説明

IPマルチメディア・サブシステムにアクセスする方法および装置

【課題】IMS非対応端末によるIPマルチメディア・サブシステム(IMS)サービスへのアクセスを支援する。
【解決手段】IMS非対応端末をホームIMSゲートウェイに登録する工程と、その登録に応えて、ホームIMSゲートウェイにあるUMTS用ICカードの汎用SIMアプリケーションから取得した情報を使用して、前述した端末の代わりにホームIMSゲートウェイが、IMSと協力してIMS登録を実行する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPマルチメディア・サブシステムにアクセスする方法および装置に関し、より詳細には、家庭または小規模事業所(必ずしもこのような場所に限定されない。)からIPマルチメディア・サブシステムにアクセスするのに適した方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPマルチメディア(IPMM)サービスは、同じセッション内で音声、映像、メッセージ、データ及びその他の動的な組み合わせを提供するサービスである。組み合わせ可能な基本的アプリケーションとメディアの数が増加することにより、エンドユーザに提供されるサービス数は増加し、ユーザ間で通信により享受される経験(通信エクスペリエンス)が豊かのものになるであろう。このことは、以下で詳細を検討するいわゆる「組み合わせIPマルチメディア」サービスを含む、個人に合わせた豊かなマルチメディア通信サービスの新世代をもたらすであろう。
【0003】
IPマルチメディア・サブシステム(IMS)は、第三世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)が規定した技術であり、3G移動体通信ネットワーク(3GPP TS23.228およびTS24.229リリース5およびリリース6)上でIPマルチメディア・サービスを提供する。IMSは、サービスの統合およびサービス間の相互作用を通して、エンドユーザ対エンドユーザの通信エクスペリエンスを豊かにするための主要な機能を提供する。IMSは、IPベースのネットワーク上で今までのものとはまったく違う豊かな個人対個人(クライアント対クライアント)通信および個人対コンテンツ(クライアント対サーバ)通信を可能にする。IMSは、ユーザ端末間(またはユーザ端末とウェブサーバとの間)に呼またはセッションを確立して制御するために、セッション開始プロトコル(SIP)を使用する。SIPシグナリングで運ばれるセッション記述プロトコル(SDP)は、セッションのメディアコンポーネントを記述してネゴシエートするために使用される。RTP/RTCP(Real−time Transport ProtocolおよびReal−time Transport Control Protocol)、MSRP(Message Session Relay Protocol(MSRP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)などの他のプロトコルも、メディアの伝送と制御に使用される。IMSはアクセスネットワークを必要とし、これは、通常、第二世代/第三世代汎用パケット無線サービス(GPRS)/パケット交換(PS)ネットワークであるが、固定ブロードバンドまたはWiFiなどの他のアクセスネットワークであってもよい。図1は、GPRS/PS(パケット交換)アクセスネットワークの場合に、移動体ネットワーク・アーキテクチャにIMSがどのように当てはまるかの概要を図解したものである。
【0004】
欧州電気通信標準化機構(ETSI)のTISPANワーキンググループは、IMSに基づく固定ネットワーク向け次世代ネットワーク(NGN)に関する提案に、現在、取組んでいる。このプロジェクトの一環として、非IMS端末からIMSサービスにアクセスすることを可能にする、いわゆるホームIMSゲートウェイ(HIG)の検討も行われるであろう。SIP端末でもよいしそうでなくてもよい相当数のIMS非対応端末を使用して、ユーザがIMSサービスにアクセスを希望する可能性のある家庭および小規模事業所環境において、HIGは利用されるようになると期待されている。非IMSでSIP対応端末の例に、SIP電話機およびPCがあり、一方SIP機能を持たない非IMS端末の例に、DECT電話機を含むレガシー電話機がある。HIGは、相互接続性問題(例えば、SIPとユーザ装置が必要とする他のシグナリング・プロトコルとの間の変換)を解決するためにSIPゲートウェイを有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HIGに関する現在の提案は、3GPP技術仕様書33.203に規定されるIMSに対する現行アクセス・セキュリティ要件とある程度相反する。この要件は、IMSにアクセスする各端末がIMS SIM(ISIM:IMS加入者識別IDモジュール)アプリケーションにアクセスすることを条件としている。ISIMは、ネットワークオペレータに対して加入者を証明し、ネットワークで使用可能なサービスへのアクセスを正当とするのに必要な、加入者識別情報および他の情報を格納するモジュールである。ISIMアプリケーションは、汎用ICカード(UICC、現在のGSM SIMカードに類似)により提供される。もちろん、レガシー装置などの非IMS端末は、必要なUICCカードリーダまたはIMS機能を有しないであろう。
