説明

MARKインヒビターとなるイミダゾチアゾール誘導体

式(I)の化合物はMARKのインヒビターであり、従ってタウの高リン酸化が関与する障害の治療に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療または予防のための方法および材料に関する。特に、微小管親和性調節キナーゼ(MARK)を選択的に阻害する特定クラスのイミダゾチアゾール誘導体が開示されている。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は高齢者の認知症の最も多い原因であり、その特徴は認識機能の減退であり、これは緩徐に進行し記憶喪失および見当識障害のような症状に帰着する。平均で診断9年後に死に到る。ADの発病率は年齢に伴って増加し、70歳以上の罹患人口は約5%であるが、80歳以上ではこの数値が20%に上昇する。
【0003】
既存の治療はその標的をADの一次症状に限っている。罹病ニューロンは特定の神経伝達物質を不十分なまたは過剰な量で放出し得る。従って現行の治療薬は、神経伝達物質のレベルを上昇させることまたは神経伝達物質による神経細胞の刺激を低下させることを目的としている。これらの薬剤はADの症状をある程度改善できるが、疾患の根本原因に迫ることには成功していない。
【0004】
ADの古典的な臨床的および神経病理学的特徴は、老人斑もしくは神経炎性斑およびと縺れた線維の束(神経原線維の縺れ)とから構成される[Verdile,G.ら,Pharm.Res.50:397−409(2004)]。さらに、海馬および大脳皮質にニューロンの顕著な減少が存在する。神経炎性斑は細胞外病巣であり、主として、炎症プロセスによって活性化された異栄養性の(膨潤、損傷および変性した)神経突起とグリア細胞とによって包囲されたβ−アミロイドペプチド(Aβ)の沈着物から成る。対照的に、神経原線維の縺れ(NFT)は、脳内で広範囲(例えば、主としてADの皮質および海馬)に見出されるタウタンパク質の高リン酸化形態から成る細胞内クラスターである。タウは、微小管の安定化に1つの役割を有している可溶性の細胞質タンパク質である。高リン酸化はこのタンパク質を不溶性にし、ペアードヘリカルフィラメントとして凝集させ、次いでNFTを形成させる。
【0005】
アミロイドカスケード仮説は、Aβペプチド特にAβ42の異常蓄積が古典的AD症状に導き最終的に患者を死に到らせる多段イベントの発端をなすという説である。タウ機能の異常調節が、最終的にニューロンの死に導くアルツハイマー病の病理カスケードの基幹段階であることについては強力な証拠が存在する[例えば、Rapoport,M.ら,(2002)Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:6364−6369]。さらに、前頭側頭性認知症、ピック病および染色体17関連パーキンソン症状(FTDP−17)のようなAβ病理が存在しない他の認知症にタウ突然変異およびNFTが見出される[Mizutani,T.(1999)Rinsho Shikeigaku 39:1262−1263]。また、ADにおいては、老人斑の頻度よりもNFTの頻度のほうが痴呆の程度に相関関係を有しており[Arriagada,P.V.ら,(1992)Neurology 42:631−639]、また、認知症でない高齢者の脳にも有意な数のアミロイド斑がしばしば見出されるので、アミロイド病理がそれだけでは認知症を発症させないことが示唆される。これらの理由から、ADおよび他の痴呆状態の治療にはタウ機能の正常化(特に、高リン酸化の防止)が望ましい治療目標であると考えられている。
【0006】
タウはMapt(微小管結合タンパク質タウ)遺伝子によってコードされている352−441アミノ酸のタンパク質であり、中枢神経系(CNS)で広く発現され、主として軸索に局在する[Binderら,J Cell Biol.1985,101(4),1371−1378]。タウの主要な機能は、軸索の輸送と伸長、細胞の極性および形態の生成、のような多くの本質的細胞プロセスの調節に関与するチューブリン二量体から成る細胞内構造コンポーネントである微小管(MT)の安定性の調節である。チューブリンへのタウの結合はMTの重合/脱重合の速度(動的安定性と呼ばれる)を決定する基幹要因であり、従ってタウは多くの本質的細胞プロセスの調節の鍵を握っている[参照:例えばButner,K.A.,Kirschner,M.W.(1991)J.Cell.Biol.115:717−730]。
【0007】
タウは、多数のセリンおよびトレオニン残基をもつ塩基性タンパク質であり、その多くがリン酸化に感受性である。正常なタウは2から3個のリン酸化アミノ酸残基を有しているが、ADおよび他のタウオパシーに見出される高リン酸化タウは8または9個のリン酸化残基を有している。様々なキナーゼがこれらの部位のリン酸化を促進する。例えば、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)のようなプロリン特異的キナーゼ、サイクリン特異的キナーゼ(cdk5)、ならびに、プロテインキナーゼA(PKA)およびカルモジュリン(CaM)キナーゼIIのようなプロリン非特異的キナーゼがあり、これらのキナーゼはKXGSモチーフとしても知られたLys−(Ile/Cys)−Gly−Ser配列でタウをリン酸化する。1つのKXGSモチーフはMT結合性反復配列の各々に見出される。これらの部位のリン酸化は、タウ−MT結合を調節するために重要であり、リン酸化の程度は正常には低いが、AD患者の脳組織中では高くなっていることが判明した。ADのNFTから抽出されたタウタンパク質中ではKXGSモチーフ内部の1つの特定残基Ser−262のリン酸化が亢進していることが判明し[Hasegawa,M.ら,(1992)J.Biol.Chem 267:17047−17054]、この部位のリン酸化もMT結合を劇的に減少させると考えられる[Biernat,J.ら,(1993)Neuron 11:153−163]。
