説明

IQGAP3エピトープペプチドおよびそれを含むワクチン

本明細書では、がんに対するペプチドワクチンについて記載する。特に本発明は、CTLを誘発するIQGAP3由来のエピトープペプチドについて説明する。本発明はまた、該ペプチドをパルスしたHLA−A24陽性標的細胞またはHLA−A02陽性標的細胞を特異的に認識する樹立されたCTLを提供する。該ペプチドのいずれかを提示する抗原提示細胞およびエキソソーム、ならびに抗原提示細胞を誘導するための方法もまた提供される。本発明はさらに、有効成分として、IQGAP3ポリペプチドまたはそれをコードするポリヌクレオチド、ならびにエキソソームおよび抗原提示細胞を含む薬学的作用物質を提供する。さらに本発明は、IQGAP3ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリペプチドを提示するエキソソームもしくは抗原提示細胞、または本発明の薬学的作用物質を用いた、がん(腫瘍)を治療および/もしくは予防(すなわち、予防)する、ならびに/または術後のその再発を予防するための方法、ならびにCTLを誘導するための方法、抗腫瘍免疫を誘導するための方法を提供する。標的とするがんは、腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌が含まれるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2008年6月11日に出願された米国仮特許出願第61/060,538号の恩典を主張し、その内容の全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、生物科学の分野、より具体的にはがん治療の分野に関連する。特に本発明は、がんワクチンとして極めて有効な新規ペプチド、ならびに腫瘍を治療および予防 (preventing) するための薬物に関連する。
【背景技術】
【0003】
CD8陽性CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子上に見出される腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、その後、腫瘍細胞を殺傷することが実証されている。TAAの最初の例としてメラノーマ抗原(MAGE)ファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが、主に免疫学的アプローチによって発見されている(Boon T. Int J Cancer 54: 177-180, 1993(非特許文献1); Boon T, and van der Bruggen P. J Exp Med 183: 725-729, 1996(非特許文献2); van der Bruggen P, et al. Science 254: 1643-1647, 1991(非特許文献3); Brichard V, et al. J Exp Med 178: 489-495, 1993(非特許文献4); Kawakami Y, et al. J Exp Med 180: 347-352, 1994(非特許文献5))。これらのTAAのいくつかは、現在、免疫療法の標的として臨床開発の過程にある。
【0004】
強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し得る新規TAAの同定により、様々な種類のがんに対するペプチドワクチン接種戦略のさらなる発展および臨床的適用が保証される(Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55(非特許文献6); Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42(非特許文献7); Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9(非特許文献8); van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14(非特許文献9); Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8(非特許文献10); Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72(非特許文献11); Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66(非特許文献12); Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94(非特許文献13))。これまでに、これらの腫瘍関連抗原由来ペプチドを用いた臨床試験がいくつか報告されている。残念ながらこれまでのところ、これらのがんワクチン試験では低い客観的奏功率しか観察されていない(Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80(非特許文献14); Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42(非特許文献15); Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15(非特許文献16))。
【0005】
がん細胞の増殖および生存に不可欠なTAAは、免疫療法の標的として優れている。というのも、治療によって誘発される免疫選択の結果としてのTAAの欠失、変異、または下方制御に起因し得るがん細胞の免疫回避の詳説されているリスクを、そのようなTAAを用いることで、最小限に抑えられ得るためである。
【0006】
IQモチーフ含有GTPアーゼ活性化タンパク質であるIQGAPは、Cdc42、RacおよびRhoAとの相互作用を介して、多くのアクチン細胞骨格系の活性を制御することが知られている。IQGAPファミリータンパク質の全てはRasGAP関連ドメイン、IQモチーフ、およびカルポニン相同ドメインを含む、保存されたドメインを有している。IQGAPは、活性化Rac1およびCdc42のエフェクターとして知られており、アクチンフィラメントと直接的に相互作用する。近年、IQGAP1に相同な1番染色体における配列についての探索によって、IQGAP3(GenBankアクセッション番号:NM_178229、SEQ ID NO:154をコードするSEQ ID NO:153)がIQGAPファミリーの新規のメンバーとして同定された(Wang S et al., J Cell Sci 2007 Feb 15, 120: 567-77(非特許文献17))。さらに、23,040個の遺伝子を含有するゲノムワイドcDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイル解析によって、IQGAP3は胃癌において上方制御される新規の分子として同定された(Jinawath N et al., AACR 2006(非特許文献18))。実際に、例えばその開示が参照により本明細書に組み入れられる、膀胱癌(WO2006/085684(特許文献1))、腎細胞癌(WO2007/013575(特許文献2))、肺癌(WO2004/031413(特許文献3)およびWO2007/013665(特許文献4))、食道癌(WO2007/013671(特許文献5))、膵臓癌(WO2004/031412(特許文献6))および乳癌を含むいくつかのがん細胞においてIQGAP3が上方制御されることが示されている。ヒトの正常な組織における発現解析からは、精巣、小腸および結腸においてIQGAP3転写産物が軽度に検出された。従って、IQGAP3はがんの免疫療法に適した標的であると考えられ、それに由来するエピトープペプチドは幅広いがんタイプの治療において有効ながん免疫療法剤として役立つものと期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/085684
【特許文献2】WO2007/013575
【特許文献3】WO2004/031413
【特許文献4】WO2007/013665
【特許文献5】WO2007/013671
【特許文献6】WO2004/031412
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Boon T. Int J Cancer 54: 177-180, 1993
【非特許文献2】Boon T, and van der Bruggen P. J Exp Med 183: 725-729, 1996
【非特許文献3】van der Bruggen P, et al. Science 254: 1643-1647, 1991
【非特許文献4】Brichard V, et al. J Exp Med 178: 489-495, 1993
【非特許文献5】Kawakami Y, et al. J Exp Med 180: 347-352, 1994
【非特許文献6】Harris CC, J Natl Cancer Inst 1996 Oct 16, 88(20): 1442-55
【非特許文献7】Butterfield LH et al., Cancer Res 1999 Jul 1, 59(13): 3134-42
【非特許文献8】Vissers JL et al., Cancer Res 1999 Nov 1, 59(21): 5554-9
【非特許文献9】van der Burg SH et al., J Immunol 1996 May 1, 156(9): 3308-14
【非特許文献10】Tanaka F et al., Cancer Res 1997 Oct 15, 57(20): 4465-8
【非特許文献11】Fujie T et al., Int J Cancer 1999 Jan 18, 80(2): 169-72
【非特許文献12】Kikuchi M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 459-66
【非特許文献13】Oiso M et al., Int J Cancer 1999 May 5, 81(3): 387-94
【非特許文献14】Belli F et al., J Clin Oncol 2002 Oct 15, 20(20): 4169-80
【非特許文献15】Coulie PG et al., Immunol Rev 2002 Oct, 188: 33-42
【非特許文献16】Rosenberg SA et al., Nat Med 2004 Sep, 10(9): 909-15
【非特許文献17】Wang S et al., J Cell Sci 2007 Feb 15, 120: 567-77
【非特許文献18】Jinawath N et al., AACR 2006
【発明の概要】
【0009】
本発明は、免疫療法の適当な標的としてのIQGAP3の発見に部分的に基づくものである。TAAは一般に、免疫系により「自己」として認識され、従って生得的な免疫原性を有さない場合が多いため、適切な標的の発見は極めて重要である。IQGAP3が膀胱、腎臓、肺、食道、胃、乳房、および膵臓のようながん組織において上方制御されると明らかになったことを認識して、本発明は、この細胞分裂周期関連1(CDA1)タンパク質(IQGAP3)(GenBankアクセッション番号 NM_178229 (SEQ ID NO:153)の遺伝子によってコードされるSEQ ID NO:154)をさらなる解析のための標的とする。特に、対応する分子に特異的なCTLを誘導するエピトープペプチドを含むIQGAP3遺伝子産物を選択した。健常ドナーから得られた末梢血単核細胞(PBMC)を、IQGAP3由来のHLA−A*24結合ペプチドおよびHLA−A*02結合ペプチドを用いて刺激した。各候補ペプチドをパルスしたHLA−A24陽性または HLA−A02陽性標的細胞を特異的に認識するCTLを樹立し、腫瘍血管表面上に発現されるIQGAP3に対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A24拘束性またはHLA−A02拘束性のエピトープペプチドを同定した。これらの結果から、IQGAP3は免疫原性が強く、かつそのエピトープは腫瘍免疫療法の有効な標的であることが実証される。
【0010】
従って、CTL誘導能、ならびにSEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供することが本発明の一つの目的である。さらに、本発明は、改変されたペプチドが元のCTL誘導能を保持する限りにおいて1個、2個またはそれ以上のアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150のアミノ酸配列を有する改変ペプチドを意図する。
【0011】
対象に投与された場合、本発明のペプチドは抗原提示細胞の表面上に呈示され、その後各ペプチドを標的とするCTLを誘導する。従って、本発明のペプチドのいずれかを提示する抗原提示細胞およびエキソソーム、ならびに抗原提示細胞を誘導するための方法を提供することは、本発明の一つの目的である。
【0012】
本発明のIQGAP3ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにIQGAP3ポリペプチドを提示するエキソソームおよび抗原提示細胞の投与によって、抗腫瘍免疫応答が誘導される。従って、本発明のポリペプチドまたはそれらをコードするポリヌクレオチド、ならびにそれらを含むエキソソームおよび抗原提示細胞をその有効成分として含む薬学的作用物質を提供することは、本発明の一つの目的である。本発明の薬学的作用物質は、ワクチンとして特に有用である。
【0013】
IQGAP3ポリペプチド、IQGAP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、IQGAP3ポリペプチドを提示するエキソソームもしくは抗原提示細胞、または本発明の薬学的作用物質を投与する段階を含む、がん(腫瘍)の治療および/もしくは予防(prophyraxis)(すなわち、予防(preventing))、ならびに/または術後のその再発の予防(preventing)のための方法、ならびにCTLを誘導するための方法、腫瘍関連内皮に対する免疫応答および同様に抗腫瘍免疫を誘導するための方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。加えて、本発明のCTLも同様に、がんに対するワクチンとして使用される。
【0014】
本発明は、例えば膀胱癌、腎臓癌、肺癌、食道癌、乳癌、膵臓癌および胃癌を含むがんのような、IQGAP3の過剰発現に関連する任意の疾患に適用し得る。好ましいがん標的には、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
上記に加え、本発明のその他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、より十分に明らかになるであろう。しかしながら、前述の本発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも例示的な態様であり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。特に、本明細書において本発明はいくつかの特定の態様を参照しながら説明されるが、その説明は本発明を例証するものであり、本発明を限定するものとして構成されていないことが理解されよう。添付の特許請求の範囲によって記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は様々な変更および適用に思い至ることができる。同様に、本発明のその他の目的、特徴、利益、および利点は、本概要および以下に記載する特定の態様から明らかになると考えられ、当業者には容易に明白であろう。そのような目的、特徴、利益、および利点は、添付の実施例、データ、図面、およびそれらから引き出されるすべての妥当な推論と併せて上記から、単独で、または本明細書に組み入れられる参考文献を考慮して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の様々な局面および適用は、以下の図面の簡単な説明ならびに発明の詳細な説明およびその好ましい態様を考慮することで、当業者に明白となるであろう。
【0017】
【図1A】図1Aおよび図1Bは、一連の写真(a)〜(s)を含み、IQGAP3由来のペプチドによって誘導されたCTLについてのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示している。IQGAP3−A24−9−955 (SEQ ID NO:2) (a)によって刺激されたウェル番号#3および#6、IQGAP3−A24−9−1167 (SEQ ID NO:4) (b)による#5、IQGAP3−A24−9−779 (SEQ ID NO:7) (c)による#7、IQGAP3−A24−9−74 (SEQ ID NO:21) (d)による#2、IQGAP3−A24−9−26 (SEQ ID NO:25) (e)による#8、IQGAP3−A24−9−137 (SEQ ID NO:29) (f)による#4、IQGAP3−A24−9−63 (SEQ ID NO:32) (g)による#8、IQGAP3−A24−10−1600 (SEQ ID NO:35) (h)による#8、IQGAP3−A24−10−1507 (SEQ ID NO:37) (i)による#2、IQGAP3−A24−10−139 (SEQ ID NO:40) (j)による#2、IQGAP3−A24−10−1097 (SEQ ID NO:49) (k)による#5、IQGAP3−A24−10−345 (SEQ ID NO:53) (l)による#7、IQGAP3−A24−10−1614 (SEQ ID NO:55) (m)による#1、IQGAP3−A24−10−191 (SEQ ID NO:56) (n)による#3、IQGAP3−A24−10−314 (SEQ ID NO:57) (o)による#5、IQGAP3−A24−10−1363 (SEQ ID NO:62) (p)による#5、IQGAP3−A24−10−1114 (SEQ ID NO:63) (q)による#7ならびにIQGAP3−A24−10−1207 (SEQ ID NO:67) (r)による#2のCTLは、それぞれ対照と比較して強力なIFN−γ産生能を示した。対照的に、ペプチドパルスした標的細胞に対して、IQGAP3−A24−9−417 (SEQ ID NO:6)で刺激したCTLからは、特異的なIFN−γ産生は検出されなかった(s)。長方形の囲みで示したウェル中の細胞を増殖させて、CTL株を樹立した。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。図中においては、「+」はウェルの中の細胞が適当なペプチドでパルスされたことを示し、「−」は細胞がペプチドによってパルスされなかったことを示す。
