L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス16L1タンパク質、それから調製したウイルス様粒子および該粒子の調製方法
本発明は、異種ペプチド、詳細にはHPV L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法を記載する。当該方法には、異種ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;該L1ポリペプチドおよび異種ペプチドの配列を含むDNA配列を、中で該DNA配列を発現し得る宿主細胞に導入し;該DNA配列を発現させ;ついで、該異種ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する工程が含まれる。典型的には、異種ペプチドをコードするヌクレオチドで、挿入の点におけるL1ポリペプチドのヌクレオチドを置換する。また、本発明は、該方法に用いるベクター、該ベクターを含む宿主細胞、および該方法に従って作製したキメラHPV L1ポリペプチドを含むワクチンも記載する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、ヒト・パピローマウイルスのポリペプチド、詳細にはウイルス様粒子(VLP)またはキャプソメアを調製する方法に関する。
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトを含む種々の高等脊椎動物にイボおよび他の障害を誘導する一群の小さなDNAウイルスである。
【0003】
パピローマウイルス(PV)は、パポーバウイルス科、パピローマウイルス属のメンバーであり、7,900塩基対の典型的サイズを有する二本鎖環状DNAゲノムを含む(Seedorfら, 1985)。すべてのPVは同様のゲノム組織を有し、それにはDNA複製および細胞トランスフォーメーションに関与するタンパク質をコードする初期遺伝子領域、およびウイルスキャプシドタンパク質をコードする後期領域が含まれる(図1)。long control region(LCR)として知られている非コード領域には、転写および複製に関する制御エレメントが含まれる。
【0004】
パピローマウイルスは2のウイルス構造タンパク質、L1およびL2をコードしている。ビリオンには72のキャプソメアとして並んだ360のL1分子が含まれており、その各キャプソメアは5のL1分子からなるペンタマーである(Bakerら, 1991)。L2分子に対するL1分子の比率は、ほぼ30:1と概算されており(Doobarら, 1987)、これは各ビリオンがほぼ12のL2分子を含むことを示唆している。ビリオン当たりのL1分子の数が増えるほど、L1を"多い方の"キャプシドタンパク質といい、L2を"少ない方の"キャプシドタンパク質ということになる。
【0005】
HPV−16 L1は1.518kbの遺伝子によってコードされ、504のアミノ酸のタンパク質を生じる。L1は55ないし58kDの分子量を有する(Browneら, 1988)。L1のドメインは細胞結合を仲介するようであり、また、ウイルスに対する抗体およびT細胞免疫応答を仲介する抗原決定基を含むようである。
【0006】
生殖器ヒト・パピローマウイルス(HPV)の中には、通常は退行するかまたは悪性腫瘍には進行しない生殖器のイボおよび子宮頸部病変を引き起こす低リスクHPV(例えば、HPV6およびHPV11)、ならびに高い等級の子宮頸部病変およびガンと関連する高リスク(または発ガン性)遺伝子型(例えば、HPV16およびHPV18)が存在する。HPVは幾つかの他の肛門性器(anogenital)ガンおよび上部気道消化管ガン(upper aerodigestive tract cancer)における病因因子として関連付けられてもいる(Breitburdら, 1999)。臨床的、分子的、実験的および疫学的事実の抵抗しがたい集合は、ある種のHPV型が子宮頸ガンの主要因であることを確立している(Lowyら, 1994; IARC, 1995)。
【0007】
HPV16は子宮頸ガン症例の大部分の症例に存在し、ほぼさらなる30%の症例においてはさらなる3の型(HPV18、31および45)が存在する(IARC, 1999)。
【0008】
子宮頸ガンの発病率は合衆国においては低下しているが、それは、各年に約500,000の新たな症例が診断される途上国の女性の最も一般的な悪性腫瘍である。
【0009】
伝統的に大部分の予防的なワクチンは、生、弱毒ウイルスまたはホルマリン不活化ウイルスからなる。パピローマウイルスのビリオンは免疫原性が非常に高く、全身的に注射した場合は高い力価(>10,000)の中和抗体を誘導する(Doretzkyら, 1980; Kimbauerら, 1991, 1992)。しかしながら、大量のこれらの伝統的なワクチンを作り出すことに含まれる困難および危険性に起因して、ウイルスタンパク質サブユニットまたはウイルス様粒子(VLP)ワクチンを開発することが非常に強調されている。
【0010】
HPVに対する予防ワクチン用の最良の候補タンパク質は、VLPに自己会合する多い方のキャプシドタンパク質L1である(SchillerおよびLowy, 2001)。これらのVLPは非常によく特徴付けられており、全ビリオンと区別し得ないように形態上見える(Chenら, 2001; Roseら, 1993)。実験動物にVLPを注射すると、中和抗体を誘導し(Roseら, 1998);接種したVLPワクチンの予備的なヒト試験も、これらはよく耐性であり非常に免疫原性が高く、前者の症例においては刺激された強いBおよびT細胞応答も示された(Evansら, 2001; Harroら, 2001)。
【0011】
発ガン型の粘膜親和性(mucotropic)HPVに対する有効で安価な予防ワクチンは、世界のガンの負担、特にHPV16に対する負担に対して潜在的にインパクトを有し得るであろう。
【0012】
HPV6型および16型に共通の中和エピトープは、HPV16の少ない方のキャプシドタンパク質、L2の領域(aa)108−120に見出されている(Kawanaら, 1998, 1999)。エピトープに対応する合成ペプチドで鼻腔免疫化したBalb/cマウスは、HPV6、16および18のL1/L2キャプシドと交差反応するIgAおよびIgG抗体を生じる免疫応答を誘起した(Kawanaら, 2001)。ウサギ口腔パピローマウイルス(ROPV)またはウサギ乳頭腫パピローマウイルス(CRPV)のいずれかからのL2配列領域94−122由来の2の重複するペプチドのいずれかでウサギを免疫化すると、精製した同族のL2、特に感染細胞中で認識されたL2に反応した血清を生じ、これはイン・ビトロ(in vitro)でウイルスを中和した。CRPVペプチドで免疫化したウサギは、CRPV攻撃に対して免疫性であった(Embersら, 2002)。
【0013】
かくして、本発明者らは、その自身の権利におけるワクチンとして、および他の免疫原性ペプチド配列の提示のためのモデルとして、キメラL1 VLP上のこのL2エピトープの提示をさらに調べることを決心した。
【0014】
発明の概要
本発明の第1の形態によれば、
HPV L2ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよびL2ペプチドの配列を含むDNA配列を、中で該DNA配列を発現し得る宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
L2ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、HPV L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0015】
HPV L1ポリペプチドおよび/またはHPV L2ペプチドは、HPV−16のポリペプチドまたはペプチドとし得る。
【0016】
HPV L2ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)、またはその修飾体もしくは誘導体である配列を有し得、但し、その修飾配列または誘導配列は、配列番号:1の配列に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起するペプチドをコードする配列である。
【0017】
L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドはL2 DNA配列の導入の点において欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入したL2ヌクレオチドの数と対応するであろう。
【0018】
タンパク質の発現は、原核生物または真核生物の発現システムのいずれかにおいてとし得る。
【0019】
キメラ・ポリペプチドは、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、または配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列を有し得る。キメラ・ポリペプチドをコードするDNA配列は、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはこれらの配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるポリペプチドをコードする配列を有し得る。
【0020】
キメラL1ポリペプチドは、ウイルス様粒子および/またはキャプソメアに会合し得る。ウイルス様粒子またはキャプソメアは免疫原性であってもよい。
【0021】
本発明の第2の形態によれば、前記HPV L2ペプチドをコードするDNA配列が挿入されたキメラHPV L1 DNA配列を提供し、ここに該得られたHPV L1配列はHPV L2ペプチドを発現することができる。
【0022】
L2 DNA配列の導入の点におけるL1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドは欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入されたL2ヌクレオチドの数に対応するであろう。
【0023】
キメラ核酸配列は、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載の配列、またはその修飾体もしくは誘導体であるDNA配列とし得、但し、その修飾DNA配列または誘導DNA配列は、配列番号:4、6、8、10および12のいずれか1の配列に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるキメラL1ペプチドをコードする。
【0024】
本発明の第3の形態によれば、前記した核酸配列を含むベクターを提供する。
【0025】
本発明の第4の形態によれば、前記したベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0026】
本発明のいまださらなる形態によれば、前記HPV L2ペプチド(配列番号:1)を含むキメラHPV L1ポリペプチドを提供する。
【0027】
該キメラ・ポリペプチドは、キメラHPV L1ウイルス様粒子またはキャプソメアとし得る。
【0028】
本発明のさらなる形態によれば、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、またはその修飾体または誘導体である配列を有し、その修飾体または誘導体は、配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列であるHPVポリペプチドを提供する。
【0029】
本発明のもう1の形態によれば、
異種ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよび異種ペプチドの配列を含むDNA配列を、該DNA配列を発現し得る宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
異種ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0030】
異種ペプチド配列は、いずれか他のHPV配列とすることができ、あるいはB−細胞またはT−細胞特異的ないずれかの抗原エピトープ由来のものとし得る。
【0031】
異種DNA配列の導入の点におけるL1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドは欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入された異種ヌクレオチドの数に対応するであろう。
【0032】
本発明のいまださらなる形態によれば、前記したものと実質的に同じである、キメラHPV L1ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードするDNA配列を含むワクチンを提供する。該ワクチンは、HPV感染症、詳細にはHPV6、16および18の感染症の予防的または治療的処理用とし得る。
【0033】
好ましくは、ワクチンは、HPVに対するおよび好適な宿主中の導入されたペプチドに対する免疫原性応答を誘導することができるであろう。
【0034】
ワクチンは、さらに、医薬上の賦形剤および/または補助剤を含み得る。
【0035】
発明の形態の詳細な説明
キメラ構築物の設計
HPVの少ない方のキャプシドタンパク質、L2の領域(aa)108−120のHPV6および16に対する共通の中和エピトープであるペプチド:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)
をコードするプライマーを合成した。
【0036】
Chenら(2000)によって発表されたHPV16 L1のモノマー構造(図2)によれば、種々の表面ループおよび領域がペンタマーおよび高次構造が形成された場合に曝露される。
【0037】
V5抗体(L1に対して作り出された中和抗体)のエピトープマッピングに基づき、L1 VLPのV5抗体結合領域を維持するように、L2ペプチドを挿入するための種々の領域/ループを選択した。
【0038】
L1分子の多い方の抗原領域(V5結合領域)は、アミノ酸残基A266(表面残基V271の下方に位置するF50と共に)およびS282でマッピングされている(Rodenら, 1996、Whiteら, 1999)。これらの残基に基づいて、本発明者らは、分子のBループを変化させないことを決定した。これは抗原領域を変化させ、おそらく活性を有するL1エピトープを破壊するであろうからである。
【0039】
したがって、以下のL1領域を、L2ペプチドを挿入するために選択した:
A: E−Fループ(配列番号:4および5)
C: D−Eループ(配列番号:6および7)
E: L1のh4へリックスとJ領域との間の領域(配列番号:8および9)
F: h4へリックス(配列番号:10および11)
H: 内部C−Dループ(配列番号:12および13)
【0040】
キメラ構築物の合成
キメラ構築物は、L2ペプチドをコードする3'末端を用いて設計したプライマーを用いるPCRによって調製した。pSKプラスミドベクターにクローン化したHPV 16SA−optL1遺伝子(配列番号:3および4)をテンプレートとして用いた。以下のDNA配列:
【0041】
5'−TTAGTGGAAGAAACTAGTTTTATTGATGC
TGGTGCACCA−3'(配列番号:14)
【0042】
を用いてL2ペプチドをコードした。
【0043】
表1に示す領域を置換することによって、L2ペプチドを遺伝子に挿入した。存在するヌクレオチドを置換するこの方法は、いずれの置換もせずにL2ヌクレオチドをL1配列に単に挿入するよりも、三次構造の乱れが最小限に維持され、かつ、余分なペプチド"ループ"に起因する近くの配列の立体効果の可能性またはそれに結合する抗体との干渉の可能性が最小限化される点で有利である。
【0044】
挿入したL2エピトープの位置は、キメラ構築物について各々図15〜19に図示する。
【0045】
配列決定したpSK構築物からのキメラ遺伝子を、pFastbac1ベクター(SalI/XbaIサイト)にクローン化した。pFastbac1クローンからのDNAを用いてDH10bac細胞をトランスフェクトし、bacmidクローンを調製した。
【0046】
Bac−to−Bac(登録商標)バキュロウイルス発現システム(Life Technologies社)を用いて、昆虫細胞中でキメラ構築物を発現した。
【0047】
【表1】
【0048】
bacmid DNAを、セルフェクチンを用いてsf21(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)昆虫細胞にトランスフェクトした。基本的なBac−to−Bac(登録商標)プロトコールに従って、組換えウイルスを増幅し、キメラVLPを発現させるためのsf21昆虫細胞に感染させた。
【0049】
その後に、基本的なHPV16 L1 VLP精製プロトコールを行った。感染した昆虫細胞を3,000rpmで沈殿させ、0.5MのNaClを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。その懸濁液を5秒間隔で4回、超音波処理した。ついで、これを、40%スクロース・クッション上にオーバーレイし、100,000×gにて3時間ペレット化した。このペレットをCsCl緩衝液(0.4g/mlのCsClを含むPBS)に再懸濁し、18および26ゲージ注射針を通して吸引して再懸濁して超音波の前に粘度を低下させた(5秒間隔で4回)。その懸濁液を10℃、100,000×gにて24時間遠心した。
【0050】
