説明

Leishmania寄生虫ビルレンス関連遺伝子

【課題】本発明はリーシュマニア症との戦いに関する。
【解決手段】上記発明はプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の活性部位と考えられる部位の配列(Cys-Gly-His-Cys)と同一な2つの領域を有し、LmPDIとして知られるタンパク質をコードする遺伝子の、野生型Leishmania major単離株の単離から生じたものである。LmPDIタンパク質は寄生虫の最も強いビルレンスを有する単離株に優先的に発現される。上記タンパク質は、抗-リーシュマニア症の医薬を開発するための治療的標的、ならびにリーシュマニア症に対するヒトまたは動物宿主の保護を意図した免疫原性組成物および、多分、ワクチン化調製物に使用できる新規な要素を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリーシュマニア症に対する戦いの分野に関する。すなわち本発明は、プロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)の活性部位と考えられる部位の配列(Cys-Gly-His-Cys)と同一の2つの領域を有するLmPDIと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子をLeishmania major(メジャー リーシュマニア)単離株から同定したことによるものである。このLmPDIタンパク質は、その寄生虫の最も強いビルレンス(毒性)を有する単離株中で支配的に発現される。それは、第一に抗-リーシュマニア症の薬剤を開発するのための新規な治療標的を構成し、第二にリーシュマニア症に対するヒトまたは動物宿主の保護を意図した免疫原性組成物および、多分ワクチン化調製物の一部を形成できる新規な要素を構成するものである。
【背景技術】
【0002】
リーシュマニア症は数百万の個体が冒されている異種疾患のグループであり、Leishmania(リーシュマニア)属の原生動物寄生虫による宿主の感染によって生じる。この感染の臨床的発現は著しい多型性を特徴とし、無症候性感染、単純性または再発性皮膚型、汎発性またはアネルギー性皮膚型、皮膚粘膜および内臓型があり、これらは特別な処置を行わないと致命的である。一般に疾患の地理的分布によって、リーシュマニア症の種または亜種は特定の臨床型の原因になる。しかしながら、これには厳密な規則があるわけではない。さらに、同一の地理的領域で、同一の寄生虫種によっても、様々な重症度の臨床型を生じることがある。感染の臨床的な発現におけるこの多様性の少なくとも一部は寄生虫のビルレンスの多様性によるものである。
【0003】
そのサイクルの間に、寄生虫は2つのステージの間を変化する。すなわち、昆虫ベクターの消化管に見出される鞭毛虫の前鞭毛期、および宿主マクロファージ中に認められる無鞭毛期である。抗-リーシュマニア症の薬剤はそれらに毒性があるのみでなく、その寄生虫による耐性の発現はきわめて高頻度であることから(Lira, sunderら, 1999年)、その使用は困難である。さらに、最近開発され、試験されたワクチンに関する限り期待される効果はこれまで得られていない(Sharifi, FeKriら, 1998; Khalil, El Hassanら, 2000)。
【0004】
リーシュマニア症を制御するための道具がない理由は、一部分、その寄生虫の伝播サイクルの複雑性、および現時点におけるその寄生虫の生物学に関する知識の欠乏によって説明される。この10年間にこの寄生虫の生物学および感染性に基本的な役割を果たしているいくつかの分子が同定されてきた。表面の複合糖質、特にリポホスホグリカン(LPG)に対する修飾が、この寄生虫Leishmania (L)majorおよびL.donovani(ドノバン リーシュマニア)の感染性およびビルレンスの変更に関連する(Beverley 及び Turco, 1998; Desjardins 及び Descoteaux, 1998; Sacks, Modiら, 2000; Spath, Epsteinら, 2000)。しかしながら、L. mexicana(メキシコ リーシュマニア)の場合にはこれは当てはまらないように思われる(IIg, 2000; IIg, Demarら, 2001)。
【0005】
LPGの生合成に関与する分子:ホスホマンノースイソメラーゼ(Garami 及び IIg, 2001)、LPG1(Sacks, Modiら, 2000; Spath, Epsteinら, 2000)、LPG2(Descoteaux, Luoら, 1995)、およびガラクトシルトランスフェラーゼ(De 及び Roy, 1999)もLeishmaniaのビルレンスに関連していた。ビルレンスにおける他の因子については最近の報告がある。それらにはシステインプロテアーゼのファミリー(Mottram, Brooksら, 1998)、ミトゲン活性化プロテイン (MAP)-キナーゼ(Wiese, 1998)、A2遺伝子(Zhang 及びMatlashewski, 1997)、表面糖タンパク質gp63(Chakrabarty, Mukherjeeら, 1996)、キネトプラスト膜タンパク質 (KMP)-11(Mukhopadhyay, Senら, 1998)、スーパーオキシドジスムターゼ(Paramchuk, Ismailら, 1997)、トリパノチオンレダクターゼ(Dumas, Ouelletteら, 1997)、および熱ショックタンパク質(HSP)ファミリーのある種のメンバー(Hubel, Krobitschら, 1997)が包含される。
【0006】
ビルレンス因子の特徴を明らかにすることはこれらの疾患に対する新規な薬物またはワクチンの開発に際しての基礎となる意味がある。寄生虫のビルレンスに関連するタンパク質の優先的スクリーニングでは、他の株に伝播する可能性がある、危険の少ない株における不必要な耐性の出現を回避することができる。さらに、薬物に対する耐性の原因となる標的ビルレンスタンパク質の突然変異は、この場合、寄生虫のビルレンスの低下またはその喪失さえも生じることがあり、したがって、ある種の治療効果が期待できる。
【0007】
過去10年間にわたって、Leishmania寄生虫のビルレンス因子の研究には多くのアプローチが使用されてきた、これらのアプローチは、突然変異寄生虫の相補性(Ryan, Garrawayら, 1993; Descoteaux, Luoら, 1995; Desjardins 及び Descoteaux, 1997; Wiese, 1998)、遺伝子失効技術の使用(Titus, Guciros-Filhoら, 1995; Mottram, Souzaら, 1996; Dumas, Ouelletteら, 1997; Hubel, Krobitschら, 1997; Mottram, Brooksら, 1998)または実験室で操作した寄生虫における薬物耐性についての遺伝子の解析(Cotrim, Garrityら, 1999; Perez-Victoria, Perez-Victoriaら, 2001)に基づいて行われた。
【0008】
これらの研究により、この寄生虫の生物学に重要ないくつかの遺伝子が同定され、現在新規な薬物の標的として(Selzer, Chenら, 1997; McKerrow, Engelら, 1999)、または生ワクチンとしての弱毒化された突然変異体の開発ならびにその使用(Titus, Guciros- Filhoら, 1995; Streit, Reckerら, 2001)に有効であることを確認されている。今日まで寄生虫Leishmaniaのビルレンスについて実施されたほとんどすべての研究は、長時間の培養後それらのビルレンスを喪失した実験室クローンまたは突然変異誘発実験、遺伝子失効もしくは遺伝子過剰発現によって遺伝子が操作された寄生虫のいずれかに基づくものであることが指摘されなければならない。すなわちこれらの条件下で同定された遺伝子のビルレンスに関する結論は、この寄生虫の伝播領域における自然の病原性に実際に関連するものではない。
【0009】
寄生虫のビルレンスの分子的な基盤を研究する目的で、本発明者らは、実験室株の使用に関連する方法論的偏りを回避するために、まず様々なレベルのビルレンスを有するLeishmania majorの野生株を単離した。L. majorはモーリタニアからモンゴル一帯に広がるきわめて広範な領域にわたるヒト流行病として存在する動物寄生虫皮膚リーシュマニア症(ZCL)の病原因子である。本発明者らはすべて同じ流行の季節に得られたヒトZCL病変から得られたL. majorの単離株を同定し、それらが感染の実験モデルBALB/c感受性マウスでそれらの病原性が異なることを確認した(例1)。実験的感染を起こす病原性はインビトロにおける増殖の差に相関し、これらの野生型単離株の生物学における変異を反映する。
【0010】
ついで「ディファレンシャルディプレー」法(Liang 及び Pardee, 1992; Liang, Bauerら, 1995)を用い、BALB/cマウスにおけるそれらの実験的病原性により完全に異なる単離株(ビルレンスの高い2種の単離株およびビルレンスのあまり高くない他の2種の単離株)の間で差別的に発現される異なる遺伝子を同定した。この方法により、それらの配列を予め知らないでも、検討すべき異なるレベルで遺伝子を発現させることが可能になる。ついで2種の最もビルレンスの強い単離株で優先的に発現される3つの転写体が同定された。これら転写体の1つは、L. majorのcDNAのスクリーニングによって完全に特性決定された。配列の解析により、真核細胞におけるプロテインジスルフィド-イソメラーゼファミリー(PDI, Erp60およびErp72)とのホモロジーが証明された。
【0011】
この新規なタンパク質は以下の理由によりLmPDIと命名された。すなわち、PDIファミリーの他のメンバーと同様、(i)LmPDIは2個のCGHC活性領域を有すること、(ii)このタンパク質のN-末端領域はシグナル配列と考えられる配列を含有し、カルボキシ-末端領域中には小胞体(EEDL)中に維持されるためのシグナルと考えられる配列を含有すること、(iii)それはそれ自身をオリゴマー構造に組織化できること、(iv)大腸菌中で産生された組換えタンパク質はインビトロにおいてPDI活性を発現することである。さらに、上述の保存領域の外部ではLmPDIおよび上述の他のPDI類には類似性はほとんどない。事実、PDIファミリーは、小胞体中に分泌されるタンパク質の成熟に関与する複数個の高度に分散性の分子に含まれる(Novia 1999; Frand, Cuozzoら, 2000)。
【0012】
PDIは、発現の維持、修復、制御の複雑な機構に関与する多機能タンパク質である。それらは、正しくフォールディングされたタンパク質だけが小胞体から離脱できるようにコンフォーメーションの変化を補助する。それらの酵素的作用(還元および異性化)に加えて、最近、他の機能もPDIに帰せられるようになった。それらにはシャペロン活性、ペプチドの結合および細胞接着が含まれる(Ferrari 及び Soling, 1999)。LmPDIが最も強いビルレンスを有する単離株において支配的に発現されること(例2)は重要であり、強調されねばならない。全体としてこれらの結果は、LmPDIがLeishmania寄生虫の天然のビルレンスに重要な役割を果たしていることおよび、したがって、化学療法またはワクチン化の新規な標的を構成できることを示唆する。
【0013】
