説明

IL−6の生物学的効果を減じる化合物の使用

【解決手段】インターロイキン−6(IL−6)及び/またはIL−6受容体またはその部分、好ましくはヒトIL−6に結合するかその拮抗剤である構造体を少なくとも含む化合物であって、内皮の損傷、破壊、内皮の損傷もしくは破壊のリスクの増加または慢性関節リウマチ以外の免疫障害、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される疾病の治療または予防用の医薬を製造するための溶液からIL−6を除去する化合物、あるいは、細胞表面上、または、該溶液中で、少なくとも1つ以上のIL−6の機能を遮断する化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン6(IL−6)及び/またはIL−6受容体に結合する分子またはその薬学的塩もしくは溶媒和物を含有する化合物の有効量を、必要としている哺乳動物に投与することを含む、ヒトにおけるIL−6及び/または空のIL−6受容体濃度のレベルを減じる化合物の使用に関する。
【0002】
本発明は、治療用タンパク質、心臓血管生理学、及び薬物学の分野に関する。特に、本発明は、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する分子を投与することによって、例えば心血管疾患、及び、インターロイキン6(IL−6)のレベルの上昇と関係し、内皮が関与する他の関連疾患の、既知のリスクファクターを減じることに関する。
【背景技術】
【0003】
米国では、心血管疾患は主たる死因であり、何百万人に対する罹患率、医療費及び経済的損失の最大原因である。心血管疾患の最も一般的で破壊的な様相のうちの2つは、動脈硬化症及び血栓溶解性事象の出現である。
【0004】
近年、心血管疾患の治療において、多大な進歩が達成された。この進歩は、疾病メカニズムにおける治療の診療行為が前進したことに加えて、患者の疾病発症リスクの早期発見により可能となった。いかにも、患者のリスクの発見及び早期治療が、現代の医療の重要な特徴である。過去20年間にわたって、心血管疾患発症の現状または将来の可能性に相関する、種々の因子及び臨床パラメーターが確認されている。このような危険因子は、測定可能な生化学的または生理学的パラメーター、例えば、血清コレステロール、HDL、LDL、フィブリノーゲンレベル等、または、肥満、喫煙等の生活スタイルパターンの様式を含み得る。本発明に最も適切な危険因子はC反応性タンパク質のレベルである。CRPはIL−6に誘導される。
【0005】
測定可能なパラメーターまたは危険因子と、疾病の状態との本質的な関係は、必ずしも明確であるとは限らない。言い換えれば、危険因子がそれ自体、その疾病の原因または一因となるか、または疾病を副次的に反映したものであるかは必ずしも明らかではない。従って、治療のモダリティは、危険因子を生ずるが、疾病の病理学的メカニズムまたはその将来の経過を直接的に変更している可能性があり、またはその疾病に関連して、一因となるプロセスに間接的にプラスになっている可能性がある。
【0006】
加えて、心血管疾患に関連した多数の危険因子が、原因または指標として、他の病理学的状態と関係する。従って、心血管疾患における特定の危険因子の低減または遮断は、その危険因子に関連する他の疾病において他の薬効を有する可能性がある。
【0007】
本発明の方法で特に重要なことは、異常に高レベルのC反応性タンパク質に関連した心血管の危険因子を減じることである。
【0008】
C反応性タンパク質は、IL−6の産生を受けて肝臓で産生される。IL−6は、体内の炎症反応の一部として産生される。従って、C反応性は、IL−6レベルと同様に、全身性の炎症活性のマーカーである。慢性の炎症は、心血管疾患において、基礎であり継続する病理の1つであると考えられる。
【0009】
閉経時には、エストロゲンの損失により、女性の心血管疾患の有病率は増加する。また、心血管疾患の危険因子、特に、脂質(コレステロール及びトリグリセリド)、ホモシステイン、及びC反応性タンパク質のレベルが上がる。今日、閉経後の女性において、心血管疾患を予防する最も一般的な方法は、ホルモン補充療法(HRT)である。しかしながら、膨満感、月経再開、乳房圧痛、子宮癌及び乳癌の不安等の不快な副作用のため、多数の女性がこの療法に応じない。