【0008】
Nishimuraら[Cell 116:671−682(2004)]は、ショウジョウバエ(Drosophila)においてキナーゼPAR−1の過剰発現がタウ媒介毒性の増進、および、Ser−262およびSer−356ならびにGSK3βおよびCdk5によってリン酸化された部位を含む他のアミノ酸残基におけるタウのリン酸化を亢進することを証明した。かれらの知見は、PAR−1キナーゼがタウの高リン酸化のプロセスでマスターキナーゼとして作用し、Ser−262およびSer−356部位のリン酸化が他のキナーゼによる下流部位のその後のリン酸化の先要条件であることを示唆する。
【0009】
哺乳類のPAR−1対応酵素(ortholog)は微小管親和性調節キナーゼ(MARK)である。4つのMARKアイソフォームが存在し、これらはAMP−依存性タンパク質キナーゼ(AMPK)ファミリーの構成員である。PAR−1と同様にMARKは、Aβによって生じたCa2+ホメオスタシスの破壊のような外的傷害に応答してタウをリン酸化しその後のリン酸化イベントの発端をなすと推測される。MARKによるタウのリン酸化が直接的にMTからタウを分離するのかまたはその後のリン酸化イベントが分離を生じさせるのかは解明されていない。生成された非結合の高リン酸化タウが体細胞樹枝状区画に移動し、次いでキャスパーゼによって開裂されて、凝集し易いフラグメントを形成する[Drewes,G.(2004).Trends Biochem.Sci 29:548−555;Gamblin,T.C.ら,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:10032−10037]。これらの凝集体が、潜在的に毒性であって、ADに見出されるNFTを最終的に形成するフィラメントに成長する。
【0010】
これらの理由から、MARKインヒビターがADおよび他のタウオパシーの神経変性を予防または改善できるであろうという提案がなされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
MARK3アッセイ
Cdc25Cビオチニル化ペプチド基質を使用するインビトロアッセイでMARK3活性を検定した(細胞シグナル伝達テクノロジィー(Cell Signalling Technologies))。ホスホペプチド産生物は、均質時間分解蛍光(Homogenous Time−Resolved Fluorescence(HTRF))アッセイ系で定量した(Parkら,1999,Anal.Biochem.269:94−104)。反応混合物は、50mMのヘペス/トリス−HCl,pH7.4、10mMのNaCl、5mMのMgCl、0.2mMのNaVO、5mMのβ−リン酸グリセロール、0.1%のトゥイーン−20、2mMのジチオトレイトール、0.1%のBSA、10μMのATP、1μMのペプチド基質および10nMの組換えMARK3酵素(University of Dundee)を最終容量12μl中に含有していた。バッファはさらに、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche EDTA−非含有、1錠/50ml)を含有していた。キナーゼ反応混合物を25℃で2時間インキュベートし、次いで3μlの停止/検出バッファ(50mMのヘペス,pH7.0、16.6mMのEDTA、0.5MのKF、0.1%のトゥイーン−20、0.1%のBSA、2μg/mlのSLXent 665(CISBIO)および2μg/mlのEu3+クリプテートラベル抗体(CISBIO))で終了させた。反応混合物を0℃で一夜平衡させ、HTRF励起プレートリーダー(例えばTECAN GENios Pro)で相対的蛍光単位を読取った。上述の反応混合物中のインヒビター化合物を定量し、化合物のIC50を決定した。DMSOに溶解した化合物のアリコートを1nMから10μMの範囲にわたる第三対数(third−log)希釈系列で反応ウェルに加えた。HTRF蛍光単位として読取られた相対的ホスホ基質形成を一連の化合物濃度で測定し、滴定曲線を作成した。
【0081】
以下に挙げる化合物は上記アッセイで1μM以下、典型的に500nM以下のIC50値を得た。
【0082】
より具体的には、実施例2、13、14および19は、500nMから1μMの範囲の値を得た。実施例1、7、9、14、16、17および18は、100から500nMの範囲の値を得た。実施例8および12は100nM未満の値を得た。
【0083】
中間体1
3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−アミン
【0084】
【化9】