PDI類の細菌の等価物の関与に関する最近のデータ(Martin, 1995; Ostermeier, De Sutterら, 1996)(DsbAと命名されたジスルフィド結合)はさらにこのタンパク質が様々な微生物の病原性において果たし得る役割に関して示唆を与える(Yu 及び Kroll,1999)。DsbA遺伝子の脱活性化はシゲラ・フレクセネリ(Shigella flexneri)の生存およびビルレンスに劇的に作用する(Yu, 1998; Yu, Edwards-Jonesら, 2000)。DsbAはまたビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)のエンテロトキシンの発生に関与する(Peek 及び Taylor, 1992; Yu, Webbら, 1992)。DsbAはまた病原性大腸菌種の病原性に重要であり、尿管に対して病原性を示す種においてピリンに特異的なシャペロンタンパク質のジスルフィド橋形成を触媒する(Zhang 及び Donnenberg, 1996)。腸病原性種においては、それはピリンの安定性および形成に必要とされる(Hultgren, Abrahamら, 1993; Wang, Bjesら, 2000)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本出願は原生動物寄生虫におけるビルレンス因子としてのPDIの重要な役割を示唆する最初の記述をなす。LmPDIは、寄生虫Leishmaniaの生物学および病原性に必須の他の因子のコンフォーメーション及び安定性における変化を補助することにより、その作用を発揮する。このような因子の同定はこの寄生虫の生物学のよりよい理解、およびリーシュマニア症に対する新規な処置、またはワクチンの開発にきわめて有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の第一の態様はプロテインジスルフィド-イソメラーゼファミリー(PDI)からのタンパク質の活性部位と考えられる部位の配列(Cys-Gly-His-Cys)と同一の少なくとも1つの領域を含むLeishmaniaのビルレンスに関与するタンパク質に関する。このタンパク質はその寄生虫自体によってコードされることが好ましい。
【0016】
とくに本発明は、配列番号3の配列を有するLeishmania majorのLmPDIタンパク質、およびLmPDIと少なくとも40%の同一性、好ましくは少なくとも80%の同一性を有するLmPDIの機能性変異体に関する。
【0017】
本明細書においては、「LmPDIの機能性変異体」を、LmPDI遺伝子が脱活性化されたL. major株について実施された伝染力試験においてLmPDIを補助できるタンパク質として定義された。本明細書で使用される「伝染力試験」の語は、従来ビルレンスに関連する寄生虫の増殖に関する生物学的性質を評価することができるいかなる試験をも意味する。とくに、以下の3種の試験を挙げることができる。すなわち、
・たとえば、液体培地中、例5のポイント2に記載の型の方法による、寄生虫の前鞭毛体形態における増殖キネティクス;
・例6および


2001の文献に記載のような方法を用いる、インビトロで培養されたマウスマクロファージの感染能力;
・たとえば例5のポイント3および


2001に詳述された方法によって感受性マウス(たとえばBALB/c)を感染させることによる実験的齧歯類リーシュマニア症の誘発能力の試験である。
【0018】
LmPDIとの同一性の百分率に関しては、CLUSTAL Wバージョン1.8ソフトウエア(Thompson JD, Higgins DG 及び Gibson TJ)またはBOXSHADEバージョン3.21ソフトウエア(Hoffman K 及び Baron M)を用いて評価した。数種のPDIファミリーからのタンパク質と27%〜36%のLmPDIの同一性百分率を生じた(例2)。
【0019】
第二の態様においては、本発明は上に定義したタンパク質の10個を越えるアミノ酸の少なくとも1個の断片を含み、適当であればさらなるポリペプチド断片と融合されている、動物に投与した場合にLmPDIのエピトープに対する免疫学的反応を適宜誘発できる組換えポリペプチドに関する。本発明はまた、上に定義したタンパク質の10個を越えるアミノ酸の少なくとも1個の断片を含み、適当であればさらにポリペプチド断片に融合されている、LmPDIタンパク質に向けられた抗体により認識され得る組換えポリペプチドに関する。
【0020】
本明細書を通じて「ポリペプチド」の語は、その広い意味としてとらえられる。すなわち、少なくとも10個のアミノ酸(または場合によりそれ以上)の配列を包含し、それはグリコシル化モチーフまたは糖脂質を含んでいても、いなくてもよく、一次、二次または三次構造には無関係である。上記発明の組換えポリペプチド中に存在するLmPDI断片のサイズは15, 20, 30, 50または100アミノ酸またはそれ以上であってもよい。
【0021】
組換えまたは感染細胞からの精製LmPDI、および本発明のポリペプチドは、ヒトまたは動物宿主を免疫してそれをリーシュマニア症から保護し、例2に記載のLmPDIに対し向けられた抗体を産生または復活させる。
【0022】
本発明の特定の組換えポリペプチドは、例2に記載の配列番号:4の配列を有するLmPDI-(His)6タンパク質である。
【0023】
本発明の組換えポリペプチドの更なる例は、LmPDIの少なくとも1個のエピトープを含むLmPDI断片とその断片の免疫系への提示に寄与する担体ポリペプチドとの間の融合タンパク質である。それは、とくに、LmPDIのすべてまたは部分と、β-ラクタマーゼ、または破傷風もしくはジフテリアアナトキシン、またはとくに寄生虫、細菌もしくはウイルス起源の病原性生物からの他の任意のポリペプチドとの融合タンパク質とすることができる。
【0024】
更なる態様においては、本発明は上述のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列に関する。好ましい核酸配列は、配列番号:2の配列を有しLmPDIをコードする配列または、30ヌクレオチドもしくはさらに好ましくは100ヌクレオチドを越える大きさの上記配列の断片であって、LmPDIの特徴的なエピトープを少なくとも1個含むポリペプチドをコードする断片を含む。
【0025】
本発明はまた、本発明の核酸配列を含む核酸ベクターに関する。たとえば、それはプラスミド、コスミド、ファージまたはウイルスである。本発明のベクターは、本発明によるタンパク質またはポリペプチドの宿主細胞における発現を可能にする。とくに、本発明のベクターは細菌または真核細胞におけるLmPDIの発現を可能にする。
【0026】
本発明はまた、上に定義したベクターを含む培養細胞に関する。上記細胞は、細菌、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞または他の任意の細胞型である。それは、本発明のタンパク質またはポリペプチドを発現および、可能であれば産生させるために用いることができ、あるいはベクターであって、ついで更なる細胞タイプ中もしくはインビボにおいて本発明のタンパク質またはポリペプチドを発現させるために使用することができるベクターを産生させるために用いることができる。非限定的な全くの例示として、本発明の関連においてインビトロで使用できる細胞型としては、CHO, VERO、 BHK21細胞および昆虫細胞を挙げることができる。同様に、BCG及びサルモネラ・ティフィムリウム(salmonella typhimurium)もインビボで用いることができる細胞として挙げることができる。最後に、ウイルスベクターたとえばワクチンウイルスまたはワクチンの目的で上に記載したポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNAの個体への投与も本発明の範囲内に包含されるものであることを銘記すべきである。
【0027】
本発明の特定の細胞は、Collection Nationale de Culture des Microorganismes [CNCM, the Natinal Collection of Microorganism Cultures] に2002年1月31日に受入番号I-2621で寄託された細菌株LmPDI-XL1である。この株はプラスミドpBK-CMV-LmPDIで形質転換された、ゲノタイプΔ(mrcA)183 Δ(mcrCB-hsdMR-mrr) 173endA1 sup E44 thi recA1 gyrA96 relA1 lac [F' proAB lacqZ ΔM15 Tn10 (Tet') ]を有する細菌株XL1- blue MRF'株から誘導される。このプラスミドはLmPDIからのcDNAがEcoR1およびXhoI制限部位の間に付加されたStratagene(La Jolla, CA)販売のプラスミドpBK-CMVに相当する。
【0028】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下に配列番号:2の核酸配列に特異的にハイブリダイズし、LmPDIをコードするビルレンス遺伝子の生物学サンプル中における存否を明らかにすることができる核酸プローブに関する。
【0029】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは本明細書中で2つのDNA分子が、約65℃において、例えば6×SSC, 0.5%SDS, 5×Denhardt'溶液および100μg/mLの変性非特異的DNA中または相当するイオン強度の任意の溶液中、たとえば高々0.2×SSCおよび0.1%SDS溶液または相当するイオン強度の任意の溶液による65℃での洗浄工程後に、特異的にハイブリダイズする条件と定義される。しかしながら、その条件のストリンジェンシーは、熟練者により、ハイブリダイズされる配列のサイズ、そのGCヌクレオチド含量および任意の他種パラメーターの関数として、たとえばSambrookら, 2001(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3版, Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載されたプロトコ−ルに従い採用することができる。
【0030】
上記定義および本明細書を通じて「特異的」の語は実験室で通常に用いられるその最も広い意味をもつものとしてとらえられるべきである。したがって、複雑な混合物中において分子Aが分子Bを特異的に認識する場合、分子Aは、混合物中の他の分子に対するよりも分子Bに対して有意に高度の親和性を有し、これにより分子Aを介して分子Bを検出することが可能である。
【0031】
ここで使用されるストリンジェンシーの条件は、様々なLeishmania種のPDIの検出を可能にするものであり、LmPDIのcDNAから合成された放射標識プローブの存在下に宿主と他の微生物を検出するものではない。
【0032】
一例としては、ストリンジェントな条件下に配列番号:2の配列と特異的にハイブリダイズする本発明のプローブは、標識した上述のプローブを用いて実施したサザンブロットであり、LmPDIを発現するL. major株に感染した細胞からのDNA試料について実施した場合、他のバンド(非特異的)より強度の高い少なくとも1個の明瞭に識別されるバンドを有し、上記バンドはL. major株に感染していない細胞からのサンプルDNA試料について同様の条件下で行ったサザンブロットには現れない。
【0033】
更なる態様においては、本発明はLeishmaniaにより感染した細胞からの配列番号:1の配列の少なくとも一部分の特異的増幅を可能にし、したがってLmPDIをコードするビルレンス遺伝子の生物学的サンプル中における存否を決定できるヌクレオチドプライマーに関する。Leishmaniaに感染していない対照細胞から増幅反応を実施しても、いかなる配列の有意な増幅も生じない場合、この増幅は「特異的」であると呼ばれる。一方、同じ反応を配列番号:1のヌクレオチド配列を含有するサンプルに実施すると、上記配列の少なくとも1種の断片の増幅を生じる。
【0034】
上述のプローブおよびプライマーは必要に応じて、標識することおよび/または診断キットとして提供することができる。これらはまた、本発明の一部を形成する。Leishmaniaによる感染の間にLmPDI遺伝子の存在および可能ならばその発現レベルを決定することは、たとえばLmPDIインヒビターの使用を含む処置の寄生虫的および/または好機における投入に有利である。
【0035】
更なる実施態様においては、本発明はLmPDIを特異的に認識する精製抗体を提供する。それらはモノクローナルもしくはポリクローナルのヒト、ヒト化又は動物抗体とすることができる。上記抗体はたとえば実験の項に記載のプロトコールを用いてLmPDI親和性カラム上で精製することができる。上記特異的LmPDI抗体には多くの用途が可能である。
【0036】
それらは、生物学的サンプル中におけるLmPDIの存在の検出、たとえばリーシュマニア症の診断および/またはそのリーシュマニア症の治療のためのLmPDIインヒビターの使用の可能性を決定するために有効である。
【0037】
したがって、本発明はリーシュマニア症を担っている寄生虫による感染を診断するためのインビトロ方法に関する。このような方法は本発明のポリペプチドもしくはタンパク質またはそのタンパク質に向けられた抗体を用い、または上に定義したプローブを使用して実施することができる。
【0038】
本発明の特定の診断方法は以下の工程を含む。すなわち、
