MDCK細胞懸濁培養物において薬物または診断剤の活性成分を生成する方法

【課題】本発明は、薬物または診断剤の活性成分を生成する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の方法では、(a)MDCK細胞を、ウイルスに感染させ;そして(b)該ウイルスの増殖を可能にする条件下で、商業的規模の懸濁培養物中において、該MDCK細胞を培養し;ここで培養工程は、少なくとも30Lの容量で行われる。本発明はまた、薬物または診断剤を生成するための方法に関し、ここで活性成分は、上記の方法に従って生成され、そして適切なアジュバント、補助剤、緩衝剤、希釈剤または薬物キャリアと混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物または診断剤の活性成分を生成するための方法に関し、この方法において、ウイルスは、懸濁培養物中において商業的規模でMDCK細胞中で増殖される。
【背景技術】
【0002】
感染症、特にウイルス感染は、依然として医学的に大きな重要度を有する。従って、ウイルスに関する研究およびワクチンの生成を可能にするために、培養物中においてウイルスを増殖し得るより優れた方法を利用可能なものとする必要性が、依然として変わらず存在する。特に、ウイルス感染に対するワクチンの生成は、従来、多量の対応するウイルスの増殖および単離を必要とする。
【0003】
この対応するウイルスに依存して、ウイルスの増殖のための種々の宿主系および培養条件が、先行技術において使用されている。標準的な宿主動物、胚性鶏卵、初代組織細胞培養物または確立された永続的細胞株が、宿主系として使用される(RolleおよびMayr(編者)、Microbiology,Infection and Epidemic Science,1978;Mahy(編者)、Virology,A Practical Approach,1985;Horzinek(編者)、Compendium of General Virology,1985)。
【0004】
胚性鶏卵におけるウイルス増殖は、高コストおよび時間を要することとつながっている。この卵は、感染前にインキュベートされ、次いで、その胚の生存度について試験されなければならない。生存している胚のみが、ウイルスを増殖し得る。ウイルスにより感染され、増殖が起こり、そしてさらにインキュベートされた後、この胚は最終的に殺傷される。この卵から単離されたウイルスは、汚染物質を含まず、濃縮されている。インキュベートされた卵におけるウイルス増殖は、厳密な無菌条件下では不可能であるので、それらが医薬適用または診断適用のために利用可能であるべきならば、汚染した病原性微生物が、その単離体から取り除かれなければならない。
【0005】
鶏卵におけるウイルス増殖に対する代替法が、規定された細胞株の真核生物宿主細胞によって提供される(Gregersen,J.P.,Pharmazeutische Biotechnologie,KayserおよびMuller(編者)、2000、257〜281)。しかし、多数の細胞株は、残留した外来ウイルスの汚染物質に起因してか、またはウイルスを含まないという証明が欠如していること、不明確な起源および来歴に起因して、ワクチンまたは類似の医学的に利用可能な調製物の生成には適していない。
【0006】
他方で、サルの腎臓細胞に由来するVero細胞は、ワクチン生成のための個々のウイルス(ポリオウイルス、狂犬病ウイルス)の増殖に既に使用されている宿主系である。これらの細胞は、種々の細胞バンク(例えば、American Type Culture Collection,ATCC)において入手可能であり、そしてまた、医学的研究のために、試験された細胞バンクから世界保健機構(WHO)によって入手可能となる。
【0007】
これらのVero細胞は、接着性の株であり、これらは、その増殖のために支持体表面(ガラスボトル、プラスチック培養プレートまたはプラスチックフラスコなど)を必要とする。いわゆるマイクロキャリアにおける増殖は、発酵槽(すなわち一般に、プラスチック製の小球体(この表面上で、細胞が増殖し得る))中における対応する細胞の培養において生じる。
【0008】
接着性BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞および接着性MDCK(Mandine Darbyイヌ腎臓)細胞ならびに他の細胞もまた、前述のVero細胞に加えて、活性にウイルスを増殖し得、これらは、薬学的生成物の生成のための基質として使用されているか、またはそれらの使用が懸案中であることが知られている。インフルエンザウイルスに加えて、MDCK細胞株ATCC CRL34(NBL−2)において、水疱性口内炎ウイルス、コクサッキーウイルスB5(B3でもB4でもない)、レオウイルス2型および3型、アデノウイルス4型および5型、ならびにワクシニアウイルスもまた、実験によって増殖されている。しかし、全ての対応する刊行物においては、排他的に、接着性培養物に適合させている(ATCC製品情報を参照のこと)。しかし、懸濁培養物が多量の細胞増殖に好ましい。今までのところ、リンパ系および多数の形質転換細胞のみが、この系において増殖され得ているにすぎない(Lindl(編者)、Cell and Tissue Culture,2000,pp.173ff)。タンパク質を含まない培養培地における懸濁物中で増殖し得るMDCK細胞株が、特許文献1に開示されている。対応する宿主細胞を使用するインフルエンザウイルスの増殖もまた、記載されている。
【0009】
適切な細胞または宿主系の選択に加えて、ウイルス株を増殖する培養条件もまた、受容可能に高い収量を達成するために、かなりの意味がある。従って、所望のウイルス株の収量を最大にするために、宿主系と培養条件との両方が、所望のウイルス株について有利な環境条件を達成するために、特に適応されなければならない。従って、種々のウイルス株に関して高収量を達成するために、最適の増殖条件を生じさせる系が必要とされる。多数のウイルスは、特定の宿主系に制限され、これらのうちのいくつかは、ウイルス収量に関して非常に効率が悪い。効率的な生成系はしばしば、対応する培養系のウイルス集団の適合に基づき、しばしば他の宿主系との中間状態を使用し、そしてタンパク質添加物(主に、動物またはヒト起源の血清)を用いる。
【0010】
血清または他の増殖因子を添加した最初の増殖後のほとんど全ての培養物は、血清もタンパク質添加物もなくとも、少なくとも一定時間保たれ得ることがまた、研究者に知られている。例えば、任意の細胞培養物は、ウイルス感染の時点でまたは回収の直前に、血清もタンパク質添加物も含まない培地に移され得、そして回収まで保たれ得る。これは、外来タンパク質を回避するかまたは低下させながら、ワクチンまたは診断試験用のウイルス材料を得るために、長年にわたり慣用的に行われている。血清の添加を伴う感染段階の間に、この実施を行わずに保たれたワクチンおよび細胞培養物は、ヒトまたは動物における使用を許可される際に大きな問題となる。なぜなら、この血清成分は、ほとんど排除され得ないからである(WHO奨励「Proposed requirements for
measles vaccine」(Live),Requirements for
Biological Substances No.12,1978年改訂を参照のこと)。
【0011】
多くのワクチンは、タンパク質含有培地中でほとんどわずかにしか増殖され得ないかまたは全く培養され得ないこともまた知られている。培養系での増殖のためにタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の活性化に頼るウイルスが関連する。これらのプロテアーゼは、培地へのタンパク質の添加によって競合的に阻害されるので、少なくとも感染期間から、または生成段階の間、タンパク質を添加することによって、この問題は理論的に解決される。プロテアーゼの添加によって通常増殖されるはずであり、可能ならば感染培地へのタンパク質の添加がなくとも良好な収量を達成するウイルスの例は、インフルエンザウイルスおよびロタウイルスである。パラミクソウイルスおよびレオウイルスのような他の型のウイルスもまた、できる限りタンパク質の少ない培地からの増殖の間において有利になり得る。(Wardら(1984),J.Clin.Microbiol.748−753、「Efficiency of human rotavirus propagation in cell culture」)。特許文献2は、細胞培養物中でのVero細胞および他の細胞の培養を提唱しており、ここでは、従来のタンパク質添加物を使用せずに基準を満たす培養物が使用される。
【0012】
他のウイルス(例えば、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、肺炎ウイルスまたはA型肝炎ウイルス)は、培養組成および培地条件に関わらず、十分に増殖されないことが知られている(ProvostおよびHillemann、Proc.Soc.Exp.Bio.Med.,160:213−221(1979);ならびにRolleおよびMayer,loc.cit.)。
最後に、多数の方法が、先行技術で知られており、それにより、ウイルス、ウイルス発現産物または他のタンパク質が、増殖後に培養物および/または細胞から単離され得る(Gregersen,loc.cit.;Mahy,loc.cit.;Reimer,Cら、Journal of Virology、1967年12月、1207−1216頁;Navarro del Canizo,Aら、Applied Biochemistry and Biotechnology、第61巻、1996、399;Prior.Cら、BioPharm、1996年10月,22;Janson,Jan−C.およびRyden L.(編者)、Protein Purification,1997;ならびにDeutscher,M.(編者)、Methods in Enzymology、第182巻、1990)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第97/37000号パンフレット
【特許文献2】国際公開第96/15231号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、医薬製品に必要とされる条件下で、取り扱いの容易な懸濁培養系において商業的規模で、多数の異なるウイルスを高収量で増殖し得る方法は、先行技術において知られていない。従って、本発明の課題は、商業的規模で製薬用途および診断用途のために適切なウイルスの増殖のための方法および細胞培養系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、薬物または診断剤の活性成分を生成する方法に関し、この方法は、以下:
(a)MDCK細胞を、ウイルスに感染させ;そして
(b)上記ウイルスの増殖を可能にする条件下で、商業的規模の懸濁培養物中において、上記MDCK細胞を培養する、
という工程を包含し、ここで培養工程は、少なくとも30Lの容量で行われる。
【0016】
懸濁物において増殖する能力を有する特定のMDCK細胞株が、商業的条件下で多数の異なるウイルスの増殖のために特に適していることがくべきことにこのたび見出された。従来の長期にわたる(数週間または数ヶ月の長さの)適合段階を有さない広範な種々のウイルスが、これらの細胞において迅速に複製され得る。本発明に従う方法は、培地、培地添加物、または温度のような特定の培養条件を選択することなく行われ得る。これらの細胞は、増殖することが困難であることが知られているウイルス(例えば、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、肺炎ウイルスまたはA型肝炎ウイルス)であっても、広範な種々のウイルスの複製について問題なく適している。
【0017】
