説明

IL−23活性を調節する方法;関連する試薬

【課題】インフルエンザウイルスに対する一次免疫応答および二次免疫応答の間にウイルスに対する保護を提供する。
【解決手段】本発明は一般的に、哺乳動物サイトカインの使用に関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザウイルスを処置するサイトカインの機能を開示する。本発明の開示により、例えば、ウイルス感染を処置する目的のための、サイトカイン活性(すなわち、IL−23の活性)を調節する方法が提供される。本発明の開示により、p19、IL−23、またはIL−23R;あるいはp19またはIL−23Rをコードする核酸の検出に基づく、ウイルス感染を診断する方法、ならびにこのような診断方法を実施するためのキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般的に、哺乳動物サイトカインの使用に関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザウイルスを処置におけるサイトカインの機能を開示する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系は、個体を感染性因子(例えば、ウイルス、細菌、多細胞生物、および癌)から保護する。この系としては、数種の型のリンパ球系細胞および骨髄性細胞(例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞および好中球)が挙げられる。これらのリンパ球系細胞および骨髄性細胞は、多くの場合、サイトカインとして公知であるシグナル伝達タンパク質を産生する。免疫応答としては、炎症(すなわち、全身的かまたは身体の特定の場所における免疫細胞の蓄積)が挙げられる。感染性因子または外因性の物質に対する応答において、免疫細胞は、サイトカインを分泌し、次に免疫細胞の増殖、発生、分化または遊走を調節する。サイトカインは、多くのウイルス感染に対する免疫応答に関係している(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9を参照のこと)。
【0003】
インフルエンザウイルスは、米国において毎年20,000人の死に寄与する。ウイルスによる死因の主要なものであり、ウイルスは、気道(airway)の上皮を破壊し、そして肺外の組織に広がり得る。危険度が高い個体としては、年齢が65歳を超える個体、および障害(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心疾患、糖尿病、慢性腎疾患もしくは慢性肝疾患、癌、または慢性的な結合組織の疾患)を有する個体が挙げられる。インフルエンザウイルスは、3つの型(A型、B型、およびC型)に分類され、これらの型のうち、A型は、臨床的に最も重要である。インフルエンザA型ウイルスのゲノムは、10個のタンパク質をコードする。表面タンパク質(例えば、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ)上の抗原の変異性に起因して、例えば、インフルエンザA型ウイルス(IV)株に対して長期にわたって持続する保護を提供するワクチンを産生することは不可能であった(例えば、非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13を参照のこと)。
【0004】
インフルエンザ感染によって、ウイルス特異的CD8T細胞は、気道において高い濃度で生じ、そしてウイルス性抗原に対する再度の曝露に対してエフェクター機能を迅速に発現する。インフルエンザウイルスの複製は、本質的には気道に限定されるが、この感染は、気道だけではなく、身体の他の場所(例えば、肝臓)においても免疫細胞の活性化をもたらす。CD8T細胞は、感染した細胞の直接的な溶解を介してか、または抗ウイルスサイトカイン(例えば、インターフェロン−γ(IFNγ)および腫瘍壊死因子−α(TNFα))の分泌によってウイルス感染と戦う。IFNγは、例えば、ウイルスのmRNAおよび2本鎖RNAの代謝を障害することによって、ウイルスの複製を阻害するタンパク質を誘導する。さらに、IFNγは、例えば、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を上方制御することによって、このAPCを活性化する。
【0005】
インフルエンザによる一次感染および二次感染に対する免疫応答は、IFNγが一次感染に対する応答に必要とされないが、二次感染からの回復に使用されるようである場合、異なる特性を有する。別の違いは、急性の感染(例えば、急性ウイルス感染の初期)に対するCD8T細胞の応答が、CD4T細胞から比較的に独立しているのに対して、二次感染における記憶CD8T細胞による応答はCD4T細胞によって上昇されることである。インフルエンザによる一次感染後、記憶CD8T細胞の大きなプールは、二次リンパ器官および非リンパ系組織(例えば、肺および肝臓)において存続する(例えば、非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18を参照のこと)。
一次ウイルス感染に対する応答と二次ウイルス感染に対する応答との間のさらなる違いは、以下の通りである。MHCクラスI分子に結合されたウイルスペプチドは、CD8T細胞を刺激する。ここでCD8T細胞の応答(例えば、サイトカインの産生)の特徴は、提示されたペプチドの独自性、そしてそのウイルス感染が一次であるか、または二次であるかに依存して異なり得る。例えば、一次感染は、インフルエンザの核タンパク質およびインフルエンザの酸性ポリメラーゼに特異的なT細胞による免疫応答に関連し得るが、二次感染の間には、ほとんどのT細胞は、核タンパク質は認識しても、酸性ポリメラーゼは認識しない。一次曝露後、肺から採取されるCD8T細胞の約12%は、NP366−374エピトープに特異的であるが、二次曝露後、この数字は例えば、60〜70%まで増加する。一次感染または二次感染の間の免疫応答における変化は、抗原を提示するAPCの独自性(例えば、樹状細胞(DC)対マクロファージ)、および二次感染の間に記憶T細胞を活性化する、DCの能力対マクロファージの能力の違いに関する変化を反映し得る(例えば、非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29;非特許文献30を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Abbasら(編)「Cellular and Molecular Immunology」、Philadelphia、PA、W.B.Saunders Co.、2000年
【非特許文献2】OppenheimおよびFeldmann(編)、「Cytokine Reference」、San Diego、CA、Academic Press、2001年
【非特許文献3】Kaufmannら、「Immunobiol.」、2001年、第204巻、603〜613ページ
【非特許文献4】SaurezおよびSchultz−Cheery、「Dev.Comp.Immunol.」、2000年、第24巻、269〜283ページ
【非特許文献5】van ReethおよびNauwynck、「Vet.Res.」、2000年、第31巻、187〜213ページ
【非特許文献6】Garcia−Sastre、「Virology」、2001年、第279巻、375〜384ページ
【非特許文献7】Katzeら、「Nat.Rev.Immunol.」、2002年、第2巻、675〜687ページ
【非特許文献8】van Reeth、「Vet.Microbiol.」、2000年、第74巻、109〜116ページ
【非特許文献9】Tripp、「Curr.Pharm.Des.」、2003年、第9巻、51〜59ページ
【非特許文献10】Treanor、「New Engl.J.Med.」、2004年、第350巻、218〜220ページ
【非特許文献11】SteinhauerおよびSkehel、「Annu.Rev.Genet.」、2002年、第36巻、305〜332ページ
【非特許文献12】Mozdzanowskaら、「J.Immunol.」、2000年、第164巻、2635〜2643ページ
【非特許文献13】Nicholsonら、「The Lancet」、2003年、第362巻、1733〜1745ページ
【非特許文献14】KaechおよびAhmed、「Science」、2003年、第300巻、263〜265ページ
【非特許文献15】SunおよびBevan、「Science」、2003年、第300巻、339〜342ページ
【非特許文献16】Turnerら、「Immunity」、2003年、第18巻、549〜559ページ
【非特許文献17】Elyら、「J.Immunol.」、2003年、第170巻、1423〜1429ページ
【非特許文献18】Tophamら、2001年、「J.Immunol.」、第167巻、6983〜6990ページ
【非特許文献19】YewellおよびGarcia−Sastre、「Curr.Opin.Microbiol.」、2002年、第5巻、414〜418ページ
【非特許文献20】「Canadian Medical Assoc.J.」、第168巻、49〜57ページ
【非特許文献21】Nguyenら、「J.Virol.」、2000年、第74巻、5495〜5501ページ
【非特許文献22】Grahamら、「J.Exp.Med.」、1993年、第178巻、1725〜1732ページ
【非特許文献23】WongおよびPamer、「Annu.Rev.Immunol.」、2003年、第21巻、29〜70ページ
【非特許文献24】Croweら、「J.Exp.Med.」、2003年、第198巻、399〜410ページ
【非特許文献25】Julkunenら、「Vaccine」、2001年、第19巻、S32〜S37ページ
【非特許文献26】Webbyら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、2003年、第100巻、7235〜7240ページ
【非特許文献27】Turnerら、「J.Immunol.」、2001年、第167巻、2753〜2758ページ
【非特許文献28】Wileyら、「J.Immunol.」、2001年、第167巻、3293〜3299ページ
【非特許文献29】Belzら、「J.Virol.」、2000年、第74巻、3486〜3493ページ
【非特許文献30】Belzら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、1998年、第95巻、13812〜13817ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インフルエンザに対する長期にわたって持続しかつ幅広い免疫は、CD8T細胞の応答を生じる能力に依存し得るが、この応答の形成は、多くの場合、現行のワクチンで有効ではない。例えば、インフルエンザウイルスに対する一次免疫応答および二次免疫応答の間に、ウイルスに対する保護を提供する、未だ満たされない必要性が存在する。本発明は、IL−23レセプターおよびIL−23レセプターのアゴニストならびにアンタゴニストを使用する方法を提供することによって、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、部分的に、IL−23のアゴニストまたはアンタゴニストが、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を調節するという知見に基づく。
【0009】
本発明は、ウイルス、ウイルス性抗原、またはウイルス感染に対するCD8T細胞の応答を調節する方法を提供し、この方法は、有効量のp19、IL−23、もしくはIL−23Rのアゴニスト、または有効量のp19、IL−23、もしくはIL−23Rのアンタゴニストを投与する工程を包含する。このアンタゴニストが、以下:a)p19、IL−23、またはIL−23Rに特異的に結合する抗体からの結合組成物;b)IL−23に特異的に結合するIL−23Rに由来する可溶性レセプター;c)低分子;またはd)p19またはIL−23Rをコードする核酸に特異的にハイブリダイズする核酸、を含む上記の方法もまた、提供される。さらに、本発明は、この結合組成物が、以下:ポリクローナル抗体;モノクローナル抗体;ヒト化抗体、またはそのフラグメント;Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはF(ab’)フラグメント;抗体のペプチド模倣体(mimetic);または検出可能な標識、を含む抗体に由来する上記の方法、ならびにこの核酸が、アンチセンス核酸または低分子干渉RNAを含む上記の方法を提供する。
【0010】
別の局面において、本発明は、ウイルス、ウイルス性抗原、またはウイルス感染に対するCD8T細胞の応答を調節する方法を提供し、この方法は、有効量のアゴニストp19、IL−23、もしくはIL−23R、または有効量のp19、IL−23、もしくはIL−23Rのアンタゴニストを投与する工程を包含する。本発明は、有効量の以下:a)p35、IL−12、p40、IL−12Rβ1、もしくはIL−12Rβ2のアンタゴニスト;またはb)p35、IL−12、p40、IL−12Rβ1、もしくはIL−12Rβ2のアンタゴニストを同時投与する工程をさらに包含し、そして本発明は、p19、IL−23、またはIL−23Rのアゴニストが、以下:a)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;b)IFNγ産生ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;またはc)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞の細胞毒性を減少させる、上記の方法を提供する。本発明はまた、p19、IL−23、またはIL−23Rのアンタゴニストが、二次ウイルス感染に対する免疫応答の間にCD8T細胞の総数を増大する上記の方法だけでなく、その増大が、二次ウイルス感染に対する免疫応答を包含し、有効量のp35、IL−12、p40、IL−12Rβ1またはIL−12Rβ2のアンタゴニストを投与する工程をさらに包含する上記の方法を、企図する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、CD8T細胞の総数が、以下:肺;気管支肺胞洗浄(BAL);脾臓;またはリンパ節のCD8T細胞の総数である上記の方法、ならびに有効量のp35、IL−12、IL−12Rβ2、またはp40のアンタゴニストを投与する工程をさらに包含する上記の方法を提供する。