・本発明による抗体少なくとも1種を、リーシュマニア症を担っている寄生虫によって部分感染した対象からの生物学的サンプルと接触させて、上記抗体とサンプル中に含まれる抗原性タンパク質との間の免疫複合体を形成させ;
・上記複合体を検出する。
【0039】
複合体は本技術分野の熟練者には周知の任意の手段(酵素反応、蛍光遷移等)を用いて検出することができる。
【0040】
本発明の抗体は上述のプローブまたはプライマーと同様に、診断キットに含ませることができる。
【0041】
上述の方法を実施するための診断キットは本発明の不可欠な部分を形成する。
【0042】
たとえば、そのようなキットは以下の要素から構成することができる。すなわち、
・本発明による抗体少なくとも1種;
・分析サンプル中に含まれる抗原性タンパク質と上記抗体の間の免疫複合体を形成するのに適当な培地;
・そのように形成された複合体の検出を可能にする試薬;
・適宜、対照サンプル
を含み得る。
【0043】
別法として、本発明の抗体は、ある種のリーシュマニア症の予防、緩和または処置を意図された薬剤組成物の部分を形成することができる。
【0044】
本発明の更なる態様においては、本発明は、上述のような本発明のタンパク質および/または組換えポリペプチドおよび/または核酸配列および/またはベクターおよび/または細胞を含む免疫原性組成物であり、その組成物はリーシュマニア寄生虫と接触した個体に由来する単核細胞の増殖をインビトロで刺激することができる。本発明の好ましい免疫原性組成物はLeishmania majorと接触した個体に由来する単核細胞の増殖をインビトロで刺激できる。
【0045】
本発明の免疫原性組成物の好ましい実施態様においては、上記組成物はヒトまたは動物宿主への投与に医薬的に許容される処方を有する。
【0046】
本発明者らは、LmPDIがL majorと接触した個体に由来する単核細胞によるサイトカイン産生のインビトロで誘導を受けやすいこと、およびサイトカインの発現プロフィルはTh1型免疫応答の間に観察される応答に相当することを示した(例3)。ヒトまたは動物宿主に投与した場合にTh1免疫応答を誘導できる上述の免疫原性は、したがって、本発明のとくに好ましい実施態様を構成する。
【0047】
本発明はまた、上述の本発明のタンパク質および/または組換えポリペプチドおよび/または核酸配列および/またはベクターおよび/または細胞を含むワクチンに関する。上記ワクチン組成物はヒトまたは動物宿主をリーシュマニア症に対して保護することを目的とするものである。本発明のワクチン組成物は好ましくはヒトまたは動物宿主への投与のため医薬的に許容されるように処方される。
【0048】
上記ワクチン組成物は皮下もしくは筋肉内のいずれかの経路で患者に注射する液体剤形、経口投与用ワクチンの剤形、ポマードの形態、または本発明のヌクレオチド配列に、たとえば粒子表面上へのDNA吸着によって、結合した粒子の形態とすることができる。最後に挙げた形態は遺伝子銃を用いワクチンとして投与することができる。ここに挙げたワクチン組成物のための処方はその一例として示したのみで、本発明を限定するものではないことに留意すべきである。
【0049】
本発明の免疫原および/またはワクチン組成物はまた、Leishmaniaに関して1または2種以上の異種抗原(単数または複数)および/または上記抗原をコードする1または2種以上の核酸配列(単数または複数)を含んでいてもよい。したがって、本発明の組成物は数種の異なる病原に対する免疫学的反応を誘発することが可能な多価ワクチンであってもよい。
【0050】
ワクチン化方法および活性物質の用量は使用するワクチンのタイプおよびそれが投与される哺乳動物に適合させなければならない。
【0051】
上述の本発明のタンパク質および/または組換えポリペプチドおよび/または核酸配列および/またはベクターおよび/または細胞を含む組成物を、ヒトまたは動物宿主に投与することを含むLeishmaniaに対するワクチン化方法はまた、本発明に包含される。
【0052】
LeishmaniaのビルレンスにおけるLmPDIの役割の決定は企図する寄生虫の増殖を阻害するための活性分子の同定のための新たな戦略を可能にする。PDIを阻害する分子たとえばバシトラシンまたはクロロメルクリベンゼンスルホン酸(pCMBS)は液体培地中でLeishmaniaの増殖を阻害することが示されている(例4)。したがって本発明はまた、上記分子のLmPDIの活性を阻害する能力を評価する工程を含むLeishmania majorの増殖を阻害が期待される分子のスクリーニング方法に関する。一般に、プロテインジスルフィド-イソメラーゼは複数個の活性、とくに酸化-還元、イソメラーゼおよびシャペロン活性を有する。本発明のスクリーニング方法はLmPDIの機能のいずれかを阻害するものである。
【0053】
本発明の特定のスクリーニング方法においては、LmPDIの活性を阻害する能力の評価工程は、以下の工程を含むスクランブルRNアーゼAの再活性化試験において実施される。すなわち、
・スクランブルRNアーゼAをLmPDIの存在下、その再活性化が可能な条件にインキュベートし、
・スクランブルRNアーゼAを、LmPDIによるその再活性化が可能な条件と同一の条件下に、試験する分子を添加してインキュベートし、
・試験分子の不存在下および存在下に得られた結果を比較し、試験分子の存在下におけるRNアーゼAの再活性化の欠如は、上記分子がLmPDI阻害活性を有することを明らかにする。
【0054】
本発明のスクリーニング方法には他の任意のPDI試験、とくにLyles 及び Gilbert(1991)により記載された初期のプロトコールに由来する任意の試験を使用することができる。
【0055】
本発明のスクリーニング方法はまた、液体培地中でLeishmania majorの増殖を阻害する試験を含み、適宜、リーシュマニア症の実験的齧歯類モデルにおけるLeishmania majorの増殖阻害試験を含む。このような方法の例は実験の部、例5に記載される。
【0056】
上に定義された方法によってスクリーニングされた活性分子は、Leishmania majorの増殖を阻害または制御するそれらの能力によって特徴づけられる。
【0057】
例4に示すバシトラシンについて得られた結果は、PDIインヒビターがLeishmaniaの増殖を阻害できることを示している。Leishmaniaによる感染の予防、緩和または処置を目的とする医薬組成物の調製のためのプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)インヒビター1または2種以上の使用はしたがって、本発明の統合部分を形成する。本発明により使用できる抗-PDI活性を有する化合物としては、抗-PDIまたは抗-LmPDI抗体、バシトラシン、亜鉛バシトラシン、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、p-クロロメルクリベンゼンスルホン酸(pCMBS)またはトシン酸(tocinoic acid)を挙げることができる。
【0058】
上述の使用によって調製される組成物は、好ましくは局所的に、経口的にまたは非経口的にヒトまたは動物宿主に投与することができる。
【0059】
特定の態様においては、本発明はリーシュマニア症を担う寄生虫の増殖に対する阻害剤またはLeishmania感染に対する活性物質としてバシトラシンまたは亜鉛バシトラシンの使用に関する。
【0060】
プロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)インヒビター1または2種以上を含有するLeishmania感染の処置のための医薬組成物は明瞭に、本発明の不可欠な部分をなす。このような組成物はとくに、バシトラシンまたは亜鉛バシトラシンを含有することができる。組成物は、局所的適用たとえばクリーム、軟膏、ポマード、またはスプレーの形態に処方することができるが、このリストは限定的なものではない。本発明者らは、BALB/cマウスの寄生虫注射部位にこのような組成物をポマードの形態で局所的に適用し、疾患の進行が緩和されることを示した(例9および図14)。
【0061】
本発明はまた、Leishmania感染の処置のための医薬組成物であって、少なくとも1種のLmPDIに対する特異的抗体および/またはPDI活性を阻害する分子のいずれかを含む組成物に関する。このような組成物は、好ましくは局所的、経口的または非経口的投与に適している。
【0062】
抗体または任意の他種タイプの分子のいずれであろうと、PDIまたはLmPDIインヒビターのヒトまたは動物患者への投与を含むリーシュマニア症の処置方法は、本発明の範囲内に包含される。
【0063】
以下の例および図面は本発明に関連して実施され、本発明の範囲を限定することなくその必要な実験的支持を提供する生物学的実験を説明する。それらはまた、本発明のある種の実施および本発明の重要性を非限定的に例証する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】2種の最もビルレンスの強い単離株(94および67, V)および2種の最もビルレンスの弱い単離株(32および07, v)におけるLeishmania major遺伝子の発現のディファレンシャルディスプレー(DD)解析を示す。 図1Aは、オートラジオグラフィー後における配列決定ゲルの一部であり、任意のデカマー(十量体)およびオリゴdTプライマーを用いてPCRにより増幅した生成物を示す。別個に発現したcDNAは矢印で指示する。P14 cDNAは星印で指示する。 図1Bは、最もビルレンスの強い単離株(94および67, V)および最もビルレンスの弱い単離株(32および07, v)の間でDD法によって同定された遺伝子の発現についてのノーザンブロット解析を示す。定常増殖期にある様々な単離株の前鞭毛体から抽出されたmRNAを放射標識されたプローブp14とハイブリダイズさせた。オートラジオグラフィー後、ブロットを脱ハイブリダイズし、ついでL. majorのα-チューブリン(α-tub)遺伝子に対する特異的プローブと再ハイブリダイズさせた。
【図2】LmPDIのcDNAについてのヌクレオチド配列(配列番号:1)およびそれから推定されたアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。小文字で示すヌクレオチドは非翻訳領域を表す。18 ntのリーダー配列(SL)には下線を付し、ポリアデニル化シグナル配列候補は四角で囲む。ペプチドシグナルの可能性がある配列は太字で示す。LmPDIの活性部位であると考えられる配列には二重の下線を施し、小胞体内に維持されると思われる配列は破線で示す。
【図3】LmPDIのアミノ酸配列と、Trypanosoma brucei (T. brucei, GenBank受入番号:P12865), Hypocrea jecornia (H.Jecornia, 074568), Caemorhabditis elegans (C.elegans, 017908), Chlamydomonas reinhardtii (C.reinhard, 48949),Dorsophila melanogaster (D.melano, P54399), Cryptosporidium parvum(C. Parvum, Q27553)およびHomo sapiens(H. sapiens, P072237)との配列比較(アラインメント)を示す。黒いボックス内の文字は同一のアミノ酸を示し、灰色のボックス内の文字は類似のアミノ酸を示す。「ギャップ」は配列比較した配列間の最大の類似性を得るために挿入し、ダッシュで指示する。配列比較の実施には2種のソフトウエアプログラム、すなわちCLUSTAL Wバージョン1.8ソフトウエア;Thompson JD, Higgins DG 及び Gibson TJ;およびBOXSHADEバージョン3.21;Hoffman K 及びBaron Mを使用した。
【図4】再活性化スクランブルRNアーゼにおける組換えLmPDIの役割の解析を示す。スクランブルRNアーゼA(8μM)を、4.5 mM (cCMP), 1 mMグルタチオンGSH, 0.2 mM グルタチオンジスルフィドGSSH, 2 mM EDTAおよび100 mM Tris-HCl pH 8を含有する緩衝液中、陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)(1.4μM)、陽性対照としてウシプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(1.4μM)、または組換えLmPDI(1.4μM)の存在下に25℃で30分間インキュベートした。RNアーゼAの再活性化は、5分毎に30分間296 nmにおけるRNアーゼAの活性を測定することによって決定した(Lyles 及び Gilbert, 1991)。
