説明

IL15−Rα用IL−15結合部位およびアゴニスト/アンタゴニスト活性を有する特異的IL−15突然変異体

【課題】IL−15Rαに対するヒトIL−15結合部位の同定方法、およびIL−15R受容体複合体にそのIL−15特異性を付与する鎖を標的にするIL−15アゴニストおよびアンタゴニストの提供。
【解決手段】インターロイキン−15受容体α鎖への結合を担う、ヒトインターロイキン−15(IL−15)のエピトープの形成には2個のIL−15領域が関与する。Bヘリックスに位置する配列に対応する第1領域(44LLELQVISL52、ペプチド1)、およびヘリックスCに位置する配列に対応する第2領域(64ENLII68、ペプチド2、または64ENLIIL69、ペプチド2a)である。アゴニストまたはアンタゴニスト特性を示すムテインは、治療剤として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−15Rαに対するヒトIL−15結合部位の同定について記載している。本発明はまた、IL−15Rα鎖、すなわち、IL−15R受容体複合体にそのIL−15特異性を付与する鎖を標的にするIL−15アゴニストおよびアンタゴニストも提供する。
【0002】
本出願では、様々な科学刊行物について述べられている。これらの刊行物は、特許請求の範囲前の実施例部分の最後に収載される。刊行物の参照は、括弧内の番号として出願書類中になされ、この番号は刊行物一覧中の番号に対応する。
【0003】
背景技術
インターロイキン−15(IL−15)が、マウスT細胞系の増殖を支持する際の、IL−2に代わりうる新規なサイトカインとして同定された(1、2)。両サイトカインは、4個のαヘリックスバンドルファミリー(3)に属する。IL−15は、当初、活性化したT細胞(1)およびNK細胞(2、4)による増殖と細胞毒性の誘発、B細胞増殖および免疫グロブリン合成の同時刺激(5)、ならびにT細胞の化学誘引(6)を含め、インビトロでIL−2によって引き出されるインビトロ活性の大部分を模倣することが判明した。この重複をIL−2Rβ/γシグナル伝達複合体のその機能性受容体内での一般的使用によって説明する。
【0004】
このIL−2Rβ/γ複合体は、IL−2およびIL−15の一般的な中程度親和性受容体(Kd=1nM)であり、両サイトカインはこの受容体に結合するために競合している(7)。サイトカイン特異性は、構造的に関連する別の個々の鎖、IL−2RαおよびIL−15Rαによって付与される(8)。これらの2本の鎖は、幾つかの補体分子および付着性分子に以前に見出されている(スシドメインと呼ばれる)構造ドメインを含む(9)。IL−2Rαは、そのようなドメインを2個含むが、IL−15Rαは1個しか含まない。1つの顕著な差は、IL−15のIL−15Rαへの親和性(Kd=0.05nM)よりはるかに低い親和性(Kd=10nM)によって、IL−2はその特異的IL−2Rαに結合することである。それぞれの特異的鎖は、IL−2Rβ/γ複合体と結合して、サイトカイン特異的機能性高親和性(αβγ)受容体を形成することができる(10〜12)。
【0005】
このIL−2Rβ/γ複合体を共有しているために、両サイトカインは、Jak−1/Jak−3チロシンキナーゼの活性化、続くリン酸化されたStat−3およびStat−5の核移行、LckおよびSykチロシンキナーゼの活性化、MAPキナーゼ経路の活性化、およびBcl−2の誘発を含め、類似する下流シグナル経路を誘発する(13、14)。シグナル伝達に必要であるIL−2RβおよびIL−2Rγとは対照的に、特異的受容体IL−2RαおよびIL−15Rαは、短い細胞内テール(それぞれ、13および41アミノ酸)を有し、IL−2Rαはシグナル伝達には役立たないと見なされている。初期研究では、シグナル伝達においてIL−15Rα細胞内テールの役割は不必要であることが指摘されているが(8)、より近年のデータでは、IL−15Rαが何らかの細胞内機能を介在しうることが示唆されている(15〜17)。
【0006】
インビトロで観察された全体的な機能余剰とは対照的に、数個の知見はインビボでのIL−2およびIL−15の相補的作用および反対作用さえ示している。実際、IL−2およびIL−2Rα遺伝子発現は主として活性化T細胞区画に限定されるが、IL−15およびIL−15Rα転写物は様々な細胞型および組織(単球、樹状細胞および間質細胞、ケラチノサイト、胎盤、骨格筋、心臓)によって発現し、免疫系を超えたIL−15系の別の役割を示唆している(7、8)。IL−2Rβおよび/またはIL−2Rγの非存在下でIL−15Rαを発現する細胞は記載されており、それらの幾つかはIL−15に応答し(17、18)、IL−2Rβおよび/またはIL−2Rγが関与しない、新規な機能性IL−15受容体複合体の存在を示唆していた。
【0007】
IL−2およびIL−15の異なる役割は、ノックアウトマウスの実験からも示唆される。IL−2−/−およびIL−2Rα−/−マウスは、自己免疫の出現に関連する、悪化したT細胞およびB細胞の増加を発症するが、それとは反対にIL−15−/−およびIL−15Rα−/−マウスは正常なT細胞およびB細胞集団を有し、NK細胞、NK−T細胞、上皮内リンパ球およびCD8メモリーT細胞に顕著な欠陥を示す(19、20)。近年の研究は、インビトロで得られた結果に反して、インビボでのIL−2の主要な役割は活性化T細胞の連続的増加を制限することであること示唆し、それに対してIL−15はT細胞分裂の開始に重大な意味を持つ(21)。
【0008】
いくつかの研究は、IL−15系を標的とすることが臨床的に適切であり潜在的に有益である、ヒト疾患の同定に貢献してきた。それらの中には、自己免疫疾患および炎症性疾患、伝染病、移植拒絶、癌および免疫不全症がある(22、23)。この意味において、IL−15/受容体系のアゴニストまたはアンタゴニストの合理的な設計は、主要な関心であり、高親和性IL−15受容体複合体の構造の正確な知識が必要とされる。
【0009】
いくつかのヒトおよびマウスIL−2変異誘発研究では、IL−2Rα、β、およびγ鎖への結合に関与する数個の残基が同定されている。これらの研究から、全てヒトIL−2のA−Bループに位置する残基K35、R38、F42、およびK43はIL−2Rα鎖への結合に関与するが、ヘリックスAの残基D20およびヘリックスCのN88はIL−2Rβ鎖への結合に関与し、ヘリックスDのQ126はIL−2Rγ鎖への結合に重要である(24〜26)。同様の領域は、マウスIL−2にも同定された(27)。
【0010】
これに反して、異なるIL−15受容体への結合に関与するIL−15の残基に関してデータはほとんど得られない。
【0011】
ヒトIL−2について記載された変異に類似するヒトIL−15のいくつかの変異(D8およびQ108)は、IL−15の対応する領域が、それぞれIL−2Rβおよびγサブユニットへの結合に関与することを示唆している(28)。
【0012】
本発明は、IL−15Rα鎖高親和性結合を担うIL−15のエピトープを限定するために、リガンド受容体の相互作用分析、生物活性の誘発、ペプチドスキャニング、および部位特異的突然変異誘発を含め、様々な相補的な手法に従う。
【0013】
発明の開示
本発明は、IL−15Rα鎖高親和性結合を担うヒトIL−15エピトープを提供する。このIL−15/IL−15−Rαエピトープは、実質的には、2個のペプチド:IL−15ヘリックスBに位置するペプチド1(44LLELQVISL52:図1B配列番号4)、およびヘリックスCに位置するペプチド2(64ENLII68:図1B配列番号6)もしくはペプチド2a(64ENLIIL69:図1B配列番号67)に存在する。
【0014】
本出願では、残基番号は全て、成熟ヒトIL−15タンパク質の全配列(図1A配列番号2)の参照によってコンピューター処理される。
【0015】
ペプチド1およびペプチド2もしくは2aは、IL−15のIL−15Rα高親和性結合を担うエピトープ表面を一緒になって構成する。ペプチド2および2aは、IL−2Rβ形質導入サブユニットの動員にも関与する。
【0016】
本発明は、IL−15アゴニストおよびアンタゴニスト、より具体的には突然変異によって前記エピトープペプチドから得られる、IL−15アゴニストおよびアンタゴニストも提供する(図2A、2B、2C、2D、9、10を参照)。
【0017】
好ましいアゴニストには、L45、S51、およびL52の少なくとも1個が荷電基(D、E、R、またはK)により置換されているようなムテインが含まれる。図2Aおよび2C参照。特に好ましいアゴニストには、DまたはEにより置換されているL45、および/またはDにより置換されているS51、および/またはDにより置換されているL52が含まれ、すなわち、これらのIL−15ムテインは、野生型IL−15のものより高い結合特性および生物学的特性を示し、それによってスーパーアゴニストとして挙動する。これらは、リンパ球サブセット(例えば、NK細胞、NK−T細胞、CD8メモリーT細胞)を増加するための特に貴重なツールであり、癌または免疫不全症患者で治療剤として有用である。
【0018】
好ましいアンタゴニストには、E64、I68、L69、およびN65の少なくとも1個が反対荷電基(KまたはR)により、または荷電基(D、E、R、またはK)により置換されているようなムテインが含まれる。図2Bおよび2D参照。特に好ましいアンタゴニストには、荷電基(D、E、R、またはK)、例えばKによって変異を受けたN65が含まれる。これらのムテインは、アンタゴニストまたは潜在的アンタゴニストであり、従ってIL−15が重要な役割を果たすと思われるリューマチ性関節炎や全身性Shwartzman反応など、炎症状態または疾患で有用であろう(22)。
【0019】
本発明は、IL−15ムテインの産生方法、これらのムテインをコードする核酸、そのような核酸を含むトランスフェクションベクターおよび宿主細胞、ならびにIL−15アゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニング法にも関する。
【0020】
そのようなムテインを含む薬物など、これらのエピトープペプチドおよびムテインの生物学的または医学的応用も本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A−1】ヒトIL−15遺伝子配列(配列番号1)、およびそのCDS開始位置と停止位置、ならびにヒト成熟IL−15タンパク質の配列(配列番号2)を示す図である。ペプチド1(L44〜L52)、ペプチド2(E64〜I68)およびペプチド2a(E64〜L69)を太字で示す。
【図1A−2】ヒトIL−15遺伝子配列(配列番号1)、およびそのCDS開始位置と停止位置、ならびにヒト成熟IL−15タンパク質の配列(配列番号2)を示す図である。ペプチド1(L44〜L52)、ペプチド2(E64〜I68)およびペプチド2a(E64〜L69)を太字で示す。
【図1B】ペプチド1:L44〜L52のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号3および配列番号4)、ペプチド2:E64〜I68のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5および配列番号6)、ならびにペプチド2a:E64−L69のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号66および配列番号67)を示す図である。
【図2A】ペプチド1(L44〜L52:配列番号4)の配列、およびIL−15アゴニスト活性を有し、ペプチド1に由来する幾つかのムテイン(配列番号7〜18)を示す図である。
【図2B】ペプチド2の配列(E64〜I68:配列番号6)、およびIL−15アンタゴニストまたは部分アゴニストであり、ペプチド2に由来する幾つかのムテイン(配列番号19〜28)を示す図である。
