説明

IZM−3結晶固体およびその調製方法

本発明は、IZM−3と呼ばれ、以下に示されるようなX線回折図を有する結晶固体に関する。該固体は、無水物ベースで酸化物のモルに関して表され、一般式:aSiO:bYO:cR:dF(式中、Yはケイ素とは異なる少なくとも1種の四価元素であり、Rは少なくとも1種の窒素含有有機種であり、Fはフッ素であり、a、b、cおよびdは、それぞれ、SiO、YO、RおよびFのモル数であり、aは、0.1〜1の範囲であり、bは0〜0.9の範囲であり、cは0.01〜0.5の範囲であり、dは0〜0.5の範囲である)によって規定される化学組成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以降IZM−3と称される新規なミクロ孔結晶固体および前記固体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトまたはシリコアルミノリン酸塩(silicoaluminophosphate)などのミクロ孔結晶質材料は、石油工業において触媒、触媒担体、吸着剤または分離剤として幅広く使用されている固体である。多くのミクロ孔結晶構造が発見されているが、改質および石油化学工業は、ガスの精製もしくは分離または炭素質もしくは他の化学種の転化などの適用のために特別な特性を有する新規な結晶構造を探し続けている。
【0003】
ゼオライトは、結晶構造のなかで主要な位置を占めている。過去40年間にわたって合成されたゼオライトのうち、一定数の固体によって、吸着および触媒の分野は著しく進歩し得た。挙げることができるこれらの例は、Yゼオライト(特許文献1)およびZSM−5ゼオライト(特許文献2)である。毎年合成される新規なモレキュラーシーブ(ゼオライトを含む)の数は増え続けている。発見された様々なモレキュラーシーブのより完全な説明は、非特許文献1を参照することにより得られ得る。下記を挙げることができる:NU−87ゼオライト(特許文献3)、MCM−22ゼオライト(特許文献4)もしくは構造型CLOを有するガロリン酸塩((クロベライト(cloverite))(特許文献5)または下記のゼオライト:ITQ−12(特許文献6)、ITQ−13(特許文献7)、CIT−5(特許文献8)、ITQ−21(特許文献9)、ITQ−22(非特許文献2)、SSZ−53(非特許文献3)、SSZ−59(非特許文献3)、SSZ−58(非特許文献4)およびUZM−5(非特許文献5)。
【0004】
上記に挙げられたゼオライトのうちの数種は、流動化剤(mobilizing agent)が通常の水酸化物イオンではなく、フルオリドイオンであるフッ化物媒体中で、Flanigenら(特許文献10)よって初めて記載され、次いで、ジェイ−エル・ガス(J-L Guth)ら(非特許文献6)により開発された方法を用いて合成された。合成媒体のpHは典型的には、中性に近い。そのようなフッ素化反応系の利点の1つは、従来のOH媒体中で得られたゼオライトよりも、欠陥の少ない純粋なシリカ系ゼオライトを得ることができることである(非特許文献7)。フッ素化反応媒体の使用に関する他の決定的な利点は、ITQ−7、ITQ−12およびITQ−13ゼオライトの場合のように、4個の四面体を伴う二重環を含むシリカ骨格(D4R)に関して新規なトポロジーを得ることができることである。さらに、合成媒体中のゲルマニウムおよびケイ素の源の併用はまた、ITQ−17およびITQ−21ゼオライト(非特許文献8および9)またはIM−12(非特許文献10)についての場合のように、従来の非フッ素化塩基性媒体およびフッ素化媒体の両方において、当該タイプの新規な骨格、すなわち、D4R単位を含む骨格が生じさせられることを可能にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3130007号明細書
【特許文献2】米国特許第3702886号明細書
【特許文献3】米国特許第5178748号明細書
【特許文献4】米国特許第4954325号明細書
【特許文献5】米国特許第5420279号明細書
【特許文献6】米国特許第6471939号明細書
【特許文献7】米国特許第6471941号明細書
【特許文献8】米国特許第6043179号明細書
【特許文献9】国際公開第02/092511パンフレット