【0085】
Parr容器で7−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール(2.77g,11.66mmol)を酢酸エチル(50ml)に溶解し、フラスコをNで掃気した。次にPd−C(1.241g,1.166mmol)を添加し、フラスコを排気し、Nで3回掃気した。フラスコを排気し、Hで3回掃気し、次いで3.5バールで2時間振盪した。次に反応混合物を触媒濾紙で濾過し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、混合物を濃縮しないで次段階に直接移行した。
【0086】
(実施例1)
4−フルオロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0087】
【化10】

【0088】
トリエチルアミン(0.882ml,6.33mmol)を、3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−アミン(2.11mmol)の酢酸エチル(10ml)溶液に添加した。次に4−フルオロベンゾイルクロリド(0.324ml,2.74mmol)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。水(10ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。集めた有機画分を水(10ml)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させた。混合物をMeOHと共に研和すると、淡紅色固体(386mg)が得られた。水相はまだ多少の淡紅色固体を含有していたので、これを濾過した。この固体を次にメタノールおよびエーテルと共に研和すると、淡黄色固体が得られた(95mg)。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.28(1H,s),8.21(1H,s),8.13(3H,dd,J=4.9,8.2Hz),7.34(2H,t,J=8.8Hz);m/z(ES)330(M+H)。
【0089】
(実施例2)
4−ヒドロキシ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0090】
【化11】

【0091】
4−ヒドロキシ安息香酸(291mg,2.11mmol)をピリジン(4ml)に溶解し、カルボニルジイミダゾール(342mg,2.11mmol)を添加した。2時間後、中間体1(2.11mmol)を酢酸エチル(5ml)溶液として添加し、反応混合物を16時間撹拌した。真空下で混合物を濃縮し、次いでシリカゲルにプレ吸着させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで20−50%のEtOAc/イソヘキサンで溶出させることによって残渣を精製すると、標題化合物が黄色固体として得られた。EtO、MeOH、ヘキサン混合物と共に研和すると、標題化合物が淡黄色固体として得られた(275mg,39%)。H NMRδ(ppm)(DMSO):10.92(1H,s),10.16(1H,s),8.17(1H,s),8.12(1H,s),7.96(2H,t,J=12.3Hz),6.83(2H,d,J=8.7Hz);m/z(ES)328(M+H)。
【0092】
(実施例3−6)
【0093】
【化12】

