説明

JAK/STAT経路阻害剤およびその使用

【課題】変形性関節症(OA)や慢性関節リウマチなどの退行性関節疾患または障害の発病および進行を阻害する方法の提供。
【解決手段】退行性関節疾患に関与するJAK/STATシグナル伝達を阻害する4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリンならび4−(2−アミノ−4−オキソ−2−イミダゾリン−5−イリデン)−4,5,6,7−テトラヒドロピロロ(2,3−c)アゼピン−8−オンなどの阻害剤の投与による効果的なOA治療。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/177,872号(2000年1月24日出願)の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は分子生物学および整形外科の分野に属する。本発明は、JAK/STATにより媒介される疾患または障害(特に、JAK3により媒介される疾患または障害)を、JAK3阻害剤を使用して処置する新規な方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
退行性関節疾患の生物学
関節の軟骨は、滑膜性関節内の長骨の両端を覆って、身体の支持および動きに伴う通常の剪断力および圧縮力から、その下にある骨を保護している。軟骨は、細胞外マトリックスのコラーゲンから構成される。コラーゲンマトリックス内には、軟骨細胞(すなわち、分化した軟骨の細胞)および基質が含まれる。基質は、プロテオグリカンおよび水から構成される。コラーゲンは、引張り強度を付与するマトリックスを形成し、一方、プロテオグリカンは、圧縮に対する抵抗性をもたらす大きな集合体を形成する(Stockwell、1991)。プロテオグリカンは、強く負に帯電した大きな親水性分子であり、水を引き寄せている。関節機能の正常な圧力のもとでは、水は軟骨から滲出して、関節の表面を潤滑している。圧力が除かれると、その水は軟骨のプロテオグリカンによって吸収される。水の動きはまた、軟骨組織には血液が供給されていないので、軟骨細胞への栄養物の輸送および軟骨細胞からの老廃物の輸送をもたらす。軟骨の完全性を維持することは非常に重要である。異常な負荷は、増大または低下のいずれでも、軟骨の物理的完全性に作用し、細胞の代謝に影響し、そして生化学的な変化を誘導する、これらはすべて、軟骨の分解をもたらし、そして変形性関節症(OA)などの退行性関節疾患の発症をもたらし得る(Mow他、1992)。
【0004】
OAなどの退行性関節疾患は脊椎動物には広く存在する。退行性関節疾患は、軟骨の分解から生じる進行性の不可逆的な疾患として特徴付けられる(MankinおよびBrandt、1991)。変形性関節症という名称は炎症性の疾患または障害であることを示唆するが、OAは、軟骨の分解をもたらす軟骨内の生化学的なプロセスから生じる。この点で、OAは、慢性関節リウマチ(RA)および血清反応陰性の脊椎関節症から区別される。滑膜が分解酵素の主要な供給源であるRAとは異なり、OAでは、軟骨細胞が、軟骨の異化作用に関わる酵素の主要な供給源である。しかし、不定期的で一過性の炎症性反応は、OAの進行に伴う別の二次的な合併症であることが多い(Goldring、1999)。
【0005】
OAの発症における開始事象は依然として不明であるが、OAの病因には、外因性の機械的な要因と内因性の軟骨代謝とのある種の相互作用が関与していることが考えられる。OAの決定的な原因は、軟骨に対する物理的な外傷(二次的OA)から、正常な軟骨維持プロセスに影響を及ぼす代謝的な変化まで、低グレードの断続的な炎症性反応まで、遺伝子的な障害までに及ぶ可能性があり、これらはすべて、自己溶解性の酵素を誘導することがある(Wilson、1988;Goldring、1999)。OAの発病を引き起こし得る開始事象または外傷にかかわらず、一般に受け入れられているモデルは、活性化されたサイトカインおよび/または受容体が、軟骨分解酵素および炎症性因子の遺伝子発現を含む、軟骨細胞の核へのシグナル伝達を生じさせるということである。
【0006】
軟骨の直接的な傷害もまた、軟骨細胞に対する傷害を生じさせ得る。軟骨細胞は、分解酵素を産生することによって、そして不適切な修復プロセスを誘導することによって傷害に応答し得る(Mow他、1992)。OAにおける生化学的な変化は、プロテオグリカン集合体およびコラーゲンを含むいくつかの軟骨成分に影響を及ぼす。プロテオグリカンの分解産物がOA患者の滑液中に同定されている(Lohmander他、1993)。コラーゲンの分解に伴うプロテオグリカン含有量の低下は、正常なマトリックスの生理学的性質の機能的喪失を生じさせる。
【0007】
軟骨マトリックスの酵素的分解は、退行性関節疾患の発病および進行における重要な要因である(Pelletier他、1992;Pelletier他、1993)。OAの病理学において大きな役割を果たしていることが知られている軟骨分解酵素には、マトリックスメタロプロテアーゼ類(MMP)、アグリカナーゼ類、ならびにセリンプロテアーゼ類およびチオールプロテアーゼ類が含まれる(Pelletier他、1997)。
【0008】
OAに関与するマトリックスメタロプロテアーゼ類には、コラゲナーゼ類、ストロメライシン類、およびゼラチナーゼ類が含まれる。コラゲナーゼ類は、軟骨に足場を置くII型コラーゲンの分解に関わっている。コラゲナーゼ−1(MMP−1)およびコラゲナーゼ−3(MMP−13)がOAのその場の軟骨において同定されている。コラゲナーゼ−1およびコラゲナーゼ−3のレベルは、OAを罹っている軟骨の組織学的重篤度と相関している(Reboul他、1996)。ストロメライシン類およびゼラチナーゼ類(ゼラチナーゼ−Aおよびゼラチナーゼ−B(これらはそれぞれMMP−2およびMMP−9と呼ばれることもある)を含む)はメタロプロテオグリカナーゼ類であり、これらもまたOAに関与している。ストロメライシンのレベルもまたOAの組織学的重篤度と相関している(Dean他、1989)。また、ストロメライシンはまた、プロコラゲナーゼの活性化にも関与しており、したがって、OAの病理学においてその全体的な作用を増幅している(Murphy他、1987)。好中球のコラゲナーゼ(これはまたコラゲナーゼ−2またはMMP−8としても知られている)は、真のアグリカナーゼであると見なすには十分なほど選択的ではないが、アグリカナーゼが切断する部位を含む特異的な部位でアグリカンを切断することが示されている(Arner他、1997)。これらのマトリックスメタロプロテイナーゼ類は、OAが生じている軟骨のプロテオグリカン成分、II型コラーゲン成分、およびIX型コラーゲン成分を損傷させる一次的な原因因子であると考えられている(Dean他、1989;Mort他、1993;Buttle他、1993)。
【0009】
アグリカナーゼ類は、軟骨におけるプロテオグリカン集合体の主成分であるアグリカンを分解する酵素のファミリーを表す。アグリカナーゼ類は、Glu373−Ala374間におけるアグリカンのその特徴的な切断によって定義される。アグリカナーゼ類は、最近では、細胞外マトリックスの結合に関係する多数のカルボキシトロンボスポンジンモチーフを含有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ファミリーのサブファミリーとして特徴付けられている。トロンボスポンジンモチーフを有するこれらのディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS)化合物、特に、ADAMTS−4、ADAMTS−11およびあるいはADAMTS−1は、特徴的な切断特異的なアグリカナーゼ活性を有する(Abbaszade他、1999;Tortorella他、1999)。
【0010】
無機のフリーラジカルである一酸化窒素(NO)もまた退行性関節障害に関与している。NOは、1−アルギニンからNOシンターゼ(NOS)によって酵素的に合成される。NOSの2つのイソ型、すなわち、構成型NOS(cNOS)および誘導型NOS(iNOS)が現在知られている。OA患者の滑液に由来する亜硝酸塩レベルおよび硝酸塩レベルの臨床的測定により、NOが変形性関節症の関節において産生していることが示される(Farrell他、1992)。また、NOS阻害剤は、ラットにおけるいくつかの関節変化を抑制することが報告されている(McCartney−Francis他、1993)。
【0011】
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)は、痛み、発熱および炎症に関連する広範囲の生物学的プロセスにおいて機能する、局所的に作用するホルモン様分子であるエイコサノイド類の合成において大きな役割を果たしている。詳しくは、COX2は、アラキドン酸からのプロスタグランジン類、プロスタサイクリン類、およびトロンボキサン類の合成に必要である。NF−κB(p65とp50とのヘテロダイマー)は、COX2の転写を活性化する転写因子である。COX2はプロスタグランジン類の合成において必要であるので、この酵素およびその転写因子であるNF−κβもまた、OAの発病および進行における重要な成分として標的化されている。
【0012】
結合組織の代謝を調節する様々なサイトカインの役割およびそれらの付随する細胞内シグナル伝達経路が、慢性関節リウマチおよび変形性関節症などの関節疾患に関連した組織分解に関して広範囲に研究されている(例えば、Goldring、1999;Pelletier他、1993参照のこと)。研究により、炎症性サイトカインが、軟骨細胞を刺激して上記の様々な軟骨分解性化合物を放出させる生化学的なシグナルとして中心的な役割を果たしていることが解明されている。現在、軟骨の分解に関係していると考えられる主要なサイトカインとしては、インターロイキン−1およびインターロイキン−6(IL−1およびIL−6)ならびに腫瘍壊死因子−α(TNF−α)が挙げられる。
【0013】
IL−1およびTNF−αは、メタロプロテアーゼを含む様々なプロテアーゼの合成(すなわち、遺伝子発現)を増大させることが報告されている。IL−1およびTNF−αを組み合わせて注射することにより、いずれかのサイトカインが単独で誘発するよりも大きい軟骨分解が誘発される(HendersonおよびPettipher、1989;Page−Thomas、1991)。また、IL−1は、正のフィードバック機構をもたらす、軟骨細胞におけるオートクリン活性を示すことが報告されている(Attur他、1998;Pelletier他、1993)。IL−1およびTNF−αはまた、滑膜の繊維芽細胞においてIL−6の発現を誘導する。このことは、他の細胞(転写)応答を誘導する際の中間シグナルとしてのIL−6を示している。IL−6のレベルは、TNF−αのレベルが高いことと相関することが見出されており、そしてOA組織に由来する滑液中では増大している。IL−1は、OAで認められる軟骨の分解において大きな役割を果たすことが示されている(Pelletier他、1991;McDonnell他、1992)。IL−1は、メタロプロテイナーゼであるストロメライシンおよび間質性コラゲナーゼの合成および分泌を用量依存的にアップレギュレートしている(Stephenson他、1987;Lefebvre他、1990)。マクロファージ様滑液細胞が、軟骨分解酵素を発現するように軟骨細胞を誘導するIL−1および他のサイトカインの主要な供給源であると一部の研究者によって考えられている。軟骨細胞自身もまた、IL−1を産生することが知られている(Goldring、1999)。