【図1B】図1Bは、図1Aの続きである。
【図2A】図2A、BおよびCは、一連の折れ線グラフ(a)〜(s)を含み、IFN−γELISAアッセイによる、様々なIQGAP3ペプチド即ちSEQ ID NO:2(a)、SEQ ID NO:4(b)、SEQ ID NO:7(c)、SEQ ID NO:21(d)、SEQ ID NO:25(e)、SEQ ID NO:29(f)、SEQ ID NO:32(g)、SEQ ID NO:35(h)、SEQ ID NO:37(i)、SEQ ID NO:40(j)、SEQ ID NO:49(k)、SEQ ID NO:53(l)、SEQ ID NO:55(m)、SEQ ID NO:56(n)、SEQ ID NO:57(o)、SEQ ID NO:62(p)、SEQ ID NO:63(q)およびSEQ ID NO:67(r)によって刺激を受けたCTL株の樹立を示している。結果から、各ペプチドによる刺激によって樹立されたCTL株は、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示したことが実証される。対照的に、SEQ ID NO:6によって樹立されたCTL株からは、ペプチドパルス標的細胞に対する特異的なIFN−γの産生は観察されなかった(s)。図中、「+」は、適切なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」は、いずれのペプチドもパルスしていない標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図2B】図2Bは図2Aの続きである。
【図2C】図2Cは図2Bの続きである。
【図3】図3は、IQGAP3およびHLA−A*2402を外因的に発現する標的細胞に対する特異的なCTL活性を示す折れ線グラフである。HLA−A*2402遺伝子または全長のIQGAP3遺伝子をトランスフェクションしたCOS7細胞を対照として調製した。IQGAP3−A24−9−779 (SEQ ID NO:7)で樹立されたCTL株は、IQGAP3およびHLA−A*2402の双方をトランスフェクションしたCOS7細胞に対して特異的なCTL活性を示した(黒い菱形)。対照的に、HLA−A*2402(三角)またはIQGAP3(丸)のいずれかを発現する標的細胞に対して特異的な有意なCTL活性は検出されなかった。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、一連の写真(a)〜(r)からなり、IQGAP3由来のペプチドによって誘導されたCTLについてのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示している。IQGAP3−A02−9−146 (SEQ ID NO:75) (a)によって刺激されたウェル番号#6および6、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85) (b)による#6、IQGAP3−A02−9−756 (SEQ ID NO:101) (c)による#1、IQGAP3−A02−10−961 (SEQ ID NO:111) (d)による#7、IQGAP3−A02−10−70 (SEQ ID NO:114) (e)による#7および6、IQGAP3−A02−10−1174 (SEQ ID NO:121)(f)による#5、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)(g)による#8、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(h)による#1、IQGAP3−A02−10−953 (SEQ ID NO:139) (i)による#2、IQGAP3−A02−10−1590 (SEQ ID NO:140) (j)による#2、IQGAP3−A02−10−1424 (SEQ ID NO:141) (k)による#2、IQGAP3−A02−10−416 (SEQ ID NO:142) (l)による#2、IQGAP3−A02−10−67 (SEQ ID NO:143) (m)による#4、IQGAP3−A02−10−1461 (SEQ ID NO:145) (n)による#6、IQGAP3−A02−10−842 (SEQ ID NO:148) (o)による#5、IQGAP3−A02−10−897 (SEQ ID NO:150) (p)による#3、ならびにIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99) (q)による#5 のCTLは、対照に比して各々強力なIFN−γ産生能を示した。対照的に、IQGAP3−A02−10−868 (SEQ ID NO:113)によって刺激を受けたCTLからは、ペプチドをパルスした標的細胞に対する特異的なIFN−γ産生は認められなかった(r)。長方形で囲んで示されるウェルの細胞を増殖させ、CTL株を樹立した。図中、「+」は適当なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」はいずれのペプチドをもパルスしていない標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。図中において「+」はウェルの中の細胞が適当なペプチドでパルスされたことを示し、「−」は細胞がペプチドによってパルスされなかったことを示す。
【図4B】図4Bは図4Aの続きである。
【図5A】図5Aおよび図5Bは、一連の折れ線グラフ(a)〜(q)を含み、IFN−γELISAアッセイにより検出された、様々なIQGAP3ペプチド即ちIQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)(a)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)(b)、IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)(c)、IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)(d)、IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)(e)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)(f)、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)(g)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(h)、IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)(i)、IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)(j)、IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)(k)、IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)(l)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)(m)、IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)(n)、IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)(o)、IQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)(p)およびIQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO:99)(q)によって刺激を受けたCTL株のIFN−γ産生を示している。結果から、各ペプチドによって刺激を受けたCTL株は、対照と比して強力なIFN−γ産生を示したことが実証される。図中において「+」は適当なペプチドをパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」はいずれのペプチドをもパルスしていない標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図5B】図5Bは図5Aの続きである。
【図5C】図5Cは図5Bの続きである。
【図6】図6は、一連の折れ線グラフ(a)〜(f)からなり、様々なIQGAP3ペプチド即ちIQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)(a)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)(b)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)(c)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(d)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)(e)およびIQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)(f)により刺激を受けたCTL株から限界希釈法によって樹立されたCTLクローンのIFN−γ産生を示している。結果から、IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)(a)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)(b)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)(c)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(d)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)(e)およびIQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)(f)による刺激によって樹立されたCTLクローンは、対照と比して強力なIFN−γ産生を示したことが実証される。図中において「+」はIQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)(a)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)(b)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)(c)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(d)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)(e)およびIQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)(f)をパルスした標的細胞に対するIFN−γ産生を示し、「−」はいずれのペプチドをもパルスしていない標的細胞に対するIFN−γ産生を示す。
【図7】図7は、IQGAP3およびHLA−A*0201を外因的に発現する標的細胞に対する特異的なCTL活性を示す折れ線グラフである。HLA−A*0201遺伝子または全長IQGAP3遺伝子をトランスフェクションしたCOS7細胞を対照として調製した。IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85) (a)およびIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99) (b)によって樹立したCTLクローンは、IQGAP3およびHLA−A*0201の双方をトランスフェクションしたCOS7細胞に対する特異的なCTL活性を示した(黒い菱形)。一方、HLA−A*0201(三角)またはIQGAP3(丸)のいずれかを発現する標的細胞に対して特異的な有意なCTL活性は検出されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
態様の説明
本発明の態様を実施または試験するにあたって、本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは同等な任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法、装置、および材料をここに記載する。しかしながら、本材料および方法について記載する前に、本明細書に記載の特定の大きさ、形状、寸法、材料、方法論、プロトコール等は慣行的な実験法および最適化に従って変更可能であるため、本発明がこれらに限定されないことが理解されるべきである。本記載に使用する専門用語は特定の型または態様のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも、同様に理解されるべきである。
【0019】
本明細書において言及される各出版物、特許、または特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。しかしながら、本明細書中のいかなるものも、本発明が先の発明によるそのような開示に先行する権利を与えられないと承認するものとしては解釈されるべきではない。
【0020】
I.定義
特記しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されている用語と同じ意味を有する。しかしながら、矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【0021】
本明細書で用いる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、特に具体的に指示がない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0022】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1個または複数個のアミノ酸残基が修飾された残基であるか、または対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体などの非天然残基であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーとに適用される。
【0023】
本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、同様の機能を有する化合物を指す。
【0024】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の推奨する、一般に公知の3文字表記または1文字表記により参照されてもよい。
【0025】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、特記しない限り一般に受け入れられている1文字コードにより参照される。
【0026】
特記しない限り、「がん」という用語は、例えば非限定的に膀胱癌、腎臓癌、肺癌、食道癌、胃癌、乳癌および膵臓癌を含む、IQGAP3遺伝子を過剰発現しているがんを指す。
【0027】
特記しない限り、「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」および「CTL」という用語は本明細書においては同じ意味に使用され、特に具体的に指示されない限り、非自己細胞(例えば腫瘍細胞、ウイルス感染細胞)を認識し、そのような細胞の死滅を誘導できるTリンパ球のサブグループを指す。
【0028】
II.ペプチド
IQGAP3に由来するペプチドが細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識される抗原として機能することを実証するために、IQGAP3(SEQ ID NO:154)に由来するペプチドを解析して、通常見られるHLA対立遺伝子であるHLA−A24またはHLA−A02によって拘束される抗原エピトープであるかどうかを判定した(Date Y et al., Tissue Antigens 47: 93-101, 1996; Kondo A et al., J Immunol 155: 4307-12, 1995; Kubo RT et al., J Immunol 152: 3913-24, 1994)。IQGAP3由来のHLA−A24結合ペプチドおよびHLA−A02結合ペプチドの候補を、HLA−A24およびHLA−A02に対するそれらの結合親和性に基づいて同定した。これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロでの刺激後、以下の各ペプチドを用いてCTLをうまく樹立した:
IQGAP3−A24−9−955(SEQ IDNO:2)、
IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)、
IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)、
IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)、
IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)、
IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)、
IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)、
IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)、
IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)、
IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)、
IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)、
IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)、
IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)、
IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)、
IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)、
IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)、
IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)、
IQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)、
IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)、
IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)、
IQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO:99)、
IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)、
IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)、
IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)、
IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)、
IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)、
IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)、
IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)、
IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)、
IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)、
IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)、
IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)、
IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)、
IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)および
IQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)。
【0029】
樹立されたこれらのCTLは、各ペプチドをパルスした標的細胞に対して強力な特異的CTL活性を示す。本明細書におけるこれらの結果から、IQGAP3がCTLによって認識される抗原であること、および前記ペプチドがHLA−A24またはHLA−A02によって拘束されるIQGAP3のエピトープペプチドであり得ることが実証される。
【0030】
IQGAP3遺伝子は、胃癌、腎臓癌、食道癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌のようなほとんどのがん組織において過剰発現しているため、これは免疫療法のための優れた標的となる。従って本発明は、CTLに認識されるIQGAP3のエピトープに相当するノナペプチド(アミノ酸残基9個からなるペプチド)およびデカペプチド(アミノ酸残基10個からなるペプチド)を提供する。本発明のノナペプチドおよびデカペプチドの特に好ましい例には、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150の中より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドが含まれる。
【0031】
一般的に、インターネット上で現在利用可能なソフトウェアプログラム、例えばParker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75に記載されているソフトウェアプログラムなどを用いて、インシリコで様々なペプチドとHLA抗原との間の結合親和性を算出することができる。例えばParker KC et al., J Immunol 1994 Jan 1, 152(1): 163-75;およびKuzushima K et al., Blood 2001, 98(6): 1872-81に記載されているように、HLA抗原との結合親和性を測定することができる。結合親和性を決定するための方法は、例えばJournal of Immunological Methods, 1995, 185: 181-190、およびProtein Science, 2000, 9: 1838-1846に記載されている。従って本発明は、そのような公知のプログラムを用いて同定された、HLA抗原と結合するIQGAP3のペプチドを包含する。
【0032】
本発明のノナペプチドおよびデカペプチドには、結果として生じるペプチドがそのCTL誘導能を保持する限り、付加的なアミノ酸残基を隣接させることができる。CTL誘導能を有するそのようなペプチドは、典型的には約40アミノ酸未満であり、約20アミノ酸未満である場合が多く、通常は約15アミノ酸未満である。本発明のノナペプチドおよびデカペプチド(例えばSEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148または150から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド)に隣接する特定のアミノ酸配列は、それが元のペプチドのCTL誘導能を損なわない限り、限定されず、任意の種類のアミノ酸から構成され得る。従って本発明は、CTL誘導能、ならびにSEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148または150の中より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドもまた提供する。
【0033】
一般的に、あるタンパク質中の1個またはそれ以上のアミノ酸の改変は、該タンパク質の機能に影響を及ぼさず、場合によっては元のタンパク質の所望の機能を増強することさえある。実際に、改変ペプチド(すなわち、元の参照配列と比較して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基が改変された(すなわち、置換、付加、または挿入された)アミノ酸配列から構成されるペプチド)は、元のペプチドの生物活性を保持することが知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 1984, 81: 5662-6;Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 1982, 10: 6487-500;Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79: 6409-13)。従って、1つの態様において、本発明のペプチドは、CTL誘導能、ならびに1個、2個、またはさらにそれ以上のアミノ酸が挿入、付加、および/または置換されている、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150の中より選択されるアミノ酸配列の双方を有し得る。
【0034】
当業者は、単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変更する、アミノ酸配列に対する個々の付加または置換が、元のアミノ酸側鎖の特性の保存をもたらす傾向があることを認識する。従って、それらはしばしば「保存的置換」または「保存的改変」と称され、この場合、タンパク質の変化により元のタンパク質と類似の機能を有する改変タンパク質が生じる。機能的に類似しているアミノ酸を提示する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。保存するのが望ましいアミノ酸側鎖の特性の例には、例えば、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖が含まれる:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基含有側鎖(S、T、Y);硫黄原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。加えて、以下の8群はそれぞれ、相互に保存的置換であるとして当技術分野で認められるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照されたい)。
【0035】
このような保存的改変ペプチドもまた、本発明のペプチドと見なされる。しかしながら、本発明のペプチドはこれらに限定されず、改変ペプチドが元のペプチドのCTL誘導能を保持する限り、非保存的な改変を含み得る。さらに、改変ペプチドは、IQGAP3の多型バリアント、種間相同体、および対立遺伝子のCTL誘導可能なペプチドを排除しない。
【0036】
必要なCTL誘導能を保持するために、少数の(例えば、1個、2個、または数個の)またはわずかな割合のアミノ酸を改変する(挿入、付加、および/または置換する)ことができる。本明細書において、「数個」という用語は、5個またはそれ未満のアミノ酸、例えば4個もしくは3個またはそれ未満を意味する。改変するアミノ酸の割合は、好ましくは20%もしくはそれ未満、より好ましくは15%もしくはそれ未満、さらにより好ましくは10%もしくはそれ未満または1〜5%である。
【0037】
本発明の好ましいペプチドIQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)、IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)、IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)、IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)、IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)、IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)、IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)、IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)、IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)、IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)、IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)、IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)、IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)、IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)、IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)、IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)、IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)、IQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)、IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)、IQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO: 99)、IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)、IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)、IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)、IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)、IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)、IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)、IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)、IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)、IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)およびIQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)の相同性解析から、これらのペプチドが任意の他の公知のヒト遺伝子産物に由来するペプチドと有意な相同性を有していないことが確認された。従って、免疫療法に用いた場合に、これらのペプチドが未知または望ましくない免疫応答を起こす可能性は有意に低くなっている。従って、これらのペプチドは、腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌のようながん細胞上のIQGAP3に対する免疫を腫瘍患者において誘発するのに非常に有用であると予測される。
【0038】
免疫療法との関連で用いられた場合、本発明のペプチドは、好ましくはHLA抗原との複合体として、細胞またはエキソソームの表面上に提示されるべきである。従って、CTLを誘導するばかりでなく、HLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドを選択することが好ましい。そのために、アミノ酸残基の置換、挿入、欠失、および/または付加によってペプチドを改変して、結合親和性が改善された改変ペプチドを得ることができる。天然に提示されるペプチドに加えて、HLA抗原への結合によって提示されるペプチドの配列の規則性は既知であるため(J Immunol 1994, 152: 3913;Immunogenetics 1995, 41: 178;J Immunol 1994, 155: 4307)、そのような規則性に基づいた改変を本発明の免疫原性ペプチドに導入することができる。例えば、HLA−A24結合を増大させるためには、N末端から2番目のアミノ酸をフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンで置換すること、および/またはC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンで置換することが望ましい場合がある。従って、そのSEQ ID NOのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、もしくはトリプトファンと置換されている、および/または、該SEQ ID NOのアミノ酸配列のC末端がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、もしくはメチオニンと置換されている、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67のアミノ酸配列を有するペプチドは、本発明によって包含される。一方、高いHLA−A02結合親和性を有するペプチドは、そのN末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンと置換されており、かつそのC末端のアミノ酸がバリンまたはロイシンと置換されているペプチドである。従って、そのSEQ ID NOのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンと置換されている、および/または、該SEQ ID NOのアミノ酸配列のC末端がバリンもしくはロイシンと置換されている、SEQ ID NO:75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148または150のアミノ酸配列を有するペプチドは本発明によって包含される。末端のアミノ酸においてだけでなく、ペプチドの潜在的なTCR認識の部位においても、置換を導入することができる。いくつかの研究は、例えばCAP1、p53(264-272)、Her−2/neu(369-377)、またはgp100(209-217)など、ペプチド中のアミノ酸置換が元のものと同等であるかまたはより優れたものであり得ることを実証している(Zaremba et al. Cancer Res. 57, 4570-4577, 1997、T. K. Hoffmann et al. J Immunol. (2002) Feb 1;168(3):1338-47.、S. O. Dionne et al. Cancer Immunol immunother. (2003) 52: 199-206、およびS. O. Dionne et al. Cancer Immunology, Immunotherapy (2004) 53, 307-314)。
【0039】
本発明はまた、記載したペプチドのN末端および/またはC末端への1個〜2個のアミノ酸の付加を意図する。高いHLA抗原結合親和性を有し、かつCTL誘導能を保持するそのような改変ペプチドもまた、本発明に包含される。
