IL−6アンタゴニストの抗血管形成用途
新規組織の血液供給を構築する(develop)能力を特に抑制もしくは阻止することによりがんのような増殖性疾患に伴う病理学的過程を処置するために、IL−6アンタゴニストを使用する方法。本発明はより特別には、血管形成を阻止するための有効量の、少なくとも1種のインターロイキン−6(IL−6、インターフェロンβ2としても知られる)タンパク質もしくはそのフラグメントに特異的な、特定の部分もしくはバリアントを含む、IL−6に対する抗体のようなIL−6アンタゴニストの使用によりそれらの疾患を処置する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新生組織の血液供給を発現させる(develop)能力を特に抑制もしくは阻止することにより、がんのような増殖性疾患に伴う病理学的過程を処置するためにIL−6アンタゴニストを使用する方法に関する。本発明は、より具体的には、血管形成を阻止するのに有効な量の、少なくとも1種のインターロイキン−6(IL−6、インターフェロンβ2としても知られる)タンパク質もしくはそのフラグメントに特有の、特定の部分もしくはバリアントを含む、IL−6に対する抗体のようなIL−6アンタゴニストの使用によりこれらの疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインIL−6
IL−6(インターロイキン6)は増殖刺激性および炎症促進活性を有する、以前は単球誘導ヒトB−細胞増殖因子、B−細胞刺激因子2、BSF−2、インターフェロンベータ−2およびハイブリドーマ増殖因子として知られた22〜27kDaの分泌糖タンパク質である(非特許文献1参照)。
【0003】
IL−6は白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経向性因子(CNTF)、カルジオトロピン−1(CT−1)、IL−1およびIL−11を含む顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)および骨髄単球増殖因子(MGF)ファミリーに属する。IL−6は一連の細胞種類、もっとも注目すべきは細胞、T細胞およびB細胞を与える抗原により産生される。IL−6−型のサイトカインはすべて、共通のシグナル変換タンパク質、gp130(以前のIL−6Rベータ)を含有する受容体複合体を介して作用する。しかし、それに反して、IL−6、IL−11、CT−1およびCNTFは最初に特定の受容体タンパク質に結合し、次にgp130、LIFおよびOSMと結び付いて、LIF−Rおよびgp130の複合体に直接結合する。特定のIL−6受容体(IL−6RもしくはIL−6アルファ、gp80またはCD126)は、双方ともgp130を活性化することができる膜結合形態もしくは可溶性形態(sIL−6R、55kD形態)のいずれかで存在する。
【0004】
IL−6の発現を誘導するための幾つかの物質(例えばIL−1、IL−2、TNFα、IL−4、IFNα、オンコスタチンおよびLPS)が知られている。IL−6はBおよびT細胞の活性化、造血、破骨作用、ケラチン生成細胞の増殖、急性相のタンパク質合成、神経細胞の増殖および肝細胞活性化のような多様な作用に関与する(非特許文献2参照)。
【0005】
IL−6は多数の経路に関与するが、IL−6ノックアウトマウスは正常な表現型を有し、それらは生存可能で、繁殖可能で、僅かに減少したT細胞数および、組織損傷に対する急性相タンパク質反応の減少を示す(非特許文献3参照)。それに対し、IL−6を過剰発現するトランスジェニックマウスは神経学的疾患(例えば、神経変性、星状細胞増加症、脳血管形成症)を発症し、そしてこれらのマウスは血液脳関門を形成しない(非特許文献4参照)。
がんにおけるIL−6の役割
IL−6は多様な機序により幾つかの悪性疾患の病原病理学に関係するとみなされる。IL−6はがん関連の病的状態(morbidity)(例えば、無気力/悪液質および骨吸収)における原因的因子であると仮定される。腫瘍誘導悪液質(非特許文献5)、骨吸収および関連の高カルシウム血症はIL−6ノックアウトマウスにおいて減少することが発見された(Sandhu et al.1999)(非特許文献5参照)。がん関連抑鬱症および脳腫瘍に続発性の脳浮腫もまた高レベルのIL−6と関連付けられた(非特許文献6参照)。多発性骨髄腫は血漿細胞に関与する悪性腫瘍である。IL−6は悪性腫瘍細胞のアポトーシスの阻害を伴う自己分泌もしくは傍分泌機序を介する多発性骨髄腫(MM)における悪性腫瘍血漿細胞の増殖、分化および生存を促進することが知られている。従って、IL−6の阻害が有効な治療であると仮定され(非特許文献7参照)、臨床試験が実施された(非特許文献8および9参照)。
【0006】
様々なヒトのがんの多数のインビトロおよびインビボのモデルからの実験結果により、IL−6が阻害の治療的標的であることが示された。IL−6は腫瘍細胞の増殖、分化および生存を誘導し、アポトーシスを促進し(非特許文献10参照)、そして化学療法に対する耐性を誘発する可能性がある(非特許文献11参照)。
【0007】
扁平上皮細胞がん腫は咽頭並びに頭部および首部のもっとも一般的な悪性腫瘍である。しばしば喫煙と関連付けられる一般的な原発(primary)部位は声帯(特に前方部分)、上咽頭、梨状洞(pyriform sinus)および輪状領域の後方(postcricoid area)である。血管形成は局所的再発と関連する(非特許文献12参照)。HIV感染患者に一般的なカポジ肉腫は感染性物質への露出により形質転換されたかも知れない間葉前駆細胞から誘導される血管のもしくは形成異常の内皮細胞であるようである。活性化KS細胞は細胞の増殖を維持するための自己分泌因子として働くIL−6および、他の間葉細胞の増殖を刺激し、血管形成を誘導することができる傍分泌のサイトカインを産生する(非特許文献13参照)。
IL−6に対するモノクローナル抗体
例えば、特許文献1におけるような、IL−6に対するネズミのモノクローナル抗体が知られている(特許文献1参照)。特許文献2はマウスの抗体SK2の可変部からの相補的(complementary)決定部(CDR)がヒト抗体の可変部中に移植され、ヒト抗体の定常部に結合(join)される、マウスのモノクローナル抗体SK2から誘導されるヒトIL−6に対する再形成されたヒト抗体を開示している(特許文献2参照)。
【0008】
受容体のシグナル伝達を阻害することができる、CLB−6/8と呼ばれるもう1種のネズミのIL−6モノクローナル抗体が報告された(非特許文献14参照)。cCLB8と呼ばれるこの抗体のキメラ形態が構成され(Centocor,Leiden,オランダ)、多発性骨髄腫の患者に投与された(非特許文献9参照)。ネズミの抗原結合ドメインから生成される抗体の製法は本出願者の同時係属出願の特許文献3に詳細に説明されている(特許文献3参照)。
【0009】
cCLB8投与の前後の患者の血清試料の分析により、これらの患者のsIL6Rおよびsgp130双方の循環レベルは高く、血清IL−6活性の全体的阻害にもかかわらず、処置により不変のままであったことが示された(非特許文献15参照)。
【0010】
B−E8はこれも臨床評価を受けてきたフランスのDiacloneにより製造されたIL−6に対するネズミのmAbである。B−E8のmAbはB−リンパ増殖性障害の処置において効果を示した(Haddad等2001)。AIDS関連リンパ腫において、この抗−IL−6のmAbはリンパ腫関連の熱を低下させ、悪液質による体重喪失に対して明白な効果を有し、それによりこれらの患者の生活の質の指標を改善した(非特許文献16参照)。B−E8はまた、腎臓がん腫患者に使用された。転移性腎臓細胞がん腫(RCC)はしばしば高レベルのIL−6を伴い、腫瘍随伴症状を伴う。B−E8処置は3人のRCC患者において腫瘍随伴症状の有意な軽減を示した(非特許文献17参照)。もう1種の刊行臨床試験において、RCCをもつ6人の患者がB−E8で処置された(非特許文献18参照)。これらの患者において明らかな抗腫瘍反応は認められなかったが、すべての患者が概括的にB−E8処置後のIL−6過剰産生に起因される症状の喪失を示した。
【0011】
抗−IL−6のMabによる臨床経験はこんにちまで限定されてきた。しかし、ヒトの脳腫瘍細胞の増殖の阻害(非特許文献19)、もしくは腫瘍(Mauray等、2000)、ヒトの腎臓がん腫瘍および血清カルシウム濃度(非特許文献20)およびヒトのホルモンの難治性前立腺腫瘍異種移植(非特許文献21)を含む、様々なヒトの腫瘍のインビトロおよびネズミモデルの幾つかを使用して、抗IL−6のMabが腫瘍細胞の生存および疾患の進行に影響を与える可能性を有することが示された(非特許文献19、20および21参照)。
不適切な血管形成に伴う障害
血管形成は新生毛細血管形成の過程であり、それは内皮細胞の活性化された増殖からもたらされる。新生血管形成は厳密に規制され、胚の発育、組織再形成、創傷治癒および黄体発育の周期的サイクル中にのみ起る(非特許文献22参照)。
【0012】
内皮細胞は通常、身体中の他の種類の細胞よりもずっと緩徐に増殖する。しかし、これらの細胞の増殖速度が規制されなくなると、病理学的血管形成がもたらされ得る。病理学的血管形成は多数の疾患に関与する。例えば、心臓血管疾患(例えば血管腫、血管繊維腫、血管奇形、アテーム性動脈硬化症、癒着および浮腫性硬化症)および眼科学的疾患(例えば、角膜移植後の新生血管形成、新生血管性緑内障、糖尿病性網膜症、血管由来の角膜疾患、黄斑変性症、翼状片、網膜変性症、水晶体後繊維増殖症および顆粒性結膜炎)が血管形成に関連する。慢性炎症性疾患(例えば関節炎)、皮膚科学的疾患[例えば、乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、静脈潰瘍、アクネ、しゅさ(赤鼻もしくは紅斑症)、こぶ(いぼ)、湿疹、血管腫、リンパ管腫]もまた血管形成依存性である。
【0013】
硝子体液が毛細管血により浸潤される様々な眼の疾患のために視力が損傷もしくは喪失され得る。糖尿病性網膜症は2形態、非増殖性もしくは増殖性形態の一方を採ることができる。増殖性網膜症は硝子体表面上に増殖するかもしくは硝子体腔中に延伸する異常な新規の血管形成(新生血管形成)を特徴として示す。進行した疾患においては、新生血管膜が起り、牽引網膜剥離をもたらす可能性がある。新生血管形成から硝子体出血をもたらすかも知れない。視覚の症状は様々である。硝子体内出血がある時は突然の重篤な視力喪失が起り得る。重篤な網膜虚血、重篤な新生血管形成もしくは重篤な繊維組織形成を伴う場合は、増殖性網膜症による視覚の予後はより条件付である。黄斑変性症も同様に乾燥および湿潤の2形態を採る。ずっと稀な滲出性黄斑変性症(湿潤形態)においては、しばしば網膜内出血、網膜下流体、色素上皮剥離および色素沈着昂進を伴う脈絡膜新生血管形成の網膜下網目の形成が起る。最終的にはこの複合体が収縮して、眼球後極に明白な高まった瘢痕を残す。年令に関連する黄斑変性症の双方の形態はしばしば両極性で、黄斑領域に結晶群が前に形成される。血管形成の原因に関連した視力喪失のもう1つの原因は虹彩の損傷である。直角に巻き上げられた虹彩をもたらす2つのもっとも一般的な状態は糖尿病もしくは中心網膜静脈栓塞患者における新生血管性緑内障におけるような膜の収縮もしくは、虹彩が直角に巻き上げられたブドウ膜炎に伴う炎症性沈殿物である(非特許文献23参照)。
【0014】
慢性関節リウマチ、炎症性疾患もまた、不適切な血管形成をもたらす。滑液腔中の血管の内皮細胞の増殖は炎症性サイトカインにより活性化され、軟骨組織の破壊および関節内のパンヌスの交換をもたらす(非特許文献24、25および26参照)。
【0015】
乾癬は皮膚細胞の制御されない増殖により誘導される。急速に成長する細胞は十分な血液供給を必要とし、乾癬においては異常な血管形成が誘起される(非特許文献27参照)。
【0016】
いまや、腫瘍組織に栄養物および酸素を供給し、廃棄産物を運び去り、そして遠方部位への腫瘍細胞の転移のための導管として働くために、腫瘍の増殖およびがんの進行には血管形成、すなわち新規血管の形成が必要であるという無視できない証拠が存在する(非特許文献28参照)。
【0017】
血管形成に導く過程および事象には多数の因子:細胞接着分子、インテグリン、血管内皮増殖因子(VEGF)、TNFアルファ、bFGF並びにIL−6およびIL−12を含むサイトカインが関与する。例えば、血管形成過程には、密接に関連した、しかし区別可能なaVb3とaVb5が独立の経路を仲介することが示された。aVb3に対して形成される抗体は塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)誘導の血管形成を阻害したが、他方aVb5に特異的な抗体は血管内皮増殖因子(VEGF)誘導の血管形成を阻害した(非特許文献29および30)。IL−6は血管形成を受けている組織中で高まり、A431細胞、ヒトの類表皮がん腫細胞株中にVEGFを誘導することができる(非特許文献31参照)。
【0018】
IL−6は、多数の細胞種類に対するその作用および卵巣髄質から増殖している卵胞に延伸している毛細管の網目および脈管構造の形成期間中ゴナドトロピン−充填された過度に刺激された卵巣中に観察された発現のためにまた、直接的もしくは間接的作用体(actor)として血管形成に関係付けられてきた(非特許文献32参照)。IL−6は傷害および修復中の皮膚中で重要な因子であり、抑制する抗IL−6抗体により阻害されたウシの脳の内皮細胞の移動を刺激することが示された(非特許文献33参照)。
【0019】
サリドマイドの催奇形および抗腫瘍作用の双方はその抗血管形成作用に関連すると考えられる。サリドマイドはTNFアルファ、bFGF、VEGFおよびIL−6を含む幾つかのサイトカインのレベルを抑制することが報告されている。腫瘍血管形成におけるIL−6の役割の証明のもう1つの方向(line)は、サリドマイドで処置された腎臓細胞がん腫および幾つかの他の種類のがん患者における疾患の安定化を示すデータから由来する。しかし、TNFアルファ、IL−6、bFGFおよびVEGFレベルと疾患の進行の相関は常に有意であるとは限らなかった(非特許文献34および35参照)。
【0020】
他方、インビボで移植された人工的組織床(MATRIGEL)中の血管の増殖の直接的観察により、IL−6、IL−1ベータ、PDGFが繊維芽細胞の増殖因子により誘導された新生血管形成の強力な阻害剤であることが示された(非特許文献36参照)。
【0021】
要約すると、IL−6は幾つかの機序により悪性疾患の病原を促進することができる多面的サイトカインである。前臨床的データにより、IL−6は腎臓がんおよび前立腺がんを含む幾つかの種類の腫瘍における生存、増殖および分化因子であることが示された。IL−6はまた、がん関連の病的状態(例えば、悪液質、骨吸収および抑鬱)の発生に主要な役割を果たし、それはMDR1遺伝子発現を誘導することにより化学療法に対する耐性を誘発する可能性がある。臨床データにより、高レベルのIL−6は幾つかの疾患における悪性過程に寄与することが示され、予備臨床試験により抗IL−6のMabの幾つかの疾患の軽減作用が示されたが、IL−6の抑制と固形腫瘍の増殖もしくは転移の拡散の減少の間の関連付けは実施されていない。
【0022】
腎臓がん腫およびホルモンの難治性前立腺がんのような多数の固形腫瘍タイプの増殖および転移の可能性を限定することができる薬剤の以前から嘱望された需要が存在する。血管形成は腫瘍の、増殖、転移する能力、網膜症を含む眼の障害およびカポジ肉腫を含む皮膚の障害を含む多数の病理学的状態における寄与因子であることが知られている。IL−6を含む多数の因子がこれらの過程と関連することが示されたが、受容体シグナル伝達のIL−6の活性化を抑制する能力をもつIL−6アンタゴニストが血管形成に直接的効果を有することは今まで示されなかった。
【特許文献1】米国特許第5,618,700号明細書
【特許文献2】米国特許第5,856,135号明細書
【特許文献3】米国特許出願第60/332,743号明細書
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【非特許文献4】Campbell et al.PNAS 90:10061−10065,1993
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【非特許文献6】Musselman et al.Am J Psychiatry.;158(8):1252−7,2001
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【非特許文献11】Conze et al.Cancer Res 61:8851−8858,2001