【図5】図5Aは、Leishmania major遺伝子におけるLmPDI遺伝子のコピー数についてのサザンブロット解析を示す。L. majorからの単離ゲノム94DNA 8μgを、以下の制限酵素:AvaI, EcoRV, HindIII, PstI, EcoRI, XhoI, NcoI, SacI, SphIによって消化した。星印を付した酵素はLmPDIのcDNA内を1回切断した。 図5Bは、様々なLeishmania種におけるLmPDI遺伝子のサザンブロット解析を示す。ゲノム L. majorのDNA(94)、皮膚親和性L. infantum(L. infantum MC)、viscerotropic L. infantum(L. infantum Visc);L. donovani 8μgを酵素PstIで消化した。ゲノムDNAは、この実験においてLmPDIの全cDNA配列を表すプローブによってハイブリダイズされた。
【図6】抗-LmPDI抗体の様々な調製物によるL. major中のネイティブなLmPDIの免疫検出を示す。総前鞭毛体GLC 94タンパク質20μgを、Laemmli緩衝液中(トラック1)、または0.5 mのDTTの存在下(トラック2)、および大腸菌で製造され精製されたLmPDI(rLmPDI)0.05μgの存在下(トラック3)で電気泳動に付し、ついでニトロセルロース膜に移し、ついで抗-LmPDI免疫血清(トラック1)または親和性カラム上で精製した抗-LmPDI抗体(トラック2および3)により可視化した。
【図7】前鞭毛体からの2種の最もビルレンスの強い単離株(94, 67, V)および2種の最もビルレンスの弱い単離株(32, 7, v)における、LmPDIの発現のウエスタンブロット解析を示す。様々な単離株からの定常増殖期にある総前鞭毛体タンパク質20μgを電気泳動に付し、ついでこれをニトロセルロース膜に移し、ポリクローナル抗-LmPDI抗体の存在下にインキュベートした。矢印(>)は抗-LmPDI血清免疫によって認識される3種のタンパク質を指示する。
【図8】チュニジアの動物寄生虫皮膚リーシュマニア症における生存個体からの単核球の、LmPDI(5μg/mL)とのインキュベーション後の増殖を示す。リンパ単球細胞を回収し、RPM1-PS/Glu培地で3回連続して遠心分離し(30 mLついで10 mLで2回)、ついで計数し、濃度5μg/mLのLmPDIの存在下または不存在下、培地の106細胞/mL濃度でインキュベートした。5日間培養後、トリチウム化チミジンの取り込みによりリンパ球の刺激を評価した。結果はCPMで表す。
【図9】バシトラシンを用いた液体培地中における寄生虫(L. major)増殖阻害試験の結果である。それらはL. majorの前鞭毛体について0, 1 mM,1.5 mMまたは2 mMのバシトラシンの存在下に96時間にわたって記録した増殖曲線である。
【図10】組換えLmPDIのインビトロ活性に対するバシトラシン(BAC)、亜鉛バシトラシン(BACZn)、p-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA)およびトシン酸(TOC)の効果を示す。様々な濃度(0〜2 mM)の阻害剤を用い、インビトロにおいて、スクランブルRNアーゼAを再活性化させるLmPDIの能力に対するPDI阻害剤の効果を追跡した。阻害剤なしでのLmPDIは陽性対照(T)として使用した。
【図11】液体培地中におけるLeishmaniaのインビトロ増殖に対するバシトラシン(BAC)(図11A)、亜鉛バシトラシン(BACZn)(図11B)、5,5'ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNMB)(図11C)およびp-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA)(図11D)の効果を示す。インビトロにおける寄生虫の増殖に対するPDI阻害剤の効果を、様々な濃度の阻害剤(0〜5 mM)を使用して追跡した。阻害剤で処置されなかった寄生虫(T)をこれらの実験のための対照とした。
【図12】バシトラシンおよび亜鉛バシトラシンによるrLmPDIの活性の阻害を示す。バシトラシン(BAC)および亜鉛バシトラシン(BACZn)のrLmPDIの活性に対する効果はインビトロで測定した。様々な濃度(0〜2 mM)のBACおよびBACZnインヒビターを試験し、インビトロにおいて、スクランブルRNアーゼAを再活性化させるrLmPDIの能力に対するそれらの効果を解析した。阻害剤なしでのrLmPDIの活性は陽性対照(T)として使用した。
【図13】GLC94前鞭毛体の増殖の、亜鉛バシトラシン(BACZn)による阻害を例示する。GLC94前鞭毛体の増殖に対する亜鉛バシトラシン(BACZn)の効果はインビトロで測定した。様々な濃度のインヒビターで試験して、寄生虫のインビトロにおける増殖能力に対するそれらの効果を解析した。対照(C)はインヒビターを含まない完全培地中で培養した寄生虫により構成された。
【図14】GLC94単離前鞭毛体で感染させた感受性BALB/cマウスにおける疾患の発症に対する亜鉛バシトラシンの効果を示す。感受性BALB/cマウスをGLC94単離株からの106前鞭毛体で足底パッド(柔らかい部分)に感染させ、バシトラシンで処置し、または処置しなかった。処置は感染9週後に中止した(矢印は処置の中止を示す)。各曲線は単一マウスのサイズにおける変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
(図面の説明)
図1は、2種の最もビルレンスの強い単離株(94および67, V)および2種の最もビルレンスの弱い単離株(32および07, v)におけるLeishmania major遺伝子の発現のディファレンシャルディスプレー(DD)解析を示す。
【0066】
図1Aはオートラジオグラフィー後における配列決定ゲルの一部であり、任意のデカマー(十量体)およびオリゴdTプライマーを用いてPCRにより増幅した生成物を示す。別個に発現したcDNAは矢印で指示する。P14 cDNAは星印で指示する。
【0067】
図1Bは、最もビルレンスの強い単離株(94および67, V)および最もビルレンスの弱い単離株(32および07, v)の間でDD法によって同定された遺伝子の発現についてのノーザンブロット解析を示す。定常増殖期にある様々な単離株の前鞭毛体から抽出されたmRNAを放射標識されたプローブp14とハイブリダイズさせた。オートラジオグラフィー後、ブロットを脱ハイブリダイズし、ついでL. majorのα-チューブリン(α-tub)遺伝子に対する特異的プローブと再ハイブリダイズさせた。
【0068】
図2は、LmPDIのcDNAについてのヌクレオチド配列(配列番号:1)およびそれから推定されたアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。小文字で示すヌクレオチドは非翻訳領域を表す。18 ntのリーダー配列(SL)には下線を付し、ポリアデニル化シグナル配列候補は四角で囲む。ペプチドシグナルの可能性がある配列は太字で示す。LmPDIの活性部位であると考えられる配列には二重の下線を施し、小胞体内に維持されると思われる配列は破線で示す。
【0069】
図3はLmPDIのアミノ酸配列と、Trypanosoma brucei (T. brucei, GenBank受入番号:P12865), Hypocrea jecornia (H.Jecornia, 074568), Caemorhabditis elegans (C.elegans, 017908), Chlamydomonas reinhardtii (C.reinhard, 048949),Dorsophila melanogaster (D.melano, P54399), Cryptosporidium parvum(C. Parvum, Q27553)およびHomo sapiens(H. sapiens, P072237)との配列比較(アラインメント)を示す。黒いボックス内の文字は同一のアミノ酸を示し、灰色のボックス内の文字は類似のアミノ酸を示す。「ギャップ」は配列比較した配列間の最大の類似性を得るために挿入し、ダッシュで指示する。
【0070】
配列比較の実施には2種のソフトウエアプログラム、すなわち:
・CLUSTAL Wバージョン1.8;Thompson JD, Higgins DG 及び Gibson TJ;
・BOXSHADEバージョン3.21;Hoffman K 及び Baron Mを使用した。
【0071】
図4は、再活性化スクランブルRNアーゼにおける組換えLmPDIの役割の解析を示す。スクランブルRNアーゼA(8μM)を、4.5 mM (cCMP), 1 mMグルタチオンGSH, 0.2 mM グルタチオンジスルフィドGSSH, 2 mM EDTAおよび100 mM Tris-HCl pH 8を含有する緩衝液中、陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)(1.4μM)、陽性対照としてウシプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(1.4μM)、または組換えLmPDI(1.4μM)の存在下に25℃で30分間インキュベートした。RNアーゼAの再活性化は、5分毎に30分間296 nmにおけるRNアーゼAの活性を測定することによって決定した(Lyles 及び Gilbert, 1991)。
【0072】
図5Aは、Leishmania major遺伝子におけるLmPDI遺伝子のコピー数についてのサザンブロット解析を示す。L. majorからの単離ゲノム94DNA 8μgを、以下の制限酵素:AvaI, EcoRV, HindIII, PstI, EcoRI, XhoI, NcoI, SacI, SphIによって消化した。星印を付した酵素はLmPDIのcDNA内を1回切断した。
【0073】
図5Bは様々なLeishmania種におけるLmPDI遺伝子のサザンブロット解析を示す。ゲノム L. majorのDNA(94)、皮膚親和性 L. infantum(L. infantum MC)、viscerotropic L. infantum(L. infantum Visc);L. donovani 8μgを酵素PstIで消化した。ゲノムDNAは、この実験においてLmPDIの全cDNA配列を表すプローブによってハイブリダイズされた。
【0074】
図6は、抗-LmPDI抗体の様々な調製物によるL. major中のネイティブなLmPDIの免疫検出を示す。総前鞭毛体GLC 94タンパク質20μgを、Laemmli緩衝液中(トラック1)、または0.5 mのDTTの存在下(トラック2)、および大腸菌で製造され精製されたLmPDI(rLmPDI)0.05μgの存在下(トラック3)で電気泳動に付し、ついでニトロセルロース膜に移し、ついで抗-LmPDI免疫血清(トラック1)または親和性カラム上で精製した抗-LmPDI抗体(トラック2および3)により可視化した。
【0075】
図7は前鞭毛体からの2種の最もビルレンスの強い単離株(94, 67, V)および2種の最もビルレンスの弱い単離株(32, 7, v)における、LmPDIの発現のウエスタンブロット解析を示す。様々な単離株からの定常増殖期にある総前鞭毛体タンパク質20μgを電気泳動に付し、ついでこれをニトロセルロース膜に移し、ポリクローナル抗-LmPDI抗体の存在下にインキュベートした。矢印(>)は抗-LmPDI血清免疫によって認識される3種のタンパク質を指示する。
【0076】
図8は、チュニジアの動物寄生虫皮膚リーシュマニア症における生存個体からの単核球の、LmPDI(5μg/mL)とのインキュベーション後の増殖を示す。リンパ単球細胞を回収し、RPM1-PS/Glu培地で3回連続して遠心分離し(30 mLついで10 mLで2回)、ついで計数し、濃度5μg/mLのLmPDIの存在下または不存在下、培地の106細胞/mL濃度でインキュベートした。5日間培養後、トリチウム化チミジンの取り込みによりリンパ球の刺激を評価した。結果はCPMで表す。
【0077】
図9は、バシトラシンを用いた液体培地中における寄生虫(L. major)増殖阻害試験の結果である。それらはL. majorの前鞭毛体について0, 1 mM,1.5 mMまたは2 mMのバシトラシンの存在下に96時間にわたって記録した増殖曲線である。
【0078】
