説明

Lawsoniaintracellularisの培養方法

本発明は、Lawsonia intracellularisの培養方法に関する。特に、本発明は、分子水素以外の還元剤を用いる、または別法として、1種もしくは複数の還元剤と分子水素の組合せを用いることによる、Lawsonia intracellularisの改良された培養方法を提供する。本発明はまた、本明細書で開示する方法を用いて培養したLawsonia intracellularisから調製されるワクチンおよび診断用試薬に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Lawsonia intracellularisの培養方法に関する。本発明はまた、本明細書で開示する方法に従って培養したLawsonia intracellularisから調製されるワクチンおよび診断用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスは、気体の形または溶液中の水素であり、「H」または「分子水素」または「分子H」と呼ばれる。水素ガスは、気体の形でもよいし、または溶液中に溶解したものもしくは導入されたものでもよい。非分子の水素は、有機または無機の還元剤で見られるものなどのHの任意の結合型であり、例を挙げる。
【0003】
無機還元剤は、炭素核を含まない任意の化学還元剤であり、そのような薬品の非限定的な例は、ハイドロサルファイト(ジチオナイト)、チオサルフェート、ジサルファイト(メタバイサルファイト)、硫化水素、ならびにこれらの遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩である。
【0004】
Lawsonia intracellularisは、ブタ増殖性腸疾患(PPE)を引き起こす病原体である。この生物は、以前に「カンピロバクター様」生物(McOristら、Vet.Pathol.第26巻:260〜264ページ、1989年)および「Ileal symbiont intracellularis」(Stills、Infection&Immunol.第59巻:3227〜3236ページ、1991年)とも呼ばれていた。
【0005】
Lawsonia intracellularisは、従来の無細胞培地を使用する通常の細菌培養法によって培養することができない偏性細胞内細菌である。この細菌は、インビトロで組織培養細胞を用いて培養することしかできない(Joensら、Am.J.Vet.Res.第58巻:1125〜1131ページ、1997年;Lawsonら、J.Clinical Microbiology第31巻:1136〜1142ページ、1993年;McOrist、Int.J.Systematic Bacteriology第45巻:820〜825ページ、1995年;国際特許出願PCT/US96/09576)。
【0006】
感染した動物では、L.intracellularisは、絨毛細胞および腸陰窩細胞の細胞質に所在が示される。PPEに罹患しているブタは、不揃いな絨毛細胞および上皮細胞異形成を伴う腸陰窩構造を特徴とし、陰窩膿傷は絨毛の形態、腸陰窩は分枝状になり、炎症細胞でいっぱいになっている。
【0007】
有機還元剤は、炭素を含む任意の化学還元剤であり、そのような薬品の非限定的な例は、アルキルチオール、アリールチオール、L−システイン、D−システイン、ホモシステイン、β−メルカプトエタノール、エタンチオール、プロパンチオール、ジチオスレイトール、システアミン、過硫化システイン、グルタチオン、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、トリブチルホスフィン(TBP)、ならびにこれらの鏡像異性体、ラセミ体またはラセミ混合物、遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩からなる群である。
【0008】
PPEは、養豚産業にとって商業的に重要な疾患である。PPEは、家畜の損失、薬物適用コスト、ブタの生育速度の低下、および飼料コストの増大と関連付けられる。PPEはまた、たとえば、抗生物質残留物による汚染の取扱いや、この生物体が他の動物もしくはヒトに伝わり、または運ばれないようにするためのコントロール処置における追加の労働コストおよび環境コストにおいて、下流部門の間接的なコストの一因となる。
【0009】
還元剤は、水素供与体として作用し得る任意の化学化合物である。
【0010】
還元剤は、その強度およびどれだけを使用するかに従って酸化還元電位と呼ばれる還元強度を有する。ここで、特に有用であるとされる酸化還元電位の範囲は、+300mV〜−600mV(mVはミリボルト)、より好ましくは+100mV〜−400mV、最も好ましくは−100mV〜−300mVである。還元剤の強度は、薬品の濃度によって言うこともできる。ここで、特に有用であるとされる濃度範囲は、パーセントとして使用するとき、0.8%〜0.0008%、より好ましくは0.4%〜0.004%、より好ましくは0.10%〜0.002%、最も好ましくは0.02〜0.002%である。ここで、還元剤の濃度範囲は、ミリモル(mM)で考えることもでき、特に有用であるとされる濃度範囲は、0.05mM〜50.0mM、より好ましくは0.10mM〜10.0mM、最も好ましくは0.10mM〜2.0mMである。酸化還元電位および濃度は、溶液中の他の還元剤または酸化剤に応じて変化し、使用する還元剤、酸化還元電位、または濃度の最適なレベルを決定することは、当業者にとって日常的な問題であるはずである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今までに同定された最適な条件下でさえ、L.intracellularisを培養する難しさは、PPEを理解しコントロールする障害となったままである。Lawsonia intracellularisを培養するための、改良されたより安全な方法、ならびにPPEを治療および予防するための組成物の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、Lawsonia intracellularisの培養方法を対象とする。