【0012】
本発明のなお別の局面は、ウイルス、ウイルス性抗原、またはウイルス感染に対するCD8T細胞の応答を調節する方法であり、この方法は、有効量のアゴニストp19、IL−23、もしくはIL−23R、または有効量のp19、IL−23、もしくはIL−23Rのアンタゴニストを投与する工程を包含し;このウイルスは、呼吸器ウイルス;粘膜のウイルス;もしくはインフルエンザウイルスであるか;またはこのインフルエンザウイルスは、インフルエンザA型、インフルエンザB型、もしくはインフルエンザC型である方法;あるいはこのウイルス性抗原が、インフルエンザのウイルス性抗原を含む上記方法;そしてこのインフルエンザウイルス抗原が、インフルエンザA型のウイルス性核タンパク質もしくはインフルエンザA型ウイルスの酸性ポリメラーゼに由来するか;またはこのウイルス感染が、呼吸器症候群もしくは肺炎を含む方法である。なお別の実施形態において、本発明は、ワクチンまたはアジュバントを投与する工程をさらに包含する方法、ならびに生物学的サンプルに結合組成物を接触させる工程であって、この結合組成物は、以下:p19、IL−23、もしくはIL−23R;またはp19もしくはIL−23Rをコードする核酸に特異的に結合する工程;およびこの結合組成物の、この生物学的サンプルへの特異的結合を測定もしくは決定する工程を包含するウイルス感染を診断する方法を提供する。この結合組成物は、例えば、抗体、核酸プローブ、PCRプライマー、または分子ビーコンであり得る。
【0013】
有効量のp19、IL−23、もしくはIL−23Rのアゴニストまたはアンタゴニストによって処置する工程を包含する、インフルエンザA型ウイルスの感染を処置する方法が、提供される。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、区画および結合組成物を備える、ウイルス感染の診断のためのキットを提供し、この結合化合物は、以下:a)p19、IL−23、もしくはIL−23R;またはb)p19もしくはIL−23Rをコードする核酸に、特異的に結合する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
ウイルス、ウイルス性抗原またはウイルス感染に対するCD8T細胞応答を調節する方法であって、該方法は、有効量の以下:
a)p19、IL−23またはIL−23Rのアゴニスト;あるいは
b)p19、IL−23またはIL−23Rのアンタゴニスト
を投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記アンタゴニストが、以下:
a)p19、IL−23またはIL−23Rに特異的に結合する抗体由来の結合組成物;
b)IL−23に特異的に結合するIL−23R由来の可溶性レセプター;
c)p19またはIL−23Rをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、核酸;あるいは
d)低分子
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗体由来の結合組成物が、以下:
a)ポリクローナル抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ヒト化抗体、またはそのフラグメント;
d)Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはF(ab’)フラグメント;
e)抗体のペプチド模倣体;あるいは
f)検出可能な標識
を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記核酸が、以下:
a)アンチセンス核酸;または
b)低分子干渉RNA(siRNA)
を含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
有効量の以下:
a)p35、IL−12、p40、IL−12Rβ1またはIL−12Rβ2のアゴニスト;あるいは
b)p35、IL−12、p40、IL−12Rβ1またはIL−12Rβ2のアンタゴニスト
を同時投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記p19、IL−23またはIL−23Rのアゴニストが、以下:
a)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;
b)IFNγ産生ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;または
c)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞の細胞毒性
を減少する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記p19、IL−23またはIL−23Rのアンタゴニストが、以下:
a)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;
b)IFNγ産生ウイルス性抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合;または
c)ウイルス性抗原特異的CD8T細胞の細胞毒性
を増大する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記p19、IL−23またはIL−23Rのアンタゴニストが、二次ウイルス感染に対する免疫応答の間に、CD8T細胞の総数を増大する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記CD8T細胞の総数が、以下:
a)肺;
b)気管支肺胞洗浄(BAL);
c)脾臓;または
d)リンパ節
に由来する、項目8に記載の方法。
(項目10)
有効量のp35、IL−12、IL−12β2またはp40のアンタゴニストを当時投与する工程をさらに包含する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記ウイルスが、以下:
a)呼吸器ウイルス;
b)粘膜のウイルス;または
c)インフルエンザウイルス
である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記インフルエンザウイルスが、以下:
a)インフルエンザA型;
b)インフルエンザB型;または
c)インフルエンザC型
である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ウイルス性抗原が、インフルエンザウイルス抗原を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記インフルエンザウイルス抗原が、以下:
a)ウイルス性核タンパク質;
b)ウイルス性酸性ポリメラーゼ
に由来する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記ウイルス感染が、以下:
a)呼吸症候群;または
b)肺炎
を含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
a)ワクチン;または
b)アジュバント
を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目17)
インフルエンザA型ウイルス感染を処置する方法であって、該方法は、有効量の項目1に記載のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目18)
ウイルス感染を診断する方法であって、該方法は、以下:
結合組成物を生物学的サンプルに接触させる工程であって、ここで、該結合組成物は、以下:
a)p19、IL−23またはIL−23R;あるいは
b)p19またはIL−23Rをコードする核酸
に特異的に結合する、工程;および
該結合組成物の、該生物学的サンプルへの特異的結合を測定または決定する工程
を包含する、方法。
(項目19)
ウイルス感染の診断をするためのキットであって、該キットは、以下:
コンパートメント;および
結合組成物であって、以下:
a)p19、IL−23またはIL−23R;あるいは
b)p19またはIL−23Rをコードする核酸
に特異的に結合する、結合組成物
を備える、キット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、「a」、「an」および「the」のような単語の単数形態は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、それらの対応する複数形の言及を包含する。
【0016】
本明細書において引用される全ての参考文献は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ独立して参考として援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参考として援用される。
【0017】
(I.定義)
「活性化」、「刺激」および「処置」とは、細胞またはレセプターに対して適用される場合、文脈によってそうでないことが示されないか、または明示的にそうでないことが示されない限り、同じ意味(例えば、リガンドでの細胞またはレセプターの活性化、刺激または処置)を有し得る。「リガンド」は、天然リガンドおよび合成リガンド(例えば、サイトカイン、サイトカイン改変体、アナログ、ムテイン、および抗体由来の結合組成物)を包含する。「リガンド」はまた、低分子(例えば、サイトカインのペプチド模倣体、および抗体のペプチド模倣体)も包含する。「活性化」は、内部機構ならびに外部機構または環境因子によって調節される場合の細胞の活性化について言及し得る。例えば、細胞、組織、器官または生物の「応答」は、生化学的挙動または生理学的挙動(例えば、生物学的画分内の濃度、密度、接着または移動、遺伝子発現の速度、あるいは分化の状態)の変化を包含し、ここで、この変化は、活性化、刺激または処置、あるいは遺伝的プログラミングのような内部機構と相関する。
【0018】
分子の「活性」とは、リガンドもしくはレセプターに対する分子の結合、触媒活性;遺伝子発現もしくは細胞シグナル伝達、分化、または成熟を刺激する能力;抗原性活性、他の分子の活性の調節などを説明し得るか、あるいはこれらについていい得る。分子の「活性」はまた、細胞−細胞相互作用(例えば、接着)を調節もしくは維持する活性、または細胞の構造(例えば、細胞膜または細胞骨格)を維持する活性についていい得る。「活性」はまた、比活性(例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的画分における濃度など)を意味し得る。「増殖活性」は、例えば、正常な細胞分裂、ならびに癌、腫瘍、形成異常、細胞形質転換、転移、および新脈管形成を増強する活性(すなわち、これらに必要とされるか、またはこれらに特異的に関連する活性)を包含する。
【0019】
「アジュバント」とは、ワクチンに対する免疫応答を増強する、分子、化合物または組成物である。本発明は、IL−23もしくはp19のアゴニストまたはIL−23もしくはp19のアンタゴニストをアジュバント(例えば、インターフェロンまたはFreundアジュバント)と組み合わせて投与する方法を提供する。アジュバントは記載される(例えば、Proiettiら(2002)J.Immunol.169:375−383;BilliauおよびMatthys(2001)J.Leukoc.Biol.70:849−860;Klinman(2003)Expert Rev.Vaccines(2003)2:305−315;Hamilton(2003)J.Leukocyte Biol.73:702−712;Holmgrenら(2003)Vaccine 21(補遺2):S89−S95;Lemieux(2002)Expert Rev.Vaccines 1:85−93;Villinger(2003)Expert Rev.Vaccines 2:317−326を参照のこと)。
【0020】
「投与」および「処置(処理)」とは、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用される場合、外因性の薬学的因子、治療的因子、診断因子、化合物または組成物の、動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官または生物学的流体への接触をいう。「投与」および「処置(処理)」はまた、例えば、治療的方法、プラシーボ方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法および実験方法をいい得る。「細胞の処理」とは、細胞への試薬の接触ならびに流体への試薬の接触(ここで、この流体は細胞と接触している)を包含する。「投与」および「処置(処理)」はまた、インビボ処置(処理)またはエキソビボ処置(処理)(例えば、試薬、診断、結合組成物、または別の細胞による細胞の処理)を意味する。ヒト被験体、獣医学的被験体または研究用被験体に適用される場合、「処置(処理)」とは、研究用途および診断用途のための治療的処置、予防的処置、または予防手段をいう。ヒト被験体、獣医学的被験体または研究用被験体、あるいは細胞、組織または器官に適用される場合、「処置(処理)」とは、ヒト被験体または動物被験体、細胞、組織、生理学的画分、または生理学的流体へのIL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストの接触を包含する。「細胞の処理」はまた、IL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストが(例えば、流体相またはコロイド相において)IL−23レセプター(IL−23RおよびIL−12Rβ1のヘテロダイマー)に接触する状況、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストが流体(例えば、ここでこの流体は細胞またはレセプターと接触している)に接触するが、このアゴニストまたはアンタゴニストが、細胞またはレセプターと接触しているということは実証されていない状況を包含する。
【0021】
