説明

LEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置

【課題】 従来、粘着シート上に配置されているチップワークを精度よく良好にスピーディに剥離し、次工程へ搬送する装置が存在していなかったという点である。
【解決手段】 粘着シートの表面側の粘着層上に配置されたLEDチップもしくはLDチップを、前記粘着シートの裏面側から工具で突き上げ剥離させ、ピックアップして次工程へ搬送するLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置であって、前記した工具は上端を錐状としたホーン部材とし、その下方に配設された超音波振動子から振動を加えられるものとしたこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート上に配置されているLEDチップもしくはLD(レーザダイオード)チップの、粘着シートからの剥離搬送装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より前記したチップワークは裏面に粘着シートが貼装されたシリコン等のウエハーをダイシングして形成される。そのチップワークを粘着シートから剥離し、次工程へ搬送する装置、方法として図5として示す構成のものが一般的に知られている。
【0003】
この図5にあって1は粘着シートを示し、Wはその粘着シート1上に配設されたLED、LD等のチップワークを示している。粘着シート1はチップワークWをダイシング成形するウエハーの裏面に貼装されており、その端縁を支持リングの端部で挟持固定され、一定の張力が付与されている。
【0004】
また、図2は粘着シート1を介してチップワークWを上方へ突き上げ、剥離を図る突き上げニードルを示している。この突き上げニードル2はホルダー3に装備され、ホルダー3の上面には負圧をかけて粘着シート1の裏面にホルダー3を吸着位置決めする吸着部4が設けられている。
【0005】
さらに、ホルダー3はその側面で連結部材5を介して、ボールねじ6のナット7と連結されている。このボールねじ6をモータで駆動させるとナット7が上下動し、それに伴ってホルダー3も上下動する。突き上げニードル2は、前記したホルダー3が位置決めされると独自に上下動する。突き上げニードル2は、その先端で粘着シート1の裏面を突き上げ、粘着シート1をドーム状に変形させて、チップワークWの粘着シート1から剥離を行うものとなっている。
【0006】
しかしながら、この従来の突き上げニードルを用いての粘着シートからのチップワークの剥離は、時として突き上げニードルが粘着シートを突き破り、チップワークを傷つけてしまったり、突き上げ量が少なく、十分に剥離できず、残存してしまうこともあった。加えて、突き上げニードルはホルダーと別異に独自に上下動するため、そのスピードを制御する必要もあり、全体として剥離に要する時間が長かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−186352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、従来、粘着シート上に配置されているチップワークを精度よく良好にスピーディに剥離し、次工程へ搬送する装置が存在していなかったという点である。特許文献1に示される発明も、超音波を突き上げ治具に印加することとしているが、その突き上げ治具の先端は平坦で、単に粘着シートを押し上げるに止まり、剥離効果は大きくない。また、対象としてのチップワークもフラッシュメモリ等の比較的サイズの大きいものとなっており、加えて、ピックアップ機構もボールねじを用いての上下動を行うもので、作業の迅速性は望めない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した問題点を解決するために、本発明に係るLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置は、粘着シートの表面側の粘着層上に配置されたLEDチップもしくはLDチップを、前記粘着シートの裏面側から工具で突き上げ剥離させ、ピックアップして次工程へ搬送するLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置であって、前記した工具は上端を錐状としたホーン部材とし、その下方に配設された超音波振動子から振動を加えられるものとしたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置は、前記したホーン部材及び超音波振動子は同期して上下動するものとし、その稼働力としてボールねじを用いてあることを特徴とし、前記したピックアップ及び搬送はバキュームコレットチャックを用いてあることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係るLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置は、前記したホーン部材は粘着シートをドーム状に突き上げ変形させることを特徴とし、前記した超音波振動子はカバーケース内に収納されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置は上記のように構成されている。そのため、粘着シート上に配置されているチップワークを精巧に、しかもそのチップワークを損傷することなく剥離し、次工程へ搬送することができる。そして、その作業スピードは迅速なものとすることができ、作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施した装置の概要を示す図である。
【図2】ホーン部材が粘着シートを突き上げた状態を示す図である。
【図3】ホーン部材を示す図である。
