説明

MD方向に分子の配向が制御された合成樹脂フィルムの製造方法

本発明の課題は、フィルムの配向が全幅にわたってMD配向した合成樹脂フィルムを安定的に連続生産する製造方法を提供することである。本発明は、(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、および(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程、を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、(B)工程で得られるフィルムの厚みbと、(C)工程で得られるフィルムの厚みcの関係が、b>cとなっていることを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、MD方向(機械的送り方向)に分子の配向が制御された合成樹脂フィルムを、連続成形により製造する方法に関する。
【背景技術】
例えば、エレクトロニクスの技術分野においては、益々高密度実装の要求が高くなっており、それに伴いフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという)を用いる技術分野においても、高密度実装の要求が高くなってきている。FPCの製造工程は、ベースフィルムに金属を積層する工程、金属表面に配線を形成する工程に大別される。寸法変化が生じる工程は、金属をパターニングする際のエッチング工程前後、また、FPCの状態で加熱される工程の前後であり、この工程の前後においてFPCの寸法変化が小さいことが要求されている。この要求に応えるには、MD方向に分子の配向が制御された合成樹脂フィルム、すなわち、フィルムの分子配向を機械的送り方向(MD方向)に配向させ、MD方向と垂直な方向(幅方向、TD方向)の物性に差をもたせたフィルムが有用であると本発明者らは考える。より具体的には、MD方向に分子の配向が制御された合成樹脂フィルムをベースフィルムとし、金属を積層する際に、ベースフィルムを加熱しながら金属箔を積層する工程に用いることが寸法変化(パターニング前後、FPC加熱前後)を小さくすることに有用と考える。
MD方向に分子の配向が制御されていると、フィルム流れ方向(MD方向)の弾性率が高くなり張力の影響が少なくなる為、上記工程の前後での寸法変化を小さくすることが可能だからである。
さらには、MD方向に分子の配向が制御されたフィルムは、MD方向に弾性率が高くなりフィルム厚みが薄い(例えば12.5um以下)場合、ロールツーロールでの加工の際、取り扱い性が向上し、製品の外観上の収率が向上する。
このように、全幅においてMD方向に分子の配向が制御されたフィルムは、特にエレクトロニクス分野の、FPC、COF、TABに有用であると考えられるが、現在のところ、このようなフィルムは得られていない。
例えば特許文献1には、フィルム製造時にMD方向に1.0〜1.5倍に延伸し、TD方向に0.5〜0.99倍に延伸する方法が提案されている。しかし、ここに記載されている製造方法は、自己支持性ポリアミド酸膜の端部を固定して、熱処理を施しながら、MD方向およびTD方向に延伸し、その後自己支持性ポリアミド酸膜を徐々に加熱することによりイミド化させるという方法であり、本願発明の方法とは異なる上、自己支持性ポリアミド酸膜の延伸では、延伸後のフィルムの特性は不均一となる場合がある。また、具体的に開示されている方法も、バッチ処理での製造であり、工業的な連続生産において、フィルムの全幅にわたって分子の配向が制御されたフィルムを得ることについては開示されていない。
特許文献2には、焼成後のポリイミドフィルムをMD方向にアニール処理しながら延伸する方法が提案されているが、充分にイミド化された結果残存溶媒がなくなった状態である焼成後のポリイミドフィルムを延伸した場合、安定的にMD/TD方向の特性バランス保つことが困難なことが多い。また焼成後のフィルムの場合、仮に延伸できても、延伸後のフィルムはトタン板状にシワが入ることが多く実用上問題となる。
特許文献3には、ポリイミドフィルムに250℃以上、10kg/mm以上の張力を付与してゾーン延伸することを特徴とするMD方向に配向制御したポリイミドフィルムの製造方法が提案されているが、該提案にて得られるフィルムは張力が高すぎゾーン延伸後のフィルムはTD方向にトタン板のようなしわが発生し、実質的にベースフィルムとして使用できない。
【特許文献1】 特開平11−156936 0021
【特許文献2】 特開平8−174659 0017
【特許文献3】 特開昭63−197628 2頁右上段15行目
【発明の開示】
従来の技術では、フィルムが全幅にわたってMD方向に配向した合成樹脂フィルムを安定的に連続生産する製造方法は発見されていなかった。
本発明は、1)少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、(B)工程で得られるフィルムの厚みbと、(C)工程で得られるフィルムの厚みcの関係が
b>c
となっていることを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法である。
また本発明は、2)(C)工程の加熱は、フィルムのMD方向に
0.10kg/mm〜1.50kg/mmの張力をかけながら行う1)記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、3)上記(B)工程の加熱工程の最高雰囲気温度が450℃以下である1)又は2)に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、4)上記(B)工程の加熱工程が熱風処理であることを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、5)上記(B)工程の加熱工程が輻射熱線処理であることを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、6)上記(B)工程の加熱工程が熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、7)上記(C)工程の加熱工程の雰囲気温度が430℃以上である1)〜6)