説明

K−ras変異を含んだ癌を処置するための方法

腫瘍増殖を阻害する方法、癌を処置する方法、および腫瘍における癌幹細胞の頻度を低減する方法を記述する。特に、これらの方法は、K-ras変異を含む腫瘍または癌に向けられる。記述する方法は、対象にDLL4アンタゴニスト(例えば、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体)を投与する段階を含む。関連するポリペプチドおよびポリヌクレオチド、DLL4アンタゴニストを含む組成物、ならびにDLL4アンタゴニストを作出する方法も記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月1日付で出願された米国特許仮出願第61/265,559号の恩典を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は広くは、DLL4タンパク質に結合する抗体および他の薬剤、ならびに癌、特にK-ras変異を含んだ癌のような、疾患の処置のために抗体または他の薬剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌は、先進諸国の主要な死因の一つであって、米国だけでも毎年550,000人超の死亡をもたらす。ほぼ150万人が毎年米国で癌と診断されており、現在、米国では死亡の4分の1が癌によるものである(Jemal et al., 2008, Cancer J. Clin. 58:71-96(非特許文献1))。現在利用することができ、そして使用されている多くの薬物および化合物が存在するが、これらの数は、癌の処置のための新しい治療剤の必要性が存在し続けていることを示している。
【0004】
多くの相互連結したシグナル伝達経路は、細胞増殖、分化およびアポトーシスを直接制御する種々のタンパク質および転写因子のリン酸化により腫瘍形成において重要な役割を果たす。癌遺伝子のラット肉腫ウイルス(ras)遺伝子ファミリーの一員であるK-rasは、自己不活性化細胞内シグナル伝達物質として働くグアノシン二リン酸(GDP)-およびグアノシン三リン酸(GTP)-結合タンパク質Rasをコードする。Rasは、膜からの増殖因子シグナルをMAPキナーゼカスケードに伝達するために多くの受容体チロシンキナーゼの下流で媒介体として機能する。MAPシグナル伝達の開始は、細胞増殖、分化、遊走および生存に関与しているタンパク質の発現を最終的にもたらす。K-ras (および経路中の他の遺伝子)における変異は、Ras-MAPK経路の持続的活性をもたらしうる。(概説Siena et al., 2009, JNCI, 101:1308-1324(非特許文献2)を参照のこと)。Rasタンパク質における活性化変異は、典型的には、残基番号12、13、59または61で起こり、分子のGTPase活性を損ない、その結果、Rasシグナル伝達の構成的活性化をもたらす。Ras変異は全てのヒト癌のおよそ3分の1で見られ、K-ras変異はヒト癌の大体においてRas変異の大部分の割合を占める。例えば、K-ras変異は結腸癌で頻繁に起こり、結腸癌患者由来の腫瘍のおよそ45%が活性化変異を含んでいる。さらに、活性化K-ras変異はおよそ35%の頻度で非小細胞肺癌で見つかっている。
【0005】
上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とする抗体セツキシマブおよびパニツムマブは、結腸癌の処置において有効であることが示されている。しかしながら、いくつかの後ろ向き研究において、これらの抗体は、腫瘍がK-ras癌遺伝子における活性化変異を含むような患者では無効であることが示されている(Benvenuti et al. 2007, Cancer Res., 67:2643-2648(非特許文献3); Chau and Cunningham, 2009, British J. Cancer, 100: 1704-1719(非特許文献4))。したがって、この大部分の結腸癌患者に治療的利益を提供しうる新しい薬剤が必要である。
【0006】
Notchシグナル伝達経路は普遍的に保存されたシグナル伝達系である。これは、胚パターン形成および後胚期の組織維持を含む発生の間の細胞運命決定に関与している。さらに、Notchシグナル伝達は、造血幹細胞(HSC)の維持において決定的な因子と特定されている。
【0007】
Notch経路は血液および固形の腫瘍および癌の両方の発病に関連付けられている。細胞増殖、アポトーシス、接着および血管形成を含めて、腫瘍形成と関連する多数の、細胞の機能および微小環境の合図は、Notch経路シグナル伝達によって調節されることが示されている。(Leong et al., 2006, Blood, 107:2223-2233(非特許文献5))。さらに、Notch受容体および/またはNotchリガンドは、急性骨髄性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞性急性リンパ芽球性白血病、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌および皮膚癌を含む、いくつかのヒト癌において潜在的な発癌性の役割を果たすことが示されている。(Leong et al., 2006, Blood, 107:2223-2233(非特許文献5))。したがって、Notch経路は癌治療のための潜在的な標的と特定されている。
【0008】
過去の研究から、ヒトNotchリガンドDLL4 (デルタ様リガンド4)に対する抗体はいくつかの異種移植腫瘍において癌幹細胞の割合を低減できることが実証された。さらに、マウスDLL4に対する抗体は腫瘍血管系の過剰増殖をもたらすことが示された。(Hoey et al., 2009, Cell Stem Cell, 5: 168-177(非特許文献6))。これらの所見から、例えばDLL4アンタゴニストでの、Notch経路の標的化は、非腫瘍形成性癌細胞の大部分だけでなく、固形腫瘍の形成および再発に関与する腫瘍形成性癌幹細胞も排除する助けとなりうることが示唆される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jemal et al., 2008, Cancer J. Clin. 58:71-96
【非特許文献2】Siena et al., 2009, JNCI, 101:1308-1324
【非特許文献3】Benvenuti et al. 2007, Cancer Res., 67:2643-2648
【非特許文献4】Chau and Cunningham, 2009, British J. Cancer, 100: 1704-1719
【非特許文献5】Leong et al., 2006, Blood, 107:2223-2233
【非特許文献6】Hoey et al., 2009, Cell Stem Cell, 5: 168-177
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ヒト対象にDLL4アンタゴニストの治療上有効量を投与する段階を含み、腫瘍がK-ras変異を含む、腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、腫瘍は結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍または多発性骨髄腫である。
【0011】
別の局面において、本発明は、ヒト対象にDLL4アンタゴニストの治療上有効量を投与する段階を含み、腫瘍が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である、腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である腫瘍は、K-ras変異を含む。いくつかの態様において、腫瘍は結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍または多発性骨髄腫である。
【0012】
一つの局面において、本発明は、(a) 対象の癌がK-ras変異を含むことを判定する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0013】
別の局面において、本発明は、(a) K-ras変異を含む癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づき、処置に向けて対象を選択する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0014】
別の局面において、本発明は、(a) K-ras変異を含んだ癌を有する対象を特定する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0015】
別の局面において、本発明は、(a) 対象の癌が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性であることを判定する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌は、K-ras変異を含む。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0016】
別の局面において、本発明は、(a) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づき、処置に向けて対象を選択する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌は、K-ras変異を含む。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0017】
別の局面において、本発明は、(a) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を有する対象を特定する段階、および(b) DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌は、K-ras変異を含む。いくつかの態様において、癌は結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌または多発性骨髄腫である。
【0018】
別の局面において、本発明は、対象が、(a) K-ras変異を含んだ癌、または(b) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を有するかどうか判定する段階を含み、対象が(a)および/または(b)を有するなら、対象はDLL4アンタゴニストによる処置に向けて選択される、DLL4アンタゴニストによる処置に向けてヒト対象を選択する方法を提供する。
【0019】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、K-ras変異はPCRに基づくアッセイ法または直接的ヌクレオチド配列決定法のような、当業者に公知の方法によりサンプルにおいて検出される。いくつかの態様において、サンプルは新鮮腫瘍サンプル、凍結腫瘍サンプルまたはホルマリン固定パラフィン包埋サンプルである。
【0020】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、K-ras変異は活性化変異である。いくつかの態様において、腫瘍または癌は二つ以上のK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異はコドン番号12、13、59および/または61中の変異である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物または抗体である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体セツキシマブまたはパニツムマブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブまたはゲフィチニブである。
【0021】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4に特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体は、ヒトDLL4のN末端領域内のアミノ酸(SEQ ID NO: 16)を含むエピトープに特異的に結合する。
【0022】
いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに/または(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3を含んだ抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3を含んだ抗体である。
【0023】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、DLL4アンタゴニストは、(a) SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは100%の配列同一性を有する重鎖可変領域; および/または(b) SEQ ID NO:10に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18、21M18 H7L2または21M18 H9L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ブダペスト条約の条件の下、2007年5月10日付でATCCに寄託されたATCC寄託番号PTA-8425を有するプラスミドによってコードされる抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ブダペスト条約の条件の下、2007年5月10日付でATCCに寄託されたATCC寄託番号PTA-8427を有するプラスミドによってコードされる抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ブダペスト条約の条件の下、2007年9月28日付でATCCに寄託されたATCC寄託番号PTA-8670を有するハイブリドーマによって産生される抗体である。
【0024】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、DLL4アンタゴニストは組み換え抗体である。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。いくつかの態様において、抗体は抗体断片である。ある種の態様において、抗体または抗体断片は一価、単一特異性、二価、二重特異性または多重特異性である。ある種の態様において、抗体は単離されている。他の態様において、抗体は実質的に純粋である。
【0025】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、寄託番号PTA-8425を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4との特異的結合について、寄託番号PTA-8427を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4との特異的結合について、寄託番号PTA-8670を有するATCCに寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体と競合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、抗体21M18、21M18 H7L2または21M18 H9L2と競合する抗体である。
【0026】
上記の局面の各々のある種の態様、ならびに本明細書の他の箇所に記述されている他の局面および態様において、処置方法は、併用療法を達成するのに適した少なくとも一種のさらなる治療剤を投与する段階をさらに含む。いくつかの態様において、さらなる治療剤は化学療法剤である。いくつかの態様において、化学療法剤はイリノテカン、ゲムシタビンまたは5-フルオロウラシルである。
【0027】
DLL4アンタゴニストを産生する細胞株と同様、本明細書において記述のDLL4アンタゴニストおよび薬学的に許容される媒体を含む薬学的組成物がさらに提供される。DLL4アンタゴニストを含む組成物の有効量を対象に投与する段階を含む、対象における腫瘍増殖を阻害するおよび/または癌を処置する方法も提供される。
【0028】
本発明の局面または態様がマーカッシュ群または代替物に関するその他の群分けにより記述されている場合、本発明は、記載されている群全体をまとめて包含するだけでなく、個別的に群の各要素も、主群のなかで可能なあらゆる下位群も包含し、群の要素の一つまたは複数を欠いた主群も包含する。本発明は、主張する発明における群の要素のいずれかの一つまたは複数の明示的な除外も想定する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】抗EGFR抗体によるK-ras野生型および変異体腫瘍における腫瘍増殖の阻害。C8 (図1Aおよび1H)、C40 (図1B)、C4 (図1C)、C6 (図1D)、C9 (図1E)、C12 (図1Fおよび1I)ならびにC22 (図1G)結腸腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに皮下注射した。図1A〜1Gではマウスを対照抗体(●)または抗EFGR抗体(▲)で処置した。図1H〜1Iではマウスを対照抗体(●)、抗EFGR抗体のみ(▲)、イリノテカンのみ(▼)または抗EGFR抗体 + イリノテカン(○)で処置した。データは、処置後の日数にわたる腫瘍容積(mm3)として示されている。抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【図2】抗DLL4抗体による、単独でのまたはイリノテカンとの組み合わせでのK-ras野生型および変異体腫瘍における腫瘍増殖の阻害。C8 (図2A)、C40 (図2B)、C4 (図2C)、C6 (図2D)、C9 (図2E)、C12 (図2F)およびC22 (図2G)結腸腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに皮下注射した。マウスを対照抗体(●)、抗DLL4抗体のみ(■)、イリノテカンのみ(▼)または抗DLL4抗体 + イリノテカン(◆)で処置した。データは、処置後の日数にわたる腫瘍容積(mm3)として示されている。抗DLL4抗体は21M18 H7L2抗体(抗ヒトDLL4)および21R30抗体(抗マウスDLL4)の1:1混合物である。
【図3】限界希釈分析によって判定したときの、対照抗体、抗DLL4抗体のみ、イリノテカンのみまたは抗DLL4抗体およびイリノテカンの組み合わせによる処理後のC9結腸腫瘍における癌幹細胞(CSC)頻度。抗DLL4抗体は21M18 H7L2抗体(抗ヒトDLL4)および21R30抗体(抗マウスDLL4)の1:1混合物である。
【図4】結腸腫瘍再発異種移植モデルにおける抗DLL4抗体による腫瘍増殖の阻害。C9結腸腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに皮下注射した。注射から2日後に始めて、マウスをイリノテカンのみ(Δ)または抗DLL4 + イリノテカン(▼)で処置した。処置を表示日に中断し、腫瘍増殖をさらなる期間にわたってモニタリングした。データは、注射後の日数にわたる腫瘍容積(mm3)として示されている。抗DLL4抗体は21M18 H7L2抗体(抗ヒトDLL4)だけである。
【図5】膵臓腫瘍異種移植モデルにおける抗DLL4抗体による腫瘍増殖の阻害。PN8膵臓腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに皮下注射し、28日間増殖させた。マウスをゲムシタビンで4週間処置し、その後、ゲムシタビン処置を停止し、抗体処置を開始した。マウスを対照抗体(●)、抗マウスDLL4抗体21R30 (▼)、抗ヒトDLL4抗体21M18 H7L2 (▲)または抗マウスDLL4 21R30および抗ヒトDLL4抗体21M18 H7L2の組み合わせ(□)で処置した。データは、注射後の日数にわたる腫瘍容積(mm3)として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、腫瘍増殖を阻害する方法、癌を処置する方法、および腫瘍における癌幹細胞の頻度を低減する方法を提供する。特に、これらの方法は、K-ras変異を含む腫瘍または癌に向けられる。本明細書において提供される方法は、対象にDLL4アンタゴニストを投与する段階を含む。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。関連するポリペプチドおよびポリヌクレオチド、DLL4アンタゴニストを含む組成物、ならびにDLL4アンタゴニストを作出する方法も提供される。
【0031】
野生型K-rasまたはK-ras変異を有するいくつかの結腸腫瘍を特定した(実施例1)。K-ras変異を含んだ結腸腫瘍は、抗EGFR抗体に対して非反応性であることが示された(実施例2および図1)。K-ras変異を含んだ結腸腫瘍の5例中2例は抗DLL4抗体のみに対して反応性であったが、全5例とも化学療法剤との組み合わせでの抗DLL4抗体に対して反応性であった(実施例2および図2)。抗DLL4抗体は、単独でまたは化学療法剤との組み合わせで、K-ras変異を含んだ結腸腫瘍における癌幹細胞の頻度を低減することも示された(実施例3および図3)。化学療法剤との組み合わせでの抗ヒトDLL4抗体による処置は、処置の中断後でさえも、K-ras変異結腸腫瘍の増殖を阻害することが示された(実施例4および図4)。さらに、抗ヒトDLL4抗体は、化学療法剤による初期処置後にK-ras変異膵臓腫瘍の増殖を阻害することが示された(実施例5および図5)。
【0032】
I. 定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0033】
「抗体」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖質、ポリヌクレオチド、脂質または前記の組み合わせのような標的を、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも一つの抗原識別部位または抗原結合部位によって認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書において用いられる場合、「抗体」という用語は、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2およびFv断片などの)、一本鎖Fv (scFv)変異体、少なくとも二つの無傷の抗体から作製された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原認識部位を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む改変されたその他任意の免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γおよびμといわれる重鎖定常ドメインの同一性に基づき、五つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ) (例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のいずれかでありうる。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造および三次元構造を有する。抗体はありのままでも、または毒素および放射性同位体を含むが、これらに限定されない、他の分子に結合されていてもよい。
【0034】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部をいい、無傷の抗体の抗原決定可変領域をいう。抗体断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖状抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0035】
