説明

LED装置の製造方法

【課題】 発光色の色ムラを容易、安価に抑制することができるLED装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板1上に実装されたLED素子4に、蛍光体を含まない液状樹脂からなるベース樹脂10をポッティングして被覆するベース樹脂被覆工程と、ベース樹脂10の表面に、蛍光体を分散させた液状樹脂からなる蛍光樹脂20をポッティングして被覆する蛍光樹脂被覆工程とを備えるLED装置の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLED装置として、封止樹脂中に蛍光体を含有させて、発光素子の発光色と蛍光体の蛍光体との混色により白色光を発光する構成が知られている。例えば、特許文献1に開示されたLED装置は、基板上に実装されたLEDチップに対し、蛍光体を含有させたシリコーン系樹脂を用いてポッティング法により封止した後、このシリコーン系樹脂の表面全体を、蛍光体を含まないエポキシ系樹脂を用いてトランスファーモールド法により封止して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のLED装置の製造方法によれば、LEDチップを覆うようにポッティングされたシリコーン系樹脂が、硬化の進行に伴い粘度が低下するので、ポッティング直後は図5(a)に示すように半球状であったシリコーン系樹脂50の頂部50aが周縁部50bに向けて流出し、図5(b)に示すようにシリコーン系樹脂50が扁平形状となる。このため、シリコーン系樹脂50内に蛍光体が均一に分散されていたとしても、基板51に実装されたLEDチップ52から周縁部50bまでの距離L1が頂部50aまでの距離L2よりも長くなる結果、LEDチップ52の励起光に対する蛍光強度が照射方向によって変化し、色ムラが生じ易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、発光色の色ムラを容易、安価に抑制することができるLED装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、基板上に実装されたLED素子に、蛍光体を含まない液状樹脂からなるベース樹脂をポッティングして被覆するベース樹脂被覆工程と、前記ベース樹脂の表面に、蛍光体を分散させた液状樹脂からなる蛍光樹脂をポッティングして被覆する蛍光樹脂被覆工程とを備えるLED装置の製造方法により達成される。
【0007】
このLED装置の製造方法において、前記蛍光樹脂は、前記ベース樹脂と樹脂材料が同一であることが好ましい。
【0008】
また、前記ベース樹脂は、前記基板の平坦面上に、該平坦面と接触する部分以外が露出するようにレンズ状に形成されることが好ましい。
【0009】
また、前記蛍光樹脂の表面に、蛍光体を含まない液状樹脂からなるカバー樹脂をポッティングして被覆するカバー樹脂被覆工程を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のLED装置の製造方法によれば、発光色の色ムラを容易、安価に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るLED装置の製造方法を説明するための概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るLED装置の製造方法を説明するための概略構成図である。
【図3】実施例に係る指向特性図である。
【図4】比較例に係る指向特性図である。
【図5】従来のLED装置の製造方法を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るLED装置の製造方法を説明するための概略構成図である。
【0013】
まず、図1(a)に示すように、表面がアルミニウム等の金属薄板1aにより覆われた基板1に対して、ワイヤボンディング2により実装された複数(図1では、1つのみを図示している)のLED素子4に個別にポッティングする。LED素子4は、InGaN、SiC、AlGaInP、GaP、GaAlAs、InGaAs、GaAs等の化合物半導体素材を用いたものを使用することができ、TABやフリップチップなどの実装方法により実装可能である。また、ポッティングは、ディスペンサ等によりベース樹脂10を滴下する方法や、孔版等を用いてベース樹脂10を印刷する方法を例示することができる。
【0014】
ベース樹脂10は、透光性を有する常温で液状の樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの公知の封止用樹脂を挙げることができる。ベース樹脂10には、蛍光体が含まれていない。ポッティングされたベース樹脂10は、ポッティング直後は表面張力により半球状に形成されるが、硬化中は、加熱により雰囲気温度が上昇することで粘度が低下して裾が拡がり、硬化終了時には図1(b)に示すように扁平形状となる。
【0015】
次に、図1(c)に示すように、ベース樹脂10の表面に、蛍光樹脂20をポッティングする。蛍光樹脂20は、ベース樹脂10と同様に透光性を有する常温で液状の樹脂であり、ベース樹脂10と同じ材料を例示することができる。蛍光樹脂20には、LED素子4からの光の一部を吸収し、波長を変換して発光する蛍光体が略均一に分散されている。
【0016】
LED素子4と蛍光樹脂20の蛍光体との組み合わせは特に限定されるものではないが、本実施形態においては、青色光を発光するLEDと、シリケート系錯体<(Ba,Sr,Ca)2SiO4系錯体>であるBOS蛍光体との組み合わせにより、発光色を白色としている。蛍光体としては、上述したBOS蛍光体やYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系の他、黄色を帯びる(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、α-サイアロン系錯体、Li2SrSiO4系錯体、或いは、燈色を帯びる(Ba,Sr)3SiO5系錯体、赤色を帯びる(Ca,Sr) 2Si5N8系錯体や(Ca,Sr)AlSiN3系錯体、青緑-黄色を帯びる(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2系錯体、緑色を帯びるCa3Sc2Si3O12:Ce、CaSc2O4:Ce等を挙げることができる。上記列挙した蛍光体以外にも、基本低波長光源から長波長へ励起させる蛍光体であれば、それが無機物蛍光体でなくても、有機物蛍光体でも該当する。また、これら励起可能な蛍光体は、LED素子4の発光色つまり発光波長に基づき演色性を高める・光量を高めるなどのそれぞれの目的に応じて適宜選択可能である。
