説明

LED照明用防湿性保護フィルム及びそれを用いたLED照明

【課題】LED光源を水分から保護するための防湿性に優れ、かつ金属等の他材との密着性に優れたLED照明用防湿性保護フィルム、及びそれを用いたLED照明を提供する。
【解決手段】(A)エチレン単位と(メタ)アクリル酸(アルキルエステル)単位からなる共重合体を含む樹脂組成物から形成される層、並びに(B)環状オレフィン系樹脂を含む層を有するLED照明用防湿性保護フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明のための防湿性に優れた保護フィルム、及び該防湿性保護フィルムを用いたLED照明に関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明は小型、小電力、長寿命が可能であり、また、チラツキや発熱も少ないことから、近年蛍光灯や白熱電球に代わる照明器具として注目されている。LED照明から発せられる光は、LED照明の直下では蛍光灯よりも照度が大きいが、光の拡散が蛍光灯よりもはるかに乏しく、照度ムラが発生するという問題があった。また、前記問題点に加えて、LED照明を構成するLED光源は、LED光源のショートの発生を抑制するために、水滴等の水分の付着の抑制が要求される。
【0003】
ところで、LED光源のショートの発生を抑制するために前記シートやフィルムには、防湿性や耐候性を有するものが必要となるが、LED照明を構成するLED光源は、ステンレスのような金属基体に設置されており、そのような金属基体を含むLED光源デバイスと前記フィルム(シート)との密着性が良好でなければ、経時とともに、LED照明とシートやフィルムとの間に隙間が生じ、水滴等の水分の付着の原因となり、LED照明の劣化の原因につながる。
【0004】
そのため、LED照明用として用いられる防湿性保護フィルム(シート)には、防湿性を有するだけでなく、金属等の他材との密着性も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−31774号公報
【特許文献2】特開平10−111402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、LED光源を水分から保護するための防湿性に優れ、かつ金属等の他材との密着性に優れたLED照明用防湿性保護フィルム、及びそれを用いたLED照明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定の含有割合の(A)エチレン単位と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの繰り返し単位からなる共重合体を含む樹脂組成物から形成される層、並びに
(B)環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物から形成される層を有するフィルムを設けたLED照明が防湿性に優れることを見出し、さらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0009】
項1.(A)エチレン単位と式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である)
で表される繰り返し単位からなる共重合体を含む樹脂組成物から形成される層、並びに
(B)環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成される層
を有するLED照明用防湿性保護フィルム。
【0012】
項2.A層/B層又はA層/B層/A層の順で積層されてなる項1に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【0013】
項3.環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成される層(B)が、
異方性光拡散機能を持ち、環状オレフィン系樹脂70〜90重量%及び
ポリエチレン樹脂10〜30重量%を含む樹脂組成物から形成される層
である項1又は2に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【0014】
項4.A層の合計の厚さが5〜300μmである項1〜3に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【0015】
項5.B層の厚さが5〜1000μmである項1〜4のいずれかに記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【0016】
項6.項1〜5のいずれかに記載のLED照明用防湿性保護フィルムを有するLED照明。
【0017】
項7.金属基体にLED光源が設けられたLED光源デバイス上に、LED照明用防湿性保護フィルムを被覆してなる項6に記載のLED照明。
【0018】
項8.LED光源デバイスとA層が接するようにLED照明用防湿性保護フィルムが設けられている請求項6又は7に記載のLED照明。
【0019】
以下、本発明のLED照明用防湿性保護フィルムを構成するA層及びB層について、詳細に説明する。
【0020】
A層
A層は、エチレン単位と前記式(1)で表される繰り返し単位からなる共重合体を含む樹脂組成物から形成される層である。
【0021】
前記共重合体における式(1)で表される繰り返し単位からなる共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を表す。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸プロピル共重合体エチレン−アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられ、これらの中で、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0022】