「結合組成物」とは、標的に結合可能な、分子、低分子、高分子、抗体、そのフラグメントもしくはアナログ、または可溶性レセプターをいう。「結合組成物」はまた、標的に結合可能な、分子の複合体(例えば、非共有結合性の複合体)、イオン化分子、および共有結合的に修飾された分子もしくは非共有結合的に修飾された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化または限定切断による修飾)をいい得る。「結合組成物」はまた、標的に結合可能な、安定剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒または添加剤と組み合わせた分子をいい得る。「結合する」とは、標的との結合組成物の会合として定義され得、ここで、この結合組成物が溶液中に溶解または懸濁され得る場合に、この会合は結合組成物の正常なブラウン運動の縮小をもたらす。
【0022】
「保存的に修飾された改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された改変体とは、同じアミノ酸配列または本質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同じ核酸配列をいう。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同じ核酸が任意の所定のタンパク質をコードし得る。アミノ酸配列については、当業者は、1個のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を、コードされた配列において保存されたアミノ酸と置換する、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列への個々の置換が「保存的に修飾された改変体である」ということを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表も、当該分野において周知である。保存的置換の例は、以下の群のうちの一つのアミンの酸の、同じ群の別のアミノ酸への交換である(Leeらに発行された米国特許第5,767,063号、KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−132):
(1)疎水性:ノルロイシン、Ile、Val、Leu、Phe、CysまたはMet;
(2)中性で親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香性:Trp、Tyr、Phe;
(7)低分子アミノ酸:Gly、Ala、Ser。
【0023】
「由来する」とは、例えば、親ペプチド、親オリゴヌクレオチド、または親ポリペプチド(例えば、抗体)からのペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチドの構造に由来することを説明するために使用され得る。この文脈において、由来するとは、例えば、ペプチドが親において見出される配列と同一の配列を有する場合のペプチド構造、例えば、ペプチドが親に同一であるが、親のN末端、C末端またはN末端およびC末端の両方で切断を有するか、あるいは切断および融合を有するか、あるいは融合のみを有するペプチド構造を包含する。由来するはまた、親において見出されるのと同一の配列を有するが、保存的なアミノ酸の交換あるいは欠失または挿入を有するペプチドを包含し、ここでこの欠失または挿入は、親に固有であるペプチドの生物学的特性を保つ。「由来する」は、このペプチドまたはポリペプチドが親を開始化合物として使用して合成される状況、およびこのペプチドまたはポリペプチドが親の構造を誘導装置として使用して新規に合成される状況を包含する。「由来する」ポリペプチドの例は、内在性膜結合レセプターの細胞外アミノ酸の大半または全てを含むが、この膜結合レセプターの膜貫通セグメントおよび細胞質ゾルのセグメントを一切含まない可溶性レセプターである。
【0024】
「有効量」または「治療有効量」とは、障害または生理学的な状態の症状または兆候を改善するのに十分な量、あるいは障害または生理学的な状態の診断を可能にするか、または容易にするのに十分な量を意味する。特定の患者または獣医学的な被験体についての有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法経路および用量、ならびに副作用の重篤度のような因子に依存して変動し得る(例えば、Nettiらに発行された米国特許第5,888,530号を参照のこと)。有効量は、最大用量あるいは重大な副作用または毒性作用を避ける投薬プロトコルであり得る。この作用は診断手段、パラメーターまたは検出可能なシグナルの、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常は少なくとも20%、最も通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%の改善(ここで、100%は正常な被験体によって示される診断パラメーターとして定義される)をもたらす(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0025】
「外因性の」とは、文脈により、生物、細胞またはヒトの身体の外側で生成される物質をいう。「内因性の」とは、文脈により、細胞、生物またはヒトの身体の内側で生成される物質をいう。
【0026】
「障害」とは、病理学的状態、または病理学的状態に相関しているか、もしくは病理学的状態になりやすい状態についていう。「感染性障害」とは、例えば、微生物、細菌、寄生生物、ウイルスなどから生じる障害、およびこの障害に対する不適切な免疫応答、効果の無い免疫応答、または異常な免疫応答をいう。「腫瘍形成障害」とは、癌、形質転換細胞、腫瘍、形成異常(displasia)、新脈管形成、転移など、およびこの障害に対する不適切な免疫応答、効果の無い免疫応答、または異常な免疫応答を包含する。
【0027】
「有効量」とは、例えば、障害、状態、または病理学的状態の症状または徴候を改善するのに十分な、IL−23アゴニスト、IL−23アンタゴニスト、結合化合物または結合組成物の量を意味する。「有効量」はまた、障害、状態、または病理学的状態の症状または徴候の診断を可能にするか、あるいは容易にするのに十分な、IL−23アゴニスト、IL−23アンタゴニスト、または結合化合物もしくは組成物の量にも関する。
【0028】
「インヒビター」および「アンタゴニスト」あるいは「活性化因子」および「アゴニスト」は、それぞれ阻害分子または(例えば、(例えばリガンド、レセプター、補因子、遺伝子、細胞、組織または器官の)活性化のための)活性化分子をいう。例えば、遺伝子、レセプター、リガンドまたは細胞の調節因子は、遺伝子、レセプター、リガンドまたは細胞の活性を変更する分子であり、ここで、活性はその調節特性において活性化、阻害または変更され得る。この調節因子は、単独で作用し得るか、または補因子(例えば、タンパク質、金属イオンまたは低分子)を使用し得る。インヒビターは、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプターまたは細胞の活性を減少、ブロック、阻止、遅延、不活性化、減感、または下方制御する化合物である。活性化因子は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプターまたは細胞の活性を、増大、活性化、促進、増強、増感、または上方制御する化合物である。インヒビターまたは、構成的な活性を減少、ブロック、または不活性化する組成物としても定義され得る。「アゴニスト」とは、標的と相互作用し、標的の活性化の増大を引き起こすか、または促進する化合物である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用を対抗する化合物である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を阻止、減少、阻害または中和する。アンタゴニストはまた、同定されたアゴニストが無い場合でさえ、標的(例えば、標的レセプター)の構成的な活性を、阻止、阻害または減少し得る。
【0029】
阻害の程度を検査するために、例えば、所定のタンパク質、遺伝子、細胞、または生物を含むサンプルまたはアッセイは、強力な活性化因子また強力なインヒビターによって処理され、そしてインヒビターを含まないコントロールサンプルと比較される。コントロールサンプル(すなわち、アンタゴニストによって処理されない)は、100%の相対活性値を示す。阻害は、コントロールに対する活性値が約90%以下であり、代表的には85%以下であり、より代表的には80%以下であり、最も代表的には75%以下であり、一般的には70%以下であり、より一般的には65%以下であり、最も一般的には60%以下であり、代表的には55%以下であり、通常では50%以下であり、より通常では45%以下であり、最も通常では40%以下であり、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらにより好ましくは25%以下であり、そして最も好ましくは25%未満である場合に達成される。活性化は、コントロールに対する活性値が、約110%であり、一般的には少なくとも120%であり、より一般的には少なくとも140%であり、より一般的には少なくとも160%であり、多くの場合は少なくとも180%であり、より多くの場合は少なくとも2倍であり、最も多くの場合は少なくとも2.5倍であり、通常では少なくとも5倍であり、より通常では少なくとも10倍であり、好ましくは少なくとも20倍であり、より好ましくは少なくとも40倍であり、そして最も好ましくは40倍を超える場合に達成される。
【0030】
活性化または阻害における終末点は、以下の通りにモニタリングされ得る。例えば、細胞、生理学的流体、組織、器官、および動物被験体またはヒト被験体の、活性化、阻害および処置に対する応答は、終末点によってモニタリングされ得る。この終末点は、例えば、炎症、発癌性、または細胞の脱顆粒もしくは細胞の分泌(例えば、サイトカイン、有毒な酸素、またはプロテアーゼの放出)の印の所定の量または割合を含み得る。この終末点は、例えば、イオンの流れまたはイオンの輸送;細胞移動;細胞接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分化;および表現型の変化(例えば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関する遺伝子の発現における変化)の所定の量を含み得る(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci.30:145−158;HoodおよびCheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timmeら、(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;RobbinsおよびItzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;GradyおよびMarkowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauerら、(2001)Glia 36:235−243;StanimirovicおよびSatoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照のこと)。
【0031】
阻害の終末点は、一般的にコントロールの75%以下であり、好ましくはコントロールの50%以下であり、より好ましくはコントロールの25%以下であり、そして最も好ましくはコントロールの10%以下である。一般的に、活性化の終末点は、コントロールの少なくとも150%であり、好ましくはコントロールの少なくとも2倍であり、より好ましくはコントロールの少なくとも4倍であり、そして最も好ましくはコントロールの少なくとも10倍である。
【0032】
「発現」とは、特異的遺伝子によってコードされるmRNAまたはポリペプチドの測定をいう。発現の単位は、細胞、組織、細胞抽出物、または組織抽出物による発現の測定における、タンパク質1mgあたりの、mRNAまたはポリペプチドの分子の数、細胞1個あたりのmRNAまたはポリペプチドの分子の数の測定であり得る。発現の単位は、相対的であり得、例えば、コントロール哺乳動物および実験哺乳動物からのシグナルの比較、またはmRNAまたはポリペプチドに非特異的である試薬に対する、mRNAまたはポリペプチドに特異的である試薬を用いたシグナルの比較である。
【0033】
特異的または選択的である「ハイブリダイゼーション」は、代表的に少なくとも約30ヌクレオチドの伸長に対して少なくとも約55%の相同性であり、好ましくは約25ヌクレオチドの伸長に対して少なくとも約75%の相同性であり、そして最も好ましくは約20ヌクレオチドに対して少なくとも約90%の相同性である場合に起こる(例えば、Kanehisa(1984)Nucleic Acids Res.12:203−213を参照のこと)。ストリンジェントな条件(例えば、第2の核酸に対する第1の核酸の条件)下でのハイブリダイゼーションは、以下の条件である:(1)洗浄に低イオン強度および高温を使用する条件(例えば、50℃にて0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム);(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミドのような変性剤を使用する条件(例えば、42℃にて750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll(登録商標)(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む50%(vol/vol)ホルムアミド);(3)42℃における0.2×SSCおよび0.1% SDS中での洗浄を伴って、42℃にて、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50ng/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランを使用する条件;または(4)55℃にて10%硫酸デキストラン、2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、および50%ホルムアミドの緩衝液を使用し、その後55℃にてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシーな洗浄を行う条件(Botsteinらに発行された米国特許第6,387,657号)。
