説明

L−アミノ酸オキシダーゼを活性化する緑色光の使用

本発明は、皮膚細胞のエネルギー代謝を刺激し、その交替を刺激し、したがって皮膚および毛髪の外観を向上させ、特に、皮膚および毛髪の老化の徴候を予防および/または処置するために、L-アミノ酸オキシダーゼを前記酵素の少なくとも1種の基質の存在下で活性化する緑色光源の使用に関する。本発明はさらに、この酵素の少なくとも1種の基質と緑色光を発光することができる少なくとも1種の物質とを含む組成物、緑色光デバイスと前記酵素の少なくとも1種の基質を含む組成物とを含むキット、および前記組成物またはキットを使用する美容方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚および毛髪の手入れの分野、特に、皮膚および毛髪の生理的平衡の改善、ならびにそれらの老化の予防および/または処置の分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、皮膚細胞のエネルギー代謝を刺激し、それらの交替を刺激し、したがって皮膚および毛髪の外観を向上させ、特に、皮膚および毛髪の老化の皮膚徴候を予防および/または処置するために、L-アミノ酸オキシダーゼをこの酵素の少なくとも1種の基質の存在下で活性化する緑色光源の使用に関する。
【0003】
本発明はまた、酵素の少なくとも1種の基質と緑色光を発光することができる少なくとも1種の基質とを含む組成物、緑色光デバイスと前記酵素の少なくとも1種の基質を含む組成物とを含むキット、および本発明に従ってその組成物またはキットを使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0004】
皮膚は、日射、大気汚染物質などの外的環境からの攻撃を絶えず受ける身体の外部器官である。
【0005】
これらの外的要因だけでなく、老化が進行中の身体の様々な機能の段階的な低下もまた、損傷を受けた細胞成分(核酸、脂質、タンパク質)の蓄積の一因となるが、この損傷を受けた細胞成分の除去および/または修復はこの細胞によって行われなければならない。
【0006】
損傷を受けた細胞成分の形成は、主として、スーパーオキシドアニオン、過酸化水素、またはヒドロキシルラジカルなどの再活性酸素実体(entities)が関与する反応によって起こる。脂質過酸化反応から生じるグルコシドまたはアルデヒドの巨大分子への結合に関与する他の反応もまたその一因である(B.Friguet、Le vieillissement moleculaire et cellulaire et ses futures enjeux [Molecular and Cell Ageing and its Future Challenges]、Mecanismes biochimiques)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】B.Friguet、Le vieillissement moleculaire et cellulaire et ses futures enjeux [Molecular and Cell Ageing and its Future Challenges]、Mecanismes biochimiques
【非特許文献2】「The newest Medical breakthrough for skin renewal and Shrinking pores (2004)」
【非特許文献3】「The Worthington Manual」、Enzymes and Related Biochemicals、編集:C.Charles、Worthington、1988年、35〜37頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
若々しい外観および/または健康な肌を保つという目的から、皮膚の外観の維持および/または改善を可能にする新規な化合物および/または新規な組成物に関する絶え間ない調査が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、本出願人会社によって、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の施用と、酵素L-アミノ酸オキシダーゼを活性化する効果を有する緑色光への曝露とを組み合わせることで達成された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】酵素を500〜560nmの光に暴露させる組立図である。
【図2】本発明に係る試験で使用する光の特性を示す図である。
【図3】本発明に係る実施例2の結果を示す図である。
【図4】本発明に係る実施例3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
光線を皮膚の処置に使用することは周知である。次のものなどを挙げることができる:
-レーザビームであって、毛細血管拡張症または加齢に伴う色素沈着過剰症の現象を処置するために特に使用される波長532nmの電磁放射線であるレーザビーム(Robertら、2003年)。いくつかの研究は、波長1064nmで放射されたレーザビームが皮膚の再生を向上させることを示している。パルス法で施用される585〜595nmのレーザビームは、眼窩周囲部にあるしわを著しく改善する。
-IPL(インテンスパルスライト):500〜1200nmの広域スペクトルの電磁放射線(IPL)は、老化現象の改善に関して広範に記載されている。特定のフィルターを使用すると、波長が分離され、所望の処置のタイプに適した電磁放射線だけを維持することが可能となる。黄色、赤色、および赤外の放射線の同時放射により、いくつかの異なる生体活性が調節され、したがって光老化に関連する様々な有害変化を調節することが可能となることが示されている。
-赤外線:いくつかの研究は、皮膚の生物学に対する広域スペクトル赤外線照射の効果を示している。特に、組織の水分子によって赤外線が吸収されると、真皮中の熱の局在性が増大し、それによって、マトリクス分子、特にコラーゲンの合成が増大されることが記載されている。より最近では、赤外線照射が、紫外線照射の有害な影響から真皮の線維芽細胞を保護することが示されている。これらの研究で、著者らは、この保護にミトコンドリアタンパク質、チトクロームCの調節が関与することを示している(Menezesら、1998年)。
-科学チームはなお一層、LEDの生物学的作用のメカニズムを決定しようと試みている。特に、LEDが、光受容体(発色団)を標的にすることによって、ミトコンドリア膜にある酸化還元系列(sequence)を活性化することが示されている。次いで、この刺激は、線維芽細胞において、線維性タンパク質、コラーゲン、およびエラスチンの産生、ならびにメタロプロテイナーゼMMPS発現の低下をもたらすであろう(Robertら、2003年)。最近の研究で、Vinckら、2005年によって、570nmのLED源による照射が線維芽細胞の増殖を増大させることが示された。
【0012】
本出願人会社は、驚くべきことにかつ思いがけずに、緑色光の放射を伴って、L-アミノ酸オキシダーゼの基質を皮膚に施用すると、この酵素の活性が増大され、皮膚の生理活性の刺激および調節への有利な影響が示されることを発見した。
【0013】
L-アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.2)は、アミノ酸オキシダーゼのファミリーに属する。
【0014】
アミノ酸オキシダーゼ酵素は、皮膚の様々な細胞型中に存在する。
【0015】
アミノ酸オキシダーゼ酵素は、アミン官能基からケトン官能基への転化を触媒する。したがって、アミノ酸がこれらの酵素によって転化されると、対応するケト酸化合物が生じる。
【0016】
今回、本出願人会社は、緑色光がL-アミノ酸オキシダーゼの活性を増加させる特性を有することを実証した。
【0017】
アミノ酸は、細胞の細胞質内で転化された後、ミトコンドリアに入って、その中で分解される栄養分(fuel)である。
【0018】
特に、アラニンは、L-アミノ酸オキシダーゼによる触媒性酸化的脱アミノ反応によってピルビン酸を直接生じることができる。
【0019】
L-アミノ酸オキシダーゼ
L-アラニン+H2O+O2→→L-ピルビン酸+NH3+H2O2
【0020】
ミトコンドリア内では、ピルビン酸は、ATP、細胞の主なエネルギー源に転換される。
【0021】
ケト酸化合物としては、特に、ピルビン酸、またはさらにアセト酢酸が挙げられる。
【0022】
アセト酢酸の形成もまた、アミノ酪酸から出発して、前述のと同様の原理の酸化的脱アミノ反応によって誘導することができる。
【0023】
L-アミノ酸オキシダーゼ
α-アミノ酪酸+H2O+O2→→アセト酢酸+NH3+H2O2
【0024】
したがって、本発明の主題は、L-アミノ酸オキシダーゼをその基質の少なくとも1種の存在下で活性化する緑色光を使用することである。
【0025】
こうした使用には、遺伝子の発現をもたらすシグナルを活性化するリン酸化の可能性を増大する効果、ならびに皮膚の細胞、特に、線維芽細胞、ケラチノサイト、およびメラノサイトの代謝を活性化する効果、特に、損傷を受けた細胞成分、特に酸化ストレスから生じる成分の形成を減少させることによって、およびそれらの成分の除去を刺激することによって、これらの細胞の生理機能を活性化および調節する効果がある。
【0026】
この効果の一結果は、真皮および表皮の細胞の交替を改善させ、したがって皮膚の再生が改善されることである。
【0027】
したがって、本発明による使用により、皮膚および毛髪に健康的な外観を与えることが可能となる、すなわち、肌の色を一様にし、その明るさを再び輝かせ、その黄変または精彩のない外観を防ぎ;皮膚の染みを予防および/または処置し;皮膚の表面の視覚的かつ/または触覚的な凹凸を和らげ、それをより均一な起伏にしかつ滑らかにし、しわおよび細かい線を予防および/または処置し;特に皮膚がよりたるんだ部分に関し、例えば顔の輪郭または首の皮膚に、より大きな厚みおよび弾力を回復させることが可能となる。
