説明

JAKインヒビターとしてのヘテロアリール−ピリミジン誘導体

本発明は、式(I)
【化45】


の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩を提供する。本発明はまた、本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物および種々のタンパク質キナーゼが媒介する障害においてこれらの化合物および組成物を利用する方法を提供する。本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な組成物は、JAK、JNK、ZAP−70およびCDKタンパク質キナーゼのインヒビターとして有効であることが発見され、ある実施態様では、これらの化合物は、JAK、JNK、ZAP−70およびCDKタンパク質キナーゼのインヒビターとして有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C.119(e)に基づいて、米国仮特許出願第60/423,579号(これは、2002年11月4日に出願され、「Compositions Useful as Inhibitors of Jak and Other Protein Kinases」の表題であり、その全内容は、本明細書中で参考として援用されている)から優先権を主張している。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、タンパク質キナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物および種々の障害を治療する際に該組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新しい治療剤の探索は、近年、疾患に関連する酵素および他の生物分子の構造のよりよい理解によって、非常に助けられている。多くの研究の対象となってきた酵素の1つの重要な分類は、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う構造的に関連する酵素の、大きなファミリーを構成する。(Hardie,G.およびHanks,S.(1995)The Protein Kinase Facts Book,IおよびII,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと。)プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能の維持の故に、共通の先祖遺伝子から進化してきたと考えられる。ほとんど全てのキナーゼは、類似した250〜300アミノ酸の触媒ドメインを含有する。キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質、など)によってファミリーに分類され得る。配列のモチーフは、一般的に、これらのキナーゼファミリーの各々に対応すると認められてきた(例えば、Hanks,S.K.,Hunter,T.,FASEB J.,9:576−596(1995);Knightonら、Science,253:407−414(1991);Hilesら、Cell,70:419−429(1992);Kunzら、Cell,73:585−596(1993);Garcia−Bustosら、EMBO J.,13:2352−2361(1994)を参照のこと)。
【0005】
多くの疾患が、プロテインキナーゼ媒介性現象によって引き起こされる異常な細胞反応に関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経性および神経変性疾患、癌、心血管性疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、ならびにホルモン関連疾患が挙げられる。したがって、医化学分野では、治療剤として有効なプロテインキナーゼインヒビターを見つけるための相当の努力があった。
【0006】
Janusキナーゼ(JAK)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2からなるチロシンキナーゼのファミリーである。このJAKは、サイトカインシグナル伝達において重要な役割を果たす。JAKファミリーのキナーゼの下流の基質は、シグナル伝達分子および転写活性化因子(STAT)のタンパク質を含む。JAK/STATシグナル伝達は、多くの異常な免疫応答(例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植片拒絶、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症)の媒介において、ならびに固形悪性腫瘍および血液学的悪性腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫))において示されている。JAK/STAT経路における薬学的介入が総説されている[Frank Mol.Med.5:432−456(1999)およびSeidelら,Oncogene 19:2645−2656(2000)]。
【0007】
JAK1、JAK2およびTYK2は、遍在的に発現されている一方で、JAK3は、造血細胞において主に発現されている。JAK3は、もっぱら一般的なサイトカインレセプターγ鎖(γ)に結合し、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、およびIL−15によって活性化される。IL−4およびIL−9によって誘導されるマウス肥満細胞の増殖および生存は、実際に、JAK3シグナル伝達経路およびγシグナル伝達経路に依存することが示されている[Suzukiら,Blood 96:2172−2180(2000)]。
【0008】
感作された肥満細胞の高親和性免疫グロブリン(Ig)Eレセプターの架橋は、炎症促進性メディエーター(急性アレルギー反応、または中間(I型)過敏性反応を生じる多くの血管作用性サイトカインを含む)の放出をもたらす[Gordonら,Nature 346:274−276(1990)およびGalli,N.Engl.J.Med.,328:257−265(1993)]。インビトロおよびインビボでのIgEレセプター媒介性肥満細胞応答におけるJAK3の重要な役割は、確立されている[Malaviyaら,Biochem.Biophys.Res.Commun.257:807−813(1999)]。さらに、I型過敏性反応(JAK3の阻害を介する肥満細胞活性化により媒介されるアナフィラキシーを含む)の予防を、報告した[Malaviyaら,J.Biol.Chem.274:27028−27038(1999)]。肥満細胞をJAK3インヒビターを用いて標的化することは、インビトロにおける肥満細胞脱顆粒化を調節し、インビボでIgEレセプター/抗原媒介性アナフィラキシー反応を予防した。
【0009】
最近の研究により、免疫抑制および同種移植片受容のためにJAK3の首尾よい標的化が記載された。研究により、JAK3のインヒビターを投与した際にWistar Furthレシピエントにおける水牛心臓同種移植片の用量依存性生存が実証された。このことは、宿主対移植片病において所望されない免疫応答を制御する可能性を示す[Kirken,transpl.proc.33:3268−3270(2001)]。
【0010】
IL−4媒介性STATリン酸化は、慢性関節リウマチ(RA)の初期段階および後期段階に関与する機構として示されてきた。RA滑膜および滑液における炎症促進性サイトカインのアップレギュレーションは、疾患の特徴である。IL−4/STAT経路のIL−4媒介性活性化は、Janusキナーゼ(JAK1および3)を通して媒介され、IL−4関連JAKキナーゼが、RA滑膜において発現されることが実証された[Muller−Ladnerら,J.Immunol.164:3894−3901(2000)]。
【0011】
家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)は、ALS患者の約10%が罹患している致命的な神経変性障害である。FALSマウスの生存率は、JAK3特異的インヒビターで処置すると、増加した。このことは、JAK3がFALSにおいて役割を果たすことを示唆した[Trieuら,Biochem.Biophys.Res.Commun.267:22−25(2000)]。
【0012】
シグナル伝達物質および転写活性化因子(STAT)タンパク質は、とりわけ、JAKファミリーキナーゼによって活性化される。最近の研究の結果によって、JAKファミリーキナーゼを白血病の処置に対する特異的インヒビターで標的化することによるJAK/STATシグナル伝達経路における介入の可能性が示唆された[Sudbeckら,Clin.Cancer Res.5:1569−1582(1999)]。JAK3特異的化合物は、JAK3発現細胞株DAUDI、RAMOS、LC1;19、NALM−6、MOLT−3およびHL−60のクローン生成性増殖を阻害することが示された。
【0013】
動物モデルにおいて、TEL/JAK2融合タンパク質は、骨髄増殖性障害を誘導し、造血細胞株において、TEL/JAK2の導入は、STAT1、STAT3、STAT5、およびサイトカイン非依存性増殖の活性化を生じた[Schwallerら,EMBO J.17:5321−5333(1998)]。
【0014】
JAK3およびTYK2の阻害は、STAT3のチロシンリン酸化を排除し、菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫の形態)の細胞増殖を阻害した。これらの結果は、構成的に活性化されたJAK/STAT経路におけるJAKファミリーキナーゼが、菌状息肉腫に存在することを示した[Nielsenら,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.94:6764−6769(1997)]。同様に、STAT3、STAT5、JAK1およびJAK2は、LCK過剰発現によって始めに特徴づけられたマウスT細胞リンパ腫において構成的に活性化されること、従って、異常な細胞増殖におけるJAK/STAT経路の関与が実証された[Yuら,J.Immunol.159:5206−5210(1997)]。さらに、IL−6媒介性STAT3活性化は、JAKのインヒビターによってブロックされ、アポトーシスに対する骨髄腫細胞の感受性を感受性にした[Catlett−Falconeら,Immunity 10:105−115(1999)]。
【0015】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、β−シートリッチなアミノ末端葉(lobe)および、大部分はα−へリックスである、より大きなカルボキシ末端葉からなるセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。CDKは、全てのプロテインキナーゼによって共有される11個のサブドメインを提示し、その分子量の範囲は、33〜44kDである。キナーゼのこのファミリーは、CDK1、CKD2、CDK4およびCDK6を含むが、十分に活性化されるために、CDK2 Thr160に対応する残基で、リン酸化が必要である(Meijer,L.、Drug Resistance Updates 2000、3、83−88)。
【0016】
各CDK複合体は、調節性サイクリンサブユニット(例えば、サイクリンA、B1、B2、D1、D2、D3、およびE)ならびに触媒性キナーゼサブユニット(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、およびCDK6)から形成される。異なった各キナーゼ/サイクリン対は、G1期、S期、G2期およびM期として公知の、細胞周期の異なる特異的な期の調節に機能する。(Nigg,E.、Nature Reviews 2001、2、21−32;Flatt,P.、Pietenpol,J.、Drug Metabolism Reviews 2000、32、283−305)。
【0017】
CDKは、細胞増殖障害、特に癌に関係している。細胞増殖は、細胞分裂周期の直接的または間接的な調節解除の結果であって、CDKは、この周期の種々の期の調節に重要な役割を果たす。例えば、サイクリンD1の過剰発現は、一般的に、乳癌、結腸癌、肝細胞癌および神経膠腫を含む多数のヒト癌と関連している(Platt,P.、Pietenpol,J.、Drug Metabolism Reviews 2000、32、283−305)。CDK2/サイクリンE複合体は、細胞周期のG1初期からS期までの行程において重要な役割を果たし、サイクリンEの過剰発現は、種々の固形腫瘍と関連している。従って、サイクリンD1、Eまたはそれらと関連するCDKのインヒビターは、癌治療に対する有用な標的である(Kaubisch,A.、Schwartz,G.、The Cancer Journal 2000、6、192−212)。
【0018】
CDK、特にCDK2はまた、アポトーシスおよびT細胞の発生に役割を果たす。CDK2は、胸腺細胞アポトーシスの重要な調節因子として同定されている(Williams,O.ら、European Journal of Immunology 2000,709−713)。CDK2キナーゼ活性の刺激は、特異的な刺激に反応して、胸腺細胞におけるアポトーシスの進行と関連している。CDK2キナーゼ活性の阻害は、胸腺細胞の防御を生じるこのアポトーシスをブロックする。
【0019】
細胞周期およびアポトーシスを調節するのに加えて、CDKは、転写のプロセスに直接関与している。多数のウイルスが、その複製プロセスにCDKを必要とする。CDKインヒビターがウイルス複製を抑制する例としては、ヒトサイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスおよび水痘−帯状疱疹ウイルスが挙げられる(Meijer,L.、Drug Resistance Updates 2000、3、83−88)。
【0020】
CDKの阻害はまた、神経変性性障害(例えば、アルツハイマー病)の処置に対して有用である。アルツハイマー病と関連した対らせん状フィラメント(PHF)の出現は、CDK5/p25によるタウタンパク質の過剰リン酸化によって引き起こされる(Meijer,L.,Drug Resistance Updates,2000 3,83−88)。
【0021】
JNKは、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼファミリーのメンバーである。MAPキナーゼ(MAPK)は、成長因子、サイトカイン、UV照射、およびストレス誘導薬剤を含む種々のシグナルによって活性化される。MAPKは、セリン/スレオニンキナーゼであり、そしてそれらの活性化は、活性化ループ中のThr−X−Tyrセグメントにおけるスレオニンおよびチロシンの二重リン酸化によって生じる。MAPKは、転写因子を含む種々の基質をリン酸化し、これは、次いで特定の遺伝子セットの発現を調節し、それによって刺激への特定の反応を媒介する。
【0022】
3つの別個の遺伝子、JNK1、JNK2、JNK3が同定され、そして少なくとも10個の異なるJNKのスプライシングアイソフォームが、哺乳動物細胞中に存在する[Guptaら、EMBO J.,15:2760−70(1996)]。JNKファミリーのメンバーは、炎症誘発性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、およびインターロイキン−1β(IL−1β))によって、ならびに環境ストレス(アニソマイシン、UV照射、低酸素、および浸透圧性ショック)によって活性化される[Mindenら、Biochemica et Biophysica Acta,1333:F85−F104(1997)]。
【0023】
JNKの下流基質としては、転写因子c−Jun、ATF−2、Elk1、p53、および細胞死ドメインタンパク質(DENN)が挙げられる[Zhangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:2586−91(1998)]。各JNKアイソフォームは、異なる親和性でこれらの基質に結合する。このことは、インビボにおける異なるJNKの基質特異性による、シグナル伝達経路の調節を示唆する(Guptaら、上記)。
【0024】
JNKは、他のMAPKとともに、癌、トロンビン誘導性血小板凝集、免疫不全疾患、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症、および心疾患に対する細胞応答を媒介する役割を有することに関係するとみなされてきた。JNK経路の活性化に関する治療標的としては、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性関節リウマチ、喘息、変形性関節症、虚血、癌および神経変性疾患が挙げられる。
【0025】
いくつかの報告は、肝疾患もしくは肝性虚血の発症に関連するJNK活性化の重要性を詳しく述べている[Nat.Genet.21:326−9(1999);FEBS Lett.420:201−4(1997);J.Clin.Invest.102:1942−50(1998);Hepatology 28:1022−30(1998)]。したがって、JNKのインヒビターは、種々の肝性障害を処置するのに有用であり得る。
【0026】
心血管性疾患(例えば、心筋梗塞もしくは鬱血性心不全)におけるJNKの役割もまた、JNKが種々の形態の心ストレスに対する肥厚性反応を媒介することが示されていることのように、報告されている[Circ.Res.83:167−78(1998);Circulation 97:1731−7(1998);J.Biol.Chem.272:28050−6(1997);Circ.Res.79:162−73(1996);Circ.Res.78:947−53(1996);J.Clin.Invest.97:508−14(1996)]。
【0027】
JNKカスケードはまた、T細胞活性化(IL−2プロモーターの活性化が挙げられる)に役割を果たすことを示している。したがって、JNKのインヒビターは、病理学的免疫反応を変化させることにおいて治療価値を有し得る。[J.Immunol.162:3176−87(1999);Eur.J.Immunol.28:3867−77(1998);J.Exp.Med.186:941−53(1997);Eur.J.Immunol.26:989−94 (1996)]。
【0028】
種々の癌におけるJNK活性化の役割もまた、確立されている。このことは、癌におけるJNKインヒビターの使用の潜在性を示唆する。例えば、構成的に活性されたJNKは、HTLV−1媒介性腫瘍形成に関連する[Oncogene 13:135−42(1996)]。JNKは、カポジ肉腫(KS)において役割を果たし得る。なぜなら、KS細胞におけるbFGFおよびOSMの増殖性作用は、それらのJNKシグナル伝達経路活性化によって媒介されると考えられているためである[J.Clin.Invest.99:1798−804(1997)]。KS増殖に関係するとみなされる他のサイトカインの他の増殖性作用(例えば、血管内皮成長因子(VEGF)、IL−6、およびTNFα)もまた、JNKによって媒介され得る。加えて、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の調節は、JNKの活性化と対応する。このことは、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるJNKインヒビターの役割を示唆する[Blood 92:2450−60(1998)]。
【0029】
JNK1およびJNK2は、種々の組織中で広く発現される。対照的に、JNK3は、脳で選択的に発現され、そしてより少ない程度で心臓および精巣で発現される[Guptaら、上記;Mohitら、Neuron 14:67−78(1995);Martinら、Brain Res.Mol.Brain Res.35:47−57(1996)]。JNK3は、カイニン酸によって誘導されるニューロンのアポトーシスに関連している。このことは、グルタミン酸の神経毒性の病原性におけるJNKの役割を示唆する。ヒト成人の脳において、JNK3発現は、CA1、CA4および海馬の海馬台領域、ならびに新皮質の3層および5層における錐体ニューロン(pyramidal neuron)の亜集団に局在する[Mohitら、上記]。急性低酸素症を有する患者のCA1ニューロンは、正常患者の脳組織由来の海馬ニューロンの、わずかな散剤性の細胞質染色と比較して、強力な細胞核のJNK3免疫反応を示した[Zhangら、上記]。したがって、JNK3は、海馬のCA1ニューロンの低酸素性および虚血性傷害に関与するように見える。
【0030】
加えて、JNK3は、アルツハイマー病において脆弱なニューロンと、免疫化学的に共局在する[Mohitら、上記]。JNK3遺伝子の破壊は、興奮毒性のグルタミン酸レセプターアゴニストであるカイニン酸に対するマウスの抵抗性(発作活動、AP−1転写活性、および海馬ニューロンのアポトーシスへの効果が挙げられる)をもたらした。このことは、JNK3シグナル伝達経路が、グルタミン酸神経毒性の病原性における重要な構成成分であることを示唆する[Yangら、Nature,389:865−870(1997)]。
【0031】
これらの発見に基づいて、JNK、特にJNK3のシグナル伝達は、アポトーシス駆動性神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、癲癇および発作、ハンチントン病、外傷性脳傷害、ならびに虚血性および出血性脳卒中)の分野に関係する。
【0032】
ZAP−70は、T細胞レセプターシグナル伝達にとって必須である。このチロシンキナーゼの発現は、T細胞およびナチュラルキラー細胞に限定される。T細胞の機能におけるZAP−70の重要性は、ヒト患者、ヒトT細胞株およびマウスにおいて実証されている。まれな形態の、重症な混合型脱落症候群(SCID)に罹患するヒト患者は、ZAP−70にホモ接合性変異を有する(Elder J.of Pedriatric Hematology/Oncology 1997,19(6),546−550に概説される)。これらの患者は、T細胞レセプター(TCR)媒介性刺激に反応しない深刻な免疫不全(CD8+T細胞を欠き、CD4+T細胞を有する)を有する。TCR活性化後、これらのCD4+細胞は、Ca2+流動、下流基質のチロシンリン酸化、増殖およびIL−2産生70の深刻な欠損を示す(Elder Pedriatric Research 39,743−748に概説される)。ZAP−70を欠くヒトJurkat細胞はまた、T細胞レセプターシグナル伝達におけるZAP−70の決定的な役割に重要な見識を提供する。検出可能なZAP−70タンパク質を有さないJurkatクローン(p116)は、野生型ZAP−70の再導入によって修正され得るT細胞レセプターシグナル伝達に欠損を有することが示された(Williamsら、Molecular and Cellular Biology 1998,18(3),1388−1399)。ZAP−70を欠くマウスの研究はまた、T細胞レセプターシグナル伝達におけるZAP−70の必要性を実証する。ZAP−70欠損マウスは、T細胞の発達において深刻な欠損を有し、胸腺細胞におけるT細胞レセプターシグナル伝達が損なわれる(Negishiら、Nature 1995 376,435−438)。
【0033】
ZAP−70機能におけるキナーゼドメインの重要性は、ZAP−70のキナーゼドメイン内のDLAARNモチーフに同一の変異を発現するヒト患者およびマウスの研究によって実証される。この変異によるキナーゼ活性の不活性化は、不完全なT細胞レセプターシグナル伝達を引き起こす(Elderら、J.Immunology 2001,656−661)。触媒的に不活性なZAP−70(Lys369Arg)はまた、ZAP−70欠損Jurkat細胞クローン(p116)において、T細胞レセプターシグナル伝達の回復が不完全であった(Williamsら、Molecular and Cellular Biology 1998,18(3),1388−1399)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
従って、JAK、JNK、CDKおよびZAP−70の活性に関連した種々の疾患または病気を治療する際に、これらの障害の大部分に現在利用できる治療が不十分であることを考えると、有用であるJAK、JNK、CDKおよびZAP−70タンパク質キナーゼのインヒビターを開発することが大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0035】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な組成物は、JAK、JNK、ZAP−70およびCDKタンパク質キナーゼのインヒビターとして有効であることが発見された。ある実施態様では、これらの化合物は、JAK、JNK、ZAP−70およびCDKタンパク質キナーゼのインヒビターとして有効である。これらの化合物は、一般式I、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する:
【0036】
【化19】

