説明

LED封止剤、それを含む発光ダイオードおよび硬化性組成物

【課題】 従来よりも透光性および耐光性に優れ、かつ発光などによって生じる熱に対する耐性(耐熱性)に優れたLED封止剤およびその封止剤で封止された発光ダイオードを提供し、さらには、上記特性に優れた新規な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 下記式


(R1とR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、nは正の整数を示す。)で示される(共)重合体と、重合性反応基を有する硬化成分を含むLED封止剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)封止剤、それで封止された発光ダイオードおよび硬化性組成物に関するものであり、より詳しくは透光性、耐光性および耐熱性に優れたLED封止剤、それで封止された発光ダイオードおよび上記特性を有する新規な硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学部材、照明部材および自動車部材などでは、ガラスなどよりも成形加工が容易であることから、透光性および耐光性に優れ、同時に発光などで生じる熱に対する耐性に優れたプラスチックの開発が求められている。そのようなプラスチックの材料として、特に、硬化性(メタ)アクリル系組成物が注目されている。そこで特許文献1では、エチレンオキシドで変性したビスフェノールAのジメタクリレートやヒドロキシピバリン酸と、ネオペンチルグリコールのエステル化合物のジアクリレートを用いたレンズシートを開示している。
【0003】
しかし、上記レンズシートでは、分子構造内に芳香族系炭化水素を有しているため、短波長領域の光に対する耐光性が十分であるとは言えない。
【0004】
また、特許文献2では、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合し、ラクトン環化させて形成されるラクトン環含有ポリマーに硬化成分を含有させた硬化性組成物を開示している。
【0005】
しかし、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル由来のポリマーを含む樹脂組成物では、ポリマーの重合率があまり高くないため、未反応のモノマーが多く残存する傾向がある。さらに、未反応のモノマーやラクトン環化時に生成される水やアルコールが、硬化膜の物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
また、特許文献3および4では、マレイミドを含む単量体成分を重合してなるポリマーに硬化成分を含有させた樹脂組成物を開示している。
【0007】
しかし、マレイミド由来のポリマーを含む樹脂組成物では、分子構造内に窒素原子が含有されているため、ポリマー自体が黄色〜黄褐色に変色し易く、透光性が十分でない。さらに、この影響は硬化膜の膜厚が厚くなるほど顕著になり、その上、熱が加わると、着色の度合いが進行することがある。
【0008】
そのため、これらのプラスチックを、太陽電池や屋外電光掲示板などのように太陽光に直接曝される屋外で使用する場合や、白色LEDなどの短波長領域の光源を利用する場合には、経時的に変色や変質が起こることがあった。
【0009】
また、LEDの封止剤では、発光によって生じた光を無駄なく装置外に放出させるための透光性や耐光性に加えて、LEDが発光する際に発生する熱に対する耐性も重要な要因となる。中でも、白色LEDでは、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源を利用して青色光、緑色光および赤色光の三色に変換して発光しているため、幅広い波長領域の光に対する透光性および耐光性が特に求められる。
【特許文献1】特開平6−263831号公報
【特許文献2】特開2002−303975号公報
【特許文献3】特開平04−130128号公報
【特許文献4】特開平10−31308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、従来よりも透光性および耐光性に優れ、かつ発光などによって生じる熱に対する耐性(耐熱性)に優れたLED封止剤およびその封止剤で封止された発光ダイオードを提供することを課題とした。そして、同時に上記特性に優れた新規な硬化性組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のLED封止剤は、式(一)
【0012】
【化1】

【0013】
(R1とR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、nは正の整数を示す。)
で示される単位を含む(共)重合体と、
重合性反応基を有する硬化成分を少なくとも含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記LED封止剤で封止された発光ダイオードも本願発明の実施の実施形態に含まれる。
【0015】
また、本発明の硬化性組成物は、式(一)
【0016】
【化2】

【0017】
で示される単位を含む(共)重合体と、
芳香族炭化水素構造を有しない、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリルエステル化合物を含み、式(二)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、mは1〜100であり、R3は水素、メチル基およびエチル基から選択される1種類または2種類以上である。)
で示されるエーテル構造が5質量%以上存在し、スルホン酸および/またはスルホン酸エステルの量が硫黄分換算で100ppm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のLED封止剤は、従来のLED封止剤よりも光や熱による劣化が少なく、同時に発光によって生じた光を無駄なくLED外へ放出することができる。
【0021】
さらに、上記封止剤で封止した発光ダイオードは、ダイオードを発光させた際に生じる光を従来よりも無駄なく装置外へ放出させることができ、同時に発光による劣化が少なく、耐久年数の長い発光ダイオードを提供することができる。
【0022】
また、本発明の硬化性組成物は、透過性、耐光性および耐熱性の点で、従来材と同等またはそれ以上の特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願発明のLED封止剤は、式(一)
【0024】
【化4】

【0025】
で示される単位を含む(共)重合体と、
重合性反応基を有する硬化成分を必須成分として含んでいる。
【0026】
式(一)の(共)重合体のR1とR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、置換基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリルおよび2−エチルヘキシルなどの直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニルなどのアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチルおよび2−メチル−2−アダマンチルなどの脂環式基;1−メトキシエチルおよび1−エトキシエチルなどのアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジルなどのアリール基で置換されたアルキル基;を有する炭素数1〜25の炭化水素基などが挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、メチル、エチル、およびシクロヘキシルを有する1級または2級炭素が好ましい。
【0027】
前記式(一)で示される単位を含む(共)重合体は、式(三)
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、R1およびR2は上記と同じ)
で示されるエーテルダイマーを含む単量体成分を重合させることで製造することができる。その際、重合する過程で前記式(三)で示されるエーテルダイマーの環化反応が進行し、式(一)に示すテトラヒドロピラン環構造を有する重合体が得られる。
【0030】
前記エーテルダイマーの具体例としては、ジメチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートおよびジアダマンチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートおよびジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートなどや、それらを組み合わせたものが挙げられる。中でも、ジメチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートおよびジベンジル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートを用いることが好ましい。
【0031】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中2〜60質量%、好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%であるのがよい。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不十分となる恐れがある。