【特許文献10】米国特許第4073865号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】シーエッチ・バエルロチャー(Ch. Baerlocher)、ダブリュー・エム・マイエル(W M Meier)およびディ・エッチ・オルソン(D H Olson)著、「アトラス・オブ・ゼオライト・フレームワーク・タイプス(Atlas of Zeolite Framework Types)」第5改訂版、エルゼビア(Elsevier)、2001年
【非特許文献2】コルマ,エイ(Corma,A)ら著、「ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials)」、2003年、第2号、p.493
【非特許文献3】バートン・エー(Burton A)ら著、「Chemistry:A Eur.Journal」、2003年、第9巻、p.5737
【非特許文献4】バートン,エイ(Burton A)ら著、「J. Am. Chem. Soc.」、2003年、第125巻、p.1633
【非特許文献5】ブラックウェル,シー・エス(Blachwell C S)ら著、「Angew. Chem. Int. Ed.」、2003年、第42巻、p.1737
【非特許文献6】Proc. Int. Zeol. Conf.. Tokyo、1986年、p121
【非特許文献7】ジェイ・エム・チゾウ(J M Chezeau)ら著、「ゼオライツ(Zeolites)」、1991年、第11巻、p.598
【非特許文献8】エイ・コルマ(A Corma)ら著、「Chem. Commun.」、2001年、第16巻、p.1486
【非特許文献9】エイ・コルマ(A Corma)ら著、「Chem. Commun.」、2003年、第9巻、p.1050
【非特許文献10】ジェイ−エル・パイヨー(J-L Paillaud)ら著、サイエンス(Science)、2004年、第304巻、p.990
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の説明)
本発明は、新規な結晶構造を有する、IZM−3結晶固体と称される新規な結晶固体に関する。前記固体は、無水ベースとして酸化物のモルに関して次の一般式により表される化学組成を有する:aSiO:bYO:cR:dF(式中、Yは、少なくとも1種の四価元素(ケイ素以外)を表し、Rは、少なくとも1種の窒素含有有機種を表し、Fは、フッ素であり、a、b、cおよびdはそれぞれ、SiO、YO、RおよびFのモル数を表し、aは、0.1〜1の範囲であり、bは、0〜0.9の範囲であり、cは、0.01〜0.5の範囲であり、dは、0〜0.5の範囲である。
【0008】
本発明のIZM−3結晶固体は、表1に記載のピークを少なくとも包含するX線回折図を有する。この新規なIZM−3結晶固体は、新規な結晶構造を有する。
【0009】
この回折図は、放射線結晶学的分析により、回折計を使用し、従来の粉末技術を採用し、銅のKα1ピーク(λ=1.5406Å)を用いて得られる。角度2θにより表される回折ピークの位置から、ブラッグ(Bragg)の関係式を使用して、試料の特性格子面間隔dhklが算出される。dhklの測定における誤差推定Δ(dhkl)は、ブラッグの関係式により、2θの測定における絶対誤差Δ(2θ)の関数として算出される。±0.02°の絶対誤差Δ(2θ)が通常は、許容され得る。dhklの各値における相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さから測定される。本発明のIZM−3結晶固体のX線回折図は、表1に示されているdhklの値にピークを少なくとも含む。dhklの列には、格子面間隔の平均値がオングストローム(Å)で示されている。これらの値はそれぞれ、±0.6Å〜±0.01Åの測定誤差Δ(dhkl)により補足されるべきである。
【0010】
【表1】

【0011】
(表中、Vs=非常に強い;S=強い;M=中程度;Mw=中程度に弱い;W=弱い;Vw=非常に弱い)
相対強度Irelは、X線回折図における最も強いピークに100の値が与えられる相対強度スケールに対して示されている:Vw<15;15≦W<30;30≦Mw<50;50≦M<65;65≦S<85;Vs≧85。
【0012】
本発明のIZM−3結晶固体は、図1に示されているX線回折図により特徴づけられる新規な基本結晶構造またはトポロジーを有する。図1は、合成されたままの形態のIZM−3結晶固体を使用して確立された。
【0013】
