Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰のＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを有するリチウム可充電電池
【課題】Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰のＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを有するリチウム可充電電池を提供する。
【解決手段】直列の電気化学的セルを備えるリチウム可充電電池である。各前記電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード、電解質、及び前記アノードを前記カソードから離隔するセパレータ、を備え、各前記電気化学的セルは、過放電状態における前記複数の電気化学的セルの少なくとも一つに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを備える、リチウム可充電電池である。
【解決手段】直列の電気化学的セルを備えるリチウム可充電電池である。各前記電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード、電解質、及び前記アノードを前記カソードから離隔するセパレータ、を備え、各前記電気化学的セルは、過放電状態における前記複数の電気化学的セルの少なくとも一つに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを備える、リチウム可充電電池である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、全体的にはリチウム可充電電池に、そして、より具体的には、大型電池及び長寿命のために最適化されるリチウム可充電電池に関する。
【背景技術】
【０００２】
アノード又は負の電極材料としてリチウムチタン酸化物（Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２）を、そして、カソード（又は正の電極）材料としてリチウム鉄リン酸塩（ＬｉＦｅＰＯ４）を備える、リチウム電池は、定置用途及びパワーツールと同様に、電気又はハイブリッド車両の有望な候補として、最近出現した。電極材料のこの特定の組は、広い範囲の放電率に対して相当の容量を有する、長期サイクルの安定度、環境互換性（低毒性）及び低コストを提供する。
【０００３】
Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２は、電気化学的プロセスが２５℃でＬｉ＋／Ｌｉに対してほぼ１．５５Ｖの安定な電圧で発生しているリチウムイオンの可逆性挿入を含む、スピネル型構造を有する。ＬｉＦｅＰＯ４は、電気化学的プロセスが２５℃でＬｉ＋／Ｌｉに対してほぼ３．４５の平坦なプラトー電圧で発生しているリチウムイオンの可逆性挿入−抽出を含む、オリビン構造を有する。アノード及びカソード材料の電位差が大部分の電解質の安定度ウィンドウの中で作動するので、電解質はアノード又はカソード活物質と反応しにくく、そして、電池は安全で、本質的に高いサイクル寿命を有すると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
この電極の組合せの長寿命に対する残りの障害のうちの１つは、過放電状態が発生するときに、電池をシャットダウンする電気的保護を電池が備えていない場合に発生しうる、過放電状態下でのＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の能力の低下である。電気遮断保護を備えている場合でさえも、直列又は並列に接続された複数のセルを備える電池において、電子保護デバイスによって検出されないこれらのセルの１つが早期に過放電状態に達しうる。そして、この特定のセルのＬｉＦｅＰＯ４カソード材料は、長期に亘る過放電状況の下でその位相変化電圧点に達しそして超えるときに、永久に破損するおそれがある。
【０００５】
さらに、直列に接続される複数のセルを備える電池の特定のセルが過放電状態に落ちる場合、その特定のセルは、他のセルの継続した電流放電を介してその極性を逆転させて電解質を酸化又は還元するおそれがあり、このことにより、その特定のセルが永久に損傷を受けて電池全体の長寿命及び性能に影響を及ぼす状態に劣化させうる。
【０００６】
このように、過放電状態の電池の性能低下を防止するセイフティ機構を有して設計されるＬｉＦｅＰＯ４カソード材料及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料をベースにするリチウム電池に対する要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、長いサイクル寿命を有するＬｉＦｅＰＯ４カソード材料及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料をベースとする安全で大型のリチウムイオン可充電電池の提供を図る。
【０００８】
広い態様によれば、本発明は、少なくとも一つの電気化学的セルを備えるリチウムイオン可充電電池の提供を図る。各電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２型のアノード、ＬｉＦｅＰＯ４型のカソード、及びアノードをカソードから離隔する電解質、を備える。ここで、電気化学的セルは、過放電状態の電気化学的セルに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料に対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を備える。
【０００９】
以下の説明及び以下の図面によって、本発明はより詳細に理解され、そして、他の効果が現れる。
図１は、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード（Ｆ１）、及び、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード（Ｔ１）を備える、電気化学的セル（Ｂ１）の流量曲線を示している線図である。この電気化学的セルは、余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を有する。
図２は、直列に接続される複数の電気化学的セルを備えるリチウム電池の略図である。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】図１は、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード（Ｆ１）、及び、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード（Ｔ１）を備える、電気化学的セル（Ｂ１）の流量曲線を示している線図である。
