説明

IRE−1α基質

【課題】膜貫通シグナル伝達分子であるIRE-1αに対する最小の基質を提供する。
【解決手段】IRE-1αに対する切断部位を含むRNAループおよびオリゴヌクレオチド分子を含む、IRE-1αに対する基質であって、ドナー部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端の一方に結合し、且つアクセプター部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端のもう一方に結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、IRE-1αに対する基質に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
折り畳まれていないタンパク質への反応(unfolded protein response)(UPR)とは、小胞体(ER)管腔において誤って折り畳まれたタンパク質の蓄積に反応する、細胞内シグナル伝達経路である。UPRは多くのヒト疾患における特筆すべき因子として、認識が高まっている。UPRのアップレギュレーションは、腫瘍生存およびB細胞自己免疫に対して重要であると考えられているが、UPR抑制はアルツハイマー病および二型糖尿病などの疾患と関連づけられている。
【0003】
IRE-1αは、ER内にN末端管腔ドメイン、ならびにサイトゾルにC末端キナーゼおよびRNアーゼドメインを有する、膜貫通シグナル伝達分子である。N末端管腔ドメインは、GRP78と複合体を形成する。IRE-1αはERストレスセンサーである。活性化されると、IRE-1αは、特異的なRNAスプライシングを介して転写因子XBP-1を活性化することによって、GRP78およびGRP94などの、小胞体ストレス反応遺伝子の転写を誘導する。
【0004】
IRE-1αのアンタゴニストは、B細胞自己免疫疾患および癌の処置に有用である。IRE-1αのアゴニストは、アルツハイマー病および二型糖尿病の処置に有用である。従って、IRE-1αの、アゴニスト分子およびアンタゴニスト分子をスクリーニングする方法を有することは有用であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、とりわけIRE-1αに対する最小の基質を提供し、これはIRE-1α RNアーゼ活性、特にヒトIRE-1α RNアーゼ活性のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するための本発明のスクリーニングアッセイに使用できる。また本発明は、IRE-1αが切断しない変異基質を提供し、これはスクリーニングアッセイにおいて対照として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
(図1)IRE-1αモノマーおよびダイマーの精製調整物を示す、Spyro ruby染色したポリアクリルアミドゲル。
(図2)IRE-1α基質の図。
33塩基野生型基質

33塩基変異基質

5'FAMおよび3'BHQ-1(商標)部分

を伴う15塩基野生型基質;
5'FAMおよび3'BHQ-1(商標)部分

を伴う15塩基変異基質。
(図3A)図3A〜Cは、IRE-1α基質の切断を示す、ポリアクリルアミドゲルの写真である。図3A、radiant red染色。
(図3B)図3A〜Cは、IRE-1α基質の切断を示す、ポリアクリルアミドゲルの写真である。図3B、切断された15塩基FAM基質由来のシグナル。
(図3C)図3A〜Cは、IRE-1α基質の切断を示す、ポリアクリルアミドゲルの写真である。図3C、radiant red染色。
(図4)30℃でのIRE-1α RNアーゼ活性の時間経過を示すグラフ。
(図5)33塩基基質(配列番号:1)の存在下で、15塩基基質(配列番号:3)の活性を決定するための競合アッセイの結果を示すバーグラフ。
(図6)IRE-1α RNアーゼ活性のハイスループットアッセイの結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のIRE-1αは、RNAループおよびヌクレオチドステムを有するオリゴヌクレオチド分子である。RNAループは、IRE-1α、好ましくはヒトIRE-1αの切断部位を含む。一つの態様では、RNAループは配列5'-CCGCAGC-3'(野生型)を含む。他の有用なRNAループは、野生型配列、例えば

