説明

MEMSスイッチ

【課題】 MEMSスイッチでは、可動構造体を支持する「ばね」のばね定数を大きくすることが、特性向上、特に長期信頼性やスイッチング速度向上にとって有効な手段となっている。しかし、ばね定数を大きくすると、スイッチ駆動に必要な電圧も大きくなり、半導体回路との集積化が困難であった。このため、駆動電圧の低減化とMEMSスイッチ特性の向上を両立させることが要求されていた。
【解決手段】 可動構造体の機械的な振動を利用すると低い駆動電圧でも大きな振動振幅を得ることができ、プルインの誘起が容易となる。直流電圧と振動を励起する交流電圧を制御することにより、プルインとリリースの制御が可能であり、MEMSスイッチのメイク動作、ブレーク動作を実現することができる。この結果、ばね定数を増大させても、駆動電圧の低減化が可能であり、スイッチ特性も向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSスイッチの特性を改善するための構成と駆動法に関するものである。また、この駆動法を用いて駆動電圧を低減することが可能なMEMSデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの技術進歩は大きく、工業用機器、民生用機器など広範囲に渡って利用されてきている。特に、半導体デバイスの微細化、高集積化などが、半導体デバイスを搭載した機器、システムの小型化、軽量化、低価格化、高機能化などに大きく寄与するに至っている。しかしながら、微細化、高集積化が達成される反面、製造プロセスの大規模化、複雑化、また、製造装置の大規模化、高価格化が誘起されるに至っている。さらに、微細化の限界が議論され、微細化以外の開発方向も模索されるようになってきている。MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)デバイスはその一例であり、機械要素を微細化して半導体技術と適合させることにより、新しい機能を実現できることに特徴がある。また、MEMSデバイスの技術開発を通して得られた新技術や新しい知見は、従来の半導体プロセスにも反映され、半導体分野の進歩にも大きく貢献している。
【0003】
かかるMEMSデバイスの一つに「RF−MEMS」と呼ばれるデバイスがある。これは、高周波(RF)帯の信号を制御するデバイスであり、信号切換え(スイッチング)、フィルタや発振器など、通信分野への応用が期待されている。RF−MEMSスイッチを前記「信号切換え」に適用する事例では、RF−MEMSスイッチは高周波信号線の指定された領域に配置されている。前記RF−MEMSスイッチの例としては、微小な可動構造体に近接して固定電極(一般的には前記高周波信号線の脇に配置されている)を配置し、前記可動構造体と前記固定電極との間に電気信号(一般的には直流電圧)を印加し、前記可動構造体を機械的に変形させ、前記可動構造体と前記高周波信号線との間の距離を減少(電気的あるいは機械的な接触も含む)させている。かかる距離の減少の結果、高周波信号線のインピーダンスが変化し、高周波信号線を伝達する高周波信号の特性が大きく変化して、スイッチ機能を実現させることができる。このような機械的な変形を伴う構造体の作製には、多くの半導体プロセスが利用でき、今まで種々のRF−MEMSデバイスが提案されている。
【0004】
MEMSデバイスを構成する場合、大きく分けて二つのアプローチがある。一つは単結晶シリコンに微細加工を施す「バルクマイクロマシニング」であり、他の一つは犠牲層エッチングを利用する「サーフェスマイクロマシニング」である。
【0005】
バルクマイクロマシニングでは、単結晶シリコンのウェーハ裏面あるいは表面(あるいは、裏面および表面)をエッチングなどの周知の手段を用いて加工し、3次元構造を作製している。ダイアフラム型圧力センサや加速度センサなどへの応用が実用化されている。しかしながら、より複雑な3次元構造を実現することには限界があることも知られている。
【0006】
サーフェスマイクロマシニングでは、薄膜堆積、パターニング、および、薄膜間の層の除去(犠牲層エッチング)などを組合せた加工手段により3次元構造を作製している。シリコン層の薄膜を堆積させ、この層を変形あるいは振動する前記構造体にすることが多いが、金属薄膜を利用することもある。サーフェスマイクロマシニングは、一般的な半導体製造ラインの流用が容易である反面、薄膜の機械的特性が製造条件に大きく依存する問題などが指摘されている。
【0007】