前記IZM−3固体は、無水物ベースとして次の一般式により定義される酸化物のモルに関して表される化学組成を有する:aSiO:bYO:cR:dF(式中、Yは、少なくとも1種のケイ素以外の四価の元素を表し、Rは、少なくとも1種の窒素含有有機種を表し、Fは、フッ素である)。上記で示されている前記式中、aは、SiOのモル数を表し、0.1〜1の範囲、好ましくは0.5〜1の範囲、非常に好ましくは0.8〜0.99の範囲であり、bは、YOのモル数を表し、0〜0.9の範囲、好ましくは0〜0.5の範囲、非常に好ましくは0.01〜0.2の範囲であり、cは、Rのモル数を表し、0.01〜0.5の範囲、好ましくは0.01〜0.2の範囲、非常に好ましくは0.02〜0.05の範囲であり、dは、Fのモル数を表し、0〜0.5の範囲、好ましくは0〜0.2の範囲、非常に好ましくは0.01〜0.05の範囲である。
【0014】
本発明では、Yは好ましくは、ゲルマニウム、チタン、スズおよびこれら四価の元素のうちの少なくとも2種の混合物から選択され;より好ましくは、Yはゲルマニウムである。Rは、少なくとも1個の第4級窒素原子を含む窒素含有有機種であり;好ましくは、Rは、2個の第4級窒素原子を含み、より好ましくは、Rは、下記にその展開式が示されている1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンである。Fは、フッ素である。
【0015】
【化1】

【0016】
ケイ素が元素Yとの混合物として存在する場合、本発明のIZM−3結晶固体は、その合成されたままの形態では、表1に記載のX線回折図に一致するX線回折図を有する結晶メタロケイ酸塩(metallosilicate)である。Yがゲルマニウムである場合、本発明のIZM−3結晶固体は、その合成されたままの形態では、表1に記載のX線回折図に一致するX線回折図を有する結晶ゲルマノケイ酸塩(germanosilicate)である。本発明のIZM−3結晶固体の組成に元素Yが存在しない場合、これは、合成されたままの形態では、表1に記載のX線回折図に一致するX線回折図を有する結晶ケイ酸塩である完全なシリカ固体である。
【0017】
より一般的には、合成されたままの形態の前記IZM−3結晶固体は、次の一般式により表される化学組成を有する:aSiO:bYO:cR:dF:eHO(I)(式中、Rは、少なくとも1個の窒素原子を含む窒素含有有機種を表し、Yは、少なくとも1種のケイ素以外の四価の元素を表し;Fは、フッ素であり、a、b、c、dおよびeはそれぞれ、SiO、YO、R、FおよびHOのモル数を表し、aは、0.1〜1の範囲、好ましくは0.5〜1の範囲、より好ましくは0.8〜0.99の範囲であり、bは、0〜0.9の範囲、好ましくは0〜0.5の範囲、より好ましくは0.01〜0.2の範囲であり、cは、0.01〜0.5の範囲、好ましくは0.01〜0.2の範囲、より好ましくは0.02〜0.05の範囲であり、dは、0〜0.5の範囲、好ましくは0〜0.2の範囲、より好ましくは0.01〜0.05の範囲であり、eは、0〜2の範囲、好ましくは0.01〜0.5の範囲である。
【0018】
合成されたままの形態では、即ち、合成直後で、当業者に周知である窒素含有有機種を抽出するための任意の工程の前である場合、前記IZM−3固体は、下記の少なくとも1個の第4級窒素原子を有する窒素含有有機種Rまたはその分解生成物もしくはその前駆体を少なくとも含む。本発明の好ましい形態では、上記式(I)中、要素Rは、1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンである。
【0019】
本発明はまた、本発明によるIZM−3結晶固体を調製する方法であって、少なくとも1種のケイ素源、場合による少なくとも1種の酸化物YOの少なくとも1種の源、少なくとも1個の第4級窒素原子を含む少なくとも1種の窒素含有有機種R、少なくとも1種のフッ素源を含む水性混合物が反応させられ、混合物は好ましくは、次のモル組成:
SiO/YO:少なくとも0.1、好ましくは少なくとも1、より好ましくは3〜100;
O/(SiO+YO):1〜100、好ましくは10〜70、より好ましくは20〜50;
R/(SiO+YO):0.02〜2、好ましくは0.1〜1;
F/(SiO+YO):0.01〜4、好ましくは0.02〜2、より好ましくは0.1〜2
を有し、ここで、Yは、ゲルマニウム、チタン、スズにより形成される群から選択される1種以上の四価の元素、好ましくはゲルマニウムであり、Fは、フッ素である、方法に関する。