抗体の「可変領域」という用語は、単独または組み合わせのいずれかの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域をいう。重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られる三つの相補性決定領域(CDR)によって連結された、四つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接してともに保持され、そして他の鎖由来のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには少なくとも二つの技術がある: (1) 種間配列変動に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991 , National Institutes of Health, Bethesda Md.)); および(2) 抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al., 1997, J. Molec. Biol. 273:927-948)。さらに、CDRを決定するために当技術分野においてこれらの二つのアプローチの組み合わせが用いられることもある。
【0036】
「モノクローナル抗体」という用語は、一つの抗原決定基またはエピトープの極めて特異的な認識および結合に関わる、均質な抗体集団をいう。これは、異なる抗原決定基に対して作製された異なる抗体の混合物を典型的に含むポリクローナル抗体と対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷のかつ全長のモノクローナル抗体と抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv断片などの)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む改変されたその他任意の免疫グロブリン分子の両方を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ産生、ファージ選択、組み換え発現、およびトランスジェニック動物によるものを含むがこれらに限定されない、任意のいくつかの方法で作出されたそのような抗体をいう。
【0037】
「ヒト化抗体」という用語は、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含む特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはその断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態をいう。
【0038】
「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体、または当技術分野において公知の任意の技術を用いて作出された、ヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、無傷のもしくは全長の抗体、その断片、および/または、例えば、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などの、少なくとも一つのヒト重鎖および/または軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。
【0039】
「キメラ抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が二つまたはそれ以上の種に由来する抗体をいう。典型的には、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、所望の特異性、親和性および/または能力を有する、一つの哺乳動物種(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応するが、定常領域は、その種での免疫反応の誘発を回避するために別の種(通常はヒト)に由来する抗体中の配列と相同である。
【0040】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、特定の抗体により認識され特異的に結合されうる抗原のその部分をいう。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは連続的なアミノ酸からも形成され(直鎖状エピトープといわれることが多い)、タンパク質の三次元的折り畳みによって近接して並べられた非連続的なアミノ酸からも形成され(立体配座エピトープといわれることが多い)うる。連続的なアミノ酸から形成されたエピトープは、タンパク質が変性した場合にも典型的には維持されるが、三次元的折り畳みによって形成されたエピトープは、タンパク質が変性すると典型的には失われる。エピトープは、典型的には、独特の空間的配置の中に少なくとも3アミノ酸、より一般的には、少なくとも5アミノ酸または8〜10アミノ酸を含む。
【0041】
「特異的に結合する」または「特異的な結合」という用語は、結合剤または抗体が、関連のないタンパク質を含めて、別の物質とよりもエピトープまたはタンパク質と高頻度に、迅速に、長い持続時間で、高い親和性で、または前記のいくつかの組み合わせで反応または結合することを意味する。ある種の態様において、「特異的に結合する」とは、例えば、抗体が約0.1 mMまたはそれ以下、しかし、より通常には、約1μM未満のKDでタンパク質に結合することを意味する。ある種の態様において、「特異的に結合する」とは、抗体が、時には、少なくとも約0.1μMまたはそれ以下、またある時には、少なくとも約0.01μMまたはそれ以下のKDでタンパク質に結合することを意味する。異なる種における相同タンパク質間の配列同一性のため、特異的結合は、二種以上の種におけるDLL4 (例えば、マウスDLL4およびヒトDLL4)のような特定のタンパク質を認識する抗体を含むことができる。第一の標的に特異的に結合する抗体または結合部分は、第二の標的に特異的に結合してもしなくてもよいことが理解されよう。したがって、「特異的な結合」とは、排他的な結合、すなわち単一の標的との結合を(含むことができるが)必ずしも必要としない。かくして、抗体は、ある種の態様において、二種以上の標的に特異的に結合することができる。ある種の態様において、複数の標的が抗体上の同じ抗原結合部位によって結合されうる。例えば、抗体は、場合によっては、それぞれが二種またはそれ以上のタンパク質上の同じエピトープに特異的に結合する二つの同一の抗原結合部位を含むことができる。ある種の代替的な態様において、抗体は二重特異性であることができ、異なる特異性を有する少なくとも二つの抗原結合部位を含むことができる。非限定的な例として、二重特異性抗体は、DLL4タンパク質上のエピトープを認識する一つの抗原結合部位を含むことができ、Notchのような、第二のタンパク質上の異なるエピトープを認識する第二の異なる抗原結合部位をさらに含むことができる。一般的に、しかし必ずというわけではないが、結合への言及は特異的な結合を意味する。
【0042】
「ポリペプチド」または「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸の重合体をいう。この重合体は直鎖または分岐鎖であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、非アミノ酸によって中断されてよい。これらの用語は同様に、天然によりあるいは介入により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合などの、その他任意の操作もしくは修飾により改変されたアミノ酸重合体を包含する。例えば、一つまたは複数のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも、この定義のなかに含まれる。本発明のポリペプチドは、ある種の態様において、抗体に基づくので、ポリペプチドは一本鎖または結合した鎖として生じてもよいことが理解されよう。
【0043】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、任意の長さのヌクレオチドの重合体をいい、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはその類似体、あるいはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼによって重合体に組み込むことができる任意の基質でもよい。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびその類似体を含んでもよい。ヌクレオチド構造への修飾があれば、これは重合体のアッセンブリの前後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは重合後に、例えば、標識成分との結合によってさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば、「キャップ」; 類似体による一つまたは複数の天然ヌクレオチドの置換; 非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カバメートなど)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)のようなヌクレオチド間修飾; タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)のようなペンダント部分; インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど); キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など); アルキル化剤; 修飾結合(例えば、αアノマー核酸など); ならびに非修飾型のポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖に通常存在する任意のヒドロキシル基が、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置換されてもよく、標準的な保護基によって保護されてもよく、またはさらなるヌクレオチドに対するさらなる結合を調製するために活性化されてもよく、あるいは固体支持体に結合されてもよい。5'末端OHおよび3'末端OHがリン酸化されてもよく、またはアミンもしくは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換されてもよい。他のヒドロキシルを標準的な保護基に誘導体化することもできる。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-または2'-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、αアノマー糖、アラビノース、キシロースもしくはリキソースのようなエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、ヘプツロース、非環式類似体およびメチルリボシドのような脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当技術分野において一般に知られている、リボース糖またはデオキシリボース糖の類似型を含有してもよい。一つまたは複数のホスホジエステル結合を別の結合基によって置換することができる。これらの別の結合基には、リン酸基がP(O)S (「チオエート」)、P(S)S (「ジチオエート」)、(O)NR2 (「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、COまたはCH2 (「ホルマセタル」)により置換される態様が含まれるが、これらに限定されることはなく、式中で各RまたはR'は独立してH、またはエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を任意で含有してもよい置換もしくは非置換アルキル(1〜20 C)である。ポリヌクレオチド内の結合は全て同一である必要はない。
【0044】
「高ストリンジェンシーの条件」は、(1) 洗浄のために低いイオン強度および高い温度、例えば50℃で0.015 M塩化ナトリウム/0.0015 Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを利用すること; (2) ハイブリダイゼーションの間に変性剤、例えばホルムアミド、例えば、50% (v/v)ホルムアミド+0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.5+750 mM塩化ナトリウム、75 mMクエン酸ナトリウムを42℃で利用すること; または(3) 50%ホルムアミド、5×SSC (0.75 M NaCl、0.075 Mクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理済みサケ精子DNA (50μg/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で利用し、42℃で0.2×SSC (塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で洗浄し、55℃で50%ホルムアミド中で洗浄し、その後、EDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行うことによって特定することができる。
【0045】
二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチドという文脈において、「同一の」または「同一性」の割合という用語は、保存的アミノ酸置換を配列同一性の一部として全く考慮することなく、最大一致を得るように比較されアライメントされた場合に(必要であれば、ギャップを導入して)、同じであるか、または特定の割合の同じヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有するかの、二つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。同一性の割合は、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定することができる。アミノ酸またはヌクレオチド配列のアライメントを得るために使用できるさまざまなアルゴリズムおよびソフトウェアが当技術分野において公知である。これらにはBLAST、ALIGN、MegalignおよびBestFitが含まれるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、本発明の二つの核酸またはポリペプチドは実質的に同一であり、それらが、最大一致を得るように比較されアライメントされ、配列比較アルゴリズムを用いてまたは目視検査によって測定された場合に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびいくつかの態様において少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有することを意味する。いくつかの態様において、同一性は、長さが少なくとも約10残基、少なくとも約20残基、少なくとも約40〜60残基またはその間の任意の整数値である配列の領域にわたって存在する。いくつかの態様において、同一性は、少なくとも約90〜100残基のような、60〜80残基よりも長い領域にわたって存在し、いくつかの態様において、配列はヌクレオチド配列のコード領域のような、比較されている配列の全長にわたって実質的に同一である。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されるものである。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野において定義されている。例えば、チロシンをフェニルアラニンで置換するのが保存的置換である。本発明のポリペプチドおよび抗体の配列における保存的置換は、アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体と、抗原、すなわち、ポリペプチドまたは抗体が結合するDLL4タンパク質との結合を阻止しないことが好ましい。抗原結合を妨げない、ヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を特定する方法は当技術分野において周知である。
【0047】
「ベクター」という用語は、宿主細胞において関心対象の一つまたは複数の遺伝子または配列を送達できる、好ましくは、発現できる構築体を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクター、およびリポソーム中にカプセル封入されたDNAまたはRNA発現ベクターが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0048】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は、天然では見られない形態にあるポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物には、天然で見られる形態にはない程度まで精製されたものが含まれる。いくつかの態様において、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は実質的に純粋である。
【0049】
本明細書において用いられる場合、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋である(すなわち、夾雑物を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋である、より好ましくは少なくとも95%純粋である、より好ましくは少なくとも98%純粋である、より好ましくは少なくとも99%純粋である材料をいう。
【0050】
「癌」および「癌性」という用語は、無秩序な細胞増殖を特徴とする細胞集団を含む哺乳動物における生理的状態をいい、または説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されることはない。このような癌のさらに詳細な例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、およびさまざまなタイプの頭頸部癌が含まれる。
【0051】
「腫瘍」および「新生物」という用語は、過度の細胞成長または増殖に起因する、前癌病変を含む良性(非癌性)病変または悪性(癌性)病変の任意の組織塊をいう。
【0052】
「K-ras変異体」という用語は、野生型K-rasと(またはそのようなK-rasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と)比べて少なくとも一つのアミノ酸変異を含むK-rasタンパク質をいう。K-ras変異体は、対立遺伝子変種、スプライス変種、置換変種、欠失変種および挿入変種を含むことができるが、これらに限定されることはない。「K-ras変異」という用語は、野生型配列と(またはそのようなK-rasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と)比べてK-rasタンパク質の配列における少なくとも一つのアミノ酸変異をいう。「K-ras変異体腫瘍」または「K-ras変異を含んだ(または含む)腫瘍」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、K-ras変異をタンパク質レベルまたはヌクレオチドレベルのどちらかで、検出できる腫瘍細胞の集団をいう。本明細書において用いられる「K-ras変異を含んだ(または含む)癌」という用語は、K-ras変異をタンパク質レベルまたはヌクレオチドレベルのどちらかで、検出できる癌細胞の集団をいう。K-ras変異は、PCRに基づくアッセイ法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応-制限断片長多型(PCR-RFLP)アッセイ法、ポリメラーゼ連鎖反応-一本鎖高次構造多型(PCR-SSCP)アッセイ法、リアルタイムPCRアッセイ法、PCR配列決定法、変異体対立遺伝子特異的PCR増幅(MASA)アッセイ法)、直接配列決定法、プライマー伸長反応、電気泳動、オリゴヌクレオチド核酸連結アッセイ法、ハイブリダイゼーションアッセイ法、TaqManアッセイ法、SNP遺伝子型決定アッセイ法、高解像度融解アッセイ法およびマイクロアレイ分析を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の技法および方法によって検出することができる。
【0053】
「活性化変異」という用語は、タンパク質、例えば、K-rasの構成的活性化、およびシグナル伝達経路の構成的活性化を引き起こす変異をいう。いくつかの態様において、活性化変異を含むK-rasタンパク質は、MAPキナーゼカスケードおよびPI3キナーゼカスケードを含むが、これらに限定されない、いくつかの経路の構成的活性を開始する。いくつかの態様において、K-ras変異体およびシグナル伝達経路による構成的活性は、細胞増殖の脱調節、分化の障害、アポトーシスの低減および細胞生存の持続を含めて、悪性表現型のいくつかの局面に大きく寄与する。
【0054】
「癌幹細胞」または「CSC」または「腫瘍幹細胞」または「固形腫瘍幹細胞」または「腫瘍形成性癌細胞」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、(1) 高い増殖能を有し; (2) 非対称細胞分裂を行って、増殖能力または発生能力の低下した一つまたは複数の種類の分化した後代細胞を作出でき; かつ(3) 自己複製または自己維持のための対称細胞分裂を行うことができる、固形腫瘍由来の細胞集団をいう。これらの特性によって「癌幹細胞」は、免疫不全宿主(例えば、マウス)に累代移植されると、腫瘍を形成できない大多数の腫瘍細胞と比較して触診可能な腫瘍を形成できる。癌幹細胞は、分化に対して無秩序な様式で自己複製を起こし、変異が生じるにつれて経時変化しうる異常細胞型を含む腫瘍を形成する。
【0055】
「癌細胞」または「腫瘍細胞」という用語、およびその文法上の等価物は、腫瘍細胞集団の大部分を構成する非腫瘍形成性細胞および腫瘍形成性幹細胞(癌幹細胞)の両方を含む、腫瘍または前癌病変に由来する細胞の全集団をいう。本明細書において用いられる場合、「腫瘍細胞」という用語は、再生および分化する能力が無い腫瘍細胞のみをいう場合に、腫瘍細胞と癌幹細胞を区別するために「非腫瘍形成性の」という用語で修飾される。
【0056】
「腫瘍形成性の」という用語は、(さらなる腫瘍形成性癌幹細胞を生じる)自己複製の特性、および固形腫瘍幹細胞が腫瘍を形成するのを可能にする(分化した、したがって、非腫瘍形成性の腫瘍細胞を生じる)他の全ての腫瘍細胞を発生する増殖を含む、固形腫瘍幹細胞の機能的特徴をいう。自己複製および他の全ての腫瘍細胞を発生する増殖のこれらの特性によって、癌幹細胞は、免疫不全宿主(例えば、マウス)に累代移植されると、非腫瘍形成性腫瘍細胞と比較して触診可能な腫瘍を形成できる。非腫瘍形成性腫瘍細胞は累代移植されても、腫瘍を形成することができない。非腫瘍形成性腫瘍細胞は、固形腫瘍から腫瘍細胞を得た後に免疫不全宿主に一次移植されると腫瘍を形成することがあるが、累代移植では腫瘍を生じないことが観察されている。
【0057】
「対象」という用語は、特定の処置のレシピエントとなるべき、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、齧歯類などを含むが、これに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)をいう。典型的には、ヒト対象に関して、本明細書では「対象」および「患者」という用語が互換的に用いられる。
【0058】
「薬学的に許容される塩」という語句は、薬学的に許容され、かつ親化合物の望ましい薬理学的活性を有する化合物の塩をいう。
【0059】
「薬学的に許容される賦形剤、担体または補助剤」という語句は、本開示のアンタゴニストまたは抗体の少なくとも一つとともに対象に投与でき、かつそのアンタゴニストまたは抗体の薬理学的および/または生物学的活性を破壊せず、かつ治療的量のアンタゴニストを送達するのに十分な用量で投与された場合に無毒である、賦形剤、担体または補助剤をいう。
【0060】
「薬学的に許容される媒体」という語句は、本開示のアンタゴニストまたは抗体の少なくとも一つとともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤または担体をいう。
【0061】