ここで、Wは、窒素またはCHであり、Wは、窒素またはC−(U)であり、Wは、窒素またはC−(V)であり、そしてR、R、RおよびRは、以下で記述したとおりである。
【0037】
これらの化合物およびそれらの薬学的組成物は、種々の障害(例えば、心臓病、糖尿病、アルツハイマー病、免疫不全障害、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、破壊的骨障害(例えば、骨粗鬆症)、増殖障害、感染疾患、免疫媒介疾患およびウイルス疾患)を治療するのに有用である。これらの組成物はまた、細胞死および過形成を防止する方法で有用であり、従って、脳卒中、心臓麻痺および臓器低酸素における再灌流/虚血を治療または予防するのに使用され得る。これらの組成物はまた、トロンビンが誘発する血小板凝集を防止する方法で有用である。これらの組成物は、以下のような障害に特に有用である:慢性骨髄性白血病(CML)、関節リウマチ、喘息、骨関節炎、虚血、癌、肝臓病(肝臓虚血を含めて)、心臓病(例えば、心筋梗塞および鬱血性心不全)、T細胞活性化が関与している病的免疫状態、および神経変性障害。
【0038】
本発明により提供される化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼが媒介する細胞内信号伝達経路の研究。および新規キナーゼインヒビターの比較評価に有用である。
【0039】
(発明の詳細な説明)
I.本発明の化合物の概要
本発明は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0040】
【化20】

ここで:
は、窒素またはCHであり、Wは、窒素またはC−(U)であり、そしてWは、窒素またはC−(V)である;
pおよびqは、それぞれ別個に、0または1である;
およびRは、それぞれ別個に、RまたはArである;
UおよびVは、それぞれ別個に、結合またはC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、該鎖の2個までのメチレン単位は、必要に応じて、別個に、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;
Rの各出現例は、別個に、水素または必要に応じて置換したC〜C脂肪族であるか、または同じ窒素原子に結合した2個のRは、必要に応じて、該窒素原子と共に、3〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の環を形成し、該環は、0個〜2個の追加ヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
Arは、5〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の単環または8〜12員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の二環式環系であり、該単環は、0個〜3個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該二環式環系は、0個〜5個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;ここで、Arは、必要に応じて、Z−Rのm個の別個の出現例で置換されている;ここで、mは、0〜5であり、Zは、結合であるか、またはC〜Cアルキリデン鎖であり、ここで、Zの2個までのメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;そしてRの各出現例は、別個に、水素、必要に応じて置換した脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール基、ハロゲン、NO、CN、OR、SR、N(R)、NRCOR、NRCON(R)、NRCOR、COR、COR、OCOR、CON(R)、OCON(R)、SOR、SOR、SON(R)、NRSOR、NRSON(R)、COCORまたはCOCHCORで置換されている;
およびRは、一緒になって環Bに縮合して、環状部分を形成し、該環状部分は、以下の1個から選択される:
【0041】
【化21】

