説明

Lp−PLA2活性のハイスループットアッセイ

【課題】動物由来の複数の試料におけるLp−PLA2活性を測定する方法、および、該測定用キットの提供。
【解決手段】標識された血小板活性化因子(PAF)を含む溶液を調製する工程;複数の組織試料の各々を調製工程の溶液およびPAFのシークエスター(Sequester)分子と接触させ、PAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程;該PAF−シークエスター分子の複合体を取り出す工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程を含んでなる、試料中のリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)酵素活性を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動物由来の試料におけるリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(以下「Lp−PLA2」という)酵素活性を測定する方法および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈心疾患(以下「CHD」という)は多数の産業国における主要な死因である。アテローム性動脈硬化は、動脈にてコレステロールおよび脂質含有のプラークが進行的に集結するところの、動脈硬化または動脈が固くなる形態である。当該集結は心疾患および疾患性冠動脈事象の危険性増大に関連する。動脈におけるプラークの集結は内皮損傷にて生じる免疫応答に関連する。まず、マクロファージ、脂質、コレステロール、カルシウム塩およびコラーゲンと相まって繊維性プラークを形成する平滑筋細胞の遊走および蓄積を惹起する免疫反応に起因して、単球由来マクロファージが損傷部位にて蓄積する。かかる病変増大は結果として動脈を閉塞させ、血流を制限し得る。
【0003】
PAFアセチルヒドロラーゼとしても知られているリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)は大きなホスホリパーゼA2スーパーファミリー(Tewら(1996)Arterioscler Thromb Vasc Biol.16(4):591−9;Tjoelkerら(1995)Nature 374(6522):549−53)に属する分泌性カルシウム依存性メンバーである。該酵素は単球、マクロファージおよびリンパ球により産生され、ヒト血漿中のLDLと優勢的に関連する(約80%)ことが分かった。該酵素は血小板活性化因子(以下「PAF」という)としても知られている1−O−アルキル−2−セチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンのsn−2 エステルを含んでなる極性リン脂質を分解する(Tjoelkerら(1995)Nature 374(6522):549−53)。
【0004】
多くの観察により未変性、非修飾リポ蛋白質との比較にて酸化LDLの炎症誘発性活性が実証された。LDL酸化における最も初期の事象の1つは、相当量のリゾホスファチジルコリン(リゾ−PC)および酸化された脂肪酸を産生する、酸化修飾されたホスファチジルコリンの加水分解である。当該加水分解はLp−PLA2単独にて仲介される(すなわちLp−PLA2はPAFを加水分解し、リゾ−ホスファチジルコリン(「リゾ−PC」)およびアセテートを生じる)(Stafforiniら(1997)J.Biol.Chem.272,17895)。
【0005】
リゾ−PCは炎症誘発性およびアテローム発生誘発性メディエーターであると推測される。高濃度にて細胞毒性であることに加えて、リゾ−PCは単球およびT−リンパ球の走化性刺激ならびにより穏当な濃度にて接着分子および炎症性サイトカインの発現誘発が可能である。リゾ−PCはLDLの抗原性に関与する酸化LDL成分としても同定されており、該特徴はアテローム性動脈硬化の炎症性の一因となってもよい。さらに、リゾ−PCはマクロファージ増殖を促進し、また様々な動脈床にて内皮機能の不全を誘発する。リゾ−PCと共に遊離される酸化された脂肪酸もまた単球の化学誘引物質であり、細胞シグナリングのごとき他の生物学的活性に関与していてもよい。Lp−PLA2加水分解の当該生成物は共に単球循環のための強力な化学誘引物質であるため、Lp−PLA2は動脈中のコレステロールエステルを担持する細胞の蓄積に関与し、アテローム性動脈硬化の初期段階に関連する「脂肪線状」の特徴を生じると考えられる。
【0006】
Lp−PLA2は、酸化的修飾されやすい低密度LDLの高アテローム発生性リポ蛋白サブフラクションに富むことも見出されている。さらに、酵素レベルは高脂血症、脳卒中、1型および2型糖尿病を患う患者ならびに閉経後の女性にて増大した。血漿Lp−PLA2レベルはそれ自体アテローム性動脈硬化の促進および臨床的な心血管事象の発症の危険性が認められる個体にて上昇する傾向がある。故に、Lp−PLA2酵素の阻害は(リゾホスファチジルコリン形成の阻害により)当該脂肪線状の形成を阻止することが期待され、それ故にアテローム性動脈硬化の処置に有用であろう。さらに、Lp−PLA2は動物が高いLp−PLA2レベルまたは高いLp−PLA2活性に関連する疾患を発症する危険性があるかどうか決定するための生物マーカーとして用いられ得る。
【0007】
Lp−PLA2阻害剤はLDL酸化を阻害する。故に、Lp−PLA2阻害剤は、例えばアテローム性動脈硬化および糖尿病のごとき状態、関節リウマチのごとき他の状態、脳卒中、心筋梗塞(Serebruanyら‘Cardiology.’90(2):127−30(1998))、再灌流障害ならびに急性および慢性炎症に加えて、該酵素活性に関連して脂質過酸化に伴って生じる障害にて一般的な用途を有するかもしれない。加えて、Lp−PLA2は冠動脈性心疾患(Blankenbergら‘J Lipid Res’2003年5月1日)および動脈硬化(TselepisおよびChapman‘Atheroscler Suppl’3(4):57−68(2002))の生物マーカーとして目下探究されている。さらに、Lp−PLA2は以下の疾患:呼吸窮迫症候群(Grissomら‘Crit Care Med.’31(3):770−5(2003);免疫グロブリンA腎症(Yoonら‘Clin Genet’62(2):128−34(2002);大腿膝窩動脈バイパスの移植片開存性(Unnoら‘Surgery’132(1):66−71(2002);口腔炎症(McManusおよびPinckard‘Crit Rev Oral Biol Med.’11(2):240−58(2000));気道炎症および過敏性(Hendersonら‘J Immunol.’15;164(6):3360−7(2000));HIVおよびAIDS(Khovidhunkitら‘Metabolism.’48(12):1524−31(1999));喘息(Satohら‘Am J Respir Crit Care Med.’159(3):974−9(1999));若年性関節リウマチ(Tselepisら‘Arthritis Rheum.’42(2):373−83(1999));ヒト中耳貯留液(Tsujiら‘ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.’60(1):25−9(1998));総合失調症(Bellら‘Biochem Biophys Res Commun.’29;241(3):630−5 9 (1997));壊死性全腸炎発症(Mugurumaら‘Adv Exp Med Biol.’407:379−82(1997));および虚血性腸壊死(‘Pediatr Res.’34(2):237−41(1993))への関与が示されている。
【0008】
分光学的活性および蛍光性活性アッセイ(Cayman Chemical Company、AtheroGenics,Inc.およびKarlan Research Products)を用いてヒト試料のLp−PLA2活性を測定した。Kosakaら‘Clin Chem Acta’296(1−2):151−61(2000)およびKosakaら‘Clin Chem Acta’312(1−2):179−83(2001)も参照のこと。しかしながら、Lp−PLA2阻害剤が存在する場合、特に動物から試料を得る前に阻害剤が該動物に投与される場合に、当該方法は非感受性であり得る。本発明のアッセイは試料中のLp−PLA2阻害剤濃度とLp−PLA2活性との相関を実証した。阻害剤で処置した患者にて経時的に測定されたLp−PLA2活性は、阻害剤の薬物動態学的特性と相関関係にあった。
【0009】
放射標識されたPAFはLp−PLA2活性に関するロースループットアッセイにて用いられてきた(Tselepisら‘Arterioscler Thromb Vasc Biol.’15(10):1764−73(1995)およびMinら‘Biochemistry,’40(15):4539−4549(2001)。しかしながら、当該方法はハイスループット法として開発されず、故に、本発明と比較して大規模研究には有用ではない。ハイスループット法を用いるELISAアッセイにてヒト試料由来のLp−PLA2濃度を測定した。利用可能な当該活性アッセイとマス・アッセイまたはELISAアッセイの間には強い相関が見られた。しかしながら、マス・アッセイまたはELISAアッセイは試料中のLp−PLA2阻害剤の検出には恐らく非感受性であろう。阻害剤の有無に関わらず大規模研究にてLp−PLA2活性を測定するために、または選択された生物マーカーとしてのLp−PLA2について多数の試料をスクリーニングするために、ハイスループット活性プロトコルが必要である。故に、複数の試料のLP−PLA2活性測定方法が非常に必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tewら(1996)Arterioscler Thromb Vasc Biol.16(4):591−9
【非特許文献2】Tjoelkerら(1995)Nature 374(6522):549−53
【非特許文献3】Stafforiniら(1997)J.Biol.Chem.272,17895
【非特許文献4】Serebruanyら‘Cardiology.’90(2):127−30(1998)
【非特許文献5】Blankenbergら‘J Lipid Res’2003年5月1日
【非特許文献6】TselepisおよびChapman‘Atheroscler Suppl’3(4):57−68(2002)
【非特許文献7】Grissomら‘Crit Care Med.’31(3):770−5(2003)
【非特許文献8】Yoonら‘Clin Genet’62(2):128−34(2002)
【非特許文献9】Unnoら‘Surgery’132(1):66−71(2002)
【非特許文献10】McManusおよびPinckard‘Crit Rev Oral Biol Med.’11(2):240−58(2000)
【非特許文献11】Hendersonら‘J Immunol.’15;164(6):3360−7(2000)
【非特許文献12】Khovidhunkitら‘Metabolism.’48(12):1524−31(1999)
【非特許文献13】Satohら‘Am J Respir Crit Care Med.’159(3):974−9(1999)
【非特許文献14】Tselepisら‘Arthritis Rheum.’42(2):373−83(1999)
【非特許文献15】Tsujiら‘ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.’60(1):25−9(1998)
【非特許文献16】Bellら‘Biochem Biophys Res Commun.’29;241(3):630−5 9 (1997)
【非特許文献17】Mugurumaら‘Adv Exp Med Biol.’407:379−82(1997)
【非特許文献18】‘Pediatr Res.’34(2):237−41(1993)
【非特許文献19】Kosakaら‘Clin Chem Acta’296(1−2):151−61(2000)
【非特許文献20】Kosakaら‘Clin Chem Acta’312(1−2):179−83(2001)
【非特許文献21】Tselepisら‘Arterioscler Thromb Vasc Biol.’15(10):1764−73(1995)
【非特許文献22】Minら‘Biochemistry,’40(15):4539-4549(2001)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
故に、本発明の目的の1つは、標識された血小板活性化因子(PAF)を含む溶液を調製する工程;複数の組織試料の各々を調製工程の溶液およびPAFのシークエスター(Sequester)分子と接触させ、PAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程;該PAF−シークエスター分子の複合体を取り出す工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程を含んでなる、試料中のリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)酵素活性を測定する方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、血小板活性化因子(PAF)、PAFのシークエスター分子および沈殿化溶液を含有する複数の試料におけるLp−PLA2酵素活性を測定するためのキットを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語
本明細書中用いる「シークエスター分子」は、他の分子および/または溶液から第2分子の分離を促進するように、単独または他の分子もしくは共同因子と相まって第2分子と複合体を形成し得る任意の分子をいう。例えば、シークエスター分子は第2分子に付着し、それを溶液から沈殿させる蛋白質であってもよく、または第2分子上で電荷を帯び、それが正または負電極に引き寄せられやすいようにする蛋白質であってもよい。PAFに対するシークエスター分子の例はウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)およびヒト血清アルブミンを包含するが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書中用いる「PAF−シークエスター分子の複合体」は、シークエスター分子がPAFに接触し、他の分子および/または溶液からPAFの分離が促進されるようにシークエスター分子に結合したPAFをいう。一例として、BSAと複合体を形成してもよく、それは溶液から沈殿し得る。PAF−シークエスター分子の複合体はシークエスター分子との複合体中に、分解されていないPAFおよびリゾ−PCの両方を包含してもよい。PAF−BSA複合体はPAF−シークエスター分子の複合体の一例である。
【0015】
本明細書中用いる「Lp−PLA2酵素活性」は、任意のLp−PLA2酵素活性を包含するが、これに限定されない。当該活性は酵素の基質との結合、生成物の放出、および/またはリン脂質もしくは他の分子の加水分解を包含するが、これらに限定されない。
【0016】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたポリペプチド結合により各々他と結合している2つまたはそれ以上のアミノ酸を含んでなる任意のペプチドまたは蛋白質をいう。「ポリペプチド」は、通常ペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーと呼ばれる短鎖、ならびに通常蛋白質と呼ばれる長鎖をいう。ポリペプチドは20種の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。「ポリペプチド」はプロセシングおよび他の翻訳後修飾のごとき自然工程だけでなく化学的修飾技法により修飾されたものも包含する。かかる修飾は基本書、さらには研究論文および多量の研究文献にて詳細に記述されており、当業者に知られている。任意のポリペプチドのいくつかの部位にて同じまたは異なる程度で同種の修飾が存在していてもよいということが理解されよう。また、任意のポリペプチドは多種の修飾を含んでいてもよい。修飾はペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を包含するポリペプチド中の任意の場所にて生じ得る。例えば、修飾はアセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化,フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、閉環、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋形成、システイン形成、ピログルタミン酸形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨー素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、蛋白質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP−リボシル化、セレノイル化(Selenoylation)、硫酸化、蛋白質への転移−RNA仲介アミノ酸付加(例えばアルギニル化)およびユビキチン化を包含する。
【0017】
例えば、PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)and Wold,F.,Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,pgs.1−12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York(1983);Seifterら‘Meth.Enzymol.’182:626−646(1990)およびRattanら‘Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging’Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)を参照のこと。ポリペプチドは分岐しているか、または分岐に関係なく鎖状であってよい。分岐鎖状および分岐環状のポリペプチドは翻訳後の自然工程から生じてもよく、さらに完全な合成法により合成されてもよい。
【0018】
本明細書中用いる「沈殿化溶液」は溶液からPAF−シークエスター分子の複合体を沈殿し得る任意の溶液をいう。沈殿化溶液はトリクロロ酢酸(「TCA」)、デキストランまたはポリエチレングリコールのごとき非イオン性ポリマーまたはMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Ba+2、Mg+2、Pb+2、Ag、Hg2+およびPb2+のごとき金属イオンを包含するが、これらに限定されない。沈殿化溶液に等電沈殿を利用してもよく、すなわち、溶液の塩濃度を変え、沈殿を促進してもよい。沈殿化溶液は有機溶媒添加により溶液の誘電率を変化させてもよい。沈殿化溶液中用いられてもよい有機溶媒は2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびエタノールを包含するが、これらに限定されない。沈殿化溶液は沈殿を促進するようにPAFのシークエスター分子含有溶液のpHを変化させてもよい。
【0019】
本明細書中用いる「濾過」または「濾過する」は溶液からの任意の物質の取り出しを包含するが、これらに限定されず、さらに濾紙、ワットマン紙、チーズクロス、あるいは物理的および/または化学的特性に基づき溶液から物質を特異的に取り出すカラムに、取り出すべき物質を含有する溶液を通すことを包含してもよい。取り出すべき物質はPAF−シークエスター分子の複合体を包含してもよい。濾過により物質を取り出すために用いられてよい物理的および化学的特性は、カラム充填剤に結合しやすくさせるイオン電荷、大きさ、分子量、極性および/または物質と結合する化学的部分を包含するが、これらに限定されない。溶液からの物質除去を促進するための濾過は重力、真空および/または遠心の使用を包含してもよい。
【0020】
本明細書中用いる「シンチレーションカクテル」は液体シンチレーションのために溶解度を高め試料の均一懸濁を維持し得る有機溶媒を一般的に含有している、溶質および溶液の混合物をいう。液体シンチレーション工程はβ線放出の捕獲による試料内のβ崩壊検出を含む。シンチレーションカクテル混合物はβ線放出を捕獲し、シンチレーション計数装置内の光電子増倍管にて検出可能である光子放出に変換するよう設計されている。いくつかのシンチレーションカクテルは市販されている。シンチレーションカクテルの組成の修飾は試料に依存して液体シンチレーションからの検出可能な読み取りに効果を及ぼし、および/または最適化し得るということが理解される。
【0021】
本明細書中用いる「組織」は血清、細胞溶解物、組織溶解物、尿、血漿、プラーク、単球またはマクロファージ細胞を包含する。当該組織はLp−PLA2、そのホモログまたはオルソログを発現するヒト、ヒトでない哺乳類または他の動物由来であり得る。
本明細書で提供される式にて用いられる記号「*」は乗法の数学関数である。
【0022】
Lp−PLA2は公知のリン脂質加水分解酵素である。Lp−PLA2はsn−2位にてリン脂質を分解しリゾホスファチジルコリン(リゾ−PC)および酸化された脂肪酸を生成し得る。PAFはsn−2位に炭素数2のアシル基を有し;故にPAFがLp−PLAにより加水分解される場合には、この短いアシル基はその分子の残渣、リゾホスファチジルコリン(リゾ−PC)より、水溶性アセテートとして切断される。リゾ−PCが水溶液から沈殿し得る条件下でアセテートは水溶性である。例えば、BSAのごときシークエスター分子は分解されていないPAFおよび/またはリゾ−PCと結合して、複合体を形成し得る。ついで、この複合体は溶液から除去され、溶液中に水溶性小分子(この場合アセテート)を残存させ得る。沈殿後の溶液に残存する水溶性小分子定量のために多数の方法が存在するということは当該分野にて理解されよう。例えば、アセテートは分解される前に放射標識に付し、液体シンチレーションにより検出してもよい。或いは、溶液から沈殿したホスホコリン量を検出し、Lp−PLA2活性を測定してもよい。
【0023】
本発明の一の実施形態は、試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法であって、標識されたPAFを含む溶液を調製する工程;複数の組織試料の各々を、調製工程の溶液と、およびPAFのシークエスター分子と接触させてPAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程;該PAF−シークエスター分子の複合体を除去する工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程、を含む方法を提供することである。一の態様において、そのPAFのシークエスター分子は沈殿、遠心分離および/または濾過により除去することができる。もう一つ別の態様において、少なくとも一の試料を、Lp−PLA2阻害物質が投与されている動物より得る。
【0024】
さらなる実施態様にて、組織試料を調製工程の溶液に接触すること、およびPAFのシークエスター分子に接触させPAF−シークエスター分子の複合体を形成することは、同時または別段階(順は任意)で実施されてもよい。
【0025】
本発明のさらにもう一つ別の実施態様は、複数の試料中のリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)酵素活性を測定する方法であって、標識された血小板活性化因子(PAF)を含む溶液を調製する工程;その複数の組織試料の各々をその調製工程の溶液と第一に接触させる工程;その第一の接触工程の各々の溶液をPAFのシークエスター分子と第二に接触させてPAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程;該PAF−シークエスター分子の複合体を沈殿化溶液と接触させて沈殿物を形成する工程;その沈殿物を上清から分離する工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程、を含む方法を提供することである。本発明の一の態様において、少なくとも一の試料は血液を含む。一の態様において、PAFのシークエスター分子は遠心分離および/または濾過により分離されてもよい。もう一つ別の態様において、少なくとも一の試料は容量が約5μLである。もう一つ別の態様において、複数の試料の各々を微小遠心管またはマイクロタイタープレート上のウェルにアリコートされる。
【0026】
本発明の別の態様において、標識されたPAFは放射標識されている。標識されたPAFはトリチウム化されているかまたは14Cで標識されていてもよい。本発明の別の態様において、標識されたPAFは溶液中PAFの最大20%を含み、別の態様において、PAF溶液にて約0.4%ないし約2.0%である。PAFは溶液中少なくとも約20μMの濃度を有していてもよい。本発明の別の態様において、PAFはLp−PLA2の基質である。別の態様において、PAFは緩衝溶液中にある。緩衝溶液は4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、塩化ナトリウム(NaCl)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有してもよい。
【0027】
本発明の別の態様において、調製工程の溶液を試料と少なくとも5秒間混合し、約21℃で少なくとも約1分間インキュベートすることを含んでなる方法が提供される。試料は調製工程の溶液と一緒に約5分間インキュベートされてもよい。
【0028】
本発明の別の態様において、接触工程のシークエスター分子は外因性ウシ血清アルブミン(BSA)であるが、内因性ヒト血清アルブミンであってもよい。BSAの温度は約10℃未満であってもよく、約4℃であってもよい。別の態様において、BSAは約50mg/mLの濃度である。さらなる別の態様において、シークエスター分子および試料は10℃未満で少なくとも約1分間インキュベートされる。
【0029】
本発明の別の態様において、沈殿化溶液はTCAを含有する。別の態様において、TCA含有沈殿化溶液は約10℃未満である。別の態様において、TCAは水に対して約56%容量/容量の濃度を有する。別の態様において、第二接触工程の溶液はTCAを含有する溶液と少なくとも1分間インキュベートされる。沈殿は約10℃未満で約5分間、少なくとも約6,000gの遠心分離により上清から分離されてもよい。別の態様において、遠心分離は約4℃で約15分間行われる。
【0030】
本発明のもう一つ別の態様において、緩衝溶液を全計数反応またはブランク反応として用いるための少なくとも2つの容器にアリコートする。これらの容器は微小遠心管またはマイクロタイタープレート上のウェルであってよい。もう一つ別の態様において、緩衝溶液は、PAFが溶液に添加されていないところの、調製工程の溶液と同じである。本発明のもう一つ別の態様において、全計数反応およびブランク反応のためにアリコートされた緩衝溶液の容量は各試料の反応に使用される試料の容量と同じである。調製工程の溶液およびシークエスター分子を、試料と同じ容量、濃度、接触および沈殿条件にて、ブランク反応として用いるための緩衝溶液のアリコートに添加してもよい。本発明のもう一つ別の態様において、少なくとも2つの全計数反応のアリコートを、略同じ容量の調製工程の溶液およびシークエスター分子の置換溶液(この置換溶液はシークエスター分子を含有しない)と接触される。試料および/またはブランク反応物に添加されるシークエスター分子を含む溶液とほぼ同じ容量で、緩衝溶液または蒸留水が全計数反応物の各々に添加されてもよい。
【0031】
本発明の別の態様において、各試料の上清部分、ブランク反応物および全計数(Total count)反応物が別容器にアリコートされる。上清、ブランク反応物および全計数反応物の各アリコートはシンチレーションカクテルに接触され、少なくとも約1分間シンチレーション計数装置にて計数されてもよい。
【0032】
本発明の別の態様において、CPM全計数は式:
CPM全計数=(CPM正味全計数*VRT)/(VSA
[ここで、
CPM正味全計数=全計数反応物から由来の上清のアリコートにおける正味平均計数;
RT=遠心分離前の最終反応溶液の全容量;および
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートされた全計数反応物から由来の上清の容量である]
を用いて、全計数反応の正味平均計数として算出される。
【0033】
別の態様において、各上清のLp−PLA2活性は式:
Lp−PLA2活性(ナノモル/分/ml)=S*(CPM試料-CPMブランク)*VST/(CPM全計数*VSA*V*T)
[ここで、
S=調製工程の溶液中のPAF全量(ナノモル);
CPM試料=各試料の上清の平均計数;
CPMブランク=ブランク反応物の上清の平均計数;
ST=上清の全容量;
CPM全計数=全計数反応物の平均計数;
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートされた各上清の容量;
V=第一接触工程にてアリコートされた試料の全容量(μL);および
T=第一接触工程の総時間(分)である]
を用いて算出される。
【0034】
本発明の別の態様において、緩衝溶液はブランク反応用に少なくとも2つの容器にアリコートされる。当該容器は微小遠心管またはマイクロタイタープレート上のウェルであってもよい。別の態様において、緩衝溶液は、PAFが溶液に添加されていないところの、調製工程の溶液と同じである。本発明の別の態様において、ブランク反応用にアリコートされた緩衝溶液の容量は各試料の反応に用いられる試料の容量と同じである。調製工程の溶液はブランク反応用に試料と同じ容量、濃度、接触および沈殿条件にて緩衝溶液アリコートへ添加されてもよい。
【0035】
本発明の別の態様において、調製工程の溶液アリコートは総添加計数(Total added count)用に少なくとも1つのブランク反応物と接触される。調製工程の溶液のアリコートの容量は約1μLないし約20μLであってもよく、または約10μLであってもよい。本発明の別の態様において、上清、ブランク反応物および総添加計数用の各アリコートはシンチレーションカクテルに接触され、少なくとも約1分間シンチレーション計数装置にて計数される。
【0036】
本発明の別の態様において、CPM総添加計数を式:
CPM総添加計数=(CPM正味スパイク計数*VPAF)/(Vスパイク
[ここで、
CPM正味スパイク計数=総添加計数から由来の上清の正味平均計数;
PAF=第一接触工程にて添加した調製工程の溶液の容量;
スパイク=総添加計数用にブランク反応物上清に添加された調製工程の溶液の容量であ る]
を用いて容量調整した、総添加計数反応物の正味平均計数として算出した。
【0037】
本発明の別の態様において、Lp−PLA2活性を式:
Lp−PLA2活性(ナノモル/分/ml)=S*(CPM試料−CPMブランク)*VST/(CPM総添加計数*VSA*V*T)
[ここで、
S=調製工程の溶液中の全PAF量(ナノモル);
CPM試料=各試料上清の平均計数;
CPMブランク=ブランク反応物から由来の上清の平均計数;
ST=上清の全容量;
CPM総添加計数=総添加計数の平均計数;
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートした各上清の容量;
V=第一接触工程にてアリコートした試料の全容量(μL);および
T=第一接触工程の総時間(分)である]
を用いて各上清にて算出した。
【0038】
本発明の別の実施態様において、血小板活性化因子(PAF)、PAFのシークエスター分子およびTCAを含有する溶液を含んでなる複数の血液試料におけるリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)酵素活性を測定するためのキットが提供される。
【0039】
下記実施例は本発明の種々の態様を説明する。当該実施例は添付の特許請求の範囲にて定義される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0040】
実施例
実施例1.封鎖および沈殿のためのBSA濃度滴定
BSA濃度および遊離H−PAFとの接触時間を試験した。緩衝溶液中の濃度が200μMのH−PAFを濃度1.04mg/mLないし16.67mg/mLのBSAに5分間または一晩接触させた。ついで、BSAおよびPAF複合体を7.78%TCAで沈殿させ、4℃で15分間、6,000gの遠心分離によりペレットを得た。溶液に残存する遊離H−PAFの割合をシンチレーションカウンティングにより上清にて測定した。表1に示すように、沈殿として溶液から除去された遊離PAFの割合はBSA濃度およびインキュベーション時間の増大と共に増大した。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例2.TCA沈殿の時間および温度の至適化
緩衝溶液中のH−PAFを濃度16.67mg/mLのBSAで封鎖し、氷上で5分間インキュベートした。PAFを7.78%氷冷TCAで沈殿させ、氷上で15分間インキュベートするか、あるいは室温にて7.78%TCAで沈殿させ、ついで室温にて5、10または20分間インキュベートした。表2で示すように、氷冷TCAおよび続く氷上での15分間のインキュベーションにおいて溶液に残存するPAF割合が最も小さかった。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3.PAF−BSA複合体遠心分離
緩衝溶液中のH−PAFを濃度16.6mg/mLのBSAで封鎖し、氷上で5分間インキュベートした。PAF−BSA複合体を7.78%氷冷TCAで沈殿させ、氷上で15分間インキュベートした。沈殿したPAF−BSA複合体を微小遠心力800gないし13,000gにて遠心分離した。遠心分離後、溶液に残存するH−PAF割合を測定した。5,000g未満の微小遠心力を用いて約1.3%ないし約2%のPAF−BSA複合体が溶液に残存した。微小遠心力を少なくとも6,000gに増大した場合、わずか約1.1%またはそれ未満のPAF−BSA複合体だけが溶液に残存した。
【0045】
実施例4.経時的な反応温度に影響されるLp−PLA2活性
37℃および室温(約21℃)にてLp−PLA2をPAFと30分間反応させ、該活性をPAFから放出された生成物の放射能(すなわち、毎分の壊変数/DPM)としてシンチレーションカウンティングにて測定した。反応速度は反応温度に関わらず30分間にわたり直線的であった。37℃にて実施した反応は室温にて実施した反応より高いLp−PLA2活性を示した。30分でのLp−PLA2活性は37℃での反応については約80,000DPM、室温での反応については40,000DPMであった。
【0046】
実施例5.反応生成物のシンチレーションカウンティング用カクテル
市販シンチレーション用カクテル3種を緩衝溶液中のPAF放射能を測定するために用いた。MicroScint−20(登録商標)、MicroScint−40(登録商標)およびScintisafe(登録商標)を試験した。PAF溶液40μLのカウント毎分(CPM)はMicroScint−40よりMicroScint−20が高かった。加えて、MicroScint−40中の反応生成物80μLの計数はMicroScint−20中の同じ反応生成物40μLの放射能の2倍には至らなかった。同様に、MicroScint−20はScintiSafeより非常に高い計数効率(30%)を示した。
【0047】
実施例6.Lp−PLA2活性を測定するための血漿希釈液の直線性
室温にてH−PAFと5分間反応させたヒト血漿試料希釈液のLp−PLA2活性を測定した。16.67mg/mLの氷冷BSAでPAF基質を封鎖することで反応を終結させた。該PAF−BSA複合体を7.78%氷冷TCAで沈殿させ、4℃で15分間、6,000gの遠心分離によりペレットを得た。MicroScint−20カクテルを用いるシンチレーションカウンティングにより上清中の反応生成物を測定した。0.1μL/反応および5μL/反応の血漿を別々の反応で用いた。ヒト血漿試料にて測定されたLp−PLA2活性値は反応に添加したヒト血漿量に直線比例した。
【0048】
実施例7.マイクロプレート使用の複数の試料用Lp−PLA2活性アッセイ
アッセイバッファーを以下の仕様にて室温で調製し貯蔵した:100mM HEPES、pH7.4;150mM NaCl;および5mM EDTA。
480μLのH−PAF(10.0Ci/mmolにて10μM=0.1mCi/ml)および24.6μLのC16−PAF(「1−ヘキサデシル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン」としても知られている)(5.0mg/ml;MW:524)をチューブにアリコートし、100反応用のH−PAF溶液を調製した。該2溶液を混合し、フードにて風乾した。乾燥ペレットを12.0mLのアッセイバッファーに再懸濁し、20μM PAFのH−PAF溶液(すなわち0.4μMのH−PAFおよび19.6μMの冷C16−PAF)を調製した。
【0049】
Lp−PLA2活性アッセイについて、5μLのアッセイバッファー(全計数およびブランクについて;n=8)または2通りの血漿試料を96−ウェルプレートにアリコートした。各プレートをテープで密封し蒸発を防止した。プレートは21℃に平衡させた。
【0050】
100マイクロリットルのH−PAF溶液を各ウェルに添加し、混合し、21℃で5分間インキュベートした。代わりに50μlの水を添加した、全計数として用いられる試料を除き、氷冷BSA溶液(50μLの50mg/mL BSA水溶液)を各ウェルに添加した。ついで該溶液を混合し冷蔵庫で5分間インキュベートした。
氷冷TCA溶液(25μLの56%容量/容量の溶液)を各ウェルに添加し、混合し、冷蔵庫で15分間インキュベートした。ついで該プレートを6,000gで15分間、4℃で遠心分離した。各上清のアリコート(45μL)を96−ウェルのポリスチレンプレートに移した。
【0051】
H−PAF溶液(10μL)を6ウェルに添加し、全計数として用いた。MicroScint−20 シンチレーションカクテル(200μL)を各ウェルに添加し、プレートをテープで密封し、10分間最大速度のボルテックスにて混合した。ウェットティッシュでぬぐい、別のきれいなティッシュで乾かすことでプレートの静電気を除去した。トップカウントシンチレーション計数装置を用い各試料について2分間の試料計数を得た。
Lp−PLA2活性を以下の式;
Lp−PLA2活性(ナノモル/分/ml)=32*(CPM45μl−上清−CPM
ブランク)/(CPM10μl−スパイク−CPMブランク
[ここで、
CPM45μl−上清は各試料の平均計数であり、
CPMブランクはブランクの平均計数であり、
CPM10μl−スパイクは全計数の平均計数ある]
を用いて算出した。
【0052】
実施例8.Lp−PLA2阻害剤で処置されたヒトにおけるLp−PLA2活性
Lp−PLA2阻害剤またはプラシーボ投与から投与後144時間に至るまでのベースラインおよび予定した時間ポイントにて健常ボランティアから血漿試料を収集した。実施例7記載のとおり血漿試料をLp−PLA2活性についてアッセイした。薬剤処置されたボランティアにてLp−PLA2活性の有意な阻害(>85%)が阻害剤投与後約1時間ないし約6〜約8時間で観察された。測定された当該阻害は阻害剤の薬物動態学的データに相関していた。一方、プラシーボ処置されたボランティアにおいてはLp−PLA2活性の有意な減少は全く検出されなかった。血漿試料を分光光度的にアッセイした場合に、Lp−PLA2のほんの約30%の阻害が阻害剤で処置されたボランティア由来の同試料から検出された。
【0053】
実施例9:ハイスループット放射分析によるLp−PLA2活性測定の検証
実施例7記載の放射標識基質を用いるハイスループットLp−PLA2活性測定に関連する本発明の方法を、アッセイ内活性測定との比較ならびに抽出法にて決定される活性測定との比較により検証した。本発明の方法は0.2ナノモル/分/mLの検出限界(「LOD」)および約100倍の線形ダイナミック・レンジ(0.5−48.5ナノモル/分/ml)を有する卓越した性能特性を示した。
【0054】
加えて、2つの臨床試験、試験A(n=68)および試験B(n=48)の試料にて比較した場合に本発明の方法を用いて決定したLp−PLA2活性値は抽出法にて決定した値と大いに相関した。さらに、血漿試料が少量でよいこと、放射性有機廃棄物がないこと、および必要ならば自動化にてさらに増大され得る非常に高いハイスループットであることを包含する、抽出法に勝る多数の利点を提供する。本発明の放射標識基質(実施例7)を用いるハイスループットLp−PLA2活性アッセイのための分散成分分析は、プレート内(アッセイ内)の分散成分推定値(「CV」)が分散基準を満たすことを示した(分散成分研究アッセイ内CVは約11.2%;<15%基準)。アッセイ間CV推定値もまた分散基準を満たした(アッセイ間CVは約12.9%;<20% 基準)。ブランク血清および全計数ウェルの数を各2から各4へ増加した場合にアッセイ間における変動の減少の評価は付加したブランク血清および全計数ウェルにて約1.5%であった。異なるピペットチップを用いた列間の分散に関する別の分析はアッセイ内CV推定値に約13%の寄与を示した。
【0055】
本明細書にて引用した特許および特許出願を含め、すべての刊行物を出典明示により本明細書の一部とする。本出願が優先権主張する任意の特許出願もまた上記と同様に出典明示により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料のLp−PLA2酵素活性を測定する方法であって、標識されたPAFを含む溶液を調製する工程;複数の組織試料の各々を、調製工程の溶液と、およびPAFのシークエスター分子と接触させてPAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程;該PAF−シークエスター分子の複合体を取り出す工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程、を含む方法。
【請求項2】
接触工程が、複数の試料の各々を調製工程の溶液と第一に接触させる工程;その第一の接触工程の各々の溶液をPAFのシークエスター分子と第二に接触させてPAF−シークエスター分子の複合体を形成する工程を含み;取り出し工程が該PAF−シークエスター分子の複合体を沈殿化溶液と接触させて沈殿物および上清を形成する工程を含み;検出工程が沈殿物を上清から分離する工程;およびLp−PLA2活性を検出する工程を含むところの、請求項1記載の方法。
【請求項3】
取り出し工程がPAFのシークエスター分子の濾過を含んでなる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1試料が血液を含有する請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1試料が血清、細胞溶解物、組織溶解物、尿または血漿から成る群より選択される請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1試料がヒト由来である請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1試料が約5μLの容量である請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
複数の試料の各々を微小遠心管にアリコートすることをさらに含んでなる請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
複数の試料の各々をマイクロタイタープレートのウェルにアリコートすることをさらに含んでなる請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
標識されたPAFが放射標識されている請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
標識されたPAFがトリチウム化されている請求項10記載の方法。
【請求項12】
標識されたPAFが14Cにて標識されている請求項10記載の方法。
【請求項13】
調製工程にて用いる溶液中、標識されたPAFがPAFの最大約20%を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
調製工程にて用いる溶液中、標識されたPAFがPAFの約2.0%を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項15】
調製工程の溶液中、PAFの全濃度が少なくとも約20μMである請求項1または2記載の方法。
【請求項16】
PAFがLp−PLA2の基質である請求項1または2記載の方法。
【請求項17】
標識された、および標識されていないPAFを含む溶液が緩衝溶液である請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
緩衝溶液がHEPES、塩化ナトリウム(NaCl)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する請求項17記載の方法。
【請求項19】
調製工程の溶液および各試料を少なくとも約5秒間混合することをさらに含んでなる請求項1記載の方法。
【請求項20】
調製工程の溶液を各試料と一緒に約21℃で少なくとも約1分間インキュベートすることをさらに含んでなる請求項19記載の方法。
【請求項21】
各試料を調製工程の溶液と一緒に約5分間インキュベートする請求項20記載の方法。
【請求項22】
PAF−シークエスター分子の複合体が、分解されていないPAF−シークエスター分子の複合体およびリゾホスファチジルコリン(リゾ−PC)−シークエスター分子複合体を含んでなる請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
接触工程のシークエスター分子が外因性BSAである請求項1または2記載の方法。
【請求項24】
BSAが約10℃未満である請求項23記載の方法。
【請求項25】
BSAが約4℃である請求項23記載の方法。
【請求項26】
BSAが約50mg/mLの濃度である請求項23記載の方法。
【請求項27】
接触工程のシークエスター分子が内因性ヒト血清アルブミンである請求項1または2記載の方法。
【請求項28】
第一接触工程の溶液およびシークエスター分子を約10℃未満で少なくとも約1分間インキュベートする請求項2記載の方法。
【請求項29】
沈殿化溶液がTCAを含有する請求項2記載の方法。
【請求項30】
TCAを含有する沈殿化溶液が約10℃未満である請求項29記載の方法。
【請求項31】
TCAが水に対して56%容量/容量の濃度である請求項29記載の方法。
【請求項32】
TCAを第2接触工程の溶液と少なくとも約1分間インキュベートする請求項29記載の方法。
【請求項33】
遠心分離により沈殿が上清から分離される請求項29記載の方法。
【請求項34】
遠心分離が約10℃未満で少なくとも約5分間、少なくとも6,000gにて実施される請求項33記載の方法。
【請求項35】
遠心分離が4℃にて約15分間実施される請求項33記載の方法。
【請求項36】
緩衝溶液を全計数反応またはブランク反応として用いるための少なくとも2つの容器にアリコートすることをさらに含んでなる請求項2記載の方法。
【請求項37】
容器が微小遠心管またはマイクロタイタープレートのウェルである請求項36記載の方法。
【請求項38】
緩衝溶液が、PAFが溶液に添加されていないところの、調製工程の溶液と同じである請求項36記載の方法。
【請求項39】
緩衝溶液の容量が各反応にて用いられる試料の容量とほぼ同じである請求項36記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つのブランク反応物を略同じ容量および濃度の調製工程の溶液およびシークエスター分子と接触させ、少なくとも2つの全計数反応のアリコートを略同じ容量の調製工程の溶液およびシークエスター分子の置換溶液(ここで、置換溶液はシークエスター分子を含有しない)と接触させることをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
各試料の上清部分、ブランク反応物および全計数反応物を別容器にアリコートすることをさらに含んでなる請求項40記載の方法。
【請求項42】
シンチレーションカクテルを上清、ブランク反応物および全計数反応物の各アリコートに接触させることをさらに含んでなる請求項41記載の方法。
【請求項43】
シンチレーション計数装置にてシンチレーションカクテルならびに上清、ブランク反応物および全計数反応物を少なくとも約1分間計数することをさらに含んでなる請求項42記載の方法。
【請求項44】
式:CPM全計数=(CPM正味全計数*VRT)/(VSA
[ここで、
CPM正味全計数=全計数反応物からの上清のアリコート中の正味平均計数;
RT=遠心分離前の最終反応溶液の全容量;および
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートされた全計数反応物からの上清の容量である]
を用いて全計数反応の正味平均計数としてCPM全計数を算出することをさらに含んでなる請求項43記載の方法。
【請求項45】
式:
Lp−PLA2活性(ナノモル/分/ml)=S*(CPM試料−CPMブランク)*VST/(CPM全計数*VSA*V*T)
[ここで、
S=調製工程の溶液中のPAF全量(ナノモル);
CPM試料=各試料からの上清の平均計数;
CPMブランク=ブランク反応物からの上清の平均計数;
ST=上清の総容量;
CPM全計数=全計数反応物の平均計数;
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートされた各上清の容量;
V=第一接触工程にてアリコートされた試料の全容量(μL);および
T=第一接触工程の総時間(分)である]
を用いて各上清のLp−PLA2活性を算出することをさらに含んでなる請求項44記載の方法。
【請求項46】
総添加計数用に調製工程の溶液のアリコートを少なくとも1つのブランク反応物に接触させることをさらに含んでなる請求項36記載の方法。
【請求項47】
調製工程の溶液のアリコートの容量が約1μLないし約20μLである請求項46記載の方法。
【請求項48】
調製工程の溶液のアリコートの容量が約10μLである請求項46記載の方法。
【請求項49】
シンチレーションカクテルを上清、ブランク反応物および総添加計数物の各アリコートに接触させることをさらに含んでなる請求項46記載の方法。
【請求項50】
シンチレーションカクテルと上清、シンチレーションカクテルとブランク反応物、ならびにシンチレーションカクテルと総添加計数物を、シンチレーション計数装置にて少なくとも約1分間計数することをさらに含んでなる請求項49記載の方法。
【請求項51】
式:CPM総添加計数=(CPM正味スパイク計数*VPAF)/(Vスパイク
[ここで、
CPM正味スパイク計数=総添加計数からの上清の正味平均計数;
PAF=第一接触工程にて添加した調製工程の溶液の容量;
スパイク=総添加計数用にブランク反応の上清に添加した調製工程の溶液の容量である]
を用いて容量調整した、総添加計数の正味平均計数としてCPM総添加計数を算出することをさらに含んでなる請求項50記載の方法。
【請求項52】
式:
Lp−PLA2活性(ナノモル/分/ml)=S*(CPM試料−CPMブランク)*VST/(CPM総添加計数*VSA*V*T)
[ここで、
S=調製工程の溶液中の全PAF量(ナノモル);
CPM試料=各試料からの上清の平均計数;
CPMブランク=ブランク反応物からの上清の平均計数;
ST=上清の全容量;
CPM総添加計数=総添加計数の平均計数;
SA=シンチレーションカウンティング用にアリコートした各上清の容量;
V=第一接触工程でアリコートした試料の全容量(μL);および
T=第一接触工程の総時間(分)である]
を用いて各上清のLp−PLA2活性を算出することをさらに含んでなる請求項51記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1試料がLp−PLA2阻害剤を投与された動物由来である請求項1または2記載の方法。
【請求項54】
PAF、PAFのシークエスター分子および沈殿化溶液を含有する複数の試料におけるLp−PLA2酵素活性を測定するためのキット。
【請求項55】
沈殿化溶液がTCAを含有する請求項54記載のキット。

【公開番号】特開2012−50443(P2012−50443A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−207479(P2011−207479)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2006−533451(P2006−533451)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】