図10は、組換えLmPDIのインビトロ活性に対するバシトラシン(BAC)、亜鉛バシトラシン(BACZn)、p-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA)およびトシン酸(TOC)の効果を示す。様々な濃度(0〜2 mM)のインヒビターを用い、インビトロにおいて、スクランブルRNアーゼAを再活性化させるLmPDIの能力に対するPDIインヒビターの効果を追跡した。インヒビターなしでのLmPDIは陽性対照(T)として使用した。
【0079】
図11は、液体培地中におけるLeishmaniaのインビトロ増殖に対するバシトラシン(BAC)(図11A)、亜鉛バシトラシン(BACZn)(図11B)、5,5'ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNMB)(図11C)およびp-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA)(図11D)の効果を示す。インビトロにおける寄生虫の増殖に対するPDIインヒビターの効果を、様々な濃度のインヒビター(0〜5 mM)を使用して追跡した。インヒビターで処置されなかった寄生虫(T)をこれらの実験のための対照として選択した。
【0080】
図12は、バシトラシンおよび亜鉛バシトラシンによるrLmPDIの活性の阻害を示す。バシトラシン(BAC)および亜鉛バシトラシン(BACZn)のrLmPDIの活性に対する効果はインビトロで測定した。様々な濃度(0〜2 mM)のBACおよびBACZnインヒビターを試験し、インビトロにおいて、スクランブルRNアーゼAを再活性化させるrLmPDIの能力に対するそれらの効果を解析した。インヒビターなしでのrLmPDIの活性は陽性対照(T)として使用した。
【0081】
図13は、GLC94前鞭毛体の増殖の、亜鉛バシトラシン(BACZn)による阻害を例示する。GLC94前鞭毛体の増殖に対する亜鉛バシトラシン(BACZn)の効果はインビトロで測定した。様々な濃度のインヒビターで試験して、寄生虫のインビトロにおける増殖能力に対するそれらの効果を解析した。対照(C)はインヒビターを含まない完全培地中で培養した寄生虫により構成された。
【0082】
図14は、GLC94単離前鞭毛体で感染させた感受性BALB/cマウスにおける疾患の発症に対する亜鉛バシトラシンの効果を示す。感受性BALB/cマウスをGLC94単離株からの106前鞭毛体で足底のパッド(柔かい部分)に感染させ、バシトラシンで処置し、または処置しなかった。処置は感染9週後に中止した(矢印は処置の中止を示す)。各曲線は単一マウスのサイズにおける変化を示す。
【0083】
(実施例)
以下の例に示す実験結果は、以下の材料および方法を用いて得られた。
寄生虫および培養条件
本試験に使用したL. major単離株は、例1に要約した試験の際に得られたヒトZCLの病変に由来した。寄生虫はNNN培地(アガロースおよびウサギ血液ベースで調製した固体培地)中26℃で培養し、2 mM L-グルタミン、100 U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%の脱活性化ウシ胎児血清を含有するRPMI(SIGMA, St. Louis, MO)(完全培地)中に暫時移した。対数増殖期にある前鞭毛体を一定容量の完全培地中106寄生虫/mLに調整し、26℃でインキュベートした。定常増殖期には4〜6日後、3×107〜8×107寄生体の寄生体密度で到達した。定常増殖期にある前鞭毛体をRNAおよびタンパク質の抽出に使用した。
【0084】
RNAの抽出およびディファレンシャルディプレー
「TRIZOL」試薬(Gibco-BRL)を用いて総DNAを抽出した。ポリA+RNAは「ポリA+RNA単離キット」(Amersham-Pharmacia)を用いるオリゴdT/セルロースカラムに製造業者の指示に従い通過させて精製した。200 ngのmRNAを、1μMオリゴ (dT )11MNプライマー(M=AもしくはCもしくはGおよびN=AもしくはCもしくはGもしくはT(Genset))、1×First Strand Buffer(Gibco-BRL)、5μM dNTP(Amersham-Pharmacia)、10 UのRNAsin(Promega)および200 Uの逆転写酵素(Gibco-BRL)を含む20μLとともに逆転写反応に使用した。
【0085】
37℃で1時間インキュベートしたのち、5分間95℃でインキュベートして反応を停止させた。12オリゴdTおよび10の任意のデカマーの組み合わせを用いるPCRによってcDNAを増幅した。PCRは、2μLの逆転写反応、0.2μMの5'プライマー、1μMの3'プライマー、2μMのdNTP、ATPの10μCi [α35S]、1×Taq DNAポリメラーゼ反応緩衝液および1U Taqポリメラーゼ(Amersham Pharmacia)を含む20μL容量中で実施した。
【0086】
反応混合物にPerkin-Elmer 9600サーモサイクラー中、94℃30秒、40℃60秒および72℃30秒で40サイクル、ついで72℃6分間1サイクルのインキュベーションを実施した。PCR産物を6%アクリルアミド配列決定ゲル上で解析した。ゲルをWhatmann 3MMろ紙上で真空乾燥し、オートラジオグラフィーに付した。別個に発現したcDNAをゲルから切り取り、溶出し、上述の条件下に同一のオリゴヌクレオチドの存在下にPCRで再増幅した。増幅産物を、ブラント末端PCRクローニングキット(Amersham-Parmacia)を使用し製造業者の指示に従ってpMOSblueベクターにクローニングした。Sequencing Ready Reactionキット(Perkin-Elmer)を用いて、クローン化された断片を配列決定し、ABI 377自動シーケンサーを用いて解析した。
【0087】
ノーザンブロット解析
定常増殖期の間に4種のL majorより単離したプロマスティゴートから抽出したmRNA 200 ngを変性し、1.2%アガロース/2.2 Mホルムアミドゲル上で分離し、毛細管により「Hybond N+」(Amersham-Pharmacia)膜上に移した。核酸をついで80℃に2時間加熱して固定した。別個に発現したcDNA断片およびα-チューブリンをMegaprime DNA標識システムキット(Amersham-Pharmacia)を用いて [α32P]dCTPで標識した。ハイブリダイゼーションは1×Denhardt's/6×SSC/ 0.1%SDS/0.1 mg・mL-1サケ精子溶液中65℃で一夜実施した。膜を0.1×SSC/ 0.1%SDS含有溶液中65℃で洗浄し、オートラジオグラフィーに付した。
【0088】
cDNAライブラリーの構築およびLmPDI cDNAの特性決定
cDNAライブラリーは、ZAPIIベクター中最もビルレンスの強い株(GLC94)から製造業者(Stratagene)の指示に従って、前鞭毛体のmRNA 5μgから構築した。6×106分解プラークを、Megaprime標識システムキット(Amersham Pharmacia)を用い、[α32P] dCTPで標識したp14プローブによりスクリーニングした。興味ある分解プラークを分離し、再度スクリーニングして夾雑クローンから陽性クローンを単離した。陽性クローンをついで配列決定した。
【0089】
サザンブロット解析
最もビルレンスの強い株GLC94からの前鞭毛体より抽出したゲノムDNA 10μgを、図5に指示した制限酵素によって消化し、0.6%アガロースゲル上で解析し、ついでHybond N+(Amersham-Pharmacia)膜上に移動した。この膜を[α32P] dCTPで放射標識し、LmPDIの全cDNAクローンに相当するプロ−ブの存在下にインキュベートした。ついで膜を0.1×SSC/ 0.1%SDS含有溶液で洗浄し、オートラジオグラフィーに付した。
【0090】
大腸菌BL21株における組換えタンパク質LmPDIの発現および精製
ペプチドシグナルをコードする配列を除くLmPDI(1371 bp)のcDNAのオ−プンリーディングフレームに相当する配列を、細菌発現ベクターpET-22b(Novagent)にクローニングした。組換えプラスミド(pET-22b-LmPDI)を含む大腸菌BL21株をLB培地中で培養し、ついで1 mMのイソプロピル-1-チオ-D-ガラクトピラノシド(IPTG)の存在下に組換えタンパク質の合成を誘導した。組換えタンパク質LmPDI-(His)6(配列番号:4)をニッケルカラム(Ni2+)(Amersham Pharmacia)上、親和性クロマトグラフィーにより精製した。産生したタンパク質の純度はSDS-PAGEによって確認した。
【0091】
ポリクローナル抗-LmPDI抗体の製造およびイムノブロットによるネイティブなタンパク質の発現の解析
不完全フロインドアジュバント(IFA, Sigma)(v/v)中乳化精製組換えLmPDI 500μgの筋肉内注射によりウサギを免疫処置した。ウサギにはさらに2回500μgの組換えタンパク質を注射した。最初の注射後15日にまず筋肉内に、第二に30日後に皮内に注射した。最後の注射後10日にウサギを出血させ、血清を収穫し、−80℃に保持した。前鞭毛体からのタンパク質分解物をLaemmli IX緩衝液中100℃に10分間加熱して変性させ、12%SDS-アクリルアミドゲル上に置き、ニトロセルロース膜(Millipore)上に電気移動させた。膜を飽和PBS/0.1%/Tween 20/3%スキムミルク溶液中常温で1時間、ついで1000倍に希釈した抗-LmPDI抗体を含有する同一の溶液中4℃で一夜インキュベートした。PBS/0.1%/Tween 20で3回洗浄後、ペルオキシダーゼ(Amersham-Pharmacia, 1/1000に希釈)とカップリングした二次ウサギ抗-IgG抗体の存在下、膜を常温で1時間インキュベートし、PBS/0.1%/Tween 20中で3回洗浄した。「ECLシステム」キットを製造業者(Amersham-Pharmacia)の指示に従って使用し、ペルオキシダーゼの活性を検出することにより、タンパク質-抗体の複合体が明らかにされた。
【0092】
スクランブルRNアーゼAの調製
20 mgの精製リボヌクレアーゼ(RNアーゼA)を、0.15 MのDTT, 6 Mのグアニジン-HClおよび0.1 MのTris-HClを含有するpH 8.6の緩衝液中常温で18時間インキュベートしたのち、0.01 M HClで平衡化したSephadex G-25カラム上で精製した。スクランブルRNアーゼAの濃度を、275 nmにおいて9200M-1 cm-1の吸光係数を用いて決定した。それらの分画は−80℃で2週間保存した。
【0093】
組換えLmPDIタンパク質の存在下におけるRNアーゼAの再活性化
スクランブルRNアーゼA(8μM)を、4.5 mMのcCMP, 1 mMのグルタチオンGSH, 0.2 mMのグルタチオンジスルフィドGSSH, 2 mMのEDTAおよび100 mMのTris-HCl pH 8を含有する緩衝液中、陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA, 1.4 μM)、陽性対照としてプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(1.4 μM)または組換えLmPDI(1.4 μM)の存在下に25℃で30分間インキュベートした。RNアーゼAの再活性化は文献(Lyles 及びGilbert, 1991)に記載されているように5分毎に296 nmにおけるRNアーゼAの活性を測定することにより決定した。
【実施例1】
【0094】
様々なビルレンスのレベルを有するL. major単離株の選択
この試験に使用したL. major単離株は、1994-1995年に Tunisia南部の El Guettarで行われた予想試験(Louzir, Melbyら, 1998)の間に得られたヒトZCL病変に由来するものであった。それらは、感受性BALB/cマウスの実験的感染時におけるそれらの病原性に基づき19の単離株から選択された。すなわち様々の単離株からの前鞭毛体2×106をBALB/cマウスの後足底パッド(柔らかい部分)に注射し、病変の進行を6週間、毎週観察した。感染後5週目に、寄生虫からの抗原によってインビトロで活性化されたリンパ神経節の単核球細胞によるIL-4およびIFN-γの産生が測定された。
【0095】
これらの実験は、第一に様々なL. major単離株によって誘導される疾患の進行における大きな不均一性、および第二に単一の単離株を用いると再現性ある結果が得られることを示した。
【0096】