【0032】
前記(共)重合体は、酸基を有するポリマーであってもよい。これにより、得られるLED封止剤は、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合が生じることを利用した架橋反応(以下、酸−エポキシ硬化と略する)が可能なLED封止剤とすることができる。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
前記(共)重合体に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合するようにすればよい。なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを単量体成分として酸基を導入する場合には、重合後に例えば後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0034】
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー、N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分が前記酸基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は、特に制限されないが、全単量体成分中5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%であるのがよい。
【0036】
前記(共)重合体は、ラジカル重合性二重結合を有するポリマーであってもよい。これにより、前記(共)重合体は、後述するラジカル重合性二重結合を有する化合物となり、重合性反応基を有する硬化成分をも兼ねるものとなる。
【0037】
前記(共)重合体にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば、重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
【0038】
前記重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0039】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分が前記ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は、特に制限されないが、全単量体成分中5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%であるのがよい。
【0040】
前記(共)重合体は、エポキシ基を有するポリマーであってもよい。これにより、前記(共)重合体は、後述するエポキシ基を有する化合物となり、重合性反応基を有する硬化成分をも兼ねるものとなる。
【0041】
前記(共)重合体にエポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合すればよい。
【0042】
前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分が前記エポキシ基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は、特に制限されないが、全単量体成分中5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%であるのがよい。
【0044】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分は、必須成分である前記エーテルダイマーと、前述した酸基を導入するための単量体、ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体、エポキシ基を導入するための単量体とのほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
【0045】
前記他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記(共)重合体を得る際の単量体成分が前記共重合可能な他のモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、95質量%以下が好ましく、85質量%以下であるのがより好ましい。
【0047】
前記単量体成分の重合反応の方法としては、特に制限はなく、従来公知の各種重合方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度=[単量体成分の全質量/(単量体成分の全質量+溶媒質量)]×100とする)は、使用する単量体成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なるが、好ましくは、重合温度40〜150℃、重合濃度5〜50%とするのがよく、さらに好ましくは、重合温度60〜130℃、重合濃度10〜40%とするのがよい。
【0048】
前記単量体成分の重合において溶媒を用いる場合には、溶媒として通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いるようにすればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、通常用いられる重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする(共)重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の(共)重合体を得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのがよい。
【0050】
前記単量体成分を重合する際には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする(共)重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の(共)重合体を得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのが好ましい。
【0051】
前記重合反応においては、エーテルダイマーの環化反応が同時に進行するものと考えられるが、このときのエーテルダイマーの環化率は必ずしも100モル%である必要はない。
【0052】
前記(共)重合体を得る際に、単量体成分として前述した酸基を付与しうるモノマーを用い、これによって酸基を導入する場合、重合後に酸基を付与するための処理を行う必要がある。酸基を付与するための処理は、用いる酸基を付与しうるモノマーの種類によって異なるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させるようにすればよく、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させるようにするか、もしくは、例えば(メタ)アクリル酸のような酸を付加させた後に生じた水酸基に、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させるようにすればよく、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させるようにすればよい。
【0053】
前記(共)重合体を得る際に、単量体成分として前述したラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーを用い、これによってラジカル重合性二重結合を導入する場合、重合後にラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行う必要がある。ラジカル重合性二重結合を付与するための処理は、用いるラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーの種類によって異なるが、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いた場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよく、無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いた場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよく、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、(メタ)アクリル酸等の酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよい。
【0054】
前記(共)重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは2000〜200000、より好ましくは5000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなり、一方、2000未満であると十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
【0055】
前記(共)重合体が酸基を有する場合には、酸価が、好ましくは30〜500mgKOH/g、より好ましくは50〜400mgKOH/gであるのがよい。(共)重合体の酸価が30mgKOH/g未満の場合、酸基を導入する効果がなく、500mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる傾向がある。