【0040】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能を有する内在性または外来のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、自己免疫障害および/または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘発される可能性がある。従って、ペプチドの配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避するために、第一に、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことが好ましい。相同性検索から、対象ペプチドと比較して1個または2個のアミノ酸が異なるペプチドさえも存在しないことが明らかになった場合には、前記副作用のいかなる危険も伴わずに、HLA抗原とのその結合親和性を増大させるため、および/またはそのCTL誘導能を増大させるために、該対象ペプチドを改変することができる。
【0041】
上記のようにHLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドは、非常に効果的であると予測されるが、指標としての高い結合親和性の存在に従って選択された候補ペプチドを、CTL誘導能の存在についてさらに調べる。本明細書において「CTL誘導能」という語句は、抗原提示細胞上に提示された場合に、細胞傷害性リンパ球(CTL)を誘導するペプチドの能力を示す。さらに、「CTL誘導能」は、CTL活性化を誘導する、CTL増殖を誘導する、CTLによる標的細胞の溶解を促進する、およびCTLのIFN−γ産生を増加させる、ペプチドの能力を含む。
【0042】
CTL誘導能の確認は、ヒトMHC抗原を保有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞(DC))、またはより具体的にはヒト末梢血単核白血球由来のDCを誘導し、ペプチドを用いた刺激後にCD8陽性細胞と混合し、その後、標的細胞に対してCTLによって産生かつ放出されたIFN−γを測定することにより達成される。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ, Hum Immunol 2000 Aug, 61(8): 764-79, Related Articles, Books, Linkout Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) responseに記載されているもの)を用いることができる。例えば、標的細胞を51Cr等で放射標識することが可能であり、標的細胞から放出された放射能から細胞傷害活性を算出することができる。あるいは、固定化したペプチドを保有する抗原提示細胞(APC)の存在下で、CTLによって産生かつ放出されたIFN−γを測定し、抗IFN−γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害領域を可視化することによって、CTL誘導能を評価することができる。
【0043】
上記のようにペプチドのCTL誘導能を調べた結果、HLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドが、必ずしも高い誘導能を有するわけではないことが見出された。しかしながら、同定および評価されたペプチドのうち、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150のアミノ酸配列を有するノナペプチドまたはデカペプチドは、HLA抗原に対する高い結合親和性に加えて、特に高いCTL誘導能を示すことが判明した。従って、これらのペプチドは本発明の好ましい態様として例証される。
【0044】
上記の改変に加えて、本発明のペプチドは、結果として生じる連結ペプチドが元のペプチドの必要なCTL誘導能を保持する限り、他の物質に連結させることもできる。適切な物質の例には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成のポリマー等が含まれるが、これらに限定されない。前記ペプチドは、修飾によって元のペプチドの生物活性が損なわれない限り、糖鎖付加、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含み得る。このような種類の修飾を行って、付加的な機能(例えば、標的化機能および送達機能)を付与すること、またはポリペプチドを安定化することができる。
【0045】
例えば、ポリペプチドのインビボ安定性を高めるために、D−アミノ酸、アミノ酸模倣体、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野において公知であり、この概念を本発明のペプチドに適合させることもできる。ポリペプチドの安定性は、いくつかの方法でアッセイすることができる。例えば、ペプチダーゼ、ならびにヒトの血漿および血清などの様々な生物学的媒質を用いて、安定性を試験することができる(例えば、Verhoef et al., Eur J Drug Metab Pharmacokin 1986, 11: 291-302を参照されたい)。
【0046】
本明細書においては、本発明のペプチドは「IQGAP3ペプチド」または「IQGAP3ポリペプチド」とも記載され得る。
【0047】
本発明のペプチドは、HLA抗原と組み合わされた複合体として、細胞(例えば、抗原提示細胞)またはエキソソームの表面上に提示され、その後CTLを誘導する。従って、細胞またはエキソソームの表面上の、ペプチドとHLA抗原が形成した複合体も本発明に含まれる。そのようなエキソソームは、例えば日本特許出願公表公報平11−510507号およびWO99/03499に詳述されている方法を用いて調製することができ、ならびに治療および/または予防を受ける患者から得られたAPCを用いて調製することができる。本発明のペプチドを提示するエキソソームまたは細胞を、ワクチンとして接種することができる。
【0048】
上記複合体中に含まれるHLA抗原の型は、治療および/または予防を必要とする対象のものと一致しなければならない。例えば日本人集団では、HLA−A24およびHLA−A02が広く一般的であり、従って日本人患者の治療に適していると考えられる。日本人および白人の間で高発現しているA24型およびA02型の使用は、有効な結果を得るのに好ましく、亜型もまた使用される。典型的に、臨床においては、治療を必要とする患者のHLA抗原の型をあらかじめ調べることにより、特定の抗原に対して高レベルの結合親和性を有する、または抗原提示によるCTL誘導能を有するペプチドの適切な選択が可能となる。
【0049】
エキソソームまたは細胞に対してA24型およびA02型のHLA抗原を用いる場合、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを用いることが好ましい。
【0050】
III.IQGAP3ペプチドの調製
周知の技法を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。例えば、組換えDNA技術または化学合成を用いて、ペプチドを合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドから構成されるより長いポリペプチドとして、合成することができる。その後ペプチドを単離すること、すなわち他の天然の宿主細胞タンパク質およびそれらの断片、または他の任意の化学物質を実質的に含まないように、精製することができる。
【0051】
選択されたアミノ酸配列に基づいた化学合成によって、本発明のペプチドを得ることができる。該合成に適合させることのできる従来のペプチド合成法の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
(i)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii)Peptide Synthesis (日本語), Maruzen Co., 1975;
(iv)Basics and Experiment of Peptide Synthesis (日本語), Maruzen Co., 1985;
(v)Development of Pharmaceuticals (second volume) (日本語), Vol. 14 (peptide synthesis), Hirokawa, 1991;
(vi)WO99/67288;および
(vii)Barany G. & Merrifield R.B., Peptides Vol. 2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
【0052】
あるいは、ペプチドを作製するための任意の公知の遺伝子工学的方法(例えば、Morrison J, J Bacteriology 1977, 132: 349-51;Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology (eds. Wu et al.) 1983, 101: 347-62)を適合させて、本発明のペプチドを得ることができる。例えば、最初に、発現可能な形態で(例えば、プロモーター配列に相当する調節配列の下流に)目的のペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞に形質転換させる。次いで、該宿主細胞を培養して、関心対象のペプチドを産生させる。インビトロ翻訳系を用いて、ペプチドをインビトロで作製することもできる。
【0053】
IV.ポリヌクレオチド
本発明はまた、前述の本発明のペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。これらは、天然IQGAP3遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_178229(SEQ ID NO:153))由来のポリヌクレオチド、およびその保存的に改変されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。本明細書において「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、数多くの機能的に同一な核酸が任意の特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。従って、あるコドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置において、コードされるポリペプチドを変化させることなく、該コドンを記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸の変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。ペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列は、該核酸の可能性のあるあらゆるサイレント変異をも表す。核酸中の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を得ることができることを、当業者は認識するであろう。従って、ペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、公開した各配列において非明示的に記載されている。
【0054】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、およびそれらの誘導体から構成され得る。DNAはA、T、C、およびGなどの塩基から適切に構成され、RNAではTはUに置き換えられる。
【0055】
本発明のポリヌクレオチドは、介在するアミノ酸配列を間に伴って、または伴わずに、本発明の複数のペプチドをコードし得る。例えば、介在するアミノ酸配列は、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を提供し得る。さらに、ポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の付加的配列を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現に必要な調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってよく、またはマーカー遺伝子等を有する発現ベクター(プラスミド)であってもよい。一般に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる従来の組換え技法によりポリヌクレオチドを操作することによって、そのような組換えポリヌクレオチドを調製することができる。
【0056】
組換え技法および化学合成技法の両方を用いて、本発明のポリヌクレオチドを作製することができる。例えば、適切なベクター内に挿入することによってポリヌクレオチドを作製することができ、これはコンピテント細胞にトランスフェクトした場合に発現され得る。あるいは、PCR技法または適切な宿主内での発現を用いて、ポリヌクレオチドを増幅することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage SL & Iyer RP, Tetrahedron 1992, 48: 2223-311;Matthes et al., EMBO J 1984, 3: 801-5に記載されているような固相技法を用いて、ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0057】
V.抗原提示細胞(APC)
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの間に形成される複合体を自身の表面上に提示する抗原提示細胞(APC)を提供する。本発明のペプチドを接触させることによって、または本発明のペプチドをコードするヌクレオチドを発現可能な形態で導入することによって得られるAPCは、治療および/または予防を受ける患者に由来してよく、かつ、単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくは細胞傷害性T細胞を含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0058】
前記APCは、特定の種類の細胞に限定されず、リンパ球によって認識されるように自身の細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞を含む。DCは、APCの中で最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCであるため、DCは本発明のAPCとして使用される。
【0059】
例えば、末梢血単球からDCを誘導し、次にそれらをインビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明のペプチドと接触させる(で刺激する)ことによってAPCを得ることができる。本発明のペプチドを対象に投与した場合、本発明のペプチドを提示するAPCが該対象の体内で誘導される。「APCを誘導する」という語句は、細胞を本発明のペプチドまたは本発明のペプチドをコードするヌクレオチドと接触させて(で刺激して)、HLA抗原と本発明のペプチドとの間に形成される複合体を細胞表面上に提示させることを含む。あるいは、APCが本発明のペプチドを提示できるように該ペプチドをAPCに導入した後、APCをワクチンとして対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は、以下の段階を含み得る:
a:第1の対象からAPCを回収する段階;
b:段階aのAPCとペプチドを接触させる段階;および
c:前記ペプチドを保持したAPCを第2の対象に投与する段階。
【0060】
第1の対象と第2の対象は同一の個体であってよく、または異なる個体であってもよい。あるいは、本発明に従って、抗原提示細胞を誘導する薬学的組成物を製造するための本発明のペプチドの使用を提供する。加えて、本発明は、抗原提示細胞を誘導する薬学的組成物を製造するための方法または工程を提供する。さらに、本発明はまた、抗原提示細胞を誘導するための本発明のペプチドを提供する。段階(b)によって得られたAPCを、ワクチンとして対象に投与することができる。
【0061】
本発明の1つの局面によると、前記APCは高レベルのCTL誘導能を有する。「高レベルのCTL誘導能」という用語において、高レベルとは、ペプチドと接触させていないAPC、またはCTLを誘導することができないペプチドと接触させたAPCによるCTL誘導能のレベルと比較したものである。高レベルのCTL誘導能を有するそのようなAPCは、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をインビトロでAPCに導入する段階を含む方法によって、調製することができる。導入する遺伝子は、DNAまたはRNAの形態であってよい。導入のための方法の例には、特に限定されることなく、当分野において従来より実施される様々な方法が含まれ、例えばリポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法などを用いることができる。より具体的には、Cancer Res 1996, 56: 5672-7;J Immunol 1998, 161: 5607-13;J Exp Med 1996, 184: 465-72;公表特許公報第2000−509281号に記載されているように、それを実施することができる。遺伝子をAPCに導入することによって、遺伝子は細胞内で転写、翻訳等を受け、次いで、得られたタンパク質はMHCクラスIまたはクラスIIによって処理されて、提示経路を経てペプチドが提示される。
【0062】
VI.細胞傷害性T細胞
本発明のペプチドのいずれかに対して誘導された細胞傷害性T細胞は、インビボで腫瘍関連内皮を標的とする免疫応答を増強させるため、ペプチド自体と同様の様式でワクチンとして用いることができる。従って本発明はまた、本発明のペプチドのいずれかによって特異的に誘導または活性化された、単離された細胞傷害性T細胞を提供する。
【0063】
そのような細胞傷害性T細胞は、(1)本発明のペプチドを対象に投与すること、または(2)対象由来のAPC、およびCD8陽性細胞、もしくは末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させる(で刺激する)ことによって、得ることができる。
