連結/定常(J/C)領域遺伝子セグメントから成る。機能的遺伝子の形成には、V及びJ/C要素の間の組換えが必要である。
【0098】
抗体が自然に産生されるB細胞の中では、再構成重鎖とカッパ軽鎖遺伝子の両方の転写の制御が、V領域の上流側の組織特異的プロモーター及びJ−Cイントロン内に位置づけられる組織特異的エンハンサーの両方の活性に依存する。これらの要素は相乗的に作用する。また、第2のB細胞特異的エンハンサーが、カッパ軽鎖遺伝子座内で同定されている。この更なるエンハンサーは、Ckappaの下流側9kbに位置している。したがって、抗体発現遺伝子を不死化するハイブリドーマ方法は、親B細胞結合の内因性プロモーター及びエンハンサー配列に依存している。別の方法としては、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含む宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知である。これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0099】
人工ベクター内への抗体ゲノムDNAのクローニングは、抗体発現能力をもつ宿主細胞を作製するもう1つの方法である。しかしながら、強力なプロモーターによるモノクローナル抗体の発現は、高生産性細胞株を同定しモノクローナル抗体のより高い収量を得る確率を増大させる。本発明の抗体は、例えば、当該技術分野において周知のように、組み換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション方法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生することもできる(例えばモリソンS.(Morrison, S.)(1985年)Science、第229号、1202頁)。
【0100】
さまざまな異なる宿主細胞における、抗体を含む生物薬剤のクローニング及び発現のための系が周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルス系、並びにトランスジェニック植物及び動物が挙げられる。非相同ポリペプチドのインタクトなグリコシル化タンパク質の発現のための当該技術分野において利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎細胞(BHK)、NSOマウス黒色腫細胞及び派生細胞株、例えばSP2/0、YB2/0(ATC CRL−1662)ラット骨髄腫細胞、ヒト胚腎臓細胞(HEK)、ヒト胚網膜細胞PerC.6細胞、hepG2細胞、BSC−1(例えばATCC CRL−26)、及び例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、バージニア州マナサス(Manassas))(www.atcc.org)から入手可能なその他の数多くのものが挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌である。
【0101】
非相同遺伝子の安定した発現のためには、CHO細胞、骨髄腫細胞、HEK293細胞、BHK細胞(BHK21、ATCC CRL−10)、マウスLtk−細胞及びNIH3T3細胞といったような哺乳動物細胞がしばしば用いられている。これとは対照的に、組換えタンパク質の一時的な発現のためには、Cos(COS−1 ATCC CRL1650;COS−7、ATCC CRL−1651)及びHEK293などの細胞株が、日常的に用いられる。
【0102】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞としては、その高い発現速度のため、Sp2/0、YB2/0(ATC CRL−1662)、NSO、及びP3X63.Ag8.653(例えば、SP2/0−Ag14)といったような骨髄腫細胞が挙げられる。特に、NSO骨髄腫細胞に使用するための、別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号、国際公開第89/01036号及び欧州特許第338,841号において開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入されると、宿主細胞内での抗体の発現を可能にするのに、又はより好ましくはその宿主細胞が増殖する培養培地内への抗体の分泌を可能にするのに充分な時間、宿主細胞を培養することによって、抗体が産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収することができる。
【0103】
抗体、その特定の部分又は変異体の産生にとって有用な細胞培養の一例としては哺乳動物細胞がある。哺乳動物細胞系は、しばしば細胞の単層の形をとるが、哺乳動物細胞の懸濁液又はバイオリアクターも使用可能である。
【0104】
インタクトなグリコシル化タンパク質を発現可能な多数の適切な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS−1(例えばATCC CRL 1650)、COS−7(例えばATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL−10)、CHO(例えばATCC CRL 1610)及びBSC−1(例えばATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hepG2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞などを含み、これらは例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、バージニア州マナサス(Manassas))(www.atcc.org)から容易に入手できる。好適な宿主細胞には、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系起源の細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞はP3X63Ag8.653細胞(ATCCアクセッション番号CRL−1580)及びSP2/0−Ag14細胞(ATCCアクセッション番号CRL−1851)である。
【0105】
CHO−K1及びDHFR−CHO細胞DG44及びDUK−B11(G.ウルラウブ(G.Urlaub)、L.A.チェーシン(L.A. Chasin)、1980年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、第77号、4216〜4220頁)が、高レベルのタンパク質産生のために使用されるが、これは、対象とする遺伝子の増幅が、例えば薬物メトトレキサート(MTX)を用いた選択可能かつ増幅可能なマーカーDHFRの取込みによって可能になるためである(RJ.カウフマン(R.J. Kaufman)、1990年、Methods Enzymol.、第185号、537〜566頁)。高レベルで組換えmAbを産生するためには、DHFR−CHO細胞を使用するとうまくいく。DHFR−CHOは80〜110mg 106細胞-1-1の速度で、又は200mg 106細胞-1-1を超える速度で、抗IL−17抗体を産生し得る。これらCHO細胞内のH鎖及びL鎖の発現を得るために、例えば、b−アクチンプロモーター、ヒトCMV MIEプロモーター、Adウイルス主要後期プロモーター(MLP)、RSVプロモーター、及びマウス白血病ウイルスLTRなど、さまざまな種類のプロモーターが用いられている。mAb発現のための数多くのベクターが文献に記述されており、その中で、独立した選択可能/増幅可能なマーカーとともに2つの異なるプラスミドにより2つのIg鎖が保有されている。DHFRマーカーに連結された1つの抗体鎖(H鎖など)、及びNeorマーカーを伴うL鎖発現カセット、又はその反対を含んでいるベクターを用いて、スピナーフラスコ内で、最高180mgL-17日-1のヒト化mAbを得ることができる。初期選択及びその後の増幅のために用いられる方法は変えることができ、当業者にとって周知である。一般に、以下の工程を用いて、高レベルのmAb発現を得ることができる:候補クローンの初期選択及びその後の増幅、同時選択(例えばH鎖及びL鎖発現ベクターの両方がDHFR発現単位を保有している場合)及び増幅、様々な増幅可能マーカーを用いた同時増幅、並びに大量培養中の初期選択及び増幅とそれに続く個々の高発現クローンを同定するための希釈クローニング。組み込み部位がH鎖及びL鎖の発現及び全体的なmAb発現の効率に影響を及ぼし得ることから、2つのIg鎖発現単位が縦一列に並んでいる単一のベクターが作り出されている。これらのベクターはまた、Neor及びDHFR発現カセットといったような優性選択可能マーカーを保有している。検討のために、ギャングリー,S.(Ganguly, S)及びA.シャツマン(A. Shatzman)、「発現システム、哺乳類細胞(Expression Systems, mammalian cells)」、バイオプロセス技術百科:発酵、生物触媒、及びバイオセパレーション(Encyclopedia of Bioprocess Technology: Fermentation, Biocatalysis, and Bioseparation)、1999年、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)を参照されたい。
【0106】
コケット(Cockett)ら、(1990年、Bio/Technology、第8号、662〜667頁)は、CHO細胞中での非相同遺伝子の高レベル発現のためのGS系を開発した。CHO−K1細胞内へのcDNA(hCMVプロモーターの転写制御下)及びGSミニ遺伝子(SV40後期プロモーターの制御下)を含む発現ベクターのCHO−K1細胞へのトランスフェクション(及びそれに続く20mM〜500mMのMSXでの選択)を用いて、DHFR−CHO系のものに相当する収率で本発明の抗体を発現するクローンを得ることができる。GS系については欧州特許第0 216 846号、同第0 256 055号、及び同第323 997号、並びに欧州特許出願第89303964.4号に関連して、全体的に又は部分的に論述されている。
【0107】
非限定例として、組み換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉は、例えば、誘導プロモーターを使用して、大量の組み換えタンパク質を提供するためにうまく使用されている。例えばクレーマー(Cramer)ら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、第240号、95〜118頁(1999)、及びその中で引用された参考文献を参照のこと。またトランスジェニックトウモロコシは、他の組み換え系において産生されるか、又は天然源から精製されるものと同等の生物活性で、商業生産レベルで哺乳類タンパク質を発現させるために使用されている。例えばフッド(Hood)ら、Adv.Exp.Med.Biol.、第464号、127〜147頁(1999年)及びその中で引用された参考文献を参照されたい。また単鎖抗体(scFv)等の抗体断片を含む抗体は、タバコの種及びジャガイモ塊茎等のトランスジェニック植物の種から大量に産生されている。例えばコンラッド(Conrad)ら、Plant Mol.Biol.、第38号、101〜109頁(1998)及びその中で引用された参考文献を参照されたい。したがって、本発明の抗体は、周知の方法に基づいて、トランスジェニック植物を使用して産生することもできる。例えばフィッシャー(Fischer)ら、Biotechnol.Appl.Biochem.、第30号、99〜108頁(1999年10月)、マ(Ma)ら、Trends Biotechnol.、第13号、522〜7頁(1995年);マ(Ma)ら、Plant Physiol.、第109号、341〜6頁(1995年);ホワイトラム(Whitelam)ら、Biochem.Soc.Trans.、第22号、940〜944頁(1994年);及びその中で引用された参考文献を参照されたい。同様に、抗体の植物発現について一般的には(ただし制限するものではないが)、米国特許第5959177号を参照されたい。上述の参考文献のそれぞれは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
5.抗体の精製
抗IL−17抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない、周知の方法により、組換え細胞培養から、回収し精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に利用することもできる。例えばコリガン(Colligan)、「免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」又は「タンパク質科学の最新プロトコル(Current Protocols in Protein Science)」、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)ニューヨーク州ニューヨーク、(1997〜2001年)の、例えば第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
本発明の抗体には、天然に精製された産物、化学合成手順の産物、及び例えば酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む真核生物宿主から組換え技術により産生された産物が含まれる。組み換え生産手順において利用される宿主に応じて、本発明の抗体は、グリコシル化されていてもよく又はグリコシル化されていなくてもよいが、グリコシル化されていることが好ましい。このような方法については数多くの標準的な実験室マニュアル、例えばサムブルック(Sambrook)上掲書、第17.37〜17.42章;オースベル(Ausubel)上掲書、第10、12、13、16、18、及び20章、コリガン「タンパク質の科学(Protein Science)」上掲書、第12〜14の中で記載されており、これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
6.発明の抗体
本発明の方法及び組成物において有用な抗IL−17抗体(抗インターロイキン−H抗体又はIL−17抗体とも呼ばれる)は、所望により、IL−17に対する高い親和性結合、IL−17に対するきわめて特異的な結合、IL−17に関連する生物活性のうち1つ又はそれ以上のものを阻害する能力、及び所望によりかつ好ましくは低い毒性を有すること、によって特徴づけられ得る。
【0111】
本発明の抗体は、広範な親和性(KD)を持つヒトIL−17に結合することができる。好適な実施形態においては、本発明の少なくとも1つのヒトmAbは、ヒトIL−17と高い親和性で任意に結合することができる。例えば、ヒトmAbは、KDが約10-7M以下で、ヒトIL−17と結合することができ、例えば0.1〜9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)×10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13又はその中の任意の範囲若しくは値などであるが、これらに限定されない。