【図2C−1】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2C−2】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2C−3】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2C−4】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2C−5】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2C−6】ヒト成熟野生型IL−15の、残基45(配列番号29〜32)、または残基51(配列番号33〜36)、または残基52(配列番号37〜40)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2D−1】ヒト成熟野生型IL−15の、残基64(配列番号41〜42)、または残基65(配列番号43〜46)、または残基68(配列番号47〜50)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2D−2】ヒト成熟野生型IL−15の、残基64(配列番号41〜42)、または残基65(配列番号43〜46)、または残基68(配列番号47〜50)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2D−3】ヒト成熟野生型IL−15の、残基64(配列番号41〜42)、または残基65(配列番号43〜46)、または残基68(配列番号47〜50)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2D−4】ヒト成熟野生型IL−15の、残基64(配列番号41〜42)、または残基65(配列番号43〜46)、または残基68(配列番号47〜50)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図2D−5】ヒト成熟野生型IL−15の、残基64(配列番号41〜42)、または残基65(配列番号43〜46)、または残基68(配列番号47〜50)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図3】sIL−15Rα−IL−2のIL−15 12−merペプチド結合の分析を示す図である。A:ヒトIL−15のアミノ酸配列全体にかかる12−merのペプチドをマルチウェルプレートに固定し、示すようにその異なる分子との反応性を試験した。各サブパネルの左側はIL−15のN末端12−merのペプチドに対応する。sIL−15Rα−IL−2融合タンパク質(20μg/mlすなわち330nM)またはrIL−2(5μg/mlすなわち330nM)をインキュベートし、ヤギAF-202-NA抗ヒトIL−2抗体にペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギIgGを加えたものでその結合が判明した。各ウェルの反応性(縦座標、任意スケール)を実験手順に記載されるように測定する。B:sIL−15Rα−IL−2によって認識されるヒトIL−15ペプチド領域は、IL−15の一次構造上に位置する。4個のαヘリックスを示す。
【図4A】FLAG−IL−15および突然変異体のIL−15Rα親和性の定量を競合結合の研究によって示す図である。TF−1細胞を固定濃度(80pM)の[125I]−rlL−15、ならびに(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体で平衡化した。図4A:WT(■)、L45D(◆)、L45E(◇)、E46K(σ)
【図4B】FLAG−IL−15および突然変異体のIL−15Rα親和性の定量を競合結合の研究によって示す図である。TF−1細胞を固定濃度(80pM)の[125I]−rlL−15、ならびに(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体で平衡化した。図4B:WT(■)Q48K(□)、V49D(◆)、I50D(◇)、S51D(σ)、L52D(△)
【図4C】FLAG−IL−15および突然変異体のIL−15Rα親和性の定量を競合結合の研究によって示す図である。TF−1細胞を固定濃度(80pM)の[125I]−rlL−15、ならびに(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体で平衡化した。図4C:WT(■)E64K(□)、N65K(◆)、L66D(◇)、L66E(σ)、I67D(△)、I67E(●)、I68D(○)、
【図5A】TF−1β細胞におけるFLAG−IL−15および突然変異体の増殖活性を示す図である。TF−1β細胞を(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体の存在下で培養した。細胞増殖は、[H]−チミジンの取込みを測定することによって評価した。図5A:WT(■)、L44D(□)、L45D(◆)、L45E(◇)、E46K(σ)、L47D(△)
【図5B】TF−1β細胞におけるFLAG−IL−15および突然変異体の増殖活性を示す図である。TF−1β細胞を(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体の存在下で培養した。細胞増殖は、[H]−チミジンの取込みを測定することによって評価した。図5B:WT(■)Q48K(□)、V49D(◆)、I50D(◇)、S51D(σ)、L52D(△)
【図5C】TF−1β細胞におけるFLAG−IL−15および突然変異体の増殖活性を示す図である。TF−1β細胞を(横座標に示す)上昇濃度のFLAG−IL−15野生型(WT)または突然変異体の存在下で培養した。細胞増殖は、[H]−チミジンの取込みを測定することによって評価した。図5C:WT(■)、E64K(□)、N65K(◆)、L66D(◇)、L66E(σ)、I67D(△)、I67E(●)、I68D(○)
【図6】Flag−IL−15および突然変異体のIL−15Rα親和性の定量を競合結合の研究によって示す図である。TF1細胞を固定濃度(80pM)の125I−rIL−15、ならびに上昇濃度の野生型Flag−IL−15または突然変異体L69RとE46Kで平衡化した。図4Aに記載した通り、特異的rIL−15細胞結合を算出しプロットした。
【図7】TF−1β細胞におけるFlag−IL−15および突然変異体の増殖活性を示す図である。TF−1β細胞を上昇濃度のFLAG−IL−15野生型または突然変異体(L69R)の存在下で培養した。細胞増殖は、[H]チミジンの取込みを測定することによって評価した。標準偏差は小さく記号によって隠れている。
【図8】A41の存在下、IL−15により誘発されたTF−1β細胞の増殖に及ぼすN65KのFlag−Il−15突然変異体の効果を示す図である。細胞増殖は、[H]チミジンの取込みを測定することによって評価した。66nMの抗IL−2Rβ A41 mAbの存在下、固定濃度の10pMのr−IL−15(対照)および親和性により精製した上昇濃度のFlag−IL−15N65Kと共に細胞を培養した。負の対照は、トランスフェクションしていない293−EBNA細胞から条件培地をアフィニティ精製することよって調製し、Flag−IL−15N65Kと同じ希釈で生物アッセイに導入した。
【図9】ペプチド2の配列(E64−L69:配列番号67)、およびIL−15アンタゴニスト候補(部分アゴニスト)であり、ペプチド2に由来する幾つかのムテイン(配列番号68〜81)を示す図である。
【図10−1】ヒト成熟野生型IL−15の残基69(配列番号82〜85)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【図10−2】ヒト成熟野生型IL−15の残基69(配列番号82〜85)を置換することによって得られる、本発明の幾つかのIL−15ムテインの配列を示す図である。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、IL−15Rα鎖への高親和性結合を担う、IL−15のエピトープの同定について記載している。このエピトープは、2個のペプチド、すなわち、配列番号4のペプチド1、および配列番号6のペプチド2もしくは配列番号67のペプチド2a(図1B参照)によって本質的に形成される。ヒト成熟野生型IL−15では、ペプチド1は、ヘリックスBに位置し、ペプチド2およびペプチド2aは、ヘリックスCに位置する(図3B参照)。
【0023】
ペプチド1およびペプチド2と2aの部位特異的突然変異誘発は、これらのペプチドがIL−15Rα結合に関与することを示している。
【0024】
驚くべきことに、位置L45、S51、およびL52(ペプチド1)での突然変異は、結合活性および生物活性の減少ではなく上昇をもたらし、その結果、得られた突然変異体はスーパーアゴニストとして挙動するようになった。これらは、リンパ球サブセット(例えば、NK細胞、NK−T細胞、CD8メモリーT細胞)を増加させるための貴重なツールであり、癌または免疫不全症患者で治療剤として使用することができる。
【0025】
ペプチド2および2aの部位特異的突然変異誘発は、ペプチド2および2aがIL−15RαおよびIL−2Rβの結合に関わり、ペプチド2および2a(E64〜I68およびL69)のアミノ酸は全て、この過程に関与することを示す。より具体的にはL66およびI67は、明らかに、IL−15Rαに結合するIL−15により関与し、それに対してE64、N65、I68、およびL69は明らかにIL−15Rβの動員により関与する。位置E64、N65、I68、およびL69での変異は、得られた突然変異体を潜在的IL−15アンタゴニストとして意味付ける特性を誘発し、より具体的には突然変異体はIL−15アンタゴニスト(N65)または部分アゴニスト(E64、I68、L69)として挙動する。それらは、リューマチ性関節炎および全身性Shwartzman反応のような炎症性疾患で使用することができる。
【0026】
IL−15RαへのこれらのIL−15エピトープペプチド結合を干渉する化合物は、IL−15アゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる。このIL−15Rα鎖は、IL−15R受容体複合体の特異性をIL−2と比較してIL−15に授けるサブユニットなので、そのようなアゴニストおよびアンタゴニストは特異性の点で特に有利である。
【0027】
本出願は、そのようなアゴニストおよびアンタゴニスト化合物を対象とし、特に、そのようなアゴニストまたはアンタゴニスト作用を有するムテインについて記載する。
【0028】
本明細書では、アゴニストおよびアンタゴニストの語に当分野における、それらの通常の意味を与えている。
【0029】
化合物が、ネイティブIL−15によって誘発される生物学的応答と同様の、またはより高レベルの生物学的応答を誘発する場合、それをIL−15アゴニストと称する。好ましいアゴニストは、よりさらに高レベルの生物学的応答を誘発するアゴニスト(スーパーアゴニスト)である。
【0030】
典型的には、IL−15アゴニストは、少なくともネイティブIL−15の結合親和性と著しい差異がなく、ネイティブIL−15の結合親和性よりも著しく高いことが好ましいIL−15Rα結合親和性を有する。
【0031】
アンタゴニストは、アンタゴニストがIL−15生物活性を拮抗するように、その標的受容体または受容体鎖へのIL−15の結合に干渉する。より具体的には、化合物がそのIL−15Rαおよび/またはIL−15−Rβおよび/またはIL−15−Rγ受容体鎖標的と結合し、該ネイティブIL−15によってその上で誘発される生物学的応答を阻止し、または著しくこれを阻害するために、ネイティブIL−15と競合することができる場合、これをIL−15アンタゴニストと称する。従って、本明細書では部分アゴニストは用語「アンタゴニスト」のうちに包含される。アンタゴニスト候補は、IL−15Rαおよび/またはIL−15Rβおよび/またはIL−15Rγに、ネイティブIL−15の親和性と著しく異なることも、または高いこともなく、かつ生物学的応答を誘発しない、またはネイティブIL−15よりも著しい低レベルの生物学的応答を誘発する結合親和性を有する化合物である。
【0032】
前記生物学的応答は、IL−15によって誘発された生物学的応答である。当業者は、評価またはモニターするのに適当または好都合であると判明した任意のIL−15誘導可能生物学的応答を選択することができる。
【0033】
典型的なIL−15誘導可能生物学的応答は、例えば、CTL−L2マウス細胞障害性Tリンパ腫細胞系(ATCCアクセッション番号TIB−214)またはTF1−β細胞など、IL−15感受性細胞の増殖である。
【0034】
TF−1細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd.; Manassas, Virginia 20110-2209; U.S.A.から入手することができる。http://www.lgcpromochem.com/atcc/にてATCCアクセッション番号CRL−2003参照。
【0035】
β鎖テンプレートは、ヒトIL−2Rβ配列(NCBIアクセッション番号K03122)に従って、プルーフリーディングポリメラーゼPfu(Stratagene NO. 600390)、ならびにセンスプライマーとして
【0036】
【表1】

