説明

IgG結合のための部位を同定するための方法

本開示は、オリゴマー化が低下し、標識化が効率的な免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートならびに組成物、そのような免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートを生成するための方法、ならびに特に疾患の治療および予防においてそのような免疫グロブリンコンジュゲートを使用するための方法に関する。一実施形態において、この免疫グロブリンコンジュゲートは、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、298(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に有する免疫グロブリンと、前記システイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体は、実験用および治療用に非常に有益である。遺伝子操作された部位特異的な蛍光特性または結合特性を有する抗体誘導体は、開発されており、長年使用されてきた。より最近では、抗体はまた、治療剤として開発されており、最も急成長しているクラスの医薬品を現在提供している[1(非特許文献1)]。抗体は、ジスルフィド結合によって相互に保持される2つの軽鎖および2つの重鎖のマルチドメインタンパク質である。可変領域は、特定の抗原への結合を特定し、定常領域の一部は、免疫細胞の表面のFc受容体への結合を介してエフェクター機能を担う。様々な疾患の治癒におけるそれらの潜在力のために、抗体は、現在、ヒト治療薬のうちで最も急速に成長しているクラスとなる(非特許文献1)。2001年以来、それらの市場は、35%の平均年間成長率で成長しており、これは、すべてのカテゴリーのバイオテク薬剤の中で最も高い率である(非特許文献2)。
【0003】
抗体コンジュゲートの工学技術は、抗体適用の多用途性をさらに増加させてきた。多くの実験室技術では、酵素または蛍光プローブは、アッセイ機能、たとえば抗原存在量の定量化を果たすために、抗体にコンジュゲートされる。標的療法の場合では、毒性の小分子は、患部の細胞上のバイオマーカーに特異的に結合する抗体に付着される[2〜4(非特許文献3〜5)]。抗体コンジュゲーションに対する様々なアプローチ、たとえば、表面リジンへの[5]、Fc炭水化物への[6]、または部分的に還元された鎖間ジスルフィドへの[7]付着が、探究されてきた。
【0004】
工学的に作製された表面システインへの抗体コンジュゲーションは、ほとんどの抗体が、鎖内および鎖間ジスルフィド結合において使われるもの以外に、システインを有していないので、非常に魅力的な選択肢である。小分子は、マレイミドなどのチオール反応性の化学的作用を介してシステイン置換の特定の部位で付着することができる[8〜14]。C1およびC3ドメインにおける工学技術は、可変領域の抗原結合およびC2のエフェクター機能に対する干渉を回避するために好まれてきた。工学的に作製されたシステインを介して抗体コンジュゲーションを成功させるために様々な基準が考慮されてきた。たとえば、変異(mutation)を実行するための抗体ドメイン、変異部位の露出、置換されることとなるアミノ酸は、考慮に入れるべきいくつかの変数である。システイン工学技術およびコンジュゲーションに適している部位の同定に対するハイスループットスクリーニングアプローチが、開発されてきた[15]。抗体システイン変異体と関連する最も共通の問題のうちの2つは、オリゴマー化および不十分な標識化である。しかし、抗体システイン変異体が安定し、効率的にコンジュゲートされるかどうかを予測するための一般的なツールはない。さらに、システイン変異体は、現在、C、C1、およびC3ドメインについてのみ存在する[8、9、11、12、15]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Carter, P.J., Potent antibody therapeutics by design. Nat Rev Immunol, 2006. 6(5): p. 343〜57
【非特許文献2】S. Aggarwal. Nature. BioTech. 2007年、25巻(10号)1097頁
【非特許文献3】Polakis, P., Arming antibodies for cancer therapy. Curr Opin Pharmacol, 2005. 5(4): p. 382〜7
【非特許文献4】Kaminski, M.S.ら、Radioimmunotherapy of B−cell lymphoma with [131I]anti−B1 (anti−CD20) antibody. N Engl J Med, 1993. 329(7): p. 459〜65
【非特許文献5】King, D.J.ら、Preparation and preclinical evaluation of humanised A33 immunoconjugates for radioimmunotherapy. Br J Cancer, 1995. 72(6): p. 1364〜72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、安定した免疫グロブリンコンジュゲートの生成に使用することができる、さらなる免疫グロブリンシステイン変異体が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性を満たす、低下した架橋を示す改善された免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートが、本明細書において記載される。
【0008】
したがって、一態様は、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、298(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に有する免疫グロブリンと、該システイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む免疫グロブリンコンジュゲートを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、248(CH2)および326(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、25(V)および286(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、254(CH2)および298(V)から成る群から選択される残基にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも2つの反応部位を有するリンカー分子をさらに含み、第1の反応部位は、免疫グロブリンの該システイン残基に結合しており、第2の反応部位は、該原子または分子に結合している。リンカー分子を有する前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、リンカー分子は、ヒドラゾン、ジスルフィド、ペプチド、キレート化剤、およびマレイミドから成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、該原子または分子は、放射性核種、化学療法剤、微生物の毒素、植物性毒素、ポリマー、炭水化物、サイトカイン、蛍光標識、発光標識、酵素−基質標識、酵素、ペプチド、ペプチド模倣薬、ヌクレオチド、siRNA、マイクロRNA、RNAミメティック、およびアプタマーから成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、該原子または分子は、90Y、131I、67Cu、177Lu、213Bi、211At、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、マイタンシノイド(maytanisoid)、オーリスタチン、アントラサイクリン、PseudomonasエキソトキシンA、ジフテリア(Diptheria)毒素、リシン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、およびマンノシル残基から成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、該原子または分子は、非変異免疫グロブリンの免疫原性を低下させる。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、該原子または分子は、非変異免疫グロブリンの免疫原性を増加させる。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性をさらに含む。
【0009】
他の態様は、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に含む改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、248(CH2)および326(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、25(V)および286(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、残基254(CH2)にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性をさらに含む。
【0010】
他の態様は、前の改変免疫グロブリンの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの免疫グロブリンをコードする、単離ポリヌクレオチドまたは組換えポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、該ポリヌクレオチドは、ベクター中にある。特定の実施形態では、ベクターは発現ベクターである。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、誘導プロモーターは、該ポリヌクレオチドに作動可能に連結される。他の態様は、前の実施形態のいずれかのベクターを有する宿主細胞を含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、該ポリヌクレオチドによってコードされる免疫グロブリンを発現することができる。
【0011】
他の態様は、免疫グロブリンを産生する方法であって、前の態様の宿主細胞を含む培養培地を提供するステップおよび免疫グロブリンが発現される条件に培養培地を置くステップを含む方法を含む。特定の実施形態では、該方法は、発現される免疫グロブリンを単離するためのさらなるステップを含む。
【0012】
他の態様は、免疫グロブリンコンジュゲートを産生する方法であって、前の改変免疫グロブリンの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの免疫グロブリンを提供するステップ、還元剤で1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させるステップ、ならびに還元システイン残基と反応性である原子または分子と共に免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップを含む方法を含む。
【0013】
他の態様は、免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮医薬製剤中の免疫グロブリンの表面露出システイン間の架橋を低下させる方法であって、免疫グロブリンを提供するステップ、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基をシステイン残基で置換するステップ、還元剤で1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させるステップ、還元システイン残基と反応性である原子または分子と共に免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップ、ならびに免疫グロブリンコンジュゲート濃度が、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮液体製剤を生成するステップを含む方法を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性を含む。
【0014】
他の態様は、高濃縮液体製剤を含む医薬の調製における前の免疫グロブリンコンジュゲートの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用であって、免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである、使用を含む。特定の実施形態では、医薬の使用は、自己免疫疾患、免疫学的疾患、感染症、炎症性疾患、神経学的疾患、ならびに癌を含む腫瘍疾患および新生物疾患の治療のためのものである。特定の実施形態では、医薬の使用は、鬱血性心不全(CHF)、血管炎、酒さ、ざ瘡、湿疹、心筋炎および心筋の他の状態、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、滑膜線維芽細胞、ならびに骨髄間質;骨損失;パジェット病、骨巨細胞腫;乳癌;非活動性骨減少症;栄養障害、歯周疾患、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞組織球症、脊髄損傷、急性化膿性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性形成異常(monoostotic fibrous dysplasia)、多骨性線維性骨形成異常、歯根膜の再構成、および骨折;サルコイドーシス;溶骨性骨癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、および直腸癌;骨転移、骨痛管理、および体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitisa)、ならびに他の脊椎関節症;移植拒絶反応、ウイルス感染症、血液新生物、および新生物様の状態、たとえばホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、ヘアリーセル白血病、およびリンパ形質細胞性(lymphoplamacytic)白血病)、B細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫およびT細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、末梢T細胞白血病、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫、および大顆粒リンパ性白血病を含む成熟T細胞およびNK細胞の腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症(histocytosis)、成熟を伴うAML、分化を伴わないAMLを含む急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病などの骨髄新生物、骨髄異形成症候群および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患、中枢神経系の腫瘍、たとえば脳腫瘍(神経膠腫、神経芽腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、脳室上衣細胞腫、および網膜芽細胞腫)、固形腫瘍(鼻咽頭癌、基底細胞癌、膵癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮癌、膣癌、もしくは子宮頚癌、卵巣癌、原発性肝癌、または子宮内膜癌、ならびに血管系の腫瘍(血管肉腫および血管周囲細胞腫)、骨粗鬆症、肝炎、HIV、AIDS、脊椎関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、敗血症および敗血症性ショック、クローン病、乾癬、強皮症(schleraderma)、移植片対宿主疾患(GVHD)、同種異系島移植片拒絶、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、および急性骨髄性白血病(AML)などの血液系悪性疾患、腫瘍、末梢神経損傷、または脱髄症と関連する炎症の治療のためのものである。特定の実施形態では、医薬の使用は、斑状乾癬(plaque psoriasis)、潰瘍性大腸炎、非ホジキンリンパ腫、乳癌、結腸直腸癌、若年性特発性関節炎、黄斑変性症、呼吸器合胞体ウイルス、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、治療誘発性の骨損失、骨転移、多発性骨髄腫、アルツハイマー病、緑内障、および多発性硬化症の治療のためのものである。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、医薬は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、製剤は、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントが、オリゴマー化されていない単量体である免疫グロブリンコンジュゲートを含む。特定の実施形態では、単量体の百分率は、非還元SDS−PAGE分析によって測定される。
【0015】
他の態様は、非オリゴマー化の薬学的活性成分としての、前の免疫グロブリンコンジュゲートの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を含む。
【0016】
他の態様は、診断ツールとしての、前の免疫グロブリンコンジュゲートの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を含む。
【0017】
他の態様は、高分子量タンパク質についての標準物質としての、前の免疫グロブリンコンジュゲートの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を含む。他の態様は、高分子量タンパク質についての標準物質としての免疫グロブリンコンジュゲートの使用であって、免疫グロブリンコンジュゲートは、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を残基440(CH3)に有する免疫グロブリンと、該ステイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む使用、を含む。
【0018】
他の態様は、前の免疫グロブリンコンジュゲートの態様ならびに前の実施形態の任意のおよびすべての組合せの免疫グロブリンコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlの濃度である。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートの少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントは、オリゴマー化されていない単量体である。
【0019】
他の態様は、システインへの変異のための免疫グロブリンの残基を選択する方法であって、免疫グロブリンの表面の第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向(spatial−aggregation−propensity)を計算するステップ、第1の残基のごく近傍内の免疫グロブリンの複数の残基の空間的凝集傾向を計算するステップ、ならびに第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向が、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にある場合および複数の残基が0未満の空間的凝集傾向を有する場合、システインへの変異のための第1のアミノ酸残基を選択するステップを含む方法を含む。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の15Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の10Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の7.5Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の5Å内にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、残基の空間的凝集傾向の計算は、残基中の原子を中心にする半径を有する球状の領域についての空間的凝集傾向の計算を含む。特定の実施形態では、球状の領域の半径は、少なくとも5Åである。
【0020】
他の態様は、表面露出残基からシステインへの少なくとも1つの変異を含む改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンであって、該残基の空間的凝集傾向は、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にあり、第1の残基のごく近傍内の免疫グロブリンの複数の残基の空間的凝集傾向は、0未満の空間的凝集傾向を有する、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンを含む。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の15Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の10Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の7.5Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の5Å内にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、空間的凝集傾向は、残基中の原子を中心にする半径を有する球状の領域について計算される。特定の実施形態では、半径は、少なくとも5Åである。
【0021】
他の態様は、システインへ変異させるための免疫グロブリンの残基を選択する方法であって、免疫グロブリンの複数のアミノ酸残基を選ぶステップであって、複数の残基は、免疫グロブリンの表面に露出しているステップ、複数の残基のうちの1つの残基をシステイン残基に変異させるステップ、原子または分子に該システイン残基をコンジュゲートさせて、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップ、架橋傾向について免疫グロブリンコンジュゲートを試験し、免疫グロブリンコンジュゲートに架橋傾向値を割り当てるステップ、ならびに架橋傾向値がIまたはIIである場合に、システインへの変異のための残基を選択するステップを含む、方法を含む。特定の実施形態では、該方法は、免疫グロブリンコンジュゲートの5%未満が二量体を形成し、免疫グロブリンコンジュゲートが三量体を形成しない場合に、免疫グロブリンコンジュゲートにIIの架橋傾向値を割り当てるステップをさらに含み、二量体および三量体の形成は、非還元および還元SDS−PAGEを比較することによって測定される。特定の実施形態では、該方法は、免疫グロブリンコンジュゲートの1%未満が二量体を形成する場合に、免疫グロブリンコンジュゲートにIの架橋傾向値を割り当てるステップをさらに含み、二量体の形成は、非還元および還元SDS−PAGEを比較することによって測定される。
【0022】
発明のさらなる態様および実施形態は、本明細書の全体にわたって見出され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、低下した架橋を示す、改善された免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートに関する。特定の実施形態では、本開示の免疫グロブリンは、システインとの置換によって特異的な残基で改変される。本開示は、改変免疫グロブリンおよび改変免疫グロブリンコンジュゲート、そのような免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートを作製する方法、そのような免疫グロブリンを含む多価分子または多特異的分子、ならびに本開示の免疫グロブリン、免疫グロブリンコンジュゲート、または二重特異性分子を含有する医薬組成物を提供する。
【0024】
定義
本明細書において言及される用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、抗体全体および任意の抗原結合断片(つまり「抗原結合部分」)またはその単鎖を含む。天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。重鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(本明細書においてVと省略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3から構成される。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書においてVと省略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、Cから構成される。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が挿入された相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分することができる。VおよびVはそれぞれ、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端に整列した、3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を媒介してもよい。
【0025】
本明細書において言及される用語「抗体コンジュゲート」または「免疫グロブリンコンジュゲート」は、原子または分子に化学的にまたは生物学的に連結された、任意の免疫グロブリン、抗原結合断片、またはその単鎖を含む。原子または分子は、たとえば、細胞毒、放射性薬剤、抗腫瘍剤、または治療剤を含んでいてもよい。抗体コンジュゲートは、免疫グロブリンまたは抗原結合断片の免疫反応性を保持する、つまり、抗体コンジュゲートの免疫グロブリンまたは抗原結合断片は、原子または分子とのコンジュゲーション前の免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも70パーセント、少なくとも75パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントを有する。
【0026】
本明細書において使用される用語、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)は、抗原に特異的に結合するための能力を保持する、完全長の抗体または抗体の1つ以上の断片および重鎖または軽鎖の定常領域の少なくとも1つの部分を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行することができることが示されてきた。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例は、Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン、およびCH1ドメインから成る一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VドメインおよびCH1ドメインから成るFd断片;ならびに抗体の単一のアームのVドメインおよびVドメインから成るFv断片を含む。