最もビルレントな株は感染5週後に、インビトロで、最大量のIL-4を誘導し、IFNのレベルは最低であった。
【0097】
L. majorによる感染の臨床的な発現は株に依存して変動し、BALB/c感受性マウスの実験的感染モデルにおけるそれらの各株内で再現性を有するとの観察から、本発明者らは、最もビルレンスの高い単離株を最もビルレンスの低い単離株と比較した場合、ビルレンスに関与する遺伝子は異なる発現ができるという仮説を考えた。LPG1, LPG2, KMP-11, Cpc, Cpb, Hsp100, Gonc Bおよびgp63を含む、他の著者により既に記載され、寄生虫のビルレンスと関連づけられている遺伝子群の発現の予備的解析を、逆転写法および定量的遺伝子増幅により実施した。この解析では、BALB/cマウスにおいて異なる病原性を発現するL. major単離株(Kebaier, Louzierら, 2001)の間に何らの差も示さなかった。
【0098】
重篤な病変を誘発し、急速に進展し、最もビルレンスの強い単離株の代表とした2種の単離株、MHOM/TN/94/GLC94およびMHOM/TN/94/GLC67(それぞれGLC94およびGLC67)、ならびに重篤度のより低い実験的疾患を誘発する、ビルレンスのより弱い単離株を代表する2種の単離株、MHOM/TN/94/GLC07およびMHOM/TN/94/ GLC32(それぞれGLC07およびGLC32)を、株に依存して様々なレベルで発現する可能性があるビルレンス遺伝子の探索を継続するために選択した。
【実施例2】
【0099】
天然の寄生虫ビルレンスに関与するLeishmania majorのLmPDIの新規なプロテインジスルフィドイソメラーゼのディファレンシャルディスプレー同定
【0100】
1−L. majorのビルレントな単離株およびビルレンスの低い単離株で異なる発現をする遺伝子の同定
最初にmRNAを、2種の高度にビルレントな単離株(GLC94およびGLC67)ならびに2種のビルレンスの低い単離株(GLC32および07)からの前鞭毛体より精製し、ついでオリゴ (dT)11MNプライマー(式中M=AもしくはCもしくはGおよびN=AもしくはCもしくはGもしくはT)を用いてcDNAに逆転写した。異なるディスプレー実験時に用いたプライマーは次の通りとした:
【0101】
増幅反応は逆転写反応時に使用したオリゴ(dT)プライマーと同じプライマーを用いるPCRによって実施し、これに科学文献(Liang 及び Pardee, 1992; Liang, Bauerら, 1995; Heard, Lewisら, 1996)に記載されたのと同じ10個の任意のプライマーを混合した。
【0102】
合わせて60のプライマーの組み合わせを製造し、解析した。様々な組み合わせのプライマーを用いた増幅産物のポリアクリルアミドゲル解析は、L. major由来の様々な単離体由来の遺伝子(高度なビルレンスおよび低いビルレンス)が約95%の例で同じmRNAを同等なレベルで発現することを示した。単独で考慮すると、25のメッセンジャーが高度なビルレンスおよび低いビルレンスの単離株の間に別個に発現するように思われる(図1A)。別個に発現したcDNAは最初アクリルアミドゲルから単離され、ついで最初のPCR時に用いられたのと同じプライマーの組み合わせを使用して再増幅し、最後にpMOSベクター中にクローン化した。異なるクローンの配列決定により、それらのうちのいくつかは同一であることが明らかにされた。
【0103】
プローブとして別個に発現した14の断片を用いるノーザンブロットによるL. majorの異なる単離株からのmRNAの解析から、14の単離株中3つのクローンが、高度なビルレンスおよび低いビルレンスの単離株の間で別個の発現を示すことがわかった。これらのクローンの一つ、p14はノーザンブロットによってその特性が明らかにされた。クローンp14に相当するプローブはサイズ約2.2 kbの転写体と特異的にハイブリダイズし、これは2種のビルレンスの最も弱い単離株に比較して2種の最もビルレンスの強い単離株において優先的に発現した(図1B)。これは示差ディスプレー法により得られる結果を確認する。クローンp14は完全に配列決定され、このクローンのサイズは339 bpである。この断片のヌクレオチド配列とデータベース(GenBank 及び EMBL)に記載された配列の比較では有意なホモロジーを示す配列は同定されなかった。これは、p14クローンがメッセンジャーの非翻訳3'末端領域に相当するという事実によるものと思われる。
【0104】
2−全cDNA p14配列のクローニングおよび解析
p-14クローンに相当する全cDNA配列を単離するために、339 bp断片を用いてGLC94単離株の前鞭毛体のcDNAバンクをスクリーニングした。2つの陽性クローンを解析した6×105組換えクローンから単離した。図2は、2094 bpである最長のクローンのヌクレオチド配列を示す(配列番号:1)。このクローンは477個のアミノ酸(aa)ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する。理論的分子量は52.4 kDa, 等電点は5.22である。このタンパク質のN-末端領域は小胞体への輸送に関与するペプチドシグナルと思われるもの(20 aa長)に相当する。非翻訳5'領域はLeishmaniasに特徴的なスプライスリーダー配列を含有し、非翻訳3'領域はポリアデニル化部位と思われるものが先行するポリAテールを含有する。
【0105】
単離されたクローンのペプチド配列は、数種のプロテインジスルフィドイソメラーゼファミリー(PDIおよびErp)のタンパク質と27〜36%の同一性を示した。さらにこのタンパク質は残基47〜52および381〜386に2つの領域を含有し、これらはPDI, Erpおよびチオレドキシンファミリーからのタンパク質の活性部位と思われるもの(Cys- Gly-His-Cys, またはCGHC)と同一である。C-末端部位は、残基474〜477におけるKDEL型の小胞体(EEDL)中に保持するためのシグナルと思われるものを示し、PDIおよびERPと同様に、このタンパク質は小胞体の内腔に見出されることが示唆される。したがって、P14はL. majorプロテインジスルフィドイソメラーゼファミリーである。それはLmPDIと命名された(図2および3)。
【0106】
記載したプロテインジスルフィド-イソメラーゼの大部分について証明されているように、LmPDIがオキシド-リダクターゼチオジスルフィド活性を有するか否かを決定するため、組換えタンパク質LmPDIが変性RNアーゼAを再生する能力を試験した。組換えLmPDIタンパク質は大腸菌内で合成し、ついで精製し、インビトロでRNアーゼを再活性化させる試験に使用した。得られた結果は、LmPDIが対照として使用したウシPDIの場合と同様にRNアーゼA活性を回復できることを示している。
【0107】
LmPDIをコードする遺伝子のコピー数を決定するため、本発明者らは32P標識LmPDIのcDNA断片をプローブとして使用するサザンブロット型ハイブリダイゼーションを実施した。得られた結果は一般に、LmPDIのcDNA内に切断部位を有する酵素を除いて単一のバンドを示した(図5A)。したがって、LmPDIをコードする遺伝子はおそらく、L. majorのゲノム中に、単一コピーとして存在するものと思われる。LmPDIの遺伝子は試験された様々なLeishmania種(Leishmania infantum, dermotropic, viscerotrope, Leishmania donovani)で保存されているものと思われる(図5B)。
【0108】
3−LmPDI発現のイムノブロット解析
ネイティブなタンパク質の発現を特性決定するため、大腸菌中で合成し、親和性クロマトグラフィーで精製した組換えLmPDIタンパク質によりウサギを免疫処置した。イムノブロットを用いて、本発明者らは、得られた抗-LmPDIポリクローナル抗体がGLC94の定常増殖期における前鞭毛体からの分解物中に期待されるサイズ(55 kDa)のタンパク質を強力に認識することを示した(図6)。さらに2種の他のタンパク質が検出された。最初のタンパク質は分子量105 kDa(LmPDIの約2倍に相当)を有し、第二のタンパク質は分子量約35 kDaであった。105 kDaのタンパク質がLmPDIのダイマーに相当することを確証するため、GLC 94前鞭毛体分解物を高濃度のDTT(0.5 mM)の存在下に解析した。これらの条件下には、抗-LmPDIは105 kDaのタンパク質をもはや検出しなかった。これらの結果は、LmPDIがオリゴマーへと組織化されることを示唆している。35 kDaのタンパク質は夾雑物と考えられる。事実、親和性カラム(Sephadex 4B- LnPDI)カラム上で精製された抗-LmPDIでは、35 kDaのタンパク質は、もはや認識されなかった(図6)。
【0109】
最もビルレンスの強い単離株と最もビルレンスの弱い単離株の間でLmPDIの発現レベルを比較するため、前鞭毛体タンパク質を抽出し、ついで定常増殖期で定量した。5μgのタンパク質を12%ポリアクリルアミド-SDSゲル上で解析し、ニトロセルロース膜に移した。抗-LmPDI抗体を使用するウエスタンブロットにより、LmPDI(55 kDa)およびそのダイマー(105 kDa)が、最もビルレンスの高い単離株でより大量に発現することが示された(図7)。これに対し、35 kDaの夾雑タンパク質は試験株には無関係に同等に発現された。これらの結果は、LmPDIの発現レベルと試験した単離株の病原力との間の相関を示唆する。
【実施例3】
【0110】
活性病変またはZCL前駆体を有する個体からの、単核球細胞のインビトロ増殖のLmPDIによる誘導
寄生虫感染ステージの間のその高い発現により、L. majorのLmPDIは、細胞免疫応答の標的となる可能性がある。この仮説の適切性を確証するため、細胞性免疫応答を誘導するLmPDIの能力を、活性病変またはZCL前駆体を有する個体から得られる単核球細胞の増殖に対する実験手段によって評価した。
【0111】
この試験は、寄生虫からの総抗原に対する細胞増殖試験(SLA、以前の寄生虫との接触を指示する試験)の結果が分かっていた、El Guettar(南チュニジア)在住の37例の個体に実施した。これらの個体は次のように分割した:
グループ1:SLA試験陰性の8個体
グループ2:SLA試験陽性の29個体
リンパ球および単球を含む単核球細胞を、末梢血からFicoll/Hypaque勾配(Pharmacia, Uppsala, Sweden)上、遠心分離によって分離した。
結果(図8)は、免疫個体での有意な増殖を示す。
【0112】
PBMC培養上清中のサイトカイン(IFN-β, IL-4)は単核球細胞を同濃度のLmPDIと48時間インキュベートし、ヒト抗-IL-4および抗- IFN-βモノクローナル抗体(Pharmingen, San Diego, CA)を用いるELISAによりアッセイすることにより、誘導した。
【0113】
これらの結果は、個体のわずかなサンプルから得られた。これらの結果は、LmPDIにより刺激した細胞からの上清中のIL-4の不存在及びIFN-βの存在を明確に示す。
この結果はLmPDIがLeishmaniaに対するワクチン候補を構成することを指示する、主としてTh1型の応答を示している。
【実施例4】
【0114】
液体培地中PDI阻害剤の存在下におけるLeishmania majorの増殖阻害
バシトラシンは既知のPDI阻害剤である。バシトラシンを使用した実験では、2 mMの最終濃度において、バシトラシンは液体培地中L. major寄生体の増殖を完全に阻害した(図9)。これらの実験は以下の実験条件下に実施した:
【0115】
a)スクランブルRNアーゼAの調製
精製したリボヌクレアーゼ(RNアーゼA)20 mgを、0.15 MのDTT, 6 Mのグアニジン-HClおよび0.1 MのTris-HClを含有するpH 8.6の緩衝液中、常温で18時間還元し、変性させたのち、0.01 M HClで平衡化したSephadex G25カラム上で精製した。スクランブルRNアーゼA分画の濃度は275 nmにおける吸光係数9200 M-1 cm-1の補助により決定した。分画は−80℃で2週間保存した。
【0116】
b)組換えLmPDIタンパク質の存在下におけるRNアーゼAの再活性化