【図２】図２は、直列に接続される複数の電気化学的セルを備えるリチウム電池の略図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
図１は、点線で表されるＬｉＦｅＰＯ４のカソード及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２のアノード間に位置する電解質セパレータの理論的な電圧安定度ウィンドウを有する電気化学的セルにおけるＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード材料に組合されたＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード材料の放電挙動を示す。電解質セパレータは、液体であってもよく、又は微小孔構造セパレータに浸漬されてゲル化していてもよい。電解質は、ＬｉＦｅＰＯ４カソード及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード中にも存在する。ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料放電曲線Ｆ１は、使用される電解質セパレータの安定度ウィンドウの上限より下であるＬｉ＋／Ｌｉに対して３．４Ｖ付近で平坦部を有している。Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料放電曲線Ｔ１は、使用される電解質セパレータの安定度ウィンドウの下限よりも上であるＬｉ＋／Ｌｉに対して１．５Ｖ付近で平坦部を有している。図１に示された放電曲線Ｂ１に対応して表される電気化学的セルは、過放電状態においてＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を有して設定されており、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの酸化が最初に終了して、これにより、発熱性である急峻な減少傾斜ＲにＬｉＦｅＰＯ４カソード材料が到達することを、そして更に、電気化学的セルに永久的な容量損失を引き起こすＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の不可逆性の位相変化をマークするＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の第２の平坦部Ｐ２に到達することを防止する。電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して５％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されることが好ましい。電気化学的セルは、安全性を増すためにＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して１０％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されてもよく、そして、安全性をさらに増すためにＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して２０％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されてもよい。
【００１２】
図１のグラフで概説される電気化学的セル構造において、電気化学的セル（Ｂ１）の電位差がＬｉ＋／Ｌｉに対して約０ボルトに到達するときに、放電中断（カットオフ）が理論的に発生し、これにより、セルにおけるＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で及びＬｉＦｅＰＯ４カソードの表面での電圧を、使用される電解質の安定ウィンドウ内に維持する。しかしながら、図２にて図示したように、電池１０が、直列に接続される複数の電気化学的セルを備え、そして、放電カットオフ電圧が、複数の電気化学的セルの電圧の合計として決定されるときに、直列の電気化学的セルの一つ、例えばセル１２が、他のものより前に理論的な放電カットオフ電圧に達して放電を継続する一方で、直列の電気化学的セルの電圧の合計が全体の放電カットオフ電圧よりも上にとどまって、これにより、電気化学的セル１２が過放電状態になるという可能性が存在する。この特定の状況において、電気化学的セル１２がＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を備えるので、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードは、消耗されるまで酸化し続けて、ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料がその初期放電の平坦部に安定なままであるのに対して電解質中の溶媒がＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化し始める、電解質の安定度ウィンドウの外側の電圧に、そのアノードの表面は、最終的に達する。電解質の溶媒部分は、直列の電気化学的セルの電圧の合計が全体の放電カットオフ電圧に達するまで、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化処理を受ける。相当量の熱及びガスを発生させる電解質セパレータ中に含まれる溶媒の大部分を急速に酸化させる大きい特定領域を有するカーボン又はグラファイトでアノードが作製される典型的なＬｉイオンのセルに対して、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面積は比較的小さく、電解質中に含まれる溶媒は緩やかに酸化され、従って、生成される熱及びガス量が制限され、部分的にのみ電解質を分解させる。部分的に分解されて酸化された電解質は、更なるサイクルの間操作可能であり、発生される熱及びガス量を制限して、そして、ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料は、潜在的に有害な減少からの予備（スペア）である。図２において図式的に例示されるように、圧力及び温度が急速に増大して失敗をもたらしうる典型的なＬｉイオンのセルにおいて使用される高機能なベンティングシステムに比して、電池の安全態様を向上するために、当業界で知られているように、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面での溶媒酸化から生じる、低圧及び温度発展を容易に制御しうる、単純なベンティング（通気）システムが、電池のケーシングにおいて好適に使用される。
【００１３】