【0027】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VおよびVは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、それらを、VおよびV領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を使用してつなぐことができる(単鎖Fv(scFv)として公知である;たとえばBirdら、1988年 Science 242巻:423〜426頁;およびHustonら、1988年 Proc. Natl. Acad. Sci. 85巻:5879〜5883頁を参照されたい)。そのような単鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合領域」という用語内に包含されるように意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、断片は、完全な抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0028】
本明細書において使用される「単離」抗体または免疫グロブリンは、かかる抗体または免疫グロブリンが天然では他の構成要素中に見出される、該構成要素を実質的に含まない抗体または免疫グロブリンを指す。さらに、単離抗体または免疫グロブリンは、他の細胞物質および/または化学物質が実質的になくてもよい。
【0029】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的に、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および結合親和性を示す。
【0030】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むように意図される。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、そのようなヒト配列、たとえばヒト生殖系列配列もしくはヒト生殖系列配列の変異バージョンまたはKnappikら(2000年 J Mol Biol 296巻、57〜86頁)において記載されるヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含有する抗体に由来する。
【0031】
本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(たとえば、in vitroのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によってまたはin vivoの体細胞変異によって導入される変異)を含んでいてもよい。しかしながら、本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むようには意図されない。
【0032】
本明細書において使用される用語「ヒトドメイン」は、ヒト起源の配列、たとえばヒト生殖系列配列もしくはヒト生殖系列配列の変異バージョンまたはKnappikら(2000年 J Mol Biol 296巻、57〜86頁)において記載されるヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含有する抗体に由来する免疫グロブリン定常領域ドメインを含むように意図される。
【0033】
本明細書において使用される用語「組換えヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランスクロモソームである動物(たとえばマウス)から単離される抗体またはそれから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、たとえばトランスフェクトーマから単離される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子のすべてまたは一部の配列を他のDNA配列へスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製される、発現される、作り出される、または単離される抗体など、組換え手段によって調製される、発現される、作り出される、または単離されるヒト抗体をすべて含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(またはヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、in vivo体細胞変異誘発)にかけることができ、したがって、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、それらと関係するが、in vivoにおいてヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい配列である。
【0034】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能、および/もしくは種の定常領域またはキメラ抗体に新しい特性を与える完全に異なる分子、たとえば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤などに連結されるように、定常領域またはその部分が置換された、改変された、または置き換えられた;または(b)可変領域もしくはその部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域と置換された、改変された、もしくは置き換えられた、抗体分子である。たとえば、マウス抗体は、その定常領域を、本明細書において開示される改変を含むヒト免疫グロブリンに由来する定常領域と置換することによって改変することができる。ヒト定常領域との置換により、もとのマウス抗体または本明細書において開示される改変を有していないキメラ抗体と比較して、全体的に、ヒトにおいて低下した抗原性および低下した凝集を有しながら、キメラ抗体は、その特異性を保持することができる。
【0035】
「ヒト化」抗体は、ヒトにおいてそれほど免疫原性でないが、非ヒト抗体の反応性を保持する抗体である。これは、たとえば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト相当物(つまり定常領域および可変領域のフレームワーク部分)と置換することによって達成することができる。たとえばMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁、1984年;MorrisonおよびOi、Adv. Immunol.、44巻:65〜92頁、1988年;Verhoeyenら、Science、239巻:1534〜1536頁、1988年;Padlan、Molec. Immun.、28巻:489〜498頁、1991年;およびPadlan、Molec. Immun.、31巻:169〜217頁、1994年を参照されたい。ヒト工学技術の他の例は、米国特許第5,766,886号において開示されるXoma技術を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される用語「リンカー」、「リンカー単位」、または「リンク」は、共有結合をなす化学成分または抗体を薬剤成分もしくは他の分子に共有結合する原子の鎖を指す。リンカーは、アルキルジイル、アリーレン、ヘテロアリーレンなどの二価のラジカル、−−(CRO(CR−−、アルキルオキシ(たとえばポリエチレンオキシ(polyethylenoxy)、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(たとえばポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の反復単位;ならびにスクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート、およびカプロアミドを含む二価酸エステルおよびアミドなどの成分を含む。
【0037】
本明細書において使用される用語「標識」は、抗体に共有結合することができ、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第2の標識と相互作用して、第1または第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを改変する、たとえばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移);(iii)抗原もしくはリガンドとの相互作用を安定化するまたは抗原もしくはリガンドとの結合の親和性を増加させる;(iv)電荷、疎水性、形状、もしくは他の物理的パラメーターによって移動度、たとえば電気泳動移動度もしくは細胞透過性に影響を与える、または(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、もしくはイオン複合体形成を調整するために捕捉成分を提供するように機能する任意の成分を指す。
【0038】
本明細書において使用される用語「Humaneering」は、非ヒト抗体を工学的に作製されたヒト抗体に変換する方法を指す(たとえばKaloBiosのHumaneering(商標)技術を参照されたい)。
【0039】
本明細書において使用されるように、「アイソタイプ」は、本明細書において開示される凝集傾向のモチーフを有する(そのため、凝集を低下させる、本明細書において開示される改変を受けやすい)重鎖定常領域遺伝子によって提供される任意の抗体クラスを指す(たとえばIgM、IgE、IgG1またはIgG2などのIgG)。
【0040】
本明細書において使用されるように、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体および抗原の間の相互作用の強度を指す。それぞれの抗原部位内で、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位で、抗原と、弱い非共有結合作用を通して相互作用し、相互作用が多いほど、親和性は強くなる。本明細書において開示される改変は、好ましくは、本明細書において開示される免疫グロブリンもしくは抗体の親和性を低下させないまたは親和性は、30パーセント未満、20パーセント未満、10パーセント未満、もしくは5パーセント未満低下する。本明細書において使用されるように、本明細書において開示される改変が親和性を低下させるかどうかを決定する場合、改変を有する免疫グロブリンまたは抗体および改変を欠くが、任意の無関係な変異を含む同じ免疫グロブリンの間で比較がなされる。
【0041】
本明細書において使用されるように、用語「被験体」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0042】
用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、たとえば、非ヒト霊長動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ニワトリ、両生動物、爬虫類動物などの哺乳動物および非哺乳動物をすべて含む。
【0043】
本明細書において使用される用語「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物を指す。化学療法剤の例は、エルロチニブ(TARCEVA(商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(商標)、Millenium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(商標)、Astrazeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(商標)、Novartis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(商標)、Wyeth)、ラパチニブ(GSK572016、GlaxoSmithKline)、ロナファーニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(BAY43−9006、Bayer Labs.)、およびゲフィチニブ(IRESSA(商標)、Astrazeneca)、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、チオテパおよびCYTOXAN(商標)シクロホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(とりわけブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン合成類似体、カルゼルシン合成類似体、およびビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189、およびCB 1−TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素(nitrosurea);エンジイン抗生物質などの抗生物質(たとえばカリケアマイシン、とりわけカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(Angew Chem Intl. Ed. Engl.(1994年)33巻:183〜186頁);ジネマイシンAを含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトーテン、トリロスタンなどの抗副腎薬;フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充物;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エフロルニチン(elformithine);エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシンおよびアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトザントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(TM)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけT−2毒素、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、たとえば、TAXOL(商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)ABRAXANE(商標)クレモフォールなし、パクリタキセルのアルブミン結合(albumin−engineered)ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)、およびTAXOTERE(商標)ドセタセル(doxetaxel)(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル(chloranbucil);GEMZAR(商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトザントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のもののうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含む。
【0044】
「化学療法剤」のこの定義において、(i)たとえばタモキシフェン(NOLVADEX(商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTONトレミフェンを含む、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの、腫瘍におけるホルモン作用を調節するまたは阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)たとえば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(商標)エキセメスタン、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(商標)ボロゾール、FEMARA(商標)レトロゾール、およびアリミデックス(商標)アナストロゾールなどの、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)アロマターゼ阻害剤;(v)プロテインキナーゼ阻害剤;(vi)脂質キナーゼ阻害剤;(vii)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、たとえばPKC−アルファ、Ralf、およびH−Rasなどの、異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;(viii)VEGF発現阻害剤(たとえばANGIOZYME(商標)リボザイム)およびHER2発現阻害剤などのリボザイム;(ix)遺伝子療法ワクチン、たとえばALLOVECTIN(商標)ワクチン、LEUVECTIN(商標)ワクチン、およびVAXID(商標)ワクチンなどのワクチン;PROLEUKIN(商標)rIL−2;LURTOTECAN(商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(商標)rmRH;(x)ベバシズマブ(AVASTIN(商標)、Genentech)などの抗脈管形成剤;ならびに(xi)上記のもののうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体もまた含まれる。
【0045】
本明細書において使用されるように、用語「サイトカイン」は、細胞間媒介物質として他の細胞に対して作用する、ある細胞集団によって放出されるタンパク質についての総称である。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン(prorelaxin);卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−αおよび−β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF−βなどの神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−αおよびTGF−βなどの形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよび−II;エリトロポイエチン(EPO);骨誘導(osteoinductive)因子;インターフェロン−α、−β、および−γなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などのインターロイキン(IL);TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子がサイトカインの中に含まれる。本明細書において使用されるように、サイトカインという用語は、天然源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質および天然の配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0046】
本明細書において使用されるように、用語「最適化された」は、ヌクレオチド配列が、産生細胞または生物、一般に真核細胞、たとえばPichiaの細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞において好ましいコドンを使用するアミノ酸配列をコードするように改変されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている出発ヌクレオチド配列によってもともとコードされるアミノ酸配列を完全にまたはできるだけ多く保持するように工学的に作製される。他の真核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現もまた、本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列もまた、最適化されたと表される。
【0047】
本明細書において使用されるように、用語「抗原結合活性」は、その標的抗原に対する免疫グロブリンまたは免疫グロブリンコンジュゲートの結合特異性を指す。たとえば、抗原結合活性は、細胞ベースのバイオアッセイ(たとえばレポーター遺伝子アッセイ)、ELISA、表面プラズモン共鳴(Biacore)、または当業者に公知の任意の他の技術によって測定されてもよい。
【0048】
本明細書において使用されるように、用語「架橋傾向」(CLP)は、システインとの置換である変異を含有する改変免疫グロブリンまたは免疫グロブリンコンジュゲートが、置換システイン残基のところで、様々な免疫グロブリンの間で架橋する傾向を指す。たとえば、CLPは、非還元SDS−PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーを用いる静的もしくは動的レーザー光散乱、または当業者に公知の任意の他の技術によって測定されるように、オリゴマー化のレベルによって決定することができる。クラスIは、単量体であり、標識化後に安定したままである変異体を含む。クラスIIの変異体は、標識化前および後にわずかなパーセントの二量体を含有する。クラスIII変異体は、いくつかの三量体の形成を含めてオリゴマー化するより明白な傾向を有する。クラスIV変異体は、とりわけ標識化後の、三量体よりも大きな凝集体の存在によって証明されるように、オリゴマー化するさらに高い傾向を有する。クラスVは、クラスIVの変異体と同様に、精製濃縮試料の断片化または着色などのさらなる構造の異常と共に、高いオリゴマー化傾向の変異体を含む。
【0049】
用語「エピトープ」は、抗体への特異的な結合ができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、普通、アミノ酸または糖側鎖などの、分子の化学的に活性な表面群から成り、普通、特異の三次元構造の特徴および特異の電荷特徴を有する。高次構造エピトープおよび非高次構造エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下において失われるという点で区別される。
【0050】
用語「保存的改変変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的改変変異体は、同一のもしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸を指す、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のために、多くの機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。たとえば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されるすべての位置で、コドンは、コードポリペプチドを改変することなく、記載される対応するコドンのいずれかに改変することができる。そのような核酸変異(nucleic acid variation)は、保存的改変変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書におけるすべての核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレント変異を示す。当業者は、核酸におけるそれぞれのコドンを(通常、メチオニンについての唯一のコドンであるAUGおよび通常、トリプトファンについての唯一のコドンであるTGG以外は)、機能的に同一の分子を得るために改変することができることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異はそれぞれ、それぞれの記載される配列において潜在的に含まれる。
【0051】
ポリペプチド配列については、「保存的改変変異体」は、化学的に類似するアミノ酸とのアミノ酸の置換をもたらす、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失、または付加を含む。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。そのような保存的改変変異体は、本開示の多型変異体、種間相同体、および対立遺伝子に加えてのものであり、それらを排除するものではない。以下の8つの群が、互いに保存的置換となるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(たとえばCreighton、Proteins(1984年)を参照されたい)。
【0052】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連における用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、同じである2つ以上の配列または部分配列を指す。2つの配列が、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用してまたは手動のアライメントおよび目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウまたは指定領域に関して、比較され、一致を最大にするようにアライメントされた場合に、特定の百分率の同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する場合(つまり、特定の領域に関してまたは特定されない場合、全配列に関して60%の同一性、必要に応じて65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性)、2つの配列は「実質的に同一である」。必要に応じて、同一性は、長さが少なくとも約50ヌクレオチド(もしくは10アミノ酸)である領域にわたってまたはより好ましくは、長さが100〜500もしくは1000以上のヌクレオチド(または20、50、もしくは200以上のアミノ酸)である領域にわたって存在する。
【0053】
配列比較については、典型的に、一方の配列は、試験配列がそれに対して比較される参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターに入力され、必要ならば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターを使用することができるまたは代替パラメーターを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比べた試験配列についてのパーセント配列同一性を計算する。同一性について2つの配列を比較する場合、配列は、隣接する必要はないが、いかなるギャップも、全体的なパーセント同一性を低下させるペナルティーをそれに課す。blastnについては、デフォルトパラメーターは、ギャップオープニングペナルティー=5およびギャップエクステンションペナルティー=2である。blastpについては、デフォルトパラメーターは、ギャップオープニングペナルティー=11およびギャップエクステンションペナルティー=1である。
【0054】
