説明

LED寿命試験方法及び装置

【課題】 LEDの輝度、電圧、電流を高度の悪環境下で逐次計測してLEDの寿命を短期間で予測すること。
【解決手段】被試験LED700をHAST装置500内に配置し、このHAST装置500がその試験条件に到達した後、被試験LED700に外部から定電流を供給し,このLEDの光量を光電素子910で受光し、その電流をHAST装置の外部に引き出して被試験LED700の輝度を計測し、且つ、LED700自体の電流と電圧との測定データをHAST装置500の外部に引き出し、被試験LED700の劣化傾向を予測する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED寿命試験技術に関し、更に詳細に述べると、高温、高湿度環境下でLEDの輝度、電圧、電流劣化を逐次計測して,LEDの寿命を短期間で予測することができるLED寿命試験方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製品は、IECの規格番号60068−2−66の60749(規格名称 DUMP HEAT STEADY STATE)、JEITA規定番号EIA/ED4701/100/102(規格名称 高温高湿バイアス試験)、JEDECの規定番号JESD22−A118(規定名称 高加速寿命試験装置 HIGHLY ACCELERATED TEMPERATURE AND HUMIDITY STRESS TEST(HAST))、JIS規格番号 JIS C 0096−2001(規格名称 高温高湿定常)、JPCA規格番号 JPCA−ET08−2002(規定名称 高温・高湿・定常(不飽和加圧水蒸気)試験)において、試験温度(温度110、120、130℃)、湿度85%、試験時間、試験電圧が規定されている。このため、半導体製品は、このような規格に合った高度加速寿命試験装置(HAST装置)内で試験されている。
【0003】
一方、LEDの寿命の評価方法は、ASSIST(THE ALLIANCE FOR SOLID−STATE ILLUMINATION SYSTEMS AND TECHNOLOGIES)とIES(ILLUMINATING ENGINEERING SOCIETY:アメリカ照明学会)のLM−80−08で定義されている。
【0004】
従来技術では、LEDは、上記の規格に合った高温槽内に配置し、この高温槽内のLEDを発光させてLEDの劣化試験や輝度試験を行っていた。この試験の一例を掲げると、2002年に設立されたASSIST(The Alliance for Solid-State Illumination Systems and Technologies)では、最初に定格電流、定格電圧でLEDの初期エージングを1000時間を行い、その後高温槽内の3つの異なった温度環境の下で、定格電流を流して5000時間以上の動作試験を行っている。この動作試験中にLEDからの光のスペクトル分布が変わらない前提で、フォトダイオードの如き光電素子によってLEDの光出力を測定し、光のスペクトル分布が変わったら寿命が低下したと判断する。このため、LEDの寿命を確認するために、6000時間(約250日)という長時間の連続試験時間が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする他の課題は、高加速寿命試験装置(HAST装置)を用いてLEDの寿命試験を短時間で行うことができるようにしたLED寿命試験方法を提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする他の課題は、高加速寿命試験装置(HAST装置)を用いてLEDの寿命とともにその劣化現象を確認することができるようにしたLED寿命試験方法を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、高加速寿命試験装置(HAST装置)を用いてLEDの寿命試験を短時間で行うことができるようにしたLED寿命試験装置を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする他の課題は、高加速寿命試験装置(HAST装置)を用いてLED寿命とともにその劣化現象を確認することができる用にしたLED寿命試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の課題解を解決するための解決手段は、被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置し、前記被試験LEDに定電流を供給して発光し、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定するするとともに、前記被試験LEDからの光を受光する光電素子からの受光電流を検出して測定し、前記LED電流とLED電圧との測定値と前記受光電流の測定値とから前記被試験LEDの劣化と輝度低下とから前記被試験LEDの寿命を確認することを特徴とするLED寿命試験方法を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の課題解を解決するための解決手段は、被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置し、前記被試験LEDに一定時間単位毎に異なる定電流を供給して前記被試験LEDを発光し、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定し、前記LED電流とLED電圧との測定値から得られる時系列的な電流電圧特性に基づく前記被試験LEDの劣化と、前記被試験LEDからの光を受光する光電素子からの受光電流を検出して得られる前記被試験LEDの輝度低下とから前記被試験LEDの寿命を確認することを特徴とするLED寿命試験方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第3の課題解を解決するための解決手段は、被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置される被試験LEDに定電流を供給して前記被試験LEDを発光するLED定電流器と、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定するLED電圧/電流測定器と、前記高度加速寿命試験装置の容器内に配置され前記被試験LEDからの光を受光してその受光量に相応する電流を発生する光電素子を含む受光器と、前記受光器からの受光電流を検出し測定する受光電流測定器と、前記LED定電流器に定電流を供給するように前記LED定電流器に指令する定電流供給指令信号を発生し、前記LED電圧/電流測定器と前記受光電流測定器とからの測定データを受けて前記被試験LEDの寿命を表示/又は記録する制御装置とを備えたことを特徴とするLED寿命試験装置を提供することにある。