【0056】
LED封止剤中の上記(共)重合体の含有量は、多すぎると、(共)重合体と後述する重合性反応基を有する硬化成分の混合液がゲル化することがあり、逆に低すぎると、得られる硬化物がもろくなることがある。そのため、LED封止剤中の(共)重合体の含有量は、(共)重合体の種類や硬化条件によっても異なるが、一般には、封止剤中に占める比率で2〜60質量%、さらには5〜55質量%、特に5〜50質量%であることが好ましい。
【0057】
本発明のLED封止剤は、前記(共)重合体を必須としていればよく、前記(共)重合体のほかに、その他のポリマー成分として、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂など、通常、LED封止剤に用いられる従来公知のポリマーを含有するものであってもよい。なお、前記(共)重合体以外のポリマーをも含む場合には、ポリマー成分中に占める前記(共)重合体の含有量を50質量%以上とすることが好ましい。
【0058】
本発明の重合性反応基を有する硬化成分は、本発明のLED封止剤に適度な流動性を持たせることで良好な成形性を発現し、また、その分子構造内に反応性を有する基を持つことで良好な硬化性と硬度を発現しうるものである。前記重合性反応基を有する硬化成分としては、ラジカル重合性二重結合を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、Si−H結合を有する化合物等が挙げられる。詳しくは、前記重合性反応基を有する硬化成分として、ラジカル重合性二重結合を有する化合物を含有する場合には、本発明のLED封止剤はラジカル重合により硬化するものとなり、前記重合性反応基を有する硬化成分として、エポキシ基を有する化合物を含有する場合には、本発明のLED封止剤はカチオン重合または酸−エポキシ硬化により硬化するものとなり、前記重合性反応基を有する硬化成分として、Si−H結合を有する化合物を含有する場合には、本発明のLED封止剤は分子内に炭素−炭素二重結合を有する化合物と併用してヒドロシリル化により硬化するものとなる。これら重合性反応基を有する硬化成分は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記のラジカル二重結合を有する化合物としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどの側鎖に二重結合を持つアクリル系重合体や、スチレン、α―メチルスチレン、α―クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジアリルベンゼンホスホネートなどの芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニルおよびアジピン酸ビニルなどのビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートおよび(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)−メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;トリアリルシアヌレート;エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加したようなエポキシ(メタ)アクリレート類;などや、それらを組み合わせたものが挙げられる。
【0060】
上記のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」および「エピコート1004」(以上、登録商標、油化シェルエポキシ社製))、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」および「EP−4004」(以上、登録商標、油化シェルエポキシ社製))、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(「EPPN−201」(以上、登録商標、日本化薬社製);「EP−152」、「EP−154」(以上、登録商標、油化シェルエポキシ社製)および「DEN−438」(以上、登録商標、ダウケミカル社製))、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「EOCN−102S」、「EOCN−1020」および「EOCN−104S」(以上、登録商標、日本化薬製社製))、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(「EPPN−501」、「EPPN−502」および「EPPN−503」(以上、登録商標、日本化薬社製))、脂環式エポキシ樹脂(「セロキサイド2021P」および「セロキサイドEHPE」(以上、登録商標、ダイセル化学工業社製))、共重合型エポキシ樹脂(「CP−15」、「CP−30」、「CP−50M」および「CP−20MA」(以上、登録商標、日本油脂社製))、フルオレンエポキシ樹脂(「ESF−300」登録商標、新日鐵化学社製)、トリグリシジルイソシアヌレート(「TEPIC」登録商標、日産化学社製)、ビフェニルグリシジルエーテル(「YX−4000」登録商標、油化シェルエポキシ社製)などや、それらを組み合わせたものが挙げられる。
【0061】
これらラジカル重合性二重結合を有する化合物やエポキシ基を有する化合物をLED封止剤に使用する場合は、前記(共)重合体に対して10〜3000質量%、さらには30〜1000質量%の割合で添加することが好ましい。
【0062】
なお、上記のように硬化成分にエポキシ基を有する化合物を添加するか、前述の(共)重合体が酸基を有するか、または硬化成分にトリメリット酸、トリメリット酸無水物、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体またはスチレン/無水マレイン酸共重合体のような、多官能の酸基含有化合物あるいは酸基含有ポリマーをさらに含む場合、硬化成分に上記のような熱エネルギーを付与することで、酸−エポキシ硬化を起こさせ、硬化成分を硬化させることができる。
【0063】
上記のラジカル重合性二重結合を有する化合物やエポキシ基を有する化合物を重合性反応基を有する硬化成分として用いる場合、(共)重合体成分と重合性反応基を有する硬化成分の合計量に対して、0.01〜30質量%、さらには0.1〜10質量%の割合で下記する硬化剤を添加することが好ましい。
【0064】
本発明において、前記硬化成分がラジカル重合性二重結合を有する化合物である場合、硬化剤として光ラジカル発生剤および/または熱ラジカル発生剤をも含むことが好ましい。詳しくは、硬化剤として光ラジカル発生剤を含む場合には、本発明のLED封止剤は、例えば紫外線等の光エネルギーを照射することにより、ラジカル重合により光硬化しうるものとなる。一方、硬化剤として熱ラジカル発生剤を含む場合には、本発明のLED封止剤は、熱エネルギーを付与することにより、ラジカル重合により熱硬化しうるものとなる。硬化剤として光ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤の両方を用いてもよい。なお、前記硬化成分がラジカル重合性二重結合を有する化合物である場合であって、前記硬化剤を含有しない場合にも、本発明のLED封止剤は、X線、電子線等の高エネルギーの放射線エネルギーや、熱エネルギーを付与することによりラジカル重合による硬化が可能なものとなる。
【0065】
光ラジカル発生剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノンおよび1−クロロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンおよび2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタールおよびベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類ならびにキサントン類;などや、これらを組み合わせたものが挙げられる。
【0066】
熱ラジカル発生剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)およびジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ化合物;などや、これらを組み合わせたものが挙げられる。
【0067】
また、硬化成分にエポキシ基を有する化合物を含む場合は、硬化剤として光酸発生剤および/または熱酸発生剤を使用することが好ましい。
【0068】
光酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナートおよび4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテートなどのジアリールヨードニウム塩類;トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナートおよび4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテートなどのトリアリールスルホニウム塩類;などの公知のものや、これらを組み合わせたものが挙げられる。これらの光酸発生剤を硬化成分に添加した場合、光ラジカル発生剤と同様に硬化成分に紫外線などの光エネルギーを付与することで硬化を促進させることできる。