【0028】
また、本発明による使用により、老化と関係のある皮膚への有害な変化に対抗し、皮膚の老化の皮膚徴候および毛髪の老化の徴候を予防および/または処置し;回復を向上させることが可能となる。
【0029】
特に、本発明による使用により、真皮(コラーゲン原線維、GAG、弾性線維)のマトリクス巨大分子の合成が増大し、それらの分解を阻止することが可能となり;これはまた表皮のホメオスタシスにおける有害変化も予防する。
【0030】
用語「皮膚の老化の皮膚徴候」は、特に、皮膚のたるみ、しわまたは皮膚の染みまたは肌の色の黄変の予防を意味することを理解されたい。
【0031】
用語「毛髪の老化の徴候」は、特に、脱毛、毛髪の成長の鈍化、白髪化、個々の毛髪の直径の縮小、または毛髪の活力の低下を意味することを理解されたい。
【0032】
本発明の使用は、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の投与と前記組成物が施用された部分への緑色光の適用とを同時または別々(offset)に行うことによってなされる。
【0033】
本発明に従って使用することができるL-アミノ酸オキシダーゼの基質は、アミノ酸か、またはアミン官能基を含む分子であり、この基質は、酸性基および第一級アミン基に関してα位に炭素を有するようなものであり;より詳細には、L-アミノ酸に関する。
【0034】
前記基質は、ロイシン、セリンスレオニン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、ジアミノピメリン酸、ペニシラミン、またはα-アミノ酪酸から選択される。
【0035】
好ましくは、本発明は、アラニン、グリセリン、α-アミノ酪酸、リシン、ロイシン、セリン、およびスレオニンで実施される。
【0036】
アミノ酸は、ナトリウム塩やアルカリ土類金属(例えばマンガンまたはカルシウム)塩などの塩の形で配合することができる。
【0037】
好ましい一形態によれば、本発明は、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む局所用組成物を使用して実施される。
【0038】
用語「局所用組成物」は、皮膚、粘膜、半粘膜(semimucous membrane)、または頭皮を含む、身体のいずれかの表面に局所適用するための組成物を意味することを理解されたい。
【0039】
本発明に従って使用する組成物は、特に、化粧用または皮膚用組成物である。
【0040】
組成物は、一般に、生理学的に許容される媒体、すなわち、皮膚および/またはその表在性身体成長物(superficial body growth)に適合した媒体を含む。これは、好ましくは、化粧品として許容される媒体、すなわち、快適な匂い、快適な色、および快適な感触を示し、消費者にこの組成物の使用を思いとどまらせそうな容認できない不快(痛み、赤色斑、ひきつり)を引き起こさない媒体である。
【0041】
本発明による局所用組成物は、有効量の基質(アミノ酸)を含み、これはまた、想定される配合物へのアミノ酸の溶解性に応じて選択される。L-アミノ酸オキシダーゼの基質のこの量は、好ましくは、0.001〜10%、より好ましくは0.01〜1%である。
【0042】
目的の身体部分および所望の施用量(intensity of application)に応じて、当業者は、様々な組成物形態から選択することができる:
-緑色光への曝露後でも皮膚に施用し続けることを意図する組成物;この組成物は、ローションもしくはゲルのタイプの分散物、脂肪相と水相の分散物(O/W)もしくはその逆の場合(W/O)から得られる乳液タイプの液状もしくは半液状の硬さ(consistency)を有するエマルジョン、またはクリームもしくはゲルのタイプの軟性、半固体、もしくは固体の硬さを有する懸濁物もしくはエマルジョン、またはさらに複合的な(W/O/WまたはO/W/O)エマルジョン、マイクロエマルジョン、陰イオン性および/もしくは非イオン性タイプのベシクル分散物、またはワックス/水相分散物とすることができる;
-緑色光への曝露期間中にだけ皮膚と接触し続ける組成物、例えば、使用者が処置すべき部分に明確に施用することができ、その後除去することができるクリーム形状のマスク、または基質を染み込ませたパッチなど。この適用形態では、マスクまたはパッチは、緑色光が通過できるほど十分に透明でなければならない。
【0043】
本発明の文脈においては、緑色をした光の任意の光源は、L-アミノ酸オキシダーゼを活性化するような波長で放射し、それは、500〜580nm、好ましくは500〜560nmとすることができる。
【0044】
特に、次のものを挙げることができる:
【0045】
-レーザ(放射線の誘導放出による光の増幅器);これらは、非常に高強度の単色光源である。
【0046】
白色光(異なる時間でランダムにかつ様々な方向に放射される種々の波長の光子)と異なり、レーザによって放射された光線は、同時にかつ同方向に放射された光子から構成される光である。
【0047】
3個の要素が、レーザビームを特徴付けている:波長(λ);放射モード:連続(一定出力で送出される)、パルス(エネルギーはパルスによって送出され、このパルスの周波数および出力は調整することができる)、および超パルス(パルスは固定期間および固定出力であり、出力は高く、期間は非常に短い);ならびに出力:数ミリワット〜数万ワット。
【0048】
-IPL:インテンスパルスライト。
【0049】
レーザとIPLの基本的な違いは、IPLが何百、実際には何千もの色を同時に照射(deliver)することができる一方、レーザは単一の波長のみを照射するということにある。これらの装置は、単にフィルターを交換するだけで、処置すべき問題に適した波長を選択することを可能にする。これらはまた、「非コヒーレント光源」という用語で呼ばれている。
【0050】
これは、全体的に高強度の光のパルス放射のことである。
【0051】
この技術は、多数の発色団によって吸収される広域スペクトルの波長を照射することができる。大きな表面積を同時に処置することができる。
【0052】
-LED:発光ダイオード(光変調(LED、すなわちLight Emitting Diode(発光ダイオード)、「The newest Medical breakthrough for skin renewal and Shrinking pores (2004)」を参照されたい))。
【0053】
LED:LEDは、一般に、数ミリワットの低い強度で、590+/-10〜20nmの波長の光を放射し、これらは、低出力レーザ(1〜数十ミリワット)の区分に分類される。
【0054】
本発明はまた、緑色光を発光する物質を使用して実施することもできる。
【0055】
これらの物質は、より詳細には、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物または活性成分、例えば、ビタミンB2(分解すると緑色の蛍光を発するルミフラビンを生じる)、酸性媒体中のバイカイリン(baicailine)、フィセチン、ジピリダモール、緑色発光顔料、または鉱物である。これらは、特に、ルミフラビン、酸性媒体中のバイカイリン、フィセチン、ジピリダモール、緑色発光顔料、および鉱物から選択される。
【0056】
これらの緑色光源は、1〜数十mVの発光光束を供給するのに十分な量または強度で使用される。
【0057】
当業者は、光源の特性および所望の効果に応じて緑色光への曝露時間を調整するであろう。純粋に目安として、処置すべき皮膚部分は、少なくとも500〜1500mJ/cm2、好ましくは500〜90000mJ/cm2の光出力を受けることができる。
【0058】
緑色光源はまた、緑色のリン光性または蛍光性物質とすることもできる。
【0059】
用語「緑色発光顔料」は、以下に列記する従来の発光顔料だけでなく、波長が約500〜580nmの緑色リン光を発光する、化粧品として許容されるいずれの物質もまた意味することを理解されたい。
【0060】
発光顔料の存在によって、組成物に緑色光の連続光源が提供される。リン光は、日光中に通常存在する紫外線への曝露によって活性化され、その効果は数時間続く。
【0061】
様々な化合物が、緑色のリン光を発する特性を有することで知られており、限定はしないが次のものを含む:
-硫化亜鉛(銅および/またはマンガンでドープされている)、
-アルミン酸ストロンチウム、
-リン光性カルサイト、
-希土類金属元素でドープされたセラミック酸化物、例えば、アルミニウム、ガリウムでドープされたイットリウム、ストロンチウムまたはジスプロシウムでドープされたテルビウムなど(Y3(Al、Ga)SO2、Y2SiO5、SrGa2S4:Eu)、
-銅または希土類金属元素でドープされたホウケイ酸亜鉛(ガラス)、
-希土類金属酸化物。
【0062】
緑色の蛍光を発する光源は、リン光源の補充または交換に使用することができる。
【0063】
好ましい緑色の蛍光光源は、蛍光鉱物である。
【0064】
例として次のものを挙げることができるが、これらだけに限らない:紅柱石および空晶石(ケイ酸アルミニウム);アンブリゴナイト(塩基性リン酸アルミニウムリチウム);フェナサイト(ケイ酸ベリリウム);バリスカイト(水和リン酸アルミニウム);蛇紋石(塩基性ケイ酸マグネシウム);アマゾナイト(ケイ酸アルミニウムカリウム);紫水晶(二酸化ケイ素);金緑石(酸化アルミニウムベリリウム);トルコ石(銅含有塩基性リン酸アルミニウム);無色、黄色またはピンク色のトルマリン(ホウケイ酸);琥珀(スクシナイト/樹脂);オパール(水和二酸化ケイ素);白鉛鉱(炭酸鉛);クロム雲母(ケイ酸アルミニウムカリウム);透輝石(ケイ酸マグネシウムカルシウム);曹灰ホウ鉱(水和ホウ酸カルシウムナトリウム);アラレ石(炭酸カルシウム);およびウイレマイト(ケイ酸亜鉛)。