CsClグラジエント中に明瞭なバンドは観察されなかった。したがって、500μl画分を収集し、コンフォメーション特異的V5およびD9(線状エピトープ)モノクローナル抗体を用いるELISAによって解析した。V5および/またはD9抗体と反応することが判明した画分を保存し、PBSに対して4℃にて一晩透析した。
【0051】
結果
ウェスタンブロットは、ウサギにおいてペプチドに対して作らせたポリクローナルL2抗体(The Jake Gittlen Cancer Research Institute, The Milton S. Hershey Medical Centre, Hersey Pennsylvania, USAのNeil Christensen博士から得た)がキメラL1粒子(55kD)に結合することを示し、これはL2エピトープがキメラ構築物によって発現されていることを示している。
【0052】
精製したVLPの抗体特徴付けを、Neil Christensen博士によって提供された一連の抗体を用いたELISAによって行った(Christensenら, 1996, 2001)。表2はかかるデータを要約している。
【0053】
【表2】
【0054】
抗体およびそれらの結合領域の簡単な説明を以下の表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
キメラ粒子の電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察の結果は、キメラ構築物から形成された粒子が野生型HPV L1遺伝子によって生成されたものと同一でないことを示した。形成された粒子は主として部分的に分解されているかまたは部分的にバラバラになった状態であり、一般的に互いに凝集しているように見える。
【0057】
キメラ抗原を用いた動物実験
6セットの5匹のBalb/cマウスを動物実験に用いて、キメラVLPの接種が免疫応答を誘起するかを判定した。5のキメラ構築物から生成したキメラVLPおよび非キメラHPV16 L1(SA−opt)から生成したキメラVLPを100μgの濃度で2の皮下部位に注射した。0、2および4週目に動物に接種した。血液試料および膣洗液を種々の期間に採取した。
【0058】
各群からのマウス血清を保存し、組換えバキュロウイルスによって昆虫細胞中に生成したVLPを用いるELISAによって解析した。各群のマウスのエンドポイント力価測定を行って、応答の程度を決定し、応答のより良好な反映を得た(図20ないし26)。
結果は、高い免疫応答が達成されたことを示している。
【0059】
参考資料
Baker, T. S., W. W. Newcomb, N. H. Olson, L. M. Cowsert, C. Olson,およびJ. C. Brown. 1991. Biophys. J. 60:1445-1456.
Breitburd, F.およびP. Coursaget. 1999. Cancer Biology 9: 431-445.
Browne, H. M., M. J. Churcher, M. A. Stanley, G. L. Smith,およびA. C. Minson. 1988. J. Gen. Virol. 69, 1263-1273.
Chen, X. S., Garcea,R. L., Goldberg, I., Casini, G.,およびHarrison, S. C. (2000). Mol Cell 5, 557-567.
Chen, X. S., Casini, G., Harrison, S. C.およびGarcea, R. (2001). Joumal of Molecular Biology 307, 173-182.
Christensen, N. D., J. Diller, C. Eklund, J. J. Carter, G. C. Wipf, C. A. Reed, N. M. Cladel,およびD. A. Galloway. 1996. Virol. 223, 174-184.
Christensen ND, Cladel NM, Reed CA, Budgeon LR, Embers ME, Skulsky DM, McClements WL, Ludmerer SW, Jansen KU. 2001. 20 ; 291 (2): 324-34.
Doorbaar, J.およびP. H. Gallimore. 1987. J. Virol. 61: 2793-2799.
Doretzky, I., R. Shober, S. K. ChattopadhyayおよびD. R. Lowy. 1980. Virology 103: 369-375.
ME Embers, LR Budgeon, M Pickel, ND Christensen. 2002. J. Virol., 76 (19): 9798-9805.
Evans, T. G., Bonnez, W., Rose, R. C., Koenig, S., Demeter, L., Suzich, J. A., O'Brien, D., Campbell, M., White, W.l., Bailey, J.およびReichman, R. C. 2001. J. Infect. Dis. 183, 1485-1493.
Harro, C. D., Pang, Y. Y., Roden, R. B., Hildesheim, A., Wang, Z., Reynolds, M. J., Mast, T. C., Robinson, R., Murphy, B. R., Karron, R. A., Dillner, J., Schiller, J. T.およびLowy, D. R. 2001. J. Natl. Cancer Inst. 93, 284-292.
IARC, World Health Organization. 1995. WHO Report of a technical meeting, Geneva. Ref Type: Report
IARC, World Health Organization. 1999. WHO. Report of a technical meeting, Geneva, 16-18 Feb 1999. 1999. Ref Type : Report
Kawana, K., Matsumoto, K., Yoshikawa, H., Taketani, Y., Kawana, T., Yoshiike, K.およびKanda, T. 1998. Virology 245,353-359.
Kawana, K., Yoshikawa, H., Takentani, Y., Yoshiike, K.およびKanda, T. (1999). Jouranl of Virology 73, 6188-6190.
Kawana, K., Kawana, Y., Yoshikawa, H., Takentani, Y., Yoshiike, K.およびKanda, T. (2001). Vaccine 19, 1496-1502.
Kirnbauer, R., F. Booy, N. Cheng, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1992. Proc. Natl. Acad. Sci USA. 89, 12180-12184.
Kirnbauer, R., J. Taub, H. Greenstone, R. Roden, M. Durst, L. Gissman, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1993. J. Virol. 67, 6929-6936.
Lowy, D. R., R. KirnbauerおよびJ. T. Schiller. 1994. Proc Natl Acad Sci U S A 91: 2436-2440.
Roden, R. B. S., H. L. Greenstone, R. Kirnbauer, F. P. Booy, J. Jessie, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1996. J. Virol. 70, 5875-5883.
Rose, R. C., Bonnez, W., Reichman, R. C.およびGarcea, R. L. 1993. J. Virol. 67, 1936-1944.
Rose, R. C., White, W.I., Li, M., Suzich, J. A., Lane, C.およびGarcea, R. L. 1998. Journal of Virology 72, 6151-6154.
Schiller, J. T.およびLowy, D. R. 2001. Expert. Opin. Biol. Ther. 1, 571-581.
