説明

IL4R−αに対する組成物およびその使用

【課題】細胞、組織、または動物において、ヒトIL4R−αの発現を調節するための化合物、組成物、および方法、標的確認の方法、ならびにIL4R−αの発現に関連する疾患および障害、気道過敏性、および/または肺炎の処置のための薬剤の製造における、化合物および組成物の使用を提供する。
【解決手段】ヒトIL4R−αをコードする核酸分子を標的とし、前記IL4R−αの発現を阻害する、12から34核酸塩基のオリゴマー化合物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2005年2月25日に出願されたアメリカ合衆国仮出願シリアル番号60/656,760
、2005年6月9日に出願された60/688,897、2005年7月19日に出願された60/700,656、およ
び、2005年8月18日に出願された60/709,404に対する優先権を主張し、それらすべては、
その全体について本明細書中で参考文献として援用される。
【0002】
配列表の援用
紙およびコンピューター読みとり可能な形式の両方における配列表の複製は、本明細書中で提供され、本明細書中で参考文献として援用される。コンピューター読みとり可能な形式は、RTS0792WOSEQ.txtという名前のファイルを含む3.5''ディスケットで提供される

【0003】
発明の背景
アレルギー性鼻炎および喘息は、複雑かつ多面的な病因をもつどこにでもある症状である。その症状の重篤度は、遺伝子、環境的条件、および、疾患の持続時間および重篤度に付随した累積的な呼吸の病状、といった因子に依存して、個体によって、また、個体の中でも大きく変化する。両方の疾患は、無害な環境抗原に対する免疫系の過剰な応答性の結果であり、喘息では主としてアトピー性(すなわち、アレルギー性)の構成要素を含む。
【0004】
喘息において、病状は、炎症、粘液過剰産生、および、気道の傷害および再構築を引き起こし得る、可逆性気道閉塞として現れる。軽度の喘息は、βアゴニスト、および低用量の吸入コルチコステロイドまたはクロモリンを含む、現在の治療的介入により、比較的良好に制御される。しかしながら、中程度および重度の喘息は、良好に制御されることがより少なく、喘息症状の恒常的な制御と正常な肺機能を得るために複数の長期制御薬物による毎日の処置が必要である。中程度の喘息では、吸入コルチコステロイドの用量は、軽度の喘息患者に与えられる量と比較すると増量され、および/または長期活性βアゴニスト(LABA)(例えばサルメテロール)またはロイコトリエン阻害剤(例えば、モンテルカスト、ザフィルルカスト)を補足される。LABAはコルチコステロイドへの依存を減少させ得るが、全般的な喘息の制御においてコルチコステロイドほど効果的ではない(例えば発作、救急外来受診の減少)(Lazarusら、JAMA. 2001 285:2583-2593;Lemanskeら、JAMA. 2001 285; 2594-2603)。重度の喘息では、吸入コルチコステロイドの用量は増量され、LABAおよび経口コルチコステロイドの両方が補足される。重篤な喘息患者はしばしば、夜間症状、活動の制限、および救急外来受診の必要性を含む、慢性的症状に苦しむ。加えて、どのレベルでも慢性のコルチコステロイド療法は、特に子どもにおいて、多数の望ましくない副作用(例えば、成長の抑制をもたらす骨に対する損傷)を有する。
【0005】
アレルギー性鼻炎は鼻腔の炎症であり、また、主として、鼻水の分泌、くしゃみ、うっ血、および、鼻および目のかゆみを伴う。それは、刺激物、特にアレルゲンへの暴露により、頻繁に引き起こされる。アレルギー性鼻炎は、アメリカの人口の約20%が発症しており、アメリカ合衆国でのもっとも一般的な病気の一つに位置づけられている。自然界の植物が成長する季節に産生される、花粉などのアレルゲンへの暴露による季節性の症状を、大多数が罹患する。患者のより少ない集団は、ハウスダストダニまたは動物の毛(dander)といった、一年中産生されるアレルゲンによる慢性的なアレルギーを有する。経口および経鼻の抗ヒスタミン薬およびうっ血除去剤を含め、アレルギー性鼻炎の治療のため、多数のOTC薬が入手可能である。抗ヒスタミン薬は、かゆみおよびくしゃみの遮断に用いら
れ、またこれらの薬の多くは、高投与量では、鎮静および動作傷害といった副作用が付随
する。うっ血除去剤は、不眠、振せん、頻拍、および高血圧を頻繁に引き起こす。経鼻製剤は、不適切に取り込まれた場合、または迅速に終了された場合、反動のうっ血を引き起こし得る。抗コリン作動性薬およびモンテルカストは、おおむねより副作用が少ないが、それらは効果も限定的である。同様に、処方薬も副作用がある。経鼻コルチコステロイドは、症状の予防、または抑制のために使用され得るが、しかし、味覚障害(poor taste)、および鼻の炎症および出血を含む副作用のため、コンプライアンスは変わりやすい。アレルゲン免疫療法は費用が高く、時間もかかり、またアナフィラキシーの低いリスクをもたらす。
【0006】
持続性の鼻炎は、鼻ポリープの形成を引き起こし得る。慢性鼻炎および喘息の患者の約4.2%(男性は4.4%で、女性は3.8%)で、鼻ポリープがみとめられる(Grigoresら、Allergy Asthema Proc. 2002, 23: 169-174)。ポリープの存在は、男女両方において、また、嚢胞性線維症およびアスピリン過敏症との合併症の患者において、年齢に応じて増加する。鼻ポリープ症は、鼻および副鼻腔粘膜の慢性的な炎症より起こる。慢性的な炎症は、鼻腔内粘膜の反応性過形成を引き起こし、ポリープの形成という結果をもたらす。ポリープ形成の正確なメカニズムは、完全には理解されていない。鼻ポリープは、鼻気道閉塞、後鼻漏、鈍い頭痛、いびき、臭覚障害、および鼻漏と関連する。医学療法には、抗ヒスタミン薬、および局所ステロイド鼻スプレーを用いた、基本的な慢性アレルギー性鼻炎の治療が含まれる。重度の鼻閉塞を引き起こしている重度な鼻ポリープにおいては、短期のステロイド処置が有効であることがある。クロモリンスプレーの局所使用もまた、一部の患者において鼻ポリープの重度および大きさを減少させるのに有用であることが見いだされている。経口コルチコステロイドは、鼻ポリープの短期治療において最も効果的な薬物療法であり、また、経口コルチコステロイドは、炎症性ポリープの縮小において最も高い効果を有する。ステロイドの鼻腔内スプレーは、小さな鼻ポリープの成長を減少または遅延させ得るが、それらは大きな鼻ポリープにおいては比較的効果がない。鼻ポリープは薬理学的に処置され得るが、治療の多くは望ましくない副作用を有する。さらに、ポリープは再発する傾向があり、やがて外科的介入を必要とする。手術後の鼻ポリープの再発を阻害する組成物および方法は、現在は得られていない。
【0007】
同様の炎症経路により特徴づけられる他の疾患には、限定的ではないが、慢性気管支炎、肺線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および小児喘息が含まれる。
インターロイキン受容体4-αおよび炎症性シグナル経路
アレルギーおよび喘息が、Th2サイトカイン応答の調節異常の結果であることは、一般
的に認識されている。喘息患者の気管支肺胞洗浄液中および気道上皮生検において、インターロイキン4(IL 4)、IL 5、およびIL 13サイトカインを産生するCD4+ T細胞が存在することは、明確に立証されている。ヒトにおいて、IL 5の中和により、気道過敏性(AHR
)は減少せず、好酸球増多の減少をもたらす。Th2リンパ球分化、Bリンパ球のイプシロン重鎖へのIgアイソタイプスイッチの制御を介した免疫グロブリンE(IgE)産生の誘導、IgE受容体および血管関連接着分子-1(VCAM-1)の発現の上方調節、肺における好酸球浸潤
の促進、および粘液過分泌を含む、喘息およびアレルギーの根拠をなす多様な病理学的過程に、IL 4およびIL 13が関係している。IL 13は、コリン作動性刺激に対する気道過敏性(AHR)の進行、肺リモデリング、および炎症を起こした気道上皮の分泌表現型の促進を
仲介する。これらの所見より、Th2サイトカイン経路の構成物、特にIL 4およびIL-13が、喘息、アレルギー、および他の気道炎症および/または過敏症の形態への治療的介入のための可能性のある標的となる。
【0008】
IL 4およびIL 13受容体は、共通シグナル鎖、IL 4受容体アルファ(IL 4R-α)を共有
する。IL 4R-αは、造血系由来の細胞上において共通ガンマ鎖と対をなして、I型IL 4Rを形成する。この受容体は、IL 4とのみ結合する。IL 4およびIL 13はまた、第二の受容体
を介してシグナルを伝達する。その受容体はIL 4R-αおよびIL 13R-α1からなる(II型IL
4R)。IL 13R-α1は造血系細胞および非造血系細胞の両方の細胞に存在する。IL 4R-α
とIL 13R-α1とのヘテロダイマーの形成は、IL 13R-α1の親和性を、低親和性受容体から高親和性受容体へと転換する結果となる。IL 13R-α2は単量体の高親和性IL 13受容体で
あり、IL 13の活性を負に制御するおとり受容体として作用すると考えられている。I型およびII型IL 4Rを介したシグナルは、Jak-Stat経路;インシュリン受容体基質ファミリー
タンパク質といったインシュリン-インターロイキン-4受容体(I4R)モチーフ関連因子;チロシンホスファターゼを含むSH2;およびStat 6といったStatファミリーの構成員を活
性化する。マウスにおいて、アレルゲン誘導性肺炎およびAHRでは、IL 4R-αとStat 6と
の両方が必須であることが、多くの遺伝子の研究により明らかになっている。
【0009】
IL 4R-αは2つのグループにより独立してクローン化された(Galizziら、Int. Immunol.、1990、2、669-675;および、Idzerdaら、J. Exp. Med.、1990、171、861-873)。ヒトIL 4受容体遺伝子はin situハイブリダイゼーションにより16p11.2-16p12.1に位置が決められ、また、マウスのホモログでは、第7染色体の末端領域に位置づけられた。ヒト第16
染色体上の位置は、IL 4受容体が再配列の候補となり得ることを示唆する。例えば、12;16転座は、しばしば粘液性脂肪肉腫と関連する(Pritchardら、Genomics、1991、10、801-806)。
【0010】
IL-4およびIL-13の阻害剤は独立に、マウス肺炎モデル、または、臨床試験において、
抗炎症効果を生み出し(Wills-Karp Mら、Science 282: 2258-2261、1998;Grunig Gら、Science 282: 2261-2263、1998;Borish LCら、Am J Respir Crit Care Med 160: 1816-1823、1999;Kumar RKら、Am J Respir Crit Care Med 170: 1043-1048、2004;Yang Gら
、Cytokine 28; 224-232、2004)、そして、アレルギーおよび喘息の新規の治療として、現在推進されている。
【0011】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび肺疾患
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、肺炎、気道過敏性、および/または喘息
の治療剤として推進されている。肺はエアロゾル化したASOにとって、いくつかの理由か
ら理想的な組織を提供する(NyceおよびMetzger、Nature、1997:385:721-725、本明細書
中で参考文献として援用される);というのは、肺は非浸襲的かつ特異的に標的とされる事が可能で、それは広い吸収表面を有する;またASOの分布および取り込みを促進させる
ことができるサーファクタントで覆われている。マウスおよび霊長類の両方において、エアロゾルによる肺へのASOの送達は、肺全体への優れた分布をもたらす。標準化しそして
炎症をおこしたマウスの肺組織において、吸入されたASOの免疫組織化学染色では、肺胞
マクロファージ、好酸球、および上皮が強い染色を、血管内皮が中程度の染色を、そして細気管支上皮が弱い染色を示す。ASOを介する標的の減少は、樹状細胞、マクロファージ
、好酸球、および、上皮細胞において、エアロゾル投与後にみとめられる。マウスまたはサルにおいて、エアロゾル投与により送達される2'-メトキシエトキシ(2'-MOE)修飾オ
リゴヌクレオチドの、推測半減期は、それぞれ約4から7日、または、少なくとも7日間で
ある。さらに、ASOはバックボーンおよびヌクレオチド化学に基づいて、比較的予測可能
な毒性および薬物動態を有する。ASOの経肺投与は、最小限の全身性暴露をもたらし、他
の分類の薬物と比較すると前記化合物の安全性は潜在的に上昇する。
【0012】
ASO製剤化のための組成物および方法、および、肺および鼻への送達のための器具は、
良く知られている。ASOは水溶液に可溶であり、また、標準的な噴霧器具を用いて送達さ
れ得る(Nyce、Exp. Opin. Invest. Drugs、1997、6:1149-1156)。呼吸器管および肺の
特異的な部分を標的にするため、噴霧器具を用いて液滴の大きさを調節する製剤および方法は、当業者に周知である。オリゴヌクレオチドは、ドライパウダー吸入器、または、定量吸入器といった、他の器具を用いて送達されることが可能であり、それは、噴霧器具と比較すると患者に利便性の改善を提供することができ、より良い患者のコンプライアンス
をもたらす。
【0013】
一般にアンチセンス技術の背景にある原則は、アンチセンス化合物が標的核酸とハイブリダイズし、そして遺伝子発現活性の調節、あるいは、転写または翻訳といった機能の調節に、効果を及ぼすことである。遺伝子発現の調節は、例えば標的RNAの分解、または、
占有に基づく阻害によって、達成され得る。分解による標的RNA機能の調節の例は、DNA様のアンチセンス化合物とハイブリダイゼーションする際の標的RNAのRNase Hに基づく分解である。標的の分解による遺伝子発現の調節の他の例は、低分子干渉RNA(siRNA)を用いるRNA干渉(RNAi)である。RNAiは、アンチセンスを介する遺伝子抑制の形態であり、標
的化された内因性mRNAレベルの配列特異的な減少を導く、二本鎖(ds)RNA様オリゴヌク
レオチドの導入に関連する。この配列特異性が、アンチセンス化合物を、標的確認および遺伝子の機能化、並びに疾患に関連する遺伝子の発現を選択的に調節する治療剤としても、非常に魅力的なものにする。
【0014】
多くの標的を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドについて、マウス、ウサギ、および/またはサルの喘息モデルで、吸入により送達された場合の、肺炎および気道過敏性を抑制するその能力が試験されており、その標的は限定的ではないが、p38αMAPキナーゼ(アメリカ合衆国特許公開番号2004171566、参考文献として援用される);CD28受容体リガンドB7-1およびB7-2(アメリカ合衆国特許公開番号20040235164、参考文献として援
用される);細胞内接着分子(ICAM)(WO 2004/108945、参考文献として援用される)、およびアデノシンA1受容体(NyceおよびMetzger、Nature、1997、385:721-725)を含む。様々な評価項目がそれぞれの場合について分析されたが、そして結果の一部を本明細書中に記述する。p38αMAPキナーゼを標的としたASOは2つの異なるマウスのモデルにおいて、好酸球動員、気道過敏性(AHR)、および粘液産生を減少させた。B7.1およびB7.2のそれ
ぞれを標的としたASOは、標的の発現、および、好酸球動員を減少させた。B7.2を標的と
したASOはまた、AHRも減少させた。ICAM-1を標的としたASOは、マウスにおいてAHRを減少させ、また、好中球および好酸球の動員を減少させた。カニクイザルへのICAM-1を標的としたASOによる処置は、自然に回虫(Ascaris)アレルゲンに感作されたサルへのメタコリンチャレンジにより誘導される気道障害(抵抗)を有意に減少させた。アデノシンA1受容体を標的としたASOは、ウサギのアレルギーモデルにおいて気道平滑筋の受容体密度を減
少させ、そしてAHRを減少させた。これらのデータは、オリゴヌクレオチドが、ヒト以外
の霊長類を含む複数の種の肺内の細胞に、吸入により、効果的に送達され、そして、気道過敏性および/または肺炎の減少に効果的であることを、証明する。
【0015】
しかしながら、肺炎に関与する炎症メディエーターのいずれかを標的としたすべてのASOが、常にAHRおよび/または肺炎の減少に効果的というわけではない。in vitroで標的の発現を減少させることが分かっているJun N末端キナーゼ(JNK-1)を標的としたASOを、
喘息のマウスモデルにおいて試験した。JNK-1を標的とした2つの異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドのそれぞれによる処置は、試験されたどの用量のASOにおいても、メタコ
リン誘導性のAHR、好酸球動員、または粘膜産生の減少に効果がなかった。
【0016】
IL 4R-αを標的とするように設計された、多数のASOおよびsiRNAが、研究ツールまたは診断ツールとして、または、呼吸器系疾患の治療薬としての利用について、報告されてきた。アメリカ合衆国特許出願US20030104410は、研究ツールとして遺伝子配列の同定また
は検出に有用な、核酸プローブのアレイを教示する。IL 4R-α遺伝子での受容体シグナルを増加させる対立遺伝子変異が見いだされてきた(Hersheyら、NEJM、1997、337:1720-1725;Rosa-Rosaら、J. Allergy Clin. Immunol. 1999、104:1008-1014;Kruseら、Immunol. 1999、96、365-371)。PCT特許出願WO 2000034789は、これらの対立遺伝子変異を検出
するための診断試験に使用するためのオリゴヌクレオチドを教示する。特許出願WO 2002085309、WO 2004011613およびUS 20040049022は、薬剤組成物として使用するための、IL 4
R-αを含む呼吸器系疾患に潜在的に関与する一連の遺伝子を標的としたASOを教示する。
特許出願US 20050143333は、インターロイキン、および、IL 4R-αを含むインターロイキン受容体を標的とした、一連のsiRNAを教示する。PCT出願WO 2004045543は、IL 4R-αを
標的としたものを含む、機能的なsiRNAのアルゴリズム、および、合理的な設計および選
択を教示する。これらの公報において、ASOおよびsiRNAが薬剤組成物として使用され得ることは示唆されるが、疾患または障害の予防、改善、および/または処置において、in vivoでその化合物の有効性を証明するデータはない。
【0017】
発明の概要
本発明は、IL 4R-αをコードする核酸を標的とする、化合物、具体的にはオリゴマー化合物、特に核酸および核酸様オリゴマー、を提供する。好ましくは、オリゴマー化合物は、IL 4R-α、特にヒトIL 4R-α(1992年5月26日に登録されたGenBankアクセッション番号
X52425.1(SEQ ID NO: 1);2002年3月1日に登録されたGenBankアクセッション番号 BM738518.1;2004年2月19日に登録されたGenBankアクセッション番号 NT 010393.14の1836000から18689000のヌクレオチド、それぞれは参考文献として援用される)を標的としたア
ンチセンスオリゴヌクレオチドであり、IL 4R-αの発現を調節する。化合物は、表3、4、または5に列挙された配列の、少なくとも12核酸塩基部分、好ましくは少なくとも17核酸
塩基部分を含み、確認標的部分または表3、4、または5に列挙された配列と少なくとも90
%以上同一である。
【0018】
