説明

IV型結晶のセレコキシブ

セレコキシブ(4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド)の新規な結晶形、その調製方法、およびそれを含む医薬組成物が記載されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤として活性のある医薬品の分野にあり、より詳細には、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤である4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド(「セレコキシブ」)に関する。詳細には、本発明は、セレコキシブの新規な結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
痛み、および炎症に随伴する腫れの治療における非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)の使用は、生命を危うくする潰瘍を含む重度な副作用を生み出しかねない。炎症に関連する誘導酵素(「プロスタグランジンG/HシンターゼII」または「シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)」)の発見により、より効果的に炎症を低減し、副作用がより少なくそれほど強烈でない、実現性のある阻害ターゲットがもたらされている。
【0003】
COX−2を選択的に阻害する化合物が記載されている。たとえば、参照により本明細書に援用される米国特許第5466823号に記載の置換ピラゾリルベンゼンスルホンアミドには、たとえばセレコキシブが含まれる。
【0004】
【化1】

【0005】
参照により本明細書に援用される米国特許第5892053号は、セレコキシブの調製方法を記載している。
【0006】
参照により本明細書に援用される国際特許公開WO00/04021は、溶媒和した結晶形のセレコキシブのおよびその合成を例示している。
【0007】
現在、I型、II型、III型、および無定形のセレコキシブとして知られる4種のセレコキシブの固体形態が知られている。
【0008】
I型およびII型セレコキシブは、参照により本明細書に援用される国際特許公開WO01/42222に記載されている。I型セレコキシブは、X線粉末回折(「PXRD」)パターンのピークが2θが約5.5、5.7、7.2、および16.6度であるところにあり、示差走査熱量測定(「DSC」)の最大値が0.5℃/分で走査したとき約163.3℃である、セレコキシブの結晶形である。II型セレコキシブは、PXRDパターンのピークが2θが約10.3、13.8、および17.7度であるところにあり、DSC最大値が0.5℃/分で走査したとき約162.0℃であるセレコキシブの結晶形である。
【0009】
参照により本明細書に援用される国際特許公開WO01/42221は、無定形セレコキシブ、および結晶化阻害剤を使用する無定形セレコキシブの調製方法を記載している。無定形セレコキシブは、111.4℃(オンセット)で明白なガラス転移を示す。
【0010】
米国特許第6391906号は、その中でI型と呼ばれるセレコキシブの別の固体形態について述べていると主張している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
経口投与用のセレコキシブの製剤は今まで、セレコキシブの独特の物理的化学的性質、特にその低い溶解性、ならびに粘着性、低いかさ密度、および低い圧縮性を含むその結晶構造に関連した要素によって難しいものになっていた。セレコキシブは、水性媒質に著しく不溶性である。たとえばカプセル形態で経口投与後、未製剤セレコキシブは、消化管内で急速に吸収されるように容易に溶解および分散することはない。さらに、長い粘着性の針状晶を形成する傾向のある結晶形態を有する、未製剤セレコキシブは、通常は打錠鋳型に入れて加圧すると融着して一体となった塊になる。他の物質とブレンドしても、組成物を混合する際にセレコキシブ結晶は、他の物質から分離し、凝集する傾向があり、望ましくない程大きなセレコキシブの凝集塊を含む不均質にブレンドされた組成物をもたらす。したがって、所望のブレンド均一性を有するセレコキシブを含む医薬組成物を調製することは難しい。
【0012】
懸濁液は、急速な発現が望ましい多くの医薬品投与にとって好ましい形態である。懸濁液では、消費者の好みに対処するとき、粘度および沈降速度が重要な要素である。粘度が高すぎると、懸濁液は容易に流れ込まず、投薬カップまたはスプーンの中での過剰なホールドアップのために正確な投薬を実現しにくい。懸濁液中の粒子が急速に定着しすぎて、瓶の底面でケーキを形成すると、激しく振盪することにより粒子を再懸濁することの方が消費者にとって非常に困難となるので、沈降速度は重要である。
【0013】
セレコキシブは、投与必要量が比較的多い。そのような高用量/低溶解性薬物に関しては、薬用量を提供するのに必要なカプセルの大きさまたは溶液の体積が限定要因となる。たとえば、所与の溶媒への溶解度が10mg/mLであり、薬用量が400mg/日である薬物では、少なくとも40mLの溶液を摂取する必要があろう。このような体積は、飲用形態での消費には不便または許容されないものとなる場合があり、また約1.0mL〜約1.5mLを超える液体を含むカプセルは一般に快適に飲み込むには大きすぎるとみなされるので、カプセル剤形が所望される場合もこの体積は特定の問題を呈する。したがって、カプセル形態で溶液を投与する場合では、必要な用量を提供するために複数のカプセルが摂取される必要があろう。
【0014】
COX−2選択的阻害剤としてのセレコキシブは、(たとえば、関節炎を含む)炎症性の障害、疼痛を随伴する障害、発熱を随伴する障害などのCOX−2が関与する障害の治療または予防においてなど、COX−2選択的阻害剤の使用が所望される場合に投与することができる。
【0015】
たとえば、頭痛または偏頭痛における急性疼痛の治療では、バイオアベイラビリティーが高められているセレコキシブの結晶形は、急速な疼痛緩和をもたらすのに有用であろう。水性媒質への溶解性がより高いセレコキシブの形態は、優れた特性を有する新しい製剤を提供する際に有用となるであろう。これらの優れた特性には、その限りでないが、(1)改善されたバイオアベイラビリティー、(2)改善された溶解性、(3)固体剤形の短い崩壊時間、(4)固体剤形の短い溶解時間、および(5)固体剤形の改善された溶解プロフィールのうちの1つまたは複数が含まれる。
【0016】
すべての化合物でそうであるように、限定するものではないが、セレコキシブ製剤の熱力学的および薬物動態学的な性質を含む化学的および物理的性質は、治療への適用可能性および商業的な開発にとって重要である。残念ながら、多くの有用な薬物は、水溶性が低く、したがって、水性媒体の溶液として好都合な濃度で製剤するのは難しい。そのような薬物のための媒体として適切な溶媒が発見されても、特にセレコキシブなどの水溶性の低い薬物ではしばしば、溶液から析出し、かつ/またはたとえば消化管の水性環境において薬物が水と接触すると再結晶する傾向がある。そのような沈殿および/または再結晶は、薬物を溶液として製剤することによって得ようとする治療効果の急速な発現という利益を相殺し、または減少させる場合がある。さらに、そのような沈殿または再結晶は、新薬承認プロセス間に規制上の異議を生じさせかねない。
【0017】
バイオアベイラビリティーが高められている新規な結晶形のセレコキシブは、医薬組成物中の医薬添加剤の選択に関してより高い柔軟性をもたらすであろう。そのような改良された結晶形のセレコキシブを提供することができれば、COX−2が関与する状態および障害の治療において著しい前進が現実のものとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
今回、本明細書ではIV型結晶セレコキシブと呼ぶ結晶形のセレコキシブが提供される。IV型結晶セレコキシブは、2θが約4.46、13.13、18.29、20.21、21.83、または26.24度である少なくとも1箇所のピークを含む粉末X線回折パターン;約144℃〜149℃の間の吸熱を有する示差走査熱量測定プロフィール;ならびに約3342、3295、または3213cm−1のところに少なくとも1箇所のピークを有する赤外スペクトルのうちの少なくとも1つを特徴とする。より好ましい実施形態では、IV型結晶セレコキシブは、2θが約4.46、13.13、18.29、20.21、21.83、および26.24度であるところにピークを含む粉末X線回折パターン;約144℃〜149℃の間の吸熱を有する示差走査熱量測定プロフィール;ならびに約3342、3295、および3213cm−1のところにピークを有する赤外スペクトルのうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0019】
さらにまた、IV型結晶セレコキシブと少なくとも1種の薬学的に許容できる医薬添加剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0020】
さらにまた、IV型セレコキシブを含む組成物の調製方法であって、水溶性のポリマーおよび界面活性剤を水性溶媒に溶解させて第1の溶液を生成することで第1の溶液を調製するステップ;セレコキシブを液体PEGに溶解させて第2の溶液を調製するステップ;第2の溶液を第1の溶液に加えて、IV型結晶セレコキシブの沈殿が生じるような混合物を生成するステップ;ならびに混合物からセレコキシブの沈殿を単離するステップを含む方法が提供される。
