説明

L−カルノシンの製造方法

【課題】 医薬品や健康食品などに有用なL−カルノシンを簡便に、しかも高収率、高純度で、製造する方法を提供する。
【解決手段】 不純物を含むL−カルノシンの粗体の水溶液と、メタノールなどのアルコールとを混合して得られた混合溶液にL−カルノシンの種結晶を添加し、30℃〜80℃で1〜10時間熟成させた後に該混合溶液にアルコールを更に加えることによって高純度化されたL−カルノシン結晶を析出させる精製工程を含むL−カルノシンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含むL−カルノシンの粗体を精製することにより高純度L−カルノシンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルノシンはβ−アラニンとL−ヒスチジンから合成されるジペプチドであり、組織修復促進作用、免疫調整作用、抗炎症作用を有していることから、医薬品や健康食品などの需要が高まっている。また、容易に金属とキレート結合をつくることから、亜鉛と錯形成したポラプレジンクなどの抗潰瘍薬、味覚障害治療薬へ応用されている。これら医薬品に使用されるL−カルノシンは高純度のものでなければならず、一般的には99.5%以上の純度が要求される。
【0003】
前記したようにL−カルノシンは、β−アラニン又はその誘導体とL−ヒスチジン又はその誘導体とを原料として合成されるが、反応により得られるL−カルノシン粗体の精製には、一般に晶析が採用されている。(非特許文献1、2、及び3参照)。
【0004】
【非特許文献1】Chemical and Pharmaceutical Bulletin 38 (11) p3140−3146 (1990)
【非特許文献2】Journal of Organic Chemistry 48p393−395 (1983)
【非特許文献3】Journal of the American Chemical Society (75) p2511−2512 (1953)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、L−カルノシンの粗体に含まれる不純物は、極性などL−カルノシンと非常に似ている挙動を示すため、精製が困難である。このため、十分な純度まで精製を行うと収率が低くなってしまうという問題があった。例えば前記非特許文献3では、水とエタノールの混合溶液により再結晶をし、精製されたL−カルノシンの結晶を析出させているが、この時の収率は65%と低い。
【0006】
そこで、本発明は、高純度のL−カルノシンを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、不純物を含むL−カルノシンの粗体を精製する精製工程を含むL−カルノシンの製造方法であって、前記精製工程が、前記粗体の水溶液とアルコールとを混合して得られた混合溶液にL−カルノシンの種結晶を添加し、30℃〜80℃で1〜10時間熟成(ripening)させる熟成工程と、前記工程で熟成された混合溶液にアルコールを加え、高純度化されたL−カルノシン結晶を析出させる結晶析出工程とを、含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、L−カルノシンを高純度、高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法は、不純物を含むL−カルノシンの粗体を精製する精製工程を含む。該精製工程の原料となる粗体としては、従来の製法、即ち、β−アラニン又はその誘導体とL−ヒスチジン又はその誘導体とを原料として合成された粗体が特に制限無く使用できる。しかしながら、ヒスチジンからの収率が例えば90%と非常に高く、しかも粗体自体の純度(ここで、純度とは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った時に得られるチャートにおけるピーク面積を基準とする純度を意味する。以下同じ。)が98%以上と高いことから、フタロイル−β―アラニンの酸クロライドとトリメチルシリル基で保護されたL−ヒスチジンとを反応させて得たフタロイル−L−カルノシンをヒドラジンで脱保護する方法より得られた粗体を使用するのが好適である。該方法については、例えばDokladi na Bulgarskata Akademiya na Naukite 44 (8) p53−56 (1991)に記載されているが、その概要を以下に説明する。
【0010】
上記粗体の製造方法で使用されるフタロイル−β−アラニンは、試薬或いは工業原料を使用することもできるが、Journal of the American Chemical Society (75) p2388−2390 (1953)に記載されているように無水フタル酸とβ−アラニンを高温下反応させる事で得ることも可能である。
【0011】
フタロイル−β−アラニンの酸クロライド化は、二塩化オキサリルもしくは塩化チオニルと反応させる事で得られる。この場合、トルエンやジクロロメタンなどの溶媒下、フタロイル−β−アラニンに対して1〜30当量の二塩化オキサリルもしくは塩化チオニルを滴下し、溶媒還流下で行ってもよいし、無溶媒下で20〜100℃で反応を行っても良い。反応後は残留する二塩化オキサリルなどを溶媒留去することでフタロイル−β−アラニンの酸クロライドが得られる。
【0012】
また、前記方法で使用されるトリメチルシリル基で保護されたL−ヒスチジンは、次のように合成される。即ち、硫酸触媒下、3〜10当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン中で還流下反応させ、pH調節後、キシレンなどの溶媒を加え、溶媒留去し、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化溶媒で再結晶によりトリメチルシリル基で保護されたL−ヒスチジンを得る。