Seedorf, K., G.Krammer, M. Durst, S. SuhaiおよびW. G. Rowekamp. 1985. Virol. 145, 181-185.
White, W.I., Wilson, S. D., Palmer-Hill, F. J., Woods, R. M., Ghim, S.-J., Hewitt, L. A., Goldman, D
M., Burke, S. J., Jenson, A. B., Koenig, S.およびSuzich, J. A. 1999. J. Virol. 73, 4882-488.
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1はHPV16のゲノム構成の概略図を示す。
【図2】図2はHPV16 L1のモノマー構造を示す。
【図3】図3は中にL2エピトープが挿入されて図5ないし14のキメラ構築物を生成するHPV16 L1遺伝子の天然配列のヌクレオチド配列(配列番号:2)を示す。
【図4】図4は図3のアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。
【図5】図5はキメラ構築物Aのヌクレオチド配列(配列番号:4)を示す。
【図6】図6はキメラ構築物Aのアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図7】図7はキメラ構築物Cのヌクレオチド配列(配列番号:6)を示す。
【図8】図8はキメラ構築物Cのアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。
【図9】図9はキメラ構築物Eのヌクレオチド配列(配列番号:8)を示す。
【図10】図10はキメラ構築物Eのアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。
【図11】図11はキメラ構築物Fのヌクレオチド配列(配列番号:10)を示す。
【図12】図12はキメラ構築物Fのアミノ酸配列(配列番号:11)を示す。
【図13】図13はキメラ構築物Hのヌクレオチド配列(配列番号:12)を示す。
【図14】図14はキメラ構築物Hのアミノ酸配列(配列番号:13)を示す。
【図15】図15はキメラ構築物Aの概略図を示す。
【図16】図16はキメラ構築物Cの概略図を示す。
【図17】図17はキメラ構築物Eの概略図を示す。
【図18】図18はキメラ構築物Fの概略図を示す。
【図19】図19はキメラ構築物Hの概略図を示す。
【図20】図20は構築物Aから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図21】図21は構築物Cから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図22】図22は構築物Eから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図23】図23は構築物Fから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図24】図24は構築物Hから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図25】図25は非キメラHPV16 L1(SA−opt)から得たVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図26】図26は最初の免疫化の後の追加免疫に対するマウスの応答を示す。
【図27】図27はL1配列に挿入したL2ペプチドのヌクレオチド配列(配列番号:14)を示す。
【図28】図28はL1配列に挿入したL2ペプチドのアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、ヒト・パピローマウイルスのポリペプチド、詳細にはウイルス様粒子(VLP)またはキャプソメアを調製する方法に関する。
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトを含む種々の高等脊椎動物にイボおよび他の障害を誘導する一群の小さなDNAウイルスである。
【0003】
パピローマウイルス(PV)は、パポーバウイルス科、パピローマウイルス属のメンバーであり、7,900塩基対の典型的サイズを有する二本鎖環状DNAゲノムを含む(Seedorfら, 1985)。すべてのPVは同様のゲノム組織を有し、それにはDNA複製および細胞トランスフォーメーションに関与するタンパク質をコードする初期遺伝子領域、およびウイルスキャプシドタンパク質をコードする後期領域が含まれる(図1)。long control region(LCR)として知られている非コード領域には、転写および複製に関する制御エレメントが含まれる。
【0004】
パピローマウイルスは2のウイルス構造タンパク質、L1およびL2をコードしている。ビリオンには72のキャプソメアとして並んだ360のL1分子が含まれており、その各キャプソメアは5のL1分子からなるペンタマーである(Bakerら, 1991)。L2分子に対するL1分子の比率は、ほぼ30:1と概算されており(Doobarら, 1987)、これは各ビリオンがほぼ12のL2分子を含むことを示唆している。ビリオン当たりのL1分子の数が増えるほど、L1を"多い方の"キャプシドタンパク質といい、L2を"少ない方の"キャプシドタンパク質ということになる。
【0005】
HPV−16 L1は1.518kbの遺伝子によってコードされ、504のアミノ酸のタンパク質を生じる。L1は55ないし58kDの分子量を有する(Browneら, 1988)。L1のドメインは細胞結合を仲介するようであり、また、ウイルスに対する抗体およびT細胞免疫応答を仲介する抗原決定基を含むようである。
【0006】
生殖器ヒト・パピローマウイルス(HPV)の中には、通常は退行するかまたは悪性腫瘍には進行しない生殖器のイボおよび子宮頸部病変を引き起こす低リスクHPV(例えば、HPV6およびHPV11)、ならびに高い等級の子宮頸部病変およびガンと関連する高リスク(または発ガン性)遺伝子型(例えば、HPV16およびHPV18)が存在する。HPVは幾つかの他の肛門性器(anogenital)ガンおよび上部気道消化管ガン(upper aerodigestive tract cancer)における病因因子として関連付けられてもいる(Breitburdら, 1999)。臨床的、分子的、実験的および疫学的事実の抵抗しがたい集合は、ある種のHPV型が子宮頸ガンの主要因であることを確立している(Lowyら, 1994; IARC, 1995)。
【0007】
HPV16は子宮頸ガン症例の大部分の症例に存在し、ほぼさらなる30%の症例においてはさらなる3の型(HPV18、31および45)が存在する(IARC, 1999)。
【0008】
子宮頸ガンの発病率は合衆国においては低下しているが、それは、各年に約500,000の新たな症例が診断される途上国の女性の最も一般的な悪性腫瘍である。
【0009】
伝統的に大部分の予防的なワクチンは、生、弱毒ウイルスまたはホルマリン不活化ウイルスからなる。パピローマウイルスのビリオンは免疫原性が非常に高く、全身的に注射した場合は高い力価(>10,000)の中和抗体を誘導する(Doretzkyら, 1980; Kimbauerら, 1991, 1992)。しかしながら、大量のこれらの伝統的なワクチンを作り出すことに含まれる困難および危険性に起因して、ウイルスタンパク質サブユニットまたはウイルス様粒子(VLP)ワクチンを開発することが非常に強調されている。
【0010】
HPVに対する予防ワクチン用の最良の候補タンパク質は、VLPに自己会合する多い方のキャプシドタンパク質L1である(SchillerおよびLowy, 2001)。これらのVLPは非常によく特徴付けられており、全ビリオンと区別し得ないように形態上見える(Chenら, 2001; Roseら, 1993)。実験動物にVLPを注射すると、中和抗体を誘導し(Roseら, 1998);接種したVLPワクチンの予備的なヒト試験も、これらはよく耐性であり非常に免疫原性が高く、前者の症例においては刺激された強いBおよびT細胞応答も示された(Evansら, 2001; Harroら, 2001)。
【0011】
発ガン型の粘膜親和性(mucotropic)HPVに対する有効で安価な予防ワクチンは、世界のガンの負担、特にHPV16に対する負担に対して潜在的にインパクトを有し得るであろう。
【0012】