【0020】
本発明の方法では、Rは、少なくとも1個の第4級窒素原子を含む窒素含有有機種であり、好ましくは、Rは、有機テンプレートとして作用する2個の第4級窒素原子を含む。好ましくは、Rは、窒素含有化合物1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンである。本発明のIZM−3結晶固体を合成するための有機種テンプレート中に存在する第4級アンモニウムカチオンに随伴するアニオンは、アセタートアニオン、スルファートアニオン、カルボキシラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージドなどのハリドアニオン、ヒドロキシドアニオンおよびこれら複数の組合せから選択される。好ましくは、IZM−3結晶固体を合成するためのテンプレート種中に存在する第4級アンモニウムカチオンに随伴するアニオンは、ヒドロキシドアニオンおよびブロミドアニオンから選択され、より好ましくは、これはヒドロキシドイオンである。IZM−3結晶固体のためのテンプレートとして使用される前記窒素含有有機種は、当業者に知られている任意の方法を使用して合成される。二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンを合成するために、1モルの1,5−ジブロモペンタンは、少なくとも2モルのN−メチルピペリジンとエタノール中で混合される。一般的に、混合物は1〜10時間の範囲の期間にわたって還流加熱される。ろ過、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒を使用した沈殿、次いで、エタノール/エーテル混合物からの再結晶の後に、二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンが得られる。二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンは、好ましくは、周囲温度で、酸化銀(AgO)を用いて二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンの水溶液を処理することによって得られる。
【0021】
IZM−3結晶固体を調製するための方法を実施するために使用されるケイ素源は、ケイ素を含み、かつ、当該元素を水溶液中に活性な形態で遊離することができる任意の化合物であってよい。シリカの源は、ゼオライトを合成する際に現在使用されているもの、例えば、固体粉末シリカ、ケイ酸、コロイドシリカ、溶解シリカまたはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)のうちのいずれであってもよい。粉末シリカのうち、沈降シリカ、特に、アルカリ金属ケイ酸塩の溶液からの沈降によって得られるもの、例えば、エアロゾル(登録商標)シリカ、発熱性シリカ、例えば、「CAB−O−SIL(登録商標)」およびシリカゲルを用いることが可能である。種々の粒子サイズを有する、例えば、10〜15nmまたは40〜50nmの平均等価径を有するコロイダルシリカ、例えば、出願された商標「LUDOX(登録商標)」の名称で販売されているものを用いることが可能である。好ましくは、ケイ素源は、LUDOX(登録商標)−AS−40である。
【0022】
IZM−3結晶固体を調製するための方法を実施するために場合によっては使用され得る元素Yの源は、元素Yを含み、かつ、当該元素を水溶液中に活性な形態で遊離することができる任意の化合物であってよい。Yがゲルマニウムである好ましい場合には、ゲルマニウムの源は好ましくは、無定形酸化ゲルマニウムである。Yがチタンである場合、チタンの源は有利には、酢酸チタンTi(CHCO、チタンエトキシドTi(OC、チタンイソプロポキシドTi(OCH(CHおよび無定形酸化チタンTiOから選択される。Yがスズである場合、スズの源は有利には、酢酸スズSn(CHCOおよび無定形酸化スズSnOから選択される。
【0023】
フッ素は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、例えば、NaF、NHF、NHHFの形態またはフッ化水素酸の形態または、フッ素化物アニオンを水中に遊離し得る加水分解可能な化合物、例えば、NaSiFもしくはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFの形態で導入され得る。好ましくは、フッ素源は、フッ化水素酸である。