「治療上有効量」という用語は、対象または哺乳動物の疾患または障害を「処置する」のに有効な、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機低分子または他の薬物の量をいう。癌の場合には、薬物(例えば、抗体)の治療上有効量は、癌細胞の数を減少させること; 腫瘍の大きさを縮小すること; 例えば、軟組織および骨への癌の拡大を含む、末梢器官への癌細胞浸潤を阻害および/または停止させること; 腫瘍転移を阻害および/または停止させること; 腫瘍増殖を阻害および/または停止させること; 癌に関連した一つまたは複数の症状をある程度軽減させること; 罹患率と死亡率を低下させること; 生活の質を改善すること; 腫瘍の腫瘍形成能、腫瘍形成頻度、もしくは腫瘍形成能を低下させること; 腫瘍内にある癌幹細胞の数もしくは頻度を低下させること; 非腫瘍形成性状態に腫瘍形成性細胞を分化させること、あるいは、このような効果の組み合わせが可能である。薬物が既存の癌細胞の増殖を防止しかつ/またはこれを死滅させるという点で、薬物を、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であるということができる。
【0062】
「処置すること」もしくは「処置」もしくは「処置するために」または「寛解すること」もしくは「寛解するために」という用語は、1) 診断された病的状態もしくは障害の症状を治癒する、減速させる、和らげる、および/または診断された病的状態もしくは障害の進行を止める治療的手段と、2) 標的とされた病的状態もしくは障害の発症を阻止および/または遅らせる予防的または防止的手段の両方をいう。したがって、処置を必要とする者には、既に障害がある者; 障害になりやすい者; および障害を予防しようとする者が含まれる。ある種の態様において、対象は、癌細胞の数が減少していること、もしくは癌細胞が完全に存在しないこと; 腫瘍の大きさが縮小していること; 軟組織および骨への癌の拡大を含む、末梢器官への癌細胞浸潤が阻害されていること、もしくは末梢器官への癌細胞浸潤が無いこと; 腫瘍転移が阻害されていること、もしくは腫瘍転移が無いこと; 腫瘍増殖が阻害されていること、もしくは腫瘍増殖が無いこと; 特定の癌に関連する一つもしくは複数の症状が軽減していること; 罹患率および死亡率が低下していること; 生活の質が改善していること; 腫瘍の腫瘍形成能、腫瘍形成頻度、もしくは腫瘍形成能が低下していること; 腫瘍内にある癌幹細胞の数もしくは頻度が低下していること; 非腫瘍形成性状態に腫瘍形成性細胞が分化していること; または効果のいくつかの組み合わせ、の一つまたは複数を示すのであれば、本発明の方法によって癌が成功裏に「処置される」。
【0063】
本明細書において用いられる「実質的に非反応性の」という語句は、治療剤の投与後に安定な増殖または増殖の増大を示す腫瘍または癌をいう。この語句は、治療剤の投与後に安定な疾患または進行性の疾患を示す患者をいうことができる。この語句は、治療剤による処置に耐性である腫瘍または癌をいう場合に用いることができる。本明細書において用いられる「EGFR阻害剤に対して実質的に非反応性の」という語句は、EGFR阻害剤の投与後に安定な増殖または増殖の増大を示す腫瘍または癌をいう。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は処置を必要としている患者に投与され、EGFR阻害剤に対して「実質的に非反応性の」とは、癌細胞の数が減少していないこと、もしくは癌細胞の増殖が持続していること; 腫瘍の大きさが縮小していないこと; 腫瘍の大きさが増加していること; 例えば、軟組織および骨への癌の拡大を含む、末梢器官への癌細胞浸潤が阻害されていないこと、もしくは末梢器官への癌細胞浸潤が持続していること; 腫瘍転移が阻害されていないこと、もしくは腫瘍転移が持続していること; 腫瘍増殖が阻害されていないこと、もしくは腫瘍増殖が持続していること; 特定の癌に関連する一つもしくは複数の症状が全くもしくはほとんど軽減していないこと; 腫瘍の腫瘍形成能、腫瘍形成頻度、もしくは腫瘍形成能が全くもしくはほとんど低下していないこと; 腫瘍内にある癌幹細胞の数もしくは頻度が全くもしくはほとんど低下していないこと; または効果のいくつかの組み合わせを含む。
【0064】
本開示および特許請求の範囲において用いられる場合、「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈上明らかに他の指示がない限り、複数形を含む。
【0065】
本明細書において「含んだ」という言い回しで態様が記述された場合はいつでも、「からなる」および/または「から本質的になる」によって記述される他の類似する態様も提供されることが理解されよう。
【0066】
本明細書において「Aおよび/またはB」のような語句において用いられる「および/または」という用語は、「AおよびB」も、「AまたはB」も、「A」ならびに「B」も含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」のような語句において用いられる「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを含むことが意図される: A、BおよびC; A、BまたはC; AまたはC; AまたはB; BまたはC; AおよびC; AおよびB; BおよびC; A (のみ); B (のみ); ならびにC (のみ)。
【0067】
II. DLL4アンタゴニスト
本発明は、K-ras変異を含み、および/または少なくとも一つの上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤に対して実質的に非反応性である、腫瘍の増殖を阻害する方法において用いるためのDLL4アンタゴニストを提供する。本発明は、K-ras変異を含み、および/または少なくとも一つの上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤に対して実質的に非反応性である、癌を処置する方法において用いるためのDLL4アンタゴニストをさらに提供する。
【0068】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体はヒトDLL4のN末端領域(SEQ ID NO:16)内のアミノ酸を含んだエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は、ヒトDLL4のN末端領域(SEQ ID NO:16)およびヒトDLL4 DSL領域(SEQ ID NO:17)の組み合わせによって形成されるエピトープに特異的に結合する。
【0069】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は約1μMもしくはそれ以下、約100 nMもしくはそれ以下、約40 nMもしくはそれ以下、約20 nMもしくはそれ以下、約10 nMもしくはそれ以下または約1 nMもしくはそれ以下の解離定数(KD)でDLL4に結合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は約40 nMもしくはそれ以下、約20 nMもしくはそれ以下、約10 nMもしくはそれ以下または約1 nMもしくはそれ以下のKDでヒトDLL4に結合する。いくつかの態様において、DLL4に対するアンタゴニストまたは抗体の解離定数は、Biacoreチップ上に固定化されているDLL4細胞外ドメインを含んだDLL4融合タンパク質(例えば、DLL4 ECD-Fc融合タンパク質)を用いて決定された解離定数である。
【0070】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は約1μMもしくはそれ以下、約100 nMもしくはそれ以下、約40 nMもしくはそれ以下、約20 nMもしくはそれ以下、約10 nMもしくはそれ以下または約1 nMもしくはそれ以下の半最大有効濃度(EC50)でDLL4に結合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は約40 nMもしくはそれ以下、約20 nMもしくはそれ以下、約10 nMもしくはそれ以下または約1 nMもしくはそれ以下のEC50でヒトDLL4に結合する。
【0071】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはポリペプチドである。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたはポリペプチドは抗体である。ある種の態様において、抗体はIgG抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG2抗体である。ある種の態様において、抗体はモノクローナル抗体である。ある種の態様において、抗体はヒト化抗体である。ある種の態様において、抗体はヒト抗体である。ある種の態様において、抗体は抗体断片である。
【0072】
本発明のDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は、当技術分野において公知の任意の方法により特異的結合についてアッセイすることができる。使用できるイムノアッセイ法には、例えば、Biacore分析、FACS分析、免疫蛍光、免疫細胞化学、ウエスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ法、ELISA法、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、免疫沈降アッセイ法、沈殿反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体固定アッセイ法、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ法、およびプロテインAイムノアッセイ法などの技法を用いた、競合的アッセイ系および非競合的アッセイ系が含まれるが、これらに限定されることはない。このようなアッセイ法は日常的なものであり、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。
【0073】
いくつかの態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)とヒトDLL4との特異的結合は、ELISAを用いて決定することができる。ELISAアッセイ法にはDLL4抗原を調製する段階、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングする段階、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)基質などの検出可能な化合物を結合させたDLL4アンタゴニストまたは抗体をウェルに添加する段階、一定時間インキュベートする段階および結合剤または抗原の存在を検出する段階が含まれる。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は検出可能な化合物に結合されないが、その代わりに、DLL4アンタゴニストまたは抗体を認識する第2の結合抗体がウェルに添加される。いくつかの態様において、ウェルをDLL4抗原でコーティングする代わりに、DLL4アンタゴニストまたは抗体をウェルにコーティングしてもよく、コーティングされたウェルに抗原を添加した後に、検出可能な化合物を結合させた第2の抗体を添加する。当業者であれば、検出されるシグナルを増強するために改変および/または最適化できるパラメータ、ならびに使用できるELISAの他の変化形に精通しているであろう(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York at 11.2.1を参照のこと)。
【0074】
DLL4に対するアンタゴニストまたは抗体の結合親和性および抗体-抗原相互作用のオンオフ速度は、競合的結合アッセイ法によって決定することができる。いくつかの態様において、競合的結合アッセイ法は、漸増量の非標識抗原の存在下で、標識された抗原(例えば、3Hもしくは125I)またはその断片もしくは変種と関心対象の抗体とをインキュベーションした後に、標識された抗原に結合した抗体を検出する段階を含む、ラジオイムノアッセイ法である。抗原に対する抗体の親和性およびオンオフ速度は、スキャッチャードプロット分析によってデータから決定することができる。いくつかの態様において、Biacore動態解析を用いて、DLL4に結合するアンタゴニストまたは抗体の結合親和性およびオンオフ速度を決定する。Biacore動態解析は、Biacoreチップの表面上に固定化された抗原(例えば、DLL4タンパク質)からの抗体の結合および解離を解析する段階を含む。いくつかの態様において、Biacore動態解析を用いて、定性的エピトープ競合結合アッセイ法のなかで異なる抗体の結合を調べることができる。
【0075】
いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は任意の公知の方法によって調製することができる。ポリクローナル抗体は、関連抗原(例えば、精製されたペプチド断片、完全長組み換えタンパク質、融合タンパク質など)の複数回の皮下注射または腹腔内注射により動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ロバなど)を免疫することで調製される。抗原は任意で、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または血清アルブミンのような担体タンパク質に結合されてもよい。抗原(担体タンパク質有りまたは無しの)を滅菌食塩水中に希釈し、通常、アジュバント(例えば、完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバント)と組み合わせて安定な乳濁液を形成させる。十分な時間の後、免疫した動物の血液、腹水などからポリクローナル抗体を回収する。ポリクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動および透析を含むが、これらに限定されない、当技術分野において標準的な方法にしたがって血清または腹水から精製することができる。
【0076】
いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は当業者に公知のハイブリドーマ法を用いて調製することができる(例えば、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495を参照のこと)。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物を上述のように免疫して、免疫用の抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を誘発させる。いくつかの態様において、リンパ球はインビトロで免疫することができる。いくつかの態様において、免疫用の抗原(例えば、DLL4)はヒトタンパク質またはその部分であることができる。いくつかの態様において、免疫用の抗原(例えば、DLL4)はマウスタンパク質またはその部分であることができる。いくつかの態様において、免疫用の抗原はヒトDLL4の細胞外ドメインであることができる。いくつかの態様において、免疫用の抗原はマウスDLL4の細胞外ドメインであることができる。いくつかの態様において、マウスはヒト抗原で免疫される。いくつかの態様において、マウスはマウス抗原で免疫される。
【0077】
免疫の後、リンパ球を単離し、例えば、ポリエチレングリコールを用いて適当な骨髄腫細胞株と融合させる。当技術分野において公知のように特殊培地を用いてハイブリドーマ細胞を選択するが、融合していないリンパ球および骨髄腫細胞はこの選択過程を生き延びられない。選択された抗原に対して作製されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、免疫沈降法、免疫ブロッティング法およびインビトロ結合アッセイ法(例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ法(RIA))を含むが、これらに限定されない、さまざまな技法によって特定することができる。ハイブリドーマは標準的な方法(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986)を用いるインビトロの培養で、またはインビボで動物中の腹水腫瘍として増殖することができる。モノクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動および透析を含むが、これらに限定されない、当技術分野において標準的な方法にしたがって培地または腹水から精製することができる。
【0078】
あるいは、モノクローナル抗体は当業者に公知であるように組み換えDNA技法を用いて作出することができる(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるRT-PCRによって単離し、それらの配列を、従来の技法を用いて決定する。重鎖および軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを、トランスフェクトされていなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E. coli)、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞のような宿主細胞へトランスフェクトされた場合にモノクローナル抗体を産生する適当な発現ベクターへクローニングする。
組み換えモノクローナル抗体またはその断片を、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから単離することもできる(例えば、McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552-554; Clackson et al., 1991, Nature, 352:624-628; およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581-597を参照のこと)。
【0079】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、組み換えDNA技術を用いてさらに改変し、代わりの抗体を作製することができる。いくつかの態様において、例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインを、1) 例えば、ヒト抗体のそれらの領域に置き換えてキメラ抗体を作製することができ、または2) 非免疫グロブリンポリペプチドに置き換えて融合抗体を作製することができる。いくつかの態様において、定常領域を切断または除去してモノクローナル抗体の望ましい抗体断片を作製する。可変領域の部位特異的変異誘発または高密度変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性および/または他の生物学的特徴を最適化することができる。いくつかの態様において、CDRの部位特異的変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性および/または他の生物学的特徴を最適化することができる。
【0080】
いくつかの態様において、DDL4アンタゴニストはヒト化抗体である。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)由来の残基が当業者に公知の方法によって、所望の特異性、親和性および/または能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの態様において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有する非ヒト免疫グロブリン由来の対応するフレームワーク領域残基で置き換えられる。いくつかの態様において、ヒト化抗体を、Fvフレームワーク領域中および/または置き換えられた非ヒト残基内のさらなる残基の置換によりさらに改変して、抗体の特異性、親和性および/または能力を改良および最適化することができる。一般に、ヒト化抗体は、フレームワーク領域の全て、または実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものであるのに対して、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDRの全て、または実質的に全てを含んだ少なくとも一つ、および典型的には二つまたは三つの可変ドメインの実質的に全てを含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含むことができる。ある種の態様において、そのようなヒト化抗体は、ヒト対象に投与された時に抗原性およびHAMA (ヒト抗マウス抗体)反応を低減しうるので治療的に用いられる。当業者は、公知の技法にしたがって免疫原性の低下した機能的なヒト化抗体を得ることができるであろう(例えば、米国特許第5,225,539号; 同第5,585,089号; 同第5,693,761号; および同第5,693,762号を参照のこと)。
【0081】
いくつかの態様において、本発明は、21M18、21M18 H9L2および/または21M18 H7L2のCDRの1つ、2つ、3つ、4つ、5つおよび/または6つを含み、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を提供する。これらの抗体は米国特許出願第2008/0187532号に記述されている。抗体21M18 H7L2および21M18 H9L2はマウス21M18抗体のヒト化形態である。
【0082】
ある種の態様において、本発明はDLL4アンタゴニストを提供し、このアンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合するDLL4抗体であり、かつこの抗体は、TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、およびRDYDYDVGMDY (SEQ ID NO:5)を含んだ重鎖CDR3を含む。いくつかの態様において、抗体は、

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3をさらに含む。いくつかの態様において、抗体は

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3を含む。
【0083】
ある種の態様において、本発明は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含み、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を提供する。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12またはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:10に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12もしくはSEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:6を含んだ重鎖可変領域およびSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:12を含んだ重鎖可変領域およびSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む。ある種の態様において、抗体は、SEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域およびSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む。
【0084】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は、SEQ ID NO:6を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体が結合するのと同じエピトープに結合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は、SEQ ID NO:12を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体が結合するのと同じエピトープに結合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)は、SEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体が結合するのと同じエピトープに結合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は抗体21M18と同じエピトープに結合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は抗体21M18 H7L2と同じエピトープに結合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は抗体21M18 H9L2と同じエピトープに結合する。