従って、本発明は、商業的規模の細胞培養物においてウイルスを生成する、新たなそして同時に改善された可能性を開示する。得られる生成物は、薬物(特に、ワクチン)および/または診断試薬の生成における使用のために特に適する。驚くべきことに、本発明に従う方法が、異なる型のウイルスについて、それらに対して特別に適合されなくとも、ほとんど不変的な適用を見出し得るということが示され得る。これは、異なる生成物(ウイルス)が、同一設備においてまたは同一の設計および仕様を有するいくつかの設備において、増殖され得るという利点を有する。かなりの経費節減が、この手順により達成される。なぜなら、同一の基本プロセスは、新たなプロセスまたは新たなプロセスの変形の費用のかかる確認を、異なる生成物について不必要なものとするからである。同時に、本発明に従う方法は、莫大な費用で最適化されたこれまで既知の系よりも優れた収量を提供する。このプロセスから生じる生成物の公的登録の単純化もまた、本発明に従うプロセスの言及された利点から得られる。なぜなら、1つの生成物について準備されそして承認される登録簿の大部分が、他の生成物およびその登録のために使用され得るからである。
【0018】
ウイルスの増殖は、30Lよりも多い容量を有する懸濁培養物において起こり、50Lよりも多い容量および100Lよりも多い容量を使用する方法が好ましい。本発明に従う方法は、利用可能な培養容器の絶対的なサイズが制限されるという意味においてのみ、容量に関して上限を有する。先行技術において、5000Lまでおよび10,000Lまでのサイズを有する設備(例えば、ステンレス鋼の発酵槽)が知られている。対応する設備が、本発明に従う方法のために使用され得る。
【0019】
本発明に従う方法において使用される細胞において、懸濁培養物中で増殖する特性を有するMDCK細胞が含まれる。商業的規模の発酵槽中で支持体粒子が存在しなくても増殖し得る細胞株が、この細胞により設計され、これは他の細胞と比較して、培養操作、培養物のスケールアップおよびウイルス増殖の間に有意な利点を有する。MDCK細胞を懸濁培養物に適合させるための方法は、先行技術において公知である(WO 97/37000)。このMDCK細胞は、細胞株MDCK 33016に由来し得る。
【0020】
本発明の別の実施形態に従って、接着性および懸濁物中の両方において増殖し得るMDCK細胞が使用される。この実施形態は、研究室規模から商業的生産への細胞の開発のために、細胞培養系(従って、培地)が使用され得るという特別な利点を有する。個々の細胞培養系の安全性をチェックされることが必要とされるのみなので、対応する系は、薬物の登録を顕著に単純化する。
【0021】
ウイルスは、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)、二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)、二本鎖リボ核酸(dsRNA)または一本鎖リボ核酸からのゲノムを有し得る。ここで、一本鎖リボ核酸分子は、メッセンジャーRNAの極性(RNA(+))、または反対の極性(RNA(−))を有し得る。
【0022】
ウイルスは、先行技術で公知の任意のウイルスであり得る。本発明に従う方法の状況下おいて使用されるウイルスは、ATCC(American Type Culture
Collection)またはECACC(European Collection
of Animal Cell Culture)のような種々のコレクションから入手され得る。細胞培養物中ですでに予め増殖されている既存の生成株またはウイルス株が、一般に求められる。特定の単離体もまた、確立され得るが、これらは、対応する適用のためにより適している。1つの実施形態に従って、この方法において使用されるウイルスは、以下からなる群より選択される:アデノウイルス、オルトミクソウイルスおよびパラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、エンテロウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス。アデノウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、および関連する東洋(ロシアまたは他の)形態、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、C型肝炎ウイルス、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、ラブドウイルス、肺炎ウイルス、レオウイルス、1型単純ヘルペスウイルスまたは2型単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、イヌアデノウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ならびにウシヘルペスウイルスまたはブタヘルペスウイルス(BHV−1など)または仮性狂犬病ウイルスが使用され得、ここで、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、肺炎ウイルスまたはA型肝炎ウイルスの使用が、特に好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、ウイルスのゲノムは、少なくとも10kdのサイズを有する異種機能性タンパク質をコードする核酸配列を含み得る。異種タンパク質の発現のための多数のベクターが、先行技術において公知であり、それらは、例えば、ヘルペスゲノム、ワクシニアゲノムまたはアデノウイルスゲノムのようなウイルスゲノムに基づく(Geller,R.ら、Braz.J.Med.Biol.Res.,1997年2月、30(2):157〜68;Willemse,M.J.ら、Vaccine,1996年11月、14(16):1511〜6;Efstathiou,S.,Minson,A.C.,Br.Med.Bull.,1995年1月、51(1):45〜55;Hammerschmidt,W.,Curr.Opin.Mol.Ther.,2000年10月、2(5):532〜9;Graham,Fl.,Prevec,L.,Mol,Biotechnol.,1995年6月、3(3):207〜20;Carroll,M.W.,Moss,B.,Curr.Opin.Biotechnol.,1997年10月,8(5):573〜7;Wojcik,J.,Acta.Microbiol.Pol.,1995,44(2):191〜6;Ramirez,J.C.ら、J.Virol.,2000年8月、74(16):7651〜5;Hagen,Annaら、Biotechnol.Prog.,1996,12,406〜408;Huyghem,Bernardら、Human Gene Therapy,1995年11月、6:1403〜1416)。
【0024】
本発明の状況において、これらのウイルスの増殖のための方法であって、ここでウイルス性ゲノムが、配列の付加または置換によって改変され、その結果このゲノムが、少なくとも10kdのサイズを有する異種機能性タンパク質(すなわち、そのウイルスに元々属さない)をコードする方法、もまた含まれる。本発明によれば、タンパク質が、そのタンパク質に対する免疫反応を少なくとも誘発し得る場合に、そのタンパク質を機能性タンパク質という。本来、タンパク質は、免疫学的活性に加えてさらなる生物学的活性(例えば、酵素またはサイトカインとしての作用)を有し得る。
【0025】
本発明に従う方法において使用されるウイルスはまた、ウイルスゲノム中に個々の遺伝子の欠失を有し得る。例えば、病原性因子をコードする、ワクチンとして使用されるウイルスの遺伝子が、意図的に欠失され得る。対応する欠失は、好ましくは、500以下または1000以下のヌクレオチドを含む。
【0026】
当然ながら、本発明に従う方法によって使用されるウイルスはまた、完全なウイルスゲノムを含み得る。
【0027】
懸濁培養物におけるウイルスの増殖は、培地において、血清の存在下または非存在下で本発明の方法に従って起こり得る。特別な利点が、血清を不在にすることによって得られる。なぜなら、これらの細胞培養条件は、このようにして生成された生成物の医学的使用に関する登録をかなり簡易化するからである。培養培地へ血清を添加して調剤することによって、培地汚染を排除するための高価な精製工程もまた、避けられる。従って、生成物の品質に関する改善もまた達成され、そして費用がこの点に関して避けられる。
【0028】
ヒトまたは動物由来の血清からの添加物を有さない培地が、本発明の状況下において無血清培地として言及される。
【0029】
培養および以後の使用に対して干渉効果を有さない特定のタンパク質が、対応する培養物に対して規定された量で添加され得る。この型の培養培地を、化学的に規定された培地という。マイトジェン性ペプチド、インスリン、トランスフェリンまたはリポタンパク質のような選択されたタンパク質が、この培地に添加される。これらのタンパク質は、当業者に公知の種々の製造業者から入手され得る。本発明の状況下におけるマイトジェン性ペプチドは、好ましくは、植物性加水分解物(例えば、大豆タンパク質加水分解物または他の有用な植物のタンパク質由来の溶解産物)を意味すると理解される。
【0030】
しかし、特定の好ましい実施形態によれば、この培地は、完全に無タンパク質である。無タンパク質とは、細胞の増殖が、タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物および非血清タンパク質を排除して生じる培養物を意味すると理解される。このような培養物中において増殖する細胞は、本来的に、自己のタンパク質を含む。
【0031】
公知の無血清培地としては、Iscove培地、Ultra−CHO培地(Bio Whittaker)またはEX−CELL(JRH Bioscience)が挙げられる。一般的な血清含有培地としては、以下が挙げられる:イーグル基礎培地(BME)または最小必須培地(MEM)(Eagle,Science,130,432(1959))あるいはダルベッコ改変イーグル培地(DMEMまたはEDM)(これらは通常、10%までの胎仔ウシ血清または類似の添加物とともに使用される)。PF−CHO(JHR Bioscience)のような無タンパク質培地、ProCHO 4CDM(Bio Whittaker)またはSMIF7(Gibco/BRL Life Technologies)のような化学的に規定された培地、およびPrimactone、PepticaseまたはHyPepTM(全て、Quest Internationalから)あるいはラクトアルブミン加水分解物(Gibcoおよび他の製造業者)のようなマイトジェン性ペプチドもまた、当該分野において周知である。植物性加水分解物に基づく培地添加物は、ウイルス、マイコプラズマまたは未知の感染性因子による汚染が排除され得るという特別な利点を有する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、感染されたMDCK細胞の培養の間に、新鮮な培地、培地濃縮物、あるいはアミノ酸、ビタミン類、脂質画分またはリン酸塩のような培地成分が添加される。
【0033】
次いで、本発明に従う方法は、灌流系またはバッチ系において実施され得る。培地が連続的に供給および排出される培養系を、灌流系という。これに代わるものとして、細胞はバッチ系においても培養され得、この系は、接種から回収まで培地を供給しない大型の閉鎖系として実行される。
【0034】
所望の適用のために使用されるべき細胞培養条件(温度、細胞密度、pH値など)は、本発明に従って使用される細胞株の適合性によって非常に広範囲で変化し得、そしてその適用の要件に対して適合され得る。従って、以下の情報は、単に指針を示すに過ぎない。
【0035】