加えて、HRTはコレステロール及びホモシステインのレベルを低下させる一方、HRTはC反応性タンパク質及びIL−6のレベルを上昇させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、これらの危険因子を低下させる治療薬を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、ヒトにおいてIL−6のレベルを減じるツール、分子及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、インターロイキン−6(IL−6)及び/またはIL−6受容体またはその部分、好ましくはヒトIL−6及び/またはヒトIL−6受容体に結合するかその拮抗剤である構造体(structural entity)を少なくとも含む化合物であって、内皮の損傷、破壊、内皮の損傷もしくは破壊のリスクの増加または慢性関節リウマチ以外の免疫障害、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される疾病の治療または予防用の医薬を製造するための溶液からIL−6を除去する化合物、あるいは、細胞表面上、または、該溶液中で、少なくとも1つ以上のIL−6の機能を遮断する化合物の使用によって解決される。
【0013】
さらには、本発明は、それぞれ、少なくともインターロイキン−6(IL−6)及び/またはIL−6受容体に結合する分子またはその薬学的塩もしくは溶媒和物を含有する化合物の有効量を、それを必要とするヒトに投与することを含む、過剰のIL−6によって引き起こされる状態または有害な作用を阻害する方法に関する。
【0014】
本発明は、インターロイキン−6(IL−6)及び/またはIL−6受容体に結合する分子、即ち、抗体、組み換え抗体(例として、一本鎖抗体-scAbまたはscFv;二重特異性抗体、組み換え型二重特異性抗体(diabody))、モノクローナル抗体が、IL−6のレベルを低下させるか、またはIL−6及び/またはIL−6受容体を遮断するのに有用であるという発見に基づく。
【0015】
本明細書において、「有効量」という用語は、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する分子の化合物であって、それぞれ、IL−6のレベルを減じるか、IL−6及び/またはIL−6受容体を遮断するか、及び/または、過剰のIL−6によって引き起こされる状態または有害な作用を阻害することができる化合物の量を意味する。
【0016】
「エストロゲン不足」という用語は、自然発生または臨床的に誘起された状態であって、女性がエストロゲンに依存する機能、例えば、月経、骨量の恒常性、神経機能、心血管系の状態等を維持するために充分な卵胞ホルモンを産生することができない状態を指す。このようなエストロゲン不足の状況は、限定されないが、閉経及び外科的または化学的卵巣摘出(ovarectomy)、及びその機能的等価物、例えば、GnRH作動薬または拮抗薬、ICI182780の投与等に起因する。
【0017】
過剰のIL−6によって引き起こされる状態または有害な作用を阻害するという文脈における「阻害」という用語は、その一般的通義、即ち、IL−6の増加及びその事象に起因する病理学的結果、即ち症状の、進行または重篤性が、遮断、禁止、抑制、緩和、改善、遅延、静止、または逆行されることを含む。
【0018】
本明細書において形容詞として使用される場合の「薬学的」という用語は、実質的に無毒であり、かつ服薬者に対して実質的に無害であることを意味する。
【0019】
さらに、「薬学的製剤」または「医薬品」または「薬学的組成物」は、担体、溶媒、賦形剤及び塩が製剤の有効成分(少なくとも1分子の化合物であり、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する)と適合しなければならないことを意味する。
【0020】
「溶媒和物」という用語は、水、緩衝液、生理学的食塩水等の薬学的溶媒の1つ以上の分子と共に、溶質の1つ以上の分子を含む凝集体を表す。
【0021】
本発明の基礎をなす目的は、特に、IL−6及び/またはIL−6受容体またはその部分、好ましくはヒトIL−6に結合するかその拮抗剤である構造体を少なくとも含む化合物の使用によって達成され、該化合物は
a)細胞表面上、または、溶液中で、好ましくは血液または他の体液または組織からの溶液中で、最も好ましくはインビボで急性の内皮の損傷もしくは破壊を有する患者に使用するため、好ましくは急性の内皮の損傷もしくは破壊が脳卒中、心筋梗塞、突然心臓死の回避のため、火傷(burnt offering)のため、重篤な外科処置または重傷領域を有する他の損傷のため、糖尿病性機能障害のため、急性肝不全、神経変性疾患のため、X線照射後の白血病患者のため、及び長期の内皮の損傷及び/または破壊のためのものであり、及び、アテローム性動脈硬化、不安定狭心症、1型もしくは2型糖尿病、過度の体重及び/または肥満を伴う患者のため、アルコール中毒のため、ホルモン補充療法(HRT)下、高齢者のため、喫煙者のため、及び同種移植拒絶または異種移植拒絶を予防するため、及び同種移植もしくは異種移植耐性の誘導またはT細胞活性化の阻害のため、及び慢性関節リウマチ、自己免疫性肝疾患及び膵炎以外の免疫障害を予防もしくは治療するため、少なくとも1つ以上のIL−6の機能を遮断し、及び/または