本明細書において使用される「比較ウィンドウ」は、20〜600、普通約50〜約200、より普通では約100〜150を含むが、これらに限定されない、隣接する位置の数のうちいずれか1つのセグメントに対する言及を含み、配列は、2つの配列が最適にアライメントされた後に、同数の隣接する位置の参照配列と比較されてもよい。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、たとえばSmithおよびWaterman(1970年)Adv. Appl. Math. 2巻:482cの局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48巻:443頁、1970年の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁、1988年の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group, 575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動のアライメントおよび目視検査によって(たとえばBrentら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc.(ringbou編、2003年)を参照されたい)、行うことができる。
【0055】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら、Nuc. Acids Res. 25巻:3389〜3402頁、1977年;およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁、1990年において記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードとアライメントした場合に、正の値の閾値スコアTと一致するまたはそれを満たす、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、ハイスコアリング配列ペア(HSP)を最初に同定することを伴う。Tは、近接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上掲)。これらの最初の近接ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見つけるために検索を始める種としての役割を果たす。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加する限り、それぞれの配列に沿って両方向に拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(一致する残基のペアについてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティースコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスは、累積スコアを計算するために使用される。それぞれの方向におけるワードヒットの拡張は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少した場合に;1つ以上の負のスコアリング残基アライメントの蓄積により累積スコアが0以下になった場合に;または一方の配列の末端に到達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列については)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、3のワード長および10の期待値(E)および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:10915頁、1989年を参照されたい)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較をデフォルトとして使用する。
【0056】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計分析をも実行する(たとえばKarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873〜5787頁、1993年を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然生じる確率の指標を提供する最も小さな確率の和(P(N))である。たとえば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最も小さな確率の和が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は、参照配列に類似していると考えられる。
【0057】
上記に述べられる配列同一性の百分率以外に、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという他の指標は、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、下記に記載されるように、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して得られる抗体と免疫学的に交差反応性であるということである。したがって、ポリペプチドは、典型的に、たとえば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという他の指標は、2つの分子またはそれらの相補体が下記に記載されるように、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするということである。さらに、2つの核酸配列が実質的に同一であるという他の指標は、配列を増幅するために同じプライマーを使用することができるということである。
【0058】
用語「作動可能に連結する」は、2つ以上のポリヌクレオチド(たとえばDNA)セグメントの間の機能的な関係を指す。典型的に、それは、転写配列との転写調節配列の機能的な関係を指す。たとえば、プロモーター配列またはエンハンサー配列は、それが、適切な宿主細胞または他の発現系において、コード配列の転写を刺激するまたは調整する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写配列に作動可能に連結されているプロモーター転写調節配列は、転写配列に物理的に隣接している、つまり、それらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどのいくつかの転写調節配列は、それらがその転写を増強するコード配列のすぐ近くに物理的に隣接するまたは配置する必要がない。
【0059】
用語「ベクター」は、それが連結された他のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド分子を指すように意図される。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがその中にライゲーションされてもよい環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの他のタイプは、ウイルスベクターであり、これは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムの中にライゲーションされてもよい。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製ができる(たとえば細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入すると宿主細胞のゲノムの中に組み込むことができ、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが作用的に連結される遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と本明細書において呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をしていることが多い。本明細書では、プラスミドが最も共通して使用される形態のベクターであるので、「プラスミド」および「ベクター」は、区別なく使用され得る。しかしながら、本開示は、等価な機能を果たす、ウイルスベクター(たとえば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、発現ベクターの他のそのような形態を含むように意図される。
【0060】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入される細胞を指す。そのような用語が特定の対象細胞だけでなくそのような細胞の子孫も指すように意図されることが理解されたい。ある種の改変が変異または環境上の影響に起因して続く世代に生じるかもしれないので、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書において使用されるように用語「宿主細胞」の範囲内になお含まれる。
【0061】
用語「標的抗原」は、それに対して親免疫グロブリンが起されるまたは別の方法で生成される(たとえばファージディスプレーによって)抗原を指す。
【0062】
用語「非変異免疫グロブリン」は、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を含まない免疫グロブリンを指す。本明細書において使用されるように、非変異免疫グロブリンは、変異を有するおよび有していない免疫グロブリンのオリゴマー化傾向またはコンジュゲーション効率の比較のための仮想の構築物であってもよい。例として、ヒト化変異およびコンジュゲーションの目的のためのシステインへの変異を含むネズミ抗体は、非変異免疫グロブリンではない。非変異免疫グロブリンは、ヒト化変異を有するが、システインへの変異を有していない抗体とする。変異が、コンジュゲーションのための部位を提供することを含む1超の目的を果たすように意図される場合、非変異免疫グロブリンは、そのような変異を含まない。
【0063】
用語「凝集モチーフ」は、以下のプロセスに基づいて、グループ化された残基のセットを指す。最初に、0.15を超えるSAP(5Å半径)を有する残基が同定され、次いで、0.15を超えるSAP(5Å半径)を有するそれぞれの残基の5Å内の残基がすべて同定される。モチーフは、次いで、0.15を超えるSAP(5Å半径)を有する残基および0.15を超えるSAP(5Å半径)を有する残基の5Å内の0.0を超えるSAP(5Å半径)を有するすべての残基となる。共通の残基を有する残りのモチーフがなくなるまで、共通の少なくとも1つの残基を有するいかなるそのようなモチーフも、繰り返し、合体して、より大きなモチーフになる。これらの残りのモチーフまたは残基のセットは凝集モチーフを構成する。
【0064】
免疫グロブリン残基が、本明細書において番号によって表される場合、残基番号は、被験体の免疫グロブリン配列がヒトIgG1免疫グロブリンに対してアライメントされる場合に、IgG1分子における対応する残基のKabatの番号を指す。参考として、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4定常ドメインをアライメントする。
【0065】
【化1】

【0066】
【化2】

【0067】
【化3】

ドメインおよびVドメインのアライメントは、Ewert、Honegger、およびPluechthun、Methods 34巻(2004年)184〜199頁において見つけることができる。
【0068】
本発明の免疫グロブリンコンジュゲート
本明細書における本発明は、免疫グロブリンの表面の残基の少なくとも1つの変異を有する免疫グロブリンを含む免疫グロブリンコンジュゲートであって、該変異が、システイン残基による置換である、免疫グロブリンコンジュゲートに関する。置換システイン残基は、例として細胞傷害剤(たとえばドキソルビシンもしくは百日咳毒素などの毒素)、フルオレセインもしくはローダミンのような蛍光色素などの蛍光体、画像化もしくは放射線療法用の金属用のキレート化剤、ペプチジルもしくは非ペプチジル標識もしくは検出タグ、またはポリエチレングリコールの様々な異性体などの浄化改変剤(clearance−modifying agent)、第3の成分に結合するペプチド、または他の炭水化物もしくは親油性剤であってもよい原子または分子にコンジュゲートされる。さらなる実施形態では、分子は、酵素、ペプチド、ペプチド模倣薬、siRNA、マイクロRNA、およびRNAミメティックを含むRNA分子などのヌクレオチド、またはアプタマーであってもよい。
【0069】
標識免疫グロブリンコンジュゲート
特定の実施形態では、本発明の改変免疫グロブリンは、反応性のシステインチオール基を通して免疫グロブリンに共有結合することができる、任意の標識成分とコンジュゲートされてもよい(Singhら(2002年)Anal. Biochem. 304巻:147〜15頁;Harlow E.およびLane, D.(1999年)Using Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.;Lundblad R. L.(1991年)Chemical Reagents for Protein Modification、第2版 CRC Press、Boca Raton、Fla.)。付着した標識は、たとえば、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)たとえばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を生ずるように、第1または第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを改変するために第2の標識と相互作用する;(iii)抗原もしくはリガンドとの相互作用を安定化するまたは抗原もしくはリガンドとの結合の親和性を増加させる;(iv)電荷、疎水性、形状、もしくは他の物理的パラメーターによって移動度、たとえば電気泳動移動度もしくは細胞透過性に影響を与える、または(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、もしくはイオン複合体形成を調整するために捕捉成分を提供するように機能することができる。
【0070】
標識免疫グロブリンコンジュゲートは、たとえば、特異的な細胞、組織、または血清において被験体の抗原の発現を検出するための診断アッセイに有用であってもよい。診断の適用のために、免疫グロブリンは、典型的に、検出可能な成分を用いて標識されるであろう。以下の典型的なカテゴリーに一般に分類することができる多数の標識が入手可能である:
(a)H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Ga、86Y、99Tc、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、または213Biなどの放射性同位体(放射性核種)。放射性同位体標識免疫グロブリンは、受容体標的画像化実験に有用である。免疫グロブリンは、Current Protocols in Immunology、第1および2巻、Coligenら編 Wiley−Interscience、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)において記載される技術を使用して、放射性同位体金属に結合する、該金属とキレート化する、またはそうでなければ該金属と複合体を形成するリガンド試薬であって、工学的に作製された免疫グロブリンのシステインチオールと反応性があるリガンド試薬を用いて、免疫グロブリンを標識することができる。金属イオンと複合体を形成してもよいキレート化リガンドは、DOTA、DOTP、DOTMA、DTPA、およびTETA(Macrocyclics、Dallas、Tex.)を含む。放射性核種は、本発明の抗体−薬剤コンジュゲートとの複合体形成を介して標的にすることができる(Wuら(2005年)Nature Biotechnology 23巻(9号):1137〜1146頁)。
【0071】
画像化実験のための免疫グロブリン標識として適している金属キレート複合体が開示される:米国特許第5,342,606;5,428,155;5,316,757;5,480,990;5,462,725;5,428,139;5,385,893;5,739,294;5,750,660;5,834,456;Hnatowichら(1983年)J. Immunol. Methods 65巻:147〜157頁;Mearesら(1984年)Anal. Biochem. 142巻:68〜78頁;Mirzadehら(1990年)Bioconjugate Chem. 1巻:59〜65頁;Mearesら(1990年)J. Cancer 1990年、Suppl.10:21〜26頁;Izardら(1992年)Bioconjugate Chem. 3巻:346〜350頁;Nikulaら(1995年)Nucl. Med. Biol. 22巻:387〜90頁;Cameraら(1993年)Nucl. Med. Biol. 20巻:955〜62頁;Kukisら(1998年)J. Nucl. Med. 39巻:2105〜2110頁;Verelら(2003年)J. Nucl. Med. 44巻:1663〜1670頁;Cameraら(1994年)J. Nucl. Med. 21巻:640〜646頁;Rueggら(1990年)Cancer Res. 50巻:4221〜4226頁;Verelら(2003年)J. Nucl. Med. 44巻:1663〜1670頁;Leeら(2001年)Cancer Res. 61巻:4474〜4482頁;Mitchell,ら(2003年)J. Nucl. Med. 44巻:1105〜1112頁;Kobayashiら(1999年)Bioconjugate Chem. 10巻:103〜111頁;Miedererら(2004年)J. Nucl. Med. 45巻:129〜137頁;DeNardoら(1998年)Clinical Cancer Research 4巻:2483〜90頁;Blendら(2003年)Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18巻:355〜363頁;Nikulaら(1999年)J. Nucl. Med. 40巻:166〜76頁;Kobayashiら(1998年)J. Nucl. Med. 39巻:829〜36頁;Mardirossianら(1993年)Nucl. Med. Biol. 20巻:65〜74頁;Roselliら(1999年)Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals、14巻:209〜20頁。
【0072】
(b)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、FITC、5−カルボキシフルオレスセイン、6−カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型;TAMRAを含むローダミン型;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサス赤色;およびそのアナログなどの蛍光標識。蛍光性標識は、たとえばCurrent Protocols in Immunology、前掲において開示される技術を使用して、免疫グロブリンにコンジュゲートすることができる。蛍光色素試薬および蛍光標識試薬は、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene、Oreg.)およびPierce Biotechnology,Inc.(Rockford、Ill.)から市販で入手可能であるものを含む。
【0073】
c)様々な酵素−基質標識は入手可能であるまたは開示されている(米国特許第4,275,149号)。酵素は、一般に、様々な技術を使用して測定することができる発色性基質の化学変換を触媒する。たとえば、酵素は、基質における変色を触媒し得、これは、分光光度的に測定することができる。その代わりに、酵素は、基質の蛍光または化学発光を改変し得る。蛍光における変化を定量化するための技術は、上記に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起するようになり、次いで、測定することができる(たとえばケミルミノメーターを使用して)光を放射し得るかまたは蛍光受容体にエネルギーを提供する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(たとえばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(たとえばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、ヘテロ環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。抗体に酵素をコンジュゲートするための技術は、O’Sullivanら(1981年)「Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay」、Methods in Enzym.(編J. Langone & H. Van Vunakis)、Academic Press、New York、73巻:147〜166頁において記載されている。
【0074】
酵素−基質の組合せの例は、たとえば、(i)基質として過酸化水素(hydrogen peroxidase)を用いるホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、過酸化水素は、色素前駆体を酸化する(たとえばオルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB));(ii)発色性基質としてパラ−ニトロフェニルホスフェートを用いるアルカリホスファターゼ(AP);および(iii)発色性基質(たとえばp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド(p−nitrophenyl−β−D−galactosidase))または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシドを用いるβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)を含む。多数の他の酵素−基質の組合せは、当業者に入手可能である。一般的な総説については、米国特許第4,275,149号および第4,318,980号を参照されたい。
【0075】
標識は、本発明の改変免疫グロブリンと間接的にコンジュゲートされてもよい。たとえば、免疫グロブリンは、ビオチンとコンジュゲートすることができ、上記に言及される3つの広範囲のカテゴリーの標識のいずれも、アビジンもしくはストレプトアビジンとコンジュゲートすることができるまたはその逆も成立する。ビオチンは、ストレプトアビジンに選択的に結合し、したがって、標識は、この間接的な方法において免疫グロブリンとコンジュゲートすることができる。その代わりに、免疫グロブリン変異体との標識の間接的なコンジュゲーションを達成するために、免疫グロブリン変異体は、小さなハプテン(たとえばジゴキシン)とコンジュゲートし、上記に言及される様々なタイプの標識のうちの1つを、抗ハプテンポリペプチド変異体(たとえば抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートする。したがって、免疫グロブリン変異体との標識の間接的なコンジュゲーションは、達成することができる(Hermanson, G.(1996年)in Bioconjugate Techniques Academic Press、San Diego)。
【0076】
本発明の改変免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートは、ELISA、競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどの任意の公知のアッセイ方法において使用されてもよい(Zola(1987年)Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁、CRC Press, Inc.)。
【0077】
検出標識は、結合事象または認識事象の場所を突き止める、視覚化する、および定量するのに有用であり得る。本発明の標識免疫グロブリンコンジュゲートは、細胞表面受容体を検出することができる。検出可能に標識された免疫グロブリンコンジュゲートについての他の使用は、蛍光標識抗体とビーズをコンジュゲートすることおよびリガンドの結合に際して蛍光シグナルを検出することを含む、ビーズベースの免疫捕捉法である。類似する結合検出方法は、抗体−抗原相互作用を測定し、検出するために表面プラズモン共鳴(SPR)効果を利用する。
【0078】
蛍光色素および化学発光色素などの検出標識(Briggsら(1997年)「Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,」J. Chem. Soc.、Perkin−Trans. 1巻:1051〜1058頁)は、検出可能なシグナルを提供し、一般に、好ましくは以下の特性を有する免疫グロブリンを標識するのに適用可能である:(i)少量の免疫グロブリンを無細胞および細胞ベースのアッセイの両方において感度良く検出することができるように、標識免疫グロブリンは、低バックグラウンドと共に非常に高いシグナルを生成するべきである;ならびに(ii)蛍光シグナルが、著しい光退色を伴うことなく観察され、モニターされ、記録され得るように、標識抗体は、光安定性であるべきである。膜または細胞表面、とりわけ生きた細胞への標識抗体の細胞表面結合を含む適用については、標識は、好ましくは、(iii)有効なコンジュゲート濃度および検出感度を達成するために良好な水溶性を有するならびに(iv)細胞の正常な代謝プロセスを破壊しないまたは早発性の細胞死を引き起こさないように生細胞に対して無毒性である。
【0079】
細胞の蛍光強度の直接定量および蛍光標識事象、たとえばペプチド−色素コンジュゲートの細胞表面結合の計数は、生きた細胞またはビーズを用いる非放射性アッセイである、混合および読み取りを自動化するシステム(FMAT(商標)8100 HTS System、Applied Biosystems、Foster City、Calif.)上で行われてもよい(Miraglia、「Homogeneous cell− and bead−based assays for high throughput screening using fluorometric microvolume assay technology」(1999年)J. of Biomolecular Screening 4巻:193〜204頁)。標識免疫グロブリンの使用はまた、細胞表面受容体結合アッセイ、免疫捕捉アッセイ、蛍光連結免疫吸着アッセイ(FLISA)、カスパーゼ切断(Zheng「Caspase−3 controls both cytoplasmic and nuclear events associated with Fas−mediated apoptosis in vivo」(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:618〜23頁;米国特許第6,372,907号)、アポトーシス(Vermes「A novel assay for apoptosis. Flow cytometric detection of phosphatidylserine expression on early apoptotic cells using fluorescein labeled Annexin V」(1995年)J. Immunol. Methods 184巻:39〜51頁)、および細胞傷害性アッセイをも含む。蛍光比色微容量アッセイ技術は、細胞表面を標的にする分子によってアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを同定するために使用することができる(Swartzman「A homogeneous and multiplexed immunoassay for high−throughput screening using fluorometric microvolume assay technology」(1999年)Anal. Biochem. 271巻:143〜51頁)。