【0069】
また、熱酸発生剤としては、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネートなどのスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩などや、これらを組み合わせたものが挙げられる。中でも、スルホニウム塩およびベンゾチアゾニウム塩を用いることが好ましい。これらを硬化成分に添加した場合は、熱ラジカル発生剤と同様に硬化成分に熱エネルギーを付与することで、硬化を促進させることができる。
【0070】
前記重合性反応基を有する硬化成分としてのSi−H結合を有する化合物及びそれと併用される分子内に炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、特開2004−2823号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0071】
本発明のLED封止剤には、蛍光体を配合しても良い。これにより、発光素子から放出される光を吸収し、波長変換を行い、発光素子の色調と異なる色調を有する発光ダイオードを提供することができるからである。発光ダイオードに使用される蛍光体は、主に、青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体の少なくともいずれか1以上の蛍光体を使用することができる。これらの蛍光体は、本発明に係るLED封止剤中に投入し、ほぼ均一になるまで混合する。この混合物を、発光素子の周辺部に載置する。この蛍光体は、発光素子から放出される光を吸収し、波長変換を行い、発光素子の光と異なる波長の光を放出する。これにより、発光素子から放出される光の一部と、蛍光体から放出される光の一部と、が混合して、白色を含む多色系の発光ダイオードを作製することができる
また、本発明のLED封止剤は、幅広い波長領域の光に対する透光性および耐光性に優れていると同時に、発光などによって生じる熱に対する耐熱性にも優れている。そのため、赤色、緑色および青色など多種のLEDの封止剤として使用することができる。中でも、短波長領域の光に対する耐光性をより必要とする白色LEDの封止剤として優れた機能を発揮する。
【0072】
本発明のLED封止剤を用いて発光ダイオード(LED)を製造することができる。この場合、発光ダイオードは本発明のLED封止剤によって発光素子を被覆することによって製造することができる。
【0073】
前記発光素子としては特に限定されず、発光ダイオードに用いられ得る発光素子を用いることができる。例えば、サファイヤ基板上に窒化物系化合物半導体等の半導体材料を積層して作製したものが挙げられる。
【0074】
前記発光素子の発光波長は紫外域から赤外域まで特に限定されないが、主発光ピーク波長が550nm 以下のものを用いた場合に本発明の効果が特に顕著である。前記発光素子は一種類を用いて単色発光させてもよいし、複数を用いて単色又は多色発光させてもよい。
【0075】
前記被覆とは、前記発光素子を直接封止するものに限らず、間接的に被覆する場合も含む。具体的には、前記発光素子を本発明のLED封止剤で直接、従来用いられる種々の方法で封止してもよいし、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等の封止樹脂やガラスで発光素子を封止した後に、その上あるいは周囲を本発明のLED封止剤で被覆してもよい。また、前記発光素子を本発明のLED封止剤で封止した後、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等でモールディング(封止ともいう)してもよい。これらの方法によって、屈折率や比重の差を利用してレンズ効果等の種々の効果を持たせることも可能である。
【0076】
封止の方法としても各種方法を適用することができる。例えば、底部に発光素子を配置させたカップ、キャビティ、パッケージ凹部等に液状のLED封止剤をディスペンサーその他の方法にて注入して加熱等により硬化させてもよいし、固体状あるいは高粘度液状のLED封止剤を加熱する等して流動させ同様にパッケージ凹部等に注入してさらに加熱する等して硬化させてもよい。前記パッケージは種々の材料を用いて作成することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂等を挙げることができる。また、モールド型枠中にLED封止剤をあらかじめ注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後硬化させる方法も適用することができるし、発光素子を挿入した型枠中にディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等によりLED封止剤による封止層を成形、硬化させてもよい。単に液状または流動状態としたLED封止剤を発光素子状に滴下あるいはコーティングして硬化させてもよい。発光素子上に孔版印刷、スクリーン印刷、あるいはマスクを介して塗布すること等によりLED封止剤を成形させて硬化させることもできる。あらかじめ板状、あるいはレンズ形状等に部分硬化あるいは硬化させたLED封止剤を発光素子上に固定する方法によってもよい。さらには、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド剤として用いることもできるし、発光素子上のパッシベーション膜として用いることもできる。また、パッケージ基板として用いることもできる。
【0077】
さらに、適用する発光ダイオードの形状は、特には限定されず、用途に合わせて適宜選択することができる。具体的には、照明器具などで採用されている砲弾型や表面実装型などが挙げられる。
【0078】
また、本発明では、光に対する透過性および耐光性に優れ、同時に耐熱性に優れた新規な硬化性組成物として、式(一)
【0079】
【化6】

【0080】
で示される単位を含む(共)重合体と、
芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物を提供する。
【0081】
この硬化性組成物は、前述したLED封止剤用の素材として有効に適用し得ることは勿論のこと、その優れた透過性、耐光性および耐熱性を生かして、照明器具、光導波路、表示材料、プラスチックレンズ、光学シートなど各種光学部品に幅広く有効に活用できる。
【0082】
該組成物発明における式(一)で示される単位を含む(共)重合体は、前述と同様の特徴を有する。
【0083】
硬化性組成物中の上記(共)重合体の含有量は、多すぎると、(共)重合体と後述する芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物の混合液がゲル化することがあり、逆に低すぎると、得られる硬化物がもろくなることがある。そのため、硬化性組成物中の(共)重合体の含有量は、(共)重合体の種類や硬化条件によっても異なるが、一般には、硬化性組成物中に占める比率で2〜60質量%、さらには5〜55質量%、特に5〜50質量%であることが好ましい。
【0084】
また、上記「芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物」とは、分子構造内に芳香族炭化水素構造を含有していない(メタ)アクリル酸エステル化合物であって、かつ化合物1分子あたりに、2個以上の水酸基を有しているものを意味する。
【0085】
上記「芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物」としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールおよびブチルエチルプロパンジオールなどのアルカンジオールモノおよびジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのモノおよびジエステル化物およびβ, β, β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノールなどのモノ(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリンやポリグリセリンなどのモノ(メタ)アクリレートおよびポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0086】
中でも、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのモノおよびジエステル化物、β, β, β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのモノ(メタ)アクリレートおよびポリ(メタ)アクリレートなどの水酸基に対してβ水素を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物は、光による劣化や変色に対する耐性が比較的高いため好ましい。
【0087】
さらに、上記「芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物」は、硬化性組成物内に、1〜98質量%、さらには10〜95質量%、特に50〜95質量%含むことが好ましい。上記値以外では、耐熱性、寸法安定性および成形性などのバランスに取れた硬化性組成物を得ることができない場合がある。
【0088】
さらに本発明では、式(二)
【0089】
【化7】

【0090】