図２は、複数の直列接続された電気化学的セルを備える電池１０の例を概略的に示す。各電池は、ＬｉＦｅＰＯ４カソード、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード、及び、これらの間の液体又はゲル化された電解質を有している。この特定の例では、電池１０は、その電圧Ｖが１．０ボルトより下に落ちるか又は２．０ボルトを上回るとき、電池を遮断する単純な電子システムによってモニタされる。上述したように、電池１０の電圧Ｖが１．０ボルトの閾値より上のままになっている一方で、セル１２は不良となって１．０ボルト閾値より下に落ちてもよい。このような発生において、セル１２の個々の電圧Ｂ１は０ボルトに落ち、そして、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードは、それが消耗されそしてアノード表面が３．４ボルトの電圧に達するまで、酸化される。Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードのとき、セル１２はその極性が反転される。しかしながら、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料に対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料によって、同時に起こるカソード材料の消耗が防止される。上述したように、セル１２の極性が反転され、そして、アノードの電圧が電解質の安定度ウィンドウ外側の電圧位置（４．０−５．０ボルト）に達するときに、電解質の溶媒はＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化し始める。直列の電気化学的セルの電圧Ｖの合計が全体の放電カットオフ電圧に達するまで、電解質の溶媒部分はＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化処理を受ける。ＬｉＦｅＰＯ４カソード電圧は、その余剰部分が消費されるまでその平坦部Ｐ１（図１）にとどまり、これにより、急峻な減少傾斜Ｒ（図１）に達したときの潜在的な発熱減少に対する過放電におけるカソード自体及びセル１２を保護するための重要なバッファを提供する。
【００１４】
上記のように概説した電気化学的セル構造の電解質セパレータは、アルカリ金属塩及び非プロトン溶媒及び／又は極性溶剤及び任意的にポリマーを含む、当業者に知られている任意の種類の液体又はゲル化された電解質であってもよい。
【００１５】
電解質は、１．０ボルト以下及び３．７ボルト以上の間で構成される安定度ウィンドウを有していて、イオン液体又は液体塩であってもよい。
【００１６】
本発明は現在最も実際的で好適な実施の形態であると考慮されるものと関連して記述されている一方で、本発明は、開示された実施の形態及び要素に限定されるものではなく、その反対に、添付された請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる、様々な変形、特徴の組合せ、均等な配置、及び、均等な要素を含むことを意図している。さらにまた、図面上に現れうる各種要素の特徴の寸法は、限定を意図するものではなく、そして、その中の部材の寸法は、本願明細書において図において描写されうるサイズから変化しうる。このように、本発明は、添付の請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内になるように提供される、本発明の修正及び変形を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【００１７】
１０ 電池（バッテリ）
１２ セル
【技術分野】
【０００１】
本発明は、全体的にはリチウム可充電電池に、そして、より具体的には、大型電池及び長寿命のために最適化されるリチウム可充電電池に関する。
【背景技術】
【０００２】
アノード又は負の電極材料としてリチウムチタン酸化物（Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２）を、そして、カソード（又は正の電極）材料としてリチウム鉄リン酸塩（ＬｉＦｅＰＯ４）を備える、リチウム電池は、定置用途及びパワーツールと同様に、電気又はハイブリッド車両の有望な候補として、最近出現した。電極材料のこの特定の組は、広い範囲の放電率に対して相当の容量を有する、長期サイクルの安定度、環境互換性（低毒性）及び低コストを提供する。
【０００３】
Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２は、電気化学的プロセスが２５℃でＬｉ＋／Ｌｉに対してほぼ１．５５Ｖの安定な電圧で発生しているリチウムイオンの可逆性挿入を含む、スピネル型構造を有する。ＬｉＦｅＰＯ４は、電気化学的プロセスが２５℃でＬｉ＋／Ｌｉに対してほぼ３．４５の平坦なプラトー電圧で発生しているリチウムイオンの可逆性挿入−抽出を含む、オリビン構造を有する。アノード及びカソード材料の電位差が大部分の電解質の安定度ウィンドウの中で作動するので、電解質はアノード又はカソード活物質と反応しにくく、そして、電池は安全で、本質的に高いサイクル寿命を有すると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
この電極の組合せの長寿命に対する残りの障害のうちの１つは、過放電状態が発生するときに、電池をシャットダウンする電気的保護を電池が備えていない場合に発生しうる、過放電状態下でのＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の能力の低下である。電気遮断保護を備えている場合でさえも、直列又は並列に接続された複数のセルを備える電池において、電子保護デバイスによって検出されないこれらのセルの１つが早期に過放電状態に達しうる。そして、この特定のセルのＬｉＦｅＰＯ４カソード材料は、長期に亘る過放電状況の下でその位相変化電圧点に達しそして超えるときに、永久に破損するおそれがある。
【０００５】
さらに、直列に接続される複数のセルを備える電池の特定のセルが過放電状態に落ちる場合、その特定のセルは、他のセルの継続した電流放電を介してその極性を逆転させて電解質を酸化又は還元するおそれがあり、このことにより、その特定のセルが永久に損傷を受けて電池全体の長寿命及び性能に影響を及ぼす状態に劣化させうる。
【０００６】
このように、過放電状態の電池の性能低下を防止するセイフティ機構を有して設計されるＬｉＦｅＰＯ４カソード材料及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料をベースにするリチウム電池に対する要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、長いサイクル寿命を有するＬｉＦｅＰＯ４カソード材料及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料をベースとする安全で大型のリチウムイオン可充電電池の提供を図る。
【０００８】