に関して一つまたは複数のヌクレオチドが改変されているものである。RNAループは、野生型配列に関して、一つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含むことができる。必要に応じて、変異は、IRE-1αが切断できない変異基質を形成するために、RNAループ内に導入することができる。一つの態様では、変異基質のRNAループは、配列5'-CCCCAGC-3'を含む。
【0008】
ヌクレオチドステムにおけるヌクレオチドは、DNAもしくはホスホロチオエートなどの、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはヌクレオチドアナログとすることができる。ヌクレオチドステムは、少なくとも4、および30以上ほどのヌクレオチド塩基対を含む。好ましくは、ヌクレオチドステムは4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド塩基対からなる。ヌクレオチドステムは一つまたは複数のミスマッチ(バルジ)、およびオーバーハングを有し得る。少なくとも4つのヌクレオチド塩基対がRNAループを安定化させるために形成される限り、ステムの中の特定のヌクレオチドは重要ではない。塩基対は連続である必要は無く、ステムが形成される限り、1、2、またはそれ以上のミスマッチを含む可能性があり、1、2、または3塩基対がループの隣に形成される。
【0009】
本発明のIRE-1α基質は、ドナー部分およびアクセプター部分を含み、IRE-1α RNアーゼ活性が共鳴エネルギー移動を用いて検出されることを可能にする。ドナー部分は、オリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端の一方に結合し、且つアクセプター部分はオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端のもう一方に結合している。RNアーゼ活性が無い場合、ドナー部分およびアクセプター部分は、ドナーが励起される場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を示すように、十分に互いに近接している。IRE-1αのRNアーゼ活性は、基質を切断し、ドナー部分およびアクセプター部分の両者の距離または相対的方向を変化させ、そして部分間の共鳴エネルギー移動を変化させる。変化の度合いはRNアーゼ活性に反映し、定性的または定量的に検出することができる。
【0010】
ドナー部分およびアクセプター部分
本明細書で使用されるように、「ドナー部分」とは、フルオロフォアまたは発光性部分である。「アクセプター部分」の吸収スペクトルは、ドナー部分の発光スペクトルと一部重なる。アクセプター部分は蛍光性である必要は無く、フルオロフォア、発色団、もしくはクエンチャーとすることができる。いくつかの態様では、ドナー部分およびアクセプター部分の両方が、蛍光タンパク質である。他の態様では、ドナー部分およびアクセプター部分の両方が、発光性部分である。さらに他の態様では、ドナー部分またはアクセプター部分のどちらかを蛍光タンパク質とすることができ、もう一方の部分が発光性部分である。他の態様では、アクセプター部分は「クエンチャー部分」である。
【0011】
ドナー部分およびアクセプター部分の両方がフルオロフォアである場合、共鳴エネルギー移動は「蛍光共鳴エネルギー移動」(FRET)として検出される。発光性部分が含まれる場合、共鳴エネルギー移動は「発光性共鳴エネルギー移動(luminescent resonance energy transfer)」(LRET)または「生物発光性共鳴エネルギー移動(bioluminescent resonance energy transfer)」(BRET)として検出される。Boute et al., Trends Pharmacol. Sci. 23, 351-54, 2002; Ayoub et al., J. Biol. Chem. 277, 21522- 28, 2002); US 20050176926; Lakowicz, Principles of Fluorescence Spectroscopy, Plenum Press, New York pp. 303-339, 1983; Forster, Annals of Physics (Leipzig) 2, 55- 75, 1948; US 20050191718参照。オリゴヌクレオチド分子にドナー部分およびアクセプター部分を結合する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Marras et al., Nucleic Acids Res. 2002 November 1; 30(21): el22; Loeffler et al., J Clin Microbiol. 2000 February; 38(2): 586-590; Rajendran および Ellington, Nucleic Acids Res. 2003 October 1; 31(19): 5700-5713; ならびにTyagi および Kramer, Nat. Biotechnol., 14, 303-308, 1996参照。
【0012】
好ましいアクセプター部分は、例えば、クマリン、キサンテン、フルオレセイン、蛍光タンパク質、パーミューテッド(circularly permuted)蛍光タンパク質、ロードル(rhodol)、ローダミン、レゾルフィン、シアニン、ジフルオロボラジアザインダセン(difluoroboradiazaindacene)、フタロシアニン、インディゴ、ベンゾキノン、アントラキノン、アゾ化合物、ニトロ化合物、インドアニリン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、および双性イオンアゾピリジニウム化合物を含む。
【0013】
好ましいドナー部分は、クマリン、キサンテン、ロードル、ローダミン、レゾルフィン、シアニン、ビマン(bimane)、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタル酸ヒドラジド、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、半導体蛍光ナノ結晶(semiconductor fluorescent nanocrystal)、蛍光タンパク質、サーキュラリーパーミュテッド蛍光タンパク質、および蛍光ランタニドキレートを含むが、これらに制限されない。
【0014】
蛍光タンパク質
いくつかの好ましい態様では、ドナー部分およびアクセプター部分のどちらかまたは両方が蛍光タンパク質である。好ましい蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)を含む。有用な蛍光タンパク質はまた、蛍光を発する能力を保有するこれらのタンパク質の変異体およびスペクトルバリアント(spectral variant)を含む。
【0015】
RFPは、イソギンチャクモドキ(Discosoma) DsRed(配列番号:9)もしくはIle125Arg変異を含む変異体のようなイソギンチャクモドキRFP、または例えばペプチドリンカーによって連結した2つのRFPモノマーを含む非オリゴマー性タンデムDsRedを含む。例えば、非オリゴマー性タンデムRFPは、ペプチド(例えば、配列番号:10に示すアミノ酸配列を有する)によって連結した2つのDsRedモノマーまたは2つの変異体DsRed-I125Rモノマーを含み得る。
【0016】