で表されるエーテル構造を、組成物中に5質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上導入されている。エーテル構造の割合が上記値以外では、光による劣化を低減させることができない場合がある。
【0091】
上記式(二)のR3は、水素、メチル基およびエチル基から選択され、そして「エーテル構造を有する化合物」としては、具体的には「非反応性成分」と「反応性成分」に分けることができる。
【0092】
「非反応性成分」としては、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、ブチレングリコールジアルキルエーテル、ポリブチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートおよびポリブチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;ジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのモノまたはジエステル化物、ブチルエチルプロパンジオール、水素化ビスフェノールAなど)のエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド付加物;ポリオール(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリンなど)のエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド付加物;などが挙げられる。
【0093】
「反応性成分」としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム開環重合体やブロック開環重合体およびポリアルキレングリコールなどのモノ(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなど;芳香族炭化水素構造を含有しないグリコール(例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのモノおよびジエステル化物、ブチルエチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水素化ビスフェノールAなど)のエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレートならびにジ(メタ)アクリレート;ポリオール(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリンなど)のエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレートならびにポリ(メタ)アクリレート;メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびポリエチレングリコールビニルエーテルなどの単官能ビニルエーテル;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルおよびエチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテルなどが挙げられる。
【0094】
これらの中でも、「エーテル構造を有する化合物」としては、得られる硬化性組成物の耐水性の低下を軽減させ、かつ、吸水率の増加を抑える目的で、「反応性成分」を用いることが好ましい。中でも、光による変色や劣化の観点から、分子構造内に芳香族炭化水素構造を有せず、かつ水酸基に対してβ水素を有しておらず、かつ、1分子中に2個以上の水酸基を有しているネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのモノおよびジエステル化物、β, β, β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどからなるポリオールのエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレートおよびポリ(メタ)アクリレートなどや、それらを組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0095】
さらに、本発明に寄る硬化性組成物に含まれるスルホン酸および/またはスルホン酸エステルの量は、硫黄原子換算で100ppm以下に抑えるべきであり、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppmである。上記値以外では、得られる硬化性組成物の変色を抑えることができない場合がある。
【0096】
上記組成物中の上記エーテル構造の割合と、スルホン酸および/またはスルホン酸エステル成分の割合を上記の値に設定することで、耐光性の低下をさらに抑制することができ、ガラスなどの透明性無機材料で得られるのと同等か、またはそれ以上の透明性、耐光性、耐熱性、寸法安定性、表面硬度および成形性に優れた特性を有する硬化性組成物を得ることができる。
【0097】
また本発明の硬化性組成物では、前述した添加剤以外に、重合性モノマーやオリゴマーおよび(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体および水酸基含有化合物をさらに含有させてもよい。
【0098】
上記重合性モノマーとしては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチルなどの単官能(メタ)アクリレート;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの単官能(メタ)アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルおよびクロルエチルビニルエーテルなどの単官能ビニルエーテル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセトアミドなどの単官能N−ビニル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび安息香酸ビニルなどの単官能ビニル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸、クロトン酸メチルおよびクロトン酸エチルなどの単官能α,β−不飽和化合物;ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテルおよびジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル;ジビニルベンゼンなどの多官能ビニル化合物;などや、これらを組み合わせたものが挙げられる。
【0099】
また、上記重合性オリゴマーとしては、飽和または不飽和の多塩基酸またはその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸などやそれらの酸無水物)と飽和または不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;多官能エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなど)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;多官能オキセタン化合物(例えば、4,4’−ビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸のビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メチル]エステル、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレンなど)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるオキセタン(メタ)アクリレート;飽和または不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなど)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートなど)との反応で得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート;や、これらを組み合わせたものなどが挙げられる。
【0100】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および/または共重合体としては、特には限定されないが、好ましくは、着色の比較的少ない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物と重合可能な反応基を有するものを用いることが好ましい。
【0101】
上記硬化性組成物は、例えば、以下のような工程で製造することができる。
【0102】
まず、式(一)
【0103】
【化8】

【0104】
で示される単位を含む(共)重合体の製造方法については、前述の方法を適用することができる。
【0105】
また、芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物の製造方法としては、ポリオールと(メタ)アクリル酸エステルとの脱アルコール反応により製造する方法(エステル交換法)およびポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水反応により製造する方法(脱水縮合法)など公知の方法が挙げられる。
【0106】
中でもエステル交換法は、ポリオールと(メタ)アクリル酸エステルとの仕込みモル比(ポリオール中の水酸基:(メタ)アクリル酸エステル)は、1:1〜1:20が好ましく、1:1.5〜1:10がより好ましく、1:2〜1:5がさらに好ましい。
【0107】
エステル交換法では、触媒として、アルカリ金属アルコラート、マグネシウムアルコラート、アルミニウムアルコラート、チタンアルコラート、ジブチルスズオキシド、陰イオン交換樹脂などが挙げられる。触媒の使用量は、反応の総仕込量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部がさらに好ましい。なお、反応後は、触媒を除去することが好ましい。
【0108】
エステル交換法を行う場合、溶媒としては、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、シメンなどが挙げられる。溶媒の使用量は、反応の総仕込量100質量部に対して、1〜70質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、10〜30質量部がさらに好ましい。
【0109】
エステル交換法を行う場合、反応温度は、50〜150℃が好ましく、70〜140℃がより好ましく、90〜130℃がさらに好ましい。
【0110】
脱水縮合法を行う場合、ポリオールと(メタ)アクリル酸との仕込みモル比(ポリオール中の水酸基:(メタ)アクリル酸)は、1:1〜1:5が好ましく、1:1.01〜1:2がより好ましく、1:1.05〜1:1.5がさらに好ましい。
【0111】
脱水縮合法を行う場合、触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を十分に発揮させるには、陽イオン交換樹脂が好ましい。陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製のアンバーリスト(登録商標)やアンバーライト(登録商標)、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)などが挙げられる。陽イオン交換樹脂は、使用前に、トルエン、メタノールなどの有機溶媒および水で十分に洗浄し、イオウ成分が留出しないようにしてから用いることが、本発明の効果を十分に発揮させる上で、より好ましい。触媒の使用量は、反応の総仕込量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部がさらに好ましい。なお、反応後は、触媒を除去することが好ましい。
【0112】
脱水縮合法に用いる溶媒および反応温度については、エステル交換法で用いるのと同様の溶媒および反応温度を適用することができる。
【0113】
また、硬化性組成物中のスルホン酸および/またはスルホン酸エステル含有量を硫黄原子換算で100ppm以下とするための手段としては、例えば、以下の手段が挙げられる。
【0114】
(1)硬化性組成物を得るまでの全ての工程で、スルホン酸および/またはスルホン酸エステル成分の使用を避ける。
【0115】
(2)硬化性組成物の製造工程で、スルホン酸および/またはスルホン酸エステル成分を使用する場合は、スルホン酸および/またはスルホン酸エステル成分を十分に除去する。
【0116】
上記の手段(1)としては、例えば、芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する際に、用いる触媒としてスルホン酸および/またはスルホン酸エステルの使用を避けることが挙げられる。
【0117】
上記の手段(2)としては、例えば充分に洗浄した陽イオン交換樹脂を用いること、反応後の粗生成物をアルカリ水溶液でよく洗浄すること、などが挙げられる。
【0118】
そして、上記(共)重合体と上記芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル化物を含む成分を混合し、適当な型に充填してから硬化させると、上記光学部品を得ることができる。
【0119】
本発明の硬化性組成物は、前述した光ラジカル発生剤および/または熱ラジカル発生剤を含んでいても良い。その場合、(共)重合体成分と芳香族炭化水素構造を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物成分の合計量に対して、0.01〜30質量%、さらには0.1〜10質量%の割合で添加することが好ましい。
【0120】
また、必要により本発明のLED封止剤及び硬化性組成物に、無機微粒子を配合することができる。無機微粒子は組成物を硬化させる際の硬化収縮率を低減させ、クラックや部品の精密な形状、寸法を設計通りに再現させたり、耐熱性や熱伝導率の向上を発現させる。本組成物を使用する光学部品によっても異なるが、透明性が重視される用途には、本組成物の硬化物と屈折率が適合したものを、あるいは最大粒子径が50nm以下のいわゆるナノ微粒子を用いることが必須となる。
【0121】
本発明のLED封止剤及び硬化性組成物に使用できる無機微粒子としては、例えば、ガラス、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカや疎水性超微粉シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウムなどを挙げることができる。なかでも、超微粉無定型シリカや疎水性超微粉シリカが、各物性のバランス上好ましく、特に表面をポリマーコーティングされたナノシリカ微粒子が、光学的特性と熱的特性の両立という点で特に好ましい。
【0122】
また、本発明のLED封止剤及び硬化性組成物は、必要に応じて、染料、顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤および分散剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0123】
本発明のLED封止剤及び硬化性組成物を硬化させる方法としては、硬化性組成物の製造の分野で公知の方法を適用することができ、例えば、加熱や、活性エネルギー線の照射等により行うことができる。中でも、LED封止剤及び硬化性組成物の特性などを考慮に入れ、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線またはガンマー線などの活性エネルギー線や、熱エネルギーを用いることが好ましい。
【0124】
具体的には、紫外線を用いて硬化させる場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いて硬化させることが好ましい。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯およびカーボンアーク灯などが挙げられる。また、これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風および/または高周波加熱などを用いて熱エネルギーを加えてもよい。
【0125】
電子線を用いて硬化させる場合には、加速電圧の下限を10kV以上、好ましくは20kV以上、より好ましくは30kV以上に設定し、上限を500kV以下、好ましくは300kV以下、より好ましくは200kV以下に設定した電子線を用いることが挙げられる。
【0126】
また電子線の照射量は、下限を2kGy以上、好ましくは3kGy以上、より好ましくは5kGy以上に設定し、上限を500kGy以下、好ましくは300kGy以下、より好ましくは200kGy以下に設定することが挙げられる。
【0127】
さらには上記電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風または高周波加熱などを用いて熱エネルギーを同時に付与してもよい。
【0128】
LED封止剤及び硬化性組成物を室温で硬化させる場合、その温度の下限を−20℃以上、好ましくは0℃以上とし、上限を50℃以下、好ましくは40℃以下に設定すればよい。硬化温度が−20℃以下であると、硬化スピードが著しく低下し、その結果、生産性が悪化したり、硬化が不完全となる場合がある。逆に、硬化温度が50℃以上になると、硬化が急激に進行するため、硬化時に発泡やクラックなどが発生し、得られる硬化物が反るなど、不具合が発生することがある。
【0129】
熱硬化性のLED封止剤及び硬化性組成物を室温以外で硬化させる場合、その温度は40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上とし、上限は180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下に設定するのがよい。上記値以外では、前述と同様な理由から、得られる硬化物に不具合が生じることがある。
【実施例】
【0130】
本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表すものとする。
【0131】
合成例および比較合成例の物性の分析は、下記のようにして行った。
(重量平均分子量の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定装置(「Shodex GPC System−21H」昭和電工社製)を用い、ポリスチレン換算から重量平均分子量を算出した。
【0132】
(重合体の酸価の算出方法)
重合体溶液0.5〜1gに、アセトン80mlおよび水10mlを添加して攪拌し、均一に溶解させて測定溶液を調整した。そして、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として用い、自動滴定装置(「COM−555」平沼産業社製)を使って滴定し、測定溶液の酸価を算出した。そして、溶液の酸価と重合体濃度から、重合体の酸価を算出した。
【0133】
(重合体中の硫黄含量の測定)
誘導結合プラズマ分析(Inductively Coupled Plasma:以下「ICP」と称する)を用いて測定した。
【0134】
(エーテル構造含有量測定方法)
まず、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのエーテル構造が臭素化されて生成するジブロモエタン、1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモブタンまたは1,4−ジブロモブタンなどを下記の条件でガスクロマトグラフィーにかけ、検量線を作成した。次に、硬化性組成物15mgと200mgの48%臭化水素酸を、5mlのアルミシールバイアルに入れ、テフロン(登録商標)シリコンセプタムを介して該バイアルの口を封じた。次に、それをオーブン内で150℃、2時間加熱して臭素酸分解反応させた。そして、上記バイアルを下記の条件でガスクロマトグラフィーにかけ、先に得た検量線を用いて硬化性組成物中のエーテル構造含有量を測定した。
【0135】
(硬化方法)
熱硬化方法:2枚のガラス板を、厚さ1mmのシリコンゴム製スペーサーを介して重ね合わせて反応ケースを作製した。そして、前記反応ケースのスペーサーで形成された隙間の間に上記重合体溶液を注入し、60℃の温水中で1時間かけて硬化させた。さらに乾燥機中で、110℃、2時間のポストキュアーを施して組成物を硬化させた。
紫外線(UV)硬化方法:上記と同様の方法で作製した反応ケースのスペーサーで形成された隙間の間に重合体溶液を注入した。そして、該ガラス板を、厚さ250μmのPETフィルムで覆い、その上から250mWの超高圧水銀ランプを用い、主波長365nm、照射強度43mJ/cm2・秒の紫外線を93.2秒照射させて組成物を硬化させた。
(透明性試験)
分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、波長400nmにおける透過率(%)を測定した。
【0136】
(促進耐候性試験)
超エネルギー照射試験機(スガ試験機株式会社製)を用い、光照射(照射強度100mW/cm2、波長295〜450nm、湿度70%Rh、温度60℃):6時間、結露 (湿度90%Rh以上、温度30℃):6時間を1セットとして、10セット(計120時間)の促進耐候性試験に供した。
試験後、分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用い、試験片の波長400nmでの透過率(%)を測定し、透過率の保持率(%)を下記の式から算出した。
保持率(%)=(試験後の透過率(%)/試験前の透過率(%))×100
なお、本促進耐候性試験10サイクルでの硬化性組成物の変色は、実際の屋外暴露試験2.5年における変色とほぼ同程度であった。
【0137】
(ガラス転移温度(Tg)測定)
熱機械分析装置(TMA)(島津製作所製「TMA−50」)を用い、昇温速度:5℃/分で線膨張係数を測定し、線膨張係数の変曲点から、Tg(℃)を算出した。
(スルホン酸および/またはスルホン酸エステル由来の硫黄含有量測定方法)
硬化性組成物をトルエンに溶解させ、水を添加して分液ロートでスルホン酸および/またはスルホン酸塩を抽出した。得られた抽出液からスルホン酸および/またはスルホン酸塩を含む水層を分離、エバポレーターにて濃縮し、さらに熱風乾燥機中で完全に水分を除去したものを、再びアセトンに再溶解させたものを試料とし、ガスクロマトグラフィーにかけてスルホン酸量を定量した。
【0138】
また、分液ロートで分離した硬化性組成物を含むトルエン層に、再度水を添加し、100℃で10時間加熱しながら攪拌することで、スルホン酸エステルをスルホン酸に分解させた。そして分液ロートを用いて水層のみを分取し、エバポレーターで濃縮し、さらに熱風乾燥機中で完全に水分を除去したものを、再びアセトンに再溶解させたものを試料とし、ガスクロマトグラフィーにかけてスルホン酸エステル量を定量した。そして、上記スルホン酸量とスルホン酸エステル量の合計から、硬化性組成物中のスルホン酸および/またはスルホン酸エステル由来の硫黄含有量を算出した。
【0139】
(合成例1)
ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(以下「MD」と称する)30部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)70部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂製「パーブチルO」;以下「PBO」と称する)4部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と称する)90部をよく攪拌混合してモノマー滴下液を調整し、モノマー滴下層に仕込んだ。
【0140】
冷却管をつけたセパラブルフラスコからなる反応槽に、PGMEA150部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱し、反応槽の温度を90℃まで昇温させて同温度で安定させた。そして温度を90℃に保ちながら、135分間かけてモノマー滴下槽からモノマー滴下液を滴下した。滴下が終了してから60分後、反応槽を110℃に昇温させ、その状態で3時間維持した後、室温まで冷却した。
得られた重合体溶液をn−ヘキサンで再沈させた後、n−ヘキサンを減圧除去して重合体(P−1)を得た。得られたP−1の重量平均分子量は19000であり、P−1中には硫黄原子は観測されなかった。
【0141】
(合成例2)
モノマー滴下液として、MD30部、MMA35部、メタクリル酸シクロヘキシル(以下「CHMA」と称する)35部、PBO4部、PGMEA90部用いた以外は前記合成例2と同様にして重合体(P−2)を得た。
得られたP−2の重量平均分子量は17000であり、P−2中には硫黄原子は観測されなかった。
【0142】
(合成例3)
MMA70部の代わりに、CHMA70部を用いてモノマー滴下液を調整した以外は、合成例1と同様にして重合体(P−3)を得た。
得られたP−3の重量平均分子量は16500であり、P−3中には硫黄原子は観測されなかった。
【0143】
(合成例4)
モノマー滴下液として、MD50部、CHMA50部、PBO4部、PGMEA90部用いて調整した以外は、合成例1と同様にして重合体(P−4)を得た。
得られたP−4の重量平均分子量は18000であり、P−4中には硫黄原子は観測されなかった。
【0144】
(合成例5)
モノマー滴下液として、MD40部、MMA120部、メタクリル酸(以下「MAA」と称する)40部、PBO8部、PGMEA180部を使用し、反応開始時に、反応層中にPGMEAを150部仕込む代わりにPGMEAを300部仕込んだモノマー液を滴下した反応槽を110℃に昇温して3時間維持した後、反応槽にガス導入管を介して酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスをバブリングしながら、反応槽に、メタクリル酸グリシジル70部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4部、テトラフェニルホスフォニウムブロミド0.8部を仕込み、そのまま110℃で12時間反応させた後、室温まで冷却し、得られた重合体溶液をn−ヘキサンで再沈した後、減圧でn−ヘキサンを除去した以外は前記合成例1と同様の方法で重合体(P−5)を得た。
得られたP−5の重量平均分子量は18000であり、酸価は2mgKOH/gであり、P−5中には硫黄原子は観測されなかった。
【0145】
(合成例6)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド2モル付加物(以下「NPG−2EO」と称する)192g、MMA400g、ジブチルスズオキシド(以下「DBTO」と称する)3.84gおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下「4H−TEMPO」と称する)19.2mgを入れて攪拌しながら110℃まで昇温させた。そして、反応によって生成したメタノールのみを留去しながら、エステル交換反応を6時間行い、反応液を得た。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(M−1)を得た。
得られたM−1中には、硫黄原子は観測されなかった。
【0146】
(合成例7)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、十分に脱水したネオペンチルグリコール(以下「NPG」と称する)135g、MMA400g、カリウムt−ブトキシド(以下「t−BuOK」と称する)1.35gおよび4H−TEMPO13.5mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。そして反応によって生成するメタノールのみを留去しながら、エステル交換反応を4時間行って、反応液を得た。得られた反応液から未反応のMMAを留去し、水洗して未反応のネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールモノメタクリレートおよび触媒を除去し、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(M−2)を得た。