【0080】
本発明の標識免疫グロブリンコンジュゲートは、(i)MRI(磁気共鳴画像法);(ii)MicroCT(コンピューター連動断層撮影);(iii)SPECT(シングルフォトンエミッションコンピューター連動断層撮影);(iv)PET(ポジトロンエミッション断層撮影)Chenら(2004年)Bioconjugate Chem. 15巻:41〜49頁;(v)生物発光;(vi)蛍光;および(vii)超音波などの生物医学的イメージングおよび分子イメージングの様々な方法および技術による画像化バイオマーカーおよびプローブとして有用である。免疫シンチグラフィは、放射性物質を用いて標識された抗体が、動物またはヒト患者に投与され、抗体が局在化する体内の部位で写真が撮られる画像化手順である(米国特許第6,528,624号)。画像化バイオマーカーは、客観的に測定され、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的反応の指標として評価されてもよい。バイオマーカーは、いくつかのタイプがあり得る:タイプ0は、疾患の自然経過マーカーであり、公知の臨床的指数、たとえば関節リウマチにおける滑膜炎症のMRI評価と長期的に相関する;タイプIマーカーは、たとえ、メカニズムが臨床的結果と関連し得なくても、作用のメカニズムに従って介入の効果を得る;タイプIIマーカーは、代替エンドポイントとして機能し、バイオマーカーにおける変化によりまたはバイオマーカーに由来するシグナルにより、CTで関節リウマチに測定される骨びらんなどの標的にされる応答を「検証する」という、臨床的有益性が予測され、バイオマーカーの画像化は、したがって、(i)標的タンパク質の発現、(ii)標的タンパク質への治療薬の結合、つまり選択性、ならびに(iii)クリアランスおよび半減期の薬物動態学的データに関する薬力学的(PD)治療情報を提供することができる。実験室ベースのバイオマーカーに比べてin vivoでのバイオマーカー画像化の利点には、非侵襲性の治療、定量化できる全身評価、反復、つまり複数の時点での投薬および評価、ならびに前臨床(小動物)結果を臨床(ヒト)結果に潜在的に移すことができる効果、が挙げられる。いくつかの適用では、バイオイメージングは、前臨床研究における動物実験に取って代わるまたはその数を最小限にする。
【0081】
放射性核種イメージング標識は、H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Ga、86Y、99Tc、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、または213Biなどの放射性核種を含む。放射性核種金属イオンは、DOTAなどのキレート化リンカーと複合体を形成することができる。DOTA−マレイミド(4−マレイミドブチルアミドベンジル−DOTA)(4−maleimidobutyramidobenzyl−DOTA)などのリンカー試薬は、Axworthyら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97巻(4号):1802〜1807頁)の手順に従って、クロロギ酸イソプロピル(Aldrich)を用いて活性化される4−マレイミド酪酸(Fluka)とのアミノベンジル−DOTAの反応によって調製することができる。DOTA−マレイミド試薬は、改変免疫グロブリンの遊離システインアミノ酸と反応し、抗体に対して金属複合体形成リガンドを提供する(Lewisら(1998年)Bioconj. Chem. 9巻:72〜86頁)。DOTA−NHS(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)などのキレート化リンカー標識試薬は、市販で入手可能である(Macrocyclics、Dallas、Tex.)。放射性核種標識抗体を用いる受容体標的画像化は、腫瘍組織における抗体の進行性の蓄積の検出および定量によって経路活性化のマーカーを提供することができる(Albertら(1998年)Bioorg. Med. Chem. Lett. 8巻:1207〜1210頁)。コンジュゲートされた放射性金属は、リソソーム分解後に細胞内にとどまり得る。
【0082】
ペプチド標識方法は、周知である。Haugland、2003年、Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular Probes, Inc.;Brinkley、1992年、Bioconjugate Chem. 3巻:2頁;Garman(1997年)Non−Radioactive Labelling: A Practical Approach、Academic Press、London;Means(1990年)Bioconjugate Chem. 1巻:2頁;Glazerら(1975年)Chemical Modification of Proteins. Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(T. S. WorkおよびE. Work編)American Elsevier Publishing Co.、New York;Lundblad, R. L.およびNoyes, C. M.(1984年)Chemical Reagents for Protein Modification、第IおよびII巻、CRC Press、New York;Pfleiderer, G.(1985年)「Chemical Modification of Proteins」Modern Methods in Protein Chemistry、H. Tschesche編、Walter DeGryter、BerlinおよびNew York;およびWong(1991年)Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking、CRC Press、Boca Raton、Fla.);De Leon−Rodriguezら(2004年)Chem. Eur. J. 10巻:1149〜1155頁;Lewisら(2001年)Bioconjugate Chem. 12巻:320〜324頁;Liら(2002年)Bioconjugate Chem. 13巻:110〜115頁;Mierら(2005年)Bioconjugate Chem. 16巻:240〜237頁を参照されたい。
【0083】
十分に近くで、2つの成分、蛍光レポーターおよびクエンチャーを用いて標識されたペプチドおよびタンパク質は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を受ける。レポーター基は、典型的に、一定の波長の光によって励起される蛍光色素であり、最大の明るさの放射に適切なストークスシフトを伴い、受容体またはクエンチャー基にエネルギーを転移する。蛍光色素は、フルオレセインおよびローダミンならびにそれらの誘導体などの、拡張された芳香族性を有する分子を含む。蛍光レポーターは、インタクトなペプチドにおいてクエンチャー成分によって部分的にまたは著しく消光されてもよい。ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるペプチドの切断に際して、蛍光における検出可能な増加が測定されてもよい(Knight, C.(1995年)「Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes」Methods in Enzymology、Academic Press、248巻:18〜34頁)。
【0084】
本発明の標識抗体はまた、親和性精製試薬として使用されてもよい。このプロセスでは、標識抗体は、当技術分野において周知の方法を使用して、セファデックス樹脂または濾紙のような固相上に固定される。固定された抗体は、精製されることとなる抗原を含有する試料と接触させ、その後、支持体は、固定されたポリペプチド変異体に結合する精製されることとなる抗原以外の、試料中の物質を実質的にすべて除去する、適当な溶媒を用いて洗浄される。最後に、その支持体は、ポリペプチド変異体から抗原を放出する、グリシンバッファー、pH5.0などの他の適している溶媒を用いて洗浄される。
【0085】
標識試薬は、典型的に、(i)標識抗体を形成するように、改変免疫グロブリンのシステインチオールと直接、(ii)リンカー標識中間物を形成するように、リンカー試薬と、または(iii)標識抗体を形成するように、リンカー抗体と反応し得る、反応性の官能基を持つ。標識試薬の反応性の官能基は、他の官能基もまた使用することができるが、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシンイミジルエステル(たとえばNHS、N−ヒドロキシスクシンイミド)、イソチオシアネート、塩化スルフォニル、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびホスホルアダイトを含む。
【0086】
典型的な反応性の官能基は、検出可能な標識、たとえばビオチンまたは蛍光色素のカルボキシル基置換基のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)である。標識のNHSエステルは、前もって形成され得、単離され得、精製され得、および/もしくは特徴付けられ得るかまたはそれは、in situで形成され、抗体の求核基と反応し得る。典型的に、標識のカルボキシル形態は、いくつかの組合せのカルボジイミド試薬、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドまたはウロニウム試薬、たとえばTSTU(O−−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、もしくはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などの活性化剤、およびN−ヒドロキシスクシンイミドと反応することによって活性化され、標識のNHSエステルを生ずる。いくつかの場合では、標識および抗体は、1ステップで、標識のin situ活性化および抗体との反応によってカップルされ、標識抗体コンジュゲートを形成し得る。他の活性化試薬およびカップリング試薬は、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾ−1−イル)−1−1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TFFH(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルウロニウム2−フルオロ−ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、EEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1−(メシチレン−2−スルフォニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、およびアリールスルフォニルハライド、たとえばトリイソプロピルベンゼンスルフォニルクロリドを含む。
【0087】
したがって、本発明の目的は、診断ツールとしての、段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を提供することである。
【0088】
したがって、本発明の目的は、高分子量タンパク質についての標準物質としての、段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を提供することである。
【0089】
免疫グロブリンポリマーコンジュゲート
さらなる実施形態では、本発明はまた、免疫グロブリンがポリマーと連結される免疫グロブリンコンジュゲートをも想定する。典型的に、ポリマーは、免疫グロブリン成分が、生理的環境などの水性環境において沈殿しないように、水溶性である。適しているポリマーの例は、アシル化のための活性なエステルまたはアルキル化のためのアルデヒドなどの、単一の反応性基を有するように改変されたものである。このように、重合度は、制御することができる。反応性のアルデヒドの例は、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはモノ−(C〜C10)アルコキシ、またはそのアリールオキシ誘導体である(たとえばHarrisら、米国特許第5,252,714号を参照されたい)。ポリマーは、分岐または非分岐であってもよい。さらに、ポリマーの混合物は、抗体成分とのコンジュゲートを産生するために使用することができる。
【0090】
適している水溶性ポリマーは、限定を伴うことなく、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−PEG、モノ−(C〜C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、ポリ−(N−ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−炭酸スクシンイミジルPEG、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(たとえばグリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマーを含む。適しているPEGは、たとえば、5,000、12,000、20,000、および25,000を含む、約600〜約60,000の分子量を有していてもよい。コンジュゲートはまた、そのような水溶性ポリマーの混合物を含むことができる。
【0091】
実例として、ポリアルキルオキシド成分は、免疫グロブリン成分のN末端に付着することができる。PEGは、1つの適しているポリアルキルオキシドである。たとえば、免疫グロブリンは、PEGを用いて改変されてもよい(「PEG化」として公知のプロセス)。免疫グロブリンのPEG化は、当技術分野において公知のPEG化反応のうちのいずれかによって実行することができる(たとえば欧州特許第0 154 316号、Delgadoら、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9巻:249頁(1992年)、DuncanおよびSpreafico、Clin. Pharmacokinet. 27巻:290頁(1994年)、およびFrancisら、Int J Hematol 68巻:1頁(1998年)を参照されたい)。たとえば、PEG化は、反応性のポリエチレングリコール分子を用いるアシル化反応またはアルキル化反応によって実行することができる。代替アプローチでは、免疫グロブリンコンジュゲートは、活性化PEGを縮合することによって形成され、PEGの末端のヒドロキシ基またはアミノ基は、活性化リンカーと置換されている(たとえばKarasiewiczら、米国特許第5,382,657号を参照されたい)。
【0092】
アシル化によるPEG化は、典型的に、免疫グロブリンとPEGの活性エステル誘導体を反応させることを必要とする。活性化PEGエステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミドにエステル化されたPEGである。本明細書において使用されるように、用語「アシル化」は、免疫グロブリンおよび水溶性ポリマーの間の以下のタイプの連結を含む:アミド、カルバメート、ウレタンなど。アシル化によってPEG化抗BCMA−TACI免疫グロブリンを調製する方法は、典型的に、(a)1つ以上のPEG基が免疫グロブリンに付着する条件下で、PEG(PEGのアルデヒド誘導体の反応性エステルなど)と免疫グロブリンを反応させるステップおよび(b)反応産物(複数可)を得るステップを含む。一般に、アシル化反応のための最適な反応条件は、公知のパラメーターおよび所望の結果に基づいて決定される。たとえば、PEG:抗体成分の比が大きいほど、ポリPEG化抗体成分産物の百分率は大きくなる。
【0093】
アシル化によるPEG化の産物は、典型的に、ポリPEG化免疫グロブリン産物であり、リジンε−アミノ基が、アシル連結基を介してPEG化される。接続する連結の例は、アミドである。典型的に、より高次のPEG化を有するいくつかの種が反応条件に依存して形成されてもよいが、結果として生じる免疫グロブリン成分は、少なくとも95%がモノ、ジ、またはトリペグ化されたものである。PEG化された種は、透析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどのような標準的な精製法を使用して、コンジュゲートされていない免疫グロブリン成分から分離することができる。
【0094】
アルキル化によるPEG化は、一般に、還元剤の存在下において免疫グロブリン成分とPEGの末端アルデヒド誘導体を反応させることを伴う。PEG基は、−−(CH)−−NH基を介してポリペプチドに付着することができる。
【0095】
モノPEG化産物を産生するための還元アルキル化を介しての誘導体化は、誘導体化に利用可能な様々なタイプの第一級アミノ基の特異な反応性を利用する。典型的に、反応は、リジン残基のε−アミノ基およびタンパク質のN末端残基のα−アミノ基の間のpKa差を利用することを可能にするpHで実行される。そのような選択的な誘導体化によって、タンパク質への、アルデヒドなどの反応性基を含有する水溶性ポリマーの付着が、制御される。ポリマーとのコンジュゲーションは、リジン側鎖アミノ基などの他の反応性基の著しい改変を伴うことなく、タンパク質のN末端で主に生じる。
【0096】
モノポリマー抗体成分コンジュゲート分子の実質的に均質の集団を産生するための還元アルキル化は、(a)抗体成分のアミノ末端のα−アミノ基の選択的な改変を可能にするのに適しているpHでの還元アルキル化条件下で、反応性のPEGと抗体成分を反応させるステップおよび(b)反応産物(複数可)を得るステップを含むことができる。還元アルキル化に使用される還元剤は、水溶液中で安定であるべきであり、好ましくは、還元アルキル化の最初のプロセスにおいて形成されるシッフ塩基のみを還元し得るべきものである。好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、およびピリジンボランを含む。
【0097】
モノポリマー免疫グロブリンコンジュゲートの実質的に均質の集団については、還元アルキル化反応条件は、免疫グロブリンのN末端への水溶性ポリマー成分の選択的な付着を可能にするものである。そのような反応条件は、一般に、リジンアミノ基およびN末端のα−アミノ基の間のpKa差を提供する。pHはまた、使用されることとなるタンパク質に対するポリマーの比に影響を与える。一般に、N末端α−基が反応性でないほど、より多くのポリマーが最適条件を達成するために必要となるので、pHがより低いほど、タンパク質に対してポリマーが大過剰であることが所望される。pHがより高い場合、より多くの反応性基が利用可能であるので、ポリマー:抗体成分は、多量である必要がない。典型的に、pHは、3〜9または3〜6の範囲内にある。
【0098】
ポリペプチド成分および水溶性ポリマー成分を含むコンジュゲートを産生するための一般的な方法は、当技術分野において公知である。たとえばKarasiewiczら、米国特許第5,382,657号、Greenwaldら、米国特許第5,738,846号、Nieforthら、Clin. Pharmacol. Ther. 59巻:636頁(1996年)、Monkarshら、Anal Biochem. 247巻:434頁(1997年))を参照されたい。
【0099】
免疫グロブリン薬剤コンジュゲート
さらなる実施形態では、本発明は、免疫グロブリンが薬剤または細胞傷害性成分にコンジュゲートされる免疫グロブリンコンジュゲートを含む。免疫グロブリン薬剤コンジュゲートの薬剤成分は、たとえば、細胞傷害性効果または細胞増殖抑制性効果を有する任意の化合物、成分、または基を含んでいてもよい。薬剤成分は、限定を伴うことなく、(i)微小管阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはDNA挿入剤(intercalator)として機能し得る化学療法剤;(ii)酵素的に機能し得るタンパク毒素;および(iii)放射性同位体を含む。
【0100】
典型的な薬剤成分は、マイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン、トリコテセン、CC1065、カリケアマイシンおよび他のエンジイン抗生物質、タキサン、アントラサイクリン、ならびにその立体異性体、同配体、アナログ、または誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0101】
マイタンシノイド薬剤成分としての使用に適しているメイタンシン化合物は、当技術分野において周知であり、公知の方法に従って天然源から単離することができる、遺伝子工学技術を使用して産生することができる(Yuら(2002年)PROC. NAT. ACAD. SCI.(USA)99巻:7968〜7973頁を参照されたい)、またはメイタンシノールおよびメイタンシノール類似体は、公知の方法によって合成により調製することができる。
【0102】
典型的なマイタンシノイド薬剤成分は、C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサミトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元によって調製される);C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および第4,307,016号)(StreptomycesもしくはActinomycesを使用する脱メチル化またはLAHを使用する脱塩素化によって調製される);ならびにC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを使用するアシル化によって調製される)および他の位置に改変を有するものなどの改変芳香環を有するものを含む。
【0103】
典型的なマイタンシノイド薬剤成分はまた、C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(HSまたはPとのメイタンシノールの反応によって調製される);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH OR)(米国特許第4,331,598号);C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CHOHまたはCHOAc)(米国特許第4,450,254号)(Nocardiaから調製される);C−−I 5−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(Streptomycesによるメイタンシノールの変換によって調製される);C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および第4,315,929号)(Trewia nudlfloraから単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および第4,322,348号)(Streptomycesによるメイタンシノールの脱メチル化によって調製される);ならびに4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製される)などの改変を有するものをも含む。メイタンシン化合物上の多くの位置は、連結のタイプに依存して、連結位置として有用であることが公知である。たとえば、エステル結合を形成するのに、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルを用いて改変されるC−14位、ヒドロキシル基を用いて改変されるC−15位、およびヒドロキシル基を有するC−20位はすべて、適している。
【0104】
メイタンシン化合物は、微小管タンパク質、チューブリンの重合の阻害を通して、有糸分裂中に微小管の形成を阻害することによって細胞増殖を阻害する(Remillardら(1975年)Science 189巻:1002〜1005頁)。メイタンシンおよびマイタンシノイドは、非常に細胞傷害性であるが、癌治療におけるそれらの臨床的使用は、主として腫瘍に対するそれらの不十分な選択性に起因するそれらの激しい全身性副作用によって、非常に制限されている。メイタンシンを用いる臨床試験は、中枢神経系および胃腸系に対する深刻な有害作用により中止された(Isselら(1978年)Can. Treatment. Rev. 5巻:199〜207頁)。
【0105】
マイタンシノイド薬剤成分は、免疫グロブリン薬剤コンジュゲートにおいて魅力的な薬剤成分である、なぜなら、それらは、(i)発酵または化学改変、発酵産物の誘導体化によって調製するのに比較的利用可能であり、(ii)抗体への、非ジスルフィドリンカーを通してのコンジュゲーションに適している官能基を用いる誘導体化に適用可能であり、(iii)血漿中で安定しており、かつ(iv)様々な腫瘍細胞系に対して有効であるからである(米国特許出願公開第2005/0169933号;WO 2005/037992;米国特許第5,208,020号)。
【0106】
他の薬剤成分でのように、マイタンシノイド薬剤成分の立体異性体はすべて、本発明の化合物として想定される。
【0107】
免疫グロブリン薬剤コンジュゲートの薬剤成分はまた、ドラスタチンならびにそれらのペプチドアナログおよび誘導体であるオーリスタチン(米国特許第5,635,483号;第5,780,588号)をも含む。ドラスタチンおよびオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核分裂および細胞分裂に干渉し(Woykeら(2001年)Antimicrob. Agents and Chemother. 45巻(12号):3580〜3584頁)、抗癌活性(米国特許第5,663,149号)および抗真菌活性(Pettitら(1998年)Antimicrob. Agents Chemother. 42巻:2961〜2965頁)を有することが示された。ドラスタチンまたはオーリスタチンの薬剤成分の様々な形態は、ペプチド薬剤成分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を通して抗体に共有結合され得る(WO 02/088172;Doroninaら(2003年)Nature Biotechnology 21巻(7号):778〜784頁;Franciscoら(2003年)Blood 102巻(4号):1458〜1465頁)。
【0108】
典型的なオーリスタチンの実施形態は、WO2005/081711;Senterら、Proceedings of the American Association for Cancer Research、第45巻、Abstract Number 623、2004年3月28日に発表、において開示される、N末端連結モノメチルオーリスタチン薬剤成分DEおよびDFを含み、それぞれの開示は、それらの全体が参照によって明らかに組み込まれる。
【0109】
典型的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片の間でペプチド結合を形成することによって調製することができる。そのようなペプチド結合は、たとえば、ペプチド化学の分野において周知である液相合成方法に従って調製することができる(E. SchroderおよびK. Luibke「The Peptides」、第1巻、76〜136頁、1965年、Academic Pressを参照されたい)。
【0110】