有用なGFPは、オワンクラゲ属(Aequorea)GFP(例えば、配列番号:11)、ウミシイタケ属(Renilla)GFP、コザラクラゲ属(Phialidium)GFP、および関連蛍光タンパク質、例えばシアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、またはCFPもしくはYFPのスペクトルバリアントを含む。CFP(シアン)およびYFP(黄色)は、GFPのカラーバリアント(color variant)である。CFPおよびYFPは、それぞれ6つおよび4つの変異を含む。それらは、CFPではTyr66Try、Phe66Leu、Ser65Thr、Asn145Ile、Met153Thr、およびVal163Ala、ならびにSer65Gly, Val168Leu、Ser72Ala、およびThr203Tyrである。スペクトルバリアントは、強化GFP(EGFP、配列番号:12)、強化CFP(ECFP、配列番号:13)、強化YFP(EYFP、配列番号:14)、ならびにV68LおよびQ69Kの変異を有するEYFPを含む。蛍光タンパク質の他の例には、配列番号:11のアミノ酸残基A206、L221またはF223での、一つまたは複数の変異(例えば、A206K、L221K、F223R、Q80R変異)を有するオワンクラゲ属GFP;ECFP(配列番号:13)のL221K および F223R変異、ならびに配列番号:14のEYFP- V68L/Q69Kが含まれる。US 2004/0180378号; 米国特許第6,150,176号; 同第6,124,128号; 同第6,077,707号; 同第6,066,476号; 同第5,998,204号; および同第5,777,079号; Chalfie et al., Science 263:802-805, 1994も参照。
【0017】
他の有用なGFP関連蛍光タンパク質は、一つまたは複数の折り畳み変異、および蛍光性であるタンパク質の断片(例えば2つのN末端アミノ酸残基が削除されたオワンクラゲ(A.victoria) GFP)を有するものを含む。これらの蛍光タンパク質のいくつかは、主要な発色団内で異なる芳香族アミノ酸を含み、また野生型GFP種より明らかに短い波長で蛍光を発する。例えば、P4およびP4-3指定されたGFPタンパク質は、他の変異に加え、Y66H置換を含むように設計され;またW2およびW7指定されたGFPタンパク質は、他の変異に加え、Y66Wを含むように設計される。
【0018】
オワンクラゲ属GFP関連蛍光タンパク質における折り畳み変異は、哺乳動物細胞中で発現すると、より高い温度で折り畳み、且つより蛍光性となるように、蛍光タンパク質の性能を改善するが、励起および発光のピーク波長にはほとんどもしくは全く影響を及ぼさない。必要に応じて、これらの変異は、変化したスペクトルおよび折り畳み特性を有するタンパク質を生産するためのGFPのスペクトル特性に影響を及ぼす付加的な変異、特にオリゴマー化するための蛍光タンパク質の傾向を減少または削除する変異と併用できる。配列番号:11に関する折り畳み変異は、F64L、V68L、S72A、T44A、F99S、Y145F、N1461、M153T、M153A、V163A、I167T、S175G、S205T、およびN212Kの置換を含む。
【0019】
発光性部分
IRE-1α基質における有用な発光性部分は、キレート(例えばセリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、またはイッテルビウムのβ-ジケトンキレート)を含むランタニド複合体を含む、キレートの形状であるランタニドを含む。ランタニドキレートは、当技術分野において周知である。Soini および Kojola, Clin. Chem. 29, 65, 1983; Hemmila et al., Anal. Biochem. 137, 335 1984; Lovgren et al., In: Collins および Hoh, eds., Alternative Immunoassays, Wiley, Chichester, U.K., p. 203, 1985; Hemmila, Scand. J. Clin. Lab. Invest. 48, 389, 1988; Mikola et al., Bioconjugate Chem. 6, 235, 1995; Peruski et al., J. Immunol. Methods 263, 35-41, 2002; 米国特許第4,374,120号; ならびに米国特許第6,037,185号参照。好ましいβ-ジケトンは、例えば、2-ナフトイルトリフルオロアセトン(2-NTA)、1-ナフトイルトリフルオロアセトン(1-NTA)、p-メトキシベンゾイルトリフルオロアセトン(MO-BTA)、p-フルオロベンゾイルトリフルオロアセトン(F-BTA)、ベンゾイルトリフルオロアセトン(BTA)、フロイルトリフルオロアセトン(FTA)、ナフトイルフロイルメタン(NFM)、ジセノイルメタン(DTM)、およびジベンゾイルメタン(DBM)である。US 20040146895も参照。
【0020】
発光性タンパク質は、ルクス(lux)タンパク質(例えば、ビブリオ フィシェリ(Vibrio fischerii)由来のluxCDABE)、ルシフェラーゼタンパク質(例えばホタルルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、プリューロマンマ(Pleuromamma)ルシフェラーゼ、および他の甲虫のルシフェラーゼタンパク質、渦鞭毛藻類 (Gonylaulax; Pyrocystis;), 環形動物 (Dipocardia), 軟体動物 (Lativa), および 甲殻類 (Vargula; Cypridina)、ならびに生物発光の腔腸動物(例えば、オワンクラゲ(Aequorea Victoria)、レニラ ムレレイ(Renilla mullerei)、レニラ レニフォルミス(Renilla reniformis);Prendergast et al., Biochemistry 17, 3448-53, 1978; Ward et al., Photochem. Photobiol 27, 389-96, 1978; Ward et al., J. Biol. Chem. 254, 781-88, 1979; Ward et al., Photochem. Photobiol. Rev 4, 1-57, 1979; Ward et al., Biochemistry 21, 4535-40, 1982参照)の緑色蛍光タンパク質を含むが、これらに限定されない。これらのタンパク質の多くは市販されている。ホタルルシフェラーゼは、Sigma(セントルイス、ミズーリ州)およびBoehringer Mannheim Biochemicals(インディアナポリス、インディアナ州)から入手できる。組換えによって作製されたホタルルシフェラーゼは、Promega Corporation(マディソン、ウィスコンシン州)から入手できる。クラゲ エクオリンおよびウミクラゲ由来のルシフェラーゼは、Sealite Sciences(ボガート、ジョージア州)で市販されている。
【0021】
本発明のいくつかの基質の調製に用いる、エクオリンおよび他のルシフェラーゼのDNA配列は、様々な供給源から得ることができる。例えば、cDNAは上記に開示した種から単離されたmRNAから調製できる。Faust, et al., Biochem. 18, 1106-19, 1979; De Wet et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 82, 7870-73, 1985参照。
【0022】
ルシフェラーゼ基質(ルシフェリン)は周知であり、セレンテラジン(Molecular Probes、 ユージーン、オレゴン州から入手可能)およびENDUREN(商標)を含む。これらの細胞浸透性試薬は、当技術分野において公知のように、直接細胞に施すことができる。ルシフェリン化合物は、Hori et al., Biochemistry 14, 2371-76, 1975; Hori et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 74, 4285-87, 1977によって開示された方法に基づき調製できる。
【0023】
ダーククエンチャー
いくつかの態様では、アクセプター部分はクエンチャー部分であり、好ましくは当技術分野において公知のように「ダーククエンチャー」(もしくは「ブラックホールクエンチャー」)である。この場合、RNアーゼ活性に伴って生じる立体配座における変化はクエンチングを排除し、ドナー部分からのエネルギー放出を増大させる。「ダーククエンチャー」自体は、光子を放出しない。「ダーククエンチャー」の利用は、利用しなければドナー部分からのエネルギー輸送の結果として現れるバックグラウンド蛍光または発光を、抑制または排除する。好ましいクエンチャー部分は、BLACK HOLE QUENCHER(商標)色素(例えば、BHQ-0(商標)、 BHQ-1(商標)、 BHQ-2(商標)、BHQ-3(商標))を含み、Biosearch Technologies, Inc.から入手でき、またQSY(商標)色素はInvitrogenから入手できる。好ましいクエンチャー部分は、例えば、US 2005/0118619; US 2005/0112673; および US 2004/0146959 において開示されている。
