説明

LED照明灯具の取付構造及び取付方法

【課題】LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けることができ、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保を可能にする。
【解決手段】本体ケース21の内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、本体ケース21の正面側に透光板22が設置されるLED照明灯具20の取付構造であって、本体ケース21の下側に突出して設けられる下側取付部23と上側に突出して設けられる上側取付部24とが、被取付面に固定される取付具に取り付けられ、下側取付部23の取付箇所近傍における取付具に、被取付面に沿う横方向を軸方向とするヒンジ部83が設けられ、上側取付部40の取付箇所近傍における取付具の取付部材の相互が、長孔724とボルト93及びナットによる、本体ケース21の傾斜角度を調整可能にする傾斜調整機構で取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路トンネルの照明灯具として用いられるLED照明灯具の取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルの照明灯具は、略直方体形の本体ケースの内部にナトリウム灯或いは蛍光灯の光源が収容され、本体ケースの正面側に透光板が設置され、光源の光が透光板を介して出射されるものが一般的である。この本体ケースの左右両端部近傍の背面側には、ボルト挿通孔を有する取付部が上方や下方に突出するようにして設けられており、トンネル壁面の取付部と対応する位置に予めアンカーボルトで取り付けられている取付具のボルト挿通孔に取付部のボルト挿通孔の位置が合わせられ、双方のボルト挿通孔に挿入されるボルトにナットを螺合することにより、照明灯具が取り付けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−63424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では道路トンネルの照明灯具として、光源にLED(発光ダイオード)を用いるLED照明灯具が提唱されている。しかしながら、道路トンネルの照明には、道路状況や交通状況を的確に把握するための良好な視覚情報を確保することが必要となる一方で、LED照明灯具の光源であるLEDは指向性を有するため、LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けられる構成が求められる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けることができ、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保を可能にするLED照明灯具の取付構造及び取付方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、多様な長さのLED照明灯具に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資するLED照明灯具の取付構造及び取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のLED照明灯具の取付構造は、本体ケースの内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、前記本体ケースの正面側に透光板が設置されるLED照明灯具の取付構造であって、前記本体ケースの下側に突出して設けられる下側取付部と上側に突出して設けられる上側取付部とが、被取付面に固定される取付具に取り付けられ、前記下側取付部に、若しくは前記下側取付部の取付箇所近傍における前記取付具に、前記被取付面に沿う横方向を軸方向とする軸部が設けられ、前記上側取付部と前記取付具の相互が、若しくは前記上側取付部の取付箇所近傍における前記取付具の取付部材の相互が、前記本体ケースの傾斜角度を調整可能にする傾斜調整機構で取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けることができ、軸部を中心とする本体ケースの傾斜調整により、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報を確保することができる。
【0007】
本発明のLED照明灯具の取付構造は、前記軸部が、前記取付具の取付部材に設けられているヒンジ部であることを特徴とする。
この構成によれば、細長板にボルト挿通孔が形成されている取付部を有する一般的に多いタイプのLED照明灯具に対し、下側取付部側に特別な加工を施さずに本取付構造を適用することができ、汎用性を高めることができる。
【0008】
本発明のLED照明灯具の取付構造は、前記傾斜調整機構が、前記取付具の一方の取付部材に形成されている略弧状の長孔と、前記取付具の他方の取付部材に設けられ前記長孔に取り付けられる固定具とから構成されることを特徴とする。
この構成によれば、細長板にボルト挿通孔が形成されている取付部を有する一般的に多いタイプのLED照明灯具に対し、上側取付部側に特別な加工を施さずに本取付構造を適用することができ、汎用性を高めることができる。更に、前述の取付部材のヒンジ部と併せた構成とする場合には、上側取付部側と下側取付部側の双方に特別な加工を施さずに本取付構造を適用することができ、汎用性を一層高めることができる。また、略弧状の長孔と固定具で傾斜調整機構を構成することにより、LED照明灯具の連続的且つ微妙な角度調整を行うことが可能となると共に、LED照明灯具を所要傾斜角度で安定して固定することができる。
【0009】
本発明のLED照明灯具の取付構造は、前記ヒンジ部を有する取付部材と前記固定具が取り付けられる取付部材とが上下方向に延びる略細長板状の同一の取付部材であり、前記略細長板状の取付部材に前記下側取付部と前記上側取付部とが沿うようにして取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、ヒンジ部を構成する取付部材と傾斜調整機構を構成する取付部材を同一とすることにより、傾斜動作や傾斜後の設置状態の安定性を高めることができると共に、取付具を構成する取付部材の個数を削減して製造コストや施工コストを低減することができる。また、取付部材に取付部を沿わせることにより、LED照明灯具を安定して取り付けることができる。
【0010】
本発明のLED照明灯具の取付構造は、前記取付具が、前記被取付面に沿う横方向に延びる下側レール部材及び上側レール部材と、前記下側レール部材及び前記上側レール部材に沿ってそれぞれ摺動可能な下側摺動部及び上側摺動部とを有し、前記下側摺動部及び前記上側摺動部に対して、直接的若しくは間接的に前記下側取付部及び前記上側取付部がそれぞれ取り付けられることを特徴とする。好ましくは、下側摺動部と上側摺動部に対して固定される略細長板状の取付部材を介して下側取付部及び上側取付部が取り付けられるようにするとよい。
この構成によれば、レール部材に沿って摺動部を摺動させることにより、多様な長さのLED照明灯具に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資する。更に、下側摺動部と上側摺動部に対して固定される略細長板状の取付部材を介して下側取付部及び上側取付部と取り付ける場合には、その取付部材を安定してスムーズに摺動させて所要位置に定置し、LED照明灯具の取付作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明のLED照明灯具の取付構造は、本体ケースの内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、前記本体ケースの正面側に透光板が設置されるLED照明灯具の取付構造であって、前記本体ケースの下側に突出して設けられる下側取付部と上側に突出して設けられる上側取付部とが、被取付面に固定される取付具に取り付けられ、前記取付具が、前記被取付面に沿う横方向に延びる下側レール部材及び上側レール部材と、前記下側レール部材及び前記上側レール部材に沿ってそれぞれ摺動する下側摺動部及び上側摺動部とを有し、前記下側摺動部及び前記上側摺動部に対して、直接的若しくは間接的に前記下側取付部と前記上側取付部とが取り付けられることを特徴とする。好ましくは、下側摺動部と上側摺動部に対して固定される略細長板状の取付部材を介して下側取付部及び上側取付部が取り付けられる構成、更にはこの取付部材に被取付面に沿う横方向を軸方向とする軸部が設けられる構成とするとよい。
この構成によれば、レール部材に沿って摺動部を摺動させることにより、多様な長さのLED照明灯具に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資する。更に、下側摺動部と上側摺動部に対して固定される略細長板状の取付部材を介して下側取付部及び上側取付部と取り付ける場合には、その取付部材を安定してスムーズに摺動させて所要位置に定置し、LED照明灯具の取付作業を容易に行うことができる。更に、軸部を設ける場合には、湾曲するトンネル内壁面2等の被取付面における下側レール部材と上側レール部材の取付位置の突出量の相違に柔軟に対応することが可能となる。
【0012】
本発明のLED照明灯具の取付方法は、本体ケースの内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、前記本体ケースの正面側に透光板が設置されるLED照明灯具の取付方法であって、下側レール部材及び上側レール部材を被取付面に沿って横方向に延びるように配置して被取付面に固定すると共に、前記下側レール部材及び前記上側レール部材に下側摺動部及び上側摺動部をそれぞれ摺動可能に設置する工程と、略細長板状の取付部材を、下部に設けられているヒンジ部の下側部分で前記下側摺動部に固定すると共に、固定具を前記上側摺動部の略弧状の長孔に取り付けて傾斜調整機構を設けるようにして、前記取付部材の上部を前記固定具で前記上側摺動部に固定する工程と、前記本体ケースの下側に突出して設けられる下側取付部と上側に突出して設けられる上側取付部とを、前記略細長板状の取付部材に沿うようにして取り付ける工程と、必要に応じて、前記固定具を緩め、前記固定具を前記長孔に沿って移動することにより前記ヒンジ部を軸に前記本体ケースを傾動して前記本体ケースの傾斜角度を調整し、その調整後に前記固定具を締める工程とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けることができ、軸部を中心とする本体ケースの傾斜調整により、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報を確保することができる。また、レール部材に沿って摺動部を摺動させることにより、多様な長さのLED照明灯具に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資する。また、細長板にボルト挿通孔が形成されている取付部を有する一般的に多いタイプのLED照明灯具に対し、上上側取付部側と下側取付部側の双方に特別な加工を施さずに本取付方法を適用することができ、汎用性を一層高めることができる。また、略弧状の長孔と固定具で傾斜調整機構を構成することにより、LED照明灯具の連続的且つ微妙な角度調整を行うことが可能となると共に、LED照明灯具を所要傾斜角度で安定して固定することが可能となる。また、前記略細長板状の取付部材を用いることにより、LED照明灯具20の傾斜動作や傾斜後の設置状態の安定性を高めることができると共に、取付部材の個数を削減して製造コストや施工コストを低減することができ、更に、取付部材に取付部を沿わせることにより、LED照明灯具を安定して取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、LED照明灯具の設置場所に応じて、LEDが適切な照射方向となるように適宜調整可能にLED照明灯具を取り付けることができ、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報を確保することができる。また、多様な長さのLED照明灯具に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のLED照明灯具の取付構造が設けられている道路トンネルの断面図。
【図2】(a)は実施形態のLED照明灯具の取付構造の一部断面側面図、(b)はそのX−X矢視図。
【図3】実施形態のLED照明灯具の取付構造により別例のLED照明灯具を取り付けた状態のX−X矢視に相当する図。
【図4】実施形態のLED照明灯具の取付構造におけるLED照明灯具の傾斜角度の調整を説明する説明図。
【図5】(a)及び(b)は下側と上側のレール部材の被取付面への固定手順を説明する斜視説明図。
【図6】(a)及び(b)は上側レール部材への角ナット及びブラケットの取付手順を説明する斜視説明図。
【図7】(a)及び(b)は取付板の取付手順を説明する斜視説明図。
【図8】取付板の近傍にLED照明灯具を配置した状態の斜視説明図。
【図9】取付板にLED照明灯具の取付部を沿うように配置した状態の斜視説明図。
【図10】取付板へのLED照明灯具のボルト固定を説明する斜視説明図。
【図11】実施形態のLED照明灯具の取付構造の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態のLED照明灯具の取付構造及び取付方法〕
次に、本発明による実施形態のLED照明灯具の取付構造及び取付方法について説明する。
【0016】
本実施形態のLED照明灯具の取付構造10は、例えば図1の道路トンネル1に適用され、LED照明灯具20が路面3に向かって照明光を照射するようにして、道路トンネル1の湾曲するトンネル内壁面2に固定される取付具30でLED照明灯具20を取り付けるものである。
【0017】
取付構造10で取り付けられるLED照明灯具20は、図2及び図8〜図11に示すように、本体ケース21の内部にLED(図示省略)が正面側に向けて収容配置され、本体ケース21の正面側に透光板22が設置されているものである。本体ケース21の背面側には、下側取付部23が下側に突出して設けられていると共に、上側取付部24が上側に突出して設けられ、下側取付部23と上側取付部24は左右両端にそれぞれ寄った位置に一対で設けられている。
【0018】
本実施形態における下側取付部23と上側取付部24は、上下方向に延びる略細長板状の一連の部材の上部と下部になっており、本体ケース21の背面側にボルト固定等で固定されるが、下側取付部23と上側取付部24をそれぞれ細長板状の別部材とし、本体ケース21の背面側にボルト固定等で固定される構成としてもよい。また、下側取付部23と上側取付部24にはそれぞれボルト挿通孔25が形成されているが、本実施形態の取付構造10では後述の如く上側取付部24のボルト挿通孔25のみが使用される。
【0019】
LED照明灯具20を被取付面であるトンネル内壁面2に取り付ける取付具30は、図5〜図11に示すように、取付具30を構成する取付部材に各々が相当する下側レール部材40、上側レール部材50、下側摺動部60、上側摺動部70、取付板80とから構成される。下側レール部材40と上側レール部材50は、トンネル内壁面2に沿う横方向に延びるように設置され、その下側レール部材40と上側レール部材50に沿ってそれぞれ摺動可能に下側摺動部60と上側摺動部70が取り付けられる。略細長板状の取付板80は、その長手方向を下側レール部材40と上側レール部材50の長手方向と直交するように配置され、下側摺動部60と上側摺動部70に架け渡すようにして下側摺動部60と上側摺動部70に取り付けられる。
【0020】
下側レール部材40、上側レール部材50は、図5に示すように、それぞれ断面視略C字形のレール本体41、51を有し、レール本体41、51の長手方向の両端部には、上下に突出するようにして背面側に基板42、52が設けられている。基板42、52の上下の突出箇所にはそれぞれボルト挿通孔43、53が形成されている。
【0021】
下側レール部材40、及びその上側に間隔を開けて略平行に設けられる上側レール部材50は、トンネル内壁面2の所定位置に打ち込んで固定されるコンクリートアンカー91の雄ねじ部911にナット96を螺合し(図2(a)参照)、ナット96から突出した雄ねじ部911の部分を基板42、52のボルト挿通孔43、53に挿通し、更に、ボルト挿通孔43、53から突出した雄ねじ部911の部分にナット92を螺合することにより、トンネル内壁面2に沿って所定位置に横方向に延びるように固定される(図2、図5参照)。
【0022】
上側摺動部70は、図6に示すように、上側レール部材50のレール本体51内に摺動可能に配置される略長方形の角ナット71と、平面視略L字形で板状のブラケット72とを有する。ブラケット72の基面721にはボルト挿通孔722が形成されていると共に、その突出面723は上側に凸の略弧状の長孔724が形成されている。角ナット71と対応配置される基面721のボルト挿通孔722にはボルト73が挿入され、ボルト73と角ナット71を螺合することにより、ブラケット72が角ナット71に固定される。角ナット71に固定されたブラケット72は、角ナット71と共にレール本体51に沿って摺動可能となる。
【0023】
下側摺動部60は、上側摺動部70の角ナット71と同様の角ナット61で構成され、角ナット61が下側レール部材40のレール本体41内に摺動可能に配置される。尚、略長方形の角ナット61、71は、長辺の長さがレール本体41の開放部411、511の幅よりも長く、長辺を上下方向とした状態では開放部411、511から抜け出さないようになっていると共に、短辺の長さが開放部411、511の幅よりも短くなっており、短辺を上下方向にして開放部411、511からレール本体41、51内に挿入可能になっており、挿入後に回転して長辺を上下方向にして設置すると好適である。
【0024】
略細長板状の取付板80は、図7に示すように、細長板である基板81を有し、基板81の上端部近傍にL字金具82が固定され、L字金具82の屈曲面821にボルト挿通孔822が形成されている。屈曲面821は、ブラケット72に沿うように配置され、屈曲面821のボルト挿通孔822とブラケット72の長孔724にボルト93が挿通され、ボルト93にナット94を螺合することにより、屈曲面821及び取付板80の上端部がブラケット72に対して固定される。
【0025】
基板81の下端部には、ヒンジ部83を介して固定板84が取り付けられ、固定板84にはボルト挿通孔841が形成されている。固定板84は角ナット61に対応配置され、固定板84のボルト挿通孔841にボルト95が挿入され、ボルト95と角ナット61を螺合することにより、固定板84が角ナット61に固定される。角ナット61に固定された固定板84は、角ナット61と共にレール本体41に沿って摺動可能となり、固定板84とブラケット72のレール本体41、51に沿った摺動により、取付板80が下側レール部材40と上側レール部材50に沿って摺動するようになっている。
【0026】
そして、基板81がヒンジ部83により固定板84に対して傾動可能になっていることから、ナット94を緩めてボルト93を長孔724内を移動し、所要位置でボルト93とナット94を締め付けることにより、基板81を所要の傾斜角度に調整して定置できるようになっている(図4参照)。
【0027】
換言すれば、後述する下側取付部23の取付箇所近傍における取付具30の取付部材に相当する取付板80には、被取付面に沿う横方向を軸方向とする軸部に相当するヒンジ部83が設けられていると共に、後述する上側取付部24の取付箇所近傍における取付具30の取付部材に相当するブラケット72と取付板80の相互が、後述する本体ケース21を傾斜角度を調整可能にする、長孔724とボルト93及びナット94による傾斜調整機構で取り付けられている。
【0028】
また、基板81の正面側の下端部には、上側が開放しているポケット部85が設けられ、基板81の周囲には、基板81の長手方向に沿って移動可能な筒体86が設けられている。筒体86には正面側にナット部861が形成されており、ナット部861に締付ボルト862が螺合されている。筒体86は基板81の適宜の位置に移動可能であり、適宜の位置で締付ボルト862を締め付けて先端を基板81に押し付けることにより定置可能になっている。
【0029】
LED照明灯具20の取付具30への取り付けでは、図8〜図11に示すように、下側取付部23及び上側取付部24はそれぞれ下側摺動部60及び上側摺動部70に対応して取り付けられている。即ち、下側取付部23と上側取付部24と対応する位置に摺動して配置される取付板80に対し、下側取付部23をポケット部85に差し込んで、下側取付部23と上側取付部24を取付板80に沿うように配置されている。また、筒体86は、基板81と上側取付部24の重なり部分の周囲に配置され、締付ボルト862を上側取付部24のボルト挿通孔25に挿入し、その先端を基板81に押し付けるようにして締め付けられている。
【0030】
取付具30に取り付けられたLED照明灯具20は、ボルト93の長孔724内の移動及びボルト93とナット94の締め付けにより、基板81及び本体ケース21を所要の傾斜角度に調整して定置できるため、その照射方向を所定位置に調整することが可能である。
【0031】
また、図3に示すように、取付具30の下側摺動部60と上側摺動部70を下側レール部材40と上側レール部材50に沿って摺動し、取付板80を所要位置に調整して配置することにより、長さ或いは下側取付部23と上側取付部24の突出位置が異なるLED照明灯具20aを取り付けることも可能である。尚、下側摺動部60と上側摺動部70は、下側取付部23と上側取付部24の数と対応させて一対等の複数設けることを基本とするが、下側取付部23と上側取付部24の一組が下側レール部材40と上側レール部材50に対して固定部材で固定され、下側取付部23と上側取付部24の他の一組が下側摺動部60と上側摺動部70で下側レール部材40と上側レール部材50に沿って摺動可能に取り付けられるようにし、下側摺動部60と上側摺動部70を単数とする構成とすることも可能である。
【0032】
次に、LED照明灯具20の取付構造を形成する手順(取付方法)について説明する。
【0033】
先ず、被取付面であるトンネル内壁面2の所定位置にコンクリートアンカー91を打ち込み(図1、図2(a)参照)、このコンクリートアンカー91に取り付けることにより、上側レール部材50及び下側レール部材40を被取付面であるトンネル内壁面2に沿って横方向に延びるように配置して所定位置に固定する。上側レール部材50の固定では、打ち込んだコンクリートアンカー91の雄ねじ部911にナット96を所要位置まで螺合し(図2(a)参照)、図5に示すように、ナット96から突出した雄ねじ部911の部分が基板52のボルト挿通孔53に挿通されるようにして上側レール部材50を配置し、ボルト挿通孔53から突出した雄ねじ部911の部分にナット92を螺合して固定する。
【0034】
同様に、下側レール部材40の固定では、打ち込んだ別のコンクリートアンカー91におけるナット96から突出した雄ねじ部911の部分が基板42のボルト挿通孔43に挿通されるようにして、上側レール部材50と所定間隔を開けて下側に下側レール部材40を配置し、ボルト挿通孔43から突出した雄ねじ部911の部分にナット92を螺合して固定する。
【0035】
次いで、図6に示すように、上側レール部材50及び下側レール部材40に上側摺動部70及び下側摺動部60をそれぞれ摺動可能に設置する。上側摺動部70の取り付けでは、例えば略長方形の角ナット71を短辺が上下方向になるようにして開放部511からレール本体51内に挿入し、挿入後に回転して長辺が上下方向になるようにして配置する。そして、ブラケット72の基面721を角ナット71に対応させて配置し、ボルト挿通孔722にボルト73を挿入して角ナット71に螺合し、突出面723の長孔724の貫通方向がトンネル内壁面2に沿う横方向になるようにして、角ナット71にブラケット72を固定する。固定された上側摺動部70を構成する角ナット71及びブラケット72は、上側レール部材50のレール本体51に沿って摺動可能となる。
【0036】
下側摺動部60の取り付けでは、例えば略長方形の角ナット61を短辺が上下方向になるようにして開放部411からレール本体41内に挿入し、挿入後に回転して長辺が上下方向になるようにして配置する。レール本体41内に配置された下側摺動部60を構成する角ナット61は、下側レール部材40のレール本体41に沿って摺動可能となる。
【0037】
次いで、図7に示すように、略細長板状の取付部材である取付板80の上部を、固定具であるボルト93及びナット94で上側摺動部70に固定すると共に、取付板80の下部に設けられているヒンジ部83の下側部分である固定板84を下側摺動部60に固定する。
【0038】
取付板80の上部の固定では、基板81の上端部近傍に配置固定されているL字金具82の屈曲面821をブラケット72の突出面723に沿うように配置し、突出面723の長孔724と屈曲面821のボルト挿通孔822にボルト93を挿通し、ナット94を螺合することにより固定する。このボルト93はナット94を緩めることで略弧状の長孔724内を移動可能であり、ボルト93及びナット94と、長孔724は取付板80の傾斜調整機構を構成する。尚、略弧状の長孔724の下縁或いは上縁には、LED照明灯具20の傾斜状態の目安を示す傾斜角度の目盛りを示すと良好である。また、固定板84の固定では、固定板84を角ナット61に対応させて配置し、ボルト挿通孔841にボルト95を挿入して角ナット61に螺合して固定する。
【0039】
その後、図8〜図11に示すように、LED照明灯具20の本体ケース21の下側取付部23をそれぞれ取付板80のポケット部85に差し込み、上側取付部24と下側取付部23を取付板80の基板81に沿うように配置し、筒体86を下降して基板81と上側取付部24の重なり部分の周囲に配置し、締付ボルト862を上側取付部24のボルト挿通孔25に挿入し、その先端を基板81に押し付けるようにして締め付ける。この締付ボルト862の締め付けにより、上側取付部24と下側取付部23は、取付板80の基板81に沿うようにして固定される。
【0040】
そして、取り付けたLED照明灯具20の傾斜角度を調整する必要がある場合には、ナット94を緩めてボルト93を略弧状の長孔724に沿って移動させて、基板81をヒンジ部83を軸にして傾動させ、本体ケース21を所要の傾斜角度に調整して配置し、その調整後にナット94を締め付けてLED照明灯具20を所要傾斜角度の状態で固定する。
【0041】
本実施形態のLED照明灯具の取付構造10或いは取付方法によれば、傾斜調整機構とヒンジ部83により、LEDが適切な照射方向となるように傾斜調整可能にLED照明灯具20を取り付けることができ、LED照明灯具20による最適な照明と良好な視覚情報を確保することができる。
【0042】
また、取付具30にヒンジ部83を設け、取付具30に略弧状の長孔724とこれに取り付けられるボルト93及びナット94を設けることにより、細長板にボルト挿通孔25が形成されている取付部23、24を有する一般的に多いタイプのLED照明灯具20に対し、下側取付部23側と上側取付部24側の双方に特別な加工を施さずに本取付構造10を適用することができ、汎用性を高めることができる。また、略弧状の長孔724とボルト93及びナット94で傾斜調整機構を構成することにより、LED照明灯具20の連続的且つ微妙な角度調整を行うことが可能となると共に、LED照明灯具20を所要傾斜角度で安定して固定することができる。
【0043】
また、略細長板状の取付板80にヒンジ部83を設け、傾斜調整機構のボルト93及びナット94を取り付けることにより、LED照明灯具20の傾斜動作や傾斜後の設置状態の安定性を高めることができると共に、取付具30を構成する取付部材の個数を削減して製造コストや施工コストを低減することができる。更に、この取付板80に取付部23、24を沿わせることにより、LED照明灯具20を安定して取り付けることができる。
【0044】
また、レール部材40、50に沿って摺動部60、70を摺動させることにより、多様な長さのLED照明灯具20に対応した取り付けを行うことができると共に、LED照明灯具20の横方向の設置位置を適宜調整して、LED照明灯具20による最適な照明と良好な視覚情報の確保に資する。更に、略細長板状の取付板80を介して下側取付部23及び上側取付部24と取り付けることにより、取付板80を安定してスムーズに摺動させて所要位置に定置し、LED照明灯具20の取付作業を容易に行うことができる。
【0045】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0046】
例えば上記実施形態では、ヒンジ部83を有する取付部材と固定具であるボルト93及びナット94が設けられる取付部材を、上下方向に延びる略細長板状の同一の取付板80としたが、ヒンジ部83を有する取付部材と、固定具が取り付けられる取付部材を基板81を中間で切断した形状等の別部材とし、ヒンジ部83を有する取付部材に下側取付部23が取り付けられ、別部材の固定具が取り付けられる取付部材に上側取付部24が取り付けられる構成等とすることも可能である。
【0047】
また、取付具30の取付板80にヒンジ部83と固定板84が設けられる構成に代え、下側取付部23の下部にヒンジ部が設けられ、そのヒンジ部の下側部分が角ナット61にボルト95で固定されるなど、ヒンジ部等の軸部が下側取付部23に設けられ、その下側取付部23が取付具30に取り付けられる構成とすることも可能である。また、取付具30の取付部材相互である取付板80とブラケット72とが、ボルト93及びナット94と長孔724による傾斜調整機構で取り付けられる構成に代え、上側取付部24の上部にL字金具82に相当する部位が設けられ、その上側取付部24の部位とブラケット72等の取付具30とが、ボルト93及びナット94と長孔724等による傾斜調整機構で取り付けられる構成とすることも可能である。
【0048】
また、本発明における傾斜調整機構は、ブラケット72の長孔724と、取付板80に取り付けられるボルト93及びナット94による構成に限定されず、例えばブラケット72側にボルト93を挿通するボルト挿通孔が設けられ、取付板80の上部にL字金具82の屈曲面821に略弧状の長孔が形成され、この長孔にブラケット72のボルト挿通孔に挿通されたボルト93が挿通されてナット94が螺合される構成、或いはブラケット72の突出面723の上縁に相当する部位に凹部が段階的に複数形成され、L字金具82のボルト挿通孔822を縦長の長孔とし、この長孔に挿通されるボルト93が嵌め込まれる前記凹部を選択してボルト93とナット94が螺合される、断続的に傾斜角度を調整するギア方式の構成等とすることも可能である。
【0049】
また、本発明のLED照明灯具の取付構造は、傾斜調整機構や軸部を設けずに、取付具の下側レール部材60及び上側レール部材50に沿ってそれぞれ摺動する下側摺動部及び上側摺動部に対して、LED照明灯具の下側取付部と上側取付部とが直接的又は間接的に取り付けられる構成とすることも可能である。例えば下側摺動部と上側摺動部とをそれぞれ一対等の複数の角ナット61、71で構成し、この角ナット61、71に下側取付部23と上側取付部24とがボルト締めで固定される構成、或いは例えば下側摺動部と上側摺動部とをそれぞれ一対等の複数の角ナット61、71で構成し、この角ナット61、71に取付板80の基板81に相当する部材の下端部と上端部がボルト締めで固定され、この固定された部材に下側取付部23と上側取付部24とがポケット部85と筒体86に相当する部材等で固定される構成等とすると、多様な長さや多様な下側取付部23と上側取付部24の突出位置を有するLED照明灯具20に適応可能となると共に、各下側摺動部と各上側摺動部を摺動可能にすることで、LED照明灯具20の横方向の設置位置を適宜調整して最適な位置にLED照明灯具20を設置することが可能となる。
【0050】
更に、本発明のLED照明灯具の取付構造は、傾斜調整機構を設けずに、下側取付部、上側取付部又は取付板80に相当する部材に軸部を設け、取付具の下側レール部材60及び上側レール部材50に沿ってそれぞれ摺動する下側摺動部及び上側摺動部に対して、LED照明灯具の下側取付部と上側取付部とが取り付けられる構成とすることも可能である。