説明

IgEおよびIL−4産生抑制組成物

【課題】日常的に長期間服用が可能で、免疫抑制などの副作用がなく、しかも効果的に高IgEおよび/または高IL−4産生による種々の症状を予防または治療できるIgEおよびIL−4産生抑制組成物を提供すること。
【解決手段】キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物を含有することを特徴とするIgEおよびIL−4産生抑制組成物。上記植物としてはミルクシスルが好ましく、上記植物としては種子を用いることが好ましい。また、上記有機溶媒抽出物は、エステル系溶媒、アルコール系溶媒または脂肪族炭化水素系溶媒を使用して得られたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgEおよびIL−4産生抑制組成物に関し、より詳しくは、IgEおよびIL−4の産生のみを抑制し、IgGの産生を抑制することのないIgEおよびIL−4産生抑制組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国においてアレルギー性疾患は最も発症率の高い疾患の一つである。特に代表的なものとして、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などが挙げられる。これらの中でも花粉症とアトピー性皮膚炎の患者数は、近年急激に増加しており、大きな社会問題になっている。
【0003】
アレルギー反応は大きく4つのタイプ(I〜IV型)に分類されているが、その中で多くのアレルギー性疾患は、I型アレルギーにより起こるとされている。I型アレルギーは、即時型アレルギーとも呼ばれており、このタイプによるアレルギー反応は、B細胞から過剰産生されるアレルゲン特異的IgE抗体によって、ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが放出され、血管透過性を亢進させて浮腫や鼻汁の過剰分泌を引き起こし、また平滑筋を収縮させて気道収縮を引き起こす。
【0004】
アレルギー症状を改善する方法としては、アレルゲンとの接触機会や食物アレルゲンを摂取しないようにするなどの物理的な方法、或いは、アレルギー反応の結果、放出されたヒスタミンの反応を阻害する抗ヒスタミン剤、免疫反応を広く抑制するステロイド剤、ケミカルメディエーターの放出を抑制する脱顆粒抑制剤またはロイコトリエン合成阻害剤などの抗アレルギー剤によってアレルギー反応を抑制する方法などの薬物的な方法がある。しかしながら、アレルゲンとの接触を完全に防ぐことは極めて困難であり、また、薬物的な方法には多くの場合副作用があり、日常的に長期にわたって使用するには限界がある。
【0005】
一方、これらの薬剤に代えて、抗アレルギー効果を示す食品を摂取することによってアレルギー症状を改善しようとする試みも行われており、例えば、甜茶、シソ、β−グルカンなどを添加した食品が知られている。しかしながら、これらの食品は、薬剤に比べて副作用は少ないものの、アレルギー改善効果も限定的で十分な効果があるとはいえず、これまで満足できるものはなかった。
【0006】
したがって、日常的に服用が可能で、しかも効果的にアレルギー性疾患の症状を緩和できる抗アレルギー剤が望まれている。
【0007】
抗アレルギー剤の有効成分としては、IgE産生抑制剤や、アレルギー性のサイトカインであるIL−4の産生抑制剤も知られている。IL−4は特に皮膚の炎症に関与する抗体である。しかしながら、いわゆる抗アレルギー剤や、IgE産生抑制剤およびIL−4産生抑制剤は、IgGの産生も抑制してしまう場合がある。IgGの産生が抑制されてしまうと、正常な免疫機能が抑制されるなどの問題が起こり、感染症に罹患するなどの副作用につながるおそれがある。アレルギー以外にも、高IgE産生を示す病態(例えば、高IgE血症、肝疾患(急性・慢性肝炎、肝硬変)、膠原病(関節リウマチ、SLEなど)、ネフローゼ症候群、寄生虫感染症など)や、高IL−4産生を示す病態(高IgE血症、寄生虫疾患、白血病・リンパ腫、強皮症、関節リウマチ(RA)、AIDSなど)が知られており、これらの病態に対してIgE産生抑制剤やIL−4産生抑制剤の適用が考えられるが、上記のように同時にIgGの産生が抑制され、思わぬ副作用が引き起こされるおそれがある。
【0008】
また、近年、各種植物に由来する成分を有効成分として含有させた様々な健康食品や医薬品が提案されている。例えば、特許文献1には、乳発酵産物にハーブ類を含有させてなる健康食品が提案されており、ハーブ類の例として、マリアアザミ(別名:ミルクシスル)などが挙げられている。マリアアザミは、キク科オオアザミ属の植物であり、肝疾患に対する効能を有していることが広く知られている(例えば特許文献1及び2参照)。また、特許文献1には、マリアアザミの種子を煎じた汁がアレルギー改善に効果があることも記載されている。マリアアザミは、そのほかに、不定愁訴の改善(特許文献2参照)や、たんぱく質の糖化阻害(特許文献3参照)に寄与することが知られている。しかしながら、キク科オオアザミ属の植物に、IgEおよびIL−4の産生抑制作用があり、高IgEおよび/または高IL−4産生による種々の症状を予防または治療できることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−166467号公報
【特許文献2】特開2007−131605号公報