本発明は、本発明の少なくとも一つの化合物と細胞とを接触させること、そしてmRNAおよび/またはタンパク質レベルの直接測定によるIL 4R-αmRNAおよび/またはタンパク質の発現の減少の指標、および/または肺炎の指標、および/または気道過敏性の指標について細胞を分析することを含む、IL 4R-αの細胞または組織での発現を調節する方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、肺炎、および/または気道過敏性の、予防、改善、および/または処置を必要とする個人へ、本発明の少なくともの一つ化合物の投与を含む、肺炎、および/または気道過敏性の、予防、改善、および/または処置のための方法を提供する。化合物は、好ましくは少なくとも呼吸器管の一部分にエアロゾルにより(すなわち局所的に)投与される。選択される呼吸器管の一部分は、炎症の場所に依存する。例えば、喘息の場合、好ましくは、化合物は主に肺に送達される。アレルギー性鼻炎の場合、好ましくは、化合物は主に、鼻腔および/または副鼻腔に送達される。化合物は、ネブライザー、鼻および肺吸入器、ドライパウダー吸入器、および定量吸入器を含む(これらには限定されない)、多くの標準的な送達装置および方法のすべてを用いて送達される。
【0020】
本発明はまた、疾患、特に肺炎および/または気道過敏性の少なくとも一つの指標を含み、それに関連する疾患の、予防、改善、および/または処置のための薬剤の調製のための、本発明の組成物の使用の方法を提供する。薬剤は、好ましくは、少なくとも呼吸器管の一部分へのエアロゾル投与のために製剤化される。
【0021】
発明の詳細な説明
喘息、アレルギー、および、肺炎および/またはAHRに関連する多数の他の疾患または
症状は、IL 4RとIL 13Rの共通のサブユニットであるIL 4R-αを含む、共通の炎症性メデ
ィエーターを共有する。これらの疾患または症状の治療的介入は、化合物の有効性の欠如、および/または望ましくない副作用のため、完全に満足なものではない。本発明は、肺炎および/または気道過敏性の予防、改善、および/または処置のための、オリゴマー化合物、好ましくはASOを提供する。本明細書中で使用される場合、“予防”という用語は
、症状または疾患の進行を、数時間から数日、好ましくは、数週間から数ヶ月という期間、遅らせる、または、未然に防ぐことを意味する。本明細書中で使用される場合、“改善
”という用語は、症状または疾患の重篤度の少なくとも一つの指標を減少させることを意味する。指標の重篤度は、主観的、または、客観的な測定により、決定され得る。本明細書中で使用される場合、“処置”は疾患または症状の変化、または改善に有効である本発明の組成物を投与することを意味する。予防、改善、および/または治療は、症状または疾患の経過を変化させるため、物質(例えばアレルゲン)への暴露より先に、または、定期的に、複数回の投与を必要とし得る。さらに、症状または疾患の予防、改善、および、治療のそれぞれに、連続的に、または、同時に、一つの物質が一個体に用いられることがある。本発明の好ましい方法において、ASOは、呼吸器管への局所的な送達のためエアロ
ゾルにより送達され、それにより、全身性暴露は制限され、また潜在的な副作用は減少する。
【0022】
概説
IL 4R-αをコードする核酸分子の発現調節に使用するための、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および、他のアンチセンス化合物を含むオリゴマー化合物が、本明細書中で開示される。これは、IL 4R-αをコードする、1あるいはそれ以上の標的核酸分子とハイブ
リダイズするオリゴマー化合物の提供により、達成される。本明細書中で使用される場合、“標的核酸”および“IL 4R-αをコードする核酸分子”という用語は、IL 4R-αをコードするDNA、前記DNAから転写されるRNA(前駆mRNAおよびmRNA、またはその一部を含む)
、および、前記RNAから派生するcDNAも含むように、便宜上用いられている。好ましい態
様において、標的核酸はIL 4R-αをコードするmRNAである。
【0023】
アンチセンス技術の背景にある原則は、標的核酸とハイブリダイズするアンチセンス化合物が、転写または翻訳といった遺伝子発現活性を、調節することである。この配列特異性が、アンチセンス化合物を、標的確認および遺伝子の機能化のためのツールとして、ならびに、疾患に関連する遺伝子の発現を選択的に調節するための治療用のツールとしても、非常に魅力的なものにする。作用機序により限定的ではないが、本発明の化合物はアンチセンスにより、非自己触媒的機構により働くと考えられている。
【0024】
化合物
“オリゴマー化合物”という用語は、核酸分子のある領域とハイブリダイズすることができるポリマー構造をいう。この用語には、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチドアナログ、オリゴヌクレオチド模倣物、およびこれらのキメラの組み合わせが含まれる。一般にオリゴマー化合物には、ヌクレオシド間結合基および/またはヌクレオシド間結合模倣物により互いに結合した、複数のモノマーサブユニットが含まれる。それぞれのモノマーサブユニットは、糖、脱塩基糖、修飾された糖、または、糖模倣物、を含み、そして、脱塩基糖を除いては、核酸塩基、修飾された核酸塩基、または、核酸塩基模倣物を含む。好ましいモノマーサブユニットは、ヌクレオシド、および修飾されたヌクレオシドを含む。オリゴマー化合物は、通常、直鎖状に調製されるが、連結することができ、また、そうでなければ、環状に調製することができる。さらに、分岐した構造は当該技術分野において既知である。
【0025】
“アンチセンス化合物”または“アンチセンスオリゴマー化合物”とは、それにハイブリダイズし、その発現を調節する(上昇させる、または、減少させる)標的核酸分子の領域と、少なくとも部分的に相補的なオリゴマー化合物をいう。従って、すべてのアンチセンス化合物はオリゴマー化合物であると言うことが出来るのに対して、オリゴマー化合物のすべてがアンチセンス化合物というわけではない。“アンチセンスオリゴヌクレオチド”は、核酸に基づくオリゴマーであるアンチセンス化合物である。アンチセンスオリゴヌクレオチドには、いくつかの場合においては、糖、塩基、および/またはヌクレオシド間結合への、一つまたはそれ以上の化学的修飾が含まれ得る。オリゴマー化合物の限定的ではない例には、プライマー、プローブ、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレ
オチド、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー(alternate splicer)、およびsiRNAが含まれる。前記の通り、これらの化合物は、一本鎖、二本鎖、
環状、分岐型、またはヘアピン状の形で導入されることができ、そして、内部または外部のバルジ、またはループといった、構造的要素を含み得る。二本鎖オリゴマー化合物は、二本鎖化合物を形成するようにハイブリダイズした二本の鎖であるか、または、ハイブリダイゼーションして全体的にもしくは部分的に二本鎖化合物を形成するのに十分な自己相補性を有する一本鎖である可能性がある。本発明の化合物は、自己触媒的ではない。本明細書中で使用される場合、“自己触媒的”とは、例えばタンパク質といった補足因子の不在下において、標的RNAの切断を促進する能力を有する化合物を意味する。
【0026】
本発明の一つの態様において、オリゴマー化合物は、一本鎖オリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物である。本発明のいくつかの態様において、オリゴマー化合物は化学的修飾を含む。好ましい態様において、アンチセンス化合物は、糖、塩基、およびヌクレオシド間結合の修飾が独立して選択されている、一本鎖のキメラオリゴヌクレオチドである。
【0027】
本発明に従ったオリゴマー化合物は、約12から約35核酸塩基(すなわち約12から約35の結合したヌクレオシド)のオリゴマー化合物を含み得る。言い換えると、本発明の一本鎖化合物は、約12から約35核酸塩基を含み、そして、(例えばsiRNAといった)本発明の二
本鎖アンチセンス化合物は、それぞれが約12から約35核酸塩基である二本鎖を含む。本発明のオリゴマー化合物(一本鎖かまたは二本鎖のどちらでも、そして、少なくとも一本鎖について)の中には、アンチセンス部分が含まれる。“アンチセンス部分”とは、前述のアンチセンス機構の一つにより働くように設計されたオリゴマー化合物の部分である。当業者は、これが、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基のアンチセンス部分を含むことを理解するであろう。
【0028】
一つの態様において、本発明のアンチセンス化合物は、12から35核酸塩基のアンチセンス部分を有する。アンチセンス部分は約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基長であってもよいことが理解される。
【0029】
例示されるアンチセンス化合物内から選択された、少なくとも8、好ましくは少なくと
も12、より好ましくは少なくとも17の連続した核酸塩基の長さを含む、12から35核酸塩基長のアンチセンス化合物も、適切なアンチセンス化合物であると見なされる。
【0030】
本発明の化合物には、1つの例示されるアンチセンス化合物の5'末端から少なくとも8の連続した核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列が含まれる(残りの核酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物の、5'末端のすぐ上流から始まる同じオリゴヌクレオチドの連続した長さであり、オリゴヌクレオチドが約12から35核酸塩基を含むまで続く)。他の化合物は、1つの例示されるアンチセンス化合物の3'末端から少
なくとも8の連続した核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列により示される(残りの核
酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物の、3'末端のすぐ下流から始まる同じオリゴヌクレオチドの連続した長さであり、オリゴヌクレオチドが約12から約35核酸塩基になるまで続く)。化合物が、例示される化合物の配列の内側部分から少なくとも8の連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列により示されることが
でき、そして、片方または両方向に、オリゴヌクレオチドが約12から約35核酸塩基を含むまで伸長させ得ることもまた理解される。
【0031】
修飾を本発明の化合物に行うことが可能で、また、末端の一方、選択された核酸塩基部
分、糖部分、または、ヌクレオシド間結合の一つに結合する結合基を含み得る。可能な修飾には、限定的ではないが、2'-Fおよび2'-Oメチル糖修飾、逆脱塩基キャップ(inverted
abasic caps)、デオキシ核酸塩基、およびロック化核酸(LNA)といった核酸アナログ
が含まれる。
【0032】
本発明の一つの態様において、二本鎖アンチセンス化合物は低分子干渉RNA(siRNA)を含む。本明細書中で使用される場合、“siRNA”という用語は、第一鎖および第二鎖を有
する二本鎖化合物であり、そのそれぞれの鎖は中央部分と2つの独立した末端部分とを有
すると定義される。第一鎖の中央部分は第二鎖の中央部分と相補的であり、両鎖をハイブリダイゼーションさせることができる。末端部分は独立しており、任意的に相補鎖の対応する末端部分と相補的である。鎖の両端は、一つまたはそれ以上の天然のまたは修飾された核酸塩基の付加により修飾され、突出部を形成する。一つの限定的ではない例は、siRNAの第一鎖は標的核酸のアンチセンスであり、第二鎖は第一鎖に相補的である。特定の核
酸標的を標的とするようにアンチセンス鎖が設計されると、siRNAのセンス鎖を次にアン
チセンス鎖の相補鎖として設計し合成することができ、またそれぞれの鎖はそれぞれの末端に修飾または付加を含みうる。例えば一つの態様において、 siRNA二本鎖の両方の鎖は中央の核酸塩基は相補的であり、それぞれは末端の一方または両方に突出部を有する。二本鎖の一つの末端が平滑であり、もう一方は突出した核酸塩基を有することは可能である。一つの態様において、突出核酸塩基の数は二本鎖のそれぞれの鎖の3'末端に1から6である。他の態様において、突出核酸塩基の数は二本鎖の一方のみの鎖の3'末端に1から6である。さらなる態様において、突出核酸塩基の数は二本鎖の一つまたは両方の鎖の5'末端に1から6である。他の態様において、突出核酸塩基の数はゼロである。好ましい態様において、それぞれの鎖は19核酸塩基長であり、相補鎖に完全にハイブリダイズすることができ、そして突出部を含まない。
【0033】
siRNA二本鎖の各鎖は、約12から約35の核酸塩基であり得る。好ましい態様において、siRNA二本鎖の各鎖は、約17から約25の核酸塩基である。中央の相補的部分は、約12から約35核酸塩基長であり得る。好ましい態様において、中央の相補的部分は、約17から約25核酸塩基長である。siRNA二本鎖の各鎖および中央の相補的部分は、約12、13、14、15、16
、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基長である可能性がある事が,理解される。末端部分は1から6核酸塩基である可能性がある。末端部分は約1、2、3、4、5、または6核酸塩基長であり得ることが理解される。siRNAはまた、末端部分を持たない可能性もある。siRNAの二本の鎖は、3'または5'末端は離れたまま、内部で結合することが可能で、または、結合して連続したヘアピン構造またはループを形成することが可能である。ヘアピン構造は、5'または3'末端のどちらかに突出部を含むことができ、一本鎖形質(character)の伸長を精製する。
【0034】
二本鎖化合物は本明細書中で議論されるように、化学的修飾を含むように作られ得る。
化学的修飾
当該技術分野で既知の通り、ヌクレオシドは塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシ
ドの塩基部分は、通常、複素環塩基である(時々“核酸塩基”または単純に“塩基”と言われる)。前記複素環塩基の最も一般的な2つの分類は、プリンおよびピリミジンである
。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分と共有結合したリン酸基をさらに含んだヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれらのヌクレオシドにおいて、リン酸基は糖の2'、3'、または5'の水酸基に結合され得る。オリゴヌクレオチド形成において、リン酸基は隣のヌクレオシドとお互いに共有結合し、直鎖状のポリマー化合物を形成する。次に、直鎖状のポリマー化合物のそれぞれの末端をさらに連結させて、環状の化合物を形成させることができる。オリゴヌクレオチド内で、リン酸基は一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間バックボーンを形成するものと言われる。RNAおよびDNAの通常の結合またはバックボーンは、3'から5'へのホスホジエステル結合である。オリゴヌクレオチド中に化
学的修飾を含んで、その活性を変化させることがしばしば好ましい。化学的修飾は、例えばその標的RNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの親和性を上昇させること、ヌ
クレアーゼ耐性を高めること、および/またはオリゴヌクレオチドの薬物動態を変化させること、により、オリゴヌクレオチドの活性を変化させ得る。オリゴヌクレオチドのその標的への親和性を高める化学の使用により、より短いオリゴヌクレオチド化合物を使用することが可能になる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、“核酸塩基”または“複素環塩基部分”という用語は、ヌクレオシドの複素環塩基部分を言う。一般に核酸塩基は、他の核酸の塩基に水素結合することができる一つまたはそれ以上の原子または原子からなる基を含む、全ての基である。プリン核酸塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、および、ピリミジン核酸塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)といった、“非修飾”また
は“天然の”核酸塩基に加えて、当業者に既知である多くの修飾核酸塩基、または、核酸塩基模倣物は、本発明に従う。修飾核酸塩基および核酸塩基模倣物という用語は、重複し得るが、一般に、修飾核酸塩基とは、例えば7-デアザプリン、または5-メチルシトシンといった、もとの核酸塩基に非常に構造が似ている核酸塩基をいい、一方、核酸塩基模倣物には、例えば三環系フェノキサジン核酸塩基模倣物といった、より複雑な構造が含まれる。上述の修飾核酸塩基の調製方法は当業者によく知られている。
【0036】
本発明のオリゴマー化合物は、修飾糖部分を有する一つまたはそれ以上のヌクレオシドもまた、含み得る。ヌクレオシドのフラノシル糖環は、置換基の付加、2つのジェミナル
でない環の原子を架橋して、二環系核酸(BNA)を形成すること、および、4'-部位の環の酸素を-S-、-N(R)-、または-C(R1)(R2)といった、原子または基への置換、を含む
(しかしこれらには限定されない)、多くの方法で修飾され得る。修飾糖部分は周知であり、またこれらを使用して、オリゴマー化合物のその標的との親和性を変化、主に、上昇させ、および/またはヌクレアーゼ耐性を増加させることができる。好ましい修飾糖の代表的なリストには、限定的ではないが、LNAおよびENA(4'-(CH22-O-2'架橋)を含む(BNAの)二環系修飾糖、および、置換糖、特に2'-F、2'-OCH2、または2'-O(CH22-OCH3
置換基を有する2'-置換糖が含まれる。糖はその他の糖模倣基でも置換され得る。修飾糖
の調製方法は、当業者に周知である。
【0037】
本発明には、ヌクレオシドか、そうでなければ修飾モノマーユニットを結合させ、それによりオリゴマー化合物を形成する、ヌクレオシド間結合基が含まれる。ヌクレオシド間結合基の主な2つの分類は、リン原子の存在、あるいは不在により、定義される。リンを
含む代表的なヌクレオシド間結合基には、限定的ではないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、および、ホスホロチオエートが含まれる。リンを含まない代表的なヌクレオシド間結合には、限定的ではないが、メチレンメチルイミノ(-CH2-N(CH3)-O-CH2-)、チオジエステル(-O-C(O)-S-)、チオノカルバメート(-O-C(O)(NH)-S-)、シロキサン(-O-Si(H)2-O-)、および、N,N'-
ジメチルヒドラジン(-CH2-N(CH3)-N(CH3)-)が含まれる。非リンヌクレオシド間結
合基を有するオリゴマー化合物は、オリゴヌクレオシドと言われる。天然のホスホジエステル結合と比較して、修飾ヌクレオシド間結合を使用して、オリゴマー化合物のヌクレアーゼ耐性を変化、主に上昇させることができる。キラル原子を有するヌクレオシド間結合には、ラセミ化合物、キラル化合物、または混合物として調製され得る。代表的なキラルヌクレオシド間結合には、限定的ではないが、アルキルホスホネートおよびホスホロチオエートが含まれる。リンを含む結合、およびリンを含まない結合の調製方法は、当業者に周知である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、“模倣物”という言葉は、糖、核酸塩基、および/またはヌクレオシド間結合と置換された基をいう。模倣物は、構造的に全く異なる基であるが
(単なる修飾ではない)、機能的にはオリゴヌクレオチドの結合したヌクレオシドと類似している。一般に、模倣物は糖または糖-ヌクレオシド間結合の組み合わせの代わりに用
いられ、核酸塩基は選択された標的へのハイブリダイゼーションに関して、維持される。糖模倣物の代表的な例には、限定的ではないが、シクロヘキセニル、または、モルホリノが含まれる。糖-ヌクレオシド間結合の組み合わせにおける模倣物の代表的な例には、限
定的ではないが、ペプチド核酸(PNA)、および、非荷電アキラル(achiral)結合により結合したモルホリノ基が含まれる。いくつかの例では、模倣物は核酸塩基の代わりに用いられる。代表的な核酸塩基模倣物は当該技術分野において周知であり、限定的ではないが、それらには三環系フェノキサジンアナログおよび普遍的な塩基が含まれる(Bergerら、Nuc Acid Res. 2000、28: 2911-14本明細書中で参考文献として援用される)。糖、ヌク
レオシド、および、核酸塩基模倣物の合成方法は、当業者に周知である。
【0039】
本明細書中で使用される場合、“ヌクレオシド”という用語には、ヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、および模倣塩基および/または糖部分を有するヌクレオシドが含まれる。
【0040】
本発明の文脈において、“オリゴヌクレオチド”という用語は、リボ核酸(RNA)また
はデオキシリボ核酸(RNA)のオリゴマーまたはポリマーである、オリゴマー化合物をい
う。この用語には、天然に生じる核酸塩基、および非天然に作られた核酸塩基、糖、およびヌクレオシド間共有結合からなるオリゴヌクレオチドが含まれ、場合によってはさらに非核酸複合体が含まれる。
【0041】
本発明は、例えば、ホスホジエステルおよびホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、ヌクレオシド間結合を形成するのに有用な反応性リン基を有する化合物を提供する。本発明の前駆体またはオリゴマー化合物の調製および/または精製の方法は、本発明の組成物または方法を限定しない。本発明のDNA、RNA、およびオリゴマー化合物の合成および精製の方法は、当業者に周知である。
【0042】
本明細書中で使用する場合、“キメラオリゴマー化合物”という用語は、同じオリゴマー化合物内で、他の糖、核酸塩基、およびヌクレオシド間結合と比べて異なるように修飾された、少なくとも一つの糖、核酸塩基、および/またはヌクレオシド間結合を有する、オリゴマー化合物を言う。残りの糖、核酸塩基、および、ヌクレオシド間結合は、それらは異なるように修飾された一つまたは複数の部分から識別可能である場合には、独立して修飾されるか、または、修飾されないことが可能である。一般にキメラオリゴマー化合物は修飾ヌクレオシドを有し、それは分離した場所に存在するか、または特定なモチーフを定めるであろう領域に一緒に群をなして存在する可能性がある。修飾および/または模倣基のどのような組み合わせも、本発明のキメラオリゴマー化合物を含み得る。
【0043】
キメラオリゴマー化合物は、主に、ヌクレアーゼ分解への耐性の上昇、細胞内取り込みの上昇、および/または標的核酸への結合親和性の上昇を与えるための、少なくとも一つの領域の修飾を含む。オリゴマー化合物のさらなる領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドの切断を可能にする酵素の基質として働き得る。例として、RNase Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する、細胞内エンドヌクレアーゼである。RNase Hの活性化は、そのため、RNA標的の切断をもたらし、それにより遺伝子発現の阻害効果を非常に高める。し
たがって、同じ標的領域にハイブリダイズする、例えばホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、キメラを用いた場合、より短いオリゴマー化合物により同程度の結果をしばしば得ることができる。RNA標的の切断は通常ゲル電気泳動により検出可
能で、また、もし必要であれば、当該技術分野において周知の付随する核酸ハイブリダイゼーション技術により検出可能である。
【0044】
キメラでないオリゴマー化合物と、一部のキメラオリゴマー化合物は、さらに特定のモチーフを有すると記述され得る。本明細書中で使用される場合、“モチーフ”という用語は、同様にまたは異なる様に修飾された、あるいは修飾されていないヌクレオシドと比較したオリゴマー化合物における、修飾糖部分、および/または糖模倣基の配置をいう。本発明において使用される場合、“糖”、“糖部分”および“糖模倣基”という用語は、交換可能に使用される。前記モチーフには、限定的ではないが、ギャップモチーフ(gapped
motif)、交互モチーフ(alternating motif)、完全修飾モチーフ、ヘミマーモチーフ
(hemimer motif)、ブロックマーモチーフ(blockmer motif)、および部分的修飾モチ
ーフが含まれる。核酸塩基の配列および構造、およびヌクレオシド間結合の型は、オリゴマー化合物のモチーフを決定する際の因子ではない。
【0045】
本発明において使用される場合、“ギャップモチーフ”という用語は、2つの外部領域
(ウィング)に側面に挟まれた内部領域(ギャップ)の、3領域に分けられるヌクレオシ
ドの連続した配列を含むオリゴマー化合物をいう。少なくとも、異なるように修飾されヌクレオシドを含む糖部分を有することにより、領域はお互いに異なっている。いくつかの態様において、各修飾領域は統一的に修飾される(例えば、与えられた領域の修飾糖基は同一である);しかしながら,他のモチーフが領域に応用され得る。例えば、ギャップマーのウィングは交互モチーフを有し得る。内部領域またはギャップは、いくつかの例では、統一的な非修飾β-D-リボヌクレオシドまたはβ-D-デオキシリボヌクレオシドを含む可能性もあり、または、統一的な修飾糖を有するヌクレオシドの配列であってもよい。ギャップ化オリゴマー化合物のギャップに位置するヌクレオシドは、各ウィングの修飾糖部分とは異なる糖部分をもつ。
【0046】
本発明において使用される場合、“交互モチーフ”という用語は、本質的ににオリゴマー化合物の全体の配列において、または、本質的ににオリゴマー化合物のある領域の全体の配列において、交互になっている、2つの異なる糖修飾をされたヌクレオシドを含むヌ
クレオシドの隣接する配列を含むオリゴマー化合物をいう。交互のパターンは、5'-A(-L-B-L-A)n(-L-B)nn-3'という式により記述されることができ、ここで、AおよびBは、少なくとも異なる糖基をもつことにより異なるヌクレオシドであり、それぞれのLはヌクレ
オシド間結合基であり、nnは好ましくは0または1、また、nは好ましくは約5から約11であるが、約11よりも大きい数の可能性もある。この式はまた、交互オリゴマー化合物の長さが偶数および奇数であることも考慮に入れられており、3'と5'端のヌクレオシドは、同じか(奇数)、あるいは、異なる(偶数)。
【0047】
本発明で使用される場合、“完全に修飾されたモチーフ”は、本質的に、各ヌクレオシドが統一的な修飾をもつ糖修飾ヌクレオシドである、ヌクレオシドの連続した配列を含むオリゴマー化合物をいう。
【0048】
本発明において使用される場合、“ヘミマーモチーフ”という用語は、統一的な糖部分(修飾されているか、または修飾されていない同じ糖)をもち、ヘミマー修飾オリゴマー化合物での他のヌクレオシドとは異なる糖修飾ヌクレオシドである2から12ヌクレオシド
配列を、5'端か3'端のどちらかに有するヌクレオシド配列をいう。典型的なヘミマーの例は、片方の端に糖修飾ヌクレオシドの連続した配列をもつ、β-D-デオキシリボヌクレオ
シドを含むオリゴマー化合物である。
【0049】
本発明で使用される場合、“ブロックマーモチーフ”という用語は、統一的な糖(修飾されている、または修飾されていない同じ糖)をもち、統一的に修飾された糖修飾ヌクレオシドのブロックにより内側で中断され、そしてその修飾は他のヌクレオシドとは異なる、ヌクレオシド配列をいう。本発明の一つの観点において、ブロックマーモチーフを有するオリゴマー化合物は、2から6の糖修飾ヌクレオシドである一つの内部ブロックを有する
β-D-デオキシリボヌクレオシドの配列を含む。内部ブロック領域は、末端のヘミマーを
形成しうる1つではない限り、オリゴマー化合物内の、どこの部分でも可能である。キメ
ラオリゴヌクレオチド化合物の調製方法は、当業者に周知である。
【0050】
本発明で用いられる場合、“部分的に修飾されたモチーフ”という用語は、他の全てのモチーフを含む。部分的に修飾されたオリゴヌクレオチド化合物の調製方法は、当業者に既知である。
【0051】
本明細書中に記述される化合物は、一つまたはそれ以上の非対称中心を含み、そしてそのため、エナンチオマー、ジアステレオマー、および絶対立体化学の意味で、アミノ酸などについての(R) または(S)、αまたはβ、あるいは、(D)または(L)として定義され得る他の立体異性体構造を生じさせる。本発明は、前記の可能なすべてのアイソフォーム、そのラセミ体、および、光学的に純粋な型をも、含むことを意味する。
【0052】
本発明の一つの観点において、オリゴマー化合物は、一つまたはそれ以上の結合基との共有結合により、修飾される。結合基は、可逆的または非可逆的結合により結合され得る。結合基はオリゴマー化合物に直接、あるいは、リンカーの使用により、結合され得る。リンカーは単一または2つの機能性を持つリンカーであり得る。前記結合方法、および、
リンカーは、当業者に周知である。一般に、結合基はオリゴマー化合物に結合して、一つまたはそれ以上の特性を修飾する。前記考察は当業者に周知である。
【0053】
オリゴマー合成
修飾および非修飾ヌクレオシドのオリゴマー化は、DNA(Protocols for Oligonucleotides and Analogs、Ed. Agrawal (1993)、Humana Press)および/またはRNA(Scaringe、Methods (2001)、23、206-217、Gaitら、Application of Chemically synthesized RNA in RNA:Protein Interactions、Ed Smith (1998)、1-36、Galloら、Tetrahedron (2001)、57、5707-5713)における文献的手法に従って、日常的に行われ得る。
【0054】
本発明のオリゴマー化合物は、周知の固相合成の技術により便利にそして日常的に作られ得る。前記合成の装置は、例えばApplied Biosystems(Foster City, CA)を含むいく
つかの業者により販売されている。当該技術分野で既知の、前記合成のための、他のどの方法も、付加的または代替的に使用され得る。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体といったオリゴヌクレオチドの調製のために同様の技術を使用することは周知である。本発明はオリゴマー合成の方法により限定されない。
【0055】
オリゴマー精製および分析
オリゴヌクレオチド精製の方法および分析は、当業者に既知である。分析方法には、キャピラリー電気泳動(CE)およびエレクトロスプレー質量分析が含まれる。前記合成および分析方法は、マルチウェルプレートにおいても行われ得る。本発明の方法はオリゴマー精製の方法によって限定されない。
【0056】
ハイブリダイゼーション
“ハイブリダイゼーション”は、オリゴマー化合物の相補鎖の対合を意味する。特定の機構に限定的ではないが、最も一般的な対合の機構には、相補的ヌクレオシド間の、または、オリゴマー化合物の鎖のヌクレオチド塩基(核酸塩基)間の、ワトソンクリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合であり得る、水素結合が関与している。例えば、アデニンおよびチミンは相補的な核酸塩基であり、水素結合の形成により対合する。ハイブリダイゼーションは、環境の変化を受けて生じる可能性がある。
【0057】
オリゴマー化合物は、特異的な結合が望まれる条件、すなわち、in vivoアッセイまた
は治療処置の場合は生理学的条件において、および、in vitroアッセイの場合はアッセイが行われる条件下において、オリゴマー化合物の非標的核酸配列への非特異的な結合を避けられる、十分な程度の相補性があるときに、特異的にハイブリダイゼーションできる。
【0058】
“ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”または“ストリンジェントな条件”とは、その条件下でオリゴマー化合物がその標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とは最小数しかハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして、違う環境において異なり、また、オリゴマー化合物が標的配列とハイブリダイズする“ストリンジェントな条件”は、オリゴマー化合物の性質および組成、および、それらが調査されるアッセイにより決定される。
【0059】
本明細書中で使用される場合、“相補性”は、オリゴマー化合物の一本の鎖または二本の鎖上での2つの核酸塩基間の正確な対合のための能力をいう。例えば、もしアンチセン
ス化合物のある部位の核酸塩基が、標的核酸のある部位での核酸塩基と水素結合できるならば、そのときオリゴヌクレオチドと標的核酸との間の水素結合の部位は相補的な部位であるとみなされる。オリゴマー化合物、および、さらなるDNAまたはRNAは、それぞれの分子の十分な数の相補的部位がお互いに水素結合し得る核酸塩基により占められる場合、お互いに相補的である。従って“特異的にハイブリダイズできる”および“相補的な”というのは、オリゴマー化合物と標的核酸との間に安定で特異的な結合を生じさせる、十分な数の核酸塩基に渡る、十分な程度の正確な対合あるいは相補性を表すのに、用いられる用語である。
【0060】
同一性
オリゴマー化合物またはその部分は、SEQ ID NOまたは特定のIsis番号を有する化合物
に対して決められた%同一性を有し得る。本明細書中で使用する場合、配列は、それが同じ核酸塩基対合能を有するなら、本明細書中で開示される配列と同一である。例えば、本発明で開示される配列中のチミジンの代わりにウラシルを含むRNAは、両方ともアデニン
と対合するため、同一であるとみなされる。同様に、G-クランプ修飾複素環塩基はグアニンと対合するため、本出願の配列において、シトシンまたは5-Meシトシンと、同一であると見なされる。この同一性は、オリゴマー化合物長の全体に渡って、または、オリゴマー化合物の一部分であり得る(例えば、27 merの核酸塩基1-20は、オリゴマー化合物とSEQ ID NOとの%同一性を決定するために、20merと比較され得る)。オリゴヌクレオチドは、本明細書中に記述されるオリゴヌクレオチドと同様に機能するために、オリゴヌクレオチドが本明細書中に記述されるものと同一の配列をもつ必要はないことは、当業者により理解される。本明細書中で教示される短くした(すなわち、欠失した、およびそれゆえ同一でない)種類のオリゴヌクレオチド、または、本明細書中で教示される同一でない(例えば、一つの塩基を同一でない核酸塩基対をもつ他のもの、または、脱塩基部位に置換した)種類のオリゴヌクレオチドは、本発明の範囲内に含まれる。%同一性は、比較されるSEQ ID NOまたは化合物と一致する同一の塩基対合を有する塩基の数に従って、計算される
。同一でない塩基はお互いに隣接するか、オリゴヌクレオチド全体に分散するか、またはその両方である可能性がある。
【0061】
例えば、ある20 merの核酸塩基2-17と同じ配列をもつ16 merは、その20 merに対して80%同一である。あるいは、ある20 merに対して同一でない4個の核酸塩基を含む20 merも
また、その20 merに対して80%同一である。ある18 merの核酸塩基1-14と同じ配列をもつ14 merは、その18 merに対して78%同一である。このような計算は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0062】
%同一性は、修飾配列の部分に存在するもとの配列中の核酸塩基の百分率に基づいている。それゆえ、20個の核酸塩基SEQ NO IDの全長配列を含む30個の核酸塩基オリゴヌクレ
オチドは、さらに10個の核酸塩基部分の付加を含むが、20個の核酸塩基のSEQ ID NOと100%同一の部分をもつ。本発明の文脈において、修飾された配列の全長は、一つの部分を構成しうる。好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、活性標的部分、および/または本明細書中に示されるオリゴヌクレオチドに対して、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約90%同一である。
【0063】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さを増加または減少させること、および/または除去活性なしでミスマッチ塩基を挿入することが可能であることは、当業者に周知である。例えば、Woolfら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7305-7309、1992、本明細書中で
参考文献として援用される)において、卵母細胞注入モデルで、13-25個の核酸塩基長の
一連のオリゴマーが標的RNAの切断を誘導する能力について試験された。オリゴヌクレオ
チドの末端近くに8個または11個のミスマッチ塩基をもつ25個の核酸塩基長のオリゴヌク
レオチドは、ミスマッチを含まないオリゴヌクレオチドよりは少ない程度ではあるが、標的RNAの特異的な分解を導くことができた。同様に、標的特異的分解は、1個または3個の
ミスマッチを有するものを含む、13個の核酸塩基オリゴマーを用いて達せられた。Maher
およびDolnick(Nuc. Acid. Res. 16: 3341-3358、1988、本明細書中で参考文献として援用される)は、ウサギ網状赤血球アッセイにおいてヒトDHFRの翻訳を停止させる能力について、一連のタンデム型の14個の核酸塩基のオリゴヌクレオチド、および、2つまたは3つのタンデムオリゴヌクレオチド配列をそれぞれ含む、28個および42個の核酸塩基のオリゴヌクレオチドを試験した。3つの各14個の核酸塩基のオリゴヌクレオチドは、28個または42個の核酸塩基のオリゴヌクレオチドよりは弱いレベルであるが、単独で翻訳を阻害する
ことができた。
【0064】
標的核酸
特定の標的核酸分子に対してオリゴマー化合物を“標的化すること”は、多段階過程である可能性がある。その過程は通常、その発現が調節されるべき標的核酸の同定により始まる。例えば、標的核酸は、その発現が特定の障害または疾患に関連する細胞遺伝子(またはその遺伝子から転写されるmRNA)、または、感染性病原菌由来の核酸分子である可能性がある。本明細書中で開示される場合、標的核酸はIL 4R-αをコードする。
【0065】
標的領域、部分、および部位
標的化過程は通常、アンチセンス相互作用が、望ましい効果、例えば発現の調節を結果としてもたらすことを生じさせる、標的核酸内の少なくとも1つの標的領域、部分、また
は部位の決定をも含む。“領域”は、少なくとも1つの識別可能な構造、機能、または特
徴を有する、標的核酸のある部分として、定義される。標的領域には、限定的ではないが、翻訳開始、および終結領域、コード領域、オープンリーディングフレーム、イントロン、エキソン、3'-非翻訳領域(3'-UTR)および5'非翻訳領域(5'-UTR)が含まれる。標的
核酸の領域内の部分(segment)である。“部分”は、停止コドンおよび開始コドンとい
った、標的核酸内の領域の、より小さい、または、下位部分として定義される。本発明で使用される場合、“部位”は、スプライスジャンクションといった、標的核酸内の1つだ
けの核酸塩基部位として定義される。前記領域、部分、および部位は当業者に周知である。
【0066】
変異体
選択的RNA転写物は、同じゲノム領域のDNAから生産され得ることもまた、当該技術分野において知られている。これらの選択的転写物は、一般に“変異体”として知られている。より具体的には、“前駆mRNA変異体”は、同じゲノムDNAから生産される転写物で、同
じゲノムDNAから生産される他の転写物とはその開始または停止部位のどちらかが異なり
、また、イントロンおよびエキソン配列の両方を含むものである。変異体は、限定的ではないが、選択的スプライス部位、または、選択的開始および終止コドンをもつものを含む
mRNA変異体をもたらし得る。ゲノムおよびmRNA配列の変異体は、疾患をもたらし得る。前記変異体に対するオリゴヌクレオチドは、本発明の範囲内である。
【0067】
標的の名前、別名、特徴
IL 4R-α(インターロイキン4α受容体、CD124、IL-4Ra、インターロキン4受容体α鎖
としても知られる)の発現を調節する組成物および方法は、本発明に従っている。表1は
、IL 4R-αをコードする核酸分子に対応する配列のGenBankアクセッション番号(nt=ヌクレオチド)、その種類の配列がGenBankに登録された日、および、割り振られているもの
は、本出願における相当するSEQ ID NOのリストであり、それらのそれぞれは本明細書中
で参考文献として援用される。
【0068】
【表1】

【0069】
標的発現の調節
標的核酸の発現の調節は、あらゆる数の核酸(DNAまたはRNA)の機能を変化させることにより、達せられ得る。“調節”は、機能の摂動、例えば、発現の上昇(刺激または誘導)または低下(阻害または減少)のどちらかを意味する。他の例としては、発現の調節は、前駆mRNAプロセッシングのスプライス部位選択の摂動を含み得る。“発現”には、それによって遺伝子によりコードされた情報が、細胞において、存在し、また動作する構造へと変換される、すべての機能が含まれる。これらの構造には、転写および翻訳産物が含まれる。“発現の調節”は、前記機能の摂動を意味する。調節されるmRNAの機能には、限定的ではないが、タンパク質翻訳部位へのRNAの転位、RNA合成の部位とは遠い細胞内の部位へのRNAの転位を含む転位機能を含み、また、RNAからのタンパク質の翻訳を含むことができる。調節され得るRNAプロセッシング機能には、限定的ではないが、1つあるいはそれ以上のRNA種を得るRNAのスプライシング、RNAのキャッピング、RNAの3'成熟化、および、RNAに携わっている、または、RNAにより促進することができる、RNAが関与する触媒活性ま
たは複合体形成が含まれる。発現の調節は、一時的、または、定常レベルのどちらかで、1つあるいはそれ以上の核酸種のレベルの上昇、または、1つあるいはそれ以上の核酸種のレベルの減少という結果となり得る。標的核酸の機能への前記干渉の一つの結果が、IL 4R-αの発現の調節である。従って、一つの態様において、発現の調節は、標的RNAまたは
タンパク質レベルの上昇または減少を意味し得る。他の態様において、発現の調節は、1
つまたはそれ以上のRNAスプライス産物の上昇または減少、あるいは、2つまたはそれ以上のスプライス産物の比率の変化を意味し得る。
【0070】
標的核酸発現に対する本発明のオリゴマー化合物の効果は、測定可能なレベルで標的核酸が存在する場合に、あらゆる多様な細胞型において、試験されることが可能である。標
的核酸発現に対する本発明のオリゴマー化合物の効果は、通常、例えばPCRまたはノザン
ブロット分析を用いて、決定され得る。細胞株は、正常な組織および細胞型の両方から、および、様々な障害(例えば過剰増殖性障害)に関連する細胞から得られる。複数の組織および種由来の細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)より入手することができ、それは、当業者に周知である。初代細胞または、動物より単離されて、かつ継続的な培養を受けない細胞は、当該技術分野において既知の方法に従って調製されるか、様々な商業的供給者より入手することができる。さらに、初代細胞には、臨床条件におけるヒト被験者のドナー(すなわち、血液ドナー、手術患者)より得られるものも含まれる。初代細胞は、当該技術分野において既知の方法により調製される。
【0071】
発現調節アッセイ
IL 4R-α発現の調節は、当該技術分野において既知の様々な方法によりアッセイされ得る。IL 4R-αmRNAレベルは、例えば、ノザンブロット分析、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはリアルタイムPCRにより定量され得る。RNA分析は、全細胞RNAまたはpoly(A)+mRNAについて、当該技術分野において既知の方法により行われ得る。RNA単離の方法は、例えばAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 1、pp4.1.1-4.2.9および4.5.1-4.5.3、John Wiley & Sons、Inc.、1993に教示される。
【0072】
ノザンブロット分析は、当該技術分野では日常的であり、そして、例えばAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 1、pp4.2.1-4.2.9、John Wiley
& Sons、Inc.、1996に教示される。リアルタイム定量(PCR)は、PE-Applied Biosystems、Foster City、CAより入手できる、商業的に入手可能な、PRISMTM 7700 Sequence Detection Systemを用いて便利に達成することができ、メーカーの使用説明書に従って使用することができる。RNAレベル調節の分析方法は、本発明の限定ではない。
【0073】
IL 4R-αによりコードされるタンパク質のレベルは、免疫沈降、ウェスタンブロット分析(免疫ブロッティング)、ELISA、または蛍光活性化細胞分画装置(FACS)といった、
当該技術分野で周知の様々な方法において定量され得る。IL 4R-αによりコードされるタンパク質に対する抗体は、MSRS抗体カタログ(Aerie Corporation、Birmingham、MI)と
いった様々な出所から、同定および入手することが可能であり、そうでなければ、従来の抗体産生方法により調製され得る。ポリクローナル抗血清の調製方法は、例えばAusubel,
F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 2、pp11.12.1-11.12.9、John Wiley & Sons、Inc.、1997により教示される。モノクローナル抗体の調製は、例えばAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 2、pp11.4.1-11.11.5、John Wiley & Sons、Inc.、1997により教示される。
【0074】
免疫沈降法は、当該技術分野において標準的であり、そして、例えばAusubel, F.M.ら
、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 2、pp10.16.1-10.16.11、John Wiley & Sons、Inc.、1998に見いだされ得る。ウェスタンブロット(免疫ブロット)分析は
当該技術分野において標準的であり、そして、例えば、Ausubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 2、pp10.8.1-10.8.21、John Wiley & Sons、Inc.、1997に見いだされ得る。酵素免疫測定法(ELISA)は、当該技術分野において標準的であ
り、そして、例えば、Ausubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Volume 2、pp11.2.1-11.2.22、John Wiley & Sons、Inc.、1991に見いだされ得る。
【0075】
確認標的部分
活性オリゴマー化合物がハイブリダイズする標的核酸の場所は、本明細書中以下において“確認標的部分”といわれる。本明細書中で使用される場合、“確認標的部分”という用語は、活性オリゴマー化合物により標的とされる標的領域の少なくとも8個の核酸塩基
部分、好ましくは、標的領域の少なくとも12個の核酸塩基部分として定義される。理論に
縛られることを望むものではないが、これらの標的部分が、ハイブリダイゼーションのために接近しやすい標的核酸の部分を示していると現在は考えられている。
【0076】
標的部分には、確認標的部分の5'末端から少なくとも8個、好ましくは12個の連続した
核酸塩基を含む、DNAまたはRNA配列を含み得る(残りの核酸塩基は、標的部分の5'末端のすぐ上流から始まる同じDNAまたはRNAの連続的伸長であり、DNAまたはRNAが約12個から約35個の核酸塩基を含むまで続く)。同様に、確認標的部分は、確認標的部分の3'末端から少なくとも8個、好ましくは12個の連続的な核酸塩基を含む、DNAまたはRNA配列により示
される(残りの核酸塩基は、標的部分の3'末端のすぐ下流から始まる同じDNAまたはRNAの連続的伸長であり、DNAまたはRNAが約12個から約35個の核酸塩基を含むまで続く)。確認オリゴマー標的部分は、確認標的部分の配列の内側部分から、少なくとも8個、好ましく
は12個の連続的な核酸塩基を含む、DNAまたはRNA配列により示されることが可能であり、そして、オリゴヌクレオチドが約12個から約35個の核酸塩基を含むまで、どちらかの方向、または両方向に伸長し得ることもまた理解される。
【0077】
モジュレータオリゴマー化合物のスクリーニング
他の態様において、本明細書中で同定される確認標的部分は、IL 4R-αの発現を調節する更なる化合物のスクリーニングに使用され得る。“モジュレータ”とは、IL 4R-αの発現を調節し、確認標的部分に相補的な少なくとも8個の核酸塩基部分を含むような化合物
である。スクリーニング方法は、IL 4R-αをコードする核酸分子の確認標的部分を、一つまたはそれ以上の候補モジュレータと接触させること、そして、IL 4R-αをコードする核酸分子の発現を摂動させる一つまたはそれ以上の候補モジュレータを選択することという段階を含む。候補モジュレータまたは複数の候補モジュレータが、IL 4R-αをコードする核酸分子の発現を調節することができることが示されると、次にモジュレータはさらなるIL 4R-αの機能の調査研究、または、研究用、診断用、あるいは治療用物質としての使用に用いられ得る。
【0078】
IL 4R-αのモジュレータ化合物もまた、特定の疾患または症状の処置における効果を予測する測定可能な評価項目をそれぞれ有する、1つあるいはそれ以上の表現型アッセイを
用いて、同定しまたはさらに調査をすることができる。それらの使用のため表現型アッセイ、キットおよび試薬は、当業者に周知である。
【0079】
キット、研究試薬、および診断薬
本発明のオリゴマー化合物は、診断薬のため、および研究用の試薬およびキットとして用いられ得る。さらに、特異性をもつ遺伝子発現を阻害することができる、アンチセンス化合物は、特定の遺伝子機能の解明、または生物学的経路の様々なメンバーの機能の判別のために、当業者によりしばしば使用される。
【0080】
キットおよび診断薬での使用において、本発明のオリゴマー化合物は、単独または他の化合物または治療薬との組み合わせで、差異的解析および/または組み合わせ解析におけるツールとして、細胞および組織内で発現する遺伝子の一部または全体の相補体の発現パターンの解明に、使用され得る。遺伝子発現分析方法は、当業者に周知である。
【0081】
治療薬
本発明の化合物は、ヒトなどの動物におけるIL 4R-αの発現を調節するのに使用され得る。1つの限定的ではない態様において、この方法は、IL 4R-αの発現を阻害する、効果
的な量のアンチセンス化合物を、前記動物へ投与する段階を含む。1つの態様において、
本発明のアンチセンス化合物は、IL 4R-αRNAのレベルまたは機能を効果的に阻害する。IL 4R-αmRNAレベルの減少は、IL 4R-αタンパク質発現産物の変化をもたらすことができ
るため、そういった変化の結果もまた、測定することができる。IL 4R-αRNAのレベルま
たは機能、あるいは、タンパク質発現産物を効果的に阻害する本発明のアンチセンス化合物は、活性アンチセンス化合物であるとみなされる。1つの態様において、本発明のアン
チセンス化合物は、IL 4R-αの発現を阻害し、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のRNAの減少を引き起こす。
【0082】
例えば、IL 4R-αの発現の減少は、動物の体液、組織、または器官において測定され得る。体液(例えば、唾液)、組織(例えば、生検)または器官といった分析用の試料を入手する方法、および、分析を可能にする試料の調製方法は、当業者に周知である。RNAお
よびタンパク質レベルの分析方法は、上記で議論されており、当業者に周知である。処置の効果は、当該技術分野において既知の日常的な臨床的方法により、1あるいはそれ以上
の本発明の化合物と接触された動物から集められた、前述の液体、組織、または器官での標的遺伝子発現に関連するバイオマーカーを測定することにより評価され得る。これらのバイオマーカーには、限定的ではないが、肝臓トランスアミナーゼ、ビリルビン、アルブミン、血液尿素窒素、クレアチン、およびその他の腎および肝臓機能のマーカー、インターロイキン、腫瘍壊死因子、細胞内接着分子、C-反応タンパク質、および他の炎症のマーカーが含まれる。
【0083】
本発明の化合物は、適切な医薬的に許容可能な希釈剤または担体に、効果的な量の化合物を添加することにより、医薬的組成物として使用され得る。許容可能な担体および希釈剤は当業者に周知である。希釈剤または担体の選択は、限定的ではないが、化合物の溶解度、および投与経路を含む、多くの因子に基づく。前記の考慮は、当業者によりよく理解される。1つの観点において、本発明の化合物はIL 4R-αの発現を阻害する。本発明の化
合物は、IL 4R-α発現に関連する疾患および障害の処置のための薬剤の製造にもまた使用され得る。
【0084】
体液、器官または組織を、効果的な量の、本発明の一またはそれ以上のアンチセンス化合物または組成物と接触させる方法もまた、企図されている。体液、器官または組織を、本発明の一またはそれ以上の化合物と接触させることができ、体液、器官または組織の細胞内でのIL 4R-α発現の調節という結果が得られる。当業者にとって基本的な方法により、標的核酸またはその産物に対する、1または複数のアンチセンス化合物または組成物の
調節効果をモニターする事により、効果的な量は決定され得る。
【0085】
このように、本明細書で提供されるのは、上述の方法の手段により、疾患または障害の処置のための薬剤の製造における、IL 4R-αを標的とした、単離された一本鎖または二本鎖オリゴマー化合物の使用である。好ましい態様において、オリゴマー化合物は一本鎖化合物である。
【0086】
塩、プロドラッグ、および、生物学的同等物
本発明のオリゴマー化合物は、ヒトを含む動物への投与において、生物学的に活性な代謝物またはその残渣を(直接的または間接的に)提供することができる、すべての医薬的に許容可能な塩、エステル、または前記エステルの塩、またはその他の機能的な化学的に同等物すべてを含む。従って、例えば、開示は、プロドラッグ、および、本発明のオリゴマー化合物の医薬的に許容可能な塩、前記プロドラッグの医薬的に許容可能な塩、および、その他の生物学的同等物についてもまた記述される。
【0087】
“プロドラッグ”という用語は、不活性、または、活性の少ない形で調製され、生体またはその細胞内で、内因性の酵素、化学物質、および/または状態の作用により、活性型(すなわち薬物)に変換される治療薬を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロ
ドラッグ版は、WO 93/24510またはWO 94/26764に開示される方法に従って、SATE((S-アセチル-2-チオエチル)ホスフェート)誘導体として調製される。プロドラッグは、一つ
または両方の末端に、切断されて(例えばホスホジエステルバックボーン結合)活性化合物を生産する核酸塩基を含む、オリゴマー化合物もまた含み得る。
【0088】
“医薬的に許容可能な塩”という用語は、本発明の化合物の生理学的および医薬的に許容可能な本発明の化合物の塩、すなわち、本発明の化合物の望ましい生物学的活性を維持し、望ましくない毒性効果をそれに与えない塩をいう。アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩は、有用であり、そして、ヒトへの治療的投与において十分に許容される。他の態様において、dsRNA化合物のナトリウム塩もまた、提供される。
【0089】
製剤
本発明のオリゴマー化合物はまた、他の分子、分子構造または化合物の混合物と、混合され、カプセル化され、結合され、またそうでなければ、付随され得る。
【0090】
本発明にはまた、本発明のアンチセンス化合物を含む医薬的組成物および製剤をも含まれる。本発明の医薬的組成物は、局所または全身性の処置が望ましいかに応じて、および処置される場所に応じて、多くの方法で投与され得る。好ましい態様において、投与は、口および/または鼻により、例えば、噴霧、吸入または粉末の吸入、またはエアロゾルによって、呼吸器管の表面、特に肺、に局所的である。
【0091】
本発明の医薬的製剤は、便利に単位投与剤形で示されることができ、製薬産業において周知の従来の技術に従って調製され得る。前記技術には、活性成分と医薬的担体または賦形剤とを一緒にする段階が含まれる。一般に、製剤は、均一かつ密接に、活性成分を液体担体、細かく分割された固体担体、またはそれら両方と一緒にし、そして次に必要であれば、産物を(例えば、送達のため特定の粒子サイズに)成形することにより調製される。好ましい態様において、本発明の医薬的製剤は、適当な溶媒、例えば、水または生理食塩水、場合により滅菌製剤で、担体またはその他の物質と、吸入器、鼻への送達装置、ネブライザー、および肺への送達のための他の装置を用い、送達のため望ましい直径の液滴の形成ができるように、肺投与用に調製される。または、本発明の医薬的製剤は、ドライパウダー吸入器での使用のため乾燥粉末として、製剤され得る。
【0092】
“医薬的担体”、または“賦形剤”は、動物に一つまたはそれ以上の核酸を輸送するための、医薬的に許容可能な溶媒、懸濁剤、または他の医薬的に不活性な賦形剤であることが可能であり、当該技術分野において既知である。賦形剤は液体、または固体である可能性があり、所定の医薬的組成物の核酸およびその他の構成成分と組み合わさった際、望ましい量、濃度などを提供するために、計画された投与方式を念頭において選択される。
【0093】
組み合わせ
本発明の組成物は、2つあるいはそれ以上のオリゴマー化合物を含み得る。他の関連す
る態様において、本発明の組成物は、1あるいはそれ以上のアンチセンス化合物、特に、
第一の核酸を標的としたオリゴヌクレオチド、および、第二の核酸標的を標的とする1あ
るいはそれ以上のさらなるアンチセンス化合物を含み得る。または、本発明の組成物は、同じ核酸標的の別の領域を標的とする2つまたはそれ以上のアンチセンス化合物を含み得
る。2つまたはそれ以上が組合わさった化合物は、一緒にまたは連続して用いられ得る。
本発明の組成物はまた、その他の、オリゴマー化合物でない治療薬と組み合わせられる可能性もある。
【0094】
限定的ではない開示、および参考文献による援用
本発明の特定の化合物、組成物、および方法は、特定の態様に従って特異的に記述され
ており、以下の実施例は本発明の化合物を例証するためのみに働き、また、同じものに限定する意図はない。参考文献、GenBankアクセション番号、および本出願中で列挙した同
様のものはそれぞれ、本明細書中にそれ全体を参考文献として援用される。
【実施例】
【0095】
実施例1 細胞型
オリゴマー化合物の標的核酸発現に対する作用を、細胞型において試験した。
A549:
ヒト肺癌細胞株A549を、American Type Culture Collection(Manassas, VA)から取得した。A549細胞を、10%ウシ胎仔血清、100ユニット/mlのペニシリン、および100μg/ml
のストレプトマイシン(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を添加したDMEM、高グルコース(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中で日常的に培養した。細胞を、細胞がおよそ90%コンフルエントに達した際に、トリプシン処理および希釈により日常的に継代した。細胞を、オリゴマー化合物トランスフェクション実験において使用するために、96-ウェルプレート(Falcon-Prirnaria#3872)に、約5000細胞/ウェルの
密度でまいた。
【0096】
b.END:
マウス脳内皮細胞株b.ENDを、Max Plank Institute(Bad Nauheim, Germany)のDr. Werner Risauから入手した。b.END細胞を、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を添加したDMEM、高グルコース(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中で日常的に培養した。細胞を、細胞がおよそ90%コンフルエントに達し
た際に、トリプシン処理および希釈により日常的に継代した。細胞を、オリゴマー化合物トランスフェクション実験において使用するために、96-ウェルプレート(Falcon-Primaria #353872, BD Biosciences, Bedford, MA)に、約3000細胞/ウェルの密度でまいた。
【0097】
オリゴマー化合物による処理
細胞が適切なコンフルエントに達した際、細胞を、トランスフェクション脂質および方法、例えばLipofectinTMを本質的に記載された通り製造者の指示により使用して、オリゴヌクレオチドにより処理する。
【0098】
細胞が65〜75%のコンフルエントに達した際、細胞をオリゴヌクレオチドにより処理した。オリゴヌクレオチドを、Opti-MEMTM-1血清減少培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中LIPOFECTINTM(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)と混合し、所望の濃度のオリゴヌクレオチドおよび100 nMオリゴヌクレオチドあたり2.5また
は3μg/mLのLIPOFECTINTM濃度をもたらす。このトランスフェクション混合物を、室温に
て約0.5時間インキュベートした。96-ウェルプレート中で増殖させた細胞に対して、100
μL OPTI-MEMTM-1によりウェルを1回洗浄し、その後130μLのトランスフェクション混合
物により処理した。24-ウェルプレートまたはその他の標準的な組織培養プレート中で増
殖させた細胞を、適切な容量の培地およびオリゴヌクレオチドを使用して、同様に処理した。細胞を処理し、そしてデータを二重または三重にして取得する。37℃でおよそ4〜7時間の処理後、トランスフェクション混合物を含有する培地を、新鮮な培養培地により置換した。オリゴヌクレオチド処理後16〜24時間後に、細胞を回収した。
【0099】
オリゴヌクレオチドを細胞に送達するためのその他のトランスフェクション試薬および方法(例えば、エレクトロポレーション)が周知である。オリゴヌクレオチドを細胞に対して送達する方法は、本願発明の限定要素ではない。
【0100】
対照オリゴヌクレオチド
対照オリゴヌクレオチドを使用して、特定の細胞株についての最適オリゴマー化合物濃
度を決定する。さらに、本発明のオリゴマー化合物をオリゴマー化合物スクリーニング実験または表現型アッセイにおいて試験する場合、対照オリゴヌクレオチドを本発明の化合物と平衡して試験する。
【0101】
使用されるオリゴヌクレオチド濃度は、細胞株ごとに変化させる。特定の細胞株についての最適オリゴヌクレオチド濃度を決定するため、細胞をある濃度範囲の陽性対照オリゴヌクレオチドにより処理する。次いで、標的mRNAの80%阻害をもたらす陽性対照オリゴヌクレオチド濃度を、その細胞株についての次の実験における新たなオリゴヌクレオチドについてのスクリーニング濃度として使用する。80%の阻害が達成されない場合、標的mRNAの60%の阻害を引き起こす陽性対照オリゴヌクレオチドの最低濃度を、その細胞株について引き続いて実験する際にオリゴヌクレオチドスクリーニング濃度として利用する。60%の阻害が達成されない場合、その特定の細胞株はオリゴヌクレオチドトランスフェクション実験については適していないものと判断する。本明細書において使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがリポソーム試薬を使用してトランスフェクトされる場合には50 nM〜300 nMであり、そしてアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドがエレクトロポレーションによりトランスフェクトされる場合には1μM〜40μMである。
【0102】
実施例2 IL 4R-αmRNAレベルのリアルタイム定量PCR解析
IL 4R-αmRNAレベルの定量は、ABI PRISMTM 7600、7700、または7900配列検出システム(PE-Applied Biosystems, Foster City, CA)を製造者の指示に従って使用して、リアルタイム定量PCRにより行った。
【0103】
定量PCR解析の前に、測定される標的遺伝子に対して特異的なプライマー-プローブセットを、それらがGAPDH増幅反応とともに“多重化される”能力について評価した。単離し
た後、RNAを連続的逆転写酵素(RT)反応およびリアルタイムPCRに供し、その両方ともを同一ウェル中で行う。RT試薬およびPCR試薬は、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)から取得した。RT、リアルタイムPCRを、20μLのPCRカクテル(MgCl2を含まない2.5×PCRバッファー、6.6 niM MgCl2、各375μMのdATP、dCTP、dCTPおよびdGTP、各375 nMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、125 nMのプローブ、4 UnitsのRNAse阻害剤、1.25 UnitsのPLATINUM(登録商標)Taq、5 Units MuLV逆転写酵素、そして2.5×ROX色素)を、30μLの全RNA溶液(20〜200 ng)を含有する96-ウェルプレートに対して添加することにより、同様にして行った。RT反応を、48℃にて30分間インキュベーションすることにより行った。95℃にて10分間のインキュベーションを行って、PLATINUM(登録商標)Taqを活性化した後、40サイクルの2工程PCRプロトコルを行った:95℃にて15秒間(
変性)、その後60℃にて1.5分間(アニーリング/伸長)。
【0104】
RT、リアルタイムPCRにより取得された遺伝子標的量を、発現が一定な遺伝子であるGAPDHの発現レベルを使用して、または全RNAをRiboGreenTM(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を使用して定量することにより、正規化した。GAPDHの発現を、標的と同時に、多重的に、または別々に、実行することにより、RT、リアルタイムPCRにより定量した。全RNAを、RiboGreenTM RNA定量試薬(Molecular Probes, tic. Eugene, OR)を使用して定量した。
【0105】
170μLのRiboGreenTM作用試薬(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH 7.5中で1:350に希釈したRiboGreenTM試薬)を、30μLの精製細胞RNAを含有する96-ウェルプレート中にピペッティングにより入れた。485 nmでの励起および530 nmでの放射により、CytoFluor 4000(PE Applied Biosystems)中でこのプレートを読みとった。
【0106】
GAPDH PCRプローブは、5'末端に共有結合したJOEおよび3'末端に共有結合したTAMRAま
たはMGBを有し、ここでJOEは、螢光リポーター色素であり、そしてTAMRAまたはMGBはクエンチャー色素である。いくつかの細胞型において、異なる種に由来するGAPDH配列に対し
て設計したプライマーおよびプローブを使用して、GAPDHの発現を測定する。例えば、ヒ
トGAPDHプライマーおよびプローブセットを使用して、サル-由来細胞および細胞株におけるGAPDHの発現を測定する。
【0107】
リアルタイムPCRにおいて使用するためのプローブおよびプライマーを、標的-特異的配列に対してハイブリダイズするように設計した。プライマーおよびプローブおよびそれらがハイブリダイズする標的核酸配列は、表2中に示される。標的-特異的PCRプローブは、5'末端に共有結合されたFAMおよび3'末端に共有結合されたTAMRAまたはMGBを有し、ここでFAMは蛍光色素であり、そしてTAMRAまたはMGBはクエンチャー色素である。
【0108】
【表2】