【0013】
前記粗体の製造方法では、上記のようにして得られたフタロイル−β−アラニンの酸クロライドとトリメチルシリル基で保護されたL−ヒスチジンとを、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化溶媒下混合し、室温で反応させることにより、フタロイル−L−カルノシン塩酸塩を得る。そして、得られたフタロイル−L−カルノシン塩酸塩をアルコール中で、水酸化リチウム1水和物などのアルカリで中和しすることにより、フタロイル−L−カルノシンとし、これを水中でヒドラジン水和物により脱保護し、酢酸処理した後にpH調節することにより、L−カルノシンの粗体を含む反応液を得ることができる。
【0014】
このようにして得られた粗体を含む反応液(水溶液)はそのまま、或いは水を添加することにより濃度調整を行って精製工程に供することができるが、多量に含まれる副生物を除去するために精製工程に供する前に一旦単離するのがこのましい。例えば、前記した方法で得られる粗体の反応液(水溶液)には、フタルヒドラジド等のヒドラジン由来の副生成物が多く含まれるが、該反応液から水を留去した後、残渣をアルコールで再沈殿することにより、これらヒドラジン由来の副生成物が除去されたL−カルノシンの粗体を得ることができる。このようにして単離された粗体は通常、95〜98%程度の純度を有する。
【0015】
本発明の製造方法においては、晶析による精製工程を行う前に粗体の純度はできるだけ高くしておくことが好ましい。また、上記のような反応により得られる粗体には、晶析による除去が困難な着色成分を含まれることがあるので、晶析による精製を行う前に活性炭処理によりこのような着色成分を除去するのが好ましい。活性炭処理は、Lカルノシンの粗体の水溶液を活性炭と接触させた後に、活性炭を除去することにより行うことができる。
【0016】
このとき活性炭としては、試薬として或いは工業的に入手可能なものが特に制限なく使用できる。好適に使用できる活性炭を具体的に例示すれば、次のようなもの挙げることができる。
【0017】
日本ノーリット社のPK、PKDA MESY/MRX、ELORIT、AZ0、DARCO、HYDRODARCO 3000/4000、DARCO 12X20LI、DARCO12X20DC、PETRODARCO、DARCO MRX、GAC、GAC PLUS、DARCO VAPURE、GCN、C−GRANULAR等の破砕活性炭類、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS等の粉末活性炭類、ROW、RO、ROX、RB、R、R.EXTRA、SORBONORIT、GF 40/50、CNR、ROZ、RBAA、RBHG、RZN、RGM等の成型活性炭・添着活性炭類、PICA社の粒状活性炭類、球状活性炭類、粉末活性炭類、日本エンバイロケミカル社のモルシーボン、WHA、粒状白鷺(X2M、GM2X、GH2X、GHXUG、GS1X、GS3X、GTX、GTSX、G2X、GS2X、GAAX、MAC−W、GOC、GOX、GOHX、APRC、TAC、MAC、XRC、NCC、SRCX)等の機能性活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3、等の粒状活性炭類、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類、ハニカムカーボ白鷺、モールドカーボン、カーボンペーパー、白鷺C−DC、カルボラフィンDC、粒状白鷺DC、アルデナイト、アルデナイトSP等の活性炭加工品類二村化学工業社のSG、SGP等の顆粒活性炭類、TA、TS、TG、TM等の造粒活性炭類、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、CG48B、CG48BR、CW130B、CW130A、CW130BR、CW130AR、CW480SZ、CW6100SZ、GL130A、GL240A、GM130A、GM240A、GMC等の破砕活性炭類。
【0018】
これらの中でも、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUSや白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類が好適であり、特に白鷺(C、M、A、P)、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、CA、CN、CGが好適である。
【0019】
これら活性炭の使用量は、着色成分の除去性及び経済性の観点から、L−カルノシンの質量に対して0.01〜10倍、好ましくは0.02〜5倍の質量とするのが好適である。
【0020】
粗体水溶液と活性炭との接触は流通法又はバッチ法で行うことができる。流通法では活性炭を充填した塔又はカラムに粗体水溶液を流通させればよい。また、バッチ法では、容器内で活性炭と粗体水溶液を混合すればよい。
【0021】
活性炭処理温度は、低温度ほど活性炭効果が出やすく好ましいが、L−カルノシンが結晶化してしまう恐れがあるため、通常−5℃〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲で行われる。活性炭処理時間は、あまり短いと充分な効果が得られず、あまり長くても、分解などにより不純物が増加する場合もあるため、通常0.1時間〜10時間、好ましくは0.5〜8時間の範囲で行われる。また、バッチ法を採用した場合における活性炭処理後の活性炭の分離は、濾過により行うことができる。
【0022】