【0065】
また、プリズムとして作用し、適切な屈折率の選択時に白色光を照射されると緑色光を発光する特性を有するポリマー格子も挙げることができる。
【0066】
また、光を選別して緑色光のみ通過を可能にする役割を有する緑色をした組成物、例えば、酸化クロム、葉緑素、ケルマリン(kermaline)、トルマリン、緑色の貴石および半貴石(エメラルドなど)から形成された粉末などを適用することによって、皮膚への緑色光の接触を促進させることも可能である。
【0067】
これらの物質は、L-アミノ酸オキシダーゼを活性化することができる光量の緑色光の通過を確実にするのに十分な濃度、例えば0.01%〜20%で使用することができる。
【0068】
本発明の別の主題は、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質と、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する活性成分、緑色リン光物質、緑色蛍光物質、および光を選別して緑色光のみ通過を可能にする物質から選択される少なくとも1種の化合物とを含む組成物である。これらの化合物は、上述の通りである。
【0069】
好ましくは、それは、上述の局所用組成物に関する。
【0070】
本発明はまた、上述のL-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質と、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する活性成分、緑色リン光物質、緑色蛍光物質、および光を選別して緑色光のみ通過を可能にする物質から選択される少なくとも1種の化合物とを含む、同時に、別々に、または長期にわたって使用するための、組合せ品の形をした組成物に関する。好ましくは、紫外線への曝露時に光を発光する活性成分は、ルミフラビン、酸性媒体中のバイカイリン、フィセチン、ジピリダモール、緑色リン光顔料、または鉱物から選択される。
【0071】
本発明による組成物および方法は、活性が配合物によって悪影響を受けてはならない酵素を使用することでもたらされる無害性および配合性の潜在的問題の解決を可能にする。
【0072】
本発明の別の主題は、皮膚の外観を改善し、肌の色の明るさを向上させ、皮膚の表面の視覚的または触覚的な凹凸を和らげ、特に、しわおよび細かい線および/もしくは皮膚の染みを和らげ、かつ/または皮膚を滑らかにし、かつ/または肌の色を輝かせるための美容方法であって、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の局所施用と、前記組成物を施用した部分の波長500〜580nmの緑色光への曝露とを含む美容方法である。
【0073】
本発明の別の主題は、毛髪の老化、毛髪の成長の鈍化、白髪化、個々の毛髪の直径の縮小、または毛髪の活力の低下に対抗するための美容方法であって、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の局所施用と、前記組成物を施用した部分の波長500〜580nmの緑色光への曝露とを含む美容方法である。
【0074】
本発明による方法の実施に関し、緑色光源は、レーザ、IPL、LED、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物もしくは活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質から選択される。
【0075】
本発明による方法はまた、紫外線への曝露段階を含むことができる。
【0076】
本発明の別の主題によれば、本発明は、次のものを含むキットに関する:
a.酵素L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物であって、この酵素の活性が緑色光の放射によって増大され得る組成物;
b.緑色光源。
【0077】
方法の実施は、段階aおよびbが、同時に、別々に、あるいは時間をずらして行われることにあるとすることができる。
【0078】
特に、前記L-アミノ酸オキシダーゼの基質は、ロイシン、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、ジアミノピメリン酸、ペニシラミン、またはα-アミノ酪酸から選択される。
【0079】
前記組成物は、上述の技術特性に対応する。
【0080】
緑色光源は、レーザ、IPL、LED、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物もしくは活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質から選択される。