【非特許文献12】Ch.88 The Merck Manual 17th Ed.1999
【非特許文献13】Ch.145 The Merck Manual 17th Ed.1999
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【非特許文献25】Stupack DG,Storgard CM and Cheresh DA,Braz.J.Med.Biol.Res.,32,578−581(1999)
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【非特許文献34】Eisen,et al.Br.J.Cancer 82:812−817,2000
【非特許文献35】Stebbing,et al.Br J Cancer 85:953−958,2001
【非特許文献36】Passanti,A.et al.Laboratory Invest.67:519−528,1992
【発明の開示】
【0023】
本発明は、異常な血管形成を伴う疾患状態における血管形成を阻止するために、IL−6に対する抗体および少なくとも1種のインターロイキン−6(IL−6、インターフェロンβ2としても知られる)タンパク質もしくはそのフラグメントに特異的な特定の部分もしくはそのバリアントを含むIL−6のアンタゴニストを使用する方法に関する。抗体のような抗−IL−6アンタゴニストは、血管形成、内皮細胞の活性化および転移の拡散を伴う事象を含む、がん組織の開始もしくは進行を伴う事象を防止する方法で、膜結合受容体とのIL−6の相互作用を防止するそれらの能力により、作用することができる。本発明のIL−6アンタゴニストの前記の作用に基づき、これらのアンタゴニストは抗血管形成IL−6アンタゴニストとしてもっともよく説明することができる。
【0024】
特定の態様において、IL−6アンタゴニストは特異的にIL−6と結合する抗体である。このような抗体の特別な利点は、それらがその作用を全身的に予防するような方法でIL−6と結合することができることである。抗体はIL−6に結合して、正常な循環機序により複合体により接近可能な任意の組織中で、gp130のような膜結合受容体を活性化することができない、長期生存複合体を形成することができる。従って、本発明の方法は、それらを、ヒトもしくはヒト以外の患者の様々な形態のがんと関連した転移性疾患状態の治療的および予防的処置に理想的に適したものにさせる望ましい抑制特性を有する抗体を使用する。従って、本発明は血管形成を阻害するためにIL−6抗体を抑制する量を患者に投与することを含んで成る、これらの処置を要する患者の、血管形成に依存する疾患もしくは状態を処置する方法に関する。
【0025】
本発明の抗−血管形成性IL−6アンタゴニストは、それらが内皮細胞上のIL6の刺激効果を阻止し、内皮細胞の分化を減少し、内皮細胞の移動を減少させ、そして内皮細胞により分泌されるタンパク質分解酵素の活性を損なう限り、血管形成を妨げ、抑制するのに有用である。本発明の方法におけるIL−6アンタゴニストによる処置により、様々な形態の固形原発腫瘍および転移腫瘍、眼の病巣並びに皮膚の障害を含む多数の病状が改善される。
がん
様々ながん(例えば、頸部、肛門および口腔がん、胃、結腸、膀胱、直腸、肝臓、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、子宮体部、卵巣、前立腺、睾丸、腎臓、脳/中枢神経系(例えば神経膠腫)、頭部および首部、目もしくは眼、咽頭がん、皮膚メラノーマ、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、エウィング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞がん腫および扁平上皮細胞がん腫、小細胞肺がん、絨毛がん、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽喉、食道、喉頭、腎臓およびリンパ腫)を含む良性および悪性腫瘍の双方はなかでも、本発明の抗−IL6抗体を使用して処置することができる。更に、神経繊維腫症、結節性硬化症のような状態(それぞれの状態が皮膚の良性腫瘍を産生する)、血管腫およびリンパ管腫はなかでも、本発明に従うIL−6アンタゴニストにより有効に処置することができる。
【0026】
二次的腫瘍、すなわち転移腫瘍は身体の他の原発部位以外に発生したが今は遠方の器官に広がった腫瘍である。転移の一般的経路は隣接構造物中への直接的増殖、血管もしくはリンパ管系をとおる伝播、並びに例えば腹水もしくは脳脊髄液による組織面および体腔に沿った追跡である。二次的肝がんはがん患者におけるもっとも一般的な死因の1つであり、肝臓腫瘍のずば抜けてもっとも一般的な形態である。実質的にはどんな悪性腫瘍も肝臓に転移する可能性があるが、肝臓にもっとも転移し易い腫瘍には、胃、結腸および膵臓のがん、メラノーマ、肺、中咽頭および膀胱の腫瘍、ホジキンスおよび非ホジキンスリンパ腫、乳房、卵巣および前立腺の腫瘍が含まれる。二次的な肺、脳および骨腫瘍は進行した段階の乳房、前立腺および肺がんに一般的である。どんながんも骨に転移する可能性があるが、がん腫(carcinoma),特に乳房、肺、前立腺、腎臓および甲状腺に発生するがん腫からの転移がもっとも一般的である。肺のがん腫は非常に一般的に肝臓、脳、副腎および骨への血行性の転移拡散を伴い、早期に発生して、明白な肺の症状の前にこれらの部位に症状をもたらす可能性がある。乳房、結腸、前立腺、腎臓、甲状腺、胃、頸部、直腸、睾丸および骨の原発がんから、そしてメラノーマからの肺への転移は一般的である。前記の二次的腫瘍のそれぞれを本発明の抗体により処置することができる。
【0027】
腫瘍に加えて、血管の異常な増殖を特徴とする多数の他の非−腫瘍形成の血管形成−依存性疾患もまた、本発明の抗−血管形成性IL−6アンタゴニストで処置することができる。
【0028】
このような非−腫瘍形成性血管形成−依存性疾患の代表的な例には角膜新生血管形成、肥厚性瘢痕およびケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、動静脈奇形(前記)、アテローム性プラーク、遅延創傷治癒、血友病性関節、癒着不能骨折、オスラー−ウェーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多(前記)および血管癒着が含まれる。
目の血管形成性状態
角膜は通常は血管のない組織である。しかし、特定の病理学的状態においては、角膜輪部の周辺血管叢から毛細血管が角膜に侵入する可能性がある。角膜が血管新生されると、それは曇り、患者の視覚の明瞭度の低下をもたらす。角膜が完全に濁ると視力喪失は完全になる可能性がある。
【0029】
新生血管形成を誘導する過程に応じて様々な形態および深度で血管が角膜中に侵入することができる。これらの形態は伝統的に、眼科医により以下のタイプ:トラコーマ性パンヌス、鱗状パンヌス、フリクテン性パンヌス(pannus phylctenulosus)、変性パンヌスおよび緑内障性パンヌス、に規定されてきた。角膜の支質もまた、前毛様体動脈の分枝により侵入される可能性があり(間質性血管新生と呼ばれる)、それはいくつかの明白な臨床病巣:末端ループ、「ブラシ様」形態、散形花形態、格子形態、間質アーケード(強膜上静脈から)および異常な不規則血管、を誘発する。
【0030】
角膜新生血管形成は角膜潰瘍からもたらされる可能性がある。例えば、角膜感染症(トラコーマ、単純ヘルペス性角膜炎、リーシュマニア症および回旋糸状虫症)、免疫学的過程(移植拒絶およびスティーブンス−ジョンソン氏症候群)、アルカリ火傷、外傷、炎症(あらゆる原因の)、毒性状態およびビタミンAもしくはタンパク質欠乏状態を含む、そしてコンタクトレンズ装着の合併症として、広範な原因が角膜潰瘍をもたらす可能性がある。
【0031】
角膜の新生血管形成の原因は広範にわたる可能性があるが、損傷およびその後の血管内部増殖に対する角膜の反応は原因にかかわらず、同様である。同様に、幾つかの血管形成因子がこの過程に関与するようであり、それらの多数は炎症反応の結果である。事実、角膜の新生血管形成は炎症性細胞浸潤と関連して起るのみであるように見え、血管形成の度合いは炎症性反応の程度に比例する。角膜浮腫は更に、それをとおって毛細血管が増殖する角膜支質の枠組みをゆるめることにより血管の内部増殖を容易にする。
【0032】
IL−6抗体による局所治療はまた、血管形成反応を誘発する高い確率を有することが知られる(化学火傷のような)角膜病巣において予防的に有用であるかも知れない。これらの場合には、恐らくステロイドと併用した処置を、その後の合併症を予防する補助をするために、即座に実施することができる。
【0033】
これらの方法はまた、移植角膜の毛細血管侵入を予防するために同様な方法で利用することができる。ステロイドと組み合わせた使用も想定される。
【0034】
新生血管性緑内障は眼の虹彩中に新生毛細血管が発育する病理学的状態である。血管形成は通常、瞳孔の縁に局在する血管から発生し、虹彩の根元をとおって小柱網中に進行する。繊維芽細胞およびその他の結合組織要素は毛細血管の増殖と関連し、繊維束膜が発育し、それが虹彩の後方表面上に広がり、最終的に瘢痕を形成する。瘢痕形成は体液の適切な排水を妨げ、失明をもたらす可能性のある眼内圧の上昇をもたらす。
【0035】
新生血管性緑内障は概括的に、網膜虚血が著しい疾患の合併症として起る。とりわけ、この障害をもつ患者の約1/3は糖尿病性網膜症を有する。その他の原因には、慢性網膜剥離、末期緑内障、頸動脈塞栓疾患、水晶体後繊維増殖症、鎌状赤血球貧血、眼内腫瘍および頸動脈海綿体瘻が含まれる。
皮膚の血管形成状態
本発明のもう1つのアスペクト内には、肥厚性瘢痕もしくはケロイドに対する前記の抗血管形成組成物の1種を投与する段階を含んで成る、肥厚性瘢痕およびケロイドを処置する方法が提供される。
【0036】
創傷の治癒および瘢痕形成は3相:炎症、増殖および成熟、で起る。第1相の炎症は組織の損傷および血管漏洩を誘起するのに十分重篤な傷害に反応して起る。3〜4日間継続するこの相期間中に、血液および組織液が接着性クロットおよび繊維性網目を形成し、それが創傷表面を一緒に結合させるように働く。次に、創傷の縁からの毛細血管および結合組織の内部増殖および皮膚欠損の閉鎖が起る増殖相が続く。最後に一旦毛細血管および繊維芽細胞の増殖が終結すると、瘢痕が収縮し、細胞性、血管性が弱くなり、平坦で白色に見える成熟過程が開始する。この最後の相は6〜12カ月の間を要するかも知れない。
【0037】
創傷部位の結合組織の過剰産生は永続的に細胞性で、恐らく赤い、盛り上がった瘢痕を形成させる。瘢痕が当初の創傷の境界内に留まる場合は、それは肥厚性瘢痕と呼ばれるが、それが当初の瘢痕より外側および周辺組織中に延伸する場合は、病巣はケロイドと呼ばれる。肥厚性瘢痕およびケロイドは瘢痕形成の第2および第3相期間中に産生される。火傷、開放創傷および感染創傷を含む幾つかの創傷は特に、過剰内皮および繊維芽細胞増殖の傾向をもつ。肥厚性瘢痕により、ある程度の成熟が起り、緩徐な改善が起る。しかし、ケロイドの場合には、極めて大きくなる可能性がある実際の腫瘍が産生される。このような場合の自然の改善はめったに起らない。従って、このような状態における血管形成を阻止するための本発明の方法における抗−IL−6抗体の投与はこのようなケロイド瘢痕の形成を阻止することができる。
抑制する抗−IL6のMabのようなIL−6アンタゴニストとの抗−血管形成組み合わせ物
血管形成は平滑筋および内皮細胞の侵入、移動および増殖を特徴として経過する。αvβ3インテグリン(ビトロネクチン受容体としても知られる)は腫瘍転移、固形腫瘍の増殖(腫瘍形成)、骨粗鬆症、ペイジェット氏病、悪性腫瘍の体液高カルシウム血症、腫瘍血管形成を含む血管形成、黄斑変性症を含む網膜症、慢性関節リウマチを含む関節炎、歯周病、乾癬および平滑筋細胞移動(例えば狭窄再発)を含む様々な状態もしくは疾患状態において役割を果たすことが知られている。
【0038】
接着受容体インテグリンαvβ3はビトロネクチン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、ラミニン、スロンボスポンジンおよびその他の類似リガンドと結合する。それはヒヨコおよびヒトの新生血管の指標として認定され、血管形成もしくは新生血管形成において重要な役割を果たす。αvβ3のアンタゴニストは新生血管形成において細胞のアポトーシスを選択的に促進することによりこの過程を妨げる。従って、αvβ3アンタゴニストは新生血管形成に伴うこれらの状態を処置するための有用な治療的標的であると考えられる(Brooks et al.,Science,Vol.264,(1994),569−571)。更に、腫瘍細胞の侵入は3段階の過程:1)細胞外マトリックスへの腫瘍細胞の付着、2)マトリックスのタンパク質分解による溶解、および3)溶解されたバリヤーをとおる細胞の移動、により起る。この過程は繰り返し起ることができ、当初の腫瘍から遠方の部位における転移をもたらすことができる。αvβ3インテグリンは血管形成のみならずまた、腫瘍細胞侵入において役割を果たすことが示された。
【0039】
αvβ3のアンタゴニストおよび抑制する抗−IL6抗体は双方とも新生血管形成を標的とするが異なる機序により作用するので、抗−インテグリン抗体の抗−IL6抗体との組み合わせ物は正常組織の毒性をほとんど伴わずに特に強力で有効な併用治療をもたらすにちがいない。従って、本発明の1態様において、このような処置を必要とする患者の血管形成を阻止するためにインテグリンアンタゴニストと抗−IL6抗体の組み合わせ物を投与することを含んで成る、血管形成に関与する疾患もしくは状態を処置する方法が提供される。インテグリンもしくはインテグリンのサブユニットと選択的に結合するその他の抗体、特にアルファVサブユニットと結合する抗体は米国特許第5,985,278号および第6,160,099号明細書に開示されている。トリペプチドのアルギニル−グリシル−アスパルテート(RGD)を含有するその天然リガンドへのアルファVベータ3の結合を阻止するMabは米国特許第5,766,591号明細書および国際公開第0078815号パンフレットに開示されている。
【0040】
抗体の好ましい組み合わせ物は、出願者の同時係属出願米国特許出願第09/092,026号明細書に記載の抗−アルファVベータ3および抗−アルファVベータ5Mab並びに出願者の同時係属出願米国特許出願第60/332,743号明細書に開示されたcCLB8と呼ばれる抗−IL−6抗体である。前記の出願は双方とも本出願書中に引用により取り入れられ、その開示の一部を形成する。本発明に従うと、サリドマイドのようなその他の知られた抗−血管形成剤も抗−IL−6抗体と組み合わせて使用することができる。
抗−血管新生促進活性の評価法
血管形成および従って抗−血管新生促進剤の広範に許容された機能的アッセイはヒヨコの絨毛尿膜(CAM)アッセイおよび新生血管形成の角膜ミクロポケットアッセイである。
【0041】
CAMアッセイに対しては、受精ヒヨコ胚を3日(もしくは4日)目にそれらの殻から取り出し、高湿度および5%CO2中のペトリ皿中でインキュベートする。6日目に、試験物質を含有するメチルセルロース・ディスク(10ミクロL)を絨毛尿膜上に移植する。48時間後に胚を観察し、透明な無血管領域がメチルセルロース・ディスクの周囲に見える時は、その領域の直径を測定する。領域が大きいほど、抗体はより有効である。組織学的切片の無血管領域の縁の近位に血管が可視であるようにホルマリン固定の直前に幾つかの胚の中心にインディアインクを注入することができる。絨毛尿膜の組織学的切片を観察して、試験物質が毛細血管の正常な発育を抑制するか否かを決定する。米国特許第5,001,116号明細書に記載され、更に引用により本明細書に特別に取り入れられているこの方法は、本試験が抗−血管新生促進化合物もしくは化合物の組み合わせ物の選択に有用であることを示した。
【0042】
新生血管形成の角膜ミクロポケットアッセイはラットもしくはウサギの角膜を使用して実施することができる。このインビボモデルはO’Reilly等、Cell 79:315−328のような多数の総論の記事および論文に記載のように、臨床効果を概括的に予測するものとして広範に許容されている。
【0043】
端的には、組換え体bFGF(武田薬品−日本)を含有するプラグもしくはペレットを、麻酔した雌のニュージーランド白兎の両眼の角膜のミクロポケット中に、角膜輪部から2mmに移植し、次に角膜表面上にエリスロマイシン軟膏を局所投与する。動物に試験化合物を投与し、角膜の専門家により1日おきに細隙灯により観察される。血管新生角膜の量を決定するために様々な数学的モデルを使用し、この式がペレットに向かって増殖する新生血管形成帯の面積のもっとも正確な算定をもたらすことが見いだされた。