b)溶液から、好ましくは血液または他の体液または組織からの溶液から、最も好ましくはインビボで急性の内皮の損傷もしくは破壊を有する患者に使用するため、好ましくは急性の内皮の損傷もしくは破壊が脳卒中、心筋梗塞、突然心臓死の回避のため、火傷のため、重篤な外科処置または重傷領域を有する他の損傷のため、糖尿病性機能障害のため、急性肝不全、神経変性疾患のため、X線照射後の白血病患者のため、及び長期の内皮の損傷及び/または破壊のためのものであり、好ましくは、アテローム性動脈硬化、不安定狭心症、1型もしくは2型糖尿病、過体重及び/または肥満を伴う患者のため、アルコール中毒のため、ホルモン補充療法(HRT)下、高齢者のため、喫煙者のため、及び同種移植拒絶または異種移植拒絶を予防するため、及び同種移植もしくは異種移植耐性の誘導またはT細胞活性化の阻害のため、及び慢性関節リウマチ、自己免疫性肝疾患及び膵炎以外の免疫障害を予防もしくは治療するため、IL−6を除去する。
【0022】
1つの具体例において、本発明の化合物は、IL−6及び/またはIL−6受容体への結合部位を含むポリペプチドであり、好ましくはIL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含有する抗体である。本発明の化合物は、特に、IL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含むポリまたはモノクローナル抗体である。
【0023】
該モノクローナル抗体は、特に、IL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含み、脊椎動物、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ブタ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ及びウサギ等の哺乳動物を免疫した後に得られる。IL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含む該ポリまたはモノクローナル抗体は、好ましくは、当業者に周知の技術に従ってヒト化する。本発明の化合物は、ヒト化マウス及び/または生体免疫細胞(例えば、ヒト起源のもの;例として、SCID−huマウス)で再導入された免疫不全マウス(例として、SCIDまたはヌードマウス)を免疫することによって製造することもできる。
【0024】
さらなる具体例において、本発明の抗体は、特にIL−6及び/またはIL−6受容体と交差反応性の抗体の抗原結合部位を含有することによって、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する能力がある組み換え抗体(例として、1本鎖抗体−scAbまたはscFv;二重特異性抗体、組み換え型二重特異性抗体等)である。本発明の抗体分子は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。本発明の主題は、本発明の化合物を産生する、宿主細胞、好ましくは安定な宿主細胞でもある。
【0025】
さらに、本発明の主題は、宿主細胞において抗体分子を、好ましくは分泌タンパク質として発現させる能力がある調節配列に可動的に結合し、本発明の結合分子断片をコードするヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの組み換えベクターである。
【0026】
また、本発明の主題は、好ましくは安定的に遺伝子組み換えした、本発明のベクター、本発明の組み換え抗体を産生する原核生物または真核生物の細胞系、及び本発明の組み換え抗体を産生する真核生物、最も好ましくは動物、植物または菌類を含む、宿主である。
【0027】
また、本発明の主題は、IL−6及び/またはIL−6受容体抗原に結合する能力がある本発明の組み換え分子の製造方法であって、宿主細胞を培養すること、及び、培地及び/または産生細胞から結合分子を単離することを含む方法である。
【0028】
別の具体例において、本発明は、本発明のIL−6及び/またはIL−6受容体結合分子を用いて、IL−6レベルが上昇した患者を治療することによる、免疫反応、炎症反応及び/または病態生理学的反応を阻害する方法に関する。
【0029】