【0013】
一実施形態では、本発明は、分子水素HなしでL.intracellularisを培養する方法を提供する。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、L.intracellularisの強化された培養のための組織培養培地中に、分子水素以外の1種または複数の有機もしくは無機の還元剤を使用する。
【0015】
好ましい実施形態では、L.intracellularisを培養するための組織培養培地は、システインまたはその塩で補充したものである。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、組織培養培地が、分子水素と、分子水素以外の1種または複数の有機もしくは無機還元剤の両方を補充したものである、L.intracellularisの培養方法を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、組織培養培地は、分子水素とシステインもしくはその塩の両方を補充したものである。
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明は、周囲酸素濃度付近および濃縮された酸素濃度でのL.intracellularisの培養方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、L.intracellularisは、周囲酸素濃度付近および濃縮酸素濃度のもと、1種または複数の有機もしくは無機還元剤の存在下、かつ分子水素の不在下で培養する。
【0020】
別の特定の実施形態では、L.intracellularisは、周囲酸素濃度付近および濃縮酸素濃度のもと、分子水素と、分子水素以外の1種または複数の有機もしくは無機還元剤の存在下で培養する。
【0021】
本発明の方法に従って培養したL.intracellularisは、L.intracellularisワクチンおよび診断用試薬の製造で使用することができる。したがって、本明細書に記載の方法で培養したL.intracellularisから調製されるワクチンおよび診断用試薬は、本発明の別の実施形態となる。
【0022】
本発明は、分子Hを用いるまたは用いない化学還元剤の使用を含む、Lawsonia intracellularisの新規な培養方法を開示する。この方法を使用すると、Lawsonia intracellularisを成長させるのに一般に使用されるHガスのレベルを低減することができ、または分子Hの追加の使用をなくすことができる。例および詳細を示す。L.intracellularisによって引き起こされる動物の疾患を治療または予防するのに有効な、この方法のいずれかによって増殖させた免疫学的有効量のL.intracellularisを含み、アジュバントを含有していてもよく、ブタの治療に使用してもよい、有用な関連したワクチン;手順に従って培養されたL.intracellularisから生成した抗体、または単離されたポリヌクレオチドと反応性の、前記動物からのサンプル中の抗体の存在を検出することを含む疾患の診断方法、ならびにAキットを提供する。細胞を約2%〜18%の範囲のO濃度で培養するLawsonia intracellularisの培養方法も提供する。
【0023】
分子H以外の還元剤は、酸化還元電位の範囲が+300mV〜−600mVである有機または無機還元剤でよい。これは、アルキルチオール、アリールチオール、L−システイン、D−システイン、ホモシステイン、β−メルカプトエタノール、エタンチオール、プロパンチオール、ジチオスレイトール、システアミン、過硫化システイン、グルタチオン、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、トリブチルホスフィン(TBP)、ならびにこれらの鏡像異性体、ラセミ体またはラセミ混合物、遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩からなる群から選択される有機還元剤でよい。無機還元剤でもよい。前記無機還元剤は、ハイドロサルファイト(ジチオナイト)、チオサルフェート、ジサルファイト(メタバイサルファイト)、硫化水素、ならびにこれらの遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩からなる群から選択される。
【0024】