HPV6型および16型に共通の中和エピトープは、HPV16の少ない方のキャプシドタンパク質、L2の領域(aa)108−120に見出されている(Kawanaら, 1998, 1999)。エピトープに対応する合成ペプチドで鼻腔免疫化したBalb/cマウスは、HPV6、16および18のL1/L2キャプシドと交差反応するIgAおよびIgG抗体を生じる免疫応答を誘起した(Kawanaら, 2001)。ウサギ口腔パピローマウイルス(ROPV)またはウサギ乳頭腫パピローマウイルス(CRPV)のいずれかからのL2配列領域94−122由来の2の重複するペプチドのいずれかでウサギを免疫化すると、精製した同族のL2、特に感染細胞中で認識されたL2に反応した血清を生じ、これはイン・ビトロ(in vitro)でウイルスを中和した。CRPVペプチドで免疫化したウサギは、CRPV攻撃に対して免疫性であった(Embersら, 2002)。
【0013】
かくして、本発明者らは、その自身の権利におけるワクチンとして、および他の免疫原性ペプチド配列の提示のためのモデルとして、キメラL1 VLP上のこのL2エピトープの提示をさらに調べることを決心した。
【0014】
発明の概要
本発明の第1の形態によれば、
HPV L2ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよびL2ペプチドの配列を含むDNA配列を、中で該DNA配列を発現し得る宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
L2ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、HPV L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0015】
HPV L1ポリペプチドおよび/またはHPV L2ペプチドは、HPV−16のポリペプチドまたはペプチドとし得る。
【0016】
HPV L2ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)、またはその修飾体もしくは誘導体である配列を有し得、但し、その修飾配列または誘導配列は、配列番号:1の配列に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起するペプチドをコードする配列である。
【0017】
L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドはL2 DNA配列の導入の点において欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入したL2ヌクレオチドの数と対応するであろう。
【0018】
タンパク質の発現は、原核生物または真核生物の発現システムのいずれかにおいてとし得る。
【0019】
キメラ・ポリペプチドは、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、または配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列を有し得る。キメラ・ポリペプチドをコードするDNA配列は、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはこれらの配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるポリペプチドをコードする配列を有し得る。
【0020】
キメラL1ポリペプチドは、ウイルス様粒子および/またはキャプソメアに会合し得る。ウイルス様粒子またはキャプソメアは免疫原性であってもよい。
【0021】
本発明の第2の形態によれば、前記HPV L2ペプチドをコードするDNA配列が挿入されたキメラHPV L1 DNA配列を提供し、ここに該得られたHPV L1配列はHPV L2ペプチドを発現することができる。
【0022】
L2 DNA配列の導入の点におけるL1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドは欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入されたL2ヌクレオチドの数に対応するであろう。
【0023】
キメラ核酸配列は、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載の配列、またはその修飾体もしくは誘導体であるDNA配列とし得、但し、その修飾DNA配列または誘導DNA配列は、配列番号:4、6、8、10および12のいずれか1の配列に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるキメラL1ペプチドをコードする。
【0024】
本発明の第3の形態によれば、前記した核酸配列を含むベクターを提供する。
【0025】
本発明の第4の形態によれば、前記したベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0026】
本発明のいまださらなる形態によれば、前記HPV L2ペプチド(配列番号:1)を含むキメラHPV L1ポリペプチドを提供する。
【0027】
該キメラ・ポリペプチドは、キメラHPV L1ウイルス様粒子またはキャプソメアとし得る。
【0028】
本発明のさらなる形態によれば、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、またはその修飾体または誘導体である配列を有し、その修飾体または誘導体は、配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列であるHPVポリペプチドを提供する。
【0029】
本発明のもう1の形態によれば、
異種ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよび異種ペプチドの配列を含むDNA配列を、該DNA配列を発現し得る宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
異種ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法を提供する。
【0030】
異種ペプチド配列は、いずれか他のHPV配列とすることができ、あるいはB−細胞またはT−細胞特異的ないずれかの抗原エピトープ由来のものとし得る。
【0031】
異種DNA配列の導入の点におけるL1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドは欠失していてもよく、典型的には、L1配列から欠失したヌクレオチドの数は挿入された異種ヌクレオチドの数に対応するであろう。
【0032】
本発明のいまださらなる形態によれば、前記したものと実質的に同じである、キメラHPV L1ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードするDNA配列を含むワクチンを提供する。該ワクチンは、HPV感染症、詳細にはHPV6、16および18の感染症の予防的または治療的処理用とし得る。
【0033】
好ましくは、ワクチンは、HPVに対するおよび好適な宿主中の導入されたペプチドに対する免疫原性応答を誘導することができるであろう。
【0034】
ワクチンは、さらに、医薬上の賦形剤および/または補助剤を含み得る。
【0035】
発明の形態の詳細な説明
キメラ構築物の設計
HPVの少ない方のキャプシドタンパク質、L2の領域(aa)108−120のHPV6および16に対する共通の中和エピトープであるペプチド:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)
をコードするプライマーを合成した。
【0036】
Chenら(2000)によって発表されたHPV16 L1のモノマー構造(図2)によれば、種々の表面ループおよび領域がペンタマーおよび高次構造が形成された場合に曝露される。
【0037】
V5抗体(L1に対して作り出された中和抗体)のエピトープマッピングに基づき、L1 VLPのV5抗体結合領域を維持するように、L2ペプチドを挿入するための種々の領域/ループを選択した。
【0038】
L1分子の多い方の抗原領域(V5結合領域)は、アミノ酸残基A266(表面残基V271の下方に位置するF50と共に)およびS282でマッピングされている(Rodenら, 1996、Whiteら, 1999)。これらの残基に基づいて、本発明者らは、分子のBループを変化させないことを決定した。これは抗原領域を変化させ、おそらく活性を有するL1エピトープを破壊するであろうからである。
【0039】
したがって、以下のL1領域を、L2ペプチドを挿入するために選択した:
A: E−Fループ(配列番号:4および5)
C: D−Eループ(配列番号:6および7)