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、8)上記(C)工程の加熱工程が熱風処理であることを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、9)上記(C)工程の加熱工程が輻射熱線処理であることを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、10)上記(C)工程の加熱工程が熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、11)上記(C)工程の加熱工程において、熱風処理と輻射熱線処理を同時に行うことを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、12)上記合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする1)〜11)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、13)少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、(B)工程の加熱温度が(C)工程の温度よりも高いことを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、14)上記(B)工程の加熱工程の最高雰囲気温度が450℃以下である13)に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、15)上記(C)工程の加熱工程の雰囲気温度が
430℃以上である13)または14)に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
また本発明は、合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする13)〜15)のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法でもある。
本発明により、フィルムの配向が全幅にわたってMD方向に配向が制御された合成樹脂フィルムを連続的に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1、図2は、端部固定フィルムを、両端固定をしない状態で、張力をかけながら加熱する方法の例である。
図3、図4は、熱風炉の例である。
図5、図6は、輻射熱線ヒーター炉の例である。
図7、図8は、熱風と輻射熱線を同時にフィルムに当てる炉の例である。
図9は、分子配向角θの定義の説明図である。
図10は、分子配向角を測定する位置を示す図である。
図11は、端部固定フィルムに熱・張力を加える実験の具体的な図である。
なお図1中、0101は熱風を、0102はフィルムの進行方向を、
0103はフィルム面を表す。
図2中、0201はジェットノズルを、0202は熱風を、0203はフィルム進行方向を、0204はフィルム面を表す。
図3中、0301は輻射熱線ヒーターを、0302はフィルムの進行方向を、0303はフィルム面を表す。
図4中、0401および0402は輻射熱線ヒーターを、0403はフィルム進行方向を、0404はフィルム面を表す。
図5中、0501は熱風を、0502は輻射熱線ヒーターを、0503はフィルム進行方向を、0504はフィルム面を表す。
図6中、0601はジェットノズルを、0602は輻射熱線ヒーターを、0603は熱風を、0604はフィルム進行方向を、0605はフィルム面を表す。
図7中、0701はダイを、0702はベルトを、0703は、ベルトから剥がしたゲルフィルムの両端を固定する装置を、0704は熱風炉を、0705は輻射熱線ヒーター炉を、0706は、フィルムの両端固定を外す装置を、0707は(B)工程後のフィルム巻取り装置を、0708は(B)工程後のフィルム繰出し装置を、0709は熱風炉を、0710は輻射熱線ヒーター炉を、0711は(C)工程後のフィルム巻取り装置をそれぞれ表す。
図8中、0801はダイを、0802はベルトを、0803は、ベルトから剥がしたゲルフィルムの両端を固定する装置を、0804は熱風炉を、0805は輻射熱線ヒーター炉を、0806は、フィルムの両端固定を外す装置を、0807は熱風炉を、0808は輻射熱線ヒーター炉を、0809は(C)工程後のフィルム巻取り装置をそれぞれ表す。
図9中、0901および0902は配向軸を、0903は、ポリアミド酸を支持体に流伸した際の進行方向(MD方向)を表す。
図10中、1001はMD方向(フィルム搬送方向)を、1002はTD方向(フィルム幅方向)を表す。
図11中、1101はフィルム繰出し部を、1102は、熱風・遠赤外線ヒーター炉を、1103はフィルム巻取り部を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、1)少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
を含む合成樹脂フィルムの製造方法である。
(A)工程
(A)工程では、高分子と有機溶媒を含む組成物を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延塗布後、乾燥させ、フィルムとしての自己支持性を有するゲルフィルムを形成する。高分子の例としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエステルアミド、ビニルポリマー、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォンなどが上げられる。また、最終的に得られる高分子の前駆体であってもよく、そのような例として、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が挙げられる。
本発明におけるゲルフィルムとは、高分子と有機溶剤を含有した有機溶剤溶液を加熱・乾燥させて一部の有機溶剤もしくは反応生成物(これらを残存成分と称する)が高分子フィルム中に残存している高分子樹脂フィルムを意味する。ポリイミドフィルムの製造工程においては、ポリアミド酸溶液を溶解している有機溶剤、イミド化触媒、脱水剤、反応生成物(脱水剤の吸水成分、水など)がゲルフィルム中の残存成分として残る。