【0034】
核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件は、塩、温度、有機溶媒、およびカオトロピック剤の関数である。ストリンジェントな温度条件としては、通常では約30℃を超える温度が挙げられ、より通常では約37℃を超える温度が挙げられ、代表的には約45℃を超える温度が挙げられ、より代表的には約50℃を超える温度が挙げられ、好ましくは約65℃を超える温度が挙げられ、そしてより好ましくは約70℃を超える温度が挙げられる。ストリンジェントな塩条件は、通例では約1M未満であり、より通例では約500mMであり、通常では約400mM未満であり、より通常では約300mM未満であり、代表的には約200mM未満であり、好ましくは約100mM未満であり、そしてより好ましくは約80mMであり、約20mM未満に下がりさえする。しかし、パラメーターの組み合わせは、任意の単一のパラメーターの測定より重要である(WetmurおよびDavidson(1968)J.Mol.Biol.31:349−370)。
【0035】
「免疫状態」または「免疫障害」は、例えば、病理学的な炎症、炎症性障害、および自己免疫障害または自己免疫疾患を包含する。「免疫状態」とはまた、免疫系による排除(irradication)に抵抗する感染、腫瘍、および癌を含む感染、持続感染、および増殖性の状態(例えば、癌、腫瘍、および新脈管形成)をいう。「癌性の状態」としては、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、新脈管形成、および異形成のような前癌状態が挙げられる。
【0036】
「炎症性障害」とは、病理が、例えば、免疫系の細胞の、数の変化、遊走の速度の変化、もしくは活性化における変化から、全体的または部分的にもたらされる障害または病理学的状態を意味する。免疫系の細胞としては、例えば、T細胞、B細胞、単球またはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、小グリア細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫学と具体的に関連する任意の他の細胞(例えば、サイトカインを産生する内皮細胞または上皮細胞)が挙げられる。
【0037】
「炎症性障害」とは、病理が、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、単球またはマクロファージ、肺胞マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、または肥満細胞)の、数の増加および/もしくは活性化の上昇から、全体的または部分的にもたらされる、障害あるいは病理学的状態を意味する。
【0038】
「ノックアウト」(KO)は、遺伝子(例えば、IL−23のp19サブユニット)によってコードされるポリペプチドの少なくとも一部分の発現の、部分的な減少または完全な減少について示し、上記遺伝子は、単一細胞、選択された細胞、または哺乳動物の全ての細胞に対して内因性である。KOはまた、生物学的機能は低下しているが、発現は必ずしも減少していない実施形態(例えば、挿入された不活性化ペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドを含む発現されたp19ポリペプチドを含有するp19KOポリペプチド)を包含する。コード配列または調節配列の破壊は、ノックアウト技術によって包含される。上記細胞または哺乳動物は、内因性遺伝子の一方の対立遺伝子が破壊されている「ヘテロ接合性ノックアウト」であり得る。あるいは、この細胞または哺乳動物は、内因性遺伝子の両方の対立遺伝子が破壊されている「ホモ接合性ノックアウト」であり得る。「ホモ接合性ノックアウト」は、両方の対立遺伝子の破壊をそのゲノムにおける同一の技術または同一の結果に限定することは意図されない。本発明の範囲内には、一方もしくは両方のp19対立遺伝子がノックアウトされている哺乳動物が含まれる。
【0039】
「リガンド」とは、例えば、低分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜関連分子もしくは膜結合分子、またはそれらの複合体をいい、これらは、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。「リガンド」はまた、アゴニストまたはアンタゴニストではないが、その生物学的特性(例えば、シグナル伝達または接着)に顕著に影響することなくレセプターに結合し得る因子を包含する。さらに、「リガンド」としては、例えば、化学的方法または組換え方法によって、膜結合リガンドの可溶性バージョンに変換される膜結合リガンドが挙げられる。慣例に従うと、リガンドは、第1の細胞上に膜結合され、レセプターは、通常、第2の細胞上に存在する。この第2の細胞は、第1の細胞と同じかまたは異なる独自性を有し得る。リガンドまたはレセプターは、全体として細胞内にあり得、サイトゾル、核、または一部の他の細胞内区画に存在し得る。リガンドまたはレセプターは、例えば、細胞内区画から原形質膜の外面にその配置を変化させ得る。リガンドとレセプターとの複合体は、「リガンドレセプター複合体」と称される。リガンドおよびレセプターが、シグナル伝達経路に関する場合、このリガンドは、そのシグナル伝達経路の上流の位置に存在し、そしてこのレセプターは、そのシグナル伝達経路の下流の位置に存在する。
【0040】
「記憶応答」とは、免疫系の初回刺激を調節する方法を包含する。初回刺激は、病原体または癌細胞由来の抗原を投与することによって達成され得、一方、初回刺激の調節は、IL−23のアゴニストまたはIL−23のアンタゴニストにより達成され得る。初回刺激の増強は、例えば、IL−23のアゴニストを投与することによって達成され得る。増大された記憶応答、すなわち増大された初回刺激は、抗原の二次投与の有無にかかわらず見出される応答を包含する。増大された記憶応答、すなわち増大された初回刺激は、抗原の二次投与の有無にかかわらず測定され得る。
【0041】
「感受性」(例えば、リガンドに対するレセプターの感受性)とは、レセプターへのリガンドの結合が、上記レセプターまたは上記レセプターに特異的に関連した事象もしくは分子の検出可能な変化(例えば、上記レセプターに関連したタンパク質のコンホメーション変化、リン酸化、性質もしくは量)を生じるか、あるいは上記レセプターによって媒介されるか、または上記レセプターに関連する遺伝的発現の変化を生じることを意味する。
【0042】
「低分子」は、腫瘍および癌の生理機能ならびに障害の処置のために提供される。「低分子」は、10kD未満である分子量、代表的には2kD未満である分子量、および好ましくは1kD未満である分子量を有する分子として定義される。低分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射活性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣体、および抗体模倣体が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬として、低分子は、細胞に対してより浸透性であり得、分解に対する感受性が低く、そして大きい分子より免疫応答を誘導する傾向があり得る。低分子(例えば、抗体およびサイトカインのペプチド模倣体、ならびに低分子毒素)が、記載される(例えば、Cassetら(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulosら(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardiniら(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Dominguesら(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;SatoおよびSone(2003)Biochem.J.371:603−608;Stewartらに発行された米国特許第6,326,482号を参照のこと)。
【0043】
「可溶性レセプター」とは、水溶性であり、そして例えば、細胞外流体、細胞内流体において存在するか、または膜に弱く結合されたレセプターをいう。さらに、可溶性レセプターとは、水溶性となるように操作されているレセプターをいう。
【0044】
「結合の特異性」、「結合の選択性」などは、所定のリガンドと他のリガンドとの間または所定のレセプターと他のレセプターとの間を区別し得る、所定のリガンドと所定のレセプターとの間の結合相互作用をいう。「特異的に」または「選択的に」結合するとは、リガンド/レセプター、抗体/抗原、または他の結合対についていう場合、タンパク質および他の生物学的物質の不均一な集団においてタンパク質の存在の決定因となる結合反応を示す。従って、指定された条件下において、特定化されたリガンドは、特定のレセプターに結合し、かつサンプル中に存在するかなりの量の他のタンパク質には結合しない。抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物は、任意の他の抗原に対する親和性よりも、少なくとも2倍超、好ましくは少なくとも10倍超、より好ましくは少なくとも約20倍超、そして最も好ましくは少なくとも100倍超の親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態において、上記抗体は、約10リットル/molを超える親和性を有する(例えば、Munsenら(1980)Analyt.Biochem.107:220−239を参照のこと)。
【0045】
(II.概要)
本発明は、IL−23ヘテロダイマー、IL−23のp19サブユニット、IL−23およびIL−12のp40サブユニット、IL−23レセプターヘテロダイマー、IL−23RサブユニットまたはIL−12Rβ1サブユニットの、ポリペプチド、核酸、改変体、ムテインおよび模倣体を使用するウイルスまたはウイルス感染に対する免疫応答を調節する方法を提供する。ハイパーカイン(hyperkine)(すなわち、例えば、p40サブユニットに結合されたp19サブユニットを含む融合タンパク質)ならびにハイパーカインをコードする核酸を使用するための方法もまた提供される(Oppmannら(前出);Fischerら(1997)Nature Biotechnol.15:142−145;Rakemannら(1999)J.Biol.Chem.274:1257−1266;およびPetersら(1998)J.Immunol.161:3575−3581)。
【0046】
インターロイキン−23(IL−23;別名IL−B30)は、IL−12の新規のp19サブユニットおよびp40サブユニットからなるヘテロダイマーのサイトカインである(Oppmannら(前出))。p35と同様に、p19は生物学的活性のためにp40の共発現を必要とする(Wiekowskiら、(前出))。IL−23レセプターは、p40に結合するp19およびIL−12Rβ1に結合する新規のレセプターサブユニット(IL−23R)を含む。これら二つのレセプターサブユニットは、機能的シグナル伝達複合体を形成し、そしてCD4CD45Rblo記憶T細胞ならびにIFNγ活性化骨髄マクロファージ上で発現される(例えば、Parhamら(2002)J.Immunol.168:5699−5708を参照のこと)。
【0047】
抗体は、その天然(全長)形態または組換え形態の両方において、種々のサイトカインタンパク質(個々の改変体、多型性の改変体、対立遺伝子改変体、系統改変体または種改変体およびそのフラグメントを含む)に対して生じ得る。さらに、抗体は、その天然(または活性)形態またはその不活性(例えば、変性した)形態の両方において、レセプタータンパク質に対して生じ得る。抗イディオタイプ抗体もまた使用され得る。
【0048】
IL−23アゴニスト(すなわち、IL−23またはIL−23ハイパーカイン)の投与は、例えば、記憶T細胞、PHA芽細胞、CD45RO T細胞、CD45RO T細胞の増殖、あるいはPHA芽細胞またはCD45RO T細胞によるインターフェロンγ(IFNγ)の産生の増強を誘導し得る。IL−12とは対照的に、IL−23はヒトおよびマウスの両方において、優先的にナイーブT細胞群に対して記憶を刺激する。IL−23は、細胞内の細胞シグナル伝達分子の多く(例えば、Jak2、Tyk2、Stat1、Stat2、Stat3およびStat4)を活性化する。IL−12は、この同じ分子の群を活性化するが、IL−12に対するStat4応答は強いがIL−23に対するStat4応答は比較的弱い(Oppmannら(前出);Parhamら(前出))。
【0049】
IL−12およびIL−23は、類似のシグナル伝達機構に関与する。そのレセプター複合体に関与するIL−23は、IL−12と同様にJak2、Tyk2ならびにStat−1、Stat−3、Stat−4、およびStat−5を活性化する。しかしStat−4の活性化は、IL−23に対してIL−12よりも著しく弱い。また、IL−12とは対照的に、IL−23によって誘導される最も顕著なStatは、Stat−3である(例えば、Parhamら(前出)を参照のこと)。
【0050】
IL−23のp19サブユニットの投与は、例えば、動物の発育不全、不妊症および死亡、ならびに(例えば、胃腸管、肺、皮膚および肝臓における)炎症性浸潤、ならびに上皮細胞の肥厚、小球性貧血、増加した好中球数、増加した血清TNFα;ならびに肝臓における急性期遺伝子の増加した発現をもたらし得る。増強されたIL−23発現は、不死化された上皮細胞株において現れ、形質転換された上皮細胞株には現れなかった(Wiekowskiら(前出))。
【0051】
他の研究は、IL−23が感染に対して免疫応答を調節することを実証している(例えば、Pirhonenら(2002)J.Immunol.169:5673−5678;Brobergら(2002)J.Interferon Cytokine Res.22:641−651;Elkinsら(2002)Infection Immunity 70:1936−1948;Cooperら(2002)J.Immunol.168:1322−1327を参照のこと)。