E: L1のh4へリックスとJ領域との間の領域(配列番号:8および9)
F: h4へリックス(配列番号:10および11)
H: 内部C−Dループ(配列番号:12および13)
【0040】
キメラ構築物の合成
キメラ構築物は、L2ペプチドをコードする3'末端を用いて設計したプライマーを用いるPCRによって調製した。pSKプラスミドベクターにクローン化したHPV 16SA−optL1遺伝子(配列番号:3および4)をテンプレートとして用いた。以下のDNA配列:
【0041】
5'−TTAGTGGAAGAAACTAGTTTTATTGATGC
TGGTGCACCA−3'(配列番号:14)
【0042】
を用いてL2ペプチドをコードした。
【0043】
表1に示す領域を置換することによって、L2ペプチドを遺伝子に挿入した。存在するヌクレオチドを置換するこの方法は、いずれの置換もせずにL2ヌクレオチドをL1配列に単に挿入するよりも、三次構造の乱れが最小限に維持され、かつ、余分なペプチド"ループ"に起因する近くの配列の立体効果の可能性またはそれに結合する抗体との干渉の可能性が最小限化される点で有利である。
【0044】
挿入したL2エピトープの位置は、キメラ構築物について各々図15〜19に図示する。
【0045】
配列決定したpSK構築物からのキメラ遺伝子を、pFastbac1ベクター(SalI/XbaIサイト)にクローン化した。pFastbac1クローンからのDNAを用いてDH10bac細胞をトランスフェクトし、bacmidクローンを調製した。
【0046】
Bac−to−Bac(登録商標)バキュロウイルス発現システム(Life Technologies社)を用いて、昆虫細胞中でキメラ構築物を発現した。
【0047】
【表1】
【0048】
bacmid DNAを、セルフェクチンを用いてsf21(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)昆虫細胞にトランスフェクトした。基本的なBac−to−Bac(登録商標)プロトコールに従って、組換えウイルスを増幅し、キメラVLPを発現させるためのsf21昆虫細胞に感染させた。
【0049】
その後に、基本的なHPV16 L1 VLP精製プロトコールを行った。感染した昆虫細胞を3,000rpmで沈殿させ、0.5MのNaClを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。その懸濁液を5秒間隔で4回、超音波処理した。ついで、これを、40%スクロース・クッション上にオーバーレイし、100,000×gにて3時間ペレット化した。このペレットをCsCl緩衝液(0.4g/mlのCsClを含むPBS)に再懸濁し、18および26ゲージ注射針を通して吸引して再懸濁して超音波の前に粘度を低下させた(5秒間隔で4回)。その懸濁液を10℃、100,000×gにて24時間遠心した。
【0050】
CsClグラジエント中に明瞭なバンドは観察されなかった。したがって、500μl画分を収集し、コンフォメーション特異的V5およびD9(線状エピトープ)モノクローナル抗体を用いるELISAによって解析した。V5および/またはD9抗体と反応することが判明した画分を保存し、PBSに対して4℃にて一晩透析した。
【0051】
結果
ウェスタンブロットは、ウサギにおいてペプチドに対して作らせたポリクローナルL2抗体(The Jake Gittlen Cancer Research Institute, The Milton S. Hershey Medical Centre, Hersey Pennsylvania, USAのNeil Christensen博士から得た)がキメラL1粒子(55kD)に結合することを示し、これはL2エピトープがキメラ構築物によって発現されていることを示している。
【0052】
精製したVLPの抗体特徴付けを、Neil Christensen博士によって提供された一連の抗体を用いたELISAによって行った(Christensenら, 1996, 2001)。表2はかかるデータを要約している。
【0053】
【表2】
【0054】
抗体およびそれらの結合領域の簡単な説明を以下の表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
キメラ粒子の電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察の結果は、キメラ構築物から形成された粒子が野生型HPV L1遺伝子によって生成されたものと同一でないことを示した。形成された粒子は主として部分的に分解されているかまたは部分的にバラバラになった状態であり、一般的に互いに凝集しているように見える。
【0057】
キメラ抗原を用いた動物実験
6セットの5匹のBalb/cマウスを動物実験に用いて、キメラVLPの接種が免疫応答を誘起するかを判定した。5のキメラ構築物から生成したキメラVLPおよび非キメラHPV16 L1(SA−opt)から生成したキメラVLPを100μgの濃度で2の皮下部位に注射した。0、2および4週目に動物に接種した。血液試料および膣洗液を種々の期間に採取した。
【0058】
各群からのマウス血清を保存し、組換えバキュロウイルスによって昆虫細胞中に生成したVLPを用いるELISAによって解析した。各群のマウスのエンドポイント力価測定を行って、応答の程度を決定し、応答のより良好な反映を得た(図20ないし26)。
結果は、高い免疫応答が達成されたことを示している。
【0059】
参考資料
Baker, T. S., W. W. Newcomb, N. H. Olson, L. M. Cowsert, C. Olson,およびJ. C. Brown. 1991. Biophys. J. 60:1445-1456.
Breitburd, F.およびP. Coursaget. 1999. Cancer Biology 9: 431-445.
Browne, H. M., M. J. Churcher, M. A. Stanley, G. L. Smith,およびA. C. Minson. 1988. J. Gen. Virol. 69, 1263-1273.
Chen, X. S., Garcea,R. L., Goldberg, I., Casini, G.,およびHarrison, S. C. (2000). Mol Cell 5, 557-567.
Chen, X. S., Casini, G., Harrison, S. C.およびGarcea, R. (2001). Joumal of Molecular Biology 307, 173-182.
Christensen, N. D., J. Diller, C. Eklund, J. J. Carter, G. C. Wipf, C. A. Reed, N. M. Cladel,およびD. A. Galloway. 1996. Virol. 223, 174-184.
Christensen ND, Cladel NM, Reed CA, Budgeon LR, Embers ME, Skulsky DM, McClements WL, Ludmerer SW, Jansen KU. 2001. 20 ; 291 (2): 324-34.
Doorbaar, J.およびP. H. Gallimore. 1987. J. Virol. 61: 2793-2799.
Doretzky, I., R. Shober, S. K. ChattopadhyayおよびD. R. Lowy. 1980. Virology 103: 369-375.
ME Embers, LR Budgeon, M Pickel, ND Christensen. 2002. J. Virol., 76 (19): 9798-9805.
Evans, T. G., Bonnez, W., Rose, R. C., Koenig, S., Demeter, L., Suzich, J. A., O'Brien, D., Campbell, M., White, W.l., Bailey, J.およびReichman, R. C. 2001. J. Infect. Dis. 183, 1485-1493.
Harro, C. D., Pang, Y. Y., Roden, R. B., Hildesheim, A., Wang, Z., Reynolds, M. J., Mast, T. C., Robinson, R., Murphy, B. R., Karron, R. A., Dillner, J., Schiller, J. T.およびLowy, D. R. 2001. J. Natl. Cancer Inst. 93, 284-292.