【0064】
本発明のペプチドを提示するAPCからの刺激によって誘導された細胞傷害性T細胞は、治療および/または予防を受ける患者に由来してよく、かつ、単独で投与すること、または効果を調節する目的で本発明のペプチドもしくはエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与することができる。得られた細胞傷害性T細胞は、本発明のペプチド、または例えば誘導に用いた同一のペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、IQGAP3を内因的に発現する細胞、またはIQGAP3遺伝子をトランスフェクトされた細胞であってよく、かつ、本発明のペプチドによる刺激によって該ペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、活性化されたCTLの攻撃の標的となり得る。
【0065】
VII.T細胞受容体(TCR)
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成し得るポリペプチドをコードする核酸配列を含む組成物、およびそれを用いる方法を提供する。TCRサブユニットは、IQGAP3を提示する腫瘍細胞に対する特異性をT細胞に付与するTCRを形成する能力を有する。当技術分野における公知の方法を用いることによって、本発明の1種または複数種のペプチドで誘導されたCTLにおいて発現する、TCRを構成するα鎖およびβ鎖の核酸配列を同定することができる(WO2007/032255、およびMorgan et al., J Immunol, 171, 3288 (2003))。TCR誘導体は、IQGAP3ペプチドを提示する標的細胞と高い結合力で結合することができ、かつ任意で、IQGAP3ペプチドを提示する標的細胞の効率的な殺傷をインビボおよびインビトロで媒介することができる。
【0066】
TCRサブユニットをコードする核酸配列を、適切なベクター、例えばレトロウイルスベクターに組み込むことができる。これらのベクターは、当技術分野において周知である。該核酸またはそれらを利用可能に含むベクターを、T細胞、例えば患者由来のT細胞に導入することができる。有利には、本発明は、患者自身のT細胞(または別の哺乳動物のT細胞)の迅速な改変により、優れたがん細胞殺傷特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に作製することを可能にする、既製の組成物を提供する。
【0067】
また本発明は、HLA−A24またはHLA−A02との関連で、例えばSEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150のIQGAP3ペプチドに結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を形質導入することによって調製されるCTLを提供する。形質導入されたCTLは、インビボでがん細胞にホーミングすることができ、かつ周知の培養法によってインビトロで増殖させることができる(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-3461 (1989))。本発明のT細胞を用いて、治療または予防を必要としている患者におけるがんの治療または予防に有用な免疫原性組成物を形成することができる(WO2006/031221)。
【0068】
予防(Prevention and prophylaxis)は、疾患による死亡率または罹患率の負荷を軽減させる任意の行為を含む。予防(Prevention and prophylaxis)は、「第一次、第二次、および第三次の予防(prevention)レベルで」行われ得る。第一次の予防(Prevention and prophylaxis)は、疾患の発生を回避するのに対し、第二次および第三次レベルの予防(Prevention and prophylaxis)は、疾患の進行および症状の出現を予防(Prevention and prophylaxis)することに加え、機能を回復させ、かつ疾患関連の合併症を減少させることによって、既存の疾患の悪影響を低下させることを目的とした行為を包含する。あるいは予防(Prevention and prophylaxis)は、特定の障害の重症度を軽減すること、例えば腫瘍の増殖および転移を減少させることを目的とした広範囲の予防的治療(prophylactic therapies)を含む。
【0069】
がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または術後のその再発の予防は、以下の段階、例えばがん細胞の外科的切除、がん性細胞の成長の阻害、腫瘍の退行または退縮、寛解の誘導およびがんの発生の抑制、腫瘍の退縮、ならびに転移の低減または阻害などの段階のいずれかを含む。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを低下させ、かつがんに伴う検出可能な症状を軽減する。例えば、症状の軽減または改善は効果的な治療を構成し、および/または予防は10%、20%、30%、もしくはそれ以上の軽減または安定した疾患を含む。
【0070】
VIII.薬学的な作用物質または組成物
IQGAP3の発現は、正常組織と比較して胃癌において特異的に亢進するため(Jinawath N et al., AACR 2006)、本発明のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを、がんの治療および/もしくは予防のために、ならびに/または術後のその再発の予防に用いることができる。従って本発明は、本発明のペプチドの1種もしくは複数種、または該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、がんの治療および/もしくは予防のための、ならびに/または術後のその再発の予防のための薬学的な作用物質または組成物を提供する。あるいは、薬学的な作用物質または組成物として用いるために、本発明のペプチドを、前述のエキソソームまたはAPCなどの細胞のいずれかの表面上に発現させることができる。加えて、本発明のペプチドのいずれかを標的とする前述の細胞傷害性T細胞もまた、本発明の薬学的な作用物質または組成物の有効成分として用いることができる。
【0071】
別の態様において、本発明はまた、がんを治療するための薬学的な組成物または作用物質の製造における、以下の中より選択される有効成分の使用を提供する:
(a)本発明のペプチド、
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸、
(c)本発明のAPC、および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0072】
あるいは、本発明はさらに、がんの治療において用いるための、以下の中より選択される有効成分を提供する:
(a)本発明のペプチド、
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸、
(c)本発明のAPC、および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0073】
あるいは、本発明はさらに、がんを治療するための薬学的な組成物または作用物質を製造するための方法または工程であって、有効成分として以下の中より選択される有効成分と共に、薬学的にまたは生理学的に許容される担体を製剤化する段階を含む、方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド、
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸、
(c)本発明のAPC、および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0074】
別の態様において、本発明はまた、がんを治療するための薬学的な組成物または作用物質を製造するための方法または工程であって、以下の中より選択される有効成分を薬学的にまたは生理学的に許容される担体と混合する段階を含む、方法または工程を提供する:
(a)本発明のペプチド、
(b)本明細書に開示するようなペプチドを発現可能な形態でコードする核酸、
(c)本発明のAPC、および
(d)本発明の細胞傷害性T細胞。
【0075】
あるいは、本発明の薬学的な組成物または作用物質は、がんの予防および術後のその再発の予防のいずれかまたは双方に用いることができる。
【0076】
本発明の薬学的な作用物質または組成物は、ワクチンとして使用される。本発明の文脈において、「ワクチン」(「免疫原性組成物」とも称される)という語句は、動物に接種した際に、抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。
【0077】
本発明の薬学的な作用物質または組成物は、ヒト、ならびに非限定的にマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒ、およびチンパンジー、特に商業的に重要な動物または家畜を含む任意の他の哺乳動物を含む対象または患者において、がんを治療および/もしくは予防するため、ならびに/または術後のその再発を予防するために用いることができる。
【0078】
本発明により、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63および67から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または、SEQ ID NO:75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA−A24拘束性またはHLA−A02拘束性エピトープペプチドまたはその候補であることが判明した。従って、SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63 および67のアミノ酸配列を有するこれらのポリペプチドのいずれかを含む本発明の薬学的な作用物質または組成物は、HLA抗原がHLA−A24である対象への投与に特に適している。一方、SEQ ID NO:75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150のアミノ酸配列を有するこれらのポリペプチドのいずれかを含む本発明の薬学的な作用物質または組成物は、HLA抗原がHLA−A02である対象への投与に特に適している。同じことが、これらのポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む薬学的な作用物質または組成物にも当てはまる。
【0079】
本発明の薬学的な作用物質または組成物によって治療されるがんは限定されず、例えば腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌を含む、IQGAP3が関与する全ての種類のがんを含む。
【0080】
本発明の薬学的な作用物質または組成物は、前述の有効成分に加えて、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有するその他のペプチド、該その他のペプチドをコードするその他のポリヌクレオチド、該その他のペプチドを提示するその他の細胞等を含み得る。本明細書において、がん性細胞に対するCTLを誘導する能力を有するその他のペプチドは、がん特異的抗原(例えば、同定されたTAA)によって例証されるが、これに限定されない。
【0081】
本発明の薬学的な作用物質または組成物は、例えば本ペプチドのいずれかといった有効成分の抗腫瘍効果を阻害しない限り、必要に応じて他の治療物質を有効成分として任意に含み得る。例えば、製剤は、抗炎症剤または抗炎症組成物、鎮痛剤、化学療法剤等を含み得る。医薬自体に他の治療物質を含めることに加えて、本発明の医薬を、1つまたは複数の他の薬理学的な作用物質または組成物と連続してまたは同時に投与することもできる。医薬および薬理学的な作用物質または組成物の量は、例えば、使用される薬理学的な作用物質または組成物の種類、治療する疾患、ならびに投与のスケジュールおよび投与経路に依存する。
【0082】
本明細書において特に言及される成分に加えて、本発明の薬学的な作用物質または組成物は、問題の製剤の種類を考慮して、当技術分野において慣例的な他の作用物質または組成物も含み得ることが理解されるべきである。
【0083】
本発明の1つの態様において、本発明の薬学的な作用物質または組成物を、例えばがんのような治療されるべき疾患の病態を治療するのに有用な材料を含む製品およびキットに含めることができる。該製品は、ラベルを有する本発明の薬学的な作用物質または組成物のいずれかの容器を含み得る。適切な容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器上のラベルには、作用物質または組成物が、疾患の1つまたは複数の状態の治療または予防のために用いられることが示されるべきである。ラベルはまた、投与等に関する指示も示し得る。
【0084】
上記の容器に加えて、本発明の薬学的な作用物質または組成物を含むキットは、任意で、薬学的に許容される希釈剤を収容した第2の容器をさらに含み得る。それは、使用のための指示書と共に、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、シリンジ、および添付文書を含む、商業上および使用者の立場から見て望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0085】
必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置にて、薬学的組成物を提供することができる。該パックは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する指示書が添付され得る。
【0086】
(1)有効成分としてのペプチドを含む薬学的な作用物質または組成物
本発明のペプチドは、薬学的な作用物質もしくは組成物として直接投与することができ、または必要であれば、従来の製剤方法によって製剤化される。後者の場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常用いられる担体、賦形剤等が特に制限なく適宜含まれ得る。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液等である。さらに、薬学的な作用物質または組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤等を含み得る。本発明の薬学的な作用物質または組成物は、抗がん目的に用いることができる。
【0087】
インビボでCTLを誘導するために、本発明のペプチドを、本発明のペプチドの2種またはそれ以上から構成される組み合わせとして調製することができる。ペプチドの組み合わせはカクテルの形態をとってよく、または標準的な技法を用いて互いにコンジュゲートしてもよい。例えば、該ペプチドを化学的に結合させても、または単一の融合ポリペプチド配列として発現させてもよい。組み合わせにおけるペプチドは、同一であっても異なっていてもよい。本発明のペプチドを投与することによって、該ペプチドはHLA抗原によってAPC上に高密度で提示され、次いで、提示されたペプチドと該HLA抗原との間に形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、本発明のペプチドで刺激した対象からAPC(例えば、DC)を取り出すことによって、本発明のペプチドのいずれかを細胞表面上に提示するAPCを得て、これらのAPC(例えば、DC)を該対象に再度投与することによって該対象においてCTLを誘導し、結果として、がん細胞に対する攻撃性を増大させることができる。
【0088】
有効成分として本発明のペプチドを含む、がんの治療および/または予防のための薬学的な作用物質または組成物は、細胞性免疫を効率的に確立することが知られているアジュバントもまた含み得る。あるいは、薬学的な作用物質または組成物は、他の有効成分と共に投与することができ、または顆粒内への製剤化によって投与することもできる。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(または連続して)投与した場合に、該タンパク質に対する免疫応答を増強させる化合物を指す。本明細書において意図されるアジュバントには、文献(Clin Microbiol Rev 1994, 7: 277-89)に記載されているものが含まれる。適切なアジュバントの例には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、コレラ毒素、サルモネラ毒素等が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
さらに、リポソーム製剤、直径数マイクロメートルのビーズにペプチドが結合している顆粒製剤、およびペプチドに脂質が結合している製剤を好都合に用いてもよい。
【0090】
いくつかの態様において、本発明の薬学的な作用物質または組成物は、CTLを刺激する(prime)成分をさらに含み得る。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激し得る作用物質または組成物として同定された。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のεアミノ基およびαアミノ基に付着させ、次に本発明のペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子の状態で直接投与すること、リポソーム中に取り込ませること、またはアジュバント中に乳化させることができる。CTL応答の脂質による刺激の別の例として、適切なペプチドに共有結合している場合、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(P3CSS)などの大腸菌(E.coli)リポタンパク質を用いてCTLを刺激することができる(例えば、Deres et al., Nature 1989, 342: 561-4を参照されたい)。
【0091】