【0094】
実施例1または実施例2の手順に従い、適切なベンゾイルクロリドまたは安息香酸を使用して以下の化合物を製造した:
【0095】
【表2】

【0096】
(実施例7)
4−クロロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0097】
【化13】

【0098】
酢酸エチルの代わりにDMFを溶媒として使用し、4−フルオロベンゾイルクロリドの代わりに4−クロロベンゾイルクロリドを使用し、中間体1および実施例1の手順に従った。H NMRδ(ppm)(CDCl):9.29(1H,s),7.87(2H,d,J=8.5Hz),7.70(1H,s),7.47(2H,d,J=8.5Hz);m/z(ES)346(M+H)。
【0099】
(実施例8)
4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0100】
【化14】

【0101】
N−メチルピペラジン(0.202ml,1.822mmol)を、4−フルオロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド(実施例1)(100mg,0.304mmol)のNMP(2ml)溶液に添加した。反応混合物をマイクロ波によって225℃で1時間加熱した。真空下でNMP(2ml)を除去し、次いで褐色油をMeOHに入れ、SCXカートリッジに吸着させ、MeOHで洗浄し、生成物をMeOH中の2MのNHで溶出した。次に褐色油をAgilent Purification,High pH,Sunfireカラム,30−55%勾配で処理した。HPLC画分を真空下で濃縮し、次に残渣を酢酸エチルで抽出し、NaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。エーテルと共に研和すると、標題化合物が淡褐色固体として得られた(7.5mg,6%)。H NMRδ(ppm)(DMSO):10.86(1H,s),8.16(1H,s),8.11(1H,s),7.94(2H,d,J=8.5Hz),6.97(2H,d,J=8.5 Hz),2.50(4H,obs),2.45−2.41(4H,m),2.22(3H,s);m/z(ES)410(M+H)。
【0102】
(実施例9−11)
【0103】
【化15】

適切なアミンを使用し、実施例8の手順に従って以下の化合物を製造した:
【0104】
【表3】

【0105】
(実施例12)
4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0106】
【化16】

【0107】
4−ヒドロキシ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド(実施例2)(50mg,0.153mmol)をTHF(5ml)に溶解し、トリフェニルホスフィン(60.1mg,0.229mmol)および1−ピペリジンエタノール(0.030ml,0.229mmol)を添加した。ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.045ml,0.229mmol)を添加し、混合物を48時間撹拌し、真空下で濃縮し、残渣をMeOHに溶解し、SCXカートリッジに吸着させ、MeOHで洗浄し、次にMeOH中の2MのNHで溶出した。真空下で濃縮後、黄色固体をEtOと共に研和すると、標題化合物が無色固体として得られた(20mg,30%)。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.03(1H,s),8.18(1H,s),8.13(1H,s),8.03(2H,d,J=8.8Hz),7.03(2H,d,J=8.8Hz),4.15(2H,t,J=5.9Hz),2.67(2H,t,J=5.8Hz),2.43(4H,s),1.50(4H,s),1.38(2H,s);m/z(ES)439(M+H)。
【0108】
(実施例13)
3−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0109】
【化17】

【0110】
実施例2の代わりに実施例6を出発材料として使用し、実施例12の手順を使用した。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.21(1H,s),8.20(1H,s),8.14(1H,s),7.64(1H,s),7.61(1H,d,J=7.4Hz),7.39(1H,t,J=8.0Hz),7.13(1H,d,J=7.6Hz),4.15(2H,t,J=5.9Hz),2.68(2H,t,J=5.9 Hz),2.47−2.43(4H,m),1.54−1.48(4H,m),1.41−1.35(2H,m);m/z(ES)439(M+H)。
【0111】
(実施例14)
4−(ヒドロキシメチル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0112】
【化18】