図13はサーフェスマイクロマシニングで作製した並列接続型のMEMSスイッチの断面構造を示している。同図は、下記非特許文献1に記載されている。同図において、199は金で形成された可動構造体であり、可撓性のサスペンション196aおよび196b、および、支持台195aおよび195bで機械的に支持されている。195aおよび195bはガラス基板190と接合されている。この可動構造体199の一方の面(同図では下側の面)には、接点198と、バンプ197aおよび197bが形成されている。また、ガラス基板190の上側表面には、固定電極193aおよび193b、バンプ接触部194aおよび194b、および、コプレーナ導波路(高周波信号線である)が形成されている。前記コプレーナ導波路は、信号線191と、その両側に配置されたグランド192aおよび192bから構成されている。
【0008】
図14は、固定電極193aおよび193bと可動構造体199の間に外部から直流電圧が印加された場合の断面構造図である。前記直流電圧による静電気力により、可動構造体199は固定電極193aおよび193bの方向へ引き込まれる。この結果、可動構造体199を構成する接点198は信号線191に、バンプ197aおよび197bはバンプ接触部194aおよび194bに、それぞれ接触する。この状態では、コプレーナ導波路を伝達する高周波信号は、紙面に垂直な方向に伝達されることなく、接点198側へ伝達されることになる。この結果、高周波信号は遮断(スイッチは「オフ」)される。外部から印加された前記直流電圧をゼロにすると、可動構造体199はサスペンション196aおよび196bの「ばね」の復元力により図13に示した状態に戻る。図13の状態では、接点198が信号線191から離れた位置にあるため、コプレーナ導波路を伝達する高周波信号は、前記接点側へ伝達されることなく、このスイッチを通過して伝達(スイッチは「オン」)される。
【0009】
MEMSスイッチは半導体スイッチと比べて、挿入損失が小さく、またアイソレーションが大きいという特徴がある。また、静電駆動型スイッチは消費電力が小さく、構造が単純である。しかしながら、図13および図14に示した従来例のスイッチには下記のような課題がある。
(1)サスペンションの「ばね」定数を小さくするとスイッチの駆動に必要な電圧(以下、「駆動電圧」とも称する)を低くすることができる。しかし、弱いサスペンションでは復元力が小さいため、外部からの直流電圧をゼロにした時に、接点が信号線と接触したときに発生していた付着力に抗することができない。このため、前記したスイッチ「オフ」からスイッチ「オン」への動作ができず、MEMSスイッチとして機能しなくなるということが生じる。
(2)一方、可動構造体と固定電極との間の距離を小さくすることによっても駆動電圧を低減させることが可能である。しかし、この場合でも、サスペンションの変位が小さいために「ばね」の復元力を十分に大きくとることが困難であり、(1)と同様の付着の問題が発生する。
(3)上記(1)および(2)の課題を解決するために、大きな「ばね」定数をもつサスペンションでスイッチを設計した場合には、明らかに駆動電圧の増大が生じる。
(4)上記(2)の設計を行った場合には、さらに、スイッチの高周波特性が劣化するという問題が発生する。これは、前記した可動構造体と信号線との間の距離が小さくなったため、両者の間の静電容量が増大し、スイッチオン時(図13の、191と198が離れた状態である)に前記接点198を介して高周波信号が「逃げる」ことから生じる。このため、このようなスイッチでは高い周波数をもつ信号を取り扱うことが困難となる。
(5)スイッチング速度を速くするには、「ばね」定数を大きくとる必要があるが、これはスイッチの駆動電圧を増加させることになる。
(6)スイッチが伝達する高周波信号の電力が大きい場合には、駆動電圧が増大する。これは、大電力の高周波信号によって発生した静電気力に抗することができるよう、サスペンションの復元力を大きく設計することが必須となるからである。その結果、駆動電圧が増大する。
(7)可動構造体と固定電極とが接触すると、外部から直流電圧を供給する電源が短絡されることになり、MEMSスイッチが破壊される。これを避けるため、固定電極の表面に絶縁膜を設け、この短絡を防止することがしばしば用いられる。しかし、MEMSスイッチの動作を繰り返すと、この絶縁膜が帯電し、直流電圧の印加を停止しても可動構造体と固定電極が離れなくなる。絶縁膜の帯電現象はMEMSスイッチの耐久性(長期信頼性)を低下させ、特性劣化に繋がっている。
【0010】