【0021】
さらにまた、IV型結晶セレコキシブを約150℃〜約162℃の温度に加熱するステップを含む、III型セレコキシブの調製方法が提供される。
【0022】
さらにまた、IV型結晶セレコキシブを含む医薬組成物の対象への投与を含む、対象においてCOX−2が関与する状態または障害を治療または予防する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
IV型結晶セレコキシブを製造する1つの方法では、セレコキシブ(米国特許第5466823号に記載のとおりに生成される)を溶媒に溶解させて、セレコキシブ溶液を生成する。このセレコキシブ溶液を水溶液と接触させて、制御された沈殿混合物を生成する。制御された沈殿混合物中のセレコキシブ沈殿の相純度は、出発試薬の割合および/または製造技術を以下で教示するように調整して制御する。本発明の一実施形態では、IV型結晶セレコキシブが、制御された沈殿混合物中に存在する実質的にすべてのセレコキシブを構成する。本発明の別の実施形態では、III型セレコキシブが、制御された沈殿混合物中に存在する実質的にすべてのセレコキシブを構成する。本発明の別の実施形態では、IV型結晶セレコキシブとIII型セレコキシブのブレンドが、制御された沈殿混合物中に存在する実質的にすべてのセレコキシブを構成する。
【0024】
IV型結晶セレコキシブの制御された析出のための好例となる手順を実施例1に記載する。
【0025】
IV型結晶セレコキシブの制御された析出のための好例となるセレコキシブ溶液は、セレコキシブ、PEG、およびポリソルベート80を含むものでよい。一実施形態では、セレコキシブ溶液は、PEG、またはPEGおよびポリソルベート80に、攪拌しながらセレコキシブをゆっくりと加えて生成する。
【0026】
一実施形態では、制御された沈殿混合物は、以下のとおりに生成する。HPMCを含み、場合によりさらにPVPも含む水溶液に、セレコキシブをその溶液中に含むPEG約400を加える。このようなオプションのPVPは、たとえば溶液にして調製し、次いで、セレコキシブ溶液と合わせる前、それと同時、またはその後に、その水溶液に加えることができる。HPMC(またはHPMC+PVP)を含有する水溶液がセレコキシブ溶液に加えられた後、IV型結晶セレコキシブが沈殿する。オプションの実施形態では、水溶液、セレコキシブ溶液、または制御された沈殿混合物の1つまたは複数に、他の薬剤を加えることができる。好例となる薬剤は、スクロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、および安息香酸ナトリウムである。
【0027】
制御された沈殿混合物は、場合により乳化剤と共に数分間ホモジナイズしてもよい。
【0028】
沈殿用懸濁液からIV型結晶セレコキシブ粒子を単離するために、制御された沈殿混合物を、析出反応が平衡状態に到達するまで保存する。沈殿したIV型結晶セレコキシブ粒子を、たとえば減圧濾過装置によって分離する。IV型結晶セレコキシブ粒子を水で洗浄すると、粒子から水溶性成分を除去することができる。次いで、IV型結晶セレコキシブ粒子を、たとえば室温の減圧下で24時間乾燥させた後、粒子が完全に乾燥するまでデシケーターに入れることができる。
【0029】
本発明に従って水溶液を生成するのに有用な1つの溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)である。薬学的に許容できる任意の液体PEGを使用することができる。本発明の一実施形態では、PEGは、平均分子量が約100〜約800である。別の実施形態では、PEGは、平均分子量が約200〜約600である。別の実施形態では、PEGは、平均分子量が約300〜約500である。本発明の水溶液中で溶媒として使用することができるPEGの非限定的な例には、PEG−200、PEG−350、PEG−400、PEG−540、およびPEG−600が含まれる。現在のところ好ましいPEGは、平均分子量が約375〜約450、たとえばPEG−400である。
【0030】
別の実施形態では、本発明の水溶液は、ポリマーをさらに含む。好例となるポリマーは、以下で記載するように、HPMC、PVP、およびこれらの混合物である。
【0031】
本発明の別の実施形態では、水溶液は、HPMCおよびPVPの両方をさらに含む。PVPは、高粘性PVP、中粘性PVP、または低粘性PVPを含むものでよい。本発明に従う有用なPYPの例には、PVP K−17、PVP K−30、およびPVP K−90が含まれる。
【0032】
特定の理論に拘泥するものではないが、HPMCとポリソルベート80の相互作用が、薬物の可溶化に利用可能な界面活性剤分子を減少させるのではないかと考えられる。以下で表2に示すように、5%のHPMCおよび1%のポリソルベート80を含む懸濁液(ロットCおよびロットD)から分離した固体は、DSC比によって表されるIV型のレベルが、より低い濃度のHPMCおよびポリソルベート80を含む懸濁液(ロットE)または界面活性剤なしの懸濁液(ロットF)から分離したものよりもはるかに高かった。高純度のIV型を含むサンプルの溶解速度は、III型を主に含むものの2〜3倍であるので、適切なレベルのHPMCおよびポリソルベート80を用いて調製された沈殿懸濁液の改善されたバイオアベイラビリティーは、セレコキシブの新規な固体形態、すなわちIV型の存在、およびより小さい粒径の両方によるものであると思われる。IV型セレコキシブの生成は、HPMCおよびポリソルベート80の両存在によって誘発される、セレコキシブ分子の拡散率の変化、表面張力の変化、および過飽和に関連すると思われる。
【0033】
本発明の別の実施形態では、水溶液は、界面活性剤をさらに含む。界面活性剤なしで調製された懸濁液は、検出可能な量のIV型結晶セレコキシブを与えないことがわかっている。界面活性剤は、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、またはこれらの組合せでよい。特定の理論に拘泥するものではないが、その量というよりも界面活性剤の存在が、IV型結晶セレコキシブの析出をもたらすと考えられる。
【0034】
ポリソルベート80などの界面活性剤の有用な量は、懸濁液の重量の少なくとも約0.1%の量である。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.25%〜約50%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.3%〜約33%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.25%〜約25%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約.3%〜約15%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.35%〜約5%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.4%〜約1.5%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.45%〜約1%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.5%〜約0.55%の量で存在する。別の実施形態では、ポリソルベート80は、懸濁液の重量の約0.54%の量で存在する。ポリソルベート80の代わりに用い、またはポリソルベート80と共に使用する、本明細書で言及する他の界面活性剤は、上で詳述したポリソルベート80の例示的な範囲に相当する量で使用することができる。
【0035】
限定するものではないが医薬添加剤を含む、オプションの追加の構成成分は、組成物の他の成分と物理的および化学的に適合性のあるものにすべきであり、またレシピエントに有害なでないものにすべきである。重要なことに、一部のクラスの医薬添加剤は、互いに部分的に重なり合っている。本発明の組成物は、適切な溶媒液体構成成分および目的の治療に有効な薬物投与量を選択することで、適切などんな経口経路による投与にも適合させることができる。したがって、溶媒中に使用する構成成分それ自体は、固体、液体、またはその組合せでよい。
【0036】
好例となる本発明の組成物には、医薬品剤形、およびIV型結晶セレコキシブの製造に有用な組成物などの医薬品剤形中間体が含まれる。
【0037】
本発明に従って調製された医薬組成物は、IV型結晶セレコキシブと、少なくとも1種の薬学的に許容できる医薬添加剤とを含む。医薬品剤形には、液体剤形および固体剤形が含まれる。
【0038】
液体剤形は、水などの当業界で一般に使用される不活性希釈剤を含むものでよい。液体剤形は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、着香剤、着香剤などの医薬添加剤を含んでもよい。本発明の液体剤形は、濃縮溶液の形でよく、個別の物品としてカプセル封入されたものでも、そうでないものでもよい。カプセル封入する場合、単一のそのような物品、または約10個まで、より好ましくは約4個以下の少数のそのような物品で1日量となるのに十分であることが好ましい。あるいは、液体剤形は、濃縮された飲用液の形でよい。
【0039】
経口投与に適する液体剤形は、特に治療効果の急速な発現が所望される場合では、対象に薬物を送達する重要な方法になりつつある。薬物のそのまま飲用できる液体製剤に代わるものとして、液体製剤をたとえば軟または硬ゼラチンカプセルにカプセル封入して、個別の剤形を得ることも知られている。