【0037】
(配列番号51)、およびアンチセンスプライマーとして
【0038】
【表2】

【0039】
(配列番号52)を使用し、RT−PCRによりHuT102(ATCC TIB−162)またはJurkat clone E6.1(ATCC TIB 152)のRNAから得ることができる。Zero Blunt PCR Cloning Kit(In Vitrogen Cat. NO. K2700-20)またはTOPO XL PCRクローニングキット(In Vitrogen Cat. NO. K4750-10)を使用し、PCR産生物を効率よくクローン化する。次いで、組換えレトロウイルスを発生させるキットに記載されているように、IL−2Rβ遺伝子のcDNAをPantropic Retroviral Expression System(BD Biosciences Clontech NO. 631512)のpLXRNレトロウイルス発現ベクターのマルチクローニング部位中にサブクローン化し、GP2−293細胞中にトランスフェクションする。次いで、IL−2Rβ組換えレトロウイルスを使用してTF−1細胞を感染させ、G418含有培地で選択した後、TF−1βを発生させることができる。
【0040】
あるいは、当業者は、チロシンキナーゼ(例えば、Jak−1/Jak−3、Lck、Syk)の活性化、MAPキナーゼの活性化、または核移行事象(例えば、リン酸化されたStat−3および/またはStat−5の移行)など、シグナル経路のさらに下流にあるIL−15生物学的応答を評価し、またはモニターすることを選択しうる。次いで、生物学的応答は無細胞応答であってもよい。
【0041】
従って、本出願は、IL−15のIL−15Rα鎖高親和性結合を担う、ヒトIL−15のエピトープの一部である3種のペプチド関する。これらは、それぞれ、ヒト成熟野生型IL−15のL44〜L52領域の配列(配列番号4)、またはヒト成熟野生型IL−15のE64〜I68領域の配列(配列番号6)、またはヒト成熟野生型IL−15のE64〜L69領域の配列(配列番号67)を有する。図1B参照。
【0042】
そのようなエピトープペプチドをコードする核酸(DNAまたはRNA)もまた、本発明の範囲内に含まれる。核酸の例には、配列番号3、配列番号5および配列番号66(図1B参照)の核酸が含まれる。
【0043】
所与のペプチドまたはタンパク質に結合する抗体の産生方法は、当業者によく知られており、例えば、"Antibodies: a laboratory manual"、Ed Harlow, David Lane編、 Cold Spring Harbor Laboratory出版、1988を参照されたい。さらに、常法に従って実現したものは、モノクローナル抗体の産生であり、例えば、Kohler and Milstein 1975, Nature 256:495-497に記載されているハイブリドーマ技術を参照されたい。
【0044】
これらの方法は、本発明のエピトープペプチドおよび/またはムテインに結合する抗体、より具体的にモノクローナル抗体の産生に使用することができる。
【0045】
様々なイムノアッセイ型式を使用して、特定のタンパク質に特異的に免疫反応する抗体を選択しうる。例えば、固相ELISAイムノアッセイを常法に従って使用し、タンパク質に特異的に免疫反応する抗体を選択する。特異的免疫活性を定量するために使用することができるイムノアッセイ型式および条件についての記載は、例えば、"Antibodies: a laboratory manual"(Ed Harlow, David Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory出版、1988)を参照されたい。所定の特異性を備える抗体またはモノクローナル抗体は、このようにして産生することができる。
【0046】
有利な抗IL−15抗体またはモノクローナル抗体は、アゴニストまたはアンタゴニストIL−15特性を有するものである。
【0047】
本発明はまた、本発明のエピトープペプチドから導き出しうるIL−15ムテインおよびIL−15ムテインフラグメントに関する。
【0048】
従って、本出願は、残基44〜残基52、および/または残基64〜残基68、および/または残基64〜残基69にかかる領域内(該領域の全終点残基を明白に含む)の少なくとも1つの置換、欠失、または付加によって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテインに関し、この残基番号はヒト成熟野生型IL−15に対応する(そしてヒト成熟野生型IL−15の残基番号として維持される)。
【0049】
好ましくは、突然変異から得られたIL−15ムテインが、ヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならない、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を有するように、変異は親和性を保存し、または親和性を亢進する。
【0050】
ヒト成熟野生型IL−15から出発する場合、好ましくは、残基E46およびI50は変異させるべきではない。それらの残基によってIL−15Rα親和性の減少が誘発されやすくなるからである。
【0051】
同等のムテインは、特にヒトではないが動物成熟野生型IL−15など、他の成熟野生型IL−15から導き出すことができ、より具体的には、ヒトではないが哺乳動物成熟野生型IL−15、例えば、サルの、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはイヌIL−15から導き出すことができる。
【0052】
置換は、例えば、L、V、およびIから選択した少なくとも1つの疎水性側鎖の置換;D、E、R、およびKから選択した荷電基によるS、Q、およびNから選択される少なくとも1つの非荷電極性側鎖の置換;ならびに/あるいはKおよびRから選択した反対荷電基によるEから選択される少なくとも1つの電荷極性側鎖の置換であってよい。
【0053】
本発明は、IL−15アゴニストまたはスーパーアゴニストであるIL−15ムテインをさらに提供する。
【0054】
好ましいアゴニストムテインは、残基45、51、52の少なくとも1個を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含む。
【0055】
ヒト成熟野生型IL−15では、残基45はL、残基51はS、そして残基52はLである(図1A配列番号2を参照)。
【0056】
本発明は、特に、D、E、K、またはRにより、好ましくはDまたはEにより残基45を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテインを提供する。これらには、特に、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10の配列により、残基44〜残基52にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、それぞれ、配列番号29、配列番号30、配列番号31、または配列番号32(図2C参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいアゴニストムテインには、配列番号29または配列番号30(図2C参照)の配列を含むようなムテインが含まれる。
【0057】
他の好ましいIL−15アゴニストムテインには、D、E、K、またはRにより、好ましくはDにより残基51を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14の配列により、残基44〜残基52にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、それぞれ、配列番号33、配列番号34、配列番号35、または配列番号36(図2C参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいアゴニストムテインには、配列番号33の配列(図2C参照)を含むものが含まれる。
【0058】
さらに、他の好ましいIL−15アゴニストムテインには、D、E、K、またはRにより、好ましくはDにより残基52を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18の配列により、残基44〜残基52にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、それぞれ、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40(図2C参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいアゴニストムテインには、配列番号37(図2C参照)の配列を含むものが含まれる。
【0059】
ペプチド1の部位特異的突然変異誘発は、L45、E46、V49、S51、およびL52がIL−15Rα結合に関与し、E46が重要であることを示す。その酸性側鎖を塩基性側鎖(E46K)により置換することによって、IL−15のIL−15Rα結合と生物活性が完全に消失するからである。位置I50(I50D)での変異によって、IL−15のIL−15Rα結合能力および細胞増殖誘発能は非常に低減された。負荷電側鎖(V49D)によりV49の疎水性側鎖を置換することによってもIL−15のIL−15Rα親和性は非常に減少(1/13倍)した。
【0060】
従って、E46K、V49D、またはI50Dなど、残基46、49、または50で変異させると、結合親和性において有意な損失が誘発される傾向がある。従って、少なくとも単一点変異として導入した場合、これらは一般的に満足できるものではない。
【0061】
本発明は、IL−15アンタゴニストまたはアンタゴニスト候補であるIL−15ムテインをさらに提供する。
【0062】
好ましいアンタゴニストムテインは、残基64、65、68、69の少なくとも1個を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含む。
【0063】
ヒト成熟野生型IL−15では、残基64はE、残基65はN、残基68はI、残基69はLである(図2IA配列番号2を参照)。
【0064】
好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、KまたはRにより残基64を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号19または配列番号20の配列より、残基64〜残基68にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、配列番号41または配列番号42(図2D参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいアンタゴニストムテインには、配列番号41(図2D参照)の配列を含むものが含まれる。
【0065】
他の好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、D、E、K、またはRにより、好ましくはKにより残基65を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号21、配列番号22、配列番号23、または配列番号24の配列により、残基64〜残基68にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、それぞれ、配列番号43、配列番号44、配列番号45、または配列番号46(図2D参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、配列番号43(図2D参照)の配列を含むものが含まれる。
【0066】
他のさらに好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、D、E、K、またはRにより、好ましくはKにより残基68を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号25、配列番号26、配列番号27、または配列番号28の配列により、残基64〜残基68にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むIL−15ムテイン、例えば、配列、それぞれ、配列番号47、配列番号48、配列番号49、または配列番号50(図2D参照)のIL−15ムテインが含まれる。最も好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、配列番号47(図2D参照)の配列を含むものが含まれる。
【0067】
他のさらに好ましいIL−15アンタゴニストムテインには、D、E、K、またはRにより、好ましくはRにより残基69を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列を含むようなムテインが含まれる。これらには、特に、配列番号77、配列番号78、配列番号79、または配列番号80の配列により、残基64〜残基69にかかる領域を置換することによって、ヒト成熟野生型IL−15から導き出しうる配列(図9参照)を含むIL−15ムテイン、例えば、それぞれ、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85(図10参照)の配列のIL−15ムテインが含まれる。
【0068】
本出願は、場合により、トランスフェクションベクターや発現ベクターなどのベクター内に含まれる、本発明のIL−15ムテインをコードする核酸(DNAまたはRNA)にも関する。
【0069】
次いで、IL−15ムテインをコードするDNAは、転写プロモーターもしくは転写エンハンサー、転写を制御する任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソームの結合部位をコードする配列、転写および翻訳の開始と停止を制御するのに適切な配列など、適当な転写または翻訳調節配列に動作可能に結合させることができる。そのようなベクターの例には、pEF1/myc−His(In Vitrogen, V921-20)、pcDNA3.1(In Vitrogen, V800-20)が含まれる。
【0070】