薬剤成分は、カリケアマイシンならびにそのアナログおよび誘導体を含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断をもたらすことができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5,712,374号;第5,714,586号;第5,739,116号;第5,767,285号;第5,770,701号、第5,770,710号;第5,773,001号;第5,877,296号を参照されたい。使用されてもよいカリケアマイシンの構造類似体は、γ、α、α、N−アセチル−γ、PSAG、およびθを含むが、これらに限定されない(HinmanらCancer Research 53巻:3336〜3342頁(1993年)、LodeらCancer Research 58巻:2925〜2928頁(1998年)。
【0111】
タンパク毒素は、たとえば、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosaに由来する)、リシンA鎖(Vitettaら(1987年)Science、238巻:1098頁)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセン(tricothecene)(WO 93/21232)を含む。
【0112】
治療用の放射性同位体は、たとえば、32P、33P、90Y、125I、131I、131In、153Sm、186Re、188Re、211At、212Bi、212Pb、およびLuの放射性同位体を含む。
【0113】
放射性同位体または他の標識は、公知の方法においてコンジュゲート中に組み込まれてもよい(Frakerら(1978年)Biochem. Biophys. Res. Commun. 80巻:49〜57頁;「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」Chatal、CRC Press 1989年)。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための典型的なキレート化剤である(WO 94/11026)。
【0114】
リンカー
本発明の特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも2つの反応部位を有するリンカー分子を含む。一方の反応部位は、免疫グロブリンの置換システイン残基に結合しており、他方の反応部位は、原子または分子に結合している。「リンカー」は、免疫グロブリンコンジュゲートを形成するために1つ以上の薬剤成分および免疫グロブリンユニットを連結するために使用することができる二官能成分または多官能成分である。免疫グロブリンコンジュゲートは、薬剤または他の分子および免疫グロブリンに結合するための反応性の官能基を有するリンカーを使用して好都合に調製することができる。システインへの置換を有する改変免疫グロブリンのシステインチオールは、リンカー試薬、薬剤成分、または薬剤−リンカー中間体の官能基と結合を形成することができる。
【0115】
一態様では、リンカーは、抗体上に存在する求核システインに対して反応性の求電子基を有する反応部位を有する。抗体のシステインチオールは、リンカー上の求電子基と反応性であり、リンカーに対して共有結合を形成する。有用な求電子基は、マレイミド基およびハロアセトアミド基を含むが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の改変免疫グロブリンは、Klussmanら(2004年)、Bioconjugate Chemistry 15巻(4号):765〜773頁の766頁のコンジュゲーション方法によれば、マレイミドまたはα−ハロカルボニルなどの求電子官能基を有するリンカー試薬または薬剤−リンカー中間体と反応する。
【0117】
リンカーは、アミノ酸残基を含んでいてもよい。アミノ酸ユニットは、存在する場合、免疫グロブリンを本発明の免疫グロブリン薬剤コンジュゲートの薬剤成分に連結する。
【0118】
アミノ酸リンカーは、たとえば、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチド、またはドデカペプチドユニットであってもよい。アミノ酸ユニットを含むアミノ酸残基は、天然に存在するものならびにシトルリンなどの微量アミノ酸および天然に存在しないアミノ酸アナログを含む。
【0119】
アミノ酸ユニットは、薬剤成分を遊離するために、腫瘍関連プロテアーゼを含む1つ以上の酵素によって酵素的に切断することができる。
【0120】
他の実施形態では、リンカーは、抗体への、分岐多官能リンカー成分を通しての1つを超える薬剤成分の共有結合のための樹状タイプのリンカーであってもよい(Sunら(2002年)Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12巻:2213〜2215頁;Sunら(2003年)Bioorganic & Medicinal Chemistry 11巻:1761〜1768頁)。樹状リンカーは、抗体に対する薬剤のモル比、つまり負荷を増加させることができ、これは、免疫グロブリン薬剤コンジュゲートの効能と関係する。したがって、改変免疫グロブリンが、わずか1つの反応性のシステインチオール基しか持たない場合、多くの薬剤成分は、樹状リンカーを通して付着されてもよい。
【0121】
他の実施形態では、リンカーは、可溶性または反応性が調整された基と置換されてもよい。たとえば、スルホネート(−−SO)またはアンモニウムなどの荷電置換基は、免疫グロブリンコンジュゲートを調製するために使用される合成経路に依存して、試薬の水可溶性を増加させ得、そして、免疫グロブリンもしくは薬剤成分とのリンカー試薬のカップリング反応を促進し得るか、または薬剤成分との免疫グロブリン−リンカー中間体もしくは免疫グロブリンとの薬剤−リンカー中間体のカップリング反応を促進し得る。
【0122】
本発明の化合物は、Pierce Biotechnology,Inc.、Customer Service Department、P.O.Box 117、Rockford、Ill.61105 U.S.A、U.S.A 1−800−874−3723、International +815−968−0747から市販で入手可能であるビス−マレイミド試薬:DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BM(PEO)、およびBM(PEO)を含む、リンカー試薬:BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、およびスルホ−SMPBならびにSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾアート)を用いて調製される免疫グロブリンコンジュゲートを明らかに想定するが、これらに限定されない。2003〜2004年 Applications Handbook and Catalogの467〜498頁を参照されたい。ビス−マレイミド試薬は、連続してまたは同時に、チオール含有薬剤成分、標識、またはリンカー中間体へのシステインのチオール基の付着を可能にする。システイン、薬剤成分、標識、またはリンカー中間体のチオール基と反応性である、マレイミドを除いた他の官能基は、制限無しに、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート、およびイソチオシアネートを含む。
【0123】
したがって、本発明の目的は、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH)、254(CH)、286(CH)、298(CH)、および326(CH)から成る群から選択される残基に有する免疫グロブリンと、該システイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む免疫グロブリンコンジュゲートを提供することである。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、248(CH2)および326(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、25(V)および286(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、254(CH2)および298(V)から成る群から選択される残基にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも2つの反応部位を有するリンカー分子をさらに含み、第1の反応部位は、免疫グロブリンのシステイン残基に結合しており、第2の反応部位は、原子または分子に結合している。リンカー分子を有する前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、リンカー分子は、ヒドラゾン、ジスルフィド、ペプチド、キレート化剤、およびマレイミドから成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、原子または分子は、放射性核種、化学療法剤、微生物毒素、植物毒素、ポリマー、炭水化物、サイトカイン、蛍光標識、発光標識、酵素−基質標識、酵素、ペプチド、ペプチド模倣薬、ヌクレオチド、siRNA、マイクロRNA、RNAミメティック、およびアプタマーから成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、原子または分子は、90Y、131I、67Cu、177Lu、213Bi、211At、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、マイタンシノイド、オーリスタチン、アントラサイクリン、PseudomonasエキソトキシンA、ジフテリア毒素、リシン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、およびマンノシル残基から成る群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、原子または分子は、非変異免疫グロブリンの免疫原性を低下させる。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、原子または分子は、非変異免疫グロブリンの免疫原性を増加させる。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性をさらに含む。
【0124】
したがって、本発明の目的は、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に含む改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンを提供することである。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、248(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、25(V)、および286(CH2)から成る群から選択される残基にある。特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、残基254(CH2)にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性を含む。
【0125】
免疫グロブリン薬剤コンジュゲートの調製
一態様では、本発明は、免疫グロブリンコンジュゲートを産生する方法を含む。免疫グロブリン薬剤コンジュゲートは、(1)共有結合を介して免疫グロブリン−リンカー中間体を形成するためのリンカー試薬との改変免疫グロブリンのシステイン基の反応、その後に続く活性化薬剤成分との反応;および(2)共有結合を介して薬剤−リンカー中間体を形成するためのリンカー試薬との薬剤成分の求核基の反応、その後に続く改変免疫グロブリンのシステイン基との反応を含む、当業者に公知の有機化学反応、条件、および試薬を用いて、いくつかの経路によって調製されてもよい。コンジュゲーション方法(1)および(2)は、本発明の免疫グロブリン薬剤コンジュゲートを調製するために、様々な改変免疫グロブリン、薬剤成分、およびリンカーと共に用いられてもよい。
【0126】
抗体システインチオール基は、求核性であり、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸エステル、および酸ハロゲン化物などの活性エステル;(ii)ハロアセトアミドなどのアルキルおよびベンジルハロゲン化物;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基;ならびに(iv)スルフィドの置き換えを介してのピリジルジスルフィドを含むジスルフィドを含む、リンカー試薬および薬剤−リンカー中間体上の求電子基と共有結合を形成するように反応することができる。薬剤成分上の求核基は、リンカー成分およびリンカー試薬上の求電子基と共有結合を形成するように反応することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジド基を含むが、これらに限定されない。
【0127】
メイタンシンは、たとえば、May−SSCHに変換されてもよく、これは、遊離チオール、May−SHに還元することができ、改変抗体と反応して(Chariら(1992年)Cancer Research 52巻:127〜131頁)、ジスルフィドリンカーを有するマイタンシノイド抗体−イムノコンジュゲートを生成することができる。ジスルフィドリンカーを有する抗体−マイタンシノイドコンジュゲートは報告されている(WO 04/016801;米国特許第6,884,874号;米国特許出願公開第2004/039176 A1号;WO 03/068144;米国特許出願公開第2004/001838 A1;米国特許第6,441,163号、第5,208,020号、第5,416,064号;WO 01/024763)。ジスルフィドリンカーSPPは、リンカー試薬N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエートを用いて構築される。
【0128】
特定の条件下で、改変免疫グロブリンは、DTT(クリランド試薬、ジチオトレイトール)もしくはTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;Getzら(1999年)Anal. Biochem. 第273巻:73〜80頁;Soltec Ventures、Beverly、Mass.)などの還元剤または当業者に公知の他の還元剤を用いる処理によって、リンカー試薬とのコンジュゲーションのために反応性にされ得る。
【0129】
したがって、本発明の目的は、段落[0008]または[0019]において議論されるとおり改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンならびにそれらの実施形態のいずれかおよびすべての組合せを提供し、還元剤で1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させ、還元システイン残基と反応性である原子または分子と共に免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させることによって、免疫グロブリンコンジュゲートを産生することにより免疫グロブリンコンジュゲートを生産する方法を提供することである。
【0130】
空間的凝集傾向
一態様では、本明細書における本発明は、タンパク質表面の残基を選択してシステインに変異させるためのおよび改変免疫グロブリンまたは免疫グロブリンコンジュゲートの架橋を還元する方法に関する。本発明は、架橋する傾向が低下した免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートを生成するために適用されてもよい、つまり、濃縮溶液中の免疫グロブリンまたは免疫グロブリンコンジュゲートは、より高次の凝集した多量体ではなく、主として、単量体形態のままである。本明細書における方法は、タンパク質が架橋する傾向を評価するための算出方法の能力の進歩を示すものである。特に、該方法は、SAA(溶媒接触可能面積)の計算に少なくとも部分的に基づくものであり、SAAは、タンパク質の表面を特徴付けるために当技術分野において公知である。SAAは、溶媒と接触しているそれぞれのアミノ酸またはタンパク質構造物の表面積を示す。SAAは、典型的に、プローブ球体がタンパク質表面、つまりタンパク質構造モデルの表面を転がるときのプローブ球体の中心の位置を算出することによって計算され得る。プローブ球体は、水分子と同じ半径、R=1.4Åを有する。下記に記載される、SAAを計算するための代替方法は、当技術分野において公知であり、本明細書において記載される方法と互換性がある。SAAは、タンパク質表面を特徴付けるのに実に有用であるが、以下の欠点のために、潜在的に凝集傾向であるタンパク質表面の疎水性パッチを特徴付けるのに適切であるとは認められなかった。
1.SAAは、疎水性領域および親水性領域を区別しない。
2.SAAは、残基の疎水性に対して正比例しない(たとえば、METは、LEUよりも多くの表面積を有するが、それほど疎水性ではない)。
3.SAAは、いくつかの疎水性残基がすぐ近くにあり、したがって、特定の領域の疎水性を増強し得るかどうかを示さない。これらの残基は、一次配列においてまたはたとえこれらの残基が一次配列において離れていても三次構造において、のいずれかですぐ近くにあり得る。いずれかの方法で、それらは、抗体表面の特定のパッチの疎水性を増強し得る。
【0131】
本明細書において記載される1つの尺度、有効−SAA(Effective−SAA)は、下記の式に従って、露出アミノ酸の画分の疎水性を計算することによって得られる。
【0132】
【化4】

有効−SAAのさらなる実施形態は、一次タンパク質配列において隣接している少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、または少なくとも6つ(たとえば2、3、4、5、6など)のアミノ酸残基にわたる有効−SAAを合計するステップをさらに含む。有効−SAAは、基本的なSAAに関して改善を示すが、それにもかかわらず、それは、折り畳まれたタンパク質の構造およびタンパク質配列において隣接していないアミノ酸が、タンパク質の折り畳まれた二次、三次、四次構造において互いにすぐ近くに存在し得るという事実を完全に考慮に入れる能力を欠く。そのようなタンパク質の折り畳みは、一次構造のみでは現われないまたは折り畳まれたタンパク質構造物をよりしっかりと分析することによってのみ検出され得る凝集傾向の領域を形成し得る。
【0133】
本発明は、タンパク質表面の特定のパッチまたは領域の有効な疎水性を強調する、空間的凝集傾向と称される、新しい、より進歩した手段を提供する。空間的凝集傾向は、タンパク質構造モデルの原子上のまたはその近くの指定された空間的領域について計算される。
【0134】
この文脈では、「指定された空間的領域」は、タンパク質構造物上のまたはその近くの局所的な物理的構造物および/または化学的環境を得るために選ばれる三次元空間または体積である。特に好ましい実施形態では、空間的凝集傾向は、タンパク質における原子(たとえばタンパク質構造モデルにおける原子)を中心にする半径Rを有する球状の領域について計算される。空間的凝集傾向はまた、化学結合を中心にする半径Rを有する球状の領域または構造モデルの近くの空間に位置する球状の領域について計算されてもよい。したがって、他の実施形態では、SAPは、ある原子の近くに中心をおく、たとえば、特定の原子または化学結合の中心から1〜10Å、1〜5Å、または1〜2Åの間にある空間におけるある点に中心をおく指定された空間的領域について計算されてもよい。
【0135】
特定の実施形態では、選ばれる半径Rは、1Å〜50Åの間にある。特定の実施形態では、選ばれる半径は、少なくとも1Å、少なくとも3Å、少なくとも4Å、少なくとも5Å、少なくとも6Å、少なくとも7Å、少なくとも8Å、少なくとも9Å、少なくとも10Å、少なくとも11Å、少なくとも12Å、少なくとも15Å、少なくとも20Å、少なくとも25Å、または少なくとも30Åである。特定の実施形態では、選ばれる半径は、5Å〜15Åの間、5Å〜12Åの間、または5Å〜10Åの間にある。特定の実施形態では、選ばれる半径は、5Åまたは10Åである。
【0136】
他の実施形態では、空間的凝集傾向が計算される領域は、球状ではない。領域の可能な形状は、立方体、円柱、円錐体、楕円形の球状体、錐体、半球、または空間の一部を囲むために使用されてもよい任意の他の形状をさらに含んでいてもよい。そのような実施形態では、領域のサイズは、半径以外の手段、たとえば形状の中心から面または頂点までの距離を使用して選ばれてもよい。
【0137】
特定の実施形態では、SAPは、タンパク質が架橋する傾向を増加させることなく、システインで置換し得る、タンパク質、特に抗体または免疫グロブリン中の残基を選択するために使用されてもよい。本発明は、架橋する傾向を増加させることなくシステインで置換することができる残基を同定するためのプロセスを効率化することが期待される。
【0138】
したがって、一般的な用語では、タンパク質中の特定の原子の空間的凝集傾向を計算する方法は、(a)タンパク質を示す構造モデル中の1つ以上の原子を同定するステップであって、1つ以上の原子は、特定の原子にまたは特定の原子の近くに中心をおく、指定された空間的領域内に存在するステップ;(b)指定された空間的領域における1つ以上の原子のそれぞれについて、完全に露出している同一の残基中の原子のSAAに対する上記原子の溶媒接触可能面積(SAA)の比を計算するステップ;(c)それぞれの比に1つ以上の原子の原子疎水性を掛けるステップ;ならびに(d)ステップ(c)の産物を合計するステップを含み、それにより、その合計は、特定の原子についてのSAPとなる。
【0139】
関連する実施形態では、SAPは、(a)タンパク質を示す構造モデル中の1つ以上のアミノ酸残基を同定するステップであって、1つ以上のアミノ酸残基は、特定の原子にまたは特定の原子の近くに中心をおく、指定された空間的領域内に少なくとも1つの原子を有するステップ;(b)同定された1つ以上のアミノ酸残基のそれぞれについて、完全に露出している同一の残基中の原子のSAAに対する上記アミノ酸残基中の原子の溶媒接触可能面積(SAA)の比を計算するステップ;(c)それぞれの比に、アミノ酸疎水性尺度によって決定される1つ以上のアミノ酸残基の疎水性を掛けるステップ;ならびに(d)ステップ(c)の産物を合計するステップを含む、異なる方法に従って計算されてもよく、それにより、合計は、特定の原子についてのSAPとなる。好ましい実施形態では、構造モデルは、構造モデルを分子動力学シミュレーションにおいて溶媒と相互作用させることによって、ステップ(a)前に処理される。アミノ酸が、指定された空間的領域内に少なくとも1つの原子を有するとして同定される場合、少なくとも1つの原子は、アミノ酸側鎖中の原子に限ることが必要とされてもよい。その代わりに、それは、主鎖原子であることが必要とされる原子であってもよい。
【0140】
他の実施形態では、この方法は、必要に応じて、ステップ(a)前に、分子動力学シミュレーションを行うステップおよびステップ(a)〜(d)を繰り返すステップ、複数回のステップで、毎回、さらなる分子動力学シミュレーションを行い、それによって、ステップ(d)における複数の合計をもたらすステップ、ならびに合計の平均値を計算するステップをさらに含んでいてもよく、それにより、計算された平均値は、特定の原子についてのSAPとなる。
【0141】
当業者は、分子動力学シミュレーションに関して計算された値の平均値を用いる本発明の実施形態が、より計算上強力になることを十分に理解する。そのような実施形態はまた、ある場合には、空間的凝集傾向のより正確なまたは高度に分析されたマップをも提供する。しかしながら、本明細書において議論される実験は、分子動力学相加平均が用いられない場合に、方法が、なお高度に正確であることを示した。好ましい一実施形態では、空間的凝集傾向値は、データベース、たとえばプロテインデータバンク(PDB)中のすべてのタンパク質構造物について計算されてもよく、それによって、すべての公知のタンパク質構造物上の疎水性残基およびパッチを速やかに同定してもよい。この方法は、タンパク質の大きなセットの迅速なスクリーニングにより、潜在的凝集傾向領域および/またはタンパク質相互作用部位を同定することを可能にする。
【0142】
好ましい適用では、空間的凝集傾向は、
以下の式によって記載される。
【0143】
SAP原子=Σシミュレーション平均値(Σ原子のR内の原子((SAA−R/SAA−fe)*原子−hb)
式中、
1)SAA−Rは、それぞれのシミュレーションスナップショットで算出される半径R内の側鎖原子のSAAであり、SAAは、好ましくは、プローブ球体がタンパク質表面を転がるときのプローブ球体の中心の位置を算出することによってシミュレーションモデルにおいて計算される。プローブ球体は、水分子と同じ半径、R=1.4Aを有する。当業者は、SAAを算出するための他の方法が、SAPを計算するためのここで記載される方法と互換性があるということを十分に理解する。たとえば、SAAは、アミノ酸側鎖原子のみについて計算されてもよい。SAAはまた、アミノ酸主鎖原子のみについて計算されてもよい(つまり、ペプチドバックボーンのそれらの原子および関連する水素)。その代わりに、SAAは、関連する水素を除外して、アミノ酸主鎖原子のみについて計算されてもよい;
2)SAA−feは、好ましい実施形態では、トリペプチド「Ala−X−Ala」の完全に延ばされた高次構造における真中の残基の側鎖のSAAの計算によって得られる、完全に露出している残基の側鎖のSAAである(アミノ酸「X」について言う);ならびに
3)原子−hbは、BlackおよびMouldの疎水性尺度を使用して上記に記載されるように得られる原子疎水性である(BlackおよびMould、Anal. Biochem. 1991年、193巻、72〜82頁)。尺度は、グリシンがゼロの疎水性を有するように標準化される。そのため、グリシンよりも疎水性であるアミノ酸は疎水性尺度が正であり、グリシンより疎水性が低いアミノ酸は疎水性尺度が負である。
【0144】
「完全に露出している」残基は、トリペプチドAla−X−Alaの完全に延ばされた高次構造中の残基Xである。そのような残基XについてのSAAの計算が、利用可能な最大の溶媒接触可能面積を生み出すように、この配置が設計されていることを、当業者は十分に理解する。したがって、アラニンを除いた他の残基は、結果を全く混乱させることなくまたは変更することなく、計算に使用されてもよいことが想定される。
【0145】
上記に記載されるように、本発明の方法は、上記と同じ式を使用して、X線構造を含む、あらゆるタンパク質構造モデルに適用されてもよい。
【0146】
同様に、X線構造が入手可能でない場合、同じ空間的凝集傾向パラメーターは、相同性モデリングを通して生成された構造物に適用することができ、SAPパラメーターは、上記と同じ式を使用して計算され得る。
【0147】
特定の実施形態では、空間的凝集傾向は、タンパク質構造モデルにおけるすべての原子について計算される。いくつかの実施形態では、原子の(atomistic)空間的凝集傾向値は、それぞれの個々のタンパク質残基に関してまたは残基の小さな群に関して平均されてもよい。
【0148】
SAP方法論の使用
一態様では、本発明は、タンパク質における、疎水性アミノ酸の残基、領域、またはパッチを同定するために上記に記載されるように使用されてもよい。特定の閾値に固定されることを望むものではないが、空間的凝集傾向>0を有する原子またはアミノ酸残基は、疎水性であるまたは凝集傾向領域にあると考えられる。タンパク質のタイプ、特定の構造、およびそれが存在する溶媒に依存して、たとえば、−0.1、−0.15、−0.2などを超える空間的凝集傾向を有する原子または残基を選ぶことによって、わずかに0未満である、カットオフを使用して原子または残基を同定することが望ましい場合がある。あるいは、最も強力な疎水性の原子、残基、またはパッチを選ぶためによりストリンジェントなカットオフ、たとえば0、0.05、0.1、0.15、0.2などを用いることが望ましい場合がある。さらに、アルゴリズムが、パッチの中心の残基に対してより高い数を与えるので、カットオフを満たす残基の3A、4A、5A、7.5A、または10A内の残基はまた、凝集を低下させるために、それより疎水性が低い残基への変異のために選択することができる。他の実施形態では、連続して(つまりタンパク質配列に沿って)または好ましい実施形態では空間的に(つまり三次元構造で)近くにある原子または残基よりも大きな空間的凝集傾向を有する原子または残基を単に選択することは有利であり得る。疎水性パッチにおける原子または残基を選択するための1つの好ましい方法は、それらが由来するタンパク質構造モデル上に、たとえばカラーコーディングまたは数的なコーディングを使用して、計算された空間的凝集傾向値をマッピングし、したがって、タンパク質表面にわたる空間的凝集傾向の差を視覚化し、よって、疎水性のパッチまたは残基の容易な選択を可能にすることである。特に好ましい実施形態では、空間的凝集傾向についての計算は、半径について選ばれた2つの値、より高い解像度、たとえば5Aのものおよびより低い解像度、たとえば10Aのものを使用して、別々に実行される。そのような実施形態では、より大きなまたはより広範囲の疎水性パッチは、より低い解像度のマップを用いてタンパク質構造物上で調べられてもよい。一度、対象の疎水性パッチが低解像度マップ上で選択されたら、それらのパッチは、いくつかの実施形態では、当業者が、変異させるまたは改変するための残基をより容易にまたはより正確に選ぶことを可能にしてもよいより高い解像度のマップでさらに詳細に考察されてもよい。たとえば、より高い解像度のマップにおいて疎水性パッチを考察する場合、最も高いSAPスコアを有するまたは最も疎水性である残基(たとえば、BlackおよびMould、Anal. Biochem. 1991年、193巻、72〜82頁の尺度に従ってパッチにおいて最も疎水性の残基)を変異のために選択することが望ましい場合がある。
【0149】
特定の実施形態では、タンパク質における凝集傾向領域を同定する方法は、(a)タンパク質中の原子について本明細書において記載される方法のいずれかに従って計算されるとおりのSAPを構造モデル上にマッピングするステップ;および(b)SAP>0を有する複数の原子を有するタンパク質中の領域を同定するステップを含み、ここで、凝集傾向領域は、上記の複数の原子を含むアミノ酸を含む。そのような実施形態では、SAPは、タンパク質中のすべての原子または原子の一部について計算されてもよい。特定の残基または対象の残基の群についてSAPを計算するのみであってもよいことが想定される。
【0150】
類似する実施形態では、原子のSAPスコア(またはアミノ酸残基にわたって平均されるSAPスコア)をプロットすることは有益であり得る。タンパク質の原子または残基に沿ってSAPスコアを示すそのようなプロットは、置換の候補を示し得るピークの容易な同定を可能にする。特に好ましい実施形態では、タンパク質中の原子または残基に沿ったSAPスコアは、グラフ中にプロットされ、曲線下面積(AUC)が、グラフ中のピークについて計算される。そのような実施形態では、より大きなAUCを有するピークは、より大きなまたはより疎水性の凝集傾向領域を示す。特定の実施形態では、ピーク中に存在するまたはより好ましく、大きなAUCを有するピーク中に存在するとして同定される1つ以上の残基を置換のために選択することは望ましい。
【0151】
特定の実施形態では、本発明は、システインへの変異のための免疫グロブリンの残基を選択するために使用されてもよい。本明細書において使用されるように、免疫グロブリンの表面の第1のアミノ酸残基のSAP値が計算される。SAP値が、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にある場合、第1の残基は、システインへの変異のために選択される。さらなる実施形態では、第1の残基のごく近傍内の免疫グロブリンの複数の残基のSAP値が計算される。複数の残基が0未満のSAP値を有する場合、第1の残基は、システインへの変異のために選択される。
【0152】
免疫グロブリン変異体は、部位特異的変異誘発および他の組換えDNA技術を含む当技術分野において公知の任意の方法によって作製されてもよい。たとえば、米国特許第5284760号;第5556747号;第5789166号;第6878531号、第5932419号;および第6391548号を参照されたい。
【0153】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書において記載される方法のいずれかによって同定される免疫グロブリンの表面で露出している少なくとも1つのアミノ酸残基を、免疫グロブリンを原子または分子へコンジュゲートするために使用することができる天然アミノ酸残基、改変アミノ酸残基、まれなアミノ酸残基、非天然アミノ酸残基、またはアミノ酸アナログもしくは誘導体で置換することによって原子または分子にコンジュゲートすることができる免疫グロブリン変異体を作製するために使用されてもよい。好ましい実施形態では、免疫グロブリンの表面に露出しているアミノ酸残基は、システインで置換される。他の実施形態では、アミノ酸残基は、リジン、アスパルテート、またはピロールリジン(pyrorlysine)で置換される。
【0154】
非天然アミノ酸の合成は、当業者に公知であり、たとえば米国特許出願公開第2003−0082575号においてさらに記載される。一般に、刊行物Liao J. Biotechnol Prog. 2007年 1〜2月;23巻(1号):28〜31頁;RajeshおよびIqbal. Curr Pharm Biotechnol. 2006年8月;7巻(4号):247〜59頁;Cardilloら Mini Rev Med Chem. 2006年3月;6巻(3号):293〜304頁;Wangら Annu Rev Biophys Biomol Struct. 2006年;35巻:225〜49頁;Chakrabortyら、Glycoconj J. 2005年3月;22巻(3号):83〜93頁において記載されるまたは参照される方法を含むが、これらに限定されない、非天然アミノ酸、改変アミノ酸、またはまれなアミノ酸を合成するまたはそれをタンパク質の中に組み込むための当技術分野において公知の任意の方法が、用いられてもよい。さらなる例として、Ambrx ReCODE(商標)技術は、本明細書において記載される方法によって示されるように、非天然アミノ酸またはまれなアミノ酸を開発し、タンパク質の中に組み込むために用いられてもよい。
【0155】
本発明による免疫グロブリン変異体および免疫グロブリンコンジュゲートは、たとえば、非還元SDS−PAGEによって決定されるように、増強されたまたは改善された安定性を示すことができる。
【0156】
したがって、本発明の目的は、段落[0008]および[0019]において議論されるとおり改変免疫グロブリンをコードする単離ポリヌクレオチドまたは組換えポリヌクレオチドならびにそれらの実施形態のいずれかおよびすべての組合せを提供することである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ベクター中にある。特定の実施形態では、ベクターは発現ベクターである。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、誘導プロモーターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結される。他の態様は、前の実施形態のいずれかのベクターを有する宿主細胞を含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチドによってコードされる免疫グロブリンを発現することができる。
【0157】
したがって、本発明の目的は、架橋する傾向が低下した免疫グロブリンを産生する方法であって、前の段落の宿主細胞を含む培養培地を提供するステップおよび免疫グロブリンが発現される条件に培養培地を置くステップを含む方法を提供することである。特定の実施形態では、方法は、発現される免疫グロブリンを単離するさらなるステップを含む。
【0158】
したがって、本発明の目的は、システインへの変異のための免疫グロブリンの残基を選択する方法であって、免疫グロブリンの表面の第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向を計算するステップ、第1の残基のごく近傍内の免疫グロブリンの複数の残基の空間的凝集傾向を計算するステップ、および第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向が、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にある場合および複数の残基が0未満の空間的凝集傾向を有する場合、システインへの変異のための第1のアミノ酸残基を選択するステップを含む方法を提供することである。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の15Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の10Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の7.5Å内にある。特定の実施形態では、複数の残基は、第1の残基の5Å内にある。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、残基の空間的凝集傾向の計算は、残基中の原子を中心にする半径を有する球状の領域についての空間的凝集傾向の計算を含む。特定の実施形態では、球状の領域の半径は、少なくとも5Åである。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法に従ってSAPを決定するためのコンピューターコードにさらに関する。他の実施形態では、本発明は、本発明の方法を実行する専用のコンピューター、スーパーコンピューター、またはコンピューターのクラスターに関する。他の態様では、本発明は、タンパク質の残基を選択してシステインに変異させるためのウェブベースの、サーバーベースの、またはインターネットベースのサービスであって、ユーザからタンパク質(たとえばタンパク質構造モデル)に関するデータを受け取るステップ(たとえばインターネットを通じて)または必要に応じてタンパク質の動的構造を提供するためのタンパク質の分子動力学モデリングを含めて、サービスプロバイダーがタンパク質の静的構造物を生成する、検索する、もしくはアクセスすることができるように、データベースからそのようなデータを検索するステップ、そのように生成された静的または動的構造物に基づいてタンパク質の原子または残基についてのSAPを決定するステップ、およびたとえばサービスプロバイダーによってSAPデータを用いてマッピングした構造モデルとして、SAPデータをユーザに送り返すステップを含むサービスを提供する。いくつかの実施形態では、ユーザは、人である。他の実施形態では、ユーザは、コンピューターシステムまたは自動化されたコンピューターアルゴリズムである。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明は、インターネットを通してユーザ端末にSAPを計算するためのウェブサービスを提供するためのウェブサーバー;計算方法、アミノ酸疎水性などについての一般的な情報を記憶するためのデータベース、ならびにデータベースにおける情報およびユーザによってインターネットを通して提供されるまたは送信される情報に基づいてSAP計算を実行するための計算サーバーを含むSAP計算システムを提供する。
【0161】
いくつかの実施形態では、ウェブサーバーおよび計算サーバーは、同じコンピューターシステムである。いくつかの実施形態では、コンピューターシステムは、スーパーコンピューター、クラスターコンピューター、または単一のワークステーションもしくはサーバーである。関連する実施形態では、SAP計算システムのウェブサーバーは、全オペレーションを制御するための制御装置、インターネットへの接続のためのネットワーク接続ユニット、およびインターネットを通して接続しているユーザ端末に、SAPを計算するためのウェブサービスを提供するためのウェブサービスユニットをさらに含む。
【0162】
さらに、本発明の実施形態は、様々なコンピューターにより実現されるオペレーションを実行する、たとえば、構造モデルについてSAPを計算する、SAAを計算する、有効−SAAを計算する、構造モデルを操作する、分子動力学シミュレーションを実現する、関連するデータを編成し、記憶する、または本明細書において記載される他のオペレーションを実行するためのプログラムコードを含有するコンピューター読取り可能媒体を有するコンピューター記憶装置製品にさらに関する。コンピューター読取り可能媒体は、コンピューターシステムによってその後読み取ることができるデータを記憶することができる任意のデータ保存デバイスである。コンピューター読取り可能媒体の例は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、フラッシュドライブ、光ディスク(たとえばCD、DVD、HD−DVD、ブルーレイディスクなど)、および特定用途向け集積回路(ASIC)またはプログラム可能論理デバイス(PLD)などの特別に構成されたハードウェアデバイスを含むが、これらに限定されない。コンピューター読取り可能媒体はまた、コンピューター読取り可能コードが、配布様式で記憶され、実施されるように、つながれたコンピューターシステムのネットワークを通じて搬送波で具現されるデータ信号として配布することもできる。上記に記載されるハードウェアおよびソフトウェアエレメントは、標準的な設計および構成のものであることが当業者によって十分に理解される。上記に記載されるコンピューター、インターネット、サーバー、およびサービスに関する実施形態は、SAAおよび有効−SAAならびにSAPにさらに適用されてもよい。
【0163】
免疫グロブリンおよび免疫グロブリンコンジュゲートを含有する医薬組成物
他の態様では、本発明は、本発明の方法によって産生され、薬学的に許容されるキャリアと一緒に製剤化される1つ以上の免疫グロブリンコンジュゲートを含有する組成物、たとえば医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はまた、併用療法において、つまり、他の剤と組み合わせて投与することができる。たとえば、併用療法は、少なくとも1つの他の抗癌剤と組み合わせられた本発明の免疫グロブリンコンジュゲートを含むことができる。
【0164】
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容されるキャリア」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合するその他同種のものを含む。好ましくは、キャリアは、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮投与(たとえば注射もしくは注入によって)に適している。投与経路に依存して、活性化合物、つまり本発明の免疫グロブリンまたはその変異体は、酸の作用および化合物を不活化し得る他の天然の条件から化合物を保護するための材料中にコーティングされてもよい。
【0165】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望まれない毒物学的な影響を与えない塩を指す(たとえばBerge, S.M.ら(1977年)J. Pharm. Sci. 66巻:1〜19頁を参照されたい)、そのような塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸、およびその他同種のものなどの無毒性無機酸に由来する酸付加塩ならびに脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸、ならびにその他同種のものなどの無毒性有機酸に由来する酸付加塩を含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、およびその他同種のものなどのアルカリ土類金属に由来する塩基付加塩ならびにN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン、およびその他同種のものなどの無毒性有機アミンに由来する塩基付加塩を含む。
【0166】
本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される酸化防止剤の例は、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、およびその他同種のものなどの水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール、およびその他同種のものなどの油溶性酸化防止剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、およびその他同種のものなどの金属キレート化剤を含む。
【0167】
本発明の医薬組成物中に用いられてもよい、適している水性キャリアおよび非水性キャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその他同種のものなど)、ならびにその適切な混合物、オリーブオイルなどの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機酸エステルを含む。たとえば、適切な流動性は、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散物の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0168】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの佐剤を含有していてもよい。微生物の存在の予防は、無菌処理ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、およびその他同種のものの包含の両方によって保証されてもよい。組成物の中に、糖、塩化ナトリウム、およびその他同種のものなどの等張剤を含むこともまた望ましい場合がある。さらに、注射可能な医薬形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤の包含によってもたらされてもよい。
【0169】
薬学的に許容されるキャリアは、無菌水溶液または分散液および、無菌注射液剤または分散物の即時の調製のための無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒体または剤も活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用が想定される。補足の活性化合物もまた、組成物の中に組み込むことができる。
【0170】
典型的な製剤は、本発明の少なくとも1つの免疫グロブリンコンジュゲートを含み、本明細書において開示される方法に加えて、免疫グロブリンの架橋を予防するまたは減らすために使用することができる、より低濃度の安定化剤を含むことができる。したがって、架橋を予防するために使用される従来の方法は、本発明の方法によって産生される免疫グロブリンコンジュゲートを含有する医薬組成物の開発において用いられてもよい。たとえば、様々な安定化化合物または脱凝集化合物は、それらの意図される使用およびそれらの生物学的毒性に依存して、本発明の医薬組成物中に含まれていてもよい。そのような安定化化合物は、たとえばシクロデキストリンおよびその誘導体(米国特許第5730969号)、アルキルグリコシド組成物(米国特許出願第11/474,049号)、シャペロン分子の使用(たとえばLEA(Goyalら、Biochem J. 2005年、388巻(Pt 1):151〜7頁;米国特許第5688651号の方法)、ベタイン化合物(Xiao、Burn、Tolbert、Bioconjug Chem. 2008年5月23日)、界面活性剤(たとえばPluronic F127、Pluronic F68、Tween 20)(Weiら、International Journal of Pharmaceutics. 2007年、338巻(1−2号):125〜132頁))、ならびに米国特許第5696090号、第5688651号、および第6420122号において記載される方法を含んでいてもよい。
【0171】
さらに、タンパク質および特に抗体は、賦形剤、たとえば、(1)二糖(disaccaride)(たとえばサッカロース、トレハロース)またはポリオール(たとえばソルビトール、マンニットール)は選択的な排除によって安定剤として役割を果たし、また、凍結乾燥の間に凍結防止剤として作用することもできる、(2)界面活性剤(たとえばポリソルベート(Polysorbat)80、ポリソルベート(Polysorbat)20)は、液体/氷、液体/物質表面、および/または液体/空気界面のような界面におけるタンパク質の相互作用を最小限にすることによって作用する、ならびに(3)バッファー(たとえば、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン)は、製剤pHを制御し、維持するように支援する、からの様々なクラスの組合せを使用して製剤中で安定化される。したがって、そのような二糖 ポリオール、界面活性剤、およびバッファーは、さらに免疫グロブリンを安定化し、かつそれらの凝集を予防するために本発明の方法に加えて使用されてもよい。
【0172】
治療用組成物は、典型的に、製造および保存の条件下で無菌でかつ安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高薬剤濃度に適している他の規則構造物として製剤化することができる。キャリアは、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールならびにその他同種のもの)ならびにその適している混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。たとえば、適切な流動性は、レシチンなどの被覆剤の使用によって、分散物の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合では、組成物中に、等張剤、たとえば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は、組成物中に、吸収を遅延させる剤、たとえばモノステアリン酸塩、およびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0173】
無菌注射液剤は、必要に応じて、上記に列挙される成分のうちの1つまたはその組合せと共に、適切な溶媒中に、必要とされる量の活性化合物を組み込み、その後に無菌化微細濾過を行なうことによって、調製することができる。一般に、分散物は、塩基性分散媒を含有する無菌ビヒクルに活性化合物および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を組み込むことによって調製される。無菌注射液剤の調製のための無菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、そのあらかじめ無菌濾過された溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0174】
単一剤形を生産するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療されている被験体および投与の特定のモードに依存して変動する。単一剤形を産生するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成物のその量となる。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて、約0.01パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲となる。
【0175】
したがって、本発明の目的は、免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮医薬製剤中の免疫グロブリンの表面露出システイン間の架橋を低下させる方法であって、免疫グロブリンを提供するステップ、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基をシステイン残基で置換するステップ、還元剤で1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させるステップ、原子または還元システイン残基と反応性である分子と共に免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップ、ならびに免疫グロブリンコンジュゲート濃度が、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである、免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮液体製剤を生成するステップを含む、方法を提供することである。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1を含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH1ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH2ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCH3ドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトCドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトVドメインを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性を含む。
【0176】
したがって、本発明の目的は、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlの濃度の、段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せから作製することができる改変免疫グロブリン製剤を提供することである。特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、オリゴマー化に対する高い傾向を有することが公知の免疫グロブリンコンジュゲートが、同じ条件下で濃縮液体溶液中でオリゴマーを形成する濃度を超える濃度で存在する。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートの少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントは、オリゴマー化されていない単量体である。前の実施形態のいずれかと組み合わせられてもよい特定の実施形態では、製剤は、薬学的に許容される賦形剤を含む。前の実施形態のいずれかと組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリン製剤は、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントが、オリゴマー化されていない単量体である免疫グロブリンコンジュゲートを含む。
【0177】
したがって、本発明の目的は、非オリゴマー化の薬学的活性成分としての、段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せの使用を提供することである。
【0178】
したがって、本発明の目的は、段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートを含む医薬組成物ならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せならびに薬学的に許容される賦形剤を提供することである。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlの濃度である。特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートは、オリゴマー化に対する高い傾向を有することが公知の免疫グロブリンコンジュゲートが、同じ条件下で濃縮液体溶液中でオリゴマーを形成する濃度を超える濃度で存在する。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリンコンジュゲートの少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントは、オリゴマー化されていない単量体である。前の実施形態のいずれかと組み合わせられてもよい特定の実施形態では、免疫グロブリン製剤は、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントが、オリゴマー化されていない単量体である免疫グロブリンコンジュゲートを含む。前の実施形態と組み合わせられてもよい特定の実施形態では、オリゴマー化は、非還元SDS−PAGEによって測定される。
【0179】
投与計画は、最適な所望の応答(たとえば治療反応)を提供するために調節される。たとえば、単一のボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割された用量がある期間にわたって投与されてもよく、または用量は、治療状況の要件によって示されるように、比例して低下させてもよいもしくは増加させてもよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬量単位形態で非経口組成物を製剤化することはとりわけ有利である。本明細書において使用される投薬量単位形態は、治療されることとなる被験体に対して単一投薬量として適した物理的に別々の単位を指し、単位はそれぞれ、必要とされる薬学的キャリアと組み合わせて、所望の治療効果をもたらすように計算された、活性化合物の所定の数量を含有する。本発明の投薬量単位形態についての規格は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成すべき特定の治療効果ならびに(b)個人を治療感受性にするために、そのような活性化合物を調合することに関する当技術分野における生来の制約によって決定され、それらに直接依存する。
【0180】
免疫グロブリンコンジュゲートの投与については、投薬量は、約0.0001〜100mg/kg宿主体重、および、より普通では0.01〜5mg/kg宿主体重の範囲である。たとえば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、もしくは10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内とすることができる。典型的な治療計画は、1週間当たりに一度、2週間ごとに一度、3週間ごとに一度、4週間ごとに一度、月に一度、3か月ごとに一度、または3〜6か月ごとに一度の、投与を必要とする。本発明の免疫グロブリンコンジュゲートについての好ましい投与計画は、静脈内投与を介しての1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体は、以下の投薬スケジュールのうちの1つを使用して与えられる:(i)6回の投薬について4週間ごと、次いで3か月ごと;(ii)3週間ごと;(iii)3mg/kg体重、一度、その後に続いて3週間ごとに1mg/kg体重。
【0181】
その代わりに、本発明の免疫グロブリンコンジュゲートは、徐放性製剤として投与することができ、この場合には、必要とされる投与は頻度がより少ない。投薬量および頻度は、患者における、投与された物質の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体が後に続く。投薬量および投与の頻度は、治療が予防的なものか治療なものかどうかに依存して変動し得る。予防的な適用では、比較的低用量が、長い期間、比較的まれな間隔で投与される。何人かの患者は、残りの人生の間、治療を受け続ける。治療の適用では、疾患の進行が低下するまたは終了するまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的なまたは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高用量が、ときに必要とされる。その後、患者に、予防的な治療計画を施すことができる。
【0182】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に対して毒性となることなく、特定の患者、組成物、および投与のモードについて所望の治療反応を達成するのに有効である、活性成分の量を得るように変えられてもよい。選択された投薬レベルは、用いられる本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排出速度、治療期間、他の薬剤、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される化合物および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態、および先の病歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0183】
本発明の免疫グロブリンコンジュゲートの「治療有効投薬量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の減少、疾患症状がない期間の頻度および持続期間の増加、または疾患罹患による機能障害もしくは障害の予防をもたらす。たとえば、腫瘍の治療については、「治療有効投薬量」は、好ましくは、未治療被験体に比べて少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約80%、細胞増殖または腫瘍増殖を阻害する。化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系において評価することができる。その代わりに、組成物のこの特性は、化合物が阻害する能力を検査することによって評価することができ、そのような阻害は、当業者に公知のアッセイによってin vitroで評価することができる。治療用化合物の治療有効量は、被験体において腫瘍サイズを減少させるまたはそうでなければ症状を回復させることができる。当業者は、被験体のサイズ、被験体の症状の重症度、選択される特定の組成物または投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができる。
【0184】
本発明の組成物は、当技術分野において公知の様々な方法の1つ以上を使用して、投与の1つ以上の経路を介して投与することができる。当業者によって十分に理解されるように、投与経路および/または投与モードは、所望の結果に依存して変動する。本発明の結合成分を投与する好ましい経路は、たとえば注射もしくは注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、または他の非経口投与経路を含む。本明細書において使用される語句「非経口投与」は、通常、注射による、経腸的および局所的投与以外の投与のモードを意味し、限定することなく、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内(intrathecal)、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内注射および注入を含む。
【0185】
その代わりに、本発明の免疫グロブリンコンジュゲートは、投与の局所的経路、表皮経路、粘膜経路など非経口でない経路を介して、たとえば、鼻腔内に、経口的に、経膣的に、直腸に、舌下に、または局所的に投与することができる。
【0186】
活性化合物は、埋没物(implant)、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化された送達系を含む制御放出製剤などのように、急速な放出から化合物を保護するキャリアと共に調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生物分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製の多くの方法は、特許が与えられており、一般に当業者に公知である。たとえばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978年を参照されたい。
【0187】
治療用組成物は、当技術分野において公知の医療デバイスを用いて投与することができる。たとえば、好ましい実施形態では、本発明の治療用組成物は、米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;または第4,596,556号において開示されるデバイスなどの針がない皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知の埋没物およびモジュールの例は:制御された速度で薬品を供給するための移植可能なマイクロ注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を通して医薬を投与するための治療用デバイスを開示する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で薬品を送達するための薬品注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬剤送達のための可変的な流出量の移植可能な注入器を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透性(osmotic)薬剤送達系を開示する米国特許第4,439,196号;および浸透性薬剤送達系を開示する米国特許第4,475,196号を含む。
【0188】
したがって、本発明の目的は、高濃縮液体製剤を含む医薬の調製における段落[0007]において議論される免疫グロブリンコンジュゲートの使用ならびにそれらの実施形態の任意のおよびすべての組合せを提供することであり、免疫グロブリンコンジュゲート濃度は、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである。特定の実施形態では、医薬の使用は、自己免疫疾患、免疫学的疾患、感染症、炎症性疾患、神経学的疾患、ならびに癌を含む腫瘍疾患および新生物疾患の治療のためのものである。特定の実施形態では、医薬の使用は、鬱血性心不全(CHF)、血管炎、酒さ、ざ瘡、湿疹、心筋炎および心筋の他の状態、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、滑膜線維芽細胞、ならびに骨髄間質;骨損失;パジェット病、骨巨細胞腫;乳癌;非活動性骨減少症;栄養障害、歯周疾患、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞組織球症、脊髄損傷、急性化膿性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性形成異常、多骨性線維性骨形成異常、歯根膜の再構成、および骨折;サルコイドーシス;溶骨性骨癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、および直腸癌;骨転移、骨痛管理、および体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎、ならびに他の脊椎関節症;移植拒絶反応、ウイルス感染症、血液新生物(hematologic neoplasia)、および新生物様の状態、たとえばホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、ヘアリーセル白血病、およびリンパ形質細胞性白血病)、B細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫およびT細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、末梢T細胞白血病、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫、および大顆粒リンパ性白血病を含む成熟T細胞およびNK細胞の腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、成熟を伴うAML、分化を伴わないAMLを含む急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病などの骨髄新生物、骨髄異形成症候群および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患、中枢神経系の腫瘍、たとえば脳腫瘍(神経膠腫、神経芽腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、脳室上衣細胞腫、および網膜芽細胞腫)、固形腫瘍(鼻咽頭癌、基底細胞癌、膵癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮癌、膣癌、もしくは子宮頚癌、卵巣癌、原発性肝癌、または子宮内膜癌、ならびに血管系の腫瘍(血管肉腫および血管周囲細胞腫)、骨粗鬆症、肝炎、HIV、AIDS、脊椎関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、敗血症および敗血症性ショック、クローン病、乾癬、強皮症、移植片対宿主疾患(GVHD)、同種異系島移植片拒絶、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、および急性骨髄性白血病(AML)などの血液系悪性疾患、腫瘍、末梢神経損傷、または脱髄症と関連する炎症の治療のためのものである。特定の実施形態では、医薬の使用は、斑状乾癬、潰瘍性大腸炎、非ホジキンリンパ腫、乳癌、結腸直腸癌、若年性特発性関節炎、黄斑変性症、呼吸器合胞体ウイルス、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、治療誘発性の骨損失、骨転移、多発性骨髄腫、アルツハイマー病、緑内障、および多発性硬化症の治療のためのものである。前の実施形態のいずれかと組み合わせられてもよい特定の実施形態では、医薬の使用は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。前の実施形態のいずれかと組み合わせられてもよい特定の実施形態では、医薬における免疫グロブリンコンジュゲートは、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントのオリゴマー化されていない単量体を示す。特定の実施形態では、オリゴマー化は、非還元SDS−PAGEによって測定される。
【実施例】
【0189】
本明細書において記載される実施例は、本発明の特定の非限定的な実施形態を指す。
【0190】
(実施例1)
抗体システイン変異体の設計、発現、およびコンジュゲーション
それぞれの免疫グロブリンフォールドドメインを代表するように、IgG1システイン変異体のセットを設計した(表1)。変異体1〜13は、抗体−1のX線構造物から設計した。変異体14は、抗体−1に関して相同性モデリングによって構築した他のIgG1、抗体−2の構造から選択した。部位はすべて、抗体表面に露出させた。セリンおよびトレオニンおよびアルギニンなどの極性残基またはリジンなどの荷電残基は、システインで置換した。軽鎖および重鎖の遺伝子は、ベクターgWIZ(Genlantis)中にサブクローニングし、哺乳動物細胞の一時的なトランスフェクションによってタンパク質発現について工学的に作製した。抗体変異体は、de novo合成し(GeneArt)または部位特異的変異誘発PCRによって生成し、配列決定によって確証した。抗体野生型および変異体は、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミン(Polysciences)を用いてFreestyle HEK 293細胞(Invitrogen)の一時的なトランスフェクションによって10〜100mgのレベルで発現させた。細胞培養上清は、トランスフェクションの7〜10日後に収集した。抗体は、プロテインAカラム(GE Healthcare)上で精製し、50mMシトレートバッファー、pH3.5を用いて溶出し、バッファーは、蛍光標識のために100mM Tris pH7.0バッファーに置き換えた。
【0191】
抗体変異体の発現および精製に続いて、工学的に作製した表面システインをほとんど酸化した。たとえば、変異体4および6の両方は、工学的に作製した表面システインを有する抗体について予想される2.0とは対照的に、抗体1分子当たり0.3未満の遊離チオールを有した。本発明者らは、クラスIに由来する変異体およびクラスIVに由来する変異体に対する、穏やかな還元剤、TCEP(トリス[2−カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド)およびより強力な還元剤、DTT(ジチオトレイトール)の効果を比較した。最初に、非オリゴマー化変異体4は、抗体当たり0.13の遊離チオールを示し、高度にオリゴマー化している変異体6は、抗体当たり0.25の遊離チオールを有した。野生型、変異体4、および変異体6の一定量を、5つの異なる条件において処理した:1)還元剤なし、2)TCEP、10×、1時間、3)TCEP、20×、1時間、4)DTT、5×、15分間、および5)DTT、10×、15分間。還元剤の除去後に、試料は、非還元PAGE上で分析し、遊離チオールについて定量化した。野生型および変異体についての結果の比較は、TCEP処理は、オリゴマー化されていない形態(変異体4)においてシステインを還元するのに十分であり、WTに対してわずかな効果を有したことを示した。しかしながら、オリゴマー(変異体6)に由来するシステインは、より苛酷な処理後にのみ還元された。DTTを用いる処理は、低レベルでさえ、WTおよび両方の変異体について抗体断片化をもたらす。表面システインを導入した部位は、コンジュゲーションのために工学的に作製したシステインを無効にする(decap)能力に対して強い影響を有した。
【0192】
様々な方法を、標識化前に、工学的に作製した表面チオールの特異的な還元について試験した。TCEPおよびDTTは、使用した試薬のうちの2つであり、遊離チオールのレベルは、エルマン試薬(Invitrogen)を使用して定量化した。本発明者らは、L−システインが、部位特異的標識実験において最も作用することを見出し、したがって、以下の2段階のプロトコールを使用した。第1に、変異体は、37℃で4時間、100〜200倍過剰のL−システインと共にインキュベートし、その後に続いて、50mM Tris/EDTAにバッファーを置き換えた。第2に、試料は、室温で、1時間、5〜10倍過剰のAlexa488マレイミド色素(Invitrogen)と共にまたは室温で、12時間、10倍過剰のピレンマレイミド色素(Invitrogen)と共にインキュベートした。遊離色素を除去し、バッファーを50mMリン酸バッファー pH7.0に置き換えた後、タンパク質標識化の効率は、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従ってタンパク質のモル当たりの色素のモルとして計算した。
【0193】
(実施例2)
工学的に作製した抗体システイン変異体の特徴付け
非標識および標識抗体試料は、SDS−PAGEによって分析した。7.5%、10%、および12%のゲルを非還元分析に使用した。12%のゲルは、DTTを用いる加熱試料の還元分析に使用した。普通、5〜10μgの試料を、レーン当たりにロードした。蛍光画像は、クマシーブルーを用いて染色する前にUV光下で撮った。抗体消化は、GluC(1:20の抗体重量当たりの酵素重量、25℃で12〜24時間)およびプロナーゼ(1:20の抗体重量当たりの酵素重量、37℃で1時間)によって実行した。
【0194】
非還元ゲルは、単量体ならびに二量体、三量体、いくつかの場合ではさらに高次のオリゴマーの存在を示す。還元ゲルは、表面システインがどこで工学的に作製されたかに依存して、軽鎖または重鎖の排他的な標識化を示す。標識変異体および非標識変異体1〜6はまた、抗原結合特異性についても分析した。変異体は、野生型の80%および130%以内の活性を保持し、標識化に際して活性をいくらか損失した。非標識変異体1は、野生型の活性のおよそ110%を保持したのに対して、標識変異体1は、およそ80%保持した。非標識変異体2は、野生型のおよそ105%の活性を保持したのに対して、標識変異体2は、100%をわずかに下回る活性を保持した。非標識および標識変異体3は、共に、野生型の活性のおよそ110%を保持した。非標識変異体4は、野生型の活性のおよそ125%を保持したのに対して、標識変異体4は、活性のおよそ95%を保持した。非標識変異体5は、野生型の活性のおよそ120%を保持したのに対して、標識変異体6は、活性のおよそ100%を保持した。最後に、非標識変異体6は、野生型の活性のおよそ115%を保持したのに対して、標識変異体6は、活性のおよそ90%を保持した。標識変異体6は、その非標識同等物に類似して、高いオリゴマー化傾向を示した。
【0195】
ほとんどの変異体は、抗体1モル当たり2.0モル色素のおよそ最適な効率で標識した(抗体1分子当たり同一の2つのシステイン)。2.0よりも高い標識化効率は、それが鎖内ジスルフィドの部分的な破壊および標識化を示唆するので、望ましくない。変異体6、変異体11、および変異体5など、高いオリゴマー化傾向を有する変異体は、同じように効率的に標識されなかった。他の変異体の中でさえ、すべての工学的に作製したシステインがコンジュゲーションに等しく適用可能だとは限らなかったので、反応時間およびタンパク質に対する色素の比などの標識化条件を個々に基づいて最適化しなければならなかった。変異体1〜14は、工学的に作製したシステインを有する鎖のところで特異的に標識した。プロナーゼを用いる変異体のタンパク分解性の処理により、ほとんどの変異体については様々な蛍光パターンが得られたが、変異体3および12など、近隣の置換を有する変異体については類似するパターンが得られた。したがって、ほとんどの変異体は、効率的にかつ特異的に標識された。
【0196】
5つのクラスの架橋傾向を、システイン変異体のこのセットについて区別した(表1)。クラスIは、単量体であり、標識化後に安定したままである変異体を含む。クラスIIの変異体は、標識化前および後にわずかなパーセントの二量体を含有した。クラスIII変異体は、いくつかの三量体の形成を含めてオリゴマー化するより明白な傾向を有した。クラスIV変異体は、とりわけ標識化後の、三量体よりも大きな凝集体の存在によって証明されるように、オリゴマー化するさらに高い傾向を有した。クラスVは、クラスIVの変異体と同様に、精製濃縮試料の断片化または着色などのさらなる構造の異常と共に、高いオリゴマー化傾向の変異体を含んだ。
【0197】
(実施例3)
工学的に作製した抗体システイン変異体の適用
低架橋傾向を有するシステイン変異体(変異体1〜4、7、10、12〜14)は、高い特異性および効率ならびにわずかなオリゴマー化で標識された。マレイミド色素を用いる標識化は、これらの抗体変異体への部位特異的なコンジュゲーションのたった1つの例である。結合特異性または毒性などの他の多くの機能性を有する分子は、等しく付着することができる。したがって、変異体のこのセットは、標的療法におけるペイロードビヒクルとしてまたはin vitroおよびin vivo蛍光分析のために果たすための抗体変異体のレパートリーを広げる。
【0198】
変異体のうちの1つの蛍光の適用を例証するために、本発明者らは、蛍光体ピレンとコンジュゲートした変異体の放射パターンを分析した。2つのピレン分子がともに近接している場合、エキシマー蛍光として公知の465nmでの放射の特徴的な増加が起こる。本発明者らは、ピレンマレイミドを用いて変異体4および7を標識し、放射スペクトルをモニターした。変異体4は465nmで基底レベルの放射を示したが、変異体7は強力なエキシマー蛍光を示した。Fabドメインの内側の、変異体7についてのC1における工学的に作製したシステインの位置を考慮すると、観察された結果は、Fcに関してのFabの公知のシザリング(scissoring)効果と相関する。したがって、この変異体は、抗体ドメイン動力学の分析において使用することができる。
【0199】
変異体6の高いオリゴマー化傾向は、より詳細に調査した抗体システイン変異体の他の有用性を示唆した。標識変異体6は、オリゴマーから単量体を分離するためにゲル濾過クロマトグラフィーにかけ、タンパク質含有画分は、7.5%非還元SDS−PAGEゲル上で分離し、クマシーブルーを用いる染色の前および後に分析した。変異体6に対するゲル濾過分析は、標識化および架橋の間の競合:種のMWが高いほど、標識効率は低くなる(蛍光のレベルによって示される)ということを示した。最も高いMW種は、0.5の標識化効率を有したが、単量体種は、1.0の標識化効率を有し、もとの標識試料は、標識化効率が0.8であった。複数のオリゴマーを有する抗体変異体、変異体6は、抗体オリゴマー化についての優れた対照を提供し、およびそれが部位特異的に標識され得る、さらなる機能性を有する高分子量タンパク質についての適切な標準物質を提供する。
【0200】
(実施例4)
システイン変異体の架橋傾向(CLP)および空間的凝集傾向(SAP)の間の相関
架橋傾向(CLP)および空間的凝集傾向(SAP)は、特異的なアミノ酸をシステインで置換したシステイン変異体について比較した。変異体はそれぞれ、非還元SDS−PAGE分析に基づいてCLPを割り当てた。変異させた残基についてのSAP値は、5Åの半径を用いる計算された結果に由来する。本発明者らは、SAPコード化抗体−1構造物に工学的に作製したシステイン変異体を重ねた。
【0201】
以下の相関が観察された。システインで置換したアミノ酸はすべて、−0.27〜0.00の範囲の負のSAP値である。これは、置換のための極性または荷電アミノ酸の選択と一致している。CLPクラスIの変異体はすべて、0.00および−0.11の間のSAPを有し(変異体3、4、7、10、12)、CLPクラスIIの変異体はすべて、−0.12および−0.23の間のSAPを有する(変異体1、2、13)。しかしながら、高いCLPを有し、それらの範囲のSAPを有する変異体がある(たとえば変異体8、9、および11)。高度に架橋する変異体、変異体8および11は高SAP部位に隣接する。CLP IIIを有する変異体5は、C2において高SAP部位に隣接しているが、CLP IIの変異体2は隣接していない。しかしながら、C3において変異体6および変異体10の間にならびにVにおいて変異体9および14の間にそのような相関はない。
【0202】
さらなる観察を、変異体14について行った。変異体14は、近くに高SAPの領域がある場合、発現しないのに対して、変異体14は、この高SAP領域が低SAPの領域により置換された場合に発現する。自然の抗体−2バックグラウンドにおける変異体14の収量(0.34mg/L)と比較して、安定化された抗体−2における変異体14の100倍高い収量が観察された(35.6mg/L培養物)。様々なバックグラウンドにおける変異体14の相対的な収量は、システインが高SAP値の領域の近くのタンパク質の表面に導入される場合、構造上の問題を示した。その問題は、工学的に作製されたシステインに隣接している疎水性パッチにおける2つの疎水性アミノ酸がリジンで置換された場合に、解決された。
【0203】
要約すると、システイン変異体の安定性およびSAPの間に相関が存在する:1)低架橋傾向を有するシステイン変異体はわずかに負のSAPを有する(0.00〜−0.11)、2)より負のSAP(−0.12〜−0.23)を有するシステイン変異体は、より架橋の傾向がある、および3)高SAPのパッチのすぐ近くにあるシステイン変異体は、より架橋しそうであるか、または構造異常を有する。結論1および2は、完全に露出した残基が、架橋に対してより感受性であり得るという、前に明らかにされた概念と一致している[9]。