【0006】
アクセス・セキュリティ要件を満足しながら、非IMS端末からIMSサービスへのアクセスを可能にする課題の解決策は、非IMS端末のおのおのにISIMアプリケーションを有するUICCを割当てることである。次いでユーザは、その端末をIMSサービスのアクセスに使用したいとき、特定の非IMS端末に関係するUICCをHIGに挿入しなければならない。この解決策は、柔軟性、便宜性および費用の点で明らかに不利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施形態では、IMS非対応端末を使用してIPマルチメディア・サブシステム(IMS)サービスにアクセスするのを支援する方法が提供される。その方法は、
ホームIMSゲートウェイにIMS非対応端末を登録する工程と、
その登録に応えて、ホームIMSゲートウェイにあるUMTS用ICカードの汎用SIMアプリケーションから取得した情報を使用して、前述したIMS非対応端末とホームIMSゲートウェイとIMSとの間でIMS登録を実行する工程と
を備える。
【0008】
本発明の実施形態は、実際のところホームIMSゲートウェイにIMS登録を委託する。したがって、IMSサービスを使用したいと望む各端末が、ISIMアプリケーションを格納するUICCカードにアクセスすることは必ずしも必要でない。
【0009】
ホームIMSゲートウェイは、UICC上の前述したISIMへのインターフェースを有するSIPバックトゥバック・ユーザエージェントを備えるのが好ましい。前述したIMS非対応端末がSIP端末の場合、ホームIMSゲートウェイへの端末の登録は、端末とSIPバックトゥバック・ユーザエージェントとの間のSIP登録実施工程を備える。端末は、SIPバックトゥバック・ユーザエージェントに、端末に関係付けられたパブリック・ユーザIDを知らせてもよい。代わりに、端末はローカルIDを提供してもよく、そのローカルIDは、SIPバックトゥバック・ユーザエージェントによりあらかじめ格納されたパブリック・ユーザIDにマッピングされる。前述したIMS登録は、IMSネットワークに端末に関係付けられたパブリック・ユーザIDの通知を含む、バックトゥバック・ユーザエージェントとIMSネットワークとの間のSIP登録の実行工程を備える。
【0010】
IMS非対応端末がSIP端末でない場合、ホームIMSゲートウェイに端末を登録する工程は、例えばループ形成の検出を含み、ゲートウェイと端末との最初の接続に続いて実行されてもよい。すでに接続されている端末に関しては、登録はHIGの電源オン時に行われてもよい。ゲートウェイは、非SIP端末に割当てられIMS登録時に使用されるデフォルトのパブリック・ユーザIDを、自装置の中にあらかじめ格納しておいてもよい。より好ましいのは、UICCの前述したISIMとのインターフェースを有するSIPゲートウェイにより登録が実行されることである。SIPゲートウェイは、SIPとこれら非SIP端末が使用するプロトコルとの間のプロトコル変換を実行する。
【0011】
本発明の第2の様相によれば、IMS非対応端末からIPマルチメディア・サブシステム(IMS)サービスにアクセスするのを支援する、ホームIPマルチメディア・サブシステム・ゲートウェイを操作する方法が提供される。その方法は、
ホームIMSゲートウェイにIMS非対応端末を登録する工程と、
前述した登録に応えて、ホームIMSゲートウェイにあるUMTS用ICカードの汎用SIMアプリケーションから情報を取得する工程と、前述した端末の代わりにこの情報でIMSにIMS登録を実行する工程と
を備える。
【0012】
本発明の第3の実施形態によれば、IMS非対応端末からIPマルチメディア・サブシステム(IMS)サービスにアクセスするのを支援する用途向けに構成された、ホームIPマルチメディア・サブシステム・ゲートウェイが提供される。その装置は、
ゲートウェイと前述したIMS非対応端末とを接続する少なくとも1つのインターフェースと、
UICCカードからISIMアプリケーションデータを読み出すためのUICCカードリーダと、
ゲートウェイにIMS非対応端末を登録する第1の処理手段と、
ゲートウェイに登録されたIMS非対応端末をIMSに登録する第2の処理手段と
を備える。
【0013】