【0024】
任意の適したフルオロフォアは、そのスペクトル特性が選択されたダーククエンチャーとの利用に好ましい場合は、ドナー部分として利用してもよい。ドナー部分は、例えば、Cy-色素、Texas Red、BODIPY(商標)色素、またはAlexa色素であり得る。典型的に、フルオロフォアは、芳香族または複素環式芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、クマリン、フルオレセイン(例えば、フルオレセイン、テトラクロロフルオレセイン、ヘキサクロロフルオレセイン)、ローダミン、テトラメチル-ローダミン、もしくは化合物のような他のものであり得る。ダーククエンチャーと用いられる好ましい蛍光部分は、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N;N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)を含む、フルオレセインもしくはローダミン色素などのキサンテン色素を含む。好ましい蛍光レポーターはまた、アルファ位もしくはベータ位にアミノ基を有するナフチルアミン色素を含む。例えば、ナフチルアミノ化合物は、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホン酸塩、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホン酸塩、および2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホン酸塩、5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)を含む。
【0025】
他の好ましい蛍光部分は、3-フェニル-7-イソシアネートクマリンなどのクマリン;9-イソチオシアネートアクリジン-eおよびアクリジンオレンジなどのアクリジン;N-(p-(2-ベンゾキサゾリル)フェニル)マレイミド;インドジカルボシアニン3(Cy3)、インドジカルボシアニン5(Cy5)、インドジカルボシアニン5.5(Cy5.5)、3-1-カルボキシ-ペンチル)-3'-エチル-5,5'-ジメチル-オキサカルボシアニン(CyA)などのシアニン;1H,5H,1H,15H-キサンテノ[2,3,4-ij:5,6,7- i'j']ジキノル- イジン-18-イウム、9-[2(または4)-[[[6-[2,5-ジオキソ-l-ピロリジニル)オキシ]-6- オキソヘキシル]アミノ]スルホニル]-4(または2)-スルホフェニル]-2,3,6,7,12,13,16,17-オクタヒドロ-内部塩(TRまたはTexas Red);BODIPY(商標)色素;ベンゾキサアゾール;スチルベン;ピレン;ならびにその他同種類のものなどを含む。
【0026】
スクリーニング方法
本発明のIRE-1α基質は、IRE-1α RNアーゼ活性を検出、測定、および定量化する様々なシステムに使用できる。そのようなアッセイは、例えば、RNアーゼ活性を測定するため、またはIRE-1α活性のアゴニストもしくはアンタゴニストとしての試験化合物を同定するために使用できる。IRE-1α RNアーゼ活性を増強させる試験化合物(例えばアゴニスト)は、アルツハイマー病および二型糖尿病を処置するための潜在的な治療薬(または治療薬を開発するためのリード化合物)である。IRE-1α RNアーゼ活性を減少させる試験化合物(例えばアンタゴニスト)は、B細胞自己免疫疾患、狼瘡、および癌を処置するための潜在的な治療薬(または治療薬を開発するためのリード化合物)である。
【0027】
アッセイは定量的または定性的に、細胞質ドメインならびにキナーゼおよびRNアーゼドメインを含む、RNアーゼ活性に必要な活性部位を含む、完全長IRE-1αまたはIRE-1αの一部のどちらかを用いて行うことができる。IRE-1αの構造および機能性ドメインは、よく理解されている。例えば、Sidrauski および Walter, Cell 90, 1-20, 1997; Tirasophon et al., Genes & Devel. 14, 2725-2736, 2000; Dong et al., RNA 7, 361- 73, 2001; Calfon et al., Nature 415, 92-202, 2002 Liu et al., J. Biol. Chem. 277, 18346- 56, 2002; Lee et al., Mol. Cell. Biol. 23, 7448-59, 2003; Niwa et al., Genome Biology 6, Article R3, 2004; Back et al., Methods 35, 395-416, 2005.参照。
【0028】
好ましい態様において、共鳴エネルギー移動における変化はRNアーゼ活性を示すために用いられる。共鳴エネルギー移動における変化は、当技術分野において周知の方法を用いて、容易に検出することができる。例えばUS 2005/0118619; US 2002/0137115; US 2003/0165920; US 2003/0186229; US 2004/0137479; US 2005/0026234; US 2005/0054573; US 2005/0118619; 米国特許第6,773,885号; 米国特許第6,803,201号; 米国特許第6,818,420号; Ayoub et al., 2002; Boute et al., 2002; Domin et al., Prog. Biomed. Optics and Imaging, Proc. SPIE, vol 5139, 2003, pp238-242; Evellin et al., Methods Mol. biol. 284, 259-70, 2004; Honda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 437-42, February 27, 2001; Honda et al., Methods Mol. Biol. 3, 27-44, 1005; Mongillo et al., Cir. Res. 95, 67-75, July 9, 2004; Mongillo et al., Methods Mol. Biol. 307, 1-14, 2005; Nagai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 10554-59, July 20, 2004; Nikolaev et al., J. Biol. Chem. 279, 37215-18, 2004; Polit et al., Eur. J. Biochem. 270, 1413-23, 2003; Ponsioen et al., EMBO Rep. 5, 1176-80, 2004; Santangelo et al., Nucl. Acids Res. 32, 1-9, e-published April 14, 2004; ならびにWarrier et al., Am. J. Physiol. Cell Physiol. 289, C455-61, August 2005.参照。共鳴エネルギー移動(RET)測定として検出できる特性は、励起波長でのモル吸光係数、量子効率、励起スペクトル、発光スペクトル、最大励起波長、最大発光波長、2つの波長での励起振幅の比、2つの波長での発光振幅の比、励起状態寿命、異方性、放出された光の偏光、共鳴エネルギー移動、およびある波長での発光のクエンチングを含む。
【0029】