【0014】
上記に詳述された広範囲の研究成果にもかかわらず、軟骨分解酵素の機構的誘導および/またはサイトカイン誘導の経過を変更するために細胞内の軟骨細胞シグナル伝達経路を操作することは依然として困難な目標である。現在の研究は、様々な刺激によって活性化されるだけでなく、様々なMMP遺伝子(例えば、コラゲナーゼ−1および3)およびある種の炎症性サイトカインの発現に関わっていることが疑われるいくつかの転写因子(特に、活性化因子タンパク質−1またはAP−1)をも調節する、分裂促進因子により活性化されるタンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーに向けられている(Rutter他、1997;Pendas他、1997;Lee他、1994)。ストレスにより活性化されるタンパク質キナーゼ類(SAPKs、これはまたJNKsとも呼ばれる)、細胞外の調節型キナーゼ類(ERKs)、およびp38キナーゼ類はすべて、軟骨分解酵素の発現を生じさせるシグナル伝達経路における重要なタンパク質であると考えられている。
【0015】
AP−1は、c−Junおよびc−Fosのポリペプチドを含む異種タンパク質複合体である。AP−1の活性化はまた、進行性の骨および軟骨の変性疾患において重要な役割を果たしていると考えられている(Firestein、1996)。AP−1は、コラゲナーゼ遺伝子およびストロメライシンを調節していると考えられており(Matrisian、1994)、そしてIL−1は、RAの繊維芽細胞様滑液細胞におけるコラゲナーゼおよびAP−1の最も強力な誘導因子の1つである(Zuoning他、1999)。
【0016】
(退行性関節疾患の処置)
OAなどの退行性関節疾患に対する治療薬を開発する現在の方法は、一般に、軟骨分解酵素阻害剤の合成、サイトカイン/細胞受容体レベルの調節およびタンパク質キナーゼの調節を含む。例えば、いくつかのタンパク質キナーゼC阻害剤が、特に、PKCにより媒介される炎症を緩和するために使用できることが一般に報告されている(NambiおよびPatil、1993;NambiおよびPatil、1997)。4−(2−アミノ−4−オキソ−2−イミダゾリン−5−イリデン)−2−ブロモ−4,5,6,7−テトラヒドロピロロ(2,3−c)アゼピン−8−オン(ヒメニアルジシン、以降、「H」)および4−(2−アミノ−4−オキソ−2−イミダゾリン−5−イリデン)−4,5,6,7−テトラヒドロピロロ(2,3−c)アゼピン−8−オン(デブロモヒメニアルジシン、以降、「DBH」)およびそれらの様々な生理学的に活性な塩を含むこれらの阻害剤のいくつかが、その後、培養中および関節軟骨の外稙片における軟骨細胞による、グリコサミノグリカンおよび細胞外マトリックスのIL−1により誘導される分解を阻害することが見出された(ChipmanおよびFaulkner、1997)。近年には、チロシンキナーゼ阻害剤のゲニステイン、ヘルビマイシンA、4,5−ジアニリノフタルイミド(DAPH)、チルホスチンAG82およびチルホスチンAG556もまた、インビトロで軟骨細胞による軟骨分解を低下または防止することが見出されている(Sharpe他、1997)。
【0017】
それにも関わらず、退行性関節疾患に関与する軟骨分解酵素の発現を特異的に調節する細胞機構の多くは依然として不明である。軟骨分解酵素を、直接的に、または中間体を活性化することを介して、そのいずれかで調節する特異的なシグナル伝達経路の発見は、退行性関節疾患の誘導および進行を理解することにおける著しい進歩に対応し、そしてそのような疾患を処置するための新しい種類の効果的な治療薬を開発することに対する新しい方法を提供する。
【0018】
(Janusキナーゼ(JAK)経路)
軟骨分解酵素の調節に関しても、またはIL−1のシグナル伝達経路に関連してもいかなる点でもこれまで決して関連していない独立した独特なシグナル伝達経路がJAK/STAT経路である。非常に様々なポリペプチド性のサイトカイン、リンホカイン、および増殖因子により、(サイトカイン受容体を介して)JAKファミリーが活性化される(総説、Aringer他、1999)。受容体により活性化されたJAKの様々な結合は、次にSTAT(転写のシグナル伝達因子および活性化因子)タンパク質を活性化する(すなわち、チロシンをリン酸化する)。JAKsは、現在知られている5個のSTATタンパク質の主要な活性化因子であり得ると考えられている(Silvennoinen他、1997)。
【0019】
STATの活性化に対する現在のモデルは、JAKsが、活性化された細胞受容体における特定のチロシン残基をリン酸化し、これにより、STATsがそれらのSrc相同性2(SH2)ドメインで結合するための結合部位を生じさせるというものである。JAKsはSTATのリン酸化を触媒し、これによりSTATの二量体化および受容体からのSTATsの解離を活性化する。STATの二量体は、その後、細胞の核にトランスロケーションされ、そして核において、例えば、インターフェロンのDNAプロモーター領域(IREおよびGAS)に結合して転写因子として機能する(Darnell Jr.他、1994;Ihle、1995;Ihle、1994;Darnell、1997)。
【0020】
さらに上流のJAKの活性化は、固有のキナーゼ活性を有しない、細胞のサイトカイン膜貫通受容体に直接関連している。JAKsは、これらの受容体の細胞質モチーフに結合することができる。これらの細胞受容体は、細胞内のシグナリングを行うために、その非受容体タンパク質キナーゼとしてJAKsを呼び集め/活性化するように作用する(Aringer他、1999)。1つのモデルでは、リガンドにより誘導される受容体の二量体化またはオリゴマー化はJAK分子の局所的な集合を生じさせ、そして交差リン酸化機構によるJAKの活性化を生じさせることが提案されている(Taniguchi、1995)。
【0021】
JAKファミリーのメンバーは、現在、JAK1、JAK2、TYK2、およびJAK3からなっており、非受容体チロシンキナーゼである。JAKタンパク質は、他のチロシンキナーゼにおいて見出される高度に保存された触媒作用ドメインを含む(Firmbach−Kraft、1990;Hanks他、1991;Hunter、1991;Wilks、1989)。しかし、ほとんどの他のチロシンキナーゼ類とは異なり、JAKsは細胞質に局在化し、そして機能が未知である別のキナーゼ様ドメインを含んでいるが、SH2ドメインもしくはSH3ドメイン、シグナルペプチド配列または膜貫通ドメインは含んでいない(Harpur他、1992;Wilks他、1991)。
【0022】
JAKタンパク質は、造血細胞に作用するいくつかのサイトカインからのシグナル伝達に関与していることが知られている。JAKシグナル伝達は、INF−α、βおよびγ(インターフェロン);IL−2、3、4、6、7、17(インターロイキン);GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子);EPO(エリスロポイエチン);GH(成長ホルモン);CNTF(毛様体神経栄養因子);LIF(白血病阻害因子);OSM(オンコスタチンM);およびPRL(プロラクチン)によって活性化される(Argetsinger、1993;Gauzzi他、1996;HeldenおよびPurton(編)、1996;Ihle、1996;Liu他、1997;Luttichen、1994;Muller他、1993;SchindlerおよびDarnell Jr.、1995;Stahl他、1994;Subramaniam他、1999;Velazquez他、1992;Watling他、1993;Witthuhn他、1993;Rui他、1994)。
【0023】
絶対的な相関が、JAK活性化といくつかのサイトカイン誘導による下流のシグナル伝達事象との間において明らかにされている。これらには、ホスホイノシトール3−キナーゼ(PI−3K)、Shc、インスリン受容体基質−1および−2(IRS−1および−2)、ならびにVavリン酸化および、c−Myc、c−Fos、c−Jun、Pim、およびCISの各遺伝子の誘導が含まれる(Silvennoinen他、1997)。
【0024】
JAK/STATタンパク質は、胚および出生後の脳に存在し、およびインビボで調節されていることが見出されており、このことは脳の発達時における役割を示している(De−Fraja他、1998)。JAK/STAT経路は脳腫瘍(例えば、髄膜腫)において重要であることが見出されている。そして、JAK/STAT経路はまた、糖尿病性腎症の病因におけるシグナル伝達経路として役立つことも見出されている。
【0025】
Janusキナーゼ3(JAK3)
JAK3は、JAKタンパク質チロシンキナーゼファミリーの最も新しいメンバーである。JAK3の3つのスプライス変化体が造血ガン細胞および上皮ガン細胞において報告されている。これらのJAK3スプライス変化体は、同一のアミノ末端領域を含むが、C末端は異なっている(Lai他、1995;GurniakおよびBerg、1996)。これらのスプライス変化体の機能的重要性は完全には理解されていない。JAK3のアミノ末端のJH7−6ドメイン(アミノ酸1〜192)は、それがIL−2Rサブユニットγcと相互作用するために必要かつ十分であることが示されている(Chen他、1997)。
【0026】
JAK/STATシグナル伝達経路、および特にJAK3の役割は、様々な疾患および障害に対する治療的介入の重要な点を表している。しかし、JAK/STAT経路の完全な範囲および機能は未解明のままである。JAK/STAT経路をより完全に理解することがこの分野では求められており、そしてこのシグナル伝達経路を調節する方法によって、JAK/STATにより媒介される疾患または障害を処置する際に重要な新しい治療薬がもたらされる。
【0027】
(発明の概要)
本発明は、JAK/STATシグナル伝達経路(特に、JAK3)が退行性関節疾患の開始および進行に関与しているという発見に基づく。詳細には、JAK3阻害剤によって、OAの発症および進行に関与していることが知られている遺伝子のIL−1誘導による発現が阻止されることが示される。本明細書中にはまた、JAK3が軟骨細胞では少なくとも2つの形態で発現していることも最初に明らかにされる。DBHおよびHなどの分子が、動物モデルにおいてOAなどの軟骨分解性障害を処置することにおいて効果的であることが示される一方で、様々な軟骨分解因子および炎症媒介因子の発現を直接的および/または間接的に低下させるまたは抑制するJAK3特異的阻害剤として作用することを明らかにする証拠が示される。最後に、他のJAK3阻害剤もまた、DBHおよびHの様式と同一の様式で様々な軟骨分解性因子の発現を、直接的および/または間接的に、効果的に抑制し得ることを明らかにする証拠が示される。軟骨の変性におけるJAK/STAT経路のこの新規な役割の同定、およびそのような疾患の病状予防におけるJAK3阻害剤の特異的な機能の同定および決定は、退行性関節疾患の処置に対して効果的な種類の治療薬を開発する新しい方法をもたらす。本発明はまた、OA治療薬として以前に知られている分子に対する新しい使用法、すなわち、JAK/STATにより媒介される、OA以外の疾患または障害を処置することにおける使用法を明らかにする。
【0028】