前段落に記載したように、MEMSスイッチは利点があるものの、スイッチの駆動電圧の低減と、スイッチ特性の向上(付着に抗して使用できる動作繰返し数(寿命である)の増大、高周波特性の向上、スイッチング速度の高速化、大電力化など)との間にトレードオフの関係がある。特に、発売あるいは発表されているMEMSスイッチの駆動電圧は通常でも25ボルト以上もあり、半導体回路の動作電圧(1〜2ボルト)と大きく乖離しており、両者を集積化する大きな障害となっている。すなわち、駆動電圧の低減化が重要な解決課題であった。
【0011】
このような課題を解決する一つの手法として、図13とは異なる構造および駆動法のMEMSスイッチが発表されている。このスイッチは下記非特許文献2に記載されており、その構造図を図15に示す。同図(a)はMEMSスイッチの構造を示す図、同図(b)は増幅器への応用回路例を示す図である。同図(a)に示すように、中央に配置された円形の振動板は「Support Beam」と名付けられたサスペンションで支えられ、基板から浮上している。前記振動板の周囲には、前記振動板を取り囲むように、2組の固定された電極(固定電極)が配置されている。すなわち、本来はMEMS共振器として用いられる構造を利用している。上下方向(同図(b)では「左右方向」へ入れ替わっている)に配置された固定電極に高周波信号を印加すると、前記振動板の形状は円形から楕円形に変形し、上下方向および左右方向の伸縮運動(ワイングラスモードとも称される)が発生する。さらに、前記振動板の共振周波数と同じ周波数の高周波信号を印加すると、前記振動板の共振時の大きな振幅により、振動板と固定電極は周期的に「接触」と「非接触」を繰返すようになる。かかる「接触」と「非接触」の動作により、ある種のスイッチ機能が実現されている。この共振を利用したスイッチは「ばね」定数を大きくとることが可能であるにも関わらず、非常に低い駆動電圧でスイッチを駆動させることができるという特徴がある。同図(b)に示した回路例では、「VDD」と表記された直流電源からの出力が、「Vi」と表記された高周波信号でスイッチングされることになる。このスイッチングされた直流電圧からの信号(結果として高周波信号になる)が増幅器の出力となる。例示された構成は「E級」増幅器とも称されており、一部の高周波回路で利用されている。しかしながら、「E級」増幅器の適用対象は限られており、より一般的なコプレーナ導波路などへ適用することはできないという欠点がある。
【0012】
さらに、共振を利用したスイッチは、スイッチが共振周波数のごく近い狭い周波数帯域で動作するのに限られるという制限がある。たとえば、下記非特許文献2では60MHzの共振周波数をもつスイッチを試作しているが、通過帯域はわずか3キロヘルツである。また、このスイッチは、17ナノ秒の周期で高速スイッチングを行うことができるが、その他の周期ではスイッチングができないため、信号を伝達することができない。これは、このスイッチが常に振動しているからである。このため、このスイッチの用途は狭く限られている。
【0013】
前段落までに記載したように、MEMSスイッチの駆動電圧を低減するために「ばね」定数を小さくすると、スイッチ特性が劣化するという問題が生じていた。しかし、駆動電圧の低減は、半導体回路との集積化のためにも必須の要件である。また、スイッチの適用範囲を広げるためには、スイッチの駆動周波数帯域に狭い制限があってはならない。以上のように、MEMSスイッチの実用化への大きな期待に応えるためには、駆動電圧の低減とスイッチ特性の向上が重要な課題となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】学会発表論文 山本他、「単結晶シリコンMEMS共振器の三次元振動特性」、第27回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム予稿集(CD版)、265〜269ページ、2010年10月
【非特許文献2】学会発表論文 Y.Lin他、「A Resonance Dynamical Approach to Faster、 More Reliable Micromechanical Switches」、IEEE Frequency Control Symposium (FCR) 予稿集、640〜645ページ、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
MEMSスイッチにおいてすぐれたスイッチ特性を実現するためには、「ばね」定数を大きくして、高速化、大電力化、長期信頼性の要求を満足させることが必須である。しかし、一般的には駆動電圧が著しく増大するという欠点があった。このため、大きなばね定数をもつスイッチの駆動電圧をいかに低減させるかが、重要な解決すべき課題となっている。また、帯電現象による耐久性と信頼性の低下はスイッチとしての特性を劣化させているので、この現象を回避することも解決すべき課題となっている。さらに、スイッチの用途を狭く限定しないため、広い周波数帯域の高周波信号を対象とするMEMSスイッチの実現が課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