本発明の別の主題は、治療的有効量の本発明の結合分子、及び薬学的に許容される担体を含有する、IL−6濃度及び/または空のIL−6受容体濃度を減じるための医薬組成物である。これらの化合物に加えて、該医薬は、C反応性タンパク質(CRP)拮抗剤、CRP結合分子、抗IL−1β分子、PLA2拮抗剤、PLA2結合分子、補体遮断剤またはそれらの組み合わせよりなる群から選択される抗炎症物質を含んでもよい。
【0030】
本発明のさらに別の具体例は、IL−6濃度及び/または空のIL−6受容体濃度を減じることによる、炎症性免疫反応及び/または病態生理学的反応を減じる方法;IL−6濃度及び/または空のIL−6受容体濃度を減じることによる、内皮の損傷及び/または破壊を減じる方法;急性の内皮の損傷及び/または破壊の場合における急性期治療の方法であって、好ましくは、脳卒中、心筋梗塞、突然心臓死の回避のため、火傷のため、重篤な外科処置または重傷領域を有する他の損傷のため、糖尿病性機能障害のため、急性肝不全のため、膵炎、神経変性疾患のため、X線照射後の白血病患者のための方法;長期の内皮の損傷及び/または破壊の場合における、継続的治療の方法であって、アテローム性動脈硬化、不安定狭心症、1型もしくは2型糖尿病、過度の体重及び/または肥満を伴う患者のため、アルコール中毒のため、ホルモン補充療法(HRT)下の患者のため、高齢者のため、喫煙者のための方法;同種移植拒絶または異種移植拒絶の予防方法;同種移植もしくは異種移植耐性の誘導方法またはT細胞活性化の阻害方法;及び、慢性関節リウマチ以外の自己免疫性疾患の予防または治療方法;そのような治療を必要とする患者に、治療的有効量の本発明の薬学的組成物を投与することを含む方法である。
【0031】
本発明の化合物は、他の分子と、好ましくは、各疾患のための治療剤、または、例えばC反応性タンパク質(CRP)拮抗剤、CRP結合分子、抗IL−1β分子、抗IL−1β受容体分子、PLA2拮抗剤、PLA2結合分子、及び/または補体遮断剤のような他の抗炎症性分子と組み合わせることができる。
【0032】
本発明によって提供される方法は、IL−6のレベルの上昇に関連する有害な後遺症の治療及び予防の両者に有用である。IL−6血清濃度が、特に炎症過程で産生されるサイトカインのレベル及び産生に関連することから、本発明の方法は、炎症性疾患及びその後遺症の治療または予防に有用である。このような炎症性疾患は、限定されないが、関節炎(骨)、動脈及び静脈の慢性炎症、自己免疫性疾患、例えば、SLE、多発性硬化症、重症筋無力症、グレーブス病、尋常性乾癬、拡張型心筋症、糖尿病、ベヒテレフ病、炎症性胆汁疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血、特発性拡張型心筋症(IDM)、自己免疫性甲状腺炎、グッドパスチュア病等を含む。
【0033】
本発明の方法は、アテローム性動脈硬化性または血栓性疾患の病理学的後遺症の治療または予防に有用である。このような病理は、限定されないが、脳卒中、循環不全、虚血性疾患、心筋梗塞、肺血栓性塞栓症、安定または不安定狭心症、冠動脈疾患、突然死症候群等を含む。
【0034】
本発明は、さらに、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する少なくとも1つの分子の化合物と組み合わせにおいて、本発明において具体化された病理学的状態を治療するために投与される、他の現在知られている臨床的に適切な薬剤の使用を意図する。
【0035】
さらに、本発明は、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する少なくとも1つの分子の化合物が、治療または予防方法のいずれかに使用されることを意図する。
【0036】
本発明の好ましい具体例は、本発明の化合物を投与されるヒトが女性である場合であり、より好ましくは、その女性がエストロゲン不足の場合である。
【0037】
本発明の別の好ましい具体例は、異常に高いレベルのC反応性タンパク質によって引き起こされる状態が、心血管疾患、特に、動脈硬化症及び血栓症、または、脳卒中、心筋梗塞、突然心臓死、火傷、重篤な外科処置または重傷領域を有する他の損傷、糖尿病性機能障害、急性肝不全、膵炎、X線照射後の白血病患者等の急性の内皮の損傷及び/または破壊の場合における他の急性治療、あるいは、アテローム性動脈硬化、1型もしくは2型糖尿病、過度の体重及び/または肥満、アルコール中毒、ホルモン補充療法(HRT)、高齢者、喫煙者等の、長期の内皮の障害及び/または破壊の場合である。
【0038】
本発明の特に好ましい具体例は、エストロゲン不足の女性であって、全身性または局所性炎症を減じるために、エストロゲンまたはHRTを受けている女性において、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する少なくとも1つの分子の化合物の使用である。
