説明

LED点灯装置

【課題】照度情報をAD/DA変換機能を有し、消灯前と点灯後の照度の一定化を図りながら、DA変換後のリニアリティー化を実現可能とする。
【解決手段】前回AD変換器131を介して読み取った照度情報のデジタルデータ値と、新たに読み取った照度情報のデジタルデータ値の積算平均化処理を行ったデジタルデータ値との差を比較し、差が2つ以上あれば、新たに読み取り積算平均化処理した値を出力し差が±1以下であれば、前回出力したデータ値を出力する処理を行うことによって、AD変換後のバラツキを抑え、DA変換器132を介して得られるアナログ電圧の直線性を向上させることで、LED15のチラツキを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、顕微鏡等のように予め設定された同条件下での照度が必要されるLED(発光ダイオード)を光源と使用したLED点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLED光源を用いた点灯装置では、照明光の調光は、調光部に対する操作に応じて調整される基準電圧を基にして、制御部がLEDに流す電流を変化させることにより行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−233608公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、LEDを消灯した後に再度点灯させた場合の照度条件が温度等の要因により異なってくる。従って、顕微鏡等のように同条件の照度で試料に対し照射させる必要がある場合には、事前に調光が必要となる等の準備が必要であり、試料観察に手間を要する、という問題があった。
【0005】
そこで、マイコン等の制御手段を用い、アナログをデジタルデータにAD変換し、LEDを消灯させる前の調光情報を予め記憶し、この記憶情報を点灯時に読み出しアナログデータにDA変換して消灯前の照度を維持することが考えられる。しかしながら、AD変換した値が小さいときは、出力電圧変動率が大きく、AD変換した値がある一定以下の場合のみ、ハードウェアにて所定の値を出力している。このため、ある一定以下の領域は、リニアリティ−がなく、出力が一定となってしまう、という新たな問題があった。
【0006】
この発明の目的は、照度情報をAD/DA変換機能を有し、消灯前と点灯後の照度の一定化を図りながら、DA変換後のリニアリティー化を実現可能とするLED点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明のLED点灯装置の請求項1では、可変可能なアナログ電圧に基づいてデジタルデータに変換し、該デジタルデータを一時的に保存するとともに、アナログ電圧に変換してLEDを点灯させるLED点灯装置において、前記デジタルデータ値にした場合の該データのバラツキを、前回出力したデータ値との差の増減に基づき加減算処理を行い抑制する制御部を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明のLED点灯装置の請求項2では、請求項1における前記制御部は、前回AD変換して読み取った照度情報のデジタルデータ値と、新たに読み取った照度情報のデジタルデータ値の積算平均化処理を行ったデジタルデータ値との差を比較し、差が2つ以上あれば、新たに読み取り積算平均化処理した値を出力し差が±1以下であれば、前回出力したデータ値を出力する処理を行うことによって、AD変換後のバラツキを抑えてアナログ電圧変換後の直線性を向上させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、AD変換された調光情報値を、積算平均化処理することにより、DA変換された出力のリニアリティー化を図ることでLEDのチラツキを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明のLED点灯装置に関する一実施形態について説明するための概念的な回路構成図である。
【図2】この発明と従来の違いを説明するための説明図である。
【図3】図1の調光電圧を所定時間に3回デジタルデータとして取り込んだ場合のデータ例について説明するための説明図である。
【図4】図1における調光電圧のデジタルデータがリニアリティーに変化させるために取り込んだデータ例について説明するための説明図である。