スクランブルRNアーゼA(8μM)を4.5 mMのcCMP, 1 mMのグルタチオンGSH、0.2 mMの酸化グルタチオンジスルフィドGSSH、2 mMのEDTAおよび100 mMのTris-HCl, pH 8を含有する緩衝液中、陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)(1.4μM)、陽性対照としてプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(1.4μM)、または組換えLmPDI(1.4μM)の存在下に25℃で30分間インキュベートした。RNアーゼAの再活性化はRNアーゼA活性を文献(Lyle 及び Gilbert, 1991)に記載されたように、30分にわたり5分毎に296 nmで測定することにより決定した。
【0117】
c)様々なPDI阻害剤による組換えLmPDIのチオジスルフィドオキシド-リダクターゼ活性阻害のインビトロ試験
組換えLmPDIに対するチオジスルフィドオキシド-リダクターゼ活性阻害試験の実験条件は、反応を下記のPDI阻害剤0.01 mM, 0.1 mM, 0.5 mMおよび2 mMの存在下に実施することを除いて、「組換えLmPDIタンパク質の存在下におけるRNアーゼAの再活性化」の項に記載の条件と厳密に同一であった。阻害剤は、
バシトラシン;
・亜鉛バシトラシン;
・p-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA);
・トシン酸であった。
【0118】
d)寄生虫(L. major)増殖の液体培地中における阻害
液体培地中Leishmaniaのインビトロ増殖に対するバシトラシン(BAC)、亜鉛バシトラシン(BACZn)、p-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA)および5,5'-ジチオビス (2-ニトロ安息香酸)(DTNB)の効果を測定する目的で、上に引用した阻害剤の様々な濃度、0 mM, 0.05 mM, 0.1 mM, 0.2 mM, 0.5 mM, 1 mM, 1.5 mM, 2 mM, 2.5 mMおよび5 mMを、5%のウシ胎児血清を補充し、対数増殖期の寄生虫2×106/mLを含有するRPMIに添加した。寄生虫を26℃でインキュベートし、96時間にわたり24時間毎に計数した。寄生虫はMallassezセル上で計数した。
【実施例5】
【0119】
Leishmania majorの増殖を停止させる能力に関するLmPDI阻害分子の評価
LeishmaniaのビルレンスにおけるLmPDIの役割に関する評価は、企図されたLeishmaniaの処置に活性な分子を同定する新規な戦略を可能にする。バシトラシン以外でそれらの抗-PDI活性が知られている分子は、多分、寄生虫の増殖を阻害できる。Leishmaniaに対する有効性が考えられる分子を評価するプロトコールの一例をここに示す。
【0120】
それらの抗-PDI活性が既知の分子または新たに同定される分子の評価は3工程で実施することができる。第一の工程では、大腸菌で産生された組換えLmPDIタンパク質に対してインビトロで試験する。ついで、液体培地中において、寄生虫の増殖を阻害する試験を実施し、分子は最後にLeishmaniaの実験的齧歯類モデルで試験される。
【0121】
1−組換えLmPDIの阻害の評価。LmPDIのPDI活性を解析するための技術の詳細は、上述の実施例2ならびに材料および方法の項に記載した。既知のまたは今後同定される一部のPDI阻害剤の能力を評価するためには、同様の技術を様々な濃度の阻害剤候補をその反応容量に添加することにより、使用することができる。結果は、緩衝液単独と比較した阻害百分率として表す。有意な用量依存性のLmPDI阻害活性を有する分子のみの評価が維持される。
【0122】
文献に記載された様々なPDI阻害剤がLmPDIのチオ-ジスルフィドオキシド-リダクターゼ活性を阻害するか否かを決定する目的で、これらの阻害剤の、大腸菌で合成され、ついで精製されたLmPDIの酵素活性を遮断する能力を、様々な濃度でのインビトロ試験で検討した。阻害剤は:
・バシトラシン;
・亜鉛バシトラシン;
・p-クロロメルクリ安息香酸(pCMBA);
・トシン酸であった。
【0123】
得られた結果は図10に示す。結果はLmPDI活性が0.01 mMのpCMBAおよび2 mMのバシトラシンまたは亜鉛バシトラシンの存在下に完全に阻害されることを示す。これに対してトシン酸は、使用した濃度(ヒトPDIの活性を完全に阻害する濃度)でLmPDIの活性にはあまり大きな作用を示すようには見えなかった。
【0124】
2−液体培地中における寄生虫(L. major)の増殖阻害。試験分子を、その物理化学的性質(水性溶液または有機溶媒中の溶解度)に依存する適当な溶媒に溶解した。すべての場合、溶媒単独を対照として使用した。一例としては、実験はGLC94 L. major単離株について実施することができた。培養培地の組成は上述した(実施例2ならびに材料および方法の項)。培養体は26℃でインキュベートし、寄生虫を定常増殖期に維持するため規則的に再刺激した。一部の実験では、前鞭毛体-様段階の寄生虫を使用した。この場合、定常増殖期の寄生虫(前鞭毛体)を遠心分離し、培地をpH 5.0に調整し、ウシ胎児血清(FCS)を補充したSchneider Drosophila培地で置換した。ついで培養液を5%CO2下35℃でインキュベートした。
【0125】
L. major前鞭毛体の増殖阻害は、対数増殖期に採取した寄生虫について、初期濃度を完全培地中106寄生虫/mLに調整し、様々な濃度の試験分子の存在下または不存在下に96-ウエル培養プレート中100μL/ウエルの量をインキュベートした。寄生虫は5%CO2中26℃でインキュベートし、24時間毎に96時間にわたり計数した。寄生虫の計数はMallassezセル上で行った。別法として、ヘモサイトメーターも使用できた。測定はすべて三重に実施した。分子の阻害能は、対照と比較して細胞の分裂を50%低下させる阻害濃度として測定した(IC50)。
【0126】
アマスティゴートの生存能の低下は、生存能/増殖インディケーターとしてAlmar Blueを用いる蛍光試験を用いて評価した。
【0127】
(1−)の段落に記載のPDI阻害剤は、寄生虫のインビトロ増殖を阻害する能力を評価する目的で試験した。この目的には、対数増殖期における寄生虫2×106/ mLを含むRPMIを様々な量添加した。寄生虫は26℃でインキュベートし、24時間毎に96時間にわたって計数した。寄生虫はMallassezセル上で計数した。得られた結果は図11に示す。バシトラシン、亜鉛バシトラシンまたはpCMBAはそれぞれ5 mM, 2 mMおよび0.5 mMの濃度でLeishmaniaの増殖を完全に阻害した。これに対し、5,5'-ジチオビス(2)ニトロ安息香酸(DTNB)は使用した濃度(ヒトPDIの活性を完全に阻害する濃度)ではLeishmaniaの増殖に対して大きな影響は示さなかった。
【0128】
3−L. majorによる感受性BABL/cマウスの実験的感染モデルにおける、予め選択された阻害剤の効果の評価。インビボ実験は試験分子の毒性および物理化学的性質に依存する。BABL/cマウスは定常増殖期の間に得られた106 L. majorプロマスティゴートを右後肢足底のパッド(柔らかい部分)に注射して(50μLの容量)感染させた。病変の直径は毎週、スライディングカリパスで測定した。
【0129】
全部で3つの治療プロトコールが場合に応じて適用される。
・十分に分散し、毒性は軽度または無毒性の疎水性分子については、生成物は様々な濃度および様々なスキームで腹腔内に注射される。注射の頻度は分子の生物学的利用性およびその半減期に依存する。すべての場合、プロトコールは、感染後6週の終わりに停止させる。
・水溶性で、毒性の比較的高い分子については、注射は病変部位(一般に活性用量は10に分割することができる)の硬化領域に、少なくとも4回の注射により行う。
・脂溶性分子については実験的病変部にポマードを週毎に適用して試験する。
【0130】
全体として、試験生成物の投与様式に関係なく、2種のプロトコールが実施された。
・寄生虫の注射直後に開始するプロトコール;
・寄生虫の注射4〜5週後、病変がすでに確立した時点で開始するプロトコール。
【0131】
すべての場合、プロトコールの最後にマウスを屠殺し、寄生虫負荷量の推定を注射部位および病変を流出させる神経節で実施した。
【実施例6】
【0132】
Leishmaniaによる齧歯類マクロファージのインビトロ感染
齧歯類骨髄マクロファージ(MBMM)を雌性BALB/cマウスの大腿骨または頚骨から押出した骨髄から得た。MBMMは多重チャンバープレート中、ウエルあたり1.5×103細胞量を500μLの完全培地中で培養した。MBMMの増殖および成熟を刺激するため、培養培地に、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)のソースとして20%のL-929ファイブロブラストで調節した培地を補充した。37℃および5%CO2で6日間培養したのち、培地を除去し、MBMMを洗浄し、10%ウシ胎児血清を含むが、L-929ファイブロブラストにより調節した培地は含まない新鮮なRPMIを添加した。
【0133】
病変中の前鞭毛体を分別遠心分離によって非潰瘍病変部から精製し、トリパンブルーウイルス株を用いて計数した。これらの寄生虫を用い、マクロファージあたり4個の最終寄生虫比でMBMMに感染させた。寄生虫の添加2時間後にマクロファージをPBSで5回洗浄し、非貪食性前鞭毛体を除いた。ついで培養体を95%空気および5%CO2中37℃でインキュベートした。実験は、30分、2, 24および72時間の様々な時点で実施した。指示した時間にウエルをPBSで濯ぎ、カバーを除き、感染マクロファージを常温で1時間エタノールにより固定した。ついでプレートを洗浄し、Giemsaで染色して感染を追跡した。
【0134】
細胞が十分に分散され、寄生虫の計数を容易にした各ウエルの中央で感染マクロファージを計数した。プレートのこのレベルでの寄生虫/マクロファージ比は4以上と計数された。
【実施例7】
【0135】
プロテインジスルフィド-イソメラーゼ阻害剤による組換えLmPDIの酵素活性の阻害
数種のプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)阻害剤が文献に記載されている(Ryserら, 1994, Orlandi 1997, Mouら, 1998)。これらの中で、バシトラシンおよび亜鉛バシトラシンはBacillus subtilisおよびBacillus lichenformisによって産生されるポリペプチド抗生物質の複合体を構成する。バシトラシンAは少なくとも9種のバシトラシンの混合物である市販のバシトラシンの主要な化合物である。この抗生物質は多くのグラム陽性菌壁の合成を阻害できるが、また多くのプロテアーゼたとえばPDI, トランスグルタミナーゼ、パパイン、およびニューロペプチダーゼの活性も阻害する。それらのプロテアーゼの大部分はその活性部位にシステイン残基を有する。
【0136】
第一工程では、本発明者らは、インビトロで組換えLmPDI(rLmPDI)の酵素活性を変化させるこれらのインヒビターの能力を確証するため、これらのインヒビターの効果を試験した。
【0137】
LmPDIの活性を証明するために、上述のスクランブルRNアーゼ法(Lyles 及びGilbert, 1991)を用いた。20 mgのRNアーゼA(Amersham-Pharmacia)を、0.15 Mのジチオスレイトール、6 Mの塩酸グアニジンおよび0.1 MのTris-HClからなるpH 8.6の緩衝液中、常温で18時間変性させた。ついで、スクランブルRNアーゼを、HCl 0.01 M中に平衡化したSephadex G25カラム上で精製し、275 nmにおいてスペクトロフォトメトリーによって定量した。
【0138】
グルタチオンベースの還元緩衝液中、PDIはスクランブルRNアーゼの正常化を触媒する(Gilbert, 1998)。RNアーゼ活性の回復は、基質としてシチジン2'-3'-サイクリックモノホスフェート(cCMP)の存在下、スペクトロフォトメトリーによって測定した。8μMのスクランブルRNアーゼを単独で、または1.4μMのウシ血清アルブミン(BSA)もしくは1.4μMのrLmPDIの存在下に、4.5 mMのcCMP, 1 mMの還元グルタチオン(GSH)、200 μMの酸化グルタチオン(GSSG)、2 mMのEDTAおよび100 mMのTris-Clを含むpH 8の緩衝液と混合した。反応は常温で30分間実施した。RNアーゼの正常化から生じるcCMPの加水分解は、30分の反応について5分毎に296 nmの吸収を測定して記録した。
【0139】
組換えLmPDI(rLmPDI)の活性を、様々な濃度のバシトラシン(BAC 0.01 mM〜2 mM)および亜鉛バシトラシン(BACZn 0.01 mM〜2 mM)の存在下に測定した。結果は図12に示す。