前記還元剤の濃度は、次の範囲から選択され、酸化還元電位の範囲は、約+300mV〜−600mV(mVはミリボルト)、より好ましくは+100mV〜−400mV、最も好ましくは−100mV〜−300mVであり、あるいは還元剤の濃度は次の範囲、約、0.8%〜0.0008%、より好ましくは0.4%〜0.004%、より好ましくは0.10%〜0.002%、最も好ましくは0.02〜0.002%にあり、あるいは特に有用な濃度範囲であるとされるミリモル(mM)での濃度範囲は、約、0.05mM〜50.0mM、より好ましくは0.10mM〜10.0mM、最も好ましくは0.10mM〜2.0mMである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明以前から、組織培養細胞でのLawsonia intracellularisの培養に、容器の気相または上部空間への分子水素(H)の追加が必要であることは一般に理解されていた。L.intracellularisは、約73〜94%のHの存在下、酸素濃度を低下させ、組織培養細胞中で常法どおりに培養されていた。培養中に水素供給源を提供する必要に加え、4%を超えるH濃度の使用は、実験室で潜在的に危険なシナリオを描くものであった。
【0026】
本発明者らは、分子水素以外の還元剤が、分子水素なしでの L.intracellularisの培養を可能にすることを発見した。これらの還元剤が、L.intracellularisの増殖を促進することにおいて少なくとも分子水素と同じ程度に強力であることは予想外である。さらに、これらの還元剤の1種または複数と分子水素の組合せは、L.intracellularisの培養を強化し得る。したがって、本発明は、より安全かつより経済的なL.intracellularisの培養方法を提供する。
【0027】
本明細書では、「培養する」または「培養」という用語は、組織培養細胞中でのL.intracellularisの成長、繁殖、および/または増殖を促進する過程を指す。
【0028】
概して言えば、組織培養細胞を、最初にL.intracellularis細菌の種菌に感染させる。L.intracellularisを培養する際の使用に適する細胞は、当業界で知られており(たとえば、米国特許第5714375号および国際特許出願PCT/US01/30284を参照されたい)、その限りでないが、サル細胞、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ハムスター細胞、ヒト細胞、ウマ細胞、魚細胞、ウシ細胞、およびブタ細胞がこれに含まれる。L.intracellularisは、ラット腸上皮細胞IEC−18(ATCC1589)、ヒト類表皮癌細胞HEp−2(ATCC23)、マウスMcCoy細胞(ATCC1696)、Madin−Darbyイヌ腎細胞MDCK(ATCC34)、バッファローグリーンモンキー腎細胞BGMK(Biowhittaker#71−176)、ブタ腸上皮細胞、およびベロ細胞を使用して培養することが好ましい。特に好ましい細胞は、HEp−2、McCoy、またはIEC−18細胞である。
【0029】
播種する前に、増殖培地を含む従来の組織培養フラスコ、ボトル、またはチャンバーの中で細胞を培養することができる。増殖培地は、市販されているどんな培地でもよく、通常は、窒素供給源、選択した培養細胞に必要な成長因子、およびグルコースやラクトースなどの炭素供給源を含む。好ましい培地は、2〜10%のウシ胎児血清で補充したDMEMである。
【0030】
種菌は、たとえば、アメリカ培養細胞系統保存機関から、または当業者によく知られている単離および精製技術を使用して、感染したブタもしくは他の動物から得られる、L.intracellularisの純粋な培養物でよい。
【0031】
種菌を細胞培養物に加えて細胞を感染させ、次いで、植えつけた細胞を適切な条件下でインキュベートする。本発明によれば、播種した細胞を分子水素なしで培養することができる。特に、本発明によれば、分子水素以外の還元剤が、L.intracellularisを培養するのに分子水素と同程度に強力であることが独自に確認された。したがって、播種した細胞を、分子水素なし、かつ分子水素以外の1種または複数の還元剤の存在下で培養して、L.intracellularisの十分な成長、繁殖、および増殖を実現することができる。
【0032】
本発明によれば、L.intracellularisの培養にふさわしい還元剤には、その限りでないが、たとえば、アルキルチオール、アリールチオール、L−システイン、D−システイン、ホモシステイン、β−メルカプトエタノール、エタンチオール、プロパンチオール、ジチオスレイトール、システアミン(2−メルカプトエチルアミン)、過硫化システイン、グルタチオン、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、他のチオール含有物質などの還元型の有機硫黄化合物、および還元型と酸化型のチオール含有物質の混合物(たとえば、システイン−シスチン、システアミン−シスタミン);たとえば、ハイドロサルファイト(ジチオナイト)、チオサルフェート、ジサルファイト(メタバイサルファイト)、硫化水素などの還元型の無機硫黄化合物;たとえば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)やトリブチルホスフィン(TBP)などのホスフィン誘導体;アスコルビン酸;すべての関連する還元剤の鏡像異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩、Oxyrase(登録商標)および他の酵素に基づく還元系、ならびに培地中で還元性のレドックス環境を確立することのできる他の成分、構成要素、添加剤、または条件が含まれる。培地にこれらの還元剤を供給することはかなり好都合である。したがって、本発明によるこれらの還元剤の特定は、L.intracellularisを培養するのに好都合かつ有効な選択肢を提供する。
【0033】