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等、および全身投与または標的部位の近傍への局所投与であってよい。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によって強化することもできる。本発明のペプチドの用量を、治療する疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に従って適切に調節することができ、これは通常0.001 mg〜1000 mg、例えば0.001 mg〜1000 mg、例えば0.1 mg〜10 mgであり、数日から数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0092】
(2)有効成分としてのポリヌクレオチドを含む薬学的な作用物質または組成物
本発明の薬学的な作用物質または組成物はまた、本明細書に開示するペプチドをコードする核酸を発現可能な形態で含み得る。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞内に導入された場合に、抗腫瘍免疫を誘導するポリペプチドとしてインビボで発現され得ることを意味する。例示的な態様において、関心対象のポリヌクレオチドの核酸配列は、該ポリヌクレオチドの発現に必要な調節エレメントを含む。ポリヌクレオチドに、標的細胞のゲノム中への安定した挿入が達成されるように、必要なものを持たせることができる(相同組換えカセットベクターの説明に関しては、例えばThomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8;米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;およびWO 98/04720を参照されたい。DNAに基づく送達技術の例には、「裸のDNA」、促進された(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0093】
ウイルスベクターまたは細菌ベクターによって、本発明のペプチドを発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアウイルスまたは鶏痘ウイルスなどの弱毒化ウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターとして、ワクシニアウイルスの使用を伴う。宿主内に導入すると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。治療的投与または免疫化に有用である多種多様な他のベクター、例えばアデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が明らかであろう。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71;Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806;Hipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
【0094】
ポリヌクレオチドの対象内への送達は、直接的であってもよいし(この場合、ポリヌクレオチドを保有するベクターに対象を直接曝露する)、または間接的であってもよい(この場合、まずインビトロで細胞を関心対象のポリヌクレオチドで形質転換し、次いで該細胞を対象内に移植する)。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボおよびエクスビボの遺伝子治療として公知である。
【0095】
遺伝子治療の方法の一般的な総説に関しては、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 1993, 12: 488-505;Wu and Wu, Biotherapy 1991, 3: 87-95;Tolstoshev, Ann Rev Pharmacol Toxicol 1993, 33: 573-96;Mulligan, Science 1993, 260: 926-32;Morgan & Anderson, Ann Rev Biochem 1993, 62: 191-217;Trends in Biotechnology 1993, 11(5): 155-215を参照されたい。本発明にも用いることのできる、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、eds. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1993;およびKrieger, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY, 1990に記載されている。
【0096】
投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等であってよく、全身投与または標的部位の近傍への局所投与が用いられる。投与は、単回投与によって行うこともできるし、または複数回投与によって強化することもできる。適切な担体中のポリヌクレオチドの用量、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換した細胞の用量を、治療する疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に従って適切に調節することができ、これは通常0.001 mg〜1000 mg、例えば0.001 mg〜1000 mg、例えば0.1 mg〜10 mgであり、数日に1度〜数ヶ月に1度投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0097】
IX.ペプチド、エキソソーム、APC、およびCTLを用いる方法
APCおよびCTLを誘導するために、本発明のペプチドおよびそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることができる。CTLを誘導するために、本発明のエキソソームおよびAPCを用いることもできる。ペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、およびAPCは、任意の他の化合物がそれらのCTL誘導能を阻害しない限り、該化合物と組み合わせて用いることができる。従って、前述の本発明の薬学的作用物質または組成物のいずれかをCTLを誘導するために用いることができ、それに加えて、前記ペプチドおよびポリヌクレオチドを含むものを、以下に議論されるように、APCを誘導するために用いることもできる。
【0098】
(1)抗原提示細胞(APC)を誘導する方法
本発明は、本発明のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いた、APCを誘導する方法を提供する。APCの誘導は、「VI.抗原提示細胞」の章に上記したように行うことができる。本発明はまた、高レベルのCTL誘導能を有するAPCを誘導するための方法も提供し、その誘導もまた上記の「VI.抗原提示細胞」の項目で言及されている。
【0099】
(2)CTLを誘導する方法
さらに本発明は、本発明のペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ペプチドを提示するエキソソームもしくはAPCを用いた、CTLを誘導するための方法を提供する。
【0100】
本発明は、本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するT細胞受容体(TCR)サブユニットを形成できるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いてCTLを誘導するための方法も提供する。好ましくは、CTLを誘導するための方法は、以下からなる群より選択される少なくとも1つの段階を含む:
a:CD8陽性T細胞を、HLA抗原と本発明のペプチドとの複合体をその表面上に提示する抗原提示細胞および/またはエキソソームと接触させる段階、および
b:本発明のペプチドとHLA抗原との複合体を認識するTCRサブユニットを形成できるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをCD8陽性T細胞に導入する段階。
【0101】
本発明のペプチドを対象に投与した場合、該対象の体内でCTLが誘導され、腫瘍関連内皮を標的とする免疫応答の強度が増強される。あるいは、対象由来のAPC、およびCD8陽性細胞、または末梢血単核白血球を、インビトロで本発明のペプチドと接触させ(で刺激し)、CTLを誘導した後、活性化したCTL細胞を該対象に戻すエクスビボ治療法に、前記ペプチドおよび前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることができる。例えば、本方法は以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを回収する段階;
b:段階aのAPCと前記ペプチドを接触させる段階;
c:段階bのAPCをCD8+ T細胞と混合し、CTLを誘導するために共培養する段階;および
d:段階cの共培養物からCD8+ T細胞を回収する段階。
【0102】
あるいは、本発明に従って、CTLを誘導する薬学的組成物を製造するための本発明のペプチドの使用を提供する。さらに、本発明はまた、CTLを誘導するための本発明のペプチドを提供する。
【0103】
段階dによって得られた細胞傷害活性を有するCD8+ T細胞を、ワクチンとして前記対象に投与することができる。上記の段階cにおいてCD8+ T細胞と混合するAPCは、上記の「VI.抗原提示細胞」の章で詳述されているように、本ペプチドをコードする遺伝子をAPCに導入することによって調製することもできるが、これに限定されない。従って、本発明のペプチドをT細胞に対して効果的に提示する任意のAPCまたはエキソソームを、本発明の方法に用いることができる。
【0104】
以下の実施例は、本発明を例証し、当業者がそれを作製および使用するのを補助するために提供される。実施例は、いかなる形であれ他の方法で本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0105】
材料および方法
細胞株
HLA−A24陽性ヒトBリンパ球をエプスタイン・バーウイルスで形質転換することによって、A24リンパ芽球様細胞株(A24LCL)細胞を樹立した。T2(HLA−A2)、ヒトBリンパ芽球様細胞株、およびCOS7はATCCから購入した。
【0106】
IQGAP3由来のペプチドの候補選択
HLA−A*2402およびHLA−A*0201に結合するIQGAP3由来の9−merおよび10−merのペプチドを、Parker KC et al.(J Immunol 1994, 152(1): 163-75)およびKuzushima K et al.(Blood 2001, 98(6): 1872-81)によってアルゴリズムが記載されている結合予測ソフトウェア「BIMAS」(http://www-bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind)を用いて予測した。これらのペプチドを、標準的な固相合成法に従ってSigma(札幌、日本)によって合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。該ペプチドの純度(>90%)および同一性を、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析によって測定した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に20 mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
【0107】
インビトロでのCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞(APC)として用いて、ヒト白血球抗原(HLA)上に提示されたペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導した。他所に記載されているように、DCをインビトロで作製した(Nakahara S et al., Cancer Res 2003 Jul 15, 63(14): 4112-8)。具体的には、Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液によって健常なボランティア(HLA−A*2402陽性またはHLA−A*0201陽性)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)へ付着させることによって分離し、それらを単球画分として濃縮した。2%の加熱非働化した自己血清(AS)を含むAIM−V培地(Invitrogen)中で、1000 U/mlの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(R&D System)および1000 U/mlのインターロイキン(IL)−4(R&D System)の存在下で、単球が濃縮した集団を培養した。培養7日後、サイトカインで誘導したDCに、AIM−V培地中で3時間、37℃にて、3 mcg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下で20 mcg/mlの各合成ペプチドをパルスした。作製した細胞は、その細胞表面上に、CD80、CD83、CD86、およびHLAクラスIIなどのDC関連分子を発現しているようであった(データは示さず)。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCを、マイトマイシンC(MMC)で不活化し(30 mcg/mlで30分間)、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いた陽性選択によって得られた自己CD8+ T細胞と1:20の比率で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に準備し;各ウェルは、0.5 mlのAIM−V/2% AS培地中に、1.5×10個のペプチドパルスしたDC、3×10個のCD8+ T細胞、および10 ng/mlのIL−7(R&D System)を含んだ。3日後、これらの培養物に、IL−2(CHIRON)を最終濃度20 IU/mlまで補充した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに刺激した。該DCは上記と同じ方法によって毎回調製した。21日目に、3回目のペプチド刺激後、ペプチドパルスしたA24LCL細胞に対してCTLを試験した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0108】
CTL増殖手順
Riddellら(Walter EA et al., N Engl J Med 1995 Oct 19, 333(16): 1038-44;Riddell SR et al., Nat Med 1996 Feb, 2(2): 216-23)によって記載されている方法と類似の方法を用いて、CTLを培養下で増殖させた。40 ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、MMCによって不活化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、合計5×10個のCTLを25 mlのAIM−V/5% AS培地中に懸濁した。培養開始1日後に、120 IU/mlのIL−2を該培養物に添加した。5、8、および11日目に、30 IU/mlのIL−2を含む新たなAIM−V/5% AS培地を、該培養物に供給した(Tanaka H et al., Br J Cancer 2001 Jan 5, 84(1): 94-9;Umano Y et al., Br J Cancer 2001 Apr 20, 84(8): 1052-7;Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86;Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9;Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0109】
CTLクローンの樹立
96ウェル丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3、1、および3 CTL/ウェルとなるように希釈系列を作製した。5%ASを含む総量150 mcl/ウェルのAIM−V培地において、1 ×104 細胞/ウェルの2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30 ng/mlの抗CD3抗体、および125 U/mlのIL−2 と共にCTLを培養した。10日後に、IL−2の最終濃度が125 U/mlに到達するように、培地に50 mcl/ウェルのIL−2を加えた。第14日にCTL活性を試験し、上記に説明されるものと同じ方法を用いてCTLクローンを増殖させた(Uchida N et al., Clin Cancer Res 2004 Dec 15, 10(24): 8577-86; Suda T et al., Cancer Sci 2006 May, 97(5): 411-9; Watanabe T et al., Cancer Sci 2005 Aug, 96(8): 498-506)。
【0110】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を調べるために、インターフェロン(IFN)−γ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよびIFN−γ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行った。具体的には、ペプチドパルスしたA24LCLまたはT2LCL(1×10個/ウェル)を刺激細胞として調製した。48ウェル中の培養細胞を応答細胞として使用した。IFN−γ ELISPOTアッセイおよびIFN−γ ELISAアッセイは、製造元の手順に従って行った。
【0111】
標的遺伝子およびHLA−A24のいずれかまたは両方を強制的に発現する細胞の樹立