【0044】
本方法はまたラットを使用して実施することもできる。
【0045】
本発明において、角膜のミクロポケットアッセイを使用して抗−IL−6抗体の抗−血管形成効果を示す。これは、角膜内の血管数の一貫して観察され、そして好ましくは著しい減少により表わされるような、血管形成の有意な減少により証明される。これらの反応は、好ましくは試験物質と接触された時に持続した増殖の証拠を示さない、時折発生す発芽および/もしくはヘヤピンループのみを示す角膜と定義される。
内皮および非内皮細胞の増殖
腫瘍新生血管形成に特異的な血管新生促進過程にどの細胞タイプが関与するかを確定することは重要である。腫瘍の血管は概括的に初期のものである、すなわち内皮細胞のみを含む。他のタイプの細胞には、内皮細胞、平滑筋細胞、網膜色素上皮細胞、繊維芽細胞および上皮細胞、並びに血液血管内皮腫瘍細胞もしくはがん腫細胞のような腫瘍細胞が含まれる。内皮細胞の増殖を特異的に阻害する血管形成阻害剤の1例はANGIOSTATIN(R)タンパク質(O’Reilly等、1994前記)である。
【0046】
様々な代表的細胞株を試験に利用できる。ウシ大動脈平滑筋(SMC)、ウシ網膜色素上皮(RPE)、ミンクの肺の上皮(MLD)、ルイスの肺ガン腫(LLC)およびEOMA血液血管内皮細胞腫細胞および3T3繊維芽細胞腫。増殖アッセイに対しては、細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン溶液中に分散させる。細胞増殖アッセイに最適な条件はそれぞれの異なる細胞タイプについて確定される。概括的に、細胞をトリプシン化させ、IL6および抗−IL6抑制Mabの存在下でそして不在下で増殖培地中に再接種する。約72時間後に、細胞数の変化をテトラゾリウム染料塩基(dye base)アッセイのような生体染色法を使用することにより、もしくはLDH放出(Promega,MadisonWI)により測定するかまたは、トリプシン中に分散させ、再懸濁させ、手によりもしくはCoulter計数機のような自動化装置を使用して計数することができる。
IL−6アンタゴニスト
本明細書で使用される「IL−6アンタゴニスト」の用語はIL−6の血管新生促進作用を阻止もしくは抑制する物質を表わす。このようなアンタゴニストはこの効果を様々な方法で実施する。1クラスのIL−6アンタゴニストはIL−6の血管新生促進効果を抑制するのに十分な親和性および特異性を伴ってIL−6タンパク質に結合するであろう。このクラスの分子には抗体および抗体フラグメント(例えばF(ab)もしくはF(ab’)2分子のような)が含まれる。もう1つのクラスのIL−6アンタゴニストは、IL−6に結合し、それによりIL−6の血管新生促進作用を阻止するであろうIL−6タンパク質のフラグメント、特別変異タンパク質もしくは小有機分子、すなわちペプチド模倣体(peptidomimetics)である。IL−6アンタゴニストはそれがIL−6の血管新生促進作用を阻止する物質で有る限り、これらどのクラスのものであってもよい。IL−6アンタゴニストにはIL−6抗体、IL−6R抗体、抗−gp130抗体もしくはアンタゴニスト、米国特許第5,723,120号明細書に開示されたような修飾IL−6、アンチセンスIL−6RおよびIL−6もしくはIL−6Rの部分ペプチドが含まれる。
抗−IL−6抗体
当該技術分野で知られた任意の抗−IL−6抗体を本発明の方法に使用することができる。例えば、米国特許第5,618,700号明細書におけるようなIL−6に対するネズミのモノクローナル抗体が知られている。米国特許第5,856,135号明細書は、マウス抗体SK2の可変部からの相補的決定部(CDR)をヒト抗体の可変部中に移植し、ヒト抗体の定常部に結合させる、マウスのモノクローナル抗体SK2から誘導されたヒトIL−6に対する再形成されたヒト抗体を開示している。
【0047】
受容体のシグナル伝達を阻止することができるCLB−6/8と呼ばれるもう1つのネズミのIL−6モノクローナル抗体が報告された(Brakenhoff et al,J.Immunol.(1990)(145:561)。cCLB8と呼ばれるこの抗体のキメラ形態が構成され(Centocor,Leiden,オランダ)、多発性骨髄腫の患者に投与された(Van Zaanen,et al.1996前記)。ネズミ抗原結合ドメインから生成される抗体の製法は本出願書中に引用により取り込まれている、本出願者の同時係属出願米国特許出願第60/332,743号明細書に詳細に記載されている。
組成物およびそれらの使用
本明細書に記載された抑制的抗−IL−6モノクローナル抗体は血管形成を阻止し、従って腫瘍の増殖を抑制もしくは損傷させ、転移を抑制もしくは阻止するために使用することができる。更に、前記モノクローナル抗体は、それらに限定はされないが、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬および黄斑変性症を含んでもよい、このような処置に敏感な血管新生促進性炎症性疾患を阻止するために使用することができる。処置される個体は任意の哺乳動物であることができ、好ましくは霊長類、すなわち哺乳動物であるコンパニオン・アニマル、そしてもっとも好ましくはヒトの患者である。投与されるモノクローナル抗体の量はそれが使用されている目的および投与法により変動するであろう。
【0048】
本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体は血管形成が抑制されるか停止されることが所望される組織中に効果をもたらす多数の方法により投与することができる。更に、本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体は抗−血管新生促進効果を与えるために局所に存在する必要がないので、それらはIL6を含有する身体の区画もしくは体液へのアクセスが達成されるいずれの場所にも投与することができる。炎症を起こした、悪性のあるいは易感染性(compromised)組織の場合には、これらの方法は抗体を含有する調製物の直接的投与を含むことができる。これらの方法には、液体組成物の静脈内投与、液体もしくは固体調製物の経皮的投与、経口、局所投与または間質内もしくは手術間投与(inter−operative administration)が含まれる。投与は、例えば血管ステントのような、その主要な機能が薬剤配送ベヒクルではない装置の移植により実施することができる。
【0049】
本発明の一局面において、とりわけ、血管の形成が阻止されるように、患者の角膜に直接もしくは全身的に、治療的に有効な量の本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体を投与する段階を含んで成る、角膜新生血管形成(角膜移植新生血管形成を含む)を処置する方法が提供される。
【0050】
本発明のもう1つの局面において、血管の形成が阻止されるように、患者の目に直接もしくは全身的に、治療的に有効な量の抗−血管新生促進性の中和する(neutralizing)抗−IL−6抗体を投与する段階を含んで成る、血管新生性緑内障を処置する方法が提供される。
【0051】
本発明のもう1つの態様において、肥厚性瘢痕もしくはケロイドの病巣の進行を抑制するために、肥厚性瘢痕もしくはケロイド中に、本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体を単独でもしくはもう1種の抗−血管新生促進剤と組み合わせたいずれかで直接に注射される。この治療は肥厚性瘢痕および火傷のようなケロイドの形成をもたらすことが知られる状態の予防的処置に特に価値がある。治療は予防相が進行する時間の経過後(最初の創傷の約14日後)に、しかし肥厚性瘢痕もしくはケロイドの形成前に開始すると有効であることができる。
【0052】
投与はまた、経口でもまたは腫瘍もしくは組織中への局所注入によってもよいが、概括的にモノクローナル抗体は静脈内投与される。概括的に、投与量範囲は約0.05mg/kg〜約12.0mg/kgである。これはボーラスとしてまたはマイクロプロセッサーに制御され、プログラム可能なポンプ装置により制御することができる緩徐なもしくは連続的な注入としてのどちらでもよい。
【0053】
あるいはまた、好ましくは前記モノクローナル抗体のフラグメントをエンコードするDNAをハイブリドーマ細胞から単離して哺乳動物に投与することができる。DNAは剥き出しの形態で投与しても、もしくは患者の細胞中でのDNAの発現および抗体の配送をもたらす方法で組換えベクター、例えばワクシニア・ウイルス中に挿入してもよい。
【0054】
本発明の方法に使用されるモノクローナル抗体は例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1985に記載のような製薬学的組成物の確立された任意の調製法により調製することができる。投与の容易性のためにモノクローナル抗体は典型的に製薬学的に許容できる担体と組み合わされるであろう。これらの担体には水、生理食塩水もしくは油が含まれる。
【0055】
非経口投与に適した調製物には、抗酸化剤、バッファー、殺バクテリア剤および調製物を意図される受容者の血液と等張にさせる溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射溶液並びに、懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。任意の通常の溶媒が有効成分および意図される使用法と非相容性である場合を除いて、任意の組成物中へのその使用が想定される。
【0056】
調製物は単位用量で、もしくは複数用量の容器、例えば、シールアンプルおよびバイアル中に提供され、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥(lyophilized))状態で貯蔵することができる。
略語
Abs 抗体、ポリクロナールもしくはモノクローナル
aV インテグリンサブユニットアルファV
b3 インテグリンサブユニットベータ3
bFGF 塩基性繊維芽細胞増殖因子
IFN インターフェロン
Ig 免疫グロブリン
IgG 免疫グロブリンG
IL インターロイキン
IL6 インターロイキン6
IL−6R インターロイキン−6受容体
sIL−6R 可溶性インターロイキン−6受容体
Mab モノクローナル抗体
VEGF 血管内皮細胞増殖因子
本発明を一般的な用語で説明してきたが、本発明の態様は以下の実施例において更に開示されるであろう。
【実施例1】
【0057】
インビボにおけるIL6誘導血管形成の実証
研究1において、原発的血管形成刺激はマトリゲルプラグに添加されたIL6であった。マウスはヒトもしくはネズミIL6を含む、および含まないマトリゲルの皮下注射を受けた(表1)。マトリゲルはそれが体温に到達するとゲル状のプラグを形成し、このプラグが動物の体内で安定である。
【0058】
【表1】
【0059】
液体マトリゲルを4℃に維持した。IL6を、記載された最終濃度までマトリゲルに添加し、完全に撹拌し、4℃で1晩貯蔵した。注射部位は最後の肋骨の後端約0.25インチ(0.63cm)背部側上に、そして背骨から両側に0.25インチに位置した。マウスにマトリゲル0.5mLを2個所に注射した。注射が適切に実施されない場合は、その部分は腫れた。
【0060】
Charles River(Raleigh,NC)から得た雌のヌード・マウス(生後4〜6週)を研究に使用した。Engelbreth−Holm−Swarm腫瘍から調製されたマトリゲルをBecton Dickinson(Bedford,MA)から入手した。C57抗体(CMVに特異的なヒトIgG)をCentocor(Malvern,PA)から入手した。ヒトIL6(hIL6)およびネズミIL6(mIL6)を購入した(R&D Systems,Minneapolis,MN)。研究の第1日目に、55匹マウスを11群にランダムに分類した(n=5/群)。マウスをケタマイン(80mg/kg、腹腔内)で麻酔した。動物にマトリゲル0.5mLを2カ所に注射した。7日目にマウスをCO2窒息により安楽死させた。プラグを外科的に切除し、秤量し、撮影し、血管形成を評価した。動物1匹当り2プラグをDrabkinキット(Sigma,ST Louis,MO)を使用してヘモグロビン含量を測定した。
【0061】
新生血管の総面積を測定するために、フェーズ3イメージシステム(Phase 3 Image System)と呼ばれるコンピューター化デジタイザーを使用した。倒立位相差顕微鏡の2×倍率対物レンズによりマトリゲルプラグ全体の上面および下面から撮影した。領域当りの血管の長さおよび数をフェーズ3イメージシステムのトレースプログラムを使用して計算した。マトリゲルプラグ全体のすべての写真からの平均値を平均からの標準偏差により計算した。
【0062】
ヘモグロビンを測定するためには、マトリゲルプラグを溶解バッファー(1%SDS、0.5%のトリトン)で溶解した。ゲルのヘモグロビン含量をDrabkin試薬キット(Sigma,ST Louis,MO)を使用して定量した。ゲル中のヘモグロビンの濃度はヘモグロビンの基準曲線から決定した。ヘモグロビン含量はマトリゲル1グラム当りのヘモグロビンのミリグラムとして表わした。平均±SEMはスチューデントの非対称(unpaired)テストを使用して計算し、p<0.05は統計的に有意であると考えられた。
マトリゲル中のIL6誘導血管形成
IL6を添加されないものを注射されたものに比較して、mIL6もしくはhIL6のいずれかを投与された摘出マトリゲルプラグ中には色彩および明らかに可視の血管の観察可能な相異が存在した。2倍拡大における顕微鏡写真は多数の血管の形成を証明した(示されていない)。ヒトおよびネズミIL6は双方とも、サイトカインを添加されないものに見られたものに比較してマトリゲルプラグ中のHb含量(図1、2)並びに血管の長さおよび血管数(図3〜6)を増加させた。血管密度およびHb含量に対する最大効果はヒトIL6およびネズミIL6に対して約200ng/mlの濃度においてであった(図1〜6)。IL6群の総Hb、血管の長さおよび血管数は常にIL6を添加しない群よりも有意に高かった(p<0.001)(図1〜6)。
【実施例2】
【0063】
抗−IL6のMabによるインビボの血管形成の阻止
研究2において、動物は表2に示すように、200ng/mlのヒトIL6でスパイクされたマトリゲルの注射直後に、cCLB8Mab、キメラCLB8とも呼ばれる抗−ヒトIL6(Centocor,Malvern,PA)、もしくは対照抗体(C57)のIV注射を受けた。研究の第1日目に42匹のマウスを7群にランダムに分類した(n=6/群)。マウスをケタマイン(80mg/kg、腹腔内)で麻酔した。動物にマトリゲル0.5mLを2カ所に注射した。抗体(もしくはベヒクル)をマトリゲル注射直後に注射した。7日目に、マウスをCO2窒息により安楽死させた。プラグは外科的に摘出し、秤量した。
【0064】
【表2】
【0065】
研究2は、記載された場合はマトリゲルを抗体とも混合し、氷上に維持したことを除いて、研究1に記載のものと同様な方法および材料を使用して実施した。
cCLB8が血管形成を阻止した
IL6はマトリゲルプラグ中の血管形成を誘導し、cCLB8はIL6により誘導された血管形成を減少させた。IL6を取り込んだマトリゲルプラグはIL6を含まないマトリゲルプラグより強い赤色を有し、C57のマトリゲルプラグはcCLB8のマトリゲルプラグより強度な色彩を有する。血管計数およびHb含量を使用することにより、結果はIL6がマトリゲルプラグ中の血管形成を有意に増加させ、cCLB8がマトリゲル中に含まれたかもしくはマトリゲルプラグ注入後にIV注射されたかにかかわらず、cCLB8はIL6により誘導された血管形成を有意に阻止したことを示した(図7〜9)。
【0066】
2×倍率のマトリゲルプラグの顕微鏡写真はIL6を添加されなかった対照と同様にcCLB8処理マウスからのプラグ中に血管の不在を明らかに示したが、他方C57で処理されたマウスからのプラグ中の血管はそれらの中に明らかに確認できる微小血管を有した。
【実施例3】
【0067】
cCLB8により逆転されたアポトーシスのIL6による抑制