【0113】
DCM中のDIBAL−H(1M,3.25ml,3.25mmol)を、−78℃のDCM(40ml)中のメチル4−({[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]アミノ}カルボニル)ベンゾエート(実施例5)(300mg,0.812mmol)の撹拌混合物に添加し、混合物を0℃に加温して1時間撹拌した。再度−78℃に冷却した後、MeOH(4ml)およびロシェル塩(20ml)の1.0M溶液を添加し、反応混合物を室温に昇温させ、1時間30分間撹拌した。得られた沈殿物を濾過によって単離すると、標題化合物が淡黄色固体として得られた(235mg,85%)。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.18(1H,s),8.20(1H,s),8.14(1H,s),8.01(2H,d,J=8.3Hz),7.43(2H,d,J=8.2Hz),5.32(1H,t,J=5.6Hz),4.58(2H,d,J=5.6Hz);m/z(ES)342(M+H)。
【0114】
(実施例15)
4−ホルミル−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0115】
【化19】

【0116】
Dess−Martinペリオジナン(298mg,0.703mmol)を、テトラヒドロフラン中の4−(ヒドロキシメチル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド(実施例14)(160mg,0.469mmol)の撹拌混合物に添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。1NのNaおよび飽和NaHCOの混合物(1:7)を添加し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。次に反応混合物を濾過すると、標題化合物が黄色固体として得られた(122mg,77%)。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.50(1H,s),10.11(1H,s),8.24−8.20(3H,m),8.16(1H,s),8.02(2H,d,J=8.0Hz);m/z(ES)340(M+H)。
【0117】
(実施例16)
4−(モルホリン−4−イルメチル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0118】
【化20】

【0119】
トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(94mg,0.442mmol)を、1,2−ジクロロエタン中の4−ホルミル−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド(実施例15)(30mg,0.088mmol)およびモルホリン(0.039ml,0.442mmol)の撹拌混合物に添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。18時間後、出発材料の黄色が消え、無色懸濁液が出現した。NaHCOおよびDCMを添加し、反応混合物を30分間撹拌した。層を分離し、水相をDCMで抽出した。集めた有機画分をNaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーでEtOAc/イソヘキサンで溶出させることによって残渣を精製すると、標題化合物が無色固体として得られた(17mg,47%)。
【0120】
(実施例17)
4−(ピペリジン−1−イルメチル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0121】
【化21】

【0122】
モルホリンの代わりにピペリジンを使用し、実施例16の手順を使用した。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.16(1H,s),8.19(1H,s),8.14(1H,s),8.00(2H,d,J=8.1Hz),7.41(2H,d,J=8.1Hz),3.49(2H,s),2.33(4H,s),1.51−1.49(4H,m),1.39(2H,s)。
【0123】
(実施例18)
4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ベンズアミド
【0124】
【化22】

【0125】
モルホリンの代わりにN−メチルピペラジンを使用し、実施例16の手順を使用した。H NMRδ(ppm)(DMSO):11.18(1H,s),8.20(1H,s),8.14(1H,s),8.01(2H,d,J=8.2Hz),7.41(2H,d,J=8.2Hz),3.52(2H,s),2.38(8H,s),2.15(3H,s)。
【0126】
(実施例19)
6−(4−メチルピペラジン−1−イル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミド
【0127】
【化23】

【0128】
段階1:6−クロロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミド
【0129】
【化24】

【0130】
トリエチルアミン(0.9mL,6.33mmol)を、3−(トリフルオロメチル)−イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−アミン(中間体1)(2.11mmol)の酢酸エチル溶液(12.5mL)に添加した。次に、6−クロロ−ニコチノイルクロリド(0.483g,2.74mmol)を添加し、反応混合物を室温で12時間撹拌した。次に沈殿物を濾別し、乾燥すると、6−クロロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミドが得られた。
【0131】
段階2:6−(4−メチルピペラジン−1−イル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミド
【0132】
【化25】