感染前のMDCK細胞の増殖は、遠心分離または濾過のような従来の支持方法を使用する灌流系において、種培養物または小型培養管から開始して行われ得る。このような系における細胞の初代培養の間に、培養培地を、発酵槽充填物で1日あたり3回までの速度で交換することの利点が証明されている。MDCK細胞は、2×10の細胞密度まで、これらの条件下で増殖され得る。灌流速度の制御は、好ましくは、細胞数、グルタミン含有量、グルコース含有量またはラクテート含有量のような当業者に公知のパラメータによって、培養の間に行われる。
【0036】
バッチ系が使用される場合、約8×10〜25×10細胞/mLまでの細胞密度は、37℃の温度および20〜30時間の生成時間で到達され得る。
【0037】
さらに、細胞は、感染前に、供給バッチ系(fed−batch system)において本発明に従って増殖され得る。本発明の状況下において、培養系は、細胞がバッチ系において初めに培養され、そして培地中の栄養素(または栄養素の一部)の枯渇が、濃縮栄養素の制御された供給によって補われる場合に、供給バッチ系といわれる。供給バッチ系において、MDCK細胞は、約1×10〜10×10の細胞密度まで増殖され得る。
【0038】
感染前のMDCK細胞の増殖の間に、培地のpH値を、pH6.6とpH7.8との間の値、そして特にpH7.2とpH7.3との間の値に調整するが有益であることもまた証明されている。
【0039】
感染前のMDCK細胞の培養は、好ましくは、30℃と40℃との間の温度、そして特に33℃と37℃との間の温度で行われる。感染前の培養の間、酸素分圧は、好ましくは、25%と95%との間の値、そして特に35%と60%との間の値に調整される。本発明の状況下において述べられる酸素分圧についての値は、空気中の飽和量に基づく。
【0040】
本発明に従う方法について、MDCK細胞の感染は、バッチ系においては、好ましくは、約8×10〜25×10細胞/mLの細胞密度で行うか、または灌流系においては、好ましくは、約5×10〜20×10細胞/mLの細胞密度で行うことが有益であることが証明されている。細胞は、10−8と10との間のウイルス用量(MOI値、「感染多重度(multiplicity of infection)」;感染時における細胞あたりのウイルス単位数に対応する)、好ましくは、0.0001と0.5との間のウイルス用量で感染され得る。
【0041】
感染後のMDCK細胞の培養もまた、灌流系、バッチ系または供給バッチ系において行い得る。前記で使用された培養条件と同じ培養条件が、使用され得る(30℃と40℃との間の温度、5%と100%との間の酸素分圧、pH6.6とpH7.8との間の培地のpH値)。
【0042】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、感染されたMDCK細胞の培養の間に、培養培地は、新鮮な培養培地で置換されるか、または培養物容量が、新鮮な培養培地の添加によって増加される。培養培地の交換または補充もまた、培地濃縮物またはアミノ酸、ビタミン類、脂質画分、リン酸塩などのような培地成分によって行われ得る。これらの工程はまた、MDCK細胞を培養する間に繰り返し行われ得る。
【0043】
MDCK細胞の増殖は、驚くべきことに、多くのウイルス系の増殖によって有意には阻害されない。特に、A型肝炎ウイルス、ラブドウイルスおよびフラビウイルス(CEE)の増殖の間、MDCK細胞およびウイルスの強力な増殖が、培養の間に観察された。
【0044】
これは、培養上清からウイルスを繰り返し回収することによって、そして特に、総培養物容量を(従って、細胞数を)新鮮な培地の添加によって増加させることによって、ウイルス収量の増加を可能にする。対応する複数回の回収は、本発明に従う方法の顕著な利点を示す。なぜなら、これらの系の収量が、顕著に改善されるからである。
【0045】
従って、本発明に従う方法は初めて、より長い期間にわたる培養系におけるウイルスおよび細胞の増殖を可能にする。いくつかの実施例において、この細胞は感染から28日後に依然として生存していたことが実証され得た。従って、ウイルスおよび細胞の増殖の持続期間は、細胞培養条件(培地の添加)によって、広範に選択可能である。
【0046】
本発明の方法により生成されたウイルスまたはタンパク質の回収および単離を包含する方法もまた、本発明により提供される。ウイルスまたはタンパク質の単離の間に、細胞は、剥離、濾過または限外濾過のような標準的な方法によって培養培地から分離される。次いで、ウイルスまたはタンパク質は、勾配遠心分離、濾過、沈殿、クロマトグラフィーなどのような当業者に周知の方法に従って濃縮され、次いで、精製される。また、本発明に従って、ウイルスが、精製中または精製後に不活化されることが好ましい。ウイルスの不活化は、例えば、精製プロセス中の任意の時点において、β−プロピオラクトンまたはホルムアルデヒドによって行われ得る。
【0047】
本発明に従う方法は、薬物または診断剤の活性成分を利用可能にし、従って、薬物の生成(特に、ワクチンの生成)および診断剤の生成に特に適している。
【0048】
薬物の生成は、本発明の方法により生成されたウイルスまたはタンパク質の増殖および単離、ならびに、適当なアジュバント、補助剤、緩衝剤、希釈剤および/または薬物キャリアとの混合を包含し得る。本発明の状況下におけるアジュバントは、免疫応答を増強させる物質を意味すると理解される。アジュバントとしては、種々の金属の水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)、細菌細胞壁の成分、油またはサポニンが挙げられる。ワクチンは、ウイルス感染の予防的処置または治療的処置に特に適している。
【0049】
対応するワクチンの免疫原性および/または効力は、感染の負荷を伴う防御的実験または中和に必要な抗体力価の決定のような、当業者に公知の方法によって決定され得る。生成されたウイルス量または抗体量の決定は、ウイルス力価測定、血球凝集試験、種々の型の抗原決定またはタンパク質決定のような、当業者に周知の標準的な方法に従って、抗原の力価または量を決定することによって行われ得る。
【0050】
本発明に従う方法はまた、診断用組成物の生成に適している。この組成物は、本発明の方法から得られるウイルスまたは本発明の方法によって生成されるタンパク質を含み得る。当該分野において一般的な添加物および検出試薬との組み合わせにおいて、これらの組成物は、ウイルス抗体または抗ウイルス抗体の検出に適切な診断試験として使用され得る。
したがって、本発明は、以下をも提供する。
(1) 薬物または診断剤の活性成分を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)MDCK細胞を、ウイルスに感染させる工程;および
(b)該ウイルスの増殖を可能にする条件下で、商業的規模の懸濁培養物中において、該MDCK細胞を培養する工程;
を包含し、ここで培養する工程は、少なくとも30Lの容量で行われる、方法。
(2) 前記懸濁培養物が、50Lより多い容量を有することを特徴とする、項目1に記載の方法。
(3) 前記懸濁培養物が、100Lより多い容量を有することを特徴とする、項目2に記載の方法。
(4) 前記MDCK細胞が、接着性であり、かつ懸濁物中でも増殖し得るという両方の特性を有することを特徴とする、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(5) 前記MDCK細胞が、細胞株MDCK33016に由来することを特徴とする、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(6) 前記ウイルスが、ssDNAウイルス、dsDNAウイルス、RNA(+)ウイルス、RNA(−)ウイルスまたはdsRNAウイルスであることを特徴とする、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(7) 前記ウイルスが、アデノウイルス、オルトミクソウイルスもしくはパラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、エンテロウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、またはポックスウイルスから選択されることを特徴とする、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(8) アデノウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、および関連する東洋(ロシアまたは他の)形態、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、C型肝炎ウイルス、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、ラブドウイルス、肺炎ウイルス、レオウイルス、1型単純ヘルペスウイルスまたは2型単純ヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、イヌアデノウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ならびにウシヘルペスウイルスまたはブタヘルペスウイルス(BHV−1など)または仮性狂犬病ウイルスが、前記細胞の感染のために使用され、ここで、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、肺炎ウイルスまたはA型肝炎ウイルスの使用が、特に好ましいことを特徴とする、項目7に記載の方法。
(9) ウイルスゲノムが、少なくとも10kdのサイズを有する異種機能性タンパク質をコードする配列を有することを特徴とする、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。(10) 培地が、無血清であることを特徴とする、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(11) 培地が、化学的に規定された培地であることを特徴とする、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(12) 培地が、無タンパク質であることを特徴とする、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
(13) 前記ウイルスの増殖が、灌流系において実施されることを特徴とする、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(14) 前記ウイルスの増殖が、バッチ系において実施されることを特徴とする、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
(15) 前記MDCK細胞が、前記ウイルスの増殖のために、30℃と40℃との間の温度で培養されることを特徴とする、項目1〜14のいずれか一項に記載の方法。
(16) 前記MDCK細胞が、前記ウイルスの増殖のために、35%と60%との間の酸素分圧で培養されることを特徴とする、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
(17) 培地のpH値が、前記ウイルスの増殖のために、pH6.8とpH7.8との間に存在することを特徴とする、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
(18) ウイルスが、10−8と10との間のMOI値での感染により、前記MDCK細胞に導入されることを特徴とする、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
(19) 前記細胞が、感染後、少なくとも2〜28日間培養されることを特徴とする、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
(20) 前記MDCK細胞の培養の間に、新鮮な培地、培地濃縮物または培地成分が添加されることを特徴とする、項目1〜19のいずれか一項に記載の方法。