ここで、Rの各出現例は、別個に、水素、QRまたはQArである;nは、0または1である;そしてQは、必要に応じて置換したC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;
は、ハロゲン、QR、QCN、QNOまたはQArである;そして
は、ArまたはT−Arである;
ここで、Tは、C1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Tの1個のメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている。
【0042】
2.化合物および定義:
本発明の化合物には、上で一般的に記述したものが挙げられ、さらに、本明細書中で開示したクラス、下位分類および種により例示される。本明細書中で使用する以下の定義は、特に明記しない限り、適用される。本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って、同定される。さらに、有機化学の一般的な原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および「March’s Advanced Organic Chemistry」、5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001で記述されており、それらの全内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0043】
本明細書中で記述する本発明の化合物は、必要に応じて、1個またはそれ以上の置換基(例えば、上で一般に例示したもの、または本発明の特定のクラス、下位分類および種で代表されるもの)で置換され得る。「必要に応じて置換した」との語句は、「置換または非置換」との語句と交換可能に使用されることが分かる。一般に、「置換された」との用語(その前に「必要に応じて」との用語が付いていようといまいと)は、特定した置換基のラジカルを有する所定の構造にある水素ラジカルを置き換えることを意味する。特に明記しない限り、必要に応じて置換した基は、その基の各置換可能位置で置換基を有し得、任意の所定の構造にある1個より多い位置が特定した基から選択される1個より多い置換基で置換され得るとき、その置換基は、どの位置でも、同一または異なり得る。本発明で想定される置換基および変数の組合せは、好ましくは、例えば、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物の形成を生じるものである。本明細書中で使用する「安定な」との用語は、それらの製造、検出、好ましくは、それらの回収、精製、および本明細書中で開示した目的の1つまたはそれ以上に使用することを可能にする条件に晒すとき、実質的に変化しない化合物を意味する。ある実施態様では、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学的に反応性の状態なしで、40℃以下の温度で、少なくとも1週間保持したとき、実質的に変化しないものである。
【0044】
本明細書中で使用する「脂肪族」または「脂肪族基」との用語は、直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝の置換または非置換炭化水素鎖(これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有する)または単環式炭化水素または二環式炭化水素(これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有する)であるが、芳香族ではなく(これはまた、本明細書中にて、「炭素環式」または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子の残りと単一の結合点を有する。特に明記しない限り、脂肪族基は、1個〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。ある実施態様では、脂肪族基は、1個〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜6個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。ある実施態様では、「環状脂肪族」(または「炭素環式」または「シクロアルキル」)とは、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を意味し、これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有するが、それは、芳香族ではなく、分子の残りと単一の結合点を有し、ここで、該二環式の環系にある任意の個々の環は、3員〜7員を有する。適当な脂肪族基には、直鎖または分枝の置換または非置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらの混成体(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書中で使用する「ヘテロ脂肪族」との用語は、1個または2個の炭素原子を1個またはそれ以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素で別個に置換した脂肪族基を意味する。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であり得、「ヘテロサイクル」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ環状脂肪族」基または「複素環」基を含む。
【0046】
本明細書中で使用する「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環状脂肪族」または「複素環」との用語は、1個またはそれ以上の環メンバーが別個に選択したヘテロ原子である単環式、二環式または三環式の環系を意味する。ある実施態様では、この「ヘテロサイクル」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ環状脂肪族」基または「複素環」基は、3個〜14個の環メンバーを有し、ここで、1個またはそれ以上の環メンバーは、酸素、イオウ、窒素またはリンから別個に選択されるヘテロ原子であり、そして該系内の各環は、3個〜7個の環メンバーを含有する。
【0047】
「ヘテロ原子」との用語は、1種またはそれ以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素(窒素、イオウ、リンまたはケイ素の任意の酸化形状;任意の塩基性窒素の四級化形状;複素環の置換可能窒素(例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中のもののように)、NH(ピロリジニル中のもののように)またはNR(N−置換ピロリジニル中のもののように)を含めて)を意味する。
【0048】
本明細書中で使用する「不飽和」との用語は、ある部分が1個またはそれ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0049】
本明細書中で使用する「アルコキシ」または「チオアルキル」との用語は、酸素(「アルコキシ」)またはイオウ(「チオアルキル」)原子を介して炭素主鎖に結合したアルキル基(これは、先に定義した)を意味する。
【0050】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」との用語は、場合によっては、1個またはそれ以上のハロゲン原子で置換され得るアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。「ハロゲン」との用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0051】
「アリール」との用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」のようなそれより大きい部分の一部として使用されるが、全部で5員〜14員を有する単環式、二環式および三環式の環系を意味し、ここで、この環系内の各環は、3員〜7員を含有する。「アリール」との用語は、「アリール環」との用語と交換可能に使用され得る。「アリール」との用語はまた、以下で定義するヘテロアリール環系を意味する。
【0052】
「ヘテロアリール」との用語は、単独で、または「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」のようなそれより大きい部分の一部として使用されるが、全部で5員〜14員を有する単環式、二環式および三環式の環系を意味し、ここで、この系内の少なくとも1個の環は、芳香族であり、この系内の少なくとも1個の環は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有し、ここで、この系内の各環は、3員〜7員を含有する。「ヘテロアリール」との用語は、「ヘテロアリール環」との用語または「ヘテロ芳香族」との用語と交換可能に使用され得る。
【0053】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含めて)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含めて)基は、1個またはそれ以上の置換基を含有し得、それゆえ、「必要に応じて置換され」得る。上でまたは本明細書中で定義していなければ、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適当な置換基は、一般に、以下から選択される:ハロゲン;−R;−OR;−SR;必要に応じてRで置換したフェニル(Ph);必要に応じてRで置換した−O(Ph);必要に応じてRで置換した−(CH1〜2(Ph);必要に応じてRで置換した−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R)2;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−P(O);−PO(R;−OPO(R;−(CH)ONHC(O)R;必要に応じてRで置換したフェニル(Ph);必要に応じてRで置換したフェニル−O(Ph);必要に応じてRで置換した−(CH1〜2(Ph);または必要に応じてRで置換した−CH=CH(Ph);ここで、Rの各出現例は、水素、必要に応じて置換したC1〜6、非置換5員〜6員ヘテロアリールまたは複素環、フェニル、−O(Ph)または−CH(Ph)、または上記定義にもかかわらず、Rの2個の別個の出現例は、同じ置換基または異なる置換基上にて、各R基が結合する原子と一緒になって、必要に応じて置換した3員〜12員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の単環式または二環式の環を形成し、この環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。
【0054】
の脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0055】
脂肪族またはヘテロ脂肪族基または非芳香族複素環は、1個またはそれ以上の置換基を含有し得、それゆえ、「必要に応じて置換され」得る。上でまたは本明細書中で定義していなければ、脂肪族またはヘテロ脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素上の適当な置換基には、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上で列挙したものから選択され、さらに、以下が挙げられる:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)または=NRであって、ここで、各Rは、別個に、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基。
【0056】
上でまたは本明細書中で定義していなければ、非芳香族複素環の窒素上の任意の置換基は、一般に、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rまたは−NRSOから選択される;ここで、Rは、水素、必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換した−O(Ph)、必要に応じて置換した−CH(Ph)、必要に応じて置換した−(CH)H(Ph)、必要に応じて置換した−CH=CH(Ph);または非置換5員〜6員ヘテロアリールまたは複素環(これは、0個〜4個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される)、または上記定義にもかかわらず、Rの2個の別個の出現例は、同じ置換基または異なる置換基上にて、各R基が結合する原子と一緒になって、必要に応じて置換した3員〜12員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の単環式または二環式の環を形成し、この環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。
【0057】
の脂肪族基またはフェニル環上の任意の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0058】
「アルキリデン鎖」との用語は、直鎖または分枝炭素鎖であって、完全に飽和であり得るか1個またはそれ以上の不飽和単位を有し得かつ分子の残りと2個の結合点を有するものを意味する。
【0059】
上で詳述するように、ある実施態様では、R(またはR、R、R’または本明細書中で同様に定義した他の変数)は、それらが結合する原子と一緒になって、必要に応じて置換した3員〜12員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の単環式または二環式の環を形成し、この環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。
【0060】
(またはR、R、R’または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の出現例が、各変数が結合する原子と一緒になるとき、形成される代表的な環には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:a)同じ原子に結合するR(またはR、R、R’または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の出現例は、その原子と一緒になって、環、例えば、N(Rを形成し、ここで、Rの両方の出現例は、その窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基またはモルホリン−4−イル基を形成する;b)異なる原子に結合するR(またはR、R、R’または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の出現例は、これらの原子の両方と一緒になって、環を形成し、例えば、ここで、フェニル基は、OR
【0061】
【化22】

の2個の出現例で置換されており、Rのこれらの2個の出現例は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、以下の縮合6員酸素含有環を形成する:
【0062】
【化23】