【0052】
本発明は、ウイルスに対する免疫応答を調節する方法を提供し、この方法は、CD4T細胞、CD8T細胞、マクロファージおよび樹状細胞(DC)のような抗原提示細胞(APC)、B細胞の応答、ならびに抗体応答を調節する工程を包含する。一次感染および二次感染に対する応答を調節する方法もまた提供される。CD4T細胞およびCD8T細胞の両方が、インフルエンザウイルス感染に対して役割を有する。CD4T細胞は、MHCクラスIIを発現する感染細胞を溶解することによって応答し得、一方CD8T細胞はMHCクラスIを発現する感染細胞を溶解することによって応答し得る(例えば、Epsteinら(1998)J.Immunol.160:322−327;Jamesonら(1999)J.Immunol.162:7578−7583を参照のこと)。一次感染および二次感染の間に、異なるウイルスサブタイプが侵入する状況において、免疫応答はCD8T細胞により依存し得る(例えば、Walzlら(2000)J.Exp.Med.192:1317−1326;Epsteinら(1998)J.Immunol.160:322−327;Murali−Krishnaら(1998)Immunity 8:177−187を参照のこと)。
【0053】
さらに、本発明はウイルスに対する異常な免疫応答に対して保護する方法を企図する。ウイルス感染に対して免疫応答とともに起こり得る病理学的な状態としては、例えば、肺の好酸球増加症、喘息およびアレルギーが挙げられる(例えば、Walzlら(2000)J.Exp.Med.192:1317−1326;van Bentenら(2001)Allergy 56:949−956;Wohllebenら(2003)J.Immunol.170:4601−4611を参照のこと)。
【0054】
さらに、本発明は免疫細胞を(例えば、呼吸器ウイルスでの感染の間に)肺に補充する方法を企図する。気道ウイルス感染に対する一次応答が、ウイルス特異的CD8T細胞およびウイルス非特異的CD8T細胞を含み得ることに注意されたい。インフルエンザウイルスは、しばしば単独で肺を感染するが、免疫応答は、非肺性組織(例えば、脾臓および流入縦隔リンパ節(MLN))におけるT細胞の活性化、ならびにこれらの免疫細胞の肺への補充を包含する(例えば、Tophamら(2001)J.Immunol.167:6983−6990;Romanら(2002)J.Exp.Med.196:957−968;Dohertyら(1997)Immunol.Rev.159:105−117;Woodlandら(2001)Immunol.Res.24:53−67を参照のこと)。
【0055】
本発明は、IL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストを用いて、ウイルス性抗原に特異的な免疫応答およびウイルス性抗原に非特異的な免疫応答を調節する方法を提供する。ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)に対する免疫応答としては、数多くのIL−12の研究によって記載されるような、特異的応答および非特異的応答が挙げられる。IL−12は、抗原特異的応答(例えば、バクテリアおよびウイルスに対する応答)を促進するとして同定されてきたが、一貫して、抗IL−12抗体は抗原特異的応答のインヒビターとして同定されてきた(例えば、Cooperら(2002)J.Immunol.168:1322−1327;Millerら(1995)J.Immunol.155:4817−4828;Jongら(1997)J.Immunol.159:786−793;KnutsonおよびDisis(2004)Clin.Exp.Immunol.135:322−329;Clericiら(1993)Science 262:1721−1724;Lohrら(2002)Clin.Exp.Immunol.130:107−114;Fossら(2002)Viral Immunol.15:557−566;Seamanら(2004)J.Virol.78:206−215;van der Meideら(2002)Vaccine 20:2296−2302を参照のこと)。
【0056】
ウイルスについての抗原特異的応答の照会は、例えば、IFNγ産生ならびにCD8T細胞の増殖に関する応答の測定を含み得る。例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの場合、IL−12は、抗原特異的なCD8T細胞増殖のために必要とされず、かつ抗原特異的なCD8T細胞増殖に寄与しないが、IL−12は抗原特異的なIFNγ産生の増加によって明らかにされる抗原特異的応答を裏付けた(Cousensら(1999)J.Exp.Med.189:1315−1327)。
【0057】
本発明はまた、B細胞応答を増大する方法も企図する。例えば、CD4T細胞およびCD8T細胞は、種々の機構によってインフルエンザに対するB細胞応答を誘発し得る。B細胞および抗体を含む免疫応答は、一次ウイルス感染および二次ウイルス感染の両方において現れうる(例えば、Sangsterら(2003)J.Exp.Med.198:1011−1021;GrahamおよびBraciale(1997)J.Exp.Med.186:2063−2068を参照のこと)。
【0058】
本発明は、ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)に対する抗原提示細胞(APC)の応答を調節する方法を企図する。APCとしては、樹状細胞(DC)、マクロファージおよびランゲルハンス細胞が挙げられる。マクロファージに対するDCの相対的な重要性は、一次感染および二次感染に対する免疫応答において異なり得る(例えば、Benderら(1995)J.Exp.Med.182:1663−1671;Croweら(2003)J.Exp.Med.198:399−410を参照のこと)。
【0059】
サイトカイン応答は、インフルエンザに対する免疫応答の一部として記載されてきた。インフルエンザ感染は、数多くのサイトカイン(例えば、IL−12、IFNγ、IL−4、IL−5、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−10、TNF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびマクロファージコロニー刺激因子)の産生をもたらす。IL−12に対する多くの詳説は以下の通りである。IL−12はIFNγの強力な誘発因子であり、活性化されたCD8T細胞の細胞毒性を誘発する。(例えばIL−12によって)誘導されたIFNγは、感染された標的細胞によるMHCクラスI抗原の発現を起こさせ、ゆえに、CD8T細胞が感染された細胞を認識し、それらを死なせることを可能にする。異なる抗原が、異なる種のMHCにおいて発現され得る。例えば、H−2DMHCクラスIはインフルエンザウイルスの核タンパク質および酸性ポリメラーゼペプチドを提示するために使用され、一方、H−2KMHCクラスIはインフルエンザウイルスの多くの他のペプチドを提示するために使用される。IL−12に対する依存性はインフルエンザ感染の経過の間に変化し得る。一次感染の初期段階および後期段階に対する研究は、初期一次感染においてIL−12に対する依存性が存在するが、後期一次感染においてはIL−12に対する依存性は明確には存在しないことを示した(例えば、Tsuritaら(2001)J.Pharmacol.Exp.Therapeutics 298:362−368;Pirhonenら(2002)J Immunol.169:5673−5678;Monteiroら(1998)J.Virol.72:4825−4831;Julkunenら(2001)Vaccine 19:S32−S37;Julkunenら(2001)Cytokine Growth Factor Revs.12:171−180;Mbawuikeら(1999)J.Infect.Dis.180:1477−1486;Turnerら(2001)J.Immunol.167:2753−2758;Arulandandamら(1999)J.Infect.Dis.180:940−949;Monteiroら(1998)J Virol.72:4825−4831を参照のこと)。
【0060】
異なるウイルスは、IL−23の発現に関して異なる応答を引き起こし得る。例えば、IL−23は、(IL−23の)p19サブユニットの発現によって測定されるように、眼球単純疱疹ウイルスI型(HSV−1)およびセンダイウイルス感染に対する免疫応答において役割を果たすが、対照的に、p19はインフルエンザAウイルスに対しては誘発されない(Brobergら(2002)J.Interferon Cytokine Res.22:641−651;Pirhonenら(2002)J.Immunol.169:5673−5678)。
【0061】
IL−12およびIL−23の各々は、ウイルス感染に対する免疫応答と相関されてきたが、IL−23アゴニストでの治療は、IL−23によるIFNγのより低い誘発、およびより低いIFNγ誘発性毒性に起因して、IL−12での治療に対して利点を有する(例えば、Loら(2003)J.Immunol.171:600−607;Leonardら(1997)Blood 90:2541−2548;Trinchieri(2003)Nature Revs.Immunol.3:133−146;Cousensら(1999)J.Exp.Med.189:1315−1328;NaylorおよびHadden(2003)Int.Immunopharmacol.70:1205−1215;Fernandezら(1999)J.Immunol.162:609−617;Orangeら(1995)J.Exp.Med.181:901−914を参照のこと)。
【0062】
本発明の研究において、C57BL/6JマウスにおけるインフルエンザウイルスA型感染を用いるヒトインフルエンザについてのモデルが、抗原特異的CD8T細胞応答の特徴づけのために使用された。一次感染が、インフルエンザAウイルスのX31組換え株を用いて鼻内に(i.n.)実施された。二次感染のために、マウスはインフルエンザAウイルスのPR8株の腹腔内(i.p.)注射によって初回刺激され、次いで鼻内へのX31株で30日目に再チャレンジされる。肺、脾臓およびリンパ節が、感染されたマウスから回収され、分析された。気管支肺胞洗浄(BAL)ではなく、全肺消化物を使用し、インフルエンザに感染されたマウスの肺における全ての細胞型の単離および検出を可能にした。
【0063】
一次インフルエンザA感染および二次インフルエンザA感染に対する、免疫応答に対するIL−23アゴニストおよびIL−23アンタゴニストの影響が研究された。記憶応答に対するIL−23アゴニストおよびIL−23アンタゴニストの影響もまた特徴づけされ、ここで、記憶応答は、例えば初回刺激の間に投与されたIL−23のアゴニストまたはアンタゴニストによって引き起こされる免疫応答の変化として定義される。IL−23アゴニストは、IL−23ポリペプチドの投与形態をとった。IL−23アンタゴニストは、p35KOの形態をとり、IL−12およびp40KOの欠乏を生じ、IL−23およびIL−12両方の欠乏を生じた。ノックアウト研究において、IL−12ではなく、IL−23に対して特異的な生理学的応答は、p35KOおよびp40KOに対する生理学的応答を比較することによって決定され得る。
【0064】
テトラマー技術が、免疫優勢のインフルエンザウイルスA型核タンパク質(NP)ペプチドNP366−374に対して特異的なCD8T細胞を、定量し、そして表現型分類するのに使用された。このテトラマー複合体は、インフルエンザペプチドNP366−374負荷されたMHCクラスI(H−2D)モノマーからなる。反応速度研究が、一次インフルエンザA型感染および二次インフルエンザA型感染の両方において実施された。
【0065】
(III.アゴニスト、アンタゴニスト、および結合組成物)
本発明は、IL−23のアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法を提供する。IL−23のアゴニストは、例えば、IL−23、IL−23改変体、ムテイン、ハイパーカイン(hyperkine)、またはそれらに対するペプチド模倣体、IL−23Rに対するアゴニスト性抗体、およびこれらのアゴニストをコードする核酸を包含する。IL−23のアンタゴニストとしては、例えば、IL−23に対する抗体、IL−23Rに対するブロッキング抗体、IL−23Rのサブユニットの細胞外領域に基づいた可溶性レセプター、それらに対するペプチド模倣体、およびこれらのアンタゴニストをコードする核酸が挙げられる。
【0066】
本発明は、p19のアゴニストおよびアンタゴニスト、p19およびp40の複合体、IL−23R、ならびにIL−23RおよびIL−12Rβ1の複合体(p19のタンパク質およびp19のタンパク質複合体、p19およびp40の複合体、IL−23R、ならびにIL−23RおよびIL−12Rβ1の複合体に特異的に結合する結合組成物が挙げられる)を使用する方法を提供する。
【0067】
IL−23ハイパーカインとしては、例えば、p19およびp40のポリペプチド配列を含む融合タンパク質を包含し、ここでp19およびp40は、1つの連続的なポリペプチド鎖中に存在する。p19およびp40の配列は、連続的なポリペプチド鎖においていずれかの順序で存在し得る。この融合タンパク質は、1つの連続的なポリペプチド鎖においてp19の配列とp40の配列との間に存在する、リンカー配列を含み得る。
【0068】
抗原性を増加された領域が、抗体産生のために使用され得る。ヒトp19の抗原性を増加させた領域は、例えば、GenBank AAQ89442(gi:37183284)のアミノ酸16〜28;57〜87;110〜114;136〜154;および182〜186において存在する。ヒトIL−23Rの抗原性を増加させた領域は、GenBank AAM44229(gi:21239252)のアミノ酸22〜33;57〜63;68〜74;101〜112;117〜133;164〜177;244〜264;294〜302;315〜326;347〜354;444〜473;510〜530;および554〜558において存在する。分析は、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD)を使用したParkerプロットによって行った。