他の方法もまた、RNアーゼ活性を検出するために利用できる。例えば、いくつかの態様では、例えば質量分析法を用いて、切断産物および非切断産物の相対質量を検出する。例えば、米国特許第5,506,348号参照。他の態様では、例えば蛍光化合物などの検出可能な標識は、基質の3'末端または5'末端のいずれかに結合し、基質の切断は、キャピラリー電気泳動法によるなど、相対的な大きさを用いて検出される。そのような方法は当技術分野において公知である。例えば、Camilleri, ed., Capillary Electrophoresis: Theory and Practice (New Directions in Organic and Biological Chemistry Series), 1997; Heller, Analysis of Nucleic Acids By Capillary Electrophoresis, Chromatographia CE Series Volume 1, 1997; Altria, ed., Capillary Electrophoresis Guidebook: Principles, Operation, and Applications (Methods in Molecular Biology, volume 52), 1996; Guttman et al., Anal. Chem. 62, 137-146, 1990; および米国特許第5,571,680号, 同第5,110,424号,および同第5,567,292号参照。
【0030】
試験化合物
試験化合物は、当技術分野において公知である薬理学的薬剤であり得るか、または、任意の薬理学的活性を有する未知の化合物であり得る。化合物は、天然または研究室で設計されたものであり得る。それらは、微生物、動物、もしくは植物から単離することができ、且つ組換えにより産生することができ、または当技術分野において公知である化学的方法により合成することができる。必要に応じて、試験化合物は、これらに制限されないが、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能な(spatially addressable)平行固相もしくは液相ライブラリー、デコンヴォルーションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法、ならびにアフィニティークロマトクラフィー選抜法を用いる合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知である多数のコンビナトリアルライブラリー法のいずれかを用いて得ることができる。
【0031】
分子ライブラリーの合成方法は、当技術分野において周知である(例えば、DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 6909, 1993; Erb et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 11422, 1994; Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37, 2678, 1994; Cho et al., Science 261, 1303, 1993; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2059, 1994; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2061; Gallop et al., J. Med. Chem. 37, 1233, 1994)。化合物のライブラリーは溶液中(例えばHoughten, BioTechniques 13, 412-421, 1992参照)、またはビーズ上(Lam, Nature 354, 82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364, 555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(Ladner, 米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 1865-1869, 1992)、またはファージ(Scott および Smith, Science 249, 386-390, 1990; Devlin, Science 249, 404-406, 1990);Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222, 301-310, 1991;ならびに Ladner, 米国特許第5,223,409号)に提示され得る。
【0032】
ハイスループットスクリーニング
本発明のスクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング形式において使用できる。ハイスループットスクリーニングを使用することで、多数の試験化合物が迅速にスクリーニングできるように、多くの別々の化合物を平行に試験することができる。最も広く確立された技術は96-ウェルマイクロタイタープレートを用いるが、384-プレートまたは1536-プレートも用いることができる。当技術分野において公知のように、種々の手段、材料、ピペッター、ロボット、プレートウォッシャー、およびプレートリーダーは市販されている。
【0033】
本開示に引用された全ての特許、特許出願、および参考文献は、参照により明確に本明細書に組み入れられる。上記の開示は、本発明を概説するものである。以下の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができるが、これらは、例示のみを目的として提供されるものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【実施例】
【0034】
実施例1
IRE-1αタンパク質
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)およびヒトIRE-1αを含む融合タンパク質(GST-IRE-1α)を、500 mlバキュロウイルス-感染昆虫細胞培養物から得た。昆虫細胞を、緩衝液A(25 mM Tris-HCl pH7.5、50 mM KCl、5 mM MgCl2、1 mM EDTA、2.5 mM DTT、0.1 mM ATP、10%滅菌グリセロール、0.005% NP-40、1μg/mLロイペプチン、100 mM NaF、100 mM NaVO4、 100 mM PMSF;500 mL培養物あたり30 mL)中で懸濁し、その懸濁液を高速遠心分離チューブに移し、氷上でその懸濁液を超音波処理することによって溶解した。超音波処理した試料を、4℃で30分間、13000×gで遠心処理した。
【0035】
上清を、チューブ内でグルタチオンセファロースビーズに結合させ、4℃で1〜2時間、回転装置上で穏やかに混合した。結合後、ビーズ混合物をAmersham PD-10カラムに移した。カラムを緩衝液Aで5回洗浄し、続いて緩衝液B(25 mM Tris-HCl pH7.5、50 mM KCl、2.5 mM MgCl2、1 mM EDTA、2.5 mM DTT、10%滅菌グリセロール、0.0025% NP-402)で2回洗浄した。
【0036】
GSTタグを、PRESCISSION(商標)PROTEASE 切断を用いて除去した。切断緩衝液(ビーズ1 mLあたり、825μL緩衝液B、350μl滅菌グリセロール、および35μl PRESCISSION(商標)PROTEASE)をカラムに加え、転回しながら4℃で4時間インキュベートした。カラムからのフロースルーを回収することによって、最終産物を回収した。図1に示すように、本方法は高収量且つ高純粋なIRE-1αタンパク質試料を提供する。
【0037】
以下に記載されたアッセイで用いられたIRE-1αモノマー(配列番号:15)は、GSTベクターのリンカー領域からの末端にGPLGSPEF(配列番号:15の1〜8位のアミノ酸)を有するIRE-1α(リンカー、キナーゼ、およびRNアーゼドメイン)の462〜977位のアミノ酸を含む。
【0038】
実施例2
IRE-1α活性のアッセイ
実施例1に記載されたようにして得られたIRE-1αタンパク質試料を、以下の4つの基質を用いてRNアーゼ活性について様々な希釈度で試験した。
33塩基野生型基質