また、前記樹脂成分を含む樹脂組成物において、例えば、接着性に影響を及ぼさない範囲でのオレフィン系樹脂等の前記樹脂成分以外の樹脂成分、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、光拡散剤等の任意成分を20重量%以下で含有していてもよい。
【0023】
B層
B層は、環状オレフィン系樹脂を含んでいる。
【0024】
環状オレフィン系樹脂とは、具体的には例えば、(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィン(例えば、ノルボルネン及びその誘導体、又はテトラシクロドデセン及びその誘導体等)とのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体又はα−オレフィンとの共重合体、(c)前記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による前記(a)〜(c)のグラフト変性物等である。該環状オレフィン系樹脂の比重は、好ましくは1.00〜1.06であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される数平均分子量は好ましくは1000〜100万のものである。
【0025】
また、該環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50〜130℃、より好ましくは65〜100℃である。50℃未満では、フィルム表面の耐熱性が低下し、熱がかかると表面が粘着するようになる。一方、130℃を越えると成形が難しくなる。
【0026】
B層は防湿性を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を含有させることができる。含有できる熱可塑性樹脂としては、防湿性保護フィルムの透明性を損なわないという点において、オレフィン系樹脂を用いるのが好ましく、ポリエチレン系樹脂がさらに好ましい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂としては、分枝鎖状、直鎖状のもの、及び高密度、低密度のものが挙げられる。中でも分岐鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0028】
ポリエチレン系樹脂の比重としては、0.89〜0.95程度が好ましく、0.89〜0.93程度がより好ましい。ポリエチレン樹脂の比重が0.95を超えると、透明性が低下する傾向にある。
【0029】
環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂の含有割合は、環状オレフィン系樹脂/ポリエチレン系樹脂=70〜90重量%/10〜30重量%であるのが好ましい。環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂の含有割合がこの範囲にあると、B層は異方性の光拡散性能を発現することができる。
【0030】
また、B層は帯電防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の任意成分を10重量%以下で含有していてもよい。
【0031】
本発明のLED照明用防湿性保護フィルムにおいて、前記A層及びB層が積層されることによって構成される。
積層構造の具体例としては、A層/B層の順に積層された2層構造、又はA層/B層/A層の順に積層された3層構造が挙げられる。
【0032】
A層の合計の厚さは、多層フィルムの成形性、及び層の均一性という観点から、5μm程度以上が好ましく、10μm程度以上がより好ましく、20μm程度以上が特に好ましい。また、フィルム成形時の巻取り性、金属等との接着時におけるラミネート加工適正等の点から、A層の合計の厚さは、500μm程度以下が好ましく、100μm程度以下がより好ましく、50μm程度以下がさらに好ましい。
【0033】
B層の合計の厚さは、フィルム自体の強度を充分に付与できる、防湿性を十分に発現できるという観点から、5μm程度以上が好ましく、10μm程度以上がより好ましく、20μm程度以上が特に好ましい。また、光透過性に優れるという点から、B層の合計の厚さは、500μm程度以下が好ましく、100μm程度以下がより好ましく、50μm程度以下がさらに好ましい。
【0034】
A層とB層との厚さの比率としては、A層:B層の比率で、10:5〜10:100が好ましく、10:5〜10:40がより好ましく、10:10〜10:20がさらに好ましい。
【0035】
なお、A層/B層/A層の順に積層されてなる3層構造を有する場合には、各層構成の2つのA層の厚さは、同じでも、異なっていてもよいが、フィルムの反りを防止できる点から、同じ厚さとすることが好ましい。
【0036】
本発明のLED照明用防湿性保護フィルムの総厚さは、フィルム自体の強度を充分に付与できる点から、20μm程度以上が好ましく、30μm程度以上がより好ましく、50μm程度以上がさらに好ましい。また、総厚さは、フィルム成形時の巻き取り性に優れるという点から、1000μm程度以下が好ましく、500μm程度以下がより好ましく、300μm程度以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明のLED照明用防湿性保護フィルムは、例えばA層、又はA層及びB層の各層の樹脂組成物をA層/B層、又はA層/B層/A層等の所望の順序になるように、押出機に供給し、バレル温度180〜250℃程度でTダイスより押出し、冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめフラット状の多層フィルムとして得ることができる。
【0038】