可動構造体と固定電極を有するMEMSスイッチにおいて、(1)指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、(2)前記可動構造体を機械的に振動させることによりメイク動作を誘起し、(3)前記第一の交流電圧を指定された第二の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を指定された第二の直流電圧に変化させた信号により前記メイク動作を維持し、(4)前記第二の交流電圧を指定された第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第二の直流電圧を指定された第三の直流電圧に変化させた信号によりブレーク動作を誘起させる。
【0017】
なお、本発明で使用する用語について記述する。前段落まででは、スイッチのオン、オフという用語を使用してきたが、用語の解釈の混乱を回避するため、以後は下記の定義に従って記述する。
メイクおよびブレーク:一般に「リレー」では、内蔵する接点が閉じた(接触した)状態を「メイク」、内蔵する接点が開いた(接触せず)状態を「ブレーク」と呼んでおり、これらを踏襲する。「メイク動作」とは、リレーの接点が閉じる動作であり、「ブレーク動作」はリレーの接点が接触しなくなる動作である。また、「メイク状態」とはメイク動作の後、節点が閉じたことが維持されている状態である。「ブレーク状態」とは、ブレーク動作の後、節点が開いたことが維持されている状態である。すなわち、「メイク」と「ブレーク」はスイッチの接点の物理的な動作形態を表現している。
オンおよびオフ:前記スイッチが搭載されている回路の機能を表現する。この回路が導通している状態を「オン」、非導通の状態を「オフ」とする。以下に詳述するように、高周波の分布定数回路(例えば、コプレーナ導波路)に「並列」的に配置されたスイッチでは、この導波路を高周波信号が伝播し続けるために、スイッチの接点が「ブレーク状態」である時には、スイッチが「オン」となっている。逆に、高周波信号が伝播しなくなるためには、スイッチの接点が「メイク状態」である時に、スイッチが「オフ」となっている。
プルイン:本発明の対象であるMEMSスイッチの構成要素である「可動構造体」が「固定電極」に近づき、特定の距離以下になった時、物理的に固定電極側へ「引込まれる」ことである。この時、前記MEMSスイッチは「メイク動作」を行い「メイク状態」へ移行する。
ホールド:前記「プルイン」状態が継続していることである。この時、リレーは「メイク状態」となっている。
リリース:前記「プルイン」状態から、前記可動構造体と前記固定電極との距離が大きく離れた状態へ移行することである。この時、前記MEMSスイッチは「ブレーク動作」を行い「ブレーク状態」へ移行する。
また、MEMSスイッチは、広く用いられている「リレー」と同義語と見做すことができる。リレーには多くの種類があるが、電磁型リレーが多用されている。このリレーでは、電磁石が発生した電磁力(磁界)で鉄片(アマーチャと呼ばれている)を吸引し、鉄片の一端に設けられた接点が、固定されている他の接点と機械的に接触し、これら2つの接点が電気的に導通するという動作原理である。一方、MEMSスイッチでは、前記可動構造体と前記固定電極間に外部から電圧を印加し、発生した静電気力(電磁力に対応)が、「可動構造体」(アマーチャに対応)を引き付ける。「可動構造体」には接点が配置されており、固定されている他の接点と機械的に接触し、これら2つの接点が電気的に導通(「メイク」である)する。本発明は、前記可動構造体を変位させ前記固定電極との距離を短くする手法、および、前記変位をもとの状態に復帰させる手法に特徴がある。
【0018】
なお、前々段落に記載した「前記可動構造体を機械的に振動させることによりメイク動作を誘起し」とは、前記交流電圧の周波数で前記可動構造体が機械的に振動し、前記MEMSスイッチがメイク状態に達することを表している。ここでの「機械的な振動」には、共振時の大振幅の振動も含まれている。同様に、「ブレーク動作を誘起し」とは、前記MEMSスイッチがメイク状態からブレーク状態に移行することを表している。また、「前記第一の交流電圧を指定された第二の交流電圧に変化させ」などの表現において「変化」とは次のような場合も含んでいる。すなわち、前記第一の交流電圧と前記指定された第二の交流電圧の電圧値が等しく、実際は「変化していない」場合である。かかる場合でも、前記第一の交流電圧(例えば1ボルト)から前記指定された第二の交流電圧(1ボルト)へ形式的に「変化」すると表現している。さらに、「重畳」とは、交流電圧に直流電圧を加える(直流バイアスを与えることと同等)こと、あるいは、直流電圧に交流電圧を加えることを表している。