【0040】
飲用溶液にして投与される薬物は、消化管、たとえば口および食道において、胃または腸で担体製剤が分解した後にのみ吸収を受けられるようになるものよりも高度に吸収を受けられるものでよい。
【0041】
飲用の溶液や懸濁液などの液体剤形の利点は、多くの対象にとって、これらの剤形が嚥下しやすいことである。飲用液体剤形の別の利点は、用量の計量を継続的に変えられ、用量の柔軟性がかなり大きくなることである。飲み込みやすさや用量柔軟性という利益は、小児、子供、および高齢者にとって特に有利である。
【0042】
あるいは、本発明の組成物は、個別の単位用量物品の形、たとえば、実例としてはゼラチンおよび/またはHPMCなどのセルロース系ポリマーを含む壁を有し、各カプセルが、溶媒液中に所定の量の薬物を含む液体組成物を含有するカプセルの形で調製することができる。カプセル内の液体組成物は、壁が消化器の液体と接触して崩壊することによって放出される。カプセル壁崩壊の詳細な機序は重要ではないが、侵食、分解、溶解などの機序をこれに含めることができる。
【0043】
このような固体剤形では、本発明の化合物は通常、所望の投与経路にふさわしい1種または複数の医薬添加剤、たとえば、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混ぜ合わせ、次いで投与の利便をはかって打錠またはカプセル封入する。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合では、剤形は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マグネシウムまたはカルシウムの炭酸塩または炭酸水素塩などの緩衝剤も含んでよい。錠剤および丸剤は、さらに腸溶コーティングを施して調製してもよい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、薬物と少なくとも1種の医薬添加剤とを合わせるステップを含む任意の適切な薬学的方法によって調製することができる。
【0045】
一般に、本発明の液体剤形は、セレコキシブと溶媒液とを、少なくとも一部、好ましくは実質的に全部のセレコキシブを溶媒液に溶解または懸濁させるような方法で均一かつ十分に混合し、次いで、所望ならば、得られる溶液、懸濁液、または溶液/懸濁液を硬カプセルまたは軟カプセルにカプセル封入することによって調製する。
【0046】
一般に、本発明の固体剤形は、IV型結晶セレコキシブ粒子を単離し、IV型結晶セレコキシブ粒子と少なくとも1種の医薬添加剤とを十分に混合することによって調製する。
【0047】
当業者ならば、剤形を生成するために医薬添加剤と混ぜ合わせることのできるIV型結晶セレコキシブの量は、治療を受ける哺乳類宿主および特定の投与方式に応じて様々となることがわかるであろう。ある特定の用量単位を選択して、指定の1日量を実現するのに使用される所望の投与頻度に合わせることができる。たとえば、400mgの一定の投与量は、200mgの用量単位を1回、または100mgの用量単位を2回の1日2回の投与によって便宜をはかることができる。投与量は、対象の体重に対する剤形の質量の比、たとえば約1mg/kg体重〜約50mg/kg体重の間、約5mg/kg体重〜約45mg/kg体重の間、約10mg/kg体重〜約40mg/kg体重の間、約15mg/kg体重〜約35mg/kg体重の間、または約30mg/kg体重として表すこともできる。
【0048】
投与する組成物の量および状態または障害を治療するための投与計画は、対象の年齢、体重、性別、および医学的状態、状態または障害の性質および重症度、投与経路、投与頻度、ならびに選択された特定の薬物を含む様々な要素に応じて決まり、したがって多種多様となり得る。しかし、大抵は、1日1回または1日2回の投与の治療計画が所望の治療効果をもたらすと考えられる。
【0049】
本発明の一実施形態では、IV型結晶セレコキシブは、組成物中に存在するすべてのセレコキシブの総量の約0.25%〜約90%の量で存在する。本発明の別の実施形態では、IV型結晶セレコキシブは、約0.05グラム〜約2グラム、約0.1グラム〜約1.5グラム、0.15グラム〜約1グラム、約0.2グラム〜約.5グラム、または約0.3グラムの量で存在する。
【0050】
ある種の治療用途については、IV型結晶セレコキシブと、I型、II型、III型、および無定形セレコキシブからなる群から選択される少なくとも1種の他の固体形態のセレコキシブとをブレンドすることが望ましい。
【0051】
本発明の一実施形態では、組成物は、IV型結晶セレコキシブが検出可能な量で存在し、残りのセレコキシブがIII型セレコキシブを含む、IV型結晶セレコキシブとIII型セレコキシブのブレンドを含む。本発明の別の実施形態では、組成物は、IV型結晶セレコキシブのパーセントが、存在するセレコキシブの総量に対して、約25%、約50%、約75%、または約90%であり、残りの組成物がIII型セレコキシブを含む、IV型結晶セレコキシブとIII型セレコキシブのブレンドを含む。
【0052】
本発明の組成物は、IV型結晶セレコキシブを、第2の選択的COX−2阻害薬、たとえば、バルデコキシブ、パレコキシブ、ダレコキシブ(darecoxib)、またはロフェコキシブと組み合わせて含むものでよい。
【0053】
用語「ポリエチレングリコール」は、本明細書では「PEG」と略される。
【0054】
用語「HPMC」とは、本明細書ではヒドロキシプロピルメチルセルロースを意味する。
【0055】
用語「溶媒」とは、本明細書では、特定の薬物を溶解させ、または可溶化する液体媒体の構成成分すべてを含む。したがって、「溶媒」は、1種または複数の溶媒だけでなく、場合により共溶媒、界面活性剤、共界面活性剤、抗酸化剤、甘味剤、着香剤、着色剤などの追加の医薬添加剤も含む。
【0056】
用語「ポリビニルピロリドン」は、本明細書では「PVP」と略される。
【0057】
用語「医薬添加剤」とは、本明細書では、それ自体は治療薬でなく、対象に治療薬を送達するための担体または賦形剤として使用され、あるいはその取扱い、貯蔵、崩壊、分散、溶解、放出、もしくは感覚刺激特性を向上させ、または組成物の用量単位を経口投与に適するカプセルなどの個別の物品にするのを可能にしもしくは促進するために医薬組成物に加えられる任意の物質を意味する。医薬添加剤には、例示するものであり、限定するものでないが、溶媒、希釈剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、滑沢剤、滑剤、結晶化抑制剤、安定剤、抗酸化剤、不快な味または匂いを遮蔽するもしくは相殺するために加えられる物質、香味剤、色素、着香剤、保存剤を含めることができる。
【0058】
用語「AUC(0−t)」とは、本明細書では、時間0〜tの間の血漿薬物濃度時間曲線下面積を意味する。
【0059】
用語「Cmax」とは、本明細書では、血漿中で認められる最高薬物濃度を意味する。
【0060】
用語「tmax」または「Tmax」とは、本明細書では、最大薬物濃度の時間を意味する。
【0061】
用語「標準偏差」は、本明細書では「S.D.」と略される。
【0062】
用語「発現速度」とは、0から0.5時間までの血漿濃度時間曲線の勾配を意味する。
【0063】
表現「飲用液」は、本明細書では、液体形態で経口投与および嚥下され、一用量単位をそれから測定可能に取り分けできる、溶液や溶液/懸濁液などの、カプセルに入っていない実質的に均質な流動性のある塊を指すのに使用する。
【0064】
用語「実質的に均質な」とは、複数の構成成分を含む医薬組成物に関して、その構成成分が、個々の構成成分が個別の層として存在せず、組成物内で濃度勾配を形成しないように十分に混合されていることを意味する。
【0065】
(「IV型結晶セレコキシブ」と区別して)用語「セレコキシブ」の意味は、以下の実施例で使用するとき、この用語が使用される文脈に応じて変わる。たとえば、「セレコキシブ」が出発材料として示される場合では、そのセレコキシブはIV型結晶セレコキシブでなく、その代わりとして、たとえばWO95/15316またはWO96/37476で教示されている方法によって製造された形のセレコキシブである。
【0066】
用語「液体剤形」には、薬学的に許容できる乳濁液、溶液、懸濁液、溶液/懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。本発明の液体剤形は、個別の物品としてカプセル封入されたものでも、そうでないものでもよい。
【0067】
用語「固体剤形」には、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が含まれる。
【0068】
用語「粒径」とは、本明細書では、レーザー光散乱法、沈降場流動分画法、光子相関分光法、ディスク遠心分離などの当業界でよく知られている従来の粒径測定技術によって測定される粒径を指す。粒径の測定に使用することのできる技術の非限定的な一例は、Sympatec Particle Size Analyzerを用いる液体分散技術である。
【0069】
用語「DSC」とは、示差走査熱量測定を意味する。
【0070】
用語「HPLC」とは、高圧液体クロマトグラフィーを意味する。
【0071】
用語「IR」とは、赤外線を意味する。
【0072】
用語「msec」とは、ミリ秒を意味する。
【0073】
用語「PXRD」とは、X線粉末回折を意味する。
【0074】
用語「TGA」とは、熱重量分析を意味する。