ゲートウェイと前述したIMS非対応端末とを接続するインターフェースは、例えばゲートウェイとブラックフォン(黒電話機)若しくはDECT電話機などのレガシー装置とを接続する回線インターフェースまたはLANインターフェース若しくはWLANインターフェースであってもよい。
【0014】
第1および第2の処理手段は、IMSが使用するセッション開始プロトコル(SIP)とIMS非対応端末が使用するプロトコルとの間のプロトコル変換を実行するSIPゲートウェイを実装する手段を備えてもよい。非SIP端末に対しては、SIPゲートウェイは、ISIMのプライベート・ユーザIDに関係するデフォルト・パブリック・ユーザIDをIMSに登録してもよい。
【0015】
第1および第2の処理手段は、SIP端末に対してはSIPサーバの機能を果たし、IMSに対してはSIPクライアントとして機能するSIPバックトゥバック・ユーザエージェントを備えてもよい。SIPバックトゥバック・ユーザエージェントは、ISIMのプライベート・ユーザIDに関係する個人用パブリック・ユーザIDをIMSに登録してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】3Gネットワーク内のIMSアーキテクチャの概要図である。
【図2】IMSユーザ端末装置と非IMSユーザ端末装置の両方にサービスするホームIMSゲートウェイの概要図である。
【図3】ホームIMSゲートウェイのアーキテクチャの概要図である。
【図4】パブリック・ユーザIDおよびプライベート・ユーザIDの例示的割当ての概要図である。
【図5】図3のゲートウェイを介するSIP対応ユーザ装置のIMS登録に関連するシグナリングを示すシグナリング図である。
【図6】図3のゲートウェイを介するレガシー・ユーザ装置のIMS登録に関連するシグナリングを示すシグナリング図である。
【図7】図3のゲートウェイの後方のユーザ装置が始端となるIMSセッションの設定に関連するシグナリングを示すシグナリング図である。
【図8】図3のゲートウェイの後方のユーザ装置に終端するIMSセッションの設定に関連するシグナリングを示すシグナリング図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述したように、図1の一般的なIMSアーキテクチャに、いわゆるホームIMSゲートウェイ(HIG)を導入することを提案している。図2は、家庭または小規模事業所内に設置され、レガシー装置とSIP対応端末の両方を含む相当数の端末に便宜をもたらすHIG(図では「住宅用ゲートウェイ」と呼ぶ)を図解する。図3は、様々な外部ユーザ端末とのインターフェースとともに、HIGの機能アーキテクチャを詳細に図解する。特に、ワイドエリアネットワーク(WAN)/ローカルエリアネットワーク(LAN)インターフェースが、HIGをIMSに接続するために使用される。
【0018】
SIP端末でない様々なレガシー端末は、SIPゲートウェイに接続する回線インターフェースを介してHIGに接続する。レガシー端末の例に、DECT電話機および従来の電話機(「黒電話機」)がある。HIGは、セッション開始プロトコル(SIP)ゲートウェイ(3GPP TS24.229およびIETF RFC3261に準拠して実装)を有する。SIPゲートウェイは、様々なクライアント端末のシグナリング・プロトコルとIMSが使用するSIPプロトコルとの間の相互作用を可能にする。例えば、SIPゲートウェイは、黒電話機が使用するISDNベースのシグナリング・プロトコルとSIPとの間の変換を提供してもよい。SIPゲートウェイは、WAN/LANインターフェースに接続している。
【0019】
デスクトップPCおよびノートPCならびにSIP電話機などのIMS対応SIP端末は、ローカルエリアネットワーク(LAN)および/または無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)にアタッチ(接続)しており、それらネットワークに、HIGもLAN/WLANインターフェースを介して接続している。ネットワーク・アドレス変換(NAT)/ファイアウォール(FW)レイヤが、HIG内のアドレスのマッピングを提供するために使用される。NAT/FWレイヤは、WAN/LANインターフェースに接続している。これらの各端末は、それぞれのISIMアプリケーションを格納する自端末のUICCを有している。
【0020】
ISIMアプリケーションにアクセスできないIMS非対応SIP端末も、端末のLAN/WLANインターフェースとHIGのLAN/WLANインターフェースを介してHIGに接続している。これらの端末に関するIMSサービスへのアクセスは、NAT/FWエンティティを有するSIPバックトゥバック・ユーザエージェント(B2BUA)が支援する。SIP B2BUAは、ユーザ装置に対してはSIPサーバの機能を果たし、IMSに対してはSIPクライアントとしての機能を果たす。
【0021】