【0019】
なお、前記したMEMSスイッチの駆動について、一例を下記に示す。
第一の交流電圧=0.6ボルトpp(Peak−to−Peak)
第一の直流電圧=5.5ボルト
第二の交流電圧=0ボルトpp(Peak−to−Peak)
第二の直流電圧=5.5ボルト
第三の交流電圧=0ボルトpp(Peak−to−Peak)
第三の直流電圧=4.0ボルト
この条件では、
第一の交流電圧と第一の直流電圧で「プルイン」が発生し、同時に「メイク動作」起きる。
第二の交流電圧と第二の直流電圧で「ホールド」状態に移行し、「メイク状態」が継続している。
第三の交流電圧と第三の直流電圧で「リリース」が発生し、同時に「ブレーク動作」起きる。
【0020】
なお、前記可動構造体と前記固定電極は同一製造プロセスで形成されるが、これに限らない。また、前記可動構造体と前記固定電極は同一材料で構成されるが、これに限らない。前記可動構造体と前記固定電極が同一材料でない場合には、異なる製造プロセスで作製されることになる。
【0021】
なお、前記可動構造体と前記固定電極の構成材料は金属とは限らない。例えば、シリコンなどの半導体、シリコンを成分として含む半導体、樹脂、樹脂などの絶縁体の表面に導電性を付与した材料、各種材料を組合せたハイブリッド材料などであっても良い。また、「前記可動構造体を機械的に振動させる」原動力としては静電気力に限らず、電磁力、圧電歪、熱歪などであっても構わない。例えば、前記可動構造体、あるいは、その一部(例えば、可動構造体の表面)に圧電材料を採用し、外部から供給された直流電圧および交流電圧で、機械的な歪を発生させ、前記可動構造体を振動させることである。さらに、静電力による前記可動構造体の変位の軌跡は、「ほぼ直線」(厳密に表現するならば、可動構造体の一端が固定されている場合には、円弧となる)とは限らない。例えば、直線、ジグザグなどであっても構わない。
【0022】
なお、「メイク状態」とは、前記した2つの接点が電気的に導通状態にあることであるから、前記可動構造体と前記固定電極間の距離とは無関係である。もちろん、「メイク状態」では、「ブレーク状態」と比較して、この距離は小さくなるが、この距離が「ゼロ」になることはない。ここで、「ゼロ」とは、前記可動構造体と前記固定電極とが直接に接触している(電気的な短絡である)ことである。もし「ゼロ」であるとすると、両者は電気的に短絡するので、前記交流電圧および前記直流電圧を供給する電源系に格段の配慮をする必要があり、好ましくないからである。本発明では「メイク状態」においても、前記可動電極と前記固定電極とが「電気的に絶縁された状態」である。すなわち、前記固定電極の表面、あるいは、前記可動構造体の表面(固定電極と対向する面)に絶縁膜が被覆されているような構成例においては、前記可動構造体が固定電極の表面と機械的に接触(機械的な距離はゼロである)をしていても、電気的には「ゼロ」ではなく、両者は電気的に絶縁されていることになる。かかる構成例は、前記したような電源系への格段の配慮が不要になるのでより好ましいと言える。しかしながら、前記可動構造体や前記固定電極の表面を絶縁膜で被覆する場合には、MEMSスイッチのメイク動作およびブレーク動作を多数回繰返すうちに、この絶縁膜が帯電し、MEMSスイッチの特性劣化(例えば、動作寿命が短くなる)を誘起することを考慮しなければならない。
【0023】
なお、前段落に例示した「絶縁膜による被覆」を排除することは可能である。具体的には、前記MEMSスイッチに「ストッパ」を組み込んで、前記可動構造体の変位量を制限することである。例えば、前記固定電極の近傍に、より背が高いストッパを配置して、前記可動構造体をこの位置で停止させる構成がある。前記ストッパが配置される位置は、(1)前記可動構造体の下側表面(前記固定電極に対向する面)であって、前記固定電極が配置されている領域に対向した領域、(2)前記可動構造体の下側表面(前記固定電極に対向する面)であって、前記固定電極が配置されていない領域に対向した領域、(3)前記固定電極の表面、(4)前記固定電極が配置されている表面であって、前記固定電極が配置されていない領域などである。(1)と(3)の構成では、メイク状態で、前記ストッパと前記固定電極とが機械的に接触する。このため、前記ストッパあるいは前記固定電極、あるいは、前記ストッパおよび前記固定電極の少なくとも表面を電気的に絶縁性にすることが必須となる。しかしながら、「絶縁膜による被覆」の排除が目的であることを考慮すると、(2)あるいは(4)が好ましい構成例となる。(2)あるいは(4)の構成例において、前記ストッパが導電材料であっても、当該ストッパとMEMSスイッチの可動構造体および固定電極とを回路的に切り離す(両者が機械的に接触しても電気的には導通しないような構成、例えば、当該ストッパをフローティング状態とする)構成を採用すれば良い。