【0024】
本発明のIZM−3固体を調製するための方法を実施するために、少なくとも1種のシリコンの源、場合による少なくとも1種の酸化物YOの少なくとも1種の源、少なくとも1種のフッ素の源、少なくとも1個の第4級窒素原子を含む少なくとも1種の窒素含有有機種Rを含む水性混合物がさらに、少なくとも1種のヒドロキシドイオンの源を含むことが好ましい。前記ヒドロキシドイオンの源は有利には、水酸化物の形態にある場合、例えば、Rが二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンである場合には、有機テンプレート種Rに由来する。
【0025】
加えて、本発明の方法の好ましい実施では、ケイ素の酸化物、場合によるゲルマニウムの酸化物、フッ化水素酸および二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンを含む水性混合物が反応させられる。
【0026】
本発明の方法は、酸化ケイ素SiOの少なくとも1種の源と、場合による少なくとも1種の酸化物YOの少なくとも1種の源と、少なくとも1種のフッ素源と、少なくとも1種の窒素含有有機種Rとを含むゲルとして知られる水性反応混合物を調製する工程からなる。前記試薬の量は、前記ゲルに、合成されたままの形態で、一般式(I):aSiO:bYO:cR:dF:eHO(式中、a、b、c、dおよびeは上記で定義された基準を満たす)を有するIZM−3結晶固体に結晶化することを可能にする組成を提供するように調節される。次いで、ゲルは、IZM−3結晶固体が形成されるまで水熱処理を受ける。ゲルは、有利には、自己生成反応圧力下に、場合によっては、ガス、例えば窒素を加えることによって、120〜200℃の範囲、好ましくは140〜180℃の範囲、より好ましくは160〜175℃の範囲の温度で、合成されたままの形態IZM−3固体結晶が形成されるまで水熱条件に付される。結晶化を得るのに必要な時間は一般に、ゲル中の試薬の組成、撹拌および反応温度に応じて、1時間から数ヶ月で変動する。好ましくは、結晶化期間は、2〜21日の範囲、より好ましくは5〜14日の範囲である。反応は一般に、撹拌して、または攪拌せずに、好ましくは撹拌して実施される。
【0027】
結晶の形成に必要な時間を短縮し、かつ/または全結晶化期間を短縮するために、種結晶を反応混合物に加えることが有利であることがある。また、不純物を台無しにしてIZM−3結晶固体の形成を促進するために、種結晶を使用することが有利であることもある。このような種結晶は、固体結晶、好ましくは、IZM−3固体の結晶を含む。結晶質の種結晶は、一般に、反応混合物中で使用されるSiO+YO酸化物の質量の0.01〜10重量%の範囲の割合で加えられる。
【0028】
IZM−3固体の結晶化をもたらす水熱処理工程の終了時に、固相はろ過され、洗浄され、次いで乾燥させられる。
【0029】
前記乾燥工程の終了時に、得られたIZM−3固体は好ましくは、水を含まず、表1に示されているピークを少なくとも含むX線回折図を有するものである。
【0030】
窒素含有有機種Rを抽出した後に、本発明のIZM−3結晶固体は、有利には、汚染を制御するための吸着剤として、または分離するためのモレキュラーシーブとして、または再び吸着剤として使用される。
【0031】
吸着剤として使用される場合、前記固体は一般的に、無機マトリクス相に分散させられる。無機マトリクス相は、分離されるべき流体が結晶固体に接近することを可能にするチャネルおよびキャビティを含む。これらのマトリクスは好ましくは、無機酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたは粘土である。マトリクスは一般的に、こうして形成される吸着剤の質量の2〜25%を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】合成されたままのIZM−3固体についてのX線回折図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、下記の実施例において例証されるが、これは、本発明を何ら制限するものではない。
【0034】
(実施例1:二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンの調製)