SIP B2BUAとSIPゲートウェイの両方とも、UICCに格納されるISIMアプリケーションとのインターフェースを有する。このUICCは、HIGハードウェアから取り外し可能であってもよいし、HIGに永久的に固定されてもよい。ISIMアプリケーションは、HIGを介してIMSに接続する非ISIM端末のすべてが利用可能であり、すべてに有効である。自端末のISIMアプリケーションにアクセスできる端末は、HIG内のISIMをもちろん使用せず、上記のようにHIGのNAT/FW機能だけを使用する。続く検討の中では、ISIMアプリケーションのすべて、すなわちHIGが利用可能なアプリケーションとユーザ端末装置が利用可能なアプリケーションとは、1回の加入申し込みでIMSに関係付けられることに注意。
【0022】
HIGの動作をさらに検討する前に、プライベート・ユーザIDおよびパブリック・ユーザIDの概念をまず導入する。これらはIMSの動作に本質的に必要であり、3GPP TS23.228 6.7.0で検討されている。プライベート・ユーザIDは、ISIMに「結びついた」IDであり、加入者を証明し正当とするために使用される。プライベート・ユーザIDは、サードパーティには通常開示されておらず、GSMネットワークで使用される国際移動電話加入者識別番号(IMSI)にいくぶん類似している。他方パブリック・ユーザIDは、IMSサービスに参加する目的で加入者および/またはそのユーザ装置を識別するために使用され、電子メールアドレスまたは電話番号にいくぶん類似している。パブリック・ユーザIDは、例えばIMSサービス・セッション要求の宛先を識別するために使用される。加入者は、1つのプライベート・ユーザIDに関係付けられた幾つかのパブリック・ユーザIDを有してもよいし、それに対して所与の加入申し込みに関係付けられた異なる複数のプライベート・ユーザIDが、共通のパブリック・ユーザIDを共用してもよい。IMS登録中に認証が成功したと仮定すると、IMSは加入者に関係付けられたパブリック・ユーザIDの通知を受ける。
【0023】
図4は、図3のHIGを使用して実装してもよい、パブリック・ユーザIDとプライベート・ユーザIDとのマッピングを図解する。この例では、同一のIMS加入申し込みに関係付けられた2つのプライベート・ユーザIDがある。「234150123456@operator.net」は、幾つかのSIP対応ユーザ端末装置のISIMに格納されているプライベート・ユーザIDであり、「234150654321@operator.net」は、HIGのISIMに格納されているプライベート・ユーザIDである。
【0024】
デフォルト・パブリック・ユーザIDは、加入者に関係付けられていて、HIGを介してIMSにアクセスし、加入申し込みを所有する家庭または小規模事業所を識別するグループIDと見なすことができる。デフォルト・パブリック・ユーザIDは、HIGに格納され、HIG内のISIMのプライベート・ユーザID234150654321@operator.netとだけ、SIP B2BUAで関係付けられている。少なくともSIP非対応端末のすべて、すなわち関係するパブリック・ユーザIDをHIGに通知することができない端末は、他のサードパーティのIMSユーザがデフォルト・パブリックIDを使用して電話を掛けるとき、そのユーザから着信可能であるべきである。図4の例では、デフォルト・パブリック・ユーザIDは、smith@operator.netである。このデフォルト・パブリック・ユーザIDは、この例では「+44113111123456」など、E.164番号の形態で非開示のパブリックIDに関係付けることができる。非開示の回線IDはネットワーク内で設定されており、B2BUAは登録手続きの一部としてこの回線IDをダウンロードする。
【0025】
ユーザ(例えば、家族の一員)Alice Smithは、2つの端末を連絡可能にしたいと考えているものとする。1つ目の端末は、プライベート・ユーザID234150123456@operator.netを割当てられているユーザ端末装置であり、2つ目の端末は、SIP対応でかつHIGに接続する非IMSのホームPCである。それ故、IMSネットワーク内では、Aliceのパブリック・ユーザID「alice.smith@operator.net」は、両方のプライベート・ユーザIDに関係付けられなければならない。Aliceはさらに、近い親族および親しい友人だけに知らせるパブリック・ユーザID「alice@operator.net」を有する。Aliceは、自分のユーザ端末装置でだけこのパーソナルIDに到達可能にしたいと希望しているいものとする。それ故、このIDは、プライベート・ユーザIDである234150123456@operator.netだけに関係付けられている。
【0026】