【0085】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)はヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、SEQ ID NO:6を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、SEQ ID NO:12を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、SEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10を含んだ軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、寄託番号PTA-8425を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体はヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、寄託番号PTA-8427を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体はヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、寄託番号PTA-8670を有するATCCに寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体と競合する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体はヒトDLL4の細胞外ドメインとの特異的結合について、競合的結合アッセイ法において競合する。
【0086】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはヒト抗体である。ヒト抗体は当技術分野において公知のさまざまな技法を用いて直接調製することができる。標的抗原に対して作製された抗体を産生する、インビトロで免疫されまたは免疫個体から単離された、不死化ヒトBリンパ球を作製することができる。あるいは、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから、ヒト抗体を選択することができる(例えば、Vaughan et al., 1996, Nat. Biotech., 14:309-314; Sheets et al., 1998, Proc. Nat'l. Acad. Sci., 95:6157-6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol, 227:381; およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581を参照のこと)。抗体ファージライブラリの作出および使用のための技法は同様に、米国特許第5,969,108号; 同第6,172,197号; 同第5,885,793号; 同第6,521,404号; 同第6,544,731号; 同第6,555,313号; 同第6,582,915号; 同第6,593,081号; 同第6,300,064号; 同第6,653,068号; 同第6,706,484号; および同第7,264,963号; ならびにRothe et al., 2008, J. Mol. Bio., 376: 1182-1200に記述されている。鎖シャッフリング(Marks et al., 1992, Bio/Technology, 10:779-783)のような、親和性成熟戦略が当技術分野において公知であり、高親和性ヒト抗体を作製するのに利用することができる。
【0087】
ヒト化抗体は同様に、免疫によって、内因性免疫グロブリンを産生せずに、ヒト抗体の全レパートリーを産生できる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含んだ遺伝子導入マウスにおいて作出することもできる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号; 同第5,545,806号; 同第5,569,825号; 同第5,625,126号; 同第5,633,425号; および同第5,661,016号に記述されている。
【0088】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストは二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2種類の異なるエピトープを特異的に認識し、かつそれに結合することができる。異なるエピトープは同じ分子内であっても、または異なる分子上であってもよい。いくつかの態様において、抗体は、第1の抗原標的を発現する細胞に細胞防御機構を集中させるために第1の抗原標的(例えば、DLL4)を特異的に認識かつ結合することができるだけでなく、白血球上のエフェクタ分子(例えば、CD2、CD3、CD28もしくはB7)またはFc受容体(例えば、CD64、CD32もしくはCD16)のような、第2の抗原標的も特異的に認識かつ結合することができる。いくつかの態様において、抗体を用いて、DLL4のような特定の標的抗原を発現する細胞に細胞傷害剤を向けることができる。これらの抗体は抗原結合腕、および細胞傷害剤または放射性核種、キレート剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTAもしくはTETAに結合する腕を保有する。ある種の態様において、二重特異性抗体はDLL4、ならびにVEGF、第2のNotchリガンド(例えば、Jagged1もしくはJagged2)、またはNotch1、Notch2、Notch3およびNotch4からなる群より選択される少なくとも一つのNotch受容体のいずれかに特異的に結合する。
【0089】
二重特異性抗体を作出するための技法は当業者によって知られており、例えばMillstein et al., 1983, Nature, 305:537-539; Brennan et al., 1985, Science, 229:81; Suresh et al, 1986, Methods in Enzymol, 121: 120; Traunecker et al., 1991, EMBO J., 10:3655-3659; Shalaby et al., 1992, J. Exp. Med., 175:217-225; Kostelny et al., 1992, J. Immunol, 148: 1547-1553; Gruber et al., 1994, J. Immunol., 152:5368; および米国特許第5,731,168号を参照されたい。二重特異性抗体は無傷の抗体または抗体断片であることができる。三価以上の結合価を有する抗体も意図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al., 1991, J. Immunol., 147:60)。したがって、ある種の態様において、DLL4に対する抗体は多重特異性である。
【0090】
ある種の態様において、本明細書において記述されるDDL4アンタゴニスト(例えば、抗体または他のポリペプチド)は単一特異性であってよい。例えば、ある種の態様において、抗体が含む一つまたは複数の抗原結合部位のそれぞれが、DLL4上の相同なエピトープを結合することができる(または結合する)。
【0091】
ある種の態様において、DDL4アンタゴニストは抗体断片である。抗体断片は無傷の抗体とは異なる機能または能力を有することができ; 例えば、抗体断片は増大した腫瘍浸透性を有することができる。無傷の抗体のタンパク質分解消化を含むが、これに限定されない、さまざまな技法が抗体断片の産生で公知である。いくつかの態様において、抗体断片は抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab')2断片を含む。いくつかの態様において、抗体断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作出されたFab断片を含む。他の態様において、抗体断片はパパインおよび還元剤による抗体分子の処理によって作出されたFab断片を含む。ある種の態様において、抗体断片は組み換えにより産生される。いくつかの態様において、抗体断片はFvまたは一本鎖Fv (scFv)断片を含む。Fab、FvおよびscFv抗体断片は大腸菌または他の宿主細胞内で発現させ、大腸菌または他の宿主細胞から分泌させることができ、したがって、これらの断片の大量産生が可能である。いくつかの態様において、抗体断片は、本明細書において論じられるように抗体ファージライブラリから単離される。例えば、Fab発現ライブラリの構築(Huse et al., 1989, Science, 246: 1275-1281)のための方法を用いて、DLL4、またはその誘導体、断片、類似体もしくは相同体に対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ有効な特定を可能にすることができる。いくつかの態様において、抗体断片は、米国特許第5,641,870号に記述されているように直鎖状の抗体断片である。ある種の態様において、抗体断片は単一特異性または二重特異性である。ある種の態様において、DDL4アンタゴニストはscFvである。DLL4に特異的な一本鎖抗体の産生のためにさまざまな技法を用いることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。
【0092】
さらに、とりわけ抗体断片の場合には、その血清中半減期を増大するために抗体を改変することが望ましい場合がある。これは、例えば、抗体断片中の適切な領域の変異による、抗体断片中へのサルベージ受容体結合エピトープの組み込みにより、またはペプチドタグにエピトープを組み込み、これを次いで抗体断片のいずれかの端にもしくは真ん中に(例えば、DNAもしくはペプチド合成によって)融合することにより行うことができる。
【0093】
本発明の目的のためには、改変抗体またはその断片が、抗体とDLL4との会合を提供する任意のタイプの可変領域を含みうることを理解されたい。この点で、可変領域は、液性反応の開始および所望の抗原(例えば、DLL4)に対する免疫グロブリンの作出を誘導できる、任意のタイプの哺乳動物に由来してもよい。したがって、改変抗体の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクなど)またはウサギ由来であってよい。いくつかの態様において、改変された免疫グロブリンの可変領域および定常領域の両方がヒトのものである。他の態様において、結合特性を改善するように、または分子の免疫原性を低減するように、適合性を有する抗体(通常、非ヒト供給源に由来する)の可変領域を遺伝子操作することができ、または特異的に調整することができる。この点に関して、移入アミノ酸配列を含めることにより、本発明において有用な可変領域をヒト化することができ、または他の方法で改変することができる。
【0094】
ある種の態様において、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインを、一つまたは複数のCDRの少なくとも一部の置き換えによって、必要な場合には、部分的なフレームワーク領域の置き換えおよび配列変更によって改変する。CDRは、フレームワーク領域が得られた抗体と同じクラス、さらには同じサブクラスの抗体に由来しうるが、CDRが、異なるクラスの抗体、好ましくは異なる種からの抗体に由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すためには、CDRの全てを、供与側の可変領域からのCDRの全てで置き換えることは必要でない場合がある。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するのに必要な残基を移すことのみが必要な場合がある。
【0095】
可変領域への変化にもかかわらず、当業者であれば、本発明の改変抗体は、天然のまたは変化していない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較して、望ましい生化学的特徴が得られるように、例えば、腫瘍局在性が増大、腫瘍浸透性が増大、血清中半減期が減少または血清中半減期が増大するように、定常領域ドメインの一つまたは複数の少なくとも一部が欠失されている、または他の方法で変えられている抗体(例えば、完全長抗体またはその抗原結合断片)を含むことを理解するだろう。いくつかの態様において、改変抗体の定常領域はヒト定常領域を含む。定常領域への改変は、一つまたは複数のドメイン内の一つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。本明細書において開示された改変抗体は、三つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2もしくはCH3)の一つまたは複数へのおよび/または軽鎖定常ドメイン(CL)への改変または修飾を含んでもよい。いくつかの態様において、一つまたは複数のドメインが改変抗体の定常領域から部分的または全体的に欠失される。いくつかの態様において、CH2ドメイン全体が除去されている(ΔCH2構築体)。いくつかの態様において、除かれた定常領域ドメインは、典型的には、存在しない定常領域によって付与される、ある程度の分子可撓性をもたらす短いアミノ酸スペーサー(例えば、10アミノ酸残基)により置換される。
【0096】
ある種の態様において、改変抗体は、CH3ドメインを抗体の蝶番領域へ直接融合するように遺伝子操作される。他の態様において、蝶番領域と改変されたCH2および/またはCH3ドメインの間にペプチドスペーサーが挿入される。例えば、CH2ドメインが欠失され、かつ残りのCH3ドメイン(改変または未改変)が蝶番領域に5〜20個のアミノ酸スペーサーを用いて連結された、構築体を発現させることができる。このようなスペーサーを付加して、定常ドメインの調節エレメントを遊離状態でアクセス可能に保つこと、または蝶番領域の可撓性を保つことを確実にすることができる。しかしながら、アミノ酸スペーサーは、場合によっては、免疫原性を有することが判明しており、構築体に対する望ましくない免疫反応を誘発する場合があることに留意すべきである。したがって、ある種の態様において、構築体に付加されるどのスペーサーも、改変抗体の望ましい生化学的特質を維持するように、比較的、非免疫原性であろう。
【0097】
いくつかの態様において、改変抗体は定常ドメインの部分的欠失または少数のもしくは単一のアミノ酸の置換だけを有することができる。例えば、CH2ドメインの選択域における単一のアミノ酸の変異は、Fc結合を大幅に低減し、それによって腫瘍局在性および/または腫瘍浸透性を増大させるのに十分でありうる。同様に、調節しようとする特定のエフェクタ機能(例えば、補体C1q結合)を制御する一つまたは複数の定常領域ドメインの部分を単純に欠失させることが望ましい場合がある。定常領域のこのような部分的欠失は、この定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能をそのままにしておく一方で、抗体の選択的特徴(血清中半減期)を改善しうる。さらに、上にも示唆したように、開示された抗体の定常領域は、得られる構築体のプロファイルを向上させる、一つまたは複数のアミノ酸の変異または置換によって改変されてもよい。この点で、改変抗体の構成および免疫原性プロファイルを実質的に維持する一方で、保存された結合部位(例えば、Fc結合活性)によって提供される活性を妨害することが可能な場合がある。ある種の態様において、改変抗体は、エフェクタ機能の減少もしくは増加などの望ましい特徴を増強するように、またはさらに多くの細胞毒素もしくは糖鎖の付着をもたらすように、定常領域への一つまたは複数のアミノ酸の付加を含んでもよい。
【0098】
定常領域がいくつかのエフェクタ機能を媒介することが当技術分野において公知である。例えば、補体のC1成分と(抗原に結合した) IgGまたはIgM抗体のFc領域が結合すると補体系が活性化される。補体活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体活性化はまた炎症反応を刺激し、自己免疫過敏にも関与する場合がある。さらに、抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)を発現している細胞に結合することができる。IgG (γ受容体)、IgE (ε受容体)、IgA (α受容体)およびIgM (μ受容体)を含む、異なるクラスの抗体に特異的ないくつかのFc受容体がある。抗体と、細胞表面上のFc受容体が結合すると、貪食および抗体コーティング粒子の破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体コーティング標的細胞の溶解(ADCC)、炎症メディエータの放出、胎盤通過および免疫グロブリン産生の制御を含む、いくつかの重要かつ多様な生物学的反応が誘発される。
【0099】
ある種の態様において、DLL4抗体は改変されたエフェクタ機能をもたらし、これが、今度は、投与された抗体の生物学的プロファイルに影響を与える。例えば、いくつかの態様において、定常領域ドメインの(点突然変異または他の手段を通じた)欠失または不活性化は、血中改変抗体(例えば、DLL4抗体)のFc受容体結合を低減し、それによって腫瘍局在性および/または浸透性を増大しうる。他の態様において、定常領域の修飾は抗体の血清中半減期を増大または低減する。いくつかの態様において、定常領域を修飾して、ジスルフィド結合またはオリゴサッカライド部分を除去し、それによって腫瘍局在性および/または浸透性の増強を可能にする。
【0100】
ある種の態様において、DLL4抗体は一つまたは複数のエフェクタ機能を有さない。いくつかの態様において、抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有さず、および/または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有さない。ある種の態様において、抗体は、Fc受容体および/または補体因子に結合しない。ある種の態様において、抗体はエフェクタ機能を有さない。
【0101】
本発明は、本明細書において記載される、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体、またはその抗体断片に実質的に相同な変種および等価体をさらに包含する。これらは、例えば、保存的置換変異、すなわち、類似のアミノ酸による一つまたは複数のアミノ酸の置換を含みうる。
【0102】
したがって、本発明は、ヒトDLL4の細胞外ドメインに結合する抗体を作製するための方法を提供する。いくつかの態様において、DLL4に結合する抗体を作製するための方法は、ハイブリドーマ技法を使用する段階を含む。いくつかの態様において、この方法は、免疫用の抗原としてマウスDLL4またはヒトDLL4の細胞外ドメインを使用する段階を含む。いくつかの態様において、DLL4に結合する抗体を作製する方法は、ヒトファージライブラリをスクリーニングする段階を含む。本発明は、DLL4に結合する抗体を特定する方法をさらに提供する。いくつかの態様において、抗体は、フローサイトメトリー(FACS)を用いてDLL4との結合をスクリーニングすることにより特定される。いくつかの態様において、抗体はヒトDLL4との結合をスクリーニングされる。いくつかの態様において、抗体はマウスDLL4との結合をスクリーニングされる。いくつかの態様において、抗体は、DLL4誘導性のNotch活性化の阻害または遮断をスクリーニングすることにより特定される。いくつかの態様において、DLL4はヒトDLL4である。いくつかの態様において、NotchはヒトNotch1、Notch2、Notch3またはNotch4である。
【0103】
ある種の態様において、本明細書において記述の抗体は単離される。ある種の態様において、本明細書において記述の抗体は実質的に純粋である。
【0104】
ある種の抗DLL4抗体は、例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0187532号に記述されている。ある種のさらなる抗DLL4抗体は、例えば、国際特許公開番号WO 2008/091222およびWO 2008/0793326、ならびに米国特許出願公開第2008/0014196号; 同第2008/0175847号; 同第2008/0181899号; および同第2008/0107648号に記述されており、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
本発明のいくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはポリペプチドである。ポリペプチドは、DLL4に結合する組み換えポリペプチド、天然ポリペプチドまたは合成ポリペプチドであることができる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、DLL4に結合する抗体またはその断片を含む。タンパク質の構造または機能にほとんど影響を与えずにポリペプチドのいくつかのアミノ酸配列を変化させることができることを当業者は認識するであろう。したがって、ポリペプチドは、DLL4タンパク質に対する実質的な結合活性を示すポリペプチドの変化をさらに含む。いくつかの態様において、ポリペプチドのアミノ酸配列の変化は欠失、挿入、逆位、繰り返し、および/または型置換を含む。
【0106】
ポリペプチドおよびその変種は、通常、タンパク質の部分にはない、さらなる化学的部分を含有するようにさらに改変することができる。誘導体化部分は、ポリペプチドの溶解度、生物学的半減期または吸収を改善することができる。この部分はまた、ポリペプチドおよび変種の任意の望ましくない副作用を低減または除外することもできる。そのような化学的部分の概説は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, University of the Sciences in Philadelphia, 2005のなかで見出すことができる。
【0107】
本明細書において記述される単離されたポリペプチドは、当技術分野において公知の任意の適当な方法によって産生することができる。そのような方法は、直接的なタンパク質合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列の構築と、適当な宿主におけるこれらの配列の発現に及ぶ。いくつかの態様において、DNA配列は、組み換え技術を用いて、関心対象の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離または合成することによって構築される。任意で、この配列は、その機能的変種を得るために、部位特異的変異誘発によって変異誘発されてもよい。
【0108】
いくつかの態様において、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成機を用いた化学合成によって構築されうる。オリゴヌクレオチドは、望ましいポリペプチドのアミノ酸配列と、関心対象の組み換えポリペプチドが産生される宿主細胞に好ましいコドンを選択することに基づいて設計することができる。標準的な方法を適用して、関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を用いて、逆翻訳(back-translate)した遺伝子を構築することができる。さらに、特定のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、望ましいポリペプチドの一部をコードする、いくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次いで、核酸連結することができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には、相補的なアッセンブリのための5'または3'突出部を含有する。
【0109】
アッセンブル(合成、部位特異的変異誘発または別の方法によって)されたら、関心対象の特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、望ましい宿主におけるポリペプチドの発現に適した発現制御配列に機能的に連結することができる。適切なアッセンブリは、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および/または適当な宿主での生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。当技術分野において周知のように、宿主におけるトランスフェクトされた遺伝子の高い発現レベルを得るために、遺伝子は、選択された発現宿主において機能する転写発現制御配列および翻訳発現制御配列に機能的に連結されなければならない。
【0110】
ある種の態様において、ポリペプチドもしくは抗体、またはその断片のような、DLL4アンタゴニストをコードするDNAを増幅および発現するために、組み換え発現ベクターが用いられる。例えば、組み換え発現ベクターは、哺乳動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子または昆虫遺伝子に由来する適当な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントに機能的に連結された、抗DLL4抗体またはその断片のポリペプチド鎖をコードする合成DNA断片またはcDNAに由来するDNA断片を有する複製可能なDNA構築体であることができる。転写単位は、一般的に、(1) 遺伝子発現に関与する調節エレメント、例えば、転写プロモーターおよび/またはエンハンサー、(2) mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造配列またはコード配列、ならびに(3) 適切な転写および翻訳の開始配列および終結配列のアッセンブリを含む。調節エレメントは、転写を制御するためのオペレーター配列を含むことがある。通常、複製起点によって付与される、宿主において複製する能力、および形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子をさらに組み込むことができる。DNA領域は、それらが互いに機能的に関連している場合に、「機能的に連結され」ている。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチド分泌に関与する前駆体としてポリペプチドが発現されるのであれば、ポリペプチドDNAに機能的に連結されており; プロモーターは、コード配列の転写を制御すれば、コード配列に機能的に連結されており; またはリボソーム結合部位は、コード配列が翻訳されるように配置されていれば、コード配列に機能的に連結されている。酵母発現系における使用を目的とした構造エレメントには、宿主細胞により翻訳されるタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。あるいは、組み換えタンパク質がリーダー配列も輸送配列もなく発現される場合、N末端メチオニン残基を含むことがある。この残基は任意で、最終産物を得るために、発現された組み換えタンパク質から後に切断されてもよい。
【0111】
発現ベクターおよび制御エレメントの選択は宿主の選択に依る。多種多様の発現宿主/ベクターの組み合わせを利用することができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含んだベクターが含まれる。細菌宿主に有用な発現ベクターには、公知の細菌プラスミド、例えば、pCR1、pBR322、pMB9およびその誘導体を含む大腸菌に由来するプラスミド、さらに広い宿主域のプラスミド、例えば、M13、ならびに他の繊維状一本鎖DNAファージが含まれる。
【0112】
DLL4アンタゴニストポリペプチドもしくは抗体(または抗原として使用するDLL4タンパク質)の発現に適した宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下にある、原核生物、酵母、昆虫または高等真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌または杆菌が含まれる。高等真核細胞には、下記に記述の哺乳動物に由来する樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系も利用することができる。
【0113】
組み換えタンパク質を発現させるために、さまざまな哺乳動物培養系または昆虫細胞培養系が用いられる。哺乳動物細胞における組み換えタンパク質の発現は、このようなタンパク質がおおむね正しく折り畳まれ、適切に修飾され、かつ完全に機能するので好まれることもある。適当な哺乳動物宿主細胞株の例としては、COS-7 (サル腎臓由来)細胞株、L-929 (マウス線維芽細胞由来)細胞株、C127 (マウス乳腺腫瘍由来)細胞株、3T3 (マウス線維芽細胞由来)細胞株、CHO (チャイニーズハムスター卵巣由来)細胞株、HeLa (ヒト子宮頸癌由来)細胞株およびBHK (ハムスター腎臓線維芽細胞由来)細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、発現させようとする遺伝子に連結される適当なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに他の5'または3'隣接非転写配列、ならびに5'または3'非翻訳配列、例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位、ならびに転写終結配列を含んでもよい。昆虫細胞において異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers, 1988, Bio/Technology, 6:47により概説されている。
【0114】
形質転換宿主により産生されたタンパク質は、任意の適当な方法にしたがって精製することができる。そのような方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製のための他の任意の標準的な技法が含まれる。適切なアフィニティーカラム上での通過による容易な精製を可能にするために、アフィニティータグ、例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼをタンパク質に付着させることができる。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴およびX線結晶学のような技法を用いて物理的に特徴付けることもできる。
【0115】
例えば、最初に、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて、組み換えタンパク質を培地に分泌する系からの上清を濃縮することができる。濃縮段階後に、濃縮物を適当な精製マトリックスに適用することができる。いくつかの態様において、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基材を利用することができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製において一般に利用される他のタイプでもよい。いくつかの態様において、陽イオン交換段階を利用することができる。適当な陽イオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含むさまざまな不溶性のマトリックスが含まれる。いくつかの態様において、セラミックハイドロキシアパタイトを含むがこれに限定されない、ハイドロキシアパタイト(CHT)媒体を利用することができる。いくつかの態様において、タンパク質をさらに精製するために、疎水性RP-HPLC媒体(例えば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲル)を利用した、一つまたは複数の逆相HPLC段階を利用することができる。均一な組み換えタンパク質を得るために、前記の精製段階の一部または全部を、さまざまな組み合わせで、利用することができる。
【0116】
いくつかの態様において、細菌培養において産生された組み換えタンパク質は、例えば、最初に、細胞ペレットから抽出し、その後に、一回または複数回の濃縮、塩析、水性イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィー段階を行うことによって単離することができる。最後の精製段階にはHPLCを利用することができる。組み換えタンパク質の発現において利用される微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含む任意の従来法によって破壊することができる。
【0117】
抗体および他のタンパク質の精製のための当技術分野における公知の方法にはまた、例えば、米国特許出願公開第2008/0312425号; 同第2008/0177048号; および同第2009/0187005号に記述の方法が含まれる。
【0118】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストは、抗体ではないポリペプチドである。高親和性で、タンパク質標的に結合する非抗体ポリペプチドを特定および産生するためのさまざまな方法が当技術分野において公知である。例えば、Skerra, 2007, Curr. Opin. Biotechnol., 18:295-304; Hosse et al., 2006, Protein Science, 15: 14-27; Gill et al., 2006, Curr. Opin. Biotechnol, 17:653-658; Nygren, 2008, FEBS J., 275:2668-76; およびSkerra, 2008, FEBS J., 275:2677-83を参照されたい。ある種の態様において、ファージディスプレイ技術を用いて、DLL4アンタゴニストポリペプチドを産生および/または特定することができる。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストポリペプチドは、プロテインA、プロテインG、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサス反復ドメインおよびチオレドキシンからなる群より選択されるタイプのタンパク質足場を含む。
【0119】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は、いくつかの結合型(例えば、免疫結合体もしくは放射性結合体)または非結合型のいずれか一つで使用することができる。ある種の態様において、抗体は、悪性細胞または癌細胞を排除するために、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞毒性(ADCC)を含む対象の天然の防御機構を生かすために非結合型で用いられる。
【0120】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体またはポリペプチド)は細胞傷害剤に結合される。いくつかの態様において、細胞傷害剤は、メトトレキセート、アドリアマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤を含むが、これらに限定されない、化学療法剤である。いくつかの態様において、細胞傷害剤は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、リストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセンを含むが、これらに限定されない、細菌、真菌、植物もしくは動物に由来する酵素活性を有する毒素、またはその断片である。ある種の態様において、細胞傷害剤は、放射線結合体または放射線結合抗体を産生するための放射性同位体である。放射性結合抗体の産生のために、90Y、125I、131I、123I、111In、131In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Reおよび212Biを含むが、これらに限定されない、さまざまな放射性核種を利用することができる。抗体と一つまたは複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコテンおよびCC1065、ならびにこれらの毒素の毒素活性を有する誘導体との結合体も用いることができる。抗体と細胞傷害剤の結合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジジチオール(pyridyidithiol))プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能基誘導体(例えば、ジメチルアジプイミダートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリレン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などのさまざまな二官能基性タンパク質カップリング剤を用いて作出される。
【0121】
ヘテロ結合体抗体も本発明の範囲内である。ヘテロ結合体抗体は2種類の共有結合した抗体から構成される。例えば、免疫細胞を不必要な細胞に標的化するために、そのような抗体が提案されている(米国特許第4,676,980号)。この抗体は、架橋剤が関与する方法を含む、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製できることが企図される。
【0122】
III. ポリヌクレオチド
ある種の態様において、本発明は、ヒトDLL4に特異的に結合するポリペプチドまたはこのようなポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチドを含んだポリヌクレオチドを包含する。「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドのコード配列だけを含むポリヌクレオチド、ならびにさらなるコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。例えば、本発明は、ヒトDLL4に対する抗体をコードする、またはこのような抗体の断片をコードする核酸配列を含んだポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドはRNAの形態であってもよく、DNAの形態であってもよい。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二本鎖または一本鎖でもよく、一本鎖ならコード鎖または非コード(アンチセンス)鎖でもよい。
【0123】
ある種の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を補助するポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)と同じ読み枠で融合した、成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、成熟型のポリペプチドを産生するために宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有する場合がある。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質とさらなる5'アミノ酸残基であるプロタンパク質をコードすることもできる。プロ配列を有する成熟タンパク質がプロタンパク質であり、不活性型のタンパク質である。プロ配列が切断されると、活性のある成熟タンパク質が残る。
【0124】
ある種の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、コードされるポリペプチドの精製および/または特定を可能にするマーカー配列と同じ読み枠で融合した、成熟ポリペプチドのコード配列を含む。例えば、細菌宿主の場合、マーカー配列は、マーカーと融合した成熟ポリペプチドを精製するための、pQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグでもよく、または哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が用いられる場合、マーカー配列は、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来する血球凝集素(HA)タグでもよい。いくつかの態様において、マーカー配列はFLAGタグ、つまり配列DYKDDDK (SEQ ID NO:18)のペプチドであり、これを他のアフィニティータグとともに用いてもよい。
【0125】
本発明はさらに、例えば、断片、類似体および/または誘導体をコードする前記ポリヌクレオチドの変種に関する。
【0126】
ある種の態様において、本発明は、本明細書において記述されるヒトDLL4に対する抗体またはその断片を含んだポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも80%同一の、少なくとも85%同一の、少なくとも90%同一の、少なくとも95%同一の、およびいくつかの態様において、少なくとも96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含んだ単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0127】
本明細書において用いられる場合、参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドという語句は、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり点突然変異を5個までポリヌクレオチド配列が含むことができる以外は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味するように意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列のヌクレオチドの5%までが欠失されても、または別のヌクレオチドで置換されてもよく、あるいは参照配列における全ヌクレオチドの5%までのいくつかのヌクレオチドが参照配列中に挿入されてもよい。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5'もしくは3'末端の位置または末端位置間の任意の場所で行われてもよく、参照配列の中のヌクレオチドの間に個々に、あるいは参照配列内の一つもしくは複数の近接するグループの中に分散されてもよい。
【0128】
ポリヌクレオチド変種は、コード領域、非コード領域、またはその両方の変化を含有してもよい。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド変種は、サイレントな置換、付加、または欠失を生じるが、コードされるポリペプチドの性質または活性を変えない変化を含有する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド変種は、遺伝暗号の縮重による「サイレントな」置換を含有する。ポリヌクレオチド変種は、さまざまな理由で、例えば、特定の宿主に向けてコドン発現を最適化するように産生することができる(例えば、ヒトmRNAのコドンを大腸菌のような細菌宿主に好まれるコドンに変える)。
【0129】
ある種の態様において、本明細書において記述のポリヌクレオチドは単離される。ある種の態様において、本明細書において記述のポリヌクレオチドは実質的に純粋である。
【0130】
本明細書において記述されるポリヌクレオチドを含んだベクターおよび細胞も提供される。
【0131】
IV. 使用方法および薬学的組成物
本発明は、本明細書において記述されるDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)を用いて腫瘍増殖を阻害するための方法を提供する。本発明は、DLL4アンタゴニストの治療上有効量を、それを必要としているヒト対象に投与する段階を含み、腫瘍がK-ras変異を含む、腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。いくつかの態様において、腫瘍は二つ以上のK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。ある種の態様において、K-ras変異はコドン番号12中、コドン番号13中、コドン番号59中またはコドン番号61中である。いくつかの態様において、コドン番号12中のK-ras変異はグリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異またはグリシンからセリンへの変異である。いくつかの態様において、コドン番号12中のK-ras変異はグリシンからアスパラギン酸への変異である。他の態様において、コドン番号12中のK-ras変異はグリシンからバリンへの変異である。いくつかの態様において、コドン番号13中のK-ras変異はグリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異またはグリシンからセリンへの変異である。いくつかの態様において、コドン番号13中のK-ras変異はグリシンからアスパラギン酸への変異である。いくつかの態様において、コドン番号59中のK-ras変異はアラニンからグリシンへの変異、アラニンからバリンへの変異およびアラニンからグルタミン酸への変異である。他の態様において、コドン番号61中のK-ras変異はグルタミンからロイシンへの変異、グルタミンからプロリンへの変異、グルタミンからアルギニンへの変異およびグルタミンからヒスチジンへの変異である。いくつかの態様において、コドン番号61中のK-ras変異はグルタミンからヒスチジンへの変異である。
【0132】
いくつかの態様において、K-ras変異を含んだ腫瘍は少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブ(TARCEVA)である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブ(IRESSA)である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体または抗体断片である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブ(ERBITUX)またはパニツムマブ(VECTIBIX)である。
【0133】
ある種の態様において、腫瘍増殖を阻害する方法は、インビトロで腫瘍細胞をDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)と接触させる段階を含む。例えば、細胞表面上にDLL4を発現する不死化細胞株または癌細胞株を、腫瘍細胞増殖を阻害するように抗体または他の薬剤が添加されている培地中で培養する。いくつかの態様において、腫瘍細胞を患者サンプル(例えば、組織生検、胸水または血液サンプル)から単離し、腫瘍増殖を阻害するようにDLL4アンタゴニストが添加されている培地中で培養する。
【0134】
いくつかの態様において、腫瘍増殖を阻害する方法は、インビボで腫瘍または腫瘍細胞をDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)と接触させる段階を含む。ある種の態様において、腫瘍または腫瘍細胞をDLL4アンタゴニストと接触させる段階は、動物モデルにおいて行われる。例えば、DLL4アンタゴニストは、DLL4を発現する異種移植腫瘍を有する免疫不全マウス(例えば、NOD/SCIDマウス)に投与される。DLL4アンタゴニストの投与後、腫瘍増殖の阻害についてマウスを観察する。いくつかの態様において、癌幹細胞を、例えば、組織生検、胸水または血液サンプルのような患者サンプルから単離し、免疫不全マウスに注射し、次いで、腫瘍増殖を阻害するようにこのマウスにDLL4アンタゴニストを投与する。いくつかの態様において、腫瘍増殖を阻止するように、DLL4アンタゴニストは、動物への腫瘍形成性細胞の導入と同時に、またはその直後に投与される。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、腫瘍形成性細胞が特定の大きさに成長した後に、治療用物質として投与される。
【0135】
本発明はさらに、本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を、それを必要としているヒト対象に投与する段階を含み、腫瘍が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である、腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。いくつかの態様において、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である腫瘍は、少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。