【0112】
ある抗原についてのある抗体の親和性又は結合活性は、任意の適切な方法を用いて実験的に決定可能である(例えば、ベルゾフスキー(Berzofsky)ら、「抗体−抗原相互作用(Antibody-Antigen Interactions)」ポールW.E.(Paul, W. E.)編、レイブン・プレス(Raven Press)、ニューヨーク州ニューヨーク(1984年);カビー,ジャニス(Kuby, Janis)、「免疫学(Immunology)」W.H.フリーマン社(W.H. Freeman and Company)ニューヨーク州ニューヨーク(1992年);及び本明細書中に記載されている方法を参照されたい)。特定の抗体抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定される場合に異なり得る。よって、親和性及びその他の抗原結合パラメータ(例えばKD、Ka、Kd)の測定は好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び標準緩衝液、例えば本明細書中に記述された標準溶液及び緩衝液を用いて行われる。
【0113】
本発明の単離された抗体は、任意の適切なポリヌクレオチドによってコードされた本明細書で開示されている抗体アミノ酸配列、又は任意の単離若しくは調製された抗体を含む。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片はヒトIL−17と結合し、これにより、部分的又は実質的に、このタンパク質の少なくとも1つの生物活性を中和する。少なくとも1つのIL−17タンパク質又は断片の少なくとも1つの生物活性を、部分的に又は好ましくは実質的に中和する抗体又はその特定の部分若しくはそれらの変異体は、このタンパク質又は断片に結合し、これによりIL−17のIL−17受容体に対する結合を通して、又はその他のIL−17依存性又は媒介型機序を通して、媒介される活性を阻害することができる。本明細書で使用するとき、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて約20〜120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、IL−17依存活性を阻害できる抗体を意味する。IL−17依存性活性を阻害する抗IL−17抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載されているように及び/又は当該技術分野において既知のように、少なくとも1つの適切なIL−17タンパク質又は受容体アッセイによって評価される。本発明のヒト抗体は、あらゆるクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであり得、カッパ又はラムダ軽鎖を含み得る。1つの実施形態において、ヒト抗体はIgG重鎖又は画定された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4などの少なくとも1つのアイソタイプを含む。このタイプの抗体は、トランスジェニックマウス、又は、本明細書に記載されている及び/若しくは当該技術分野において既知のような少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA及びIgM(例えばγ1、γ2、γ3、γ4)導入遺伝子を含む、その他のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を利用することによって調製可能である。別の実施形態において、抗ヒトIL−17ヒト抗体はIgG1重鎖及びIgG1軽鎖を含む。
【0114】
本発明の少なくとも1つの抗体は、少なくとも1つのIL−17タンパク質、その断片、一部分又はそれらの任意の組合せに特異的な、少なくとも1つの特定のエピトープと結合する。この少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことが可能であり、このエピトープは好ましくは、配列番号1〜3の隣接するアミノ酸の少なくとも1〜3個のアミノ酸から特定の部分全体で構成されている。
【0115】
一般に、本発明のヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含むようになる。非限定的な例として、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、少なくとも1つの重鎖、及び/又は軽鎖CDR3を含み得る。ある特定の実施形態において、この抗体又は抗原結合断片は、対応するCDR1、2、及び/又は3のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの重鎖CDR(すなわちCDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部分を含む、抗原結合領域を有し得る。別の特定の実施形態において、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、対応するCDR1、2、及び/又は3のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわちCDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部分を含む、抗原結合領域を有し得る。そのような抗体は、従来の技法を用いて抗体の様々な部分(CDR及びフレームワーク)を化学的に互いに結合させることにより、組換えDNA技術の従来技法を用いて抗体をコードする核酸分子の調製と発現を行うことにより、又は他の任意の好適な方法を用いることにより、調製することができる。
【0116】
抗IL−17抗体は、フレームワーク領域内に画定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、好ましい実施形態において、抗IL−17抗体は少なくとも1つの重鎖可変領域及び/又は少なくとも1つの軽鎖可変領域のうち少なくとも1つを含む。
【0117】
抗体のクラス又はアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる定常領域によって付与される。ヒトIgGクラスの中には、血清中の天然存在度の順に命名されたIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4(最高のものから順に最低まで)という4つのサブクラス又はサブタイプが存在する。IgA抗体は、IgA1及びIgA2という2つのサブクラスとして見出される。本明細書で使用するとき、用語「アイソタイプスイッチング」も、IgGサブクラス又はサブタイプの間での変更を意味している。
【0118】
本発明は更に、本明細書に記載されているアミノ酸配列と実質的に同じである配列内のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRにも関連する。好ましくは、このような抗体又は抗原結合断片及びこのような鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えばKDが約10-9M以下)で、ヒトIL−17と結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換、並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む、配列を有する。保存的アミノ酸置換とは、第1のアミノ酸に類似した化学的及び/又は物理的特性(例えば電荷、構造、極性、疎水性/親水性)をもつ第2のアミノ酸で、第1のアミノ酸を置換することを意味する。保存的置換としては、あるアミノ酸を、リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H);アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)及びグリシン(G);F、W及びY;C、S及びTという群の中の別のアミノ酸で置換することが挙げられる。
【0119】
本発明の抗IL−17抗体は、天然の突然変異又は人間による操作のいずれかに由来する、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を含んでよく、この人間による操作は、本明細書で特定されている通り、又はナピック(Knappik)らの米国特許第6828422号で教示されている、ヒト生殖系列遺伝子配列に由来し、配列類似性によりVH1A、VH1B、VH2などとして称されるファミリーに分類され、かつカッパ又はラムダサブグループのような軽鎖により分類される可変領域についてのものである。これらの配列及び本発明において使用可能なその他の配列としては、表1に提示された立体配置が含まれるがこれらに限定されず、より詳しくは、国際公開第05/005604号の図1〜42及び米国特許第10/872,932号(2004年6月21日出願)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれ、その参照された図1〜42では、本明細書で教示されている通り、本発明のIg由来タンパク質の中でその一部分を使用することのできる、重鎖及び軽鎖の可変及び定常ドメイン配列、フレームワーク、サブドメイン、領域、並びに置換の例を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上記のものを含む数多くの要因に依存する。一般的に言えば、所与の抗IL−17抗体、断片又は変異体について、そのアミノ酸置換、挿入又は欠失の数は、本明細書に記載されているように、例えば1〜30又はその中の任意の範囲又は値といったように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1を超えない。
【0122】
機能上不可欠である本発明の抗IL−17抗体内のアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変位誘発などの、当該技術分野において既知の方法により同定可能である(例えば、オースベル(Ausubel)上掲書、第8章、15頁;カニンガム(Cunningham)及びウェルズ(Wells)、Science、第244号、1081〜1085頁(1989年))。後者の手順は、分子内の全ての残基において単一アラニン突然変異を導入する。得られた突然変異分子は、例えば(ただしこれに制限されない)少なくとも1つのIL−17中和活性などの生物活性について、次にテストされる。抗体結合にとってきわめて重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって同定することができる(スミス(Smith)ら、J.Mol.Biol.、第224号、899〜904頁(1992年)及びドゥヴォス(de Vos)ら、Science、第255号、306〜312頁(1992年))。
【0123】
当業者には明らかなように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物的に活性である抗体が含まれている。生物活性抗体は、ネイティブ(非合成)、内因性又は関連する、及び既知の抗体の、少なくとも20%、30%、又は40%、及び好ましくは少なくとも50%、60%、又は70%、及び最も好ましくは少なくとも80%、90%又は95%〜1000%の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者にとって周知であり、本明細書中に記載されている。
【0124】
別の態様において、本発明は、有機部分の共有結合により改変される、本明細書に記載されているような、ヒト抗体及び抗原結合断片に関するものである。このような改変は、改善された薬物動態特性(例えば、増大した、インビボでの血清半減期)を持つ抗体又は抗原結合断片を産生することができる。この有機部分は、直線状又は分岐した親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。特定の実施形態においては、親水性ポリマー基は、約800〜約120,000ダルトンの分子量を有し、ポリアルカングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸又は脂肪酸エステル基は、約8〜約40の炭素原子を含み得る。
【0125】
本発明の改変された抗体及び抗原結合断片は、直接又は間接的に抗体に共有結合される、1つ又はそれ以上の有機部分を含み得る。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合しているそれぞれの有機部分は、独立に、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用するとき、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水への可溶性の高い有機ポリマーを意味する。例えばポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により改変された抗体が、本発明に包含されている。本発明の抗体を改変するために適切な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であり得、例えば、ポリアルカングリコール(例えばPEG、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えばデキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖類など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸塩など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。好ましくは、本発明の抗体を改変する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、ここで下付き文字はポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1〜約6個の、アルキル基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基と置換され得る。脂肪酸又は脂肪酸エステル基に置換された親水性ポリマーは、適切な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩にカップリングさせることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えばN,N−カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基にカップリングさせることができる。
【0126】