このような活性炭処理を行うことにより着色成分が除去されたL−カルノシン粗体(通常、純度97〜99%)を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法は、必要に応じて活性炭処理を施したL−カルノシン粗体を下記(A)及び(B)の工程を含んでなる精製工程で精製する。
【0024】
(A) L−カルノシン粗体の水溶液とアルコールとを混合して得られた混合溶液にL−カルノシンの種結晶を添加し、30℃〜80℃で1〜10時間熟成させる熟成工程、及び
(B)前記工程で熟成された混合溶液にアルコールを加え、高純度化されたL−カルノシン結晶を析出させる結晶析出工程。
【0025】
粗体の水溶液に単にアルコールを添加してL−カルノシンの結晶を析出させた場合、或いは種結晶を加えて熟成を行う場合でも熟成条件が本発明で規定する条件から外れる場合には、99.5%以上の純度のL−カルノシンを高収率で得ることが困難である。また、種結晶を加えて熟成を行ってもそのまま冷却して結晶を析出させた場合には、収率が低下する。
【0026】
前記工程(A)で使用するL−カルノシン粗体の水溶液におけるL−カルノシンの濃度は、高純度、高収率で精製できるという理由から、水溶液全体の質量を基準として5〜30質量%、特に10〜20質量%とするのが好ましい。
【0027】
(A)工程において上記水溶液と混合されるアルコールとして、高純度で精製できるという理由から、炭素数1〜4の直鎖アルコールを使用するのが好ましい。好適に使用できるアルコールを具体的に例示すると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。
【0028】
工程(A)において混合溶液を調製する際の水とアルコールの混合溶液の比率は、不純物除去性と収率のバランスから水:アルコールの比率が1:0.5〜1:10、特に1:1〜1:5となるようにするのが好ましい。粗体水溶液とアルコールとを混合する際に別途水を供給し濃度調節を行うことも可能である。不純物除去性、結晶の取り出し易さ、収率、及び一バッチあたりの収量の観点から、混合液中の含まれるL−カルノシンの濃度は、溶液全体の質量を基準として1〜15質量%、特に5〜10質量%とするのが好ましい。
【0029】
混合溶液の調製は、L−カルノシン粗体の水溶液にアルコールを滴下するのが好ましい。アルコールにL−カルノシン粗体水溶液を滴下すると、滴下直後に結晶が析出することがあり高純度化が図れないことがある。アルコールを滴下するときの液温は、0〜100℃、特に5〜80℃に保つのが好適である。液温があまり低いと結晶化が促進され、アルコール滴下時に結晶化が起こり、不均一な純度を持ったL−カルノシンが形成される可能性があり、あまり高いと溶媒が蒸発してしまい、水とアルコールの比率が変化し、純度が低下することがある。
【0030】
工程(A)においては、混合溶液を調製した後に種結晶を添加し、30〜80℃で1〜10時間熟成する必要がある。こうすることにより、より高純度なL−カルノシンを得ることが可能となる。種結晶の添加量は、あまり少ないと二次核が発生し、均一な結晶を得ることができず、あまり多くても経済的ではないため、通常、L−カルノシンの質量を基準として通常、0.001〜0.5倍、好ましくは0.005〜0.3倍の質量の種結晶を添加する。種結晶添加後の熟成温度は、30〜80℃であればよいが、さらに高純度で精製できるという理由から40〜70℃とするのが好ましい。温度や水とアルコールの比率、溶媒量にもよるが、熟成時間は1〜10時間程度で十分である。
【0031】
工程(B)では、このようにして熟成した混合溶液にアルコールを加え、高純度化されたL−カルノシン結晶を析出させる。アルコールを添加せずに結晶を析出させた場合には収率を高くすることができない。このとき添加するアルコールとしては混合溶液調製時に使用したのと同種のアルコールを使用するのが好ましい。添加するアルコールの量は、純度、収率、経済性、及び一バッチあたりの収量の観点から、含有するL−カルノシンの質量に対して0.5〜15倍、特に1〜10倍の質量とするのが好ましい。
【0032】
(B)工程では、収率を高くするため、アルコールを滴下後、溶液を冷却するのが好ましい。このとき、純度及び生成効率の観点から冷却速度は、0.01℃/分〜5℃/分、特に0.05℃/分〜2℃/分とするのが好ましい。冷却による最終到達温度は、−10〜30℃、特に0〜25℃とするのが好ましく、最終到達温度で1〜2時間保持することにより高純度のL−カルノシンを高収率で回収することができる。
【0033】
このようにして析出したL−カルノシンの結晶は、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することにより単離される。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0035】
製造例1
攪拌羽、温度計、ガス吸収装置を備えた1,000ml四つ口フラスコにフタロイル−β−アラニン107g(0.488mol)を加え、N,N‘−ジメチルホルムアミド10ml存在下、二塩化オキサリル600mlを加え、室温で2時間攪拌後、二塩化オキサリルを真空留去し、黄色結晶を得た(1)。別の1,000ml四つ口フラスコにL−ヒスチジン62.08g(0.40mol)、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン256ml(1.2mol)、濃硫酸0.1ml加え、還流下30分間攪拌した。冷却後、キシレン150ml加え、75℃で溶媒留去し、残渣をクロロホルム80mlで再結晶した(2)。1をクロロホルム400mlに溶解し、(2)に滴下し、室温で8時間攪拌した。攪拌後エタノール400ml加え30分攪拌後、結晶をろ過し154gのフタロイル−L−カルノシン塩酸塩を得た。
【0036】