【0039】
薬学的製剤は、例えば、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する少なくとも1つの分子の化合物が、通常の賦形剤、希釈剤、または担体を用いて製剤化し、錠剤、カプセル剤、注入剤等を形成することができる等、当業者に公知の方法によって製造することができる。
【0040】
製剤化に好適な賦形剤、希釈剤、及び担体の例としては、以下のものが含まれる:でん粉、糖類、マンニトール、及びケイ酸誘導体等の充填剤及び増量剤;カルボキシメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、及びポリビニルピロリドン等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、及び重炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶解遅延剤;第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;セチルアルコール、グリセロールモノステアレート等の界面活性剤;カオリン及びベントナイト等の吸着担体;及び、タルク、カルシウム及びステアリン酸マグネシウム及び固体ポリエチルグリコール類等の潤滑剤。最終的な薬学的形態は、使用する賦形剤のタイプによって、丸剤、錠剤、粉剤、トローチ剤、シロップ剤、エアロゾル、サッチ(saches)、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、座剤、滅菌注射用液剤、または滅菌封入散剤であってもよい。
【0041】
加えて、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する少なくとも1つの分子の化合物は、徐放性投与形態としての製剤化に非常に好適である。製剤は、有効成分を、腸管の特定の部分でのみ、または、好ましくは腸管の特定の部分で、場合によりある期間にわたって、放出するように構成することもできる。このような製剤は、ポリマー物質またはろう状物質でできた、被覆、外皮、または保護マトリクスを含むであろう。
【0042】
ホモシステイン及び/またはIL−6のレベルを減じるために必要とされる、本発明のIL−6及び/またはIL−6受容体に結合する分子を含有する化合物の、詳細な投与量は、処置される状態に固有の環境による。投与量、投与経路、及び投与頻度等の検討事項は、主治医が決定するのが最適である。一般に、C反応性タンパク質に結合する分子の化合物の経口または非経口投与における有効最低投与量は、約1〜20,000mgである。典型的には、有効最大投与量は、約20,000、6,000、または3,000mgである。このような投与量は、IL−6及び/または空のIL−6受容体濃度のレベルを効果的に減じること、及び/または、過剰のIL−6によって引き起こされる状態または不利益な効果を阻害することが必要とされる度毎に、処置が必要な患者に投与される。
【実施例】
【0043】
以下の実施例によって、本発明をさらに記述する。
【0044】
IL−6及び細胞死の増加
インターロイキン−6(IL−6)は、C反応性タンパク質(CRP)及び2型分泌ホスホリパーゼA2 IIA(sPLA2 IIA)等の分子を誘導する。sPLA2 IIAは、リン脂質のsn−2−エステル結合を加水分解し、遊離脂肪酸及びリゾリン脂質(例えば、lysoPC)を産生する。CRPはlysoPCに結合し、その後、補体は(例えば、最初の補体タンパク質C1qとして)CRPに結合する。
【0045】
IL−6は、培養肝細胞において、sPLA2 IIA及びCRPを誘導する。発現は、IL−6に特異的な抗体(AB)を添加することによって阻害することができる。典型的な実験により、以下の結果を得る。
【0046】
表1:IL−6による誘導後の、肝細胞由来のsPLA2 IIA及びCRPの発現。IL−6に特異的な抗体の添加により、CRP及びsPLA2 IIAの発現が阻害される。

【0047】
IL−6及びアテローム性動脈硬化
アンジオテンシンII1型(AT1)受容体の活性化は、アテローム性動脈硬化の進展及び進行に関連する。培養ラット大動脈血管平滑筋細胞(VSMCs)をIL−6で刺激すると、ノーザン及びウエスタンブロット実験で評価されるように、AT1受容体mRNAがアップレギュレーションし、タンパク質が発現する。IL−6またはIL−6受容体に特異的な抗体によってIL−6を遮断することにより、AT1受容体の発現が減じられる。
【0048】