CNTO95(αVβ3およびαVβ5インテグリンに特異的なヒトIgG)、C57(CMVに特異的なヒトIgG)およびCLB8をCentocor(Malvern,PA)で産生した。ヒトIL6(hIL6)をR&D Systems(Minneapolis,MN)から入手した。HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)をClonetics(Walkersville,MD)から購入した。HUVECを、10%FCS、長Rインシュリン−様増殖因子−1、アスコルビン酸、ヒドロコーチゾン、ヒトEGF、hVEGF、hFGF−b、硫酸ゲンタマイシンおよびアンホテリシン−Bを含有するEBM培地キット(Clonetics)中で培養した。細胞を37℃および5%CO2でインキュベートし、培地を2〜3日毎に交換した。すべての実験で継代3〜8を使用した。
【0068】
製造業者により推奨されたように、細胞死検出ELISAキット(Roche Diagnostics GmBH,Mannheim,ドイツ)によりDNAフラグメント化(fragmentation)を分析した。アッセイは、細胞溶解物中のモノ−およびオリゴヌクレオソームの検出を可能にする、DNAおよびヒストンを検出することができるマウスのMabを使用する定量的サンドイッチ−酵素−免疫アッセイである。細胞のアポトーシスは405nmにおける最終吸収に正比例する。すべての決定を3回実施した。
【0069】
CNTO 328(10μg/mL)を含んで、そして含まないで、IL6の存在下での3日間インキュベート後にDNAフラグメントをHUVEC細胞中で測定した。図10のDNAに示されたデータはIL6もしくはCNTO 328を含まない血清非含有培地中の細胞を100%と規定して、対照のパーセントトとして表わした3回測定値の平均±SDである。実験は、cCLB8がIL6の不在下でHUVEC中のDNAフラグメント化により測定されるアポトーシスを誘発させることができ、高濃度で見られるIL6の防御効果を逆転させることができることを示す。
【実施例4】
【0070】
HUVECのIL6誘導の移動
HUVECは前記の実施例で説明され、培養されたものである。HUVECSの準集密的24時間細胞培養物を血清非含有培地で1晩飢餓させ、トリプシン−EDTAで収集し、2回洗浄し、0.1%BSA含有の血清非含有培地中に再懸濁させた。細胞(100,000/500ミクロL)を上室に添加した。化学走化性細胞移動を容易にするために、0.1%BSAおよび異なる濃度のIL6もしくはcCLB8を含有する培地750ミクロLを下室に添加し、皿を組織培養インキュベーター中に入れた。特定の経過時間後に、綿スワブで上室内の細胞を取り出すことにより移動は終結された。フィルターを3%パラホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。細胞移動の程度を光学顕微鏡により測定し、映像をフェーズ3映像分析ソフトウェア(Glen Mills,PA)を使用して分析した。そのソフトウェアは、細胞移動の程度に正比例する、フィルターの下側上に染色された細胞により占められた総面積を分析する。染色されたトランスウェルを10%酢酸で染色を落とし、590nmの吸収を記録した。
【0071】
移動室フィルターの下側を0.5ミクロg/mLのビトロネクチンでコートし、方法の項で説明されたようにアッセイを実施した。細胞を6時間移動させた。移動室のフィルターの下側を0.5ミクロg/mLのビトロネクチンでコートし、方法の項で説明されたようにアッセイを実施した。細胞を6時間移動させた。各データの点は3個のトランスウェルフィルターの平均±SDである(図11〜12)。図11のデータは約100ng/mlで最大活性を伴う、IL−6に対するHUVEC細胞の用量依存性反応を示す。抑制する抗−IL6のMab、cCLB8の存在下で、移動量は抑制される。
【実施例5】
【0072】
内皮細胞のIL6誘導の生存に対する抗−IL6のMabの効果
HUVECは前記2実施例中で説明され培養されたものである。市販のキットを使用する同様なアッセイで細胞生存および増殖を測定した。端的には、96−ウェルのミクロプレートに6000個の細胞/ウェルを接種し、完全培養液を添加した。18時間後、細胞を2回すすぎ、血清非含有培地で24時間インキュベートした。次に組換えIL6および抗体を血清非含有培地に添加した。細胞を48時間培養した。細胞生存の程度をMTSキット(Promega,Madison,WI)により測定した。MTSアッセイに対しては、490nmで吸収を測定した。結果はIL6を含まない血清非含有培地中における細胞による値の百分率として表わされた。すべての測定を3個のウェルで実施した。これらの結果(図13)はIL6が限定された栄養条件下で内皮細胞の生存に対して直接的効果を有することを示す。このような状態は増殖している腫瘍および損傷された皮膚もしくは眼におけるような急速に新生血管形成している組織において認められる。
[要約]
本明細書に記載の実験は、IL6誘導血管形成および、IL6により刺激される内皮細胞の関連機能がgp130を含む受容体複合体をとおるIL6シグナル伝達を抑制する特別のMabにより減少され得ることを示す。
【0073】
血管形成の過程はそれがインビボの新規組織形成中に起る時にそして微細血管の増加した数および長さおよび増加したHb含量により測定されるようにヌード・マウスにおけるマトリゲルプラグ中で刺激された。主要な成分はラミニンであるが、マトリゲルはまた痕跡量の繊維芽細胞増殖因子、TGF−ベータ、組織プラスミノーゲンアクチベータおよびEHS腫瘍中に天然に存在するその他の増殖因子を含む。マトリゲルは幾つかの種類の腫瘍細胞侵入アッセイの基礎であり、血管形成の研究のために必要な基質を提供する。マトリゲルはマウスもしくはラットに皮下注射すると軟らかいゲルプラグを形成し、血管新生促進因子を補給される時に強力な血管反応を支持する。
【0074】
cCLB8はマトリゲル中に取り込まれると、マトリゲル中の血管形成を阻止した。
【0075】
実験結果はcCLB8の1回の注射がヌード・マウスのマトリゲルプラグモデルにおけるIL−6仲介の血管形成をほとんど完全に阻止した。更に、cCLB8はマトリゲルの注射後にそれをIV注射されると、マトリゲル中の血管形成を阻止した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ヒトIL6を添加されたヌード・マウス中に注入されたプラグ中で測定されヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグ(1プラグ/動物1匹)を表わし、ラインは平均を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析(two−tailed unpaired t−test analysis)によりすべてのIL−6群に対しp<0.001と計算された(0ng/mLのIL6に比較して)。
【図2】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中で測定されたヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグ(1プラグ/動物1匹)を表わし、ラインは平均を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりすべてのIL−6群に対しp<0.001と計算された(0ng/mLのIL6に比較して)。
【図3】ヒトIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均の長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均の長さ/観察(view)を表わし、ラインは10プラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ヒトIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図4】ヒトIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均血管数/観察(view)を表わし、ラインは10プラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ヒトIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図5】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均長さ/観察(view)を表わし、ラインは10プラグからの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ネズミIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図6】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均血管数/観察(view)を表わし、ラインは10プラグからの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ネズミIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図7】ヒトIL6添加されそして抗体を伴いもしくは伴わないヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの1観察当りの微細血管を表わし、ラインはプラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりIL6−C57対照群に比較して、IL6−cCLB8群に対しp<0.001と計算された。
【図8】ヒトIL6添加されそして抗体を伴いもしくは伴わないヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの1観察当りの平均の長さを表わし、ラインはプラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりIL6−C57対照群に比較して、IL6−cCLB8群に対しp<0.001と計算された。
【図9】マトリゲルプラグ中のヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグを表わし、ラインはプラグの平均を表わす。ヒトIL6を200ng/mLでマトリゲル中に取り込んだ。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により、IL6−C57群に比較して、すべてのIL6−cCLB8に対しp<0.001と計算された。
【図10】ヒト血管内皮細胞中におけるIL6誘導アポトーシスに対するcCLB8の効果を示す棒グラフである。データは対照(hIL6を添加されない細胞)のパーセントとして表わされた3回の測定値の平均±SDである。
【図11】IL6の存在下でビトロネクチンに対するIL6濃度と、HUVECおよびU373の移動間の関係を示すグラフである。各データの点は3測定値の平均±SDであり、すべてはIL6を添加されないものに対比される。
【図12】IL6の存在下でのビトロネクチンに対するHUVECの移動が抗−IL6のMab、cCLB8により緩和され得ることを示す棒グラフである。各データの点は3個の移行トランスウェルフィルターの平均±SDである。
【図13】48時間後に血清非含有培地中で細胞生存を高めるためのHUVECに対するIL6の能力を示すグラフである。データは生存の増加パーセントとして表わされた、3回の測定値の平均±SDであり、IL6を含まない血清非含有培地は生存の0%増加を表わす。
【技術分野】
【0001】
本発明は新生組織の血液供給を発現させる(develop)能力を特に抑制もしくは阻止することにより、がんのような増殖性疾患に伴う病理学的過程を処置するためにIL−6アンタゴニストを使用する方法に関する。本発明は、より具体的には、血管形成を阻止するのに有効な量の、少なくとも1種のインターロイキン−6(IL−6、インターフェロンβ2としても知られる)タンパク質もしくはそのフラグメントに特有の、特定の部分もしくはバリアントを含む、IL−6に対する抗体のようなIL−6アンタゴニストの使用によりこれらの疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインIL−6
IL−6(インターロイキン6)は増殖刺激性および炎症促進活性を有する、以前は単球誘導ヒトB−細胞増殖因子、B−細胞刺激因子2、BSF−2、インターフェロンベータ−2およびハイブリドーマ増殖因子として知られた22〜27kDaの分泌糖タンパク質である(非特許文献1参照)。
【0003】
IL−6は白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経向性因子(CNTF)、カルジオトロピン−1(CT−1)、IL−1およびIL−11を含む顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)および骨髄単球増殖因子(MGF)ファミリーに属する。IL−6は一連の細胞種類、もっとも注目すべきは細胞、T細胞およびB細胞を与える抗原により産生される。IL−6−型のサイトカインはすべて、共通のシグナル変換タンパク質、gp130(以前のIL−6Rベータ)を含有する受容体複合体を介して作用する。しかし、それに反して、IL−6、IL−11、CT−1およびCNTFは最初に特定の受容体タンパク質に結合し、次にgp130、LIFおよびOSMと結び付いて、LIF−Rおよびgp130の複合体に直接結合する。特定のIL−6受容体(IL−6RもしくはIL−6アルファ、gp80またはCD126)は、双方ともgp130を活性化することができる膜結合形態もしくは可溶性形態(sIL−6R、55kD形態)のいずれかで存在する。
【0004】
IL−6の発現を誘導するための幾つかの物質(例えばIL−1、IL−2、TNFα、IL−4、IFNα、オンコスタチンおよびLPS)が知られている。IL−6はBおよびT細胞の活性化、造血、破骨作用、ケラチン生成細胞の増殖、急性相のタンパク質合成、神経細胞の増殖および肝細胞活性化のような多様な作用に関与する(非特許文献2参照)。
【0005】
IL−6は多数の経路に関与するが、IL−6ノックアウトマウスは正常な表現型を有し、それらは生存可能で、繁殖可能で、僅かに減少したT細胞数および、組織損傷に対する急性相タンパク質反応の減少を示す(非特許文献3参照)。それに対し、IL−6を過剰発現するトランスジェニックマウスは神経学的疾患(例えば、神経変性、星状細胞増加症、脳血管形成症)を発症し、そしてこれらのマウスは血液脳関門を形成しない(非特許文献4参照)。
がんにおけるIL−6の役割
IL−6は多様な機序により幾つかの悪性疾患の病原病理学に関係するとみなされる。IL−6はがん関連の病的状態(morbidity)(例えば、無気力/悪液質および骨吸収)における原因的因子であると仮定される。腫瘍誘導悪液質(非特許文献5)、骨吸収および関連の高カルシウム血症はIL−6ノックアウトマウスにおいて減少することが発見された(Sandhu et al.1999)(非特許文献5参照)。がん関連抑鬱症および脳腫瘍に続発性の脳浮腫もまた高レベルのIL−6と関連付けられた(非特許文献6参照)。多発性骨髄腫は血漿細胞に関与する悪性腫瘍である。IL−6は悪性腫瘍細胞のアポトーシスの阻害を伴う自己分泌もしくは傍分泌機序を介する多発性骨髄腫(MM)における悪性腫瘍血漿細胞の増殖、分化および生存を促進することが知られている。従って、IL−6の阻害が有効な治療であると仮定され(非特許文献7参照)、臨床試験が実施された(非特許文献8および9参照)。
【0006】
様々なヒトのがんの多数のインビトロおよびインビボのモデルからの実験結果により、IL−6が阻害の治療的標的であることが示された。IL−6は腫瘍細胞の増殖、分化および生存を誘導し、アポトーシスを促進し(非特許文献10参照)、そして化学療法に対する耐性を誘発する可能性がある(非特許文献11参照)。
【0007】
扁平上皮細胞がん腫は咽頭並びに頭部および首部のもっとも一般的な悪性腫瘍である。しばしば喫煙と関連付けられる一般的な原発(primary)部位は声帯(特に前方部分)、上咽頭、梨状洞(pyriform sinus)および輪状領域の後方(postcricoid area)である。血管形成は局所的再発と関連する(非特許文献12参照)。HIV感染患者に一般的なカポジ肉腫は感染性物質への露出により形質転換されたかも知れない間葉前駆細胞から誘導される血管のもしくは形成異常の内皮細胞であるようである。活性化KS細胞は細胞の増殖を維持するための自己分泌因子として働くIL−6および、他の間葉細胞の増殖を刺激し、血管形成を誘導することができる傍分泌のサイトカインを産生する(非特許文献13参照)。
IL−6に対するモノクローナル抗体