【0075】
本発明の化合物は、単独で、または1種または複数の他の薬物と組み合わせて投与することができる。一般に、本発明の化合物は、1種または複数の薬学的に許容できる医薬添加剤と共に製剤として投与される。用語「医薬添加剤」は、本明細書では、本発明の化合物以外の任意の成分について述べるのに使用する。医薬添加剤の選択は、大部分は、特定の投与方式、医薬添加剤が溶解性および安定性に及ぼす影響、剤形の性質などの要素に応じて決まる。
【0076】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物およびその調製方法は、当業者には言うまでもない。そのような組成物およびその調製方法は、たとえば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(Mack Publishing Company、1995年)で見ることができる。
【0077】
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように飲み込むものでもよいし、あるいは化合物が口から直接血流に入る頬側投与または舌下投与を使用してもよい。
【0078】
経口投与に適する製剤には、錠剤、微粒子、液体、または粉末を含むカプセル剤、(液体充填型を含む)ロゼンジ、咀嚼剤、多粒子およびナノ粒子などの固体製剤、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム、膣坐剤、スプレー、ならびに液体製剤が含まれる。
【0079】
液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟もしくは硬カプセル中に充填剤として使用することができ、通常は、担体、たとえば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、もしくは適切な油と、1種または複数の乳化剤および/もしくは懸濁化剤とを含む。液体製剤は、たとえば小袋から出した固体を再形成して調製することもできる。
【0080】
本発明の化合物は、LiangおよびChen、Expert Opinion in Therapeutic Patents、第11巻(6)、981〜986ページ(2001年)に記載されているものなどの急速溶解、急速崩壊型剤形にして使用してもよい。
【0081】
錠剤剤形では、用量に応じて、剤形の1〜80wt%、より典型的な例では剤形の5〜60wt%を薬物が占めていてよい。薬物に加え、錠剤は一般に崩壊剤を含む。崩壊剤の例には、ナトリウムデンプングリコラート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが含まれる。一般に、崩壊剤は、剤形の1〜25wt%、好ましくは5〜20wt%を占めることになる。
【0082】
結合剤は、一般に錠剤製剤に粘着性の性質を付与するために使用される。適切な結合剤には、微結晶セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン、および第2リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有していてもよい。
【0083】
錠剤は、場合によりラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤も含んでよい。界面活性剤は、存在するとき、錠剤の0.2〜5wt%を占めていてよく、滑剤は、錠剤の0.2〜1wt%を占めていてよい。
【0084】
錠剤は、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤を含む。滑沢剤は、一般に錠剤の0.25〜10wt%、好ましくは0.5〜3wt%を占める。
【0085】
考えられる他の成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および矯味剤が挙げられる。
【0086】
好例となる錠剤は、約80%までの薬物、約10〜約90wt%の結合剤、約0〜約85wt%の希釈剤、約2〜約10wt%の崩壊剤、および約0.25〜約10wt%の滑沢剤を含む。
【0087】
錠剤ブレンドを直接またはローラーによって圧縮すると、錠剤を生成することができる。あるいは、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部分を、湿式、乾式、もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押出しにかけた後に打錠してもよい。最終製剤は、1つまたは複数の層を含むものでよく、コーティングされていても、されていなくてもよく、さらにはカプセル封入されていてもよい。
【0088】
錠剤の製剤については、H.LiebermanおよびL.Lachmanの「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、第1巻、(Marcel Dekker、米ニューヨーク、1980年)で論じられている。
【0089】
ヒトまたは獣医学用途向けの摂取可能な経口フィルムは、通常は水溶性、または水によって膨張する曲げやすい薄膜剤形であり、急速溶解型でも粘膜付着性でもよく、通常は、式Iの化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調整剤、ならびに溶媒を含む。製剤の一部の構成成分が複数の機能を果たしてもよい。
【0090】
フィルム形成ポリマーは、天然の多糖類、タンパク質、または合成の親水コロイドから選択されるものでよく、通常は範囲0.01〜99wt%、より典型的な例では範囲30〜80wt%で存在する。
【0091】
考えられる他の成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤および旨味調味料、保存剤、唾液腺刺激剤、冷却剤、共溶媒(油状物を含む)、緩和剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤、および矯味剤が挙げられる。
【0092】
本発明によるフィルムは、通常は、可剥性の裏当て支持体または紙の上にコートされた薄い水溶性フィルムを蒸発乾燥して調製する。これは、乾燥オーブンもしくは乾燥トンネル、通常は複合塗工乾燥機に入れて、または凍結乾燥もしくは真空乾燥によって行うことができる。
【0093】
経口投与用の固体製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0094】
本発明の目的に適する変更型放出製剤は、米国特許第6106864号に記載されている。高エネルギー分散液、浸透性粒子、被覆粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、Vermaら、Pharmaceutical Technology On−line、第25巻(2)、1〜14ページ(2001年)で見られる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用は、PCT公開第WO00/35298号に記載されている。
【0095】
本発明の化合物は、血流、筋肉、または内臓に直接に投与してもよい。非経口投与のための適切な手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、側脳室内、尿道内、胸骨内、脳内、筋肉内、皮下が含まれる。非経口投与用の適切なデバイスには、(微細針を含む)針注射器、無針注射器、および注入技術が含まれる。
【0096】
非経口製剤は、通常は、塩類、炭水化物、緩衝剤(好ましくはpH3〜9にする)などの医薬添加剤を含んでいてよい水溶液であるが、一部の適用例では、無菌の非水性溶液として、または発熱物質を含まない無菌水などの適切な媒体と共に使用する乾燥形態としてより適切に製剤することができる。
【0097】
たとえば凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業界でよく知られている標準の製薬技術を使用して容易に実現することができる。
【0098】
非経口溶液の調製で使用する式Iの化合物の溶解性は、溶解性改善剤を混ぜるなどの適切な製剤技術の使用によって増大させることができる。
【0099】
非経口投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の変更型放出をもたらす移植デポー剤として投与するための固体、半固体、または揺変性液体として製剤することができる。そのような製剤の例には、薬物−コーティングされたステントおよびdl−乳酸−グリコール酸コポリマー(PGLA)ミクロスフェアが含まれる。
【0100】
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち皮膚上にまたは経皮的に投与してもよい。この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散粉剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウェーハ、植込錠、スポンジ、繊維、絆創膏、およびマイクロエマルジョンが含まれる。リポソームを使用してもよい。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが含まれる。浸透性改善剤を組み込んでもよく、たとえば、FinninおよびMorgan、J Pharm Sci、第88巻(10)、955〜958ページ(1999年)を参照されたい。