【0136】
ある種の態様において、腫瘍増殖を阻害する方法は、DLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む。ある種の態様において、対象はヒトである。ある種の態様において、対象は、K-ras変異を含んだ腫瘍を有する。ある種の態様において、対象は、腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18のヒト化型である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0137】
ある種の態様において、腫瘍は、DLL4アンタゴニストまたは抗体が結合するDLL4を発現する。ある種の態様において、腫瘍はDLL4を過剰発現する。ある種の態様において、腫瘍は、DLL4が相互作用するNotch受容体(例えば、Notch1、Notch2、Notch3および/またはNotch4)を発現する。
【0138】
ある種の態様において、腫瘍は、結腸直腸腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、卵巣腫瘍、肝臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、胃腸腫瘍、黒色腫、子宮頚腫瘍、膀胱腫瘍、グリア芽細胞腫および頭頸部腫瘍からなる群より選択される腫瘍である。いくつかの態様において、K-ras変異を含んだ腫瘍は、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍または多発性骨髄腫である。いくつかの態様において、腫瘍は結腸直腸腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は膵臓腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は肺腫瘍である。
【0139】
本発明はさらに、本明細書において記述されるDLL4アンタゴニストを用いて癌を処置するための方法を提供する。ある種の態様において、癌は、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)が結合するDLL4を発現している細胞によって特徴付けられる。ある種の態様において、癌は、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)がDLL4誘導性のNotch活性化および/またはシグナル伝達を妨害する、Notch受容体を発現している細胞によって特徴付けられる。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4に結合し、かつ癌の増殖を阻害または低減する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4に結合し、かつ癌の増殖の再発を阻害または低減する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4に結合し、DLL4/Notch相互作用を妨害し、かつ癌の増殖を阻害または低減する。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4に結合し、Notchシグナル伝達を阻害し、かつ癌の増殖を阻害または低減する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4に結合し、かつ血管形成を阻害または低減する。ある種の態様において、血管形成の阻害および/または低減は癌の増殖を阻害または低減する。
【0140】
本発明は、(a) 対象の癌がK-ras変異を含むことを判定する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象(例えば、処置を必要としている対象)に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。ある種の態様において、対象は癌性腫瘍を有する。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0141】
本発明はさらに、(a) K-ras変異を含む癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づき、処置に向けて対象を選択する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。ある種の態様において、対象は癌性腫瘍を有する。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0142】
本発明はさらに、(a) K-ras変異を含んだ癌を有する対象を特定する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。ある種の態様において、対象は癌性腫瘍を有する。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0143】
いくつかの態様において、K-ras変異を含んだ腫瘍は少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブ(TARCEVA)である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブ(IRESSA)である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体または抗体断片である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブ(ERBITUX)またはパニツムマブ(VECTIBIX)である。
【0144】
本発明はさらに、(a) 対象の癌が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性であることを判定する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブまたはパニツムマブである。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0145】
本発明はさらに、(a) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づき、処置に向けて対象を選択する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブまたはパニツムマブである。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0146】
本発明はさらに、(a) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を有する対象を特定する段階、および(b) 本明細書において記述のDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、癌は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブまたはパニツムマブである。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0147】
本発明はさらに、DLL4アンタゴニストによる処置に向けてヒト対象を選択する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は、対象が、(a) K-ras変異を含んだ癌、または(b) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を有するかどうか判定する段階を含み、対象が(a)および/または(b)を有するなら、対象は本明細書において記述のDLL4アンタゴニストによる処置に向けて選択される。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、K-ras変異は活性化変異である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は小分子化合物阻害剤である。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの態様において、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体である。いくつかの態様において、抗EGFR抗体はセツキシマブまたはパニツムマブである。ある種の態様において、対象は癌または腫瘍が除去されている。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H7L2である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18 H9L2である。
【0148】
ある種の態様において、癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、卵巣癌、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、前立腺癌、胃腸癌、黒色腫、子宮頸癌、膀胱癌、グリア芽細胞腫、および頭頸部癌からなる群より選択される癌である。ある種の態様において、癌は膵臓癌である。ある種の態様において、癌は結腸直腸癌である。ある種の態様において、癌は乳癌である。ある種の態様において、癌は前立腺癌である。ある種の態様において、癌は肺癌である。
【0149】
野生型ヒトK-Rasの配列は当技術分野において公知である(例えば、アクセッション番号NP_203524)。腫瘍または癌がK-ras変異を含むかどうか判定するための方法は、K-rasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を評価することによって、K-rasタンパク質のアミノ酸配列を評価することによって、または推定上のK-ras変異タンパク質の特徴を評価することによって行うことができる。
【0150】
K-rasヌクレオチド配列中の変異を検出するための方法は、当業者によって知られている。これらの方法は、ポリメラーゼ連鎖反応-制限断片長多型(PCR-RFLP)アッセイ法、ポリメラーゼ連鎖反応-一本鎖高次構造多型(PCR-SSCP)アッセイ法、リアルタイムPCRアッセイ法、PCR配列決定法、変異体対立遺伝子特異的PCR増幅(MASA)アッセイ法、直接配列決定法、プライマー伸長反応、電気泳動、オリゴヌクレオチド核酸連結アッセイ法、ハイブリダイゼーションアッセイ法、TaqManアッセイ法、SNP遺伝子型決定アッセイ法、高解像度融解アッセイ法およびマイクロアレイ分析を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、サンプルはリアルタイムPCR法によりK-ras変異について評価することができる。リアルタイムPCR法では、最も一般的な変異(例えば、コドン番号12、13、59および/または61中の変異)に特異的な蛍光プローブが用いられる。変異が存在する場合、プローブが結合し、蛍光が検出される。いくつかの態様において、K-ras変異はK-ras遺伝子中の特定領域(例えば、第2エクソンおよび/または第3エクソン)の直接配列決定法を用いて特定することができる。この技法によって、配列決定された領域における可能な全ての変異が特定されよう。
【0151】
K-rasタンパク質における変異を検出するための方法は、当業者によって知られている。これらの方法は、変異タンパク質に特異的な結合剤(例えば、抗体)を用いたK-ras変異体の検出、タンパク質電気泳動およびウエスタンブロッティング、ならびに直接ペプチド配列決定法を含むが、これらに限定されることはない。
【0152】
腫瘍または癌がK-ras変異を含むかどうか判定するための方法では、種々のサンプルを用いることができる。いくつかの態様において、サンプルは、腫瘍または癌を有する対象から採取される。いくつかの態様において、サンプルは、少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌または腫瘍を有する対象から採取される。いくつかの態様において、サンプルは新鮮な腫瘍/癌サンプルである。いくつかの態様において、サンプルは凍結された腫瘍/癌サンプルである。いくつかの態様において、サンプルはホルマリン固定パラフィン包埋サンプルである。いくつかの態様において、サンプルは細胞溶解物に加工処理される。いくつかの態様において、サンプルはDNAまたはRNAに加工処理される。
【0153】
本発明は同様に、細胞をDLL4アンタゴニストの有効量と接触させる段階を含む、細胞におけるNotchシグナル伝達を阻害する方法を提供する。ある種の態様において、細胞は腫瘍細胞である。いくつかの態様において、腫瘍細胞は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、腫瘍細胞は少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である。ある種の態様において、この方法は、細胞をDLL4アンタゴニストと接触させる段階が対象にDLL4アンタゴニストの治療上有効量を投与する段階を含むインビボの方法である。いくつかの態様において、この方法はインビトロまたはエクスビボの方法である。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはNotchシグナル伝達を妨害する。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストはDLL4/Notch相互作用を妨害する。ある種の態様において、Notchシグナル伝達はNotch1、Notch2、Notch3および/またはNotch4によるシグナル伝達である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体である。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは抗体21M18、21M18 H7L2または21M18 H9L2である。
【0154】
さらに、本発明は、対象にDLL4アンタゴニストの治療上有効量を投与する段階を含む、対象における腫瘍の腫瘍形成能を低減する方法を提供する。いくつかの態様において、腫瘍は少なくとも一つのK-ras変異を含む。ある種の態様において、腫瘍は癌幹細胞を含む。いくつかの態様において、癌幹細胞は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、癌幹細胞は少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である。ある種の態様において、腫瘍における癌幹細胞の頻度がDLL4アンタゴニストの投与によって低減される。したがって、本発明は同様に、腫瘍をDLL4アンタゴニスト(例えば、抗DLL4抗体)の有効量と接触させる段階を含む、少なくとも一つのK-ras変異を含んだ腫瘍における癌幹細胞の頻度を低減する方法を提供する。
【0155】
本発明は同様に、疾患または障害が幹細胞および/または前駆細胞のレベルの増大によって特徴付けられる、対象における疾患または障害を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、幹細胞および/または前駆細胞は少なくとも一つのK-ras変異を含む。いくつかの態様において、この処置方法は、対象にDLL4アンタゴニスト、ポリペプチドまたは抗体の治療上有効量を投与する段階を含む。
【0156】
本発明はさらに、本明細書において記述されるDLL4アンタゴニストの一つまたは複数を含んだ薬学的組成物を提供する。ある種の態様において、薬学的組成物はさらに、薬学的に許容される媒体を含む。これらの薬学的組成物には対象(例えば、ヒト患者)における腫瘍増殖の阻害および癌の処置において用途がある。
【0157】
ある種の態様において、本発明の精製された抗体または薬剤と薬学的に許容される媒体(例えば、担体または賦形剤)を組み合わせることによって、保管および使用のための処方物が調製される。適当な薬学的に許容される媒体には、無毒の緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸緩衝液; 塩、例えば、塩化ナトリウム; アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質; 防腐剤、例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、ゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾール; 低分子量ポリペプチド(例えば、約10未満のアミノ酸残基); タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン; 親水性重合体、例えば、ポリビニルピロリドン; アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン; 炭水化物、例えば、単糖、二糖、グルコース、マンノース、またはデキストリン; キレート剤、例えば、EDTA; 糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール; 塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム; 金属錯体、例えばZn-タンパク質錯体; および非イオン界面活性剤、例えばTWEENまたはポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されることはない。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, University of the Sciences in Philadelphia, 2005)。
【0158】
ある種の態様において、抗DLL4アンタゴニストまたは抗体は50 mMヒスチジン、100 mM塩化ナトリウム、45 mMスクロースおよび0.01% (w/v)ポリソルベート20の溶液中10 mg/mLの濃度、ならびに6.0に調整したpHで用いるように調製することができる。
【0159】
本発明の薬学的組成物は、局所処置または全身処置のための多様な手法で投与することができる。投与は表皮パッチもしくは経皮パッチ、軟膏、ローション剤、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレイ、液剤および散剤による局所投与; 噴霧器による投与を含む、散剤もしくはエアロゾル剤の吸入もしくはガス注入による肺投与、気管内投与および鼻腔内投与; 経口投与; または静脈内投与、動脈内投与、腫瘍内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与(例えば、注射もしくは注入)もしくは頭蓋内投与(例えば、くも膜下腔内投与もしくは脳室内投与)を含む、非経口投与でもよい。
【0160】
治療用処方物は単位剤形でもよい。このような処方物には、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解した溶液もしくは懸濁液、または坐剤が含まれる。錠剤などの固形組成物では、主要な有効成分が薬学的担体と混合されている。従来の錠剤化成分には、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはゴム、および他の希釈剤(例えば、水)が含まれる。本発明の化合物またはその無毒な薬学的に許容される塩の均一混合物を含む固体の予備処方組成物を形成するために、これらを用いることができる。次いで、固体予備処方組成物を、上述の型の単位剤形へ細分する。持効性の長所を与える剤形を提供するために、処方物または組成物の錠剤、丸剤などをコーティングするか、他の方法で調合することができる。例えば、錠剤または丸剤は、外部成分によって覆われた内部組成物を含むことができる。さらに、崩壊に抵抗するよう働いて、内部成分にそのまま胃を通過させるかまたはその放出を遅らせることができる腸溶層によって、二つの成分を分離することができる。このような腸溶層またはコーティングにはさまざまな材料を用いることができる。このような材料は、いくつかのポリマー酸、ならびにポリマー酸と、セラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物を含む。
【0161】
本明細書において記述される抗体または薬剤をマイクロカプセル中に封入することもできる。このようなマイクロカプセルは、例えば、コアセルベーション技術または界面重合法によって、それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, University of the Sciences in Philadelphia, 2005に記述されているマクロエマルジョン中に調製される。
【0162】
ある種の態様において、薬学的処方物には、リポソームと複合体化された本発明のDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)が含まれる。リポソームを作出するための方法は、当業者に公知である。例えば、いくつかのリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発によって生成することができる。規定の孔径のフィルタに通してリポソームを押し出すことにより、所望の直径を有するリポソームが得られる。
【0163】
ある種の態様において、徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適当な例には、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)を含む、固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、成形された物品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形をしている。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)などのヒドロゲル、ポリラクチド、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタメートの共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標) (乳酸-グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸共重合体、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0164】
ある種の態様において、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)を投与する段階に加えて、前記の方法または処置は、少なくとも一種のさらなる治療剤を投与する段階をさらに含む。さらなる治療剤はDLL4アンタゴニストの投与の前に、DLL4アンタゴニストの投与と同時に、および/またはDLL4アンタゴニストの投与の後に投与することができる。DLL4アンタゴニストおよびさらなる治療剤を含む薬学的組成物も提供される。いくつかの態様において、少なくとも一種のさらなる治療剤は1種、2種、3種またはそれ以上のさらなる治療剤を含む。
【0165】
少なくとも2種の治療剤による併用療法では、異なる作用機序によって働く薬剤を用いることが多いが、これは必要とされない。異なる作用機序を有する薬剤を用いた併用療法は、相加効果または相乗効果をもたらしうる。併用療法は単剤療法において用いられるよりも各薬剤の用量を低くすることを可能にし、それによって毒性副作用を低減しうる。併用療法は、耐性癌細胞が発現する可能性を減らしうる。
【0166】
DLL4アンタゴニストおよびさらなる治療剤の組み合わせを、任意の順番で、または同時に投与できることが理解されよう。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、第2の治療剤による処置を以前に受けたことがある患者に投与される。ある種の他の態様において、DLL4アンタゴニストおよび第2の治療剤は、実質的に同時にまたは時を同じくして投与される。例えば、対象は、第2の治療剤(例えば、化学療法)による一連の処置を受けると同時に、DLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)を投与されることができる。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストは、第2の治療剤による処置の1年以内に投与される。ある種の代替的な態様において、DLL4アンタゴニストは、第2の治療剤による任意の処置の10ヶ月以内、8ヶ月以内、6ヶ月以内、4ヶ月以内または2ヶ月以内に投与される。ある種の他の態様において、DLL4アンタゴニストは、第2の治療剤による任意の処置の4週間以内、3週間以内、2週間以内または1週間以内に投与される。いくつかの態様において、DLL4アンタゴニストは、第2の治療剤による任意の処置の5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または1日以内に投与される。さらに、数時間または数分のうちに(すなわち、実質的に同時に)、2種(またはそれ以上)の薬剤または処置を対象に投与できることが理解されよう。
