説明

LED反射板用樹脂組成物

【課題】高反射率で高耐熱性、機械的強度を有するLED反射板用樹脂組成物を提供。
【解決手段】部分芳香族ポリアミドが50〜70重量%に対し、チタン酸カリウム及び酸化チタンの合計量が30〜50重量%であり、チタン酸カリウムと酸化チタンの割合が1:10〜1:2.5からなるLED反射板用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード素子(以下「LED」という)等の発光装置の反射板として使用できる反射板用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは発光色の多様化と高輝度発光が可能であり、さらにエネルギー消費量が小さい事から各種の発光装置に使用されている。この発光装置は合成樹脂からなる反射板の一部である基体上にLEDを載置し、反射板をエポキシ樹脂等の封止材料で封止することにより製造されている。このような発光装置に使用される反射板は、LEDの性能を左右する重要な部品であるため、その材料について種々の検討がなされている。LED反射板には高反射率が要求され、僅かな変形でもその反射率を低下させてしまうため、高耐熱性、機械的強度が要求される。
【0003】
LED反射板用樹脂組成物として、例えば、部分芳香族ポリアミドにチタン酸カリウムと酸化チタンを配合した樹脂組成物が特許文献1に提案されている。この樹脂組成物はそれなりの高反射率が得られるが、要求性能としてはまだ不十分である。
【特許文献1】特開2002−294070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高反射率で高耐熱性、機械的強度を有するLED反射板用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために次の手段を採ったものである。部分芳香族ポリアミドが50〜70重量%に対し、チタン酸カリウム及び酸化チタンの合計量が30〜50重量%であり、チタン酸カリウムと酸化チタンの割合が1:10〜1:2.5からなるLED反射板用樹脂組成物。
【0006】
以下に本発明における各要素の態様を例示する。
【0007】
1. 部分芳香族ポリアミド
部分芳香族ポリアミドとは、ポリアミドのモノマー成分として、芳香族ジカルボン酸を含有するポリアミドを意味するものである。本発明において、マトリックスとして使用する部分芳香族ポリアミドは、ポリアミドを構成するモノマー成分中の芳香族ジカルボン酸が20モル%以上、好ましくは30〜60モル%であり、融点が280℃以上、好ましくは290〜330℃である部分芳香族ポリアミドである。ここで、重合原料のモノマーの割合を所定のモル分率とすることで、芳香族ポリアミドのモノマーのモル分率を調整することができる。
【0008】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フェニレンジオキシ酢酸、クエン酸等が挙げられる。芳香族モノマーは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。芳香族モノマー以外のモノマー成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族アルキレンジアミン、脂環式アルキレンジアミン等を挙げられる。
【0009】
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。脂肪族アルキレンジアミンは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン等を挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等が好ましい。脂肪族アルキレンジアミンは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0010】
脂環式アルキレンジアミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、イソフォロンジアミン、ピペラジン等を挙げられる。脂環式アルキレンジアミンは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0011】
上記の部分芳香族ポリアミドの中でも、芳香族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとを含むもの、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとを含むもの等が好ましい。これらの部分芳香族ポリアミドの中でも、ジカルボン酸がテレフタル酸、テレフタル酸とイソフタル酸との混合物、又は、テレフタル酸とイソフタル酸とアジピン酸との混合物であるものが好ましい。前記2種の混合物においては、テレフタル酸の割合が40モル%以上のものが特に好ましい。更に、これらの部分芳香族ポリアミドの中でも、脂肪族アルキレンジアミンが、ヘキサメチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンとの混合物であるものが特に好ましい。部分芳香族ポリアミドの中で、特に好ましいものの一例として、テレフタル酸27モル%、ヘキサメチレンジアミン23モル%及びアジピン酸50モル%を共重合したものを挙げることができる。部分芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジカルボン酸や他のモノマー成分の構成比や種類を適宜選択することにより、融点、ガラス転移温度等を適宜調整することができる。