ゲルフィルム中の残存成分の割合である残存成分割合c(%)は、該ゲルフィルム中に存在する合成樹脂等の完全乾燥重量である完全乾燥合成樹脂重量a(g)、および上記残存成分の重量である残存成分重量b(g)に基づいて下記の算出式(式1)により算出される。該残存成分割合cは、500%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以上300%以下、特に好ましくは20%以上100%以下である。
c=b/a×100・・・(式1)
cが500%以上の場合には、面内における残存成分重量のバラツキが相対的に大きくなり、得られるフィルムの特性を均一に制御することが困難な場合がある。
完全乾燥合成樹脂重量aと残存成分重量bの求め方は以下の通りである。まず100mm×100mmのゲルフィルムの重量dを測定する。それから該ゲルフィルムを450℃のオーブン中で20分乾燥した後、室温まで冷却してから、フィルムの重量を測定して完全乾燥合成樹脂重量aを求める。残存成分重量bは、ゲルフィルム重量dと完全乾燥合成樹脂重量aから、b=d−aという式より算出される。
ゲルフィルムを製造する工程において、支持体上で加熱・乾燥させる際の温度・風速・排気速度は残存成分割合が上記範囲内になるように決定することが好ましい。例えば、好ましい支持体上での乾燥温度は、200℃以下であり、好ましい乾燥時間は20秒〜30分である。
(B)工程
(B)工程は、(A)工程で得られたゲルフィルムを引き剥がし、ピン、クリップなどで両端を固定しながら加熱する工程である。
(B)工程での加熱温度は、最高雰囲気温度が450℃以下であることが、全幅にわたって分子の配向が制御されたフィルムが得られるという点から好ましい。さらに好ましくは、400℃以下である。雰囲気温度とは、輻射熱線処理の場合は、輻射熱線ヒーター炉内で走行するフィルム近傍の温度である。また、熱風処理の場合は、循環する熱風の温度のことを言う。
(B)工程の加熱工程は、熱風処理または輻射熱線処理であることがフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。また、熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることも、フィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。(B)工程の加熱処理が熱風処理である場合には、450℃以下の熱風処理、更には400℃以下の熱風処理であることが好ましく、輻射熱線処理である場合には、430℃以下の輻射熱線処理であることが好ましく、さらには400℃以下の輻射熱線処理であることが好ましい。
上記熱風処理において、フィルムに熱風を当てる方法として熱風炉を用いる場合、どのような熱風炉を用いてもよいが、例えば図1や図2に示すような熱風炉が考えられる。また、上記輻射熱線処理において、フィルムに輻射熱線を当てる方法として、種々の方法が考えられるが、例えば輻射熱線ヒーター炉を用いる場合、どのような輻射熱線ヒーター炉を用いてもよいが、例えば図3や図4に示すような輻射熱線ヒーター炉が考えられる。なお、ここでいう輻射熱線とは、どのようなものを用いてもよいが、例えば赤外線、遠赤外線等が挙げられる。また、熱風や輻射熱線をフィルムに当てる方法として図1〜図4に挙げるような熱風炉や輻射熱線ヒーター炉を単独で、もしくは組み合わせて用いる他に、図5や図6に示すような炉を用いて、熱風と輻射熱線を同時にフィルムに当てることも考えられる。
(B)工程での加熱温度は、後述する(C)工程における加熱温度と同じもしくは、より低いことが、MD方向に配向したフィルムが得られる点から好ましい。
(C)工程
(C)工程は、(B)工程後に、両端を固定しているピン、クリップなどからフィルムを剥がすなどして、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程である。
(C)工程における張力は、フィルムのMD方向に0.10kg/mm〜1.50kg/mmであることが好ましい。0.10kg/mm以下の張力であると、フィルムの配向がMD方向に制御されない場合があり、1.5kg/mm以上であると、フィルムの平坦性が失われる場合がある。好ましくは0.20kg/mm〜1.0kg/mm、さらに好ましくは0.20kg/mm〜0.80kg/mmである。
(C)工程における加熱温度は、最高雰囲気温度が430℃以上であることが好ましく、更に好ましくは450℃以上である。最高雰囲気温度が430℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られず、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない場合がある。
(C)工程での加熱処理は、熱風処理または輻射熱線処理であることが、フィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。また、熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることも、フィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。
(C)工程の加熱処理が熱風処理である場合には、430℃以上の熱風処理、さらには450℃〜570℃での熱風処理であることが好ましく、特には470℃〜560℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が430℃より低いと、本発明のMD配向効果が十分に得られないことがあり、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。輻射熱線処理である場合には、400℃以上の輻射熱線処理であることが好ましく、さらには430℃〜570℃であることが好ましく、特には450℃〜560℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が400℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られないことがあり、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。