(21) 前記ウイルスの増殖の間に、前記MDCK細胞が、培養培地の置換または新鮮な培養培地の添加を伴う無血清培地中において増殖されることを特徴とする、項目1〜20のいずれか一項に記載の方法。
(22) 培養培地の置換または新鮮な培養培地の添加が、前記ウイルスの増殖の間に繰り返されることを特徴とする、項目21に記載の方法。
(23) 前記ウイルスまたは該ウイルスによって生成されるタンパク質が、細胞培養物から単離されることを特徴とする、項目1〜22のいずれか一項に記載の方法。
(24) 培養培地の少なくとも一部分が、前記ウイルスまたは前記タンパク質の単離のために、前記MDCK細胞の少なくとも一部分から分離されることを特徴とする、項目23に記載の方法。
(25) 分離が、ディープベッドフィルターまたは分離器の手段により行われることを特徴とする、項目24に記載の方法。
(26) 前記ウイルスが、前記培養物の上清または前記MDCK細胞から回収されることを特徴とする、項目23〜25のいずれか一項に記載の方法。
(27) 精製が、前記ウイルスの濃縮のための超遠心分離を包含することを特徴とする、項目26に記載の方法。
(28) 精製が、クロマトグラフィーを包含することを特徴とする、項目23〜27のいずれか一項に記載の方法。
(29) 前記ウイルスが、精製の間に不活化状態であることを特徴とする、項目23〜28のいずれか一項に記載の方法。
(30) 薬物または診断剤を生成する方法であって、ここで活性成分は、項目1〜29のいずれかに記載の方法に従って生成され、そして適切なアジュバント、補助剤、緩衝剤、希釈剤または薬物キャリアと混合される、方法。
【0051】
以下の実施例における全てのウイルス力価は、当業者に公知のSpearman−Kaerberによる最終希釈法および統計的な50%終点決定に従って決定された(Hrozinek,Compendium of General Virology,第2版、1985,Parey Verlag,pp.22〜23を参照のこと)。8つの試験培養物を、100μL量のウイルス希釈物でマイクロタイタープレートにおいて感染させ、ここで、10−1〜10−8のウイルス材料の希釈を使用した。ウイルス力価測定の評価を、試験培養物として細胞変性効果によって顕微鏡的に、またはウイルス特異的抗体を使用する免疫学的検出方法のいずれかによって行った。ウイルス特異的抗体の結合は、フルオレセイン標識された抗体を用いる免疫蛍光検査法のように可視化されるか、またはビオチン標識された二次的抗体およびストレプトアビジン/ビオチン/ペルオキシダーゼ増殖因子複合体、ならびに沈殿可能な色素(Gregersenら、Med.Microbiol.Immunol.,177:91〜100)を使用して可視化される。ウイルス力価の単位は、50%の培養物感染用量(CID50)である。種々の型のウイルスに対して使用されるウイルス特異的検出細胞および、適用可能であるならば、免疫学的検出方法が、ウイルス特異的な実施例において言及される。
【実施例】
【0052】
(実施例1:初期作業工程および研究室規模での懸濁培養物としての、細胞培養系の取り扱い)
液体窒素中に保存された種細胞バイアルからのMDCK細胞を、水浴中での浸漬によって迅速に解凍し、そして直後に、約1×10細胞/mLの細胞数で、培養培地(補充したUltra CHO、BioWhittaker、標準培地)において、一般に約1:100で希釈した。次いで、これらの細胞を遠心分離(800Gで10分間)によって培地から分離し、再度新鮮な培養培地中にとり、そして攪拌培養ビン(100mLの作業容量、BellocまたはTechne)中に注いだ。これらの培養物ロットを、磁気スターラーにおいて50〜60rpmで37℃においてインキュベートした。細胞増殖を、細胞数をチェックすることによってモニタリングした。最大1.6×10細胞/mLに対して8×10細胞/mLの細胞数に達したところで、この培養物を、新鮮な標準培地での細胞の希釈によって移し、そして100〜1000mLの作業容量の新たな攪拌培養ビンに播種し、そして最大の細胞密度または所望の細胞密度が上記のような攪拌の間に到達されるまでインキュベートした。これらの細胞継代において、最大の細胞数が、必要に応じて、3〜5日間以内に達成されるように、1:4と1:10との間の範囲で、対応する培養物の希釈を細胞増殖の型に適合させた。あるいは、この型の細胞培養を、培地への補充物の添加なしに試行し、そして少なくとも10継代にわたって、問題なく維持し得た。
【0053】
(実施例2:接着培養物としての、細胞培養系の取り扱い)
確立された懸濁培養物(実施例1を参照のこと)を、細胞数が約1×10細胞/mLになるように、異なる培地で希釈し、次いで、種々の細胞培養容器に注いだ(表1を参照のこと)。次いで、この細胞培養物容量を、対応する培養容器についての通常量(すなわち、播種表面にわたって約4mmの培養培地、または培養物表面2.5cmについて約1mLの培地)に対応させた。これらの培養物を、一般に、ほとんどの細胞培養物について共通して37℃の温度でインキュベートしたが、インキュベーション温度の有意な偏差もまた、顕著な損失なしに可能であった(表1を参照のこと)。試験した培養物系、ならびにこれらによって達成される細胞増殖における結果は、表1に示され、これらの細胞系が、種々の培地および培養物系において、ほぼ同じに、そして確実に挙動することを示す。
【0054】
この方法で生成される単層培養物を、マイクロタイタープレート中でのウイルス収集物の力価測定のため、および顕微鏡制御下でのウイルスの培養のために、または懸濁培養物中よりも接着単層培養物中でより良好に実施され得る免疫蛍光調査、血球吸着試験および他のウイルス学的な標準方法もしくは免疫学的な標準方法のために、使用した。さらに、このような培養物はまた、プラーク精製または希釈によって、純粋なウイルス株を回収するために、特に適切であった。最後に、接着培養物をまた、小規模および大規模(好ましくは、ローラービンにおいてより多い量)でのウイルス増殖のために使用した。
【0055】
(表1.種々の接着培養系における細胞増殖)
【0056】
【表1】

BME:基本培地イーグル;炭酸水素塩補充(5%ストック溶液の2〜2.5%)
MEM:最小必須培地;炭酸水素塩補充(5%ストック溶液の2〜2.5%)
EDM:ダルベッコ改変イーグル培地;炭酸水素塩補充(5%ストック溶液の2〜2.5%)
FCS:胎仔ウシ血清
Supp.:Ultra CHO補充
#:調整した値;+2℃および−3℃の偏差を有する、実際に測定した値
*:製造業者:Bio−Whittaker。
【0057】
(実施例3:ウイルスの単離、回収、および種ウイルス調製物の生成)
初代単離体(ウイルス含有器官、組織または組織流体サンプル、咽喉スワブまたは糞便サンプルなど)を、標準的な培地(任意の他の培地またはリン酸緩衝液も同様に可能である)中で、氷浴中にて懸濁し、抗生物質(PSN:100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、50μg/mLのネオマイシン)を添加し、必要に応じてホモジェナイズした(乳鉢、外科用メスの刃、またはいわゆるDouncerホモジェナイザーまたはPotterホモジェナイザーで微細に破砕した)。得られた懸濁物を、0.45μm(被覆を有さないより小さなウイルスの単離については、0.2μmも)の細孔サイズを有する通常の実験室シリンジフィルタアダプタを用いて濾過した。濾液を、新鮮な培養培地を含む小さい培養フラスコ(25cm、実施例2を参照のこと)中に接種した。いくつかの培養物の収量を増大させるために、100μL〜1mLの接種材料と共に提供し、次いで37℃でインキュベートした。上部気道からのウイルスの単離のために、33℃のより低いインキュベーション温度にて、さらなる培養物を調製することが推奨される。
【0058】
培養物中ですでに増殖された純粋なウイルス単離体を、実施例1または2に従って、本発明に従う培養系における直接的な感染のために使用した。しかし、より高いウイルス含量のウイルス調製物が本明細書中で想定され得たので、100μL以下のより少量の接種材料量を、一般に使用した。0.1および0.01のMOI(感染多重度)が、本発明に従う培養系におけるこのような第一の感染のために好まれた;10のファクターだけ減少させる工程における10から0.0001までのMOIを用いた感染を、結果が不十分である場合に、反復した。
【0059】
次いで、感染培養物をウイルス関連細胞損傷(CPE、細胞変性効果)について顕微鏡で毎日試験し、そしてコントロール培養物と比較した。代替として、CPEを引き起こさないウイルスにおいて、この培養物を、特定のウイルス抗原またはその遺伝子の存在について試験した(例えば、ウイルスの型に依存する特定のHA試験;ELISA、PCR)。3〜4日後、または陽性の知見(細胞の収縮、細胞死、接着培地中の細胞層(lawn)の円形成(rounding)および解離、プラーク形成)の後、無細胞遠心分離培養物上清をサンプルとして凍結し、そして他方で、陰性または疑わしい知見の場合、培養物全体を、1×10細胞の細胞数まで、新鮮な培地で調整し(懸濁培地の希釈、または接着培養物のトリプシン処理および引き続く個々の細胞の希釈)、そしてさらにインキュベートして新たな培養物へと分配した。これは、1:4〜1:20の培養物の希釈まで、ほとんどの培地において一致して、培養物の数の対数増殖を回避したので、第二のこのような培養物継代の後に、少なくとも可能な培養物の一部だけを、さらに維持した。3〜4継代後、ウイルス単離体を、適切なウイルス含有出発物質から、首尾よく単離および検出し得た。
【0060】
ほとんどのウイルス型について、出発物質のウイルス含量および品質に依存して、ウイルス関連CPEが、インキュベーションの2〜7日後に見出された(ウイルス特異的な実施例も参照のこと)。しかし、いくつかのウイルスは、非常にゆっくりと増殖するか、またはCPEを示さず、従って、延長した継代およびインキュベーション時間または特定の試験(必要な方法は、特定ウイルスの実施例のもとで列挙する)によって、検出されるはずである。特別な検出系もまた必要とする、ゆっくりとした増殖を有する、CPEを有さないウイルスについての例として、A型肝炎ウイルスの特定の例が言及される。本明細書中に記載される検出試験はまた、対応する抗血清が使用される場合に、他のウイルス(特に、特定のCPEを有さないウイルス)の検出のために適切である。
【0061】
実際には、新たに単離されたウイルスは、3倍のプラーク精製、またはいわゆる限界希釈技術による、純粋な単離体の調製の後にのみ、使用されるべきである。このために必要な方法は、先行技術に従う専門教科書から取られ得る(例えば、B.W.Mahy:Virology−A practical approach;IRL Press、Oxford、1985を参照のこと)。
【0062】
適切なウイルス調製物が、初代単離体から入手可能であるかまたは確立された株として入手可能である場合、これらを、生成目的のための同種の種ウイルスを回収するために、攪拌培養物の感染のために使用する。本発明の目的を本発明者らが限定することはないが、第一の感染は、最初に、10〜0.00001、好ましくは0.1〜0.0001のMOIを有する100mLの培養培地を用いた、小さい攪拌培養物であることが推奨される。より迅速かつより高いウイルス値または収量を達成するために最も好ましい条件(特に、MOIおよび回収時間に関して)を、規定された生成規模および生成試行の数に従って、さらなるウイルス継代において、必要なサイズの培養系で種ウイルスを生成するために、選択した。達成されるウイルス収量および規定された生成時間に依存して、この種ウイルス継代についての規模は、いくつかの攪拌培養物〜1000mLの規模〜小さい発酵槽〜ほぼ10L以上の容量までであり得る。回収したウイルスを、濾過または遠心分離によって、すべての細胞残留物を除去し、そして生成および可能な場合−70℃未満の温度での保存のために適切な少量へと、分割した。
【0063】
(実施例4:生成目的のための、接着マイクロキャリア培養物としての系の取り扱い)