さらに、本発明によれば、植えつけた細胞を、上述の1種または複数の還元剤と組み合わせた分子水素の存在下で培養すると、L.intracellularisの強化された培養を実現することができる。「強化された培養」とは、L.intracellularisの繁殖、生存度、または運動性が、分子水素または還元剤の個々の存在下での培養と比べて増大していることを意味する。
【0034】
他の重要な培養パラメータには、OおよびCOの濃度が含まれる。本発明以前は、L.intracellularisを植えつけた細胞は、通常は、一般に2%〜18%の範囲、好ましくは約4%〜約10%の範囲、より好ましくは約8.0%の低めのO濃度で培養した。本発明によれば、上述のような分子水素以外の1種または複数の還元剤の使用は、L.intracellularisを植えつけた細胞の、周囲O濃度付近および濃縮されたO濃度、たとえば19〜21%、およびそれ以上での培養を可能にする。
【0035】
適切な二酸化炭素濃度については、当業界、たとえば米国特許第5714375号で述べられている。植えつけた細胞は、約6%〜約9%の範囲の二酸化炭素濃度でインキュベートすることが好ましく、約8.8%の二酸化炭素濃度が最も好ましい。
【0036】
本発明によれば、植えつけた細胞を窒素(N)の存在下で培養することも好ましい。植えつけた細胞は、約71%〜約98%、より好ましくは約74%〜約87%の範囲のN濃度でインキュベートすることが好ましく、約83.2%のN濃度が最も好ましい。
【0037】
特に好ましい実施形態では、細胞は、約8.0%O、約8.8%CO、および約83.2%Nの雰囲気中、塩酸システインを補充した培地でインキュベートする。
【0038】
別の特定の実施形態では、細胞は、約8.0%O、約8.8%CO、および約83.2%Nの雰囲気中で、水素ガス補充処理してある塩酸システイン補充培地でインキュベートする。
【0039】
植えつけた細胞は通常、組織培養フラスコまたはボトルに播種し、これを当業者によって日常的に使用される適切なインキュベート装置、たとえば、デュアルガスインキュベーター、またはインキュベーターもしくはチャンバー内の雰囲気および温度を容易に調節することのできる他のガスチャンバーに入れる。所望ならば、組織培養フラスコまたはボトルを撹拌して、インキュベートの間細胞を懸濁した状態に保つこともできる。最適な細胞成長のために、2〜3日毎に培養物の約25〜50%を取り除き、新鮮な培地と交換する。
【0040】
L.intracellularisの産生を拡大するために、培養したL.intracellularisは、新鮮な培養細胞へと継代培養することができる。懸濁培養液中のL.intracellularisの継代は、感染細胞の懸濁培養液の一部を取り除き、それを新鮮な(すなわち、感染していない)培養細胞を含む新しいフラスコに加えることで実現することができる。単層細胞培養物の継代は、細胞を溶解させ、細胞溶解物からL.intracellularisを採取し、採取したL.intracellularisで新鮮な細胞培養を感染させることによって実現される。
【0041】
培養細胞を十分に成長させた後、次いで、培養したL.intracellularisを当業者によく知られている技術を使用して収集する。概して言えば、たとえば細胞懸濁液を25ゲージの針に通すことによって培養細胞を収集し、溶解させる。細胞の核および細片を細胞溶解物から取り出し、遠心分離によって上清からL.intracellularisを収集することができる。収集したL.intracellularis細菌は、継代培養、または診断用試薬もしくはワクチン組成物の調合のいずれかに適するふさわしい希釈液に懸濁させる。
【0042】
本発明の別の態様では、本方法を用いて培養したL.intracellularisを診断用試薬の調製で使用する。たとえば、細菌細胞は、細菌に感染した疑いのある動物の血清および他の体液中でL.intracellularisに対する抗体を検出するための抗原としてそのまま使用することができる。あるいは、細菌細胞を使用して、ポリヌクレオチド、ポリペプチドを単離することができ、これらを使用して抗体を生成することもできる。次いで、単離されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体を診断アッセイで使用することができる。診断用試薬は、キットの形で提供することができる。
【0043】
本発明の別の態様では、本発明に従って培養したL.intracellularisをワクチン組成物の調合で使用する。細菌は、ホルマリンまたは他の不活性化剤を使用して不活化することができる。あるいは、細菌は、既知の弱毒化技術のいずれかを使用して、たとえば高次の連続的な継代培養または化学的手段によって弱毒化することができる。不活化または弱毒化された生きた細菌は、水酸化アルミニウムや鉱油などの適切なアジュバントと組み合わせると、ワクチンの免疫原性を強化することができる。
【0044】
本発明に従って培養したL.intracellularisから調製されたワクチン組成物は、(ブタ、げっ歯類、ウサギ、ヒツジ、ウマ、サル、イヌ、シカ、キツネ、トリなどの)動物、特にブタを、PPEなどのL.intracellularisによって引き起こされる疾患から守るのに有用である。したがって、動物においてL.intracellularisによって引き起こされる疾患を治療または予防する方法は、本発明の別の実施形態となる。
【0045】
本発明を以下の実施例よってさらに例示するが、本発明はこれによって限定されない。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