【0133】
1−メチルピペラジン(0.032mL,0.29mmol)を、室温のDMSO(1mL)中の6−クロロ−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミド(0.1g,0.29mmol)の溶液に、アルゴン流中で添加し、反応混合物を48時間撹拌した。次に60℃で24時間撹拌した。次に、HO、飽和NaHCO水溶液を添加し、沈殿物を濾別し、EtOで洗浄し、乾燥した。沈殿物をクロマトグラフィー(シリカゲル 63−100μm,4mL,CHCl−>CHCl:MeOH(85:15))によって精製すると、6−(4−メチルピペラジン−1−イル)−N−[3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−7−イル]ニコチンアミドが得られた。H NMR(400MHz,DMSO−d):10.96(1H s);8.78(1H,d,J=2.4Hz);8.10−8.18(3H,m);6.88(1H,d,J=9.0Hz);3.60−3.68(4H,m);2.39−2.45(4H,m);2.24(3H,s)。LC−MS APCI:m/z411.0[M+H]
【0134】
(実施例20−26)
同様の手順を使用して以下の化合物も製造した:
【0135】
【化26】

【0136】
【表4】

【0137】
(実施例27)
7−{[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキサミド
【0138】
【化27】

【0139】
段階1:エチル 2−ブロモ−4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタノエート
20mLのCCl中の10g(8mL,54.35mmol)のエチル 4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタノエートの溶液に、1時間以上を要して30mLのCCl中の8.69g(2.8mL,54.35mmol)のBr溶液を添加した。反応混合物を室温で16時間以上撹拌し、真空下で蒸発させると粗生成物が得られた(〜8%の不純物)。収率:73%。
【0140】
段階2:エチル 7−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレート
2.00g(13.80mmol)の4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−チオールを50mLのDMFに溶解した。トリ−n−ブチルホスフィン(7.60g,0.55mmol)および3.63mg(13.80mmol)のエチル 2−ブロモ−4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタノエートを添加した。反応混合物を26時間以上撹拌し、蒸発させた。残渣をキシレンと共蒸発させた。POCl(100mL)を添加し、混合物を100から110℃で一夜撹拌した。生成物をクロマトグラフィー(クロロホルム−エタノール,60:1)によって精製した。422mg(10%)。
【0141】
段階3:エチル 7−アミノ−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレート
422mg(1.36mmol)のエチル 7−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレートを10mLの酢酸エチルに溶解させた。次に0.5gのHOで湿らせた500mgの10% Pd/Cを添加した。反応混合物を50psiの水素雰囲気中で5時間以上撹拌し、セライトで濾過した。変換率は90%であると考えられた。粗生成物は不安定なので溶液のまま次段階に移行した。
【0142】
段階4:エチル 7−{[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレート
50mLの酢酸エチル中の1.36mmolのエチル 7−アミノ−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレートの溶液に、0.76mL(5.44mmol)のトリエチルアミンおよび1.768mmolの4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイルクロリドを添加した。反応混合物を90時間以上撹拌し濃縮した。残渣を水に懸濁させ、濾別した。フィルター上の残渣を水、次いでエーテルで洗浄した。収率:420mg(64%)。
【0143】
段階5:7−{[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボン酸
5mLのTHFT中の419mg(0.871mmol)のエチル 7−{[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボキシレートの溶液に、13.0mL(1.30mmol)の0.1MのLiOH水溶液を添加した。反応混合物を12時間以上撹拌し、酢酸でpH7に中和した。形成された沈殿物を濾別し、水、次いでエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率:281mg(71%)。
【0144】
段階6:アミドカップリング
34mg(75umol)の7−{[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ベンゾイル]アミノ}−3−(トリフルオロメチル)イミダゾ[5,1−b][1,3]チアゾール−2−カルボン酸を2mLのDMFに溶解させた。DIPEA(1.87g,65μL,375μmol)を添加し、混合物を5分間以上撹拌した。次にBOP(43mg,97.5μmol)を添加した。5分後、0.5Mのアンモニアを含有するジオキサン(1.50mL,750μmol)を添加した。10時間後、混合物を蒸発させた。残渣を20%炭酸カリウム次いで水に懸濁させた。形成された沈殿物を濾別し、フィルター上で水、エーテル次いでジクロロメタンで洗浄した。収率:13.8mg。生成物を分取HPLCによって精製した。H NMR(400MHz,DMSO−d):2.25(3H,s),2.40−2.50(4H,m),3.27−3.37(4H,m),6.96(2H,d,J=8.55Hz),7.95(2H,d,J=7.35Hz),8.01−8.09(1H,m),8.08−8.13(1H,m),8.22−8.26(1H,m),10.68(1H,br s)。LC−MS APCI:m/z453.5[M+H]
【0145】
以下の実施例は、最終段階で適切なアミンを使用し実施例27に記載の手順と同様の手順で製造した。
【0146】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化28】