Aliceの夫Bobは、非IMSだがSIP対応の自分のノートパソコンを介してだけ連絡可能にしたいと希望しているものとする。それ故、Bobのパブリック・ユーザID「bob.smith@operator.net」は、HIG内のISIMのプライベート・ユーザIDである234150654321@operator.netだけにIMSネットワーク内で関係付けられている。
【0027】
BobとAliceの各端末内のSIPユーザエージェント(UA)はそれぞれ、HIG内のSIP B2BUAを介して、IMSネットワークでそれぞれのプライベート・ユーザIDに関係付けられる、それぞれのパーソナルIDを登録する。既に述べたように、プライベート・ユーザIDにも関係付けられるデフォルト・パブリック・ユーザIDは、IMSネットワークにも登録される。デフォルトのIDは、パーソナルIDの登録前または登録後のいずれのときに登録されてもよい。
【0028】
図5は、SIP対応でかつ非IMS端末である1組のUA1とUA2を、HIGのB2BUAに登録し、続いてB2BUAとIMSとの間で認可する手順に関連したシグナリングを示す図である。図に示すのは、IMSネットワークのプロキシ呼セッション制御機能(P−CSCF)ノードおよびサービング呼セッション制御機能(S−CSCF)ノード、それにネットワークオペレータに属し加入データおよびアクセスデータを有するホーム加入者サーバ(HSS)である。シグナリング手順は、3GPP TS24.229およびTS24.228に基づく。
【0029】
1.UA1は、ISIMに関する加入申し込みと関係するローカル・ユーザネーム(「bob」)を含む「To」ヘッダを使用して、HIGのSIP B2BUAに登録する。
【0030】
2.B2BUAは、状況に応じてユーザに身元確認を要求する。加入者はローカル(局所的)に、ローカルユーザが身元確認を要求されるべきか否かを設定することと、ローカルユーザが使用するパスワードを設定することができる。
【0031】
3.UA1は、身元確認を要求された場合、登録メッセージを再送する。その場合、メッセージは、ユーザネーム・パラメータに含まれる身元確認要求されたユーザのID(bob)を含む「Authorization」ヘッダを有する。
【0032】
4.SIP B2BUAは、P−CSCFとの間でTCP接続(通常はポート5061番)を確立する。
【0033】
5.SIP B2BUAは、TLSハンドシェイクを行い、TLS接続を確立する。TLSハンドシェイクは、既存のTLSセッションを再び用いてもよい。3GPPで現在規定されているIPsecは、NATを越えることができないので、選択の余地はない。それ故、TLSがこの例では使用される。
【0034】
6.B2BUAは、ユーザネームとしてHIGのISIMに格納されたプライベート・ユーザID(234150654321@operator.net)を使用する。Contactヘッダは、B2BUAのIPアドレス(またはドメインネーム)を有する。通常このIPアドレスは動的ホスト設定プロトコル(DHCP)により割当てられる。P−CSCFのアドレスまたは名前も、DHCPにより割当てられる。Toヘッダ内の選択されたパブリック・ユーザIDは、UA1から送信されたToヘッダ内の値かまたはマッピングされた名前(すなわちbob.smith@operator.net)である。UA1が使用するローカル・ユーザネームは、HIGによりパブリック・ユーザIDにマッピングされる。加入者は、そのようなマッピングをローカルに構成することができる。
【0035】
7.P−CSCFは、幾つかのヘッダ(Proxy−RequireおよびSecurity−Client)と幾らかのヘッダ情報(例えば、Requireヘッダのsec−agree)を除いた後、S−CSCFに要求を送信する。
【0036】
8.クライアントが認証されなければならず、S−CSCFに(この加入申し込み)に対する認証ベクトルがまだ存在しない場合には、S−CSCFは、HSSに認証ベクトルを要求する。通常、加入申し込みコンテキストは、S−CSCF内で各加入申し込みに対して作成され、その加入申し込みに対する新規登録に続いて、コンテキストのフラグは、「未認証」から「認証済」状態に切替えられる。
【0037】
9.HSSは、S−CSCFに1つまたは複数の認証ベクトルを返信する。
【0038】
10.S−CSCFは、クライアント認証が必要な場合、RANDおよびAUTNを有するSIP401メッセージでB2BUA/ISIMに身元確認を要求する。
【0039】
11.P−CSCFは、401メッセージに幾つかのヘッダを加えてから、B2BUAに401メッセージを送信する。
【0040】
12.401により身元確認を要求された場合、B2BUAは、RESを計算するとともに、AUTNを確かめる。次いでB2BUAは、RESを共有鍵として使用したダイジェストを有するAuthorizationヘッダを含む新しいREGISTERメッセージを送信する。
【0041】