1つの態様において、本発明は、軟骨の分解を伴う疾患または障害を処置するためのJAK/STAT阻害剤の使用に関する。
関連する態様において、本発明は、軟骨分解酵素の発現を調節するためのJAK/STAT阻害剤の使用に関する。
【0029】
他の態様において、本発明は、軟骨細胞をJAK/STAT阻害剤と接触させることによって、iNOS、COX−2またはNK−κBを含む前炎症性因子の軟骨細胞における発現を調節する方法を包含する。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、軟骨細胞をJAK/STAT阻害剤と接触させることによって、IL−6、TNF−αおよびIL−1を含む前炎症性サイトカインの軟骨細胞における発現を調節する方法に関する。
【0031】
本発明の別の態様は、一般には、PKCにより媒介される炎症などの、JAK/STATにより媒介される、OA以外の疾患または障害あるいは関連する炎症性障害を、DBHまたはHを投与することによって処置する方法に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、JAK3との相互作用を伴うアッセイを包含する。1つの態様には、軟骨の分解を伴う疾患または障害を処置するために有用な化合物を、JAK3を阻害し得る化合物を検出することによって検出するアッセイ、そしてこのアッセイを使用して発見されるそのような化合物を包含する。
【0033】
(発明の詳細な説明)
軟骨細胞におけるJAK/STATシグナル伝達に関する役割、および退行性関節疾患の開始および進行におけるその関与を記載する、最初の報告が本明細書中に開示される。詳しくは、本発明者らは、DBHおよびH(これらは現在、OAなどの退行性関節疾患の動物モデルにおける効果的な治療薬であることが知られている)が、実際に、軟骨細胞におけるJAK/STATシグナル伝達を乱すことによって、具体的には、JAK3阻害剤として作用することによって機能することを発見した。退行性関節疾患におけるJAK/STAT経路のこの新規な役割を確認するために、軟骨分解因子の調節を行うことが以前には知られていなかったさらなる既知のJAK3阻害剤もまた、DBHおよびHと同一な様式でそのような細胞プロセスを調節することを明らかにする証拠が示される。
【0034】
これらの発見の結果、新規な種類の化合物、すなわち、JAK/STAT阻害剤、好ましくは、DBHおよびHとは異なるJAK3阻害剤が、関節の変性を伴う疾患の経過を変化させるために有用であるとして同定される。したがって、1つの態様において、本発明は、DBHおよびHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量を投与することによって、軟骨の分解を伴う疾患または障害の発症の進行または可能性を阻害するための方法に関する。そのような疾患および障害には、OA、慢性関節リウマチ、ならびに一次性全身化OA、孤立型OA、二次性OA、外傷性関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、血清反応陰性および血清反応陽性の慢性関節リウマチ、血清反応陰性関節炎、若年性慢性関節リウマチ、および乾癬性関節炎が含まれる。
【0035】
本明細書中で使用される「JAK/STAT阻害剤」は、JAK−STAT相互作用の量および/または活性をダウンレギュレートまたはそうでなければ減少もしくは抑制することができる任意の化合物をいう。JAK阻害剤は、JAK分子の量または活性をダウンレギュレートする。STAT阻害剤は、STAT分子の量または活性をダウンレギュレートする。これらの細胞成分の阻害は、JAKに対する直接的な結合(例えば、JAK阻害剤と化合物との結合複合体または基質模倣体)、STATに対する直接的な結合、またはそのような細胞成分をコードする遺伝子の発現を阻害すること(これらに限定されない)を含む、この分野で知られている様々な機構によって達成され得る。本発明の好ましいJAK/STAT阻害剤はJAK阻害剤であり、最も好ましいものはJAK3阻害剤である。一般に、JAK/STAT阻害剤は、タンパク質、ポリペプチド、小分子および他の化学的成分、または核酸であり得る。
【0036】
上記に示された阻害剤の変異体、変化体、誘導体および類似体もまた本発明の方法において有用であり得る。本明細書中で使用される「変異体、変化体、誘導体および類似体」は、親化合物と類似した形または構造を有し、かつJAK/STAT阻害剤として作用する能力を保持する分子をいう。例えば、本明細書中に開示されるJAK3阻害剤はどれも結晶化させることができ、そして有用な類似体を、活性部位(1つまたは複数)の形状を決める座標に基づいて合理的に設計することができる。あるいは、当業者は、過度な実験を行うことなく、既知の阻害剤の官能基を修飾して、そのような修飾分子を、増大した活性、半減期、生物利用性または他の望ましい特性についてスクリーニングすることができる。JAK/STAT阻害剤がポリペプチドである場合、ポリペプチドのフラグメントおよび修飾体を、送達の容易さ、活性、半減期などを増大させるために製造することができる。再度ではあるが、合成および組換えによるポリペプチド製造の分野における技術レベルが示された場合、そのような修飾は、過度な実験を行うことなく達成することができる。
【0037】
本発明の方法において有用であり得るJAK/STAT阻害剤の例としては、様々なSTATタンパク質のレベルで結合して阻害するPIASタンパク質(Chung他、1997);JAKおよび/または受容体に結合して、シグナリングを阻止することができるSH2含有タンパク質ファミリーのメンバー(例えば、AmanおよびLeonard、1997;NicholsonおよびHilton、1998を参照のこと);サイトカインにより誘導され得るSrc相同性2含有(CIS)タンパク質、STATシグナリング阻害剤(Yoshimura他、1995);STATシグナリングを阻害し得るか、またはJanusキナーゼに直接結合し得るCIS関連タンパク質(Yoshimura他、1995;Matsumoto他、1997;Starr他、1997;Endo他、1997;Naka他、1997);STAT3の下流の活性化を阻止するためにすべてのJAKと会合すると考えられるサイトカインシグナリング−Iタンパク質の抑制因子(SOCS−1、これはまたJABまたはSSI−1とも呼ばれる)(Ohya他、1997);チロシン成分およびエルブスタチン成分に類似するベンジリデンマロノニトリルの誘導体であるチルホスチン類(Gazit他、1989);チロシンキナーゼ阻害剤のチロホスチンファミリーのメンバーであるAG−490(Wang他、1999;そしてまた、Kirken他、1999);JAK3を特異的に阻害する4,5−ジメトキシ−2−ニトロ安息香酸および4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアミド(Goodman他、1998);ジメトキシキナゾリン化合物に構造的に由来する4−(フェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(親化合物WHI−258)およびこの化合物の誘導体(Sudbeck他、1999);4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(WHI−P131)、4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(WHI−P154)、および4−(3’、5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(WHI−P97)を含む4’−OH基を含有する化合物;別のジメトキシキナゾリン化合物であるWHI−P180(Chen他、1999);ホルスコリン(アデニル酸シクラーゼの直接的な活性化剤)およびジブチリルcAMPなどのcAMP上昇剤、ならびに3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)(cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤)(Kolenko他、1999)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書中で使用される「DBH」および「H」は、それぞれデブロモヒメニアルジシンおよびヒメニアルジシンを示し、ならびにそれらの様々な類似体および生理学的に活性な塩をいい、これらには、遊離塩基のDBHならびにDBHのトリフルオロ酢酸形態およびメタンスルホン酸形態が含まれるが、これらに限定されない。DBHおよびHの類似体には、DBHに見出されるピロロアゼピン環の4位に結合した5員環の窒素含有複素環を含有する化合物が含まれる。類似体の例には、ヒメニンおよびアクシノヒダントインが含まれる。具体的には、DBHおよびHの類似体は下記の構造を含む:
【0039】
【化1】

【0040】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、−Hおよびハロゲンからなる群から選択され、そしてXは、ChipmanおよびFaulkner(1997)に示されるように、
【0041】
【化2】

【0042】
からなる群から選択される(ただし、上記Xラジカル基の化学構造はそれぞれ、DBHに見出されるピロロアゼピン環の4位に対する化学結合の説明を含む)。
本明細書中で使用される、JAK/STAT阻害剤の「薬学的に効果的な量」は、インビトロで処置された細胞またはインビボで処置された対象体のいずれかにおいて所望する生理学的な結果を達成するために効果的な量である。具体的には、薬学的に効果的な量は、問題の疾患状態に関連した臨床的に定義される病理学的プロセスの1つまたは複数をある期間にわたって阻害するために十分な量である。効果的な量は、選択された特定のJAK/STAT阻害剤に依存して変化し得、また処置される対象体に関連する様々な要因および状態ならびに障害の重篤度にも依存する。例えば、阻害剤がインビボで投与される場合、患者の年齢、体重および健康状態などの要因、ならびに臨床前の動物研究で得られた用量応答曲線および毒性データは特に考慮されるであろう。阻害剤をインビトロで細胞と接触させる場合、取り込み、半減期、用量、毒性などのようなパラメーターを評価するための様々な臨床前のインビトロ研究もまた設計される。所与の薬剤に対する薬学的に効果的な量を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0043】
本発明の方法はまた、細胞をDBHおよびHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量と接触させることによって、細胞における軟骨分解酵素の発現を調節することを含む。軟骨分解酵素には、マトリックスメタロプロテアーゼ類、アグリカナーゼ類ならびにセリンプロテアーゼ類およびチオールプロテアーゼ類が含まれるが、これらに限定されない。好ましいマトリックスメタロプロテアーゼ類には、ストロメライシン類(例えば、ストロメライシン−1)、ゼラチナーゼA、ゼラチナーゼB、コラゲナーゼ1、コラゲナーゼ3、および好中球コラゲナーゼが含まれる。好ましいアグリカナーゼ類には、ADAMTS−1、ADAMTS−4、およびADAMTS−11が含まれる。そのような処置を受けやすい細胞には、軟骨細胞および滑液細胞を含む、そのような軟骨分解酵素を発現する任意の細胞が含まれる。
【0044】
本明細書中で使用される、発現および/または活性を「調節する」という用語は、一般には、細胞成分の量または活性(機能性)を制御または調整するように機能する任意のプロセスをいう。静的な調節により、発現および/または活性が一定のレベルで維持される。アップレギュレーションは、発現および/または活性の相対的な増大をいう。ダウンレギュレーションは、発現および/または活性の相対的な低下である。本発明では、調節は、好ましくは、細胞成分のダウンレギュレーションである。本明細書中で使用されているように、ダウンレギュレーションは、所与の細胞成分の阻害と同義である。
【0045】
本発明の別の態様において、軟骨細胞をDBHおよびHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量と接触させることによって、iNOS、COX−2またはNK−κBを含む前炎症性因子の軟骨細胞における発現を調節するための方法が提供される。
【0046】
本発明の別の態様において、DBHまたはHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量が、IL−6、TNF−αおよびIL−1を含む前炎症性サイトカインの軟骨細胞における発現を調節するために使用される。
【0047】
さらなる態様において、上記の方法は、軟骨分解酵素、前炎症性因子および前炎症性サイトカインの滑液細胞における発現を調節するために用いられる。
これらの発見の結果としてまた、JAK−3阻害剤(すなわち、DBHおよびH)の新しいクラスが同定される。したがって、本発明の別の態様において、薬学的に効果的な量のDBHまたはHを投与することによって、OAとは異なるJAK/STAT媒介による疾患または障害あるいはPKC媒介による炎症を処置するための方法が提供される。JAK/STAT媒介の疾患または障害は、疾患状態の臨床的に定義された症状または原因の1つまたは複数を媒介することにJAK/STATシグナル変換経路が関与している疾患または障害である。そのような疾患および障害の例には、T細胞により媒介される障害、例えば、HTLV−1、sdzory’s症候群、c−abl変換、ナチュラルキラー様T細胞リンパ腫(NK様腫瘍)および移植片対宿主病など;2型(サイトカイン過敏性)疾患または障害、例えば、リーシュマニア症、らい病、アレルギー、およびウイルス感染症など;マスト細胞により媒介される障害、例えば、アレルギー、枯草熱、喘息、じんま疹、およびアナフィラキシーなど;および、急性のリンパ性白血病およびリンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫および骨髄起源の白血病などの白血病およびリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
例えば、JAK3は、共通γ鎖(γc)ファミリーのサイトカイン受容体と、例えば、インターロイキン−2、−4、−7、−9および−15に対する受容体、および、おそらくは同様にIL−13に対する受容体と特異的に会合することが見出されている(Rolling他、1996;Yu他、1998;Keegan他、1995;Izuhara他、1996)。したがって、そのような会合を乱すことが有益であると考えられる疾患状態はいずれも、DBHおよびHを用いた処置を受けることができる。
【0049】
JAK3は、免疫調整における重要な役割を示し、リンパ様(T細胞、B細胞)もしくは骨髄(例えば、単球)の活性化または細胞分化に続く発現での著しいアップレギュレーションよって他のJAKファミリーメンバーから区別される(Kawamura他、1994;Kumar他、1996;Tortolani他、1995;Musso他、1995)。したがって、DBHおよびHが、PKC媒介による炎症とは異なる炎症状態を処置するために有用であることが本明細書中に開示される。
【0050】
さらに、ショウジョウバエJAKの活性化変異はショウジョウバエに白血病を生じさせ、そして関連したSTATタンパク質の優性ネガティブ変異は白血病細胞の増殖を抑制する(Hou他、1996;Luo他、1995)。いくつかの他の研究は、HTLV−I変換(Migon他、1995)、Sdzary’s症候群(Zhang他、1996)、v−ablによる変換(Danial他、1995)および様々な形態の白血病を含むガンにおいて一定の役割を果たしているとしてJAKの過活性化を関連づけている。詳しくは、JAK−3は、AMLs(KG1、TF−1、HEL)、B系統ALLs(PB697、Nalm−16、およびNalm−6)、およびT−ALLs(Molt−16およびMolt−3)を含む、数多くの白血病由来の細胞株において発現しており(Civin他、1998および1999)、oyobi急性リンパ芽球性白血病(小児ガンの最も一般的な形態)の小児に由来する原発性白血病細胞において非常に多く発現している(例えば、Sudbeck他、1999)。したがって、DBHおよびHは、JAK−3が腫瘍形成の開始または進行において一定の役割を果たしているガンにおける治療剤として有用であり得る。
【0051】
JAK3はまた、例えば、放射線により誘導されるc−jun転写において一定の役割を果たすことも知られている(Goodmanほか、1998)。さらに、JAK3/STAT6阻害剤は、リーシュマニア症、らい病、アレルギー、およびウイルス感染症などの様々な2型疾患状態を処置する際に重要な役割を果たし得る(Wang他、1999)。
【0052】
最近、MalaviyaおよびUckun(1999)は、JAK3がマスト細胞で発現していること、およびその酵素活性がIgE受容体/FcεRIの架橋によって高められることを報告している。これらの結果は、JAK3が、インビトロおよびインビボの両方でIgE受容体/FcRIにより媒介されるマスト細胞応答において中枢の役割を果たしており、そして喘息およびアナフィラキシーなどの疾患状態に関与している、マスト細胞上の高親和性IgE受容体の完全なシグナル伝達能に必須な非縮重的機能を有し得ることを示唆している。
【0053】
上記のプロセスはいずれも、標的の細胞または器官を薬学的に効果的な量のDBHまたはHと接触させることによって調節することができる。
JAK/STAT阻害剤を対象体に投与する経路は限定されておらず、非経口的(皮下注射、静脈内注射、髄内注射、関節内注射、筋肉内注射、または腹腔内注射を含む)、直腸的、局所的、経皮的または経口的を含み得る。例えば、JAK/STAT阻害剤は、対象者の局所的に冒された領域(例えば、関節)内に関節内投与することができ、したがって、そのような領域における治療効果を最大限にし、その一方で、非罹患領域に対する作用を最小限にすることができる。阻害剤はまた、罹患領域の近くに局所投与することができる。あるいは、阻害剤は、例えば、カプセル剤、懸濁剤または錠剤で経口投与することができる。
【0054】
JAK/STAT阻害剤は、単回用量または反復投与で、そして様々な生理学的に受容可能な塩の形態のいずれかで、および/または薬学的組成物の一部としての受容可能な薬学的キャリアととともに対象者に投与することができる。生理学的に受容可能な塩の形態および標準的な医薬品配合技術は当業者には十分に知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.を参照のこと)。
【0055】
本開示により、軟骨分解性の疾患または障害の発病および進行における軟骨細胞内でのJAK/STAT経路の機能的な役割が初めて教示されるので、本発明はまた、そのような疾患または障害を処置するために有用な新規な化合物を検出するためのアッセイ、ならびにそのようなアッセイによって同定されたそのような有用な化合物に関する。
【0056】
本発明のアッセイは、候補化合物または候補化合物のライブラリーをそのJAK3活性阻害能についてスクリーニングすることによって、軟骨分解性の疾患または障害を処置するために有用な化合物を同定する。様々なアッセイ・プロトコールおよび検出技術が、この分野では十分に知られており、当業者によってこの目的のために容易に適合される。そのようなアッセイには、高スループット・アッセイ、インビトロおよびインビボでの細胞アッセイおよび組織アッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書中に記載される本発明の組成物および方法の他の好適な改変および適合化は明らかであり、そして本発明または本明細書中に開示された態様の範囲から逸脱することなく行い得ることは当業者には容易に明らかである。これまで本発明を詳しく記載してきたが、本発明は、下記の実施例を参照することによってより明瞭に理解されが、下記の実施例は、例示目的のためにだけ含まれ、本発明の限定であることを意図するものではない。
【実施例】
【0058】
実施例1:ヒト関節軟骨細胞培養物の調製
OAなどの退行性軟骨の疾患または障害に関連した細胞病理学を研究するために、ヒト軟骨の細胞(ヒト軟骨細胞)培養物を調製した。
【0059】
正常なヒト関節軟骨の薄片を剖検の48時間以内に30歳の白人男性の膝から得た(National Disease Research Interchange(NDRI)、Philadelphia、PA)。関節の軟骨細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)中で37℃で一晩の酵素消化(0.1%クロストリジウムヒストリチクム(Clostridium histolyticum)コラゲナーゼ;Worthington、Freehold、NJ)によって軟骨のすりつぶした薄片から遊離させた。不完全な消化物を、DMEM中で0.25%コラゲナーゼおよび0.05%トリプシンを使用してさらに3時間消化した。
【0060】
軟骨細胞をプラスチック容器に単層で播種し、そしてDMEM、10%ウシ胎児血清(FBS;HyClone、Logan、UT)、100U/mlペニシリン(pen)および100μg/mlストレプトマイシン(strep)の存在下、37℃および8%CO2において、3日毎に培地交換を行いながらコンフルエンスになるまで培養した。コンフルエンスに達したとき、第1継代の軟骨培養をトリプシン処理によって集め、細胞株HC30−0198と名付けて、将来の使用のために、DMEM、pen/strep、40%FBS、および10%ジメチルスルホキシドの存在下で液体窒素中に保存した。
【0061】
実施例2:正常なヒト関節軟骨細胞におけるJAK3の発現
ヒト軟骨細胞におけるJAK3の発現を明らかにするために、JAK3特異的プライマーを使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を、単層で培養された正常な成人ヒト軟骨細胞から単離された総RNAに対して行った。
【0062】
正常な成人のヒト関節軟骨細胞を、上記の実施例1に教示されているように軟骨の薄片から単離して培養した。凍結された軟骨細胞の細胞株HC30−0198を解凍し、上記に記載されるように単層で培養して(第2継代)、コンフルエンス後5日目まで培養した。
【0063】
総RNAを、製造者が指示するプロトコールに従ってQiagen Rneasy(登録商標)キット(QIAGEN、Valencia、CA)を使用してコンフルエンス後5日目のヒト関節軟骨細胞から抽出した。
【0064】
JAK3プライマーを発表されたヒトJAK3遺伝子およびcDNA配列(それぞれ、GenBankアクセション番号U70065および同U090607)から設計した。JAK3遺伝子に特異的な3つのDNAプライマーは、ヒトJAK3遺伝子のエキソン18およびエキソン19を標的とした(表I)。
【0065】
【表1】

【0066】
第1鎖cDNAを、JK3−2プライマー、総RNA、ならびにReady−To−Go(登録商標)You−Primeの第1鎖ビーズおよび方法(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を使用して作製した。
【0067】
cDNA産物(8μl)を、10μlのPCR用10X緩衝液、2.4μlの25mMのMgCl2、0.5μlのホットスタートを使用するTaqポリメラーゼ(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)、73μlの水、およびそれぞれ3μlの10μMのJK3−1プライマーおよびJK3−3プライマーを使用する100μlの反応液で増幅した。ホットスタートPCRプロトコールは、94℃で5分間の最初の変性(その後、Taqポリメラーゼが添加される)、その後、94℃で30秒間の変性;56℃で30秒間のアニーリング;72℃で30秒間の伸長から構成された。変性、アニーリング、および伸長を40サイクル行い、その後、72℃で5分間の最後の伸長を行った。
【0068】
RT−PCRにより、254塩基対のDNA産物が得られ、これを、QIAquick(商標)ゲル抽出キット(QIAGEN、Valencia、CA)を使用して、2%SeaKem(登録商標)GTG(登録商標)アガロースゲル(FMC BioProducts、Rockland、ME)での電気泳動によって精製した。
【0069】
RT−PCR産物の配列決定を、JK3−3プライマーおよびAmpliCycle(登録商標)の配列決定試薬およびプロトコール(Perkin Elmer、Foster City、CA)を使用して行った。109ヌクレオチドのDNA配列が、RT−PCR産物の一方の鎖のサイクル配列決定反応から得られ、うち106個のヌクレオチドは、GenBankのヒトJAK3のcDNA配列(アクセション番号U09067)に対して100%の同一性を示した(図1)。3つのヌクレオチド不一致は、RT−PCRにより生じた配列決定テンプレートおよびDNA配列決定ゲルの品質が最適ではなかったことに起因した。
【0070】
実施例3:ヒト変形性関節症の軟骨に由来する関節軟骨細胞におけるJAK3の発現
ヒト変形性関節症の軟骨に由来する関節軟骨細胞におけるJAK3の発現を、上記の実施例2の正常なヒト軟骨細胞において見出されるJAK3の発現と比較するために、JAK3特異的プライマーを使用するRT−PCRを、成人のヒト変形性関節症の軟骨から直接単離された総RNAに対して行った。
【0071】
全膝置換を受けている47歳の白人女性の右膝に由来する変形性関節症の関節軟骨の薄片をNDRIから得た。軟骨を、集めた直後に液体窒素中に素早く凍結した。無傷の軟骨の2グラム〜4グラムの総量を、SPEXミル(SPEX CertiPrep,Inc.、Metuchen、NJ)を使用して液体窒素の存在下で粉末化した。総RNAを、粉末化した軟骨から、Reno他(1977)によって記載されるTRIspin法を使用して単離した。
【0072】
RT−PCRを、実施例2に記載されるように、JK−1、JK−2、およびJK−3のプライマーを使用して総RNAサンプルに対して行った。RT−PCRにより、254塩基対のDNA産物が得られ、続いてこれを、QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN、Valencia、CA)を使用して2%SeaKem(登録商標)GTG(登録商標)アガロースゲル(FMC BioProducts、Rockland、ME)から精製した。
【0073】
RT−PCR産物の配列決定を、製造者が指示するプロトコールに従って、JK3−3プライマーおよびABIプリズム・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・レディー反応キット(PE Applied Biosystems、Foster、CA)を使用して行った。DNA配列を、ABI PRISM(登録商標)377DNA配列決定装置(PE Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して決定した。214bpの配列が決定された。
【0074】
配列決定された214個のヌクレオチドのうち、197個のヌクレオチドは、GenBankのヒトJAK3のcDNA配列(アクセション番号U09067)に対して100%の同一性を示した(図2)。残る17個のヌクレオチド不一致は、配列決定テンプレートの品質が最適ではなかったことに起因した。
【0075】
実施例4:ヒト軟骨細胞cDNAライブラリーからのJAK3cDNAの単離
JAK3がヒト軟骨細胞で活発に発現していることをさらに明らかにするために、JAK3をヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離した。
【0076】
この分野で知られている技術を使用して、アルギン酸塩中で培養されたヒト関節軟骨細胞から単離された総RNAを使用して、cDNAライブラリーを作製した(cDNAライブラリーの構築はStratagene(La Jolla、CA)によって商業的に行われた)。cDNAライブラリーを、十分に確立されたプロトコール(Sambrook他(1989)、およびStratagene(La Jolla、CA)の推奨されるプロトコール)に従って力価測定して、スクリーニングした。
【0077】
JAK3のDNAプローブを使用して、軟骨細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングした。cDNAライブラリー/フィルターのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを、1Xプレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション溶液(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)を65℃で使用して行った。JAK3のDNAプローブを用いた15時間のハイブリダイゼーションを行った後、ブロットの洗浄を、順次、2XSSC/0.1%SDSで2回(室温で15分/洗浄)、そして1XSSC/0.1%SDSで2回(65℃で30分/洗浄)行った。ブロットを空気乾燥して、放射能シグナルを、Kodak X−Omat(商標)AR(XAR)オートラジオグラフィー・フィルム(Eastman Kodak、Rochester、NY)を使用して可視化した。
【0078】
二連のフィルターで陽性であったプラークを選択して、1mlの滅菌SM緩衝液(0.05MのTris(pH7.5)、0.1MのNaCl、0.008MのMgSO4、0.01%ゼラチン)に入れ、ボルテックスして、4℃で一晩インキュベーションした。一次スクリーニングから得られた14個の陽性プラークを、200μlの細菌株XL−1BlueMRF’(Stratagene、La Jolla、CA)への1×10-2希釈物の10μlを使用して再置床し、上記のようにJAK3のDNAプローブを用いてスクリーニングした。二次スクリーニングから得られた陽性プラークを選択して、上記のようにSM緩衝液に入れた。
【0079】
二次スクリーニングから得られた2個の陽性ファージ・クローンを、i)実施例2に記載されるようなPCR反応においてJK3−1プライマーおよびJK3−3プライマーを使用するJAK3同一性の確認、およびii)T7プライマーおよびT3プライマー(Stratagene、La Jolla、CA)を使用するクローン化されたcDNA挿入物のサイズの確認に基づくDNA配列分析のために選択した。ホットスタートPCRプロトコールは、93℃で5分間の最初の変性(その後、Taqポリメラーゼが添加される)、その後、93℃で1分間の変性;55℃で1分間のアニーリング;75℃で45秒間の伸長から構成された。変性、アニーリング、および伸長を40サイクル行い、その後、75℃で7分間の最後の伸長を行った。PCR産物のサイズは、1%SeaKem(登録商標)GTG(登録商標)アガロースゲル(FMC BioProducts、Rockland、ME)において可視化された。
【0080】
JAK3の最長のcDNA挿入物を含有する2つのラムダZAP(登録商標)IIファージクローンのPCR産物を同定した後、JAK3のcDNA挿入物をそれぞれ、製造者が指示するプロトコールに従ってExAssist(商標)干渉耐性ヘルパーファージ(Stratagene、La Jolla、CA)を使用してSOLR大腸菌株にサブクローン化した。数個の細菌コロニーを単離して、プラスミドDNAを、QIAprepスピン・ミニプレップ・キット(Qiagen、Valencia、CA)を使用してこれらのクローンから精製した。
【0081】
2つのサブクローンのそれぞれに由来する一方のDNA鎖のDNA配列分析により、それぞれのサブクローンから得られた約2000ヌクレオチドの配列が発表されたJAK3のcDNA配列(GenBankアクセション番号U09607)と同一であることが明らかにされた。これらのサブクローンの1つから決定されたDNA配列が図3として示される。
【0082】
実施例2、3、および4の結果により、JAK3の発現が、ヒト変形性関節症の軟骨と同様に、正常なヒト軟骨に由来する培養された関節軟骨細胞において最初に確認される。
【0083】
実施例5:ヒト関節軟骨細胞におけるJAK3発現のノーザンブロット分析
凍結された軟骨細胞の細胞株HC30−0198(実施例1に記載されるように調製された正常なヒト関節軟骨細胞)を解凍して、単層で培養し(第2継代)、コンフルエンス後5日目まで培養した。試験培養物をリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)で洗浄し、その後、1)2ng/mlの組換えヒトインターロイキン−1β(rhIL−1β)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を1%抗生物質溶液を含有する無血清DMEM中で24時間にわたって、または2)1%抗生物質溶液を含有する無血清DMEMのみ(コントロール)のいずれかを加えた。
【0084】
単層培養物に由来する総RNAを、製造者が指示するプロトコールに従ってTRIzol試薬(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)を使用して24時間の培養の後に集めた。上記のそれぞれのサンプルから得られた総RNAの10μgを2.2Mホルムアルデヒド/1.2%アガロースゲルで分離し、そして製造者が指示するプロトコールに従ってTURBOBLOTTER(商標)(Schleicher&Schuell、Keene、NH)システムを使用して穏和なアルカリ転写によってナイロン支持メンブラン(Schleicher&Schuell、Keene、NH)に転写した。ノーザンブロット上のRNAを、Stratalinker(登録商標)1800UV架橋装置(Stratagene、La Jolla、CA)を使用することによってメンブランに固定した。
【0085】
JAK3の109塩基対のヒトcDNAがRT−PCRによって得られた(上記の実施例2を参照のこと)。このcDNAを、製造者が指示するプロトコールに従ってReady−To−GoDNA標識ビーズ(−dCTP;Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を使用して[α−32P]dCTP(New England Nuclear、Boston、MA)で標識し、そしてCHROMA SPIN(商標)+TE−30カラム(Clontech、Palo Alto、CA)を使用して精製し、ノーザンブロット分析用のプローブとして使用した。
【0086】
ノーザンブロットのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを、2Xプレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション溶液(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)およびホルムアミドの1:1希釈物を使用して42℃で行った。JAK3のDNAプローブを使用して15時間のハイブリダイゼーションを行った後、ブロットの洗浄を、順次、2XSSC/0.1%SDSで2回(室温で15分/洗浄)、そして0.5XSSC/0.1%SDSで2回(65℃で30分/洗浄)行った。ブロットを空気乾燥して、放射能シグナルを、Fujifilm BAS−1500ホスホルイメージャー(Fuji Medical Systems、USA、Stamford、CT)を使用して可視化した。
【0087】
ノーザンブロット分析の蛍光像を図4として示す。その結果は、JAK3のmRNAが正常な成人の培養された関節軟骨細胞において発現していること、およびrhIL−1βは、rhIL−1βで刺激されなかった正常な成人関節軟骨細胞で見出されたJAK3のmRNAレベルから増大させることも低下させることもないことを明らかにしている。さらに、ノーザンブロットにより、2つの分子量のJAK3種が単層培養のヒト関節軟骨細胞によって発現していることが明らかにされる(およそ4.2kbおよび2.2kbの長さ)。正常な成人の培養されたヒト関節軟骨細胞によって発現するJAK3のmRNAの優勢な形態は2.2kbの形態である。大きい方の形態(4.2kb)は、リンパ系系統の正常なヒト血液細胞に見出される形態とサイズが一致しており、軟骨細胞において発現する総JAK3のmRNAの小さい画分を表す。
【0088】
実施例6:JAK3のDBHによる阻害
OAなどの退行性関節疾患に対して効果的な治療薬であるDBHがJAK3を阻害するように機能することを明らかにするために、チロシンキナーゼの酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を行った。
【0089】
Nunc免疫プレートのMaxisorp平底捕獲プレート(Nalge Nunc International、Rochester、NY)を、コーティング緩衝液(10mMリン酸塩(pH7.2)+0.02%のNaN3)で2μg/mlに希釈された抗ホスホチロシンPY54MAb抗体(Transduction Labs、Lexington、KY)の80μl/ウエルでコーティングし、4℃で一晩吸着させた。プレートを洗浄し(すべての洗浄は、TBST(25mMのTris/HCl(pH8.0)、150mMのNaCl+0.05%ツイーン−20を用いて4回である)、その後、200μl/ウエルのブロッキング緩衝液(TBST+1%BSA)を加えた。プレートを密閉し、37℃で60分間または4℃で一晩インキュベーションして、再び洗浄した。
【0090】
キナーゼ反応を、丸底プレート(Corning、Corning、NY)においてビオチン化ペプチド基質を用いて50μlの容量で行った。キナーゼ反応混合物は、20μlの50μMのGAS1ビオチン化ペプチド(LCビオチン−EGPWLEEEEEAYGWMDF−アミド)、キナーゼ緩衝液中の0μM〜1250μMのATP、2Xキナーゼ緩衝液(50mMのイミダゾール/HCl、2mMのDTT、0.2mMのEDTA、0.030%のBrij−35、pH6.8)中の10μlの50mMのMgCl2、水(0.2%プルロニック−104および3%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する)中の10μlの0μM〜50μMのDBH、および10μlのJAK3酵素(キナーゼ緩衝液で希釈)を含有した。キナーゼ緩衝液を希釈剤として使用してホスホペプチドの標準曲線(0nM〜10nM)もまた試験した。
【0091】
キナーゼ反応を37℃で30分間行い、その後、15μl/ウエルの0.125MのEDTA(pH6.8)を加えることによって停止させた。停止させた溶液のウエルあたり50μlのアリコートを、抗体をコーティングした捕捉プレートに移し、密閉して、37℃で60分間インキュベーションした。プレートを洗浄し、その後、Genzyme希釈緩衝液で1/5希釈されたSA−HRP試薬(Genzyme、Cambridge、MA)の80μl/ウエルを加えた。プレートを密閉して、37℃で60分間再びインキュベーションした。プレートを洗浄し、その後、室温で予め平衡化したテトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Kirkegaard&Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)の100μl/ウエルを加えて、約5分間反応させた。反応を1NのH2SO4溶液の100μl/ウエルで停止させた。サンプルをA450−A620で読み取った。
【0092】
この実験の結果(図6として示される)により、DBHがJAK3の強い阻害剤であり、記録された阻害定数(Ki)が286±16nMであることが明らかにされる。
【0093】
実施例7:DBH(およびその変化体)はJAK3を特異的に阻害する
様々な細胞成分に対するDBH(およびその変化体)の特徴的な阻害をさらに調べるために、ポリ(Glu,Tyr)4:1のELISAを行った。ヒメニアルジシン(H)、DBH(海産海綿動物の抽出物として:ChipmanおよびFaulkner(1997)を参照のこと)、および合成DBHの3つの変化体(DBHの遊離塩基形態(DBH−2FB)、DBHのトリフルオロ酢酸塩形態(DBH−2S)、およびDBHのメタンスルホン酸塩形態(DBH1))をDMSOに溶解して、ZAP−70(70kDaのζ会合ポリペプチド)タンパク質チロシンキナーゼ、BTK(ブルートン型無ガンマグロブリン血症チロシンキナーゼ)、JAK3(Janusキナーゼ3)タンパク質チロシンキナーゼ、LCK(リンパ様T細胞タンパク質チロシンキナーゼ)、およびIGFR(インスリン様増殖因子受容体)タンパク質チロシンキナーゼを阻害する効力について試験した。
【0094】
Maxisorbマイクロタイタープレート(Nalge Nunc International、Rochester、NY)を、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)、0.02%アジ化ナトリウムに溶解した、1mg/mlのポリ(Glu,Tyr)4:1(Sigma、St.Louis、MO)でコーティングした。アッセイの当日に、マイクロタイタープレートを、Skatronプレート洗浄機(Skatron Instruments、Sterling、VA)を使用してTBS−ツイーン(25mMのTris(pH8.0)、150mMのNaCl、0.05%ツイーン20)で4回洗浄した。200μlの滅菌ブロッキング緩衝液(PBS、0.02%アジ化ナトリウムにおける3%BSA)を各ウエルに加え、マイクロタイタープレートを37℃で1時間インキュベーションした。ブロッキング緩衝液を除き、プレートを洗浄して、様々な濃度の阻害剤を20μlの容量でウエルに加えた。その後、60μlの適切な基質ミックスを加えた。基質ミックスを表2に記載されるように調製した。
【0095】
【表2】

【0096】
基質ミックスを加えた後、20μlの試験タンパク質チロシンキナーゼ(1Xアッセイ緩衝液において)を加えた。キナーゼ反応液を37℃で30分間インキュベーションし、その後、Skatronプレート洗浄機で洗浄した。100μlのビオチン化PT−66抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(Sigma、St.Louis、MO)(0.5%BSA、無菌ろ過TBSにおいて1:4000希釈)を各ウエルに加え、37℃でさらに30分間インキュベーションした。プレートを洗浄して、0.5%BSA−無菌ろ過TBSで1:32,000に希釈されたストレプトアビジン−HRP結合体(ICN Pharmaceuticals、Costa Mesa、CA)の100μlを各ウエルに加え、最後に37℃で30分間インキュベーションした。プレートを洗浄して、100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Kirkegaard&Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)を室温で15分間かけて加え、その後、100μlの停止試薬(1Mリン酸)を加えた。その後、サンプルをプレート読み取り装置において450nmで読み取った。
【0097】
4ロットの海産物抽出物H(979−1、979−4、979−5、979−6として示される)および2ロットの海産物抽出物DBH(5025−11および5025−12と呼ぶ)は、JAK3の特異的な低マイクロモル濃度の阻害を示し、ec−50値(50%阻害に対する有効濃度)が2.6μM〜10.7μM(979のロット物)および23.4μM〜34.4μM(5025のロット物)の範囲にあった(図7)。ZAP−70、LCK、BTK、およびIGFRの阻害は弱く、ec−50値は数百マイクロモル濃度から非阻害まで変化した(データ示さず)。
【0098】
試験された合成DBHの3つの形態もまたJAK3の阻害を示し、ec−50値は11.60μM〜53.99μMの範囲であった(図8A)。DBH−2FBは、DBHの2つの塩形態と比較したときに、より大きなJAK3の阻害(すなわち、11.60μM)を示した。DBH−2FBはまた、ZAP−70、LCK、BTK、およびIGFRに対するec−50値が1971μMから非阻害まで変化するJAK3の選択的阻害剤であることが示される(図8B)。
これらの結果は、DBHおよびその様々な誘導体がJAK3に特異的な阻害剤であることを明らかにしている。
【0099】
実施例8:OAに関連したmRNAのDBH(およびその変化体)によるダウンレギュレーション
DBHによるJAK3阻害の下流の影響を調べるために、ノーザンブロットアッセイを行い、OAに関連した様々な分子の定常状態のmRNAレベルにおける変化を検出した。
【0100】
凍結したヒト関節軟骨細胞の細胞株HC30−0198(実施例1に記載)を解凍して、コンフルエンス後1日目〜5日目まで上記に記載されるようにT150組織培養フラスコ(Corning Costar、Cambridge、MA)において単層で培養した。試験培養物をPBSで洗浄して、5μMのDBH(合成)をその遊離塩基形態またはトリフルオロ酢酸塩形態で含有する10mlの無血清DMEMを用いて2時間プレインキュベーションした。その後、5μMのDBH、4ng/mlの組換えヒトインターロイキン−1β(rhIL−1β;2ng/mlの最終濃度)(R&D Systems、Minneapolis、MN)および2%抗生物質溶液(1%の最終濃度)を含有する無血清DMEMのさらなる10mlを24時間かけて加えた。
【0101】
2つのコントロール培養物を並行して処理した:DBHを含まない培養物(rhIL−1β単独)と、DBHもrhIL−1βも含まない培養物。
単層培養物に由来する総RNAを、製造者が指示するプロトコールに従ってTRIzol試薬(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)を使用して集めた。それぞれの試験サンプルから得られた総RNAの10μgを2.2Mホルムアルデヒド/1.2%アガロースゲルで分離し、そして製造者が支持するプロトコールに従ってTURBOBLOTTER(商標)システム(Schleicher&Schuell、Kneene、NH)を使用して穏和なアルカリ転写によってナイロン支持メンブラン(Schleicher&Schuell、Kneene、NH)に転写した。総RNAを、Stratalinker(登録商標)1800UV架橋装置(Stratagene、La Jolla、CA)を使用してメンブランに固定した。
【0102】
ストロメライシン−1(MMP3)、コラゲナーゼ1(MMP1)、シクロオキシゲナーゼII(COX2)、NF−κB(p65)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、およびインターロイキン−6(IL−6)に対するヒトDNAプローブを、製造者が指示するプロトコールに従ってReady−To−GoDNA標識ビーズ(−dCTP)(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を使用して[α−32P]dCTP(New England Nuclear、Boston、MA)で標識した。放射性プローブを、CHROMA SPIN(商標)+TE−30カラム(Clontech、Palo Alto、CA)を使用して、取り込まれなかった[α−32P]dCTPから分離し、そして精製されたプローブをノーザンブロットハイブリダイゼーション実験のために使用した。
【0103】
放射性プローブを用いたノーザンブロットのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを、製造者が指示するプロトコールに従ってExpressHyb(商標)ハイブリダイゼーション溶液(Clontech、Palo Alto、CA)を使用して行った。ブロットの洗浄を、順次、2XSSC/0.05%SDSで2回(室温で15分/洗浄)、そして0.1XSSC/0.1%SDSで2回(65℃で30分/洗浄)行った。ブロットを空気乾燥して、放射性シグナルを、Fujifilm BAS−1500ホスホルイメージャー(Fuji、Stamford、CT)を使用して、可視化して定量化した。
【0104】
RNA負荷量の正規化を、ノーザンブロットを臭化エチジウムで染色することによって行った。5μlの10mg/ml臭化エチジウム(Sigma、St.Louis、MO)を50mlの1X MOPS溶液(MESA緩衝液:Sigma、St.Louis、MO)に加え、室温で7分かけて間染色した。ブロットを1X MOPS緩衝液で30分間(3回)洗浄した。臭化エチジウム染色パターンをFujifilm LAS−1000インテリジェント・ダーク・ボックス(Fuji Medical Systems,USA、Stamford、CT)で可視化した。
【0105】
ノーザンブロット実験の結果(図9Aおよび図9Bに示す)により、5μMのJAK3阻害剤DBHは、(変形性)関節炎の病理学に関連していることが知られているか、またはその関連が考えられるmRNA、すなわち、ストロメライシン(MMP3)、コラゲナーゼ1(MMP1)、シクロオキシゲナーゼII(COX2)、NF−κB(p65)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、およびインターロイキン−6(IL−6)のIL−1β誘導されるアップレギュレーションを様々な程度で阻害することができたことが明らかにされる。
【0106】
DBHの遊離塩基形態が、いくつかのmRNAに対して、DBHのトリフルオロ酢酸塩形態よりも大きな程度でrhIL−1β誘導のmRNAを阻害するという予想外の観測結果は注目される(図9A)。この観測結果は、実施例7のチロシンキナーゼアッセイで得られたデータと一致している。
【0107】
実施例9:ウシ軟骨細胞におけるIL−1α誘導されるアグリカナーゼ活性のDBHによる阻害
JAK3特異的阻害剤としてのDBHの細胞作用を明らかにするために、DBHおよびその変化体の阻害を、IL−1α誘導される35S標識プロテオグリカンのウシ軟骨細胞における放出によって測定した(培養された初代ウシ軟骨細胞および軟骨外稙片におけるIL−1α誘導されるプロテオグリカンの放出は、アグリカナーゼとして知られている酵素によってアグリカンが切断されるためであることが十分に明らかにされている)。
【0108】
初代ウシ関節軟骨細胞を、30分間(37℃)の1mg/mlヒアルロニダーゼ(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)処理を使用し、その後、30分間(37℃)の2mg/mlコラゲナーゼP(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)および2.5mg/mlトリプシン(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)の処理を使用して子ウシ膝関節の切開した関節軟骨から単離した。酵素溶液を、血清を含まない1:1のダルベッコ改変必須培地/ハムF−12(DMEM/F12)において調製して、0.22μmのMillex(登録商標)−GVフィルター(Millipore S.A.、Molsheim、フランス)でろ過滅菌した。3回目の一晩の消化(37℃で0.5mg/mlのコラゲナーゼP)をBellco攪拌フラスコにおいて行った。
【0109】
ウシ軟骨細胞を、酵素を中和するために10%ウシ胎児血清(FBS)を補充した等容量のDMEM/F12を加えることによって回収して、70μmのナイロン製Falcon(登録商標)細胞ストレイナー(Beckton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)でろ過し、室温において1000Xgで10分間遠心分離した。
【0110】
軟骨細胞を、0.5mlの1:1のDMEM/F12、10%FBS、1%抗生物質溶液(ペニシリン、ストレプトマイシン、フンギゾン)(GIBCO/BRL、Gaithersburg、MD)を使用して、Costar(登録商標)24ウエル組織培養プレート(Corning、Corning、NY)に8×104細胞/ウエルで播種して、37℃、8%CO2でインキュベーションした。細胞を、DMEM/F12+10%FBS、1%抗生物質溶液を3日毎に再度与えながら28日間培養した。
【0111】
プロテオグリカンの代謝的標識を、22日目に、血清を含まないDMEM/F12、1%抗生物質溶液において10μCiの35Sulfate(Amersham、Arlington Heights、IL)を用いて48時間行った。遊離の35Sulfateを24日目に除き、軟骨細胞をPBSで洗浄して、DMEM/F12+10%血清、1%抗生物質溶液を再び与えた。軟骨細胞をさらに2日間培養して、DMEM/F12+10%FBS、1%抗生物質溶液を26日目に再び与え、そして27日目にPBSで洗浄した。
【0112】
PBSで洗浄した後、軟骨細胞を、1)さらなる補充物なし、または2)5μMのDBH(DBH1、DBH−2S、またはDBH−FBのいずれかとして)のいずれかを含む無血清DMEM/F12、1%抗生物質溶液の0.5mlで処理した。2時間後、rhIL−1αを、(「rhIL−1αなし」のコントロールの場合を除き)1ng/mlの最終濃度になるまで培養物に加えた。
【0113】
28日目に、0.5mlの培地を取り出し、シンチレーション用ミニバイアルに入れた。4mlのシンチレーション液を加えて、培地中の放射能をシンチレーション計数によって定量した。細胞層をPBSで洗浄して、0.5mlの1Xトリプシン−EDTAで集め、そして上記のようにシンチレーション計数によって定量した。すべてのサンプルは三連で培養された。
【0114】
データは、下記のように測定し、そして表した:
1.バックグラウンド割合c
=培地中に放出された非IL−1誘導による放射能量を表す総放射能(培地+細胞層)の割合
=[「IL−1αなし、DBHなしのコントロール」の培地中の総CPM/(「IL−1αなし、DBHなしのコントロール」の培地中の総CPM+「IL−1αなし、DBHなしのコントロール」の細胞層における総CPM)]
2.培地中へのIL−1αによる35S標識プロテオグリカンの%放出
a)バックグラウンド=非IL−1誘導の放出による試験サンプルの培地中のカウント
=バックグラウンド割合c[試験サンプル培地中の総CPM+試験サンプル細胞層における総CPM]
b)IL−1αにより放出されたCPM=培地中の総CPM−バックグラウンド
c)IL−1αによる%放出=[IL−1αにより放出されたCPM/(IL−1αにより放出されたCPM+細胞層における総CPM)]100%
3.DBH存在下でのIL−1αによる%放出={(DBH培地サンプルにおける総CPM−バックグラウンド)/[(DBH培地サンプルにおける総CPM−バックグラウンド)+DBH細胞層サンプルにおける総CPM]}100%
4.DBHによる%阻害=[1−(DBH存在下でのIL−1αによる%放出/IL−1αによる%放出]100%
合成DBHの3つの形態(すなわち、DBH1、DBH−2S、またはDBH−FB)はIL−1α誘導による35S標識プロテオグリカンの放出の阻害を様々な程度で示した(それぞれ、約50%、約40%、および100%)(図10)。再度ではあるが、DBHの遊離塩基形態は、阻害剤として、DBHのそれ以外の2つの形態の結果を劇的に上回る結果をもたらした。
【0115】
実施例10:OAに関連したmRNAの化合物WHI−P131によるダウンレギュレーション
DBHおよびその関連する化合物が、JAK3に特異的な阻害剤として機能することによって効果的なOA治療薬として機能することを明らかにするために、そして一般にはOA関連化合物の阻害剤として、したがって新規な種類のOA治療薬としてのJAK3阻害剤の有効性を確認するために、よく知られているJAK3特異的阻害剤である4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(これはまたこの分野ではWHI−P131として呼ばれれている)による様々なOA関連mRNAの阻害を評価した。
【0116】
正常なヒト関節軟骨細胞を、実施例1に記載されるように軟骨の薄片から単離して培養した。mRNA阻害実験を、JAK3特異的阻害剤のWHI−P131(4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(A.G.Scientific、San Diego、CAから購入))をDBHの代わりに使用したことを除いて実施例8に記載されるプロトコールと同じように行った。DMSOに溶解したWHI−P131の2つの濃度(33.6μMおよび168μM)を調べた。