本発明の抗体を改変するのに適した脂肪酸及び脂肪酸エステルは飽和状態であり得、又は、1個又はそれ以上の不飽和単位を含有し得る。本発明の抗体を改変するために適切な脂肪酸としては、例えば、n−ドデカン酸(C12、ラウリン酸)、n−テトラデカン酸(C14、ミリスチン酸)、n−オクタデカン酸(C18、ステアリン酸)、n−エイコ酸(C20、アラキジン酸)、n−ドコサン酸(C22、ベヘン酸)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、cis−D9−オクタデカノエート(C18、オレイン酸)、全てのcis−D5、8、11、14−エイコサテトラエノエート(C20、アラキドン酸)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。適切な脂肪酸エステルは、直鎖状又は分枝状の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1〜約12個、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含み得る。
【0127】
改変したヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ又はそれ以上の改変剤との反応など、適切な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用するとき、用語「改変剤」は、活性化基を含む適切な有機基(例えば親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより改変剤と第2の化学基の間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基は、トシル酸、メシル酸、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子性基、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)などを含む。チオールと反応できる活性化基は、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロベンゾ酸チオール(TNB−チオール)をなどを含む。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と結合することができ、アジド基は、三価リン基と反応して、ホスホルアミド化又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性基を導入するための適切な方法は、当該技術分野において既知である(例えばハーマンソン(Hermanson)、G.T.、「バイオコンジュゲート技法(Bioconjugate Techniques)」、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1996年))。活性化基は、有機基(例えば親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に対して直接、又はリンカー部分(例えば二価のC1〜C12基、ここで1個又はそれ以上の炭素原子を酸素、窒素又は硫黄などのヘテロ原子に置換可能)を介して、結合することができる。適切なリンカー部分としては例えば、テトラエチレングリコール、−(CH23−、−NH−(CH26−NH−、−(CH22−NH−及び−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH−NH−が挙げられる。リンカー部分を含む改変剤は例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ−Boc−アルキルジアミン(例えばモノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間のアミド結合を形成することによって、生成可能である。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去し、記載されているように別のカルボン酸塩にカップリングし得る一級アミンを露出させることができ、又は、これを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる(例えばトンプソン(Thompson)ら、国際公開第92/16221号を参照されたい。参照によりこの教示の全体が本明細書に組み込まれる。)。
【0128】
本発明の改変された抗体は、抗体又は抗原結合断片を改変剤と反応させることによって産生することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性改変剤、例えば、PEGのNHSエステルを利用することによって、非部位特異的方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、改変されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。次いで、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性改変剤と反応させて、本発明の改変された抗体を産生することが可能である。本発明の抗体の特異的部位に結合した有機部分を含む改変されたヒト抗体及び抗原結合断片を、逆タンパク質分解(フィッシュ(Fisch)ら、Bioconjugate Chem.、第3号、147〜153頁(1992年);ワーレン(Werlen)ら、Bioconjugate Chem.、第5号、411〜417頁(1994年);クマラン(Kumaran)ら、Protein Sci、第6(10)号、2233〜2241頁(1997年);イトウ(Itoh)ら、Bioorg.Chem.、第24(1)号、59〜68頁(1996年);カペラズ(Capellas)ら、Biotechnol Bioeng.、第56(4)号、456〜463頁(1997年))などの適切な方法、及び、ハーマンソン(Hermanson),G.T.、「バイオコンジュゲート技法(Bioconjugate Techniques)」、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1996年)に記載の手法を用いて調製することができる。
【0129】
7.抗IL−17抗体に対する抗イディオタイプ抗体
モノクローナル又はキメラの抗IL−17抗体に加えて、本発明は、本発明のこのような抗体に特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体も目的としている。抗Id抗体は、一般に、別の抗体の抗原結合領域と関連する、ユニークな決定基を認識する抗体である。抗Idは、抗体又はそのCDR含有領域を伴うId抗体の供給源と同じ種及び遺伝子型(例えばマウス株)の動物を免疫することによって調製可能である。免疫された動物は、免疫された抗体のイディオタイプ決定基を認識してこれに反応し、抗Id抗体を産生する。抗Id抗体は同様に、更に別の動物において免疫反応を誘導し、いわゆる抗−抗−Id抗体を産生するための「免疫原」としても使用可能である。
【0130】
8.更なる治療活性成分を含む抗体組成物
組成物は、所望により更に、皮膚病薬、抗炎症薬、鎮痛剤、腎臓作用薬(例えばアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)又は拮抗薬)、抗感染症薬、心臓血管(CV)系作用薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸管薬、消化(GI)管作用薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡作用薬、血液製剤、抗新生物薬、免疫調節薬、眼用、耳用又は鼻用薬、局所作用薬、栄養薬などのうち、少なくとも1つから選択される、少なくとも1つの化合物又はタンパク質を有効量含むことができる。このような薬物は、それぞれについて本明細書で提示されている処方、適応症、用量決定及び投与方法を含め、当該技術分野において周知のものである(例えば、「看護2001薬剤ハンドブック(Nursing 2001 Handbook of Drugs)第21版、スプリングハウス社(Springhouse Corp)ペンシルバニア州スプリングハウス、2001年;「医療従事者の薬剤ガイド2001(Professional's Drug Guide 2001)」シャノン(Shannon)、ウィルソン(Wilson)、スタング(Stang)編、プレンティスホール社(Prentice-Hall, Inc)ニュージャージー州アッパーサドルリバー;「薬理学治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)」、ウェルズ(Wells)ら編、アップルトン&ランジ(Appleton & Lange)、コネチカット州スタムフォード(Stamford)を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0131】
本発明の抗IL−17抗体組成物は、更に、このような調節、治療又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対して、少なくとも1つのIL−17抗体を含む組成物又は医薬組成物を任意の好適かつ効果的な量を含むことができ、所望により更に、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えばTNF化学的又はタンパク質拮抗薬でありこれらに限定されない、TNFモノクローナル又はポリクローナル抗体又は断片、可溶性TNF受容体(例えばp55、p70若しくはp85)又は断片、それらの融合ポリペプチド、又は小分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I又はII(TBP−I又はTBP−II)、ネレリモンマブ(nerelimonmab)、インフリキシマブ(infliximab)、エンテラセプト(enteracept)、CDP−571、CDP−870、サートリズマブ(certolizumab)、アフェリモマブ(afelimomab)、レネルセプト(lenercept)など)、抗リウマチ薬(例えばメトトレキセート、アウラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト(etanercept)、チオリンゴ酸ナトリウム金、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド(leflunomide)、スルファサルジン)、筋肉弛緩薬、催眠剤、非ステロイド炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋肉遮断薬、抗菌薬(例えばアミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌薬)、抗乾癬薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、緩下薬、抗凝血薬、エリスロポエチン(例えばエポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えばG−CSF、ノイポジェン(Neupogen))、サルグラモスチム(CM−CSF、ロイキン)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)薬、抗線維症薬、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えばバシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン置換薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様体筋麻酔薬、アルキル化薬、抗代謝薬、有糸分裂阻害薬、放射性薬、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、不安緩解薬、催眠薬、交感神経興奮薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼアルファ(パルモザイム(Pulmozyme)(商標))、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択された、少なくとも1つを含み得る。このようなサイトカインの、非制限的な例としては、IL−1〜IL−29のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。適切な投与量は、当該技術分野において周知である。例えばウェルズ(Wells)ら編、「薬理学治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)」、アップルトン&ランジ(Appleton & Lange)、コネチカット州スタムフォード(2000年);「PDR薬局方、タラスコンポケット薬局方2000(PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000)」、デラックスエディション、タラスコン・パブリッシング(Tarascon Publishing)、カリフォルニア州ローマリンダ(Loma Linda)(2000年)を参照されたい。これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0132】
このような抗癌剤又は抗感染薬はまた、本発明の少なくとも1つの抗体に関連、結合、同時処方、又は同時投与される毒素分子も含むことができる。毒素は任意に作用して、病原性細胞又は組織を選択的に死滅させることができる。病原細胞は、癌細胞又は他の細胞であり得る。このような毒素は、限定されないが、例えば、リシン、ジフテリア毒、ヘビ毒、又は細菌毒の少なくとも1つから選択される、毒素の少なくとも1つの機能的細胞毒性ドメインを含む、精製若しくは組み換え毒素又は毒素断片であり得る。毒素という用語は、ヒト及び他の哺乳動物において、死に至り得る毒素性ショックを含む、任意の病原状態をもたらし得る任意の自然発生する突然変異若しくは組み換え細菌又はウイルスによって産生される内毒素及び外毒素のいずれをも含む。このような毒素としては、腸管毒素原性大腸菌の熱に不安定なエンテロトキシン(LT)、熱安定エンテロトキシン(ST)、赤痢菌細胞毒素、アエロモナス属エンテロトキシン、中毒性ショック症候群毒素−1(TSST−1)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、B(SEB)、又はC(SEC)、連鎖球菌エンテロトキシンなどが挙げられるが、それらに限定されない。このような細菌としては、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)種、腸管出血性大腸菌(例えば、血清型0157:H7の株)、ブドウ球菌種(例えば、黄色ブドウ球菌、化膿ブドウ球菌)、赤痢菌種(例えば、志賀赤痢菌、フレクスナー赤痢菌、ボイド赤痢菌、及びソネット赤痢菌)、サルモネラ菌種(例えば、チフス菌、Salmonella cholera−suis、腸炎菌)、クロストリジウム種(例えば、ウェルシュ菌、Clostridium diflcile、ボツリヌス菌)、カンピロバクター(camphlobacter)種(例えば、Camphlobacter jejuni、Camphlobacter fetus)、ヘリコバクター(Heliobacter)種(例えば、ヘリコバクターピロリ)、アエロモナス種(例えば、Aeromonas sobria、アエロモナス菌、Aeromonas caviae)、Pleisomonas shigelloide、エンテロコリチカ菌、ビブリオ(Vibrios)種(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌)、クレブシエラ種、緑膿菌、及び連鎖球菌の株が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、スタイン(Stein)編、内科学(INTERNAL MEDICINE)、第3版、1−13頁、リトル・ブラウン・アンド・カンパニー(Little, Brown and Co.)、ボストン(1990年);エヴァンズ(Evans)ら編、「ヒトの細菌感染:疫学と管理(Bacterial Infections of Humans: Epidemiology and Control)第2版、239〜254頁、プレナム・メディカル・ブック社(Plenum Medical Book Co.)、ニューヨーク(1991年);マンデル(Mandell)ら、感染症の原理と実践(Principles and Practice of Infectious Diseases)」、第3版、チャーチル・リビングストン(Churchill Livingstone)、ニューヨーク(1990年);バーコウ(Berkow)ら編、「メルクマニュアル(The Merck Manual)」第16版、メルク・アンド・カンパニー(Merck and Co.)、ニュージャージー州ローウェイ(Rahway)、1992年;ウッド(Wood)ら、FEMS Microbiology Immunology、第76号、121〜134頁(1991年);マラック(Marrack)ら、Science、第248号、705〜711頁(1990年)を参照されたい。参照により、これらの内容は全て本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明の抗IL−17抗体化合物、組成物又は組合せは更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントなどのような(ただしこれらに限定されない)任意の適切な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。製薬上許容できる助剤が好ましい。このような無菌溶液の、非制限的な例及びその調製方法は、ジェナーロ(Gennaro)編、「レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」第18版、マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)(ペンシルバニア州イーストン)(1990年)などのように(ただしこれらに限定されない)、当該技術分野において周知である。当該技術分野において周知のように、又は本明細書に記載されているように、抗IL−17抗体、断片又は変異体組成物の投与様式、溶解度及び/又は安定性に適した製薬上許容できる担体を、日常的に選択することができる。
【0134】
本組成物において有用な医薬賦形剤及び添加剤としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、及び炭水化物(例えば、糖には、単糖、ジ−、トリ−、テトラ−(terra-)、及びオリゴ糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖など;及び多糖又は糖ポリマーが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されず、これらは単独又は組み合わせで存在し得、1〜99.99重量%又は体積%での、単独又は組み合わせを含む。代表的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0135】
本発明における使用に適した炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類、及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明における使用に適した炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0136】
抗IL−17抗体組成物は、緩衝液又はpH調整剤を含んでもよく、典型的には、緩衝液は有機酸又は塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩;トリス、塩酸トロメタミン、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物における使用に適した緩衝剤は、クエン酸などの有機酸塩である。
【0137】
更に、本発明の抗IL−17抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば「TWEEN 20」及び「TWEEN 80」などのポリソルベート)、脂質(例えばリン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えばコレステロール)、及びキレート剤(例えばEDTA)などのポリマー賦形剤/添加剤を含むことができる。
【0138】
本発明による抗IL−17抗体、部分又は変異体組成物における使用に適するこれら及び追加の既知の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science & Practice of Pharmacy)」第19版、ウィリアムズ・アンド・ウィリアムズ(Williams & Williams)(1995年)及び「医師用デスクリファレンス(Physician's Desk Reference)」第52版、メディカル・エコノミクス(Medical Economics)、ニュージャージー州モントベール(1998年)に一覧記載されており、これらの開示は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は賦形剤材料は、炭水化物(例えば単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えばクエン酸)又はポリマー剤である。
【0139】
9.処方物
上述の通り、本発明は、製薬上許容できる処方物中に少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む、薬学又は獣医学での使用に適した安定した処方物を提供する。
【0140】
上述の通り、本発明は、包装材料並びに、所望により水性希釈剤中の規定の緩衝液及び/又は防腐剤を伴う少なくとも1つの抗IL−17抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルを含む製造品を提供し、前記包装材料は、このような溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上の期間にわたり保持できることを記したラベルを含む。本発明は、包装材料、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む第1のバイアル、及び規定の緩衝剤又は防腐剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルを含む、製造品を更に含み、前記包装材料は、可溶性希釈剤中の少なくとも1つの抗IL−17抗体を再構成して、24時間以上の期間にわたって保持できる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0141】
本発明の製品における少なくとも1つの抗IL−17抗体の範囲は、再構成時に得られる量、湿/乾システムの場合には、約1.0μg/mL〜約1000mg/mLの濃度を含むが、これより低い濃度及び高い濃度が実施可能であり、意図される送達ビヒクルに依存する。例えば溶液製剤は、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0142】
水性希釈剤は所望により、更に、製薬上許容できる防腐剤を含む。好ましい防腐剤には、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物から成る群から選択されるものが含まれる。処方物中で使用される防腐剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに十分な濃度である。このような濃度は選択された防腐剤に依存して、当業者により容易に決定される。
【0143】
他の賦形剤、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤エンハンサーは、所望により、かつ好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で一般に使用される。好ましくは、生理学的に許容される緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。処方物は、約pH4〜約pH10、及び好ましくは約pH5〜約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0〜約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲をカバーし得る。好ましくは、本発明の処方物は約6.8〜約7.8の間のpHを有する。好ましい緩衝液には、リン酸緩衝液、最も好ましくはリン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
【0144】
他の添加剤、例えばTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、製薬上許容できる可溶化剤、又は、ポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリルなどの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を、任意に処方物又は組成物に凝集を低減するために添加することができる。これらの添加物は、処方物を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。製薬上許容できる界面活性剤の存在により、タンパク質の凝集の傾向が軽減される。
【0145】
本発明の処方物は、所望の濃度でタンパク質を提供するのに充分な量で、少なくとも1つの抗IL−17抗体及び緩衝溶液を混合することを含むプロセスによって調製され得る。当業者は、このプロセスの変化形態を認識し得る。例えば、構成要素の添加順序、付加的な添加剤を使用するか否か、処方物が調製される温度及びpHは、全て、使用する投与濃度及び手段について最適化され得る因子である。
【0146】
請求される処方物は、溶液として、又は、水、防腐剤、及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸緩衝液及び/若しくは生理食塩水、及び選択された塩を可溶性希釈剤内に含む第2のバイアルで再構成される、少なくとも1つの凍結乾燥した抗IL−17抗体のバイアルを含む、二重バイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とする二重バイアルのいずれかを複数回再利用することができ、更に、患者治療の単一又は複数サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供することができる。
【0147】
請求される本製造品は、即時から、24時間以上の期間にわたる投与に有用である。したがって、今回請求される製造品は、患者に著しい利益を提供する。本発明の処方物は、約2〜約40℃の温度で、任意で安全に保管し、長期間タンパク質の生物活性を保持することができ、したがってパッケージラベルは、溶液が6、12、18、24、36、48、72、若しくは96時間以上にわたって保持及び/又は使用され得ることを示すことができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、このようなラベルに最高1〜12ヵ月、半年、1年半及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0148】
請求される製品は、透明溶液、又は、水性希釈剤を収容している第2のバイアルを用いて再構成される凍結乾燥した少なくとも1つの抗IL−17抗体のバイアルを含む二重バイアルを、薬局、診療所又はその他のこのような機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供され得る。この場合、透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上のサイズであってよく、これは、そこからより小さなバイアルに移すために少なくとも1つの抗体溶液のより小さい部分を1回又は多数回取り出して、薬局若しくは診療所が、顧客及び/又は患者に提供することができる大きな容器を提供する。
【0149】
これらの単一バイアルシステムを含む認定されたデバイスとしては、例えばBD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B−D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco−Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、J−tip Needle−Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi−Ject(登録商標)、などの溶液の送達用ペンインジェクタデバイスが挙げられ、これらは例えば、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickensen)(ニュージャージー州フランクリンレイクス、www.bectondickenson.com)、ディセトロニック(Disetronic)(スイス・ブルクドルフ、www.disetronic.com;バイオジェクト(Bioject)(オレゴン州ポートランド、www.bioject.com);ナショナル・メディカル・プロダクツ(National Medical Products)(英国ピーターバラ、www.weston−medical.com)、メディジェクト社(Medi-Ject Corp)(ミネソタ州ミネアポリス、www.mediject.com)によって製造又は開発されたものである。二重バイアルシステムを含む認定されたデバイスとしては、例えばHumatro Pen(登録商標)などの、再構築された溶液の送達用のカートリッジの中で凍結乾燥された薬物を再構築するための、ペンインジェクタシステムが挙げられる。
【0150】
今回請求される製品は、包装材料を含む。包装材料は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、製品を使用できる条件を提供する。本発明の包装材料は、患者に、可溶性希釈剤中の少なくとも1つの抗IL−17抗体を再構成し溶液を形成する、及び2つのバイアル湿/乾製品の場合には、2〜24時間又はそれ以上にわたって溶液を使用する、という指示を提供する。単一バイアルの溶液製品の場合、ラベルは、このような溶媒を2〜24時間又はそれ以上にわたって使用できることを示す。今回請求される製品は、ヒト医薬製品使用に有用である。
【0151】
抗IL−17抗体を安定化するその他の処方物又は方法は結果として、前記抗体を含む凍結乾燥粉末の透明な溶液以外のものをもたらし得る。非透明溶液としては、微粒子懸濁液を含む処方物があり、このような微粒子は、ミクロスフェア、微小粒子、ナノ粒子、ナノスフェア又はリポソームなどのさまざまな形で知られる、寸法可変の構造内に、抗IL−17抗体を含有する組成物である。活性剤を含むこのような比較的均質の本質的に球形の粒子処方物は、米国特許第4,589,330号に教示されているように、その活性物質及びポリマーを含む水相と非水相とを接触させ、次に非水相を蒸発させて、水相で粒子の融合を生じさせることにより形成することができる。多孔質の微小粒子は、米国特許第4,818,542号に教示されているように、活性物質及びポリマーを含む第一相を連続的に溶媒に分散させ、その懸濁液から凍結乾燥又は希釈−抽出−沈殿によって前記溶媒を除去することにより、調製することができる。このような調製に好ましいポリマーは、ゼラチン寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(aced)、グリコシド−L(−)ラクチドポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−乳酸、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−グリコール酸)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル−2−シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2−ヒドロキシエチルDL−アスパルトアミド)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(L−フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6−ジイソシアナトヘキサン)及びポリ(メチルメタクリレート)から成る群から選択された天然若しくは合成コポリマー又はポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(aced)、グリコリド−L(−)ラクチドポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−乳酸)、及びポリ(エプシロン−カプロラクトン−CO−グリコール酸)などのポリエステルである。ポリマー及び/又は活性物質を溶解させるのに有用な溶媒としては水、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、へキサン、ベンゼン、又はヘキサフルオロアセトンセスキ水和物がある。第2相に活性物質を含有する相を分散させるプロセスには、ノズル内のオリフィスに前記第1相を圧力で強制的に通過させて液滴形成に作用する工程を含むことができる。
【0152】
乾燥粉末処方物は、例えば水性又は非水性溶媒を除去するための1つ以上の工程が後続する、噴霧乾燥、又は蒸発若しくは結晶質組成物の沈殿による溶媒抽出などの、凍結乾燥以外のプロセスの結果として得ることもできる。噴霧乾燥された抗体調製物の調製は、米国特許第6,019,968号で教示されている。抗体ベースの乾燥粉末組成物は、抗体の溶液又はスラリー、及び所望により、呼吸用乾燥粉末を提供するための条件下で賦形剤を、溶媒中で噴霧乾燥させることによって生産可能である。溶媒には、容易に乾燥可能な、例えば水及びエタノールなどの極性化合物を含むことができる。抗体安定性は、例えば窒素雰囲気生成装置下において、又は乾燥用気体として窒素を使用することによって、酸素不在下で噴霧乾燥手順を実施することで増強させることができる。別の比較的乾燥した処方物は、国際公開第9916419中で教示されているような、典型的にヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む懸濁培地中に分散した、複数の有孔微細構造の分散物である。安定化された分散は、定量吸入器を用いて患者の肺に投与できる。噴霧乾燥された薬剤の商業的製造において有用な機器は、ビュッヒ社(Buchi Ltd.)又はナイロ社(Niro Corp.)により製造されている。
【0153】
本明細書に記載される、安定処方物又は保存処方物、又は溶液の、いずれかにおける少なくとも抗IL−17抗体は、本発明に従って、SC若しくはIM注射、経皮、肺、経粘膜、移植、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当業者に理解される他の手段を含む多様な送達方法を介して、当該技術分野において周知のように、患者に投与することができる。
【0154】
10.治療適用
本発明はまた、当該技術分野において既知のように、又は本明細書に記載されているように、本発明の少なくとも1つのIL−17抗体を用いて、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つのIL−17関連疾患を調節又は治療するための方法を提供する。本発明はまた、細胞、組織、器官、動物、又は患者における、悪性疾患、代謝疾患、免疫又は炎症関連疾患、心臓血管疾患、感染症、又は神経学的疾患のうち少なくとも1つを含むが、これらに限定されない少なくとも1つのIL−17関連疾患を、調節又は治療するための方法も提供する。
【0155】
このような疾患は、細胞接着及び/又は血管形成により媒介される疾病又は疾患から選択されるが、これらに限定されない。このような疾病又は疾患としては、免疫障害若しくは疾患、心臓血管障害若しくは疾患、感染性、悪性及び/若しくは神経系障害若しくは疾患、又はその他の既知の若しくは特定のIL−17関連疾患が挙げられる。特に、抗体は、血管形成が関与する疾病、例えば眼疾患及び腫瘍性疾患、再狭窄などの組織再形成、並びにある種の細胞型の増殖、特に上皮及び扁平上皮細胞癌の治療に有用である。具体的な適応症としては、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、癌転移、関節リウマチ、糖尿病性網膜症及び黄斑変性症の治療における使用が挙げられる。本発明の中和抗体はまた、例えば骨粗鬆症において見られる、又は一部の腫瘍によるPTHrP過剰発現の結果生じる、望ましくない骨吸収若しくは骨分解の予防又は治療にも有用である。抗体はまた、特発性肺線維症、糖尿病性腎症、肝炎、及び肝硬変といったさまざまな線維形成疾患の治療においても有用であり得る。
【0156】
よって、本発明は、当該技術分野において既知のように、又は本明細書に記載されているように、本発明の少なくとも1つのIL−17抗体を用いて、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つのIL−17関連疾患を調節又は治療するための方法を提供する。具体的な適応については以下に論述する:
【0157】
肺疾患
本発明は更に、肺炎;肺膿瘍;粉塵、ガス又は飛沫の形をした作用物質を原因とする職業性肺疾患;喘息、閉塞性繊維性細気管支炎、呼吸不全、過敏性肺炎(外因性アレルギー性肺胞炎)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び薬物反応を含む肺の過敏性疾患;成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、グッドパスチャー症候群、慢性閉塞性気道疾患(COPD)、特発性間質性肺疾患、例えば特発性肺線維症及びサルコイドーシス、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患、気質性肺炎を伴う特発性閉塞性細気管支炎、リンパ球性間質性肺炎、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、特発性肺ヘモジデリン沈着症;急性気管支炎、肺胞タンパク症、気管支拡張症、胸膜疾患、無気肺、嚢胞性線維症、及び肺腫瘍、並びに肺栓塞症のうちの少なくとも1つを含む(ただしこれらに限定されない)、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節又は治療するための方法をも提供している。
【0158】
悪性疾患
本発明はまた、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞又はFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、直腸結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、乳癌、鼻咽頭癌、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、扁平上皮細胞癌、肉腫、悪性黒色腫、特に転移性黒色腫、血管腫、転移性疾患、癌関連骨吸収、及び癌関連骨痛などのうちの少なくとも1つを含む(ただしこれらに限定されない)、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節又は治療するための方法をも提供している。
【0159】
免疫関連疾患
本発明はまた、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身発症若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、胃潰瘍、血清反応陰性関節症、変形性関節症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、全身エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、虹彩毛様体炎/ぶどう膜炎/視神経炎、特発性肺線維症、全身性脈管炎/ヴェーゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、睾丸炎/精管切除逆転術、アレルギー性/アトピー疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、移植、器官移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少熱、尿路性敗血症、髄膜炎球菌血症、外傷/出血、火傷、イオン化放射線曝露、急性膵炎、成人呼吸急迫症候群、関節リウマチ、アルコール性肝炎、慢性炎症病状、サルコイドーシス、クローン病、鎌状赤血球貧血、糖尿病、ネフローゼ、アトピー性疾患、過敏性反応、アレルギー性鼻炎、枯草熱、多年性鼻炎、結膜炎、子宮内膜炎、喘息、蕁麻疹、全身性アナフィラキシー、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、いずれかの器官又は組織の移植片拒絶反応、腎臓移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、骨髄移植(BMT)拒絶反応、皮膚同種移植拒絶反応、軟骨移植拒絶反応、骨移植拒絶反応、小腸移植拒絶反応、胎児胸腺移植拒絶反応、副甲状腺移植拒絶反応、いずれかの器官又は組織の異種移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、抗受容体過敏反応、グレーヴズ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介細胞毒症、III型過敏反応、全身エリテマトーデス、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器巨大症、内分泌障害、モノクローナル免疫グロブリン血症、及び皮膚変化症候群)、多発性神経障害、臓器巨大症、内分泌障害、モノクローナル免疫グロブリン血症、皮膚変化症候群、抗リン脂質症候群、天疱瘡、硬皮症、混合結合組織病、特発性アジソン病、真性糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、脈管炎、MI心臓切開後症候群、IV型過敏性、接触皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植拒絶反応、細胞内器官による肉芽腫、薬剤過敏性、代謝性/特発性、ウイルソン病、血色素症、アルファ−1−アンチトリプシン欠乏症、糖尿病網膜症、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、視床下部−下垂体−副腎軸評価、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、カヘキシー、嚢胞性線維症、新生児慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族性貧血性リンパ組織球症、皮膚病状、乾癬、脱毛、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、中毒、子癇前症、OKT3治療、抗CD3治療、サイトカイン治療、化学治療、放射線治療(例えば、無力症、貧血、カヘキシーなどが挙げられるが、これらに限定されない)、慢性サリチル酸中毒、などのうち少なくとも1つが挙げられるが、それらに限定されない細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの免疫関連疾患を調節又は治療するための方法をも提供する。例えば、「メルクマニュアル(Merck Manual)」第12〜17版、メルク・アンド・カンパニー(Merck & Company)、ニュージャージー州ローウェイ(1972年、1977年、1982年、1987年、1992年、1999年)、「薬理学治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)」、ウェルズ(Wells)ら編、第2版、アップルトン&ランジ(Appleton & Lange)、コネチカット州スタムフォード(1998年)を参照されたい。それぞれ参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0160】
心臓血管疾患
本発明はまた、心臓機能停止症候群、心筋梗塞、鬱血性心不全、卒中、虚血性卒中、出血、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、再狭窄、糖尿病性アテローム性疾患、高血圧、動脈性高血圧、腎血管性高血圧、失神、ショック、心血管系の梅毒、心不全、肺性心、原発性肺性高血圧、心不整脈、心房性異所性拍動、心房粗動、心房細動(持続性又は発作性)、灌流後症候群、心肺バイパス炎症反応、無秩序又は多源性動脈頻脈、規則性狭QRS頻脈、特殊不整脈、心室細動、ヒス束不整脈、房室ブロック、脚ブロック、心筋貧血障害、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心筋症、拡張性鬱血性心筋病、拘束型心筋症、心臓弁膜症、心内膜炎、心膜症、心腫瘍、大動脈及び末梢動脈症、大動脈解離、大動脈の炎症、腹部大動脈及びその枝脈の閉塞、末梢血管障害、閉塞性動脈障害、末梢アテローム硬化疾患、閉塞性血栓血管炎、機能性末梢動脈障害、レイノー現象及び疾患、先端チアノーゼ、先端紅痛症、静脈疾患、静脈血栓症、静脈瘤、動静脈フィステル、リンパ水腫、脂肪浮腫、不安定狭心症、再灌流障害、ポンプ後症候群、貧血−再灌流傷害、などのうち少なくとも1つが挙げられるが、それらに限定されない細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの心臓血管疾患を調節又は治療するための方法をも提供する。このような方法は、少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、このような調節、治療又は療法を必要とする、細胞、組織、器官、動物、又は患者に対して投与することを、所望により含むことができる。
【0161】
神経系疾患
本発明はまた、神経変性疾患、多発性硬化症、偏頭痛、AIDS痴呆合併症、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症及び急性横断脊髄炎);錐体外路性及び小脳疾患(例えば、皮質脊髄系の損傷);脳幹神経節の疾患又は小脳疾患;過剰運動性疾患(例えば、ハンチントン舞踏病及び老人性舞踏病);薬剤誘発運動障害(例えばCNSドーパミン受容体を遮断する薬剤により誘発される障害);運動低下性運動障害(例えばパーキンソン病);進行性核上麻痺;小脳の構造損傷;脊髄小脳変性(例えば脊髄運動失調、フリードライヒ運動失調);小脳皮質変性;多発性全身変性(メンセル、デジェリン−トーマス、シ−ドラジェ、及びマカド−ジョゼフ);全身性障害(レフサム病、無β−リポタンパク白血症、運動失調、毛細血管拡張症、及びミトコンドリア多系統性疾患);脱髄核障害(例えば多発性硬化症、急性横断脊髄炎);及び運動単位の障害(例えば神経原性筋肉萎縮症(前角細胞変性、例えば筋萎縮側索硬化症、乳児性脊骨筋肉萎縮症及び若年性脊骨筋肉萎縮症))、
アルツハイマー病;中年ダウン症候群;びまん性レヴィー体疾患;レヴィー体性老年痴呆;ヴェルニッケ−コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルト−ヤコブ病;亜急性硬化性汎脳炎、ハレロルデン−スパッツ病;及びボクサー痴呆、などのうち少なくとも1つが挙げられるが、それらに限定されない細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの神経系疾患を調節又は治療するための方法をも提供している。このような方法は、所望により、少なくとも1つのTNF抗体又は特定部分又は変異体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、このような調節、治療又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物、又は患者に対し投与することを含むことができる。例えば、「メルクマニュアル(Merck Manual)」第16版、メルク・アンド・カンパニー(Merck & Company)、ニュージャージー州ローウェイ(1992年)を参照されたい。
【0162】
線維症性疾患
上述の症状及び疾患に加えて、本発明はまた、肝臓線維症(アルコール性肝硬変、ウイルス性肝硬変、自己免疫性肝炎が挙げられるがこれらに限定されない);肺線維症(強皮症、特発性肺線維症が挙げられるがこれらに限定されない);腎臓線維症(強皮症、糖尿病性腎炎、糸球体腎炎、狼瘡腎炎を含むがこれらに限定されない);皮膚線維症(強皮症、肥厚性及びケロイド瘢痕、火傷を含むがこれらに限定されない);骨髄線維症;神経線維腫症;線維腫;腸線維症;及び外科手術の結果としての線維症癒着といったような様々な病因の線維形成症状を調節又は治療するための方法をも提供している。
【0163】
このような方法において、線維症は器官特異性線維症又は全身性線維症のいずれであってもよい。器官特異性線維症は、肺線維症、肝臓線維症、腎臓線維症、心臓線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症、又はその他の線維症のうち少なくとも1つに関連し得る。肺線維症は、特発性肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス、又は慢性閉塞性肺疾患のうち少なくとも1つに関連し得る。肝臓線維症は、肝硬変、住血吸虫症、又は胆管炎のうち少なくとも1つに関連し得る。肝硬変は、アルコール性肝硬変、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変から選択され得る。胆管炎は硬化性胆管炎である。腎臓線維症は、糖尿病性腎症、IgA腎症、移植腎症、又は狼瘡腎炎のうち少なくとも1つに関連し得る。心臓線維症は、心筋梗塞の少なくとも1つの種類に関連し得る。血管線維症は、血管形成術後動脈再狭窄、又はアテローム性動脈硬化の少なくとも1つに関連し得る。皮膚線維症は、火傷瘢痕化、肥厚性瘢痕化、ケロイド、又は腎性線維症皮膚症の少なくとも1つに関連し得る。眼線維症は、後眼窩線維症、白内障手術後又は増殖性硝子網膜症の少なくとも1つに関連し得る。骨髄線維症は、特発性骨髄線維症又は薬剤誘発性骨髄線維症の少なくとも1つに関連し得る。他の線維症は、ペイロニー病、デュピュイトラン拘縮又は皮膚筋炎の少なくとも1つに関連し得る。全身性線維症は、全身性硬化症及び移植片体宿主病から選択され得る。
【0164】
本発明はまた、胸部、腹部、頭蓋若しくは口腔外科手術を含む外科手術に付随する肉体的損傷又は外傷のうちの少なくとも1つを含み(ただしこれらに限定されない)、又は創傷が非感染創、挫傷、切創、裂創、非穿通創、開放創、穿通創、穿孔創、穿刺創、感染創、栓塞及び皮下創から成る群から選択され得る、又は創傷が虚血性潰瘍、辱瘡、瘻孔、重度の咬傷、熱傷及び採取部位創から成る群から選択される、又は創傷がアフタ創、外傷若しくはヘルペス関連創から成る群から選択され得る、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの創傷、外傷又は組織傷害又は慢性症状を調節又は治療するための方法をも提供する。ドナー部位創傷は、例えば移植に関連して、例えば体の一部分から体の別の部分への硬組織の除去に関連して発生する創傷である。そのような手術によって生じた創傷は痛みが激しいため、治癒の改善が最も価値がある。創傷部分に侵入する最初の細胞が好中球であり、次に単球で、これがマクロファージによって活性化されるため、創傷線維症も、抗IL−17抗体治療に適している。マクロファージは、それらも病原体の食作用及び組織残屑の片付けに関与することから、効率の良い創傷治癒にとって不可欠であると考えられている。更にこれらは、後続する治癒プロセスの事象に関与する数多くの因子を放出する。マクロファージは、コラーゲンの産生を開始する線維芽細胞を誘引する。ほぼ全ての組織修復プロセスは初期結合組織形成を含んでおり、この刺激と、後続するプロセスの刺激とが、組織の治癒を改善させるが、結合組織及びコラーゲンの過剰産生は、非弾性であり低酸素であるとして特徴づけられる線維性組織を導く可能性がある。本発明の抗IL−17抗体は、創傷治癒のこのような続発症を調節、治療又は予防するための方法において使用することができる。
【0165】
本発明の抗体は、例えば心臓移植片などの移植された器官、組織又は細胞の慢性的拒絶の少なくとも1つの症候を調節又は治療するための方法において使用することもできる。
【0166】
抗IL−17抗体のその他の治療的使用
本発明はまた、急性又は慢性細菌感染、細菌、ウイルス、及び菌感染を含む急性及び慢性寄生又は感染プロセス、HIV感染/HIV神経障害、髄膜炎、肝炎(A、B、又はCなど)、敗血症性関節炎、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:h7、溶血性尿毒症症候群/塞栓性血小板減少性紫斑病、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、ハンセン病、中毒性ショック症候群、連鎖球菌筋炎、ガス壊疽、ヒト型結核菌、鳥型結核菌、ニューモシスティス・カリニ肺炎、骨盤感染症、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ、ライム病、A型インフルエンザ、エプスタイン・バーウイルス、ウイルス関連血球貪食症候群、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎などの少なくとも1つが挙げられるが、それらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つの感染症を調節又は治療するための方法も提供する。
【0167】
本発明のあらゆる方法が、このような調節、治療又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対して、少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含むことができる。このような方法は更に所望により、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体又は断片、可溶性TNF受容体又は断片、それらの融合タンパク質、又は小分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えばメトトレキセート、アウラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト(etanercept)、チオリンゴ酸ナトリウム金、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド(leflunomide)、スルファサルジン)、筋肉弛緩薬、催眠剤、非ステロイド炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋肉遮断薬、抗菌薬(例えばアミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌薬)、抗乾癬薬、コルチコステロイド(デキサメタゾン)、アナボリックステロイド(テストステロン)、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、緩下薬、抗凝血薬、エリスロポエチン(例えばエポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えばG−CSF、ノイポジェン(Neupogen))、サルグラモスチム(CM−CSF、ロイキン)、免疫化薬、免疫グロブリン(リタキシマブ)、免疫抑制薬(例えばバシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン拮抗薬、生殖ホルモン拮抗薬(フルタミド、ニルタミド)、ホルモン放出調節薬(ロイプロリド、ゴセレリン)、ホルモン置換薬、エストロゲン受容体調節薬(タモキシフェン)、レチノイド(トレチノイン)、トポイソメラーゼ阻害薬(エトポシド、イリノテカン)、サイトキシン(ドクソルビシン)、散瞳薬、毛様体筋麻酔薬、アルキル化薬(カルボプラチン)、ナイトロジェンマスタード(メルファレン、クロラブシル)、ニトロソ尿素(カルムスチン、エストラムスチン)、抗代謝薬(メトトレキサート、シタラビン、フルオロウラシル)、有糸分裂阻害剤(ビンクリスチン、タキソール)、放射性薬(ヨウ素131−トシツモマブ)、放射性感作薬(ミソニダゾール、チラパザミン)、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、不安緩解薬、催眠薬、交感神経興奮薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼアルファ(パルモザイム(Pulmozyme))、サイトカイン(インターフェロンアルファ−2、IL2)又はサイトカイン拮抗薬(インフリキサマブ)から選択される、少なくとも1つであり得る。適切な用量は当該技術分野において周知である。例えばウェルズ(Wells)ら編、「薬理学治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)」、第2版、アップルトン&ランジ(Appleton & Lange)、コネチカット州スタムフォード(2000年);「PDR薬局方、タラスコンポケット薬局方2000(PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000)」、デラックスエディション、タラスコン・パブリッシング(Tarascon Publishing)、カリフォルニア州ローマリンダ(2000年)を参照されたい。これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0168】
腫瘍性疾患の治療のための具体的な組合せは、例えばアルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン作動薬又は拮抗薬、免疫調節剤などの抗腫瘍薬を、前、同時、及び/又は後に投与することによる、同時投与又は併用療法を含む。転移性悪性黒色腫及びその他の腫瘍性疾患で使用するためには、好ましい組合せは、デカルバジン、インターフェロンα、インターロイキン−2、テモゾロミド、シスプラチン、ビンブラスチン、メシル酸イマチニブ、カルムスチン、パクリタキセルなどとともに抗体を同時投与することである。転移性黒色腫に対しては、ダカルバジンが好ましい。
【0169】
11.用量と投与方法
本発明の方法は、このような調節、治療又は療法を必要とする細胞、組織、器官、動物又は患者に対して少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含む、IL−17媒介型障害を治療するための方法を含み得る。このような方法は更に所望により、そのような疾患又は障害の治療のため、同時投与又は併用治療を含むことができ、前記少なくとも1つの抗IL−17抗体、その特定の部分又は変異体の投与は、更にその前に、それと同時に及び/又はその後に、腎臓薬、皮膚薬、抗血管形成薬、抗感染薬、心臓血管(CV)系薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸器官薬、胃腸(GI)管薬、抗新生物薬、免疫調節薬、眼科薬、耳鼻科薬、局所薬、栄養剤又は同様物、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体又は断片、可溶性TNF受容体又は断片、それらの融合タンパク質、又は小分子TNF拮抗薬などで、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えばメトトレキセート、アウラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト(etanercept)、チオリンゴ酸ナトリウム金、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド(leflunomide)、スルファサルジン)、筋肉弛緩薬、催眠剤、非ステロイド炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋肉遮断薬、抗菌薬(例えばアミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌薬)、抗乾癬薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、緩下薬、抗凝血薬、エリスロポエチン(例えばエポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えばG−CSF、ノイポジェン(Neupogen))、サルグラモスチム(CM−CSF、ロイキン)、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えばバシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン置換薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様体筋麻酔薬、アルキル化薬、抗代謝薬、有糸分裂阻害剤、放射性薬、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、不安緩解薬、催眠薬、交感神経興奮薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼアルファ(パルモザイム(Pulmozyme))、サイトカイン(インターフェロンアルファ−2、IL2)又はサイトカイン拮抗薬から選択される、少なくとも1つを投与することを更に含む。このような薬物は、それぞれについて本明細書で提示されている処方、適応症、用量決定及び投与方法を含め、当該技術分野において周知のものである(例えば、「看護2001薬剤ハンドブック(Nursing 2001 Handbook of Drugs)第21版、スプリングハウス社(Springhouse Corp)ペンシルバニア州スプリングハウス、2001年;「医療従事者の薬剤ガイド2001(Professional's Drug Guide 2001)」シャノン(Shannon)、ウィルソン(Wilson)、スタング(Stang)編、プレンティスホール社(Prentice-Hall, Inc)ニュージャージー州アッパーサドルリバー;「薬理学治療ハンドブック(Pharmacotherapy Handbook)」、ウェルズ(Wells)ら編、アップルトン&ランジ(Appleton & Lange)、コネチカット州スタムフォードを参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0170】
典型的には、病的状態の治療は、組成物の中に含まれているものの比活性に応じて合計で、平均して、1用量あたり患者の体重1kgあたり少なくとも約0.01〜500ミリグラムの少なくとも1つの抗IL−17抗体組成物、及び好ましくは単回又は複数回投与あたり患者の体重1kgにつき少なくとも約0.1〜100ミリグラムの範囲となる有効量又は用量の少なくとも1つの抗IL−17抗体を投与することによって達成される。あるいは、有効な血清濃度は、単一又は複数投与当たり0.1〜5000mg/mLの血清濃度を含み得る。適切な用量は、医療実践者には周知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び治療を受けている具体的な患者に依存する。場合によっては、望ましい治療量に達するために、反復投与、すなわち特定の監視された量又は計量された量の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、望ましい日用量又は効果が得られるまで繰り返される。
【0171】
好ましい用量は、所望により、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び/又は100〜500mg/kg/投与、又はこれらの任意の範囲、値、若しくは部分であり、又はある血清濃度を達成するための、1回又は複数回投与当たりの血清濃度0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5.、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、及び/又は5000mg/mL、又はこれらの任意の範囲、値若しくは部分であり得る。
【0172】
あるいは、投与される用量は、具体的な薬剤の薬力学的特性などの既知の因子、並びにその投与方法及び投与経路、レシピエントの年齢、健康、及び体重、症候の性質及び程度、現行治療の種類、治療の頻度、並びに所望の効果に応じて異なり得る。活性成分の用量は、通常、体重1キログラム当たり約0.1〜100ミリグラムであり得る。通常、0.1〜50、好ましくは投与につき1キログラム当たり0.1〜10ミリグラム、又は徐放性形態が、望ましい結果を得るために有効である。
【0173】
非限定的な例としては、ヒト又は動物の治療は、単回用量、注入量又は反復用量を用いて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日目のうちの少なくとも1つの日に、又は、あるいは若しくは更に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51又は52週目のうちの少なくとも1つの週、又は、あるいは若しくは更に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20年のうちの少なくとも1つの年、又はそのいずれかの組合せで、一日あたり0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgといった0.1〜100mg/kgの1回又は周期的用量の本発明の少なくとも1つの抗体として、提供可能である。
【0174】
体内投与に適した剤形(組成物)は、一般に、1単位又は容器当たり約0.001ミリグラム〜約500ミリグラムの活性成分を含む。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5〜99.999重量%で存在する。
【0175】
非経口投与のために、抗体は、製薬上許容できる非経口ビヒクルと合わせた状態の、又は別途供給される状態の、溶液、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、若しくは凍結乾燥された粉末として、処方され得る。このようなビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及び1〜10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び固定油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。ビヒクル又は凍結乾燥粉末は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学安定性(例えば緩衝剤及び防腐剤)を維持する添加剤を含有することができる。処方物は、周知又は適切な技術によって滅菌される。適切な製薬学的担体は、この分野での標準的参考テキストである「レミントンの薬学科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」A.オーソル(A. Osol)の最新版の中で記載されている。
【0176】
代替的投与 本発明に従った少なくとも1つの抗IL−17抗体を製薬学的に有効な量だけ投与するために、数多くの既知の及び開発された投与様式を使用することができる。下記の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従ってその他の投与様式を使用して、適切な結果を得ることもできる。本発明のIL−17抗体は、担体中で、溶液、エマルション、コロイド、又は懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は、当該技術分野の範囲内の若しくは本明細書に記載したその他の様式による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを用いて、送達可能である。
【0177】
非経口処方物及び投与 非経口投与のための処方は、一般的な賦形剤として滅菌水又は生理食塩水、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール)、植物性油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。注射用の水性又は油性懸濁液は、既知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製可能である。注入剤は、例えば水溶液又は溶媒中の無菌注射溶液若しくは懸濁液などの非毒性で経口投与不能の希釈剤であり得る。使用可能なビヒクル又は溶媒としては、水、リンガー溶液、等張食塩水などが許容され、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成の又は半合成の、脂肪油又は脂肪酸;天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は当該技術分野において既知であり、これには当該技術分野において周知のような従来の注射手段、ガス加圧式無針注入デバイス又はレーザー穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されない(例えば限定するものではないが材料及び方法は米国特許第5,851,198号、及び米国特許第5,839,446号に開示されており、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0178】
代替的送達 本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮手段による少なくとも1つの抗IL−17抗体の投与に関する。少なくとも1つの抗IL−17抗体組成物を、特に液体溶液又は懸濁液の形での非経口(皮下、筋肉、又は静脈内)又はその他のあらゆる投与に使用するため;クリーム及び座薬といった(ただしこれらに限定されない)特に半固体形態での膣内又は直腸内投与で使用するため;錠剤又はカプセルの形での(ただしこれらに限定されない)口腔内又は舌下投与のため;粉末、点鼻薬、若しくはエアロゾル、又は特定の薬剤の形で(ただしこれらに限定されない)経鼻的に;皮膚構造を修飾するか又は経皮パッチ内の薬物濃度を増大させるためジメチルスルホキンドといったような化学的エンハンサーを伴った(ユンギンガー(Junginger)ら、「薬剤浸透強化(Drug Permeation Enhancement);シェイ,D.S.(Hsieh, D. S.)編、59〜90頁(マーセル・デッカー社(Marcel Dekker, Inc.)、ニューヨーク、1994年)、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる)又は皮膚上へのタンパク質及びペプチドを含有する処方物の塗布(国際公開第98/53847号)又は電気穿孔といった過渡的輸送経路を作り出す若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬物の易動性を増大させるための電界の適用、又はソノフォレシスなどの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を可能にする酸化剤を伴うゲル、軟こう、ローション、懸濁液又はパッチ送達系といった(ただしこれらに限定されない)ように経皮的に投与するために、調製することができる(上述の刊行物及び特許は参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0179】
経肺/鼻腔内投与 経肺投与のためには、好ましくは少なくとも1つの抗IL−17抗体組成物が、肺の下気道又は洞に達するのに有効な粒径で送達される。本発明に従って、少なくとも1つの抗IL−17抗体は、吸入される治療薬の投与のため当該技術分野において既知の様々な吸入又は鼻腔内デバイスのいずれかにより送達可能である。患者の洞腔又は肺胞内にエアロゾル化した処方物を被着させる能力のあるこれらのデバイスとしては、定量吸入器、ネブライザ、乾燥粉末発生器、噴霧器などが挙げられる。当該技術分野においては、抗体を肺又は鼻腔内投与を導くのに適したその他のデバイスも知られている。このようなデバイスは全てエアロゾル中の抗体を分配するための投与に適した処方物を使用することができる。このようなエアロゾルは、溶液(水性及び非水性の両方)又は固体粒子のいずれかで構成され得る。Ventolin(登録商標)定量吸入器のような定量吸入器は典型的には噴射ガスを使用し、吸息中の作動を必要とする(例えば、国際公開第94/16970号、国際公開第98/35888号を参照されたい)。例えばTurbuhaler(商標)(アストラ(Astra))、Rotahaler(登録商標)(グラクソ(Glaxo))、Diskus(登録商標)(グラクソ(Glaxo))、Spiros(商標)吸入器(デュラ(Dura))、インヘール・セラピューティクス(Inhale Therapeutics)により市販されているデバイス、及びSpindaler(登録商標)パウダー吸入器(ファイゾンス(Fisons))などの乾燥粉末吸入器は、混合粉末の呼気作動を用いる(米国特許第4668218号(アストラ)、欧州特許第237507号(アストラ)、国際公開第97/25086号(グラクソ)、国際公開第94/08552号(デュラ)、米国特許第5458135号(インヘール)、国際公開第94/06498号(ファイゾンス)。これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)。AERx(商標)(アラダイム(Aradigm))、Ultravent(登録商標)ネブライザ(マリンクロット(Mallinckrodt))、及びAcorn II(登録商標)ネブライザ(マーケスト・メディカル・プロダクツ(Marquest Medical Products))(米国特許第5404871(アラダイム(Aradigm)、国際公開第97/22376号)などのネブライザ(以上の参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる)は溶液からエアロゾルを発生させるのに対し、定量吸入器、乾燥粉末吸入器などは小粒子エアロゾルを発生させる。市販の吸入デバイスのこれらの具体例は、本発明の実施に適した具体的デバイスを代表するものとして意図されており、本発明の範囲を制限するものとして意図されているものではない。好ましくは、少なくとも1つの抗IL−17抗体を含む組成物は、乾燥粉末吸入器又は噴霧器によって送達される。本発明の少なくとも1つの抗体を投与するための吸入デバイスには、複数の望ましい特徴が存在する。例えば、吸入デバイスによる送達は、有利に信頼性が高く、再現可能でありかつ正確である。吸入デバイスは所望により、うまく呼吸できるように、例えば約10mm未満、好ましくは約1〜5mmの小さな乾燥粒子を送達することができる。
【実施例】
【0180】
実施例1:IL−17刺激による線維形成促進遺伝子発現
方法:
ヒト腎臓近位細管上皮細胞(HK−2)(ATCC、バージニア州マナサス)を、組換えヒト表皮成長因子(5ng/mL)及びウシ下垂体抽出物(0.05mg/mL)を含んだケラチノサイト無血清培地(インビトロジェン/ギブコ(Invitrogen/Gibco)、カリフォルニア州カールスバード)中で増殖させた。細胞は24ウェルプレートに、1ウェル当たり25,000個の細胞をプレーティングし、24時間おいて付着させた。細胞成長培地を次に、添加剤のない培地に置き換え、細胞を一晩インキュベートした。次に細胞に対し、10又は100ng/mLの組換えヒトIL−17(R&Dシステムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス)の存在下又は存在しない状態において、24時間刺激した。続いて、RNeasy Plusミニキット(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)を用いてRNAを単離し、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いてcDNAに逆転写した。線維形成促進遺伝子発現は、TaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))及びTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))を用いて、リアルタイムPCR解析によって決定された。
【0181】
定量的遺伝子発現は、比較CT法により計算され、ここでCT値は、遺伝子発現が最初に検出される閾値サイクル数として決定される。関心のある遺伝子について、遺伝子発現の発現比は、まずハウスキーピング遺伝子18Sに対して正規化され、ΔCT値を得る。IL−17治療による遺伝子発現の発現比を、ΔΔCT=ΔCT(無刺激)−ΔCT(刺激後)により計算し、ここで無刺激サンプルはキャリブレーターの役割をする。スチューデントのt検定により、統計的に有意な差が決定された(図1を参照)。
【0182】
IL−17刺激による線維形成促進可溶性媒介物質の分泌
方法:
ヒト近位細管上皮細胞を、上記と同様の培地において増殖させた。細胞は24ウェルプレートに、1ウェル当たり25,000個の細胞をプレーティングし、24時間おいて付着させた。細胞成長培地を次に、添加剤のない培地に置き換え、細胞を一晩インキュベートした。次に細胞に対し、1、10又は100ng/mLの組換えヒトIL−17(R&Dシステムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス)の存在下又は存在しない状態において、48時間刺激した。抗体の中和のため、細胞を6ウェルプレートに、1ウェル当たり100,000個の細胞をプレーティングした。IL−17(10ng/mL)をマウスモノクローナル抗ヒトIL−17抗体(120ng/mL)(イーバイオサイエンス(eBioscience)、カリフォルニア州サンディエゴ)と共に1時間室温でプレインキュベートしてから、細胞に適用した。
【0183】
サイトカインのプロファイリングは、抗体固定ビーズを含むヒトサイトカイン/ケモカイン混合済みリンコプレックス(Lincoplex)キット(MCYTO−60K−PMX30;リンコ・リサーチ(Linco Research)、ミリポア(Millipore);ミズーリ州セントチャールズ)を用いて、次のヒト分析物について測定を行った:IL−1β、IL−2、IL−lRα、IL−4、IL−5、EGF、IL−6、IL−7、TGFα、フラクタルカイン、IL−8、IL−IO、IL−12(p40)、IL−12(p70)、TNF−α、IFN−γ、GM−CSF、MIP−Iα、MIP−1β、MCP−I、RANTES、IL−13、IL−1α、IL−15、IL−17、IP−IO、エオタキシン、sCD40L、VEGF、及びG−CSF。メーカーの説明書に従って、イムノアッセイを実施した。簡単に述べると、凍結した血清サンプルを解凍し、細胞培養培地で標準物質を希釈した。イムノアッセイの完了後、サンプルをBio−Plex(商標)(バイオラド・ラボラトリーズ社(Bio-Rad Laboratories, Inc)カリフォルニア州ハーキュリーズ)で測定した。5パラメータのロジスティック回帰アルゴリズムを用いて、6ポイントの標準曲線に基づき、上清中の分析物濃度を決定した。スチューデントのt検定により、統計的に有意な差が決定された(図2及び3を参照)。
【0184】
IL−17によるZO−1タンパク質発現の下方制御
方法:
ヒト近位細管上皮細胞を、上記と同様の培地において増殖させた。細胞は、滅菌カバースリップ(18×18mm)上の6ウェルプレートに、1ウェル当たり125,000個の細胞をプレーティングし、24時間おいて付着させた。細胞成長培地を次に、添加剤のない培地に置き換え、細胞を一晩インキュベートした。次に細胞に対し、50ng/mLの組換えヒトIL−17(R&Dシステムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス)の存在下又は存在しない状態において、48時間刺激した。上記の方法と同様に、ただし0.6μg/mLのマウスモノクローナル抗ヒトIL−17抗体(イーバイオサイエンス(eBioscience)、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、抗体中和実験を行った。細胞を4%パラホルムアルデヒド中で固定し(室温で15分間)、0.5%Triton X−100で透過処理し(室温で8分間)、パワーブロック(Powerblock)(バイオジェネックス(Biogenex)、カリフォルニア州サンレイモン)で室温で8分間遮断処理を行った。ZO−1は、モノクローナルマウス抗ヒトZO−1(18μg/mL)(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド)1次抗体を、ロバ抗マウスのアレクサフルオル(Alexa Fluor)594(8μg/mL)(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド)2次抗体と組み合わせて用いることにより、検出された。カバースリップを、スローフェード・ゴールド・アンチフェード(SlowFade Gold Antifade)試薬(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド)を約8μL含む顕微鏡スライドグラス上に伏せた。スライドを、ツァイス(Zeiss)axiophot顕微鏡で観察した(図4参照)。
【0185】
IV.利点
第I節で検討したように、これまでの研究で、IL−17が腎臓近位細管上皮からの炎症促進媒介物質分泌を刺激する能力が示されている。本研究では、この発見を拡張し、別に既知の炎症性因子(VEGF)のIL−17誘導性分泌、並びに、免疫細胞を補充し、常在上皮細胞(G−CSF、GM−CSF及びフラクタルカイン)との直接的相互作用を媒介することが知られている分子のIL−17誘導性分泌を示す、新しい結果を提供する。本研究はまた、細管上皮にあるIL−17が線維形成促進表現型移行を引き起こす直接的作用を初めて示している。IL−17は、上皮促進e−カドヘリン遺伝子(CDHl)の下方制御と、マトリックス付着及び筋線維芽細胞分化(CTGF)、並びに免疫細胞の相互作用及び活性化(CD44)を伴う遺伝子の上方制御を誘導する。また、上皮一体性に対する直接的な影響は、IL−17誘導性ZO−1下方制御によって示された。可溶性炎症促進/線維形成促進媒介物質の分泌刺激と組み合わせた、直接的な線維形成促進作用により、IL−17は、有効な腎臓炎症/線維化分子であることを示す。これらの新しい発見は、これまでに記述されているIL−17の炎症促進活性と組み合わせることにより、IL−17の中和を、腎臓の炎症/線維化疾患及び同じ発症機序を顕在化させる潜在的な他の病状を緩和するための新しい抗炎症/線維化治療アプローチとする理論的根拠を提供する。
【0186】
参考文献
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【0187】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒトインターロイキン−17(IL−17)拮抗薬のIL−17阻害効果量を投与することを含んでなる、少なくとも1つのIL−17拮抗薬を用いることにより、少なくとも1つの形態の線維症にかかっている患者における少なくとも1つのIL−17の阻害方法であって、前記IL−17が、IL17A、IL−17F、又はこれらのムテインから選択される上記の方法。
【請求項2】
前記IL−17拮抗薬が、小分子及びタンパク質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子が、少なくとも1つのIL−17受容体に対してIL−17を遮断する能力を有する、インドール誘導体、環状アミン誘導体、ウレイド誘導体、複素環式化合物、アニリド類、又は機能性ピロール類から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、可溶性受容体、抗体、ペプチド、それらの断片、又はそれらの融合タンパク質から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が、前記タンパク質の血清半減期を延長させる化合物又はタンパク質を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、少なくとも1つの重鎖可変領域及び少なくとも1つの軽鎖を含む少なくとも1つの可変領域を含み、前記IL−17抗体が、配列番号1〜4の少なくとも1つと結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12Mから選択される少なくとも1つの親和性でIL−17と結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、少なくとも1つのIL−17ポリペプチドの少なくとも1つの活性を実質的に調節する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記小分子又はタンパク質が、少なくとも1つの製薬上許容できる担体又は希釈剤を更に含む組成物として供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、検出可能な標識又はリポーター、TNF拮抗薬、抗感染薬、循環器(CV)系薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸器薬、胃腸(GI)管薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡薬、血管系作用薬、抗腫瘍薬、免疫調整薬、眼、耳又は鼻用薬、局所薬、栄養製品、サイトカイン、又はサイトカイン拮抗薬から少なくとも1つ選択された、少なくとも1つの(at least one at least one)化合物又はポリペプチドを投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記の阻害効果量が、前記細胞、組織、器官又は動物1キログラム当たり0.001〜50mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺臓内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも1つの方法による、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記線維症が器官特異性線維症又は全身性線維症である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記器官特異性線維症が、肺線維症、肝臓線維症、腎臓線維症又は腎線維症、心臓線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症、又はその他の線維症の少なくとも1つに関連する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記肺線維症が、薬剤誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス、又は慢性閉塞性肺疾患の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記肝臓線維症が、肝硬変、住血吸虫症、又は胆管炎の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記肝硬変が、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変の少なくとも1つから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記胆管炎が、硬化性胆管炎である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腎臓線維症が、狼瘡性糸球体硬化症に関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記心臓線維症が、心筋梗塞の少なくとも1つの種類に関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記血管線維症が、血管形成術後動脈再狭窄、又はアテローム性動脈硬化の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記皮膚線維症が、ケロイド、又は腎性線維形成性皮膚症の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記眼線維症が、後眼窩線維症、白内障手術後又は増殖性硝子網膜症の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記骨髄線維症が、特発性骨髄線維症又は薬剤誘発性骨髄線維症の少なくとも1つに関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記の他の線維症が、ペイロニー病、デュピュイトラン拘縮、又は皮膚筋炎から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記全身性線維症が、全身性硬化症及び移植片対宿主病から選択される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−534664(P2010−534664A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518314(P2010−518314)
【出願日】平成20年7月21日(2008.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/070588
【国際公開番号】WO2009/015063
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】