1,5−ジブロモペンタン(0.22モル、99%、Alfa Aesar)50gを、N−メチルピペリジン(0.51モル、99%、Alfa Aesar)50gおよびエタノール200mLを含む1Lフラスコに加えた。反応媒体を撹拌し、還流下に5時間にわたって加熱した。次いで、混合物を周囲温度に冷却し、ろ過した。混合物を冷ジエチルエーテル300mLに注ぎ、次いで、生じた沈澱物をろ過し、ジエチルエーテル100mLで洗浄した。得られた固体をエタノール/エーテル混合物から再結晶させた。得られた固体を12時間にわたって真空乾燥させた。白色の固体75gが得られた(即ち、収率80%)。
【0035】
生成物は、予測されたH NMRスペクトルを有していた。
【0036】
1H NMR(D2O, ppm/TMS): 1.29(2H, q); 1.51(4H, q); 1.70(12H, m); 2.88(6H, s); 3.19(8H, t); 3.20(4H, t)
(実施例2:二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンの調製)
AgO(0.08モル、99%、Aldrich)18.9gを、二臭化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタン30g(0.07モル)および脱イオン水100mLを含有する250mLテフロン(登録商標)ビーカーに加えた。反応媒体を、20℃で光から保護して12時間にわたって撹拌した。次いで、混合物をろ過した。得られたろ液は、二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンの水溶液からなっていた。この化学種を、プロトンNMRにより、標準としてギ酸を使用してアッセイした。
【0037】
(実施例3:本発明に合致するIZM−3固体の調製)
Aldrichにより販売されている商品名Ludox(登録商標)AS-40で知られているシリカのコロイド懸濁液3.530gを、無定形酸化ゲルマニウム(Aldrich)0.615gと、30.9重量%の二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタン水溶液14.374gと、39.5重量%のフッ化水素酸水溶液0.745gと、脱イオン水0.736gとからなる溶液に入れた。混合物のモル組成は次の通りであった:0.8SiO:0.2GeO:0.5R:0.5HF:25HO。混合物を30分間にわたって激しく撹拌した。均一化の後、混合物をオートクレーブに移した。オートクレーブを170℃で攪拌しながら(200rpm)10日間にわたって加熱した。得られた結晶生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し(中性pHになるまで)、次いで、100℃で終夜乾燥させた。
【0038】
固体の合成されたままの生成物をX線回折により分析し、IZM−3固体により構成されていると同定した。合成されたままのIZM−3固体についての回折図を図1に示す。
【0039】
(実施例4:本発明に合致するIZM−3固体の調製)
Aldrichにより販売されている商品名Ludox(登録商標)AS-40で知られているシリカのコロイド懸濁液3.156gを、無定形酸化ゲルマニウム(Aldrich)0.245gと、30.9重量%の二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタン水溶液11.425gと、39.5重量%のフッ化水素酸水溶液0.592gと、脱イオン水4.583gとからなる溶液に入れた。混合物のモル組成は次の通りであった:0.9SiO:0.1GeO:0.5R:0.5HF:35HO。混合物を30分間にわたって激しく撹拌した。均一化の後、混合物をオートクレーブに移した。オートクレーブを170℃で攪拌しながら(200rpm)7日間にわたって加熱した。得られた結晶生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し(中性pHになるまで)、次いで、100℃で終夜乾燥させた。
【0040】
固体の合成されたままの生成物をX線回折により分析し、IZM−3固体により構成されていると同定した。合成されたままのIZM−3固体についての回折図を図1に示す。
【0041】
(実施例5:本発明に合致するIZM−3固体の調製)