例えば、特許文献1におけるような、IL−6に対するネズミのモノクローナル抗体が知られている(特許文献1参照)。特許文献2はマウスの抗体SK2の可変部からの相補的(complementary)決定部(CDR)がヒト抗体の可変部中に移植され、ヒト抗体の定常部に結合(join)される、マウスのモノクローナル抗体SK2から誘導されるヒトIL−6に対する再形成されたヒト抗体を開示している(特許文献2参照)。
【0008】
受容体のシグナル伝達を阻害することができる、CLB−6/8と呼ばれるもう1種のネズミのIL−6モノクローナル抗体が報告された(非特許文献14参照)。cCLB8と呼ばれるこの抗体のキメラ形態が構成され(Centocor,Leiden,オランダ)、多発性骨髄腫の患者に投与された(非特許文献9参照)。ネズミの抗原結合ドメインから生成される抗体の製法は本出願者の同時係属出願の特許文献3に詳細に説明されている(特許文献3参照)。
【0009】
cCLB8投与の前後の患者の血清試料の分析により、これらの患者のsIL6Rおよびsgp130双方の循環レベルは高く、血清IL−6活性の全体的阻害にもかかわらず、処置により不変のままであったことが示された(非特許文献15参照)。
【0010】
B−E8はこれも臨床評価を受けてきたフランスのDiacloneにより製造されたIL−6に対するネズミのmAbである。B−E8のmAbはB−リンパ増殖性障害の処置において効果を示した(Haddad等2001)。AIDS関連リンパ腫において、この抗−IL−6のmAbはリンパ腫関連の熱を低下させ、悪液質による体重喪失に対して明白な効果を有し、それによりこれらの患者の生活の質の指標を改善した(非特許文献16参照)。B−E8はまた、腎臓がん腫患者に使用された。転移性腎臓細胞がん腫(RCC)はしばしば高レベルのIL−6を伴い、腫瘍随伴症状を伴う。B−E8処置は3人のRCC患者において腫瘍随伴症状の有意な軽減を示した(非特許文献17参照)。もう1種の刊行臨床試験において、RCCをもつ6人の患者がB−E8で処置された(非特許文献18参照)。これらの患者において明らかな抗腫瘍反応は認められなかったが、すべての患者が概括的にB−E8処置後のIL−6過剰産生に起因される症状の喪失を示した。
【0011】
抗−IL−6のMabによる臨床経験はこんにちまで限定されてきた。しかし、ヒトの脳腫瘍細胞の増殖の阻害(非特許文献19)、もしくは腫瘍(Mauray等、2000)、ヒトの腎臓がん腫瘍および血清カルシウム濃度(非特許文献20)およびヒトのホルモンの難治性前立腺腫瘍異種移植(非特許文献21)を含む、様々なヒトの腫瘍のインビトロおよびネズミモデルの幾つかを使用して、抗IL−6のMabが腫瘍細胞の生存および疾患の進行に影響を与える可能性を有することが示された(非特許文献19、20および21参照)。
不適切な血管形成に伴う障害
血管形成は新生毛細血管形成の過程であり、それは内皮細胞の活性化された増殖からもたらされる。新生血管形成は厳密に規制され、胚の発育、組織再形成、創傷治癒および黄体発育の周期的サイクル中にのみ起る(非特許文献22参照)。
【0012】
内皮細胞は通常、身体中の他の種類の細胞よりもずっと緩徐に増殖する。しかし、これらの細胞の増殖速度が規制されなくなると、病理学的血管形成がもたらされ得る。病理学的血管形成は多数の疾患に関与する。例えば、心臓血管疾患(例えば血管腫、血管繊維腫、血管奇形、アテーム性動脈硬化症、癒着および浮腫性硬化症)および眼科学的疾患(例えば、角膜移植後の新生血管形成、新生血管性緑内障、糖尿病性網膜症、血管由来の角膜疾患、黄斑変性症、翼状片、網膜変性症、水晶体後繊維増殖症および顆粒性結膜炎)が血管形成に関連する。慢性炎症性疾患(例えば関節炎)、皮膚科学的疾患[例えば、乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、静脈潰瘍、アクネ、しゅさ(赤鼻もしくは紅斑症)、こぶ(いぼ)、湿疹、血管腫、リンパ管腫]もまた血管形成依存性である。
【0013】
硝子体液が毛細管血により浸潤される様々な眼の疾患のために視力が損傷もしくは喪失され得る。糖尿病性網膜症は2形態、非増殖性もしくは増殖性形態の一方を採ることができる。増殖性網膜症は硝子体表面上に増殖するかもしくは硝子体腔中に延伸する異常な新規の血管形成(新生血管形成)を特徴として示す。進行した疾患においては、新生血管膜が起り、牽引網膜剥離をもたらす可能性がある。新生血管形成から硝子体出血をもたらすかも知れない。視覚の症状は様々である。硝子体内出血がある時は突然の重篤な視力喪失が起り得る。重篤な網膜虚血、重篤な新生血管形成もしくは重篤な繊維組織形成を伴う場合は、増殖性網膜症による視覚の予後はより条件付である。黄斑変性症も同様に乾燥および湿潤の2形態を採る。ずっと稀な滲出性黄斑変性症(湿潤形態)においては、しばしば網膜内出血、網膜下流体、色素上皮剥離および色素沈着昂進を伴う脈絡膜新生血管形成の網膜下網目の形成が起る。最終的にはこの複合体が収縮して、眼球後極に明白な高まった瘢痕を残す。年令に関連する黄斑変性症の双方の形態はしばしば両極性で、黄斑領域に結晶群が前に形成される。血管形成の原因に関連した視力喪失のもう1つの原因は虹彩の損傷である。直角に巻き上げられた虹彩をもたらす2つのもっとも一般的な状態は糖尿病もしくは中心網膜静脈栓塞患者における新生血管性緑内障におけるような膜の収縮もしくは、虹彩が直角に巻き上げられたブドウ膜炎に伴う炎症性沈殿物である(非特許文献23参照)。
【0014】
慢性関節リウマチ、炎症性疾患もまた、不適切な血管形成をもたらす。滑液腔中の血管の内皮細胞の増殖は炎症性サイトカインにより活性化され、軟骨組織の破壊および関節内のパンヌスの交換をもたらす(非特許文献24、25および26参照)。
【0015】
乾癬は皮膚細胞の制御されない増殖により誘導される。急速に成長する細胞は十分な血液供給を必要とし、乾癬においては異常な血管形成が誘起される(非特許文献27参照)。
【0016】
いまや、腫瘍組織に栄養物および酸素を供給し、廃棄産物を運び去り、そして遠方部位への腫瘍細胞の転移のための導管として働くために、腫瘍の増殖およびがんの進行には血管形成、すなわち新規血管の形成が必要であるという無視できない証拠が存在する(非特許文献28参照)。
【0017】
血管形成に導く過程および事象には多数の因子:細胞接着分子、インテグリン、血管内皮増殖因子(VEGF)、TNFアルファ、bFGF並びにIL−6およびIL−12を含むサイトカインが関与する。例えば、血管形成過程には、密接に関連した、しかし区別可能なaVb3とaVb5が独立の経路を仲介することが示された。aVb3に対して形成される抗体は塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)誘導の血管形成を阻害したが、他方aVb5に特異的な抗体は血管内皮増殖因子(VEGF)誘導の血管形成を阻害した(非特許文献29および30)。IL−6は血管形成を受けている組織中で高まり、A431細胞、ヒトの類表皮がん腫細胞株中にVEGFを誘導することができる(非特許文献31参照)。
【0018】
IL−6は、多数の細胞種類に対するその作用および卵巣髄質から増殖している卵胞に延伸している毛細管の網目および脈管構造の形成期間中ゴナドトロピン−充填された過度に刺激された卵巣中に観察された発現のためにまた、直接的もしくは間接的作用体(actor)として血管形成に関係付けられてきた(非特許文献32参照)。IL−6は傷害および修復中の皮膚中で重要な因子であり、抑制する抗IL−6抗体により阻害されたウシの脳の内皮細胞の移動を刺激することが示された(非特許文献33参照)。
【0019】
サリドマイドの催奇形および抗腫瘍作用の双方はその抗血管形成作用に関連すると考えられる。サリドマイドはTNFアルファ、bFGF、VEGFおよびIL−6を含む幾つかのサイトカインのレベルを抑制することが報告されている。腫瘍血管形成におけるIL−6の役割の証明のもう1つの方向(line)は、サリドマイドで処置された腎臓細胞がん腫および幾つかの他の種類のがん患者における疾患の安定化を示すデータから由来する。しかし、TNFアルファ、IL−6、bFGFおよびVEGFレベルと疾患の進行の相関は常に有意であるとは限らなかった(非特許文献34および35参照)。
【0020】
他方、インビボで移植された人工的組織床(MATRIGEL)中の血管の増殖の直接的観察により、IL−6、IL−1ベータ、PDGFが繊維芽細胞の増殖因子により誘導された新生血管形成の強力な阻害剤であることが示された(非特許文献36参照)。
【0021】
要約すると、IL−6は幾つかの機序により悪性疾患の病原を促進することができる多面的サイトカインである。前臨床的データにより、IL−6は腎臓がんおよび前立腺がんを含む幾つかの種類の腫瘍における生存、増殖および分化因子であることが示された。IL−6はまた、がん関連の病的状態(例えば、悪液質、骨吸収および抑鬱)の発生に主要な役割を果たし、それはMDR1遺伝子発現を誘導することにより化学療法に対する耐性を誘発する可能性がある。臨床データにより、高レベルのIL−6は幾つかの疾患における悪性過程に寄与することが示され、予備臨床試験により抗IL−6のMabの幾つかの疾患の軽減作用が示されたが、IL−6の抑制と固形腫瘍の増殖もしくは転移の拡散の減少の間の関連付けは実施されていない。
【0022】
腎臓がん腫およびホルモンの難治性前立腺がんのような多数の固形腫瘍タイプの増殖および転移の可能性を限定することができる薬剤の以前から嘱望された需要が存在する。血管形成は腫瘍の、増殖、転移する能力、網膜症を含む眼の障害およびカポジ肉腫を含む皮膚の障害を含む多数の病理学的状態における寄与因子であることが知られている。IL−6を含む多数の因子がこれらの過程と関連することが示されたが、受容体シグナル伝達のIL−6の活性化を抑制する能力をもつIL−6アンタゴニストが血管形成に直接的効果を有することは今まで示されなかった。
【特許文献1】米国特許第5,618,700号明細書
【特許文献2】米国特許第5,856,135号明細書
【特許文献3】米国特許出願第60/332,743号明細書
【非特許文献1】Hirano et al.Nature 324:73−76,1986
【非特許文献2】Hirano et al.Int.Rev.Immunol;16(3−4):249−84,1998
【非特許文献3】Kopf M et al.(1994)Nature:368(6469):339−42
【非特許文献4】Campbell et al.PNAS 90:10061−10065,1993
【非特許文献5】Cahlin et al.(2000) Cancer Res;60(19):54488−9
【非特許文献6】Musselman et al.Am J Psychiatry.;158(8):1252−7,2001
【非特許文献7】Anderson et al.Hematology:147−165,2000
【非特許文献8】Bataille et al.(1995) Blood;86(2):685−91
【非特許文献9】Van Zaanen,et al.(1996)J Clin Invest 98:1441−1448
【非特許文献10】Jee et al.Oncogene 20:198−208,2001
【非特許文献11】Conze et al.Cancer Res 61:8851−8858,2001
【非特許文献12】Ch.88 The Merck Manual 17th Ed.1999
【非特許文献13】Ch.145 The Merck Manual 17th Ed.1999
【非特許文献14】Brakenhoff et al,J.Immunol.(1990)(145:561)
【非特許文献15】VanZaanen,et al.Leukemia Lymphoma 31(506):;551−558,1998
【非特許文献16】Emilie et al(1994) Blood 84(8):2472−9
【非特許文献17】Blay et al.,Int J Cancer;72(3):424−30,1997
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【非特許文献19】Goswami et al.(1998)J Neurochem 71:1837−1845
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【非特許文献21】Smith et al.(2001) Prostate;48(1):47−53
【非特許文献22】FolkmanおよびCotran,Relation of vescular proliferation to tumor growth,Int.Rev.Exp.Pathol.’16,207−248(1976)
【非特許文献23】Ch.99 The Merck Manual 17th Ed.1999
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【非特許文献25】Stupack DG,Storgard CM and Cheresh DA,Braz.J.Med.Biol.Res.,32,578−581(1999)
【非特許文献26】Koch AK, Arthritis Rheum,41,951 962(1998)
【非特許文献27】Folkman J.,J.Invest.Dermatol.,59,40−48(1972)
【非特許文献28】Folkman,et al.N Engl J Med 285:1181−1186,1971 and Folkman,et al.N Engl J Med 333:1757−1763,1995
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【非特許文献30】Friedlander et al.,Science 270:1500−1502(1995)
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【非特許文献32】Motro,B.et al.PNAS 87:3092−3096.1990
【非特許文献33】Rosen,et al.In:Cell Motility Factors.I.D.Goldberg,ed.Birkhaeuser Verlag,Basel.pp.194−1205,1991
【非特許文献34】Eisen,et al.Br.J.Cancer 82:812−817,2000
【非特許文献35】Stebbing,et al.Br J Cancer 85:953−958,2001
【非特許文献36】Passanti,A.et al.Laboratory Invest.67:519−528,1992
【発明の開示】
【0023】
本発明は、異常な血管形成を伴う疾患状態における血管形成を阻止するために、IL−6に対する抗体および少なくとも1種のインターロイキン−6(IL−6、インターフェロンβ2としても知られる)タンパク質もしくはそのフラグメントに特異的な特定の部分もしくはそのバリアントを含むIL−6のアンタゴニストを使用する方法に関する。抗体のような抗−IL−6アンタゴニストは、血管形成、内皮細胞の活性化および転移の拡散を伴う事象を含む、がん組織の開始もしくは進行を伴う事象を防止する方法で、膜結合受容体とのIL−6の相互作用を防止するそれらの能力により、作用することができる。本発明のIL−6アンタゴニストの前記の作用に基づき、これらのアンタゴニストは抗血管形成IL−6アンタゴニストとしてもっともよく説明することができる。
【0024】
特定の態様において、IL−6アンタゴニストは特異的にIL−6と結合する抗体である。このような抗体の特別な利点は、それらがその作用を全身的に予防するような方法でIL−6と結合することができることである。抗体はIL−6に結合して、正常な循環機序により複合体により接近可能な任意の組織中で、gp130のような膜結合受容体を活性化することができない、長期生存複合体を形成することができる。従って、本発明の方法は、それらを、ヒトもしくはヒト以外の患者の様々な形態のがんと関連した転移性疾患状態の治療的および予防的処置に理想的に適したものにさせる望ましい抑制特性を有する抗体を使用する。従って、本発明は血管形成を阻害するためにIL−6抗体を抑制する量を患者に投与することを含んで成る、これらの処置を要する患者の、血管形成に依存する疾患もしくは状態を処置する方法に関する。
【0025】
本発明の抗−血管形成性IL−6アンタゴニストは、それらが内皮細胞上のIL6の刺激効果を阻止し、内皮細胞の分化を減少し、内皮細胞の移動を減少させ、そして内皮細胞により分泌されるタンパク質分解酵素の活性を損なう限り、血管形成を妨げ、抑制するのに有用である。本発明の方法におけるIL−6アンタゴニストによる処置により、様々な形態の固形原発腫瘍および転移腫瘍、眼の病巣並びに皮膚の障害を含む多数の病状が改善される。