L.intracellularisブタ分離菌VP1での初期繁殖試験:塩酸システイン対水素ガス補充
L.intracellularisブタ分離菌VP1(17継代)を使用してMcCoy細胞を感染させた。McCoy細胞は、25cm容フラスコあたり1.25×10細胞、およびTracボトル(Bibby Sterilin Ltd.、英国スタフォードシャー)あたり1.25×10細胞で、組織培養フラスコ中の7%ウシ胎児血清(FBS)で補充したDMEMに播種した。Tracボトルは、フラスコ中で模擬実験による感染をモニターするために使用した。フラスコおよびTracボトルを、5%のCOを含む加湿したインキュベーターに入れて37℃で一晩インキュベートした。翌日、フラスコおよびTracボトル中の細胞を、7%のFBSを含む新鮮なDMEM中のL.intracellularisブタ分離菌(17継代)に感染させた。L.intracellularisを加えた後、フラスコおよびTracボトルを3通りの異なる方法で処理した。1つのフラスコおよび対応するTracボトルは、15水銀柱psiの吸引で真空にし、純粋水素でパージした。第2のフラスコおよび対応するTracボトルは、真空にもせず、水素パージもせず、代わりに塩酸システイン(Sigma、C−7477、米ミズーリ州セントルイス)、β−NAD、およびホスファチジルコリンで、最初の2回の継代の際にそれぞれ0.01%、5mM、および100ng/mlの最終濃度まで、後の継代の際に塩酸システイン(0.02%の最終濃度)のみで補充した。第3のフラスコおよび対応するTracボトルは、真空にもせず、水素パージもせず、どんな補充も行わなかった。すべてのフラスコおよびTracボトルを、8.0%のO、8.8%のCO、および83.2%のNを含むインキュベーターに入れて37℃でインキュベートした。感染後2日および5日目に、すべてのフラスコおよびTracボトルの培地の50%を、塩酸システイン、β−NAD、およびホスファチジルコリンを含むまたは含まない、5%のFBSを含む新鮮なDMEMと交換した。
【0047】
感染後5日または6日目に、組織培養フラスコ中の単層を、対応するTracボトルカバーガラスの免疫ペルオキシダーゼ染色によってモニターした。簡潔に述べると、Tracボトルのカバーガラスを取り外し、リン酸緩衝溶液(PBS)で穏やかに洗浄し、永久接着剤を使用して顕微鏡スライドに接着した。次いで、カバーガラスを室温で30秒間かけてアセトン固定した。PBSで400分の1希釈したウサギ抗L.intracellularisポリクローナル抗体を加えて、カバーガラス全体を覆い、次いでこれを37℃の加湿環境で30分間インキュベートした。カバーガラスをPBSで穏やかに洗浄し、ペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗ウサギIgG(H+L、Kirkegaard&Perry Laboratories,Inc.、米メリーランド州Gaithersburg)の20分の1希釈物をカバーガラスに加え、37℃で30分間インキュベートした。10mgの3,3’−ジアミノベンジジン(DAB、Sigma−Aldrich、米ミズーリ州セントルイス)を20mlのPBSに溶解させて、ペルオキシダーゼ基質溶液を調製した。Whatman 113V濾紙(Whatman International Ltd.、英国ケント州)で濾過した後、溶解した基質に40μlの30%Hを加えた。最終基質溶液をカバーガラスに加え、室温で5分間インキュベートした。水道水ですすいだ後、カバーガラスを、Modified Harris Hematoxylin Solution(Sigma−Aldrich)を使用して30秒間かけて対比染色した。次いで、染色したスライドを水道水ですすぎ、顕微鏡で観察した。フラスコ内の培地にいる細菌も顕微鏡観察して、McCoy細胞の感染を評価した。
【0048】
フラスコ中の感染したMcCoy細胞は、感染後6日または7日目に、0.1%の塩化カリウム(KCl)溶液を使用して溶解させた。溶解させた材料を使用して、フラスコおよびTracボトル中の新鮮なMcCoy細胞単層を再び感染させた。簡潔に述べると、フラスコから培地を取り出した後、0.1%のKCl溶液を加え(25cmあたり5ml)、37℃で5〜10分間インキュベートした。フラスコからKCl溶液を取り除き、5%のFBSを含む2mlのスクロースグルタミン酸カリウム(SPG;0.218Mのスクロース、0.0038MのKHPO、0.0072MのKHPO、および0.0049Mのグルタミン酸カリウム)を加えた。次いで、細胞スクレーパーを使用して細胞をフラスコから取り出した。次いで、細胞を、18gaの針を装着したシリンジに強引に通して溶解させた。溶解が良好であることを確実にするために、溶解させた材料の一定分量を顕微鏡観察した。溶解させた材料および溶解の前にフラスコから取り出した上清を3500gで15〜20分間遠心分離した。その結果得られたペレットを、5%のFBSを含む、細菌数に応じた適切な体積のSPGに再懸濁した。再懸濁した細胞溶解物に、5%のFBSを含む適切な量のDMEMを加え、これを使用して、これより前に記載した通りに新鮮なMcCoy細胞単層を再び感染させた。
【0049】
これらの実験の結果(表1)に基づき、McCoy細胞のL.intracellularisでの感染には、水素の使用またはシステインHClの補充が必要であったことが結論付けられた。どちらかの使用なしでは、感染を実現することができなかった。
【0050】
【表1】