13.P−CSCFは、幾つかのヘッダ(Proxy−Require、Security−Verify、Security−Client)と幾らかのヘッダ情報(例えば、Requireヘッダのsec−agree)とを除外した後、S−CSCFにリクエストを送信する。S−CSCFは、B2BUAからのRESに基づくダイジェストとXRESから計算したダイジェストを照合する。これが必要なのは、B2BUAが身元確認要求された場合だけである。
【0042】
14.S−CSCFは、Pathヘッダ、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダを有する、SIP200メッセージで返答する
15.B2BUAは、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダの中身を格納し、次にPathヘッダ、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダを除去してから、UA1に200メッセージを送信する。
これで、UA1に関する登録手続きが完了する。
【0043】
16.UA2は、ISIMの加入申し込みに関係するローカル・ユーザネーム(「alice」)を有するToヘッダを使用して、SIP B2BUAに登録する。
【0044】
17.B2BUAは、状況に応じてユーザに身元確認を要求する。
【0045】
18.UA2は、身元確認要求された場合、登録メッセージを再送する。その場合メッセージは、ユーザネーム・パラメータに含まれる身元確認要求されたユーザのID(alice)を含むAuthorizationヘッダを有する。
【0046】
19.B2BUAは、ユーザネームとしてISIMに格納されたプライベート・ユーザID(234150654321@operator.net)を使用する。Toヘッダ内の選択されたパブリック・ユーザIDは、マッピングされた名前(alice.smith@operator.net)である。
【0047】
20.P−CSCFは、幾つかのヘッダ(Proxy−Require、Security−Verify、Security−Client)および幾らかのヘッダ情報(例えば、Requireヘッダのsec−agree)を除外した後、S−CSCFに要求を送信する。
【0048】
21.S−CSCFはプライベート・ユーザIDを既に認証しているので(サービス・コンテキストがある)、認証を再び行う必要はない。
【0049】
22.S−CSCFは、Pathヘッダ、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダを有するSIP200メッセージで応答する。
【0050】
23.B2BUAは、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダの中身を格納し、次にPathヘッダ、Service−RouteヘッダおよびP−Associated−URIヘッダを除去してから、UA1に200メッセージを送信する。
これで、端末UA2はIMSに登録される。
【0051】
図6は、レガシー電話機すなわち「黒電話機」の登録に関連するシグナリングを図解する。黒電話機はSIP端末ではないので、HIGへの端末の登録は、HIGの電源オン(または黒電話機とHIGとの接続)に続いてSIPゲートウェイで行われる。REGISTERメッセージのToヘッダ内のパブリック・ユーザIDに関して、HIGは、デフォルト・ユーザIDであるsmith@operator.netを選択する(図6)。
【0052】
SIP対応端末のシナリオをまた考慮して、図7は、HIGの後方にあるUA1がセッションの始端となる場合の、IMSセッション確立に関連するシグナリングを図解する。シグナリングの工程は以下の通りである。
【0053】
1.UA1は、B2BUAにSIP INVITEを送信する。
【0054】
2.B2BUAは、100Tryingで応答する。
【0055】
3.B2BUAは、INVITEメッセージに幾つかのヘッダを加える。Fromヘッダは、ユーザに対するパーソナルIDに等しいパブリック・ユーザIDに変換される。P−Preferred−Identityヘッダも、パーソナルIDを有する。P−Access−Network−Infoは、アクセス名を有する。場合によっては、アプリケーションはこのアクセス名を知らず、その場合はアクセスネットワークのどこかで加えられてもよいし、加入者が設定してもよい。電話番号は、ISIMに格納された回線IDに基づき加えることができる。B2BUAは、Contactヘッダを変更し、P−CSCFにINVITEを送信する。
【0056】
4.100Trying。
【0057】
5.ネットワークの視点からは認証された場合、P−CSCFは、P−Preferred−Identityを除去し、P−Preferred−Identityの中身を有するP−Asserted−Identityを代わりに挿入する。次いでP−CSCFは、S−CSCFにINVITEを送信する。