接着MDCK細胞の培養を、実施例2、表1に従って、BME+3%胎仔ウシ血清(FCS)を用いて、ローラービン中で実施した。この系における培養後、細胞を、ローラービンの表面から剥離した。これは、当業者に公知の通常の方法に従って、適切なトリプシン溶液を用いて、酵素的に実施した。代替として、実施例1に従って、懸濁細胞を、攪拌培養物中で培養し、そしてマイクロキャリアを被覆するために直接使用した。
【0064】
生成発酵槽を、Cytodex 3型のマイクロキャリア(Pharmacia)で満たした。このマイクロキャリア(比重量5g/L)をオートクレーブにかけ、そして栄養培地で馴化した。この方法は、マイクロキャリアの表面への細胞の接着を確実にした。この様式で回収した細胞を、細胞密度が1×10細胞/mLになるように、生成系に移した。細胞は、マイクロキャリアに接着し、そしてコンフルエンスになるまで、または3×10細胞/mLの細胞密度に達するまで、培養した。
【0065】
細胞培養期の後、存在する栄養培地を、新鮮な栄養培地で置換した。この目的のために、無タンパク質栄養培地を使用した。2回の洗浄サイクルを行った。
【0066】
洗浄サイクルは、攪拌器の停止、マイクロキャリアの設置、消費された栄養培地の除去、新鮮な栄養培地の添加、およびマイクロキャリアの再懸濁からなった。洗浄工程の後、細胞培養物を、トリプシン(2.5mg/L)と混合した。
【0067】
次いで、種ウイルスを用いた細胞培養物の感染を実施した。この種ウイルスを、実施例3に従って獲得および使用した。このとき、MOIは、ウイルス特異的であり、そして0.1と0.000001との間、好ましくは0.01と0.0001との間の量であった。感染期(この期間は、一方では特定のウイルス(特定の実施例を参照のこと)によって決定され、そして他方では、選択されたMOIによっても決定される)の終了後、攪拌器を停止させ、そしてマイクロキャリアを堆積させた。ウイルス含有上清を取り出し、そして細胞残渣から、適切な分離方法によって精製した。細胞分離のために、当業者に公知の通常の遠心分離または分離器、フィルターおよびクロスフロー濾過単位を、使用した。
【0068】
(実施例5:無血清培地を使用する、1000L規模での生成容量までの、懸濁培養物としての系の取り扱い)
1000Lの生成容量についての懸濁培養物の培養を、1000mLの培養容量までの小規模で、攪拌ビン(Techne Co.)を用いて行った(実施例1を参照のこと)。攪拌器中の細胞密度は、1×10細胞/mLであった。これらの細胞を、バッチプロセスで培養し、そして1:10の比で新鮮な培地に単に希釈することによって、1×10細胞/mLの細胞密度で移した。無血清培地(Ultra CHO、BioWhittaker)を細胞培養のための培地として使用した。本発明者らは、攪拌発酵槽(1分当たり30回の攪拌器回転数)の10Lの容量から、持続的な通気および温度制御(細胞培養物について制御温度37℃)、pH値(制御範囲7.1〜7.3)、および酸素分圧(45%〜55%のpO)を使用した(技術的詳細は表2中)。スケールアップ容量は、1:10の移送比(transfer ratio)に従って、10L、100L、1000Lであった。発酵槽が1×10細胞/mLの最終細胞密度に、1×10細胞/mLの開始細胞密度にて、3〜4日の時間で到達した。1000Lの規模で、供給バッチを、細胞密度を3×10細胞/mLまで増大させるために、グルコース溶液(100〜200g/L)を用いてさらに実施した。達成された細胞収量を、表2に比較して示す。
【0069】
(実施例6:化学的に規定された培地を用いる、1000Lの容量までの生成容量についての懸濁培養物としてのこの系の取り扱い)
1000Lの生成容量についての懸濁培養物の培養を、実施例5に記載されるように実施した。他方、化学的に規定された培地(ProCHO4CDM)を、細胞培養のための代替として使用した。この培地中での適合のために、3〜5予備継代を実施することが有利であることが証明された。達成された細胞収量を、表2において比較する。
【0070】
(実施例7:無タンパク質培地を使用する、1000L規模についての生成容量までの、懸濁培養物としてのこの系の取り扱い)
1000Lの生成容量についての懸濁培養物の培養を、実施例5に記載されるように実施した。無タンパク質培地(SMIF7、Life Technologies)を、細胞培養のための培地として使用した。この培地中での適合のために、5〜10予備継代を行うことが有利であることが証明された。達成された細胞収量を、表2において比較する。
【0071】
(表2.種々の方法および培地を使用する、発酵槽中での生成規模についての細胞(MDCK33016)の培養)
【0072】
【表2】

:開始細胞密度
:最終細胞密度
N/T/pO/pH:攪拌速度、温度、酸素分圧、pH値。
【0073】
(実施例8:無血清培地での生成期におけるこの系の取り扱い)
実施例5に従って、生成規模まで懸濁培地を培養した後、細胞を、等容量の3つの発酵槽(3×1000L)に分配し、そして新鮮な培地で満たした。各発酵槽に、1/3容量の前培養物および2/3容量の新鮮な培地を入れた。培養期と同じ培地を使用した(UltraCHO,BioWhittaker)。充填の後、細胞培養物を、10mg/Lのトリプシンと混合した。次いで、種ウイルス(インフルエンザB/Harbin/7/94)での細胞培養物の感染を、0.001のMOIで起こし、さらに、細胞培養中と同じ発酵条件下であるが、33℃において96時間にわたり、インキュベーションした。次いで、細胞含有上清を取り出し、次いで、細胞を、分離器で分離した。さらなる濾過工程を、0.45μmの孔径のカートリッジフィルターを通して行い、さらに微小な粒子を分離した。
【0074】
ウイルス回収物を、0.5%ニワトリ赤血球を用いたHA試験における標準的方法で、接着性MDCK細胞におけるウイルス力価測定によって、ウイルス含量について試験した。測定されたHA含量は、1024Uであり、ウイルス力価は、108.2CID50/mLであった。
【0075】
(実施例9:化学的に規定された培地での生成期におけるこの系の取り扱い)
生成細胞の調製を、実施例8に記載されるようにして行った。しかし、化学的に規定された培地(ProCHO4CDM,BioWhittaker)を、新鮮な培地として使用した。充填後、細胞培養物を、2.5mg/Lのトリプシンと混合した。続いての感染を、実施例8に記載されるように実施した。
【0076】
測定されたHA含量は、1024Uであり、ウイルス力価は、107.5CID50/mLであった。
【0077】
(実施例10:無タンパク質培地での生成期におけるこの系の取り扱い)
生成細胞の調製は、実施例8に記載されるようにして行った。しかし、無タンパク質培地(SMIF7,Life Technologies)を、新鮮な培地として使用した。充填後、細胞培養物を、2.5mg/Lのトリプシンと混合した。
【0078】
続いての感染を、実施例8に記載されるように実施した。測定されたHA含量は、1024Uであり、ウイルス力価は、107.9CID50/mLであった。
【0079】
(実施例11:化学的に規定された培地での培養および感染)
細胞の培養を、実施例6に記載されるようにして行い、感染を実施例9に記載されるように行った。従って、培養から感染物の回収までのすべての細胞培養物は、化学的に規定された培地中で生じた。
【0080】
(実施例12:化学的に規定された培地での培養および無タンパク質培地中での感染)
細胞の培養は、実施例6に記載されるように化学的に規定された培地中で行い、感染は、実施例10に記載されるように無タンパク質培地中で行った。
【0081】
(実施例13:無タンパク質培地中での培養および感染)
細胞の培養は、実施例7に記載されるようにして行い、感染は、実施例10に記載されるようにして行った。培養から感染物の回収までのすべての細胞培養物は、無タンパク質培地中で行った。
【0082】
(実施例14:ウイルス精製の一般的な記載)
ウイルス増殖期の終了後、細胞培養物の回収を0.45μmまたは0.5μmの孔径を有するディープベッドフィルター(deep bed filter)を通して濾過し、細胞および細胞フラグメントを分離した。代替として、この分離を、分離器を用いて実施した。浄化された回収物に含まれるウイルスを、濃縮し、そして必要に応じて限外濾過によって精製し、ここで、50,000と1,000,000との間(好ましくは、100,000〜500,000)の排除限界を有する膜を使用した。得られたウイルス濃縮物を、CS(Cellufine Sulfate,Millipore)を充填したクロマトグラフィーカラム上にロードした。緩衝液での洗浄による夾雑物の除去後、このウイルスを、0.3〜3MのNaCl溶液で溶出した。溶出液を、限外濾過で脱塩し、さらに濃縮した。クロマトグラフィー精製の代替として、またはクロマトグラフィー精製と組み合わせて、さらなる精製効果を、超遠心分離によって達成し得た。ほとんどのウイルスをまた、スクロース勾配中の超遠心分離によるこれらの浮遊密度に従って精製し得、続いて、この勾配によって分画した。ホルムアルデヒドまたはβ−プロピオラクトンでのウイルス不活化を、精製プロセスの間の任意の時点に導入し得るが、好ましくは、濃縮後または精製後に使用する。なぜなら、このときに不活化される容量が、既に実質的に減少されるからである。
【0083】
(実施例15:ワクチンの処方のための不活化純粋ウイルス調製物の回収)
フラビウイルス(中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、株K23)を、実施例5、6および7に従って、0.2 MOIの接種用量(詳細は、実施例22を参照のこと)で異なる培地中で培養した。
【0084】
回収されたウイルス含有培養培地を、遠心分離によって、存在するすべての細胞残存物を除去し、そして0.45μmの孔径を有するフィルターを介して濾過した。安全性の理由のために、濾過後に、1:2000または1:2500の希釈度でβ−プロピオラクトンを添加し、そして2〜8℃で24時間インキュベーションすることによって、この物質は既に不活化されていた。37℃での不活化剤の2時間にわたる加水分解後の不活化調製物の細胞培養試験により、0.03感染単位/mL未満の検出限界まで、活性なウイルスが存在しないことが示された。
【0085】
続いて記載される精製工程の分析について、BCA[ビシンコニン酸(bicinchoninic acid)]アッセイ(Pierce)を使用して、総タンパク質含量を決定した。特定の抗原の含量を、サンドイッチELISAで、E−糖タンパク質に対する特異的モノクローナル抗体(Niedrigら、1994,Acta Virologica 38:141−149)およびウサギ由来の精製ウイルスに対する自社作製のポリクローナル抗血清を用いて決定した。次いで、不活化された出発物質に対する値を、参照値(100%に対応)として使用した。
【0086】
(勾配遠心分離による精製)
不活化された細胞調製物を、公知の方法に従って、80,000Gでの密度勾配超遠心分離(15〜60%スクロース)によって精製した。次いで、勾配を分画し、そしてその画分のサンプルにおいて、280nmの吸光度を決定し、ウイルスのピークを同定した。吸光度の急激な上昇を、30%と40%との間のスクロース濃度の領域に見出し、そして、最大値は、34%および35%においてであった。この領域から、特定のウイルスタンパク質の最大含量および最大純度(ウイルスタンパク質の全タンパク質に対する比として決定される)もまた、測定した。全体として、出発物質中において測定された50%より多くの特異的抗原含量が、これらのピーク画分において回収された。
【0087】
(クロマトグラフィー精製)