【0051】
別のセットの実験では、L.intracellularis分離菌VP1(23継代)を使用してMcCoy細胞単層を感染させた。次いで、細胞を15日間微好気性環境に置いた。その時点で、培地中に多くの死細胞が見え、培地中のL.intracellularis生物は活性があるようには思われなかった。フラスコに新鮮な培地を供給し直した。翌日、単層がフラスコから剥離し始めたことが認められ、個々の細菌はまだ活性がないと思われた。フラスコからの単層細胞を、水を使用して溶解させた。簡潔に述べると、フラスコから培地を取り出し、フラスコに約16mlの無菌の脱イオン水を加えた後、37℃で10分間インキュベートした。フラスコを顕微鏡で検査すると、膨張し多孔性のMcCoy細胞が顕われた。次いで、フラスコを手掌に当てて穏やかに叩き、溶解した材料の液滴を顕微鏡で観察した。無傷の細胞は観察されず、単層の完全な溶解が示された。4.25%のNaCl溶液を直ちに加えて、培地をほぼ通常の生理学的モル浸透圧濃度にした。
【0052】
溶解した材料を3200×gで15分間遠心分離した。その結果得られたペレットを7%のFBSを含む41mlのDMEMに再懸濁し、これを使用して新鮮なMcCoy細胞を感染させた。この溶解したL.intracellularisに感染性の材料35mlを、McCoy細胞を播種した1つの175cm容フラスコに加え、0.5mlを1つの播種したTracボトルに加えた。フラスコおよびTracボトルの両方を15水銀柱psiの吸引によって真空にし、次いで純粋水素でパージした。また5mlおよび0.5mlの材料を使用して、それぞれ25cm容フラスコおよびTracボトルに播種されたMcCoy細胞を感染させた。15psiの真空吸引による排気および窒素フラッシュの後、システインHClの5倍保存液を25cm容フラスコおよび対応するTracボトルに加えて、最終濃度を0.02%とした。すべてのフラスコおよびTracボトルを、8.0%の酸素、8.8%の二酸化炭素、および83.2%の窒素を含むインキュベーターに入れて37℃でインキュベートした。再補給は、上述のように実施したが、システインHClを加えたフラスコおよびTracボトルにも再補給して同じ最終濃度(0.02%)とした。
【0053】
感染後6日または7日目に、対応するカバーガラスの免疫ペルオキシダーゼ染色によって上述のように感染をモニターした。感染は、蛍光抗体染色によってもモニターした。簡潔に述べると、Cytofunnelサンプルチャンバー(Shandon Inc.、米ペンシルヴェニア州ピッツバーグ)および1500rpmで10分間の遠心分離を使用して、細胞溶解物をCytospin顕微鏡スライド上に収集した。サンプルを風乾し、30秒間かけてアセトン固定した。次いで、スメアを、ウサギ抗L.intracellularisポリクローナル血清の400分の1希釈物で覆い、37℃で30分間インキュベートした。スライドをPBSで穏やかに洗浄し、フルオレセイン標識したヤギ抗ウサギIgG(H+L、Kirkegaard&Perry Labs)の20分の1希釈物をスメアに加え、スライドを37℃で30分間インキュベートした。次いで、これを蛍光顕微鏡で観察した。
【0054】
これらの実験は、システインHClで補充したMcCoy細胞のL.intracellularis感染が、水素ガス補充を使用する感染と比べて強化されていることを示している(表2)。システインHClの使用に伴ってL.intracellularisに生存度を回復することができたことも実証された。細菌の活性/運動性のフラスコ中での増大は、鞭毛の蛍光抗体での染色によって実証されるように、鞭毛の発現の増加によって裏付けられた。
【0055】
【表2】

【0056】
(実施例2)
L.intracellularisハムスター分離菌STRの繁殖:塩酸システイン対水素ガス補充
L.intracellularisハムスター分離菌STR(44継代)を使用して、次のようにMcCoy細胞を感染させた。すなわち、25cm容フラスコあたり2×10細胞のMcCoy細胞を、7%のFBSを含むDMEMに播種し、感染をモニターするために匹敵する密度の8×10細胞を48ウェルプレートに播種した。細胞を5%のCO中37℃で一晩インキュベートし、翌日25cm容フラスコあたり約5×10個の細菌で感染させた。感染させたフラスコおよび48ウェルプレートを15水銀柱psiの吸引で真空にし、水素パージした。第2のセットのフラスコおよび対応するTracボトルを真空にし、純粋窒素でパージし、塩酸システインを加えて、最終濃度を0.02%とした。感染させたフラスコおよびプレートを、8.0%のCO、8.8%のO、および83.2%のNの二気体インキュベーターでインキュベートした。感染後2日および5日目に、5%のFBSを含むDMEMを使用して、フラスコに50%体積の培地を再供給した。感染度の決定は、5日目に免疫ペルオキシダーゼ染色を使用して行った。溶解および再感染は、48ウェルプレートの感染の免疫染色によってモニターした感染程度に基づいて(感染後7日目に常法どおりに)実施した。フラスコから培地上清を収集し、3500gで30分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを5%FBS含有SPGに再懸濁した。単層をPBSで洗浄した後、水を加え、37℃で15分間インキュベートしたが、その時点で、細胞がフラスコから剥離し始めた。次いで、細胞を、18gaの針を装着したシリンジに4〜5回通して溶解させた。溶解液を350gで5分間遠心分離して、細胞の核をペレットにした。溶解液の上清を収集し、培地上清からの再懸濁したペレットと組み合わせ、次いでこれを使用して、McCoy細胞の新鮮な単層を感染させた。