標的遺伝子またはHLA−A24のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCRにより増幅した産物をpCAGGSベクターにクローニングした。製造者の推奨手順に従ってLipofectamine2000(Invitrogen)を用いて、標的遺伝子およびHLA−A24のヌル細胞株であるCOS7に、前記プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクションした細胞をversene(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5×104細胞/ウェル)として用いた。
【0112】
プラスミドのトランスフェクション
標的遺伝子またはHLA−A*0201のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをPCRによって増幅した。PCRによって増幅された産物をpCAGGSベクターにクローニングした。製造者の推奨手順に従ってLipofectamine2000(Invitrogen)を用いて、標的遺伝子およびHLA−A*0201の陰性細胞株であるCOS7に、前記プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクションした細胞をversene(Invitrogen)を用いて回収し、CTL活性アッセイのための標的細胞(5 ×104細胞/ウェル)として用いた。
【0113】
結果
IQGAP3由来のHLA−A24結合ペプチドの予測
表1は、IQGAP3のHLA−A*2402結合ペプチドを、結合親和性の高い順に示す。表1aはIQGAP3由来の9merのペプチドを示し、表1bは10merのペプチドを示す。潜在的なHLA−A24結合能を有する合計68個のペプチドを選択して、エピトープペプチドを決定するために試験した。
【0114】
(表1a)IQGAP3由来のHLA−A24結合9merペプチド

【0115】
(表1b)IQGAP3由来のHLA−A24結合性10merペプチド

【0116】
HLA−A*2402によって拘束されるIQGAP3由来の予測ペプチドによるCTLの誘導、およびIQGAP3由来のペプチドによって刺激されたCTL株の樹立
IQGAP3由来のペプチドに対するCTLは、「材料および方法」において記載されるプロトコールに従って作製された。IFN−γELISPOTアッセイによってペプチド特異的CTL活性を決定した(図1a〜r)。IQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)(a)、IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)(b)、IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)(c)、IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)(d)、IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)(e)、IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)(f)、IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)(g)、IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)(h)、IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)(i)、IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)(j)、IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)(k)、IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)(l)、IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)(m)、IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)(n)、IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)(o)、IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)(p)、IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)(q)およびIQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)(r)が対照ウェルと比較して強力なIFN−γ産生を示すことが明らかであった。さらに、IQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)(a)によって刺激した陽性のウェル番号#3および6、IQGAP3−A24−9−1167 (SEQ ID NO:4)(b)による#5、IQGAP3−A24−9−779 (SEQ ID NO:7)(c)による#7、IQGAP3−A24−9−74 (SEQ ID NO:21)(d)による#2、IQGAP3−A24−9−26 (SEQ ID NO:25)(e)による#8、IQGAP3−A24−9−137 (SEQ ID NO:29)(f)による#4、IQGAP3−A24−9−63 (SEQ ID NO:32)(g)による#8、IQGAP3−A24−10−1600 (SEQ ID NO:35)(h)による#8、IQGAP3−A24−10−1507 (SEQ ID NO:37)(i)による#2、IQGAP3−A24−10−139 (SEQ ID NO:40)(j)による#2、IQGAP3−A24−10−1097 (SEQ ID NO:49) (k)による#5、IQGAP3−A24−10−345 (SEQ ID NO:53)(l)による#7、IQGAP3−A24−10−1614 (SEQ ID NO:55)(m)による#1、IQGAP3−A24−10−191 (SEQ ID NO:56)(n)による#3、IQGAP3−A24−10−314 (SEQ ID NO:57)(o)による#5、IQGAP3−A24−10−1363 (SEQ ID NO:62)(p)による#5、IQGAP3−A24−10−1114 (SEQ ID NO:63)(q)による#7ならびにIQGAP3−A24−10−1207 (SEQ ID NO:67)(r)による#2の細胞を増殖させ、CTL株を樹立した。IFN−γELISAアッセイによってそれらのCTL株のCTL活性を決定した(図2a〜r)。全てのCTL株が、ペプチドをパルスしない標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対して強力なIFN−γ産生を示すことが実証された。一方、表1に示される他のペプチドによる刺激によっては、それらのペプチドはHLA−A*2402との潜在的な結合活性を有していたにも関わらず、いずれのCTL株も樹立され得なかった。例えば、IQGAP3−A24−9−417 (SEQ ID NO:6)によって刺激されたCTL応答の典型的なネガティブデータが図1(s)および図2(s)において示された。ここでの結果は、IQGAP3に由来しスクリーニングされた18個のペプチドが強力なCTL株を誘導できたことを示す。
【0117】
IQGAP3およびHLA−A*2402を外因的に発現する標的細胞に対する特異的なCTL活性
IQGAP3およびHLA−A*2402分子を内因的に発現する標的細胞を認識する能力について、これらのペプチドに対して誘導された樹立CTL株を調べた。対応するペプチドによって誘導されたCTL株をエフェクター細胞として用いて、全長のIQGAP3およびHLA−A*2402分子の遺伝子の双方をトランスフェクションしたCOS7細胞(IQGAP3およびHLA−A*2402の遺伝子を内因的に発現する標的細胞としての具体的なモデル)に対する特異的なCTL活性を試験した。全長IQGAP3遺伝子またはHLA−A*2402遺伝子のいずれかをトランスフェクションしたCOS7細胞を対照として調製した。図3において示されるように、IQGAP3−A24−9−779 (SEQ ID NO:7)によって刺激されたCTLが、IQGAP3およびHLA−A*2402の双方を発現するCOS7細胞に対する強力なCTL活性を示した。一方、対照では有意な特異的CTL活性は検出されなかった。従って、これらのデータは、IQGAP3−A24−9−779 (SEQ ID NO:7)がHLA−A*2402分子と共に標的細胞上にて自然に発現され、CTLによって認識されることを実証した。これらの結果は、IQGAP3由来の本ペプチドにはIQGAP3を発現する腫瘍を有する患者のための癌ワクチンに適用して利用できる可能性があることを示す。
【0118】
抗原ペプチドの相同性解析
IQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)、IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)、IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)、IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)、IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)、IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)、IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)、IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)、IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)、IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)、IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)、IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)、IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)、IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)、IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)、IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)、IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)およびIQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)によって刺激されたCTLは、有意かつ特異的なCTL活性を示した。この結果はIQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)、IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)、IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)、IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)、IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)、IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)、IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)、IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)、IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)、IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)、IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)、IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)、IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)、IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)、IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)、IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)、IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)およびIQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)の配列が、ヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同的であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて、クエリーとしてこれらのペプチド配列に対して相同性解析を行ったが、有意な相同性を有する配列は認められなかった。相同性解析の結果から、IQGAP3−A24−9−955(SEQ ID NO:2)、IQGAP3−A24−9−1167(SEQ ID NO:4)、IQGAP3−A24−9−779(SEQ ID NO:7)、IQGAP3−A24−9−74(SEQ ID NO:21)、IQGAP3−A24−9−26(SEQ ID NO:25)、IQGAP3−A24−9−137(SEQ ID NO:29)、IQGAP3−A24−9−63(SEQ ID NO:32)、IQGAP3−A24−10−1600(SEQ ID NO:35)、IQGAP3−A24−10−1507(SEQ ID NO:37)、IQGAP3−A24−10−139(SEQ ID NO:40)、IQGAP3−A24−10−1097(SEQ ID NO:49)、IQGAP3−A24−10−345(SEQ ID NO:53)、IQGAP3−A24−10−1614(SEQ ID NO:55)、IQGAP3−A24−10−191(SEQ ID NO:56)、IQGAP3−A24−10−314(SEQ ID NO:57)、IQGAP3−A24−10−1363(SEQ ID NO:62)、IQGAP3−A24−10−1114(SEQ ID NO:63)およびIQGAP3−A24−10−1207(SEQ ID NO:67)の配列が固有のものであり、従って、本発明者らの知る限りでは、これらの分子が、ある非関連分子に対して意図しない免疫学的反応を引き起こす可能性はほとんどないことが示された。
【0119】
結論として、IQGAP3由来の新規なHLA−A24エピトープペプチドが同定され、がん免疫療法に適用可能であることが実証された。
【0120】
IQGAP3由来のHLA−A02結合ペプチドの予測
表2aおよび表2bは、IQGAP3のHLA−A02結合9merおよび10merペプチドを結合親和性の高い順に示す。潜在的なHLA−A02結合親和能を有する合計84個のペプチドを選択して、エピトープペプチドを決定するために試験した。
【0121】
(表2a)IQGAP3由来のHLA−A02結合9merペプチド


【0122】
(表2b)IQGAP3由来のHLA−A02結合10merペプチド


【0123】
HLA−A*0201拘束性IQGAP3由来の予測されたペプチドを用いたCTLの誘導
IQGAP3に由来するペプチドに対するCTLを、「材料および方法」に記載したプロトコールに従って作製した。IFN−γELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的なCTL活性を測定した(図4a〜q)。結果は、IQGAP3−A02−9−146 (SEQ ID NO:75) (a)によって刺激されたウェル番号#6および6、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85) (b)による#6、IQGAP3−A02−9−756 (SEQ ID NO:101) (c)による#1、IQGAP3−A02−10−961 (SEQ ID NO:111) (d)による#7、IQGAP3−A02−10−70 (SEQ ID NO:114) (e)による#7および6、IQGAP3−A02−10−1174 (SEQ ID NO:121) (f)による#5、IQGAP3−A02−10−548 (SEQ ID NO:125) (g)による#8、IQGAP3−A02−10−903 (SEQ ID NO:130) (h)による#1、IQGAP3−A02−10−953 (SEQ ID NO:139) (i)による#2、IQGAP3−A02−10−1590 (SEQ ID NO:140) (j)による#2、IQGAP3−A02−10−1424 (SEQ ID NO:141) (k)による#2、IQGAP3−A02−10−416 (SEQ ID NO:142) (l)による#2、IQGAP3−A02−10−67 (SEQ ID NO:143) (m)による#4、IQGAP3−A02−10−1461 (SEQ ID NO:145) (n)による#6、IQGAP3−A02−10−842 (SEQ ID NO:148) (o)による#5、IQGAP3−A02−10−897 (SEQ ID NO:150) (p)による#3、ならびにIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99)(q)による#5が、対照ウェルと比較して強力なIFN−γ産生を示したことを示す。一方、表2に示された他のペプチドによる刺激によっては、それらのペプチドがHLA−A*0201に対する潜在的な結合活性を有していたにも関わらず、強力なIFN−γ産生は全く検出できなかった。典型的なネガティブデータとして、IQGAP3−A02−10−868 (SEQ ID NO:113) によって刺激したCTLからは、ペプチドをパルスした標的細胞に対する特異的なIFN−γ産生は全く認められなかった (r)。