(またはR、R、R’または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の出現例が各変数が結合する原子と一緒になるときに、他の種々の環が形成でき上で詳述した例は、限定するつもりはないことが明らかである。
【0063】
特に明記しない限り、本明細書中で描写した構造はまた、その構造の全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体(すなわち、立体配座))形状;例えば、各非対称中心のRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)立体配座異性体を含むことを意味する。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体だけでなく鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体(すなわち、立体配座)混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形状は、本発明の範囲内である。あるいは、特に明記しない限り、本明細書中で描写した構造はまた、1個またはそれ以上の同位体的に富んだ原子の存在下にてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素を重水素または三重水素で置き換えるか炭素を13C−または14C−富んだ炭素で置き換えたこと以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析手段またはプローブとして、有用である。
【0064】
3.代表的な化合物の説明
ある実施態様では、上記式Iの化合物には、RおよびRが一緒になって上記複素環iを表わす化合物が挙げられる。
【0065】
ある実施態様では、複素環iの窒素原子に代表的な置換基は、Rは、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族から選択される。他の実施態様では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、N(R)で置換したC1〜6アルキルまたはArで置換したC1〜6アルキルである。さらに他の実施態様では、Rは、水素、メチルまたはC1〜2アルキルであり、該アルキルは、必要に応じて置換したフェニル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジニルまたはピペラジニルから選択される基で置換されている。
【0066】
他の実施態様では、上記式Iの代表的な化合物には、Rが、水素、ハロゲン、QRまたはQArであり、ここで、Qが、C1〜3アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−NHCO−または−NR−で置換されており、そしてArが、必要に応じて置換した5〜6員の飽和、部分不飽和または完全不飽和環であり、該環が、0個〜2個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択されるものが挙げられる。他の実施態様では、Rは、水素、OH、OCH、OCHCH、NHCOMe、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、O(CHモルホリン−4−イル、O(CHNH、O(CHNH(C1〜4脂肪族)、O(CHN(C1〜4脂肪族)、Br、ClまたはFである。他の実施態様では、Rは、水素である。
【0067】
さらに他の実施態様では、Rは、0個〜3個の窒素原子を有する6員の飽和、部分不飽和またはアリール環、0個〜2個の窒素原子を有する9〜10員の二環式アリール環、または2個〜3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール環であり、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、ここで、各環は、必要に応じて、置換されている。他の実施態様では、Rは、必要に応じて置換した環であり、該環は、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、インダゾリルまたはベンゾイミダゾリルから選択される。さらに他の実施態様では、Rは、必要に応じて置換したフェニル基である。
【0068】
上の代表的な置換基は、別個に、Z−Rから選択され、ここで、Zの各出現例は、別個に、結合またはC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Zの1個のメチレン単位は、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−または−NH−で置換されている;そしてRの各出現例は、別個に、水素、C1〜6脂肪族、ハロゲン、NO、OR、N(R)、または必要に応じて置換したフェニル、ピリジルまたはピリミジニルである。他の実施態様では、ZRの各出現例は、別個に、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、Oピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メチキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシおよびフルオロフェノキシである。
【0069】
代表的な実施態様では、mは、0、1または2であり、そしてRは、ZRの0個、1個または2個の出現例で置換されている。
【0070】
さらに他の実施態様では、Wは、窒素またはCHであり、Wは、窒素またはC−(U)であり、そしてWは、窒素またはC−(V)である。さらに他の実施態様では、Wは、窒素またはCHであり、Wは、C−(U)であり、そしてWは、C−(V)である。さらに他の実施態様では、Wは、窒素またはCHであり、そしてWおよびWは、それぞれ、CHである。
【0071】
式Iの代表的な(U)および(V)基、本明細書中で記述したそれらのクラスおよび下位分類は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、NO、CN、OR、SRまたはN(R)、またはC1〜4脂肪族であり、該脂肪族は、必要に応じて、オキソ、OR、SR、N(R)、ハロゲン、NOまたはCNで置換されている。他の実施態様では、(U)および(V)は、それぞれ別個に、水素、Me、OH、OMeまたはN(R)である。さらに他の実施態様では、(U)および(V)は、それぞれ、水素である。
【0072】
ある代表的な実施態様では、すぐ上で記述した式Iの化合物について、Wは、NまたはCHであり、そして以下の式IaおよびIb、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する:
【0073】
【化24】

ここで、R、R、RおよびRは、上で一般に定義したとおりであり、そして本明細書中で記述したクラスおよび下位分類である。
【0074】
上で一般に記述したように、特定の代表的な実施態様はまた、Rが必要に応じて置換したフェニル基であるものに関し、これらの化合物は、以下で一般に描写した式IIaおよびIIbの一般構造、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する:
【0075】
【化25】

ここで、mは、0〜5であり、そしてR、R、R、ZおよびRは、上で一般に定義したとおりであり、そして本明細書中で記述したクラスおよび下位分類である。
【0076】
他の代表的な実施態様では、Rは、水素であり、これらの化合物は、以下で一般に描写した式IIIaおよびIIIbの一般構造、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する:
【0077】
【化26】

ここで、mは、0〜5であり、そしてR、R、R、ZおよびRは、上で一般に定義したとおりであり、そして本明細書中で記述したクラスおよび下位分類である。
【0078】
さらに他の代表的な実施態様では、Rは、水素であり、そしてRおよびRは、一緒になって、環Bと縮合して、複素環iを表わし、これらの化合物は、以下で一般に描写した式IVaおよびIVbの一般構造、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する:
【0079】
【化27】

ここで、mは、0〜5であり、そしてR、R、R、ZおよびRは、上で一般に定義したとおりであり、そして本明細書中で記述したクラスおよび下位分類である。
【0080】
前述の化合物の特定の下位分類は、以下でさらに詳細に記述する。上で一般的に記述した化合物(式I)およびそれらのクラス(例えば、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVb)の各々について、本発明の代表的な下位分類を記述するために、各変数に対して、以下で示すサブセットの任意の組合せが使用され得る。特に、特定の好ましいサブセットには、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されず、ここで:
i)RおよびRは、一緒になって、上で描写した複素環iである;ここで、Rは、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族;
b.水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、N(R)で置換したC1〜6アルキル、またはArで置換したC1〜6アルキル;または
c.水素、メチル、またはC1〜2アルキルであり、該アルキルは、必要に応じて置換したフェニル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジニルまたはピペラジニルから選択される基で置換されている;
ii)Rは、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素、ハロゲン、QRまたはQArであり、ここで、Qは、C1〜3アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位は、必要に応じて、−O−、−S−、−NHCO−または−NR−で置換されており、そしてArは、必要に応じて置換した5〜6員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の環であり、該環は、0個〜2個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
b.水素、OH、OCH、OCHCH、NHCOMe、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、O(CHモルホリン−4−イル、O(CHNH、O(CHNH(C1〜4脂肪族)、O(CHN(C1〜4脂肪族)、ブロモ、クロロまたはフルオロ;または
c.水素;
iii)Rは、以下の群の1個に従って定義される:
a.0個〜3個の窒素原子を有する6員の飽和、部分不飽和またはアリール環、0個〜2個の窒素原子を有する9〜10員の二環式アリール環、または2個〜3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール環であり、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、ここで、各環は、必要に応じて、置換されている;
b.必要に応じて置換した環であり、該環は、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、インダゾリルまたはベンゾイミダゾリルから選択される;または
c.必要に応じて置換したフェニル基;
iv)W、WおよびWは、以下の群の1個に従って定義される:
a.Wは、窒素またはCHであり、Wは、窒素またはC−(U)であり、そしてWは、窒素またはC−(V)である;
b.Wは、窒素またはCHであり、Wは、C−(U)であり、そしてWは、C−(V)である;または
c.Wは、窒素またはCHであり、そしてWおよびWは、それぞれ、CHである;そして
v)(U)および(V)基は、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素、ハロゲン、NO、CN、OR、SRまたはN(R)、またはC1〜4脂肪族であり、該脂肪族は、必要に応じて、オキソ、OR、SR、N(R)、ハロゲン、NOまたはCNで置換されている;
b.水素、Me、OH、OMeまたはN(R);または
c.(U)および(V)の両方は、水素である。
【0081】
ある実施態様では、すぐ上で記述したサブセットについて、Rの各出現例が、別個に、Z−Rから選択され、ここで、Zの各出現例が、別個に、結合またはC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Zの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−または−NH−で置換されている;そしてRの各出現例が、別個に、水素、C1〜6脂肪族、ハロゲン、NO、OR、N(R)、または必要に応じて置換したフェニル、ピリジルおよびピリミジニルであることが分かる。他の実施態様では、ZRの各出現例は、別個に、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、Oピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メチキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシまたはフルオロフェノキシである。
【0082】
他の実施態様では、mは、0、1または2であり、そしてRは、ZRの0個、1個または2個の出現例で置換されている。
【0083】
さらに他の実施態様では、化合物は、式IVaを有し、ここで、Rは、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族である;mは、0、1または2である;そしてZRは、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、O−ピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メチキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシまたはフルオロフェノキシである。
【0084】
式IVaの化合物の代表例は、表1にて以下で示す。
【0085】
表1.式IVaの化合物の例:
【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
【化31】

【0090】
【化32】

【0091】
【化33】

式IVbの化合物の代表例は、表2にて以下で示す。
【0092】
表2.式IVaの化合物の例:
【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

【0095】
【化36】

【0096】
【化37】

【0097】
【化38】

【0098】
【化39】

【0099】
【化40】

4.一般的な合成方法:
本発明の化合物は、一般に、以下のスキームIおよび以下の調製実施例で説明するように、類似の化合物について当業者に公知の方法により、調製され得る。
【0100】
スキームI:
【0101】
【化41】