【0057】
感染後5日目に、水素および塩酸システインの両方のTracボトルからのカバーガラスは、約20%の感染を示した。したがって、塩酸システインは、L.intracellularis成長を補助するための水素ガス補充と同程度に有効な補充であった。
【0058】
同様のセットの実験では、2本の25cm容フラスコ中の7%FBS含有DMEMに2×10個のMcCoy細胞を播種し、5%CO中37℃で一晩インキュベートした。2枚の48ウェルプレートにも、匹敵する密度でMcCoy細胞を播種した。翌日、49継代のL.intracellularis(STR分離菌)に感染したMcCoy細胞の上清および細胞溶解物を使用して、これより前に記載した通りにフラスコを感染させた。一方のフラスコを真空にし、水素パージし、インキュベーターに入れた。第2のフラスコを0.02%の塩酸システインで補充し(水素パージせず)、二気体インキュベーターに入れた。2枚の48ウェルプレートを、2本のフラスコと並行してL.intracellularisに感染させ、感染のモニターおよび免疫染色用の対照として使用した。フラスコおよび48ウェルプレートを両方とも、8.0%のCO、8.8%のO、および83.2%のNのインキュベーターでインキュベートした。感染後2日および5日目に、5%FBS含有DMEMを使用してフラスコに50%体積の培地を再供給した。
【0059】
細胞溶解によって細菌を継代培養した。両方のフラスコから前述のように上清および細胞溶解物を調製し、これを、48ウェルプレート単層の免疫染色によって決定される感染度に応じて1:1または1:2の分割比で使用して、25cmまたは75cm容フラスコに播種されたMcCoy細胞の新鮮な単層を感染させた。水素ガス補充または(水素ガス補充なしの)システインHClを用いるL.intracellularisの繁殖を、分割比を査定し、48ウェルプレート中の単層の免疫染色を評価することによって10継代を超える期間にわたって比較した。10継代後、水素ガス補充を使用して繁殖させていた培養物は、1本の25cm容フラスコから4本の25cm容フラスコに、すなわち4倍の増加に拡大した。塩酸システインを使用して繁殖させた培養物は、1本の25cm容フラスコから12本の25cm容フラスコに、すなわち12倍の増加に拡大した。したがって、L.intracellularisの繁殖の際に塩酸システインを水素ガス補充の代わりに用い、同等または優れた細菌収量を実現することができる。
【0060】
塩酸システインを用いまたは用いずに感染させた48ウェルプレートを、感染後5日目に80%のアセトンで固定し、免疫ペルオキシダーゼ法および免疫蛍光法を使用して、前述のように染色した。水素ガス補充対システインHClを使用して感染させたMcCoy細胞のパーセントを各細菌の継代後に評価した。ここでも、これらのデータは、塩酸システインが、L.intracellularis繁殖の際に水素ガス補充の代わりに使用できることを示している。
【0061】
(実施例3)
L.intracellularisブタ分離菌PHE/MN−001の培養
追加のL.intracellularis分離菌PHE/MN−001のMcCoy細胞単層中での培養を促進するかどうか、ならびに水素ガス補充および塩酸システインを使用する複合効果についても、塩酸システインを水素ガス補充と比較した。
【0062】
2本の75cm容フラスコの7%FBS含有DMEMに、ハムスターSTR分離菌について記載したのと同じようにして、6×10個のMcCoy細胞から始めて播種し、5%CO中37℃で一晩インキュベートした。2枚の48ウェルプレートに、McCoy細胞を匹敵する密度で播種した。翌日、L.intracellularis(PHE/MN−001分離菌)に感染した40継代目のMcCoy細胞の上清および細胞溶解物を使用して、フラスコを感染させた。一方のフラスコを真空にし、0.02%の塩酸システインで補充し、水素パージし、インキュベーターに入れた。第2のフラスコを0.02%の塩酸システインで補充し、最初に水素を使用してパージせずにインキュベーターに入れた。2枚の48ウェルプレートを、2本のフラスコと並行してL.intracellularisに感染させ、感染のモニターおよび免疫染色用の対照としてもう一度使用した。フラスコおよび48ウェルプレートを、8.0%のCO、8.8%のO、および83.2%のNのインキュベーターでインキュベートした。感染後2日および5日目に、5%FBS含有DMEMを使用してフラスコに50%体積の培地を再供給した。
【0063】
細菌を細胞溶解によって前述のように継代培養した。各フラスコから上清および細胞溶解物を調製し、これを1:2および1:4の分割比で使用して、25cmまたは75cmのフラスコに播種されたMcCoy細胞の新鮮な単層を感染させた。塩酸システインおよび水素ガス補充、または(水素ガス補充なしで)システインHClのみを用いるL.intracellularisの繁殖を、拡大したフラスコを査定し、48ウェルプレート中の単層の免疫染色を評価することによって、9継代を超える期間にわたって比較した。9継代後、上清中で得られた細菌数は、水素ガス補充の有無にかかわらず同様であった(表3)。塩酸システインおよび水素ガス補充を用いて感染させたMcCoy細胞のシステインHClのみに対するパーセントを、各細菌の継代後に評価した。これらの結果は、塩酸システインが、L.intracellularisの感染および繁殖の際に水素ガス補充の代わりに使用できることをさらに実証している。