【0124】
IQGAP3ペプチド特異的なCTL株およびCTLクローンの樹立
IQGAP3−A02−9−146 (SEQ ID NO:75) (a)によって刺激したウェル番号#6および6、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85) (b)による#6、IQGAP3−A02−9−756 (SEQ ID NO:101) (c)による#1、IQGAP3−A02−10−961 (SEQ ID NO:111) (d)による#7、IQGAP3−A02−10−70 (SEQ ID NO:114) (e)による#7および6、IQGAP3−A02−10−1174 (SEQ ID NO:121) (f)による#5、IQGAP3−A02−10−548 (SEQ ID NO:125) (g)による#8、IQGAP3−A02−10−903 (SEQ ID NO:130) (h)による#1、IQGAP3−A02−10−953 (SEQ ID NO:139) (i)による#2、IQGAP3−A02−10−1590 (SEQ ID NO:140) (j)による#2、IQGAP3−A02−10−1424 (SEQ ID NO:141) (k)による#2、IQGAP3−A02−10−416 (SEQ ID NO:142) (l)による#2、IQGAP3−A02−10−67 (SEQ ID NO:143)(m)による#4、IQGAP3−A02−10−1461 (SEQ ID NO:145)(n)による#6、IQGAP3−A02−10−842 (SEQ ID NO:148) (o)による#5、IQGAP3−A02−10−897 (SEQ ID NO:150) (p)による#3ならびにIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99) による#5における、IFN−γELISPOTアッセイによって検出されたペプチド特異的なCTL活性を示した細胞を増殖させ、CTL株を樹立した。IFN−γELISAアッセイによって、それらのCTL株のCTL活性を決定した(図5a〜q)。全てのCTL株が、ペプチドをパルスしていない標的細胞と比較して、対応するペプチドをパルスした標的細胞に対する強力なIFN−γ産生を示すことが示された。さらに、CTL株からの限界希釈法によってCTLクローンを樹立し、IFN−γELISAアッセイによってペプチドをパルスした標的細胞に対するCTLクローンからのIFN−γ産生を測定した。図6において示されるように、IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)(a)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)(b)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)(c)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)(d)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)(e)およびIQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)(f)で刺激されたCTLクローンからは強力なIFN−γ産生が測定された。
【0125】
IQGAP3およびHLA−A*0201を外因的に発現する標的細胞に対する特異的なCTL活性
これらのペプチドに対して誘導された樹立CTLクローンを、IQGAP3およびHLA−A*0201分子を内因的に発現する標的細胞を認識する能力について調べた。対応するペプチドによって誘導されたCTL株をエフェクター細胞として用いて、全長のIQGAP3およびHLA−A*0201分子の遺伝子の双方をトランスフェクトしたCOS7細胞(IQGAP3およびHLA−A*0201の遺伝子を内因的に発現する標的細胞としての具体的なモデル)に対する特異的なCTL活性を試験した。全長のIQGAP3遺伝子またはHLA−A*0201遺伝子のいずれかをトランスフェクトしたCOS7細胞を対照として調製した。図7において示されるように、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85)(a)およびIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99) (b)によって刺激されたCTLが、IQGAP3およびHLA−A*0201の双方を発現するCOS7細胞に対する強力なCTL活性を示した。一方、対照では特異的な有意なCTL活性は検出されなかった。従って、これらのデータは、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85) (a)およびIQGAP3−A02−1234 (SEQ ID NO:99) (b)のペプチドが内因的にプロセシングされ標的細胞上にてHLA−A*0201分子と共に発現し、CTLによって認識されたことを明らかに示すものである。これらの結果は、IQGAP3−A02−9−553 (SEQ ID NO:85)およびIQGAP3−A02−9−1234 (SEQ ID NO:99)がIQGAP3発現腫瘍を有する患者のためのがんワクチンとして利用できる可能性があることをさらに示すものである。
【0126】
抗原ペプチドの相同性解析
IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)、IQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO:99)、IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)、IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)、IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)、IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)、IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)、IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)、IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)、IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)、IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)およびIQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)によって刺激されたCTLは、有意かつ特異的なCTL活性を示した。この結果はIQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)、IQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO:99)、IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)、IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)、IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)、IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)、IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)、IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)、IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)、IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)、IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)およびIQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)の配列がヒト免疫系を感作することが知られている他の分子に由来するペプチドと相同的であるという事実に起因する可能性がある。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)により、クエリーとしてこれらのペプチド配列に対して相同性解析を行ったが、有意に相同性を有する配列は認められなかった。相同性解析の結果から、IQGAP3−A02−9−146(SEQ ID NO:75)、IQGAP3−A02−9−553(SEQ ID NO:85)、IQGAP3−A02−9−1234(SEQ ID NO:99)、IQGAP3−A02−9−756(SEQ ID NO:101)、IQGAP3−A02−10−961(SEQ ID NO:111)、IQGAP3−A02−10−70(SEQ ID NO:114)、IQGAP3−A02−10−1174(SEQ ID NO:121)、IQGAP3−A02−10−548(SEQ ID NO:125)、IQGAP3−A02−10−903(SEQ ID NO:130)、IQGAP3−A02−10−953(SEQ ID NO:139)、IQGAP3−A02−10−1590(SEQ ID NO:140)、IQGAP3−A02−10−1424(SEQ ID NO:141)、IQGAP3−A02−10−416(SEQ ID NO:142)、IQGAP3−A02−10−67(SEQ ID NO:143)、IQGAP3−A02−10−1461(SEQ ID NO:145)、IQGAP3−A02−10−842(SEQ ID NO:148)およびIQGAP3−A02−10−897(SEQ ID NO:150)の配列が固有のものであり、従って、本発明者らの知る限りでは、これらの分子がある非関連分子に対して意図しない免疫学的反応を引き起こす可能性はほとんどないことが示された。
【0127】
結論として、IQGAP3に由来する新規なHLA−A02エピトープペプチドが新規の抗原として立証され、癌の免疫療法に適用可能であることがさらに実証された。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、新規TAA、特に強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導し、幅広いがんのタイプに対する適用性を有するIQGAP3由来のTAAについて記載する。このようなTAAはIQGAP3に関連した疾患、例えばがん、より詳細には膀胱癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌および膵臓癌に対するペプチドワクチンとしてのさらなる発展を保証する。
【0129】
本発明はその特定の態様に関して本明細書において詳細に記載されるが、前述の説明は本質的に例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を説明することを意図していることが理解されるべきである。当業者は、日常的な実験を通して、その境域および境界が添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正がなされ得ることを容易に認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性T細胞誘導能を有する単離されたノナペプチドまたはデカペプチドであって、SEQ ID NO:154のアミノ酸配列より選択されるアミノ酸配列を含む、ノナペプチドまたはデカペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のノナペプチドまたはデカペプチド。
【請求項3】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導能を有するペプチドであって、
(a) SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150;または
(b)1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失、または付加されている、 SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63、67、75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:2、4、7、21、25、29、32、35、37、40、49、53、55、56、57、62、63 および67からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、以下の特徴の一方または両方を有する、請求項3記載のペプチド:
(a)該SEQ ID NOのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸であるかまたはその群より選択されるアミノ酸に改変されている、および
(b)該SEQ ID NOのアミノ酸配列のC末端のアミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、およびメチオニンからなる群より選択されるか、またはその群より選択されるアミノ酸に改変されている。
【請求項5】
SEQ ID NO:75、85、99、101、111、114、121、125、130、139、140、141、142、143、145、148および150からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、以下の特徴の一方または両方を有する、請求項3記載のペプチド:
(a)該SEQ ID NOのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がロイシンもしくはメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸である、またはその群より選択されるアミノ酸に改変されている、および
(b)該SEQ ID NOのアミノ酸配列のC末端のアミノ酸がバリンもしくはロイシンからなる群より選択されるアミノ酸である、またはその群より選択されるアミノ酸に改変されている。
【請求項6】
以下からなる群より選択される目的のために製剤化される、薬理学的に許容される担体と組み合わされた、請求項1〜5の1種もしくは複数種のペプチド、またはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む薬学的組成物:
(i)腫瘍の治療、
(ii)腫瘍の予防、
(iii)腫瘍の術後再発の予防、および
(iv)それらの組み合わせ。
【請求項7】
HLA抗原がHLA−A24またはHLA−A02である対象への投与のために製剤化されている、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
がんの治療のために製剤化されている、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ワクチンを含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチドとHLA抗原とを組み合わせて含む複合体をその表面上に提示するエキソソーム。
【請求項11】
HLA抗原がHLA−A24である、請求項10記載のエキソソーム。
【請求項12】
HLA抗原がHLA−A2402である、請求項10記載のエキソソーム。
【請求項13】
HLA抗原がHLA−A02である、請求項10記載のエキソソーム。
【請求項14】
HLA抗原がHLA−A0201である、請求項10記載のエキソソーム。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチドを用いることによる、高いCTL誘導能を有する抗原提示細胞を誘導するための方法。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチドを用いることによる、CTLを誘導するための方法。
【請求項17】
請求項1〜5記載のいずれか一項記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を、抗原提示細胞に導入する段階を含む、請求項15記載の高いCTL誘導能を有する抗原提示細胞を誘導するための方法。
【請求項18】
請求項1〜5記載のペプチドのいずれかを標的とする、単離された細胞傷害性T細胞。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチドを用いることによって誘導される、単離された細胞傷害性T細胞。
【請求項20】
HLA抗原と請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチドとの複合体をその表面上に提示する、単離された抗原提示細胞。
【請求項21】
請求項15または請求項17記載の方法によって誘導される、請求項20記載の抗原提示細胞。
【請求項22】
請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチド、免疫学的に活性なその断片、またはそのようなペプチドもしくは断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象においてがんに対する免疫応答を誘導する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−523937(P2011−523937A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548687(P2010−548687)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/JP2009/002613
【国際公開番号】WO2009/150835
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】