説明

MALDIイオン源を備えた質量分析装置およびMALDIイオン源用サンプルプレート

【課題】サンプルプレートの個別管理や、サンプルプレートのゆがみ情報に基づく質量較正を容易に行なうことのできるMALDIイオン源を備えた質量分析装置およびMALDIイオン源用サンプルプレートを提供する。
【解決手段】サンプルプレートのID情報と、サンプルプレート表面の凹凸によるゆがみ情報とをサンプルプレート表面に彫刻し、また電子ファイルとして登録することで、測定時に観察手段で読み取って、サンプルプレートの個別管理や、マススペクトルの質量較正に利用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子などの定性・定量を行なう際に用いられるMALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)イオン源を備えた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MALDI法は、使用するレーザー光波長に吸収帯をもつマトリックス(液体や結晶性化合物、金属粉など)に試料を混合溶解させて固化し、これにレーザー照射して試料を気化あるいはイオン化させる方法である。MALDI法に代表されるレーザー光によるイオン化では、イオン生成時の初期エネルギー分布が大きい。そこで、これを時間収束させるため、遅延引き出し法がほとんどの場合で用いられる。これは、レーザー照射より数百nsec遅れてパルサー電圧を印加する方法である。
【0003】
一般的なMALDIイオン源と遅延引き出し法の概念図を図4に示す。サンプルプレート11上に、マトリックス(液体や結晶性化合物、金属粉など)に試料を混合溶解させて固化した試料12を載せる。試料12の状態が観察できるように、レンズ16、ミラー15、CCDカメラ17を配置している。レンズ13、ミラー14によりレーザーをサンプルに照射し、サンプルを気化あるいはイオン化する。生成したイオンは、中間電極18、ベース電極19に印加された電圧により加速され、図示しない飛行時間型質量分析部に導入される。
【0004】
遅延引き出し法の飛行時間測定のシーケンスを図4に合わせて示す。まず、中間電極18とサンプルプレート11の電位を同電位Vsにしておく。次にレーザー発振を知らせる図示しないレーザー装置からの信号を受けてから、数百nsec後に中間電極18の電位Vsを高速で電位V1に変化させ、サンプルプレート11と中間電極18の間に電位勾配を作り、生成したイオンを加速させる。飛行時間計測の開始時間は、中間電極電圧の変化開始時間と同期させる。
【0005】
イオンの飛行時間は、サンプルプレート11と中間電極18との間に発生する加速電場の強さで決まるため、サンプルプレート11と中間電極18の間の距離は、サンプルプレート11のどこの位置においても、常に正確に同じでなければならない。
【0006】
MALDI法をイオン源に採用した質量分析計では、一般に、レーザー照射により生成したイオンを引き出す電場を作る目的のために、サンプルプレート11にはステンレスなどの導電性材料が用いられる。そして、導電性サンプルプレート11表面には、試料を滴下する位置を示すための目印が彫刻されている。彫刻の数は、96個(12行×8列)、384個(24行×16列)、1536個(48行×32列)などが一般的である。
【0007】
使用するにあたっては、彫刻された目印内に試料12を滴下させたサンプルプレート11を質量分析計内に導入設置する。そして、サンプルプレート11表面をCCDカメラ17で観察しながら、滴下された試料12にレーザー光を照射して、試料をイオン化させることにより、質量分析が行なわれる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−43014号公報
【特許文献2】特表2003−534634号公報
【特許文献3】特開2004−347524号公報
【特許文献4】特表2005−513490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、試料用丸印の数が多いサンプルプレートを複数枚使用して測定を行なう場合では、測定している試料が分からなくなったり、どのサンプルプレートに何の試料を滴下したのかが分からなくなったり、使用したサンプルプレートと測定データとの間が対応付けられなくなったりする可能性がある。
【0010】
また、試料を滴下した状態でサンプルプレートを保管しておいた場合、測定者が誤ったサンプルプレートを使用しないためには、サンプルプレートを個別管理する必要がある。
【0011】
また、サンプルプレートの表面はでこぼこし、ゆがみが発生している。ゆがみは、おおよそ±0.1mm程度のオーダーであるが、このゆがみが質量分解能や質量軸に影響を与えて、正しいマススペクトルが得られないことがあるので、ゆがみ情報に基づいて質量較正を行なう必要がある。
【0012】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、サンプルプレートの個別管理や、サンプルプレートのゆがみ情報に基づく質量較正を容易に行なうことのできるMALDIイオン源およびMALDIイオン源用サンプルプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明にかかるMALDIイオン源を備えた質量分析装置は、
サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報を前記マススペクトルと組み合わせて記憶するようにしたことを特徴している。
【0014】
また、前記読み取り手段として、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料を観察する観察手段を兼用したことを特徴としている。
【0015】
また、予め質量分析装置内の記憶装置にサンプルプレートの識別情報と当該サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を対応させて登録しておき、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報に基づき、前記記憶装置から当該サンプルプレート表面の凹凸情報を読み出して、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴としている。
【0016】
また、前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを前記読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴としている。
【0017】
また、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面にサンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを設けると共に、該コード又はマークを読み取る読み取り手段を設け、前記データ処理部では、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴としている。
【0018】
また、前記データ処理部では、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、対応する各マススペクトルについて質量較正を行なうようにしたことを特徴としている。
【0019】
また、前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを前記読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報を前記マススペクトルと組み合わせて記憶するようにしたことを特徴としている。
【0020】
また、本発明にかかるMALDIイオン源を備えた質量分析装置用サンプルプレートは、
試料を付着させる位置を示すマークと、サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを設けたことを特徴としている。
【0021】
また、さらに、サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを設けたことを特徴としている。
【0022】
また、前記サンプルプレートの識別情報を表すコードと、サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコードとして、バーコード又はQRコードが用いられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のMALDIイオン源によれば、
サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報を前記マススペクトルと組み合わせて記憶するようにしたので、
サンプルプレートの個別管理や、サンプルプレートのゆがみ情報に基づく質量較正を容易に行なうことのできるMALDIイオン源およびサンプルプレートを提供することが可能になった。
【0024】
また、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面にサンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを設けると共に、該コード又はマークを読み取る読み取り手段を設け、前記データ処理部では、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたので、
サンプルプレートの個別管理や、サンプルプレートのゆがみ情報に基づく質量較正を容易に行なうことのできるMALDIイオン源およびサンプルプレートを提供することが可能になった。
【0025】
また、本発明のMALDIイオン源用サンプルプレートによれば、試料を付着させる位置を示すマークと、サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを設けたので、
サンプルプレートの個別管理や、サンプルプレートのゆがみ情報に基づく質量較正を容易に行なうことのできるMALDIイオン源およびサンプルプレートを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明にかかるMALDIイオン源用サンプルプレートの一実施例である。
【0027】