広い態様によれば、本発明は、少なくとも一つの電気化学的セルを備えるリチウムイオン可充電電池の提供を図る。各電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２型のアノード、ＬｉＦｅＰＯ４型のカソード、及びアノードをカソードから離隔する電解質、を備える。ここで、電気化学的セルは、過放電状態の電気化学的セルに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料に対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を備える。
【０００９】
以下の説明及び以下の図面によって、本発明はより詳細に理解され、そして、他の効果が現れる。
図１は、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード（Ｆ１）、及び、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード（Ｔ１）を備える、電気化学的セル（Ｂ１）の流量曲線を示している線図である。この電気化学的セルは、余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を有する。
図２は、直列に接続される複数の電気化学的セルを備えるリチウム電池の略図である。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】図１は、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード（Ｆ１）、及び、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード（Ｔ１）を備える、電気化学的セル（Ｂ１）の流量曲線を示している線図である。
【図２】図２は、直列に接続される複数の電気化学的セルを備えるリチウム電池の略図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
図１は、点線で表されるＬｉＦｅＰＯ４のカソード及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２のアノード間に位置する電解質セパレータの理論的な電圧安定度ウィンドウを有する電気化学的セルにおけるＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード材料に組合されたＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード材料の放電挙動を示す。電解質セパレータは、液体であってもよく、又は微小孔構造セパレータに浸漬されてゲル化していてもよい。電解質は、ＬｉＦｅＰＯ４カソード及びＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード中にも存在する。ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料放電曲線Ｆ１は、使用される電解質セパレータの安定度ウィンドウの上限より下であるＬｉ＋／Ｌｉに対して３．４Ｖ付近で平坦部を有している。Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料放電曲線Ｔ１は、使用される電解質セパレータの安定度ウィンドウの下限よりも上であるＬｉ＋／Ｌｉに対して１．５Ｖ付近で平坦部を有している。図１に示された放電曲線Ｂ１に対応して表される電気化学的セルは、過放電状態においてＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を有して設定されており、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの酸化が最初に終了して、これにより、発熱性である急峻な減少傾斜ＲにＬｉＦｅＰＯ４カソード材料が到達することを、そして更に、電気化学的セルに永久的な容量損失を引き起こすＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の不可逆性の位相変化をマークするＬｉＦｅＰＯ４カソード材料の第２の平坦部Ｐ２に到達することを防止する。電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して５％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されることが好ましい。電気化学的セルは、安全性を増すためにＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して１０％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されてもよく、そして、安全性をさらに増すためにＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して２０％余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料で設計されてもよい。
【００１２】
図１のグラフで概説される電気化学的セル構造において、電気化学的セル（Ｂ１）の電位差がＬｉ＋／Ｌｉに対して約０ボルトに到達するときに、放電中断（カットオフ）が理論的に発生し、これにより、セルにおけるＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で及びＬｉＦｅＰＯ４カソードの表面での電圧を、使用される電解質の安定ウィンドウ内に維持する。しかしながら、図２にて図示したように、電池１０が、直列に接続される複数の電気化学的セルを備え、そして、放電カットオフ電圧が、複数の電気化学的セルの電圧の合計として決定されるときに、直列の電気化学的セルの一つ、例えばセル１２が、他のものより前に理論的な放電カットオフ電圧に達して放電を継続する一方で、直列の電気化学的セルの電圧の合計が全体の放電カットオフ電圧よりも上にとどまって、これにより、電気化学的セル１２が過放電状態になるという可能性が存在する。この特定の状況において、電気化学的セル１２がＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードに対して余剰のＬｉＦｅＰＯ４カソード材料を備えるので、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードは、消耗されるまで酸化し続けて、ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料がその初期放電の平坦部に安定なままであるのに対して電解質中の溶媒がＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化し始める、電解質の安定度ウィンドウの外側の電圧に、そのアノードの表面は、最終的に達する。