【0012】
本発明の第4の課題を解決するための手段は、第3の課題を解決する手段において、前記定電流供給指令信号は、前記被試験LEDに所定時間単位毎に異なる定電流を供給するように前記LED定電流器に供給されるものであり、前記LED電圧/電流測定器は、前記被試験LEDの電圧電流特性を測定するものであることを特徴とするLED寿命試験装置を提供することにある。
【0013】
本発明の第3及び第4の課題解決手段において、前記LED定電流発生器、LED電圧/電流測定器と、受光電流測定器と、制御装置とは、前記高度加速寿命試験装置の容器の外部にあって、前記LED低電流発生器と、前記LED電圧/電流測定器と、前記受光電流測定器とは、前記高度加速寿命試験装置の容器の装置口を介して前被試験LED、受光器に接続されるものである。
【発明の効果】
【0014】
HAST装置は、高い試験温度(110,120,130℃)と高い湿度85%とを有する高悪環境下にあり、本発明は、このような環境の下でLEDの輝度劣化試験を行うことができるので、従来技術による高温槽試験に比べて、極めて短期間でLEDの寿命試験を実現することができる。
【0015】
また、上記試験中に一定時間単位毎に,被試験LEDに異なる定電流を供給することによって、LEDの電流電圧特性の変遷情報を得ることができ、これによって、LED自体がどのような劣化傾向現象を示すのか詳細に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態によるLED寿命試験装置の系統図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるLED寿命試験方法によって得られたLEDの劣化変遷状態を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるLED寿命試験方法によって得られた電流電圧特性の変遷を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のLED寿命試験方法は、基本的には、被試験LEDをHAST装置内に配置し、このHAST装置がその試験条件に到達した後、被試験LEDに定電流を供給し、このLEDの光量を光電素子で受光し、その電流をHAST装置の外部に引き出し、受光電流測定器で測定し、且つ、LED自体の電流と電圧との測定データをHAST装置の外部に引き出し、被試験LEDの劣化傾向を予測することにある。
【0018】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、図1は、本発明の1つの実施の形態によるLED寿命試験装置を示し、このLED寿命試験装置は、HAST装置500の容器内に配置された被試験LED700の寿命試験を行うものであり、HAST装置500の容器内には、被試験LED700の光を受光して電気信号に変換する受光器600が配置されている。HAST装置500の容器内は、試験時には、高い試験温度(110,120,130℃)と高い湿度85%とを有するまで高悪環境となるように設定される。
【0019】
受光器600は、被試験LED700からの光を導通する導光デバイス(例えば、強化ガラス、サファイヤガラス)900とこの導光デバイス900を通過する光を受光するフォトダイオードの如き光電素子910とを含み、この導光デバイス900は、HAST装置500内の環境から絶縁して光電素子910がHAST環境下の湿度、圧力等の影響を受けないようにするために密閉容器610の開口を閉じるように配置され、光電素子910は、この密閉容器610内に配置されている。
【0020】
本発明のLED寿命試験装置は、LED定電流装置100と、LED電圧/電流測定器200と、受光電流測定器300と、制御装置400とを備えている。
【0021】
HAST装置500の容器の装置口800は、LED定電流器100の出力側の導線12と被試験LED700の入力側の導線13、LED電圧/電流測定器200の入力側導線15と被試験LEDの出力側導線14、受光電流測定器300の入力側導線18と受光器600の出力側導線17とをそれぞれ接続する接続部を構成している。
【0022】
制御装置400は、LED定電流装置100に定電流を供給するのを指示する定電流供給指令信号11をLED定電流装置100に供給し、また、LED電圧/電流測定器200から供給されるLED電圧電流測定データ16と受光電流測定器300から供給される受光電流(光電素子電流)測定データ19とを受けてこれらの測定データを表示及び/又は記録する。
【0023】
LED定電流器100は、制御装置400からの定電流供給指令信号11を受けてこの定電流供給指令信号11に相応する定電流を被試験LED700に供給してこの被試験LED700を発光させる。
【0024】
LED電圧/電流測定器200は、被試験LED700が駆動されてこの被試験LED700に流れる電流とその両端電圧とのデータを受けてこれらの電流/電圧データを測定する。
【0025】
また、受光電流測定器300は、受光器600からの受光量に相応する光電素子910の電流(受光電流)を受けてこの電流を測定する。
【0026】
既に述べたように、制御装置400は、LED電圧/電流測定器200の測定データ16と受光電流測定器300の測定データ19とを受信してこれらの測定データを表示及び/又は記録する。
【0027】
次に、本発明のLED寿命試験装置の動作を述べると、HAST装置内の環境が試験条件(温度120℃、湿度85%)に到達した後に、制御装置400が定電流供給指令信号11をLED定電流器100に供給すると、LED定電流器100は、導線12、13を介してHAST装置500内にある被試験LEDに定電流を供給する。定電流が供給された被試験LED700は、この定電流によって発光し、またその電流及び電圧を導線14、15を介してLED電圧/電流測定器200に伝送する。LED電圧/電流測定器200は、LED電圧/電流測定データVIDを導線16を介して制御装置400に送る。それと同時に、被試験LED700からの光は、導光デバイス900を通して光電素子910で受光され、この受光電流は、導線17、18を介して受光電流測定器300に供給される。受光電流測定器300は、受光電流測定データIDを導線19を介して逐次制御装置400に送る。制御装置400は、これらの測定データ16、19を表示及び/又は記録する。