ステンレス製サンプルプレート表面には、縦方向にA〜Pの16行、横方向に1〜24の24列からなる2.5mmφの384個の試料滴下用丸印(目印)がYVO4レーザーによりレーザー彫刻されている。また、384個の試料滴下用丸印の間には、2.5mmφの96個から成る別の試料滴下用丸印(目印)がYVO4レーザーによりレーザー彫刻されている。
【0028】
また、サンプルプレート右側のふちには、製造年月日(6桁の数字)とロット番号(3桁の数字)がYVO4レーザーによりレーザー彫刻されている。図1の例では、2006年7月27日製作の1枚目を示す9桁の数字、060727001が刻まれている。また、9桁の数字の隣には、製造年月日と製造番号を記号化したQRコード(Quick Response code:いわゆる2次元コード)が刻まれ、読み取り機で読み取り可能になっている。この実施例では、QRコードが使用されているが、QRコードの代わりにバーコードやマークであっても良い。このコードまたはマークを、サンプルプレートの個体識別IDとして利用する。
【0029】
また、サンプルプレートのゆがみ情報、すなわち個々の試料位置ごとのサンプルプレートの凹凸情報は、製造年月日と製造番号を記号化したQRコードの中に記録されている。このゆがみ情報は、レーザー光照射により生成したイオンを加速して引き出す際に、サンプルプレート11と中間電極18の間の距離を補正するのに使用される。
【0030】
サンプルプレート11と中間電極18との距離は3mm程度なので、もしサンプルプレート11に±0.1mmの凹凸があれば、サンプルプレート11と中間電極18との間に発生する加速電場の強さに±3%程度の誤差を生じてしまう。そこで、サンプルプレート11の凹凸(ゆがみ)に関する情報をQRコードに予め書き込んでおき、試料にレーザー光を照射して試料をイオン化する前に、試料位置ごとのサンプルプレートの凹凸に関する情報をQRコードから読み取り機で読み取って、加速されたイオンの飛行時間から質量電荷比を計算する際の計算式に、このサンプルプレート−中間電極間距離の機械的誤差を繰り込んで、質量較正を行なわせる。
【0031】
実際、装置寸法、印加電圧等、個々のパラメータから解析される理論キャリブレーションによると、サンプルプレート11と中間電極18の距離が短くなると、イオンの飛行時間も短くなり、サンプルプレート11と中間電極18の距離が長くなると、イオンの飛行時間も長くなるという傾向がある。この傾向は、イオンの種類、マトリックスの種類、レーザーの種類を問わず見られる傾向なので、本実施例を実施すれば、サンプルプレートの凸になっている部位に置かれた試料をイオン化した場合では、質量電荷比は大きくなる方向(飛行時間を長く補正する方向)に質量較正され、サンプルプレートの凹になっている部位に置かれた試料をイオン化した場合では、質量電荷比は小さくなる方向(飛行時間を短く補正する方向)に質量較正されることになる。
【0032】
このように構成することにより、サンプルプレート11のゆがみを補正された正しい電極間隔に基づいて正確な飛行時間を得ることができるので、機械的誤差のない、質量較正されたイオンの正確な質量電荷比を求めることが可能になる。
【0033】
なお、サンプルプレートのゆがみ情報(凹凸情報)については、サンプルプレート表面に直接レーザー彫刻しないで、質量分析装置内のハードディスクなどの記憶装置にサンプルプレートの個体識別ID情報と対応させて電子ファイルとして登録しておき、サンプルプレート表面の個体識別ID情報を読み取り機で読み取った際に、そのID情報に基づいて、前記記憶装置から直接電子ファイルを読み出すように構成しても良い。
【0034】
図2は、本発明にかかるMALDIイオン源の一実施例である。図中1は、真空チャンバである。真空チャンバ1には、サンプルプレート4を載置したXYステージ6が設置されている。このXYステージ6がXY方向に移動することにより、XYステージ6に対向する位置に設置されたサンプルプレート表面観察およびID観察装置(例えばCCDカメラ)2が、サンプルプレート4の個体識別IDを読み取る。
【0035】
このサンプルプレート表面観察およびID観察装置2は、サンプルプレート4の個体識別ID読み取りに引き続いて、サンプルプレート個別のゆがみ情報が記録されたQRコードをも読み取る。同時にサンプルプレート4表面の試料滴下用丸印内に滴下された試料5が観察される。
【0036】
なお、サンプルプレート4のゆがみ情報(凹凸情報)については、サンプルプレート4表面にQRコードを直接レーザー彫刻しないで、図示しない質量分析装置内のハードディスクなどの記憶装置にサンプルプレート4の個体識別ID情報と対応させて電子ファイルとして登録しておき、サンプルプレート表面の個体識別ID情報をサンプルプレート表面観察およびID観察装置2で読み取った際に、その読み取られたID情報に基づいて、前記記憶装置から直接電子ファイルを読み出すように構成しても良いことは、前に述べた通りである。
【0037】
サンプルプレート表面観察およびID観察装置2が取り付けられた真空チャンバ1の壁面上には、サンプルプレート表面観察およびID観察装置2とXYステージ6とを結ぶ軸線から少しずれた位置に、試料5をイオン化するためのレーザー3が置かれている。レーザー3が試料5の表面を照射することにより、試料5はイオン化または気化される。
【0038】
生成した試料イオンをサンプルプレート4表面から質量分析計に向けて引き出すための加速電場を作るのに必要な中間電極とベース電極は、実際には存在しているが、要部を簡略に見せるため、図2からは省かれている。
【0039】
なお、図2は、あくまで概念図であって、サンプルプレート表面観察およびID観察装置2、レーザー装置3、サンプルプレート5、およびXYステージ6の位置関係には、レンズやミラー等を適宜組み合わせて使用することにより、さまざまな配置上の変形パターンがあり得ることは言うまでもない。
【0040】
本発明にかかる質量分析計は、図3に示すように、MALDIイオン源20の後段にイオンのマススペクトルを測定する飛行時間型質量分析計等の質量分析部21、質量分析部21の後段に質量分析部21で得られたマススペクトルの質量較正を行なうコンピュータ等のデータ処理部22、データ処理部22の後段に、得られたデータをサンプル画像および画像認識したサンプルプレートIDと併せて記憶するハードディスク等の記憶部23を備えている。
【0041】
なお、記憶部23は、サンプルプレートのゆがみ情報(凹凸情報)をサンプルプレートの個体識別ID情報と対応させて記憶している。ゆがみ情報は、サンプルプレートIDを読み取り機で読み取った際に、その読み取られたID情報に基づいて、記憶部23からデータ処理部22に読み出され、質量分析部21で得られたマススペクトルの質量較正に利用される。
【0042】
また、サンプルプレート4表面の観察画像および画像認識されたサンプルプレート4の個体識別IDを解読し、測定データあるいは解析データと組み合わせて記憶部23に保存する第1のソフトウェア24、ならびに、バーコードまたはQRコードまたはマークまたは記憶部23に記録されたサンプルプレート4表面のゆがみ情報からマススペクトルの質量較正を行なう第2のソフトウェア25を、データ処理部22の内部に備えている。
【0043】
本実施例は、以下のように用いられる。
【0044】
1.サンプルプレート4上の目印にしたがって、試料とマトリックスの混合溶液5を滴下する。
【0045】
2.質量分析計内(真空チャンバ1内)にサンプルプレート4を導入し、XYステージ6上に固定する。
【0046】
3.導入されたサンプルプレート4のバーコードまたはQRコードをサンプルプレートID観察装置2によって観察し、プレートID情報を読み取る。このとき、サンプルプレート4のゆがみ情報を同時に読み取っても良い。
【0047】
4.サンプルプレート表面観察装置2によりサンプルプレート4表面を観察しながら、XYステージ6を用いてサンプルプレート4をXY方向に移動させ、滴下された所望の試料スポット5を探す。
【0048】
5.レーザー3により、試料スポット5にレーザー光を照射し、試料5をイオン化させ、質量分析装置の質量分析部で質量分析測定を開始する。
【0049】
6.サンプルプレート4のゆがみ情報が記録されたバーコードまたはQRコードの読み取り結果をもとに、質量分析装置のデータ処理部に付属のソフトウェアを用いて質量分析部で得られたマススペクトルの質量較正と、サンプル画像および画像認識したサンプルプレートIDの記憶を行ない、測定データおよび解析データと組み合わせてハードディスクなどの記憶装置に保存する。
【0050】
.別法として、予めハードディスクなどの記憶装置にプレートID情報と対応させてサンプルプレート4のゆがみ情報を電子ファイルとして登録しておき、読み取られたプレートID情報から対応するゆがみ情報を電子ファイルとして読み出して、質量分析装置のデータ処理部に付属のソフトウェアを用いて質量分析部で得られたマススペクトルの質量較正を行ない、サンプル画像および画像認識したサンプルプレートIDを測定データおよび解析データと組み合わせてハードディスクなどの記憶装置に保存しても良い。
【0051】
7.XYステージを移動させ、別の試料スポット5に対して同様の操作を行ない、質量分析測定を続ける。
【0052】
8.質量分析測定がすべて終了したら、質量分析計内(真空チャンバ1内)からサンプルプレート4を取り出し、保管場所でサンプルプレートIDを読み取り、記憶させ、保管する。
【0053】
このようにMALDI法で用いられる導電性サンプルプレートにサンプルプレートIDやプレートゆがみ情報を記録したバーコードまたはQRコードまたはマークを直接彫刻することにより、サンプルプレートの個体管理が可能となり、保管時などにおける試料の混同、紛失、取り違え等を回避することができる。
【0054】
また、測定している試料のプレート情報が自動認識され、測定データとともに記録されることになり、測定に使用されたサンプルプレートの判別が容易にできる。
【0055】
また、サンプルプレートのゆがみ情報をもとに、マススペクトルの質量較正ができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
MALDIイオン源を備えた質量分析装置に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明にかかるサンプルプレートの一実施例を示す図である。
【図2】本発明にかかるMALDIイオン源の一実施例を示す図である。
【図3】本発明にかかる質量分析装置の一実施例を示す図である。
【図4】従来のMALDIイオン源の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1:真空チャンバ、2:サンプルプレート表面観察およびサンプルプレートID観察装置、3:レーザー装置、4:サンプルプレート、5:試料、6:XYステージ、11:サンプルプレート、12:試料、13:レンズ、14:ミラー、15:ミラー、16:レンズ、17:CCDカメラ、18:中間電極、19:ベース電極、20:MALDIイオン源、21:質量分析部、22:データ処理部、23:記憶部、24:第1のソフトウェア、25:第2のソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報を前記マススペクトルと組み合わせて記憶するようにしたことを特徴とするMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項2】
前記読み取り手段として、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料を観察する観察手段を兼用したことを特徴とする請求項1記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項3】
予め質量分析装置内の記憶装置にサンプルプレートの識別情報と当該サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を対応させて登録しておき、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報に基づき、前記記憶装置から当該サンプルプレート表面の凹凸情報を読み出して、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項4】
前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを前記読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項5】
サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料に順次レーザー光を照射してイオン化し、得られた試料イオンを質量分析部に導入して試料のマススペクトルを測定し、得られたマススペクトルをデータ処理部でデータ処理して質量分析を行なうようにしたMALDIイオン源を備えた質量分析装置において、前記サンプルプレートの表面にサンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを設けると共に、該コード又はマークを読み取る読み取り手段を設け、前記データ処理部では、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、サンプルプレート表面の異なる場所に付着させた試料から得られた各マススペクトルについて質量較正処理を行なうようにしたことを特徴とするMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項6】
前記データ処理部では、前記読み取り手段によって読み取られたサンプルプレート表面の凹凸に関する情報に基づき、各試料付着場所の高さ情報を求め、求めた高さ情報に基づき、対応する各マススペクトルについて質量較正を行なうようにしたことを特徴とする請求項5記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項7】
前記サンプルプレートの表面に当該サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを前記読み取り手段により読み取り可能に設けると共に、該読み取り手段によって読み取られたサンプルプレートの識別情報を前記マススペクトルと組み合わせて記憶するようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置。
【請求項8】
試料を付着させる位置を示すマークと、サンプルプレートの識別情報を表すコード又はマークを設けたことを特徴とするMALDIイオン源を備えた質量分析装置用サンプルプレート。
【請求項9】
さらに、サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコード又はマークを設けたことを特徴とする請求項8記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置用サンプルプレート。
【請求項10】
前記サンプルプレートの識別情報を表すコードと、サンプルプレート表面の凹凸に関する情報を表すコードとして、バーコード又はQRコードが用いられることを特徴とする請求項9記載のMALDIイオン源を備えた質量分析装置用サンプルプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−52994(P2009−52994A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219160(P2007−219160)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】