【0024】
なお、「ストッパ」の表面は平坦であるとは限らない。例えば、この表面に「窪み」を設け、前記「窪み」の周辺領域がストッパ機能を有するような構成であっても構わない。また、当該ストッパの表面の中央領域に凸部(バンプ形状)を設け、当該凸部がストッパ機能を有するような構成であっても構わない。
【0025】
なお、前々段落に記載した「ストッパ」組込の代替として、可動構造体の「位置検出機構」を前記MEMSスイッチに組込み、電気的あるいは機械的なフィードバック制御で、前記可動構造体の変位量の最大値を規制することも可能である。「絶縁膜による被覆」を排除した上記の構成例では、この絶縁膜の帯電によるMEMSスイッチの特性劣化(例えば、動作寿命が短くなる)を防止できる利点がある。
【0026】
なお、前記した固定電極の数は1個とは限らない。2つ以上の固定電極を配置しても構わない。
【0027】
なお、前記可動構造体を変位させる静電気力については、対向して配置された前記可動構造体と前記固定電極との間で発生する静電気力だけとは限らず、周知の静電気力の利用形態を採用することができる。例えば、1組の櫛型電極群を組合せた静電アクチュエータの機構を利用することも可能である。
【0028】
前記可動構造体を振動させる前記第一の交流電圧を、前記可動構造体の共振周波数を中心としてプラス20パーセント、および、マイナス20パーセントを超えない周波数範囲内の周波数に設定する。
【0029】
なお、前記可動構造体を共振周波数で振動させると、前記可動構造体の変位を大きくすることができる。しかしながら、共振している振動体の制御は困難であるため、共振周波数「近傍」の周波数で駆動することにより、前記可動構造体の変位量が小さくなる欠点があるものの、制御の容易性を確保できる利点がある。また、前記可動構造体の振動特性(Q値)を抑える(Q値を小さくする)ようにすれば、共振周波数から離れた周波数で前記可動構造体を振動させても、その変位量の低下を抑制することができる。かかるQ値の抑制は、MEMSスイッチを「弱い真空度」(例えば、0.1気圧)の雰囲気で動作させたり、前記可動構造体を制振材料で構成することなどにより実現できる。さらに、MEMSスイッチの製造過程で発生する寸法誤差は避けることができず、このため、共振周波数は個々のMEMSスイッチでばらつくことになる。この影響を抑制するため、一定の範囲(例えば、プラスマイナス20パーセント)内にある周波数を用いれば、MEMSスイッチの前記電源系の設計が容易になる利点もある。
【0030】
なお、「メイク状態」では、前記交流電圧の周波数を共振周波数と異なる周波数に設定しても良い。例えば、「メイク動作」には共振周波数「近傍」の周波数を用い、「メイク状態」(「ホールド」状態でもある)にはこの周波数と異なる周波数を用いることである。
【0031】
(1)指定された第一の時刻に前記第一の交流電圧を供給し、(2)指定された第二の時刻に前記第一の直流電圧を前記第一の交流電圧に重畳させることによりメイク動作を誘起し、(3)指定された第三の時刻に前記第一の交流電圧を前記第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を前記第三の直流電圧に変化させることによりブレーク動作を誘起する。
【0032】
なお、前段落に記載したMEMSスイッチの駆動について、一例を下記に示す。
第一の時刻: 交流電圧=0.6ボルトpp(Peak−to−Peak)
第二の時刻: 交流電圧=0.6ボルトpp、直流電圧=5.5ボルト
第三の時刻: 交流電圧=0.6ボルトpp、直流電圧=4.0ボルト
この例では、交流電圧は常に供給し続け、直流電圧値の制御のみでMEMSスイッチを制御している。上記例では、第二の時刻に「プルイン」が発生し、同時に「メイク動作」が起きる。第三の時刻に「リリース」が発生し、同時に「ブレーク動作」が起きる。また、第一の時刻から第二の時刻の間はスタンバイ状態(「リリース」状態であると共に「ブレーク状態」でもある)である。第二の時刻から第三の時刻の間は「ホールド」状態である。上記した例では、前記第一の交流電圧ないし前記第二の交流電圧は全て0.6ボルトppである。また、前記MEMSスイッチが搭載されたシステムの制御系から見ると、前記第二の時刻は「オン」信号の発生時刻であり、前記第三の時刻は「オフ」信号の発生時刻となる。