上で描写したように、鏡像異性体(3)(N−置換した)は、以下の実験でさらに詳細に記述するように、手順Dに従って、または手順E、FおよびG(またはそれらの改良型)に従って、調製できる。鏡像異性体(3)と適当なグアニジン(6)(その合成は、一般に、手順AおよびBを使用して、本明細書中で記述されている)とを引き続いて反応させると、フェニルアミノピリジン(4)が得られる。追加環B系は、上で描写したベンゾキサジンに代えて適当な出発物質を使用して、上記一般方法および当該技術分野で公知の方法に従って調製できることが分かる。
【0102】
5.用途、処方および投与
(薬学的に受容可能な組成物)
上述のように、本発明は、タンパク質キナーゼのインヒビターである化合物を提供し、本発明の化合物は、以下を含めた(これらに限定されないが)疾患、障害および病気を治療するのに有用である:増殖障害、心臓障害、神経変性障害、精神病的障害、自己免疫性障害、臓器移植に関連した病気、炎症障害、免疫障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス病または骨障害。好ましい実施態様では、これらの化合物は、以下を治療するのに有用である:アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML、ルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、精神分裂病、心筋細胞肥大、再灌流/虚血(例えば、脳卒中)、脱毛、癌、肝腫大、循環器病(心肥大を含めて)、嚢胞性線維症、ウイルス病、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、炎症、高血圧症、狭心症、脳血管収縮、末梢循環障害、早産、動脈硬化症、血管攣縮(大脳の血管攣縮、冠血管血管攣縮)、網膜症、勃起機能障害(ED)、エイズ、骨粗鬆症、クローン病および大腸炎、神経突起成長、およびレイノー病。好ましい実施態様では、この疾患、病気または障害は、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、勃起機能障害(ED)、再灌流/虚血(例えば、脳卒中)または血管攣縮(大脳血管攣縮および冠血管血管攣縮)である。
【0103】
従って、本発明の他の局面では、薬学的に受容可能な組成物が提供され、ここで、これらの組成物は、本明細書で記述した化合物のいずれかを含有し、必要に応じて、薬学的に受容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含有する。ある実施態様では、これらの化合物は、必要に応じて、さらに、1種またはそれ以上の追加治療薬を含有する。
【0104】
本発明の化合物は、治療のための遊離形態で存在でき、または適当な場合、それらの薬学的に受容可能な誘導体として存在できることが分かる。本発明に従って、薬学的に受容可能な誘導体には、薬学的に受容可能なプロドラッグ、塩、エステル、このようなエステルの塩、または任意の他の付加物または誘導体が挙げられるが、これらに限定されが、これは、必要な患者に投与すると、直接的または間接的に、本明細書中で記述した化合物またはそれらの代謝物または残留物を提供できる。
【0105】
本明細書中で使用する「薬学的に受容可能な塩」とは、適切な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などなしで、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適当な塩であって、合理的な有益性/リスク比と釣り合った塩を意味する。「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明の化合物の任意の非毒性の薬学的に受容可能な塩であって、レシピエントに投与した際、本発明の化合物またはそれらの阻害活性代謝物または残留物を直接的または間接的のいずれかで提供できるものを意味する。本明細書中で使用する「それらの阻害活性代謝物または残留物」とは、その代謝物または残留物がまた、JAK、JNK、CDKおよびZAP−70キナーゼのインヒビターでもあることを意味する。
【0106】
薬学的に受容可能な塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、66:1−19(1977)(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)において、薬学的に受容可能な塩を詳細に記述している。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩には、適当な無機および有機の酸および塩基から誘導したものが挙げられる。薬学的に受容可能な非毒性の酸付加塩の例には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸)と共にまたは当該技術分野で使用される他の方法(例えば、イオン交換)を使用することにより形成されたアミノ基の塩がある。他の薬学的に受容可能な塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適当な塩基から誘導された塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本発明はまた、本明細書中で開示した化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定している。このような四級化により、水溶性または油溶性または水分散性または油分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに別の薬学的に受容可能な塩には、適当なとき、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられ、これらは、対イオンを使用して形成される(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩)。
【0107】
上記のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、さらに、薬学的に受容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含有し、これは、本明細書中で使用するように、望ましい特定の剤形に適するように、任意の全ての溶媒、希釈剤、または他の液状ビヒクル、分散体または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固形結合剤、潤滑剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に受容可能な組成物を処方するのに使用される種々の担体およびそれらの公知の調製技術を開示している。任意の通常の担体媒体が、例えば、望ましくない生体効果を生じることにより、あるいは、有害な様式で、薬学的に受容可能な組成物の任意の他の成分と相互作用することにより、本発明の化合物と非相溶性である範囲以外は、その用途は、本発明の範囲内であると見なされる。薬学的に受容可能な担体として役立ち得る物質の一部の例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝液基質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体および羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチおよびポテトスターチ);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバターおよび座剤ワックス);オイル(例えば、落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、とうもろこし油および大豆油);グリコール(例えば、フロピレングリコール);エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質なし水;等張性生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液だけでなく、他の非毒性相溶性潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)および着色剤、解離剤、被覆剤、香料、調香剤および防腐剤および酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されず、それらは、調合者の判断に従って、その組成物中に存在し得る。
【0108】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の用途)
さらに他の局面では、増殖障害、心臓障害、神経変性障害、精神病的障害、自己免疫性障害、臓器移植に関連した病気、炎症障害、免疫障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス病または骨障害の重症度を軽くする方法が提供され、該方法は、それが必要な被験体に、有効量の化合物または化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物を投与する工程を包含する。本発明のある実施態様では、該化合物または薬学的に受容可能な組成物の「有効量」とは、増殖障害、心臓障害、神経変性障害、精神病的障害、自己免疫性障害、臓器移植に関連した病気、炎症障害、免疫障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス病または骨障害の症状を治療または軽減するのに有効な量である。これらの化合物および組成物は、本発明の方法に従って、増殖障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫性障害、臓器移植に関連した病気、炎症障害、免疫障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス病または骨障害を治療するかその重症度を軽くするのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して、投与され得る。必要な正確な量は、被験体の種、年齢および一般的な健康状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体ごとに変わる。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし投薬を均一にするために、単位剤形で処方される。本明細書中で使用する「単位剤形」との表現は、治療する患者に適当な物理的に別個の単位の薬剤を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の全毎日用法は、適切な医学的判断の範囲内で、担当医により決定されることが分かる。任意の特定の患者または生物体に特定の有効用量レベルは、種々の要因に依存しており、これらには、治療する障害およびその障害の重症度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および常食;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路および排出速度;治療の持続時間;使用する特定の化合物と併用または同時使用する薬剤;および医学分野で周知の類似の要因が挙げられる。本明細書中で使用する「患者」との用語は、動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0109】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、治療する感染の重症度に依存して、経口的、直腸的、非経口的、大槽内的、膣内的、腹腔内的、局所的(粉末、軟膏または小滴により)、舌下的、経口または鼻内スプレーとしてなどで、投与できる。ある実施態様では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日1回またはそれ以上で、1日あたり、被験体の体重1kgあたり、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約1mg/kg〜約25mg/kgで、経口的または非経口的に投与され得る。
【0110】
経口投与用の液状剤形には、薬学的に受容可能な乳濁液、微小乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性化合物に加えて、これらの液状剤形は、当該技術分野で通例使用される不活性希釈剤(例えば、水および他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチレングリコール、イソプロピレングリコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油))、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤以外に、これらの経口組成物はまた、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁液、甘味料、香料および調香剤)も含有できる。
【0111】
注射可能製剤(例えば、無菌注射可能水性または油性懸濁液)は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁液を使用して、公知技術に従って、処方され得る。この無菌注射可能製剤はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射可能溶液、懸濁液または乳濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。それに加えて、無菌の不揮発性油は、通常、溶媒または懸濁媒体として、使用される。この目的のために、任意のブランドの不揮発性油が使用でき、これらには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。それに加えて、注射可能物の調製では、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が使用される。
【0112】
これらの注射可能処方は、例えば、細菌保持フィルターで濾過することにより、または使用前に滅菌水または他の無菌注射可能媒体に溶解または分散できる無菌固形組成物の形状で可溶化剤を取り込むことにより、滅菌できる。
【0113】
本発明の化合物の効果を延ばすために、しばしば、皮下注射または筋肉内注射からのその化合物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性物質または非晶質物質の液状懸濁液の使用を伴い得る。次いで、この化合物の吸収速度は、その溶解度に依存し、これは、順に、結晶の大きさおよび結晶形状に依存し得る。あるいは、非経口投与した化合物形状の遅延吸収は、その化合物をオイルビヒクルに溶解または懸濁することを伴う。注射可能デポー形状は、その化合物のマイクロカプセル化マトリックスを生物分解性重合体(例えば、ポリラクチド−ポリグリコチド)で形成することにより、行われる。化合物と重合体との比および使用する重合体の性質に依存して、化合物放出速度が制御できる。他の生体分解性重合体の例には、(ポリ(オルトエステル))およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能処方もまた、その化合物をリポソームまたは微小乳濁液(これらは、体組織と相溶性である)に取り込むことにより、調製される。
【0114】
直腸投与または膣内投与用の組成物には、好ましくは、座剤があり、これらは、本発明の化合物を適当な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター。ポリエチレングリコールまたは座剤ワックス(これらは、室温で固形であるが、対応で液状となり、従って、直腸または膣腔で溶解して、活性化合物を放出する))と混合することにより、調製できる。
【0115】
経口投与用の固形剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉剤および顆粒が挙げられる。このような剤形では、その活性化合物は、少なくとも1種の不活性で薬学的に受容可能な賦形剤または担体(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/またはa)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア)、c)湿潤剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、バラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト、粘土)、およびi)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物)と混合される。
【0116】
類似の種類の固形組成物もまた、ラクトースまたは乳糖だけでなく高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質ゼラチンカプセルの充填剤として、使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固形剤形は、被覆および殻(例えば、腸溶性被覆および医薬処方技術で周知の他の被覆)と共に調製できる。それらは、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、また、優先的には、腸管の一部にて、必要に応じて、遅延様式で、その活性成分のみを放出する組成であり得る。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。類似の種類の固形組成物もまた、ラクトースまたは乳糖だけでなく高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質ゼラチンカプセルの充填剤として、使用され得る。
【0117】
これらの活性化合物はまた、上で述べたような1種またはそれ以上の賦形剤とのマイクロカプセル化形状であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固形剤形は、被覆および殻(例えば、腸溶性被覆および医薬処方技術で周知の他の被覆)と共に調製できる。このような固形剤形では、その活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混合され得る。このような剤形はまた、通常の方法と同様に、不活性希釈剤以外の追加物質(例えば、錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース))を含有し得る。カプセル、錠剤および丸薬の場合、それらの剤形はまた、緩衝剤を含有し得る。それらは、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、また、優先的には、腸管の一部にて、必要に応じて、遅延様式で、その活性成分のみを放出する組成であり得る。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0118】
本発明の化合物を局所投与または経皮投与する剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、噴霧剤、吸入剤またはパッチが挙げられる。その活性成分は、必要に応じて、無菌条件下にて、薬学的に受容可能な担体および任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼科処方、点耳液および点眼液もまた、本発明の範囲内であると見なされる。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を考慮しており、これらは、ある化合物を体内に制御した送達するという追加の利点がある。このような剤形は、その化合物を適当な媒体に溶解または分散することにより、製造できる。この化合物が皮膚を横切る流動を高めるために、吸収向上剤もまた使用できる。その速度は、速度制御膜を提供することにより、またはその化合物を重合体マトリックスまたはゲルに分散させることにより、いずれかにより、制御できる。
【0119】
上で一般的に記載されるように、本発明の化合物は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用である。1つの実施形態において、本発明の化合物および組成物は、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70の1つ以上のインヒビターであり、従って、任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、化合物および組成物は、疾患、状態、または障害を処置するかまたはその重篤度を減少させるために特に有用であり、ここで、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70の1つ以上の活性化が、この疾患、状態、または障害に関係している。JAK、JNK、CDK、およびZAP−70の活性化が特定の疾患、状態、または障害に関係する場合、この疾患、状態、または障害は、「JAK媒介疾患、JNK媒介疾患、CDK媒介疾患、およびZAP−70媒介疾患」または疾患症状と呼ばれ得る。従って、別の局面において、本発明は、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70の1つ以上の活性化が疾患状態に関連する疾患、状態または障害を処置するかまたはその重篤度を減少するための方法を提供する。
【0120】
JAK、JNK、CDK、およびZAP−70のインヒビターとして本発明において利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、活性化されたJAK、JNK、CDK、およびZAP−70のリン酸化活性またはATPase活性のどちらかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。インビトロアッセイの代替物は、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70に結合するためのインヒビターの能力を、定量化する。インヒビター結合を、結合する前にインヒビターを放射標識すること、インヒビター/JAK複合体、インヒビター/JNK複合体、インヒビター/CDK複合体またはインヒビター/ZAP−70複合体を単離すること、および結合した放射標識量を決定することによって、測定し得る。あるいは、新規インヒビターを、既知の放射性リガンドに結合するJAK、JNK、CDK、およびZAP−70とともにインキュベートする競合実験を行うことによって、インヒビター結合を決定し得る。
【0121】
本明細書中で使用する「測定可能に阻害する」との用語は、該組成物ならびにJAKキナーゼ、JNKキナーゼ、CDKキナーゼ、およびZAP−70キナーゼを含有する試料と、該組成物なしでJAKキナーゼ、JNKキナーゼ、CDKキナーゼ、およびZAP−70キナーゼを含有する等価試料との間のJAK、JNK、CDK、およびZAP−70の活性の測定可能な変化を意味する。
【0122】
用語「JAK媒介性疾患」は、本明細書中で使用される場合、JAKファミリーが役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。このような状態としては、限定しないが、免疫応答(例えば、アレルギー性超過敏性反応、I型超過瓶性反応)、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶、移植対宿主疾患、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、および多発性硬化症)、神経変性障害(例えば、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS))、ならびに固形悪性腫瘍、血液学的悪性腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫)が挙げられる。
【0123】