【図5】図4の取り込まれたデータを制御部で処理する処理例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明のLED点灯装置に関する一実施形態について説明するための概念的な回路構成図である。
【0013】
図1において、11は例えば5Vの直流電圧を有する電源である。電源11の電圧は、調光器12を構成する可変抵抗VRを介して、AD変換器131、DA変換器132、RAM、ROM、EEPROMから構成されるマイコンである制御部13のアナログからデジタルデータに変換するAD変換器131に供給する。AD変換器131の出力は、デジタルからアナログデータに変換するDA変換器132に供給する。制御部13はRAM、ROM、EEPROMの各種メモリを搭載し、RAMには汎用レジスタが多数搭載されており、ソフトウェアでの処理等に使用される。ROMには、ソフトウェアを書き込み、EEPROMは、不揮発性フラッシュメモリであり、書き込み/消去が可能であり、AD変換した値をメモリさせておくことが可能である。
【0014】
制御部13のアナログ出力は、オペアンプOP、NPNトランジスタQから構成される駆動回路14のオペアンプOPの非反転入力+に供給する。駆動回路14のCは位相補償を行うことでフィードバック制御の安定性を向上させるコンデンサで、R1はトランジスタQのベース電流制限用の抵抗である。オペアンプOPの出力は、抵抗R1を介してトランジスタQのベースに接続するとともに、コンデンサCを介してオペアンプOPの反転入力−に接続する。
【0015】
トランジスタQのコレクタにはアノードが電源11に接続されたLED15のカソードが接続される。トランジスタQのエミッタは、電流検出用の抵抗R2で構成される電流検出部16を介して基準電位点に接続されるとともに、オペアンプOPの反転入力−に接続される。
【0016】
ところで、5Vの電源11の直流電圧は、調光用の可変抵抗VRに供給し、可変抵抗VRの出力から調光用の電圧Vrを生成し、制御部13のAD変換器131に供給され、ここでデジタルデータに変換する。変換された調光情報は、RAMのレジスタに一時的に記憶される。
【0017】
同時に、デジタルデータに変換された調光情報は、DA変換器132でアナログ信号に変換され、制御部13のアナログ出力電圧として駆動回路14のオペアンプOPの非反転入力+に供給する。オペアンプOPでは、非反転入力+の電圧と反転入力−の電圧が同電圧となるように定電流制御を行う。オペアンプOPは、非反転入力+と反転入力−との電圧差を増幅した電圧が出力され、この出力に基づいてトランジスタQをオンさせ、LED15に電流を流し、LED15を点灯させている。
【0018】
ところで、調光器12から出力される電圧Vrは、制御部13のAD変換器131で、AD変換を例えば2回行い、図2に示す調光のための(1),(2)の分解能が例えば8ビットのデジタルデータを得て、RAMのレジスタに過去に読取った値のリストに上書きを行い、(1),(2)のデジタルデータの積算平均化処理を行って、その値のDA変換を行う。DA変換で得られたアナログ電圧は、駆動回路14に供給しLED15に流れる電流を決定し、LED15の点灯の照度を決定する。
【0019】
調光器12の出力電圧Vrが2.0Vであるとした場合、AD変換器131でAD変換した10進数の値は、102.4となるが、小数点以下について、デジタル信号としては、切り上げあるいは切り下げする必要があり、102あるいは103の何れかとなる。10進数102は、DA変換器132でDA変換されたアナログ電圧としては、1.992188Vとなり、10進数103は、DA変換器132でDA変換されたアナログ電圧としては、2.011719Vとなる。この場合は、(1),(2)のデジタルデータの平均値を出力しているだけのため、平均値そのものがばらつくことになる。
【0020】
このように、AD変換は、アナログ電圧をある分解能をもってデジタル値に変換するものであることから、中途半端なアナログ電圧をデジタル値に変換するときは、最下位ビットが変動する。例えば、DC5Vに対して分解能8bitであれば、5/256=0.02Vの分解能となる。アナログ電圧が0.01Vだったとすると、これをマイコンが0と判定するか1と判定するかのバラツキが生じ、LED15の表示にチラツキが生じる、という問題が生じる。
【0021】
そこで、調光器12から出力される電圧Vrを制御部13のAD変換器131で、AD変換を例えば3回行い、図3に示す調光のための(1)〜(3)の分解能が8ビットのデジタルデータを得て、リニアリティーのあるアナログ電圧を駆動回路14に供給する場合の例について図4、図5とともに説明する。