C57BL/6JマウスをIL−6で18日間処理すると、血管AT1受容体の発現が増し、血管スーパーオキシドの産生が増加する。これらの効果は、IL−6に対する特異的な抗体で処理することによって強力に減じられる。
【0049】
表2:C57BL/6JマウスをIL−6で処理した後のAT1の発現及びスーパーオキシド産生の増加。IL−6またはIL−6受容体に特異的な抗体の添加により、AT−1及びスーパーオキシドの発現が阻害される。

【0050】
IL−6及び再かん流
インビボの実験により、再かん流傷害におけるsPLA2 IIAの関連性を直接的に示すことができる。ラットにおいて、心筋梗塞及び再かん流は、短時間の動脈閉塞で擬似化することができる。梗塞領域の大きさは測定することができる。IL−6の添加によってこの領域は拡大するが、IL−6に特異的な抗体の添加によってこの効果は減じられる。CRPの沈着もまた、それぞれ、IL−6によって増加し、特異的抗体によって減少する。典型的な実験により、以下の結果を得る。
【0051】
表3:再かん流ラット心臓における、梗塞の大きさ及びCRPの沈着に対するIL−6及び特異的抗体の効果。IL−6を使用しないラットにおける梗塞領域の大きさを1とした。

【0052】
IL−6及び炎症
別のインビボの実験において、マウスの腹腔内へザイモサンを注入することによって炎症を誘発することができる。炎症によって、IL−6、sPLA2 IIA、及びSAP(ヒトCRPのマウス相当物)の血清レベルが上昇する。血液試料中の量はELISA法を用いて定量することができる。IL−6に対する抗体で処理したマウスは、これらの抗体で処理しなかったマウスまたは非特異的抗体で処理したマウスより、sPLA2 IIA及びSAPの血清レベルが低い。
【0053】
IL−6及び外傷
インターロイキン−6(IL−6)は、大きな開腹手術を受けて分泌される。これにより、外傷に単球が動員される。マウスにおいて、外傷に引き寄せられた単球の量を測定することができる。IL−6またはIL−6受容体の抗体は、引き寄せられる単球の数を減じ、炎症を減じ、外傷の治癒を加速する。非特異的抗体は、これらのパラメーターに影響しない。
【0054】
IL−6及び免疫系との相互作用
IgMの分泌によって示されるように、インターロイキン−6(IL−6)によって、B細胞が増殖及び成熟する。活性化された内皮細胞(EC)は、IL−6を産生する。活性化された内皮細胞由来の上澄中で培養したB細胞は、増殖及び成熟を開始する。両者はIL−6に特異的な抗体によって阻害することができる。典型的な実験により、以下の結果を得る。
【0055】
表4:B細胞の増殖及び成熟に対する、活性化された内皮細胞由来の上澄及びIL−6に特異的な抗体の効果。(SN=EC由来の上澄;SNA=活性化されたEC由来の上澄)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−6(IL−6)及び/またはIL−6受容体またはその部分、好ましくはヒトIL−6に結合するかその拮抗剤である構造体を少なくとも含む化合物であって、内皮の損傷、破壊、内皮の損傷もしくは破壊のリスクの増加または慢性関節リウマチ以外の免疫障害、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される疾病の治療または予防用の医薬を製造するための溶液からIL−6を除去する化合物、あるいは、細胞表面上、または、該溶液中で、少なくとも1つ以上のIL−6の機能を遮断する化合物の使用。
【請求項2】
前記溶液が、血液、他の体液、組織からの溶液及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
内皮の損傷、破壊、内皮の損傷もしくは破壊のリスクの増加が、脳卒中、心筋梗塞、突然心臓死の回避、火傷によるもの、重篤な外科処置または重傷領域を有する他の損傷によるもの、アテローム性動脈硬化、不安定狭心症、急性肝不全、過度の体重あるいは肥満を伴うもの、アルコール中毒、ホルモン補充療法(HRT)、高齢者のもの、喫煙者のものよりなる群から選択される障害であり、または、免疫障害が、X線照射後の白血病患者、同種移植拒絶または異種移植拒絶、及び同種移植もしくは異種移植耐性の誘導またはT細胞活性化の阻害、HIV感染症、AIDS、自己免疫性疾患、自己免疫性肝疾患および膵炎、1型または2型糖尿病、多発性硬化症等の神経変性疾患、SLE、変形性関節症、重症筋無力症、グレーブス病、橋本病、尋常性乾癬、拡張型心筋症、糖尿病、ベヒテレフ病、炎症性胆汁疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血、特発性拡張型心筋症(IDM)、自己免疫性甲状腺炎、グッドパスチュア病、糖尿病性機能障害、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