また、光拡散性能を発現させた態様においては、得られたフィルムは、フィルムのダイス樹脂流れ方向(MD方向)及びダイス樹脂流れに対して垂直方向(TD方向)の全光線透過率が異なるため、光を拡散する異方性を有するフィルムとなり、特にLED照明の光源からの光をTD方向に拡散することができ、照明ムラを低減させることが可能となる。
【0039】
また本発明は、前記LED照明用防湿性保護フィルムを有するLED照明にも関する。
【0040】
なお、LED照明用防湿性保護フィルムがA層及びB層の二層構造から構成される場合には、金属基体との密着性が良好であるという観点から、LED光源デバイスとA層が接するように設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明のLED照明用防湿性保護フィルムは、防湿性に優れる。そのため、水によるLED光源のショートの発生を抑制することができる。そのため、LED照明として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施例]
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
下記の実施例及び比較例で使用した原料樹脂を下記に示す。
【0044】
・エチレン−メタクリル酸共重合体:三井・デュポンケミカル(株)製のニュクレル4120C
・環状オレフィン系樹脂:(ポリプラスチックス(株)製の環状オレフィン系樹脂(TOPAS(8007F)))
・PE樹脂:(プライムポリマー(株)製のポリエチレン樹脂(エボリュー SP0540))
【0045】
実施例1〜3及び比較例1〜2
表1に示す成分及び組成で配合して、各層を構成する樹脂組成物を、180〜250℃に調整されたそれぞれの押出機に投入しA/Bの順序になるように、250℃のTダイスにより押し出し、積層され、80℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の2層フィルムを得た。
【0046】
実施例4〜6及び比較例3
表2に示す成分及び組成で配合して、各層を構成する樹脂組成物を、180〜250℃に調整されたそれぞれの押出機に投入しA/B/Aの順序になるように、250℃のTダイスにより押し出し、積層され、80℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。
【0047】
物性評価
前記実施例1〜6及び比較例1〜3に記載の単層、2層及び3層フィルムについて、下記の特性をそれぞれ評価した。その結果を表1及び2に示す。
【0048】
[MD方向及びTD方向の全光線透過量]
ヘイズメーターにより、得られたフィルムのダイス樹脂流れ方向(MD方向)及びダイス樹脂流れに対して垂直方向(TD方向)(MD方向のフィルムに対してフィルムを90度回転して測定)の光線透過率を測定し、さらにその差を算出した。
【0049】
[バリア値]
MODERN CONTROL社製PERMATRAN W−200形を使用し、40℃、90%RHで測定した。
【0050】
[ラミネート特性]
得られたフィルムを幅50mm、長さ150mmにカットし、サンプルとした。厚さ1mm、幅50mm、長さ100mmのステンレス板(SUS−304) 1を100℃に調整したオーブンに投入し、10分間加熱した。次にステンレス板をオーブン中より取り出し、サンプルフィルムをステンレス板に重ねあわせた後、圧着ローラーにて圧力:3.0MPa、速度:5.0m/minの条件で圧着し、剥離試験機(新東科学社製のPeeling TESTER HEIDON−17)にて剥離強度を測定した。このとき、フィルムのA面側とステンレス板面とが接するように貼り合わせた。10N/50mm以上の強度を示すものを○、それ未満のものを×とした。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン単位と式(1):
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である)
で表される繰り返し単位からなる共重合体を含む樹脂組成物から形成される層、並びに
(B)環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成される層
を有するLED照明用防湿性保護フィルム。
【請求項2】
A層/B層又はA層/B層/A層の順で積層されてなる請求項1に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成される層(B)が、
異方性光拡散機能を持ち、環状オレフィン系樹脂70〜90重量%及び
ポリエチレン樹脂10〜30重量%を含む樹脂組成物から形成される層
である請求項1又は2に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【請求項4】
A層の合計の厚さが5〜300μmである請求項1〜3に記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【請求項5】
B層の厚さが5〜1000μmである請求項1〜4のいずれかに記載のLED照明用防湿性保護フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のLED照明用防湿性保護フィルムを有するLED照明。
【請求項7】
金属基体にLED光源が設けられたLED光源デバイス上に、LED照明用防湿性保護フィルムを被覆してなる請求項6に記載のLED照明。
【請求項8】
LED光源デバイスとA層が接するようにLED照明用防湿性保護フィルムが設けられている請求項6又は7に記載のLED照明。

【公開番号】特開2012−138170(P2012−138170A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287664(P2010−287664)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】