別の実施形態に従って、本発明は、被験体において、CDK2媒介性疾患またはCDK2媒介状態を処置するか、またはその重症度を減少させるための方法を提供し、該被験体に本発明に従う組成物を投与する工程を包含する。
【0124】
用語「CDK2媒介性疾患」は、本明細書中で使用される場合、CDK2が役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。従って、これらの化合物は、CDK2キナーゼの活性化により影響されることが公知である疾患または状態を処置するのに有用である。そのような疾患または状態としては、癌、アルツハイマー病、再狭窄、新脈管形成、糸球体腎炎、サイトメガロウイルス、HIV、ヘルペス、乾癬、アテローム性動脈硬化症、脱毛症、および自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、ウイルス感染、神経変性障害、胸腺細胞アポトーシスと関連する障害、または細胞周期(特に、G1期からS期への進行について)の調節解除から生じる増殖性障害が挙げられる。
【0125】
別の実施形態に従って、本発明は、被験体において、CDK2媒介性疾患またはCDK2媒介状態を処置するか、またはその重症度を減少させるための方法を提供し、該被験体に本発明に従う組成物を投与する工程を包含する。
【0126】
用語「JNK媒介状態」とは、本明細書中で使用される場合、JNKが、役割を果たすことが公知である任意の疾患状態または他の有害な状態を意味する。このような状態としては、炎症疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、癌、感染症、神経変性疾患、アレルギー、脳卒中における再灌流/虚血、心臓発作、血管障害、臓器低酸素症、血管肥厚化、心肥大、トロンビン誘導性血小板凝集、ならびにプロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼ−2に関連する状態が挙げられるがこれらに限定されない。
【0127】
「JNK媒介状態」にはまた、脳卒中における虚血性/再灌流、心臓発作、心筋虚血、臓器低酸素症、血管肥厚化、心肥大、肝臓虚血、肝疾患、うっ血性心不全、病理的免疫応答(例えば、T細胞活性化およびトロンビン誘導性血小板凝集により生じる免疫応答)が挙げられる。
【0128】
さらに、本発明のJNKインヒビターは、誘導性炎症誘発性タンパク質の発現を阻害し得る。それゆえ、本発明の化合物により処置され得る他の「JNK媒介状態」としては、水腫、痛覚脱失、熱および疼痛(例えば、神経筋疼痛、頭痛、癌性疼痛、歯痛および関節炎痛)が挙げられる。
【0129】
別の実施形態に従って、本発明は、被験体において、ZAP−70媒介性疾患またはZAP−70媒介状態を処置するか、またはその重症度を減少させるための方法を提供し、該被験体に本発明に従う組成物を投与する工程を包含する。
【0130】
用語、「ZAP−70媒介性状態」とは、本明細書中で使用される場合、ZAP70が一定の役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害状態を意味する。このような状態としては、自己免疫疾患、炎症疾患、増殖性疾患および過剰増殖性疾患、および免疫学的に媒介される疾患(移植器官の拒絶または移植組織の拒絶、後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
例えば、ZAP−70媒介性状態としては、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、および塵埃喘息、特に慢性喘息または難治性喘息(例えば、遅発性喘息気道過剰応答)のような喘息ならびに気管支炎を含む可逆性閉塞性気道疾患を含む(これらに限定されない)気道の疾患が挙げられる。さらに、ZAP−70疾患としては、鼻粘膜の炎症により特徴付けられる状態(急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、萎縮性鼻炎、および慢性鼻炎(乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾燥性鼻炎、および薬物性鼻炎を包含する);膜鼻炎(クループ性鼻炎、線維性鼻炎および偽膜性鼻炎を包含する)および腺病性鼻炎、季節性鼻炎(神経性鼻炎(枯草熱)および血管運動神経性鼻炎を包含する)、サルコイドーシス、農夫肺および関連疾患、肺線維症および特発性間質性肺炎が挙げられるが、これらに限定されない)が、挙げられる。
【0132】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、骨および関節の疾患(慢性関節リウマチ(におけるパンヌス形成)、セロネガティブ脊椎関節症(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、およびライター病が挙げられる)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、および全身性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない)が、挙げられる。
【0133】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、皮膚の疾患および状態(乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、および他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、皮膚脈管炎、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加賞、ブドウ膜炎、脱毛症、限局性春季カタルが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0134】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、胃腸管の疾患および障害(セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸から離れて影響を有する食物関連アレルギー(例えば、片頭痛、鼻炎、および湿疹)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0135】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、他の組織の疾患および障害、ならびに全身性疾患(多発性硬化症、動脈硬化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、家族性好酸球増加称、過剰IgE症候群、らい腫らい、セザリー症候群、および特発性血小板減少性紫斑病、血管形成後の再狭窄、腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫)、関節硬化症、および全身性エリテマトーデスが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0136】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、同種移植片拒絶(例えば、腎臓移植、心臓移植、肝臓移植、肺移植、骨髄移植、皮膚移植および角膜移植の後の急性同種移植片拒絶および慢性同種移植片拒絶、ならびに慢性対宿主性移植片疾患が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0137】
本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物が、併用療法において使用され得る、すなわち、化合物および薬学的に受容可能な組成物が、1つ以上の他の所望の治療剤または医療手順と同時に、1つ以上の他の所望の治療剤または医療手順の前に、または1つ以上の他の所望の治療剤または医療手順の後に、投与され得ることがまた理解される。併用レジメンにおいて使用するための治療(治療剤または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または手順の適合性、ならびに達成される所望の治療効果を考慮する。使用される治療剤が、同じ障害に対して所望の効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物が同じ障害を処置するために使用される別の薬剤と同時投与され得る)か、またはこれらが、異なる効果を達成し得る(例えば、任意の有害な効果の制御)。本明細書中で使用されるように、特定の疾患、または状態を処置または予防するために通常投与されるさらなる治療剤は、「処置される疾患または状態に対して適切である」として公知である。
【0138】
例えば、化学療法薬または他の抗増殖薬は、増殖性疾患および癌を処置するために、本発明の化合物と組み合わされ得る。公知の化学療法薬の例としては、例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:本発明の抗癌剤と組み合わせて使用され得る他の治療または抗癌剤としては、外科手術、放射線療法(ほんの数例として、少し挙げると、ガンマ線、中性子ビーム放射線療法、プロトン療法、近接照射療法、および全身性放射性同位体)、内分泌療法、生物学的応答改変因子(少し挙げると、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍絵師因子(TNF))、温熱療法および凍結療法、任意の有害影響を原弱するための因子(例えば、制吐剤)、および他の認可された化学療法薬(アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝剤(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル(Cytarabile)、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、およびシクロホスファミドが挙げられる。最新の癌療法についてのより包括的な考察について、http://www.nci.nih.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmのFDA認可腫瘍学薬物のリスト、およびThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999(これらの内容全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと。
【0139】
本発明のインヒビターと組み合わせ得る薬剤の他の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルツハイマー病のための処置物質(例えば、Aricept(登録商標)およびExcelon(登録商標));パーキンソン病のための処置物質(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカホン(entacapone)、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール(pramipexol)、ブロモクリプチン(bromocriptine)、ペルゴリド、トリへキセフェンチジルおよびアマンタジン);多発性硬化症(MS)のための薬剤(例えば、β−インターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、ミトキサントロン);喘息のための処置物質(例えば、アルブテロールおよびSingulair(登録商標);統合失調症喘息のための処置物質(例えば、ジプレキサ(zyprexa)、リスペルダル(risperdal)、セルクエル(seroque)およびハロペリドール);抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびスルファサラジン);免疫調整剤および免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリウム、ラパミシン、ミコフェノレートモフェティル(mycophenolate mofetil)、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリンおよびサルファサラジン);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネルブロッカー、リルゾール(riluzole)および抗パーキンソン病剤);心疾患を処置するための薬剤(β−ブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、硝酸塩、カルシウムチャンネルブロッカーおよびスタチン);肝疾患を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロンおよび抗ウイルス薬;血管障害を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、抗白血病薬および成長因子);ならびに免疫欠損障害を処置するための薬剤(例えば、γ−グロブリン)。
【0140】
本発明の組成物に存在するさらなる治療剤の量は、活性薬剤だけとして治療剤を含む組成物において通常投与される量よりも多くはない。好ましくは、現在開示される組成物においてさらなる治療剤の量は、治療的に活性な薬剤だけとしてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0141】
本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医療デバイス(例えば、義肢、人工弁、脈管移植片、ステントおよびカテーテル)をコーティングするための組成物中に取り込まれ得る。従って、本発明は、別の局面において、一般的に上記される本発明の化合物ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスの化合物、ならびにこのような移植可能なデバイスをコーティングするために適切なキャリアを含む移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を含む。なお別の局面において、本発明は、一般的に上記される本発明の化合物ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスの化合物、ならびにこのような移植可能なデバイスをコーティングするために適切なキャリアを含む組成物でコーティングされた移植可能なデバイスを包含する。
【0142】
例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後の血管壁の再狭窄化)を克服されるために用いられてきた。しかしながら、ステントまたは他の移植可能なデバイスを使用する患者は、凝結形成または血小板活性化のリスクがある。これらの望ましくない影響は、キナーゼインヒビターを含む薬学的に受容可能な組成物を用いてこのデバイスを前もってコーティングすることによって防止され得るか、または軽減され得る。適切なコーティングおよびコーティングされる移植可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886号,026;および同第5,304,121号に記載されている。このコーティングは、代表的には、生物適合性ポリマー物質(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテートおよびそれらの混合物である。このコーティングは、その組成物において徐放特徴を与えるために、フルオロシリコーン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適切なトップコーティングによって、必要に応じてさらに覆われ得る。
【0143】
本発明の別の局面は、生物学的サンプル中、または患者の中で、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70の活性を阻害することに関し、この方法は、式Iの化合物またはこの化合物を含む組成物を、患者に投与するかまたはこの生物学的サンプルと接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」としては、本明細書中で使用される場合、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られる生検物質またはその抽出物;ならびに血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、または他の体液もしくはそれらの抽出物が挙げられるが、限定はされない。
【0144】
生物学的サンプルにおける、JAK、JNK、CDK、およびZAP−70のキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的のために有用である。そのような目的の例としては、輸血、器官移植、生物学的検体保存、および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書中で記述した発明をさらに十分に理解できるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示の目的のためのみであり、いずれの様式でも本発明を限定するとは解釈されないことが理解できるはずである。
【実施例】
【0146】
上記スキームIは、いくつかの代表的な化合物の合成を描写している。これらの例は、本明細書中の化合物を調製する一般的な手順を記述しており、表3は、本発明の代表的な化合物の特性を描写している。
【0147】
(実施例1:グアニジンの調製)
手順A:グアニジンを合成する一般的な手順
置換アニリン(20mmol、2当量)およびシアナミド(10mmol、1当量)をトルエン(5ml)およびトリフリック酸(1ml)に吸収した。その反応物を封止し、そして磁気攪拌しつつ、一晩にわたって、85℃まで加熱した。この反応を水(10ml)でクエンチした。相分離し、その水相を2N水酸化ナトリウム(10ml)で塩基性にした。この塩基性水相をトルエンで洗浄し、次いで、塩化メチレン(3×)で抽出して、濃縮すると、所望のグアニジンが得られた。
【0148】
手順B:グアニジンを合成する一般的な手順
チューブに、シアナミド(10mmol、1当量)および置換アニリン(11mmol、1.1当量)を入れた。これに、ジオキサン(あるいは、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)が使用できる)10mlを加え、その混合物を温めて、溶解を達成した。その均一溶液に、ジオキサン中の4N塩酸(3ml、12mmol、1.2当量)を加えた。このチューブを封止し、そして磁気攪拌しつつ、一晩にわたって、60℃まで加熱した。その反応を乾燥状態まで濃縮し、2N NaOHで塩基性にし、そして塩化メチレン(2×)で抽出した。それらの有機物を濃縮して、所望のグアニジンを得た。
【0149】
手順B(改良):グアニジンを合成する一般的な手順
置換アニリン(20mmol)およびシアナミド(20mmol)を、温めつつ、ジオキサン(25ml)に溶解した。これに、注射器を経由して、ジオキサン中の4N塩酸(5ml、20mmol)を滴下した。その反応物を、3日間にわたって、還流状態まで加熱し、乾燥状態まで濃縮し、そしてエタノールに溶解した。これに、2N水酸化ナトリウム(10ml、20mmol)を加えると、嵩張った沈殿物が得られた。その固形物を濾過し、そしてエーテル/エタノールで洗浄し、次いで、真空中で乾燥して、1当量の塩化ナトリウムと共に、所望のグアニジンを得た。
【0150】
手順D:N−メチル化ベンゾキサジンエネアミノン(eneaminones)を合成する手順
化合物6−アセチル−2H−1,4−ベンゾキサジン−3(4H)−オン(10mmol)を過剰のN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールに吸収し、そして一晩にわたって、80℃まで加熱した。その反応物を乾燥状態まで濃縮し、そして精製することなく使用した。
【0151】
手順E:N−アルキル化ベンゾキサジンアセトフェノンを合成する一般的な手順
化合物6−アセチル−2H−1,4−ベンゾキサジン−3(4H)−オン(10mmol)およびアルキル化剤(5.4mmol、1.1当量)を、粉末化炭酸カリウム(36mmol、xs)と共に、ジメチルホルムアミド(10ml)に吸収した。その反応物を、1.5〜24時間にわたって、約110℃まで加熱した。この反応を水でクエンチし、そしてエーテル(2×)で抽出した。それらの有機物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして濃縮して、粗製物を得た。この粗製物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製し、そしてエーテルまたは酢酸エチルで溶出した。
【0152】
手順F:エネアミノンを合成する一般的な手順
適当なアセトフェノンをN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールニート(あるいは、共溶媒として、トルエンが使用され得る)に吸収し、そして1〜3日間にわたって、95℃まで加熱した。あるいは、トルエンを加えて、溶解を促進した。次いで、その反応物をオイルに濃縮した。この生成物は、時には、酢酸エチルまたは酢酸エチル/ヘキサンから結晶化した。そうでなければ、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(これは、酢酸エチル/ヘキサン〜純粋な酢酸エチルで溶出する)で精製した。
【0153】
手順G:エネアミノンを合成する一般的な手順
適当なアセトフェノン(20mmol)をトルエン(あるいは、溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフランが使用され得る)100mLに溶解し、そして第三級ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン(Bredereck試薬、35mmol、1.75当量)で処理した。その反応物を、一晩にわたって、還流状態まで加熱した。あるいは、その粗製物は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(これは、酢酸エチル/ヘキサンまたはアセトン/ヘキサンで溶出する)で精製され得る。
【0154】
手順H:フェニルアミノピリミジンを合成する一般的な手順
このエネアミノン(200μmol)およびグアニジン(300μmol〜500μmol、1.5〜2.5当量)をアセトニトリル(200μL〜500μL)に溶解した。その反応物を封止し、そして一晩にわたって、約80℃まで加熱した。この反応物を酢酸エチルおよび水で抽出した。これらの有機物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして粗製物に濃縮した。この粗製物を、酢酸エチル、酢酸エチル/ヘキサン、エーテルまたはエーテル/ヘキサンのいずれかから再結晶した。そうでなければ、この粗製物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(これは、酢酸エチル/ヘキサンまたは酢酸エチルで溶出する)で精製した。
【0155】
手順J:フェニルアミノピリミジンを合成する一般的な手順
エナミノン(200μmol)およびグアニジン(300μmol〜500μmol、1.5〜2.5当量)を約1mlのジメチルホルムアミド(あるいは、DMSO)に溶解した。その反応物を封止し、そして一晩にわたって、約120℃まで加熱した。この生成物は、酢酸エチルおよび1N塩酸を加えることによって沈殿できるか、または逆相HPLC(これは、C18カラムを使用し、そしてアセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸v/vを使う)の勾配で溶出する)で精製できるか、いずれかである。
【0156】
手順J(改良):フェニルアミノピリミジンを合成する一般的な手順
粉末化炭酸カリウム(1当量または過剰)を加えたこと以外は、手順Jによる。
【0157】
表3:以下の表3は、代表的な化合物を調製するのに使用される手順を描写している。この手順中の文字の各々は、上で詳述した手順を意味する。「X」は、「適用されない」ことを意味し、そして小文字は、改良した手順(これもまた、上で詳述されている)を意味する。
【0158】
【化42】