【0167】
治療剤の有用なクラスには、例えば、抗チューブリン剤、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、白金錯体、例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)およびトリ-核白金錯体、ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝拮抗物質、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソ尿素、プラチノール、プリン代謝拮抗物質、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが含まれる。ある種の態様において、第2の治療剤は、代謝拮抗物質、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ阻害剤または血管新生阻害剤である。
【0168】
DLL4アンタゴニストと組み合わせて投与できる治療剤には、化学療法剤が含まれる。したがって、いくつかの態様において、前記の方法または処置は、本発明のDLL4アンタゴニストまたは抗体と、化学療法剤または複数の異なる化学療法剤のカクテルとの併用投与を伴う。抗体による処置は、化学療法の投与の前に、化学療法の投与と同時に、または化学療法の投与の後に行われてもよい。併用投与は、1種類の薬学的処方物に入れた、もしくは別個の処方物を用いた同時投与を含んでもよく、またはどちらの順番でもよいが、活性剤の全てがその生物学的活性を同時に発揮できるように、一般的にある期間内で行われる、連続投与を含んでもよい。このような化学療法剤の調製および投薬計画は、製造業者の説明書にしたがって、または当業者により経験的に決定されたように使用することができる。このような化学療法の調製および投薬計画はまた、Chemotherapy Service Ed., M. C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, Md. (1992)に記述されている。
【0169】
本発明において有用な化学療法剤にはまた、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(シトキサン(CYTOXAN)); アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン; アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa); アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamime)を含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine); ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード; ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン; 抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン; 代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU); 葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート; プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン; ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シトシンアラビノシド、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU; アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン; 抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン; 葉酸補充剤、例えば、フォリン酸; アセグラトン; アルドホスファミドグリコシド; アミノレブリン酸; アムサクリン; ベストラブシル; ビサントレン; エダトレキサート(edatraxate); デフォファミン(defofamine); デメコルチン; ジアジクオン; エルフォルミチン(elformithine); 酢酸エリプチニウム; エトグルシド; 硝酸ガリウム; ヒドロキシウレア; レンチナン; ロニダミン; ミトグアゾン; ミトキサントロン; モピダモール; ニトラクリン; ペントスタチン; フェナメット; ピラルビシン; ポドフィリニック酸; 2-エチルヒドラジド; プロカルバジン; PSK; ラゾキサン; シゾフラン(sizofuran); スピロゲルマニウム; テヌアゾン酸; トリアジクオン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン; ウレタン; ビンデシン; ダカルバジン; マンノムスチン; ミトブロニトール; ミトラクトール; ピポプロマン; ガシトシン(gacytosine); アラビノシド(「Ara-C」); タキソイド、例えば、パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール); クロランブシル; ゲムシタビン; 6-チオグアニン; メルカプトプリン; メトトレキセート; 白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン; ビンブラスチン; 白金; エトポシド(VP-16); イホスファミド; マイトマイシンC; ミトキサントロン; ビンクリスチン; ビノレルビン; ナベルビン; ノバントロン; テニポシド; ダウノマイシン; アミノプテリン; ゼローダ; イバンドロン酸; CPT11; トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000; ジフルオロメチルオルニチン(DMFO); レチノイン酸; エスペラミシン; カペシタビン; および前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体も含まれるが、これらに限定されることはない。化学療法剤にはまた、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン、ならびに前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体も含まれる。
【0170】
ある種の態様において、化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ酵素(例えば、トポイソメラーゼIまたはII)の作用を妨害する化学療法剤である。トポイソメラーゼ阻害剤には、ドキソルビシンHCL、クエン酸ダウノルビシン、ミトキサントロンHCl、アクチノマイシンD、エトポシド、トポテカンHCl、テニポシド(VM-26)、およびイリノテカンが含まれるが、これらに限定されることはない。ある種の態様において、第2の治療剤はイリノテカンである。
【0171】
ある種の態様において、化学療法剤は、代謝拮抗物質である。代謝拮抗物質は、正常な生化学反応に必要な代謝産物に似ているが、細胞の一つまたは複数の正常機能、例えば、細胞分裂を妨害するのに十分に異なる構造を有する化学物質である。代謝拮抗物質には、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキセートナトリウム、ラリトレキセド、ペメトレキセド、テガフール、シトシンアラビノシド、チオグアニン、5-アザシチジン、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、およびクラドリビン、ならびにこれらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれるが、これらに限定されることはない。ある種の態様において、第2の治療剤はゲムシタビンである。
【0172】
ある種の態様において、化学療法剤は、チューブリンに結合する薬剤を含むが、これに限定されない、有糸分裂阻害剤である。いくつかの態様において、薬剤はタキサンである。ある種の態様において、薬剤は、パクリタキセルもしくはドセタキセル、またはパクリタキセルもしくはドセタキセルの薬学的に許容される塩、酸もしくは誘導体である。ある種の態様において、薬剤は、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)、DHA-パクリタキセル、またはPG-パクリタキセルである。ある種の代替的な態様において、有糸分裂阻害剤は、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、もしくはビンデシン、またはその薬学的に許容される塩、酸もしくは誘導体を含む。いくつかの態様において、有糸分裂阻害剤は、キネシンEg5の阻害剤または有糸分裂キナーゼ、例えば、AuroraAもしくはPlk1の阻害剤である。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストと組み合わせて投与される化学療法剤が有糸分裂阻害剤を含む場合、処置されている癌または腫瘍は、乳癌または乳房腫瘍である。
【0173】
ある種の態様において、処置は、本発明のDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)および放射線療法の併用投与を伴う。DLL4アンタゴニストによる処置は、放射線療法の施行の前に、放射線療法の施行と同時に、または放射線療法の施行の後に行ってもよい。当業者は、このような放射線療法の投薬計画を決定することができる。
【0174】
いくつかの態様において、第2の治療剤は抗体を含む。したがって、処置は、本発明のDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)と、ErbB2、HER2、Jagged、Notchおよび/またはVEGFに結合する抗体を含むが、これらに限定されない、さらなる腫瘍関連抗原に対する他の抗体との併用投与を伴ってもよい。例示的な抗Notch抗体は、例えば、米国特許出願公開第2008/0131434号に記述されている。ある種の態様において、第2の治療剤は、血管新生阻害剤である抗体(例えば、抗VEGF抗体)である。ある種の態様において、第2の治療剤はベバシズマブ(アバスチン)またはトラスツズマブ(ハーセプチン)である。いくつかの態様において、第2の治療剤は抗EGFR抗体ではない。いくつかの態様において、第2の治療剤はパニツムマブ(ベクチビックス)またはセツキシマブ(エルビタックス)ではない。併用投与は、1種類の薬学的処方物に入れた、もしくは別個の処方物を用いた同時投与を含んでもよく、またはどちらの順番でもよいが、活性剤の全てがその生物学的活性を同時に発揮できるように、一般的にある期間内で行われる、連続投与を含んでもよい。
【0175】
さらに、本明細書において記述されるDLL4アンタゴニストによる処置は、一つまたは複数のサイトカイン(例えば、リンホカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子および/または増殖因子)による併用処置を含んでもよく、あるいは腫瘍、癌細胞の外科的除去によって、または処置を行っている医師により必要とみなされた他の任意の療法によって達成されてもよい。
【0176】
疾患の処置のために、本発明のDLL4アンタゴニスト(例えば、抗体)の適切な投与量は、処置されている疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、疾患の応答性、DLL4アンタゴニストまたは抗体が治療目的または予防目的で投与されているかどうか、以前の療法、患者の病歴などに依り、全て、処置を行っている医師の自由裁量で決まる。DLL4アンタゴニストまたは抗体は、一回で投与されてもよく、または数日〜数ヶ月間続く一連の処置にわたって投与されてもよく、あるいは治癒が達成され、または疾患状態の減退が達成される(腫瘍の大きさが縮小する)まで投与されてもよい。最適な投薬計画は、患者の体内の薬物蓄積の測定から計算することができ、個々の抗体または薬剤の相対効力に依って変化するであろう。投与を行っている医師は、最適な投与量、投薬方法および反復率を容易に決定することができる。ある種の態様において、投与量は0.01μg〜100 mg/kg体重であり、1日に、1週間に、1ヶ月にまたは1年に1回または複数回与えることができる。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体は、2週間に1回または3週間に1回与えられる。ある種の態様において、DLL4アンタゴニストまたは抗体の投与量は、約0.1 mg〜約20 mg/kg体重である。処置を行っている医師は、測定された滞留時間および体液または組織中の薬物濃度に基づいて、投薬のための反復率を評価することができる。
【実施例】
【0177】
実施例1
K-ras遺伝子変異に関する腫瘍の評価
結腸癌を含めて原発性患者腫瘍に由来する異種移植片の大規模なコレクションが樹立されている。ゲノムDNA抽出キット(Bioneer Inc., Alameda CA)を製造業者の説明書にしたがって用い、原発腫瘍および継代腫瘍からゲノムDNAサンプルを単離した。単離したDNAの質を1%アガロースゲルまたは0.8% E-Gel (Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)上でDNAサンプルを可視化することによって確認した。およそ20 kbのサイズのバンドが存在し、目に見える分解がほとんどまたは全くないことにより、DNAが無傷であることが確認された。精製したゲノムDNAサンプルをヌクレオチド配列解析のためにSeqWright Technologies, (Houston TX)に送付した。K-ras遺伝子はゲノムDNAサンプルをRepli-G Mini Kit (Qiagen, Valencia CA)で増幅し、引き続きPCR増幅および精製を行うことによって得た。各腫瘍に対するK-ras遺伝子のヌクレオチド配列は、ABI 3730xL DNA Sequencer (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて得た。
【0178】
評価した結腸腫瘍8例のうち、3例はヒトK-ras配列(例えばアクセッション番号NP_203524参照)と比較した場合に野生型のK-ras遺伝子を有していた(C8、C27およびC40)。しかしながら、C27は真の野生型K-rasの腫瘍とは考えられない。というのは、C27は下流のB-raf遺伝子の変異を有し、これが経路の構成的活性化を与えうるからである。K-rasおよびB-rafの変異は相互排他的であるように思われる。腫瘍2例はコドン番号12中の変異を有し、1つはグリシンからアスパラギン酸への変異(C4)および1つはグリシンからバリンへの変異(C9)を有していた。腫瘍2例はコドン番号13中の変異を有し、ともにグリシンからアスパラギン酸への変異(C6およびC12)であった。腫瘍1例はコドン番号61中の変異を有し、アスパラギン酸からヒスチジンへの変異(C22)を有していた。腫瘍のK-ras遺伝子の状態を表1にまとめて示す。腫瘍C4、C6、C9、C12およびC22において特定されたK-ras変異は、公知の活性化変異である。
【0179】
【表1】

WT = 野生型K-ras遺伝子
【0180】
実施例2
結腸腫瘍異種移植片モデルにおける抗EGFR抗体のみ、および抗DLL4抗体のみまたは化学療法剤との組み合わせでの抗腫瘍活性の評価
NOD/SCIDマウスをHarlan Laboratories (Indianapolis, Indiana)から購入し、特定病原体除去条件の下で維持し、それらに適宜、無菌の餌と水を与えた。動物は、実験動物の管理と使用に関するNIHのガイドラインにしたがって米国農務省登録施設に収容した。各試験の開始前の数日間、マウスを順応させた。
【0181】
一般に、マウスにおいて異種移植片として継代された患者サンプル由来の腫瘍細胞を実験動物への注射用に調製した。腫瘍組織を無菌条件下で切除し、小片に切り、滅菌済刃を用いて完全に切り刻み、単細胞懸濁液を酵素消化および機械的破壊によって得た。具体的には、腫瘍小片を培地中、超高純度コラゲナーゼIIIと混合し、37℃で1〜4時間インキュベートした。消化された細胞はナイロンメッシュを通過させてろ過し、2%熱不活化子牛血清および25 mM HEPES (pH 7.4)を含有するハンクス平衡緩衝塩溶液(HBSS)中で洗浄した。
【0182】
バラバラにした細胞(細胞10,000個)を6〜8週齢のNOD/SCIDマウスの側腹部に皮下注射した。およそ100〜150 mm3になるまで、腫瘍を増殖させた。動物を無作為化し(n=10/群)、対照抗体(抗リゾチーム(lyzoyme)抗体LZ-1)、抗EGFR抗体、抗DLL4抗体、イリノテカンまたは抗DLL4抗体に加えてイリノテカンの組み合わせで処置した。「抗DLL4抗体」は、(i) 抗ヒトDLL4抗体21M18 H7L2および(ii) 抗マウスDLL4抗体21R30の1:1混合物であった。抗EGFR抗体はセツキシマブであった。抗体は週1回10 mg/kgで投薬し、イリノテカンは週2回7.5 mg/kgで投薬した。10 mg/kg用量の抗DLL4抗体は抗体混合物をいう。抗体および化学療法剤の両方を腹腔内に投与した。腫瘍増殖を毎週、電子キャリパで測定した。
【0183】
抗EGFR抗体(セツキシマブ)は2例の野生型K-ras腫瘍C8 (図1A)およびC40 (図1B)において腫瘍増殖を阻害した。抗EGFR抗体は5例のK-ras変異体腫瘍C4 (図1C)、C6 (図1D)、C9 (図1E)、C12 (図1F)およびC22 (図1G)のうちの4例において腫瘍増殖に及ぼす効果を持たないことが認められた。したがって、K-ras変異体腫瘍の大部分は抗EGFR抗体に対して非反応性であった。さらなる試験から、化学療法剤イリノテカンと組み合わせた抗EGFR抗体が非常に似通った結果を有することが示された。例えば、野生型K-rasの腫瘍C8において、抗EGFR抗体に加えてイリノテカンの組み合わせでは、いずれかの薬剤だけよりもいくらか良好に腫瘍増殖を阻害することはなかった(図1H)。K-ras変異体腫瘍C12において、抗EGFR抗体だけでは、対照抗体と比べて腫瘍増殖が低減されなかった。抗EGFR抗体に加えてイリノテカンの組み合わせでは、腫瘍増殖のわずかな低減しかなく、イリノテカンのみの抗腫瘍効果を実質的に妨げるように思われた(図1I)。これらの所見は、K-ras変異を含む結腸癌を有する患者の処置での抗EGFR抗体の効力が皆無かそれに近いことを実証した臨床試験に匹敵する。
【0184】
抗DLL4抗体(すなわち、上記の1:1混合物)は2例の野生型K-ras腫瘍C8 (図2A)およびC40 (図2B)において、化学療法剤による併用処置なしに腫瘍増殖を阻害した。同様に、付加的な化学療法剤の非存在下でさえも抗DLL4抗体は対照抗体と比べて、5例のK-ras変異体腫瘍のうちの3例C6 (図2D)、C9 (図2E)およびC12 (図2F)において腫瘍増殖を低減することが認められた。驚いたことに、イリノテカンとの組み合わせでの抗DLL4抗体は、試験した腫瘍8例中の7例において、および重要なことには、K-ras変異体腫瘍5例の全てにおいて腫瘍増殖を阻害した(図2A〜G)。データを表2にまとめて示す。
【0185】
【表2】

データは平均+/-SEMとして表されている。
= p < 0.05 vs. 対照Ab
** = p < 0.01 vs. 単剤
【0186】
実施例3
癌幹細胞頻度の低減についての結腸腫瘍異種移植片モデルにおける単独または化学療法剤との組み合わせでの抗DLL4抗体の評価
抗DLL4抗体のみで、またはイリノテカンとの組み合わせで、K-ras変異体腫瘍における癌幹細胞(CSC)の頻度を低減する能力を限界希釈アッセイ(LDA)法において判定した。バラバラにしたC9結腸腫瘍細胞(細胞10,000個)を6〜8週齢のNOD/SCIDマウスの側腹部に皮下注射した。およそ100〜150 mm3になるまで、腫瘍を増殖させた。動物を無作為化し(n=10/群)、対照抗体(抗リゾチーム抗体LZ-1)、抗DLL4抗体、イリノテカンまたは抗DLL4抗体に加えてイリノテカンの組み合わせで処置した。抗DLL4抗体は上記のように抗ヒトDDL4抗体および抗マウスDLL4抗体の1:1混合物であった。抗体は週1回10 mg/kgで投薬し、イリノテカンは週2回7.5 mg/kgで投薬した。抗体および化学療法剤の両方を腹腔内に投与した。腫瘍増殖を毎週、電子キャリパで測定した。実験の終わりに、腫瘍を回収し、間質細胞を枯渇させ、ヒト腫瘍細胞を一連のマウスへ累代移植した。腫瘍を未処置で62日間増殖させた。腫瘍取り込み率を用いてCSC頻度を計算した。
【0187】
図3に示されるように、対照抗体で処置した群におけるCSC頻度は1:149であった。抗DLL4抗体による処置はCSC頻度を1:299にまで低減し、対照抗体と比べておよそ2倍低減した。イリノテカンだけでの処置はCSC頻度を低減せず、実際にCSC頻度のわずかな増加(1:105)が認められた。驚いたことに、抗DLL4 + イリノテカンの組み合わせによる処置は、抗DLL4抗体だけでの処置よりも、しかもイリノテカンだけでは効果を持たない、またはCSC頻度を実際のところわずかに増加させたという事実にもかかわらず、さらに大きなCSC頻度の低減を実証した。抗DLL4抗体およびイリノテカンの組み合わせでは、CSC頻度を1:540にまで低減し、対照抗体と比べてほぼ4倍の低減、および抗DLL4抗体だけと比べてほぼ2倍のさらなる低減であった。
【0188】
実施例4
結腸腫瘍再発異種移植片モデルにおける化学療法剤との組み合わせでの抗DLL4抗体の抗腫瘍活性の評価
バラバラにしたC9結腸腫瘍細胞(細胞10,000個)を6〜8週齢のNOD/SCIDマウス(n = 10/群)の側腹部に皮下注射した。注射から2日後に始めて、マウスをイリノテカンのみ(Δ)または抗ヒトDLL4抗体(21M18 H7L2)に加えてイリノテカン(▼)で処置した。両群における処置を表示日に中断し、腫瘍増殖をさらなる期間にわたってモニタリングした。抗ヒトDLL4抗体は週2回10 mg/kgで投薬し、イリノテカンは週1回7.5 mg/kgで投薬した。抗体および化学療法剤の両方を腹腔内に投与した。腫瘍増殖を表示の時点で電子キャリパによって測定した。
【0189】
図4に示されるように、処置の中止後に、イリノテカンだけで前処置された群では腫瘍増殖が進行した。対照的に、抗ヒトDLL4抗体に加えてイリノテカンの組み合わせで前処置された群では、さらなる腫瘍増殖のないことが示された。
【0190】
実施例5
膵臓腫瘍再発異種移植片モデルにおける化学療法剤による処置後の抗DLL4抗体の抗腫瘍活性の評価
PN8膵臓腫瘍は、公知の活性化変異である、コドン番号12位でのグリシンからアスパラギン酸への変異・K-ras変異を有することが分かった。抗DLL4抗体をこの異種移植片腫瘍モデルでの効力について試験した。バラバラにしたPN8膵臓腫瘍細胞(細胞10,000個)を6〜8週齢のNOD/SCIDマウスの側腹部に皮下注射した。173 mm3の平均容積に達するまで28日間、腫瘍を増殖させた。マウスを無作為化し(n=10/群)、4週間にわたり週1回100 mg/kgのゲムシタビンで処置した。53日目に、ゲムシタビン処置を停止し、抗体処置を開始した。マウスを対照抗体(●)、抗マウスDLL4抗体(21R30) (▼)、抗ヒトDLL4抗体(21M18 H7L2) (▲)、または抗マウスDLL4抗体および抗ヒトDLL4抗体(21R30 + 21M18 H7L2)の組み合わせ(□)で処置した。抗体は週1回10 mg/kgで投薬した。抗体および化学療法剤の両方を腹腔内に投与した。腫瘍増殖を表示の時点で電子キャリパによって測定した。
【0191】