【特許文献3】特開2008−88102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、日常的に長期間服用が可能で、免疫抑制などの副作用がなく、しかも効果的に高IgEおよび/または高IL−4産生による種々の症状を予防または治療できるIgEおよびIL−4産生抑制組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記問題点に鑑み、天然物由来であってしかも安全性が高いIgEおよびIL−4産生抑制剤の検索を行った。その結果、キク科の植物から得られた抽出物に、IgEおよびIL−4の産生を抑制する効果があることを知見した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物を含有することを特徴とするIgEおよびIL−4産生抑制組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記IgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有してなる飲食品、飼料、化粧品または医薬品を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、基礎免疫に関わり感染防御などの機能を有するIgGには作用せず、アレルギーを引き起こすIgEおよびアレルギー性のサイトカインであるIL−4の産生を特異的に抑制するので、免疫抑制などの副作用を起こす心配がなく、日常的に長期間服用が可能であり、副作用がない抗アレルギー剤として極めて有用性が高い。本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、IgEおよびIL−4産生を抑制するため、アレルギーの種々の症状の中でも、掻痒(かゆみ)、浮腫、鼻汁の過剰分泌および気道収縮に特に有効である。さらにアレルギー性疾患以外にも、高IgE産生を示す病態および高IL−4産生を示す各種病態の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1および比較例1それぞれのIgEに対する作用の確認試験の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1のIL−4に対する作用の確認試験の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1および比較例1それぞれのIgGに対する作用の確認試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物について、好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物を含有する。キク科オオアザミ属の植物の代表例としては、ミルクシスル(学名:Silybum marianum (L.) Gaertn)が挙げられる。ミルクシスルは、ヨーロッパ全土、北アフリカ、アジアに広く生息する二年草である。
【0016】
キク科オオアザミ属の植物から有機溶媒抽出物を得る際には、抽出原料として、キク科オオアザミ属の植物の種子、葉、茎、根などのいかなる部位を用いてもよいが、IgEおよびIL−4産生抑制効果が高いことから種子を用いることが好ましい。また、抽出原料として使用するキク科オオアザミ属の植物の各種部位は、そのまま使用しても良いが、乾燥させて粉砕し、粉末として使用した方が抽出効率が良くなり好適である。
【0017】
抽出に用いる有機溶媒としては、(イ)エステル系溶媒、(ロ)エーテル系溶媒、(ハ)アルコール系溶媒、(ニ)ケトン系溶媒、(ホ)脂肪族炭化水素系溶媒、(ヘ)シクロアルカン系溶媒、(ト)ハロゲン化炭化水素系溶媒、(チ)芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、有機溶媒を替えて抽出操作を複数回行ってもよい。
【0018】
(イ)エステル系溶媒としては、炭素原子数1〜4のカルボン酸と炭素原子数1〜4のアルコールとから得られるエステル類が好ましく、具体的には、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどが挙げられる。
(ロ)のエーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルセロソルブ、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
(ハ)のアルコール系溶媒としては、炭素原子数1〜5のものが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノールなどのモノアルコール;グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコールが挙げられる。
(ニ)のケトン系溶媒としては、アセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどが挙げられる。
(ホ)の脂肪族炭化水素系溶媒としては、炭素原子数5〜10のものが好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
(ヘ)のシクロアルカン系溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどが挙げられる。
(ト)のハロゲン化炭化水素系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどが挙げられる。
(チ)の芳香族炭化水素系溶媒としては、置換されたものでも非置換のものでもよく、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソールなどが挙げられる。
【0019】