がん
様々ながん(例えば、頸部、肛門および口腔がん、胃、結腸、膀胱、直腸、肝臓、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、子宮体部、卵巣、前立腺、睾丸、腎臓、脳/中枢神経系(例えば神経膠腫)、頭部および首部、目もしくは眼、咽頭がん、皮膚メラノーマ、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、エウィング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞がん腫および扁平上皮細胞がん腫、小細胞肺がん、絨毛がん、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽喉、食道、喉頭、腎臓およびリンパ腫)を含む良性および悪性腫瘍の双方はなかでも、本発明の抗−IL6抗体を使用して処置することができる。更に、神経繊維腫症、結節性硬化症のような状態(それぞれの状態が皮膚の良性腫瘍を産生する)、血管腫およびリンパ管腫はなかでも、本発明に従うIL−6アンタゴニストにより有効に処置することができる。
【0026】
二次的腫瘍、すなわち転移腫瘍は身体の他の原発部位以外に発生したが今は遠方の器官に広がった腫瘍である。転移の一般的経路は隣接構造物中への直接的増殖、血管もしくはリンパ管系をとおる伝播、並びに例えば腹水もしくは脳脊髄液による組織面および体腔に沿った追跡である。二次的肝がんはがん患者におけるもっとも一般的な死因の1つであり、肝臓腫瘍のずば抜けてもっとも一般的な形態である。実質的にはどんな悪性腫瘍も肝臓に転移する可能性があるが、肝臓にもっとも転移し易い腫瘍には、胃、結腸および膵臓のがん、メラノーマ、肺、中咽頭および膀胱の腫瘍、ホジキンスおよび非ホジキンスリンパ腫、乳房、卵巣および前立腺の腫瘍が含まれる。二次的な肺、脳および骨腫瘍は進行した段階の乳房、前立腺および肺がんに一般的である。どんながんも骨に転移する可能性があるが、がん腫(carcinoma),特に乳房、肺、前立腺、腎臓および甲状腺に発生するがん腫からの転移がもっとも一般的である。肺のがん腫は非常に一般的に肝臓、脳、副腎および骨への血行性の転移拡散を伴い、早期に発生して、明白な肺の症状の前にこれらの部位に症状をもたらす可能性がある。乳房、結腸、前立腺、腎臓、甲状腺、胃、頸部、直腸、睾丸および骨の原発がんから、そしてメラノーマからの肺への転移は一般的である。前記の二次的腫瘍のそれぞれを本発明の抗体により処置することができる。
【0027】
腫瘍に加えて、血管の異常な増殖を特徴とする多数の他の非−腫瘍形成の血管形成−依存性疾患もまた、本発明の抗−血管形成性IL−6アンタゴニストで処置することができる。
【0028】
このような非−腫瘍形成性血管形成−依存性疾患の代表的な例には角膜新生血管形成、肥厚性瘢痕およびケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、動静脈奇形(前記)、アテローム性プラーク、遅延創傷治癒、血友病性関節、癒着不能骨折、オスラー−ウェーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多(前記)および血管癒着が含まれる。
目の血管形成性状態
角膜は通常は血管のない組織である。しかし、特定の病理学的状態においては、角膜輪部の周辺血管叢から毛細血管が角膜に侵入する可能性がある。角膜が血管新生されると、それは曇り、患者の視覚の明瞭度の低下をもたらす。角膜が完全に濁ると視力喪失は完全になる可能性がある。
【0029】
新生血管形成を誘導する過程に応じて様々な形態および深度で血管が角膜中に侵入することができる。これらの形態は伝統的に、眼科医により以下のタイプ:トラコーマ性パンヌス、鱗状パンヌス、フリクテン性パンヌス(pannus phylctenulosus)、変性パンヌスおよび緑内障性パンヌス、に規定されてきた。角膜の支質もまた、前毛様体動脈の分枝により侵入される可能性があり(間質性血管新生と呼ばれる)、それはいくつかの明白な臨床病巣:末端ループ、「ブラシ様」形態、散形花形態、格子形態、間質アーケード(強膜上静脈から)および異常な不規則血管、を誘発する。
【0030】
角膜新生血管形成は角膜潰瘍からもたらされる可能性がある。例えば、角膜感染症(トラコーマ、単純ヘルペス性角膜炎、リーシュマニア症および回旋糸状虫症)、免疫学的過程(移植拒絶およびスティーブンス−ジョンソン氏症候群)、アルカリ火傷、外傷、炎症(あらゆる原因の)、毒性状態およびビタミンAもしくはタンパク質欠乏状態を含む、そしてコンタクトレンズ装着の合併症として、広範な原因が角膜潰瘍をもたらす可能性がある。
【0031】
角膜の新生血管形成の原因は広範にわたる可能性があるが、損傷およびその後の血管内部増殖に対する角膜の反応は原因にかかわらず、同様である。同様に、幾つかの血管形成因子がこの過程に関与するようであり、それらの多数は炎症反応の結果である。事実、角膜の新生血管形成は炎症性細胞浸潤と関連して起るのみであるように見え、血管形成の度合いは炎症性反応の程度に比例する。角膜浮腫は更に、それをとおって毛細血管が増殖する角膜支質の枠組みをゆるめることにより血管の内部増殖を容易にする。
【0032】
IL−6抗体による局所治療はまた、血管形成反応を誘発する高い確率を有することが知られる(化学火傷のような)角膜病巣において予防的に有用であるかも知れない。これらの場合には、恐らくステロイドと併用した処置を、その後の合併症を予防する補助をするために、即座に実施することができる。
【0033】
これらの方法はまた、移植角膜の毛細血管侵入を予防するために同様な方法で利用することができる。ステロイドと組み合わせた使用も想定される。
【0034】
新生血管性緑内障は眼の虹彩中に新生毛細血管が発育する病理学的状態である。血管形成は通常、瞳孔の縁に局在する血管から発生し、虹彩の根元をとおって小柱網中に進行する。繊維芽細胞およびその他の結合組織要素は毛細血管の増殖と関連し、繊維束膜が発育し、それが虹彩の後方表面上に広がり、最終的に瘢痕を形成する。瘢痕形成は体液の適切な排水を妨げ、失明をもたらす可能性のある眼内圧の上昇をもたらす。
【0035】
新生血管性緑内障は概括的に、網膜虚血が著しい疾患の合併症として起る。とりわけ、この障害をもつ患者の約1/3は糖尿病性網膜症を有する。その他の原因には、慢性網膜剥離、末期緑内障、頸動脈塞栓疾患、水晶体後繊維増殖症、鎌状赤血球貧血、眼内腫瘍および頸動脈海綿体瘻が含まれる。
皮膚の血管形成状態
本発明のもう1つのアスペクト内には、肥厚性瘢痕もしくはケロイドに対する前記の抗血管形成組成物の1種を投与する段階を含んで成る、肥厚性瘢痕およびケロイドを処置する方法が提供される。
【0036】
創傷の治癒および瘢痕形成は3相:炎症、増殖および成熟、で起る。第1相の炎症は組織の損傷および血管漏洩を誘起するのに十分重篤な傷害に反応して起る。3〜4日間継続するこの相期間中に、血液および組織液が接着性クロットおよび繊維性網目を形成し、それが創傷表面を一緒に結合させるように働く。次に、創傷の縁からの毛細血管および結合組織の内部増殖および皮膚欠損の閉鎖が起る増殖相が続く。最後に一旦毛細血管および繊維芽細胞の増殖が終結すると、瘢痕が収縮し、細胞性、血管性が弱くなり、平坦で白色に見える成熟過程が開始する。この最後の相は6〜12カ月の間を要するかも知れない。
【0037】
創傷部位の結合組織の過剰産生は永続的に細胞性で、恐らく赤い、盛り上がった瘢痕を形成させる。瘢痕が当初の創傷の境界内に留まる場合は、それは肥厚性瘢痕と呼ばれるが、それが当初の瘢痕より外側および周辺組織中に延伸する場合は、病巣はケロイドと呼ばれる。肥厚性瘢痕およびケロイドは瘢痕形成の第2および第3相期間中に産生される。火傷、開放創傷および感染創傷を含む幾つかの創傷は特に、過剰内皮および繊維芽細胞増殖の傾向をもつ。肥厚性瘢痕により、ある程度の成熟が起り、緩徐な改善が起る。しかし、ケロイドの場合には、極めて大きくなる可能性がある実際の腫瘍が産生される。このような場合の自然の改善はめったに起らない。従って、このような状態における血管形成を阻止するための本発明の方法における抗−IL−6抗体の投与はこのようなケロイド瘢痕の形成を阻止することができる。
抑制する抗−IL6のMabのようなIL−6アンタゴニストとの抗−血管形成組み合わせ物
血管形成は平滑筋および内皮細胞の侵入、移動および増殖を特徴として経過する。αvβ3インテグリン(ビトロネクチン受容体としても知られる)は腫瘍転移、固形腫瘍の増殖(腫瘍形成)、骨粗鬆症、ペイジェット氏病、悪性腫瘍の体液高カルシウム血症、腫瘍血管形成を含む血管形成、黄斑変性症を含む網膜症、慢性関節リウマチを含む関節炎、歯周病、乾癬および平滑筋細胞移動(例えば狭窄再発)を含む様々な状態もしくは疾患状態において役割を果たすことが知られている。
【0038】
接着受容体インテグリンαvβ3はビトロネクチン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、ラミニン、スロンボスポンジンおよびその他の類似リガンドと結合する。それはヒヨコおよびヒトの新生血管の指標として認定され、血管形成もしくは新生血管形成において重要な役割を果たす。αvβ3のアンタゴニストは新生血管形成において細胞のアポトーシスを選択的に促進することによりこの過程を妨げる。従って、αvβ3アンタゴニストは新生血管形成に伴うこれらの状態を処置するための有用な治療的標的であると考えられる(Brooks et al.,Science,Vol.264,(1994),569−571)。更に、腫瘍細胞の侵入は3段階の過程:1)細胞外マトリックスへの腫瘍細胞の付着、2)マトリックスのタンパク質分解による溶解、および3)溶解されたバリヤーをとおる細胞の移動、により起る。この過程は繰り返し起ることができ、当初の腫瘍から遠方の部位における転移をもたらすことができる。αvβ3インテグリンは血管形成のみならずまた、腫瘍細胞侵入において役割を果たすことが示された。
【0039】
αvβ3のアンタゴニストおよび抑制する抗−IL6抗体は双方とも新生血管形成を標的とするが異なる機序により作用するので、抗−インテグリン抗体の抗−IL6抗体との組み合わせ物は正常組織の毒性をほとんど伴わずに特に強力で有効な併用治療をもたらすにちがいない。従って、本発明の1態様において、このような処置を必要とする患者の血管形成を阻止するためにインテグリンアンタゴニストと抗−IL6抗体の組み合わせ物を投与することを含んで成る、血管形成に関与する疾患もしくは状態を処置する方法が提供される。インテグリンもしくはインテグリンのサブユニットと選択的に結合するその他の抗体、特にアルファVサブユニットと結合する抗体は米国特許第5,985,278号および第6,160,099号明細書に開示されている。トリペプチドのアルギニル−グリシル−アスパルテート(RGD)を含有するその天然リガンドへのアルファVベータ3の結合を阻止するMabは米国特許第5,766,591号明細書および国際公開第0078815号パンフレットに開示されている。
【0040】
抗体の好ましい組み合わせ物は、出願者の同時係属出願米国特許出願第09/092,026号明細書に記載の抗−アルファVベータ3および抗−アルファVベータ5Mab並びに出願者の同時係属出願米国特許出願第60/332,743号明細書に開示されたcCLB8と呼ばれる抗−IL−6抗体である。前記の出願は双方とも本出願書中に引用により取り入れられ、その開示の一部を形成する。本発明に従うと、サリドマイドのようなその他の知られた抗−血管形成剤も抗−IL−6抗体と組み合わせて使用することができる。
抗−血管新生促進活性の評価法
血管形成および従って抗−血管新生促進剤の広範に許容された機能的アッセイはヒヨコの絨毛尿膜(CAM)アッセイおよび新生血管形成の角膜ミクロポケットアッセイである。
【0041】
CAMアッセイに対しては、受精ヒヨコ胚を3日(もしくは4日)目にそれらの殻から取り出し、高湿度および5%CO2中のペトリ皿中でインキュベートする。6日目に、試験物質を含有するメチルセルロース・ディスク(10ミクロL)を絨毛尿膜上に移植する。48時間後に胚を観察し、透明な無血管領域がメチルセルロース・ディスクの周囲に見える時は、その領域の直径を測定する。領域が大きいほど、抗体はより有効である。組織学的切片の無血管領域の縁の近位に血管が可視であるようにホルマリン固定の直前に幾つかの胚の中心にインディアインクを注入することができる。絨毛尿膜の組織学的切片を観察して、試験物質が毛細血管の正常な発育を抑制するか否かを決定する。米国特許第5,001,116号明細書に記載され、更に引用により本明細書に特別に取り入れられているこの方法は、本試験が抗−血管新生促進化合物もしくは化合物の組み合わせ物の選択に有用であることを示した。
【0042】
新生血管形成の角膜ミクロポケットアッセイはラットもしくはウサギの角膜を使用して実施することができる。このインビボモデルはO’Reilly等、Cell 79:315−328のような多数の総論の記事および論文に記載のように、臨床効果を概括的に予測するものとして広範に許容されている。
【0043】
端的には、組換え体bFGF(武田薬品−日本)を含有するプラグもしくはペレットを、麻酔した雌のニュージーランド白兎の両眼の角膜のミクロポケット中に、角膜輪部から2mmに移植し、次に角膜表面上にエリスロマイシン軟膏を局所投与する。動物に試験化合物を投与し、角膜の専門家により1日おきに細隙灯により観察される。血管新生角膜の量を決定するために様々な数学的モデルを使用し、この式がペレットに向かって増殖する新生血管形成帯の面積のもっとも正確な算定をもたらすことが見いだされた。
【0044】
本方法はまたラットを使用して実施することもできる。
【0045】
本発明において、角膜のミクロポケットアッセイを使用して抗−IL−6抗体の抗−血管形成効果を示す。これは、角膜内の血管数の一貫して観察され、そして好ましくは著しい減少により表わされるような、血管形成の有意な減少により証明される。これらの反応は、好ましくは試験物質と接触された時に持続した増殖の証拠を示さない、時折発生す発芽および/もしくはヘヤピンループのみを示す角膜と定義される。
内皮および非内皮細胞の増殖
腫瘍新生血管形成に特異的な血管新生促進過程にどの細胞タイプが関与するかを確定することは重要である。腫瘍の血管は概括的に初期のものである、すなわち内皮細胞のみを含む。他のタイプの細胞には、内皮細胞、平滑筋細胞、網膜色素上皮細胞、繊維芽細胞および上皮細胞、並びに血液血管内皮腫瘍細胞もしくはがん腫細胞のような腫瘍細胞が含まれる。内皮細胞の増殖を特異的に阻害する血管形成阻害剤の1例はANGIOSTATIN(R)タンパク質(O’Reilly等、1994前記)である。
【0046】
様々な代表的細胞株を試験に利用できる。ウシ大動脈平滑筋(SMC)、ウシ網膜色素上皮(RPE)、ミンクの肺の上皮(MLD)、ルイスの肺ガン腫(LLC)およびEOMA血液血管内皮細胞腫細胞および3T3繊維芽細胞腫。増殖アッセイに対しては、細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン溶液中に分散させる。細胞増殖アッセイに最適な条件はそれぞれの異なる細胞タイプについて確定される。概括的に、細胞をトリプシン化させ、IL6および抗−IL6抑制Mabの存在下でそして不在下で増殖培地中に再接種する。約72時間後に、細胞数の変化をテトラゾリウム染料塩基(dye base)アッセイのような生体染色法を使用することにより、もしくはLDH放出(Promega,MadisonWI)により測定するかまたは、トリプシン中に分散させ、再懸濁させ、手によりもしくはCoulter計数機のような自動化装置を使用して計数することができる。
IL−6アンタゴニスト
本明細書で使用される「IL−6アンタゴニスト」の用語はIL−6の血管新生促進作用を阻止もしくは抑制する物質を表わす。このようなアンタゴニストはこの効果を様々な方法で実施する。1クラスのIL−6アンタゴニストはIL−6の血管新生促進効果を抑制するのに十分な親和性および特異性を伴ってIL−6タンパク質に結合するであろう。このクラスの分子には抗体および抗体フラグメント(例えばF(ab)もしくはF(ab’)2分子のような)が含まれる。もう1つのクラスのIL−6アンタゴニストは、IL−6に結合し、それによりIL−6の血管新生促進作用を阻止するであろうIL−6タンパク質のフラグメント、特別変異タンパク質もしくは小有機分子、すなわちペプチド模倣体(peptidomimetics)である。IL−6アンタゴニストはそれがIL−6の血管新生促進作用を阻止する物質で有る限り、これらどのクラスのものであってもよい。IL−6アンタゴニストにはIL−6抗体、IL−6R抗体、抗−gp130抗体もしくはアンタゴニスト、米国特許第5,723,120号明細書に開示されたような修飾IL−6、アンチセンスIL−6RおよびIL−6もしくはIL−6Rの部分ペプチドが含まれる。