【0033】
(1)指定された第一の時刻に前記第一の直流電圧を供給し、(2)指定された第二の時刻に前記第一の交流電圧を前記第一の直流電圧に重畳させることによりメイク動作を誘起し、(3)指定された第三の時刻に前記第一の交流電圧を前記第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を前記第三の直流電圧に変化させることによりブレーク動作を誘起する。
【0034】
なお、前段落に記載したMEMSスイッチの駆動について、一例を下記に示す。
第一の時刻: 直流電圧=5.5ボルト
第二の時刻: 直流電圧=5.5ボルト、交流電圧=0.6ボルトpp
第三の時刻: 直流電圧=4.0ボルト、交流電圧=0ボルトpp
この例では、交流電圧と直流電圧の両方を制御している。上記例では、第二の時刻に「プルイン」が発生し、同時に「メイク動作」が起きる。第三の時刻に「リリース」が発生し、同時に「ブレーク動作」が起きる。また、第一の時刻から第二の時刻の間はスタンバイ状態(「リリース」状態であると共に「ブレーク状態」でもある)である。第二の時刻から第三の時刻の間は「ホールド」状態である。また、前記MEMSスイッチが搭載されたシステムの制御系から見ると、前記第二の時刻は「オン」信号の発生時刻であり、前記第三の時刻は「オフ」信号の発生時刻となる。
【0035】
前段落で例示した電圧値の組には多くの変形がある。例えば、第二の時刻で「プルイン」が発生した直後に、前記第一の交流電圧(0.6ボルトppである)を低下(0ボルトでも構わない)させ、「ホールド」状態にしても良い。また、第三の時刻で「リリース」が発生した直後に、前記第三の直流電圧(4.0ボルトである)を前記第一の直流電圧(5.5ボルトである)へ増大させ(前記第一の時刻と同じ条件)、システム制御系からの「次のオン」信号を待つようにしても良い。
【0036】
(1)指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、(2)前記可動構造体を機械的に振動させることにより、メイク動作を誘起し、(3)前記第一の交流電圧の周波数を増加、あるいは、低減させることにより、ブレーク動作を誘起する。
【0037】
指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、前記第一の交流電圧の周波数を、前記可動構造体の共振周波数を超えるまで増加させてから前記第一の交流電圧の周波数を低減させることにより、メイク動作を誘起する。
【0038】
なお、前段落に記載したメイク動作の誘起法は、MEMSデバイス固有の非直線性な特性を利用している。
【0039】
前記第一の交流電圧に、前記共振周波数を含む周波数範囲にある複数の周波数成分を含ませる。
【0040】
なお、前段落での記載においては、前記「複数の周波数成分」を同時刻で含んでいても良い。すなわち、特定の時刻で前記交流電圧を観察すると複数の周波数成分を含んでいる場合である。また、前記「複数の周波数成分」が時系列で現れても良い。すなわち、特定の時間幅で前記交流電圧を観察すると、複数の周波数成分が次々と現れる(時間軸で周波数が変化する)場合である。この場合の周波数変化は、順次増加しても良く、順次減少しても良く、さらには、ランダムであっても良い。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、可動構造体の振動を利用することが特徴であるMEMSスイッチが実現できた。本発明によれば、MEMSスイッチの特性劣化をもたらす構造変更をすることなく、駆動電圧を大幅に減少させることが可能であり、MEMSスイッチの高度化への貢献は多大である。
【0042】
本発明により、MEMSスイッチを低い駆動電圧で動作させることが可能なうえ、従来のMEMSスイッチと比較して、大きな「ばね」定数を有するサスペンションで支持された可動構造体を利用することが可能となった。このため、接点の付着効果に起因するスイッチの「焼き付き」を防止でき、長寿命化(スイッチの繰返し回数の限界が伸びた)が実現でき、長期信頼性に優れたMEMSスイッチを提供できるようになった。
【0043】
大きな「ばね」定数をもつサスペンションで支持された可動構造体は、信号線に大電力の信号が伝送されても、これをスイッチ「オン」および「オフ」することができる。このため、大電力用途向けのシステムに本発明のMEMSスイッチを使用することが可能になった。