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、IgEおよびIL−4の産生抑制効果の観点から、これらの有機溶剤の中でも、(イ)エステル系溶媒、(ハ)アルコール系溶媒または(ホ)脂肪族炭化水素系溶媒を使用して得られた有機溶媒抽出物、特に(イ)エステル系溶媒を使用して得られた有機溶媒抽出物を含有することが好ましい。また、上記の有機溶媒を複数用いて同時にまたは段階的に抽出すると、特にIgEおよびIL−4の産生抑制効果が高く好ましい。
【0020】
キク科オオアザミ属の植物から有機溶媒抽出物を得る際には、0℃〜有機溶媒の沸点以下の温度、好ましくは5〜40℃の温度条件下で、10分〜7日間抽出を行うことが望ましい。また、抽出の際には、抽出原料としてのキク科オオアザミ属の植物1gに対し、有機溶媒を1〜50mLの割合で使用することが好ましい。抽出は、系を撹拌しながら行ってもよいし、静置したまま行ってもよい。有機溶媒抽出物は、例えば、抽出操作によって得られた抽出液から残渣を濾別した後、溶媒を減圧下において濃縮乾固することにより得ることができ、また、濾液を凍結乾燥することによって得ることもできる。
【0021】
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、有効成分として、キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物を含有していればよく、そのほかに必要に応じて薬学的に許容される種々の担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、各種機能性成分などを適宜配合し、常法により製剤化してもよい。機能性成分としては、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、各種ビタミン類、生薬、ミネラル類などを適宜配合することができる。
【0022】
製剤化する場合、剤型は特に限定されるものではなく、経口剤であっても非経口剤であってもよい。経口剤としては、錠剤、チュアブル錠、散剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、ドライシロップ剤などの固形製剤や、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、ゼリー剤、液剤など液体製剤のほか、吸入剤なども挙げられる。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
非経口剤としては、軟膏、ローション、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などの皮膚外用剤、点眼剤、点鼻剤、点滴剤、注射剤などが挙げられるほか、経管経腸栄養剤、坐剤などの経管経腸製剤も挙げられる。
【0023】
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物において、キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物の含有量は、IgEおよびIL−4を抑制し得る量(有効量)であればよく、投与方法や剤型、投与または摂取する者の症状や年齢性別などによって適宜選択することができるが、経口投与または摂取させる場合には、1日当たりのキク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物の投与量または摂取量が0.01〜500mgとなるように選択することが好ましい。非経口投与または摂取の場合には、キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物量が1日当たり0.01〜100mg/cm2の範囲内となるように、皮膚または粘膜に滴下、塗布または噴霧することが好ましい。
【0024】
経口および非経口のいずれの場合についても、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物中の上記有機溶媒抽出物の含有量があまりに少なすぎると、上記の好ましい投与量または摂取量を満たすように投与または摂取することが困難になる場合があるため、組成物中の上記有機溶媒抽出物の含有量は0.1質量%以上とすることが望ましい。
また、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物の投与または摂取は、1日1回でもよいし、1日に数回に分けて行ってもよい。
【0025】
本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、IgE産生抑制効果があることから、高IgE産生を示す病態(高IgE血症、I型アレルギー性疾患、肝疾患(急性・慢性肝炎、肝硬変)、膠原病(関節リウマチ、SLEなど)、ネフローゼ症候群、寄生虫感染症など)の治療に有用である。また、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、IL−4産生抑制効果があることから、高IL−4産生を示す病態(高IgE血症、即時型アレルギー、寄生虫疾患、白血病・リンパ腫、強皮症、関節リウマチ(RA)、AIDSなど)の治療に有用である。IL−4は皮膚の炎症に関与するサイトカインであるため、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物は、皮膚用の抗炎症剤としても有用である。
【0026】
次に、本発明の飲食品、飼料、化粧品または医薬品について説明する。