抗−IL−6抗体
当該技術分野で知られた任意の抗−IL−6抗体を本発明の方法に使用することができる。例えば、米国特許第5,618,700号明細書におけるようなIL−6に対するネズミのモノクローナル抗体が知られている。米国特許第5,856,135号明細書は、マウス抗体SK2の可変部からの相補的決定部(CDR)をヒト抗体の可変部中に移植し、ヒト抗体の定常部に結合させる、マウスのモノクローナル抗体SK2から誘導されたヒトIL−6に対する再形成されたヒト抗体を開示している。
【0047】
受容体のシグナル伝達を阻止することができるCLB−6/8と呼ばれるもう1つのネズミのIL−6モノクローナル抗体が報告された(Brakenhoff et al,J.Immunol.(1990)(145:561)。cCLB8と呼ばれるこの抗体のキメラ形態が構成され(Centocor,Leiden,オランダ)、多発性骨髄腫の患者に投与された(Van Zaanen,et al.1996前記)。ネズミ抗原結合ドメインから生成される抗体の製法は本出願書中に引用により取り込まれている、本出願者の同時係属出願米国特許出願第60/332,743号明細書に詳細に記載されている。
組成物およびそれらの使用
本明細書に記載された抑制的抗−IL−6モノクローナル抗体は血管形成を阻止し、従って腫瘍の増殖を抑制もしくは損傷させ、転移を抑制もしくは阻止するために使用することができる。更に、前記モノクローナル抗体は、それらに限定はされないが、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬および黄斑変性症を含んでもよい、このような処置に敏感な血管新生促進性炎症性疾患を阻止するために使用することができる。処置される個体は任意の哺乳動物であることができ、好ましくは霊長類、すなわち哺乳動物であるコンパニオン・アニマル、そしてもっとも好ましくはヒトの患者である。投与されるモノクローナル抗体の量はそれが使用されている目的および投与法により変動するであろう。
【0048】
本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体は血管形成が抑制されるか停止されることが所望される組織中に効果をもたらす多数の方法により投与することができる。更に、本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体は抗−血管新生促進効果を与えるために局所に存在する必要がないので、それらはIL6を含有する身体の区画もしくは体液へのアクセスが達成されるいずれの場所にも投与することができる。炎症を起こした、悪性のあるいは易感染性(compromised)組織の場合には、これらの方法は抗体を含有する調製物の直接的投与を含むことができる。これらの方法には、液体組成物の静脈内投与、液体もしくは固体調製物の経皮的投与、経口、局所投与または間質内もしくは手術間投与(inter−operative administration)が含まれる。投与は、例えば血管ステントのような、その主要な機能が薬剤配送ベヒクルではない装置の移植により実施することができる。
【0049】
本発明の一局面において、とりわけ、血管の形成が阻止されるように、患者の角膜に直接もしくは全身的に、治療的に有効な量の本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体を投与する段階を含んで成る、角膜新生血管形成(角膜移植新生血管形成を含む)を処置する方法が提供される。
【0050】
本発明のもう1つの局面において、血管の形成が阻止されるように、患者の目に直接もしくは全身的に、治療的に有効な量の抗−血管新生促進性の中和する(neutralizing)抗−IL−6抗体を投与する段階を含んで成る、血管新生性緑内障を処置する方法が提供される。
【0051】
本発明のもう1つの態様において、肥厚性瘢痕もしくはケロイドの病巣の進行を抑制するために、肥厚性瘢痕もしくはケロイド中に、本発明の抗−血管新生促進性抗−IL−6抗体を単独でもしくはもう1種の抗−血管新生促進剤と組み合わせたいずれかで直接に注射される。この治療は肥厚性瘢痕および火傷のようなケロイドの形成をもたらすことが知られる状態の予防的処置に特に価値がある。治療は予防相が進行する時間の経過後(最初の創傷の約14日後)に、しかし肥厚性瘢痕もしくはケロイドの形成前に開始すると有効であることができる。
【0052】
投与はまた、経口でもまたは腫瘍もしくは組織中への局所注入によってもよいが、概括的にモノクローナル抗体は静脈内投与される。概括的に、投与量範囲は約0.05mg/kg〜約12.0mg/kgである。これはボーラスとしてまたはマイクロプロセッサーに制御され、プログラム可能なポンプ装置により制御することができる緩徐なもしくは連続的な注入としてのどちらでもよい。
【0053】
あるいはまた、好ましくは前記モノクローナル抗体のフラグメントをエンコードするDNAをハイブリドーマ細胞から単離して哺乳動物に投与することができる。DNAは剥き出しの形態で投与しても、もしくは患者の細胞中でのDNAの発現および抗体の配送をもたらす方法で組換えベクター、例えばワクシニア・ウイルス中に挿入してもよい。
【0054】
本発明の方法に使用されるモノクローナル抗体は例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1985に記載のような製薬学的組成物の確立された任意の調製法により調製することができる。投与の容易性のためにモノクローナル抗体は典型的に製薬学的に許容できる担体と組み合わされるであろう。これらの担体には水、生理食塩水もしくは油が含まれる。
【0055】
非経口投与に適した調製物には、抗酸化剤、バッファー、殺バクテリア剤および調製物を意図される受容者の血液と等張にさせる溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射溶液並びに、懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。任意の通常の溶媒が有効成分および意図される使用法と非相容性である場合を除いて、任意の組成物中へのその使用が想定される。
【0056】
調製物は単位用量で、もしくは複数用量の容器、例えば、シールアンプルおよびバイアル中に提供され、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥(lyophilized))状態で貯蔵することができる。
略語
Abs 抗体、ポリクロナールもしくはモノクローナル
aV インテグリンサブユニットアルファV
b3 インテグリンサブユニットベータ3
bFGF 塩基性繊維芽細胞増殖因子
IFN インターフェロン
Ig 免疫グロブリン
IgG 免疫グロブリンG
IL インターロイキン
IL6 インターロイキン6
IL−6R インターロイキン−6受容体
sIL−6R 可溶性インターロイキン−6受容体
Mab モノクローナル抗体
VEGF 血管内皮細胞増殖因子
本発明を一般的な用語で説明してきたが、本発明の態様は以下の実施例において更に開示されるであろう。
【実施例1】
【0057】
インビボにおけるIL6誘導血管形成の実証
研究1において、原発的血管形成刺激はマトリゲルプラグに添加されたIL6であった。マウスはヒトもしくはネズミIL6を含む、および含まないマトリゲルの皮下注射を受けた(表1)。マトリゲルはそれが体温に到達するとゲル状のプラグを形成し、このプラグが動物の体内で安定である。
【0058】
【表1】
【0059】
液体マトリゲルを4℃に維持した。IL6を、記載された最終濃度までマトリゲルに添加し、完全に撹拌し、4℃で1晩貯蔵した。注射部位は最後の肋骨の後端約0.25インチ(0.63cm)背部側上に、そして背骨から両側に0.25インチに位置した。マウスにマトリゲル0.5mLを2個所に注射した。注射が適切に実施されない場合は、その部分は腫れた。
【0060】
Charles River(Raleigh,NC)から得た雌のヌード・マウス(生後4〜6週)を研究に使用した。Engelbreth−Holm−Swarm腫瘍から調製されたマトリゲルをBecton Dickinson(Bedford,MA)から入手した。C57抗体(CMVに特異的なヒトIgG)をCentocor(Malvern,PA)から入手した。ヒトIL6(hIL6)およびネズミIL6(mIL6)を購入した(R&D Systems,Minneapolis,MN)。研究の第1日目に、55匹マウスを11群にランダムに分類した(n=5/群)。マウスをケタマイン(80mg/kg、腹腔内)で麻酔した。動物にマトリゲル0.5mLを2カ所に注射した。7日目にマウスをCO2窒息により安楽死させた。プラグを外科的に切除し、秤量し、撮影し、血管形成を評価した。動物1匹当り2プラグをDrabkinキット(Sigma,ST Louis,MO)を使用してヘモグロビン含量を測定した。
【0061】
新生血管の総面積を測定するために、フェーズ3イメージシステム(Phase 3 Image System)と呼ばれるコンピューター化デジタイザーを使用した。倒立位相差顕微鏡の2×倍率対物レンズによりマトリゲルプラグ全体の上面および下面から撮影した。領域当りの血管の長さおよび数をフェーズ3イメージシステムのトレースプログラムを使用して計算した。マトリゲルプラグ全体のすべての写真からの平均値を平均からの標準偏差により計算した。
【0062】
ヘモグロビンを測定するためには、マトリゲルプラグを溶解バッファー(1%SDS、0.5%のトリトン)で溶解した。ゲルのヘモグロビン含量をDrabkin試薬キット(Sigma,ST Louis,MO)を使用して定量した。ゲル中のヘモグロビンの濃度はヘモグロビンの基準曲線から決定した。ヘモグロビン含量はマトリゲル1グラム当りのヘモグロビンのミリグラムとして表わした。平均±SEMはスチューデントの非対称(unpaired)テストを使用して計算し、p<0.05は統計的に有意であると考えられた。
マトリゲル中のIL6誘導血管形成
IL6を添加されないものを注射されたものに比較して、mIL6もしくはhIL6のいずれかを投与された摘出マトリゲルプラグ中には色彩および明らかに可視の血管の観察可能な相異が存在した。2倍拡大における顕微鏡写真は多数の血管の形成を証明した(示されていない)。ヒトおよびネズミIL6は双方とも、サイトカインを添加されないものに見られたものに比較してマトリゲルプラグ中のHb含量(図1、2)並びに血管の長さおよび血管数(図3〜6)を増加させた。血管密度およびHb含量に対する最大効果はヒトIL6およびネズミIL6に対して約200ng/mlの濃度においてであった(図1〜6)。IL6群の総Hb、血管の長さおよび血管数は常にIL6を添加しない群よりも有意に高かった(p<0.001)(図1〜6)。
【実施例2】
【0063】
抗−IL6のMabによるインビボの血管形成の阻止
研究2において、動物は表2に示すように、200ng/mlのヒトIL6でスパイクされたマトリゲルの注射直後に、cCLB8Mab、キメラCLB8とも呼ばれる抗−ヒトIL6(Centocor,Malvern,PA)、もしくは対照抗体(C57)のIV注射を受けた。研究の第1日目に42匹のマウスを7群にランダムに分類した(n=6/群)。マウスをケタマイン(80mg/kg、腹腔内)で麻酔した。動物にマトリゲル0.5mLを2カ所に注射した。抗体(もしくはベヒクル)をマトリゲル注射直後に注射した。7日目に、マウスをCO2窒息により安楽死させた。プラグは外科的に摘出し、秤量した。
【0064】
【表2】
【0065】
研究2は、記載された場合はマトリゲルを抗体とも混合し、氷上に維持したことを除いて、研究1に記載のものと同様な方法および材料を使用して実施した。
cCLB8が血管形成を阻止した
IL6はマトリゲルプラグ中の血管形成を誘導し、cCLB8はIL6により誘導された血管形成を減少させた。IL6を取り込んだマトリゲルプラグはIL6を含まないマトリゲルプラグより強い赤色を有し、C57のマトリゲルプラグはcCLB8のマトリゲルプラグより強度な色彩を有する。血管計数およびHb含量を使用することにより、結果はIL6がマトリゲルプラグ中の血管形成を有意に増加させ、cCLB8がマトリゲル中に含まれたかもしくはマトリゲルプラグ注入後にIV注射されたかにかかわらず、cCLB8はIL6により誘導された血管形成を有意に阻止したことを示した(図7〜9)。
【0066】
2×倍率のマトリゲルプラグの顕微鏡写真はIL6を添加されなかった対照と同様にcCLB8処理マウスからのプラグ中に血管の不在を明らかに示したが、他方C57で処理されたマウスからのプラグ中の血管はそれらの中に明らかに確認できる微小血管を有した。
【実施例3】
【0067】
cCLB8により逆転されたアポトーシスのIL6による抑制
CNTO95(αVβ3およびαVβ5インテグリンに特異的なヒトIgG)、C57(CMVに特異的なヒトIgG)およびCLB8をCentocor(Malvern,PA)で産生した。ヒトIL6(hIL6)をR&D Systems(Minneapolis,MN)から入手した。HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)をClonetics(Walkersville,MD)から購入した。HUVECを、10%FCS、長Rインシュリン−様増殖因子−1、アスコルビン酸、ヒドロコーチゾン、ヒトEGF、hVEGF、hFGF−b、硫酸ゲンタマイシンおよびアンホテリシン−Bを含有するEBM培地キット(Clonetics)中で培養した。細胞を37℃および5%CO2でインキュベートし、培地を2〜3日毎に交換した。すべての実験で継代3〜8を使用した。
【0068】
製造業者により推奨されたように、細胞死検出ELISAキット(Roche Diagnostics GmBH,Mannheim,ドイツ)によりDNAフラグメント化(fragmentation)を分析した。アッセイは、細胞溶解物中のモノ−およびオリゴヌクレオソームの検出を可能にする、DNAおよびヒストンを検出することができるマウスのMabを使用する定量的サンドイッチ−酵素−免疫アッセイである。細胞のアポトーシスは405nmにおける最終吸収に正比例する。すべての決定を3回実施した。
【0069】
CNTO 328(10μg/mL)を含んで、そして含まないで、IL6の存在下での3日間インキュベート後にDNAフラグメントをHUVEC細胞中で測定した。図10のDNAに示されたデータはIL6もしくはCNTO 328を含まない血清非含有培地中の細胞を100%と規定して、対照のパーセントトとして表わした3回測定値の平均±SDである。実験は、cCLB8がIL6の不在下でHUVEC中のDNAフラグメント化により測定されるアポトーシスを誘発させることができ、高濃度で見られるIL6の防御効果を逆転させることができることを示す。
【実施例4】
【0070】
HUVECのIL6誘導の移動
HUVECは前記の実施例で説明され、培養されたものである。HUVECSの準集密的24時間細胞培養物を血清非含有培地で1晩飢餓させ、トリプシン−EDTAで収集し、2回洗浄し、0.1%BSA含有の血清非含有培地中に再懸濁させた。細胞(100,000/500ミクロL)を上室に添加した。化学走化性細胞移動を容易にするために、0.1%BSAおよび異なる濃度のIL6もしくはcCLB8を含有する培地750ミクロLを下室に添加し、皿を組織培養インキュベーター中に入れた。特定の経過時間後に、綿スワブで上室内の細胞を取り出すことにより移動は終結された。フィルターを3%パラホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。細胞移動の程度を光学顕微鏡により測定し、映像をフェーズ3映像分析ソフトウェア(Glen Mills,PA)を使用して分析した。そのソフトウェアは、細胞移動の程度に正比例する、フィルターの下側上に染色された細胞により占められた総面積を分析する。染色されたトランスウェルを10%酢酸で染色を落とし、590nmの吸収を記録した。
【0071】
移動室フィルターの下側を0.5ミクロg/mLのビトロネクチンでコートし、方法の項で説明されたようにアッセイを実施した。細胞を6時間移動させた。移動室のフィルターの下側を0.5ミクロg/mLのビトロネクチンでコートし、方法の項で説明されたようにアッセイを実施した。細胞を6時間移動させた。各データの点は3個のトランスウェルフィルターの平均±SDである(図11〜12)。図11のデータは約100ng/mlで最大活性を伴う、IL−6に対するHUVEC細胞の用量依存性反応を示す。抑制する抗−IL6のMab、cCLB8の存在下で、移動量は抑制される。