【0069】
抗体が、IL−23、IL−12のサブユニット、およびIL−23レセプターおよびIL−12レセプターのサブユニットに対して調製される。本発明は、pl9、p40、p35、IL−23R、IL−12Rβ1、およびIL−12Rβ2に対する抗体、およびそのフラグメントを提供する(例えば、Leeら(2004)J.Exp.Med.199:125−130;Parhamら(2002)J.Immunol.168:5699−5708;Roggeら(1999)J.Immunol.162:3926−3932;Hoeveら(2003)Eur.J.Immunol.33:3393−3397;Oppmannら(2000)Immunity 13:715−725;Preskyら(1998)J.Immunol.160:2174−2179を参照のこと)。p19およびp40の両方のエピトープ、p35およびp40の両方のエピトープ、IL−23RおよびIL−12Rβ1の両方のエピトープ、およびIL−12β1およびIL−12Rβ2の両方のエピトープに結合する抗体が、企図される。
【0070】
IL−23R、IL−12Rβ1、またはIL−12Rβ2の細胞外ドメインに対応する可溶性レセプターもまた提供される。本発明はまた、ヒトIL−23R(例えば、GenBank AAM44229のアミノ酸1〜353)の細胞外領域またはそのフラグメントを含むIL−23アンタゴニストを提供する。ここでその細胞外領域またはそのフラグメントは、IL−23に特異的に結合する。マウスIL−23Rは、GenBank NP_653131(gi:21362353)であり、可溶性レセプターを作製するために利用可能である。IL−12Rβ1およびIL−12Rβ2の配列が、利用可能である。これらのレセプターサブユニットの細胞外領域は、IL−12Rβ1(GenBank P42701;GI:1170462)のアミノ酸24〜545およびIL−12Rβ2(GenBank Q99665;GI:12229836)のアミノ酸22〜624を含む。これらの細胞外領域に基づく可溶性レセプターは、これらの正確なN末端アミノ酸およびC末端アミノ酸によって限定されず、そのリガンドの結合特性が実質的に保存される限り、例えば、1個、2個、3個以上アミノ酸が長くても短くてもよい。これらの可溶性レセプターに基づく融合タンパク質はまた、例えば、精製または安定性を増強するために企図される。
【0071】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびヒト化抗体が、調製され得る(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering,Springer−Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139−243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371−27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678−10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877−883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487−499;Vasquezらに対する米国特許第6,329,511号を参照のこと)。抗体および可溶性レセプターのムテインならびに改変体(例えば、脱アミド化Asn残基を除去または置き換えるためのペグ化(pegylation)もしくは変異誘発)が、企図される。
【0072】
抗原の精製は、抗体の作製のためには必ずしも必要とされない。免疫化は、DNAベクターの免疫化によって実施され得る(例えば、Wangら(1997)Virology 228:278−284)。あるいは、動物は、目的の抗原を保有する細胞で免疫化され得る。次いで、脾細胞は、免疫化動物から単離さえ得、そしてその脾細胞は、骨髄腫細胞株に融合されて、ハイブリドーマを産生し得る(Meyaardら(1997)Immunity 7:283−290;Wrightら(2000)Immunity 13:233−242;Prestonら(1997)Eur.J.Immunol.27:1911−1918)。結果として生じるハイブリドーマは、機能的アッセイまたは生物学的アッセイ(すなわち、精製抗原があることに依存しないアッセイ)によって、所望の抗体の産生についてスクリーニングされ得る。細胞による免疫化は、精製抗原による免疫化よりも抗体産生のために優れていることを証明し得る(Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157−5164)。
【0073】
抗体は、通常少なくとも約10−3M、より通常は少なくとも10−6M、代表的には少なくとも10−7M、より代表的には少なくとも10−8M、好ましくは少なくとも約10−9M、そしてより好ましくは少なくとも10−10M、そして最も好ましくは少なくとも10−11MのKで結合する(例えば、Prestaら(2001)Thromb.Haemost.85:379−389;Yangら(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.38:17−23;Carnahanら(2003)Clin.Cancer Res.(補遺1)9:3982s−3990sを参照のこと)。
【0074】
IL−23RまたはIL−12Rβ1レセプターのポリペプチドの細胞外ドメインを含む可溶性レセプターが、提供される。可溶性レセプターは、標準的方法に従って調製および使用され得る(例えば、Jonesら(2002)Biochim.Biophys.Acta 1592:251−263;Prudhommeら(2001)Expert Opinion Biol.Ther.1:359−373;Fernandez−Botran(1999)Crit.Rev.Clin.Lab Sci.36:165−224を参照のこと)。siRNA干渉のための組成物もまた、提供される(例えば、ArenzおよびSchepers(2003)Naturwissenschaften 90:345−359;SazaniおよびKole(2003)J.Clin.Invest.112:481−486;Pirolloら(2003)Pharmacol.Therapeutics 99:55−77;Wangら(2003)Antisense Nucl.Acid Drug Devel.13:169−189を参照のこと)。
【0075】
(IV.治療化合物、方法)
本発明は、ウイルス感染を処置または予防するための方法を提供する。これらの方法は、ワクチン(例えば、不活化インフルエンザ、生きた弱毒化インフルエンザワクチン、および粘膜ワクチン)、または低分子(例えば、アマンタジンおよびリマンタジンのようなイオンチャネルブロッカー、ならびにザナミビルおよびオセルタミビルのようなノイラミニダーゼインヒビター)と組み合わせて使用され得る。家庭用ブタ(domestic pig)、家畜、または家禽と同様に、農業において使用するために、呼吸器ウイルス(インフルエンザウイルスを含む)を処置および診断するための方法が、提供される(例えば、van Ginkelら(2000)Emerging Infectious Diseases 6:123−132;SidwellおよびSmee(2000)Antiviral Res.48:1−16;Couch(2000)New Engl.J.Med.343:1178−1787;YewdellおよびGarcia−Sastre(2002)Curr.Opinion Microbiol.5:414−418;Prober(2002)Semin.Pediatr.Infect.Dis.13:31−39;EllisおよびZambon(2002)Rev.Med.Virol.12:375−389;Zambon(2001)Rev.Med.Virol.11:227−241;Ulmer(2002)Vaccine 20(補遺2):S74−S76;TollisおよびDi Trani(2002)The Veterinary J.164:202−215を参照のこと)。
【0076】
p19もしくはIL−23のアゴニストまたはアンタゴニストを含む薬学的組成物または滅菌組成物を調製するために、試薬は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と混合される。治療剤および診断剤の処方物は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、ローション、または懸濁液の形態の生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY; Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照のこと)。
【0077】
治療薬に対する投与レジメンを選択することは、いくつかの因子(実体(entity)の血清または組織のターンオーバー速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近のしやすさが挙げられる)に依存する。好ましくは、投与レジメンは、受容可能な副作用のレベルと両立させて、患者に送達される治療薬の量を最大にする。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、処置される状態の特定の実体および重症度に依存する。抗体、サイトカイン、および低分子の適切な用量を選択する際の指標が、利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601−608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966−1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613−619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24−32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594−1602を参照のこと)。
【0078】
抗体、抗体フラグメント、およびサイトカインは、例えば、1日、1週間もしくは1週間に1〜7回の間隔での持続注入によってか、または投薬によって提供され得る。投薬は、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、経直腸、筋肉内、脳室内に、または吸入によって提供され得る。好ましい用量プロトコルは、重大な望まれない副作用を避ける最大用量または投薬頻度を含むものである。全体の週用量は、一般的に少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、最も一般的には少なくとも0.5μg/kg、代表的には少なくとも1μg/kg、より代表的には少なくとも10μg/kg、最も代表的には少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適には少なくとも10mg/kg、より最適には少なくとも25mg/kg、そして最も最適には少なくとも50mg/kgである(例えば、Yangら(2003)New Engl.J.Med.349:427−434;Heroldら(2002)New Engl.J.Med.346:1692−1698;Liuら(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451−456;Portieljiら(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:133−144を参照のこと)。低分子治療薬(例えば、ペプチド模倣体、天然生成物、または有機化学物質)の所望の用量は、モル/kg体重ベースで抗体またはポリペプチドについての用量とほぼ同じである。低分子治療薬の所望の血漿濃度は、モル/kg体重ベースで抗体についての用量とほぼ同じである。
【0079】
特定の患者に対する有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法経路および投与の用量、ならびに副作用の重症度のような因子に依存して変化し得る(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0080】
代表的な獣医学的被験体、実験被験体、または研究被験体としては、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ブタ、ウマ、およびヒトが挙げられる。
【0081】
適切な用量の決定は、例えば、当該分野において処置に影響することが公知もしくはそれが疑われるか、または処置に影響することが予想されるパラメーターあるいは因子を使用して、医師によってなされる。一般的に、上記用量は、最適用量よりもいくらか少ない量で開始され、その後、あらゆるネガティブな副作用に対して所望の効果または最適な効果が達成されるまで、少量ずつ増加される。重要な診断基準としては、例えば、炎症の症状または産生された炎症性サイトカインのレベルの基準が挙げられる。好ましくは、使用される生物製剤は、処置の標的にされる動物と同じ種に由来し、これによってその試薬に対する液性応答を最小にする。
【0082】
第2の治療因子(例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線)の同時投与またはこれらでの処置のための方法は、当該分野で周知である(例えば、Hardmanら(編)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw−Hill,New York,NY;PooleおよびPeterson(編)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PA;ChabnerおよびLongo(編)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PAを参照のこと)。治療薬の有効量は、代表的に少なくとも10%;通常少なくとも20%;好ましくは少なくとも約30%;より好ましくは少なくとも40%;そして最も好ましくは少なくとも50%症状を軽減する。