FAM(5') およびBHQ-1(商標)(3')で標識した15塩基野生型基質

33塩基変異基質

ならびにFAM(5') およびBHQ (3')で標識した15塩基変異基質


【0039】
1×反応緩衝液(5×反応緩衝液は、100 mM Hepes pH 7.5、250 mM KOAc、2.5mM MgCl2である)、3 mM DTT、および0.4 %ポリエチレングリコール水を含む反応混合液5μlを、384ウェルプレートの各ウェルに加えた。25ナノリットルの1 mM試験化合物溶液を、試験ウェルに加えた。3μl の128 ng/ml IRE-1α試料を、各試験ウェルおよび陽性対照ウェルに加えた(最終濃度5.82 ng/ウェル)。陰性対照ウェルは反応混合液および試験化合物のみを含んだ。
【0040】
1200 rpmで30秒間プレートを回転後、63 nMの野生型IRE-1α基質3μl、または63 nMを48 nMに希釈した変異IRE-1α基質3μlを、対照プレートの各ウェルに加えた。プレートを再び1200 rpmで30秒間回転した。アッセイのための最終濃度は、63 nM野生型IRE-1α基質(または48 nM変異IRE-α基質)、5.82 ng IRE-1αタンパク質、および2.5μM試験化合物、である。
【0041】
プレートを蓋で覆い、30℃で1時間インキュベートした。プレートをその後、ACQUEST(商標)マイクロプレートリーダーに移した。データをデータ解析ソフトウェアを用いて解析した。IRE-1αの活性比を以下の計算式を用いて計算した。

【0042】
反応産物を、図3に示される、20%ポリアクリルアミド尿素変性ゲル上で分離した。レーンは左から右へ:
1、野生型33塩基、IRE-1α無し;
2、変異33塩基、IRE-1α無し;
3、野生型33塩基、IRE-1α(切断)有り;
4、変異33塩基、IRE-1α(切断せず)有り;
5、ポリエチレングリコール(PEG)を反応に加えた対照:野生型33塩基、IRE-1α無し;
6、ポリエチレングリコール(PEG)を反応に加えた対照:変異33塩基;
7、野生型33塩基、PEG有り、IRE-1α(切断)有り;
8、変異33塩基、PEG有り、IRE-1α(切断せず)有り;
9、野生型33塩基、PEG有り、1:3に希釈されたIRE-1α(切断)有り;
10、野生型33塩基、PEG有り、1:12に希釈されたIRE-1α(切断)有り;
11、FAM-BHQ1標識された野生型15塩基基質(シグナル無し)、IRE-1α無し;
12、FAM-BHQ1標識された変異15塩基基質(シグナル無し)、IRE-1α無し;
13、FAM-BHQ1標識された野生型15塩基基質(シグナル)、IRE-1α有り;
14、FAM-BHQ1標識された変異15塩基基質(シグナル無し)、IRE-1α無し;
15、FAM-BHQ1標識された野生型15塩基基質(シグナル)、1:3に希釈されたIRE-1α有り、
である。
【0043】
本アッセイは、IRE-1αが高い特異的活性により野生型基質の両方を切断し、一方で変異基質のどちらも切断しないことを示す。酵素は1:20希釈で活性を維持し、該活性は用量依存性を示す。
【0044】
図3Cに示されるように、ループ内に一箇所の点突然変異を有する付加的な33塩基ステムループ基質を用いて、特異的なヒトIRE-1α活性を確認した。右側の構造は、野生型ステムループ基質を表す(これは図2にも示されている)。丸で囲った残基は、一箇所の点突然変異(四角)に変えられた野生型残基を示す。変異は、左側の対応するゲル上の数字で標識を付されている。実験は、5つ全ての変異基質を組換え精製ヒトIRE-1αの存在有りかまたは無しで使用した点を除き、図3Aにおけるのと同じ方法で行った。
【0045】
図3Cに示されるように、IRE-1αは野生型基質を切断したが、他の基質の切断は、低分子量バンドの欠如によって示されるように、あるにしても極僅かであった。レーンは左から右へ:
1、反応緩衝液中の野生型基質、IRE-1α無し;
2、反応緩衝液中の変異基質#1、IRE-1α無し;
3、反応緩衝液中の変異基質#2、IRE-1α無し;
4、反応緩衝液中の変異基質#3、IRE-1α無し;
5、反応緩衝液中の変異基質#4、IRE-1α無し;
6、反応緩衝液中の変異基質#5、IRE-1α無し;
7、反応緩衝液中の野生型基質、IRE-1α有り;
8、反応緩衝液中の変異基質#1、IRE-1α有り;
9、反応緩衝液中の変異基質#2、IRE-1α有り;
10、反応緩衝液中の変異基質#3、IRE-1α有り;
11、反応緩衝液中の変異基質#4、IRE-1α有り;
12、反応緩衝液中の変異基質#5、IRE-1α有り、
である。
【0046】
実施例3
最小の基質の長さの決定
上述のアッセイを用いて、最小の基質の長さを、15塩基基質(野生型、配列番号:3;変異、配列番号:4)および11塩基基質