【0159】
【化43】

【0160】
【化44】

(実施例16:JAK3阻害アッセイ)
化合物を、以下の様式で、G.R.Brownら,Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,第10巻,575−579頁によって記載された方法によって、JAK3を阻害する能力についてスクリーニングした。4℃においてポリ(Glu、Ala、Tyr)6:3:1を用いて予めコーティングして、リン酸緩衝化生理食塩水0.05%およびTween(PBST)で洗浄したMaxisorbプレート中に、2μM ATP、5mM MgCl、およびDMSO中の化合物溶液を添加した。JAK酵素を用いて反応を開始し、そしてプレートを30℃にて60分間インキュベートした。次いで、このプレートをPBSTで洗浄し、100μL HRP結合体化4G10抗体を添加し、そしてこのプレートを30℃にて90分間インキュベートした。このプレートをPBSTで再度洗浄し、100μL TMB溶液を添加し、そしてこのプレートを30℃にてさらに30分間インキュベートした。硫酸(100μLの1M)を添加して反応を停止させ、そしてこのプレートを450nmにおいて読み取って、K値を決定するための分析のための光学密度を得た。
【0161】
JAK3阻害アッセイにおいて5.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有する本発明の化合物としては、以下の化合物が挙げられる:(IVa−2)、(IVa−4)、(IVa−5)、(IVa−39)、(IVa−10)、(IVa−11)、(IVa−13)、(IVa−26)、(lVa−29)、(IVa−30)、(IVa−31)、(IVa−32)、(IVa−36)、(IVa−23)、(IVa−24)、(IVa−41)、(IVa−43)、(IVa−45)、(IVa−46)、(IVa−47)、(IVa−48)、(IVa−50)、(IVa−52)、(IVa−55)、(IVa−56)、(IVa−57)、(IVa−58)、(IVa−59)、(IVa−60)、(IVa−66)、(IVa−70)、および(IVa−72)。
【0162】
JAK3阻害アッセイにおいて1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有する本発明の化合物としては、以下の化合物が挙げられる:(IVa−1)、(IVa−3)、(IVa−6)、(IVa−7)、(IVa−14)、(IVa−15)、(IVa−21)、(IVa−22)、(IVa−25)、(IVa−27)、(IVa−28)、(IVa−44)、(IVa−51)、(IVa−53)、(IVa−57)、および(IVa−71)。
【0163】
(実施例17:CDK2阻害アッセイ)
化合物を、標準的な共役酵素アッセイ(Foxら,(1998)Protein Sci.7,2249)を用いて、CDK−2/サイクリン Aを阻害するそれらの能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES 7.5、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTTおよび1.5% DMSOの混合物中で実施した。このアッセイにおける最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)および100μMペプチド(American Peptide,Sunnyvale,CA)であった。アッセイを、30℃および25nM CDK−2/サイクリン Aにおいて実施した。共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルビン酸、350μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0164】
CDK−2/サイクリン A、DTTおよび目的の試験化合物を除く、上記に列挙した試薬の全てを含むアッセイストック緩衝液溶液を調製した。56μlの試験反応を384ウェルプレート中に配置し、続いて試験化合物を含む1μlの2mM DMSOストック溶液を添加した(最終化合物濃度30μM)。このプレートを、30℃にて約10分間予備インキュベートし、そして10μlの酵素(最終濃度25nM)の添加によって、反応を開始した。反応速度を、BioRad Ultramarkプレートリーダー(Hercules,CA)を用いて、5分間の読取時間にわたって30℃にて得た。化合物を含まずDMSOを含む標準のウェルに対して50%よりも高い阻害を示す化合物を滴定して、類似のプロトコルを使用してIC50値を決定した。
【0165】
CDK2阻害アッセイにおいて1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有する本発明の化合物としては、以下の化合物が挙げられる:(IVa−22)、(IVa−23)、および(IVa−24)。
【0166】
(実施例18:JNK3阻害アッセイ)
化合物を、分光光度滴定共役−酵素アッセイによってJNK3の阻害についてアッセイした。このアッセイでは、固定した濃度の活性化JNK3(10nM)を、10mM MgCl、2.5mMホスホエノールピルビン酸、200μM NADH、150μg/mLピルビン酸キナーゼ、50μg/mL乳酸デヒドロゲナーゼ、および200μM EGFレセプターペプチドを含む0.1M HEPES緩衝液(pH 7.5)を含む緩衝液中で、DMSO中に溶解した種々の濃度の潜在的インヒビターとともに30℃にて10分間インキュベートした。EGFレセプターペプチドは、JNK3触媒キナーゼ反応中でホスホリルアクセプターである。反応を、10μM ATPの添加によって開始した。そしてアッセイプレートを分光光度計のアッセイプレート区画中に挿入し、これを30℃にて維持した。340nmでの吸光度の減少を、時間の関数としてモニタリングした。インヒビター濃度の関数としての速度のデータを、競合阻害反応速度モデルに適合させて、Kを決定した。
【0167】
JNK3阻害アッセイにおいて1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有する本発明の化合物としては、以下の化合物が挙げられる:(IVa−1)、(IVa−2)、(IVa−3)、(IVa−4)、(IVa−5)、(IVa−22)、(IVa−23)、および(IVa−24)。
【0168】
(実施例18:ZAP−70阻害アッセイ)
化合物を、標準的な結合酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を使用して、ZAP−70を阻害する能力についてスクリーニングした。アッセイを、100mM HEPES(pH 7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、2mM DTTおよび3% DMSOの混合物中で行った。アッセイにおける最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)および20μM ペプチド(ポリ−4EY,Sigma Chemicals)であった。アッセイを、30℃、60nMのZAP−70にて行った。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mM ホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/ml ピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml 乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0169】
ZAP−70および本発明の目的の試験化合物以外の上に列挙される試薬を全て含有するアッセイのストック緩衝溶液を調製した。55μlのストック溶液を、96ウェルプレートに入れ、その後、本発明の試験化合物の段階希釈を含有する2μlのDMSOストック(代表的には、15μMの最終濃度から開始する)を添加した。このプレートを30℃にて10分間予めインキュベートし、10μlの酵素(最終濃度60nM)の添加により反応を開始した。反応初速度を、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーで15分間にわたって測定した。IC50およびKデータを、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0a for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を用いて、非線形回帰分析から算出した
ZAP−70阻害アッセイにおいて1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有する本発明の化合物としては、以下の化合物が挙げられる:(IVa−23)、および(IVa−24)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩:
【化1】