【0028】
本発明の装置によって実施される第1のLED寿命試験方法では、制御装置400は、変化することがない定電流供給指令信号を発生して行われる。図2は、この第1のLED寿命試験方法によって行われた試験結果を示す。図2において、横軸は、時間を示し、また縦軸は、試験開始時点の各測定データ値を100%にしてからの変化(%)を示している。
【0029】
受光電流測定器300が測定する受光電流値(PD値)1000は、時間経過によって次第に低下し、これは、LEDの輝度が次第に劣化していることを示す。また、LED電圧/電流測定器200で測定されているLED電流値3000は、変化しないが、LED電圧値(Vf値)2000は、時間の経過とともに次第に高くなり、LEDが次第に劣化していることを示す。
【0030】
本発明の装置によって実施される第2のLED寿命試験方法では、制御装置400は、一定時間単位毎に、被試験LED700の定電流を変化させる定電流供給指令信号11を被試験LED700に供給してその電流電圧特性を変化させる。この電圧電流特性は、制御装置400内で表示及び/又は記録される。
【0031】
図3は、第2のLED寿命試験方法によるLEDの電流電圧特性を示す。図3において、横軸は、電圧(V)、縦軸は、電流(μA)を示す。LED700の初期電流電圧特性は,特性曲線4000に示す通利であるが、時間の経過とともに、特性曲線5000、6000、7000に示すように順次変化する。
【0032】
図3から解るように、LEDの電流電圧特性は、初期の正しい特性である曲線4000から曲線5000、6000と変化し、遂には、抵抗特性に似た直線7000の特性となり、これは、時間の経過とともにLEDが劣化していることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、LED寿命試験における試験時間の短縮と、試験対象であるLEDの劣化傾向を電流電圧特性で観測することができ、LED寿命試験に産業上有利に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
11 定電流供給指令信号
12、13、14、15、16、17、18、19 導線
100 LED定電流発生器
200 LED電圧/電流測定器
300 受光電流測定器
400 制御装置
500 HAST装置
600 LED受光器
610 密閉容器
700 被試験LED
900 導光デバイス
910 フォトダイオードの如き光電素子
1000 受光電流値
2000 LED電圧値
3000 LED電流値、
4000 初期値のLED電流電圧特性曲線
5000、6000 途中経過のLED電流電圧特性曲線
7000 最終のLED電流電圧曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置し、前記被試験LEDに定電流を供給して発光し、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定するするとともに、前記被試験LEDからの光を受光する光電素子からの受光電流を検出して測定し、前記LED電流とLED電圧との測定値と前記受光電流の測定値とから前記被試験LEDの劣化と輝度低下とから前記被試験LEDの寿命を確認することを特徴とするLED寿命試験方法。
【請求項2】
被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置し、前記被試験LEDに一定時間単位毎に異なる定電流を供給して前記被試験LEDを発光し、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定し、前記LED電流とLED電圧との測定値から得られる時系列的な電流電圧特性に基づく前記被試験LEDの劣化と、前記被試験LEDからの光を受光する光電素子からの受光電流を検出して得られる前記被試験LEDの輝度低下とから前記被試験LEDの寿命を確認することを特徴とするLED寿命試験方法。
【請求項3】
被試験LEDを高度加速寿命試験装置の容器内に配置される被試験LEDに定電流を供給して前記被試験LEDを発光するLED定電流器と、前記被試験LEDを流れるLED電流とLED電圧とを検出して測定するLED電圧/電流測定器と、前記高度加速寿命試験装置の容器内に配置され前記被試験LEDからの光を受光してその受光量に相応する電流を発生する光電素子を含む受光器と、前記受光器からの受光電流を検出し測定する受光電流測定器と、前記LED定電流器に定電流を供給するように前記LED定電流器に指令する定電流供給指令信号を発生し、前記LED電圧/電流測定器と前記受光電流測定器とからの測定データを受けて前記被試験LEDの寿命を表示/又は記録する制御装置とを備えたことを特徴とするLED寿命試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載のLED寿命試験装置であって、前記定電流供給指令信号は、前記被試験LEDに所定時間単位毎に異なる定電流を供給するように前記LED定電流器に供給されるものであり、前記LED電圧/電流測定器は、前記被試験LEDの電圧電流特性を測定するものであることを特徴とするLED寿命試験装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のLED寿命試験装置であって、前記LED定電流発生器と前記LED電圧/電流測定器と前記受光電流測定器と前記制御装置とは、前記高度加速寿命試験装置の容器の外部にあり、前記LED定電流発生器と前記LED電圧/電流測定器と前記受光電流測定器とは、前記高度加速寿命試験装置の容器の装置口を介して前被試験LED、受光器に接続されるようにしたことを特徴とするLED寿命試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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