【図4】図3中のA矢視を90度位置変更して示す図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図1乃至図4を参照して説明する。図中10は粘着シートを示しており、この粘着シート10はLEDチップ、LDチップ等のチップワークWをダイシング加工するためのウエハーの裏面に貼設されているもので、支持リング11の外側にその端縁を挟持枠12によって挟み込まれ位置決めされ、所定の張力が付与されている。チップワークW、Wはウエハーをダイシングして得られたものである。
【0016】
また、図中13は、粘着シート10をチップワークWに対応して裏面から突き上げるホーン部材であり、このホーン部材13は先端を円錐状に形成されている。ホーン部材13はその下端を円板状をした受板14の中心に固定されている。
【0017】
一方、図中15は超音波振動子16を内蔵収納したカバーケースであり、前記した受板14はこのカバーケース14の上面で後述する取り付け板18との間に微少な隙間Sを設け、ねじ17、17‥で止着されている。取り付け板18の下面には超音波振動子16からの振動を伝導する伝導シャフト19の先端が当接され、振動を取り付け板18及び受板14を介してホーン部材13に伝えるものとなっている。
【0018】
また、図中20は超音波振動子16へ入力するためのコネクタであり、コード21によって発振器(図示せず)と接続される。さらに、前記した取り付け板18とカバーケース14とは、ねじ17、17‥で固定されている。
【0019】
取り付け板18は連結部材22を介してボールねじ23のナット24に固定されている。ボールねじ23の雄ねじ部25はその両端が位置決めされているので、駆動モータによってこの雄ねじ部25に与えられた直進推進力はナット24に伝えられ、ナット24が上下動する構成となっている。なお、ボールねじ23は、架台26に固定された構成とされている。
【0020】
このボールねじ23の作動、しいてはナット24の上下動と連動してカバーケース15も上下動し、同期してホーン部材13も上下動することとなる。ホーン部材13には、受板14が形成する微少な隙間Sの存在によって、先端を揺らす良好な超音波振動子からの振動が加えられる。この振動方向は、ホーン部材13の軸芯方向でも、軸芯方向に交差する方向でもよい。
【0021】
ホーン部材13の上方向への動きによって、先端を微少に揺らしながら粘着シート10の裏面を突き上げ、粘着シート10にドーム状の変形10aを形成し、チップワークWを精巧に、正確に剥離する。
【0022】
こうして剥離されたチップワークWはバキュームによるコレットチャック27により吸着され、その吸着状態のまま次工程、例えば製品に搭載するための前段階としてのトレイに搬送されることとなる。なお、この際の吸着(ピックアップ)は照明により、各チップワークW、W間の隙間、それもエッジを見ることによって位置を確認、把握することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の実施例は上記のように構成されている。この実施例では粘着シート10の粘着面が上方を向いている構成としてあるが、必要に応じて、粘着シート10を横向き、あるいは斜状に設置すること、もしくは粘着面を下方に向け、チップワークWを上からホーン部材13で突くことで下方に落下させてやる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 粘着シート
10a ドーム状の変形
11 支持リング
12 支持枠
13 ホーン部材
14 受板
15 カバーケース
16 超音波振動子
17 ねじ
18 取り付け板
19 伝導シャフト
20 コネクタ
21 コード
22 連結部材
23 ボールねじ
24 ナット
25 雄ねじ部
26 架台
27 コレットチャック
W チップワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートの表面側の粘着層上に配置されたLEDチップもしくはLDチップを、前記粘着シートの裏面側から工具で突き上げ剥離させ、ピックアップして次工程へ搬送するLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置であって、前記した工具は上端を錐状としたホーン部材とし、その下方に配設された超音波振動子から振動を加えられるものとしたことを特徴とするLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置。
【請求項2】
前記したホーン部材及び超音波振動子は同期して上下動するものとし、その稼働力としてボールねじを用いてあることを特徴とする請求項1に記載のLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置。
【請求項3】
前記したピックアップ及び搬送はバキュームコレットチャックを用いてあることを特徴とする請求項1または2に記載のLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置。
【請求項4】
前記したホーン部材は粘着シートをドーム状に突き上げ変形させることを特徴とする請求項1から3のうち1項に記載のLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置。
【請求項5】
前記した超音波振動子はカバーケース内に収納されていることを特徴とする請求項1から4のうち1項に記載のLEDチップもしくはLDチップの粘着シートからの剥離搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115291(P2013−115291A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261355(P2011−261355)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(591242209)アルファクス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】