【0109】
実施例3 オリゴマー化合物による、マウスIL-4Rαのアンチセンス阻害
一連のオリゴマー化合物を、表1に引用した公開された配列を使用して、マウスIL 4R-
αRNAの異なる領域を標的化するように設計した。化合物は、表3に示される。表3中のす
べての化合物は、20ヌクレオチド長のキメラオリゴヌクレオチド(“ギャップマー”)であり、10個の2'-デオキシヌクレオチドからなる中央部“ギャップ”領域、およびその両
側(5'および3')に5-ヌクレオチドの“ウィング”が隣接するものから構成される。ウィングは、2'-MOEヌクレオチドとしても知られている2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成される。ヌクレオシド間(バックボーン)結合は、オリゴヌクレオチドの全体にわたりホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は、5-メチルシチジンである。これらの化合物を、それらの遺伝子標的mRNAレベルに対する作用について、本明細書中のその他の実施例において記載される様に、表2に示される標的-特異的プライマーおよびプローブを使用して、定量的リアルタイムPCRにより解析した。データは、2回の実験からの平均であり、ここで、b.END細胞はLipofectinTMを使用して150 nMの表3中の化合物により処理した。発現の減少は、表3において%阻害として示される。オリゴマー化合物-処理細胞の標的発現レベルが対照よりも高い場合、%阻害をゼロ阻害として表す。これらのオリゴマー化合物が阻害性である標的領域は、本明細書中において、“確認標的部分(validated target segments)”と呼ばれる。
【0110】
【表3−1】

【0111】
【表3−2】

【0112】
【表3−3】

【0113】
M64868.1およびM64879.1から組み立てられたGenBank配列の以下の領域を標的とするす
べてのオリゴヌクレオチドが、上記の表により示されるように、IL 4R-αの発現を少なくとも40%阻害するのに有効であった:ヌクレオチド2506〜2525および2804〜2323。これらは、確認標的部分である。SEQ ID NO: 2の以下の領域を標的化するすべてのオリゴヌクレオチドは、上記の表により示されるように、IL 4R-αの発現を少なくとも40%阻害するのに有効であった:ヌクレオチド78-97;233-263;330-349;388-407;443-462;611-630;716-740;758-777;918-9937;1014-1033;1114-1133;1136-1155;1385-1314;1424-1459;1505-1534;1575-1594;1834-1863;1880-1899;1991-2030;2979-2103;2166-2185;2437-2461;2469-2488;2497-2526;2719-2738;2788-2817;2827-2846;2859-2888;3345-3374;および3671-3697。これらは、確認標的部分である。
【0114】
実施例4 オリゴマー化合物によるヒトIL 4R-αのアンチセンス阻害
一連のオリゴマー化合物を、表1において引用した公開された配列を使用して、ヒトIL 4R-αRNAの異なる領域を標的とするように設計した。これらの化合物は、表4および表5に示される。表4および表5中のすべての化合物は、20ヌクレオチドの長さのキメラオリゴヌクレオチド("ギャップマー")であり、10個の2'-デオキシヌクレオチドからなる中央部
“ギャップ”領域、その両側(5'および3')に5-ヌクレオチドの“ウィング”が隣接するものから構成される。ウィングは、2'-MOEヌクレオチドとしても知られている2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成される。ヌクレオシド間(バックボーン)結合は、オリゴヌクレオチドの全体にわたりホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は、5-メチルシチジンである。これらの化合物を、それらの遺伝子標的mRNAレベルに対する作用について、本明細書中のその他の実施例において記載される様に、表2に示される標
的-特異的プライマーおよびプローブを使用して、定量的リアルタイムPCRにより解析した。データは、2回の実験からの平均であり、ここで、A549細胞はLipofectinTMを使用して
、85 nMの表4中の化合物により処理し、そして70 nMの表5中の化合物により処理した。発現の減少は、表4および表5において%阻害として示される。オリゴマー化合物-処理細胞
の標的発現レベルが対照よりも高い場合、%阻害をゼロ阻害として表す。これらのオリゴマー化合物が阻害性である標的領域は、本明細書中において、“確認標的部分(validated target segments)”と呼ばれる。
【0115】
【表4−1】

【0116】
【表4−2】

【0117】
【表5−1】

【0118】
【表5−2】

【0119】
【表5−3】

【0120】
【表5−4】

【0121】
SEQ ID NO: 3の以下のヌクレオチドを標的とするオリゴヌクレオチドは、上記の表により示されるように、ヒトIL 4R-αの発現を少なくとも約40%阻害するのに有効であった:ヌクレオチド167-265;284-303;353-372;428-450;487-525;530-550;619-640;642-668;735-760;777-796;917-950;998-1025;1053-1072;1077-1121;1160-1203;1221-1246;1395-1420;1492-1528;1608-1627;1670-1695;1700-1735;1777-1801;1976-1995;1997-2016;2056-2088;2056-2101;2126-2150;2230-2349;2390-2422;2524-2598;2626-2662;2674-2693;2731-2791;2856-2880;2915-2934;3053-3072;3103-3122;3168-3187;3198-3217;3297-3322;および3420-3451。これらは、確認標的部分である。それ
ぞれのヌクレオチド領域内のいくつかのオリゴヌクレオチドは、発現を少なくとも40%阻
害しなかったが、それらは発現を少なくとも40%阻害するのに有効であるオリゴヌクレオ
チドと実質的に重複した(すなわち、少なくとも80%重複した)。SEQ ID NO: 1の以下の領域を標的化するすべてのオリゴヌクレオチドは、上記の表により示されるように、IL 4R-αの発現を少なくとも50%阻害するのに有効であった:ヌクレオチド284-303;428-450;494-525;530-550;642-668;1053-1072;1184-1203;1221-1246;1506-1527;1777-1801;1976-2016;2056-2101;2126-2150;2230-2349;2403-2422;2524-2551;2578-2598
;2743-2782;2856-2880;2915-2934および3168-3187。これらは、確認標的部分である。NT 010393.14のGenBankヌクレオチド18636000-18639000の領域を標的化するすべてのオリゴヌクレオチドは、上記の表により示されるように、IL 4R-αの発現を少なくとも40%するのに有効であった:ヌクレオチド8231-8250および47104-47123。これらは、確認標的部分である。
【0122】
実施例5 ヌクレオチドミスマッチを含有するオリゴヌクレオチドのスクリーニング、
用量反応性
上述のスクリーニングに基づき、さらなる研究のためにISIS 231894を選択した。以下
の表6に示される1、3、5、および7個のミスマッチ核酸塩基を含有するISIS 231894に基づいて、一連のオリゴヌクレオチドを設計した。ミスマッチは、化合物の末端部分ではなく、化合物の中央部分全体に点在することに注目すべきである。これにより、末端側にミスマッチを有するオリゴヌクレオチドよりも、標的mRNAに対するオリゴヌクレオチドの親和性が低下する。このような概念は周知であり、そして当業者により理解される。オリゴヌクレオチドは、ISIS 231894と同様に、5-10-5 MOE-ギャップマーである。すべてのシチジン残基は、5-メチルシチジンである。ミスマッチ塩基には下線を引いた。
【0123】
【表6】

【0124】
これらの化合物を、遺伝子標的mRNAレベルに対するそれらの作用について、本明細書中のその他の実施例において記載される様に、表2に示される標的-特異的プライマーを使用して、定量的リアルタイムPCRにより解析した。データは、b.END細胞を列挙した化合物により処置した場合の2回の実験からの平均である。
【0125】
【表7】

【0126】
化合物の中央部部分内に点在する少なくとも3箇所のミスマッチ塩基を有するヌクレオ
チドは、試験されたオリゴヌクレオチドの最高濃度であっても、少なくとも40%までは標的RNAの発現を減少させることができなかった。
【0127】
実施例6: アレルギー性炎症のマウスモデル
喘息は、疾患重症度および期間に関して様々なバリエーションを有する複合的疾患である。この点に鑑み、複数の動物モデルを設計し、この疾患の様々な観点を反映させた(図1を参照)。これらのモデルは、感作の日数および治療の日数に関して、いくらかの柔軟
性を有すること、そしてもたらされた時系列が本明細書中で使用される日数を反映することが、理解される。ヒト喘息とアレルギー性炎症のマウスモデルとに共通するいくつかの重要な特徴が存在する。これらのうちの一つは、Th2サイトカイン、例えば、IL 4、IL 5
、IL 9、およびIL 13、の産生が優勢である肺炎である。別の例は、粘液産生の増加を伴
う杯細胞化生である。最後に、気道過敏性(AHR)が生じ、結果としてアセチルコリンま
たはメタコリンなどのコリン作動性受容体アゴニストに対する感受性が上昇した。
【0128】
オボアルブミン誘導性アレルギー性炎症〜急性モデル
誘導性アレルギー性炎症の急性モデルは、予防的治療のパラダイムである。動物を全身性投与(すなわち、腹腔内注射)によりアレルゲンに対して感作し、そして治療剤を用いて治療し、その後肺アレルゲンチャレンジの投与を行った(図1Aを参照)。このモデルにおいて、治療剤の投与後には本質的に一例も肺炎が存在しない。
【0129】
Balb/cマウス(Charles River Laboratory, Taconic Farms, NY)を、特定病原体フリ
ー(SPF)の施設中、小型-アイソレーターケージ中で維持した。動物コロニー内の前哨ケージを、ウィルス抗体および既知のマウス病原体の存在について陰性であることについて調査した。マウスを感作し、そしてエアロゾルかニワトリOVAによりチャレンジした。簡
単に説明すると、20μgのミョウバン沈殿OVAをday 0およびday 14に腹腔内に注射した。day 24、day 25およびday 26に、超音波噴霧により1%OVA(塩類溶液中)に対して、動物
を20分間暴露した。day 17、day 19、day 21、day 24およびday 26に、1μg/kgまたは10
μg/kgのISIS 231894またはミスマッチ対照オリゴヌクレオチドを、エアロゾル送達シス
テムを使用して動物に投与した。ヌクレオチドを0.9%塩化ナトリウムに懸濁し、そして
鼻専用暴露システムを使用する吸入を介して送達された。Lovelaceネブライザー(Model 01-100)を使用して、10 L/分の全流速で供給しながら、1.0 L/分の空気流速でオリゴヌ
クレオチドを送達した。暴露チャンバーを、オリゴヌクレオチドエアロゾル溶液を用いて5分間平衡化し、その後マウスをチャンバーに接続した拘束チューブ中に静置した。拘束
されたマウスを、全部で10分間処置した。解析をday 28に行った。
【0130】
メタコリンに反応した気道過敏性
気道反応性は、非侵襲性方法を使用してメタコリンエアロゾルにより気流閉塞を誘導す
ることにより、評価した。使用したこの方法は、意識のあるマウスを拘束せず、プレチスモグラフ(Buxco Electronics, Inc. Troy, NY)の試験チャンバー中で静置する。このチャンバーと参照チャンバーとの間の圧力差を使用して、分用量、呼吸頻度、およびenhanced pause(Penh)を外挿した。Penhは、動物の呼吸サイクルの間のマウスにおける全肺気流の関数(すなわち、上部気道および下部気道における気流の合計)である、無次元パラメータである。Penhが低くなればなるほど、気流は多くなる。このパラメータは、以下に示す用に換気された動物(Hamelmann et al., 1997も参照)を使用した、伝統的で侵襲性の技術により測定した場合、肺抵抗性と非常に相関することが知られている。
【0131】
ISIS 231894は、全身プレチスモグラフィーにより測定した場合、感作マウスにおける
メタコリン誘導性AHRにおいて、顕著な(1μg/kgおよび10μg/kgの両方について、ビヒクル処置対照に対してp<0.05)用量依存性抑制を引き起こしたが、ミスマッチ対照オリゴ
ヌクレオチドは引き起こさなかった。
【0132】
メタコリンチャレンジに対する気道過敏性はまた、気道抵抗性そして肺コンプライアンスにおける変化をモニターするように設計した侵襲性技術を使用して評価した。マウスの体重を測定し、そしてキシラジン(10 mg/kg)を混合したケタミン(150 mg/kg)により
麻酔した。気管開口術を行い、そして伝統的なマウスパラメータ(Adler, A et al. J Appl Physiol 97: 286-292, 2004)を使用し、Flexiventシステム(SCIREQ, Montreal, Canada)を使用して、マウスを換気した。増加濃度のメタコリンをFlexiventシステムをAeronebラボ用ネブライザーシステムとともに使用してエアロゾル化し、そして抵抗性(RL)
およびコンプライアンス(CL)を測定した。
【0133】
ISIS 231894は、塩類溶液のみを吸入させた対照動物において行われた測定と比較して
、気道抵抗性を減少させ(100μg/kgについて、ビヒクル処理対照に対してp<0.05)、そして肺のコンプライアンスを増加させた(100μg/kgについて、ビヒクル処理対照に対し
てp<0.05)が、ミスマッチ対照オリゴヌクレオチドではこれらの反応は無かった。
【0134】
データは、群平均±SEMとして示される、N=4-6/群。* スチューデントのT-テストによ
り、ビヒクル処理対照に対してp<0.05。
【0135】
【表8】

【0136】
これらのデータは、IL 4R-αを標的とするオリゴヌクレオチドが、予防的パラダイムにおけるAHRの治療において有効であることが確認される。
炎症性細胞浸潤
ISIS 231894の炎症性細胞プロファイルに対する作用が解析された。細胞の差別化を、
致死量のケタミンを注射した後の処置マウスの肺から回収した気管支肺胞洗浄(BAL)液
に対して行った。ISIS 231894による処置により、顕著なBAL好酸球浸潤の減少が生じたが(1μg/kgおよび10μg/kgの両方について、ビヒクル処理対照に対してp<0.05)、ミスマッチ対照では生じなかった。これらの結果から、IL4R-αを標的とするオリゴヌクレオチ
ドが、好酸球浸潤を減少させることにより、肺炎を減少させたことが示される。
【0137】
2回目の実験をおこなって、ISIS 231894が急性モデルにおけるAHRおよび好酸球増加を
減少させる効率を確認した。マウスに上述したようにOVAを投与した。day 17、day 19、day 21、day 24およびday 26に、マウスに10μg/kgのISIS 231894、ミスマッチ対照オリゴヌクレオチド、またはビヒクル(すなわち、塩類溶液)を投与した。ISIS 231894は、ミ
スマッチオリゴヌクレオチドまたはビヒクル単独で処理した場合と比較して、AHRおよび
好酸球増加を顕著に減少させたが、ミスマッチ対照オリゴヌクレオチドは減少させなかった。
【0138】
これらのデータは、IL 4R-αが、AHRおよび肺炎、およびそれらが関与する疾患の予防
のために有効な標的であることを示す。
アレルギー性炎症のマウスモデル〜再チャレンジモデル
誘導性アレルギー性炎症の再チャレンジモデルにより、以前に感作されそして空気アレルゲンに暴露されたマウスにおける薬理学的アプローチの試験ができる。局所アレルゲンチャレンジの最初のセットの間、マウスはアレルゲン-特異的記憶Tリンパ球を作り出す。引き続いて2回目のセットの吸入アレルゲンチャレンジに暴露すると、洗浄液中のTh2サイトカインレベルが増加することにより示されるように、肺における炎症性反応が亢進する。アレルギー性炎症の再チャレンジモデルには、0およびday 14の2回のIP OVA投与に加えてday 59およびday 60のOVAの2回目のシリーズのエアロゾル化投与、そしてday 24、day 25およびday 26の急性モデルの噴霧OVA投与(図1B参照)が含まれる。このモデルを使用
して、1回目のセットの局所アレルゲンチャレンジの後にオリゴヌクレオチド処理をおこ
なう。このことにより、初回免疫応答とは対照的に、記憶の反応においては標的の役割の評価が可能になる。
【0139】
再チャレンジモデルにおいて、day 52、day 54、day 56、day 59およびday 61に、鼻専用吸入により送達する10、100または500μg/kgのISIS 231894 または7塩基対ミスマッチ
対照オリゴヌクレオチド(ISIS 352492)を用いて、マウスをを処置した。この研究の最
終目的には、急性モデルにおいて使用されたものの多くが含まれた:Penh応答(すなわち、AHR減少)、BAL中の炎症性細胞、粘液蓄積、および肺組織学。肺構造細胞および炎症性細胞におけるIL 4R-αタンパク質の減少もまた、強化した。
【0140】
炎症性IL4R-α発現プロファイル
Day 67の2回目の噴霧OVA再チャレンジ後6時間後に肺を採取した。肺細胞を組織のコラ
ゲナーゼ処理後に回収し、そしてフローサイトメトリーにより解析した。IL 4R-αタンパク質発現を、肺好酸球およびマクロファージ(CD11b-陽性、GR-1陰性または低陽性);CD11lc-陽性およびMHCクラスII-陽性樹上細胞;およびE-カドヘリン-陽性上皮細胞の混合集団の表面上で測定した。データは、平均螢光強度±SEMで表す、N=4/群。* スチューデントのT-テストにより、ビヒクル処理対照に対してp<0.05。
【0141】
【表9】

【0142】
これらのデータにより、肺内細胞の複数の集団に対するIL 4R-αの細胞表面発現を減少させる際に、IL 4R-αを標的とするオリゴヌクレオチドが効果的であることが示される。
Penhにより決定された、メタコリンに対する気道過敏性
day 60に、上述したように、AHRをPenhにより解析した。メタコリン誘導AHRにおける顕著な減少は、1.0または10.0μg/kg ISIS 231894を吸入する動物において見いだされたが
、表10以下において見いだすことができるビヒクル対照動物と比較して、10μg/kgのミスマッチ対照オリゴヌクレオチド(ISIS 352492)では見いだされなかった。データは、群
平均として提示される、N=10/群。* スチューデントのT-テストにより、ビヒクル処理対照に対してp<0.05。
【0143】
【表10】

【0144】
これらの結果は、IL 4R-αを標的とするオリゴヌクレオチドが、AHRの抑制に有効であ
ることを示す。
気管支洗浄液中のサイトカインおよびケモカイン発現
気道におけるTh2サイトカインおよびケモカインの定量、および好酸球の定量を通じて
、肺炎をモニターした。空気アレルゲン暴露後の肺におけるTh2サイトカインおよびケモ
カインの産生は、肺炎および気道過敏性の誘導と関連する。BAL液を回収し、そしてTh2サイトカインおよびケモカインレベルを、Day 67の、マウスにおける2回目の噴霧OVAチャレンジの6時間後に、ELISAにより定量した(n=4/群)。IL-13レベルは、Isis 231894の3
回の投与すべてで、顕著に減少した(p<0.05)。ヒトIL-8のマウス類似体であるKCは、2
種類のより高い用量のIsis 231894で顕著に減少し(p<0.05)、そしてIL-5およびMCP-1
は、500μg/kgの用量で顕著に減少した(ビヒクル処理対照に対してp<0.05)。サイトカイン濃度は、複数点標準曲線の直線回帰分析から決定した。ミスマッチオリゴヌクレオチド、Isis 352942、は、Th2サイトカインレベルに対して何も効果を有さなかった。これらのデータから、IL-4α発現の阻害は、肺炎および気道過敏性に関連するアレルゲンチャレンジの後に、Th2サイトカインおよびケモカインの発現、特にTh2サイトカイン発現を減少させるために有効であることが示される。
【0145】
炎症性細胞浸潤
細胞差別化をBALについて行った。BAL液中の好酸球の割合は、ビヒクル処理対照動物由来のBALFと比較して、顕著に減少した。結果を表12に示す。データは、群平均として提示される、N=10/群。* スチューデントのT-テストにより、ビヒクル対照と比較して、ビヒクル処理対照に対してp<0.05。
【0146】
【表11】

【0147】
これらのデータにより、IL4R-αを標的とするオリゴヌクレオチドは、アレルゲンチャ
レンジに対する肺における好酸球増加を減少させる際に有効であることが示される。
粘液産生
粘液は、肺炎の指標である。OVA再チャレンジマウスの気道におけるMuc5AC遺伝子発現
、粘液レベル、および杯細胞化生を解析した。Muc5AC mRNAレベルを、Day 69に採取した
肺組織由来の抽出物において、定量的RT-PCRにより解析した。発現レベルを、G3PDH発現
に対して正規化した。Muc 5AC/β-アクチンmRNA比は、ビヒクル処理と比較して、231894
により顕著に減少した(ビヒクル処理対照群と比較して、p<0.05)。352492処理動物に
おいては、減少は見られなかった(n=4)。デジタル画像処理により決定したところ、IL 4R-αASOで処理したマウスから得たPAS-染色肺の粘液中では顕著に減少していたが(ビヒクル処理対照群と比較して、p<0.05)、しかしながら塩類溶液またはミスマッチ対照オ
リゴヌクレオチドで処理した場合にはそのような減少は見られなかった。
【0148】
これらのデータはさらに、IL4R-α標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドアプローチ
が、確立された免疫記憶の存在下において有効であり、そしてIL4R-αがAHRおよび肺炎、そしてそれらに関連する疾患の改善および/または治療のための適切な標的であることを示す。
【0149】
アレルギー性炎症のマウスモデル〜慢性モデル
誘導性アレルギー性炎症の慢性モデルは、局所肺炎の確立後に開始されるASO処置によ
る、治療上の処置方法を使用する。慢性モデルは、コラーゲン沈着および肺組織リモデリングを含むヒトにおける重度の喘息の組織学的特徴のいくつかに概括される。慢性OVAモ
デルは、急性モデルまたは再チャレンジモデルにおいて観察されたものよりも、より重度の疾患を生成する。
【0150】
このモデルには、day 0およびday 14の2回のOVA IP投与に加えて、day 27〜day 29、day 47、day 61、およびday 73〜day 75に、急性モデルおよび慢性モデルにおけるよりも高い用量で(500μg)、鼻内OVA投与することがふくまれる(図1Cを参照)。アレルゲンの
鼻内投与の結果、ネブライザーによる送達と比較して、肺に送達されるアレルゲンがより高い用量となる。アレルゲンチャレンジの回数を増加すると、より重度の炎症性症状を生成し、結果として、治療的介入がない場合でも、その他のモデルよりもより臨床的喘息を反映した、肺の損傷および病理が増加する。試験された評価項目は、Penh(AHR)、BAL炎症性細胞およびサイトカインおよび粘液蓄積を含む、急性モデルおよび再チャレンジモデルにおける評価項目と同様であった。このモデルはまた、上皮下線維症、コラーゲン沈着、杯細胞化生の亢進、および平滑筋細胞過形成を含む、喘息およびCOPDなどの慢性疾患と典型的に関連した評価項目の解析を可能にする。
【0151】
オリゴヌクレオチド、ISIS 231894またはISIS 352942のいずれか、は、day 31、day 38、day 45、day 52、day 59、day 66およびday 73に、5μg/kgまたは500μg/kgのいずれかの用量で、鼻専用エアロゾルにより投与された。評価項目の解析を、day 62に評価されたサイトカインを除き、day 76のOVAチャレンジ後6時間後に行った。
【0152】
Penhにより測定した場合のメタコリンに反応する気道過敏性
ビヒクル(すなわち、塩類溶液)を用いた治療と比較して、マウスを両用量のISIS 231894で処置したところ、結果としてメタコリン誘導性AHRが顕著に減少した。データは、群平均として示される、N=40/群。* スチューデントのT-テストにより、ビヒクル処理対
照に対してp<0.05。
【0153】
【表12】