IL−15ムテインをコードするDNAは、翻訳ポリペプチドの細胞外分泌を改善できるリーダー配列に結合してもよい。そのようなリーダー配列の例には、ラットのプレプロラクチン由来のKozak配列およびリーダー配列(NCBIアクセッション番号AF022935、ヌクレオチド178〜270、www.ncbi.nlm.nih.gov;National Center for Biotechnology Information, U.S. National library of Medicine, 8600 Rockville Pike, Bethesda, MD 20894, U.S.A.参照)が含まれる。
【0071】
次いで、組換えIL−15ムテインの構造コード配列を有する組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクションし、またはトランスフォーメーションしてよい。
【0072】
IL−15ムテインの適当な発現用宿主細胞には、適当なプロモーターの制御下の原核生物、酵母、またはさらに高等な真核細胞が含まれる。原核生物には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属中の他の様々な種が含まれる。適当な宿主細胞の例には、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母;哺乳動物細胞系統、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、チャイニーズ卵巣ハムスター細胞系CHO/dhfr(CHO duk)(ATCC NO.CRL−9096)など;あるいは上皮細胞系、例えば、サル上皮細胞系COS−7(ATCC NO.CRL1651)またはヒト細胞系、例えば、293 c18ヒト腎細胞系統(ATCC NO.CRL−10852)やFreeStyle 293-Fヒト腎細胞系統(In Vitrogen NO.R790-07)なども含まれる。
【0073】
細菌宿主、昆虫宿主、酵母宿主および哺乳動物細胞宿主に使用する適当なクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A laboratory Manual, Elsevier, N.Y. 1985に記載されている。
【0074】
本出願は、本発明のIL−15ムテイン保存フラグメントにも関する。そのような保存性IL−15ムテインフラグメントは、変異した44〜52領域、変異した64〜68領域、および/または変異した64〜69領域をさらに含み、ヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を保持する。
【0075】
本出願は、より具体的には、配列番号7〜18のいずれか1つの配列、例えば、配列番号7(L45D)、配列番号8(L45E)、配列番号11(S51D)、または配列番号15(L52D)のペプチドを含むフラグメントなど、IL−15アゴニストであるIL−15ムテインフラグメントに関する。図2A参照。
【0076】
本出願は、より具体的には、IL−15アンタゴニスト、部分アゴニスト、またはアンタゴニスト候補であるIL−15ムテインフラグメント、例えば、配列番号19〜28、77〜80(図2Bおよび9を参照)のいずれか1つの配列を含むフラグメントに関する。例えば、配列番号19(E64K)、配列番号25(I68D)、または配列番号80(L69R)のペプチドは部分アゴニストとして挙動し、配列番号80(L69R)は野生型IL−15活性の2%程度と低く最高の応答を誘発する。配列番号23(N65K)のペプチドはアンタゴニストとして挙動する(100pMのN65KムテインでIL−15活性の完全な阻害、以下実施例2および図8を参照)。
【0077】
本発明のムテインについて上に記載してきたことと同様に、本出願は本発明の範囲内に、任意でベクター内に含まれる、本発明のIL−15ムテインフラグメントをコードする核酸(DNAまたはRNA)も包含し、ならびにそのような核酸を含む任意のそのようなベクターおよび任意の宿主細胞も包含する。
【0078】
本発明のエピトープペプチドおよびムテインは、当業者が適当と判断しうる任意の手段、例えば、化学的ペプチド合成やペプチド生合成によって産生することができる。
【0079】
現在、化学的ペプチド合成は慣用操作であり(例えば、Anderssonら, 2000, Biopolymers (Peptide Science) 55: 227-250参照)、多くの企業がそのような合成を専門としている。
【0080】
好ましくは、本発明のエピトープペプチドおよびムテインフラグメントは、標準FMOCプロトコルを使用し、固相ペプチド合成(SPPS)技術によって合成される(例えば、 Carpinoら, 1970, J. Am. Chem. Soc. 92(19):5748-5749;Carpino ら, 1972, J. Org. Chem. 37(22):3404-3409を参照)。
【0081】
または、当業者は、部位特異的突然変異誘発により野生型IL−15から得られた変異した発現カセットをインビトロでまたはインビボで翻訳することによる、ムテインまたはムテインフラグメントの生物学的産生を選択することができる(Sodoyer, 2004, Biodrugs, 18 (1): 51-62)。
【0082】
その説明は、以下の実施例に記載されている。
【0083】
次いで、アミノ酸スイッチングは、当業者に利用可能な任意の変異誘発手段によって、例えば、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene, La Jolla, California, U.S.A.)を用いることによって実施することができる。次いで、変異した発現カセットを宿主細胞、例えば、293 c18細胞(ATCC NO.10852)(Invitrogen, Leek, The Netherlands)にトランスフェクションすることができる。次いで、トランスフェクション細胞を培養して、変異したカセットを発現させることができる(例えば、293 c18細胞を10%FCS、2mMグルタミン、1mg/mLグルコース、および250μg/mLジェネテシンを含むDMEM中で培養することができる)。次いで、変異した発現産生物を回収し、任意で精製することができる(例えば、培養上清の回収およびその精製)。
【0084】
本発明によるIL−15ムテインまたはIL−15ムテインフラグメントの産生過程は、例えば以下の工程を含む。
本発明による核酸を提供する工程であって、該ムテインまたはムテインフラグメントをコードし、場合により該核酸が発現ベクターに含まれる工程;
宿主細胞がその発現産生物を産生するように、動作可能に該核酸を宿主細胞に導入する工程;
該発現産生物を回収する工程。
【0085】
IL−15ムテインは、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconやMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用し濃縮してよい。
【0086】
得られた、発現し場合により濃縮したムテインを次いで、培地または抽出物から精製してよい。この培地または細胞抽出物は、精製マトリックス、例えば、疎水性クロマトグラフィー培地やアニオン交換樹脂にアプライすることができる。
【0087】
次いで、RP−HPLCによって濃度をさらに上げてよい。
【0088】
濃縮ムテインは、そのN末端FLAGタグにより、抗FLAG抗体M2を移植したイムノアフィニティカラムで精製することもできる(Sigma product NO. A 2220)。
【0089】
他のタグ(例えば、ポリヒスチンタグ)を遺伝子工学によってムテインのN末端またはC末端に加えて、その精製過程に役立てることができる。
【0090】
本出願は、そのアミノ酸発現またはその核酸コーディングバージョンにおける、本発明のエピトープペプチド、IL−15ムテイン、およびIL−15ムテインフラグメントの生物学的および医学的応用にも関する。
【0091】
本発明のアゴニストムテインは、特定のT/NKサブセットなどのリンパ球サブセットの増加に有用である。従って、本発明は、1個またはいくつかのリンパ球集団、例えば、NK細胞、NK−T細胞、CD8メモリー細胞を増加させるための薬剤としてのその使用に関し、そしてそのようなアゴニストムテインを含むそのような使用を意図した組成物またはキットに関する。
【0092】
本発明は、特に、本発明のIL−15ムテインまたはIL−15ムテインフラグメント、ならびに任意により薬学的に許容されるビヒクル、担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含む薬物またはワクチンに関する。
【0093】
そのような薬物またはワクチンは、IL−15活性の減少または上昇が望まれる状態または疾患の予防、治療、および/または緩和を意図している。
【0094】
いくつかの研究は、IL−15系を標的にすることが臨床的に適切であり潜在的に有益である疾患の同定に貢献してきた。それらの中には、自己免疫疾患、炎症性疾患、伝染病、移植拒絶、癌、および免疫不全症がある(参考文献22、23を参照)。
【0095】
本出願は、特に、本発明のIL−15アゴニストである、本発明のIL−15ムテインまたはIL−15ムテインフラグメント、ならびに場合により薬学的に許容されるビヒクル、担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含む薬物またはワクチンに関する。
【0096】
そのような薬物またはワクチンは、IL−15活性の増大が望まれる状態または疾患、例えば、特に癌や免疫不全の予防、治療、および/または緩和を意図している。そのような薬物またはワクチンは、(T細胞、CD8T細胞、NK細胞、樹状細胞などの)リンパ球の増殖、生存、および/または腫瘍細胞に対するその活性を刺激することによって働きうる。
【0097】
本出願は、特に、本発明のIL−15アンタゴニストである、本発明のIL−15ムテインまたはIL−15ムテインフラグメント、ならびに任意により薬学的に許容されるビヒクル、担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含むような薬物に関する。
【0098】
そのような薬物は、IL−15の活性の減少が望まれる状態または疾患、例えば、リューマチ性関節炎や全身性Shwartzman反応などの炎症性疾患の予防、治療、および/または緩和を意図している。
【0099】
本出願は、さらに、以下の工程を含むIL−15アゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする方法に関する。
i.複数の、本発明によるIL−15ムテインおよび/またはIL−15ムテインフラグメントを提供する工程;
ii.それらのそれぞれのIL−15−Rα結合親和性と、成熟野生型IL−15の結合親和性とを比較する工程;
iii.成熟野生型IL−15の結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高い結合親和性を有するようなムテインまたはムテインフラグメントを選択する工程。
【0100】
IL−15アゴニストをスクリーニングするために、この過程にさらに以下の工程を含めてよい。
iv.少なくとも1つの検出可能なIL−15誘導可能活性を選択する工程;
v.工程iiiで選択したムテインまたはフラグメントに応答して誘発された前記活性レベルと、成熟野生型IL−15によって誘発されたその活性レベルとを比較する工程;
vi.成熟野生型IL−15の活性レベルと著しく異ならないか、またはそれより高い活性レベルを誘発するようなムテインまたはフラグメントを選択する工程。
【0101】
IL−15アンタゴニストをスクリーニングするために、過程がさらに以下の工程含むことを特徴とする。
iv.少なくとも1つの検出可能なIL15誘導可能活性を選択する工程;
v.工程iiiで選択したムテインまたはフラグメントに応答して誘発された前記活性レベルと、成熟野生型IL−15によって誘発されたその活性レベルとを比較する工程;
vi.成熟野生型IL−15の活性レベルより低い活性レベルを誘発し、または検出可能な活性レベルを誘発しないようなムテインまたはフラグメントを選択する工程。
【0102】
本発明を以下の実施例によって説明する。実施例は、例示的目的のみを意図し、本発明の範囲を限定しないものとする。
【0103】
実施例1
実験手順
サイトカインおよび抗体
組換えマウスIL−3およびヒトGM−CSFをR&D Systems(Abington, UK)から購入し、組換えヒトIL−15(rIL−15)をPeprotech Inc(Rocky Hill, NJ)から購入し、そして組換えヒトIL−2(rIL−2)をChiron(Emeryville, CA)から購入した。
【0104】
ポリクローナルヤギ抗ヒトIL−2 AF-202-NAをR&D Systemsから購入し、マウス抗ヒトIL−2 mAb IL2.66をImmunotech(Marseille, France)から購入した。
【0105】
モノクローナルマウス抗ヒトIL−15Rα M161は、親切にもGenMab A/S(Copenhagen, Denmark)より提供を受け[以下に記載の実験には、ポリクローナル抗体AF247(R&D Systems Inc., Minneapolis, USA)を代わりに使用することができる]、ペルオキシダーゼに結合させたマウス抗FLAG mAb M2はSigma(Saint Quentin Fallavier, France)から購入した。
【0106】
細胞培養
非付着性TF−1ヒト細胞系統は、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Blvd.; Manassas, Virginia 20110-2209; U.S.A.)から入手することができ、ATCCアクセッション番号CRL−2003を有する(http://www.lgcpromochem.com/atcc/を参照)。
【0107】
TF−1βヒト細胞は、TF−1細胞にβ鎖を動作可能にトランスフェクションし、その結果、そこから得られたTF−1β細胞がIL−15に応答して増殖することによって得ることができる(参考文献29を参照)。
【0108】
β鎖テンプレートは、ヒトIL−2Rβ配列(NCBIアクセッション番号K03122)に従って、プルーフリーディングポリメラーゼPfu(Stratagene NO. 600390)、ならびにセンスプライマー(配列番号51)として
【0109】
【表3】