電解質の溶媒部分は、直列の電気化学的セルの電圧の合計が全体の放電カットオフ電圧に達するまで、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化処理を受ける。相当量の熱及びガスを発生させる電解質セパレータ中に含まれる溶媒の大部分を急速に酸化させる大きい特定領域を有するカーボン又はグラファイトでアノードが作製される典型的なＬｉイオンのセルに対して、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面積は比較的小さく、電解質中に含まれる溶媒は緩やかに酸化され、従って、生成される熱及びガス量が制限され、部分的にのみ電解質を分解させる。部分的に分解されて酸化された電解質は、更なるサイクルの間操作可能であり、発生される熱及びガス量を制限して、そして、ＬｉＦｅＰＯ４カソード材料は、潜在的に有害な減少からの予備（スペア）である。図２において図式的に例示されるように、圧力及び温度が急速に増大して失敗をもたらしうる典型的なＬｉイオンのセルにおいて使用される高機能なベンティングシステムに比して、電池の安全態様を向上するために、当業界で知られているように、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面での溶媒酸化から生じる、低圧及び温度発展を容易に制御しうる、単純なベンティング（通気）システムが、電池のケーシングにおいて好適に使用される。
【００１３】
図２は、複数の直列接続された電気化学的セルを備える電池１０の例を概略的に示す。各電池は、ＬｉＦｅＰＯ４カソード、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード、及び、これらの間の液体又はゲル化された電解質を有している。この特定の例では、電池１０は、その電圧Ｖが１．０ボルトより下に落ちるか又は２．０ボルトを上回るとき、電池を遮断する単純な電子システムによってモニタされる。上述したように、電池１０の電圧Ｖが１．０ボルトの閾値より上のままになっている一方で、セル１２は不良となって１．０ボルト閾値より下に落ちてもよい。このような発生において、セル１２の個々の電圧Ｂ１は０ボルトに落ち、そして、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードは、それが消耗されそしてアノード表面が３．４ボルトの電圧に達するまで、酸化される。Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードのとき、セル１２はその極性が反転される。しかしながら、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノード材料に対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４カソード材料によって、同時に起こるカソード材料の消耗が防止される。上述したように、セル１２の極性が反転され、そして、アノードの電圧が電解質の安定度ウィンドウ外側の電圧位置（４．０−５．０ボルト）に達するときに、電解質の溶媒はＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化し始める。直列の電気化学的セルの電圧Ｖの合計が全体の放電カットオフ電圧に達するまで、電解質の溶媒部分はＬｉ４Ｔｉ５Ｏ１２アノードの表面で酸化処理を受ける。ＬｉＦｅＰＯ４カソード電圧は、その余剰部分が消費されるまでその平坦部Ｐ１（図１）にとどまり、これにより、急峻な減少傾斜Ｒ（図１）に達したときの潜在的な発熱減少に対する過放電におけるカソード自体及びセル１２を保護するための重要なバッファを提供する。
【００１４】
上記のように概説した電気化学的セル構造の電解質セパレータは、アルカリ金属塩及び非プロトン溶媒及び／又は極性溶剤及び任意的にポリマーを含む、当業者に知られている任意の種類の液体又はゲル化された電解質であってもよい。
【００１５】
電解質は、１．０ボルト以下及び３．７ボルト以上の間で構成される安定度ウィンドウを有していて、イオン液体又は液体塩であってもよい。
【００１６】
本発明は現在最も実際的で好適な実施の形態であると考慮されるものと関連して記述されている一方で、本発明は、開示された実施の形態及び要素に限定されるものではなく、その反対に、添付された請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる、様々な変形、特徴の組合せ、均等な配置、及び、均等な要素を含むことを意図している。さらにまた、図面上に現れうる各種要素の特徴の寸法は、限定を意図するものではなく、そして、その中の部材の寸法は、本願明細書において図において描写されうるサイズから変化しうる。このように、本発明は、添付の請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内になるように提供される、本発明の修正及び変形を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【００１７】
１０ 電池（バッテリ）
１２ セル
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数の電気化学的セルを備えるリチウム可充電電池であって、
各前記電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード、電解質、及び前記アノードを前記カソードから離隔するセパレータ、を備え、
各前記電気化学的セルは、過放電状態における前記複数の電気化学的セルの少なくとも一つに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを備える、リチウム可充電電池。
【請求項２】
前記電解質は、少なくとも一つの溶媒及び塩を含む、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項３】
前記電解質は、非プロトン溶媒及びアルカリ金属塩を含む、液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項４】
前記電解質は、極性溶剤及びアルカリ金属塩を含む、液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項５】
前記電解質は、
溶液中に少なくとも一つの金属塩を含んでいる極性液体によってゲル化した、ポリマー、コポリマー又はターポリマーである、ことを特徴とする請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項６】