【0117】
ノーザンブロット実験の結果(図11に示す)により、JAK3特異的阻害剤であるWHI−P131の33.6μMおよび168μMの処理はともに、(変形性)関節炎の病理学に関連することが知られているか、またはそのような関連が考えられるmRNA、すなわち、ストロメライシン−1(MMP3)、コラゲナーゼ(MMP1)、シクロオキシゲナーゼII(COX2)およびNF−κB(p65)のIL−1β誘導によるアップレギュレーションを阻害することが明らかにされる。
【0118】
本発明では、分子生物学の分野で十分に知られている様々な技術がそのまま参考により組み込まれる。このような技術には、下記の刊行物に記載される様々な技術(これらに限定されない)が含まれる:
Old,R.W.&S.B.Primrose、Principles of Gene Manipulation:An Introduction To Genetic Engineering(第3版、1985年)、Blackwell Scientific Publications、Boston。Studies in Microbiology;第2巻:409頁(ISBN0−632−01318−4)。
【0119】
Sambrook,J.他編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989年)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、第1巻〜第3巻(ISBN0−87969−309−6)。
【0120】
Winnacker,E.L.、From Genes To Clones:Introduction To Gene Technology(1987年)、VCH Publishers、NY(Horst Ibelgauftsにより翻訳)、634頁(ISBN0−89573−614−4)。
【0121】
参考文献
【0122】
【表3】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

本明細書中において言及された刊行物は,それぞれ参考により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、培養されたヒト軟骨細胞のRT−PCR分析から得られた部分的なJAK3のcDNA配列と、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)との比較を示す。
【図2】図2は、変形性関節症の軟骨サンプルから直接採取されたmRNAのRT−PCR分析から得られた部分的なJAK3のcDNA配列の比較を示す。
【図3−1】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−2】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−3】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−4】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−5】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−6】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−7】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−8】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−9】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−10】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−11】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−12】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図3−13】図3は、発表されているヒトJAK3のcDNA(GenBankアクセション番号U09607)と、ヒト軟骨細胞のcDNAライブラリーから単離されたJAK3cDNAとの比較を示す。
【図4】図4は、正常なヒト関節軟骨細胞におけるJAK3mRNAのノーザンブロット分析の結果を例証する。
【図5】図5は、ELISA分析により測定されたJAK3のDBH阻害を例証する。
【図6】図6は、ELISA分析によって測定される、H(979)およびDBH(5025)によるJAK3阻害の例証となる比較を示す。
【図7A】図7は、ELISA分析によって測定される、DBHの様々な変化体形態による基質阻害の例証となる比較を示す。図7Aは、DBHの2つの塩形態(DBH−2SおよびDBH−1)および1つの遊離塩基形態(DBH−2FB)の阻害曲線を示す。
【図7B】図7Bは、ZAP−70、LCK、BTK、IGF、およびJAK3に対する遊離塩基DBHの阻害の比較を示す。
【図8A】図8Aは、ヒト関節軟骨細胞における様々な軟骨分解成分のmRNAのDBH阻害をノーザンブロット分析した結果を例証する。
【図8B】図8Bは、ヒト関節軟骨細胞における様々な軟骨分解成分のmRNAのDBH阻害をノーザンブロット分析した結果を例証する。
【図9】図9は、種々の変化体形態のDBHによるIL−1誘導されるアグリカナーゼ活性の阻害をグラフで示す。
【図10】図10は、ヒト関節軟骨細胞における様々な軟骨分解成分のmRNAのJAK3特異的阻害剤4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン(WHI−P131としてこの分野では知られており、図ではJ1030として識別される)の阻害をノーザンブロット分析した結果を例証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DBHおよびHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量を投与することによって、軟骨の分解を伴う疾患の発症の進行または可能性を阻害する方法。
【請求項2】
疾患が変形性関節症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が慢性関節リウマチである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
JAK/STAT阻害剤がJAK−3阻害剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
JAK/STAT阻害剤がWHI−P131である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
DBHおよびHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量を投与することによって、細胞における軟骨分解酵素の発現を調節する方法。
【請求項7】
細胞がインビトロで阻害剤と接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
JAK/STAT阻害剤がJAK−3阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
JAK/STAT阻害剤がWHI−P131である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
DBHまたはHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量を投与することによって、軟骨細胞における前炎症性因子の発現を調節する方法。
【請求項11】
細胞をインビトロで阻害剤と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前炎症性因子が、iNOS、COX−2またはNF−6Bからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
JAK/STAT阻害剤がJAK−3阻害剤である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
JAK/STAT阻害剤がWHI−P131である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
DBHまたはHとは異なるJAK/STAT阻害剤の薬学的に効果的な量を投与することによって、軟骨細胞における前炎症性サイトカインの発現を調節する方法。
【請求項16】
細胞がインビトロで阻害剤と接触する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前炎症性サイトカインが、IL−6、TNF−αまたはIL−1からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
JAK/STAT阻害剤がJAK−3阻害剤である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
JAK/STAT阻害剤がWHI−P131である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
DBHまたはHの薬学的に効果的な量を投与することによって、OAまたはPKC媒介炎症とは異なるJAK/STAT媒介の疾患または障害を処置する方法。
【請求項21】
前記JAK/STAT媒介の疾患または障害が、T細胞により媒介される疾患または障害、2型の疾患または障害、マスト細胞により媒介される疾患または障害、Bリンパ腫細胞の疾患または障害、および骨髄性の疾患または障害からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
軟骨の分解を伴う疾患または障害を処置するために有用な化合物を検出するためのアッセイであって、
(a)JAK3を候補化合物と接触させること、および
(b)JAK3活性の低下を検出すること
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図3−12】
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【図3−13】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−41354(P2012−41354A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−224065(P2011−224065)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2001−552939(P2001−552939)の分割
【原出願日】平成13年1月22日(2001.1.22)
【出願人】(391018536)ジェンザイム・コーポレーション (13)
【氏名又は名称原語表記】GENZYME CORPORATION
【Fターム(参考)】