不活化されたウイルス調製物(上記を参照のこと)を、あらかじめ、5カラム容量の50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したCSカラムに適用した。次いで、結合していない物質を除去するために、このカラムを、10カラム容量のリン酸緩衝液で洗浄した。次いで、結合した物質を、段階的に3M NaClを添加した漸増量の同一緩衝液と混合された、同じリン酸緩衝液を用いて溶出した。3.2%と3.9%との間の特異的抗原および79〜83%の全タンパク質を、ウイルス物質の適用の間、流動物中において分析的に回収した。洗浄緩衝液中において、6〜11%の全タンパク質および0〜2.3%の抗原を見出した。従って、95%より多くの抗原が、カラム材料に結合される。0.6〜1.8MのNaClでの溶出の間、約60.0%の抗原を回収し、最高純度を、1.2M NaClでの溶出の間に達成した。3M NaClまでのより高い塩濃度は、さらなる少量(<15%)のより小さい比純度を有する抗原を溶出した。
【0088】
(クロマトグラフィーと超遠心分離との組み合わせによる精製)
0.6Mおよび1.2MのNaCl溶出後のクロマトグラフィー精製から得られる溶出物の混合物を、上記のように80,000Gで2.5時間にわたり超遠心分離に供した。ウイルスペレットを、50mM リン酸緩衝液(pH7.5)に再懸濁し、そして分析した。この調製物の全タンパク質濃度を、初期含量の0.7%まで減少させ、純度を、この工程によって10倍増加させた。
【0089】
このウイルス調製物を、上記のように勾配精製に供した。直接勾配精製の後に達成されたように、分画後、非常に類似した勾配プロフィールが見出された。しかし、ウイルスピークの先端は、わずかにシフトし、ここでそれは、37%スクロースにおいてであった。
【0090】
(実施例16:ヒトヘルペスウイルスのウイルス単離体の回収およびウイルス増殖)
ツベルクリンシリンジでの水疱段階(唇ヘルペス水疱)における新鮮なヘルペス風解物の滅菌穿刺によって、最少量の組織液を得、実施例3に従って抗生物質を添加した標準培地中に懸濁し、そして0.45μmの孔径を有するフィルタを使用して濾過した。濾液を、標準培地中の接着性MDCK33016細胞で25cmの培養表面を有する培養フラスコ中に接種し、37℃でインキュベートした。4日後に上清のサンプルを取り、7日後に、培養物の全上清を取り、−70℃未満で凍結した。4日後に取られたサンプルを、1:10に希釈し、次いで、10μg/mLトリプシンを含む標準培地中の10の工程において;100μLのこれらの希釈物を、標準培地中のMDCK33016細胞に導入した。37℃での13日間にわたるインキュベーション後、CPEを、第1の希釈工程の少量の培養物中に見出した。これらの培養物の上清を回収し、再度希釈し、そして新規の培養物に接種した。6〜9日後、漸増的な、さらに異なるCPEを、代表的なヘルペスウイルスプラークとして、この第3ウイルス継代の種々の希釈工程において見出した。175cmの培養表面での同じ出発物質と並行した直接感染培養物もまた、排他的に同じ代表的なプラークを示した。ウイルスのさらなるクローニングのために、この希釈プロセスを再度繰り返し、ここで、最後の陽性の希釈物の細胞培養物中の上清を使用した。培養物上清の回収に加えて、残存細胞を、3%ホルムアルデヒド溶液で16時間にわたり固定し、次いで、1% Triton X−100で30分間インキュベートし、次いで、HSV−1に対する特異的なFITC標識モノクローナル抗体(Biosoft 製品番号17−088)を用いる標準的な方法に従って、免疫蛍光調査に供した。プラークの近傍にある細胞のみが免疫蛍光を有することを見出した。この実証および特異的PCRの実証によって、単離体は、1型単純ヘルペスウイルスとして明確に同定された。
【0091】
クローン化したウイルスを、さらに、懸濁培養物中の標準培地中で増殖させ、実施例3に記載されるように十分なウイルス力価(>10感染単位/mL)における種ウイルス産生のために使用した。種ウイルス調製物は、10CID50/mLと10CID50/mLとの間のウイルス力価を一様に含んだ。ウイルス力価の決定は、HEP−2細胞またはVero細胞において、当業者に公知である標準的な方法に従って行ったが、これはまた接着性MDCK細胞においても行い得、ここで、力価の評価は、代表的なプラークに対して実施される。種ウイルス調製物を、−70℃でアリコートにするか、または−70℃未満で凍結され、生成細胞の感染のために使用した。後の生成のために、同じMDCK細胞ならびに培地および添加物について同じ培養条件が使用されるという可能性は、重要な利点である。なぜなら、対応する生成物の登録の間における文書化の必要性が、有意に減少し、そして種ウイルスの承認が改善されるからである。
【0092】
(実施例17:ヒトヘルペスウイルスの産生)
実施例8〜13に従う1型単純ヘルペスウイルス(前記実施例に記載される単離体)を用いる生成細胞の感染について、0.1または0.01のMOIおよび回収後48〜96時間のインキュベーション時間を選択する。しかし、より長いインキュベーション時間またはより短いインキュベーション時間に対応して、より低いMOIまたはより高いMOIがまた使用され得、ここで収量は、いくらか変化し得る。なぜなら、最適な回収時間が常に見られるわけではないからである。しかし、概して、前述の条件が好ましく、その結果、経済的な理由のために、そして以後の作業の促進のために、培養収量が、10未満の50%培養物感染単位/mL(CID50/mL)で有意に見られることはない。このこと以外に、この時間スキームは、通常の作業リズムに有利に適合され得る。0.0001未満の過度に低いMOIおよび延長されたインキュベーション時間は、ほとんどいつも、より低い収量をもたらし、従って、最適以下となる。
【0093】
(実施例18:動物ヘルペスウイルスの増殖)
ヘルペスウイルス菌(Herpes virus suis)(仮性狂犬病ウイルス)である「Phylaxia」株(ワクチン株)を、実施例1に従って、100mLの撹拌培養物を有する小規模の生成培養物の感染のために接種した。生成培養物の感染は、0.01のMOIで、1×10細胞/mLの細胞数において生じた;感染培養物の上清の回収を、37℃または33℃での3〜5日間にわたるインキュベーション時間の後で行った。予期された収量は、10感染単位/mLの範囲またはそれよりも有意に高い範囲であった。比較的高い力価が、異なるインキュベーション温度において達成され得た:
37℃で3日後:108.7CID50/mL、
33℃で3日後:108.6CID50/mL、
37℃で5日後:107.9CID50/mL、
37℃で5日後:108.3CID50/mL。
【0094】
このウイルスの力価測定を、これらの場合には、CRFK(クランダルネコ腎臓)細胞において実施し、そして7日後に、細胞変性効果に関して解釈した。
【0095】
(実施例19:動物アデノウイルスの増殖)
アデノウイルス(1型イヌアデノウイルス、CAV−1ワクチン株269)を、実施例1に従って、100mLの撹拌培養物を有する小規模の生成培養物の感染のために接種した。生成培養物の感染は、0.01のMOIで、1〜1.5×10細胞/mLの細胞数において行った;感染培養物の上清の回収を、37℃または33℃での3〜5日間にわたるインキュベーション時間の後で行った。インキュベーション温度(33℃または37℃)および感染期の持続期間(3日間または5日間)にかかわらず、ほぼ同一の力価(107.5CID50/mLまたは107.6CID50/mL)が、回収物において見られた。
【0096】
ウイルス力価に関する収量の決定は、マイクロタイタープレートにおける接着性MDCK33016細胞における力価測定(実施例2を参照のこと)によって行い、そしてCPEの平均値によって、調製の7日後に評価した。力価測定した感染培養物は、2%炭酸水素塩の添加物(5%ストック溶液から)を有するが血清もタンパク質添加物も有さないEME培地において保存された。この力価測定系は、高感度な検出系であることが証明された。なぜなら、この系は、最少の希釈量(達成される力価値において認識可能な程度)であっても、非常に効率的にアデノウイルスをなお増殖するからである。
【0097】
さらなる感染ロットにより、同じ型の接着性培養物ロットと比較して、懸濁培養系が優れていることが実証される。
【0098】
接着性MDCK33016培養物を、培養物がコンフルエンスに達するまでFalcon培養フラスコ(175cm)で培養し、そしてコンフルエンスに達成したところでCAV−1に感染させた。同じ量(MOI=0.01)の同じウイルス調製物を、感染のために使用し、これをまた、並行して培養された懸濁培養物の感染のために使用した。バルク培養物を、同じ培地(標準培地)において培養し、そして感染時に、補充物を含まない培地に培地交換することによって切り替えた。両方の培養系を、37℃でインキュベートし、そして培養上清を、感染から5日後に回収した。無細胞培養上清を、MDCK細胞において上記されたようにして力価測定した。接着系のウイルス収量は、106.3CID50/mLに達し、この懸濁培養物ロットは、107.8CID50/mL(すなわち、約30倍以上)であった。
【0099】
(実施例20:パラミクソウイルスの増殖)
アデノウイルスに関する先の実施例におけるのとほぼ同じ様式で、パラミクソウイルスの代表物(ATCC、株VR−288)を使用した。わずか3日後に回収時点としたことが偏差であった。なぜならこのウイルスは、非常に迅速に複製し、そして評価および力価測定もまた、より速く(すなわち、5日後)に行われるからである。37℃での感染後にさらにインキュベートされた培養物は、107.4CID50/mLの収量を与えた:同じ力価が、感染温度を感染時点から33℃に低下させた場合に測定された。
【0100】
アデノウイルスと同様に、MDCK33016細胞はまた、血清またはタンパク質添加物を有するMEM培地(炭酸水素塩添加物もまたここに存在した)において効率的なウイルス複製を有するパラミクソウイルスについて、非常に適切な力価測定系であることが実証された。アデノウイルスについての実施例において記載されたように、接着性培養物と懸濁培養物との間の直接的な比較もまたここで行った。接着系における最大収量は、96時間にわたる感染後に106.6CID50/mLであり、懸濁培養系は、比較すると、72時間後に、より優れかつより良好な収率(107.3CID50/mL)を与えた。
【0101】
代替として、実施例2に従う接着性MDCK33016細胞を、同じ科の別のウイルス(PI−3、ATCC VR−93)を有する5%FCSを含むMEMに感染させた。37度での1週間にわたるインキュベーション後、その上清は、CV−1細胞(ECACC
87032605)における力価測定後に少なくとも10CID50/mLを含み、モルモット赤血球と陽性の血球凝集反応を示し、そして特異的な抗体(Biosoft Co.からの抗PI−3 MAb−FITC)と陽性の免疫蛍光性を示した。
【0102】
同じウイルス株(PI−3、ATCC VR−93)をまた、MDCK33016培養物における感染についての実施例12と類似の様式で、化学的に規定された培地および無タンパク質培地のもとで使用した。感染の3日目、5日目、9日目および12日目に、22%の培養物容量を取り出し、そして新鮮な培地により置換した。7日目に、細胞を含む50%の培養物容量を取り出し、そして新しい培地と置換した。全体として、感染の間に培養物容量は、1回より多く完全に取り替えられ、そして培地補充物によって、希釈により細胞をさらに増殖する機会を与えられた。使用されたこの方法は、全体として、ほぼ1:2.4の培養継代に対応し、ここでは過剰量のみが取り除かれた。培養物の有意により高い継代または希釈(おそらく特に、開始期において)は、ここでは全く使用されなかった。
【0103】
以下のウイルス収量が測定された。
【0104】
感染日数 :3 5 7 9 12 14
logCID50/mL:7.9 8.05 8.25 7.45 6.7 7.0
(二連の試験からの平均値)。
【0105】
(実施例21:レオウイルスの増殖)