IARC, World Health Organization. 1995. WHO Report of a technical meeting, Geneva. Ref Type: Report
IARC, World Health Organization. 1999. WHO. Report of a technical meeting, Geneva, 16-18 Feb 1999. 1999. Ref Type : Report
Kawana, K., Matsumoto, K., Yoshikawa, H., Taketani, Y., Kawana, T., Yoshiike, K.およびKanda, T. 1998. Virology 245,353-359.
Kawana, K., Yoshikawa, H., Takentani, Y., Yoshiike, K.およびKanda, T. (1999). Jouranl of Virology 73, 6188-6190.
Kawana, K., Kawana, Y., Yoshikawa, H., Takentani, Y., Yoshiike, K.およびKanda, T. (2001). Vaccine 19, 1496-1502.
Kirnbauer, R., F. Booy, N. Cheng, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1992. Proc. Natl. Acad. Sci USA. 89, 12180-12184.
Kirnbauer, R., J. Taub, H. Greenstone, R. Roden, M. Durst, L. Gissman, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1993. J. Virol. 67, 6929-6936.
Lowy, D. R., R. KirnbauerおよびJ. T. Schiller. 1994. Proc Natl Acad Sci U S A 91: 2436-2440.
Roden, R. B. S., H. L. Greenstone, R. Kirnbauer, F. P. Booy, J. Jessie, D. R. LowyおよびJ. T. Schiller. 1996. J. Virol. 70, 5875-5883.
Rose, R. C., Bonnez, W., Reichman, R. C.およびGarcea, R. L. 1993. J. Virol. 67, 1936-1944.
Rose, R. C., White, W.I., Li, M., Suzich, J. A., Lane, C.およびGarcea, R. L. 1998. Journal of Virology 72, 6151-6154.
Schiller, J. T.およびLowy, D. R. 2001. Expert. Opin. Biol. Ther. 1, 571-581.
Seedorf, K., G.Krammer, M. Durst, S. SuhaiおよびW. G. Rowekamp. 1985. Virol. 145, 181-185.
White, W.I., Wilson, S. D., Palmer-Hill, F. J., Woods, R. M., Ghim, S.-J., Hewitt, L. A., Goldman, D
M., Burke, S. J., Jenson, A. B., Koenig, S.およびSuzich, J. A. 1999. J. Virol. 73, 4882-488.
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1はHPV16のゲノム構成の概略図を示す。
【図2】図2はHPV16 L1のモノマー構造を示す。
【図3】図3は中にL2エピトープが挿入されて図5ないし14のキメラ構築物を生成するHPV16 L1遺伝子の天然配列のヌクレオチド配列(配列番号:2)を示す。
【図4】図4は図3のアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。
【図5】図5はキメラ構築物Aのヌクレオチド配列(配列番号:4)を示す。
【図6】図6はキメラ構築物Aのアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図7】図7はキメラ構築物Cのヌクレオチド配列(配列番号:6)を示す。
【図8】図8はキメラ構築物Cのアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。
【図9】図9はキメラ構築物Eのヌクレオチド配列(配列番号:8)を示す。
【図10】図10はキメラ構築物Eのアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。
【図11】図11はキメラ構築物Fのヌクレオチド配列(配列番号:10)を示す。
【図12】図12はキメラ構築物Fのアミノ酸配列(配列番号:11)を示す。
【図13】図13はキメラ構築物Hのヌクレオチド配列(配列番号:12)を示す。
【図14】図14はキメラ構築物Hのアミノ酸配列(配列番号:13)を示す。
【図15】図15はキメラ構築物Aの概略図を示す。
【図16】図16はキメラ構築物Cの概略図を示す。
【図17】図17はキメラ構築物Eの概略図を示す。
【図18】図18はキメラ構築物Fの概略図を示す。
【図19】図19はキメラ構築物Hの概略図を示す。
【図20】図20は構築物Aから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図21】図21は構築物Cから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図22】図22は構築物Eから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図23】図23は構築物Fから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図24】図24は構築物Hから得たキメラVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図25】図25は非キメラHPV16 L1(SA−opt)から得たVLPを接種したマウスのエンドポイント力価測定から得たデータを示す。
【図26】図26は最初の免疫化の後の追加免疫に対するマウスの応答を示す。
【図27】図27はL1配列に挿入したL2ペプチドのヌクレオチド配列(配列番号:14)を示す。
【図28】図28はL1配列に挿入したL2ペプチドのアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV L2ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよびL2ペプチドの配列を含むDNA配列を、中で該DNA配列を発現することができる宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
L2ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、HPV L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法。
【請求項2】
該HPV L1ポリペプチドおよび/または該HPV L2ペプチドが、HPV−16のポリペプチドまたはペプチドである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該HPV L2ペプチドが、以下のアミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)またはその修飾体もしくは誘導体である配列を有し、但し、その修飾配列または誘導配列は、配列番号:1の配列に対して少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるペプチドをコードする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、L2 DNA配列の導入の点において欠失している、請求項1ないし3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該L1 DNA配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入したL2ヌクレオチドの数に対応する請求項4記載の方法。
【請求項6】
該ポリペプチドの発現が、原核生物または真核生物の発現システムのいずれかにおいてである請求項1ないし5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
該キメラ・ポリペプチドが、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、または配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列を有する請求項1ないし6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
該キメラ・ポリペプチドをコードするDNA配列が、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはこれらの配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるポリペプチドをコードする配列を有する請求項1ないし6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
該キメラL1ポリペプチドが、ウイルス様粒子および/またはキャプソメアに会合することができる請求項1ないし8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
該ウイルス様粒子またはキャプソメアが免疫原性である請求項9記載の方法。
【請求項11】
中にHPV L2ペプチドをコードするDNA配列(配列番号:1)が挿入されており、かつ、該HPV L2ペプチドを発現することができるキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1 DNA配列。
【請求項12】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、L2 DNA配列の導入の点で欠失している請求項11記載のHPV L1 DNA配列。
【請求項13】
L1配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入したL2ヌクレオチドの数に対応する請求項12記載のHPV L1 DNA配列。
【請求項14】
図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはその修飾体または誘導体であるDNA配列を有し、但し、その修飾DNA配列または誘導DNA配列は配列番号:4、6、8、10および12のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、免疫原性HPVペプチド配列を提示するキメラL1ペプチドをコードし、ここに該キメラL1ペプチドはHPVに対する免疫原性応答を誘起することができるヒト・パピローマウイルス(HPV)核酸配列。
【請求項15】
請求項11ないし14いずれか1項記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項16】
請求項15記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
アミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)
を有するペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチド。
【請求項18】
キメラHPV L1ウイルス様粒子またはキャプソメアである請求項17記載のポリペプチド。