【0110】
およびアンチセンスプライマー(配列番号52)として
【0111】
【表4】

【0112】
を使用し、RT−PCRによりHuT102(ATCC TIB−162)またはJurkat clone E6.1(ATCC TIB 152)のRNAから得ることができる。Zero Blunt PCR Cloning Kit(In Vitrogen Cat. NO. K2700-20)またはTOPO XL PCRクローニングキット(In Vitrogen Cat. NO. K4750-10)を使用し、PCR産生物を効率よくクローニングする。次いで、組換えレトロウイルスを発生させるキットに記載されているように、IL−2Rβ遺伝子のcDNAをPantropic Retroviral Expression System(BD Biosciences Clontech NO. 631512)のpLXRNレトロウイルス発現ベクターのマルチクローニング部位にサブクローニングし、GP2−293細胞中にトランスフェクションする。次いで、IL−2Rβ組換えレトロウイルスを使用してTF−1細胞を感染させ、G418含有培地で選択した後、TF−1βを発生させることができる。
【0113】
付着性CHO duk細胞系は、ATCC(CHO/dhfr−;アクセッション番号CRL−9096)から入手することができる。
【0114】
細胞は全て、5%CO下37℃、水飽和雰囲気中で増殖させた。非付着性TF−1ヒト細胞系統、TF−1βヒト細胞、および付着性CHO duk細胞系を10%熱失活ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、および以下の特異的反応体、すなわち、1ng/ml GM−CSF(TF1)、1ng/ml GM−CSFおよび250μg/ml ジェネテシン(TF−1β)、10μg/ml アデノシン、デオキシアデノシン、およびチミジン(DhfrCHO duk−)を含むRPMI1640培地中で培養した。非付着性CTLL−2マウス細胞系を8%FCS、2mMグルタミン、15ng/ml rIL−2、および50μM 2−メルカプトエタノールを含むRPMI1640培地中で培養した。付着性293 c18ヒト細胞(Invitrogen, Leek, The Netherlands)を10%FCS、2mMグルタミン、1mg/mlグルコース、および250μg/mlジェネテシンを含むDMEM中で培養した。
【0115】
可溶性IL−15Rα−IL−2融合タンパク質の調製
ヒトIL−15Rαテンプレートは、ヒトIL−15Rα配列(NCBIアクセッション番号U31628)に従って、プルーフリーディングポリメラーゼPfu(Stratagene NO.600390)、ならびにセンスプライマー−配列番号53−として
【0116】
【表5】

【0117】
およびアンチセンスプライマー−配列番号54−として
【0118】
【表6】

【0119】
を使用し、RT−PCRによりTF−1細胞の(ATCCアクセッション番号CRL−2003)のRNA、または血液から精製した正常ヒト単球のRNAから得ることができる。PCR産生物をZero Blunt PCR Cloning Kit(In Vitrogen Cat. NO. K2700−20)を使用しクローン化して、pNo15Rプラスミドを作成する。
【0120】
ヒトIL−2テンプレートは、ヒトIL−2配列(NCBIアクセッション番号NM000586)に従って、プルーフリーディングポリメラーゼPfu(Stratagene NO.600390)、ならびにセンスプライマー(下線はPst I)−配列番号55−として
【0121】
【表7】

【0122】
およびアンチセンスプライマー(下線はSma I)−配列番号56−として
【0123】
【表8】

【0124】
を使用し、RT−PCRによりOKT3抗体およびPMA(30)で刺激したJurkat細胞クローンE6-1(ATCCアクセッション番号TIB−152)のRNAから得ることができる。PCR産生物は、Bluescriptプラスミド(NCBIアクセッション番号X52328)のPst IとSma I部位の間にクローン化して、pBSSK−IL−2プラスミドを作成する。
【0125】
キメラ可溶性IL−15Rα−IL−2構築体を生成するために、センスプライマー−配列番号57−
【0126】
【表9】

【0127】
(プライマー1、下線は入れ子状態のHind III制限部位)およびアンチセンスプライマー−配列番号58−
【0128】
【表10】

【0129】
(プライマー2、Pst I下線で)を使用し、IL−15Rα(ヌクレオチド1〜697)のシグナルペプチドおよび細胞外ドメインをpNoR15からPCR増幅した。次いで、増幅産生物をpBSSK−IL−2のHind IIIとPst I部位の間にクローン化した。
【0130】
最終ハイブリッド遺伝子では、(ジペプチドLeu−Glnをコードする)Pst I部位は、IL−15Rα(5’末端)配列とIL−2(3’末端)配列の間でリンカーとして挙動した。その配列を制御し、キメラ構築体をBluescriptプラスミドをHind III/Not I部位間で消化し、哺乳動物発現ベクターpKCR6(31)のEco RI部位にサブクローン化した。SuperFect試薬(Qiagen, Courtaboeuf, France)を使用し、Dhfr−CHO細胞にpKCR6−sIL−15Rα−IL−2をトランスフェクションした。ヒトIL−2(BioSource, Nivelles, Belgium)を検出するために、融合タンパク質を産生するクローンをELISAを使用し検出した。上昇濃度のメトトレキサート(Sigma)を使用し、3回のクローニングを実施した。5μMメトトレキサートで選択した1つのクローンによって、約4.3mg/lのsIL−15Rα−IL−2が産生された。上清を60%飽和の硫酸アンモニウムによる沈殿によって濃縮し、IL−2イムノアフィニティカラム(mAb IL2.66)にロードし、(32)に記載されている通りIL−2融合タンパク質を精製した。ヒトIL−2についてその濃度をELISAで定量した。既に記載されている(12)クロラミンT法によりヨウ素化した後、SDS−PAGEによる評価では、分子量60kDaでその純度は少なくとも80%であった。融合タンパク質のIL−2部分の全機能を、rIL−2を標準として使用し、CTLL−2増殖アッセイ(細胞増殖キットII、Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)で実証した。IL−15Rα部分の高親和性IL−15結合は、表面プラズモン共鳴技術((Biacore AB, Uppsala, Sweden)を使用し実証した。
【0131】
IL−15突然変異体の産生
pEF−neo PPL SP−IL−15(ヒト)発現構築体をpEF−1/myc−Hisベクター(In Vitrogen, ref V921-20)で構築した。ラットのプレプロラクチンシグナルペプチド(PPL SP)配列は、ラット(rattus norvegicus)プレプロラクチン配列(NCBIアクセッション番号AF022935)に従って、センスプライマー(下線はKpnI部位)−配列番号59−として
【0132】
【表11】

【0133】
およびアンチセンスプライマー(下線はBam HI部位)−配列番号60−として
【0134】
【表12】

【0135】
を使用し、GH4C1細胞(ATCCアクセッション番号CCL−82.2)から調製したmRNAをRT−PCRすることによって増幅した。成熟ヒトIL−15コード配列は、ヒトIL−15配列(NCBIアクセッション番号NM000585)に従って、センスプライマー(下線はBam HI部位)−配列番号61−として
【0136】
【表13】

【0137】
およびアンチセンスプライマー(下線はEco RI部位)−配列番号62−として
【0138】
【表14】

【0139】
を使用し、包皮切除後得られた包皮から調製した正常ヒトケラチノサイトのmRNAをRT−PCRすることによって増幅した。PPL SPをpEF−1/myc−HisのKpnI部位とBam HI部位の間に導入し、IL−15をpEF−1/myc−HisのBam HIとEco RI部位の間に導入した。
【0140】
FLAGタグ(DYKDDDDK:配列番号63)を二本鎖オリゴヌクレオチドとして、PPL SPと成熟IL−15タンパク質コード配列の間のBam HI部位に導入した。(配列番号64=
【0141】
【表15】