【0083】
投与の経路は、例えば、局所または皮膚適用によるもの、静脈内経路、腹腔内経路、脳内経路、筋肉内経路、眼内経路、動脈内経路、脳脊髄内経路、病変内経路、もしくは肺経路による注射または注入、あるいは徐放系または移植片によるものである(例えば、Sidmanら(1983)Biopolymers 22:547−556;Langerら(1981)J.Biomed.Mater.Res.15:167−277;Langer(1982)Chem.Tech.12:98−105;Epsteinら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692;Hwangら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034;米国特許第6,350,466号および同第6,316,024号を参照のこと)。
【0084】
(V.キットおよび診断試薬)
抗体、核酸ハイブリダイゼーション、およびPCR方法に基づいたインフルエンザの診断方法が、記載される。ウイルス(呼吸器ウイルスおよび粘膜ウイルス(例えば、インフルエンザ)を含む)に関連する試験および診断のための方法としては、酵素ベースのアッセイ(例えば、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼインヒビター)、例えば、Madin Darbyイヌ腎細胞を使用した細胞ベースのアッセイ、および動物モデル(例えば、インフルエンザ感染についてのフェレット、マウス、およびニワトリの動物モデル)が挙げられる。
【0085】
本発明は、例えば、ウイルス障害(インフルエンザA型を含む)、ならびに気道および粘膜組織のウイルス障害を診断するための診断キットにおいて、IL−23のポリペプチド、そのフラグメント、IL−23の核酸、およびそのフラグメントを提供する。IL−23を検出するための結合組成物(抗体または抗体フラグメントを含む)、ならびに代謝産物およびその分解産物もまた提供される。代表的には、このキットは、IL−23ポリペプチド、またはその抗原性フラグメント、それらに対する結合組成物、または核酸(例えば、核酸のプローブ、プライマー、または分子ビーコン)のいずれかを含むコンパートメントを有する(例えば、Rajendranら(2003)Nucleic Acids Res.31:5700−5713;Cockerill(2003)Arch.Pathol.Lab.Med.127:1112−1120;Zammatteoら(2002)Biotech.Annu.Rev.8:85−101;Klein(2002)Trends Mol.Med.8:257−260を参照のこと)。
【0086】
診断方法は、被験体(例えば、試験被験体)由来のサンプルを、IL−23もしくはIL−23レセプターのポリペプチドまたは核酸に特異的に結合する結合組成物と接触させる工程を包含し得る。この方法は、コントロール被験体、正常被験体、または試験被験体由来の正常組織もしくは正常流体由来のサンプルを、結合組成物と接触させる工程をさらに包含し得る。さらに、この方法は、この組成物の試験被験体への特異的結合を、その組成物の正常被験体、コントロール被験体、またはその試験被験体の正常組織もしくは正常流体への特異的結合と比較する工程を加えて包含し得る。試験サンプルもしくは試験被験体の発現または活性は、コントロールサンプルもしくはコントロール被験体由来の発現または活性と比較され得る。コントロールサンプルは、例えば、免疫障害を罹患している患者の非罹患組織または非炎症組織のサンプルを含み得る。コントロール被験体またはコントロールサンプル由来の発現または活性は、例えば、コントロール被験体の統計学的に適切な群から得られた所定値として提供され得る。
【0087】
キットは、例えば、試薬およびコンパートメント、試薬および使用のための指示書、またはコンパートメントを含む試薬および使用のための指示書を含み得る。この試薬は、IL−23のアゴニストもしくはアンタゴニスト、またはその抗原性フラグメント、結合組成物、またはセンス配向および/またはアンチセンス配向の核酸を含み得る。例えば、生物学的サンプルまたは化学的ライブラリーから得られる試験化合物の結合を決定するためのキットは、コントロール化合物、標識化合物、および遊離した標識化合物を結合した標識化合物から分離するための方法を備え得る。このコントロール化合物は、p19、p40、IL−23R、IL−12Rβ1のポリペプチドのセグメント、またはp19、p40、IL−23R、IL−12Rβ1をコードする核酸を含み得る。このセグメントは、0個、1個、2個以上の抗原性フラグメントを含み得る。
【0088】
「標識されている」組成物は、分光学的方法、光化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、同位体的方法、または化学的方法によって、直接的または間接的に検出可能である。例えば、有用な標識としては、32P、33P、35S、14C、H、125I、安定な同位体、蛍光色素、高電子密度試薬、基質、エピトープタグ、または酵素(例えば、酵素結合免疫アッセイにおいて使用される)またはフルオレット(fluorette)が挙げられる(RozinovおよびNolan(1998)Chem.Biol.5:713−728)。
【0089】
診断アッセイは、生物学的マトリックス(例えば、生細胞、細胞抽出物、細胞溶解物、固定された細胞、細胞培養物、体液、または法医学的サンプル)を用いて使用され得る。診断またはキットの目的に有用な結合体化抗体としては、色素、同位体、酵素、および金属に結合された抗体が挙げられる。例えば、Le Doussalら(1991)New Engl.J.Med.146:169−175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891−3898;HsingおよびBishop(1999)New Engl.J.Med.162:2804−2811;Evertsら(2002)New Engl.J.Med.168:883−889を参照のこと。ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、およびラボオンアチップ(lab on a chip)(米国特許番号第6,176,962号および同第6,517,234号)のような種々のアッセイ形式が存在する。
【0090】
(VI.使用)
本発明は、粘膜ウイルス、呼吸器ウイルス、オルソミクソファミリーのウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス(PIV)、RSウイルス(RSV)、およびヘルペスウイルスを診断、予防、および処置するためのIL−23およびIL−23レセプターのアゴニストならびにアンタゴニストを使用する方法を提供する(例えば、Mackie(2003)Paediatr.Respir.Rev.4:84−90;Wilsonおよびvon Itzstein(2003)Curr.Drug Targets 4:389−408;Coxら(2004)Scand.J.Immunol.59:1−15;Wileyら(2001)J.Immunol 167:3293−3299;Ninomiyaら(2002)Vaccine 20:3123−3129;CroweおよびWilliams(2003)Paediatric Respiratory Revs.4:112−119;O’Hagan(1998)J.Pharm.Pharmacol.50:1−10を参照のこと)。
【0091】
身体の粘膜領域としては、例えば、肺粘膜、鼻粘膜、胃腸粘膜、および尿生殖器粘膜が挙げられる。粘膜感染を引き起こすウイルスとしては、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、および免疫不全ウイルスが挙げられる。非抗原特異的免疫およびウイルスに対する抗原特異的免疫を増加するための方法、ならびに一次感染、二次免疫に対する免疫応答を増加するための方法、およびインフルエンザウイルスのようなウイルスに対して記憶応答を増加するための方法が、提供される。ウイルスまたはウイルス抗原に応答してCD8T細胞応答(CD8T細胞媒介性細胞毒性およびCD8T細胞の活性化または増殖を含む)を調節するための方法もまた、提供される。
【0092】
本発明の広範な範囲は、以下の実施例の参照によって最もよく理解されるが、以下の実施例が、本発明を特定の実施形態に限定することは意図されない。
【実施例】
【0093】
(I.一般的方法)
ウイルスの特徴付け、遺伝的操作によるウイルスの改変、ならびにウイルス感染の処置および診断のための標準的な技術が利用可能である(例えば、MahyおよびKango(1996)Virology Methods Manual,Academic Press,San Diego,CA;Flintら(2003)Principles of Virology:Molecular Biology,Pathogenesis,and Control of Animal Viruses,Am.Soc.Microbiol.,Wash.D.C.;Fieldsら(編)(2001)Virology,Lippincott,Williams,and Wilkins,NY,NY;Cann(2001)Principles of Molecular Virology,Academic Press,San Diego,CA;WhiteおよびFenner(1994)Medical Virology,第4版,Academic Press,San Diego,CA;Murphyら(1999)Veterinary Virology,第3版,Academic Press,San Diego,CA;Richmanら(編)(2002)Clinical Virology,第2版,Am.Soc.Microbiol.,Wash.D.C.を参照のこと)。
【0094】
蛍光細胞分析分離(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が、利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,第2版;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照のこと)。核酸(核酸のプライマーおよびプローブ、ポリペプチドが挙げられる)を改変するための適切な蛍光試薬、および例えば診断試薬として使用するための抗体が、利用可能である(例えば、Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MOを参照のこと)。
【0095】
免疫系の組織学の標準的な方法が記載される(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NYを参照のこと)。
【0096】
動物モデル(例えば、ノックアウトマウス)を使用するための方法、ならびに診断剤、治療剤、および医薬品を試験、評価、およびスクリーニングするための細胞ベースのアッセイが、利用可能である(例えば、CarおよびEng(2001)Vet.Pathol.38:20−30;Kenyonら(2003)Toxicol.Appl.Pharmacol.186:90−100;Deurlooら(2001)Am.J Respir.Cell Mol.Biol.25:751−760;Zuberiら(2000)J.Immunol.164:2667−2673;Temelkovskiら(1998)Thorax 53:849−856;Horrocksら(2003)Curr.Opin.Drug Discov.Devel.6:570−575;Johnstonら(2002)Drug Discov.Today 7:353−363を参照のこと)。
【0097】
分子生物学の標準的方法が、記載される(例えば、Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,第217巻,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと)。標準的方法はまた、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第1−4巻,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにおいて出版され、これは、細菌細胞でのクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母でのクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、ならびにバイオインフォマティクス(第4巻)を記載する。
【0098】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製のための方法が、記載される(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学的分析、化学的改変、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が、記載される(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,第2巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第3巻,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照のこと)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、およびフラグメント化(fragmentation)のための方法が、記載される(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane,前出)。リガンド/レセプター相互作用を特徴付けるための標準的方法が、利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,第4巻,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0099】