【請求項19】
図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、またはその修飾体または誘導体である配列を有し、但し、その修飾アミノ酸配列または誘導アミノ酸配列は配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるヒト・パピローマウイルス(HPV)ポリペプチド。
【請求項20】
異種ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
該L1ポリペプチドおよび異種ペプチドの配列を含むDNA配列を、該DNA配列を発現することができる宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
異種ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法。
【請求項21】
該異種ペプチド配列が、いずれか他のHPV配列またはB−細胞もしくはT−細胞特異的ないずれかの免疫原性エピトープに由来する請求項20記載の方法。
【請求項22】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、該異種DNA配列の導入の点で欠失している請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
該L1配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入した異種ヌクレオチドの数に対応する請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項17ないし19のいずれか1に記載のキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドまたは請求項11ないし14いずれか1項記載のDNA配列を含むワクチン。
【請求項25】
HPV感染症の予防的または治療的処置に使用するための請求項24記載のワクチン。
【請求項26】
HPV6、16または18の処置に使用するための請求項25記載のワクチン。
【請求項27】
好適な宿主中のHPVおよび/または導入したペプチドに対する免疫原性応答を誘導することができる請求項24ないし26いずれか1項記載のワクチン。
【請求項28】
さらに、医薬上の賦形剤および/または補助剤を含む請求項24ないし27いずれか1項記載のワクチン。
【請求項29】
実質的に本明細書中に記載し、図示した異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルスL1ポリペプチドを作製する新たな方法。
【請求項1】
HPV L2ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
L1ポリペプチドおよびL2ペプチドの配列を含むDNA配列を、中で該DNA配列を発現することができる宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
L2ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、HPV L2ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法。
【請求項2】
該HPV L1ポリペプチドおよび/または該HPV L2ペプチドが、HPV−16のポリペプチドまたはペプチドである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該HPV L2ペプチドが、以下のアミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)またはその修飾体もしくは誘導体である配列を有し、但し、その修飾配列または誘導配列は、配列番号:1の配列に対して少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるペプチドをコードする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、L2 DNA配列の導入の点において欠失している、請求項1ないし3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該L1 DNA配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入したL2ヌクレオチドの数に対応する請求項4記載の方法。
【請求項6】
該ポリペプチドの発現が、原核生物または真核生物の発現システムのいずれかにおいてである請求項1ないし5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
該キメラ・ポリペプチドが、図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、または配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同であって、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができる配列を有する請求項1ないし6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
該キメラ・ポリペプチドをコードするDNA配列が、図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはこれらの配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるポリペプチドをコードする配列を有する請求項1ないし6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
該キメラL1ポリペプチドが、ウイルス様粒子および/またはキャプソメアに会合することができる請求項1ないし8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
該ウイルス様粒子またはキャプソメアが免疫原性である請求項9記載の方法。
【請求項11】
中にHPV L2ペプチドをコードするDNA配列(配列番号:1)が挿入されており、かつ、該HPV L2ペプチドを発現することができるキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1 DNA配列。
【請求項12】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、L2 DNA配列の導入の点で欠失している請求項11記載のHPV L1 DNA配列。
【請求項13】
L1配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入したL2ヌクレオチドの数に対応する請求項12記載のHPV L1 DNA配列。
【請求項14】
図5、7、9、11および13のいずれか1に記載のDNA配列(配列番号:4、6、8、10および12)、またはその修飾体または誘導体であるDNA配列を有し、但し、その修飾DNA配列または誘導DNA配列は配列番号:4、6、8、10および12のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、免疫原性HPVペプチド配列を提示するキメラL1ペプチドをコードし、ここに該キメラL1ペプチドはHPVに対する免疫原性応答を誘起することができるヒト・パピローマウイルス(HPV)核酸配列。
【請求項15】
請求項11ないし14いずれか1項記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項16】
請求項15記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
アミノ酸配列:
LVEETSFIDAGAP(配列番号:1)
を有するペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチド。
【請求項18】
キメラHPV L1ウイルス様粒子またはキャプソメアである請求項17記載のポリペプチド。
【請求項19】
図6、8、10、12および14のいずれか1に記載のアミノ酸配列(配列番号:5、7、9、11および13)、またはその修飾体または誘導体である配列を有し、但し、その修飾アミノ酸配列または誘導アミノ酸配列は配列番号:5、7、9、11および13に記載の配列のいずれか1に少なくとも80%相同性を有し、かつ、HPVに対する免疫原性応答を誘起することができるヒト・パピローマウイルス(HPV)ポリペプチド。
【請求項20】
異種ペプチドをコードするDNA配列を、L1ポリペプチドをコードするDNA配列に導入し;
該L1ポリペプチドおよび異種ペプチドの配列を含むDNA配列を、該DNA配列を発現することができる宿主細胞に導入し;
該DNA配列を発現させ;ついで
異種ペプチドを含む得られたキメラL1ポリペプチドを回収する
工程を含む、異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドを作製する方法。
【請求項21】
該異種ペプチド配列が、いずれか他のHPV配列またはB−細胞もしくはT−細胞特異的ないずれかの免疫原性エピトープに由来する請求項20記載の方法。
【請求項22】
該L1 DNA配列の1またはそれを超えるヌクレオチドが、該異種DNA配列の導入の点で欠失している請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
該L1配列から欠失したヌクレオチドの数が、挿入した異種ヌクレオチドの数に対応する請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項17ないし19のいずれか1に記載のキメラ・ヒト・パピローマウイルス(HPV)L1ポリペプチドまたは請求項11ないし14いずれか1項記載のDNA配列を含むワクチン。
【請求項25】
HPV感染症の予防的または治療的処置に使用するための請求項24記載のワクチン。
【請求項26】
HPV6、16または18の処置に使用するための請求項25記載のワクチン。
【請求項27】
好適な宿主中のHPVおよび/または導入したペプチドに対する免疫原性応答を誘導することができる請求項24ないし26いずれか1項記載のワクチン。
【請求項28】
さらに、医薬上の賦形剤および/または補助剤を含む請求項24ないし27いずれか1項記載のワクチン。
【請求項29】
実質的に本明細書中に記載し、図示した異種ペプチドを含むキメラ・ヒト・パピローマウイルスL1ポリペプチドを作製する新たな方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2006−507797(P2006−507797A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−506346(P2004−506346)
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/IB2003/001912
【国際公開番号】WO2003/097673
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(504425406)ユニバーシティ・オブ・ケープ・タウン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF CAPE TOWN
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/IB2003/001912
【国際公開番号】WO2003/097673
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(504425406)ユニバーシティ・オブ・ケープ・タウン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF CAPE TOWN
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]