【0101】
局所投与の他の手段には、電気穿孔法、イオン導入法、音波泳動法、超音波導入法、ならびに微細針または無針(たとえば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が含まれる。
【0102】
局所投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0103】
本発明の化合物は、通常は、乾燥粉末吸入器からで(単独、またはたとえばラクトースとの乾燥ブレンドにした混合物として、またはたとえばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合型成分粒子としての)乾燥粉末の形で、あるいは1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用し、または使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気水力学を使用して微細な霧を生み出すアトマイザー)、ネブライザーからエアロゾルスプレーとして、鼻腔内に、または吸入によって投与することもできる。鼻腔内の使用では、粉末は、生体接着剤、たとえばキトサンまたはシクロデキストリンを含んでよい。
【0104】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、たとえば、エタノール、エタノール水溶液、または活性物を分散させ、可溶化し、もしくはその放出を延長するのに適する別の薬剤、溶媒としての噴射剤、ならびにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤を含む、本発明の化合物の溶液または懸濁液を含む。
【0105】
乾燥粉末または懸濁液製剤中に使用する前に、製剤は、吸入による送達に適する大きさ(通常は5μm未満)に微粒子化する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動層ジェット粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、噴霧乾燥などの任意の適切な微粉砕法によって実現することができる。
【0106】
吸入器または注入器に入れて使用するためのカプセル(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作られたもの)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤、およびl−ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムなどの性能改質剤からなる粉末混合物を含むように製剤することができる。ラクトースは、無水でも一水和物でもよく、後者であることが好ましい。他の適切な医薬添加剤には、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。
【0107】
電気水力学を使用して微細な霧を生み出すアトマイザーに入れて使用するのに適する溶液製剤は、1回の動作あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含んでいてよく、動作体積は1〜100μLと様々でよい。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含んでよい。プロピレングリコールの代わりに使用することのできる別の溶媒には、グリセリンおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0108】
メントールやl−メントールなどの適切な香味剤、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの甘味剤を、吸入投与/鼻腔内投与される予定の本発明の製剤に加えてもよい。
【0109】
吸入投与/鼻腔内投与用の製剤は、たとえばPGLAを使用して、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0110】
本発明の化合物は、たとえば坐剤、膣坐剤、または浣腸の形で、直腸または膣に投与することができる。カカオ脂が伝統的な坐剤基剤であるが、様々な選択肢を適宜使用することができる。
【0111】
直腸/経膣投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0112】
本発明の化合物は、通常は、等張性のpH調整された無菌生理食塩水中の微粒子化された懸濁液または溶液の液滴の形で眼または耳に直接に投与してもよい。眼および耳への投与に適する他の製剤には、軟膏、生分解性(たとえば、吸収性のゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(たとえばケイ素樹脂)の植込錠、ウェーハ、レンズ、ならびにニオソームやリポソームなどの微粒子系またはベシクル系が含まれる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸などのポリマー、セルロース系ポリマー、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、たとえばゲランガムを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と共に混ぜることができる。このような製剤は、イオン導入法によって送達してもよい。
【0113】
眼/耳への投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することができる。変更型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、またはプログラム放出が含まれる。
【0114】
本発明の化合物は、上述の投与方式のいずれかでの使用に向けてその溶解性、溶解速度、矯味性、バイオアベイラビリティー、および/または安定性を向上させるために、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体やポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性の高分子実在物と混ぜ合わせることができる。
【0115】
たとえば、薬物−シクロデキストリン複合体は、一般にほとんどの剤形および投与経路に有用であることがわかっている。包接および非包接のどちらの複合体を使用してもよい。薬物との直接の複合体形成に代わるものとして、補助添加剤としての、すなわち、担体、希釈剤、または可溶化剤としてのシクロデキストリンを使用することができる。これらの目的に最も一般に使用されるものは、α、β、およびγシクロデキストリンであり、その例は、PCT公開第WO91/11172号、同第WO94/02518号、および同第WO98/55148号で見ることができる。
【0116】
たとえば、ある特定の疾患または状態を治療する目的では活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合もあるので、その少なくとも1種が本発明による化合物を含んでいる2種以上の医薬組成物を、組成物の共投与に適するキットの形で好都合に組み合わせてもよいことは本発明の範囲の範囲内である。
【0117】
そのようなキットは、その少なくとも1種が本発明による式Iの化合物を含んでいる2種以上の別個の医薬組成物と、容器、分割されたボトル、分割されたホイル製袋などの、前記組成物を別々に保持するための手段とを含む。そのようなキットの例は、錠剤、カプセル剤などの包装に使用される見慣れたブリスターパックである。
【0118】
そのようなキットは、異なる剤形、たとえば経口剤形と非経口剤形を投与する、別個の組成物を異なる投与間隔で投与する、または別個の組成物を互いに対して滴定するのに特に適している。服薬遵守を補助するために、キットは通常、投与の説明書を含み、いわゆるメモリーエイドを添えて提供される場合もある。
【0119】
ヒト患者への投与では、本発明の化合物の合計1日量は、通常は、当然投与方式に応じて約50〜約400mgの範囲にある。本発明の組成物の典型的な用量単位は、約10、20、25、37.5、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、または400mgのCOX−2阻害剤、実例としてはセレコキシブを含む。成人では、本発明の組成物の用量単位あたりの治療有効量のセレコキシブは、通常は約50mg〜約400mgである。用量単位あたりの特に好ましいセレコキシブの量は、約100mg〜約200mg、たとえば約100mgまたは約200mgである。合計1日量は、1回で、または数回に分けて投与することができ、医師の裁量で、本明細書で示す典型的な範囲から逸脱してもよい。
【0120】
これらの投与量は、体重が約60〜70kgである平均的なヒト対象に基づくものである。医師ならば、小児や高齢者などの、体重がこの範囲外にある対象のための用量を容易に決定することができる。
【0121】
疑義を避けるために、本明細書では、「治療」への言及は、治療的、姑息的、および予防的な治療への言及を含む。
【実施例】
【0122】
(実施例1)
IV型セレコキシブの調製および単離
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910USP15、Dow Chemical)およびポリビニルピロリドン(PVP)を攪拌しながら水に分散させて、約15%のHPMCおよび20%のPVPを含む均質な溶液を生成した。これらの溶液を、以下の表1に示すように水で希釈した。沈殿を生成するために、セレコキシブ粉末(10%〜30%、微粒子化されたもの、Pharmaciaで製造)およびポリソルベート80を含む予め製造されたPEG−400溶液を、ポリマー溶液に攪拌しながら加えた。セレコキシブ混合物を加えた後、既に沈殿させたセレコキシブ懸濁液にスクロースおよび他の医薬添加剤を加えた。PEG400NF、ポリソルベート80NF食品グレード、安息香酸ナトリウムNF、クエン酸USP、およびクエン酸ナトリウムUSPは、Brenntag Great Lakesにより供給されたものであった。PVP K90はISP Technologyから、スクロースNFはIndiana Sugarsから購入した。典型となる処方を、表1で一覧にした。懸濁液をさらに10〜30分間継続的に攪拌して、可溶性の医薬添加剤を溶解させた。必要ならばホモジナイズを3〜5分間適用した。
【0123】
【表1】

【0124】
次いで、沈殿した結晶を懸濁液から分離し、懸濁液を水で希釈して洗浄した。Millipore真空濾過装置および0.8μmのMilliporeAAフィルターを使用して、希釈したサンプルを濾過した。次いで粒子を室温の減圧下で24時間乾燥させた後、無水硫酸カルシウムと共に少なくとも72時間デシケーターに入れて、結晶を十分に乾燥させた。濾過前の湿ったサンプルを分析し、それをPXRDによる単離後の濾過し乾燥させた固体と対照することによって、単離方法の完全性を確かめた。これらの実験では、単離方法を終えた後に結晶形の変化がなかったことが示された。
【0125】
(実施例2)
溶解性および粒径
上清から粒子を分離する遠心分離を使用して、実施例1に従って調製した懸濁液の水相の溶解度を測定した。BeckmanJ2−21遠心機を使用し、液体上清を濾過し、分析前に3:1の比のメタノールおよび水で希釈した。Hewlett Packard1090HPLCによるHPLC分析を使用して、上清中のセレコキシブ濃度を分析した。定組成法およびpH3.0移動相を使用して254nmでセレコキシブを検出した。
【0126】
これらのサンプルの粒径測定は、単一粒子光学検知法(SPOS)を使用して行った。約50mgの懸濁液を1.5mLの遠心管に計り入れた後、最終薬物濃度を0.20%とするのに十分な2%PVP−K30/0.15%ラウリル硫酸ナトリウム希釈液を計り入れた。得られる懸濁液をボルテックス混合によって激しく攪拌し、懸濁液を含む管のその部分を、5mmの探触子先端部の下に保持し、その両方を水に浸すことによって、探触子超音波処理器で30秒間超音波処理した。超音波処理器(Sonifier350、Branson、米コネティカット州Danbury)の出力レベル設定を「5」に調節し、デューティサイクルを40%とした。追加のボルテックスステップを実施し、懸濁液を15分間放置した後、ボルテックス−超音波処理−ボルテックスの過程を一度繰り返した。ステップモーター制御されたポンプを装着した散乱−掩蔽感知器(モデルLE400−0.5、Particle Sizing Systems、米カリフォルニア州サンタバーバラ)を、大きさの特徴付けに使用した。層流フード中に置いた攪拌した300mL容ビーカーをあふれるまで満たし、その後継続的に0.2μmの濾過したミリQ水でフラッシュした。適切な間隔をおいた後、流れを止め、水の体積を270〜280mLの間の値に安定化させた。60mL/分で1分間、感知器に水を通り抜けさせ、合計粒子数が50未満であると測定され、2μmより大きい粒子はなかった。攪拌したビーカーに、9μLの一定分量の0.2%懸濁液を加え、分散させた後、感知器に別の60mLを通り抜けさせた。
【0127】
表2に示すように、沈殿させた懸濁液におけるセレコキシブの平均的な粒径は、対照懸濁液の約半分であった。セレコキシブの水への溶解度は5〜10μg/mlであるが、懸濁液への溶解度は、ポリソルベート80、PEG400、およびPVPの存在下で有意に増大した。HPMCなしでのセレコキシブの懸濁液への溶解度は約600μg/mlであり、HPMC濃度が増大すると低下した。
【0128】
表2に示すように、5%のHPMCおよび1%のポリソルベート80を含む懸濁液(ロットCおよびロットD)から分離した固体は、DSC比によって表されるIV型のレベルが、より低い濃度のHPMCおよびポリソルベート80を含む懸濁液(ロットE)または界面活性剤なしの懸濁液(ロットF)から分離したものよりもはるかに高かった。
【0129】
(実施例3)
溶解
光ファイバー回転円板溶解装置(IKA−WerkeのEurostar Power Control Visc;Analytical Instrument Services Inc.のModel D1000 CE UV Light Source、Ocean Optics PC1000 UV/Vis分光計を用いる)を試験に使用した。Carver Laboratory Press(Fred S Carver Hydraulic Equipment Inc.)を使用し、サンプル表面積を0.178cmとし、多孔度を最小限に抑えてペレットを調製した。溶解媒質は、イソプロピルアルコールの50%水溶液150mlとした。回転速度は300RPMとし、温度は25℃に制御した。較正は、0.027mg/mlのセレコキシブの媒質溶液中に探触子を入れ、260nmで吸光度を測定することによって行った。約20mgの固体サンプルをペレットプレス装置に入れ、35000psiより強い圧力で1分間プレスして、ゼロ多孔度の成形体になるように万全を期した。次いでペレットを媒質に懸濁させ、300RPMで回転させた。20分間かけて約200のデータポイントを収集し、プロットおよび計算に備えた。
【0130】
図12は、回転円板溶解実験の結果を示す。IV型のセレコキシブはIII型よりも安定性がなく、したがってはるかに速い速度で溶解することが明らかである。データは、IV型の可溶性がIII型の約2〜3倍であることを示している。
【0131】
(実施例4)
エネルギー分散型X線分光法を用いる走査型電子顕微鏡法(SEM−EDS)
EDAXエネルギー分散型X線分光計を備えたPhilips XL30 ESEMによって、Everhart−Thornley二次電子検出器を使用して、高真空方式で顕微鏡像を収集した。顕微鏡像は、スポットサイズを3.0、傾きを0°として10kVで生成した。EDSスペクトルは、スポットを4.0、傾きを0°として20kVで生成した。PelcoSC−6スパッタコーターを使用して、サンプルを金/パラジウムでコートした。
【0132】
ロットBおよびロットDの沈殿の偏光顕微鏡検査では、両方が明らかに均質な結晶性の材料であることが明らかになった。交差した極線での複屈折の出現によって結晶化度を確かめたが、ロットBでは粒子はしばしば伸長され、消光角はほぼ45°であり、ロットDの粒子は通常、完全な吸光を示さず、凝集/複数の結晶中心が示唆された。HPMCの著しい含有量または他の無定形の構造は明らかにならなかったが、両方のロットが、ラス状または針状の別個の結晶からなる小さい集団を含んでいた。両方のロットの粒径はかなり小さく、一般に<10μmであり、これが光学的性質の測定を難しくしていた。ロットBでは、屈折率は、nα約1.56、nβ約1.60、およびnγ約1.66と概算された。SEMを使用して粒子形態をさらに調べると、サンプルが大部分は塊状の積み重なったプレートおよびラスからなっていたことが明らかになった。ロットBおよびバルクセレコキシブ(III型)のSEM顕微鏡写真を図2Aおよび2Bに示す。ロットBの(Z>4についての)定性的なSEM−EDS元素プロフィールでは、セレコキシブに対して想定されるとおり、炭素、酸素、窒素、フッ素、および硫黄が明らかになり、図3に示すように、他の元素は化学量論的なレベルでは検出されなかった。
【0133】
(実施例5)
赤外分光法(IR)およびホットステージ顕微鏡観察
赤外スペクトルは、Thermo Nicolet Nexus670 FTIR分光計をContinuum顕微鏡アクセサリーと共に使用して収集した。サンプルを塩化ナトリウムプレート上に平板化した。スペクトルは、4cm−1のスペクトル分解能、4000〜650cm−1のスペクトル範囲で、MCT検出器を使用して収集した。
【0134】
ロットBおよびDの赤外スペクトルは、図7に示すように互いに類似しており、III型セレコキシブの基準スペクトルと同じにならなかった。III型の基準スペクトルは、3342および3236cm−1でピークを示すが、これはスルホンアミドN−H基の対称および非対称の伸びのためであるとされる。沈殿したセレコキシブサンプルもこれらの2箇所のピークを示し、若干のIII型の存在が示唆されるが、III型セレコキシブのスペクトルで認められなかった3295および3213cm−1でのピークの出現をさらに示す(後者のピークは、沈殿スペクトルからIII型の寄与を差し引いた後により明白となる)。また、多型の差異では典型的であるように、III型の基準スペクトルと比較して、いくつかのピークシフトおよびピーク比率差が沈殿スペクトルの指紋領域のいたるところに存在する。これらの差は、図8に示すように、析出時に存在する他のいずれかの化合物のためであるとすることはできない。セレコキシブI型およびII型に利用できる基準スペクトルはないものの、沈殿したセレコキシブサンプルは、公開されているI型スルホンアミドの3256および3356cm−1にあるピーク位置と同じにならなかった。セレコキシブII型は、III型との混合物にして作るしかなかったので、公開されているII/III型混合物のスペクトルは、III型と同じスルホンアミドN−Hパターンを示し、したがって3295および3213cm−1にピークはない。すなわち、ロットBおよびDの赤外スペクトルは、以前から認められているセレコキシブ結晶形と明確に区別できる。20分間145℃に保ったロットBのサンプルでも赤外スペクトルの生成を行った。ホットステージ試験では、この温度条件がより融点の高い型への移行を引き起こしたことが示された。得られるスペクトルは、図9に示すように、III型セレコキシブにそっくりなものであった。すなわち、ホットステージ実験で認められた移行は、III型セレコキシブの創成である。
【0135】
ホットステージ顕微鏡観察では、条件によって様々な熱的な挙動が認められた。実験はしばしば、サンプルをシリコーン油に浸してコントラストを向上させて実施され、気体バブルの生成によって脱溶媒和を示す。シリコーン油中で実施したロットBまたはロットDのサンプルでは、165℃までガス発生は認められなかった。シリコーン油中で、両方のサンプルは、90〜100℃から始まるラス状結晶への漸進的な移行を経て、145〜150℃までに完全に変換された。既知のセレコキシブ型に類似した、新たに生成した結晶は、160〜162℃で融解した。用意した実験のビデオを逆戻りして見ると、両方のロットのオンセット時により融点の高い型の小さい集団が存在し、それが、偏光顕微鏡検査の項に記載の、観察されたラス/針形態であったことが明らかになった。空気中で実施したホットステージ実験でも、延長したランプ時間(最初は50℃、10℃/分の加熱プログラム)で、160〜162℃付近で融解するラスへの移行が明らかになった。シリコーン油実験との差は認めらなかった。しかし、急速に138℃に加熱してから10℃/分で上昇させたとき、材料の大部分は移行せず、その代わりとして148〜150℃で融解し、次いで融解相の(全部でなく)一部がラスに再結晶化し、それが160〜162℃で融解した。ホットステージ実験からの結論は、サンプルがセレコキシブの水和物または溶媒和物になるようには思われないこと、材料は148〜150℃で融解し、より融点の高い型に変わること、ならびに少量のより融点の高い型が、分析開始時にサンプル中に存在していたことである。
【0136】
(実施例6)
ラマン分光法
ラマンスペクトルは、20%出力で532nmのレーザー、25μmのピンホール分光器開口部、および672本/mmの格子ブレーズを使用して、6〜10cm−1のスペクトル分解能を得ながら、Thermo Nicolet Almega分散ラマン顕微鏡を用いて収集した。10×対物レンズを使用してサンプルの広い面積を分析し、100倍対物レンズを使用して個々の結晶を分析した。
【0137】
ロットBおよびロットDの両方のサンプルが、III型セレコキシブに相当しない等価なスペクトルを生じた。沈殿のスペクトルは、正確な写しではないが、いくぶん無定形セレコキシブの基準スペクトルと同様であった。ラマンスペクトルを図10に示す。利用可能な基準サンプルまたはセレコキシブI型およびII型のスペクトルはなかったが、セレコキシブII型は、沈殿したサンプル中には存在しなかった、712cm−1での特徴的なピークを有することが報告されている。さらに、より高い拡大率(1μmの空間分解能)を使用して、ロットB中のいくつかの単一のラス状結晶を評価し、それによってサンプル中の若干のIII型セレコキシブ結晶の存在が確認された(図11)。
【0138】
(実施例7)
示差走査熱量測定(DSC)
分離した結晶約1mgを受皿に秤量し、次いで受皿を対応するふたで密封して、試験サンプルを調製した。サンプルの重量を記録し、融解が起こるときに放出される1グラムあたりのエネルギーの算出に使用するために、データ収集ソフトウェアに入力した。TA Instrumentsによって供給されるDSC2920 Differential Scanning Calorimeterでデータを収集した。データの収集および分析に使用したソフトウェアは、データ収集用のTA Instrument Control softwareおよびデータ解析用のTA Universal Analysisであった。実験条件には、25℃でサンプルを釣り合わせ、毎分10℃ずつ180.0℃まで上昇させることを含めた。
【0139】
同じ2つのロットについての示差走査熱量測定の結果を図4に示す。これらのロットは、それぞれ148℃および145℃で融解物の発生を示した。平らな基線は、最初の融解の前に相転移または過剰な溶媒含有量は存在しなかったことを示唆していた。(約160℃での)III型の融解も、これらのサンプルで認められた。PXRD分析では、ロットAが約30%のIII型を含み、ロットBが約5%のIII型を含んでいたことが示唆された。III型は、IV型融解物から結晶化するので、DSCでは差異は明白でない。処方を比較する試みでは、IV型の融解によるIII型に対するエネルギー損失を決定するために、DSC比を算出した。この比は、単に、走査の合計ピーク面積に対するより低い融解ピークの面積とした。この比が1に近いほど、その処方は、存在するIV型が、より低い比の処方よりも多いと想定された。この比は、ロットAには、ロットBと比べてより多くのIV型が存在していたことを示した(表2を参照されたい)。
【0140】
【表2】

【0141】
(実施例8)
粉末X線回折(PXRD)
粉末X線回折データは、ScintagDMS/NT(商標)ソフトウェアのもとで作動するScintag Advanced Diffraction Systemを使用して収集した。このシステムは、ペルチェ冷却固体検出器および45kVおよび40mAに保った銅X線源を使用して、1.5406ÅでCuKα1放射を得るものである。ビーム開口部は、それぞれ2および4mmのチューブダイバージェンスおよび散乱防止スリットを使用して制御し、検出器の散乱防止スリットおよびレシービングスリットは、それぞれ0.5および0.3mmに設定した。データは、0.03°/点の走査ステップおよび1秒/点の積分時間を使用して、2θが2°〜35°であるところで収集した。サンプルは、Scintag円形トップローディング式ステンレス鋼サンプルカップ(部品番号1ZEO−20−0120−01)を使用して調製し、小さいサンプル体積に便宜をはかるために直径12mmのアルミニウム挿入物を装着した。
【0142】
図5は、ロットBの沈殿とセレコキシブの3種の既知の結晶形の比較を、PXRD法を使用して示すものである。沈殿した材料の粉末パターンは、これら既知の結晶形のどれとも一致しなかった。III型セレコキシブは、サンプルの約5%として存在していた。若干の医薬添加剤によって粉末パターン中に不明な反射が引き起こされなかったことを示すために、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、およびスクロースのPXRDパターンも収集した。これらの結果(非表示)から、独特のPXRDパターンは、懸濁液中の既知の医薬添加剤のどれとも一致しなかったことが実証された。このことは、材料を分析して、極めて高い効力を有していたことを考えると、驚くべきことではなかった。
【0143】
(実施例9)
イヌにおけるバイオアベイラビリティー試験
非無作為化クロスオーバー試験において、IV型セレコキシブのバイオアベイラビリティーを6匹のオスのビーグル犬で調べた。ターゲット用量は、すべての製剤について200mgのセレコキシブとした。カプセル製剤は経口的に服用させ、懸濁液製剤(ロットB、実施例1、調製してから2カ月後に投与)は胃挿管法によって投与した。対照懸濁液は、キサンタンガム、コロイド状二酸化ケイ素、スクロース、ポリソルベート80、安息香酸ナトリウム、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムを含む水性分散液中にバルク薬物粉末を分散させて調製した。すべての製剤を投薬した後、胃に10mLの水を送達するのに十分な量の水を胃挿管法によって投与した。処置の間に少なくとも1週間の休薬期間を与えた。服用前、投薬してから0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、5、および8時間後に、EDTAカリウムを抗凝固剤として使用して、個々の動物から頸静脈静脈穿刺によって一連の血液サンプル(約2ml)を収集した。サンプルを遠心分離した後血漿を収集し、血漿1部とアセトニトリル2部とを混合することによるアセトニトリル沈殿によってそのままポリプロピレンLCバイアル中で抽出した。バイアルを遠心分離にかけ、分析に向けて、上清をLC/MS/MSプラットフォームに直接に注入した。
【0144】
イヌ血漿中のセレコキシブの定量は、アセトニトリル沈殿によってタンパク質を除去した後、質量分析による検出と共に液体クロマトグラフィーによって実施した。この方法の典型的な定量範囲は、10〜10,000ng/mLのセレコキシブであった。
【0145】
クロマトグラフィーは、Perkin−Elmer Series200クロマトグラフィーシステムを使用し、2.1×100mm、5μmのWaters Xterra(登録商標)RP18カラムにサンプル上清(10mcL)を注入することによって、50℃の温度かつ流速0.5ml/分で、初期移動相を5mMのギ酸アンモニウム水溶液として実施した。(初期移動相から5mMのアセトニトリル中ギ酸アンモニウムへの)1分間の線形勾配をサンプル注入時に開始した後、アセトニトリルw/5mMギ酸アンモニウムで1.5分間維持した。その後カラムを初期移動相で4分間かけて平衡化した。合計LC流出液を、サンプルを注入してから3.5分間放置し、次いでSciexAPI3000トリプル四極子質量分析計に2分間かけて導入した。電離は、大気圧化学イオン化(APCI)を陰イオン方式で使用して実現した。m/z380(登録商標)316からの移行を使用して分析物をモニターした。セレコキシブの定量化は、分析物の内標準に対するピーク面積比を算出し、その比を、1/x(xは標準サンプルの濃度である)の加重をかける二次回帰分析を使用して検量線と比較することによって実現した。
【0146】
血漿時間濃度プロフィールは、2区画薬物動態モデルを用い、WinNonLin Professionalソフトウェア(ver3.1)を使用して分析した。
【0147】
得られる薬物動態プロフィールおよびパラメータを図1および表3に示す。驚いたことに、沈殿させた懸濁液(ロットB、実施例1)からのセレコキシブの吸収は、市販のカプセル剤およびバルク薬物粉末を水溶液に分散させて調製した対照懸濁液(対照懸濁液)からの吸収よりはるかに急速であった。これら3種の製剤から算出されたTmaxの値はほとんど同一であったが、沈殿させた懸濁液からの0.5時間での血漿中の薬物濃度は、カプセル剤および対照懸濁液からの薬物濃度のそれぞれ7.5倍および4.2倍であり、沈殿させた懸濁液の急速なオンセットの可能性が示唆された。沈殿させた懸濁液は、試験した他の製剤の少なくとも4倍優れたバイオアベイラビリティーも示した。
【0148】
【表3】

【0149】
(実施例10)
イソプロパノールスラリー実験
IV型の熱力学的な安定性を検証するために、25℃スラリー実験を完了した。IV型とおよそ同等の量のIII型セレコキシブを、セレコキシブのイソプロパノール飽和溶液に入れて約30mg/mLでスラリーにすることによって、小量のサンプルを生成した。一晩かけてスラリーにした後の、懸濁した粒子の粉末パターンを図6に示す。スラリー転換試験では、III型に関してIV型が準安定性であり、これらの条件下、周囲温度で比較的急速にIII型のセレコキシブに変わったことが明白に示された。
【0150】
本明細書の実施例は、前述の実施例で使用したものの代わりに、一般的または具体的に記載した本発明の反応物および/または操作条件を用いて実施することができる。
【0151】
上記のことを考慮すると、本発明のいくつかの目的が実現されることがわかる。上記の本発明の方法、組合せ、および組成物には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができるはずであるので、上の記述に含まれるすべての事項は、限定する意味でなく例示的であると解釈されるものとする。本出願で言及するすべての文書は、詳細に完全に記載されているかのごとく、特に参照により援用される。
【0152】
本発明またはその好ましい実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、その要素の1つまたは複数が存在することを意味するものとする。用語「comprising」、「including」、および「having」は、非限定的であり、挙げられた要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】調製してから2カ月後にイヌに経口投薬した後のIV型懸濁液(ロットB)(上部)、セレコキシブ懸濁液(中央)、および市販のカプセル剤(下部)の薬物動態プロフィールを示すグラフである。
【図2A】III型セレコキシブのSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図2B】ロットB(IV型)セレコキシブのSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3】ロットBの(Z>4についての)定性的なSEM−EDS元素プロフィールを示すグラフである。
【図4】(上部から下部へ)III型、ロットA、およびロットBセレコキシブのDSC温度記録を示すグラフである。
【図5】(上部から下部へ)ロットBセレコキシブ、I型セレコキシブ、II型セレコキシブ、およびIII型セレコキシブのPXRD比較を示すグラフである。
【図6】(上部から下部へ)III型セレコキシブ、実施例11のイソプロパノールスラリー実験後のロットBセレコキシブ、およびイソプロパノールスラリー実験前のロットBセレコキシブのPXRDパターンを示すグラフである。
【図7】(上部から下部へ)ロットD、ロットB、およびIII型セレコキシブのIRスペクトルを示すグラフである。
【図8】(上部から下部へ)ロットBセレコキシブ、HPMC、PVP、ポリソルベート80、およびPEG400のIRスペクトルを示すグラフである。
【図9】III型セレコキシブ、145℃で20分間加熱後のロットBセレコキシブ、および加熱なしのロットBのIRスペクトルを示すグラフである。
【図10】無定形セレコキシブ、ロットBセレコキシブ、ロットD、およびIII型セレコキシブのラマンスペクトルを示すグラフである。
【図11】(上部から下部へ)III型セレコキシブ、ロットBから回収した単一のラス状III型結晶、およびロットBからのIV型結晶のラマンスペクトルを示すグラフである。
【図12】IV型(上部の線)およびIII型(下部の2本の線)セレコキシブの回転円板溶解から得られたデータのプロットを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θが4.46、13.13、18.29、20.21、21.83、および26.24度からなる群から選択される少なくとも1箇所のピークを含むX線粉末回折パターンを有するセレコキシブの結晶形。
【請求項2】
融点が約144℃〜約149℃の範囲にあるセレコキシブの結晶形。
【請求項3】
約3342、3295、および3213cm−1のところに少なくとも1箇所の吸収バンドを含む赤外吸収バンドプロフィールを有するセレコキシブの結晶形。
【請求項4】
約3342、3295、および3213cm−1のところに少なくとも1箇所の吸収バンドを含む赤外吸収バンドプロフィールと、2θが約4.46、13.13、18.29、20.21、21.83、および26.24度であるところにある少なくとも1箇所のピークを含むX線粉末回折パターンとを有するセレコキシブの結晶形。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のセレコキシブの結晶形の製造方法であって、
セレコキシブを溶媒に溶解させて、セレコキシブ溶液を生成すること、
前記セレコキシブ溶液を水溶液と接触させて、制御された沈殿混合物を生成すること、および
制御された沈殿混合物からセレコキシブの前記結晶形を分離すること
を含む方法。
【請求項6】
前記溶媒がポリエチレングリコールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水溶液が、HPMC、PVP、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
セレコキシブと1種または複数の薬学的に許容できる医薬添加剤とを含む医薬組成物であって、検出可能な量のセレコキシブが、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載のセレコキシブの結晶形として存在する医薬組成物。
【請求項9】
セレコキシブの少なくとも約50%が、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載のセレコキシブの結晶形として存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
セレコキシブの少なくとも約90%が、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載のセレコキシブの結晶形として存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物中に存在するセレコキシブが、実質的に請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載のセレコキシブの結晶形である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
組成物中に存在するセレコキシブの量が約0.1mg〜約1000mgの間である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
組成物中に存在するセレコキシブの量が約0.1mg〜約500mgの間である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項14】
COX−2が関与する状態を治療または予防する方法であって、そのような状態または障害を有し、またはそれにかかりやすい対象に、治療または予防有効量の請求項8に記載の組成物を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−528568(P2008−528568A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552753(P2007−552753)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000190
【国際公開番号】WO2006/079923
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】