図5に示されるように、マウス間質細胞および血管細胞におけるDLL4を遮断する抗マウスDLL4抗体による処置は、対照抗体と比べて化学療法後の腫瘍再発をやや遅延させることが分かった。腫瘍細胞においてDLL4を遮断する抗ヒトDLL4抗体による処置は、腫瘍再増殖の阻害および/または遅延においてさらに多大な効果があった。重要なことには、一方が間質の位置でDLL4を遮断し、一方が腫瘍上でDLL4を遮断する、二種類のDLL4抗体の組み合わせは、どちらか単独よりも有効であり、腫瘍再発を完全に遮断するように思われた。
【0192】
本明細書において記述された実施例および態様は例示する目的のためだけのものであると、ならびにそれらを踏まえてさまざまな修正または変更が当業者に示唆されるであろうが、それらは本出願の趣旨および範囲内に含まれるものと理解される。
【0193】
本明細書において引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み入れられるよう具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。


【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デルタ様リガンド-4 (DLL4)アンタゴニストの治療上有効量を、それを必要としているヒト対象に投与する段階を含む、腫瘍の増殖を阻害する方法であって、腫瘍がK-ras変異を含み、かつDLL4アンタゴニストが、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である、該方法。
【請求項2】
DLL4アンタゴニストの治療上有効量を、それを必要としているヒト対象に投与する段階を含む、腫瘍の増殖を阻害する方法であって、腫瘍が少なくとも一種の上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤に対して実質的に非反応性であり、かつDLL4アンタゴニストが、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である、該方法。
【請求項3】
腫瘍がK-ras変異を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
腫瘍が、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、膵臓腫瘍、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
腫瘍が肺腫瘍である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
腫瘍が膵臓腫瘍である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
以下の段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法:
(a) 対象の癌がK-ras変異を含むことを判定する段階、および
(b) ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体であるDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階。
【請求項9】
以下の段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法:
(a) K-ras変異を含む癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づいて、処置に向けて対象を選択する段階、および
(b) ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体であるDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階。
【請求項10】
以下の段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法:
(a) 対象の癌が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性であることを判定する段階、および
(b) ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体であるDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階。
【請求項11】
以下の段階を含む、ヒト対象において癌を処置する方法:
(a) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を対象が有することに少なくとも部分的に基づいて、対象を選択する段階、および
(b) ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体であるDLL4アンタゴニストの治療上有効量を対象に投与する段階。
【請求項12】
癌が、結腸直腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項8〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
癌が結腸直腸癌である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
癌が膵臓癌である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
癌が肺癌である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
癌がK-ras変異を含む、請求項10〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
PCRに基づくアッセイ法またはヌクレオチド配列決定法によりサンプルにおいてK-ras変異が検出される、請求項1、3〜9、および12〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
サンプルが、新鮮腫瘍サンプル、凍結腫瘍サンプル、またはホルマリン固定パラフィン包埋サンプルである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
K-ras変異が活性化変異である、請求項1、3〜9、および12〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
腫瘍または癌が二つ以上のK-ras変異を含む、請求項1、3〜9、12〜16、および19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
K-ras変異が、コドン番号12中の変異、コドン番号13中の変異、コドン番号59中の変異、またはコドン番号61中の変異からなる群より選択される、請求項1、3〜9、12〜16、および19〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
K-ras変異がコドン番号12中の変異である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
コドン番号12中の変異が、グリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異、およびグリシンからセリンへの変異からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
K-ras変異がコドン番号13中の変異である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
コドン番号13中の変異が、グリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異、およびグリシンからセリンへの変異からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
K-ras変異がコドン番号59中の変異である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
コドン番号59中の変異が、アラニンからグリシンへの変異、アラニンからバリンへの変異、およびアラニンからグルタミン酸への変異からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
K-ras変異がコドン番号61中の変異である、請求項21記載の方法。
【請求項29】
コドン番号61中の変異が、グルタミンからロイシンへの変異、グルタミンからプロリンへの変異、グルタミンからアルギニンへの変異、およびグルタミンからヒスチジンへの変異からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
腫瘍または癌が少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
EGFR阻害剤が小分子化合物または抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
EGFR阻害剤が抗EGFR抗体である、請求項30または請求項31記載の方法。
【請求項33】
EGFR阻害剤がセツキシマブまたはパニツムマブである、請求項30〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
抗体が、ヒトDLL4の細胞外ドメインのN末端領域(SEQ ID NO:16)内のアミノ酸を含むエピトープに特異的に結合する、請求項1〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
抗体が以下を含む、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法:
(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに/または
(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3。
【請求項36】
抗体が以下を含む、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法:
(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに
(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3。
【請求項37】
抗体が以下を含む、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法:
(a) SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する重鎖可変領域; および/または
(b) SEQ ID NO:10に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域。
【請求項38】
抗体が以下を含む、請求項37記載の方法:
(a) SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する重鎖可変領域; および/または
(b) SEQ ID NO:10に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域。
【請求項39】
抗体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、またはSEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域を含む、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
抗体が、SEQ ID NO:10のアミノ酸を含んだ軽鎖可変領域をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
抗体が、SEQ ID NO:10のアミノ酸を含んだ軽鎖可変領域を含む、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
抗体が、組み換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または抗体断片である、請求項1〜41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
抗体が、単一特異性抗体または二重特異性抗体である、請求項1〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
抗体が一価抗体である、請求項1〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
抗体が、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM抗体である、請求項1〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
IgGが、IgG1またはIgG2抗体である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
抗体が、ATCC寄託番号PTA-8425を有するプラスミドによってコードされる、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
抗体が、ヒトDLL4との特異的結合について、寄託番号PTA-8425を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する、請求項1〜46のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
少なくとも一種のさらなる治療剤の治療上有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項1〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
さらなる治療剤が化学療法剤である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
化学療法剤が、イリノテカン、ゲムシタビン、および5-フルオロウラシルからなる群より選択される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
対象が、(a) K-ras変異を含んだ癌または(b) 少なくとも一種のEGFR阻害剤に対して実質的に非反応性である癌を有するかどうかを判定する段階を含み、対象が(a)および/または(b)を有するなら、対象はDLL4アンタゴニストによる処置に向けて選択される、DLL4アンタゴニストによる処置に向けてヒト対象を選択する方法。
【請求項53】
DLL4アンタゴニストが、ヒトDLL4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
癌が、結腸直腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項52または請求項53記載の方法。
【請求項55】
癌が結腸直腸癌である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
癌が膵臓癌である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
癌が肺癌である、請求項54記載の方法。
【請求項58】
PCRに基づくアッセイ法またはヌクレオチド配列決定法によりサンプルにおいてK-ras変異が検出される、請求項52〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
サンプルが、新鮮腫瘍サンプル、凍結腫瘍サンプル、またはホルマリン固定パラフィン包埋サンプルである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
K-ras変異が活性化変異である、請求項52〜59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
腫瘍または癌が二つ以上のK-ras変異を含む、請求項52〜60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
K-ras変異が、コドン番号12中の変異、コドン番号13中の変異、コドン番号59中の変異、またはコドン番号61中の変異からなる群より選択される、請求項52〜61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
K-ras変異がコドン番号12中の変異である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
コドン番号12中の変異が、グリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異、およびグリシンからセリンへの変異からなる群より選択される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
K-ras変異がコドン番号13中の変異である、請求項62記載の方法。
【請求項66】
コドン番号13中の変異が、グリシンからシステインへの変異、グリシンからバリンへの変異、グリシンからアスパラギン酸への変異、グリシンからアラニンへの変異、グリシンからアルギニンへの変異、およびグリシンからセリンへの変異からなる群より選択される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
K-ras変異がコドン番号59中の変異である、請求項62記載の方法。
【請求項68】
コドン番号59中の変異が、アラニンからグリシンへの変異、アラニンからバリンへの変異、およびアラニンからグルタミン酸への変異からなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
K-ras変異がコドン番号61中の変異である、請求項62記載の方法。
【請求項70】
コドン番号61中の変異が、グルタミンからロイシンへの変異、グルタミンからプロリンへの変異、グルタミンからアルギニンへの変異、およびグルタミンからヒスチジンへの変異からなる群より選択される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
EGFR阻害剤が小分子化合物または抗体である、請求項52〜70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
EGFR阻害剤が抗EGFR抗体である、請求項52〜71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
EGFR阻害剤がセツキシマブまたはパニツムマブである、請求項52〜72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
抗体が、ヒトDLL4の細胞外ドメインのN末端領域(SEQ ID NO:16)内のアミノ酸を含むエピトープに特異的に結合する、請求項52〜73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
抗体が以下を含む、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法:
(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに/または
(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3。
【請求項76】
抗体が以下を含む、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法:
(a) TAYYIH (SEQ ID NO:1)を含んだ重鎖CDR1、

を含んだ重鎖CDR2、および

を含んだ重鎖CDR3; ならびに
(b)

を含んだ軽鎖CDR1、AASNQGS (SEQ ID NO:8)を含んだ軽鎖CDR2、および

を含んだ軽鎖CDR3。
【請求項77】
抗体が以下を含む、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法:
(a) SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する重鎖可変領域; および/または
(b) SEQ ID NO:10に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域。
【請求項78】
抗体が以下を含む、請求項77記載の方法:
(a) SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、もしくはSEQ ID NO:13に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する重鎖可変領域; および/または
(b) SEQ ID NO:10に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域。
【請求項79】
抗体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、またはSEQ ID NO:13を含んだ重鎖可変領域を含む、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
抗体が、SEQ ID NO:10のアミノ酸を含んだ軽鎖可変領域をさらに含む、請求項79記載の方法。
【請求項81】
抗体が、SEQ ID NO:10のアミノ酸を含んだ軽鎖可変領域を含む、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
抗体が、組み換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または抗体断片である、請求項52〜81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
抗体が、単一特異性抗体または二重特異性抗体である、請求項52〜82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
抗体が一価抗体である、請求項52〜83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
抗体が、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM抗体である、請求項52〜84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
IgGが、IgG1またはIgG2抗体である、請求項85記載の方法。
【請求項87】
抗体が、ATCC寄託番号PTA-8425を有するプラスミドによってコードされる、請求項52〜74のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
抗体が、ヒトDLL4との特異的結合について、寄託番号PTA-8425を有するATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる抗体と競合する、請求項52〜86のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
少なくとも一種のさらなる治療剤の治療上有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項52〜88のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
さらなる治療剤が化学療法剤である、請求項89記載の方法。
【請求項91】
化学療法剤が、イリノテカン、ゲムシタビン、および5-フルオロウラシルからなる群より選択される、請求項90記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512278(P2013−512278A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542150(P2012−542150)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058511
【国際公開番号】WO2011/068840
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(308031072)オンコメッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】