1及び/または2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、IL−6及び/またはIL−6受容体への結合部位を含むポリペプチド、好ましくはIL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含有する抗体を含むポリペプチドである、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記化合物が、IL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含有するモノクローナル抗体であり、好ましくは該モノクローナル抗体は脊椎動物を免疫した後に産生され、非常に好ましくは脊椎動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ブタ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ及びウサギである、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記化合物がIL−6及び/またはIL−6受容体への抗原結合部位を含有するモノクローナル抗体であり、かつ、該化合物が生体免疫細胞(例えば、ヒト由来のもの;例として、SCID−huマウス)で再導入された免疫不全マウス(例として、SCIDまたはヌードマウス)を免疫することによって製造されたものであるか、または、該化合物が、特に、IL−6及び/またはIL−6受容体と交差反応性の抗体、好ましくはヒト化またはヒト抗体の、抗原結合部位を含有することによって、IL−6及び/またはIL−6受容体に結合する能力を持つ、組み換え抗体(例として、1本鎖抗体−scAbまたはscFv;二重特異性抗体、組み換え型二重特異性抗体等)である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
その使用が請求項1〜6のいずれかに記載されている化合物を産生する宿主細胞。
【請求項8】
宿主細胞において抗体分子を、好ましくは分泌タンパク質として、発現させることができる調節配列に可動的に結合し、その使用が請求項1〜6のいずれかに記載されている結合分子断片をコードするヌクレオチド配列を含む、組み換えベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターを含む宿主。
【請求項10】
その使用が請求項1〜6及び8のいずれかに記載されている抗体を産生する、原核生物または真核生物の細胞系。
【請求項11】
その使用が請求項1〜6及び8のいずれかに記載されている組み換え抗体を産生する、ヒト以外の真核生物。
【請求項12】
その使用が請求項1〜6のいずれかに記載されており、IL−6及び/またはIL−6受容体抗原に結合することができる組み換え分子の製造方法であって、宿主細胞を培養する工程、及び、培地及び/または産生細胞から結合分子を単離する工程を含む方法。
【請求項13】
その使用が請求項1〜6のいずれかに記載されているIL−6−及び/またはIL−6受容体−結合分子を用いて、IL−6レベルが上昇した患者を治療することによる、免疫反応、炎症反応及び/または病態生理学的反応を阻害する方法。
【請求項14】
その使用が請求項1〜6のいずれかに記載されている結合分子の治療的有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、IL−6濃度及び/または空のIL−6受容体濃度を減じるための医薬組成物。
【請求項15】
その使用が請求項1〜11及び14のいずれかに記載されている物質の少なくとも1つの組成物を含む医薬であって、好ましくは加えて、C反応性タンパク質(CRP)拮抗剤、CRP結合分子、抗IL−1β分子、PLA2拮抗剤、PLA2結合分子、補体遮断剤またはそれらの組み合わせよりなる群から選択される抗炎症物質を含む医薬。

【公表番号】特表2007−535481(P2007−535481A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526608(P2006−526608)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010584
【国際公開番号】WO2005/028514
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506094530)バイオヴェーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】