また、(C)工程においては、熱風処理と輻射熱線処理を同時に行うこともフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましく、この場合400℃以上、さらに好ましくは430℃〜570℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が400℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られないことがあり、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。
(C)工程の熱風処理における熱風炉、輻射熱線処理における輻射熱線ヒーター炉は、(B)工程に例示したものを使用することができる。
なお、フィルム端部の固定を解除した後、図7に示すように一旦(B)工程後のフィルムを巻取ってから、(C)工程に供してもよい〔例えばロール・トゥー・ロールで張力制御可能なフィルム搬送装置を有する熱風炉や輻射熱線ヒーター炉などの加熱炉に、(B)工程後、巻き取った(B)工程後のフィルムを通し、(C)工程を行う等〕。また(B)工程後、図8に示すように端をピン等で固定しない状態で、引き続き熱風炉や輻射熱線ヒーター炉などの加熱炉に通す等の方法により、(C)工程を行ってもよい。
(C)工程での加熱温度は、(B)工程における加熱温度と同じもしくは、より高いことが、MD方向に配向したフィルムが得られる点から好ましい。
また、本発明者らは、MD方向に配向したフィルムを得るためには、(B)工程および(C)工程の加熱条件を制御すればよいことを見出した。本発明において(B)工程で得られるフィルムは、特許文献2に記載される方法の、完全にイミド化され残存溶媒がない状態である焼成後のポリイミドフィルムとは異なり、完全にイミド化され残存溶媒がない焼成後ポリイミドフィルムになる手前の状態にあるものである。従って、イミド化率や残存成分割合などで一概に表現することが難しい。そこで、本発明者らは、完全にイミド化され残存溶媒がない焼成後ポリイミドフィルムの手前の状態を、フィルムの厚みで表すことができることを見出し、(B)工程で得られるフィルムの厚みbと、(C)工程で得られるフィルムの厚みcの関係が
b>c
となるように、各工程の焼成条件(温度・張力・滞留時間)を設定すればよいことを見出した。
尚、厚みの測定は、(B)、(C)工程それぞれで、TD方向に等間隔に10点厚みを測定し、(B)工程での厚みの平均値をb、(C)工程での厚みの平均値をcと定義する。
合成樹脂フィルムの製造例
具体的にポリイミドフィルムの製造について説明する。まず、(A)工程で用いられる、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の製法方法について説明する。ポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができる。ポリアミド酸は、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミン化合物の少なくとも1種を、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られた有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記芳香族酸二無水物とジアミン化合物の重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらの有機溶媒溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、特に好ましい重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)ジアミン化合物を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量のジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物が実質的に等モルとなるようにジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量のジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここにジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。
ジアミン化合物としては、特に限定はされないが、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、3,3’−オキシジアニリン(3,3’−ジアミノジフェニルエーテル)、3,4’−オキシジアニリン(3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン)、1,2−ジアミノベンゼン(オルトフェニレンジアミン)及びそれらの類似物などの芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられ、これらを単独または、任意の割合の混合物を用いることができる。中でも特に、ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、および/または4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを好適に用いることができる。上記ジアミン化合物を用いることで得られるポリイミドフィルムが剛直になり、配向を制御しやすいことから好ましい。
また、芳香族酸二無水物成分としては、特に限定はされないが、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、
エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。芳香族酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を単独または、任意の割合の混合物として用いることができる。特に分子配向軸を制御する上では酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一種を含むことが得られるポリイミドフィルムが剛直な構造をもつことになり、配向を制御しやすくなるという点から好ましい。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
これらポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については従来公知の方法を用いることができる。この方法には熱イミド化法と化学イミド化法が挙げられる。熱イミド化法は、脱水剤及びイミド化触媒を作用させることなく、加熱によってのみイミド化を促進させる方法である。加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る。化学イミド化法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、脱水剤及びイミド化触媒とを作用させる方法である。脱水剤としては、例えば無水酢酸などの脂肪族酸無水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物などが挙げられる。イミド化触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが挙げられる。これらの中で、特に脱水剤としては無水酢酸、イミド化触媒としてイソキノリンを用いるのが好ましい。ポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して無水酢酸はモル比で1.0〜4.0、好ましくは1.2〜3.5、更に好ましくは1.5〜2.5加えるのがよく、イソキノリンはポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対してモル比で0.1〜2.0、好ましくは0.2〜1.5、更に好ましくは0.3〜1.2、特に好ましくは0.3〜1.1の割合で加えると良好なポリイミドフィルムが得られる。具体的な例としては、ポリアミド酸・脱水剤・イミド化触媒混合後、短時間でイミド化することでダイス内での流動性が悪くなったり、テンター炉内にて搬送中にフィルムが破断したりすることがある。
上述のようにして得られたポリアミド酸溶液を含む組成物を、もしくはポリアミド酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒の混合物を添加した組成物を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延塗布後、乾燥させ、フィルムとしての自己支持性を有するゲルフィルムを形成する。支持体上での乾燥は、200℃以下、20秒〜30分が好ましい。
次に、支持体からフィルムを引き剥がし、前述のように、引き続きピン等で両端を固定した後このフィルムを搬送しながら、加熱する。さらに両端の固定を外した状態で、上述のように加熱することにより最終的なMD配向フィルムを得る。以上の製造方法によれば、MD方向に分子配向が制御されたフィルムが得られる。MD方向に分子の配向が制御されていることは、分子配向角を測定すれば判定できる。分子配向角が−30°〜30°、好ましくは−20°〜20°、さらに好ましくは−15°〜15°であると、FPCのベースフィルムとしてエッチング後の寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
また、本発明はこれらの実施の形態のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例におけるフィルムの分子配向角の評価は次のようにして行った。なお、実施例及び比較例のフィルムの製造条件を表1にまとめた。
(フィルムの分子配向角)
4cm×4cmのサンプルを切り出し、王子計測社製マイクロ波分子配向計MOA2012A型を用い測定を行った。
ここで、分子配向角θの定義は以下のとおりである。
MOA2012型を用いて、フィルム面内での分子の配向方向(ε´の最大方位、ここで、ε´は、試料の誘電率である。)を角度の値として知ることができる。本発明においては、配向方向を示した直線を、その試料の「配向軸」とする。
図9に示すように、フィルム中央部の長手方向(MD方向)にx軸をとり、ポリアミド酸を支持体上に流延させた際の進行方向を正の方向とする。このとき、x軸の正の方向と、前述の測定で得られた配向軸のなす角度を配向軸角度θとし、配向軸が第一象限及び第三象限にあるときの配向軸角度を正(0°<θ≦90°)、配向軸が第二象限及び第四象限にあるときの配向軸角度を負(−90°≦θ<0°)と定義する。
以下に、(B)工程後のフィルム(以下端部固定フィルムともいう)と、(C)工程後のフィルム(端部フリーフィルムともいう)の作成例を示す。
(厚み測定)
厚みの測定は、TD方向に等間隔に10点厚みを測定しその厚みの平均値をフィルム厚みとする。尚、測定にはHEIDENHAIN社製(ドイツ製)MT12を用いて測定を行った。
(端部固定フィルムの製造例その1)
ピロメリット酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/0.75/0.25の比率で、N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。具体的には、全ジアミン成分に対して75モル%の4,4’−オキシジアニリンをN,N’−ジメチルアセトアミド溶媒に溶かし、次にピロメリット酸二無水物を全量投入する(すなわち、すでに投入されているジアミン成分に対して133%の酸無水物を投入する)ことで、酸末端プレポリマーを得る。次いでこの酸末端プレポリマー溶液に、残りのジアミン成分(すなわちパラフェニレンジアミン)を、全酸成分と実質的に等モルになるように、不足分のジアミンを添加し、反応させて重合溶液を得た。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.0モルの無水酢酸及び0.5モルのイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、乾燥・焼成後に25μmになるようにエンドレスベルト上に流延・塗布した。エンドレスベルト上で、85℃で約4分間加熱し、揮発成分重量が50重量%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムを引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定した状態で図4に示すような熱風炉に搬送し、300℃で30秒加熱した後、引き続き340℃、370℃の熱風炉に搬送して30秒ずつ加熱を行った。その後、輻射熱線として遠赤外線を用い、図5に示すような遠赤外線ヒーター炉を用いて、350℃で30秒間加熱を行い、遠赤外線ヒーター炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1m幅の25μm端部固定フィルム(長尺品)を得た。
(端部固定フィルムの製造例その2)
ピロメリット酸ニ無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比0.50/0.50/0.50/0.50の比率で、N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。具体的には、全ジアミン成分に対して50モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び、全ジアミン成分に対して50モル%のパラフェニレンジアミンをN,N’−ジメチルアセトアミド溶媒に溶かし、次に全酸二水物成分に対して50モル%の
p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を投入し、アミン末端プレポリマーを得る。次いでこのアミン末端プレポリマー溶液に、残りの酸二水物成分(すなわちピロメリット酸二無水物)を、全酸成分と実質的に等モルになるように、不足分の酸二水物成分を添加し、反応させて重合溶液を得た。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.1モルの無水酢酸及び1.1モルのイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、乾燥・焼成後に25μmになるようにエンドレスベルト上に流延・塗布した。エンドレスベルト上で、85℃で約4分間加熱し、揮発成分重量が50重量%であるゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したゲルフィルムを引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定した状態で図4に示すような熱風炉に搬送し、350℃で60秒加熱した後、引き続き400℃、450℃の熱風炉に搬送して30秒ずつ加熱を行った後、図5に示すような遠赤外線ヒーター炉を用いて、410℃で30秒間加熱を行い、遠赤外線ヒーター炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1m幅の18μm端部固定フィルム(長尺品)を得た。
(端部固定フィルムの製造例その3)
熱風炉までは端部固定フィルムの製造例その2の如く作製したフィルムを、さらに、図5に示すような遠赤外線ヒーター炉を用いて、520℃で30秒間加熱を行い、遠赤外線ヒーター炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1m幅の18μm端部固定フィルム(長尺品)を得た。
(実施例1)
上記、「端部固定フィルムの製造例その1」に従って作製した端部固定フィルムを、図1に示すような熱風ヒーター炉を用いて、図11に示すようにロール・トゥー・ロールで張力を制御しながら、フィルムの搬送、巻き取りを行い、端部フリーフィルムを得た。このときの条件は炉内滞留時間30秒、炉内温度470℃、張力0.51kg/mmとした。
フィルムの分子配向角は、図10の如く、両端2箇所を含めた幅方向に等間隔にそれぞれ4cm×4cmの大きさで7点サンプリングし、分子配向角を測定した。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例2)
図4に示すような、500℃の遠赤外線ヒーター炉へのフィルムの搬送、巻き取りを行った他は実施例1と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例3)
張力を0.24kg/mmに変更した以外は実施例2と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例4)
「端部固定フィルムの製造例その1」に従って作製した端部固定フィルムを、図8に示すような熱風・遠赤外線ヒーター炉を用いて、図11に示すようにロール・トゥー・ロールで張力を制御しながら、フィルムの搬送、巻き取りを行い、端部フリーフィルムを得た。このときの条件は炉内滞留時間45秒、炉内温度460℃、張力0.32kg/mmとした。後は実施例1と同様にしてフィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例5)
張力を0.51kg/mmとした他は実施例4と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例6)
炉内温度を510℃にした他は実施例4と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例7)
炉内温度を510℃にした他は実施例5と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。
以上の結果を表2に示す。
(実施例8)
張力を0.74kg/mmとした他は実施例6と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例9)
「端部固定フィルム製造例その2」に従って作製した端部固定フィルムを、図4に示すような熱風炉を用いて、図11に示すようにロール・トゥー・ロールで張力を制御しながら、フィルムの搬送、巻き取りを行い、端部フリーフィルムを得た。このときの条件は炉内滞留時間30秒、炉内温度470℃、張力0.71kg/mmとした。後は実施例1と同様にしてフィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例10)
「端部固定フィルムの製造例その2」に従って作製した端部固定フィルムを、図6に示すような遠赤外線ヒーター炉を用いて、図11に示すようにロール・トゥー・ロールで張力を制御しながら、フィルムの搬送、巻き取りを行い、端部フリーフィルムを得た。このときの条件は炉内滞留時間30秒、炉内温度500℃、張力0.34kg/mmとした。後は実施例1と同様にしてフィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例11)
図6に示すような430℃の遠赤外線ヒーター炉に入れた他は実施例2と同様にして、フィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(実施例12)
「端部固定フィルム製造例その1」に従って作製した長尺低温焼成フィルムを、次に、図8に示すような熱風・遠赤外線ヒーター炉を用いて、図11に示すようにロール・トゥー・ロールで張力を制御しながらフィルムの搬送、巻き取りを行い、端部フリーフィルムを得た。このときの条件は炉内滞留時間45秒、炉内温度470℃、張力0.10kg/mmとした。後は実施例1と同様にしてフィルムの分子配向角を調べた。更に、フィルムの処理前後における厚み変化を測定した。以上の結果を表2に示す。
(比較例1)
上記、「端部固定フィルムの製造例その1」に従って製造した端部固定フィルムを、図10に示すように両端2箇所を含めた幅方向に等間隔にそれぞれ4cm×4cmの大きさで7点サンプリングし、上記記載の通りに分子配向角を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2)
上記、「端部固定フィルムの製造例その2」に従って作製した端部固定フィルムを、図10に示すように両端2箇所を含めた幅方向に等間隔にそれぞれ4cm×4cmの大きさで7点サンプリングし、上記記載の通りに分子配向角を測定した。結果を表2に示す。
(比較例3)
上記、「端部固定フィルムの製造例その3」に従って作製した端部固定フィルムを、図10に示すように両端2箇所を含めた幅方向に等間隔にそれぞれ4cm×4cmの大きさで7点サンプリングし、上記記載の通りに分子配向角を測定した。結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、(B)工程で得られるフィルムの厚みbと、(C)工程で得られるフィルムの厚みcの関係が
b>c
となっていることを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
(C)工程の加熱は、フィルムのMD方向に0.10kg/mm〜1.50kg/mmの張力をかけながら行う請求の範囲第1項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
上記(B)工程の加熱工程の最高雰囲気温度が450℃以下である請求の範囲第1項又は第2項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
上記(B)工程の加熱工程が熱風処理である請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
上記(B)工程の加熱工程が輻射熱線処理である請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
上記(B)工程の加熱工程が熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
上記(C)工程の加熱工程の雰囲気温度が430℃以上である請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
上記(C)工程の加熱工程が熱風処理であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
上記(C)工程の加熱工程が輻射熱線処理であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
上記(C)工程の加熱工程が熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
上記(C)工程の加熱工程において、熱風処理と輻射熱線処理を同時に行うことを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
上記合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムである請求の範囲第1項〜第11項のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
を含む合成樹脂フィルムの製造方法であって、(B)工程の加熱温度が(C)工程の温度よりも高いことを特徴とする合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項14】
上記(B)工程の加熱工程の最高雰囲気温度が450℃以下である請求の範囲第13項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項15】
上記(C)工程の加熱工程の雰囲気温度が430℃以上である請求の範囲第13項または14項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。
【請求項16】
合成樹脂フィルムがポリイミドフィルムである請求の範囲第13〜15のいずれか一項に記載の合成樹脂フィルムの製造方法。

【国際公開番号】WO2005/082595
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510396(P2006−510396)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002200
【国際出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】