【0140】
これらの結果は、バシトラシンおよび亜鉛バシトラシンが類似の効果を有することを示している。これら2種の生成物の存在下には、0.1 mMで50%の阻害、0.5 mMで70%の阻害、2 mMで100%の阻害が観察された。rLmPDIを阻害する濃度は、他の種からのPDIに対するインヒビターとして文献に記載された値に匹敵する。
【実施例8】
【0141】
亜鉛バシトラシンの存在下におけるL. major前鞭毛体のインビトロ増殖キネティクス
ついで本発明者らは、L. major前鞭毛体のインビトロ増殖キネティクスに対する亜鉛バシトラシンの作用を試験した。この試験では亜鉛バシトラシンのみを試験した。それは、第一に亜鉛バシトラシンが、バシトラシンと同じrLmPDI酵素活性阻害プロフィルを有し、第二に亜鉛とカップリングさせた場合、バシトラシンはより安定で、毒性も低いからである。
【0142】
この目的では、GLC94単離株からの前鞭毛体を凝固ウサギ血清に基づく培地上で2日間培養した。ついで寄生虫(2×104寄生虫/mL)を、濃度1, 1.5および2.5 mMの亜鉛バシトラシン(BACZn)を含む完全培地に移した。完全培地中でインヒビターの不存在下に培養した前鞭毛体を対照として使用した。モニタリングは寄生虫を48, 72および96時間に計数して行った。結果は図13に示す。
【0143】
これらの結果は、亜鉛バシトラシンが寄生虫の増殖を、1.5 mMで部分的に、2 mMおよび5 mMで完全に阻害するが、1 mMでは全く効果がないことを示す。すなわち、この分子は培養L. majorの増殖を遮断できることを銘記すべきである。
【実施例9】
【0144】
亜鉛バシトラシンの存在下におけるBALB/cマウス中、L. major前鞭毛体の増殖阻害
治療兵器における武器として既存の亜鉛バシトラシンの利用性は、L. majorによるBALB/cマウスにおける感染の発生に対する試験を可能にした。マウスを、その後肢足蹠パッドに定常増殖期のGLC94単離体の前鞭毛体(足蹠あたり106前鞭毛体)で感染させ、5 mMまたは25 mMのBACZnに基づくポマード(ワセリン中に調製)で処置した。ポマードによる処置は寄生虫の注射後48時間に開始し、1週に5日間、1日1回の適用により行った。同じ方法で感染させ、ワセリンで処置したマウスを対照とした。病変のサイズは毎週測定した。結果は図14に示す。
【0145】
予備的ではあるが、これらの結果は、BALB/cマウスの注射部位に亜鉛バシトラシンをポマードの形態で局所的に適用するとそれは疾患の進行を緩和することを示している。処置マウス群においては、5 mMバシトラシン処置マウス3例中2例および25 mMバシトラシン処置マウス4例中2例で病変の緩和が観察されたことが強調されなければならない。BALB/cマウスは寄生虫を完全に消失させることができず、ヒトで使用される処置(グルカンタイムおよびパラモマイシン)でさえ、BALB/cマウスに誘発される疾患に対してほとんど効果がなく寄生虫の完全な消失がこれまで観察されたことがないことから、処置の停止後における臨床的疾患の再発が予想された。
【0146】
したがって、LmPDIには抗-leishmania化学療法のための標的の可能性があり、バシトラシンはL. majorに対して有効である可能性が明らかである。
【0147】
引用文献

【0148】

【0149】



【0150】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインジスルフィド-イソメラーゼファミリー(PDI)からのタンパク質の活性部位と考えられる部位と同一の、少なくとも1個の部位(Cys-Gly-His-Cys)を含むLeishmaniaのビルレンスに関与するタンパク質。
【請求項2】
プロテインジスルフィドイソメラーゼファミリー(PDI)からのタンパク質の活性部位と考えられる部位と同一の、少なくとも1個の部位(Cys-Gly-His-Cys)を含む寄生虫のビルレンスに関与するLeishmaniaのタンパク質。
【請求項3】
配列番号2を有するLeishmania majorのLmPDIタンパク質、またはLmPDIと少なくとも40%、好ましくは少なくとも80%の同一性を有するLmPDIの任意の機能性変異体である「請求項1または2」記載のタンパク質。
【請求項4】
「請求項1〜3」のいずれかに記載のタンパク質の10個を越えるアミノ酸の断片少なくとも1種を含む組換えポリペプチドにおいて、上記組換えポリペプチドはヒトまたは動物宿主に投与した場合、LmPDIのエピトープに対する免疫学的反応を誘発することができる組換えポリペプチド。
【請求項5】
配列番号3を有するLmPDI-(His)6タンパク質である「請求項4」記載の組換えポリペプチド。
【請求項6】
さらにポリペプチド断片と融合した「請求項4」記載の組換えポリペプチドを含む融合タンパク質において、ヒトまたは動物宿主に投与した場合、LmPDIのエピトープに対する免疫学的反応を誘発することができる、上記融合ポリペプチド。
【請求項7】
「請求項1〜6」のいずれかに記載のタンパク質またはポリペプチドをコードする組換え核酸配列。
【請求項8】
配列番号1のヌクレオチド241〜1674の配列に相当するコード配列または上記配列のサイズ100もしくはそれ以上のヌクレオチドの断片を含む「請求項7」記載の核酸配列。
【請求項9】
「請求項7または8」記載の核酸配列を含む核酸ベクター。
【請求項10】
プラスミド、コスミド、ファージまたはウイルスである「請求項9」記載のベクター。
【請求項11】
「請求項9または10」記載のベクターを含む培養細胞。
【請求項12】
Collection Nationale de Culture des Microorganismes [CNCM, the Nationale Collection of Microorganism Cultures(培養微生物国際収集機関)] に受入番号I-2621により2002年1月31日に寄託された細菌株LmPDI-XL1である「請求項11」記載の細胞。
【請求項13】
LmPDIをコードするビルレンス遺伝子の、生物学的サンプル中における存否を決定するための、配列番号:2の核酸配列と高いストリンジェントな条件下に特異的にハイブリダイズする核酸プローブの使用。
【請求項14】
Leishmaniaに感染した細胞から配列番号:1の配列の少なくとも部分の特異的増幅を可能にし、したがって生物学的サンプル中におけるLmPDIをコードするビルレンス遺伝子の存否の決定を可能にするヌクレオチドプライマー。
【請求項15】
LmPDIを特異的に認識する精製された抗体。
【請求項16】
「請求項1〜3もしくは6」記載のタンパク質および/または「請求項4もしくは5」記載の組換えポリペプチド、および/または「請求項7もしくは8」記載の核酸配列、および/または「請求項9もしくは10」記載のベクター、および/または「請求項11」記載の細胞を含む免疫原性組成物であり、Leishmania寄生虫と接触した個体に由来する単核細胞の増殖をインビトロで刺激することができる、上記免疫原性組成物。
【請求項17】
Leishmania majorと接触した個体に由来する単核細胞の増殖をインビトロで刺激することができる「請求項16」記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
ヒトまたは動物宿主に投与するための医薬的に許容される処方を有する「請求項16または17」記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
ヒトまたは動物に投与した場合、Th1型免疫応答を誘発できる「請求項16〜18」記載の免疫原組成物。
【請求項20】
「請求項1〜3もしくは6」記載のタンパク質および/または「請求項4もしくは5」記載の組換えポリペプチド、および/または「請求項7もしくは8」記載の核酸配列、および/または「請求項9もしくは10」記載のベクター、および/または「請求項11」記載の細胞を含むワクチン化組成物であり、上記ワクチン化組成物はリーシュマニア症に対するヒトまたは宿主動物の保護を意図するワクチン化組成物。
【請求項21】
ヒトまたは動物宿主に投与するための医薬的に許容される処方を有する「請求項20」記載のワクチン化組成物。
【請求項22】
Leishmaniaに対する異種抗原および/またはLeishmaniaに対する異種抗原をコードする核酸配列をさらに含む「請求項16〜21」のいずれかに記載の免疫原性組成物および/またはワクチン化組成物。
【請求項23】
Leishmania majorの増殖を阻害する可能性がある分子をスクリーニングする方法において、LmPDIの活性を阻害する上記分子の能力を評価する工程を含む上記方法。
【請求項24】
LmPDIの活性を阻害する分子の能力を評価する工程は、以下の工程:
・LmPDIの再活性化を可能にする条件下、LmPDIの存在下に、スクランブルしたRNアーゼAをインキュベートする工程;
・スクランブルRNアーゼAを、LmPDIによるその再活性化を可能にする条件と同一の条件下で、試験すべき分子を添加してインキュベートする工程;
・試験分子の不存在下および存在下に得られた結果を比較し、試験分子の存在下におけるRNアーゼAの再活性化の欠如は上記分子がLmPDIの阻害活性を有することを明らかにする「請求項23」記載のスクリーニング方法。
【請求項25】
液体培地中でのLeishmania majorの増殖阻害試験および、適切な場合にはリーシュマニア症の実験齧歯類モデルにおけるLeishmania majorの増殖阻害試験を含む「請求項23または24」記載のスクリーニング方法。
【請求項26】
Leishmania感染の予防、緩和または処置を意図した医薬組成物の製造のための1または2種以上のプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)阻害剤の使用。
【請求項27】
PDI阻害剤は抗-PDIまたは抗-LmPDI抗体、バシトラシン、亜鉛バシトラシン、5-5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、p-クロロメルクリベンゼンスルホン酸(pCMBS)またはトシン酸である「請求項26」記載の使用。
【請求項28】
ヒトまたは動物宿主に局所、経口または非経口投与するための組成物の製造における「請求項26または27」記載の使用。
【請求項29】
リーシュマニア症の原因寄生虫の増殖阻害剤またはリーシュマニア症感染に対して活性な薬剤としてのバシトラシンまたは亜鉛バシトラシンの使用。
【請求項30】
「請求項15」記載の抗体を含むリーシュマニア症感染の処置を意図した医薬組成物。
【請求項31】
局所、経口または非経口投与に適当な「請求項30」記載の組成物。
【請求項32】
1または2種以上のプロテインジスルフィド-イソメラーゼ(PDI)阻害剤を含有するLeishmaniaによる感染の処置を意図した医薬組成物。
【請求項33】
バシトラシンまたは亜鉛バシトラシンを含有する「請求項32」記載の医薬組成物。
【請求項34】
リーシュマニア症の原因寄生虫による感染を診断するインビトロ方法において、
・「請求項15」記載の少なくとも1種の抗体と、リーシュマニア症の原因寄生虫によって部分感染した対象からの生物学的サンプルとを、上記抗体とサンプル中に含まれる抗原性タンパク質との間の免疫複合体の形成が可能な条件下に接触させること、および
・上記複合体を検出すること
を含む、上記方法。
【請求項35】
・「請求項15」記載の少なくとも1種の抗体、
・上記抗体との免疫複合体の形成に適当な培地、
・形成された複合体の検出を可能にする試薬、および
・適切であれば、対照サンプル
を含むことを特徴とする、「請求項34」記載の方法を実施するための診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−254386(P2009−254386A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183479(P2009−183479)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【分割の表示】特願2003−506456(P2003−506456)の分割
【原出願日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【出願人】(503464066)
【出願人】(305031578)
【Fターム(参考)】