【0058】
6.100Trying。
【0059】
7.S−CSCFは、INVITEがネットワークから送信される前に、P−Access−Network−Infoを除去する。
【0060】
8.100Trying。
【0061】
9.着信側UAは、180Ringingを送信する。
【0062】
10.着信側UAは、200OKを送信する。
【0063】
11.UA1は、ACKで200OKの受信を通知する。
【0064】
図8は、UA1がセッションの終端となる場合において、IMSセッションの確立に関連するシグナリングを図解する。シグナリング工程は、以下の通りである。
【0065】
1.遠くにあるUAが、S−CSCFにSIP INVITEを送信する。
【0066】
2.S−CSCFは、100Tryingで応答する。
【0067】
3.S−CSCFは、登録時に格納された連絡アドレスを抽出し、Request−URIとして挿入する。S−CSCFは、P−Called−Party−IDヘッダに元のRequest−URIを挿入し、P−CSCFにINVITEを送信する。
【0068】
4.P−CSCFは、100Tryingで応答する。
【0069】
5.P−CSCFは、P−Charging−Vectorを除去し、B2BUAにINVITEを送信する。
【0070】
6.B2BUAは、100Tryingで応答する。
【0071】
7.B2BUAは、P−Asserted−Identityを移動する(実行可能手段は、Fromヘッダ内の中身をP−Asserted−Identity内の中身で置き換える)。Record−Routeヘッダが移動される。実行可能手段は、B2BUAがToヘッダの中身を置き換えるためにP−Called−Party−IDの中身を使用することである。B2BUAは、前に登録したホームユーザを見つけるため、受信要求内のRequest−URIを使用する。Request−URIは、ローカルに格納された連絡アドレスで置き換えられる。B2BUAは、UA1にINVITEを送信する。
【0072】
8.UA1は、100Tryingで応答する。
【0073】
9.UA1は、180Ringingで応答する。
【0074】
10.遠くのUAは、S−CSCFおよびP−CSCFを介して、UA1にACKを送信する。
【0075】
相当数の重要な利点が、上記手順の実装から生じる。特に、幾つかのユーザに対してISIMは1つしか必要ない。これにより、システムの費用が減少し、柔軟性が増大する一方で、UICCが提供するセキュリティ向上の利点を依然として活かすことができる。他の利点は次の通りである。
【0076】
●ISIMを有しない端末は、HIGから延びている保護されたトンネル、ならびにHIG内のNATとファイアウォールの境界防護を利用できる。
【0077】
●オペレータは、パスワードを提供し維持する必要がない。ローカルパスワードの設定は、加入者にまかせる。
【0078】
●非IMSでSIP対応PCが使用するローカル・パーソナルIDをIMSネットワークの特定のパブリック・ユーザIDにマッピングするとき、パーソナルIDを使用することはまだ可能である。
【0079】
本発明の範囲から逸脱することなしに上記の実施形態に対して、様々な変更形態の作成が可能であることは、当業者なら理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IMS非対応端末を使用してIPマルチメディア・サブシステム(IMS)のサービスにアクセスするのを支援する方法であって、
ホームIMSゲートウェイに対してIMS非対応端末を登録する工程と、
前記IMS非対応端末の登録に応えて、前記ホームIMSゲートウェイに存在するUMTS用ICカード(UICC)の汎用SIMアプリケーションから取得した情報を使用して、前記IMS非対応端末に成り代わって、前記ホームIMSゲートウェイと前記IMSとの間でIMS登録を実行する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ホームIMSゲートウェイは、前記UMTS用ICカード上のISIMへのインターフェースを有するSIPバックトゥバック・ユーザエージェントを含むことを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IMS非対応端末がSIP端末である場合に、前記ホームIMSゲートウェイに対してIMS非対応端末を登録する前記工程には、前記SIP端末と前記SIPバックトゥバック・ユーザエージェントとの間でSIP登録を実行する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SIP端末は、前記SIPバックトゥバック・ユーザエージェントに対して、該SIP端末に対して関係付けられることになっているパブリック・ユーザ識別情報を通知することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記SIP端末は、前記SIPバックトゥバック・ユーザエージェントによって、あらかじめ記憶されているパブリック・ユーザ識別情報に対してマッピングされるローカル識別情報を供給することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記IMS登録には、