1,000ml四つ口フラスコにメタノール800ml、水酸化リチウム1水和物17.1gとフタロイル−L−カルノシン塩酸塩154gを加え、室温で30分間攪拌し、還流下15分間攪拌した。冷後、結晶をろ過し、乾燥した結果、フタロイル−L−カルノシン138g得た。
【0037】
1,000ml四つ口フラスコにフタロイル−L−カルノシン138g、ヒドラジン水和物23ml(0.46mol)、水460ml投入し、還流下1時間攪拌した。その後、酢酸31mlを滴下し10分間攪拌し、冷却した。得られた固体をろ過で除去し、pHを調節後、エタノールにより再沈殿し、さらに水を加えて黄色味を帯びたL−カルノシン粗体水溶液(L−カルノシン81.2g/水406g)を得た。なお、L−カルノシンのHPLC純度は97.9%であった。
【0038】
実施例1
攪拌羽と温度計を備えた1,000ml四つ口フラスコに製造例1で得たL−カルノシン粗体水溶液を、5℃に冷却後、日本エンバイロケミカル社製活性炭白鷺Aを8.1g加え、2時間攪拌した。攪拌後活性炭をろ過し、活性炭を20mlの水で洗浄し、無色澄明水溶液を得た。該水溶液に含まれるL−カルノシンのHPLC純度は99.0%であった。
【0039】
攪拌羽と温度計を備えた2,000ml四つ口フラスコに活性炭処理後のL−カルノシン粗体水溶液505gを加え、50℃に昇温し、メタノール730mlを30分間かけて滴下した。次いで混合溶液に種結晶を1.4g添加し、50℃で2時間熟成した。結晶が充分成長している事を確認してから新たにメタノール406mlを30分かけて滴下し、0.4℃/分のスピードで5℃まで冷却し、5℃で1時間保持した。その後、析出したL−カルノシンの結晶をろ過し、真空乾燥を行った結果、73.6g(精製収率90.7%)、HPLC純度99.87%の白色L−カルノシンが得られた。
【0040】
実施例2
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、活性炭に日本ノーリット社製CAを8.1g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、73.2g(精製収率90.1%)、HPLC純度99.85%の白色L−カルノシンが得られた。
【0041】
実施例3
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、アルコールにエタノールを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、73.2g(精製収率90.2%)、HPLC純度99.80%の白色L−カルノシンが得られた。
【0042】
実施例4
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、アルコールにイソプロパノールを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、73.3g(精製収率90.3%)、HPLC純度99.86%の白色L−カルノシンが得られた。
【0043】
比較例1
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、熟成温度を20℃で行った以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、73.2g(精製収率90.2%)、HPLC純度99.13%のL−カルノシンが得られ、あまり精製されなかった。
【0044】
比較例2
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、熟成を行わずに種結晶を加えてから直ちにメタノールに滴下して結晶を析出させた他は実施例1と同様の操作を行った。その結果、73.3g(精製収率90.3%)、HPLC純度99.0%のL−カルノシンが得られ、ほとんど精製されなかった。
【0045】
比較例3
製造例1と同様の方法で得たL−カルノシン水溶液使用し、熟成後にメタノールを加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、62.8g(精製収率77.3%)、HPLC純度99.91%の白色L−カルノシンが得られ、収率が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むL−カルノシンの粗体を精製する精製工程を含むL−カルノシンの製造方法であって、前記精製工程が、前記粗体の水溶液とアルコールとを混合して得られた混合溶液にL−カルノシンの種結晶を添加し、30℃〜80℃で1〜10時間熟成させる熟成工程と、前記工程で熟成された混合溶液にアルコールを加え、高純度化されたL−カルノシン結晶を析出させる結晶析出工程とを、含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熟成工程の前工程として不純物を含むL−カルノシンの粗体の水溶液を活性炭処理する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フタロイル−β―アラニンの酸クロライドとトリメチルシリル基で保護されたL−ヒスチジンとを反応さて得たフタロイル−L−カルノシンをヒドラジンで脱保護することにより不純物を含むL−カルノシンの粗体を得る工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。

【公開番号】特開2007−31328(P2007−31328A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215661(P2005−215661)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】