【0154】
これらのデータは、治療上の処置方法を使用して送達されるIL4R-αを標的とするオリ
ゴヌクレオチドは、メタコリンチャレンジに対するAHRを予防する際に有効であることを
示す。
【0155】
炎症性細胞浸潤
マウスをより高い用量の231894で処置したところ、ビヒクル対照と比較して、結果としてBAL液中の好酸球の割合が顕著に減少した。両用量のISIS 231894は、ビヒクル対照と比較して、BAL中の好中球の割合を顕著に減少した。データは、軍兵金として示される、N=7/群。* スチューデントのT-テストにより、ビヒクル対照に対してp<0.05。
【0156】
【表13】

【0157】
これらのデータは、治療上の処置方法を用いて送達されるIL4R-αを標的化するオリゴ
ヌクレオチドが、アレルゲンチャレンジに対する肺の好酸球増加および好中球増加症を減少するために有効であることを示す。
【0158】
気管支洗浄液におけるサイトカイン発現
肺炎はまた、サイトカインおよびケモカイン発現、並びに炎症性細胞浸潤によりモニタリングした。BALFを回収し、そして4種のTh2サイトカインレベルを、day 62の、アレルゲンチャレンジの6時間後に、ELISAにより定量した。BAL液の解析は、ビヒクル処置動物と
比較して、高用量231894処理動物において、IL-5およびKCの顕著な減少を示した。
【0159】
これらのデータはさらに、IL 4R-αを標的化するオリゴヌクレオチドがAHRおよび肺炎
並びにそれらに関連する疾患の改善および治療のために有用であることを確認する。
実施例7:アレルギー性炎症のマウスモデル、鼻炎評価項目についての解析
上述したものと同様のアレルゲン-誘導性急性および慢性鼻炎のマウスモデルを使用し
て、マウスにおけるアレルギー性鼻炎を研究した(Hussain et al., Larangyoscope. 112: 1819-1826. 2002;Iwasaki et al., J. Allergy Clin Immunol. 112: 134-140. 2003;Malm-Erjefaelt et al., Am J Respir Cell MoI Biol. 24:352-352.2001;McCusker et al., J Allergy Clin Immunol., 110: 891-898;Saito et el., Immunology. 104:226-234. 2001)。モデルのすべてにおいて、マウスを上述したように注射によりOVAで感作し、
その後鼻内OVA滴加を行った。
【0160】
モデル間の最も実質的な差異は、解析された評価項目の中にある。評価項目には、アレルギー性のくしゃみ(sneezing)の量、およびアレルゲンチャレンジの投与後すぐの鼻のひっかき傷(nasal scratching)(すなわち、鼻内OVA)、および粘液および好酸球計数
を含む鼻の組織学および鼻内洗浄液または鼻組織中のサイトカインまたはその他の炎症性生成物の測定値が含まれるが、これらには限定されない。そのような解析を行うための方法は、引用された参考文献中に詳細が記載されており、それらを参考文献として本明細書中に援用する。デジタル画像処理により定量された浸潤性の好酸球がより少ないこと、そして塩類溶液処置と比較して、IL 4R-αASO処置動物において、時間単位当たりの鼻の障
害(nasal rubs)とくしゃみがより少ないこと、により示されるように、IL-4Rαを標的
化するオリゴヌクレオチドの投与により、鼻炎が減少する。
【0161】
実施例8:喫煙誘導性肺疾患の齧歯類モデル
喫煙は、肺気腫およびCOPDを含む(しかしこれらには限定されない)ヒトにおける多数の疾患を引き起こす可能性がある、肺過敏および炎症を引き起こすことが知られている。マウスを使用した喫煙動物モデル(Churg et al., 2002. Am. J. Respir. Cell. MoI. Biol. 27:368-347;Churg et al., 2004. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 170:492-498、両文献とも、参考文献として本明細書中に援用する)、ラットを使用したもの(例えば、Sekhon et al., 1994. Am. J. Physiol. 267:L557-L563、参考文献として本明細書中に援
用する)、およびモルモットを使用したもの(Selman et al., 1996. Am J. Physiol. 271:L734-L739、参考文献として本明細書中に援用する)を含む、多数の喫煙動物モデルが
、当業者には周知である。動物は、当業者に対して周知な喫煙装置(例えば、Sekhon et al., 1994. Am. J. Physiol. 267.-L557-L563)を使用して、煙全体に対して暴露される

【0162】
肺生理学の変化は、暴露の用量と時間とに相関する。短期間の研究では、細胞増殖および炎症が観察された。ある研究では、ラットを7本のタバコに1日間、2日間、または7日間暴露したところ、膜性細気管支(MB)、呼吸細気管支(RB)、および肺胞管(AD)のレベルで、肺動脈壁の増殖を引き起こした。内皮細胞増殖は、ADに関連する血管においてのみ存在した。別の研究では(Churg et al., 2002. Am. J. Respir. Cell. MoI. Biol. 27:368-347)、4本のタバコからの煙全体に対して暴露されたマウスが、わずか24時間後に、
好中球、デスモシン(エラスチン分解の指標)、およびヒドロキシプロリン(コラーゲン分解の指標)が増加することが示された。長期間の研究では、肺気腫様状態が誘導された(Churg et al., 2004. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 170:492-498)。標準的な喫煙装置を使用して、1週間当たり5日間、6ヶ月にわたり、4本のタバコからの煙全体に対して暴露されたマウスは、対照マウスと比較して、BALFにおける好中球およびマクロファージが増加することが見いだされた。全肺マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2、-9、-12、および-13、およびマトリックス型-1(MT-1)タンパク質が増加した。マトリックス
分解生成物の増加は、BALFにおいても観察された。これらのマーカーは、組織破壊と相関しており、そして肺気腫を有するヒト肺において観察される。
【0163】
これらのモデルを使用して、タバコの煙および/またはその他の障害原因により引き起こされる損傷および疾患の予防、改善、および/または治療のための、治療介入の効率を決定することができる。オリゴヌクレオチドの投与は、煙に対する暴露の前、煙に対する暴露と同時、および/または煙に対する暴露の後に行って、予防モデルまたは治療モデルを提供することができる。ISIS 231894は、マウスIL 4R-αおよびラットIL 4R-αの両方
ともに100%の相補性であり、従って、マウスの研究およびラットの研究の両方において
使用することができる。用量範囲は、煙の吸入に対するオリゴヌクレオチド投与の時間により、肺損傷の予防のために必要とされる低容量(例えば、1〜100μg/kg)を用いて、決定される。高用量(例えば、100〜1000μg/kg)は、煙への暴露後、または煙への暴露と
交互に、治療のために必要とされる。陽性対照(例えば、煙への暴露、オリゴヌクレオチド投与なし)および陰性対照(例えば、煙への暴露なし、オリゴヌクレオチド処置ありまたはなし)動物もまた、解析される。
【0164】
解析のための評価項目には、上述した喘息モデルにおいて記載されるものが含まれる。機能的評価項目には、AHR、耐性およびコンプライアンスが含まれる。形態学液変化には
、BAL細胞、サイトカインレベル、肺胞破壊(すなわち、肺胞腔の増加)および気道粘液
蓄積の組織学的決定、並びにコラーゲンおよびエラスチンなどの疾患の組織マーカーが含まれる。本実施例において検討されたこのモデルに特異的な気腫性の変化を解析して、アンチセンスオリゴヌクレオチドの作用を決定することもできる。
【0165】
実施例9:エラスターゼ誘導性肺気腫のマウスモデル
エラスターゼは、煙-誘導性損傷により動員された好中球による肺損傷および肺炎の放
出において、本質的なメディエータである。肺気腫のラットモデルは、エラスターゼ媒介性肺損傷のプロセスを解析するために、そしてそのような損傷または結果として生じる疾患と関連する病体を予防し、改善し、および/または治療するための可能性のある治療的介入を解析するために、開発された(Kuraki et al., 2002, Am. J. Respir. Crit. Care
Med., 166, 496-500、参考文献として本明細書中に援用される)。肺のすべての葉にお
けるエラスターゼの気管内投与は、BALF中のヘモグロビン増加により示される重度の肺出
血;BALF中の好中球蓄積;弾性収縮力(elastic recoil)の過膨脹および分解の阻害を含む、気腫性変化を誘導した。組織病理学的変化には、エラスターゼ-誘導性空隙拡大およ
び肺胞の破壊が含まれた。これらの変化は、ヒト肺気腫において観察されたものと同様である。
【0166】
このモデルにおいて、ラットを、ヒト唾液エラスターゼ(SE563, Elastin Products, Owensville, MO)をさらに精製することなく用いて処置する。ラットを、十分な用量のエ
ラスターゼ、約200〜400ユニット、により、マイクロスプレイ装置を使用して気管内投与することにより処置する。あるいは、気管内投与をマウスモデルにおいて上述したように行うことができる。損傷が生じることができる十分な時間の後、約8週後、機能的変化お
よび形態学的変化を解析する。同様のモデルは、体重および/または肺面積に対して低下させた用量のエラスターゼ(例えば、0.05 Uのブタ膵エラスターゼ/g体重)を有するマウスを使用して、行うことができる。
【0167】
オリゴヌクレオチドの投与を、エラスターゼの投与の前、エラスターゼの投与と当時に、および/またはエラスターゼの投与の後に行って、予防モデルまたは治療モデルを提供することができる。ISIS 231894は、マウスIL 4R-αおよびラットIL 4R-αの両方ともに100%の相補性である。用量範囲は、エラスターゼ投与に対するオリゴヌクレオチド投与の時間により、肺損傷の予防のために必要とされる低容量(例えば、1〜100μg/kg)を用いて、決定される。高用量(例えば、100〜1000μg/kg)は、エラスターゼ投与後またはエ
ラスターゼ投与と交互に、治療のために必要とされる。陽性対照(例えば、エラスターゼ処置、オリゴヌクレオチド投与なし)および陰性対照(例えば、エラスターゼなし、オリゴヌクレオチド処置ありまたはなし)動物もまた、解析される。
【0168】
解析のための評価項目には、上述の喘息モデルにおいて検討されたものが含まれる。機能的評価項目には、AHR、耐性およびコンプライアンスが含まれる。形態学的変化には、BAL細胞、サイトカインレベル、および粘液蓄積が含まれる。本実施例において検討されたこのモデルに対して特異的な気腫性の変化を解析して、アンチセンスオリゴヌクレオチドの作用を決定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、オボアルブミン誘導性アレルギー性炎症の急性モデル(図1A)、再チャレンジモデル(図1B)、慢性モデル(図1C)に対する、オリゴ投与の作用を調べる試験の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL 4R-αをコードする核酸分子(SEQ ID NO: 1)を標的とし、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド2056〜2088を標的とし、そしてヒトIL 4R-αの発現を阻害する、12から35核酸塩基のオリゴマー化合物。
【請求項2】
SEQ ID NO: 112、113、276、277、279、280、281、282、283、284、または286の少なくとも12核酸塩基部分を含む、請求項1の化合物。
【請求項3】
SEQ ID NO: 112、113、276、277、279、280、281、282、283、284、または286の少なくとも17核酸塩基部分を含む、請求項2の化合物。
【請求項4】
SEQ ID NO: 280の少なくとも17核酸塩基部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
SEQ ID NO: 112、113、276、277、279、280、281、282、283、284、または286の配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
SEQ ID NO: 112、113、276、277、279、280、281、282、283、284、または286の配列からなる、請求項1〜3および5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
SEQ ID NO: 280の配列を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
SEQ ID NO: 280の配列からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
化合物がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が一本鎖である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
化合物がキメラ構造である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
化合物が、20ヌクレオチドの長さである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
修飾されたヌクレオシド間結合を含み、そして修飾されたヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であってもよい、請求項1〜12のいずれかの化合物。
【請求項14】
修飾された糖部分を含み、そして修飾された糖部分が2’-MOE修飾であってもよい、請求項1〜13のいずれかの化合物。
【請求項15】
修飾された核酸塩基を含み、そして修飾された核酸塩基が5-メチルシトシンであってもよい、請求項1〜14のいずれかの化合物。
【請求項16】
化合物が、20ヌクレオチドの長さであり、そして10個の2'-デオキシヌクレオチドとその両側に隣接する5ヌクレオチドのウィングとからなるギャップ領域を含み、各ウィングの各ヌクレオチドは2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドを含み、そして各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、そして全てのシトシン残基が5-メチルシトシンである、請求項1〜15のいずれかの化合物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかの化合物、および、医薬的に許容可能な浸透促進剤、担体、または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
肺炎および/または気道過敏性の予防、改善、および/または処置のための、請求項17の医薬組成物。
【請求項19】
動物の気道への局所的な投与により提供される、請求項18または19の医薬組成物。
【請求項20】
エアロゾル投与により提供される、請求項18または19の医薬組成物。



【図1】
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【公開番号】特開2012−245000(P2012−245000A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168777(P2012−168777)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2007−557197(P2007−557197)の分割
【原出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(595104323)アイシス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド (53)
【Fターム(参考)】