を用いて決定した。このアッセイでは、酵素活性にATPおよびADPを必要としない。GST-IRE-1αは、高濃度のATP中で精製されるが、最終的にこれは洗浄され、非常に極僅かなレベルまで希釈される。
【0047】
実施例4
IRE-1α媒介性基質切断の動態
IRE-1α媒介性基質切断の動態を、精製された活性を有するIRE-1αおよびFAM-BHQ-1(商標)標識された野生型15塩基基質を用いて、上述のようなアッセイにおいて計測した。プレートを30℃でインキュベートし5分ごとに読んだ。
【0048】
結果を図4に示す。これらのデータはハイスループットアッセイに有効な条件を同定した:10μl反応容量において、20 nM 精製IRE-1αおよび63 nM基質、ならびに60分インキュベート時間。これらの条件は、全部で80,000単位シグナルの約75%である、60,000単位のシグナルをもたらす。
【0049】
実施例5
基質特異性
本実施例は、読み取りとして、二重標識された15塩基野生型基質(配列番号:3)を用いる競合アッセイを示す。非標識野生型(配列番号:1)または変異33塩基基質(配列番号:2)の各量を増やしながら、実施例2に記載した標準的な反応において、30℃で1時間インキュベートした。
【0050】
結果を図5に示す。X-軸、蛍光強度;Y軸のカラムは左から右へ:
1、IRE-1αの無い、および競合物質(バックグラウンドシグナル)の無い、野生型15塩基FAM BHQ-1(商標)基質;
2、IRE-1α(バックグラウンドシグナル)の無い、野生型15塩基FAM BHQ-1(商標)基質に加えて50倍モル過剰の非標識野生型33塩基基質(より長い33塩基基質への過剰な可能なハイブリダイズによるフルオロフォアのクエンチングの可能性についての対照);
3、IRE-1αを有する野生型15塩基FAM BHQ-1(商標)基質、および野生型33塩基基質と同量;
4、2×野生型33塩基基質を有する3と同じ;
5、5×野生型33塩基基質を有する3と同じ;
6、10×野生型33塩基基質を有する3と同じ;
7、20×野生型33塩基基質を有する3と同じ;
8、50×野生型33塩基基質を有する3と同じ;
9、IRE-1α(バックグラウンドシグナル)の無い、野生型15塩基FAM BHQ-1(商標)基質に加えて、50倍モル過剰の非標識変異33塩基基質(より長い33塩基基質への過剰な可能なハイブリダイズによるフルオロフォアのクエンチングの可能性についての対照(本質的に2と同じ));
10、IRE-1αを有する野生型15塩基FAM BHQ-1(商標)基質、および変異33塩基基質と同量;
11、2× 33塩基変異基質を有する3と同じ;
12、5× 33塩基変異基質を有する3と同じ;
13、10× 33塩基変異基質を有する3と同じ;
14、20× 33塩基変異基質を有する3と同じ;
15、50× 33塩基変異基質を有する3と同じ;
16、IRE-1αを有する野生型15塩基FAM-BHQ-1(商標)基質(陽性対照)、
である。
【0051】
結果は、野生型33塩基基質の10倍モル過剰はIRE-1α基質と競合し始め、50倍過剰で50%以上の抑制活性を有し蛍光強度を抑制することを示している。しかしながら、ほぼ同濃度の非標識33塩基変異基質は抑制活性を有さず、IRE-1αは、二次構造を保つ1箇所の変異であっても変異基質を認識しないかまたは変異基質と結合しないことを示している。従って、ステムの長さがループの切断にほとんどまたは全く影響しない一方、配列特異的な認識は、恐らくIRE-1αの触媒活性における要素となっている。
【0052】
実施例6
ハイスループットスクリーニングアッセイ
Beckman Biomek FXロボットを、以下の順に、384ウェルプレートに反応の全成分をローディングするために用いた:試験化合物を有する緩衝液、IRE-1α、および基質(384ウェルプレート中)。アッセイの結果を表1および図6に示す。基質のみを有する対照およびIRE-1αと基質とを有する対照を、信号対ノイズ比(signal to noise ratio)およびウェル間の変動を測定するために用いた(図6における左側の最初の2つの列それぞれ)。図6における最も右の2つのレーンは、RNアーゼ混入に対する品質管理チェックとして、IRE-1αを有するかまたは有さない、二重標識変異15塩基基質を含む。
【0053】
本実施例は、アッセイが、バックグラウンドに対して許容されるシグナル増加、ならびにウェル間およびプレート間の低い変動を有することを示している。
【0054】
【表1】