【0017】
ポッティングされた蛍光樹脂20は、ベース樹脂10と同様に硬化が進むと共に粘度が低下するが、ベース樹脂10の表面との成分が近いほど表面張力効果が働き、ベース樹脂10と蛍光樹脂20との接合力が増して、流動がより抑制されるため、蛍光樹脂20の硬化後の厚み(ベース樹脂10の表面に対して接線方向の長さ)は、蛍光樹脂20の全体にわたって略均一に維持される。したがって、LED素子4から発せられた青色励起光により蛍光樹脂20の蛍光体が発する黄色の蛍光強度は、励起光の照射方向によらず略一定となるので、励起光と蛍光との混色によって得られる白色光の色ムラを抑制して、均一な色目を実現することができる。
【0018】
ベース樹脂10及び蛍光樹脂20の樹脂材料は、蛍光樹脂20の流動を確実に抑制すると共に、硬化後の層間剥離を防止する観点から同一材料であることが好ましい。但し、ベース樹脂10及び蛍光樹脂20の硬化物性が類似する等して、互いに接合可能な関係にあれば、異なる材料を使用することも可能である。
【0019】
このように、本実施形態のLED装置の製造方法によれば、蛍光体を含まないベース樹脂10をLED素子4にポッティングした後に、蛍光体を分散させた蛍光樹脂20をベース樹脂10の表面にポッティングすることにより、金型を必要とすることなく蛍光樹脂20の厚みの均一化を図ることができ、発光色の色ムラを容易且つ安価に抑制することができる。
【0020】
ベース樹脂10は、基板上に形成された窪みや枠体等の収容部にポッティングして充填形成することも可能であるが、本実施形態のように、基板1の平坦面上に実装されたLED素子4にポッティングすることにより、当該平坦面と接する部分以外が外部に露出して、表面張力によってレンズ状となるように形成することが好ましい。これによって、色ムラの少ない広指向角のLED装置を容易に得ることができる。
【0021】
また、ベース樹脂10を被覆する蛍光樹脂20に、ベース樹脂10と同様に蛍光体を含まない液状樹脂からなるカバー樹脂をポッティングして、図2に示すように、蛍光樹脂20の表面をカバー樹脂30で被覆するようにしてもよい。この構成によれば、カバー樹脂30によってレンズ効果が生じ、高価な蛍光体の使用量を抑制しつつ、高輝度化を図ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例として、上記実施形態に係る製造方法により得られた図1(c)に示すLED装置を使用し、単一のLED素子4について、図1(c)の断面に沿った指向特性を測定した。ベース樹脂10及び蛍光樹脂20は、孔版印刷により形成し、樹脂材料はいずれもシリコーン樹脂を使用した。また、蛍光体はBOS蛍光体を使用した。ベース樹脂10及び蛍光樹脂20の底面外径は、硬化後にそれぞれ3.5mm、5mmとなるように設定した。
【0024】
蛍光体の含有量をパラメータとして、基板1の法線方向である光軸(0°)から左右15°毎の光度を、分光光度計(大塚電子工業株式会社製 瞬間マルチ測光システム MCPD-3700と配光測定システム LE-2300の併用)により測定した。この結果を図3に示す。
【0025】
図3(a)〜(e)は、蛍光樹脂20における蛍光体の含有量(重量%)を、それぞれ5%、10%、15%、20%及び25%とした場合における、LED素子の発光波長である青色光(455nm:実線)、及び、蛍光体のピーク波長である黄色光(560nm:破線)の指向特性図である。図3(a)〜(e)から明らかなように、広い視野角の全域において青色光及び黄色光の指向特性が略一致しており、均一な混色により色ムラが効果的に防止されている。
【0026】
一方、比較例として、図5(b)に示すように、ベース樹脂10を使用せず、蛍光体を分散させたシリコーン系樹脂50のみによってLED素子を被覆した場合について、上記実施例と同様に指向特性を測定した。この結果を図4に示す。
【0027】
図4(a)〜(e)は、上記実施例と同様に蛍光樹脂の蛍光体の含有量をパラメータとした場合における、青色光及び黄色光の指向特性図である。蛍光樹脂の樹脂材料や蛍光体の種類及び含有量は、上記実施例と同じとした。図4(a)〜(e)から明らかなように、蛍光体の含有量が多くなると、光軸からの角度(絶対値)が大きくなるほど青色光及び黄色光の指向特性のずれが顕著になる傾向にあり、色ムラが生じていることがわかる。この原因としては、光軸からの角度が大きくなると、励起光が蛍光体に吸収される割合が多くなり、青色光のみ光度が低下して配向がシャープになるからと考えられる。
【符号の説明】
【0028】
1 基板
4 LED素子
10 ベース樹脂
20 蛍光樹脂
30 カバー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装されたLED素子に、蛍光体を含まない液状樹脂からなるベース樹脂をポッティングして被覆するベース樹脂被覆工程と、
前記ベース樹脂の表面に、蛍光体を分散させた液状樹脂からなる蛍光樹脂をポッティングして被覆する蛍光樹脂被覆工程とを備えるLED装置の製造方法。
【請求項2】
前記蛍光樹脂は、前記ベース樹脂と樹脂材料が同一である請求項1に記載のLED装置の製造方法。
【請求項3】
前記ベース樹脂は、前記基板の平坦面上に、該平坦面と接触する部分以外が露出するようにレンズ状に形成される請求項1または2に記載のLED装置の製造方法。
【請求項4】
前記蛍光樹脂の表面に、蛍光体を含まない液状樹脂からなるカバー樹脂をポッティングして被覆するカバー樹脂被覆工程を更に備える請求項1から3のいずれかに記載のLED装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77481(P2011−77481A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230440(P2009−230440)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】