例えば、抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質の折り畳み、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが、利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照のこと)。
【0100】
(II.野生型マウス、p35KOマウスおよびp40KOマウスの一次感染)
細胞障害アッセイ、細胞内IFNγアッセイ、抗原特異的CD8T細胞を同定するための四量体方法のためのプロトコルおよびマウスを感染させるためのプロトコルが、提供される(例えば、Leanderら(2002)Mechanisms Ageing Devel.123:1167−1181;Halsteadら(2002)Nature Immunol.3:536−541を参照のこと)。CD8T細胞は、パーフォリン/グランザイム機構によってか、またはFas媒介性細胞障害性によって、ウイルスに感染した細胞の細胞死を媒介する。51C放出アッセイ(5h)は、パーフォリン/グランザイム機構に対してのみ感受性である(Belzら(2000)J.Virol.74:3486−3493)。インフルエンザウイルスにマウスを感染させる研究は、比較的軽い株であるHKx31(H3N2としてもまた公知)、およびより毒性のPR8株(Flynnら(1998)Immunity 8:683−691;Belzら(2000)J.Virol.74:3486−3493)の使用を包含する。
【0101】
X31組換えインフルエンザA型ウイルスを鼻腔内に投与することによって、一次感染を誘導した。野生型マウス、p35KOマウス(p35−/−マウスとしてもまた公知)(このマウスは、IL−12を特異的に欠損している)、およびp40KOマウス(p40−/−マウスとしてもまた公知)(このマウスは、IL−12とIL−23との両方を欠損している)に、感染を誘導した。接種の10日後に、肺を収集した。
【0102】
p35KOにおいて、一次感染の間に肺から収集した全CD8T細胞は、増加した。p40マウスにおいて増加は起こらなかった(表1)。IL−12が欠損していることに起因して、p40KOマウスにおいて増加が予測されるが、この上昇は、p40KOによって防げられ、このことは、IL−23のさらなる欠損は、CD8T細胞において予想される上昇を防げたことを示した。本発明は、全CD8T細胞の増加を刺激するためのIL−12アンタゴニストを提供する(表1)。全CD8T細胞を刺激するためのIL−23のアゴニストもまた、提供する(表1)。
【0103】
CD8T細胞の総数を調節することに加えて、p35KOおよびp40KOは、ウイルス抗原に対して特異的であるCD8T細胞の割合または比に影響した。抗原特異的CD8T細胞の比または割合は、野生型における約7.0%から、p35KOによって約11.5%まで増加した。本発明は、抗原特異的CD8T細胞応答において増加を刺激するためのIL−12のアンタゴニストを提供する(表1)。
【0104】
抗原特異的CD8T細胞応答の増加は、p40KOでは起こらず、このことは、IL−23の欠損が、抗原特異的CD8T細胞の増加を防げることを示し、すなわち、p35KOで見出された同じ種類の検出の増加を防げる(表1)。従って、本発明は、抗原特異的CD8T細胞応答を増加させるためのIL−23のアゴニストを提供する(表1)。
【0105】
IFNγ発現研究は、以下の結果を提供した。IFNγ産生抗原特異的CD8T細胞の比は、野生型での約9.0%から、p35KOでの約13.0%に増加した。従って、本発明は、抗原特異的CD8T細胞であるCD8T細胞の割合を増加させるためのIL−12のアンタゴニストを提供する。この増加は、p40KOマウスでは起こらなかった(表1)。従って、本発明は、IFNγ産生抗原特異的CD8T細胞応答を増加させるためのIL−23のアゴニストを提供する(表1)。
【0106】
(表1.一次感染の肺から収集した細胞におけるCD8T細胞の数およびウイルス抗原特異的CD8T細胞の比。IFNγ産生を、細胞内染色によって測定した。エフェクター:標的の比を50:1;25:1;12.5:1;および6.25:1にして、細胞障害アッセイ(クロム放出)を行った。表1は、50:1の比における細胞障害性の結果を開示する)
【0107】
【表1】

エキソビボ細胞障害アッセイ(エフェクター/標的の比は、50:1、25:1、12.5:1、および6.25:1)は、全て、野生型由来の細胞を使用した低い細胞障害性;p35KOマウス由来の細胞を使用した中間の細胞障害性、およびp40KO由来の細胞を使用した高い細胞障害性を実証した。50:1の比における試験からの結果を示す(表1)。本発明は、抗原特異的細胞障害性を増加させるためのIL−12のアンタゴニスト、IL−23のアンタゴニスト、または抗原特異的CD8T細胞の細胞障害性を増加させるためのIL−12に対するアンタゴニストとIL−23に対するアンタゴニストとの組み合わせを提供する(表1)。
【0108】
(III.野生型マウス、p35KOマウス、およびp40KOマウスの二次感染)
インフルエンザA型ウイルスによる二次感染を、野生型マウス、p35KOマウス、およびp40KOマウスにおいて研究した。二次感染のためのプロトコルは、0日目にインフルエンザウイルスのPR8株を腹腔内に用いてプライミングし、30日目にインフルエンザウイルスのX31株を鼻腔内に再チャレンジする工程を包含する。35日目、すなわちX31ウイルスに曝露した5日後に、組織を収集した(表2)。
【0109】
野生型マウスにおいて見出された数に対して、p35KOマウスの肺ではCD8T細胞の総数が増加した一方で、この相対的な増加は、p40KOマウスでは起こらなかった。抗原特異的CD8T細胞の一部の濃縮(enrichment)が、p35KOマウスとp40KOマウスとの両方の肺において見出された(表2)。
【0110】
(表2.野生型マウス、p35KOマウス、およびp40KOマウスの二次感染)
【0111】
【表2】

(IV.一次感染および二次感染の間のIL−23投与)
以下に記載するように、間隔を置いて、IL−23またはIL−12をマウスに投与(i.p.)した。一次感染の試験において、鼻腔内接種時にサイトカインの投与を開始した(表3)。二次感染の試験において、再チャレンジ時にサイトカインの投与を開始した(表4)。記憶応答についての試験において、最初のプライミング時にサイトカインの投与を開始したが、再チャレンジ時にはサイトカインを投与しなかった(表5)。
【0112】
さらなる方法論の詳細は、以下である。一次感染のために、インフルエンザA型ウイルスのX31株をマウスに鼻腔内(i.n.)感染させ、1日おきに20nmoleのIL−23またはIL−12のいずれかで処置した(i.p.)。0日目、2日目、4日目、6日目、および8日目に、サイトカイン処置を行った。免疫応答の分析(例えば、CD8T細胞の量および細胞障害性に対する試験)において使用するために、10日目に肺を収集した(表3)。
【0113】
二次感染のために、インフルエンザA型ウイルスのPR8株でマウスをプライミングした(i.p.)(0日目)。30日目に、インフルエンザウイルスのX31株でそのマウスに鼻腔内で再チャレンジし(i.n.)、1日おきに20nmoleのIL−23(i.p.)またはIL−12(i.p.)のいずれかで処置した。30日目、32日目、および34日目に、サイトカイン処置を行った。免疫応答の分析のために、35日目に肺を収集した(表4)。
【0114】
記憶応答試験のために、インフルエンザウイルスのPR8株でマウスをプライミング(i.p.)し、そして8日目まで、1日おきに20nmoleのIL−23(i.p.)またはIL−12(i.p.)のいずれかで処置した。0日目、2日目、4日目、6日目、および8日目に、サイトカイン処置を行った。次いで、30日目にインフルエンザウイルスのX31株でマウスを再チャレンジした(i.n.)。免疫応答の分析で使用するために、35日目に肺を収集した(表5)。
【0115】
インフルエンザ感染に対する一次応答の間のサイトカイン投与は、以下の結果を提供した。全CD8T細胞数の試験において、CD8T細胞の総数は、未処置のマウスについての数とIL−23処置マウスについての数はほぼ同じであったが、CD8T細胞の総数は、IL−12処置マウスにおいて増加した(表3)。ウイルス抗原特異的であるCD8T細胞の比は、IL−23処置マウスにおいて減少した(表3)。抗原特異的IFNγ産生CD8T細胞のアッセイにおいて、この結果はまた、IL−23投与が抗原特異的CD8T細胞の比を低下したことを実証した(表3)。本発明は、例えば、一次感染の間に、抗原特異的CD8T細胞の比を低下するためのIL−23のアゴニスト、および抗原特異的CD8T細胞の比を増加するためのIL−23のアンタゴニストを提供する(表3)。
【0116】
細胞障害試験の結果は、以下のとおりであった。一次感染の研究において、IL−23の投与は、CD8T細胞によって媒介されるウイルス抗原特異的細胞障害性を減少させた。本発明は、CD8T細胞によって媒介されるウイルス抗原特異的細胞障害性を減少するためのIL−23のアゴニストを提供する。CD8T細胞によって媒介されるウイルス抗原特異的細胞障害性を刺激または増加するための、IL−23のアンタゴニストをまた提供する(表3)。
【0117】
血清IFNγレベルをまた、測定する。一次感染の経過の間に、IL−12の投与(IL−23ではない)は、ELISAアッセイによって決定されたとおり感染マウスにおいて血清IFNγを増加させた。感染後、1日目、3日目、および5日目におけるIL−12処置マウスの血清IFNγは、それぞれ約100pg/ml、570pg/ml、および130pg/mlであった。非サイトカイン処置マウスおよびIL−23処置マウスの血清IFNγレベルは、研究した時間枠内で50pg/ml未満であった。
【0118】
二次感染に対する試験はまた、全CD8T細胞、ウイルス抗原特異的であるCD8T細胞の比、および細胞障害アッセイを扱った(表4)。CD8T細胞の総数は、サイトカインで処置されていないマウスでの数と比較して、IL−23処置によって減少し、CD8T細胞の総数のより大きな減少は、IL−12処置によって起こった。本発明は、二次感染の間にCD8T細胞の総数を減少させるために、IL−23のアゴニスト、IL−12のアゴニスト、またはIL−23とIL−12との両方のアゴニストを使用する方法を提供する。二次感染の間にCD8T細胞の総数を増加させるために、IL−23のアンタゴニスト、IL−12のアンタゴニスト、またはIL−23とIL−12との両方に対するアンタゴニストを使用する方法もまた、提供する(表4)。
【0119】
IL−23またはIL−12の投与は、ウイルス抗原に特異的であるCD8T細胞の総数の比に対してほとんど影響を有さない一方、IL−23またはIL−12の投与は、ウイルス抗原特異的なIFNγ産生CD8T細胞であるCD8T細胞の比を低下する傾向があった(表4)。
【0120】
二次感染の間のサイトカイン処置は、細胞障害性の変化を引き起こした。IL−23の投与は、いずれのサイトカインも受けていないマウスで見出されたものと比較して、細胞障害性の低下を生じる一方、IL−12の投与は、細胞障害性の大きな低下をもたらした(表4)。本発明は、IL−23アゴニスト、またはIL−12アゴニストと一緒にIL−23を投与して、抗原特異的CD8T細胞の細胞障害性を低下する方法を提供する。IL−23アンタゴニスト、またはIL−12アンタゴニストと一緒にIL−23アンタゴニストを投与して、抗原特異的CD8T細胞の細胞障害性を増加する方法をまた提供する。
【0121】
血清IFNγは、二次感染の間のIL−12処置マウスの収集の日に決定したとおり、血清1mlにつき約1000pgであった。二次感染の間、非サイトカイン処置マウス、またはIL−23処置マウスにおいて、血清IFNγを検出しなかった。
【0122】
記憶応答研究は、最初のプライミングの後の数日間のサイトカインによる処置を包含したが、再チャレンジ時にはサイトカイン処置をしなかった(表5)。IL−23は、CD8T細胞の総数の増加を引き起こした。この増加は、抗原特異的CD8T細胞の総数の増加、およびIFNγ産生抗原特異的CD8T細胞の総数の増加を包含した一方、IL−12処置は、CD8T細胞の総数により大きな増加さえ引き起こした。抗原特異的IFNγ産生CD8T細胞の割合によって測定した場合、IL−23処置によってこの割合はわずかに増加し、そしてIL−12処置によって割合は大きく増加した(表5)。
【0123】
本発明は、例えば、IL−23のアゴニストまたはアンタゴニストを投与することによって、ウイルス感染に対する記憶応答を調節する方法を企図する。IL−23アゴニスト、またはIL−23アゴニストとIL−12アゴニストとの組み合わせを使用して、例えば、抗原特異的CD8T細胞の比、またはIFNγ陽性である抗原特異的CD8T細胞の比によって決定されるような、記憶応答を増加する方法を提供する。
【0124】
【表3】

本明細書中の全ての引用は、各個々の刊行物、特許出願、または特許が、あたかも具体的かつ個別に、全ての図面(figure)および図面(drawing)を含んで参考として援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参考として援用される。
【0125】
本発明の多くの改変および変化物が、当業者には明らかなように、本発明の目的、趣旨および範囲を保存するために、特定の状況、材料、組成物、プロセス、処理工程に適合するようになされ得る。全てのこのような改変物は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書において記載される特定の実施形態は、実施例のみによって提供され、そして本発明は、権利を与えられるこのような特許請求の範囲と等価の全体の範囲に加えて、添付された特許請求の範囲の用語によって限定されるべきである。そして、本発明は、実施例によって本明細書中に提示されている特定の実施形態によって、限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−92117(P2012−92117A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−261668(P2011−261668)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2006−553341(P2006−553341)の分割
【原出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】