ここで:
は、窒素またはCHであり、Wは、窒素またはC−(U)であり、そしてWは、窒素またはC−(V)である;
pおよびqは、それぞれ別個に、0または1である;
およびRは、それぞれ別個に、RまたはArである;
UおよびVは、それぞれ別個に、結合またはC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、該鎖の2個までのメチレン単位は、必要に応じて、別個に、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;
Rの各出現例は、別個に、水素または必要に応じて置換したC〜C脂肪族であるか、または同じ窒素原子に結合した2個のRは、必要に応じて、該窒素原子と共に、3〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の環を形成し、該環は、0個〜2個の追加ヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
Arは、5〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の単環または8〜12員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の二環式環系であり、該単環は、0個〜3個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該二環式環系は、0個〜5個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;ここで、Arは、必要に応じて、Z−Rのm個の別個の出現例で置換されている;ここで、mは、0〜5であり、Zは、結合であるか、またはC〜Cアルキリデン鎖であり、ここで、Zの2個までのメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;そしてRの各出現例は、別個に、水素、必要に応じて置換した脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール基、ハロゲン、NO、CN、OR、SR、N(R)、NRCOR、NRCON(R)、NRCOR、COR、COR、OCOR、CON(R)、OCON(R)、SOR、SOR、SON(R)、NRSOR、NRSON(R)、COCORまたはCOCHCORで置換されている;
およびRは、一緒になって環Bに縮合して、環状部分を形成し、該環状部分は、以下の1個から選択される:
【化2】

ここで、Rの各出現例は、別個に、水素、QRまたはQArである;nは、0または1である;そしてQは、必要に応じて置換したC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている;
は、ハロゲン、QR、QCN、QNOまたはQArである;そして
は、ArまたはT−Arである;
ここで、Tは、C1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Tの1個のメチレン単位は、必要に応じて、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、SまたはNRで置換されている、
化合物。
【請求項2】
およびRが、一緒になって、複素環iを表わし、そしてRが、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、N(R)で置換したC1〜6アルキルまたはArで置換したC1〜6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素、メチルまたはC1〜2アルキルであり、該アルキルが、必要に応じて置換したフェニル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジニルまたはピペラジニルから選択される基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、水素、ハロゲン、QRまたはQArであり、ここで、Qが、C1〜3アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−NHCO−または−NR−で置換されており、そしてArが、必要に応じて置換した5〜6員の飽和、部分不飽和または完全不飽和環であり、該環が、0個〜2個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、水素、OH、OCH、OCHCH、NHCOMe、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、O(CHモルホリン−4−イル、O(CHNH、O(CHNH(C1〜4脂肪族)、O(CHN(C1〜4脂肪族)、Br、ClまたはFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、0個〜3個の窒素原子を有する6員の飽和、部分不飽和またはアリール環、0個〜2個の窒素原子を有する9〜10員の二環式アリール環、または2個〜3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール環であり、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、ここで、各環が、必要に応じて、置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、必要に応じて置換したフェニル、シクロヘキシル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、インダゾリルまたはベンゾイミダゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、必要に応じて置換したフェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Zの各出現例が、別個に、結合またはC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Zの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−または−NH−で置換されている;そしてRの各出現例が、別個に、水素、C1〜6脂肪族、ハロゲン、NO、OR、N(R)、または必要に応じて置換したフェニル、ピリジルまたはピリミジニルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
ZRの各出現例が、別個に、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、O−ピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メトキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシおよびフルオロフェノキシである、請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
(U)および(V)が、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、NO、CN、OR、SRまたはN(R)、またはC1〜4脂肪族であり、該脂肪族が、必要に応じて、オキソ、OR、SR、N(R)、ハロゲン、NOまたはCNで置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
(U)および(V)が、それぞれ別個に、水素、Me、OHまたはOMeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
が、NまたはCHであり、そして前記化合物が、式IaまたはIb、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する、請求項1に記載の化合物:
【化3】


【請求項16】
が、必要に応じて置換したフェニル基であり、そして前記化合物が、式IIaまたはIIb、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する、請求項1に記載の化合物:
【化4】


【請求項17】
が、水素であり、そして前記化合物が、式IIIaまたはIIIb、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する、請求項1に記載の化合物:
【化5】


【請求項18】
が、水素であり、そして前記化合物が、式IVaまたはIVb、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を有する、請求項1に記載の化合物:
【化6】


【請求項19】
i)RおよびRが、一緒になって、上で描写した複素環iである;ここで、Rが、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族;
b.水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、N(R)で置換したC1〜6アルキル、またはArで置換したC1〜6アルキル;または
c.水素、メチル、またはC1〜2アルキルであり、該アルキルが、必要に応じて置換したフェニル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジニルまたはピペラジニルから選択される基で置換されている;
ii)Rが、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素、ハロゲン、QRまたはQArであり、ここで、Qが、C1〜3アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−NHCO−または−NR−で置換されており、そしてArが、必要に応じて置換した5〜6員の飽和、部分不飽和または完全不飽和の環であり、該環が、0個〜2個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
b.水素、OH、OCH、OCHCH、NHCOMe、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、O(CHモルホリン−4−イル、O(CHNH、O(CHNH(C1〜4脂肪族)、O(CHN(C1〜4脂肪族)、ブロモ、クロロまたはフルオロ;または
c.水素;
iii)Rが、以下の群の1個に従って定義される:
a.0個〜3個の窒素原子を有する6員の飽和、部分不飽和またはアリール環、0個〜2個の窒素原子を有する9〜10員の二環式アリール環、または2個〜3個のヘテロ原子を有する5員のヘテロアリール環であり、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、ここで、各環が、必要に応じて、置換されている;
b.必要に応じて置換した環であり、該環が、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、インダゾリルまたはベンゾイミダゾリルから選択される;または
c.必要に応じて置換したフェニル基;
iv)W、WおよびWが、以下の群の1個に従って定義される:
a.Wが、窒素またはCHであり、Wが、窒素またはC−(U)であり、そしてWが、窒素またはC−(V)である;
b.Wが、窒素またはCHであり、Wが、C−(U)であり、そしてWが、C−(V)である;または
c.Wが、窒素またはCHであり、そしてWおよびWが、それぞれ、CHである;そして
v)(U)および(V)基が、以下の群の1個に従って定義される:
a.水素、ハロゲン、NO、CN、OR、SRまたはN(R)、またはC1〜4脂肪族であり、該脂肪族が、必要に応じて、オキソ、OR、SR、N(R)、ハロゲン、NOまたはCNで置換されている;
b.水素、Me、OH、OMeまたはN(R);または
c.(U)および(V)の両方は、水素である、
請求項15、16、17または18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
Zの各出現例が、別個に、結合またはC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Zの1個のメチレン単位が、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−または−NH−で置換されている;そしてRの各出現例が、別個に、水素、C1〜6脂肪族、ハロゲン、NO、OR、N(R)、または必要に応じて置換したフェニル、ピリジルおよびピリミジニルである、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
ZRの各出現例が、別個に、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、O−ピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メトキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシまたはフルオロフェノキシである、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
式IVaを有し、ここで、Rが、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族である;mが、0、1または2である;そしてZRが、Cl、F、Br、メチル、エチル、t−ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、ニトロ、CN、OMe、OEt、CF、NH、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、OH、メチレンジオキシ、SONH、CONH、COMe、フェノキシ、O−ピリジニル、SOフェニル、ニトロフェノキシ、アミノフェノキシ、S−ジメチルピリミジン、NHフェニル、NH−メトキシフェニル、ピリジニル、アミノフェニル、フェノール、クロロ−フルオロ−フェニル、ジメチルアミノフェニル、CF−フェニル、ジメチルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メチキシフェノキシ、クロロフェノキシ、エトキシフェノキシまたはフルオロフェノキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
以下の化合物の1個から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【請求項24】
請求項1に記載の化合物と、薬学的に受容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルとを含有する、薬学的組成物。
【請求項25】
さらに、追加治療薬を含有し、該追加治療薬が、化学療法薬または抗増殖薬、アルツハイマー病治療薬、パーキンソン病治療薬、多発性硬化症(MS)治療薬、喘息治療薬、精神分裂病治療薬、抗炎症薬、免疫調節薬または免疫抑制薬、神経栄養性因子、循環器病治療薬、破壊的骨障害治療薬、肝疾患治療薬、血液疾患治療薬、または免疫不全障害治療薬から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
(a)患者;または
(b)生物学的試料におけるJAK−3キナーゼ活性を阻害する方法であって、請求項1に記載の化合物または請求項24に記載の組成物を該患者に投与するかまたは該生物学的試料と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項27】
免疫応答、自己免疫疾患、神経変性、固形または血液悪性腫瘍から選択される疾患または障害を処置するかその重症度を軽くする方法であって、それが必要な被験体に、請求項1に記載の化合物または請求項24に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
前記疾患または障害が、アレルギー性またはI型過感受性反応、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)、白血病またはリンパ腫から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者に、追加治療薬を投与する追加工程を包含し、該追加治療薬が、化学療法薬または抗増殖薬、アルツハイマー病治療薬、パーキンソン病治療薬、多発性硬化症(MS)治療薬、喘息治療薬、精神分裂病治療薬、抗炎症薬、免疫調節薬または免疫抑制薬、神経栄養性因子、循環器病治療薬、破壊的骨障害治療薬、肝疾患治療薬、血液疾患治療薬、または免疫不全障害治療薬から選択され、ここで、
該追加治療薬が、治療する疾患に適当であり、そして
該追加治療薬が、単一剤形として、前記組成物と共に投与されるか、または複数剤形の一部として、該組成物とは別々に投与される、請求項28に記載の方法。

【公表番号】特表2006−514006(P2006−514006A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550483(P2004−550483)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/035163
【国際公開番号】WO2004/041814
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Macintosh
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】