【0142】
および配列番号65=
【0143】
【表16】

【0144】
KpnI/Eco RIフラグメントをサブクローン化することにより、PPL−FLAG−IL−15配列を含むBluescriptプラスミドを生成した。アミノ酸スイッチングは、Bluescript構築体を用いてQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene, La Jolla, CA)を使用し実施した。配列は、PPL−FLAG−IL−15ハイブリッドcDNA上に確認され、変異したKpnI/Eco RIフラグメントをpEF−1/myc−Hisにクローン化して戻した。FLAG−IL−15突然変異体の産生には、標準リン酸カルシウムプロトコル後、60mmプレート中で3.2×10個の付着性293 c18細胞に16μgの変異させたIL−15発現構築体をトランスフェクションした。6時間後、培地を新鮮完全DMEM(Life Technologies, Cergy Pontoise, France)と交換し、トランスフェクション48時間後上清を回収した。
【0145】
Pepscan分析
重複合成ペプチドを合成し、以前に記載されている通り(33)クレジットカード型ミニPEPSCANカード(455ペプチド型/カード)を使用しスクリーニングした。
【0146】
試料(可溶性IL−15Rα−IL−2融合タンパク質)を5%ウマ血清(v/v)および5%卵白アルブミン(w/v)を含むブロッキング液で希釈し、共有結合ペプチドを含む455穴クレジットカード型ポリエチレンカードを4℃で終夜インキュベートした。洗浄後、抗ヒトIL−2抗体AF-202-NA(1μg/ml)と共にカードを(25℃で1時間)インキュベートし、洗浄し、さらに1.3μg/ml(P 0160, DakoCytomation)のペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギIgGと共にインキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2、2’−アジノ−ジ−3−エチルベンズチアゾリンスルホナート(ABTS)に2μl/mlの3%Hを足したものを加え、1時間後に発色をCCDカメラとイメージ処理システムを使用し数量化した。装置は、CCDカメラ、55mmレンズ(SonyCCDビデオカメラXC-77RR、Nikon micro-nikkor 55 mmf/2.8レンズ)、カメラアダプタ(SonyカメラアダプタDC-77RR)、およびイメージ処理ソフトウェアパッケージOptimas, version 6.5(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)から構成され、Pentium IIコンピュータシステムで作動する。CCDカメラは、ABTS基質の緑色をグレイ値(任意スケール)に翻訳するオレンジ色のフィルターを装備する。
【0147】
IL−15結合アッセイ
ヒトrIL−15を、クロラミンT法(34)を使用し[125I]ヨウ素(比放射能2000cpm/fmol付近)で放射性標識し、以前に記載されている通り(12)結合実験を実施した。非特異的結合を、100倍量を超える未標識サイトカインの存在下で定量した。IL−15結合実験には、TF−1細胞を上昇濃度の標識したrIL−15と共にインキュベートした。一部位平衡結合方程式(Grafit, Erithacus Software, Staines, UK)を使用し、結合データの回帰分析を実施し、データをScatchard座標系にプロットした。IL−15結合実験の阻害には、TF−1細胞を固定濃度のヨウ化処理したrIL−15、ならびに上昇濃度のFLAG−IL−15、突然変異体、またはmAbと共にインキュベートした。データの回帰分析は、4パラメータロジスティック方程式(4 parameter logistic equation)(Graft, Erithacus Software)を使用し行った。
【0148】
増殖アッセイ
FLAG−IL−15および突然変異体の増殖誘発活性ならびにmAb阻害活性をTF−1β細胞の[H]チミジンの取込みによって評価した。細胞を培地中で3日間維持し、2度洗浄し、サイトカイン不含の同じ培地で2時間枯渇させた。細胞を、10細胞/100μlで播種し、上昇濃度のrIL−15、FLAG−IL−15または突然変異体を補充した培地で、あるいは固定濃度のrIL−15および上昇濃度のmAbを補充した培地で48時間培養した。細胞を0.5μCi/wellの[H]チミジンで16時間パルスし、ガラス繊維フィルター上に回収し、細胞関連放射能を測定した。
【0149】
結果
Pepscan法によるIL−15RαのIL−15結合分析
IL−15Rα結合に直接関与するIL−15領域の同定を試みるために、Pepscan法を使用した。その目的には、ヒトIL−2に融合させたヒトIL−15Rαの細胞外ドメインからなる可溶性融合タンパク質(sIL−15Rα−IL−2)を、顕在化抗体としてポリクローナル抗ヒトIL−2抗体(AF-202-NA)を使用し、12−merのIL−15ペプチドへの結合についてアッセイした(図3A)。IL−15配列の異なる2領域とのsIL−15Rα−IL−2の結合に相当する、2個の反応の主ピークが観察された。同様の濃度(330nM)のrIL−2による対照実験ではバックグラウンド反応が示された(図3A)。30−merのヒトIL−15ペプチドについてのPepscan研究では、これらの2個のIL−15領域を有するsIL−15Rα−IL−2の反応が確認された。反応に関連する2組のペプチド(12−merおよび30−mer)の分析によって、以下の配列をsIL−15Rα−IL−2結合、すなわち、44LLELQVISL52(ペプチド1:配列番号4)および64ENLII68(ペプチド2:配列番号6)を担うものとして指定することができた。第1配列は、ヘリックスB中に、第2配列はヘリックスC中に位置する(図3B)。
【0150】
IL−15部位特異的突然変異誘発
IL−15Rα鎖結合におけるPepscanにより同定した、2個のペプチド領域の関与を確認するために、これらの領域でIL−15の点変異を実施した。推定受容体結合部位に実質的妨害を導入するために、非極性疎水性側鎖(L、V、I)および非荷電極性側鎖(S、N、Q)を荷電基(D、E、またはK)で置換し、荷電極性側鎖(E)を反対荷電基(K)で置換した。位置44〜52(ペプチド1)および位置64〜68(ペプチド2)での突然変異体を生成した。野生型ヒトIL−15および突然変異体が、293 c18細胞中でN末端FLAGペプチドを有する融合タンパク質として発現した。次いで、FLAG−IL−15および突然変異体をTF−1細胞によって発現したIL−15Rαに結合するその能力についてアッセイした(図4A、4B、4C)。その目的には、異なる突然変異体が、非飽和低濃度の放射性ヨウ化処理したrIL−15のTF−1細胞への結合を阻害する効率を比較できるようにする競合アッセイを使用した。競合曲線を図4A、4B、4Cに示し、半最大阻害効果を与える突然変異体濃度(IC50)を表Iに掲げる。
【0151】
【表17】

【0152】
表I TF‐1細胞系におけるIL‐15突然変異体結合特性。ND:未検。NA:該当なし。相対活性の平均および標準偏差は3個の独立した実験から得る。
【0153】
IC50が26pMであるFLAG−IL−15で阻害した標識rIL−15結合。
【0154】
ペプチド1内の3個の位置(E46、V49、およびI50)での突然変異は、IL−15の親和性に著明な影響を与えたが、Q48K変異では影響はなかった。位置L45(L45DおよびL45E)、S51、およびL52での突然変異は、この競合アッセイでIL−15の親和性を再現可能に増大した(2〜3倍)。このアッセイでは、突然変異体L44DおよびL47Dを評価することができなかった。293 c18上清では産生レベルが低すぎたためである。ペプチド2領域の数個の突然変異(残基L66およびI67を対象とする突然変異)も、IL−15の親和性を著しく減少させたが、位置E64、N65、およびI68での突然変異では有意な効果はなかった。
【0155】
次いで、野生型FLAG−IL−15および突然変異体を、IL−15応答TF−1β細胞に及ぼすその増殖促進効果について試験した(図5A、5B、5Cおよび表II)。
【0156】
【表18】