【図1】

【図2】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)IRE-1αに対する切断部位を含むRNAループ;および
(ii)4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド塩基対からなるヌクレオチドステム、
からなるオリゴヌクレオチド分子を含む、IRE-1αに対する基質。
【請求項2】
ドナー部分が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を示す、ドナー部分およびアクセプター部分をさらに含む基質であって、
ドナー部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端の一方に結合し、且つアクセプター部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端のもう一方に結合している、請求項1記載の基質。
【請求項3】
検出可能な標識をさらに含む、請求項1記載の基質。
【請求項4】
RNAループがヌクレオチド配列5'-CCGCAGC-3'を含む、請求項1記載の基質。
【請求項5】
配列番号:1または配列番号:3を含む、請求項1記載の基質。
【請求項6】
ヌクレオチドステムがDNAを含む、請求項1記載の基質。
【請求項7】
ヌクレオチドステムがRNAを含む、請求項1記載の基質。
【請求項8】
ヌクレオチドステムがヌクレオチドアナログを含む、請求項1記載の基質。
【請求項9】
ドナー部分およびアクセプター部分の少なくとも一つが蛍光タンパク質である、請求項2記載の基質。
【請求項10】
ドナー部分およびアクセプター部分の各々が蛍光タンパク質である、請求項2記載の基質。
【請求項11】
アクセプター部分が発光性部分である、請求項2記載の基質。
【請求項12】
発光性部分が発光性タンパク質およびランタニドキレートからなる群より選択される、請求項11記載の基質。
【請求項13】
アクセプター部分が、クマリン、キサンテン、フルオレセイン、蛍光タンパク質、サーキュラリーパーミュテッド(circularly permuted)蛍光タンパク質、ロードル(rhodol)、ローダミン、レゾルフィン、シアニン、ジフルオロボラジアザインダセン(difluoroboradiazaindacene)、フタロシアニン、インディゴ、ベンゾキノン、アントラキノン、アゾ化合物、ニトロ化合物、インドアニリン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、および双性イオンアゾピリジニウム化合物からなる群より選択される、請求項2記載の基質。
【請求項14】
ドナー部分が、クマリン、キサンテン、ロードル、ローダミン、レゾルフィン、シアニン色素、ビマン(bimane)、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタル酸ヒドラジド、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、半導体蛍光ナノ結晶(semiconductor fluorescent nanocrystal)、蛍光タンパク質、サーキュラリーパーミュテッド蛍光タンパク質、および蛍光ランタニドキレートからなる群より選択される、請求項2記載の基質。
【請求項15】
ドナー部分が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、およびシアン蛍光タンパク質(CFP)からなる群より選択される蛍光タンパク質である、請求項2記載の基質。
【請求項16】
アクセプター部分が発光性タンパク質である、請求項2記載の基質。
【請求項17】
発光性タンパク質が、エクオリン、オベリン、ルクス(lux)タンパク質、ルシフェラーゼタンパク質、フィコビリタンパク質、ホラジン(pholasin)、および緑色蛍光タンパク質からなる群より選択される、請求項16記載の基質。
【請求項18】
(i)IRE-1αに対する変異切断部位を有するRNAループ;および
(ii)4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド塩基対からなるヌクレオチドステム、
からなるオリゴヌクレオチド分子を含むIRE-1αに対する変異基質。
【請求項19】
RNAループがヌクレオチド配列5'-CCCCAGC-3'を含む、請求項18記載の変異基質。
【請求項20】
ドナー部分が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を示す、ドナー部分およびアクセプター部分をさらに含む変異基質であって、
ドナー部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端の一方に結合し、且つアクセプター部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または'末端のもう一方に結合する、請求項18記載の変異基質。
【請求項21】
検出可能な標識をさらに含む、請求項18記載の変異基質。
【請求項22】
以下の工程を含むIRE-1αポリペプチドのRNアーゼ活性を検出する方法:
(1)
(a)
(i)IRE-1αに対する切断部位を含むRNAループ;
(ii)4、5、6、7、8、9、または10リボヌクレオチド塩基対からなるヌクレオチドステム;
からなるオリゴヌクレオチド分子;ならびに
(b)ドナー部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端の一方に結合し、且つアクセプター部分がオリゴヌクレオチド分子の5'末端または3'末端のもう一方に結合しており、ドナー部分が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を示す、ドナー部分およびアクセプター部分、
を含む基質とIRE-1αポリペプチドを接触させる工程;ならびに
(2)ドナー部分とアクセプター部分との間の共鳴エネルギー移動を検出する工程であって、それにより共鳴エネルギー移動における変化がIRE-1αポリペプチドのRNアーゼ活性を示す、工程。
【請求項23】
試験化合物の存在下で共鳴エネルギー移動を検出する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
IRE-1αポリペプチドおよび基質が無細胞系中にある、請求項22記載の方法。
【請求項25】
共鳴エネルギーにおける変化が、励起波長でのモル吸光係数、量子効率、励起スペクトル、発光スペクトル、最大励起波長、最大発光波長、2つの波長での励起振幅の比、2つの波長での発光振幅の比、励起状態寿命、異方性、放出された光の偏光、共鳴エネルギー移動、およびある波長での発光のクエンチングからなる群より選択される特性を決定することによって検出される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
IRE-1αポリペプチドが完全長IRE-1αタンパク質である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
IRE-1αポリペプチドがキナーゼドメインを含む、請求項22記載の方法。

【公開番号】特開2013−48628(P2013−48628A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226780(P2012−226780)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2008−538855(P2008−538855)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(507302829)マンカインド コーポレ−ション (16)
【Fターム(参考)】