前記IMS非対応端末に関係付けられた前記パブリック・ユーザ識別情報をIMSネットワークに対して通知するとともに、前記IMSネットワークと前記SIPバックトゥバック・ユーザエージェントとの間でSIP登録を実行する工程
が含まれることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記IMS非対応端末がSIP端末でない場合に、
前記ホームIMSゲートウェイに対してIMS非対応端末を登録する前記工程には、前記IMS非対応端末の端末入線上でのループを検出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホームIMSゲートウェイには、前記IMS非対応端末に対して割当てられ、かつ、前記IMSに対して登録する際に使用されるデフォルトのパブリック・ユーザ識別情報があらかじめ記憶されていることを特徴とする請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ホームIMSゲートウェイに対する前記IMS非対応端末の登録は、前記UMTS用ICカード上のISIMへのインターフェースを有するSIPゲートウェイによって実行されることを特徴とする請求項1、7または8に記載の方法。
【請求項10】
IMS非対応端末を使用してIPマルチメディア・サブシステム(IMS)のサービスにアクセスするのを支援するためのホームIMSゲートウェイを動作させる方法であって、
前記ホームIMSゲートウェイに対してIMS非対応端末を登録する工程と、
前記IMS非対応端末の登録に応えて、前記ホームIMSゲートウェイに存在するUMTS用ICカード(UICC)の汎用SIMアプリケーションから情報を取得し、取得した該情報を使用して、前記IMS非対応端末に成り代わって、前記IMSに対してIMS登録を実行する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
IMS非対応端末を使用してIPマルチメディア・サブシステム(IMS)のサービスにアクセスするのを支援するためのホームIMSゲートウェイであって、
前記ホームIMSゲートウェイをIMS非対応端末へ接続するための少なくとも1つのインターフェースと、
UMTS用ICカード(UICC)からISIMアプリケーションデータを読み出すUICCリーダ装置と、
IMS非対応端末を前記ホームIMSゲートウェイに対して登録する第1処理手段と、
前記ホームIMSゲートウェイに登録されたIMS非対応端末を、前記IMSに対して登録する第2処理手段と
を含むことを特徴とするホームIMSゲートウェイ。
【請求項12】
前記ホームIMSゲートウェイをIMS非対応端末へ接続するための前記インターフェースは、
前記ホームIMSゲートウェイとレガシー機器とを接続するための回線インターフェース、
LANインターフェース、または、
無線LANインターフェース
であることを特徴とする請求項11に記載のホームIMSゲートウェイ。
【請求項13】
前記第1処理手段及び前記第2処理手段は、
前記IMSによって使用されるセッション開始プロトコル(SIP)と前記IMS非対応端末によって使用されているプロトコルとの間でプロトコル変換を実行するSIPゲートウェイを実現する手段
を含むことを特徴とする請求項11または12に記載のホームIMSゲートウェイ。
【請求項14】
前記第1処理手段及び前記第2処理手段は、
SIP端末に対してはSIPサーバとして動作し、前記IMSに対してはSIPクライアントとして動作するSIPバックトゥバック・ユーザエージェントを実現する手段を含むことを特徴とする請求項11または12に記載のホームIMSゲートウェイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−44683(P2012−44683A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−211564(P2011−211564)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2007−538382(P2007−538382)の分割
【原出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】