【0064】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lawsonia intracellularisに感染させた細胞を、分子Hの不在下、かつ分子H以外の還元剤の存在下で培養することを含む、Lawsonia intracellularisの培養方法。
【請求項2】
前記の分子H以外の還元剤が、酸化還元電位範囲が+300mV〜−600mVの有機または無機還元剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤が有機還元剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機還元剤が、アルキルチオール、アリールチオール、L−システイン、D−システイン、ホモシステイン、β−メルカプトエタノール、エタンチオール、プロパンチオール、ジチオスレイトール、システアミン、過硫化システイン、グルタチオン、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、トリブチルホスフィン(TBP)、ならびにこれらの鏡像異性体、ラセミ体またはラセミ混合物、遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤が、任意の形態のシステインまたはその塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤が無機還元剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記無機還元剤が、ハイドロサルファイト(ジチオナイト)、チオサルフェート、ジサルファイト(メタバイサルファイト)、硫化水素、ならびにこれらの遊離塩基形態、塩酸塩、水和物、および塩からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤の濃度が次の範囲から選択され、すなわち酸化還元電位の範囲が約+300mV〜−600mV(mVはミリボルト)、より好ましくは+100mV〜−400mV、最も好ましくは−100mV〜−300mVであり、あるいは還元剤濃度が、約0.8%〜0.0008%、より好ましくは0.4%〜0.004%、より好ましくは0.10%〜0.002%、最も好ましくは0.02〜0.002%の範囲にあり、あるいは特に有用な濃度範囲であるとされるミリモル(mM)での濃度範囲が、約0.05mM〜50.0mM、より好ましくは0.10mM〜10.0mM、最も好ましくは0.10mM〜1.0mMである、請求項1から7に記載の方法。
【請求項9】
約2%〜約18%の範囲のO濃度で細胞を培養する、請求項1から8に記載の方法。
【請求項10】
Lawsonia intracellularisに感染させた細胞を、分子Hと分子H以外の少なくとも1種の有機もしくは無機還元剤の存在下で培養することを含む、Lawsonia intracellularisの培養方法。
【請求項11】
前記還元剤が、請求項2から8に記載した当該範囲の還元剤から選択されてもよい有機または無機還元剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2%〜18%の範囲のO濃度で細胞を培養する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
L.intracellularisによって引き起こされる動物の疾患を治療または予防するのに有効であり、請求項1から12の方法のいずれかによって増殖させた免疫学的有効量のL.intracellularisを含み、アジュバントを含有していてもよく、ブタの治療に使用してもよいワクチン組成物。
【請求項14】
本明細書乃至特許請求の範囲に記載の手順に従って培養したL.intracellularisと反応性である動物からのサンプル中の抗体の存在を、または、本明細書乃至特許請求の範囲に記載の手順に従って培養したL.intracellularisを用いて生成された抗体とともにL.intracellularisの存在を、または、本明細書乃至特許請求の範囲に記載の手順に従って培養したL.intracellularisから単離されたポリヌクレオチドとともにL.intracellularisの存在を、検出することを含むL.intracellularisにより引き起こされる動物の疾患の診断方法。
【請求項15】
L.intracellularisによって引き起こされる動物の疾患を診断するのに有用なキットであって、本明細書乃至特許請求の範囲に記載のL.intracellularis、またはそれから単離されたポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または本明細書乃至特許請求の範囲に記載の手順に従ってL.intracellularisを培養したときにL.intracellularisに対して産生された抗体を含むキット。


【公表番号】特表2008−520231(P2008−520231A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542158(P2007−542158)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003496
【国際公開番号】WO2006/056853
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】