Aldrichにより販売されている商品名Ludox(登録商標) AS-40で知られているシリカのコロイド懸濁液3.525gを、30.9重量%の二水酸化1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタン水溶液11.485gと、39.5重量%のフッ化水素酸水溶液0.595gと、脱イオン水4.395gとからなる溶液に入れた。混合物のモル組成は次の通りであった:1SiO:0.5R:0.5HF:35HO。混合物を30分間にわたって激しく撹拌した。均一化の後、混合物をオートクレーブに移した。オートクレーブを170℃で攪拌しながら(200rpm)7日間にわたって加熱した。得られた結晶生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し(中性pHになるまで)、次いで、100℃で終夜乾燥させた。
【0042】
固体の合成されたままの生成物をX線回折により分析し、IZM−3固体により構成されていると同定した。合成されたままのIZM−3固体についての回折図を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記表:
【表1】

(表中、Vs=非常に強い;S=強い;M=中程度;Mw=中程度に弱い;W=弱い;Vw=非常に弱い)
に示されているピークを少なくとも包含するX線回折図を有し、無水物ベースとして、次の一般式により定義される酸化物のモルに関して表される化学組成:aSiO:bYO:cR:dF(式中、Yは、少なくとも1種のケイ素以外の四価の元素を表し、Rは、少なくとも1種の窒素含有有機種を表し、Fは、フッ素であり、a、b、cおよびdはそれぞれ、SiO、YO、RおよびFのモル数を表し、aは、0.1〜1の範囲であり、bは、0〜0.9の範囲であり、cは、0.01〜0.5の範囲であり、dは、0〜0.5の範囲である)を有するIZM−3結晶固体。
【請求項2】
Yは、ゲルマニウム、チタン、スズおよび前記四価の元素のうちの少なくとも2種の混合物から選択される、請求項1に記載のIZM−3結晶固体。
【請求項3】
Yはゲルマニウムである、請求項2に記載のIZM−3結晶固体。
【請求項4】
aは0.5〜1の範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のIZM−3結晶固体。
【請求項5】
bは0.01〜0.2の範囲である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のIZM−3結晶固体。
【請求項6】
cは0.02〜0.05の範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のIZM−3結晶固体。
【請求項7】
dは0.01〜0.05の範囲である、請求項1〜6のいずれか1つに記載のIZM−3結晶固体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のIZM−3結晶固体を調製する方法であって、水性媒体中で、少なくとも1種のケイ素源と、場合による少なくとも1種の酸化物YOの少なくとも1種の源と、少なくとも1個の第4級窒素原子を含む少なくとも1種の窒素含有有機種Rと、少なくとも1種のフッ素源とを混合する工程と、次いで、前記IZM−3結晶固体が生じるまで、前記混合物の水熱処理を実施する工程とを含む、方法。
【請求項9】
前記反応混合物のモル組成が、
SiO/YO:少なくとも0.1;
O/(SiO+YO):1〜100;
R/(SiO+YO):0.02〜2;
F/(SiO+YO):0.01〜4
になるようにされる、請求項8に記載のIZM−3結晶固体を調製する方法。
【請求項10】
Rは、1,5−ビス(メチルピペリジニウム)ペンタンである、請求項8または9に記載のIZM−3結晶固体を調製する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−504453(P2011−504453A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535422(P2010−535422)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001457
【国際公開番号】WO2009/090336
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(509119887)イエフペ (21)
【Fターム(参考)】