例えば下側摺動部と上側摺動部とをそれぞれ一対等の複数の角ナット61、71で構成し、この角ナット71に取付板80の基板81に相当する部材の上端部がボルト締めで固定されると共に、取付板80のヒンジ部83と固定板84に相当する部材が設けられ、固定板84に相当する部材が角ナット61にボルト締めで固定され、この取付板80に相当する部材に下側取付部23と上側取付部24とがポケット部85と筒体86に相当する部材等で固定される構成、或いはヒンジ部を有する下側取付部若しくは上側取付部が角ナット61若しくは角ナット71に固定される構成等とすると、湾曲するトンネル内壁面2等の被取付面における下側レール部材40と上側レール部材50の取付位置の突出量の相違に柔軟に対応することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば道路トンネルの内壁面にLED照明灯具を取り付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…道路トンネル 2…トンネル内壁面 3…路面 10…LED照明灯具の取付構造 20、20a…LED照明灯具 21…本体ケース 22…透光板 23…下側取付部 24…上側取付部 25、43、53、722、822、841…ボルト挿通孔 30…取付具 40…下側レール部材 50…上側レール部材 41、51…レール本体 411、511…開放部 42、52…基板 60…下側摺動部 70…上側摺動部 61、71…角ナット 72…ブラケット 721…基面 723…突出面 724…長孔 73、93、95…ボルト 80…取付板 81…基板 82…L字金具 821…屈曲面 83…ヒンジ部 84…固定板 85…ポケット部 86…筒体 861…ナット部 862…締付ボルト 91…コンクリートアンカー 911…雄ねじ部 92、94、96…ナット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、前記本体ケースの正面側に透光板が設置されるLED照明灯具の取付構造であって、
前記本体ケースの下側に突出して設けられる下側取付部と上側に突出して設けられる上側取付部とが、被取付面に固定される取付具に取り付けられ、
前記下側取付部に、若しくは前記下側取付部の取付箇所近傍における前記取付具に、前記被取付面に沿う横方向を軸方向とする軸部が設けられ、
前記上側取付部と前記取付具の相互が、若しくは前記上側取付部の取付箇所近傍における前記取付具の取付部材の相互が、前記本体ケースの傾斜角度を調整可能にする傾斜調整機構で取り付けられる、
ことを特徴とするLED照明灯具の取付構造。
【請求項2】
前記軸部が、前記取付具の取付部材に設けられているヒンジ部であることを特徴とする請求項1記載のLED照明灯具の取付構造。
【請求項3】
前記傾斜調整機構が、前記取付具の一方の取付部材に形成されている略弧状の長孔と、前記取付具の他方の取付部材に設けられ前記長孔に取り付けられる固定具とから構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のLED照明灯具の取付構造。
【請求項4】
前記ヒンジ部を有する取付部材と前記固定具が取り付けられる取付部材とが上下方向に延びる略細長板状の同一の取付部材であり、
前記略細長板状の取付部材に前記下側取付部と前記上側取付部とが沿うようにして取り付けられることを特徴とする請求項3記載のLED照明灯具の取付構造。
【請求項5】
前記取付具が、前記被取付面に沿う横方向に延びる下側レール部材及び上側レール部材と、前記下側レール部材及び前記上側レール部材に沿ってそれぞれ摺動可能な下側摺動部及び上側摺動部とを有し、
前記下側摺動部及び前記上側摺動部に対して、直接的若しくは間接的に前記下側取付部及び前記上側取付部がそれぞれ取り付けられることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のLED照明灯具の取付構造。
【請求項6】
本体ケースの内部にLEDが正面側に向けて収容配置され、前記本体ケースの正面側に透光板が設置されるLED照明灯具の取付方法であって、
下側レール部材及び上側レール部材を被取付面に沿って横方向に延びるように配置して被取付面に固定すると共に、前記下側レール部材及び前記上側レール部材に下側摺動部及び上側摺動部をそれぞれ摺動可能に設置する工程と、
略細長板状の取付部材を、下部に設けられているヒンジ部の下側部分で前記下側摺動部に固定すると共に、固定具を前記上側摺動部の略弧状の長孔に取り付けて傾斜調整機構を設けるようにして、前記取付部材の上部を前記固定具で前記上側摺動部に固定する工程と、
前記本体ケースの下側に突出して設けられる下側取付部と上側に突出して設けられる上側取付部とを、前記略細長板状の取付部材に沿うようにして取り付ける工程と、
必要に応じて、前記固定具を緩め、前記固定具を前記長孔に沿って移動することにより前記ヒンジ部を軸に前記本体ケースを傾動して前記本体ケースの傾斜角度を調整し、その調整後に前記固定具を締める工程と、
を備えることを特徴とするLED照明灯具の取付方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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