【0022】
図5において、調光器12から出力される調光電圧Vrを、例えば2msの時間内に3回読み取り(1)〜(3)のデジタルデータを得て(S1)、3回の読み取りが終了したかを判断する(S2)。ステップS2において、3回終了していない場合は、ステップS1に戻り再度読み取りを行い、終了の場合は、RAMに(1)〜(3)のデジタルデータを、過去のヒストリーレジスタ(a)との書き換えを行う。
【0023】
同じようにして、得られた(1)〜(3)のデジタルデータは、RAMのレジスタに書き込むが、先の(1)〜(3)のデジタルデータは、ヒストリーレジスタ(1)からヒストリーレジスタ(b)に転送する。
【0024】
さらに、得られた(1)〜(3)のデジタルデータは、RAMのレジスタに書き込むが、先のヒストリーレジスタ(b)の(1)〜(3)のデジタルデータは、ヒストリーレジスタ(c)に、先のヒストリーレジスタ(a)の(1)〜(3)のデジタルデータは、ヒストリーレジスタ(b)にそれぞれ転送し、新たな(1)〜(3)のデジタルデータをヒストリーレジスタ(a)に上書きする(S3)。
【0025】
このようにして、ヒストリーレジスタ(a)〜(c)に書き込まれたデジタルデータを積算平均化処理データAとし(S4)、前回のデータAと比較し、平均値が2以上の違いがあるかを判断する(S5)。2以上の違いがあればデータAに基づいてアナログ電圧を駆動回路14に出力する。2以上の違いなれば、ステップS6に進む。
【0026】
ステップS6において、データAが前回出力したデータAと同じかを判断し、同じであれば、前回と同じデータAを出力し、このデータAに基づいたアナログ電圧を駆動回路14に出力し、同じでなければ、データAが前回出力したデータAよりも1大きいかを判断する(S7)。
【0027】
ステップS7において、前回出力したデータAよりも1大きい場合は、前回出力されたデータAから1を減算したデータに基づきDA変換を行って得られたアナログ電圧を駆動回路14に出力する。前回出力されたデータAよりも1大きくない場合は、前回出力したデータAに1を加算したデータに基づいたアナログ電圧を出力として駆動回路14に出力する。
【0028】
このように、実際に出力した値と、新たに読み取り積算平均化処理をした値との差を比較し、差が2つ以上あれば、新たに読み取り積算平均化処理した値を出力し差が±1以下であれば、前回出力した値を出力する処理を行うことによって、AD変換後のバラつきを抑え、延いてはDA変換後のアナログ電圧の直線性を向上させ、LED表示のチラツキを抑えることが可能となる。
【0029】
この実施形態では、AD変換された調光情報値を、積算平均化処理することにより、DA変換された出力のリニアリティー化を図ることで、LEDのチラツキを防止することが可能となる。
【0030】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば所定時間に調光電圧Vrを調光データとして取り込む回数は、3回に限る必要はなくその他の複数回数でも構わない。また、図3で取り込まれる(1)〜(3)のデジタルデータは、AD変換値が「1」の差しかないデータ例しか示していないが、図5のステップS5の判断で行われる「2」以上の差の場合もあり得る。
【符号の説明】
【0031】
11 電源
12 調光器
13 制御部
131 AD変換器
132 DA変換器
14 駆動回路
15 LED
VR 可変抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変可能なアナログ電圧に基づいてデジタルデータに変換し、該デジタルデータを一時的に保存するとともに、アナログ電圧に変換してLEDを点灯させるLED点灯装置において、
前記デジタルデータ値にした場合の該データのバラツキを、前回出力したデータ値との差の増減に基づき加減算処理を行い抑制する制御部を備えたことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前回AD変換して読み取った照度情報のデジタルデータ値と、新たに読み取った照度情報のデジタルデータ値の積算平均化処理を行ったデジタルデータ値との差を比較し、差が2つ以上あれば、新たに読み取り積算平均化処理した値を出力し差が±1以下であれば、前回出力したデータ値を出力する処理を行うことによって、AD変換後のバラツキを抑えてアナログ電圧変換後の直線性を向上させたことを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate