MAGE−A3マーカーの特異的検出のためのプライマーおよびプローブを含む癌の検出および診断の方法
【課題】 MAGE-A3発現性腫瘍組織を有しており、それゆえMAGE-A3特異的免疫療法からの利益を享受する患者を同定するためのアッセイを提供すること。
【解決手段】 本発明は新しい診断キットおよび診断方法で使用するためのMAGE-A3特異的プライマーおよびプローブに関する。本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している特定の癌患者集団の免疫学的治療に関する。
【解決手段】 本発明は新しい診断キットおよび診断方法で使用するためのMAGE-A3特異的プライマーおよびプローブに関する。本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している特定の癌患者集団の免疫学的治療に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMAGE-A3を検出するための診断方法に関する。本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍を患う患者集団の免疫学的治療に関し、その際、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有する患者は本明細書に記載の診断方法を用いて同定される。
【背景技術】
【0002】
MAGE(メラノーマ抗原)ファミリーの遺伝子は、もともとは癌患者の血中リンパ球由来の細胞傷害性リンパ球からの認識により同定されたものである(Van der Bruggenら, 1991)。MAGE遺伝子ファミリーは現在では20種を超えるメンバーを含み、MAGE A、B、C、およびD遺伝子からなっている(Scanlanら, (2002) Immunol. Rev. 188:22-32; Chomezら, (2001) Cancer Res. 61(14):5544-51)。それらの遺伝子はX染色体上にクラスターを形成しているが(Lucasら, 1998 Cancer Res. 58:743-752; Lucasら, 1999 Cancer Res. 59:4100-4103; Lucasら, 2000 Int. J. Cancer 87:55-60; Lurquinら, 1997 Genomics 46:397-408; Muscatelliら, 1995 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4987-4991; Poldら, 1999 Genomics 59:161-167; Rognerら, 1995 Genomics 29:725-731)、その機能については未だ不明確である(Ohmanら, 2001 Exp. Cell Res. 265(2):185-94)。MAGE遺伝子は相同性が非常に高く、特にMAGE-Aファミリーのメンバーは60〜98%の相同性を有する。MAGE遺伝子は、精原細胞および胎盤での発現を除けば、全ての正常細胞内で発現されていない(Haasら, 1988 Am. J. Reprod. Immunol. Microbiol. 18:47-51; Takahashiら, 1995 Cancer Res. 55:3478-382)。
【0003】
癌でのMAGE遺伝子発現の再活性化は、プロモーターの異常な脱メチル化による(De Smeetら, 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(14):7149-53; De Smeetら, 1999 Mol. Cell Biol. 19(11):7327-35)。12種類のMAGE-A遺伝子が以下の癌で可変的に過剰発現される:移行細胞癌、食道癌、メラノーマ、膀胱癌、および非小細胞肺癌(NSCLC)(Scanlanら, 2002 Immunol. Rev. 188:22-32)。癌組織におけるMAGE発現の過剰発現性と特異性から、MAGE-A3タンパク質が癌ワクチンのための抗原として用いられている(Scanlanら, 2002 Immunol. Rev. 188:22-32)。しかし、癌患者で見出される発現量の範囲が広いため、このタンパク質を発現している患者へのワクチン接種を管理するためには、MAGE-A3の発現レベルを各患者で正確に予測しなければならない。MAGE-A3はMAGE-3と相互に交換しうる形で言及されることが多く、本明細書では双方とも用いられている。
【0004】
メラノーマ
遠隔転移のある悪性メラノーマを示す患者(American Joint Committee on Cancer (AJCC)の分類でステージIV)では、生存期間の中央値は1年であり、長期生存率は5%にすぎない。ステージIVのメラノーマに対する標準的な治療を行ってもわずか8〜25%の治療応答率であり、全生存には効果がない。局所転移のある患者(ステージIII)では生存期間の中央値は2〜3年であり、原発性及び局所転移を外科的に十分に制御しても長期生存の可能性は低い(Balchら, 1992 Semin. Surg. Oncol. 8(6):400-14)。ステージI〜IIIのメラノーマ患者の多くは、外科的に腫瘍が除去されているが、それらの患者で再発する危険性がかなりある。従って、メラノーマの進行を防ぎ、転移性メラノーマに対する治療レジメンおよび原発性腫瘍が除去されている患者のためアジュバント療法を改善することが必要なままである。
【0005】
肺癌
肺癌には以下の2つのタイプがある:非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC)。これらの名称は単純に腫瘍内に見出される細胞のタイプを述べたものである。NSCLCには扁平上皮癌、腺癌、および大細胞癌が含まれ、肺癌の約80%を占める。NSCLCは治癒が困難で現在行われている治療はできる限りの延命と疾患症状の軽減を目的とする傾向がある。NSCLCは最も一般的な肺癌であり、予後は不良を伴う。全てのNSCLC患者のうちで約25%が診断時に局所疾患を有するが、外科的切除はまだ行いうる状態である(AJCC分類でステージIB、IIA、またはIIB)。しかし、それらの患者の50%超は、外科的に完全に切除を行ってから2年以内に再発する。従って、これらの患者に対して、より良い治療を提供するニーズがある。
【0006】
MAGE-A3の発現
細胞株および腫瘍サンプル内でのMAGE-A3遺伝子の発現を測定しようとこれまでに多数の方法が試みられてきた。半定量的RT-PCR(De Plaenら, 1994 Immunogenetics 40(5):360-9)、その他のPCRをベースとした技法、および低密度マイクロアレイが全て用いられてきた(Zammatteoら, 2002 Clinical Chemistry 48(1):25-34)。しかし、それらの研究の多くで、主な問題点は、偽陽性の原因となるMAGEファミリーメンバー間の非常に高い相同性であった。大規模なフェーズIIおよびIII試験のために、MAGE-A3発現性サンプルを特異的に同定し、かつサンプルを陽性と誤って評価する可能性を低減できる、定量的な高スループットのアッセイ法が望まれる。
【0007】
ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)腫瘍組織(これは臨床センター内で腫瘍組織を保存するために通常用いられている方法である)の使用に伴う別の問題がある。ホルマリンでの固定化によって組織内のRNAの分子構造が変化し、架橋とさらには部分的な分解が生ずる。部分的な分解が起こると100〜300塩基対のRNAの小片が作られる。これらのRNAの構造変化によって、FFPE組織から抽出されたRNAを従来の診断技法で使用することが困難となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Van der Bruggenら, 1991
【非特許文献2】Scanlanら, (2002) Immunol. Rev. 188:22-32;
【非特許文献3】Chomezら, (2001) Cancer Res. 61(14):5544-51
【非特許文献4】Lucasら, 1998 Cancer Res. 58:743-752;
【非特許文献5】Lucasら, 1999 Cancer Res. 59:4100-4103;
【非特許文献6】Lucasら, 2000 Int. J. Cancer 87:55-60;
【非特許文献7】Lurquinら, 1997 Genomics 46:397-408;
【非特許文献8】Muscatelliら, 1995 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4987-4991;
【非特許文献9】Poldら, 1999 Genomics 59:161-167;
【非特許文献10】Rognerら, 1995 Genomics 29:725-731
【非特許文献11】Ohmanら, 2001 Exp. Cell Res. 265(2):185-94
【非特許文献12】Haasら, 1988 Am. J. Reprod. Immunol. Microbiol. 18:47-51;
【非特許文献13】Takahashiら, 1995 Cancer Res. 55:3478-382
【非特許文献14】De Smeetら, 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(14):7149-53;
【非特許文献15】De Smeetら, 1999 Mol. Cell Biol. 19(11):7327-35
【非特許文献16】Balchら, 1992 Semin. Surg. Oncol. 8(6):400-14
【非特許文献17】De Plaenら, 1994 Immunogenetics 40(5):360-9
【非特許文献18】Zammatteoら, 2002 Clinical Chemistry 48(1):25-34
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有しており、それゆえMAGE-A3特異的免疫療法からの利益を享受する患者を同定するためのアッセイを開発した。
【0010】
本発明の1実施形態においては、配列番号3〜12のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプライマーが提供される。さらに別の1実施形態においては、下記のプライマーのペアの1つ以上を含んでいるプライマーのセットが提供される:
a) 配列番号3および4;
b) 配列番号5および6;
c) 配列番号7および8;
d) 配列番号9および10;ならびに
e) 配列番号11および12。
【0011】
本発明のさらに別の1態様においては、配列番号13〜17、53または54のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプローブが提供される。
【0012】
さらに別の1実施形態においては、
(i) 1種の正方向プライマー;
(ii) 1種の逆方向プライマー;および
(iii) 1種のプローブ、
を含み、要素(i)、(ii)、および(iii)は、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列とハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)または(iii)の標的配列のうちの少なくとも1つは、他の全てのMAGE Aヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつMAGE-A3とMAGE-A6とを区別するために用いることができるキットが提供される。
【0013】
さらに、
(i) 1種の正方向プライマー;
(ii) 1種の逆方向プライマー;および
(iii) 1種のプローブ、
を含み、要素(i)、(ii)、および(iii)は、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列とハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)または(iii)の標的配列のうちの少なくとも1つは、MAGE-A6ヌクレオチド配列の等価の領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつMAGE-A3とMAGE-A6とを区別するために用いることができるキットが提供される。
【0014】
1実施形態においては、本発明のキットは、下記の要素を含むことができる:(i)本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたはプライマーのセット;および(iii)本明細書に記載の少なくとも1種のプローブ。1例では、要素(i)は配列番号3および4を含んでおり;要素(ii)は配列番号13を含んでいる;あるいは、要素(i)は配列番号5および6を含んでおり;要素(ii)は配列番号14を含んでいる;または、要素(i)は配列番号7および8を含んでおり;要素(ii)は配列番号15を含んでいる;または、要素(i)は配列番号9および10を含んでおり;要素(ii)は配列番号16を含んでいる;または、要素(i)は配列番号11および12を含んでおり;要素(ii)は配列番号17を含んでいる;または、要素(i)は配列番号11および12を含んでおり;要素(ii)は配列番号53もしくは配列番号54を含んでいる。
【0015】
本発明のさらに別の1実施形態においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマー、本明細書に記載のプライマーのセット、本明細書に記載のプローブ、または本明細書に記載のキットとを接触させるステップを含んでいる。
【0016】
本発明の別の1態様は、ある生物学的サンプルを本明細書に記載のプライマー、プローブ、またはプライマーのセットを用いてアッセイすることによって、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法である。
【0017】
さらに別の1態様においては、患者を診断する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマー、本明細書に記載のプライマーのセット、本明細書に記載のプローブ、または本明細書に記載のキットとを接触させるステップ、および該サンプル中にMAGE-A3が発現されているかを評価するステップを含んでいる。
【0018】
この方法はさらに、ヌクレオチド配列を増幅するステップ、および前記サンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出するステップを含むことができる。
【0019】
さらに別の1態様においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマーまたはプローブとを接触させることを含んでいる。この方法はさらに、単離されたヌクレオチド配列がストリンジェントな条件下で少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを判定し、それによって腫瘍組織がMAGE-A3陽性であるかを検出するステップを含むことができる。1実施形態においては、この方法はさらに、前記ヌクレオチド配列が少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを検出するための、in situハイブリダイゼーションを用いるステップを含むことができる。
【0020】
本明細書に記載の方法は、凍結組織である生物学的サンプルについて用いることができる。あるいは、もしくはさらに、本明細書に記載の方法は、パラフィンで保存された組織、例えばホルマリンで固定化され、パラフィン包埋された組織(FFPE)である生物学的サンプルについて行うことができる。
【0021】
本発明はさらに、患者を治療する方法を提供し、該方法は:ある患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを本明細書に記載の方法を用いて判定し、次いで本明細書に記載のMAGE-A3免疫療法、または免疫療法薬を含む組成物を該患者に投与することを含んでいる。
【0022】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法を提供し、その際、該患者は既にMAGE-A3発現性腫瘍組織を除去/治療するための処置を受けている。この方法は、本明細書に記載した方法を用いて患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを判定し、次いで、本明細書に記載のMAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物を該患者に投与することを含んでいる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者の治療のための医薬品の製造における使用が提供され、その際、患者は本明細書に記載の方法を用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有することが同定される。
【0024】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者の治療のための医薬品の製造における使用が提供され、その際、患者は本明細書に記載の方法を用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有することが同定される。
【0025】
1実施形態においては、本明細書に記載の治療法または使用法が提供され、この実施形態では、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物は、MAGE-A3抗原またはそのペプチドを含んでいる。1実施形態においては、MAGE-A3抗原またはそのペプチドは、ペプチドEVDPIGHLYを含んでいるかまたはこのペプチドからなる。
【0026】
本発明で用いるためのMAGE-A3抗原またはペプチドは、担体タンパク質と融合またはコンジュゲートすることができる。1実施形態においては、担体タンパク質は、プロテインD、NS1、またはCLytAもしくはそれらの断片から選択することができる。
【0027】
本発明の1実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物は、アジュバントをさらに含むことができる。例えば、アジュバントは、次の1種以上または組み合わせを含むことができる:3D-MPL;アルミニウム塩;CpG含有オリゴヌクレオチド;QS21やISCOMなどのサポニン含有のアジュバント;水中油型乳剤;およびリポソーム。1実施形態においては、アジュバントは3D-MPL、CpG含有オリゴヌクレオチド、およびQS21を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】MAGE-Aファミリーメンバー内でのMAGE-A3 RT-PCR TaqManプライマーの特異性。
【図2】MAGE-A3発現用のMinor Groove Binding(MGB)プローブTaqMan RT-PCRの特異性。
【図3】MAGE-A3およびMAGE-A6プラスミドの存在下でのMAGE-A3プライマーの特異性試験。
【図4】定量的TaqMan PCRで測定した、MAGE-A3の腫瘍での発現。
【図5】MAGE-A3発現の試験。
【図6】図6a:FFPE組織の使用のために設計されたMAGE-A3プライマーの特異性。図6b:さまざまな量のRNAに対してのプライマーの線形性の試験。
【図7】RNA later frozen assayとFFPE組織PCRとの比較。
【図8】RNA later frozen assayとFFPEをベースとしたMAGE-A3アッセイとの相対比較。
【図9−1】リポプロテインD断片、Mage3断片、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ならびにその各アミノ酸配列(配列番号35および36)。
【図9−2】図9-1の続き。
【図9−3】図9-2の続き。
【図10−1】NS1-MAGE3、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質(配列番号37)。
【図10−2】図10-1の続き。
【図11】融合タンパク質NS1-MAGE3-HisをコードするDNA(配列番号38)。
【図12−1】CLYTA-MAGE3-ヒスチジンの融合タンパク質(配列番号39)。
【図12−2】図12-1の続き。
【図13】融合タンパク質CLYTA-MAGE3-HisのDNA(配列番号40)。
【図14】MAGE-A3用のRT-PCRプライマーおよびプローブを設計するためのMAGE-A遺伝子ファミリーの配列のアラインメント。
【図15】標的配列を含む領域(囲んだ活字部分)を同定するためのMAGE-A3配列およびMAGE-A6配列のアラインメント。
【図16】半定量的MAGE A3-RT-PCR用のクラス:5つのクラスをどのように半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに割り付けることができるかを示す一例。
【図17】20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-AプラスミドからのCt値のグラフによる比較。
【図18】20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値のグラフによる比較。
【図19】FFPE 異種移植GERL RNAの線形性−RNA Inputの100から0.1 ngまでの2倍連続希釈。
【図20】図20は、MAGE-A3とβ-アクチンとの間のRNA Input vs ΔCtの対数(底は2)によるグラフを示している。
【図21】表1:半定量的MAGE RT-PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図22】表2:TaqMan 定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図23】表3:MAGE-A3半定量的PCR vs 定量的TaqMan PCRの比較。
【図24】表4:PCRミックス1およびPCRミックス2を用いた、CtおよびΔCt値の比較。
【図25】表5:凍結組織からのMGB TaqMan定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図26】表7:COBASTM TaqMan MAGE-A3プライマーおよびプローブの配列。
【図27】表8:COBASTM TaqMan β-アクチンプライマーおよびプローブの配列。
【図28】表9:COBASTM TaqManサンプルおよび対照の有効なCT値の範囲。
【図29】表10:COBASTM TaqMan温度サイクルプロフィール-MAGE-A3の排他性実験のためのPCR温度プロフィール。
【図30】表11:線形性およびRT-PCR効率、分析感度(検出限界)、方法の相関性、および再現性の実験用のRT-PCR温度プロフィール。
【図31】表12:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-A3プラスミドからのCt値。表13:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値。
【図32】表14:MAGE-A3排他性実験バリデーション。
【図33】表15および表16:MAGE-A3排他性実験の詳細。
【図34】表17:11段階のレベルで10回の反復実施から得られた線形性、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値、ならびにΔCt。
【図35】表18:MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率。
【図36】表19:線形性/RT-PCR効率実験バリデーション。
【図37】表20、21および22:線形性/RT-PCR効率実験の詳細。
【図38】表23:MAGE-A3Ctヒット率、各条件につきN=24。
【図39】表24:MAGE-A3Ctヒット率%、各条件につきN=24。表25:β-アクチンCtヒット率、各条件につきN=24。表26:β-アクチンCtヒット率%、各条件につきN=24。
【図40】表27:MAGE遺伝子FAM対照のCt。表28:β-アクチンHEX対照のCt。
【図41】表29;表30;および表31:検出限界実験の詳細。
【図42】表32:サンプルのクロスバリデーションの概要。
【図43】表33:比較一致度(Comparator Percent Agreement)によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。表34:不一致の結果を解消するために凍結試験(frozen Test)を用いた、比較一致度によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【図44】表35:実験対照MAGE遺伝子のCt。表36:実験対照β-アクチン遺伝子のCt。
【図45】表37、38および39:方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細。
【図46】表40:Run 1−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。表41:Run 1−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【図47】表42:Run 2−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。表43:Run 2−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【図48】表44:再現性バリデーション。
【図49】表45、46および47:再現性実験の詳細。
【発明を実施するための形態】
【0029】
表および配列の説明
表1:半定量的MAGE RT-PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0030】
表2:TaqMan 定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0031】
表3:MAGE-A3半定量的PCR vs 定量的TaqMan PCRの比較。
【0032】
表4:PCRミックス1およびPCRミックス2を用いた、CtおよびΔCt値の比較。
【0033】
表5:凍結組織からのMGB TaqMan定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0034】
表6:半定量的MAGE-A3 RT-PCR用のクラス:5つのクラスをどのように半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに割り付けることができるかを示す一例(図16参照)。
【0035】
表7:COBASTM TaqMan MAGE-A3プライマーおよびプローブの配列。
【0036】
表8:COBASTM TaqMan β-アクチンプライマーおよびプローブの配列。
【0037】
表9:COBASTM TaqManサンプルおよび対照の有効なCT値の範囲。
【0038】
表10:COBASTM TaqMan温度サイクルプロフィール-MAGE-A3の排他性実験のためのPCR温度プロフィール。
【0039】
表11:線形性およびRT-PCR効率、分析感度(検出限界)、方法の相関性、および再現性の実験用のRT-PCR温度プロフィール。
【0040】
表12:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-A3プラスミドからのCt値。
【0041】
表13:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値。
【0042】
表14:MAGE-A3排他性実験バリデーション。
【0043】
表15および表16:MAGE-A3排他性実験の詳細。
【0044】
表17:11段階のレベルで10回の反復実施から得られた線形性、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値、ならびにΔCt。
【0045】
表18:MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率。
【0046】
表19:線形性/RT-PCR効率実験バリデーション。
【0047】
表20、21および22:線形性/RT-PCR効率実験の詳細。
【0048】
表23:MAGE-A3Ctヒット率、各条件につきN=24。
【0049】
表24:MAGE-A3Ctヒット率%、各条件につきN=24。
【0050】
表25:β-アクチンCtヒット率、各条件につきN=24。
【0051】
表26:β-アクチンCtヒット率%、各条件につきN=24。
【0052】
表27:MAGE遺伝子FAM対照のCt。
【0053】
表28:β-アクチンHEX対照のCt。
【0054】
表29;表30;および表31:検出限界実験の詳細。
【0055】
表32:サンプルのクロスバリデーションの概要。
【0056】
表33:比較一致度(Comparator Percent Agreement)によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【0057】
表34:不一致の結果を解消するために凍結試験(frozen Test)を用いた、比較一致度によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【0058】
表35:実験対照MAGE遺伝子のCt。
【0059】
表36:実験対照β-アクチン遺伝子のCt。
【0060】
表37、38および39:方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細。
【0061】
表40:Run 1−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。
【0062】
表41:Run 1−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【0063】
表42:Run 2−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。
【0064】
表43:Run 2−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【0065】
表44:再現性バリデーション。
【0066】
表45、46および47:再現性実験の詳細。
【0067】
配列番号1-MAGE3-E2F(半定量的MAGE3アッセイ用のプライマー)(表1)。
【0068】
配列番号2-MAGE3-E3R(半定量的MAGE3アッセイ用のプライマー)(表1)。
【0069】
配列番号3-E3 MAGE3 TMF(エクソン3 MAGE-A3用の正方向プライマー)(表2)。
【0070】
配列番号4-E3 MAGE3 TMR(エクソン3 MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 エクソン配列の逆相補体である)(表2)。
【0071】
配列番号5-I3 MAGE3 TMF(イントロン3 MAGE-A3用の正方向プライマー)(表2)。
【0072】
配列番号6-I3 MAGE3 TMR(イントロン3 MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 イントロン配列の逆相補体である)(表2)。
【0073】
配列番号7-MAGEA3-775F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0074】
配列番号8-MAGEA3-849R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0075】
配列番号9-MAGE3e-950F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0076】
配列番号10-MAGEA3e-1037R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0077】
配列番号11-MAGEA3f-623F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0078】
配列番号12-MAGEA3f-697R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0079】
配列番号13-E3 MAGE3 TMP(エクソン3 MAGE3用のプローブ)(表2)。
【0080】
配列番号14-I3 MAGE-A3 TMP(イントロン3 MAGE3用のプローブ)(表2)。
【0081】
配列番号15-MAGEA3-801Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0082】
配列番号16-MAGEA3e-1000Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0083】
配列番号17-MAGEA3f-651Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0084】
配列番号18-β-アクチン-E4F(β-アクチンプライマー)(表1)。
【0085】
配列番号19-β-アクチン-E6R(β-アクチンプライマー)(表1)。
【0086】
配列番号20-β-アクチン-TMF(β-アクチンプライマー)(表2)。
【0087】
配列番号21-β-アクチン-TMR(β-アクチンプライマー)(表2)。
【0088】
配列番号22-β-アクチン-TMP(β-アクチンプローブ)(表2)。
【0089】
配列番号23〜配列番号29:MAGE3イムノペプチド。
【0090】
配列番号30〜配列番号34:アジュバントオリゴヌクレオチド。
【0091】
配列番号35-リポプロテインD断片-MAGE3断片-ヒスチジンテイルの融合タンパク質のヌクレオチド配列(図9)。
【0092】
配列番号36-配列番号35のアミノ酸配列(図9)。
【0093】
配列番号37-融合タンパク質NS1-MAGE3-ヒスチジンテイルのアミノ酸配列(図10)。
【0094】
配列番号38-配列番号37をコードするヌクレオチド配列(図11)。
【0095】
配列番号39-融合タンパク質CLYTA-MAGE3-ヒスチジンのアミノ酸配列(図12)。
【0096】
配列番号40-CLYTA-MAGE3-ヒスチジン融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(図13)。
【0097】
配列番号41-MAGE 1 断片(図14)。
【0098】
配列番号42-MAGE 2 断片(図14)。
【0099】
配列番号43-MAGE 4a 断片(図14)。
【0100】
配列番号44-MAGE 7 断片(図14)。
【0101】
配列番号45-MAGE 8 断片(図14)。
【0102】
配列番号46-MAGE 10 断片(図14)。
【0103】
配列番号47-MAGE 11断片(図14)。
【0104】
配列番号48-MAGE 12 断片(図14)。
【0105】
配列番号49-MAGE-A6 断片(図14)。
【0106】
配列番号50-MAGE-A3 断片(図14)。
【0107】
配列番号51-MAGE-A3 断片(図15)。
【0108】
配列番号52-MAGE-A6 断片(図15)。
【0109】
配列番号53-MAGE-A3合成プローブ配列MAGEA3F-646MOD(表7)。
【0110】
配列番号54-非修飾ヌクレオチドを有するMAGEA3F-646MODプローブ配列。
【0111】
配列番号55-β-アクチンプライマー配列RGI BACT F2(表8)。
【0112】
配列番号56-β-アクチンプライマー配列RGI BACT R2(表8)。
【0113】
配列番号57-β-アクチンプローブ配列HW RGIBACTH(表8)。
【0114】
詳細な説明
本明細書で用いている「標的配列」という用語は、MAGE-A3核酸配列(DNAまたはRNAのいずれか、例えばゲノムDNA、メッセンジャーRNA、またはそれらの増幅型)の1領域であって、これに対してプローブまたはプライマーの配列が部分的な(すなわちある程度のミスマッチがある)または完全な同一性を有している領域である。なお逆方向プライマーは、それが認識する配列の逆相補体(または、上記と同様に、ある程度のミスマッチがある)である。標的配列は通常は、もう一つ別のまたは他の全てのMAGE-Aヌクレオチド配列と比較して少なくとも1個のヌクレオチドが異なるMAGE-A3配列の1領域を指す。しかし、本発明のいくつかの実施形態において、1種以上のプライマーおよびプローブについて、使用される少なくとも1種または2種のプライマーおよびプローブが、区別されるべき遺伝子間で異なる標的配列を認識する場合には、標的配列がMAGE-Aヌクレオチド配列間で同一でもよい。
【0115】
従って、1実施形態においては、特定のプライマーまたはプローブは、標的MAGE-A3配列とミスマッチのない状態で結合し、かつ別のMAGE-A配列、例えばMAGE-6の配列のこれと等価な領域と1つ以上の塩基対のミスマッチのある状態で結合する。
【0116】
本発明のプライマーまたはプローブにとっての標的配列は、MAGE-A3の非常に高い特異性での検出を可能とするために、2種の遺伝子間の差(ミスマッチ)が最多である配列であることができる。
【0117】
本発明の1実施形態においては、標的配列は図15の四角で囲んだ領域中にある。
【0118】
適切には、プライマーまたはプローブは、該プライマーまたはプローブの全体にわたって標的配列と少なくとも95%同一であることができ、適切には95%超、例えば96%、97%、98%、99%同一であることができ、最も好ましくはその長さにわたって標的MAGE-A3配列と100%の同一性を有することができる。例えば、本発明のプライマーもしくはプローブは、該プライマーもしくはプローブの全ヌクレオチドの位置において該標的配列と同一であることができ、または、プローブの長さ、温度、反応条件、およびアッセイに必要条件に応じて、1箇所、2箇所、またはそれ以上のミスマッチを有してもよい。ただし、当然のことながら、逆方向プライマーはプライマー配列の逆相補体である領域に対してこれらの条件を充足する。
【0119】
適切には、プライマーまたはプローブの各ヌクレオチドは、その対をなす標的ヌクレオチドと水素結合を形成することができる。
【0120】
好ましくは、プライマーまたはプローブと標的配列との相補性は、A:TおよびC:Gの塩基対形成の程度で評価される(アデニン(A)ヌクレオチドはチミン(T)とペアを作り、グアニン(G)ヌクレオチドはシトシン(C)とペアを作る、またはその逆である)。RNAではTをU(ウラシル)で置き換えることができる。
【0121】
例えば、ユニバーサルプローブ中でイノシンを用いる場合には、相補性はイノシン(プローブ)-標的ヌクレオチド相互作用の程度で評価することもできる。
【0122】
従って、本発明は、表1および2に示すとおり、配列番号1〜12のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプライマーを提供する。本明細書で用いている「プライマー」という用語は、例えばPCR技法でプライマーとして用いることのできる一本鎖オリゴヌクレオチド配列のいずれかを意味する。従って、本発明でいう「プライマー」は、コピーしようとしている核酸鎖に対して実質的に同一(正方向プライマーについて)または実質的に逆相補的(逆方向プライマーについて)である、プライマー伸長産物の合成の開始点として作用することのできる一本鎖オリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーの設計(長さおよび具体的な配列)は、DNAおよび/またはRNA標的の性質、ならびにプライマーが用いられる条件(例えば温度やイオン強度)によって変わる。
【0123】
プライマーは、配列番号1〜12に示すヌクレオチド配列からなるものであってもよいし、または、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3ヌクレオチド配列内の標的配列への特異的結合に適切である限り、配列番号1〜12の配列を含むかもしくは該配列の範囲内の10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、あるいはそれ以上の塩基対であってもよい。必要に応じて、プライマーまたはプローブの長さもしくは配列をわずかに改変して、所与の環境下で必要とされる特異性および感度を維持することができる。本明細書に列挙したプローブおよび/またはプライマーは、1、2、3、4もしくは5個のヌクレオチドだけ、例えば一方の方向に、伸長もしくは短縮することができる。
【0124】
本明細書で用いている「ストリンジェントな条件」という用語は、プライマーがMAGE-A3ヌクレオチド配列内のヌクレオチド配列と特異的に結合することができるが、他のMAGEヌクレオチド配列のいずれとも結合しないハイブリダイゼーションの条件のいずれかを意味する。プローブのMAGE-A3ヌクレオチド配列の1領域への「特異的結合」または「特異的ハイブリダイゼーション」とは、プライマーまたはプローブがこの領域の一部またはその領域全体と、用いた実験条件下で二本鎖(二本鎖のヌクレオチド配列)を形成し、それらの条件下で、プライマーまたはプローブが、分析しようとするサンプル中に存在するヌクレオチド配列の他の領域とは二本鎖を形成しないことを意味する。MAGE-A3ヌクレオチド配列のある領域内での特異的なハイブリダイゼーションのために設計された本発明のプライマーおよびプローブが、その全体が該領域内に収まるか、または該領域とかなりの範囲で重複する(すなわち該領域内だけでなく、その外側のヌクレオチドとも二本鎖を形成する)ことができることは理解されるべきである。
【0125】
適切には、核酸標的領域に対するプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件下、例えば、3X SSC、0.1% SDS、50℃で起こる。当業者は、特異的なハイブリダイゼーションが達成できるように、温度、プローブ長、および塩濃度のパラメーターをどのように変えるかを知っている。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件はよく知られており、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual" 第2版 Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)、特に11章に例示されている。
【0126】
本発明はさらに、下記のプライマーのペアの1種以上を含んでいるプライマーのセットを提供する:
【表1】
【0127】
本発明はさらに、配列番号13〜17、53もしくは54のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプローブを提供する。本明細書で用いている「プローブ」という用語は、核酸と結合することができ、かつ例えばPCR技法で、プローブとして用いることができる、一本鎖オリゴヌクレオチド配列のいずれかを意味する。プローブは、配列番号13〜17、53もしくは54に示すヌクレオチド配列からなるものであってもよいし、または、それらがMAGE-A3ヌクレオチド配列内の標的配列に特異的に結合するために適したものである限り、配列番号13〜17、53、もしくは54の配列を含むかもしくは該配列の範囲内の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20、25、30、35、40、45、50、75、100、もしくはそれ以上の塩基対であってもよい。
【0128】
本発明の1実施形態においては、方法にプライマーのペアと組み合わせてプローブが用いられる場合には、プライマーのペアは、プローブが結合することができるかまたはそれに対するプローブが固体支持体上に固定化される、MAGE-A3ポリヌクレオチド断片の一部もしくは全ての増幅を可能にするものでなければならない。
【0129】
プライマーおよび/またはプローブはさらに、そのプローブの検出を可能にするマーカーを含むことができる。用いることができるマーカーの例としては、蛍光マーカー、例えば、6-カルボキシフルオレセイン(6FAMTM)、NEDTM (Applera Corporation)、HEXTMまたはVICTM (Applied Biosystems)、TAMRATMマーカー(Applied Biosystems, CA, USA);化学発光マーカー、例えばルテニウムプローブ;および放射性標識、例えばトリチウム化チミジンの形態のトリチウムが挙げられる。32Pも放射性標識として用いることができる。
【0130】
本発明の1実施形態においては、プローブは蛍光レポーター色素をその5'末端に含み、消光色素をその3'末端に含むことができる。蛍光レポーター色素は、6-カルボキシフルオレセイン(6FAM)を含むことができ、消光色素は非蛍光性のクエンチャー(NFQ)を含むことができる。場合により、Minor Groove Binder Protein(MGBTM;Applied Biosystems, CA, USA)をプローブに、例えば該プローブの3'末端に付加することができる。
【0131】
1実施形態においては、MGBTM Eclipseプローブを用いることができる(Epoch Biosystems, WA, USA)。MGBTM Eclipseプローブは、該プローブの5’末端に位置するMGBTM部分とEclipseTM Dark Quencherとを有する。蛍光レポーター色素は該プローブの5'末端に位置する。
【0132】
1実施形態においては、本発明のプライマーおよびプローブ配列は、天然のヌクレオチド構造または塩基、例えばアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)を含むことができる。
【0133】
さらに別の1実施形態においては、プローブの配列は、ヌクレオチド構造または塩基の合成のまたは改変型の類似物を含むことができる。合成のまたは改変型のとは、非天然のヌクレオチド構造または塩基を意味する。そのような合成のまたは改変型の塩基は、プローブ配列中の塩基のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または全てと置き換えることができる。1実施形態においては、シトシンは5-メチルdCと置換することができ、チミンは5-プロピニルdUと置換することができる。BHQ2 Quencherもその配列中に含めることができる。
【0134】
本発明はさらに、次の要素を含んでいるキットを提供する:(i)本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたはプライマーのセット;および(ii)本明細書に記載の少なくとも1種のプローブ。1実施形態においては、このキットは1種の正方向プライマー、1種の逆方向プライマー、ならびに該正方向および逆方向プライマーによって増幅される領域内の標的配列を有する1種のプローブ配列を含んでいる。この実施形態においては、プライマーのセットはMAGE-A3の配列の一部分(アンプリコン)を増幅することができ、かつ、プローブはストリンジェントな条件下でアンプリコンとハイブリダイズすることができる。
【0135】
MAGE-A3およびMAGE-A6の配列は相同性が非常に高く、ヌクレオチドでは98%アライメント、タンパク質の配列では95%のアライメントを有している。MAGE-A3配列を特異的に同定するために、MAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができるプライマーおよびプローブを同定する必要がある。
【0136】
1実施形態においては、本発明はストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列と特異的にハイブリダイズするプライマーおよび/またはプローブのセットを提供し、その際、該プライマーまたはプローブの標的配列の少なくとも1つは、他の全てのMAGE Aヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつ該セットはMAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができる。
【0137】
1実施形態においては、本発明はストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列と特異的にハイブリダイズするプライマーおよび/またはプローブのセットを提供し、その際、該プライマーまたはプローブの標的配列の少なくとも1つは、MAGE A6ヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつ該セットはMAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができる。
【0138】
1実施形態においては、少なくとも1種のプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3の標的配列において、MAGE-A6の等価な領域と比較して1個のヌクレオチドが異なっていてもよい。さらに別の1実施形態においては、少なくとも1種のプライマーまたはプローブの標的配列はMAGE-A6の等価な領域と比較して2個のヌクレオチドが異なっていてもよい。
【0139】
1実施形態においては、2種のプライマーと1種のプローブを含んでいるキットは、該プライマーおよびプローブの標的配列中に次の差異を有してもよい:
(i) 2種のプライマーのうちの1つまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(ii) 上記(i)で言及していないプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(iii) 残りのプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である。
【0140】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる;
(iii) プローブCの標的配列はMAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である。
【0141】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である;
(iii) プローブCの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる。
【0142】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(iii) プローブCの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる。
【0143】
1実施形態においては、キットは次のものを含むことができる:配列番号3および4からなるまたは配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号13からなるまたは配列番号13を含んでいるプローブ;配列番号5および6からなるまたは配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号14からなるまたは配列番号14を含んでいるプローブ;配列番号7および8からなるまたは配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号15からなるまたは配列番号15を含んでいるプローブ;配列番号9および10からなるまたは配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号16からなるまたは配列番号16を含んでいるプローブ;ならびに/または、配列番号11および12からなるまたは配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号17からなるまたは配列番号17を含んでいるプローブ。
【0144】
本発明のさらに別の1実施形態においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来するヌクレオチド配列と、本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたは少なくとも1セットのプライマーまたはプローブとを接触させるステップを含んでいる。MAGE-A3陽性腫瘍組織とは、患者から単離された、MAGE-A3抗原を発現している腫瘍または腫瘍細胞のいずれかを意味する。本明細書に記載の方法は、生物学的サンプルがMAGE-A3陽性腫瘍組織を含んでいるか、またはMAGE-A3陽性腫瘍組織からなるかを判定するために用いることができる。
【0145】
生物学的サンプルとは、患者から切除または単離された患者由来の組織または細胞のサンプルを意味する。
【0146】
さらに、患者を診断する方法が提供され、該方法は、生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来するヌクレオチド配列と、本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたは少なくとも1セットのプライマーまたはプローブとを接触させるステップ、およびMAGE-A3が該サンプル中に発現されているかを評価するステップを含んでいる。
【0147】
1実施形態においては、ヌクレオチド配列は生物学的サンプルであるか、または該サンプルから単離されたものである。
【0148】
本明細書で用いている「得られたまたは由来する」という用語は、包括的に用いられることを意味している。すなわち、腫瘍サンプルから直接的に単離された任意のヌクレオチド配列を包含するか、または、該サンプルから例えばmRNAまたはcDNAを作製するために逆転写を用いることによって誘導された任意のヌクレオチド配列を包含することを意図する。
【0149】
本発明の方法はさらに、ヌクレオチド配列を増幅すること、およびサンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出することを含むことができる。あるいは、またはさらに、本発明の方法は、単離されたまたは増幅されたヌクレオチド配列と、本明細書に記載の1種以上のプローブとを接触させることをさらに含んでもよい。
【0150】
1実施形態においては、ヌクレオチド配列は腫瘍サンプルから単離または精製される。RT-PCRでは、ゲノムDNAの夾雑が偽陽性の結果をもたらしうる。1実施形態においては、ゲノムDNAは、試験されるまたは本発明の方法に含まれるサンプルから、除去されるかまたは実質的に除去される。
【0151】
本発明の方法はMAGE-A3陽性腫瘍組織の検出に適当である。本発明の1実施形態においては、MAGE-A3陽性組織はin situハイブリダイゼーションによって検出することができる。in situハイブリダイゼーションとは、特定のDNAまたはRNA配列の形態学的部位を直接可視化するために、患者から単離された無傷の染色体、細胞、または組織上で、本発明のプライマーまたはプローブを用いて行われるハイブリダイゼーション反応を意味する。
【0152】
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションは適切なハイブリダイゼーション法および検出系のいずれかを用いて行うことができる。ハイブリダイゼーション系の例としては、従来法のドットブロット、サザンブロット、およびサンドイッチ法が含まれる。例えば、適当な方法としては、リバースハイブリダイゼーションの手法を挙げることができ、この手法では、タイプ特異的プローブを既知の識別可能な位置で(ドット、ライン、またはその他の形で)固体支持体上に固定化し、増幅したポリ核酸をハイブリッド形成を検出するために標識する。MAGE-A3特異的核酸配列、例えば本明細書に記載のプローブまたはプライマーは、ビオチンで標識することができ、ハイブリッドをビオチン-ストレプトアビジン結合を介して、非放射性呈色システムを用いて検出することができる。しかし、他のリバースハイブリダイゼーション系も用いることができ、これは例えば、Gravitら(Journal of Clinical Microbiology, 1998, 36(10):3020-3027)(この内容も参照により組み入れる)に説明されている。標準的なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件はKletereら, Journal of Clinical Microbiology, 1999, 37(8):2508-2517に記載されており、プローブおよびプライマーの長さおよび配列に要求される所与の環境下での特異性および感度を維持するために最適化される。
【0153】
1実施形態においては、本発明の方法は以下の使用を含むことができる:
a) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号13を含んでいるプローブ;
b) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
c) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;
d) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号54を含んでいるプローブ;
e) 配列番号5および6を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号14を含んでいるプローブ;
f) 配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号15を含んでいるプローブ;
g) 配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号16を含んでいるプローブ;
h) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
i) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;ならびに/または、
j) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号54を含んでいるプローブ。
【0154】
本明細書に記載の方法は、新鮮な組織、凍結組織、パラフィン保存した組織、および/またはエタノール保存した組織での使用に適している。サンプルからのRNAまたはDNAの単離にはよく知られた抽出および精製方法を用いることができる(例えば、Sambrookら, 1989)。サンプルからの抽出後、RNAまたはDNAを直接的に用いることができ、またはより好ましくは、ポリヌクレオチド増幅ステップ(例えばPCR)の後に用いることができる。特別な場合、例えばリバースハイブリダイゼーションアッセイなどのために、増幅の前にRNAをcDNAに逆転写することが必要かもしれない。後者のいずれの場合でも、増幅されたポリヌクレオチドはサンプルに「由来する」ものである。
【0155】
サンプルがパラフィン保存した組織であるような1実施形態においては、次のプライマーのセットおよびプローブを用いることができる:
a) 配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号15を含んでいるプローブ;
b) 配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号16を含んでいるプローブ;
c) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
d) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;ならびに/または、
e) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号54を含んでいるプローブ。
【0156】
本発明はさらに、患者を治療する方法を提供し、該方法は、患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを本明細書に記載の方法を用いて判定すること、およびMAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物を、該患者に投与すること、を含んでいる。患者はMAGE-A3を発現している腫瘍組織を有していてもよいし(活動性疾患の設定)、またはMAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者であって、既にMAGE-A3発現性腫瘍組織を除去/治療するために処置されている患者であってもよい(補助的設定)。
【0157】
本発明はさらに、MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍を患うかまたはMAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者の治療のための医薬品の製造における使用を提供し、その際患者は、本明細書に記載の診断方法、キット、プライマーまたはプローブを用いて、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有しているまたは有していたと同定される。
【0158】
MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体を含む組成物は、MAGE-A3抗原またはそのペプチドを含むことができる。1実施形態においては、MAGE-A3抗原またはそのペプチドは、ペプチドEVDPIGHLYを含んでいるかまたは該ペプチドからなる。MAGE-A3抗原またはペプチドは担体タンパク質と融合またはコンジュゲートすることができ、該担体タンパク質はプロテインD、NS1、もしくはClytA、またはそれらの断片から選択することができる。
【0159】
1実施形態においては、前記組成物はさらに、アジュバント、例えば次のものの1つ以上または組み合わせを含むことができる:3D-MPL;アルミニウム塩;CpG含有オリゴヌクレオチド;QS21またはISCOMなどのサポニン含有アジュバント;水中油型乳剤;およびリポソーム。
【0160】
従って本発明は、臨床応用において、ヒト患者からの組織サンプルを、MAGE-A3の発現の有無についてスクリーニングするための方法を提供する。そのようなサンプルは例えば、針生検(needle biopsy core)、外科的切除サンプル、またはリンパ節組織などからなることができる。例えばこれらの方法は生検材料を得ることを含み、該生検材料は腫瘍細胞を細胞集団全体の約80%まで高めるために任意に低温切片法(crypstat sectioning)によって断片化される。特定の実施形態においては、当業界でよく知られた技法を用いて核酸をそれらのサンプルから抽出することができる。他の実施形態においては、組織サンプルから抽出された核酸は当業界でよく知られた技法を用いて増幅することができる。MAGE-A3発現のレベルを検出し、MAGE-A3陰性患者の対照および/または統計的に有効な群と比較することができる。
【0161】
1実施形態において、診断方法は、ある被験体がMAGE-A3遺伝子産物を発現しているかを、例えば、該遺伝子産物の対応するmRNAおよび/またはタンパク質レベルを検出することによって判定することを含んでいる。例えばこれは、ノーザンブロット分析、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、半定量的RT-PCR、定量的RT-PCR、TaqMan PCR、in situハイブリダイゼーション、免疫沈降法、ウエスタンブロット分析、または免疫組織化学などの技法を用いることによる。そのような方法によれば、細胞または組織を被験体から得て、mRNAおよび/またはタンパク質のレベルをMAGE-A3を発現していない組織のものと比較することができる。
【0162】
Taq DNAポリメラーゼは5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有している。TaqMan PCR アッセイは、このエキソヌクレアーゼ活性を、PCR増幅の間に標的配列にアニールした二重標識化プローブを切断するために用いている。
【0163】
簡潔に記せば、RNAをサンプルから抽出し、cDNAを合成する(逆転写)。次いでcDNAを標準的なPCR成分を含んでいるPCR反応混液に添加する(例えば、Roche(CA, USA)がTaqMan PCR用に供給している成分を参照)。反応混液はさらに、2種のプライマー間(すなわち、PCR反応によって増幅される配列、「アンプリコン」内)で鋳型ヌクレオチド配列とアニールするプローブを含むことができる。このプローブは、5'末端に蛍光レポーター色素、3'末端に消光色素を含んでいる。消光色素はレポーターの蛍光を消光することができるが、それは2種類の色素が互いに近接する場合のみであり、これは無傷のプローブで起こる。
【0164】
増幅の間およびその後に、前記プローブはTaq DNAポリメラーゼによって分解され、任意の蛍光が検出される。
【0165】
定量的測定のために、蛍光が発光ベースラインの標準偏差の10倍の値である閾値に達するPCRサイクル数が用いられる。このサイクル数は、サイクル閾値(Ct)と呼ばれ、標的cDNAの開始量に反比例し、それによってcDNAの量を測定することができる。本質的には、サンプル中に存在する標的RNAの量が多いほど、得られるCt数はより低くなる。
【0166】
Ct値について得られた測定値を、ハウスキーピング遺伝子について得られた値と比較する。これにより、各逆転写反応に添加された総RNA量(吸光度に基づく)およびそのRNAの質(すなわち分解)(これらはいずれも出発物質を測定するパラメーターとして信頼できるものではない)に基づく任意のエラーを許容する。従って、ハウスキーピング遺伝子の転写産物は内部対照として定量される。β-アクチンは非特異的ハウスキーピング遺伝子として最も良く用いられているものの1つであるが、他のものも用いることができる。
【0167】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者の治療方法が提供され、該方法は、本発明の方法を用いることによって、患者がMAGE-A3タンパク質を発現しているかを判定すること、およびその後、疾患の再発を防止または改善するために、MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物を投与することを含んでいる。患者は最初に、何らかの腫瘍の手術による切除やその他の化学療法もしくは放射線療法などの治療を受けてもよい。
【0168】
従って、本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者、またはMAGE-A3発現性腫瘍の除去または治療のための処置(手術、化学療法、または放射線療法)を既に受けている患者の治療用の医薬品の製造におけるMAGE-A3特異的免疫療法の使用を提供し、その際、該患者は本発明の診断方法、キット、プライマーもしくはプローブを用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有していることが既に判定されている。
【0169】
従って、本発明はMAGE-A3を発現している癌、例えば、メラノーマ、乳癌、移行細胞癌を含む膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、食道癌を含む頭頚部癌、扁平上皮細胞癌、肝臓癌、多発性骨髄腫、および大腸癌など、を有している患者に用いることができる。1実施形態においては、本発明は上述のような癌、特に肺癌およびメラノーマの補助的(術後)設定の患者に用いることができる。本発明はまた、転移性の癌の治療における有用性もある。
【0170】
免疫療法
本発明の患者を治療する方法における使用に適した組成物は、MAGE-A3特異的免疫応答を生じさせることのできるものである。この組成物は、MAGE-A3遺伝子産物由来の少なくとも1つのエピトープを含んでいる。そのようなエピトープは、任意に担体と共有結合で連結したペプチド抗原として存在することができる。あるいはまた、より大きなタンパク質断片を用いることができる。しかし、用いる断片およびペプチドは、適切に存在する際に、MAGE-A3に対する免疫応答、例えばMAGE-A3特異的免疫応答を生じさせることができるものとする。
【0171】
本発明で用いることのできるペプチドの例としては下記のMAGE-A3ペプチドが含まれる。
【表2】
【0172】
1実施形態においては、抗原は、免疫学的融合物または発現増強パートナーと連結したMAGEペプチドまたはタンパク質を含むことができる。MAGEタンパク質は、完全長のMAGE-A3であってもよいし、またはMAGE3の断片、例えば、MAGE3のアミノ酸3〜314(合計312アミノ酸)を含んでもよい。
【0173】
前記抗原およびパートナーは化学的にコンジュゲートしてもよいし、または組換え融合タンパク質として発現させてもよい。抗原およびパートナーを組換え融合タンパク質として発現させる実施形態においては、それによって融合していないタンパク質と比較して、発現系で産生されるレベルを増加することができる。従って、融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープを提供する上で、および/または天然の組換えタンパク質より高収量でタンパク質を発現(発現増強)する上で、補助となりうる。1実施形態においては、融合パートナーは、免疫学的融合パートナーおよび発現増強パートナーの双方でありうる。
【0174】
本発明の1実施形態においては、用いることのできる免疫学的融合パートナーは、グラム陰性細菌Haemophilus influenzae Bの表面タンパク質であるプロテインD(WO91/18926)、またはその誘導体に由来する。プロテインDの誘導体は、プロテインDの最初の1/3、または該タンパク質の最初のほぼ1/3を含むことができる。1実施形態においては、プロテインDの最初の109残基を、MAGE-A3抗原を追加の外因性T細胞エピトープと共に提供し、大腸菌(E.coli)内での発現レベルを増加させるための(従って発現エンハンサーとしても作用する)融合パートナーとして用いることができる。代替的な1実施形態においては、プロテインD誘導体は、N末端の最初の100〜110個のアミノ酸、またはN末端の最初のほぼ100〜110個のアミノ酸を含むことができる。1実施形態においては、プロテインDまたはその誘導体を脂質化し(lipidated)、リポプロテインDを用いることができる。その脂質テイルは、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を保証することができる。
【0175】
1実施形態においては、MAGE-A3はプロテインD-MAGE-A3/Hisであることができ、これは432アミノ酸残基の融合タンパク質である。この融合タンパク質は、グラム陰性細菌Haemophilus Influenzae Bの表面上に存在するリポタンパク質であるプロテインDの1〜109アミノ酸、MAGE-A3タンパク質由来の312アミノ酸(アミノ酸3-314)、スペーサー、およびポリヒスチジンテイル(His)(これは製造プロセスの間の融合タンパク質の精製を容易にする)を含んでおり、例えば:
i) 18残基のシグナル配列、および加工されたプロテインDの最初の109残基(このシグナル配列は製造の間に融合タンパク質から切断され、前記最初の109残基から離される);
ii) 2つの無関係の残基(メチオニンおよびアスパラギン酸);
iii) 天然のMAGE-3タンパク質の3〜314残基;
iv) ヒンジ領域として機能する2個のグリシン残基;
v) 7個のヒスチジン残基、
を含む。
【0176】
代替的な1実施形態においては、(i)をプロテインDのN末端の最初の100〜110個のアミノ酸、またはN末端の最初のほぼ100〜110個のアミノ酸を含む配列と置き換えた、上記構築物を使用することができる。MAGE-3はN末端にプロテインDを、そしてC末端に7個のヒスチジン残基(Hisテイル)を有する融合タンパク質として発現させることができる。プロテインDは42 kDaの免疫グロブリンD結合性タンパク質であり、グラム陰性細菌Haemophilus Influenzae Bの表面に露出している。
【0177】
別の1実施形態においては、免疫学的融合パートナーであるプロテインDをLytAとして知られているタンパク質と置き換えることができる。LytAはStreptococcus pneumoniaeに由来し、N-アセチル-L-アラニンアミダーゼであるアミダーゼLytA(LytA遺伝子にコードされる(Gene, 43 (1986), p265-272))を合成する。LytAはペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素(autolysin)である。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリンやいくつかのコリン類似体、例えばDEAEなどに対する親和性に関与している。この性質は、融合タンパク質の発現に有用なE.coli C-LytA発現プラスミドの開発に利用されている。アミノ末端にC-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製については既に報告されている(Biotechnology 10, (1992), p795-798)。1実施形態においては、この分子のC末端部分を用いることができる。この実施形態は、C末端に見出されるLytA分子の反復部分(残基178から開始する)を利用できる。1実施形態においては、このLytA部分は残基188〜305を組み入むことができる。
【0178】
本発明の1実施形態においては、MAGE-A3タンパク質は、誘導体化した遊離チオールを含むことができる。そのような抗原についてはWO99/40188に記載されている。特にカルボキシアミド化またはカルボキシメチル化誘導体を用いることができる。
【0179】
本発明の1実施形態においては、腫瘍関連抗原はMAGE-A3-プロテインD分子を含んでいる。この分子のヌクレオチド配列とアミノ酸配列は図9(配列番号35および配列番号36)に示している。この抗原と下記に要約するものは、WO99/40188中により詳細に記載されている。
【0180】
本発明のさらに別の実施形態では、腫瘍関連抗原は下記の融合タンパク質のいずれかを含むことができる:
NS1-MAGE3、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質、例えば図10および11に示される(配列番号37および配列番号38);CLYTA-MAGE3-ヒスチジンの融合タンパク質、例えば図12および13に示される(配列番号39および配列番号40)。
【0181】
本発明のさらに別の1実施形態は、本明細書に記載のMAGE-A3特異的腫瘍関連抗原をコードする核酸分子を含んでいる、核酸免疫療法薬を利用することを含む。本発明の1実施形態においては、前記配列は適切な発現ベクター中に挿入され、DNA/RNAワクチン接種に用いることができる。前記核酸を発現する微生物ベクターも、ベクターを介して送達される免疫療法薬として用いることができる。
【0182】
適切なウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスを含む)、アルファウイルス、ポックスウイルス(Canarypoxなど)、およびワクシニアウイルスをベースとした系が挙げられる。これらのウイルスを用いた遺伝子移入技法は当業者には既知である。例えば、レトロウイルスベクターは、本発明のポリヌクレオチドを安定的に宿主のゲノム中に組み入れるために用いることができるが、そのような組換えは好ましくない。これに対して複製欠陥のアデノウイルスベクターはエピソームの状態に留まり、それ故に一過性の発現が可能である。昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞、酵母、または細菌での発現を駆動することのできるベクターは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるMAGE-A3タンパク質を、例えばサブユニットワクチンとしてまたはイムノアッセイにおいて用いる目的で、多量に産生させるために用いることができる。
【0183】
好ましい1実施形態においては、生きたベクターとして用いられるアデノウイルスは、複製欠陥のサルアデノウイルスである。典型的には、これらのウイルスはE1を欠失しており、E1遺伝子で形質転換された細胞株で増殖することができる。好ましいサルアデノウイルスはチンパンジーから単離されたウイルスである。特にC68(Pan 9としても知られている)(米国特許第6083716号参照)ならびにPan 5、6、およびPan 7(WO 03/046124)が、本発明での使用に好ましい。したがって、これらのベクターを本発明の異種遺伝子を挿入するように操作することで、該遺伝子産物を発現させることができる。そのような組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤化、および製造については、WO 03/046142に詳細に説明されている。
【0184】
核酸配列を得るための従来の組換え技法、および発現ベクターを産生するための従来の技法は、Maniatisら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989中に記載されている。
【0185】
タンパク質をベースとした免疫療法薬については、本発明のタンパク質は凍結乾燥形態または液状形態において溶解して提供される。
【0186】
ヒトへの各投与量はタンパク質1〜1000μgを含むことができる。1実施形態において、投与量はタンパク質30〜300μgを含むことができる。
【0187】
本明細書に記載の免疫療法薬はさらに、ワクチンアジュバント、および/または免疫刺激性サイトカインもしくはケモカインを含むことができる。
【0188】
本発明での使用に適したワクチンアジュバントは市販されており、例えばフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI);Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc., Rahway, NJ);AS-2(SmithKline Beecham, Philadelphia, PA) ;水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)やリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄、もしくは亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオンまたは陰イオンで誘導体化した多糖;ポリホスファゼン;生物分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクイルAなどがある。GM-CSFまたはインターロイキン-2、-7、もしくは-12などのサイトカイン、およびケモカインもアジュバントとして用いることができる。
【0189】
本発明の製剤において、アジュバント組成物が主としてTh1型の免疫応答を誘発させることが望ましいかもしれない。Th1型のサイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-12)のレベルが高いと、投与された抗原に対する細胞媒介性免疫応答をより強く誘導する傾向がある。応答が主としてTh1型である実施形態では、Th1型のサイトカインのレベルはTh2タイプのサイトカインよりはるかに増加する。これらのサイトカインのレベルは標準的なアッセイを用いて容易に評価することができる。サイトカインファミリーの総説としては、MosmannおよびCofman, Ann. Rev. Immunol. 7:145-173, 1989を参照されたい。
【0190】
従って、主としてTh1型の応答を引き出すために用いることのできる好適なアジュバントとしては、例えば、モノホスホリルリピドA、例えば3-脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)をアルミニウム塩と組み合せたものが挙げられる。3D-MPL、またはその他のtoll様受容体4(TLR4)リガンド、例えば、WO9850399、WO0134617、およびWO03065806に開示されているアミノアルキルグルコサミニドホスフェートなどを単独で使用して、主にTh1型の応答を生じさせることができる。
【0191】
Th1型免疫応答を優先的に誘導しうるその他の既知のアジュバントとしては、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドなどのTLR9アンタゴニストが挙げられる。このオリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドが非メチル化されていることを特徴とする。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えばWO 96/02555に記載されている。
【0192】
好適なオリゴヌクレオチドとしては以下が挙げられる:
【表3】
【0193】
CpG含有オリゴヌクレオチドは単独でまたは他のアジュバントと組み合わせて用いることができる。例えば、増強された系としては、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組み合わせ、特にWO 00/09159およびWO 00/62800に開示されているCpGとQS21との組み合わせが含まれる。
【0194】
前記製剤はさらに水中油型乳剤および/またはトコフェロールを含むことができる。
【0195】
別の適当なアジュバントはサポニン、例えば、QS21(Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA)であり、これは単独で、または他のアジュバントと組み合わせて用いることができる。例えば、増強された系としては、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合わせ、例えばWO 94/00153に記載されているQS21と3D-MPLとの組み合わせまたは、WO 96/33739に記載されるような、QS21がコレステロールによって消光される反応原性がより低い組成物が含まれる。その他の適当な製剤には、水中油型乳剤およびトコフェロールが含まれる。WO 95/17210には、QS21、3D-MPL、およびトコフェロールを水中油型乳剤中に含む特に強力なアジュバント製剤が記載されている。
【0196】
別の1実施形態においては、アジュバントはリポソーム性組成物中に製剤化することができる。用いられる3D-MPLの量は通常は少量であるが、免疫療法製剤に応じて、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0197】
1実施形態においては、アジュバント系は3種類の免疫刺激剤:CpGオリゴヌクレオチド、3D-MPL、およびQS21を含んでおり、リポソーム製剤中またはWO 95/17210に記載されているように水中油型乳剤中のいずれかで提供される。
【0198】
本発明のアジュバント中または免疫療法薬中のCpGまたは免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は通常は少量であるが、免疫療法製剤に応じて、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0199】
本発明のアジュバント中で用いるサポニンの量は、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜250μg、最も好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0200】
一般的には、ヒトへの各投与量は、0.1〜1000μg、例えば、0.1〜500μg、0.1〜100μg、または0.1〜50μg、の抗原を含むことができる。特定の免疫療法薬のための最適な量は、ワクチン接種した被験体における適切な免疫応答の観察を含む標準的な研究によって確かめることができる。初回ワクチン接種後に、被験体は適切な間隔を空けて、1回ないし数回の追加免疫接種を受けることができる。
【0201】
その他の適切なアジュバントとしては、Montanide ISA 720(Seppic, France)、SAF(Chiron, California, United States)、ISCOMS(CSL)、MF-59(Chiron)、Ribi Detox、RC-529(GSK, Hamilton, MT)、およびその他のアミノアルキルグルコサミニド4-ホスフェート(AGP)が挙げられる。
【0202】
従って、本発明の方法で用いるための免疫原性組成物が提供される。この免疫原性組成物は本明細書で開示している抗原、およびアジュバントを含んでおり、該アジュバントは、3D-MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンエーテルもしくはエステル、の1種以上、またはこれらのアジュバントの2種以上の組み合わせを含んでいる。前記免疫原性組成物中の抗原は、水中油型もしくは油中水型の乳剤ビヒクル中で、またはリポソーム製剤中で提供することができる。
【0203】
1実施形態においては、アジュバントは、3D-MPL、QS21、および免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドのうちの1種以上を含むことができる。1実施形態においては、3種類全ての免疫刺激剤が存在する。別の1実施形態においては、3D-MPLおよびQS21は水中油型乳剤中で提供され、CpGオリゴヌクレオチドは含まれない。
【0204】
本発明の方法で用いる組成物は、本明細書に記載の腫瘍関連抗原、または融合タンパク質を、製薬上許容される賦形剤中に含む医薬組成物を含むことができる。
【0205】
本明細書および後述の特許請求の範囲を通じて、特段の要求がない限り、「含む」という語句、およびその変形である「含む」および「含んでいる」は、言及した整数もしくはステップ、または言及した整数もしくはステップの群を含むが、その他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0206】
本発明はさらに、下記の非限定的な実施例によって説明される。ここで、RT-PCRとは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【実施例1】
【0207】
半定量的PCR−凍結組織サンプル
プライマー:配列番号1および配列番号2
RNA抽出:液体窒素RNA精製法
組織の小片を液体窒素中で瞬間冷凍した後、乳鉢中に置き、乳棒で機械的に破砕した。得られた粉末100 mgを100μLのTriPure単離試薬に添加し、RNAを製品説明書(Qiagen, Venlo, Netherlands)に従って抽出した。RNA濃度は260 nmの光学密度値から決定した。
【0208】
半定量的MAGE-A3 RT-PCR
半定量的RT-PCRはDe Plaenら(Immunogenetics 40:360, 1994)が記載しているとおりに行った。cDNAの合成は、1x第1鎖バッファー、0.5 mMの各dNTP、10 mMのジチオトレイトール、20UのrRNase阻害剤、2μMのオリゴ(dT)15、および200 UのM-MLV逆転写酵素を含有する20μLの混合液中、42℃で1時間30分かけて、2μgの総RNAから行った。50 ngのcDNAを、MAGE-A3特異的プライマー(配列番号1および2)を含有している25μLの混合液中でPCRにより増幅した。各反応液の10μLのアリコートを1%アガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロマイド蛍光で可視化した。アンプリコンのサイズは、mRNAとゲノムDNA(gDNA)とをそれぞれ増幅した場合に、725 bpと805 bpであった。
【0209】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRの陽性対照
これらの実験には3種類の陽性対照を導入した:
(i) MAGE-A3ゲノムDNAのクローニング断片を各PCR反応混液中に添加した。これによって805 bpの断片(cDNAから作製した断片よりも80 bp大きい)が作製され、PCR阻害の非存在下では常に存在する。これはMAGE-A3陰性サンプルでPCRの効率をチェックするための陽性対照となる;
(ii) 各MAGE-A3アッセイのために、腫瘍サンプル、および「Gerl」メラノーマ細胞株MZ-2-3.0から抽出したRNAについて、cDNA合成を並行して行った。「陽性」とみなされるためには、腫瘍サンプルがGerl細胞株MZ-2-3.0 cDNAのレベルの1%のシグナルを産出する必要がある;
(iii) 強く分解したRNAを含むサンプルを検出するために、各サンプルでβ-アクチンPCR(表1)を行った。MAGE-A3陰性腫瘍サンプルから生じたβ-アクチンシグナルがMZ-2-3.0から生じたシグナルよりも弱い場合には、サイクル数を臨床サンプルについて調整し、β-アクチンアンプリコンの強度が必要とするレベルに達するようにした。
【0210】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRの陰性対照
これらの実験には3種類の陰性対照を導入した:
(i) MAGE-A3陰性であることが既知の細胞培養LB 23-1/2から抽出したRNA;
(ii) RT反応における水対照;および
(iii) PCRステップにおける水対照。
【0211】
データの解釈
腫瘍サンプルからの50 ngのmRNAサンプルは、725bpのアンプリコンの量がGerl細胞株MZ-2-3.0からの0.5 ngのRNA(すなわち、0.1%のGerl RNAと等価;陽性対照を参照)を用いて得られたアンプリコンの量と等しいかまたはそれより多い場合に、MAGE-A3陽性とみなした。量はエチジウムブロマイドの蛍光で推定した。陽性対照と陰性対照を加えた。
【0212】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRのクラス:半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに5段階の標準クラスを割り付けた(De Plaenら, 1994)。それらは主観的測定であり、最も低い発現から最も高い発現まで-、-/+、+、++、+++とした。これらのクラスをどのように割り付けることができるかの1例を図16に示している。この図では、下記表6に示す陽性対照によって生じたバンドに従って割り付けられている。
【表4】
【実施例2】
【0213】
リアルタイムTaqMan定量的RT-PCR−凍結組織サンプル
リアルタイムTaqMan定量的RT-PCR
プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13(エクソン)
プライマー:配列番号5および配列番号6;プローブ:配列番号14(イントロン)
半定量的PCR(比較研究用)
プライマー:配列番号1および配列番号2
材料と方法
患者およびサンプルの採取
ステージIBおよびIIの非小細胞肺癌(NSCLC)からの生検材料は手術によって得た。患者は2種の臨床試験GSK 249553/004(MAGE3-AS02B-004)およびEpidemio-MAGE3-153に登録していた。患者はインフォームドコンセントに署名し、これらの研究の性質と起こりうる結果についての説明を受けた。生検材料は外科的切除直後にRNA安定化溶液(RNA-later, Ambion, Cambridge, UK)中に浸漬し、−20℃で保存した。RNAlaterは無傷の非凍結組織サンプル中の細胞RNAを安定化しかつ保護する組織保存用試薬である。RNAlaterにより、サンプルを液体窒素中で直ちに凍結する必要性が排除される。
【0214】
RNA抽出:ミキサーミルRNA精製法
腫瘍組織をRNALaterから取り出し、TriPure Isolation Reagent(Roche, Vilvoorde, Belgium)に添加する。次いで、この組織をタングステンボールの入っているミキサーミルに添加する。ミキサーミル中で破壊した後、最大で100 mgの組織から、TriPure試薬を製造者の使用説明書(Qiagen, Venlo, Netherlands)に従って用いて総細胞RNAを抽出した。RNA濃度は260 nmでの光学密度値から決定した。
【0215】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCRアッセイ−凍結組織
総RNAの50 ngに相当するcDNAを、TaqMan バッファー、5 mM MgCl2、0.4 mM dUTP、0.2mMの各ヌクレオチド、0.625 UのAmpli Taq Cold DNAポリメラーゼ、0.05 UのUNG、0.2μMの各オリゴヌクレオチドプライマー、および0.2 μMのTaqManプローブを含有する25μLの混合液中、PCRで増幅した。特異的なオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを用いた(表2;配列番号3、4、および13、ならびに配列番号5、6、および14)。プローブはFAMTM、NEDTM、およびVICTM(Applied Biosystems, CA, USA)で標識されており、Minor Groove Binding Moiety(MGBTM;これもApplied Biosystems, CA, USAから入手)を有している。現在さらに、MAGE特異的プローブ用にNEDの替わりにFAM色素を用いて実験を行っているところである。
【0216】
MAGE-A3エクソンおよびβ-アクチン遺伝子を、7700または7900システム(PE Applied Biosystems, Warrington, UK)でTaqManケミストリを用いて定量的PCRにより増幅した。PCR増幅は、ゲノムDNAの夾雑がないことをチェックするために、MAGE-A3遺伝子のイントロンでも行った。増幅プロフィールは、50℃2分間の1サイクル、95℃12分間の1サイクル、ならびに95℃15秒間および60℃1分間の35サイクルであった。TaqManプローブの分解によって生じる蛍光シグナルは、全ての伸長ステップの間リアルタイムで検出した。
【0217】
MAGE-A3の特異性を調べるためのTaqMan RT-PCRアッセイのバリデーション
プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13(エクソン)−TaqMan RT-PCR。
【0218】
プライマー:配列番号1および配列番号2(半定量的PCR−比較試験用)
プラスミドおよび細胞株
用いたプラスミドは、MAGE-A1(MAGE-1;GenbankアクセッションNM 004988)、MAGE-A2(MAGE-2;GenbankアクセッションL 18920)、MAGE-A3(MAGE-A3;GenbankアクセッションNM 005362)、MAGE-A4(MAGE-4;GenbankアクセッションNM 002362)、MAGE-A6(MAGE-6;GenbankアクセッションNM 005363)、MAGE-A8(MAGE-8;GenbankアクセッションNM 005364)、MAGE-A9(MAGE-9;GenbankアクセッションNM 005365)、MAGE-A10(MAGE-10;GenbankアクセッションNM 021048)、MAGE-A11(MAGE-11;GenbankアクセッションNM 005366)、およびMAGE-A12(MAGE-A12;GenbankアクセッションNM 005367)の遺伝子の完全長cDNAを含んだ。細胞株MZ-2-3.0(MAGE-A3陽性)およびLB 23-1/2(MAGE-A3陰性)はProfessor Thierry Boon(Ludwig institute、Brussels, Belgium)から好意により贈与されたものである。
【0219】
MAGE-A3 TaqMan法の特異性を、MAGE−A1、2、3、4、6、8、9、10、11、および12遺伝子の完全長cDNAを含むプラスミドを1 x 104、1 x 105、および1 x 106コピー用いて調べた。
【0220】
MAGE A遺伝子(MAGE 1、2、3、4、6、8、9、10、11、および12)の、設計されたMAGE-A3 PCRプライマーおよびプローブの領域での配列比較は図4に示している。正方向および逆方向MAGE-A3プライマーの配列には下線を付している。MAGE-A3プローブの配列は四角で囲んでいる。逆方向プライマーは認識する配列の領域に対して相補的、すなわちAはT;GはC;TはA;CはGである。
【0221】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCR陽性対照:(i)MAGE-A3ゲノムDNAの断片、および(ii)Gerl細胞株MZ-2-3.0(MAGE-A3について陽性のメラノーマ細胞株)から抽出した既知量のRNA。
【0222】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCR陰性対照:(i)MAGE-A3陰性であることが既知の細胞培養物LB23-1/2から抽出したRNA、(ii)RT反応における水ブランク、および(iii)PCRステップにおける水ブランク。40サイクルのRT-PCRを行う。陰性対照は≧35でなければならない。TaqMan実験の結果のいくつかは1/Ctとして表している。
【0223】
統計:2種類のPCR技法の比較
2 x 2分割表を作って、半定量的RT-PCR(プライマーは配列番号1および配列番号2)およびリアルタイム定量的TaqMan PCR(プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13)からの結果を、本明細書に記載の技法を用いて比較した(表3)。名目尺度変数は2種の評価:陽性および陰性を特徴付けた。陰性値はゼロおよびボーダーライン評価を含んだ。なお、ボーダーライン評価は、半定量的RT-PCRでは0.8%〜1.2%のGerl、TaqManアッセイでは全ての結果が1%未満である評価を意味する。陽性値は、半定量的RT-PCR法については、β-アクチン発現との関連で視覚的にスコア付けしたゲルバンドに基づいて等級分けし、TaqManアッセイでは>1%の結果全てを含んだ。2つの方法間での一致度は、二重陰性+二重陽性サンプルの数をサンプルの総数で割って算出した。McNemar検定を用いて不一致ペア(陰性-陽性)の比率を比較した。信頼区間(CI)を算出した。
【0224】
定量的TaqMan RT-PCRの最適化
Sybr greenを用いたMAGE-A3のTaqMan RT-PCR
Sybr greenは、配列特異的なプローブなしでアンプリコンと非選択的に結合するコンポーネントである。リアルタイムRT-PCRはMAGE-Aファミリーの遺伝子クローンについて、4種類の異なるMAGE-Aクローンの希釈度(20 pg、2 pg、0.2 pg、および0.02 pg)を用いて行った(図1、結果はY軸上に1/Ctとして示している)。14CtでMAGE-A3について陽性の結果が得られ、MAGE-A6については(20 pgのプラスミドで)16Ctの値が得られた。MAGE A4、A8およびA9は30のCtレベルを示し、その他のMAGE遺伝子は35Ct以上で非常に制限された発現を示した。
【0225】
配列特異的プローブを用いたMAGE-A3のTaqMan RT-PCR
同一のMAGE-A3プライマー(配列番号3および4)とプローブ(配列番号13)とを用い、MAGE-Aファミリーメンバーの関連クローンを種々の希釈度で用いて、MAGE-A3をMAGE-A6と区別する有効性を試験した(図2)。最初に、MAGE-A3のCtは各希釈度において予想したとおりの減少を示した。MAGE-A6クローンは、プローブを用いた際には高い1/Ctを示さず、これは交差反応性がないことを示している。
【0226】
図3に示すとおり、MAGE-A3プラスミド希釈への1 x 106個のMAGE-A6プラスミドのスパイクは何の効果もなく、この結果はMAGE-A3プラスミドの滴定結果を反映している。これは、TaqMan PCRを用いたとき、MAGE-A6はMAGE-A3の存在下で競合作用がないことを示している。
【0227】
結果
腫瘍のMAGE-A3発現、半定量的方法と定量的方法との比較
TaqMan特異的定量的PCRを、MAGE-A3についての標準的な半定量的RT-PCRに対して(プライマーとして配列番号1および2を用いて)さらに検証した。NSCLC患者からの71腫瘍サンプルを用いて、MAGE-A3発現について定量的方法(プライマーとして配列番号3および4、プローブとして配列番号13を用いた)と、半定量的方法(プライマーとして配列番号1および2を用いた)とを直接比較した。
【0228】
その結果は、2つの方法間で68/71が合致し、95.8%の良好な一致を示した(表3)。定量的TaqMan RT-PCRおよび半定量的RT-PCRアッセイは、3サンプルについては不一致で、その際、半定量的RT-PCRアッセイはその結果の陽性度を過大評価していた。しかし、McNemar検定は、これらの3件の不一致の結果の対称型再配分(symmetric repartition)を明らかにし(p=0.25)、このことはどちらの技法も、もう一方の技法と比較してより不一致性を生み出す傾向がないことを示している。より詳しく調べると、これらのサンプルでのβ-アクチン発現の変動レベルが半定量的RT-PCR法での偽陽性をもたらしていた。半定量的RT-PCR用に定義された各クラスについてTaqMan PCRデータの分散を示すために、ボックスプロット(図4)を用いた。2つの方法の間の一致は、2 x 2分割表に基づけば優れたものではあったが、ボックスプロットは、異なるクラス間のいくらかの重複を明らかにし、これは半定量的評価が定量的TaqMan RT-PCR測定と完全には一致しなかったことを示している。この重複は、評価が異なる時点で異なるオペレーターによって行われたという事実に起因している可能性があり、これが変動度を増加させたのかもしれない。その意味で、定量的TaqMan RT-PCRアッセイはよりこれらの要因に独立的であり、そのため再現性がより高い。
【実施例3】
【0229】
パラフィンで固定化した組織(FFPE)のRT-PCRによる分析
材料と方法
RNAは、FFPEサンプルから、US 6,613,518、US 6,610,488、US 6,428,963、US 6,248,535(参照により本明細書に組入れる)に開示されるように、Response Genetics Inc.,独自の方法を用いて抽出した。あるいはRNAは、パラフィンで固定化した組織から、公表されている適切な方法のいずれかに従って得ることができる。例えば、d-リモネンまたは別の溶解バッファーを用いて組織切片をパラフィンから取り出した後、エタノールをベースとした溶液中で洗うことができる。次いで、その切片をプロテイナーゼKで一晩処理した後、洗浄し、RNAをカラムクロマトグラフィーで精製することができる。そのサンプルについて、プライマーとして配列番号3および配列番号4、プローブとして配列番号13(凍結組織での使用のために開発されたプライマーおよびプローブ、上述の実施例2参照)を用いて、リアルタイムTaqMan RT-PCRを行った。
【0230】
結果:Mage A3の発現
表4はホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)組織についての結果をCt値として表したものである。Y軸の数値はヒト腫瘍サンプル990118〜990784を示している。また、この分析には次の陽性対照も含まれている:TC1(Mage3);Gerl(MAGE-A3メラノーマ細胞株);およびCRL 1675(メラノーマ細胞株)。Ct値は凍結組織をベースとした半定量的RT-PCR MAGE-A3プライマーでの期待値よりも高い。36〜37 Ctのレベルは、これらの実験の目的では感度の上限値と考えられる。Gerl MAGE-A3陽性対照は31Ctの値であり、感度の境界内にあるが、半定量的RT-PCRアッセイの場合よりもはるかに低減している。これらのレベルでは、凍結組織でのMAGE-A3定量用のプライマーおよびプローブ(表2、エクソン3 MAGE-A3特異的プライマーである配列番号3および配列番号4;ならびにプローブの配列番号13)は、FFPE腫瘍サンプル内のMAGE-A3の発現を検出するのに十分な感度ではない可能性があり、MAGE-A3陽性であるがMAGE-A3を低いレベルでのみ発現するサンプルは、検出されない可能性がある。
【0231】
次のFFPE組織からの陽性対照のサンプルがこの実験に含まれた:TC1(Mage3)、Gerl(MAGE-A3陽性対照)、およびCRL 1675。ヒト腫瘍990118〜990784を、TaqMan 定量的RT-PCRにより、パラフィン組織からのRNAを用い、凍結組織用プライマー配列番号3および配列番号4、ならびにプローブ配列番号13を用いて分析した。この分析の結果は図5に示している。
【0232】
FFPE組織で用いるためのMAGE-A3 TaqManプライマーの再設計
凍結組織のRNALaterをベースとしたMAGE-A3アッセイ(実施例2で記載される)についてのアンプリコンの大きさは1000 bpを超える。FFPEサンプル中に見られる分解したRNAについてより感度の高い結果を得るために、アンプリコンのサイズを低減してMAGE-A3アッセイの感度を増加するための新しいプライマーを設計した(表5)。実施例2および3に記載した2つのアッセイの双方のために、MGBTM(Minor Groove Binding)プローブを用いてアッセイの特異性を増加させた。MGBプローブは、極めて安定な二本鎖を形成するDNAの副溝(minor groove)に結合してプライマー特異性の増加をもたらす。
【0233】
新しいMAGE-A3プライマーの特異性および感度の試験
新たに設計されたプライマーのセット(表5)をMAGE-A遺伝子ファミリーメンバーのcDNAで試験した(表6a)。ここで、セット1はプライマー:配列番号7、配列番号8、プローブ:配列番号15であり;セット2はプライマー:配列番号9、配列番号10、プローブ:配列番号16であり;セット3はプライマー:配列番号11、配列番号12、プローブ:配列番号17であり;そしてセット4はプライマー:配列番号3、配列番号4、プローブ:配列番号13である。
【0234】
図6aに示すとおり、プライマー配列番号7および8は、MAGE-A3について高いCtレベルを有しているが、Mage-2およびMage-12についても高いCtレベルを有している。プライマー配列番号9および10は、MAGE-A3について高いCtレベルを有し、かつMAGE-A6についてわずかなCtを有するがこれはMAGE-A3発現の正常範囲からは外れている。プライマー配列番号11および12は、配列番号9および10よりも感度がわずかに低い。従って、本実験では、プライマー9および10を選択してさらにFFPE組織で試験した。これらの配列番号9および10のプライマーをさらにRNAの連続希釈において試験した。低い希釈度域まで良好な線形範囲を示し、これは前記プライマーが感度が良好でかつアッセイに適していることを示唆している(図6b)。
【0235】
MAGE-A3についての凍結vs.FFPE TaqManアッセイの比較
FFPEの腫瘍サンプル42検体を、プライマー配列番号9、配列番号10、およびプローブ配列番号16を用いて比較し、凍結組織では同一アッセイをプライマー配列番号3、配列番号、配列番号4、プローブ配列番号13を用いて行った(図7)。このアッセイで陽性とするレベルは1% Gerl(陽性対照)で設定し、直接的に比較すると2種類のアッセイ間にいくらかの一致があるようである。MAGE-A3凍結組織アッセイとは一致しなかったMAGE-A3陽性患者が数例あり、これは、MAGE-A3を発現する腫瘍細胞の純度の増加の原因となる腫瘍領域を大きく切除したことによって説明できた。陽性MAGE-A3結果である0.92のAn R2値(線形相関についての統計的検定)の原因となった希釈正常細胞の大部分の除去がFFPE組織とRNA later凍結組織間で示され、これは2種の方法間での相関が良好であることを示唆している(図8)。
【実施例4】
【0236】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験
【表5】
【0237】
MAGEA3F-646MODプローブ配列は下記の改変ヌクレオチド(配列番号54)を含んでいる。
【化1】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0238】
データ分析
MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値はTest Definition File中に定義されているアッセイパラメーターに基づいて、COBASTM TaqMan 48 Analyzerワークステーション(Roche, CA, USA)で、AMPLILINKTM 3.1ソフトウェア(Roche, CA, USA)を用いて算出する。遺伝子発現についてのデータ分析は、AMPLILINKTMからMAGE-A3およびβ-アクチンのCt値を抽出した後、β-アクチン遺伝子発現に比較したMAGE-A3遺伝子発現を計算して求める。各Runに関し、サンプルがMAGE-A3陽性であるために合致または超えなければならないMAGE-A3発現の閾値を確立するために、対照を含める。陽性対照として細胞株GERLからのRNAを用いる。GERL RNAは水で1:100(1% GERL)に希釈し、MAGE-A3のCtを測定する。さらに、希釈していないGERL RNA(100% GERL)をβ-アクチンのCt測定のために未希釈で用いる。100% GERL(対照)からのβ-アクチンのCtの値と、1% GERL(対照)からのMAGE-A3のCtの値との差から、ΔCt値を計算し、下記の式に基づいてMAGE-A3の相対的発現を測定する:
【数1】
【0239】
パラフィン包埋サンプルについては、閾値発現量の確立のために、QIAGEN FFPE法を用いて抽出したGERL FFPE異種移植からのRNAをGERL細胞株RNAの替わりに対照として用いることを除いて、上記と同様である。
【0240】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験は多重反応であるので、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値は同じ反応チューブ由来のものである。MAGE-A3の相対的発現は各試験サンプルについて下記の式で算出する。
【数2】
【0241】
試験サンプル中のMAGE-A3発現がGERL RNA対照で確立されたMAGE-A3閾値レベルと同等かまたはそれより多い場合には、そのサンプルはMAGE-A3陽性と呼ぶ。試験サンプル中のMAGE-A3発現が、対照から確立されたMAGE-A3閾値レベルよりも少ない場合には、そのサンプルはMAGE-A3陰性と呼ぶ。
【0242】
MAGE-A3発現は、ΔCt(β-アクチン Ct−MAGE-A3 Ct)の算出を各検体について反復することにより得られるMAGE-A3 Ctとβ-アクチンCtの値の平均をとることによって求める。一方の反復実施(replicate)では試験のCtカットオフより低いMAGE-A3 Ctまたはβ-アクチン Ctを有するが、他方の反復実施では該Ctカットオフより大きいMAGE-A3 Ctまたはβ-アクチンCtを有する場合には、そのサンプルは再度試験される。両反復実施がCtカットオフより大きいβアクチンCtを有する場合には、そのサンプルは範囲外のβ-アクチンCtを有すると記録し、結果を出さない。両反復実施がMAGE-A3 Ctカットオフ値を超えるMAGE-A3 Ct値を有するが、MAGE-A3発現が閾値を上回る場合には、そのサンプルは範囲外のMAGE-A3Ctであると記録し、結果を出さない。データ分析の方策は、下記の「方法の相関性」の節に述べている、方法の相関性について行ったクロスバリデーション研究と一致している。
【0243】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験のために、Stratagene社製のHuman QPCR Human Reference Total RNA(UHR)を陽性対照として用い、この十分に特徴付けられたRNAにおけるMAGE-A3発現に基づいて発現閾値を設定することができる。UHR対照での適切な発現閾値を確立するために、希釈したUHRをGERL RNA対照とともにRunで試験することができる。
【0244】
サンプルおよび試薬の保存条件
プラスミド、p53陽性対照DNA、臨床FFPET RNA、UHR、GERL、およびSTACを含むRNAおよびDNAは全て−80℃で保存する。Universal RNA Master Mix、プライマー/プローブミックス、補因子ブレンド、およびサンプル希釈/陰性対照を含む全試験試薬は、2〜8℃で保存する。
【0245】
MAGE-A3排他性
MAGE-Aファミリーメンバーを含んでいるDNAプラスミドを用いたプライマーおよびプローブの実験
目的:他の関連遺伝子の顕著な同時増幅/検出を排除しながらMAGE-A3遺伝子を特異的に増殖する試験の能力を判定すること。
【0246】
サンプル材料:MAGE-A3および関連のファミリーメンバーを含有しているプラスミドDNAを試験する(プラスミドの詳細については上述の実施例2を参照)。
【0247】
手順:MAGE-Aファミリーメンバーを含んでいるDNAプラスミドを用いたCOBAS TaqMan MAGE-A3試験の実験を行い、関連遺伝子が顕著な量で増幅され、検出されるかを判定する。
【0248】
各プラスミドサンプルは4種類の異なるDNA濃度(20、2、0.2、0.02 pg)で3回試験した。表10に示しす温度サイクルプロフィールは、60℃で20分間の逆転写ステップを除くように改変を行った。プラスミドDNAの濃度はNanodrop分析で求めた。
【0249】
分析:MAGE-A3プラスミドのCt値を測定し、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、およびMAGE-A12プラスミドからのCt値と比較した。ΔCtはMAGE-AX Ct(各関連ファミリーのメンバー)からMAGE-A3 Ctを差し引くことによって算出した。4回の反復実施からのCt平均値を、CtおよびΔCtの算出に用いた。
【0250】
判定基準:ΔCt値はMAGE-A3とMAGE-A6を除くその他全てのプラスミドとの間で約10以上でなければならない。
【0251】
MAGE-A3排他性結果
本明細書の表および図では、数箇所で「CURIE」という用語が「MAGE」の代わりに用いられているが、全ての場合において「MAGE」を意図している。
【0252】
試験した全MAGEプラスミドのCt値は、下記の表12および図17に示している。増幅の行われていないプラスミドについては、55のCt値が割り付けられるが、これは温度サイクルプロフィールが55サイクルであることによる。予想通り、MAGE-A3 Ctは試験した全てのレベルについて最も早い(表12および図17)。ΔCt値はMAGE-A3とMAGE-A6を除く他の全てのプラスミドとの間では10サイクル超であった(表13および図18)。MAGE-A3とMAGE-A6との間のΔCtは必要なかったが、これはMAGE-A6を発現している患者の95%がMAGE-A3も発現しているからである。
【0253】
20 pg、2 pg、0.2 pg、および0.02 pgのプラスミドDNAのインプットでのMAGE-A3とMAGE-A6との間のΔCt値は、それぞれ9.3、8.4、7.8、および8.2サイクルであった。FFPEサンプルからのRNAについてのMAGE-A3 Ct値の大部分は、試験したFFPEサンプルについて27.2よりも大きいことを示した。MAGE-A6からのシグナルは最小であり、これは8.2サイクルの遅れがこのアッセイの範囲外のCt値を生じるからである。排他性の判定基準は満たされた。
【0254】
表14はMAGE-A3排他性実験のバリデーションを示している。対照Ctは有効な範囲内であった。実験はバリデーションを通過した。表15および16はMAGE-A3排他性実験の詳細を示している。
【0255】
線形性およびRT-PCR効率
目的:試験の線形性および逆転写効率を判定すること。
【0256】
サンプル材料:FFPE異種移植片GERL RNAの連続希釈を、線形性およびRT-PCR効率の研究に用いた。
【0257】
手順:FFPE異種移植片GERL RNAを100 ngから0.1 ngまで2倍連続希釈し、COBAS TaqMan MAGE-A3試験を用いて試験し、アッセイの線形範囲を判定した。各濃度レベルで10回の反復実施を試験した。
【0258】
分析:MAGE-A3およびβ-アクチン双方についての各反復実施のCt値を、RNAのインプット濃度の対数(2を底とする)に対してプロットして、線の傾きとRT-PCRの効率を算出した。RT-PCRの増幅効率は次の式を用いて算出した:
【数3】
【0259】
2の増幅効率は100%と同等である。各反復実施についてのΔCt値(MAGE-A3 Ct−β-アクチン Ct)をRNAのインプット濃度の対数(2を底とする)に対してプロットし、ΔCtの傾きを求めた。10回の反復実施全てから、MAGE-A3 Ct、β-アクチン Ct、およびΔCtについての平均、標準偏差、および%変動係数(%CV)を算出した。
【0260】
線形性の判定基準:
アッセイの線形範囲は下記の基準に基づいて決定した:
MAGE-A3 Ct CV<5%
β-アクチンCt CV<5%
ΔCt CV<20%
-0.10<ΔCtの傾き<0.10
R2>0.95
RT-PCR効率の判定基準:
MAGE-A3 RT-PCR増幅効率>80%
β-アクチン RT-PCR増幅効率>80%
MAGE-A3とβ-アクチンとの間のRT-PCR増幅効率の差は10%以内
線形性/RT-PCR効率の結果
図20はRNAインプットの対数(2を底とする)vs MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値のグラフを示している。COBAS TaqMan MAGE-A3試験は、R2値に基づくQIAGEN法を用いてFFPE異種移植片から抽出した100〜0.1 ngのGERL RNAのインプット値間で線形である。R2値はMAGE-A3については0.983、β-アクチンについては0.998であった。これらの値はR2>0.95の基準を超えている。さらに、表17に示すとおり、各レベルで試験した10回の反復実施全てについて、MAGE-A3 Ctおよびβ-アクチン Ctは両者ともにCV<5%の基準を下回った。
【0261】
MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率は、図19に示すとおり、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値に対してRNAインプットの対数(2を底)をプロットして作成した線の傾きから算出した。RT-PCRの増幅効率は次の式を用いて算出することができる:
【数4】
【0262】
MAGE-A3およびβ-アクチンの増幅効率はそれぞれ2.14(107%)および2.06(103.1%)であった。MAGE-A3およびβ-アクチンのAEは80%の基準を超えていた。2種の遺伝子間のAEの差は3.9%で、これも+10%の基準内であった。
【0263】
図20はRNAインプットの対数(2を底とする)vs MAGE-A3とβ-アクチンとの間のΔCtのグラフを示している。ΔCtの傾きは0.0474であり、これは十分に傾きの基準である−0.10〜0.10の範囲内である。試験したRNAインプットの最も低い2つのレベル(0.2および0.1 ng)で、ΔCtについての%CVは20%の基準を超えていた。その結果、この最後の2つのRNAインプットレベルは、このアッセイの線形範囲には含まれなかった。GERL 異種移植片RNAを用いたこのアッセイの線形範囲は100ng〜0.39ngのRNAである。
【0264】
これらのデータに基づけば、線形性およびRT-PCR効率の判定基準は満たされた。
【0265】
表18はMAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率を示している。表19は線形性/RT-PCR効率実験バリデーションである。対照Ctは有効範囲内であった。実験はバリデーションを通過した。
【0266】
表20、21および22は線形性/RT-PCR効率実験の詳細を提供する。
【0267】
分析感度(検出限界)
目的:MAGE-A3遺伝子発現がCOBASTM TaqMan MAGE-A3試験によってその時点の少なくとも95%で検出できる最低濃度のRNAを確立すること。
【0268】
サンプル材料:分析感度は、FFPE異種移植片組織から、QIAGENTM RNeasy FFPE Kitと追加のDNaseステップを用いて単離したRNAを用いて評価した。RNAは2つの異なるRNA細胞株由来の2種類のFFPE異種移植片組織から抽出した。一方の異種移植片組織はGERLと呼ばれMAGE-A3を発現する。もう一方の異種移植片組織はSTACと呼ばれ、MAGE-A3を発現しない。これらの2種の異種移植片組織からのRNAを混合実験に用いて、95% STAC RNAバックグラウンド中の5% GERL RNA、99% STAC RNAバックグラウンド中の1% GERL RNA、および99.5% STAC RNAバックグラウンド中の0.5% GERL RNAを試験した。これらのGERLおよびSTACのRNAの3種類の異なる混合物を4つの異なるRNAレベルで試験した。
【0269】
手順:GERLおよびSTACのRNA混合物の4種類の独立した希釈シリーズから24件の試験結果が得られた。RNAインプットの4つのレベルを試験した(100、50、25、および12.5 ng)。各レベルについて6回繰り返し試験した。
【0270】
分析:MAGE-A3について>95%の陽性率を示すRNAのレベルは、このアッセイの有効範囲内のCt値に基づいて決定される。
【0271】
判定基準:1% GERLの検出について、LOD<50ngの総RNAインプット。
【0272】
検出限界の結果
ヒット率は、本実施例に記載した線形性実験に基づいて、このアッセイの線形範囲内のCt値として定義する。Ct範囲の末端を求めるために、線形性の研究からの0.39ngのRNAインプットレベル(線形範囲の末端)から、MAGE-A3およびβ-アクチンのCtの平均をとり、MAGE-A3およびβ-アクチンのCtについて95%信頼限界を計算した。これらの計算に基づけば、ヒットとみなすサンプルについては、MAGE-A3 Ctは35.2以下でなければならず、β-アクチン Ctは32.1未満でなければならない。MAGE-A3およびβ-アクチンのヒット率を表23および表25に示している。MAGE-A3およびβ-アクチンについてのヒット率%は表24および表26に示している。
【0273】
99% STAC RNA中に希釈された1% GERL RNAがこのアッセイの有効範囲内のMAGE-A3 Ctに基づいてその時点で>95%検出される場合、検出限界は50ngのインプットRNAである。
【0274】
分析感度(検出限界)の判定基準は満たされる。
【0275】
検出限界実験バリデーション。MAGE遺伝子FAM対照のCtを表27に示している。β-アクチンHEX対照のCtは表28に示している。対照Ctは有効な範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0276】
表29、表30および表31は検出限界の実験の詳細を示している。
【0277】
方法の相関性
目的:COBASTM TaqMan MAGE-A3試験および臨床FFPETサンプルについてのプロトタイプアッセイ(Prototype Assay)を相関させ、クロスバリデートすること。
【0278】
サンプル材料:適切な質の約120の臨床FFPETサンプルを、COBAS TaqMan MAGE-A3試験およびプロトタイプアッセイを用いて分析した。
【0279】
手順:RNAはQIAGENTM RNeasy FFPE Kitと追加のDNaseステップとを用いて抽出した。各FFPETサンプルについて1回の抽出を行い、サンプルを分け、1つのアリコートをCOBAS TaqMan MAGE-A3試験で試験し、1つのアリコートをプロトタイプアッセイを用いて試験した。両アッセイについて同一対照を試験して、MAGE-A3発現の閾値を確立した。
【0280】
分析:GERL RNA対照によって得たMAGE-A3発現閾値に基づいて、各サンプルについてのMAGE-A3コール(call)を陽性または陰性として記録した。2つのアッセイ間の結果を比較して、RMS検定の比較一致度(comparator percent agreement)の値による陽性および陰性を確立した。
【0281】
一致度の計算には、凍結組織についての2ステップRT-PCRアッセイを用いて以前に得られた結果を、不一致な結果の解消のために用いた。
【0282】
比較一致度による陽性=正確にMAGE-A3発現体であるサンプル数/試験サンプル数*100
比較一致度による陰性=正確にMAGE-A3非発現体であるサンプル数/試験サンプル数*100
判定基準:
比較一致度による陽性>85%
比較一致度による陰性>85%
NSCLC臨床試験からの臨床検体のクロスバリデーションを行って、COBAS TaqMan MAGE-A3試験の比較一致%による陽性および陰性を評価した。これらの研究では、比較としてMAGE-A3プロトタイプRT-PCRアッセイを用いた。結果に不一致が見られた場合には、新鮮な凍結組織(手動で微細切断していない)として同一サンプルから得た以前の結果を、不一致の結果の解消のために用いることとしていた。
【0283】
QIAGEN RNeasy FFPE法にDNase I消化ステップを加えて用い、手動で微細切断した131件の臨床FFPE検体からRNAを抽出した。次いで、各サンプルをRMS COBAS TaqMan MAGE-A3試験およびRGIプロトタイプアッセイを用いた試験用に、RMSとRGIとに等分した。データ分析は、実施例3に記載したとおり行い、その際、MAGE-A3発現の閾値は1% GERL RNA対照に基づいて決定した。
【0284】
方法の相関性/クロスバリデーションの結果
RNAサンプルは131のNSCLC FFPE臨床検体から抽出した。RGIのRT対照反応に基づいて、7サンプルが25%を超えるゲノムDNAの夾雑が認められた。これらのサンプルは比較一致度の算出による陽性および陰性から除外した。さらに、COBASアッセイからは6件の不確定結果、プロトタイプアッセイからは15件の不確定結果があり、その際、サンプルはこのアッセイの線形範囲外のβ-アクチンCtに基づいて十分な材料を有していなかったか、またはサンプルのMAGE-A3発現が閾値を超えていたが、MAGE-A3のCt値は線形範囲外であった。その結果、COBASアッセイからは117件の結果、およびプロトタイプアッセイからは108件の結果が、2つの異なる試験を比較するためのクロスバリデーションに用いうるデータと共に得られた(表32)。COBASアッセイとプロトタイプアッセイとの間の総合的な一致は98/107、すなわち91.6%であった(表33)。プロトタイプアッセイを「ゴールドスタンダード」として用いたCOBAS試験の比較一致度による陽性は59/64または92.2%であり、比較一致度による陰性は39/43または90.7%であった(表33)。COBASアッセイとプロトタイプアッセイの結果が不一致であった場合には、凍結組織サンプルによって得られた結果を不一致の解消に用いた(表34)。
【0285】
COBOSアッセイとプロトタイプアッセイで不一致な結果であった9サンプルのうち、7サンプルはCOBASアッセイと凍結アッセイとの間で一致を示し、2サンプルはプロトタイプアッセイと凍結アッセイとの間で一致を示した。その結果、凍結結果を不一致の解消に用いた場合には、COBASアッセイの比較一致度による陽性は63/64または98.4%に増加し、比較一致度による陰性は42/43または97.7%に増加する(表34)。
【0286】
COBAS TaqMan MAGE-A3試験の比較一致度による陽性および陰性は、85%以上という基準を超えるものであった。比較一致度による陽性および陰性についての判定基準は満たされた。
【0287】
方法の相関性/クロスバリデーション対照のバリデーション
実験対照のMAGE遺伝子Ctは表30に示している。実験対照のβ-アクチン遺伝子Ctは表31に示している。対照のCtは有効範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0288】
方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細は、表37、38および39に示している。
【0289】
再現性
目的:複数の試薬ロットおよび複数の装置を用いて複数日間、複数のオペレーターにより作成されたデータセットにわたる試験の再現性および頑健性を立証する。
【0290】
サンプル材料:手動で微細切断したNSCLC FFPE臨床サンプルからの12サンプルを、QIAGEN RNeasy FFPE KitとDNase I消化ステップとを用いて抽出し、COBAS TaqMan MAGE-A3試験を用いて増幅/検出した。
【0291】
手法:この研究は1サンプルあたり2回の反復実施を行った。2つの試薬ロットをQIAGENサンプル調製とTaqMan試薬について試験した。実験は2人の異なるオペレーターが異なる日数で2つの異なるCOBAS TaqMan 48 Analyzerを用いて行った。
【0292】
分析:各臨床検体について、2回のRT-PCR反復実施の平均からMAGE-A3発現を算出した。さらに、MAGE-A3コールは各サンプルからの全反復実施について評価した。再現性も、MAGE-A3とβ-アクチン遺伝子との間のΔCt値から計算したMAGE-A3遺伝子発現の比較に基づいたものであった。異なる試薬ロット、装置、オペレーター、および異なる日数で試験したサンプルについてのMAGE-A3発現間の比較を、ピアソン相関を用いて行った。
【0293】
判定基準:Run間および反復実施間で試験の検出限界が少なくとも3倍(3% GERL)であるサンプル間でのMAGE-A3コールの一致が90%を超える。ピアソン相関がサンプル間で90%を超える。
【0294】
再現性結果
MAGE-A3発現閾値は、ある患者がMAGE-A3特異的免疫療法を受けるか否かを決定する、MAGE-A3発現のカットオフレベルである。その閾値以上のMAGE-A3発現のある患者は、MAGE-A3陽性コールであり、治療を受けることとなる。その閾値未満のMAGE-A3発現のある患者は、MAGE-A3陰性コールであり、治療は受けないこととなる。試験の再現性の研究は、各検体について下記の式を用いたMAGE-A3発現コールに基づいたものである:
【数5】
【数6】
【0295】
さらに、アッセイの再現性は2つのRun間のMAGE-A3発現の相関をピアソンの積率相関係数(r)で比較することによって評価した。表40および表37は、β-アクチンとMAGE-A3との間のΔCt値に基づいて、Run 1と2で試験したGERL RNA対照から得たMAGE-A3発現閾値を示している。表41および表43はRun 1と2で試験した12検体各々のMAGE-A3コールを示している。
【0296】
表42は、Run 2-GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値を示している。表43はRun 2-再現性検体についてのMAGE-A3発現コールを示している。
【0297】
試験した全てのサンプルについて、2つのRun間のMAGE-A3発現コールには100%の相関があった。さらに、アッセイの再現性を、2つのRun間のMAGE-A3発現の相関をピアソンの積率相関係数(r)で比較して評価した。2回の異なるRun間のMAGE-A3発現を比較すると、ピアソン相関係数は0.987であった。再現性についての許容基準は満たされた。
【0298】
表44は再現性バリデーションを示している。対照Ctは有効範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0299】
再現性実験の詳細は表45、46、および47に示している。
【技術分野】
【0001】
本発明はMAGE-A3を検出するための診断方法に関する。本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍を患う患者集団の免疫学的治療に関し、その際、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有する患者は本明細書に記載の診断方法を用いて同定される。
【背景技術】
【0002】
MAGE(メラノーマ抗原)ファミリーの遺伝子は、もともとは癌患者の血中リンパ球由来の細胞傷害性リンパ球からの認識により同定されたものである(Van der Bruggenら, 1991)。MAGE遺伝子ファミリーは現在では20種を超えるメンバーを含み、MAGE A、B、C、およびD遺伝子からなっている(Scanlanら, (2002) Immunol. Rev. 188:22-32; Chomezら, (2001) Cancer Res. 61(14):5544-51)。それらの遺伝子はX染色体上にクラスターを形成しているが(Lucasら, 1998 Cancer Res. 58:743-752; Lucasら, 1999 Cancer Res. 59:4100-4103; Lucasら, 2000 Int. J. Cancer 87:55-60; Lurquinら, 1997 Genomics 46:397-408; Muscatelliら, 1995 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4987-4991; Poldら, 1999 Genomics 59:161-167; Rognerら, 1995 Genomics 29:725-731)、その機能については未だ不明確である(Ohmanら, 2001 Exp. Cell Res. 265(2):185-94)。MAGE遺伝子は相同性が非常に高く、特にMAGE-Aファミリーのメンバーは60〜98%の相同性を有する。MAGE遺伝子は、精原細胞および胎盤での発現を除けば、全ての正常細胞内で発現されていない(Haasら, 1988 Am. J. Reprod. Immunol. Microbiol. 18:47-51; Takahashiら, 1995 Cancer Res. 55:3478-382)。
【0003】
癌でのMAGE遺伝子発現の再活性化は、プロモーターの異常な脱メチル化による(De Smeetら, 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(14):7149-53; De Smeetら, 1999 Mol. Cell Biol. 19(11):7327-35)。12種類のMAGE-A遺伝子が以下の癌で可変的に過剰発現される:移行細胞癌、食道癌、メラノーマ、膀胱癌、および非小細胞肺癌(NSCLC)(Scanlanら, 2002 Immunol. Rev. 188:22-32)。癌組織におけるMAGE発現の過剰発現性と特異性から、MAGE-A3タンパク質が癌ワクチンのための抗原として用いられている(Scanlanら, 2002 Immunol. Rev. 188:22-32)。しかし、癌患者で見出される発現量の範囲が広いため、このタンパク質を発現している患者へのワクチン接種を管理するためには、MAGE-A3の発現レベルを各患者で正確に予測しなければならない。MAGE-A3はMAGE-3と相互に交換しうる形で言及されることが多く、本明細書では双方とも用いられている。
【0004】
メラノーマ
遠隔転移のある悪性メラノーマを示す患者(American Joint Committee on Cancer (AJCC)の分類でステージIV)では、生存期間の中央値は1年であり、長期生存率は5%にすぎない。ステージIVのメラノーマに対する標準的な治療を行ってもわずか8〜25%の治療応答率であり、全生存には効果がない。局所転移のある患者(ステージIII)では生存期間の中央値は2〜3年であり、原発性及び局所転移を外科的に十分に制御しても長期生存の可能性は低い(Balchら, 1992 Semin. Surg. Oncol. 8(6):400-14)。ステージI〜IIIのメラノーマ患者の多くは、外科的に腫瘍が除去されているが、それらの患者で再発する危険性がかなりある。従って、メラノーマの進行を防ぎ、転移性メラノーマに対する治療レジメンおよび原発性腫瘍が除去されている患者のためアジュバント療法を改善することが必要なままである。
【0005】
肺癌
肺癌には以下の2つのタイプがある:非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC)。これらの名称は単純に腫瘍内に見出される細胞のタイプを述べたものである。NSCLCには扁平上皮癌、腺癌、および大細胞癌が含まれ、肺癌の約80%を占める。NSCLCは治癒が困難で現在行われている治療はできる限りの延命と疾患症状の軽減を目的とする傾向がある。NSCLCは最も一般的な肺癌であり、予後は不良を伴う。全てのNSCLC患者のうちで約25%が診断時に局所疾患を有するが、外科的切除はまだ行いうる状態である(AJCC分類でステージIB、IIA、またはIIB)。しかし、それらの患者の50%超は、外科的に完全に切除を行ってから2年以内に再発する。従って、これらの患者に対して、より良い治療を提供するニーズがある。
【0006】
MAGE-A3の発現
細胞株および腫瘍サンプル内でのMAGE-A3遺伝子の発現を測定しようとこれまでに多数の方法が試みられてきた。半定量的RT-PCR(De Plaenら, 1994 Immunogenetics 40(5):360-9)、その他のPCRをベースとした技法、および低密度マイクロアレイが全て用いられてきた(Zammatteoら, 2002 Clinical Chemistry 48(1):25-34)。しかし、それらの研究の多くで、主な問題点は、偽陽性の原因となるMAGEファミリーメンバー間の非常に高い相同性であった。大規模なフェーズIIおよびIII試験のために、MAGE-A3発現性サンプルを特異的に同定し、かつサンプルを陽性と誤って評価する可能性を低減できる、定量的な高スループットのアッセイ法が望まれる。
【0007】
ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)腫瘍組織(これは臨床センター内で腫瘍組織を保存するために通常用いられている方法である)の使用に伴う別の問題がある。ホルマリンでの固定化によって組織内のRNAの分子構造が変化し、架橋とさらには部分的な分解が生ずる。部分的な分解が起こると100〜300塩基対のRNAの小片が作られる。これらのRNAの構造変化によって、FFPE組織から抽出されたRNAを従来の診断技法で使用することが困難となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Van der Bruggenら, 1991
【非特許文献2】Scanlanら, (2002) Immunol. Rev. 188:22-32;
【非特許文献3】Chomezら, (2001) Cancer Res. 61(14):5544-51
【非特許文献4】Lucasら, 1998 Cancer Res. 58:743-752;
【非特許文献5】Lucasら, 1999 Cancer Res. 59:4100-4103;
【非特許文献6】Lucasら, 2000 Int. J. Cancer 87:55-60;
【非特許文献7】Lurquinら, 1997 Genomics 46:397-408;
【非特許文献8】Muscatelliら, 1995 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4987-4991;
【非特許文献9】Poldら, 1999 Genomics 59:161-167;
【非特許文献10】Rognerら, 1995 Genomics 29:725-731
【非特許文献11】Ohmanら, 2001 Exp. Cell Res. 265(2):185-94
【非特許文献12】Haasら, 1988 Am. J. Reprod. Immunol. Microbiol. 18:47-51;
【非特許文献13】Takahashiら, 1995 Cancer Res. 55:3478-382
【非特許文献14】De Smeetら, 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(14):7149-53;
【非特許文献15】De Smeetら, 1999 Mol. Cell Biol. 19(11):7327-35
【非特許文献16】Balchら, 1992 Semin. Surg. Oncol. 8(6):400-14
【非特許文献17】De Plaenら, 1994 Immunogenetics 40(5):360-9
【非特許文献18】Zammatteoら, 2002 Clinical Chemistry 48(1):25-34
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有しており、それゆえMAGE-A3特異的免疫療法からの利益を享受する患者を同定するためのアッセイを開発した。
【0010】
本発明の1実施形態においては、配列番号3〜12のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプライマーが提供される。さらに別の1実施形態においては、下記のプライマーのペアの1つ以上を含んでいるプライマーのセットが提供される:
a) 配列番号3および4;
b) 配列番号5および6;
c) 配列番号7および8;
d) 配列番号9および10;ならびに
e) 配列番号11および12。
【0011】
本発明のさらに別の1態様においては、配列番号13〜17、53または54のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプローブが提供される。
【0012】
さらに別の1実施形態においては、
(i) 1種の正方向プライマー;
(ii) 1種の逆方向プライマー;および
(iii) 1種のプローブ、
を含み、要素(i)、(ii)、および(iii)は、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列とハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)または(iii)の標的配列のうちの少なくとも1つは、他の全てのMAGE Aヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつMAGE-A3とMAGE-A6とを区別するために用いることができるキットが提供される。
【0013】
さらに、
(i) 1種の正方向プライマー;
(ii) 1種の逆方向プライマー;および
(iii) 1種のプローブ、
を含み、要素(i)、(ii)、および(iii)は、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列とハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)または(iii)の標的配列のうちの少なくとも1つは、MAGE-A6ヌクレオチド配列の等価の領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつMAGE-A3とMAGE-A6とを区別するために用いることができるキットが提供される。
【0014】
1実施形態においては、本発明のキットは、下記の要素を含むことができる:(i)本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたはプライマーのセット;および(iii)本明細書に記載の少なくとも1種のプローブ。1例では、要素(i)は配列番号3および4を含んでおり;要素(ii)は配列番号13を含んでいる;あるいは、要素(i)は配列番号5および6を含んでおり;要素(ii)は配列番号14を含んでいる;または、要素(i)は配列番号7および8を含んでおり;要素(ii)は配列番号15を含んでいる;または、要素(i)は配列番号9および10を含んでおり;要素(ii)は配列番号16を含んでいる;または、要素(i)は配列番号11および12を含んでおり;要素(ii)は配列番号17を含んでいる;または、要素(i)は配列番号11および12を含んでおり;要素(ii)は配列番号53もしくは配列番号54を含んでいる。
【0015】
本発明のさらに別の1実施形態においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマー、本明細書に記載のプライマーのセット、本明細書に記載のプローブ、または本明細書に記載のキットとを接触させるステップを含んでいる。
【0016】
本発明の別の1態様は、ある生物学的サンプルを本明細書に記載のプライマー、プローブ、またはプライマーのセットを用いてアッセイすることによって、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法である。
【0017】
さらに別の1態様においては、患者を診断する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマー、本明細書に記載のプライマーのセット、本明細書に記載のプローブ、または本明細書に記載のキットとを接触させるステップ、および該サンプル中にMAGE-A3が発現されているかを評価するステップを含んでいる。
【0018】
この方法はさらに、ヌクレオチド配列を増幅するステップ、および前記サンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出するステップを含むことができる。
【0019】
さらに別の1態様においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、ある生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、少なくとも1種の本明細書に記載のプライマーまたはプローブとを接触させることを含んでいる。この方法はさらに、単離されたヌクレオチド配列がストリンジェントな条件下で少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを判定し、それによって腫瘍組織がMAGE-A3陽性であるかを検出するステップを含むことができる。1実施形態においては、この方法はさらに、前記ヌクレオチド配列が少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを検出するための、in situハイブリダイゼーションを用いるステップを含むことができる。
【0020】
本明細書に記載の方法は、凍結組織である生物学的サンプルについて用いることができる。あるいは、もしくはさらに、本明細書に記載の方法は、パラフィンで保存された組織、例えばホルマリンで固定化され、パラフィン包埋された組織(FFPE)である生物学的サンプルについて行うことができる。
【0021】
本発明はさらに、患者を治療する方法を提供し、該方法は:ある患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを本明細書に記載の方法を用いて判定し、次いで本明細書に記載のMAGE-A3免疫療法、または免疫療法薬を含む組成物を該患者に投与することを含んでいる。
【0022】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法を提供し、その際、該患者は既にMAGE-A3発現性腫瘍組織を除去/治療するための処置を受けている。この方法は、本明細書に記載した方法を用いて患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを判定し、次いで、本明細書に記載のMAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物を該患者に投与することを含んでいる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者の治療のための医薬品の製造における使用が提供され、その際、患者は本明細書に記載の方法を用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有することが同定される。
【0024】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者の治療のための医薬品の製造における使用が提供され、その際、患者は本明細書に記載の方法を用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有することが同定される。
【0025】
1実施形態においては、本明細書に記載の治療法または使用法が提供され、この実施形態では、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物は、MAGE-A3抗原またはそのペプチドを含んでいる。1実施形態においては、MAGE-A3抗原またはそのペプチドは、ペプチドEVDPIGHLYを含んでいるかまたはこのペプチドからなる。
【0026】
本発明で用いるためのMAGE-A3抗原またはペプチドは、担体タンパク質と融合またはコンジュゲートすることができる。1実施形態においては、担体タンパク質は、プロテインD、NS1、またはCLytAもしくはそれらの断片から選択することができる。
【0027】
本発明の1実施形態においては、MAGE-A3免疫療法または免疫療法薬を含む組成物は、アジュバントをさらに含むことができる。例えば、アジュバントは、次の1種以上または組み合わせを含むことができる:3D-MPL;アルミニウム塩;CpG含有オリゴヌクレオチド;QS21やISCOMなどのサポニン含有のアジュバント;水中油型乳剤;およびリポソーム。1実施形態においては、アジュバントは3D-MPL、CpG含有オリゴヌクレオチド、およびQS21を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】MAGE-Aファミリーメンバー内でのMAGE-A3 RT-PCR TaqManプライマーの特異性。
【図2】MAGE-A3発現用のMinor Groove Binding(MGB)プローブTaqMan RT-PCRの特異性。
【図3】MAGE-A3およびMAGE-A6プラスミドの存在下でのMAGE-A3プライマーの特異性試験。
【図4】定量的TaqMan PCRで測定した、MAGE-A3の腫瘍での発現。
【図5】MAGE-A3発現の試験。
【図6】図6a:FFPE組織の使用のために設計されたMAGE-A3プライマーの特異性。図6b:さまざまな量のRNAに対してのプライマーの線形性の試験。
【図7】RNA later frozen assayとFFPE組織PCRとの比較。
【図8】RNA later frozen assayとFFPEをベースとしたMAGE-A3アッセイとの相対比較。
【図9−1】リポプロテインD断片、Mage3断片、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ならびにその各アミノ酸配列(配列番号35および36)。
【図9−2】図9-1の続き。
【図9−3】図9-2の続き。
【図10−1】NS1-MAGE3、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質(配列番号37)。
【図10−2】図10-1の続き。
【図11】融合タンパク質NS1-MAGE3-HisをコードするDNA(配列番号38)。
【図12−1】CLYTA-MAGE3-ヒスチジンの融合タンパク質(配列番号39)。
【図12−2】図12-1の続き。
【図13】融合タンパク質CLYTA-MAGE3-HisのDNA(配列番号40)。
【図14】MAGE-A3用のRT-PCRプライマーおよびプローブを設計するためのMAGE-A遺伝子ファミリーの配列のアラインメント。
【図15】標的配列を含む領域(囲んだ活字部分)を同定するためのMAGE-A3配列およびMAGE-A6配列のアラインメント。
【図16】半定量的MAGE A3-RT-PCR用のクラス:5つのクラスをどのように半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに割り付けることができるかを示す一例。
【図17】20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-AプラスミドからのCt値のグラフによる比較。
【図18】20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値のグラフによる比較。
【図19】FFPE 異種移植GERL RNAの線形性−RNA Inputの100から0.1 ngまでの2倍連続希釈。
【図20】図20は、MAGE-A3とβ-アクチンとの間のRNA Input vs ΔCtの対数(底は2)によるグラフを示している。
【図21】表1:半定量的MAGE RT-PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図22】表2:TaqMan 定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図23】表3:MAGE-A3半定量的PCR vs 定量的TaqMan PCRの比較。
【図24】表4:PCRミックス1およびPCRミックス2を用いた、CtおよびΔCt値の比較。
【図25】表5:凍結組織からのMGB TaqMan定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【図26】表7:COBASTM TaqMan MAGE-A3プライマーおよびプローブの配列。
【図27】表8:COBASTM TaqMan β-アクチンプライマーおよびプローブの配列。
【図28】表9:COBASTM TaqManサンプルおよび対照の有効なCT値の範囲。
【図29】表10:COBASTM TaqMan温度サイクルプロフィール-MAGE-A3の排他性実験のためのPCR温度プロフィール。
【図30】表11:線形性およびRT-PCR効率、分析感度(検出限界)、方法の相関性、および再現性の実験用のRT-PCR温度プロフィール。
【図31】表12:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-A3プラスミドからのCt値。表13:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値。
【図32】表14:MAGE-A3排他性実験バリデーション。
【図33】表15および表16:MAGE-A3排他性実験の詳細。
【図34】表17:11段階のレベルで10回の反復実施から得られた線形性、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値、ならびにΔCt。
【図35】表18:MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率。
【図36】表19:線形性/RT-PCR効率実験バリデーション。
【図37】表20、21および22:線形性/RT-PCR効率実験の詳細。
【図38】表23:MAGE-A3Ctヒット率、各条件につきN=24。
【図39】表24:MAGE-A3Ctヒット率%、各条件につきN=24。表25:β-アクチンCtヒット率、各条件につきN=24。表26:β-アクチンCtヒット率%、各条件につきN=24。
【図40】表27:MAGE遺伝子FAM対照のCt。表28:β-アクチンHEX対照のCt。
【図41】表29;表30;および表31:検出限界実験の詳細。
【図42】表32:サンプルのクロスバリデーションの概要。
【図43】表33:比較一致度(Comparator Percent Agreement)によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。表34:不一致の結果を解消するために凍結試験(frozen Test)を用いた、比較一致度によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【図44】表35:実験対照MAGE遺伝子のCt。表36:実験対照β-アクチン遺伝子のCt。
【図45】表37、38および39:方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細。
【図46】表40:Run 1−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。表41:Run 1−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【図47】表42:Run 2−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。表43:Run 2−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【図48】表44:再現性バリデーション。
【図49】表45、46および47:再現性実験の詳細。
【発明を実施するための形態】
【0029】
表および配列の説明
表1:半定量的MAGE RT-PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0030】
表2:TaqMan 定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0031】
表3:MAGE-A3半定量的PCR vs 定量的TaqMan PCRの比較。
【0032】
表4:PCRミックス1およびPCRミックス2を用いた、CtおよびΔCt値の比較。
【0033】
表5:凍結組織からのMGB TaqMan定量的RT-PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマー。
【0034】
表6:半定量的MAGE-A3 RT-PCR用のクラス:5つのクラスをどのように半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに割り付けることができるかを示す一例(図16参照)。
【0035】
表7:COBASTM TaqMan MAGE-A3プライマーおよびプローブの配列。
【0036】
表8:COBASTM TaqMan β-アクチンプライマーおよびプローブの配列。
【0037】
表9:COBASTM TaqManサンプルおよび対照の有効なCT値の範囲。
【0038】
表10:COBASTM TaqMan温度サイクルプロフィール-MAGE-A3の排他性実験のためのPCR温度プロフィール。
【0039】
表11:線形性およびRT-PCR効率、分析感度(検出限界)、方法の相関性、および再現性の実験用のRT-PCR温度プロフィール。
【0040】
表12:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いたMAGE-A3プラスミドからのCt値。
【0041】
表13:20、2、0.2、0.02 pgのDNAを用いた、他のMAGE-Aプラスミドについての、MAGE-A3と相対的なΔCt値。
【0042】
表14:MAGE-A3排他性実験バリデーション。
【0043】
表15および表16:MAGE-A3排他性実験の詳細。
【0044】
表17:11段階のレベルで10回の反復実施から得られた線形性、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値、ならびにΔCt。
【0045】
表18:MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率。
【0046】
表19:線形性/RT-PCR効率実験バリデーション。
【0047】
表20、21および22:線形性/RT-PCR効率実験の詳細。
【0048】
表23:MAGE-A3Ctヒット率、各条件につきN=24。
【0049】
表24:MAGE-A3Ctヒット率%、各条件につきN=24。
【0050】
表25:β-アクチンCtヒット率、各条件につきN=24。
【0051】
表26:β-アクチンCtヒット率%、各条件につきN=24。
【0052】
表27:MAGE遺伝子FAM対照のCt。
【0053】
表28:β-アクチンHEX対照のCt。
【0054】
表29;表30;および表31:検出限界実験の詳細。
【0055】
表32:サンプルのクロスバリデーションの概要。
【0056】
表33:比較一致度(Comparator Percent Agreement)によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【0057】
表34:不一致の結果を解消するために凍結試験(frozen Test)を用いた、比較一致度によるCOBAS試験ならびにプロトタイプ試験の陽性および陰性。
【0058】
表35:実験対照MAGE遺伝子のCt。
【0059】
表36:実験対照β-アクチン遺伝子のCt。
【0060】
表37、38および39:方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細。
【0061】
表40:Run 1−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。
【0062】
表41:Run 1−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【0063】
表42:Run 2−GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値。
【0064】
表43:Run 2−再現性検体についてのMAGE-A3発現コール。
【0065】
表44:再現性バリデーション。
【0066】
表45、46および47:再現性実験の詳細。
【0067】
配列番号1-MAGE3-E2F(半定量的MAGE3アッセイ用のプライマー)(表1)。
【0068】
配列番号2-MAGE3-E3R(半定量的MAGE3アッセイ用のプライマー)(表1)。
【0069】
配列番号3-E3 MAGE3 TMF(エクソン3 MAGE-A3用の正方向プライマー)(表2)。
【0070】
配列番号4-E3 MAGE3 TMR(エクソン3 MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 エクソン配列の逆相補体である)(表2)。
【0071】
配列番号5-I3 MAGE3 TMF(イントロン3 MAGE-A3用の正方向プライマー)(表2)。
【0072】
配列番号6-I3 MAGE3 TMR(イントロン3 MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 イントロン配列の逆相補体である)(表2)。
【0073】
配列番号7-MAGEA3-775F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0074】
配列番号8-MAGEA3-849R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0075】
配列番号9-MAGE3e-950F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0076】
配列番号10-MAGEA3e-1037R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0077】
配列番号11-MAGEA3f-623F(MAGE-A3用の正方向プライマー)(表5)。
【0078】
配列番号12-MAGEA3f-697R(MAGE-A3用の逆方向プライマー;このプライマーは、これが認識するMAGE-A3 配列の逆相補体である)(表5)。
【0079】
配列番号13-E3 MAGE3 TMP(エクソン3 MAGE3用のプローブ)(表2)。
【0080】
配列番号14-I3 MAGE-A3 TMP(イントロン3 MAGE3用のプローブ)(表2)。
【0081】
配列番号15-MAGEA3-801Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0082】
配列番号16-MAGEA3e-1000Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0083】
配列番号17-MAGEA3f-651Tmc(MAGE3用のプローブ)(表5)。
【0084】
配列番号18-β-アクチン-E4F(β-アクチンプライマー)(表1)。
【0085】
配列番号19-β-アクチン-E6R(β-アクチンプライマー)(表1)。
【0086】
配列番号20-β-アクチン-TMF(β-アクチンプライマー)(表2)。
【0087】
配列番号21-β-アクチン-TMR(β-アクチンプライマー)(表2)。
【0088】
配列番号22-β-アクチン-TMP(β-アクチンプローブ)(表2)。
【0089】
配列番号23〜配列番号29:MAGE3イムノペプチド。
【0090】
配列番号30〜配列番号34:アジュバントオリゴヌクレオチド。
【0091】
配列番号35-リポプロテインD断片-MAGE3断片-ヒスチジンテイルの融合タンパク質のヌクレオチド配列(図9)。
【0092】
配列番号36-配列番号35のアミノ酸配列(図9)。
【0093】
配列番号37-融合タンパク質NS1-MAGE3-ヒスチジンテイルのアミノ酸配列(図10)。
【0094】
配列番号38-配列番号37をコードするヌクレオチド配列(図11)。
【0095】
配列番号39-融合タンパク質CLYTA-MAGE3-ヒスチジンのアミノ酸配列(図12)。
【0096】
配列番号40-CLYTA-MAGE3-ヒスチジン融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(図13)。
【0097】
配列番号41-MAGE 1 断片(図14)。
【0098】
配列番号42-MAGE 2 断片(図14)。
【0099】
配列番号43-MAGE 4a 断片(図14)。
【0100】
配列番号44-MAGE 7 断片(図14)。
【0101】
配列番号45-MAGE 8 断片(図14)。
【0102】
配列番号46-MAGE 10 断片(図14)。
【0103】
配列番号47-MAGE 11断片(図14)。
【0104】
配列番号48-MAGE 12 断片(図14)。
【0105】
配列番号49-MAGE-A6 断片(図14)。
【0106】
配列番号50-MAGE-A3 断片(図14)。
【0107】
配列番号51-MAGE-A3 断片(図15)。
【0108】
配列番号52-MAGE-A6 断片(図15)。
【0109】
配列番号53-MAGE-A3合成プローブ配列MAGEA3F-646MOD(表7)。
【0110】
配列番号54-非修飾ヌクレオチドを有するMAGEA3F-646MODプローブ配列。
【0111】
配列番号55-β-アクチンプライマー配列RGI BACT F2(表8)。
【0112】
配列番号56-β-アクチンプライマー配列RGI BACT R2(表8)。
【0113】
配列番号57-β-アクチンプローブ配列HW RGIBACTH(表8)。
【0114】
詳細な説明
本明細書で用いている「標的配列」という用語は、MAGE-A3核酸配列(DNAまたはRNAのいずれか、例えばゲノムDNA、メッセンジャーRNA、またはそれらの増幅型)の1領域であって、これに対してプローブまたはプライマーの配列が部分的な(すなわちある程度のミスマッチがある)または完全な同一性を有している領域である。なお逆方向プライマーは、それが認識する配列の逆相補体(または、上記と同様に、ある程度のミスマッチがある)である。標的配列は通常は、もう一つ別のまたは他の全てのMAGE-Aヌクレオチド配列と比較して少なくとも1個のヌクレオチドが異なるMAGE-A3配列の1領域を指す。しかし、本発明のいくつかの実施形態において、1種以上のプライマーおよびプローブについて、使用される少なくとも1種または2種のプライマーおよびプローブが、区別されるべき遺伝子間で異なる標的配列を認識する場合には、標的配列がMAGE-Aヌクレオチド配列間で同一でもよい。
【0115】
従って、1実施形態においては、特定のプライマーまたはプローブは、標的MAGE-A3配列とミスマッチのない状態で結合し、かつ別のMAGE-A配列、例えばMAGE-6の配列のこれと等価な領域と1つ以上の塩基対のミスマッチのある状態で結合する。
【0116】
本発明のプライマーまたはプローブにとっての標的配列は、MAGE-A3の非常に高い特異性での検出を可能とするために、2種の遺伝子間の差(ミスマッチ)が最多である配列であることができる。
【0117】
本発明の1実施形態においては、標的配列は図15の四角で囲んだ領域中にある。
【0118】
適切には、プライマーまたはプローブは、該プライマーまたはプローブの全体にわたって標的配列と少なくとも95%同一であることができ、適切には95%超、例えば96%、97%、98%、99%同一であることができ、最も好ましくはその長さにわたって標的MAGE-A3配列と100%の同一性を有することができる。例えば、本発明のプライマーもしくはプローブは、該プライマーもしくはプローブの全ヌクレオチドの位置において該標的配列と同一であることができ、または、プローブの長さ、温度、反応条件、およびアッセイに必要条件に応じて、1箇所、2箇所、またはそれ以上のミスマッチを有してもよい。ただし、当然のことながら、逆方向プライマーはプライマー配列の逆相補体である領域に対してこれらの条件を充足する。
【0119】
適切には、プライマーまたはプローブの各ヌクレオチドは、その対をなす標的ヌクレオチドと水素結合を形成することができる。
【0120】
好ましくは、プライマーまたはプローブと標的配列との相補性は、A:TおよびC:Gの塩基対形成の程度で評価される(アデニン(A)ヌクレオチドはチミン(T)とペアを作り、グアニン(G)ヌクレオチドはシトシン(C)とペアを作る、またはその逆である)。RNAではTをU(ウラシル)で置き換えることができる。
【0121】
例えば、ユニバーサルプローブ中でイノシンを用いる場合には、相補性はイノシン(プローブ)-標的ヌクレオチド相互作用の程度で評価することもできる。
【0122】
従って、本発明は、表1および2に示すとおり、配列番号1〜12のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプライマーを提供する。本明細書で用いている「プライマー」という用語は、例えばPCR技法でプライマーとして用いることのできる一本鎖オリゴヌクレオチド配列のいずれかを意味する。従って、本発明でいう「プライマー」は、コピーしようとしている核酸鎖に対して実質的に同一(正方向プライマーについて)または実質的に逆相補的(逆方向プライマーについて)である、プライマー伸長産物の合成の開始点として作用することのできる一本鎖オリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーの設計(長さおよび具体的な配列)は、DNAおよび/またはRNA標的の性質、ならびにプライマーが用いられる条件(例えば温度やイオン強度)によって変わる。
【0123】
プライマーは、配列番号1〜12に示すヌクレオチド配列からなるものであってもよいし、または、ストリンジェントな条件下でMAGE-A3ヌクレオチド配列内の標的配列への特異的結合に適切である限り、配列番号1〜12の配列を含むかもしくは該配列の範囲内の10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、あるいはそれ以上の塩基対であってもよい。必要に応じて、プライマーまたはプローブの長さもしくは配列をわずかに改変して、所与の環境下で必要とされる特異性および感度を維持することができる。本明細書に列挙したプローブおよび/またはプライマーは、1、2、3、4もしくは5個のヌクレオチドだけ、例えば一方の方向に、伸長もしくは短縮することができる。
【0124】
本明細書で用いている「ストリンジェントな条件」という用語は、プライマーがMAGE-A3ヌクレオチド配列内のヌクレオチド配列と特異的に結合することができるが、他のMAGEヌクレオチド配列のいずれとも結合しないハイブリダイゼーションの条件のいずれかを意味する。プローブのMAGE-A3ヌクレオチド配列の1領域への「特異的結合」または「特異的ハイブリダイゼーション」とは、プライマーまたはプローブがこの領域の一部またはその領域全体と、用いた実験条件下で二本鎖(二本鎖のヌクレオチド配列)を形成し、それらの条件下で、プライマーまたはプローブが、分析しようとするサンプル中に存在するヌクレオチド配列の他の領域とは二本鎖を形成しないことを意味する。MAGE-A3ヌクレオチド配列のある領域内での特異的なハイブリダイゼーションのために設計された本発明のプライマーおよびプローブが、その全体が該領域内に収まるか、または該領域とかなりの範囲で重複する(すなわち該領域内だけでなく、その外側のヌクレオチドとも二本鎖を形成する)ことができることは理解されるべきである。
【0125】
適切には、核酸標的領域に対するプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件下、例えば、3X SSC、0.1% SDS、50℃で起こる。当業者は、特異的なハイブリダイゼーションが達成できるように、温度、プローブ長、および塩濃度のパラメーターをどのように変えるかを知っている。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件はよく知られており、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual" 第2版 Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)、特に11章に例示されている。
【0126】
本発明はさらに、下記のプライマーのペアの1種以上を含んでいるプライマーのセットを提供する:
【表1】
【0127】
本発明はさらに、配列番号13〜17、53もしくは54のいずれかのヌクレオチド配列を含んでいるプローブを提供する。本明細書で用いている「プローブ」という用語は、核酸と結合することができ、かつ例えばPCR技法で、プローブとして用いることができる、一本鎖オリゴヌクレオチド配列のいずれかを意味する。プローブは、配列番号13〜17、53もしくは54に示すヌクレオチド配列からなるものであってもよいし、または、それらがMAGE-A3ヌクレオチド配列内の標的配列に特異的に結合するために適したものである限り、配列番号13〜17、53、もしくは54の配列を含むかもしくは該配列の範囲内の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20、25、30、35、40、45、50、75、100、もしくはそれ以上の塩基対であってもよい。
【0128】
本発明の1実施形態においては、方法にプライマーのペアと組み合わせてプローブが用いられる場合には、プライマーのペアは、プローブが結合することができるかまたはそれに対するプローブが固体支持体上に固定化される、MAGE-A3ポリヌクレオチド断片の一部もしくは全ての増幅を可能にするものでなければならない。
【0129】
プライマーおよび/またはプローブはさらに、そのプローブの検出を可能にするマーカーを含むことができる。用いることができるマーカーの例としては、蛍光マーカー、例えば、6-カルボキシフルオレセイン(6FAMTM)、NEDTM (Applera Corporation)、HEXTMまたはVICTM (Applied Biosystems)、TAMRATMマーカー(Applied Biosystems, CA, USA);化学発光マーカー、例えばルテニウムプローブ;および放射性標識、例えばトリチウム化チミジンの形態のトリチウムが挙げられる。32Pも放射性標識として用いることができる。
【0130】
本発明の1実施形態においては、プローブは蛍光レポーター色素をその5'末端に含み、消光色素をその3'末端に含むことができる。蛍光レポーター色素は、6-カルボキシフルオレセイン(6FAM)を含むことができ、消光色素は非蛍光性のクエンチャー(NFQ)を含むことができる。場合により、Minor Groove Binder Protein(MGBTM;Applied Biosystems, CA, USA)をプローブに、例えば該プローブの3'末端に付加することができる。
【0131】
1実施形態においては、MGBTM Eclipseプローブを用いることができる(Epoch Biosystems, WA, USA)。MGBTM Eclipseプローブは、該プローブの5’末端に位置するMGBTM部分とEclipseTM Dark Quencherとを有する。蛍光レポーター色素は該プローブの5'末端に位置する。
【0132】
1実施形態においては、本発明のプライマーおよびプローブ配列は、天然のヌクレオチド構造または塩基、例えばアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)を含むことができる。
【0133】
さらに別の1実施形態においては、プローブの配列は、ヌクレオチド構造または塩基の合成のまたは改変型の類似物を含むことができる。合成のまたは改変型のとは、非天然のヌクレオチド構造または塩基を意味する。そのような合成のまたは改変型の塩基は、プローブ配列中の塩基のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または全てと置き換えることができる。1実施形態においては、シトシンは5-メチルdCと置換することができ、チミンは5-プロピニルdUと置換することができる。BHQ2 Quencherもその配列中に含めることができる。
【0134】
本発明はさらに、次の要素を含んでいるキットを提供する:(i)本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたはプライマーのセット;および(ii)本明細書に記載の少なくとも1種のプローブ。1実施形態においては、このキットは1種の正方向プライマー、1種の逆方向プライマー、ならびに該正方向および逆方向プライマーによって増幅される領域内の標的配列を有する1種のプローブ配列を含んでいる。この実施形態においては、プライマーのセットはMAGE-A3の配列の一部分(アンプリコン)を増幅することができ、かつ、プローブはストリンジェントな条件下でアンプリコンとハイブリダイズすることができる。
【0135】
MAGE-A3およびMAGE-A6の配列は相同性が非常に高く、ヌクレオチドでは98%アライメント、タンパク質の配列では95%のアライメントを有している。MAGE-A3配列を特異的に同定するために、MAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができるプライマーおよびプローブを同定する必要がある。
【0136】
1実施形態においては、本発明はストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列と特異的にハイブリダイズするプライマーおよび/またはプローブのセットを提供し、その際、該プライマーまたはプローブの標的配列の少なくとも1つは、他の全てのMAGE Aヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつ該セットはMAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができる。
【0137】
1実施形態においては、本発明はストリンジェントな条件下でMAGE-A3の標的配列と特異的にハイブリダイズするプライマーおよび/またはプローブのセットを提供し、その際、該プライマーまたはプローブの標的配列の少なくとも1つは、MAGE A6ヌクレオチド配列の等価な領域と比較して少なくとも1つのヌクレオチドが異なっており、かつ該セットはMAGE-A3とMAGE-A6とを区別することができる。
【0138】
1実施形態においては、少なくとも1種のプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3の標的配列において、MAGE-A6の等価な領域と比較して1個のヌクレオチドが異なっていてもよい。さらに別の1実施形態においては、少なくとも1種のプライマーまたはプローブの標的配列はMAGE-A6の等価な領域と比較して2個のヌクレオチドが異なっていてもよい。
【0139】
1実施形態においては、2種のプライマーと1種のプローブを含んでいるキットは、該プライマーおよびプローブの標的配列中に次の差異を有してもよい:
(i) 2種のプライマーのうちの1つまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(ii) 上記(i)で言及していないプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(iii) 残りのプライマーまたはプローブの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である。
【0140】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる;
(iii) プローブCの標的配列はMAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である。
【0141】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である;
(iii) プローブCの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる。
【0142】
例えば、1実施形態においては、プライマーA、プライマーB、およびプローブCを含んでいるキットは、標的配列において次の差異を含んでもよい:
(i) プライマーAの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6の双方と同一である;
(ii) プライマーBの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で1個のヌクレオチドが異なる;
(iii) プローブCの標的配列は、MAGE-A3およびMAGE-A6間で2個のヌクレオチドが異なる。
【0143】
1実施形態においては、キットは次のものを含むことができる:配列番号3および4からなるまたは配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号13からなるまたは配列番号13を含んでいるプローブ;配列番号5および6からなるまたは配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号14からなるまたは配列番号14を含んでいるプローブ;配列番号7および8からなるまたは配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号15からなるまたは配列番号15を含んでいるプローブ;配列番号9および10からなるまたは配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号16からなるまたは配列番号16を含んでいるプローブ;ならびに/または、配列番号11および12からなるまたは配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号17からなるまたは配列番号17を含んでいるプローブ。
【0144】
本発明のさらに別の1実施形態においては、MAGE-A3陽性腫瘍組織の存在または不在を判定する方法が提供され、該方法は、生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来するヌクレオチド配列と、本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたは少なくとも1セットのプライマーまたはプローブとを接触させるステップを含んでいる。MAGE-A3陽性腫瘍組織とは、患者から単離された、MAGE-A3抗原を発現している腫瘍または腫瘍細胞のいずれかを意味する。本明細書に記載の方法は、生物学的サンプルがMAGE-A3陽性腫瘍組織を含んでいるか、またはMAGE-A3陽性腫瘍組織からなるかを判定するために用いることができる。
【0145】
生物学的サンプルとは、患者から切除または単離された患者由来の組織または細胞のサンプルを意味する。
【0146】
さらに、患者を診断する方法が提供され、該方法は、生物学的サンプルから得られたまたは該サンプルに由来するヌクレオチド配列と、本明細書に記載の少なくとも1種のプライマーまたは少なくとも1セットのプライマーまたはプローブとを接触させるステップ、およびMAGE-A3が該サンプル中に発現されているかを評価するステップを含んでいる。
【0147】
1実施形態においては、ヌクレオチド配列は生物学的サンプルであるか、または該サンプルから単離されたものである。
【0148】
本明細書で用いている「得られたまたは由来する」という用語は、包括的に用いられることを意味している。すなわち、腫瘍サンプルから直接的に単離された任意のヌクレオチド配列を包含するか、または、該サンプルから例えばmRNAまたはcDNAを作製するために逆転写を用いることによって誘導された任意のヌクレオチド配列を包含することを意図する。
【0149】
本発明の方法はさらに、ヌクレオチド配列を増幅すること、およびサンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出することを含むことができる。あるいは、またはさらに、本発明の方法は、単離されたまたは増幅されたヌクレオチド配列と、本明細書に記載の1種以上のプローブとを接触させることをさらに含んでもよい。
【0150】
1実施形態においては、ヌクレオチド配列は腫瘍サンプルから単離または精製される。RT-PCRでは、ゲノムDNAの夾雑が偽陽性の結果をもたらしうる。1実施形態においては、ゲノムDNAは、試験されるまたは本発明の方法に含まれるサンプルから、除去されるかまたは実質的に除去される。
【0151】
本発明の方法はMAGE-A3陽性腫瘍組織の検出に適当である。本発明の1実施形態においては、MAGE-A3陽性組織はin situハイブリダイゼーションによって検出することができる。in situハイブリダイゼーションとは、特定のDNAまたはRNA配列の形態学的部位を直接可視化するために、患者から単離された無傷の染色体、細胞、または組織上で、本発明のプライマーまたはプローブを用いて行われるハイブリダイゼーション反応を意味する。
【0152】
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションは適切なハイブリダイゼーション法および検出系のいずれかを用いて行うことができる。ハイブリダイゼーション系の例としては、従来法のドットブロット、サザンブロット、およびサンドイッチ法が含まれる。例えば、適当な方法としては、リバースハイブリダイゼーションの手法を挙げることができ、この手法では、タイプ特異的プローブを既知の識別可能な位置で(ドット、ライン、またはその他の形で)固体支持体上に固定化し、増幅したポリ核酸をハイブリッド形成を検出するために標識する。MAGE-A3特異的核酸配列、例えば本明細書に記載のプローブまたはプライマーは、ビオチンで標識することができ、ハイブリッドをビオチン-ストレプトアビジン結合を介して、非放射性呈色システムを用いて検出することができる。しかし、他のリバースハイブリダイゼーション系も用いることができ、これは例えば、Gravitら(Journal of Clinical Microbiology, 1998, 36(10):3020-3027)(この内容も参照により組み入れる)に説明されている。標準的なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件はKletereら, Journal of Clinical Microbiology, 1999, 37(8):2508-2517に記載されており、プローブおよびプライマーの長さおよび配列に要求される所与の環境下での特異性および感度を維持するために最適化される。
【0153】
1実施形態においては、本発明の方法は以下の使用を含むことができる:
a) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号13を含んでいるプローブ;
b) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
c) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;
d) 配列番号3および4を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号54を含んでいるプローブ;
e) 配列番号5および6を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号14を含んでいるプローブ;
f) 配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号15を含んでいるプローブ;
g) 配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号16を含んでいるプローブ;
h) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
i) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;ならびに/または、
j) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア;ならびに配列番号54を含んでいるプローブ。
【0154】
本明細書に記載の方法は、新鮮な組織、凍結組織、パラフィン保存した組織、および/またはエタノール保存した組織での使用に適している。サンプルからのRNAまたはDNAの単離にはよく知られた抽出および精製方法を用いることができる(例えば、Sambrookら, 1989)。サンプルからの抽出後、RNAまたはDNAを直接的に用いることができ、またはより好ましくは、ポリヌクレオチド増幅ステップ(例えばPCR)の後に用いることができる。特別な場合、例えばリバースハイブリダイゼーションアッセイなどのために、増幅の前にRNAをcDNAに逆転写することが必要かもしれない。後者のいずれの場合でも、増幅されたポリヌクレオチドはサンプルに「由来する」ものである。
【0155】
サンプルがパラフィン保存した組織であるような1実施形態においては、次のプライマーのセットおよびプローブを用いることができる:
a) 配列番号7および8を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号15を含んでいるプローブ;
b) 配列番号9および10を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号16を含んでいるプローブ;
c) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号17を含んでいるプローブ;
d) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号53を含んでいるプローブ;ならびに/または、
e) 配列番号11および12を含んでいるプライマーのペア、ならびに配列番号54を含んでいるプローブ。
【0156】
本発明はさらに、患者を治療する方法を提供し、該方法は、患者の腫瘍組織がMAGE-A3を発現しているかを本明細書に記載の方法を用いて判定すること、およびMAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物を、該患者に投与すること、を含んでいる。患者はMAGE-A3を発現している腫瘍組織を有していてもよいし(活動性疾患の設定)、またはMAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者であって、既にMAGE-A3発現性腫瘍組織を除去/治療するために処置されている患者であってもよい(補助的設定)。
【0157】
本発明はさらに、MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物の、MAGE-A3発現性腫瘍を患うかまたはMAGE-A3発現性腫瘍を再発しやすい患者の治療のための医薬品の製造における使用を提供し、その際患者は、本明細書に記載の診断方法、キット、プライマーまたはプローブを用いて、MAGE-A3発現性腫瘍組織を有しているまたは有していたと同定される。
【0158】
MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体を含む組成物は、MAGE-A3抗原またはそのペプチドを含むことができる。1実施形態においては、MAGE-A3抗原またはそのペプチドは、ペプチドEVDPIGHLYを含んでいるかまたは該ペプチドからなる。MAGE-A3抗原またはペプチドは担体タンパク質と融合またはコンジュゲートすることができ、該担体タンパク質はプロテインD、NS1、もしくはClytA、またはそれらの断片から選択することができる。
【0159】
1実施形態においては、前記組成物はさらに、アジュバント、例えば次のものの1つ以上または組み合わせを含むことができる:3D-MPL;アルミニウム塩;CpG含有オリゴヌクレオチド;QS21またはISCOMなどのサポニン含有アジュバント;水中油型乳剤;およびリポソーム。
【0160】
従って本発明は、臨床応用において、ヒト患者からの組織サンプルを、MAGE-A3の発現の有無についてスクリーニングするための方法を提供する。そのようなサンプルは例えば、針生検(needle biopsy core)、外科的切除サンプル、またはリンパ節組織などからなることができる。例えばこれらの方法は生検材料を得ることを含み、該生検材料は腫瘍細胞を細胞集団全体の約80%まで高めるために任意に低温切片法(crypstat sectioning)によって断片化される。特定の実施形態においては、当業界でよく知られた技法を用いて核酸をそれらのサンプルから抽出することができる。他の実施形態においては、組織サンプルから抽出された核酸は当業界でよく知られた技法を用いて増幅することができる。MAGE-A3発現のレベルを検出し、MAGE-A3陰性患者の対照および/または統計的に有効な群と比較することができる。
【0161】
1実施形態において、診断方法は、ある被験体がMAGE-A3遺伝子産物を発現しているかを、例えば、該遺伝子産物の対応するmRNAおよび/またはタンパク質レベルを検出することによって判定することを含んでいる。例えばこれは、ノーザンブロット分析、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、半定量的RT-PCR、定量的RT-PCR、TaqMan PCR、in situハイブリダイゼーション、免疫沈降法、ウエスタンブロット分析、または免疫組織化学などの技法を用いることによる。そのような方法によれば、細胞または組織を被験体から得て、mRNAおよび/またはタンパク質のレベルをMAGE-A3を発現していない組織のものと比較することができる。
【0162】
Taq DNAポリメラーゼは5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有している。TaqMan PCR アッセイは、このエキソヌクレアーゼ活性を、PCR増幅の間に標的配列にアニールした二重標識化プローブを切断するために用いている。
【0163】
簡潔に記せば、RNAをサンプルから抽出し、cDNAを合成する(逆転写)。次いでcDNAを標準的なPCR成分を含んでいるPCR反応混液に添加する(例えば、Roche(CA, USA)がTaqMan PCR用に供給している成分を参照)。反応混液はさらに、2種のプライマー間(すなわち、PCR反応によって増幅される配列、「アンプリコン」内)で鋳型ヌクレオチド配列とアニールするプローブを含むことができる。このプローブは、5'末端に蛍光レポーター色素、3'末端に消光色素を含んでいる。消光色素はレポーターの蛍光を消光することができるが、それは2種類の色素が互いに近接する場合のみであり、これは無傷のプローブで起こる。
【0164】
増幅の間およびその後に、前記プローブはTaq DNAポリメラーゼによって分解され、任意の蛍光が検出される。
【0165】
定量的測定のために、蛍光が発光ベースラインの標準偏差の10倍の値である閾値に達するPCRサイクル数が用いられる。このサイクル数は、サイクル閾値(Ct)と呼ばれ、標的cDNAの開始量に反比例し、それによってcDNAの量を測定することができる。本質的には、サンプル中に存在する標的RNAの量が多いほど、得られるCt数はより低くなる。
【0166】
Ct値について得られた測定値を、ハウスキーピング遺伝子について得られた値と比較する。これにより、各逆転写反応に添加された総RNA量(吸光度に基づく)およびそのRNAの質(すなわち分解)(これらはいずれも出発物質を測定するパラメーターとして信頼できるものではない)に基づく任意のエラーを許容する。従って、ハウスキーピング遺伝子の転写産物は内部対照として定量される。β-アクチンは非特異的ハウスキーピング遺伝子として最も良く用いられているものの1つであるが、他のものも用いることができる。
【0167】
さらに別の1実施形態においては、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者の治療方法が提供され、該方法は、本発明の方法を用いることによって、患者がMAGE-A3タンパク質を発現しているかを判定すること、およびその後、疾患の再発を防止または改善するために、MAGE-A3抗原、エピトープ、もしくは抗原誘導体、またはMAGE-A3特異的抗体もしくは免疫グロブリンを含む組成物を投与することを含んでいる。患者は最初に、何らかの腫瘍の手術による切除やその他の化学療法もしくは放射線療法などの治療を受けてもよい。
【0168】
従って、本発明はさらに、MAGE-A3発現性腫瘍に罹患している患者、またはMAGE-A3発現性腫瘍の除去または治療のための処置(手術、化学療法、または放射線療法)を既に受けている患者の治療用の医薬品の製造におけるMAGE-A3特異的免疫療法の使用を提供し、その際、該患者は本発明の診断方法、キット、プライマーもしくはプローブを用いてMAGE-A3発現性腫瘍組織を有していることが既に判定されている。
【0169】
従って、本発明はMAGE-A3を発現している癌、例えば、メラノーマ、乳癌、移行細胞癌を含む膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、食道癌を含む頭頚部癌、扁平上皮細胞癌、肝臓癌、多発性骨髄腫、および大腸癌など、を有している患者に用いることができる。1実施形態においては、本発明は上述のような癌、特に肺癌およびメラノーマの補助的(術後)設定の患者に用いることができる。本発明はまた、転移性の癌の治療における有用性もある。
【0170】
免疫療法
本発明の患者を治療する方法における使用に適した組成物は、MAGE-A3特異的免疫応答を生じさせることのできるものである。この組成物は、MAGE-A3遺伝子産物由来の少なくとも1つのエピトープを含んでいる。そのようなエピトープは、任意に担体と共有結合で連結したペプチド抗原として存在することができる。あるいはまた、より大きなタンパク質断片を用いることができる。しかし、用いる断片およびペプチドは、適切に存在する際に、MAGE-A3に対する免疫応答、例えばMAGE-A3特異的免疫応答を生じさせることができるものとする。
【0171】
本発明で用いることのできるペプチドの例としては下記のMAGE-A3ペプチドが含まれる。
【表2】
【0172】
1実施形態においては、抗原は、免疫学的融合物または発現増強パートナーと連結したMAGEペプチドまたはタンパク質を含むことができる。MAGEタンパク質は、完全長のMAGE-A3であってもよいし、またはMAGE3の断片、例えば、MAGE3のアミノ酸3〜314(合計312アミノ酸)を含んでもよい。
【0173】
前記抗原およびパートナーは化学的にコンジュゲートしてもよいし、または組換え融合タンパク質として発現させてもよい。抗原およびパートナーを組換え融合タンパク質として発現させる実施形態においては、それによって融合していないタンパク質と比較して、発現系で産生されるレベルを増加することができる。従って、融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープを提供する上で、および/または天然の組換えタンパク質より高収量でタンパク質を発現(発現増強)する上で、補助となりうる。1実施形態においては、融合パートナーは、免疫学的融合パートナーおよび発現増強パートナーの双方でありうる。
【0174】
本発明の1実施形態においては、用いることのできる免疫学的融合パートナーは、グラム陰性細菌Haemophilus influenzae Bの表面タンパク質であるプロテインD(WO91/18926)、またはその誘導体に由来する。プロテインDの誘導体は、プロテインDの最初の1/3、または該タンパク質の最初のほぼ1/3を含むことができる。1実施形態においては、プロテインDの最初の109残基を、MAGE-A3抗原を追加の外因性T細胞エピトープと共に提供し、大腸菌(E.coli)内での発現レベルを増加させるための(従って発現エンハンサーとしても作用する)融合パートナーとして用いることができる。代替的な1実施形態においては、プロテインD誘導体は、N末端の最初の100〜110個のアミノ酸、またはN末端の最初のほぼ100〜110個のアミノ酸を含むことができる。1実施形態においては、プロテインDまたはその誘導体を脂質化し(lipidated)、リポプロテインDを用いることができる。その脂質テイルは、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を保証することができる。
【0175】
1実施形態においては、MAGE-A3はプロテインD-MAGE-A3/Hisであることができ、これは432アミノ酸残基の融合タンパク質である。この融合タンパク質は、グラム陰性細菌Haemophilus Influenzae Bの表面上に存在するリポタンパク質であるプロテインDの1〜109アミノ酸、MAGE-A3タンパク質由来の312アミノ酸(アミノ酸3-314)、スペーサー、およびポリヒスチジンテイル(His)(これは製造プロセスの間の融合タンパク質の精製を容易にする)を含んでおり、例えば:
i) 18残基のシグナル配列、および加工されたプロテインDの最初の109残基(このシグナル配列は製造の間に融合タンパク質から切断され、前記最初の109残基から離される);
ii) 2つの無関係の残基(メチオニンおよびアスパラギン酸);
iii) 天然のMAGE-3タンパク質の3〜314残基;
iv) ヒンジ領域として機能する2個のグリシン残基;
v) 7個のヒスチジン残基、
を含む。
【0176】
代替的な1実施形態においては、(i)をプロテインDのN末端の最初の100〜110個のアミノ酸、またはN末端の最初のほぼ100〜110個のアミノ酸を含む配列と置き換えた、上記構築物を使用することができる。MAGE-3はN末端にプロテインDを、そしてC末端に7個のヒスチジン残基(Hisテイル)を有する融合タンパク質として発現させることができる。プロテインDは42 kDaの免疫グロブリンD結合性タンパク質であり、グラム陰性細菌Haemophilus Influenzae Bの表面に露出している。
【0177】
別の1実施形態においては、免疫学的融合パートナーであるプロテインDをLytAとして知られているタンパク質と置き換えることができる。LytAはStreptococcus pneumoniaeに由来し、N-アセチル-L-アラニンアミダーゼであるアミダーゼLytA(LytA遺伝子にコードされる(Gene, 43 (1986), p265-272))を合成する。LytAはペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素(autolysin)である。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリンやいくつかのコリン類似体、例えばDEAEなどに対する親和性に関与している。この性質は、融合タンパク質の発現に有用なE.coli C-LytA発現プラスミドの開発に利用されている。アミノ末端にC-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製については既に報告されている(Biotechnology 10, (1992), p795-798)。1実施形態においては、この分子のC末端部分を用いることができる。この実施形態は、C末端に見出されるLytA分子の反復部分(残基178から開始する)を利用できる。1実施形態においては、このLytA部分は残基188〜305を組み入むことができる。
【0178】
本発明の1実施形態においては、MAGE-A3タンパク質は、誘導体化した遊離チオールを含むことができる。そのような抗原についてはWO99/40188に記載されている。特にカルボキシアミド化またはカルボキシメチル化誘導体を用いることができる。
【0179】
本発明の1実施形態においては、腫瘍関連抗原はMAGE-A3-プロテインD分子を含んでいる。この分子のヌクレオチド配列とアミノ酸配列は図9(配列番号35および配列番号36)に示している。この抗原と下記に要約するものは、WO99/40188中により詳細に記載されている。
【0180】
本発明のさらに別の実施形態では、腫瘍関連抗原は下記の融合タンパク質のいずれかを含むことができる:
NS1-MAGE3、およびヒスチジンテイルの融合タンパク質、例えば図10および11に示される(配列番号37および配列番号38);CLYTA-MAGE3-ヒスチジンの融合タンパク質、例えば図12および13に示される(配列番号39および配列番号40)。
【0181】
本発明のさらに別の1実施形態は、本明細書に記載のMAGE-A3特異的腫瘍関連抗原をコードする核酸分子を含んでいる、核酸免疫療法薬を利用することを含む。本発明の1実施形態においては、前記配列は適切な発現ベクター中に挿入され、DNA/RNAワクチン接種に用いることができる。前記核酸を発現する微生物ベクターも、ベクターを介して送達される免疫療法薬として用いることができる。
【0182】
適切なウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスを含む)、アルファウイルス、ポックスウイルス(Canarypoxなど)、およびワクシニアウイルスをベースとした系が挙げられる。これらのウイルスを用いた遺伝子移入技法は当業者には既知である。例えば、レトロウイルスベクターは、本発明のポリヌクレオチドを安定的に宿主のゲノム中に組み入れるために用いることができるが、そのような組換えは好ましくない。これに対して複製欠陥のアデノウイルスベクターはエピソームの状態に留まり、それ故に一過性の発現が可能である。昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞、酵母、または細菌での発現を駆動することのできるベクターは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるMAGE-A3タンパク質を、例えばサブユニットワクチンとしてまたはイムノアッセイにおいて用いる目的で、多量に産生させるために用いることができる。
【0183】
好ましい1実施形態においては、生きたベクターとして用いられるアデノウイルスは、複製欠陥のサルアデノウイルスである。典型的には、これらのウイルスはE1を欠失しており、E1遺伝子で形質転換された細胞株で増殖することができる。好ましいサルアデノウイルスはチンパンジーから単離されたウイルスである。特にC68(Pan 9としても知られている)(米国特許第6083716号参照)ならびにPan 5、6、およびPan 7(WO 03/046124)が、本発明での使用に好ましい。したがって、これらのベクターを本発明の異種遺伝子を挿入するように操作することで、該遺伝子産物を発現させることができる。そのような組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤化、および製造については、WO 03/046142に詳細に説明されている。
【0184】
核酸配列を得るための従来の組換え技法、および発現ベクターを産生するための従来の技法は、Maniatisら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989中に記載されている。
【0185】
タンパク質をベースとした免疫療法薬については、本発明のタンパク質は凍結乾燥形態または液状形態において溶解して提供される。
【0186】
ヒトへの各投与量はタンパク質1〜1000μgを含むことができる。1実施形態において、投与量はタンパク質30〜300μgを含むことができる。
【0187】
本明細書に記載の免疫療法薬はさらに、ワクチンアジュバント、および/または免疫刺激性サイトカインもしくはケモカインを含むことができる。
【0188】
本発明での使用に適したワクチンアジュバントは市販されており、例えばフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI);Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc., Rahway, NJ);AS-2(SmithKline Beecham, Philadelphia, PA) ;水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)やリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄、もしくは亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオンまたは陰イオンで誘導体化した多糖;ポリホスファゼン;生物分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびクイルAなどがある。GM-CSFまたはインターロイキン-2、-7、もしくは-12などのサイトカイン、およびケモカインもアジュバントとして用いることができる。
【0189】
本発明の製剤において、アジュバント組成物が主としてTh1型の免疫応答を誘発させることが望ましいかもしれない。Th1型のサイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-12)のレベルが高いと、投与された抗原に対する細胞媒介性免疫応答をより強く誘導する傾向がある。応答が主としてTh1型である実施形態では、Th1型のサイトカインのレベルはTh2タイプのサイトカインよりはるかに増加する。これらのサイトカインのレベルは標準的なアッセイを用いて容易に評価することができる。サイトカインファミリーの総説としては、MosmannおよびCofman, Ann. Rev. Immunol. 7:145-173, 1989を参照されたい。
【0190】
従って、主としてTh1型の応答を引き出すために用いることのできる好適なアジュバントとしては、例えば、モノホスホリルリピドA、例えば3-脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)をアルミニウム塩と組み合せたものが挙げられる。3D-MPL、またはその他のtoll様受容体4(TLR4)リガンド、例えば、WO9850399、WO0134617、およびWO03065806に開示されているアミノアルキルグルコサミニドホスフェートなどを単独で使用して、主にTh1型の応答を生じさせることができる。
【0191】
Th1型免疫応答を優先的に誘導しうるその他の既知のアジュバントとしては、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドなどのTLR9アンタゴニストが挙げられる。このオリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドが非メチル化されていることを特徴とする。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えばWO 96/02555に記載されている。
【0192】
好適なオリゴヌクレオチドとしては以下が挙げられる:
【表3】
【0193】
CpG含有オリゴヌクレオチドは単独でまたは他のアジュバントと組み合わせて用いることができる。例えば、増強された系としては、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組み合わせ、特にWO 00/09159およびWO 00/62800に開示されているCpGとQS21との組み合わせが含まれる。
【0194】
前記製剤はさらに水中油型乳剤および/またはトコフェロールを含むことができる。
【0195】
別の適当なアジュバントはサポニン、例えば、QS21(Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA)であり、これは単独で、または他のアジュバントと組み合わせて用いることができる。例えば、増強された系としては、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合わせ、例えばWO 94/00153に記載されているQS21と3D-MPLとの組み合わせまたは、WO 96/33739に記載されるような、QS21がコレステロールによって消光される反応原性がより低い組成物が含まれる。その他の適当な製剤には、水中油型乳剤およびトコフェロールが含まれる。WO 95/17210には、QS21、3D-MPL、およびトコフェロールを水中油型乳剤中に含む特に強力なアジュバント製剤が記載されている。
【0196】
別の1実施形態においては、アジュバントはリポソーム性組成物中に製剤化することができる。用いられる3D-MPLの量は通常は少量であるが、免疫療法製剤に応じて、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0197】
1実施形態においては、アジュバント系は3種類の免疫刺激剤:CpGオリゴヌクレオチド、3D-MPL、およびQS21を含んでおり、リポソーム製剤中またはWO 95/17210に記載されているように水中油型乳剤中のいずれかで提供される。
【0198】
本発明のアジュバント中または免疫療法薬中のCpGまたは免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は通常は少量であるが、免疫療法製剤に応じて、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0199】
本発明のアジュバント中で用いるサポニンの量は、1回投与量あたり1〜1000μg、好ましくは1回投与量あたり1〜500μg、より好ましくは1回投与量あたり1〜250μg、最も好ましくは1回投与量あたり1〜100μgの範囲であることができる。
【0200】
一般的には、ヒトへの各投与量は、0.1〜1000μg、例えば、0.1〜500μg、0.1〜100μg、または0.1〜50μg、の抗原を含むことができる。特定の免疫療法薬のための最適な量は、ワクチン接種した被験体における適切な免疫応答の観察を含む標準的な研究によって確かめることができる。初回ワクチン接種後に、被験体は適切な間隔を空けて、1回ないし数回の追加免疫接種を受けることができる。
【0201】
その他の適切なアジュバントとしては、Montanide ISA 720(Seppic, France)、SAF(Chiron, California, United States)、ISCOMS(CSL)、MF-59(Chiron)、Ribi Detox、RC-529(GSK, Hamilton, MT)、およびその他のアミノアルキルグルコサミニド4-ホスフェート(AGP)が挙げられる。
【0202】
従って、本発明の方法で用いるための免疫原性組成物が提供される。この免疫原性組成物は本明細書で開示している抗原、およびアジュバントを含んでおり、該アジュバントは、3D-MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンエーテルもしくはエステル、の1種以上、またはこれらのアジュバントの2種以上の組み合わせを含んでいる。前記免疫原性組成物中の抗原は、水中油型もしくは油中水型の乳剤ビヒクル中で、またはリポソーム製剤中で提供することができる。
【0203】
1実施形態においては、アジュバントは、3D-MPL、QS21、および免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドのうちの1種以上を含むことができる。1実施形態においては、3種類全ての免疫刺激剤が存在する。別の1実施形態においては、3D-MPLおよびQS21は水中油型乳剤中で提供され、CpGオリゴヌクレオチドは含まれない。
【0204】
本発明の方法で用いる組成物は、本明細書に記載の腫瘍関連抗原、または融合タンパク質を、製薬上許容される賦形剤中に含む医薬組成物を含むことができる。
【0205】
本明細書および後述の特許請求の範囲を通じて、特段の要求がない限り、「含む」という語句、およびその変形である「含む」および「含んでいる」は、言及した整数もしくはステップ、または言及した整数もしくはステップの群を含むが、その他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0206】
本発明はさらに、下記の非限定的な実施例によって説明される。ここで、RT-PCRとは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【実施例1】
【0207】
半定量的PCR−凍結組織サンプル
プライマー:配列番号1および配列番号2
RNA抽出:液体窒素RNA精製法
組織の小片を液体窒素中で瞬間冷凍した後、乳鉢中に置き、乳棒で機械的に破砕した。得られた粉末100 mgを100μLのTriPure単離試薬に添加し、RNAを製品説明書(Qiagen, Venlo, Netherlands)に従って抽出した。RNA濃度は260 nmの光学密度値から決定した。
【0208】
半定量的MAGE-A3 RT-PCR
半定量的RT-PCRはDe Plaenら(Immunogenetics 40:360, 1994)が記載しているとおりに行った。cDNAの合成は、1x第1鎖バッファー、0.5 mMの各dNTP、10 mMのジチオトレイトール、20UのrRNase阻害剤、2μMのオリゴ(dT)15、および200 UのM-MLV逆転写酵素を含有する20μLの混合液中、42℃で1時間30分かけて、2μgの総RNAから行った。50 ngのcDNAを、MAGE-A3特異的プライマー(配列番号1および2)を含有している25μLの混合液中でPCRにより増幅した。各反応液の10μLのアリコートを1%アガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロマイド蛍光で可視化した。アンプリコンのサイズは、mRNAとゲノムDNA(gDNA)とをそれぞれ増幅した場合に、725 bpと805 bpであった。
【0209】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRの陽性対照
これらの実験には3種類の陽性対照を導入した:
(i) MAGE-A3ゲノムDNAのクローニング断片を各PCR反応混液中に添加した。これによって805 bpの断片(cDNAから作製した断片よりも80 bp大きい)が作製され、PCR阻害の非存在下では常に存在する。これはMAGE-A3陰性サンプルでPCRの効率をチェックするための陽性対照となる;
(ii) 各MAGE-A3アッセイのために、腫瘍サンプル、および「Gerl」メラノーマ細胞株MZ-2-3.0から抽出したRNAについて、cDNA合成を並行して行った。「陽性」とみなされるためには、腫瘍サンプルがGerl細胞株MZ-2-3.0 cDNAのレベルの1%のシグナルを産出する必要がある;
(iii) 強く分解したRNAを含むサンプルを検出するために、各サンプルでβ-アクチンPCR(表1)を行った。MAGE-A3陰性腫瘍サンプルから生じたβ-アクチンシグナルがMZ-2-3.0から生じたシグナルよりも弱い場合には、サイクル数を臨床サンプルについて調整し、β-アクチンアンプリコンの強度が必要とするレベルに達するようにした。
【0210】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRの陰性対照
これらの実験には3種類の陰性対照を導入した:
(i) MAGE-A3陰性であることが既知の細胞培養LB 23-1/2から抽出したRNA;
(ii) RT反応における水対照;および
(iii) PCRステップにおける水対照。
【0211】
データの解釈
腫瘍サンプルからの50 ngのmRNAサンプルは、725bpのアンプリコンの量がGerl細胞株MZ-2-3.0からの0.5 ngのRNA(すなわち、0.1%のGerl RNAと等価;陽性対照を参照)を用いて得られたアンプリコンの量と等しいかまたはそれより多い場合に、MAGE-A3陽性とみなした。量はエチジウムブロマイドの蛍光で推定した。陽性対照と陰性対照を加えた。
【0212】
半定量的MAGE-A3 RT-PCRのクラス:半定量的MAGE-A3 RT-PCRアッセイに5段階の標準クラスを割り付けた(De Plaenら, 1994)。それらは主観的測定であり、最も低い発現から最も高い発現まで-、-/+、+、++、+++とした。これらのクラスをどのように割り付けることができるかの1例を図16に示している。この図では、下記表6に示す陽性対照によって生じたバンドに従って割り付けられている。
【表4】
【実施例2】
【0213】
リアルタイムTaqMan定量的RT-PCR−凍結組織サンプル
リアルタイムTaqMan定量的RT-PCR
プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13(エクソン)
プライマー:配列番号5および配列番号6;プローブ:配列番号14(イントロン)
半定量的PCR(比較研究用)
プライマー:配列番号1および配列番号2
材料と方法
患者およびサンプルの採取
ステージIBおよびIIの非小細胞肺癌(NSCLC)からの生検材料は手術によって得た。患者は2種の臨床試験GSK 249553/004(MAGE3-AS02B-004)およびEpidemio-MAGE3-153に登録していた。患者はインフォームドコンセントに署名し、これらの研究の性質と起こりうる結果についての説明を受けた。生検材料は外科的切除直後にRNA安定化溶液(RNA-later, Ambion, Cambridge, UK)中に浸漬し、−20℃で保存した。RNAlaterは無傷の非凍結組織サンプル中の細胞RNAを安定化しかつ保護する組織保存用試薬である。RNAlaterにより、サンプルを液体窒素中で直ちに凍結する必要性が排除される。
【0214】
RNA抽出:ミキサーミルRNA精製法
腫瘍組織をRNALaterから取り出し、TriPure Isolation Reagent(Roche, Vilvoorde, Belgium)に添加する。次いで、この組織をタングステンボールの入っているミキサーミルに添加する。ミキサーミル中で破壊した後、最大で100 mgの組織から、TriPure試薬を製造者の使用説明書(Qiagen, Venlo, Netherlands)に従って用いて総細胞RNAを抽出した。RNA濃度は260 nmでの光学密度値から決定した。
【0215】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCRアッセイ−凍結組織
総RNAの50 ngに相当するcDNAを、TaqMan バッファー、5 mM MgCl2、0.4 mM dUTP、0.2mMの各ヌクレオチド、0.625 UのAmpli Taq Cold DNAポリメラーゼ、0.05 UのUNG、0.2μMの各オリゴヌクレオチドプライマー、および0.2 μMのTaqManプローブを含有する25μLの混合液中、PCRで増幅した。特異的なオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを用いた(表2;配列番号3、4、および13、ならびに配列番号5、6、および14)。プローブはFAMTM、NEDTM、およびVICTM(Applied Biosystems, CA, USA)で標識されており、Minor Groove Binding Moiety(MGBTM;これもApplied Biosystems, CA, USAから入手)を有している。現在さらに、MAGE特異的プローブ用にNEDの替わりにFAM色素を用いて実験を行っているところである。
【0216】
MAGE-A3エクソンおよびβ-アクチン遺伝子を、7700または7900システム(PE Applied Biosystems, Warrington, UK)でTaqManケミストリを用いて定量的PCRにより増幅した。PCR増幅は、ゲノムDNAの夾雑がないことをチェックするために、MAGE-A3遺伝子のイントロンでも行った。増幅プロフィールは、50℃2分間の1サイクル、95℃12分間の1サイクル、ならびに95℃15秒間および60℃1分間の35サイクルであった。TaqManプローブの分解によって生じる蛍光シグナルは、全ての伸長ステップの間リアルタイムで検出した。
【0217】
MAGE-A3の特異性を調べるためのTaqMan RT-PCRアッセイのバリデーション
プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13(エクソン)−TaqMan RT-PCR。
【0218】
プライマー:配列番号1および配列番号2(半定量的PCR−比較試験用)
プラスミドおよび細胞株
用いたプラスミドは、MAGE-A1(MAGE-1;GenbankアクセッションNM 004988)、MAGE-A2(MAGE-2;GenbankアクセッションL 18920)、MAGE-A3(MAGE-A3;GenbankアクセッションNM 005362)、MAGE-A4(MAGE-4;GenbankアクセッションNM 002362)、MAGE-A6(MAGE-6;GenbankアクセッションNM 005363)、MAGE-A8(MAGE-8;GenbankアクセッションNM 005364)、MAGE-A9(MAGE-9;GenbankアクセッションNM 005365)、MAGE-A10(MAGE-10;GenbankアクセッションNM 021048)、MAGE-A11(MAGE-11;GenbankアクセッションNM 005366)、およびMAGE-A12(MAGE-A12;GenbankアクセッションNM 005367)の遺伝子の完全長cDNAを含んだ。細胞株MZ-2-3.0(MAGE-A3陽性)およびLB 23-1/2(MAGE-A3陰性)はProfessor Thierry Boon(Ludwig institute、Brussels, Belgium)から好意により贈与されたものである。
【0219】
MAGE-A3 TaqMan法の特異性を、MAGE−A1、2、3、4、6、8、9、10、11、および12遺伝子の完全長cDNAを含むプラスミドを1 x 104、1 x 105、および1 x 106コピー用いて調べた。
【0220】
MAGE A遺伝子(MAGE 1、2、3、4、6、8、9、10、11、および12)の、設計されたMAGE-A3 PCRプライマーおよびプローブの領域での配列比較は図4に示している。正方向および逆方向MAGE-A3プライマーの配列には下線を付している。MAGE-A3プローブの配列は四角で囲んでいる。逆方向プライマーは認識する配列の領域に対して相補的、すなわちAはT;GはC;TはA;CはGである。
【0221】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCR陽性対照:(i)MAGE-A3ゲノムDNAの断片、および(ii)Gerl細胞株MZ-2-3.0(MAGE-A3について陽性のメラノーマ細胞株)から抽出した既知量のRNA。
【0222】
MAGE-A3 TaqMan RT-PCR陰性対照:(i)MAGE-A3陰性であることが既知の細胞培養物LB23-1/2から抽出したRNA、(ii)RT反応における水ブランク、および(iii)PCRステップにおける水ブランク。40サイクルのRT-PCRを行う。陰性対照は≧35でなければならない。TaqMan実験の結果のいくつかは1/Ctとして表している。
【0223】
統計:2種類のPCR技法の比較
2 x 2分割表を作って、半定量的RT-PCR(プライマーは配列番号1および配列番号2)およびリアルタイム定量的TaqMan PCR(プライマー:配列番号3および配列番号4;プローブ:配列番号13)からの結果を、本明細書に記載の技法を用いて比較した(表3)。名目尺度変数は2種の評価:陽性および陰性を特徴付けた。陰性値はゼロおよびボーダーライン評価を含んだ。なお、ボーダーライン評価は、半定量的RT-PCRでは0.8%〜1.2%のGerl、TaqManアッセイでは全ての結果が1%未満である評価を意味する。陽性値は、半定量的RT-PCR法については、β-アクチン発現との関連で視覚的にスコア付けしたゲルバンドに基づいて等級分けし、TaqManアッセイでは>1%の結果全てを含んだ。2つの方法間での一致度は、二重陰性+二重陽性サンプルの数をサンプルの総数で割って算出した。McNemar検定を用いて不一致ペア(陰性-陽性)の比率を比較した。信頼区間(CI)を算出した。
【0224】
定量的TaqMan RT-PCRの最適化
Sybr greenを用いたMAGE-A3のTaqMan RT-PCR
Sybr greenは、配列特異的なプローブなしでアンプリコンと非選択的に結合するコンポーネントである。リアルタイムRT-PCRはMAGE-Aファミリーの遺伝子クローンについて、4種類の異なるMAGE-Aクローンの希釈度(20 pg、2 pg、0.2 pg、および0.02 pg)を用いて行った(図1、結果はY軸上に1/Ctとして示している)。14CtでMAGE-A3について陽性の結果が得られ、MAGE-A6については(20 pgのプラスミドで)16Ctの値が得られた。MAGE A4、A8およびA9は30のCtレベルを示し、その他のMAGE遺伝子は35Ct以上で非常に制限された発現を示した。
【0225】
配列特異的プローブを用いたMAGE-A3のTaqMan RT-PCR
同一のMAGE-A3プライマー(配列番号3および4)とプローブ(配列番号13)とを用い、MAGE-Aファミリーメンバーの関連クローンを種々の希釈度で用いて、MAGE-A3をMAGE-A6と区別する有効性を試験した(図2)。最初に、MAGE-A3のCtは各希釈度において予想したとおりの減少を示した。MAGE-A6クローンは、プローブを用いた際には高い1/Ctを示さず、これは交差反応性がないことを示している。
【0226】
図3に示すとおり、MAGE-A3プラスミド希釈への1 x 106個のMAGE-A6プラスミドのスパイクは何の効果もなく、この結果はMAGE-A3プラスミドの滴定結果を反映している。これは、TaqMan PCRを用いたとき、MAGE-A6はMAGE-A3の存在下で競合作用がないことを示している。
【0227】
結果
腫瘍のMAGE-A3発現、半定量的方法と定量的方法との比較
TaqMan特異的定量的PCRを、MAGE-A3についての標準的な半定量的RT-PCRに対して(プライマーとして配列番号1および2を用いて)さらに検証した。NSCLC患者からの71腫瘍サンプルを用いて、MAGE-A3発現について定量的方法(プライマーとして配列番号3および4、プローブとして配列番号13を用いた)と、半定量的方法(プライマーとして配列番号1および2を用いた)とを直接比較した。
【0228】
その結果は、2つの方法間で68/71が合致し、95.8%の良好な一致を示した(表3)。定量的TaqMan RT-PCRおよび半定量的RT-PCRアッセイは、3サンプルについては不一致で、その際、半定量的RT-PCRアッセイはその結果の陽性度を過大評価していた。しかし、McNemar検定は、これらの3件の不一致の結果の対称型再配分(symmetric repartition)を明らかにし(p=0.25)、このことはどちらの技法も、もう一方の技法と比較してより不一致性を生み出す傾向がないことを示している。より詳しく調べると、これらのサンプルでのβ-アクチン発現の変動レベルが半定量的RT-PCR法での偽陽性をもたらしていた。半定量的RT-PCR用に定義された各クラスについてTaqMan PCRデータの分散を示すために、ボックスプロット(図4)を用いた。2つの方法の間の一致は、2 x 2分割表に基づけば優れたものではあったが、ボックスプロットは、異なるクラス間のいくらかの重複を明らかにし、これは半定量的評価が定量的TaqMan RT-PCR測定と完全には一致しなかったことを示している。この重複は、評価が異なる時点で異なるオペレーターによって行われたという事実に起因している可能性があり、これが変動度を増加させたのかもしれない。その意味で、定量的TaqMan RT-PCRアッセイはよりこれらの要因に独立的であり、そのため再現性がより高い。
【実施例3】
【0229】
パラフィンで固定化した組織(FFPE)のRT-PCRによる分析
材料と方法
RNAは、FFPEサンプルから、US 6,613,518、US 6,610,488、US 6,428,963、US 6,248,535(参照により本明細書に組入れる)に開示されるように、Response Genetics Inc.,独自の方法を用いて抽出した。あるいはRNAは、パラフィンで固定化した組織から、公表されている適切な方法のいずれかに従って得ることができる。例えば、d-リモネンまたは別の溶解バッファーを用いて組織切片をパラフィンから取り出した後、エタノールをベースとした溶液中で洗うことができる。次いで、その切片をプロテイナーゼKで一晩処理した後、洗浄し、RNAをカラムクロマトグラフィーで精製することができる。そのサンプルについて、プライマーとして配列番号3および配列番号4、プローブとして配列番号13(凍結組織での使用のために開発されたプライマーおよびプローブ、上述の実施例2参照)を用いて、リアルタイムTaqMan RT-PCRを行った。
【0230】
結果:Mage A3の発現
表4はホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)組織についての結果をCt値として表したものである。Y軸の数値はヒト腫瘍サンプル990118〜990784を示している。また、この分析には次の陽性対照も含まれている:TC1(Mage3);Gerl(MAGE-A3メラノーマ細胞株);およびCRL 1675(メラノーマ細胞株)。Ct値は凍結組織をベースとした半定量的RT-PCR MAGE-A3プライマーでの期待値よりも高い。36〜37 Ctのレベルは、これらの実験の目的では感度の上限値と考えられる。Gerl MAGE-A3陽性対照は31Ctの値であり、感度の境界内にあるが、半定量的RT-PCRアッセイの場合よりもはるかに低減している。これらのレベルでは、凍結組織でのMAGE-A3定量用のプライマーおよびプローブ(表2、エクソン3 MAGE-A3特異的プライマーである配列番号3および配列番号4;ならびにプローブの配列番号13)は、FFPE腫瘍サンプル内のMAGE-A3の発現を検出するのに十分な感度ではない可能性があり、MAGE-A3陽性であるがMAGE-A3を低いレベルでのみ発現するサンプルは、検出されない可能性がある。
【0231】
次のFFPE組織からの陽性対照のサンプルがこの実験に含まれた:TC1(Mage3)、Gerl(MAGE-A3陽性対照)、およびCRL 1675。ヒト腫瘍990118〜990784を、TaqMan 定量的RT-PCRにより、パラフィン組織からのRNAを用い、凍結組織用プライマー配列番号3および配列番号4、ならびにプローブ配列番号13を用いて分析した。この分析の結果は図5に示している。
【0232】
FFPE組織で用いるためのMAGE-A3 TaqManプライマーの再設計
凍結組織のRNALaterをベースとしたMAGE-A3アッセイ(実施例2で記載される)についてのアンプリコンの大きさは1000 bpを超える。FFPEサンプル中に見られる分解したRNAについてより感度の高い結果を得るために、アンプリコンのサイズを低減してMAGE-A3アッセイの感度を増加するための新しいプライマーを設計した(表5)。実施例2および3に記載した2つのアッセイの双方のために、MGBTM(Minor Groove Binding)プローブを用いてアッセイの特異性を増加させた。MGBプローブは、極めて安定な二本鎖を形成するDNAの副溝(minor groove)に結合してプライマー特異性の増加をもたらす。
【0233】
新しいMAGE-A3プライマーの特異性および感度の試験
新たに設計されたプライマーのセット(表5)をMAGE-A遺伝子ファミリーメンバーのcDNAで試験した(表6a)。ここで、セット1はプライマー:配列番号7、配列番号8、プローブ:配列番号15であり;セット2はプライマー:配列番号9、配列番号10、プローブ:配列番号16であり;セット3はプライマー:配列番号11、配列番号12、プローブ:配列番号17であり;そしてセット4はプライマー:配列番号3、配列番号4、プローブ:配列番号13である。
【0234】
図6aに示すとおり、プライマー配列番号7および8は、MAGE-A3について高いCtレベルを有しているが、Mage-2およびMage-12についても高いCtレベルを有している。プライマー配列番号9および10は、MAGE-A3について高いCtレベルを有し、かつMAGE-A6についてわずかなCtを有するがこれはMAGE-A3発現の正常範囲からは外れている。プライマー配列番号11および12は、配列番号9および10よりも感度がわずかに低い。従って、本実験では、プライマー9および10を選択してさらにFFPE組織で試験した。これらの配列番号9および10のプライマーをさらにRNAの連続希釈において試験した。低い希釈度域まで良好な線形範囲を示し、これは前記プライマーが感度が良好でかつアッセイに適していることを示唆している(図6b)。
【0235】
MAGE-A3についての凍結vs.FFPE TaqManアッセイの比較
FFPEの腫瘍サンプル42検体を、プライマー配列番号9、配列番号10、およびプローブ配列番号16を用いて比較し、凍結組織では同一アッセイをプライマー配列番号3、配列番号、配列番号4、プローブ配列番号13を用いて行った(図7)。このアッセイで陽性とするレベルは1% Gerl(陽性対照)で設定し、直接的に比較すると2種類のアッセイ間にいくらかの一致があるようである。MAGE-A3凍結組織アッセイとは一致しなかったMAGE-A3陽性患者が数例あり、これは、MAGE-A3を発現する腫瘍細胞の純度の増加の原因となる腫瘍領域を大きく切除したことによって説明できた。陽性MAGE-A3結果である0.92のAn R2値(線形相関についての統計的検定)の原因となった希釈正常細胞の大部分の除去がFFPE組織とRNA later凍結組織間で示され、これは2種の方法間での相関が良好であることを示唆している(図8)。
【実施例4】
【0236】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験
【表5】
【0237】
MAGEA3F-646MODプローブ配列は下記の改変ヌクレオチド(配列番号54)を含んでいる。
【化1】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0238】
データ分析
MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値はTest Definition File中に定義されているアッセイパラメーターに基づいて、COBASTM TaqMan 48 Analyzerワークステーション(Roche, CA, USA)で、AMPLILINKTM 3.1ソフトウェア(Roche, CA, USA)を用いて算出する。遺伝子発現についてのデータ分析は、AMPLILINKTMからMAGE-A3およびβ-アクチンのCt値を抽出した後、β-アクチン遺伝子発現に比較したMAGE-A3遺伝子発現を計算して求める。各Runに関し、サンプルがMAGE-A3陽性であるために合致または超えなければならないMAGE-A3発現の閾値を確立するために、対照を含める。陽性対照として細胞株GERLからのRNAを用いる。GERL RNAは水で1:100(1% GERL)に希釈し、MAGE-A3のCtを測定する。さらに、希釈していないGERL RNA(100% GERL)をβ-アクチンのCt測定のために未希釈で用いる。100% GERL(対照)からのβ-アクチンのCtの値と、1% GERL(対照)からのMAGE-A3のCtの値との差から、ΔCt値を計算し、下記の式に基づいてMAGE-A3の相対的発現を測定する:
【数1】
【0239】
パラフィン包埋サンプルについては、閾値発現量の確立のために、QIAGEN FFPE法を用いて抽出したGERL FFPE異種移植からのRNAをGERL細胞株RNAの替わりに対照として用いることを除いて、上記と同様である。
【0240】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験は多重反応であるので、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値は同じ反応チューブ由来のものである。MAGE-A3の相対的発現は各試験サンプルについて下記の式で算出する。
【数2】
【0241】
試験サンプル中のMAGE-A3発現がGERL RNA対照で確立されたMAGE-A3閾値レベルと同等かまたはそれより多い場合には、そのサンプルはMAGE-A3陽性と呼ぶ。試験サンプル中のMAGE-A3発現が、対照から確立されたMAGE-A3閾値レベルよりも少ない場合には、そのサンプルはMAGE-A3陰性と呼ぶ。
【0242】
MAGE-A3発現は、ΔCt(β-アクチン Ct−MAGE-A3 Ct)の算出を各検体について反復することにより得られるMAGE-A3 Ctとβ-アクチンCtの値の平均をとることによって求める。一方の反復実施(replicate)では試験のCtカットオフより低いMAGE-A3 Ctまたはβ-アクチン Ctを有するが、他方の反復実施では該Ctカットオフより大きいMAGE-A3 Ctまたはβ-アクチンCtを有する場合には、そのサンプルは再度試験される。両反復実施がCtカットオフより大きいβアクチンCtを有する場合には、そのサンプルは範囲外のβ-アクチンCtを有すると記録し、結果を出さない。両反復実施がMAGE-A3 Ctカットオフ値を超えるMAGE-A3 Ct値を有するが、MAGE-A3発現が閾値を上回る場合には、そのサンプルは範囲外のMAGE-A3Ctであると記録し、結果を出さない。データ分析の方策は、下記の「方法の相関性」の節に述べている、方法の相関性について行ったクロスバリデーション研究と一致している。
【0243】
COBASTM TaqMan MAGE-A3試験のために、Stratagene社製のHuman QPCR Human Reference Total RNA(UHR)を陽性対照として用い、この十分に特徴付けられたRNAにおけるMAGE-A3発現に基づいて発現閾値を設定することができる。UHR対照での適切な発現閾値を確立するために、希釈したUHRをGERL RNA対照とともにRunで試験することができる。
【0244】
サンプルおよび試薬の保存条件
プラスミド、p53陽性対照DNA、臨床FFPET RNA、UHR、GERL、およびSTACを含むRNAおよびDNAは全て−80℃で保存する。Universal RNA Master Mix、プライマー/プローブミックス、補因子ブレンド、およびサンプル希釈/陰性対照を含む全試験試薬は、2〜8℃で保存する。
【0245】
MAGE-A3排他性
MAGE-Aファミリーメンバーを含んでいるDNAプラスミドを用いたプライマーおよびプローブの実験
目的:他の関連遺伝子の顕著な同時増幅/検出を排除しながらMAGE-A3遺伝子を特異的に増殖する試験の能力を判定すること。
【0246】
サンプル材料:MAGE-A3および関連のファミリーメンバーを含有しているプラスミドDNAを試験する(プラスミドの詳細については上述の実施例2を参照)。
【0247】
手順:MAGE-Aファミリーメンバーを含んでいるDNAプラスミドを用いたCOBAS TaqMan MAGE-A3試験の実験を行い、関連遺伝子が顕著な量で増幅され、検出されるかを判定する。
【0248】
各プラスミドサンプルは4種類の異なるDNA濃度(20、2、0.2、0.02 pg)で3回試験した。表10に示しす温度サイクルプロフィールは、60℃で20分間の逆転写ステップを除くように改変を行った。プラスミドDNAの濃度はNanodrop分析で求めた。
【0249】
分析:MAGE-A3プラスミドのCt値を測定し、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、およびMAGE-A12プラスミドからのCt値と比較した。ΔCtはMAGE-AX Ct(各関連ファミリーのメンバー)からMAGE-A3 Ctを差し引くことによって算出した。4回の反復実施からのCt平均値を、CtおよびΔCtの算出に用いた。
【0250】
判定基準:ΔCt値はMAGE-A3とMAGE-A6を除くその他全てのプラスミドとの間で約10以上でなければならない。
【0251】
MAGE-A3排他性結果
本明細書の表および図では、数箇所で「CURIE」という用語が「MAGE」の代わりに用いられているが、全ての場合において「MAGE」を意図している。
【0252】
試験した全MAGEプラスミドのCt値は、下記の表12および図17に示している。増幅の行われていないプラスミドについては、55のCt値が割り付けられるが、これは温度サイクルプロフィールが55サイクルであることによる。予想通り、MAGE-A3 Ctは試験した全てのレベルについて最も早い(表12および図17)。ΔCt値はMAGE-A3とMAGE-A6を除く他の全てのプラスミドとの間では10サイクル超であった(表13および図18)。MAGE-A3とMAGE-A6との間のΔCtは必要なかったが、これはMAGE-A6を発現している患者の95%がMAGE-A3も発現しているからである。
【0253】
20 pg、2 pg、0.2 pg、および0.02 pgのプラスミドDNAのインプットでのMAGE-A3とMAGE-A6との間のΔCt値は、それぞれ9.3、8.4、7.8、および8.2サイクルであった。FFPEサンプルからのRNAについてのMAGE-A3 Ct値の大部分は、試験したFFPEサンプルについて27.2よりも大きいことを示した。MAGE-A6からのシグナルは最小であり、これは8.2サイクルの遅れがこのアッセイの範囲外のCt値を生じるからである。排他性の判定基準は満たされた。
【0254】
表14はMAGE-A3排他性実験のバリデーションを示している。対照Ctは有効な範囲内であった。実験はバリデーションを通過した。表15および16はMAGE-A3排他性実験の詳細を示している。
【0255】
線形性およびRT-PCR効率
目的:試験の線形性および逆転写効率を判定すること。
【0256】
サンプル材料:FFPE異種移植片GERL RNAの連続希釈を、線形性およびRT-PCR効率の研究に用いた。
【0257】
手順:FFPE異種移植片GERL RNAを100 ngから0.1 ngまで2倍連続希釈し、COBAS TaqMan MAGE-A3試験を用いて試験し、アッセイの線形範囲を判定した。各濃度レベルで10回の反復実施を試験した。
【0258】
分析:MAGE-A3およびβ-アクチン双方についての各反復実施のCt値を、RNAのインプット濃度の対数(2を底とする)に対してプロットして、線の傾きとRT-PCRの効率を算出した。RT-PCRの増幅効率は次の式を用いて算出した:
【数3】
【0259】
2の増幅効率は100%と同等である。各反復実施についてのΔCt値(MAGE-A3 Ct−β-アクチン Ct)をRNAのインプット濃度の対数(2を底とする)に対してプロットし、ΔCtの傾きを求めた。10回の反復実施全てから、MAGE-A3 Ct、β-アクチン Ct、およびΔCtについての平均、標準偏差、および%変動係数(%CV)を算出した。
【0260】
線形性の判定基準:
アッセイの線形範囲は下記の基準に基づいて決定した:
MAGE-A3 Ct CV<5%
β-アクチンCt CV<5%
ΔCt CV<20%
-0.10<ΔCtの傾き<0.10
R2>0.95
RT-PCR効率の判定基準:
MAGE-A3 RT-PCR増幅効率>80%
β-アクチン RT-PCR増幅効率>80%
MAGE-A3とβ-アクチンとの間のRT-PCR増幅効率の差は10%以内
線形性/RT-PCR効率の結果
図20はRNAインプットの対数(2を底とする)vs MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値のグラフを示している。COBAS TaqMan MAGE-A3試験は、R2値に基づくQIAGEN法を用いてFFPE異種移植片から抽出した100〜0.1 ngのGERL RNAのインプット値間で線形である。R2値はMAGE-A3については0.983、β-アクチンについては0.998であった。これらの値はR2>0.95の基準を超えている。さらに、表17に示すとおり、各レベルで試験した10回の反復実施全てについて、MAGE-A3 Ctおよびβ-アクチン Ctは両者ともにCV<5%の基準を下回った。
【0261】
MAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率は、図19に示すとおり、MAGE-A3およびβ-アクチンのCt値に対してRNAインプットの対数(2を底)をプロットして作成した線の傾きから算出した。RT-PCRの増幅効率は次の式を用いて算出することができる:
【数4】
【0262】
MAGE-A3およびβ-アクチンの増幅効率はそれぞれ2.14(107%)および2.06(103.1%)であった。MAGE-A3およびβ-アクチンのAEは80%の基準を超えていた。2種の遺伝子間のAEの差は3.9%で、これも+10%の基準内であった。
【0263】
図20はRNAインプットの対数(2を底とする)vs MAGE-A3とβ-アクチンとの間のΔCtのグラフを示している。ΔCtの傾きは0.0474であり、これは十分に傾きの基準である−0.10〜0.10の範囲内である。試験したRNAインプットの最も低い2つのレベル(0.2および0.1 ng)で、ΔCtについての%CVは20%の基準を超えていた。その結果、この最後の2つのRNAインプットレベルは、このアッセイの線形範囲には含まれなかった。GERL 異種移植片RNAを用いたこのアッセイの線形範囲は100ng〜0.39ngのRNAである。
【0264】
これらのデータに基づけば、線形性およびRT-PCR効率の判定基準は満たされた。
【0265】
表18はMAGE-A3およびβ-アクチンのRT-PCR増幅効率を示している。表19は線形性/RT-PCR効率実験バリデーションである。対照Ctは有効範囲内であった。実験はバリデーションを通過した。
【0266】
表20、21および22は線形性/RT-PCR効率実験の詳細を提供する。
【0267】
分析感度(検出限界)
目的:MAGE-A3遺伝子発現がCOBASTM TaqMan MAGE-A3試験によってその時点の少なくとも95%で検出できる最低濃度のRNAを確立すること。
【0268】
サンプル材料:分析感度は、FFPE異種移植片組織から、QIAGENTM RNeasy FFPE Kitと追加のDNaseステップを用いて単離したRNAを用いて評価した。RNAは2つの異なるRNA細胞株由来の2種類のFFPE異種移植片組織から抽出した。一方の異種移植片組織はGERLと呼ばれMAGE-A3を発現する。もう一方の異種移植片組織はSTACと呼ばれ、MAGE-A3を発現しない。これらの2種の異種移植片組織からのRNAを混合実験に用いて、95% STAC RNAバックグラウンド中の5% GERL RNA、99% STAC RNAバックグラウンド中の1% GERL RNA、および99.5% STAC RNAバックグラウンド中の0.5% GERL RNAを試験した。これらのGERLおよびSTACのRNAの3種類の異なる混合物を4つの異なるRNAレベルで試験した。
【0269】
手順:GERLおよびSTACのRNA混合物の4種類の独立した希釈シリーズから24件の試験結果が得られた。RNAインプットの4つのレベルを試験した(100、50、25、および12.5 ng)。各レベルについて6回繰り返し試験した。
【0270】
分析:MAGE-A3について>95%の陽性率を示すRNAのレベルは、このアッセイの有効範囲内のCt値に基づいて決定される。
【0271】
判定基準:1% GERLの検出について、LOD<50ngの総RNAインプット。
【0272】
検出限界の結果
ヒット率は、本実施例に記載した線形性実験に基づいて、このアッセイの線形範囲内のCt値として定義する。Ct範囲の末端を求めるために、線形性の研究からの0.39ngのRNAインプットレベル(線形範囲の末端)から、MAGE-A3およびβ-アクチンのCtの平均をとり、MAGE-A3およびβ-アクチンのCtについて95%信頼限界を計算した。これらの計算に基づけば、ヒットとみなすサンプルについては、MAGE-A3 Ctは35.2以下でなければならず、β-アクチン Ctは32.1未満でなければならない。MAGE-A3およびβ-アクチンのヒット率を表23および表25に示している。MAGE-A3およびβ-アクチンについてのヒット率%は表24および表26に示している。
【0273】
99% STAC RNA中に希釈された1% GERL RNAがこのアッセイの有効範囲内のMAGE-A3 Ctに基づいてその時点で>95%検出される場合、検出限界は50ngのインプットRNAである。
【0274】
分析感度(検出限界)の判定基準は満たされる。
【0275】
検出限界実験バリデーション。MAGE遺伝子FAM対照のCtを表27に示している。β-アクチンHEX対照のCtは表28に示している。対照Ctは有効な範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0276】
表29、表30および表31は検出限界の実験の詳細を示している。
【0277】
方法の相関性
目的:COBASTM TaqMan MAGE-A3試験および臨床FFPETサンプルについてのプロトタイプアッセイ(Prototype Assay)を相関させ、クロスバリデートすること。
【0278】
サンプル材料:適切な質の約120の臨床FFPETサンプルを、COBAS TaqMan MAGE-A3試験およびプロトタイプアッセイを用いて分析した。
【0279】
手順:RNAはQIAGENTM RNeasy FFPE Kitと追加のDNaseステップとを用いて抽出した。各FFPETサンプルについて1回の抽出を行い、サンプルを分け、1つのアリコートをCOBAS TaqMan MAGE-A3試験で試験し、1つのアリコートをプロトタイプアッセイを用いて試験した。両アッセイについて同一対照を試験して、MAGE-A3発現の閾値を確立した。
【0280】
分析:GERL RNA対照によって得たMAGE-A3発現閾値に基づいて、各サンプルについてのMAGE-A3コール(call)を陽性または陰性として記録した。2つのアッセイ間の結果を比較して、RMS検定の比較一致度(comparator percent agreement)の値による陽性および陰性を確立した。
【0281】
一致度の計算には、凍結組織についての2ステップRT-PCRアッセイを用いて以前に得られた結果を、不一致な結果の解消のために用いた。
【0282】
比較一致度による陽性=正確にMAGE-A3発現体であるサンプル数/試験サンプル数*100
比較一致度による陰性=正確にMAGE-A3非発現体であるサンプル数/試験サンプル数*100
判定基準:
比較一致度による陽性>85%
比較一致度による陰性>85%
NSCLC臨床試験からの臨床検体のクロスバリデーションを行って、COBAS TaqMan MAGE-A3試験の比較一致%による陽性および陰性を評価した。これらの研究では、比較としてMAGE-A3プロトタイプRT-PCRアッセイを用いた。結果に不一致が見られた場合には、新鮮な凍結組織(手動で微細切断していない)として同一サンプルから得た以前の結果を、不一致の結果の解消のために用いることとしていた。
【0283】
QIAGEN RNeasy FFPE法にDNase I消化ステップを加えて用い、手動で微細切断した131件の臨床FFPE検体からRNAを抽出した。次いで、各サンプルをRMS COBAS TaqMan MAGE-A3試験およびRGIプロトタイプアッセイを用いた試験用に、RMSとRGIとに等分した。データ分析は、実施例3に記載したとおり行い、その際、MAGE-A3発現の閾値は1% GERL RNA対照に基づいて決定した。
【0284】
方法の相関性/クロスバリデーションの結果
RNAサンプルは131のNSCLC FFPE臨床検体から抽出した。RGIのRT対照反応に基づいて、7サンプルが25%を超えるゲノムDNAの夾雑が認められた。これらのサンプルは比較一致度の算出による陽性および陰性から除外した。さらに、COBASアッセイからは6件の不確定結果、プロトタイプアッセイからは15件の不確定結果があり、その際、サンプルはこのアッセイの線形範囲外のβ-アクチンCtに基づいて十分な材料を有していなかったか、またはサンプルのMAGE-A3発現が閾値を超えていたが、MAGE-A3のCt値は線形範囲外であった。その結果、COBASアッセイからは117件の結果、およびプロトタイプアッセイからは108件の結果が、2つの異なる試験を比較するためのクロスバリデーションに用いうるデータと共に得られた(表32)。COBASアッセイとプロトタイプアッセイとの間の総合的な一致は98/107、すなわち91.6%であった(表33)。プロトタイプアッセイを「ゴールドスタンダード」として用いたCOBAS試験の比較一致度による陽性は59/64または92.2%であり、比較一致度による陰性は39/43または90.7%であった(表33)。COBASアッセイとプロトタイプアッセイの結果が不一致であった場合には、凍結組織サンプルによって得られた結果を不一致の解消に用いた(表34)。
【0285】
COBOSアッセイとプロトタイプアッセイで不一致な結果であった9サンプルのうち、7サンプルはCOBASアッセイと凍結アッセイとの間で一致を示し、2サンプルはプロトタイプアッセイと凍結アッセイとの間で一致を示した。その結果、凍結結果を不一致の解消に用いた場合には、COBASアッセイの比較一致度による陽性は63/64または98.4%に増加し、比較一致度による陰性は42/43または97.7%に増加する(表34)。
【0286】
COBAS TaqMan MAGE-A3試験の比較一致度による陽性および陰性は、85%以上という基準を超えるものであった。比較一致度による陽性および陰性についての判定基準は満たされた。
【0287】
方法の相関性/クロスバリデーション対照のバリデーション
実験対照のMAGE遺伝子Ctは表30に示している。実験対照のβ-アクチン遺伝子Ctは表31に示している。対照のCtは有効範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0288】
方法の相関性/クロスバリデーション実験の詳細は、表37、38および39に示している。
【0289】
再現性
目的:複数の試薬ロットおよび複数の装置を用いて複数日間、複数のオペレーターにより作成されたデータセットにわたる試験の再現性および頑健性を立証する。
【0290】
サンプル材料:手動で微細切断したNSCLC FFPE臨床サンプルからの12サンプルを、QIAGEN RNeasy FFPE KitとDNase I消化ステップとを用いて抽出し、COBAS TaqMan MAGE-A3試験を用いて増幅/検出した。
【0291】
手法:この研究は1サンプルあたり2回の反復実施を行った。2つの試薬ロットをQIAGENサンプル調製とTaqMan試薬について試験した。実験は2人の異なるオペレーターが異なる日数で2つの異なるCOBAS TaqMan 48 Analyzerを用いて行った。
【0292】
分析:各臨床検体について、2回のRT-PCR反復実施の平均からMAGE-A3発現を算出した。さらに、MAGE-A3コールは各サンプルからの全反復実施について評価した。再現性も、MAGE-A3とβ-アクチン遺伝子との間のΔCt値から計算したMAGE-A3遺伝子発現の比較に基づいたものであった。異なる試薬ロット、装置、オペレーター、および異なる日数で試験したサンプルについてのMAGE-A3発現間の比較を、ピアソン相関を用いて行った。
【0293】
判定基準:Run間および反復実施間で試験の検出限界が少なくとも3倍(3% GERL)であるサンプル間でのMAGE-A3コールの一致が90%を超える。ピアソン相関がサンプル間で90%を超える。
【0294】
再現性結果
MAGE-A3発現閾値は、ある患者がMAGE-A3特異的免疫療法を受けるか否かを決定する、MAGE-A3発現のカットオフレベルである。その閾値以上のMAGE-A3発現のある患者は、MAGE-A3陽性コールであり、治療を受けることとなる。その閾値未満のMAGE-A3発現のある患者は、MAGE-A3陰性コールであり、治療は受けないこととなる。試験の再現性の研究は、各検体について下記の式を用いたMAGE-A3発現コールに基づいたものである:
【数5】
【数6】
【0295】
さらに、アッセイの再現性は2つのRun間のMAGE-A3発現の相関をピアソンの積率相関係数(r)で比較することによって評価した。表40および表37は、β-アクチンとMAGE-A3との間のΔCt値に基づいて、Run 1と2で試験したGERL RNA対照から得たMAGE-A3発現閾値を示している。表41および表43はRun 1と2で試験した12検体各々のMAGE-A3コールを示している。
【0296】
表42は、Run 2-GERL RNA対照からのMAGE-A3発現閾値を示している。表43はRun 2-再現性検体についてのMAGE-A3発現コールを示している。
【0297】
試験した全てのサンプルについて、2つのRun間のMAGE-A3発現コールには100%の相関があった。さらに、アッセイの再現性を、2つのRun間のMAGE-A3発現の相関をピアソンの積率相関係数(r)で比較して評価した。2回の異なるRun間のMAGE-A3発現を比較すると、ピアソン相関係数は0.987であった。再現性についての許容基準は満たされた。
【0298】
表44は再現性バリデーションを示している。対照Ctは有効範囲内である。実験はバリデーションを通過した。
【0299】
再現性実験の詳細は表45、46、および47に示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のペアのプライマー、すなわち配列番号11の配列からなるプラーマーおよび配列番号12の配列からなるプライマーのセット。
【請求項2】
(a) 5'末端に蛍光レポーター色素を有し、3'末端に非蛍光性のクエンチャーを有する配列番号17のヌクレオチド配列、または
(b) 次の配列、すなわち5'-ELFLLLFFLQGLGALFLLFAGFAAAGFLLFP-3'
[配列中、E= FAMレポーター色素、F= 5-メチルdC, Q = BHQ2クエンチャー, L = 5-プロピニルdU, P= リン酸, I = HEXレポーターである]
からなるプローブ。
【請求項3】
(i) 配列番号11の配列からなるプライマー;
(ii) 配列番号12の配列からなるプライマー;および
(iii) 5'末端に6-カルボキシフルオレセインを有し、3'末端に非蛍光性のクエンチャーを有する配列番号17の配列からなるプローブ、
を含むキット。
【請求項4】
(i) 配列番号11の配列からなるプライマー、
(ii) 配列番号12の配列からなるプライマー、および
(iii) 次の配列 5'-ELFLLLFFLQGLGALFLLFAGFAAAGFLLFP-3' からなるプローブ、
[配列中、E= FAMレポーター色素、F= 5-メチルdC, Q = BHQ2クエンチャー, L = 5-プロピニルdU, P= リン酸, I = HEXレポーターである]
を含むキット。
【請求項5】
ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)腫瘍組織サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、配列番号11の配列からなるプライマー及び配列番号12の配列からなるプライマーのセット並びに請求項2に記載のプローブとを接触させるステップを含む、ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)MAGE-A3腫瘍組織の存在または不在を決定する方法。
【請求項6】
ヌクレオチド配列を増幅するステップ、および前記サンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記単離されたヌクレオチド配列が、ストリンジェントな条件下で少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズし、それによって腫瘍組織がMAGE-A3陽性であるかを検出するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ヌクレオチド配列が少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを検出するために、in situハイブリダイゼーションを用いるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項1】
次のペアのプライマー、すなわち配列番号11の配列からなるプラーマーおよび配列番号12の配列からなるプライマーのセット。
【請求項2】
(a) 5'末端に蛍光レポーター色素を有し、3'末端に非蛍光性のクエンチャーを有する配列番号17のヌクレオチド配列、または
(b) 次の配列、すなわち5'-ELFLLLFFLQGLGALFLLFAGFAAAGFLLFP-3'
[配列中、E= FAMレポーター色素、F= 5-メチルdC, Q = BHQ2クエンチャー, L = 5-プロピニルdU, P= リン酸, I = HEXレポーターである]
からなるプローブ。
【請求項3】
(i) 配列番号11の配列からなるプライマー;
(ii) 配列番号12の配列からなるプライマー;および
(iii) 5'末端に6-カルボキシフルオレセインを有し、3'末端に非蛍光性のクエンチャーを有する配列番号17の配列からなるプローブ、
を含むキット。
【請求項4】
(i) 配列番号11の配列からなるプライマー、
(ii) 配列番号12の配列からなるプライマー、および
(iii) 次の配列 5'-ELFLLLFFLQGLGALFLLFAGFAAAGFLLFP-3' からなるプローブ、
[配列中、E= FAMレポーター色素、F= 5-メチルdC, Q = BHQ2クエンチャー, L = 5-プロピニルdU, P= リン酸, I = HEXレポーターである]
を含むキット。
【請求項5】
ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)腫瘍組織サンプルから得られたまたは該サンプルに由来する単離されたヌクレオチド配列と、配列番号11の配列からなるプライマー及び配列番号12の配列からなるプライマーのセット並びに請求項2に記載のプローブとを接触させるステップを含む、ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した(FFPE)MAGE-A3腫瘍組織の存在または不在を決定する方法。
【請求項6】
ヌクレオチド配列を増幅するステップ、および前記サンプル中の増幅されたヌクレオチド配列を検出するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記単離されたヌクレオチド配列が、ストリンジェントな条件下で少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズし、それによって腫瘍組織がMAGE-A3陽性であるかを検出するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ヌクレオチド配列が少なくとも1種のプライマーまたはプローブとハイブリダイズするかを検出するために、in situハイブリダイゼーションを用いるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【公開番号】特開2013−46630(P2013−46630A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−245934(P2012−245934)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2009−515886(P2009−515886)の分割
【原出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2009−515886(P2009−515886)の分割
【原出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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