【0012】
2. チタン酸カリウム
一般式K2O・nTiO2(n=6,8)で表される樹脂補強用フィラーであり、繊維長は5〜20μm、繊維径は0.3〜0.6μmである。
【0013】
3. 酸化チタン
アナターゼ型、ルチル型、単斜晶型等の各種結晶形態のものをいずれも使用でき、結晶形態の異なるものを2種以上併用することもできるが、屈折率が高く光安定性の良いルチル型が好ましい。平均粒径は0.1〜0.3μm程度のものが好ましく、0.2〜0.26μmのものがより好ましい。
【0014】
4.チタン酸カリウムと酸化チタンの合計量および割合
部分芳香族ポリアミドが50〜70重量%に対し、チタン酸カリウム及び酸化チタンの合計量が30〜50重量%であり、より好ましくは35〜45重量%である。合計量が30重量%未満の場合は反射率が低くなり、50重量%を越える場合は混練、ペレット化が困難となる。
チタン酸カリウムと酸化チタンの割合は1:10〜1:2.5である。チタン酸カリウムの割合がこの範囲より少なすぎると加熱試験後の反射率の低下が大きく、多すぎると反射率が低くなり、反射板としては適さなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、部分芳香族ポリアミドに所定量のチタン酸カリウムと酸化チタンを配合することにより、高反射率、機械的強度、寸法安定性、耐熱性において所望される物性を高水準で満たすことが出来る。特に、高温に晒されても変色を起こすことなく高反射率を維持し得る樹脂組成物が提供される。本発明の樹脂組成物は、反射板材料、特にLED反射板用材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい態様は、部分芳香族ポリアミドが50〜70重量%に対し、チタン酸カリウム及び酸化チタンの合計量が30〜50重量%であり、チタン酸カリウムと酸化チタンの割合が1:10〜1:2.5からなる部分芳香族ポリアミド脂組成物である。
【実施例】
【0017】
表−1の配合の材料を二軸押出機に投入、温度300〜340度にて混練・ペレット化して部分芳香族ポリアミド組成物を得た。
【0018】
表−1で用いた部分芳香族ポリアミドはテレフタル27モル%、ヘキサメチレンジアミン23モル%およびアジピン酸50モル%を共重合したものである。チタン酸カリウムはK2O・8TiO2で表されるフィラーであり、繊維長は10〜20μm、繊維径は0.3〜0.6μmである。酸化チタンはルチル型(平均粒子径は0.17μm、0.20μm、0.22μm、0.24μm)を使用した。参照例で用いたガラス繊維は繊維長200〜300μm、繊維径5〜20μmのものであり、ワラストナイトは繊維長20〜30μm、繊維径2〜5μmのものである。尚、酸化チタンの平均粒子径は、電子顕微鏡写真から一定方向の径を測定して平均粒子径とした。
【0019】
試験項目は、光学特性として透過率、反射率、加熱試験後の反射率を測定した。一般物性としては、引張強度、曲げ強さ、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)を測定した。各種の試験方法を記す。
【0020】
[透過率]
分光光度計(波長460nm)で、厚み0.15mmのテストピースの透過率を測定する。
【0021】
[反射率]
分光光度計(波長460nm)で、厚み3mmのテストピースの反射率を測定する。
【0022】
[加熱試験後の反射率]
厚み3mmテストピースに150℃×1H→80℃×1H→150℃×5Hの加熱をし、その後、分光光度計(波長460nm)で反射率を測定する。
【0023】
[引張強度]
JISK7113に準じて測定する。
【0024】
[曲げ強さ][曲げ弾性率]
JISK7271に準じて測定する。
【0025】
[アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)]
JISK7110に準じて測定する。
【0026】
表-1に光学特性と一般物性の結果を示す。実施例1〜6の反射率および加熱試験後の反射率は高い。一方、比較例1〜4および参照例1〜2のそれらは実施例と比べると劣っている。特に加熱試験後の反射率に差異が生じている。これらの結果より、この部分芳香族ポリアミド組成物はLED反射板用の樹脂組成物として優れていることが分かる。

【0027】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分芳香族ポリアミドが50〜70重量%に対し、チタン酸カリウム及び酸化チタンの合計量が30〜50重量%であり、前記チタン酸カリウムと前記酸化チタンの割合が1:10〜1:2.5からなるLED反射板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸化チタンの平均粒子径が0.1〜0.3μmである請求項1記載のLED反射板用樹脂組成物。
【請求項3】
前記部分芳香族ポリアミドが、モノマー成分として芳香族ジカルボン酸及び脂肪族アルキレンジアミンを含む部分芳香族ポリアミドである請求項1または請求項2記載のLED反射板用樹脂組成物。


【公開番号】特開2008−182172(P2008−182172A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86266(P2007−86266)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】