【0157】
表II TF‐1β細胞におけるIL‐15突然変異体増殖活性。NA:該当なし。相対活性の平均および標準偏差は3個の独立した実験から得る。
【0158】
ペプチド1突然変異体は、TF−1細胞で測定されたIL−15Rα結合効率に高く相関する生物活性を示した。すなわち、L44D、E46K、L47D、およびI50D突然変異はIL−15の生物活性を強力に減少したが、Q48K突然変異では有意な効果はなく、位置L45、S51、およびL52での突然変異では生物活性において2〜4倍の上昇を誘発した。ただ一つの例外は突然変異体V49Dであった。この突然変異体は結合能力を著しく減少させたが、ほぼ野生型の生物活性を示した。それに反して、ペプチド2領域の突然変異体ではTF−1β細胞における生物活性とTF−1細胞における結合親和性の間の相関は極めて小さかった。TF−1細胞においてほぼ野生型の結合親和性を示す突然変異体N65KはTF−1β細胞では不活性だった。同様にほぼ野生型の結合親和性を示した突然変異体E64KおよびI68Dは、野生型IL−15の最大応答の約20%の最大応答をもたらし、TF−1βにおいて部分アゴニストとして挙動した。唯一の相関は、L66およびI67位置の突然変異に見出された。突然変異体L66D、L66E、I67D、およびI67Eは、作用強度のランク付け順序が競合結合アッセイで見られたランク付け順序に類似する低い生物活性を示した。
【0159】
考察
低親和性でIL−2に結合するIL−2Rα鎖(35)とは対照的に、IL−15Rα鎖はそれ自体IL−15に高親和性結合を示すことが判明した(11)。従って、IL−15とIL−15Rαの間の界面は、IL−15がその機能性高親和性(αβγ)受容体に結合する自由エネルギーのほとんどに貢献している可能性が高い。従って、IL−15系のアゴニスト特性またはアンタゴニスト特性を有するタンパク質を設計するためには、IL−15/IL−15Rα界面の分子的特徴を良く知っていることが望ましい。今までのところその主題について利用可能なデータはなく、この研究の主目的はIL−15Rαの結合を担うIL−15のエピトープの定義に貢献するものであった。
【0160】
IL−15Rαの可溶形に特異的に結合するPepscanによって、2個の領域を最初に同定した。第1の領域(44LLELQVISL52、ペプチド1)は、Bヘリックスに位置し、第2(64ENLII68、ペプチド2)の領域はCヘリックスに属する。
【0161】
変異誘発研究によって、これら2個の領域の関与が確認され、受容体結合と生物活性の誘発に関わるアミノ酸の同定が可能になった。
【0162】
その位置(I50D)での突然変異は、IL−15のIL−15Rα結合能力および細胞増殖誘発能力を著しく減少させ、結合およびシグナル伝達に作用する局所的な高次構造変化を反映しうる結果。しかし、この高次構造変化は分子の全体的構造を妨害しないように思われる。
【0163】
E46、V49、L45、S51、およびL52は、IL−15Rα結合に関与することが判明した。
【0164】
E46は、その酸性側鎖を塩基性側鎖(E46K)により置換すると、IL−15のIL−15Rα結合と生物活性が完全に消失するので重要である。
【0165】
負荷電側鎖(V49D)によりV49の疎水性側鎖を置換しても、IL−15のIL−15Rα親和性が著しく(1/13倍)減少する。予想に反して、V49D突然変異体は、ほぼ野生型生物活性を示した。結合親和性と生物活性の間の類似する相違点は、IL−2突然変異体(T51P)について報告されている(36)。この突然変異体は、野生型IL−2と同程度に活性であるが、1/10の受容体結合親和性を示す。この突然変異体は、高親和性受容体の内部移行を誘発し、それによって受容体占有の持続時間を延長し生物学的応答を誘発するには不十分であったことが示されている。V49D IL−15類似体が同様の特性を示すかどうかは調査する必要がある。
【0166】
位置L45、S51、およびL52での突然変異は、結合および生物活性を減少させず、上昇させ、これらの残基もIL−15Rα結合に関与することを示した。突然変異体L44DおよびL47Dは、生物学的応答を損なったが、その結合親和性を評価することはできなかった。予想に反して、突然変異体Q48Kは、ほぼ野生型特性を示したが、Q48は受容体結合に関わるアミノ酸(L45、E46、V49、S51およびL52)によって形成されたエピトープの中央に位置する。受容体結合におけるその潜在的関与を再評価するために、この残基をさらに変異させる必要がありうる。
【0167】
ペプチド2領域の変異誘発の結果から、評価した5個のアミノ酸(E64〜I68)のうち、L66とI67のみが受容体結合に関与するらしいことが示された。突然変異体(L66D、L66E、I67D、およびI67E)は、結合親和性の減少と、対応するその生物活性の減少を示した。突然変異体E64KおよびI68Dは、野生型IL−15の親和性と類似する親和性を有し、E64およびI68がIL−15Rα結合に関与しないことを示唆した。しかし、突然変異体は、増殖アッセイでは部分アゴニストとして挙動した。部分的アゴニズムは受容体の不完全な活性化を示している(37)ので、E64およびI68はIL−2Rβ/γ形質導入複合体の動員に関与している可能性がある。この結論は、N65の突然変異(N65K)がIL−15Rα結合親和性を検出可能に変化させることなく生物活性を消失させることを支持しうる。マウスIL−2の変異誘発および分子モデリング研究(27、38)は、ヘリックスAに位置する残基D20に加えて(24)、ヒトIL−2のCヘリックスもIL−2Rβとのその相互作用に潜在的に関与することを示唆しており、近年の業績はそのヘリックスにおける変異(N88R)がIL−2のIL−2Rβ結合を劇的に(1/1000倍)消失させる(26)ことを示している。本発明者らの結果は、ヒトIL−15のその対応する領域、特に残基E64、N65、およびI68がIL−2Rβ鎖の動員にも関わることを示唆している。
【0168】
IL−15突然変異体E64K、N65K、およびI68Dは、潜在的IL−15アンタゴニストとしてそれらを意味付ける特性(IL−15Rα高親和性結合にも関わらず生物活性が低いまたは無い)を示す。実際、予備的実験では、N65KはIL−15誘発細胞増殖を阻害できることが示唆される。
【0169】
ペプチド2に相当するIL−15の領域は、IL−15Rα結合とIL−2Rβ結合に関わると思われる。突然変異誘発によって、ペプチド2(E64〜I68)のアミノ酸が全て、この過程に関与することが判明した。
【0170】
ペプチド2に対応するエピトープがIL−15Rα結合およびIL−2Rβの動員に関与することは、受容体組立てのダイナミクスに意味をもたらす。IL−15は、まず、ペプチド1およびペプチド2(またはその一部)のエピトープに結合することによって、IL−15Rαに高親和性結合するはずである。次いで、次のIL−2Rβ動員が、ペプチド2エピトープの別の部分の結合に関与しうる。あるいは、IL−2Rβがペプチド2エピトープに結合する際にIL−15Rαを置換する高次構造変化が生じるかもしれない。
【0171】
マウスIL−2の場合には、ペプチド1に対応する、IL−15エピトープに類似するヘリックスBの配列は、IL−2Rαと相互作用することが示されている(すなわち残基E76、P79、V83、およびL86)(27)。ヒトIL−2の場合には、IL−2のIL−2Rα結合に作用するBヘリックスにおける突然変異については今まで記載されていなかったが、分子モデリングによって、ヒトIL−2のヘリックスB(すなわち残基K64およびE68、またはE61およびE62)とIL−2Rαの間の接触は予想されていた(38)。それに反して、ペプチド2に対応するIL−15のエピトープに類似するヘリックスC内のIL−2の領域は、IL−2Rα結合に関与しないと思われている(27)。従って、本発明者らの結果は、IL−15とIL−15Rαの相互作用の方式がIL−2とIL−2Rαの相互作用の方式に完全には相同ではないことは示唆している。IL−2のそのα鎖への親和性の約500倍高い親和性をIL−15がそのα鎖に対して示すという事実をこれは反映しているかもしれない。
【0172】
要するに、本発明者らは、IL−15Rα結合に関与し、その1つがIL−2Rβ形質導入サブユニットを召集するためにも使用される、IL−15の2個の領域を同定した。野生型IL−15のものよりも高い結合特性および生物学的特性を示し、従ってスーパーアゴニストとして挙動するIL−15ムテイン(L45D、L45E、S51DおよびL52D)は、リンパ球サブセット(例えば、NK細胞、NK−T細胞、CD8メモリーT細胞)を増加させるための貴重なツールであり、癌または免疫不全症患者では治療剤として有用であろう。他のムテイン(E64K、N65K、およびI68D)は、潜在的IL−15アンタゴニストとしてこれらを意味付ける特性を示し、IL−15が重要な役割を果たすと思われる(22)、リューマチ性関節炎や全身性Shwartzman反応などの炎症性疾患で有用であろう。
【0173】
実施例2
実験手順
IL−15部位特異的突然変異誘発
IL−15部位特異的突然変異誘発を実施例1に記載したように実施した(QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit)。
【0174】
Flag−IL−15タンパク質の精製。突然変異体Flag−IL−15タンパク質を親和性により精製した。48時間後の293−EBNA細胞のトランスフェクション培養から回収した100mlの上清を70%飽和濃度の硫酸アンモニウムにより沈殿させた。293−EBNA細胞は、293 c18という名称を有し、ATCCからアクセッション番号CRL−10852(American Type Culture CollectionATCC;P.O. Box 1549 ; Manassas, VA 20108; U.S.A.)で入手することができる。ペレットをTBS(50mM Tris、pH7.4、150mM NaCl)に溶解し、6〜8000ダルトンをカットオフするSpectra/Por管でTBSに対して透析した。透析液を100μlの抗Flag M2アフィニティゲル(Sigma-Aldrich)でバッチ精製した。突然変異体Flag−IL−15タンパク質を800μlの100mMグリシンpH3.5によりゲルから溶出させ、1M Tris、pH8で中和した。精製したタンパク質をRPMIに対して透析し、フィルター滅菌した後、増殖アッセイで試験した。
【0175】
増殖アッセイ。突然変異体Flag−IL−15の阻害活性を66nM抗IL−2Rβ A41 mAb[Roche Diagnostic GmbH (Penzberg, Germany)から入手。あるいは、これらの実験には、IL2Rβが介在する生物活性において阻害活性示す任意の抗IL2Rβ抗体、例えば、ポリクローナルAF-224-NA(R&S Systems Inc., Minneapolis, USA)などを使用することもできる]の存在下、(上の実施例1に記載した通りに得られた)TF−1β細胞での[H]チミジン取り込みによって評価した。
【0176】
細胞を培地で3日間維持し、2度洗浄し、サイトカイン不含の同じ培地で2時間枯渇させた。細胞を、10細胞/100μlで播種し、66nMのA41 mAb、10pMの固定濃度のrIL−15、および上昇濃度の突然変異体Flag−IL−15を補充した培地で48時間培養した。細胞を0.5μCi/wellの[H]チミジンで16時間パルスし、ガラス繊維フィルター上に回収し、細胞関連放射能を測定した。
【0177】
結果
IL−15部位特異的突然変異誘発。位置64〜68(ペプチド2)および64〜69(ペプチド2a)で突然変異体を生成し、N末端FLAGペプチドを有する融合タンパク質として293−EBNA細胞中で発現させた。
【0178】
TF−1細胞により発現したIL−15Rαに結合するその能力について、FLAG−IL−15突然変異体を競合アッセイでアッセイした。このアッセイは、異なる突然変異体が、非飽和低濃度の放射性ヨウ化処理したrIL−15のTF−1細胞への結合を阻害する効率を比較できるものであった。競合曲線を図6に示し、半最大阻害効果を与える突然変異体の濃度(IC50値)を表IIIに記載する。
【0179】
【表19】

【0180】
FLAG−IL−15は、IC50が23.6pMの標識rIL−15結合を阻害した。位置Leu−69での変異によって、この競合アッセイではIL−15親和性がわずかに上昇した(IC50=9.1nM)。
【0181】
次いで、突然変異体をIL−15−応答性TF−1β細胞におけるその増殖促進効果について試験した(図7)。L69R突然変異体は、最大応答が野生型IL−15の最大応答の約2%であるTF−1βにおいて部分アゴニストとして挙動した。
【0182】
IL−15のFlag−IL−15N65Kによる阻害が、A41の存在下でTF1β増殖を誘発した。細胞膜上で3本の受容体鎖IL−15Rα、IL−2Rβおよびγを発現させることによって、IL−15に対して高親和性応答が得られるようになる。両受容体鎖IL−2Rβおよびγの発現によって、IL−15に対して中程度の親和性増殖応答が得られるようになる。IL−2Rβ/γ受容体を特異的に阻止する抗IL−2Rβ mAb、A41を使用して、中程度親和性受容体によりIL−15が誘発する増殖を阻止した。N65K親和性により精製したFlag−IL−15突然変異体は、TF−1細胞におけるそのIL−15Rα結合能力(IC50=26.6pM)と関連して、IL−15により誘発された増殖を12pMのIC50で完全に阻害した(図8)。細胞増殖は、100pMで完全に阻害された。
【0183】
考察
ペプチド2/2a領域での変異誘発の結果から、評価した6種のアミノ酸(Glu−64〜Leu−69)のうちで、突然変異体E64K、I68D、およびL69Rが野生型IL−15のものに少なくとも類似するIL−15Rα結合親和性を有することが示された。しかし、突然変異体は、増殖アッセイでは部分アゴニストとして挙動した。部分的アゴニズムは受容体の不十分な活性化を示しているので、Glu−64、Ile−68、およびL69Rは、IL−2Rβ/γ形質導入複合体の動員に関与するであろう。
【0184】
この結論は、その変異(N65K)が、IL−15Rα結合親和性を検出可能に変化させることなく生物活性を消失させるAsn−65を支持するであろう。
【0185】
本発明者らの結果は、ヒトIL−15ヘリックスCの領域、特に、残基Glu−64、Asn−65、Ile−68、およびL69RがIL−2Rβ鎖の動員に関わることを示唆している。
【0186】
IL−15突然変異体E64K、N65K、I68D、およびL69Rは、IL−15アンタゴニスト(N65K)または部分アゴニスト(E64K、I68D;L69R)としてそれらを意味付ける特性(IL−15Rα高親和性結合にも関わらず生物活性が低いまたは無い)を示す。図8に示す結果は、N65Kが高親和性IL−15誘発細胞増殖を完全に阻害することを示唆している。
【0187】
脚注
使用した略語は以下である:IL、インターロイキン;rIL、組換えIL;IL−15Rα、IL−15受容体α鎖;NK、ナチュラルキラー;Jak、Janusキナーゼ;Stat、シグナル伝達物質および転写アクチベーター;Lck、リンパ球特異的チロシンキナーゼ;syk、脾臓チロシンキナーゼ;MAP、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ;Bcl、B細胞白血病;GM−CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;mAb、モノクローナル抗体;ELISA、酵素結合免疫吸着測定法;RIA、ラジオイムノアッセイ;PCR、ポリメラーゼ連鎖反応;Dhfr、ジヒドロ葉酸還元酵素;IC50、阻害濃度50%;EC50、有効濃度50%;SP、シグナルペプチド;PPL、プレプロラクチン。
【0188】
【表20】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−15のIL−15Rα鎖への高親和性結合をもたらすヒトIL−15のエピトープの一部であるペプチドであって、ヒト成熟野生型IL−15のL44〜L52領域の配列(配列番号4)、またはヒト成熟野生型IL−15のE64〜I68領域の配列(配列番号6)、またはヒト成熟野生型IL−15のE64〜L69領域の配列(配列番号67)を有することを特徴とする、ペプチド。
【請求項2】
ヒト成熟野生型IL−15のL44〜L52領域の配列(配列番号4)、またはヒト成熟野生型IL−15のE64〜I68領域の配列(配列番号6)を有することを特徴とする、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1または2記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項4】
ヒト成熟野生型IL−15から、残基44〜残基52、および/または残基64〜残基68、および/または残基64〜残基69にまたがる領域内の少なくとも1つの置換、欠失、または付加によって導き出しうる配列を有し、この残基の番号はヒト成熟野生型IL−15に対応するが、ただしそれから得られた該IL−15ムテインは、ヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を有することを特徴とする、IL−15ムテイン。
【請求項5】
残基44〜残基52、および/または残基64〜残基68にかかる領域内の少なくとも1つの置換、欠失、または付加によってヒト成熟野生型IL−15に由来することができる配列を有し、この残基番号がヒト成熟野生型IL−15に対応するが、ただしそれから得られた該IL−15ムテインは、ヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を有することを特徴とする、請求項4記載のIL−15ムテイン。
【請求項6】
上記の少なくとも1つの置換が、D、E、K、およびRから選択される荷電基による、L、V、およびIから選択される少なくとも1つの疎水性側鎖の置換、ならびに/あるいはS、N、およびQから選択される少なくとも1つの非荷電極性側鎖の置換であることを特徴とする、請求項4または5記載のIL−15ムテイン。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの置換が、反対に荷電された基KによるEから選択される少なくとも1つの荷電極性側鎖の置換であることを特徴とする、請求項4または5記載のIL−15ムテイン。
【請求項8】
IL−15アゴニストであることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項記載のIL−15ムテイン。
【請求項9】
前記の少なくとも1つの置換が、残基45、51、52の少なくとも1つの置換であることを特徴とする、請求項8記載のIL−15ムテイン。
【請求項10】
前記の少なくとも1つの置換が、DまたはEによる残基45の置換であることを特徴とする、請求項9記載のIL−15ムテイン。
【請求項11】
配列番号29または配列番号30の配列を有することを特徴とする、請求項10記載のIL−15ムテイン。
【請求項12】
前記の少なくとも1つの置換が、Dによる残基51の置換であることを特徴とする、請求項9記載のIL−15ムテイン。
【請求項13】
配列番号33の配列を有することを特徴とする、請求項12記載のIL−15ムテイン。
【請求項14】
前記の少なくとも1つの置換が、Dによる残基52の置換であることを特徴とする、請求項9記載のIL−15ムテイン。
【請求項15】
配列番号37の配列を有することを特徴とする、請求項14記載のIL−15ムテイン。
【請求項16】
IL−15アンタゴニストであることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項記載のIL−15ムテイン。
【請求項17】
前記の少なくとも1つの置換が、残基64、65、68の少なくとも1つの置換であることを特徴とする、請求項16記載のIL−15ムテイン。
【請求項18】
前記の少なくとも1つの置換が、Kによる残基64の置換であることを特徴とする、請求項17記載のIL−15ムテイン。
【請求項19】
配列番号41の配列を有することを特徴とする、請求項18記載のIL−15ムテイン。
【請求項20】
前記の少なくとも1つの置換が、Kによる残基65の置換であることを特徴とする、請求項17記載のIL−15ムテイン。
【請求項21】
配列番号45の配列を有することを特徴とする、請求項20記載のIL−15ムテイン。
【請求項22】
前記の少なくとも1つの置換が、Dによる残基68の置換であることを特徴とする、請求項17記載のIL−15ムテイン。
【請求項23】
配列番号47の配列を有することを特徴とする、請求項22記載のIL−15ムテイン。
【請求項24】
前記の少なくとも1つの置換が、残基69の置換であることを特徴とする、請求項16記載のIL−15ムテイン。
【請求項25】
請求項24記載のIL−15ムテインにおいて、前記の少なくとも1つの置換が、Rによる残基69の置換であることを特徴とする、請求項24記載のIL−15ムテイン。
【請求項26】
配列番号85の配列を有することを特徴とする、請求項25記載のIL−15ムテイン。
【請求項27】
請求項4〜26のいずれか一項記載のIL−15ムテインの保存フラグメントであって、変異した44〜52領域、および/または変異した64〜68領域、および/または変異した64〜69領域を含むが、ただしそこから得られたIL−15ムテインフラグメントは、ヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を有するIL−15ムテインの保存フラグメント。
【請求項28】
変異した44〜52領域、および/または変異した64〜68領域を含むが、ただしそこから得られたIL−15ムテインフラグメントが、さらにヒト成熟野生型IL−15のIL−15Rα結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高いIL−15Rα結合親和性を有することを特徴とする、請求項27記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項29】
IL−15アゴニストであることを特徴とする、請求項27または28記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項30】
配列番号7〜18のいずれか1つの配列を含むことを特徴とする、請求項29記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項31】
IL−15アンタゴニストであることを特徴とする、請求項27または28記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項32】
配列番号19〜28のいずれか1つの配列を含むことを特徴とする、請求項31記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項33】
配列番号77〜80のいずれか1つの配列を含むことを特徴とする、請求項31記載のIL−15ムテインフラグメント。
【請求項34】
請求項4〜26のいずれか一項記載のIL−15ムテイン、または請求項27〜33のいずれか一項記載のIL−15ムテインフラグメントをコードする核酸。
【請求項35】
請求項34記載の少なくとも1つの核酸を含むベクター。
【請求項36】
請求項35記載のベクターによってトランスフェクションまたはトランスフォーメーションした細胞。
【請求項37】
請求項8〜15のいずれか一項記載のIL−15ムテイン、および/または請求項29または30記載のIL−15ムテインフラグメントを含み、ならびに場合により、薬学的に許容され得るビヒクル、および/または担体、および/または希釈剤、および/またはアジュバントを含む薬物。
【請求項38】
抗癌薬物または抗免疫不全薬物を製造するための、請求項8から15いずれか一項記載のIL−15ムテイン、または請求項29または30記載のIL−15ムテインフラグメントの使用。
【請求項39】
請求項16〜26のいずれか一項記載のIL−15ムテイン、および/または請求項31〜33のいずれか一項記載のIL−15ムテインフラグメントを含み、ならびに場合により薬学的に許容されるビヒクル、および/または担体、および/または希釈剤、および/またはアジュバントを含む薬物。
【請求項40】
抗炎症薬を製造するための、請求項16〜26のいずれか一項記載のIL−15ムテイン、または請求項31〜33のいずれか一項記載のIL−15ムテインフラグメントの使用。
【請求項41】
IL−15アゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法であって、
i.請求項4〜26のいずれか一項記載の複数のIL−15ムテイン、および/または請求項29〜35のいずれか一項記載の複数のIL−15ムテインフラグメントを提供する工程;
ii.それぞれのIL−15−Rα結合親和性と、成熟野生型IL−15の結合親和性とを比較する工程;
iii.成熟野生型IL−15の結合親和性と著しく異ならないか、またはそれより高い結合親和性を有するムテインまたはムテインフラグメントを選択する工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
IL−15アゴニストをスクリーニングするための方法において、該方法がさらに
iv.少なくとも1つの検出可能なIL−15誘導可能活性を選択する工程;
v.工程iiiで選択したムテインまたはフラグメントに応答して誘発された前記活性レベルと、成熟野生型IL−15によって誘発されたその活性レベルとを比較する工程;
vi.成熟野生型IL−15の活性レベルと著しく異ならない、またはそれより高い活性レベルを誘発するようなムテインまたはフラグメントを選択する工程;
を含むことを特徴とする、請求項41記載の方法。
【請求項43】
IL−15アンタゴニストを求めてスクリーニングする方法において、該方法がさらに
iv.少なくとも1つの検出可能なIL−15誘導可能活性を選択する工程;
v.工程iiiで選択したムテインまたはフラグメントに応答して誘発された前記活性レベルと、成熟野生型IL−15によって誘発されたその活性レベルとを比較する工程;
vi.成熟野生型IL−15の活性レベルより低い活性レベルを誘発し、または検出可能な活性レベルを誘発しないようなムテインまたはフラグメントを選択する工程;
を含むことを特徴とする請求項41記載の方法。

【図1A−1】
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【図1A−2】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C−1】
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【図2C−2】
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【図2C−3】
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【図2C−4】
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【図2C−5】
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【図2C−6】
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【図2D−1】
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【図2D−2】
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【図2D−3】
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【図2D−4】
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【図2D−5】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公開番号】特開2013−81472(P2013−81472A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−287740(P2012−287740)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2007−500188(P2007−500188)の分割
【原出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PENTIUM
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】