本発明の飲食品は、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有するものであり、例えば、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物そのものであってもよいし、通常の飲食品に本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を配合して含有させたものであってもよい。通常の飲食品に本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を配合して含有させる場合には、飲食品の通常の製造工程のいずれかの段階で配合してもよいし、飲食品を通常通り製造した後に該飲食品に配合してもよい。本発明の飲食品中における本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物の含有量は、飲食品の種類に応じて、上記の好ましい1日当たりの投与量または摂取量を満たすことができるように適宜選択することが望ましい。
【0027】
本発明の飲食品は、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有できるものである限りその形態は特に制限されず、健康食品、機能性食品および特定保健用食品も包含する。本発明の飲食品は、例えば、前述の経口剤そのものであってもよいし、茶飲料(緑茶、ウーロン茶、紅茶など)、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、牛乳、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、精製水などの飲料、バター、ジャム、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリームなどのスプレッド類、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ類、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、スープ類、ソース類、ふりかけ、各種調味料、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などであってもよい。
【0028】
本発明の飲食品には、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物のほか、飲食品の製造に用いられる各種食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば、呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)などを配合することができる。
【0029】
本発明の飼料については、上述の本発明の飲食品についての説明を適宜適用することができる。また、本発明の飼料については、家畜、ペットおよび競走馬などの種々の動物に供することができる。
【0030】
本発明の化粧品は、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有するものであればよく、その例としては、乳液、化粧液、クリーム、ローション、ゲル剤、美肌剤、エッセンス、パックおよびシートなどの基礎化粧品、ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラなどのメイクアップ化粧品、洗顔料、皮膚洗浄料、ボディシャンプーなどの洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメントなどの毛髪化粧品、養毛剤、浴用剤、軟膏、各種医薬部外品、あぶら取り紙などが挙げられる。
【0031】
本発明の化粧品は、その種類に応じて、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物のほかに、従来公知の賦形剤、香料、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料などの粉末成分、紫外線防御剤、保湿剤、酸化防止剤、pH調整剤、洗浄剤、乾燥剤、乳化剤などを適宜配合して、常法に従って製造することができる。
尚、本発明の化粧品に関し特に説明しなかった点については、上述の本発明の飲食品についての説明を適宜準用することができる。
【0032】
本発明の医薬品は、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有するものであり、例えば、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物そのものであってもよいし、通常の医薬品に本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を配合して含有させたものであってもよい。本発明の医薬品の剤型としては、本発明のIgEおよびIL−4産生抑制組成物の剤型として例示したものが挙げられ、中でも経口剤が好ましい。
尚、本発明の医薬品に関し特に説明しなかった点については、上述の本発明の飲食品についての説明を適宜準用することができる。
【実施例】
【0033】
〔実施例1〕
<IgEおよびIL−4産生抑制組成物の調製>
ミルクシスルの種子1gを粉砕した後10mLの酢酸エチルを加え、常温にて2時間抽出を行った。抽出終了後、濾過して固形物を除き、得られた濾液から減圧下で溶媒を除去し、その残渣をさらに乾固して酢酸エチル抽出物83mgを得た。
なお、以下のIgE、IgGおよびIL−4に対する作用の確認試験には、IgEおよびIL−4産生抑制組成物としての上記酢酸エチル抽出物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解(酢酸エチル抽出物濃度0.2質量%)して酢酸エチル抽出物DMSO溶液として用いた。
【0034】
<マウス脾臓細胞>
マウス(Balb/c、♂、7週齢)を入荷・馴化後、抗原溶液100μL(卵白アルブミン(SIGMA社製;以下、OVAという)10μgとアジュバント(水酸化アルミニウム;(株)エルエスエル製)2mgを懸濁液としたもの)を腹腔内投与(感作1回目)し、2週間後に再度、100μLの上記懸濁液を腹腔内投与(感作2回目)した。1回目感作より21日後に脾臓を摘出した(脾臓細胞摘出時10週齢)。
【0035】
<IgE低下作用の確認試験>
摘出した脾臓から採取した脾臓細胞を、細胞数5×105個/mLとなるように、牛胎児血清を15%含むRPMI培地(RPMI1640培地;SIGMA製)に加えた後、この脾臓細胞を含むRPMI培地を24ウェル細胞培養プレートに1mLずつ分注した。これに、上記の酢酸エチル抽出物DMSO溶液を、酢酸エチル抽出物終濃度が100μg/mLとなるように添加し、1週間培養(37℃、5%CO2下)した。培養終了後、培地上清中のOVA特異的IgE量を、酵素抗体法による測定キット(DSファーマバイオメディカル(株)製)を用いてELISAにより測定した。
また、対照として、酢酸エチル抽出物DMSO溶液に代えて同量のDMSOを添加し、同様に培養し測定を行った。
【0036】
<IL−4およびIgGに対する作用の確認試験>
摘出した脾臓から採取した脾臓細胞を、細胞数2.5×105個/mLとなるように、牛胎児血清を15%含むRPMI培地(RPMI1640培地;SIGMA製)に加えた後、この脾臓細胞を含むRPMI培地を24ウェル細胞培養プレートに1mLずつ分注した。これに、上記の酢酸エチル抽出物DMSO溶液を、酢酸エチル抽出物終濃度が100μg/mLとなるように添加し、1週間培養(37℃、5%CO2下)した。なお、IL−4測定用のサンプルには、培養開始時にOVA100μg/mLを添加した。
培養終了後、培地上清中のIL−4量およびIgG量を、それぞれ酵素抗体法による測定キット(IL−4測定キット;サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、IgG測定キット;Immunology Consultants lab.Inc製)を用いてELISAにより測定した。
また、対照として、酢酸エチル抽出物DMSO溶液に代えて同量のDMSOを添加し、同様に培養し測定を行った。
【0037】
〔比較例1〕
ミルクシスルの種子を粉砕して得た粉末に代えて、コボウの根の乾燥物を粉砕して得た粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴボウ根の酢酸エチル抽出物を得た。得られたゴボウ根の酢酸エチル抽出物を終濃度が200μg/mLとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、IgEおよびIgGに対する作用の確認試験を行った。なお、ゴボウは、キク科ゴボウ属の植物である。
【0038】
以上の実施例1及び比較例1におけるIgE、IL−4およびIgGに対する作用の確認試験の結果を、それぞれ図1、2および3に示す。なお、図1および2においては、それぞれIgE量およびIL−4量の絶対量を示しているが、図3においては、IgG量について対照(無添加)の場合を100として相対量を示している。
図1〜3より、以下のことが明らかである。
実施例1のIgEおよびIL−4産生抑制組成物(ミルクシスル種子使用)は、IgGの産生を抑制することなく、アレルギーに直接関与する抗体であるIgE、およびアレルギー性のサイトカインであるIL−4の産生を抑制した。これに対し、比較例1の組成物(ゴボウ根使用)は、IgEの産生を抑制したが、同時にIgGの産生も抑制したことから、副作用を起こす可能性があると考えられる。
【0039】
〔実施例2〕
ミルクシスルの種子1gを粉砕した後10mLのエタノールを加え、常温にて2時間、40rpmにて振盪抽出を行った。抽出終了後、濾過して固形物を除き、得られた濾液から減圧下で溶媒を除去し、その残渣をさらに乾固してエタノール抽出物75mgを得た。
上記エタノール抽出物について、実施例1と同様の方法によりIgE、IL−4およびIgGに対する作用の確認試験を行った結果、上記エタノール抽出物は、IgGの産生を抑制することなく、IgEおよびIL−4の産生を抑制することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キク科オオアザミ属の植物の有機溶媒抽出物を含有することを特徴とするIgEおよびIL−4産生抑制組成物。
【請求項2】
上記植物がミルクシスルである請求項1記載のIgEおよびIL−4産生抑制組成物。
【請求項3】
上記植物として種子を用いた請求項1または2記載のIgEおよびIL−4産生抑制組成物。
【請求項4】
上記有機溶媒抽出物を得る際に使用した有機溶媒が、エステル系溶媒、アルコール系溶媒または脂肪族炭化水素系溶媒である請求項1〜3のいずれか一項に記載のIgEおよびIL−4産生抑制組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のIgEおよびIL−4産生抑制組成物を含有してなる飲食品、飼料、化粧品または医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158528(P2012−158528A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17516(P2011−17516)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】