【0204】
(実施例5)
結論
本発明者らは、免疫グロブリンフォールドドメイン当たり少なくとも1つの変異体を抗体分子上に広く分布させたヒトIgG1システイン変異体のセットを設計した。ほとんどのこれらの変異体は、安定しており、抗原結合活性の著しい損失を伴うことなく効率的に特異的にコンジュゲートすることができる。したがって、安定した抗体変異体は、ペイロード分子の部位特異的なコンジュゲーションのための変異体のレパートリーを増やす。蛍光体が工学的に作製したシステインに付着された場合、特定のドメインの動力学を分析することができる。高度にオリゴマー化する変異体は、多数の多量体が、抗体凝集体のためのおよびに一般に、高分子量タンパク質のための好都合な標準物質を提供するので、同様に有益である。
【0205】
本明細書で記載される抗体システイン変異体の架橋傾向およびSAP方法の間の相関は、還元架橋を用いるコンジュゲーション部位をスクリーニングするために、SAP方法論が用いられてもよいことを実証する。SAP技術は、コンピューターベースのものであり、そのため、それは、変異体設計における時間および実験作業を低減させる。CLP/SAPの比較は、部分的に露出したおよび完全にではないが露出したアミノ酸の置換により最も安定した変異体が得られることを示した。さらに、比較は、隣接する疎水性パッチを回避するべきであることを示した。
【0206】
本明細書で記載される、工学的に作製されたヒトIgG1表面システイン変異体は、治療用抗体の部位特異的なコンジュゲーションのための新しい部位を提供しおよびさらなる変異体を同定する方法を提供する。わずかな架橋傾向を有する変異体は、標的化療法のための抗体を開発するのに最も大きな有用性を有する。本明細書において開示されるシステイン変異体は、前に示されたドメイン(C、C1、C3)および前に示されていないドメイン(V、V、CH)の新しい部位を含む。
【0207】
さらに、標識変異体は、部位特異的蛍光抗体マーカーのセットとしてin vitroおよびin vivo実験室研究に使用することができる。蛍光標識製品は、研究団体に抗体および他のタンパク質試薬を提供するバイオテクノロジー企業(Thermo Scientific Pierce、GE Healthcare、およびInvitrogenなど)を介して商品化することができる。
【0208】
高度に架橋する変異体6は、有用なタンパク質−ゲルまたは他のクロマトグラフィー技術の標準物質となる。タンパク質試薬を提供する会社(たとえばInvitrogen、Bio−Rad、およびPierce)はそれを市場へ出すことができる。
【0209】
CLPおよびSAPの間の相関は、本発明者らが前に記載したSAP技術の商業的な適用をさらに示唆した。SAPの考慮により、部位特異的なコンジュゲーションのための安定した抗体システイン変異体の設計を改善することができる。
【0210】
【表1】

参考文献
【0211】
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、298(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に有する免疫グロブリンと、前記システイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項2】
前記少なくとも1つの変異が、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある、請求項1に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変異が、248(CH2)および326(CH2)から成る群から選択される残基にある、請求項1に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項4】
前記少なくとも1つの変異が、25(V)および286(CH2)から成る群から選択される残基にある、請求項1に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項5】
前記少なくとも1つの変異が、254(CH2)および298(V)から成る群から選択される残基にある、請求項1に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項6】
前記免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項7】
前記免疫グロブリンがIgG1を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項8】
ヒトCH1ドメインを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項9】
ヒトCH2ドメインを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項10】
ヒトCH3ドメインを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項11】
ヒトCドメインを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項12】
ヒトVドメインを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項13】
ヒトVドメインを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項14】
少なくとも2つの反応部位を有するリンカー分子をさらに含み、第1の反応部位は、前記免疫グロブリンの前記システイン残基に結合しており、第2の反応部位は、前記原子または分子に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項15】
前記リンカー分子が、ヒドラゾン、ジスルフィド、ペプチド、キレート化剤、およびマレイミドから成る群から選択される、請求項14に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項16】
前記原子または分子が、放射性核種、化学療法剤、微生物毒素、植物毒素、ポリマー、炭水化物、サイトカイン、蛍光標識、発光標識、酵素−基質標識、酵素、ペプチド、ペプチド模倣薬、ヌクレオチド、siRNA、マイクロRNA、RNAミメティック、およびアプタマーから成る群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項17】
前記原子または分子が、90Y、131I、67Cu、177Lu、213Bi、211At、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、マイタンシノイド、オーリスタチン、アントラサイクリン、PseudomonasエキソトキシンA、ジフテリア毒素、リシン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、およびマンノシル残基から成る群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項18】
前記原子または分子が、非変異免疫グロブリンの免疫原性を低下させる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項19】
前記原子または分子が、非変異免疫グロブリンの免疫原性を増加させる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項20】
非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲート。
【請求項21】
システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を、7(V)、20(V)、22(V)、25(V)、125(CH1)、248(CH2)、254(CH2)、286(CH2)、および326(CH2)から成る群から選択される残基に含む改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項22】
前記少なくとも1つの変異が、7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基にある、請求項21に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項23】
前記少なくとも1つの変異が、248(CH2)および326(CH2)から成る群から選択される残基にある、請求項21に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項24】
前記少なくとも1つの変異が、25(V)および286(CH2)から成る群から選択される残基にある、請求項21に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項25】
前記少なくとも1つの変異が、残基254(CH2)にある、請求項21に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項26】
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される、請求項21〜25のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項27】
IgG1を含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項28】
ヒトCH1ドメインを含む、請求項21〜27のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項29】
ヒトCH2ドメインを含む、請求項21〜28のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項30】
ヒトCH3ドメインを含む、請求項21〜29のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項31】
ヒトCドメインを含む、請求項21〜30のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項32】
ヒトVドメインを含む、請求項21〜31のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項33】
ヒトVドメインを含む、請求項21〜32のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項34】
非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性をさらに含む、請求項21〜33のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項35】
請求項21〜34のいずれか一項に記載の免疫グロブリンをコードする単離ポリヌクレオチドまたは組換えポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項35に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導プロモーターをさらに含む、請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
請求項36または請求項37に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項39】
免疫グロブリンを産生する方法であって、
(a)請求項38に記載の宿主細胞を含む培養培地を提供するステップおよび
(b)前記免疫グロブリンが発現される条件下に前記培養培地を置くステップを含む、方法。
【請求項40】
(c)前記免疫グロブリンを単離するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
免疫グロブリンコンジュゲートを産生する方法であって、
(a)請求項21〜34のいずれか一項に記載の免疫グロブリンを提供するステップ、
(b)還元剤で1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させるステップ、および
(c)前記還元システイン残基と反応性である原子または分子と共に前記免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップを含む、方法。
【請求項42】
免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮医薬製剤中の免疫グロブリンの表面露出システイン間の架橋を低下させる方法であって、
(a)免疫グロブリンを提供するステップ、
(b)7(V)、20(V)、22(V)、および125(CH1)から成る群から選択される残基をシステイン残基で置換するステップ、
(c)還元剤で前記1つ以上の置換システイン残基を還元して、還元システイン残基を形成させるステップ、
(c)原子または前記還元システイン残基と反応性である分子と共に前記免疫グロブリンをインキュベートして、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップ、ならびに
(d)濃度が、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである、前記免疫グロブリンコンジュゲートの高濃縮液体製剤を生成するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫グロブリンが、IgG1を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫グロブリンが、ヒトCH1ドメインを含む、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫グロブリンが、ヒトCH2ドメインを含む、請求項42〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫グロブリンが、ヒトCH3ドメインを含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫グロブリンが、ヒトCドメインを含む、請求項42〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫グロブリンが、ヒトVドメインを含む、請求項42〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記免疫グロブリンが、ヒトVドメインを含む、請求項42〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫グロブリンコンジュゲートが、非変異免疫グロブリンの抗原結合活性の少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも100パーセント、少なくとも110パーセント、少なくとも120パーセント、または少なくとも130パーセントである抗原結合活性を含む、請求項42〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
高濃縮液体製剤を含む医薬の調製における、請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲートの使用であって、前記免疫グロブリンコンジュゲートが、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlである、使用。
【請求項53】
前記医薬が、自己免疫疾患、免疫学的疾患、感染症、炎症性疾患、神経学的疾患、ならびに癌を含む腫瘍疾患および新生物疾患の治療のためのものである、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記医薬が、鬱血性心不全(CHF)、血管炎、酒さ、ざ瘡、湿疹、心筋炎および心筋の他の状態、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、滑膜線維芽細胞、ならびに骨髄間質;骨損失;パジェット病、骨巨細胞腫;乳癌;非活動性骨減少症;栄養障害、歯周疾患、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞組織球症、脊髄損傷、急性化膿性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性形成異常、多骨性線維性骨形成異常、歯根膜の再構成、および骨折;サルコイドーシス;溶骨性骨癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、および直腸癌;骨転移、骨痛管理、および体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎、ならびに他の脊椎関節症;移植拒絶反応、ウイルス感染症、血液新生物、および新生物様の状態、たとえばホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、ヘアリーセル白血病、およびリンパ形質細胞性白血病)、B細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫およびT細胞の急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、末梢T細胞白血病、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫、および大顆粒リンパ性白血病を含む成熟T細胞およびNK細胞の腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、成熟を伴うAML、分化を伴わないAMLを含む急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病などの骨髄新生物、骨髄異形成症候群および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患、中枢神経系の腫瘍、たとえば脳腫瘍(神経膠腫、神経芽腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、脳室上衣細胞腫、および網膜芽細胞腫)、固形腫瘍(鼻咽頭癌、基底細胞癌、膵癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮癌、膣癌、もしくは子宮頚癌、卵巣癌、原発性肝癌、または子宮内膜癌、ならびに血管系の腫瘍(血管肉腫および血管周囲細胞腫)、骨粗鬆症、肝炎、HIV、AIDS、脊椎関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、敗血症および敗血症性ショック、クローン病、乾癬、強皮症、移植片対宿主疾患(GVHD)、同種異系島移植片拒絶、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、および急性骨髄性白血病(AML)などの血液系悪性疾患、腫瘍、末梢神経損傷、または脱髄症と関連する炎症の治療のためのものである、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記医薬が、斑状乾癬、潰瘍性大腸炎、非ホジキンリンパ腫、乳癌、結腸直腸癌、若年性特発性関節炎、黄斑変性症、呼吸器合胞体ウイルス、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、治療誘発性の骨損失、骨転移、多発性骨髄腫、アルツハイマー病、緑内障、および多発性硬化症の治療のためのものである、請求項52に記載の使用。
【請求項56】
前記医薬が、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項52〜55のいずれか一項に記載の使用。
【請求項57】
前記製剤が、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントが、オリゴマー化されていない単量体である免疫グロブリンコンジュゲートを含む、請求項52〜56のいずれか一項に記載の使用。
【請求項58】
前記単量体の百分率が、非還元SDS−PAGE分析によって測定される、請求項57の使用。
【請求項59】
非オリゴマー化医薬品活性成分としての、請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲートの使用。
【請求項60】
診断ツールとしての、請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲートの使用。
【請求項61】
高分子量タンパク質についての標準物質としての、請求項5〜16のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲートの使用。
【請求項62】
高分子量タンパク質についての標準物質としての免疫グロブリンコンジュゲートの使用であって、前記免疫グロブリンコンジュゲートが、システイン残基による置換である少なくとも1つの変異を残基440(CH3)に有する免疫グロブリンと、前記システイン残基にコンジュゲートされた原子または分子とを含む、使用。
【請求項63】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫グロブリンコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項64】
前記免疫グロブリンコンジュゲートが、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも125mg/ml、または少なくとも150mg/mlの濃度である、請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記免疫グロブリンコンジュゲートの少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントが、オリゴマー化されていない単量体である、請求項63または請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
システインへの変異のための免疫グロブリンの残基を選択する方法であって、
(a)前記免疫グロブリンの表面の第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向を計算するステップ、
(b)前記第1の残基のごく近傍内の前記免疫グロブリンの複数の残基の空間的凝集傾向を計算するステップ、ならびに
(c)前記第1のアミノ酸残基の空間的凝集傾向が、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にある場合および前記複数の残基が0未満の空間的凝集傾向を有する場合、システインへの変異のための前記第1のアミノ酸残基を選択するステップを含む、方法。
【請求項67】
前記複数の残基が、前記第1の残基の15Å内にある、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記複数の残基が、前記第1の残基の10Å内にある、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記複数の残基が、前記第1の残基の7.5Å内にある、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記複数の残基が、前記第1の残基の5Å内にある、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
残基の空間的凝集傾向の計算が、前記残基中の原子を中心にする半径を有する球状の領域についての空間的凝集傾向の計算を含む、請求項66〜70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記球状の領域の前記半径が、少なくとも5Åである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
表面露出残基からシステインへの少なくとも1つの変異を含む改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリンであって、前記残基の空間的凝集傾向が、0および−0.11の値に等しいまたは0および−0.11の値の間にあり、前記第1の残基のごく近傍内の前記免疫グロブリンの複数の残基の空間的凝集傾向が、0未満の空間的凝集傾向を有する、改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項74】
前記複数の残基が、前記第1の残基の15Å内にある、請求項73に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項75】
前記複数の残基が、前記第1の残基の10Å内にある、請求項73に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項76】
前記複数の残基が、前記第1の残基の7.5Å内にある、請求項73に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項77】
前記複数の残基が、前記第1の残基の5Å内にある、請求項73に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項78】
前記空間的凝集傾向が、前記残基中の原子を中心にする半径を有する球状の領域について計算される、請求項73〜77のいずれか一項に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項79】
前記半径が、少なくとも5Åである、請求項78に記載の改変免疫グロブリンまたは単離免疫グロブリン。
【請求項80】
システインへの変異のための免疫グロブリンの残基を選択する方法であって、
(a)前記免疫グロブリンの複数のアミノ酸残基を選ぶステップであって、前記複数の残基が、前記免疫グロブリンの表面に露出しているステップ、
(b)前記複数の残基のうちの1つの残基をシステイン残基に変異させるステップ、
(c)原子または分子に前記システイン残基をコンジュゲートさせて、免疫グロブリンコンジュゲートを形成させるステップ、
(d)架橋傾向について前記免疫グロブリンコンジュゲートを試験し、前記免疫グロブリンコンジュゲートに架橋傾向値を割り当てるステップ、ならびに
(e)前記架橋傾向値がIまたはIIである場合に、システインへの変異のための前記残基を選択するステップを含む、方法。
【請求項81】
前記免疫グロブリンコンジュゲートの5%未満が二量体を形成し、前記免疫グロブリンコンジュゲートが三量体を形成しない場合に、前記免疫グロブリンコンジュゲートにIIの架橋傾向値を割り当てるステップをさらに含み、二量体および三量体の形成は、非還元および還元SDS−PAGEを比較することによって測定される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記免疫グロブリンコンジュゲートの1%未満が二量体を形成する場合に、前記免疫グロブリンコンジュゲートにIの架橋傾向値を割り当てるステップをさらに含み、二量体の形成は、非還元および還元SDS−PAGEを比較することによって測定される、請求項81に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528601(P2012−528601A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514202(P2012−514202)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/037517
【国際公開番号】WO2010/141902
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】