標準培地におけるMDCK33016細胞の懸濁培養物を、0.01のMOIで3型レオウイルス(Bio Doc,Hannoverから入手)に感染させ、そしてさらに33℃または37℃で3日間または5日間インキュベートした。培養上清のサンプルを、5日後および7日後に採取し、そして3%FCSを有するMEM培地中のBHK細胞を使用して提供された系において力価測定した。力価の評価を7日後に行った。
【0106】
37℃での5日後の懸濁培養物のウイルス収率は、108.1CID50/mLであり、33℃では、108.0CID50/mLであった。7日後に、両方の温度ロットにおける力価は、108.0CID50/mLであった。
【0107】
同じウイルス株を、0.01のMOIにおける感染についてのMDCK33016培養物における実施例12と同様に、化学的に規定された培地および無タンパク質培地において使用した。感染の3日後、7日後、および10日後に、22%の培養物容量を取り出し、そして新鮮な培地により置換した。7日目に、細胞を含む50%の培養物容量を取り出し、そして新しい培地と置換した。従って、全体として、感染の間に培養物容量は、ほぼ完全に取り替えられ、そして培地補充物によって、希釈によりさらに増殖する機会を細胞に与えた。使用されたこの方法は、ほぼ1:2の培養継代に対応し、ここでは過剰量のみが取り除かれた。培養物の有意により高い継代または希釈(おそらく特に、開始期において)は、ここでは全く使用されなかった。
【0108】
以下のウイルス収量が測定された。
【0109】
感染日数 :3 7 10 14
logCID50/mL:5.4 7.1 6.6 6.6
(二連の試験からの平均値)。
【0110】
(実施例22:フラビウイルスの増殖)
1〜1.5×10細胞/mLの細胞密度を有するMDCK33016細胞の懸濁培養物を、標準条件(標準培地、37℃の培養温度および感染温度)下で、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス(株K23、Niedrigら、1994,Acta Virologica
38:141−149)に感染させた。先の実施例から外れて、強く変化するMOIを感染のために使用した。さらに、感染培養物を、化学的に規定された培地中に一部維持したか、またはタンパク質含有添加物を有さない培地中に一部維持した。異なる培養物および回収方法を使用し、これにより、種々のパラメーターが変化される場合でさえ、高い収量が、この系を用いて達成され得、さらに複数回の回収が可能であることが示された。これらの変化は、表3にまとめられる。ウイルス力価測定をA549細胞(ECACC番号86012804)において行い、そしてCPEを参照して5日後に評価した。同じ培養物の繰り返しの回収が、培養培地の交換によって達成され、その結果、各回収の間に細胞に新規の培地が供給され、従って、さらに増殖され得るという事実は、注目に値する。これらの回収がなければ、培養物は、より長い期間にわたって、生存せずそして生産的のままには維持されない。短い間隔での頻繁な培地交換は、培養物の高い代謝生産を補償し得ないので、さらなる培地の補充および培養物の増加は、感染時の4日後または5日後に行った。
【0111】
(表3.種々のMOIを使用する標準培地および代替培地中でのMDCK 33016培養物中におけるCEEウイルス/K23の増殖ならびに改変体の回収)
【0112】
【表3】

(M+30)は、示された日数の培養物容量の+30%の培地の補充を意味する。
【0113】
(実施例23:ピコルナウイルスの増殖)
接着性MDCK 33016培養物を、5%胎仔ウシ血清および炭酸水素塩を補充したMEM培地中で、A型肝炎ウイルス(HAV、株HM175、ATCC VR−1358)での感染のために培養した(実施例2を参照のこと)。この実験の状況下において、さらなる「Munich」ウイルス単離体を、使用した(Frosnerら、1979、Infection 7:303−305)。希釈ウイルスを、新たに調製された培養物に接種し、培養物を37℃でインキュベートした。培養物を、3〜4日の回転で交換することで、1:4のさらなる継代に供した。
【0114】
MDCK 33016細胞の懸濁培養物を、実施例1に従う標準培養物中で培養し、HM175を接種し、33℃でインキュベートし、次いで、毎週1:10の継代に供した。懸濁培養物中の接着細胞を、感染後35日間までさらに維持した。次いで、活性なウイルス複製の検出は、CPE(株HM175)によってか、または既に記載された方法(Gregersenら、1988;Med.Microbiol.Immunol.177:91−100におけるVirus titration、第93頁を参照のこと)に従って行った。精製されたIgGとしてのヒト抗HAV抗体を、偏差としてのウイルス特異的抗体として使用した(名称F86012、Dade Behringの御好意により提供された)。製品番号39015(Sigma Co.)を、ビオチン標識を有する抗ヒトIgG抗体として使用した。この系を用いる活性なウイルス増殖の特異的検出によって、顕微鏡において低倍率で容易に認識される茶色がかった桃色に着色した細胞が得られる。他方、ウイルス陰性細胞は、無色に見えるかまたはほんのわずかな着色を有する。調製から3週間後におけるウイルス力価測定もまた、同じ検出法で評価され、この方法のために、ヒト二倍体細胞(MRC−5)を、培養系として使用した。
【0115】
上記の感染ロットの全てにおいて、そして使用された両方のウイルス単離体で、活性なHAV複製は、MDCK細胞において検出され得る。驚くべき迅速なウイルス増殖を、懸濁培養物中の株HM175で検出した。感染後7日目に、上清中で測定されたウイルス力価は、105.4CID50/mLであった;この培養物を、毎週、単純な希釈によって1:10の継代に供し、7日後に得られた培養物において同様のウイルス力価を再度得た。培養の最後および2回のさらなる細胞継代の後に、無細胞培地の1つのサンプル中のウイルス力価を決定した。全培養物のサンプルもまた採取し、その中に含まれる細胞を、−20℃での2回の凍結および解凍によって破砕した。細胞成分を、遠心分離によって取り出し、その後、サンプルを力価測定した。このロットから得られたウイルス収量は、表4にまとめられ、このウイルス収量は、特定の収量に対する有害な影響なしに、毎週10倍の培養物の増殖が可能であり、ここで、容量単位当たりの良好なウイルス力価が、かなりの量の増加に関わらず、回収され得ることが示される。次いで、かなりの割合のウイルスが上清中に見出されることは注目に値し、このことはまた、この強力な細胞結合ウイルスに対して驚くべきことである(表4を参照のこと)。
【0116】
(表4.連続的増殖および培養物容量の増加を伴うMDCK 33016懸濁培養物中におけるA型肝炎ウイルス(株HM175)の増殖)
【0117】
【表4】

n.d.決定されず。
【0118】
(実施例24:肺炎ウイルスの増殖)
5%FCSおよび炭酸水素塩の添加されたMEM培地中の接着性MDCK33016培養物(実施例2を参照のこと)を、ヒトRSV−A(株A−2;ATCC VR−1302)での感染のために使用した。このウイルスを、1:100に希釈し、そして新しく調製した培地に接種し、次いでその培地を37℃でインキュベートした。1週間後、1mLの培養上清を新しい培地に移し、そして再び7日間インキュベートした。MA−104細胞(ECACC 85102918)における回収した培養上清は、力価測定された場合に、CPEによる力価測定の間に、105.5CID50/mLのウイルス力価を示す。
【0119】
ウイルス株A−2(ATCC VR−1302)を、MDCK−33016培養物において、実施例12と類似した化学的に規定されおよび無タンパク質培地のもとでの感染のために使用した。感染の3日目、5日目、7日目、9日目および12日目に、培養物容量の22%をとり出し、そして新鮮な培地と交換した。7日目に、細胞を含む培養物容量の50%を取り出し、そして新しい培地と交換した。全てにおいて、感染の間の培養物容量は、1回より多く完全に取り替えられ、これらの細胞に、培地補充物によって、希釈によりさらに増殖する機会を与えた。使用した方法は、全体として、培養物のおよそ1:2.4の継代に一致し、ここでは、過剰量だけを除去した。培養物の有意により高い継代または希釈(おそらく特に、開始期において)は、ここでは全く使用されなかった。
【0120】
以下のウイルス収量が測定された:
【0121】
【表5】

(二連の試験からの平均値)n.t.非滅菌により、サンプルを試験しなかった。
【0122】
ウイルス株RSV−B(ATCC VR−1401)を、等価なロットにおいて試験した。ウイルス力価測定のために、Hep−2細胞(亜株Hep−2C、Paul Ehrlich Institute(以前は、Frankfurt)によってご好意で提供された)を使用した。なぜなら、代表的なウイルス合胞体が、力価測定により良く開発されており、従って評価が容易であるからである。以下のウイルス収量が測定された:
【0123】
【表6】

(二連の試験からの平均値)。
【0124】
(実施例25:ロタウイルスの増殖)
5%補充物および炭酸水素塩の添加されたMEM培地中の接着性MDCK33016培養物(実施例2を参照のこと)を、シミアンロタウイルスSA−11(ATCC VR−899)での感染のために使用した。このウイルスを、新たに調製された培養物中において1:100で接種し、そしてトリプシン(0.5〜10μg/mL、好ましくは、5μg/mL)を補充し、次いで、培養物を37℃でインキュベートした。培養物を、再度、3〜4日の回転で交換することで、1:4のさらなる継代に供した。
【0125】
トリプシン処理後の培養物サンプルを、連続的に3回凍結させ(−20℃)、そして再度解凍し、次いで、ウイルスの力価測定のために使用した。ウイルスの力価測定を、MA−104細胞(ECACC 85102918)において行う。力価測定の評価を、CPEによって、10日後に行う。最適なウイルス力価は、このウイルスにおいて、初期物質におけるウイルス含量に依存して、5〜10回の細胞継代後にのみ見られる。
【0126】
次いで、種ウイルス生成のための初期物質(これは、実施例3に記載の手順と同様にして調製される)の選択を行う。次いで、この種ウイルスを、実施例8、9および10に記載のような生成のために使用する。ここで、ここに記載されたトリプシン濃度が、種々の培地について維持される。
【0127】
トリプシン処理後の培養物サンプルを、連続的に3回凍結させ(−20℃)、そして再度解凍し、次いで、ウイルスの力価測定のために使用した。ウイルスの力価測定を、MA−104細胞(ECACC 85102918)において行う。力価測定の評価を、CPEによって、10日後に行う。最適なウイルス力価は、このウイルスにおいて、初期物質におけるウイルス含量に依存して、5〜10回の細胞継代後にのみ見られる。
【0128】
次いで、種ウイルス生成のための初期物質(これは、実施例3に記載の手順と同様にして調製される)の選択を行う。次いで、この種ウイルスを、実施例8、9および10に記載のような生成のために使用する。ここで、ここに記載されたトリプシン濃度が、種々の培地について維持される。
【0129】
さらなる実験に従って、より良い結果を生じる幾分異なる経路をとった。最初に、使用されたトリプシン濃度を、MA−104細胞における試験によってさらに最適化し、次いで、8〜20μg/mLに設定した。1.6μg/mLと4.4μg/mLとの間のEDTA濃度(8μg/mLトリプシンにおいて1.6、または20μg/mLトリプシンにおいて4.4)をまた補充した。これらの最適化された条件からのウイルスを、上記のようではあるがトリプシン濃度を増加させ(8μg/mLまたは16μg/mL)てEDTAの存在下において力価測定し、そして既に、培養物の解釈の間に、5日後においてのみ最適な力価が得られた。これらの最適化された条件下で回収されたウイルスを、MDCK33016懸濁細胞において0.1または0.01のMOIに感染用量を調整した後で無血清培地中に接種した(100mLスケール、8μg/mLトリプシン、1.6μg/mL EDTAにおいてではあるが実施例5と同様にした)。37℃での1日間のインキュベーション後のこれらの培養物の上清ウイルス力価は、106.0CID50/mLまたは106.1CID50/mLであり、2日後には、107.6CID50/mLまたは106.4CID50/mLであった。20μg/mLトリプシンおよび4.4μg/mL EDTAでは、105.8CID50/mLと106.0CID50/mLとの間の力価が、1〜3日後に見出された。
【0130】
2日目に回収されたサンプルでの2回のさらなる継代によって、0.01のMOIおよび8μg/mLトリプシン/1.6μg/mL EDTAにおいて107.5CID50/mLまたは107.9CID50/mLの最大力価が得られた。これによりおそらく、特定の適合が起こったが、これは、これらの培養物においてわずか数回のみのウイルス継代を要すると推定される。
【0131】
(実施例26:ワクシニアウイルスの増殖)
5%FCSおよび炭酸水素塩の添加されたMEM培地中の接着性MDCK33016培養物(実施例2を参照のこと)を、ワクシニアウイルス(株WR、ATCC VR−119)での感染のために使用する。このウイルスを、新たに調製された培養物に接種し、次いで、この培養物を37℃でインキュベートする。5日後に、回収された培養上清のサンプルを、ウイルスの力価測定のために使用する。
【0132】
MDCK33016細胞の懸濁培養物を、実施例1に従って標準的な培地において培養し、そして1:1000の希釈率のワクシニアウイルスを接種する。感染された培養物のさらなるインキュベーションにあたり、2日間隔でサンプルをとり、そして力価測定した。
【0133】
ウイルスの力価測定を、Vero細胞(WHO種、ECACCから入手)において行う。力価測定の評価を、5日後にCPEによって行う。10CID50/mLより高いウイルス力価が、2〜3日後にすでに、0.01のMOIにおいて見られる。
【0134】
(実施例27:ラブドウイルスの増殖)
細胞培養フラスコにおいて、実施例1に従う標準培地中の懸濁培養物を、培地1mL当たり1×10細胞の細胞密度で播種した。培養物の増殖の後、2つの培養物を、0.01のMOIを有する狂犬病ウイルス(株Pitman−Moore、ワクチンウイルス株)に感染させ、1つの培養物を、0.001のMOIを有する狂犬病ウイルスに感染させた。これらの培養物を37℃でインキュベートし、4日ごとまたは3日ごとにトリプシンを用いて解離し、そして1:10比(4日後)または1:8比(3日後)で継代に供し、この方法を18日間維持した(表5を参照のこと)。感染の成功を、各継代で追跡した。培養物に、3.5%のホルマリン溶液を与え、この溶液中で、室温で3日間インキュベートし、ウイルスの不活化を達成した。ホルマリン溶液の除去後、培養物をPBSで洗浄し、PBS中の1%Triton X100と共に、室温で25分間インキュベーションした。溶液の除去後、この培養物を、PBSで3回洗浄し、狂犬病ウイルスに対するFITC標識化抗体(50μL 1:400希釈ウサギ抗狂犬病IgG FITC、Dade Behring,OSHY 005)を適用した。37℃での90分のインキュベーション後、この培養物を、PBSで再び洗浄し、そしてこの培養物を、倒立蛍光顕微鏡下で評価した。
【0135】
代替として、培養上清のウイルス力価測定を、MRC−5細胞における標準的方法に従って実施し、この培養上清をまた、ホルマリン/Triton前処理の後、上記のような免疫蛍光によって評価した。この系で達成されるウイルス力価によって、対応する生成法においての収量に対する大まかな補正を、認可されたヒトワクチン(Rabivac)に対するMRC−5培養物を使用して実施した。これは、どれだけの量のワクチン抗原が、1mLの培養収集物あたりに含まれるかについての方向付けを可能にする(表5を参照のこと)。
【0136】
わずか4日後、両方のロット(MOI 0.01および0.001)が、陽性の結果を示し、これにより、同様の感染経路を示したが、低いMOIで、感染経路(11日目まで、約1.2〜0.5 logCID50のより低いウイルス力価で認識され得る)は、わずかに緩徐化した。11日目の培養物の第3継代から、初期細胞破砕に伴う非常に強い特異的な免疫蛍光が全ての培養物において見出され、次いで、ほとんどの細胞が、18日目の第5継代によって完全に破砕され、その結果感染が終了するまで、この免疫蛍光は、さらに増加した。特定のウイルス含量は、14日目まで連続的に増加し、次いで、細胞破砕の増加の結果として再び減少する。この感染経路の結果は、以下の表においてまとめられ、そして(狂犬病ウイルスの公知の遅いウイルス増殖において測定される場合に)適合を伴わない非常に迅速なウイルス増殖がこれらの細胞において予測され、ここで良好な抗原収量が、規則的な間隔でかつ繰り返して細胞が継続的に再増殖されるのとは無関係に、回収され得る。
【0137】
(表5.培養物容量の連続的増加の間のMDCK 33016培養物中の狂犬病ウイルスの増殖)
【0138】
【表7】

類似する様式で、同じウイルスを、実施例1に従う懸濁培養物中に直接接種し、ここで、0.0001のMOIを、さらに使用した。標準培地を、全感染経路について再度排他的に使用し、この培養物をまた、1:8または1:10で1週間に2回移した。移動は、細胞の新鮮な培地中への単純な希釈および再度の接種によってのみ行った。ここで、感染の成功を、上記のように、MRC−5細胞中でのウイルス力価測定のみを参照して追跡した。3つ全てのMOIでのわずか4日後の感染物は、培養上清において陽性のウイルス力価を生じた。ウイルス力価は、継代間の7日目の後の最初の希釈損失の後に、再度、指数関数的な希釈が継続的に実施されたにも関わらず上昇したが、懸濁培養物中での大量の細胞破砕物は引き起こさなかった。感染を、第8継代(感染後、28日目)まで追跡し、次いで、中断した。
【0139】
これらの感染に由来するウイルスサンプルを、種ウイルスとして凍結し、そして100mLから始められる懸濁培養物の新たな感染のために使用し、そして標準培地において、および上記と同じ継代条件下で使用した。この場合、MOIは、0.000025まで減少された。感染を、6細胞継代(21日目)にわたって維持した。転換され、培養上清1mL当たり約0.3ワクチン用量を与えられたウイルス力価は、かなりの継代希釈にも関わらず、この感染経路の終わりに、ゆっくりとウイルス力価を上昇して測定される。ほんの一部ではなく培養物容量全体がさらなる継代に供した場合、約500Lの培養物が、6回の継代後に回収され得、これは、約150,000ワクチン用量に対応するウイルス収量を有していた。
【0140】
(実施例28:トガウイルスの増殖)
5%FCSおよび炭酸水素塩の添加された標準培地またはEME中の接着性MDCK33016培養物(実施例2を参照のこと)を、日本脳炎ウイルス(ATCC VR−343)での感染のために使用した。このウイルスを、0.1〜0.001のMOIで希釈し、そして新たに調製された培養物に接種し、次いで、この培養物を、33℃あるいは37℃でインキュベートした。活性なウイルス増殖が、アセトン固定された細胞中における特異的な抗血清を用いた免疫蛍光測定によって、そして使用されたMOIに依存して、決定された。最大のウイルス抗原が存在する時間を決定した。上清由来のウイルス回収物のウイルス力価測定をVero細胞において行い、そしてまた免疫蛍光測定によって評価した。免疫蛍光測定に対する代替法として、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ系が、ウイルスの検出のためおよび実施例23(A型肝炎ウイルスについて記載された、ピコルナウイルスの増殖)と同様の力価測定の評価のために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチンの商業的規模での生成のための方法であって、該方法は、
(a)無血清培地、無タンパク質培地、または化学的に規定された培地中で、Madine−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞
の懸濁培養物を培養する工程であって、ここで
(i)培養は、供給バッチ系で行われ;
(ii)培養容積は、新鮮な培地の添加により増加され;そして
(iii)100〜10000Lの生成容量に到達する、工程;
(b)該MDCK懸濁培養物をウイルスに感染させる工程;
(c)該ウイルスは、該MDCK懸濁培養物中で増殖される工程;および
(d)該ウイルスまたは該ウイルスにより生成されるタンパク質は、該細胞培養物から単離される工程
を包含する方法。
【請求項2】
前記ウイルスは、β−プロピオラクトンで不活性化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞は、感染前に化学的に規定された培地中で培養され、そして感染後に無タンパク質培地中で培養されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記MDCK細胞株は、細胞株MDCK33016に属する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスは、ssDNAウイルス、dsDNAウイルス、RNA(+)ウイルス、RNA(−)ウイルスまたはdsRNAウイルスであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスは、アデノウイルス、オルトミクソウイルスもしくはパラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、エンテロウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、またはポックスウイルスから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスは、アデノウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、および関連する東洋(ロシアまたは他の)形態、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、C型肝炎ウイルス、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、ラブドウイルス、肺炎ウイルス、レオウイルス、1型単純ヘルペスウイルスまたは2型単純ヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、イヌアデノウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ウシヘルペスウイルスまたはブタヘルペスウイルス、BHV−1、または仮性狂犬病ウイルスである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスは、アジュバント、補助剤、緩衝剤、希釈剤または薬物キャリアと混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(e)前記ウイルスをCSクロマトグラフィーおよび/またはスクロース勾配超遠心分離により精製する工程をさらに包含する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−138205(P2010−138205A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58365(P2010−58365)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2008−204890(P2008−204890)の分割
【原出願日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願人】(301072524)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (5)
【Fターム(参考)】