前記電解質は、イオン液体である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項７】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、非プロトン溶媒及びアルカリ金属塩を含む液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項８】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、極性溶剤及びアルカリ金属塩である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項９】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬される溶液中の少なくとも一つの金属塩を含む極性液体によってゲル化した、ポリマー、コポリマー又はターポリマーである、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１０】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、イオン液体である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１１】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、５％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１２】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、１０％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１３】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、２０％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１】
複数の電気化学的セルを備えるリチウム可充電電池であって、
各前記電気化学的セルは、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノード、ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソード、電解質、及び前記アノードを前記カソードから離隔するセパレータ、を備え、
各前記電気化学的セルは、過放電状態における前記複数の電気化学的セルの少なくとも一つに永久的に損傷を与えることを防止するために、Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対して余剰なＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードを備える、リチウム可充電電池。
【請求項２】
前記電解質は、少なくとも一つの溶媒及び塩を含む、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項３】
前記電解質は、非プロトン溶媒及びアルカリ金属塩を含む、液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項４】
前記電解質は、極性溶剤及びアルカリ金属塩を含む、液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項５】
前記電解質は、
溶液中に少なくとも一つの金属塩を含んでいる極性液体によってゲル化した、ポリマー、コポリマー又はターポリマーである、ことを特徴とする請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項６】
前記電解質は、イオン液体である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項７】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、非プロトン溶媒及びアルカリ金属塩を含む液体又はゲル化された電解質である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項８】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、極性溶剤及びアルカリ金属塩である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項９】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬される溶液中の少なくとも一つの金属塩を含む極性液体によってゲル化した、ポリマー、コポリマー又はターポリマーである、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１０】
前記セパレータは、微小孔構造セパレータ中に浸漬した、イオン液体である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１１】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、５％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１２】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、１０％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【請求項１３】
前記Ｌｉ４Ｔｉ５Ｏ１２ベースのアノードに対する前記ＬｉＦｅＰＯ４ベースのカソードの余剰分は、２０％未満である、請求項１に記載のリチウム可充電電池。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１３−１０１９６７（Ｐ２０１３−１０１９６７Ａ）
【公開日】平成２５年５月２３日（２０１３．５．２３）
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願２０１３−１２５７０（Ｐ２０１３−１２５７０）
【出願日】平成２５年１月２５日（２０１３．１．２５）
【分割の表示】特願２００８−５０５７０５（Ｐ２００８−５０５７０５）の分割
【原出願日】平成１８年４月１３日（２００６．４．１３）
【出願人】（３０９００５７６６）バシウム・カナダ・インコーポレーテッド (8)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月２３日（２０１３．５．２３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１３−１２５７０（Ｐ２０１３−１２５７０）
【出願日】平成２５年１月２５日（２０１３．１．２５）
【分割の表示】特願２００８−５０５７０５（Ｐ２００８−５０５７０５）の分割
【原出願日】平成１８年４月１３日（２００６．４．１３）
【出願人】（３０９００５７６６）バシウム・カナダ・インコーポレーテッド (8)
【Ｆターム（参考）】
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