得られたM−2中には、硫黄原子は観測されなかった。
【0147】
(合成例8)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、MAA189g、トルエンおよび水で各々3回ずつ洗浄後乾燥させた陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーリスト15D)25g、トルエン50gおよび4H−TEMPO19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。そして反応によって生成する水を留去しながら、脱水エステル化反応を6時間行い、反応液を得た。反応終了後、反応液から陽イオン交換樹脂をろ過により除去し、さらに加熱減圧によってトルエンおよび未反応のMAAを除去してネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(M−3)を得た。
得られたM−3中には、硫黄原子が7ppm含まれていた。
【0148】
(合成例9)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、アクリル酸エチル400g、DBTO3.84gおよび4H−TEMPO19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。そして反応によって生成するエタノールのみを留去しつつ、エステル交換反応を6時間行い、反応液を得た。得られた反応液からアクリル酸エチルを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド付加物のジアクリレート(M−4)を得た。
得られたM−4中には、硫黄原子は観測されなかった。
【0149】
(合成例10)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド3モル付加物266g、MMA600g、DBTO5.32gおよび4H−TEMPO26.6mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。反応によって生成するメタノールのみを留去しつつ、エステル交換反応を6時間行い、反応液を得た。得られた反応液からMMAを留去し、トリメチロールプロパンへのエチレンオキシド3モル付加物のトリメタクリレート(M−5)を得た。
得られたM−5中には、硫黄原子は観測されなかった。
【0150】
(合成例11)
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコにテトラメトキシシラン145g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19g、メタノール30g、トルエンおよび水で各々3回ずつ洗浄後乾燥させたアンバーリスト15(登録商標:ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、陽イオン交換樹脂)5.0gを入れ、65℃で2時間攪拌しながら反応させた。次に、90℃に昇温させ、メタノールを留去した後、イオン交換樹脂を濾別して重合性ポリシロキサンを得た。
【0151】
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下口、ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン200gを入れて窒素ガスを導入し、攪拌しながら100℃に昇温させた。次に、上記重合性ポリシロキサン20g、MMA180g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル6gを混合させた溶液を滴下口より2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、同温度を維持しながらさらに4時間反応させ、有機ポリマー溶液を得た。
【0152】
次に、攪拌装置、温度計、コンデンサー、2つの滴下口を備えたフラスコに、酢酸ブチル200g、メタノール50gを仕込み、内温を20℃に調整した。そして、フラスコ内を攪拌しながら上記有機ポリマー溶液20g、テトラメトキシシラン30gと酢酸ブチル30gの混合液を滴下し、同時に25%のアンモニア水20gとメタノール20gの混合液を上記とは別の滴下口から1時間かけて滴下した。滴下後、同温度を維持しながら、さらに2時間攪拌し、有機ポリマー複合シリカ微粒子分散液(S−1)を得た。
【0153】
(比較合成例1)
MDの代わりにN−フェニルマレイミドを用いてモノマー滴下液を調整した以外は、前記合成例1と同様にして重合体(P−6)を得た。得られたP−6の重量平均分子量は12500であり、P−6中には硫黄原子は観測されなかった。
【0154】
(比較合成例2)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、NPG−2EO192g、MAA189g、p−トルエンスルホン酸(以下、「PTS」と称する)10g、トルエン50gおよび4H−TEMPO31.1mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。そして反応によって生成する水を留去しつつ、脱水エステル化反応を6時間行った。反応終了後、水洗、静置し水層部を分離する操作を3回繰り返した後、加熱減圧によってトルエンおよび未反応のMAAを除去してネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(M−6)を得た。
得られたM−6中には、硫黄原子が340ppm含まれていた。
【0155】
(比較合成例3)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物228g、MMA400g、DBTO4.56gおよび4H−TEMPO22.8mgを入れて攪拌し、110℃に昇温させた。そして反応によって生成するメタノールのみを留去しつつ、エステル交換反応を6時間行った。得られた反応液からMMAを留去し、ビスフェノールAへのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(M−7)を得た。
得られたM−7中には、硫黄原子は観測されなかった。
【0156】
(実施例1〜11、比較例1〜5)
上記合成例1〜11および比較合成例1〜3で得られた化合物を用い、表1および表2に示す配合割合で実施例1〜11および比較例1〜5の硬化性組成物を調合した。
【0157】
実施例1〜10および比較例1〜5の硬化性組成物は表1および2に示す比率で十分に混合して均一な溶液にした。実施例11の硬化性組成物は表2に示す比率で十分に混合した後、加熱減圧して溶媒を除去することによって、無機微粒子が分散した硬化性組成物を得た。これらの硬化性組成物について、エーテル構造含有量とスルホン酸および/またはスルホン酸エステル由来の硫黄原子含有量を前記の方法で測定した(ただし、エーテル構造含有量測定及びスルホン酸および/またはスルホン酸エステル由来の硫黄含有量測定は重合開始剤を配合しないで測定)。また、前記の硬化方法によって成形体を成形し、該成形体について、前述した方法で透過率、促進耐候性試験による保持率、ガラス転移温度(Tg)の測定を行った。
【0158】
結果を表1、2に示す。尚、表中のD−1173とは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:ダロキュア1173)、PBO:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルO)を、PMMAは、ポリメタクリル酸メチル(住友化学株式会社製、商品名:スミペックスLG−6A)を、PF−656:フッ素系界面活性剤は、(オムノバ社製、商品名:ポリフォックス)を表している。
【0159】
上記表1および2の結果から、本発明のLED封止剤は、透過率、耐光性および耐熱性において、従来と同等か、またはそれ以上の優れた特性を有していることを示している。
【0160】
それゆえ、本発明のLED封止剤で封止された発光ダイオードも、従来と同等か、またはそれ以上の優れた特性を有していることを示していると考えられる。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(一)
【化1】

(R1とR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、nは正の整数を示す。)
で示される単位を含む(共)重合体と、
重合性反応基を有する硬化成分を少なくとも含むことを特徴とするLED封止剤。
【請求項2】
請求項1に記載のLED封止剤で封止された発光ダイオード。
【請求項3】
式(一)
【化2】

で示される単位を含む(共)重合体と、
芳香族炭化水素構造を有しない、1分子中に2個以上の水酸基を有する(メタ)アクリルエステル化合物を含み、式(二)
【化3】

(式中、mは1〜100であり、R3は水素、メチル基およびエチル基から選択される1種類または2種類以上である。)
で示されるエーテル構造が5質量%以上存在し、スルホン酸および/またはスルホン酸エステルの量が硫黄分換算で100ppm以下であることを特徴とする硬化性組成物。


【公開番号】特開2006−89528(P2006−89528A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273636(P2004−273636)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】