[式中、
は、HまたはC1−4アルキルを表し、
は、H、ハロゲン、C1−4アルキルまたはCON(Rを表し、
のおのおのは独立に、Hまたは3個以下のフッ素原子で場合により置換されたC1−4アルキルを表し、
Arは、フェニル、ナフチル、または、環原子数10以下のヘテロアリールを表し、場合によりハロゲンまたはC1−4アルキルで置換されており、
Lは、結合または(X)−(CH−(Y)によって表される連結基を表し、
mおよびpはおのおの独立に0または1であり、
nは0、1、2または3であるが、mおよびpのおのおのが1を表すときは0でなく、
XおよびYは独立に0またはNRを表し、
Zは、H、ハロゲン、CF、CN、COR、CO、CON(R、C3−6シクロアルキル、フェニル、ナフチル、または、環原子数10以下のヘテロシクリルを表し、これらのシクロアルキル、フェニル、ナフチルまたはヘテロシクリルは場合により、ハロゲン、C1−4アルキル、CF、OHおよびC1−4アルコキシから選択された2個以下の置換基を有しており、
ただし、ZがハロゲンまたはCNを表すとき、Lは(X)−(CHを表し、ここにqは1、2または3であり、
は、HもしくはC1−4アルキルを表すか、または、同一窒素原子に結合した2つのR基が、ハロゲン、C1−4アルキル、CF、OHおよびC1−4アルコキシから選択された2個以下の置換基を場合により含む環原子数10以下のN−ヘテロシクリル基を完成してもよい]の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項2】
Arがフェニルまたは6員環のヘテロアリールを表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが5員環のヘテロアリールを表す請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Lが、結合、O、NH、CH、OCHCHおよびNHCHCHから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
ZがH、ハロゲン、CN、COR、CO、または、場合により置換されたフェニルもしくはヘテロシクリルを表す請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
L−Z部分が、H、CN、メトキシ、Cl、F、CHO、COMe、OH、フェノキシ、ピペラジン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イル、2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ、モルホリン−4−イル、ヒドロキシメチル、(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル、(ピペリジン−1−イル)メチル、(モルホリン−4−イル)メチルおよびN−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミノメチルから成るグループ選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式II:
【化29】

[式中、AおよびAのおのおのはCHまたはNを表すが、双方がNを表すことはなく、LおよびZは請求項1の定義通りである]
で示される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項8】
がCHである請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項10】
ヒト患者のタウの高リン酸化を低減または防止するために使用される請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物を有効量で患者に投与する段階を含む、ヒト患者のタウの高リン酸化に関連する神経変性疾患の治療または予防方法。

【公表番号】特表2009−544683(P2009−544683A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521348(P2009−521348)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050426
【国際公開番号】WO2008/012571
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】