【実施例5】
【0072】
内皮細胞のIL6誘導の生存に対する抗−IL6のMabの効果
HUVECは前記2実施例中で説明され培養されたものである。市販のキットを使用する同様なアッセイで細胞生存および増殖を測定した。端的には、96−ウェルのミクロプレートに6000個の細胞/ウェルを接種し、完全培養液を添加した。18時間後、細胞を2回すすぎ、血清非含有培地で24時間インキュベートした。次に組換えIL6および抗体を血清非含有培地に添加した。細胞を48時間培養した。細胞生存の程度をMTSキット(Promega,Madison,WI)により測定した。MTSアッセイに対しては、490nmで吸収を測定した。結果はIL6を含まない血清非含有培地中における細胞による値の百分率として表わされた。すべての測定を3個のウェルで実施した。これらの結果(図13)はIL6が限定された栄養条件下で内皮細胞の生存に対して直接的効果を有することを示す。このような状態は増殖している腫瘍および損傷された皮膚もしくは眼におけるような急速に新生血管形成している組織において認められる。
[要約]
本明細書に記載の実験は、IL6誘導血管形成および、IL6により刺激される内皮細胞の関連機能がgp130を含む受容体複合体をとおるIL6シグナル伝達を抑制する特別のMabにより減少され得ることを示す。
【0073】
血管形成の過程はそれがインビボの新規組織形成中に起る時にそして微細血管の増加した数および長さおよび増加したHb含量により測定されるようにヌード・マウスにおけるマトリゲルプラグ中で刺激された。主要な成分はラミニンであるが、マトリゲルはまた痕跡量の繊維芽細胞増殖因子、TGF−ベータ、組織プラスミノーゲンアクチベータおよびEHS腫瘍中に天然に存在するその他の増殖因子を含む。マトリゲルは幾つかの種類の腫瘍細胞侵入アッセイの基礎であり、血管形成の研究のために必要な基質を提供する。マトリゲルはマウスもしくはラットに皮下注射すると軟らかいゲルプラグを形成し、血管新生促進因子を補給される時に強力な血管反応を支持する。
【0074】
cCLB8はマトリゲル中に取り込まれると、マトリゲル中の血管形成を阻止した。
【0075】
実験結果はcCLB8の1回の注射がヌード・マウスのマトリゲルプラグモデルにおけるIL−6仲介の血管形成をほとんど完全に阻止した。更に、cCLB8はマトリゲルの注射後にそれをIV注射されると、マトリゲル中の血管形成を阻止した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ヒトIL6を添加されたヌード・マウス中に注入されたプラグ中で測定されヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグ(1プラグ/動物1匹)を表わし、ラインは平均を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析(two−tailed unpaired t−test analysis)によりすべてのIL−6群に対しp<0.001と計算された(0ng/mLのIL6に比較して)。
【図2】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中で測定されたヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグ(1プラグ/動物1匹)を表わし、ラインは平均を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりすべてのIL−6群に対しp<0.001と計算された(0ng/mLのIL6に比較して)。
【図3】ヒトIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均の長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均の長さ/観察(view)を表わし、ラインは10プラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ヒトIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図4】ヒトIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均血管数/観察(view)を表わし、ラインは10プラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ヒトIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図5】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均長さ/観察(view)を表わし、ラインは10プラグからの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ネズミIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図6】ネズミIL6を添加されたヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの平均血管数/観察(view)を表わし、ラインは10プラグからの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により対照群(0ng/mLのIL6)に比較して、ネズミIL6群に対しp<0.001と計算された。
【図7】ヒトIL6添加されそして抗体を伴いもしくは伴わないヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均数を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの1観察当りの微細血管を表わし、ラインはプラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりIL6−C57対照群に比較して、IL6−cCLB8群に対しp<0.001と計算された。
【図8】ヒトIL6添加されそして抗体を伴いもしくは伴わないヌード・マウスに注入されたプラグ中の微細血管の平均長さを表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグからの1観察当りの平均の長さを表わし、ラインはプラグの平均(2プラグ/動物1匹)を表わす。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析によりIL6−C57対照群に比較して、IL6−cCLB8群に対しp<0.001と計算された。
【図9】マトリゲルプラグ中のヘモグロビン濃度を表わすデータの点を示すグラフである。各点は1マトリゲルプラグを表わし、ラインはプラグの平均を表わす。ヒトIL6を200ng/mLでマトリゲル中に取り込んだ。ツー・テイルド アンペアードt−試験分析により、IL6−C57群に比較して、すべてのIL6−cCLB8に対しp<0.001と計算された。
【図10】ヒト血管内皮細胞中におけるIL6誘導アポトーシスに対するcCLB8の効果を示す棒グラフである。データは対照(hIL6を添加されない細胞)のパーセントとして表わされた3回の測定値の平均±SDである。
【図11】IL6の存在下でビトロネクチンに対するIL6濃度と、HUVECおよびU373の移動間の関係を示すグラフである。各データの点は3測定値の平均±SDであり、すべてはIL6を添加されないものに対比される。
【図12】IL6の存在下でのビトロネクチンに対するHUVECの移動が抗−IL6のMab、cCLB8により緩和され得ることを示す棒グラフである。各データの点は3個の移行トランスウェルフィルターの平均±SDである。
【図13】48時間後に血清非含有培地中で細胞生存を高めるためのHUVECに対するIL6の能力を示すグラフである。データは生存の増加パーセントとして表わされた、3回の測定値の平均±SDであり、IL6を含まない血清非含有培地は生存の0%増加を表わす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における血管形成を阻止するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達(signaling)のIL6活性化を抑制するIL−6アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における血管形成−依存性疾患の処置方法。
【請求項2】
IL−6アンタゴニストがIL−6モノクローナル抗体もしくはそのフラグメントである請求項1の方法。
【請求項3】
抗体フラグメントがFab、Fab’もしくはF(ab’)2フラグメントまたはそれらの誘導体である請求項2記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体がヒトIL6に結合するためにモノクローナル抗体のcCLB8と競合する請求項2記載の方法。
【請求項5】
モノクローナル抗体が静脈内投与される請求項2記載の方法。
【請求項6】
モノクローナル抗体が0.05mg/体重1kg〜12.0mg/体重1kgの量で投与される請求項2記載の方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体が瞬時投与(a bolus dose)で、次に該抗体の注入(infusion)により投与される請求項2記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物がヒトの患者である請求項1記載の方法。
【請求項9】
該モノクローナル抗体ががんを処置する請求項2記載の方法。
【請求項10】
血管形成−依存性疾患ががん転移、血管腫、血管繊維腫、糖尿病性網膜症、早産幼児網膜症、新生血管緑内障、血管形成により誘発される角膜疾患、退縮斑、黄斑変性症、翼状片、網膜変性症、水晶体後繊維増殖症、顆粒性結膜炎、乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、アクネおよび関節炎から成る群から選択される疾患である請求項1の方法。
【請求項11】
該血管形成依存性疾患が慢性関節リウマチ、黄斑変性症、乾癬、糖尿病性網膜症から成る群から選択される炎症性疾患である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該血管形成依存性疾患が乾癬、静脈潰瘍、アクネ、しゅさ、こぶ、湿疹、血管腫およびリンパ管形成から成る群から選択される血管形成性皮膚障害である請求項1記載の方法。
【請求項13】
該血管形成依存性疾患が角膜もしくは網膜新生血管形成を伴う障害である請求項1記載の方法。
【請求項14】
腫瘍の増殖を阻止するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における腫瘍増殖の阻止方法。
【請求項15】
哺乳動物の腫瘍の増殖を抑制するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における腫瘍増殖の抑制方法。
【請求項16】
哺乳動物の転移を抑制するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における転移の抑制方法。
【請求項17】
抗体がcCLB8もしくはそのフラグメントである請求項2、13、14もしくは15のいずれかの方法。
【請求項18】
抗体が第2の抗血管形成剤と組み合わせて投与される請求項1、13、14もしくは15のいずれかの方法。
【請求項19】
第2の抗血管形成剤がアルファVを含有する接着分子に特異的に結合することができるMabである請求項17の方法。
【請求項1】
哺乳動物における血管形成を阻止するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達(signaling)のIL6活性化を抑制するIL−6アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における血管形成−依存性疾患の処置方法。
【請求項2】
IL−6アンタゴニストがIL−6モノクローナル抗体もしくはそのフラグメントである請求項1の方法。
【請求項3】
抗体フラグメントがFab、Fab’もしくはF(ab’)2フラグメントまたはそれらの誘導体である請求項2記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体がヒトIL6に結合するためにモノクローナル抗体のcCLB8と競合する請求項2記載の方法。
【請求項5】
モノクローナル抗体が静脈内投与される請求項2記載の方法。
【請求項6】
モノクローナル抗体が0.05mg/体重1kg〜12.0mg/体重1kgの量で投与される請求項2記載の方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体が瞬時投与(a bolus dose)で、次に該抗体の注入(infusion)により投与される請求項2記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物がヒトの患者である請求項1記載の方法。
【請求項9】
該モノクローナル抗体ががんを処置する請求項2記載の方法。
【請求項10】
血管形成−依存性疾患ががん転移、血管腫、血管繊維腫、糖尿病性網膜症、早産幼児網膜症、新生血管緑内障、血管形成により誘発される角膜疾患、退縮斑、黄斑変性症、翼状片、網膜変性症、水晶体後繊維増殖症、顆粒性結膜炎、乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、アクネおよび関節炎から成る群から選択される疾患である請求項1の方法。
【請求項11】
該血管形成依存性疾患が慢性関節リウマチ、黄斑変性症、乾癬、糖尿病性網膜症から成る群から選択される炎症性疾患である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該血管形成依存性疾患が乾癬、静脈潰瘍、アクネ、しゅさ、こぶ、湿疹、血管腫およびリンパ管形成から成る群から選択される血管形成性皮膚障害である請求項1記載の方法。
【請求項13】
該血管形成依存性疾患が角膜もしくは網膜新生血管形成を伴う障害である請求項1記載の方法。
【請求項14】
腫瘍の増殖を阻止するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における腫瘍増殖の阻止方法。
【請求項15】
哺乳動物の腫瘍の増殖を抑制するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における腫瘍増殖の抑制方法。
【請求項16】
哺乳動物の転移を抑制するのに有効な量の、膜結合受容体を介してシグナル伝達のIL6活性化を抑制するモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントを哺乳動物に投与することを含んで成る、処置を必要とする哺乳動物における転移の抑制方法。
【請求項17】
抗体がcCLB8もしくはそのフラグメントである請求項2、13、14もしくは15のいずれかの方法。
【請求項18】
抗体が第2の抗血管形成剤と組み合わせて投与される請求項1、13、14もしくは15のいずれかの方法。
【請求項19】
第2の抗血管形成剤がアルファVを含有する接着分子に特異的に結合することができるMabである請求項17の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−516957(P2006−516957A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553548(P2004−553548)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/035651
【国際公開番号】WO2004/045507
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/035651
【国際公開番号】WO2004/045507
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
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