【0081】
したがって、キットの特定の実施形態によれば、緑色光源は、前記L-アミノ酸オキシダーゼの基質を含む組成物中に、あるいはオフセット方法(前または後)で施用するための別の局所用組成物中に配合される緑色光を発光する物質である。
【0082】
キットはまた、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を染み込ませ、緑色光を発光するダイオードを付与したパッチ、特にイオントフォレーシス性パッチで使用することもできる。
【0083】
さらに、本発明による方法の実施は、段階aおよび/もしくはbの前に、または同時に、例えば、皮膚を冷却することによって、イオントフォレーシスによって、閉鎖システムによって基質の浸透を向上させることを目的とした皮膚の処置段階を含むことができる。
【0084】
また、処置すべき部分に事前に化学的または機械的ピーリングを行うことによって、基質の浸透を促進させることも可能である。
【実施例1】
【0085】
緑色光を用いたL-アミノ酸オキシダーゼの活性化
以下の実施例は、酵素の発色団、L-アミノ酸オキシダーゼの活性化に対する緑色光(500〜560nm)の刺激効果を測定するものである。この酵素を緑色光に曝露すると、アミノ酸からケト酸への転化が刺激される。
【0086】
プロトコルの説明
一般的原理:これらの研究の原理は、500〜560nmの光源へ事前に曝露したまたは曝露していないアミノ酸オキシダーゼの活性を比較することである。
【0087】
装置および反応物
-光ファイバを備えた光源(内径3mm)、
-光度計IL-1700+SED033プローブ(#6600)、
-L-アミノ酸オキシダーゼ:Sigma、参照番号A-9253(バッチ064K0773)、0.39ユニット/mg固体、
-D-アミノ酸オキシダーゼ:Sigma、参照番号A-5222-100UN(バッチ115K1101)、2.3ユニット/mg固体。
【0088】
酵素の曝露方法
酵素(脱水済み粉末形態または酵素溶液)を円錐形のエッペンドルフ(Eppendorf )チューブに入れる。量は、直径3mmの光ファイバによって酵素全体が光(波長490〜585nm)の曝露を受けるように調整する。光への曝露は連続的であり、光が提供するエネルギーは0.45mW/cm2である(参照、図1:組立図、および図2:試験で使用する光の特性)。
【0089】
温度の影響を避けるために、曝露期間中はエッペンドルフチューブを氷浴に入れておく。対照酵素(500〜560nmの光への曝露なし)を、同時にかつ同様に調製し、外部光の到達を阻止する裏張り(アルミニウム紙)によって光から保護する。
【0090】
酵素の活性の測定
酵素の活性は、化学ルミネセンスによって測定する。
【0091】
酵素の基質(L-ロイシンおよび/またはD-アラニン)を、特定の緩衝培地中でアミノ酸オキシダーゼと共に様々な時間インキュベートする。加水分解生成物H2O2の形成は、「The Worthington Manual」、Enzymes and Related Biochemicals、編集:C. Charles、Worthington、1988年、35〜37頁に記載されるこれらの酵素(E.C.1.4.3.2) の活性を定量するプロトコルに従って、ペルオキシダーゼおよびイソルミノールの存在下で化学ルミネセンスによってモニターする。ここで生じる加水分解生成物H2O2は、以下のように調製するペルオキシダーゼとイソルミノールとの反応混合物の存在下で化学ルミネセンスによって定量する。
【0092】
化学ルミネセンス反応混合物:
イソルミノール34.8mgを量り取り、100mMのホウ酸緩衝液約50ml中に磁気撹拌しながら溶解させる。マイクロペルオキシダーゼ2mgを量り取り、100mMのホウ酸緩衝液約5ml中に磁気撹拌しながら溶解させる。次いで、2種の反応物を200ml容のメスフラスコ中で混合し、その体積をホウ酸緩衝液で調整する(各ビーカーを緩衝液で3回濯ぐ)。500ml容のフラスコにその200mlを入れる。次いで、それにホウ酸緩衝液200mlをさらに添加する。最終体積が400mlである反応混合物を、磁気撹拌によってホモジナイズし、次いで、使用する少なくとも24時間前に周囲温度で暗闇に置く。
【0093】
ルミネセンスは、Thermo Labsystems社製の「Fluoroskan Ascent FL」ルミノメータを使用して読み取る。
【0094】
結果:L-アミノ酸オキシダーゼの特異的な酵素活性化
-D-アミノ酸オキシダーゼに対する緑色光の影響。
【0095】
D-アミノ酸オキシダーゼ
【0096】
【表1】

【0097】
-L-アミノ酸オキシダーゼに対する緑色光の影響。
【0098】
L-アミノ酸オキシダーゼ
【0099】
【表2】

【0100】
結論
緑色光に長期曝露しても、D-アミノ酸オキシダーゼの活性は大きく変化しない。一方、60分の曝露がL-アミノ酸オキシダーゼの特異的な活性化をもたらすことが観察されている。
【実施例2】
【0101】
L-アミノ酸オキシダーゼの活性化の速度論的性質
実施例1に記載のプロトコルに従って、いくつかの測定を様々な曝露時間の後に行い、以下の表に要約する。
【0102】
結果を下表に表示し、図3に示す(感作L-アミノ酸オキシダーゼは緑色光に曝露したL-アミノ酸オキシダーゼである)。
【0103】
【表3】

【0104】
結論
L-アミノ酸オキシダーゼの活性化の速度論的性質は、500〜560nmの光への曝露によって増大される。
【実施例3】
【0105】
曝露時間に応じたL-アミノ酸オキシダーゼの活性化:用量/作用効果
試験は、供給元のプロトコルに従いながら実施例1と同様の実験条件下で行う。
【0106】
結果を下表に表示し、図4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
結論
酵素への曝露が長いほど、その活性が大きくなることが分かった。以下の図表は、曝露済み酵素の活性と対照酵素の活性の比を示している。
【実施例4】
【0109】
組成物
【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
これらのクリームを、波長500〜560nmの放射線の下での長期曝露(30分〜1時間30分)直前に顔および/または身体に施用する。
【0113】
イオントフォレーシス性パッチ
市販の参照パッチIontopatch(商標)(Travanti Pharma、Mendota Heights、MN、USA)を、上記のクリームのうちの1種で事前に処置した部分に当てる。
【0114】
その後、そのパッチを、1Vの電位差によって発生するガルバニ電流を送出するための、2種の電極Zn陽極およびAgCl陰極を構成する電流に接続し、緑色光源の下で曝露する。
【0115】
この処置を30〜45分間毎日1回の割合で行う。
【0116】
緑色マスク
【0117】
油相:
【0118】
【表7】

【0119】
水相:
【0120】
【表8】

【0121】
このマスクを処置すべき皮膚の部分に当て、次いで、対象を白色光源(自然光または電光)の下に45分〜1時間置く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-アミノ酸オキシダーゼをその基質の少なくとも1種の存在下で活性化させるための波長500〜580nmの緑色光の非治療的使用。
【請求項2】
前記基質が、アミノ酸、またはアミン官能基を含む分子であり、酸性基および第一級アミン基に関してα位に炭素を有するようなものであることを特徴とする、請求項1に記載の非治療的使用。
【請求項3】
前記基質が、ロイシン、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、ジアミノピメリン酸、ペニシラミン、またはα-アミノ酪酸から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の非治療的使用。
【請求項4】
前記基質が、0.001〜10%の濃度で存在することを特徴とする、請求項3に記載の非治療的使用。
【請求項5】
前記基質が、局所用組成物中に配合されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項6】
緑色光源が、レーザ、IPL、LED、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物もしくは活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項7】
紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する前記代謝産物または活性成分が、ビタミンB2、酸性媒体中のバイカイリン、フィセチン、ジピリダモール、顔料、または鉱物から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の非治療的使用。
【請求項8】
前記緑色光源が、500〜90000mJ/cm2の光出力を生成することを特徴とする、請求項6に記載の非治療的使用。
【請求項9】
皮膚の細胞、特に、線維芽細胞、ケラチノサイト、およびメラノサイトの代謝を活性化するための、ならびに/またはこれらの細胞の生理機能を活性化および/もしくは調節するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項10】
損傷を受けた細胞成分の形成を減少させ、かつ/またはそれらの成分の除去を刺激するための、請求項9に記載の非治療的使用。
【請求項11】
表皮の細胞の交替および皮膚の再生を刺激するための、請求項9に記載の非治療的使用。
【請求項12】
皮膚および毛髪に健康的な外観を与えるための、特に、肌の色を一様にし、その明るさを再び輝かせ、その黄変または精彩のない外観を防ぎ;皮膚の染みを予防および/または処置し;皮膚の表面の視覚的かつ/または触覚的な凹凸を和らげ、それをより均一な起伏にしかつ滑らかにし、しわおよび細かい線を予防および/または処置し;皮膚により大きな厚みおよび弾力を回復させるための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項13】
老化と関係のある皮膚への有害な変化に対抗し、皮膚の老化の皮膚徴候および毛髪の老化の徴候を予防および/または処置するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項14】
皮膚のたるみ、しわもしくは皮膚の染みの出現、または肌の色の黄変を予防および/または処置するための、請求項13に記載の非治療的使用。
【請求項15】
脱毛、毛髪の成長の鈍化、白髪化、個々の毛髪の直径の縮小、または毛髪の活力の低下を予防および/または処置するための、請求項13に記載の非治療的使用。
【請求項16】
皮膚の回復を向上させるための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非治療的使用。
【請求項17】
L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質と、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する活性成分、緑色リン光物質、緑色蛍光物質、および光を選別して緑色光のみ通過を可能にする物質から選択される少なくとも1種の化合物とを含む組成物。
【請求項18】
前記基質が、ロイシン、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、ジアミノピメリン酸、ペニシラミン、またはα-アミノ酪酸から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質が、ビタミンB2、酸性媒体中のバイカイリン、フィセチン、ジピリダモール、顔料、または鉱物から選択されることを特徴とする、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
皮膚の外観を改善し、肌の色の明るさを向上させ、皮膚の表面の視覚的または触覚的な凹凸を和らげ、特に、しわおよび細かい線および/もしくは皮膚の染みを和らげ、かつ/または皮膚を滑らかにし、かつ/または肌の色を輝かせるための美容方法であって、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の局所施用と、前記組成物を施用した部分の波長500〜580nmの緑色光への曝露とを含む美容方法。
【請求項21】
毛髪の老化、毛髪の成長の鈍化、白髪化、個々の毛髪の直径の縮小、または毛髪の活力の低下に対抗するための美容方法であって、L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物の局所施用と、前記組成物を施用した部分の波長500〜580nmの緑色光への曝露とを含む美容方法。
【請求項22】
前記緑色光源が、レーザ、IPL、LED、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物もしくは活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質から選択されることを特徴とする、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
a. L-アミノ酸オキシダーゼの少なくとも1種の基質を含む組成物と、
b. 緑色光源と
を含むキット。
【請求項24】
前記基質が、ロイシン、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、ジアミノピメリン酸、ペニシラミン、またはα-アミノ酪酸から選択されることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記緑色光源が、レーザ、IPL、LED、紫外線への曝露時に500〜580nmの光を発光する代謝産物もしくは活性成分、緑色リン光物質、または緑色蛍光物質から選択されることを特徴とする、請求項23または24に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−533689(P2010−533689A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516556(P2010−516556)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051333
【国際公開番号】WO2009/019381
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】