【0044】
大きな「ばね」定数をもつサスペンションで支持された可動構造体は、高速に動作するために、スイッチング時間の短縮が可能となり、スイッチの高速化を実現することができた。
【0045】
駆動電圧の低電圧化により、MEMSスイッチの制御回路系、および、MEMSスイッチが搭載されたシステムの回路系を同一半導体基板上に集積化することが可能となった。
【0046】
本発明によるMEMSスイッチでは、機械振動を利用することにより、駆動電圧の低減化や電気特性、機械特性の向上などが実現できる。このため、本発明は、MEMSスイッチへの適用以外にも、駆動電圧の低減化要求が大きいアクチュエータ分野へも広く適用できる。例えば、静電容量型のMEMSセンサ(加速度センサやジャイロセンサなど)に適用すれば、狭いギャップを実現することができるため、大きな静電容量変化値が出力され、センサの高感度化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】MEMSスイッチの基本構成と駆動法を説明する図である。<実施例1>
【図2】MEMSスイッチの駆動原理を示す図である。
【図3】MEMSスイッチの動作シークエンスを示す図である。<実施例2>
【図4】MEMSスイッチの構成を示す図である。<実施例3>
【図5】MEMSスイッチの作製方法を示す図である。<実施例4>
【図6】MEMSスイッチの駆動動作範囲を示す図である。<実施例5>
【図7】MEMSスイッチの他の駆動法を示す図である。<実施例6>
【図8】MEMSスイッチの他の構成を示す図である。<実施例7>
【図9】MEMSスイッチの他の構成を示す図である。<実施例8>
【図10】MEMSスイッチの他の構成を示す図である。<実施例9>
【図11】MEMSスイッチの他の構成を示す図である。<実施例10>
【図12】MEMSスイッチの他の構成を示す図である。<実施例11>
【図13】サーフェスマイクロマシニングで作製したMEMSスイッチの断面を示す図である。<従来例1>
【図14】<従来例1>のスイッチの動作を説明する図である。
【図15】共振を利用したMEMSスイッチの構成と回路例である。<従来例2>
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を用いて、MEMSスイッチを詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
<共振を利用したMEMSスイッチの基本構成>
図1は、本発明の実施例1である、MEMSスイッチの基本構成と駆動法を説明する図である。MEMSスイッチ13は、高周波信号を入力する端子11と当該高周波信号を出力する端子12の間に並列に配置され、当該MEMSスイッチが高周波伝送線路17aおよび17bの間を短絡したり、開放したりする。当該例では、スイッチ13の駆動源として、交流電圧源14および直流電圧源15が直列に接続された電気回路を使用し、駆動スイッチ16によってスイッチ13のメイク・ブレーク動作を制御している。なお、当該例では、スイッチを高周波伝送線路に並列に設けたが、この構成に限らず他の構成、例えば、MEMSスイッチを当該伝送線路に直列に配列(すなわち、17aあるいは17bの途中に当該スイッチを挿入)することも可能である。
【0050】
図2(a)はMEMSスイッチの原理的な構成を説明する図である。同図(a)において、可動構造体21は支持体22で一端が固定され、ガラス基板20の表面に接合されている。当該ガラス基板20の上面には固定電極23が配置されている。また、可動構造体21の下面には接点24が設けられており、一方、ガラス基板20の表面で接点24に対向する位置には信号線25(接点のように描かれている)が設けられている。かかる構成において、可動構造体21と固定電極23との間には、スイッチの駆動源としての交流電圧源や直流電圧源が接続されている。当該駆動源からの交流電圧と直流電圧からなる電気信号は可動構造体21を固定電極23に近接させるような静電気力を発生させる。当該静電気力が十分に大きいとするならば、可動構造体21は大きく変位し、固定電極23と極度に近接、あるいは、接触することになる。その状態においては、接点24が信号線25と機械的、電気的に接触してスイッチが「メイク」動作を行うことになる。当該状態は、図14の従来例に記載した「スイッチオフ(信号遮断)」の状態に対応している。
【0051】
図2(b)は、本発明のMEMSスイッチの駆動法を従来の駆動法と比較して示したものである。同図は横軸に印加電圧を、縦軸にスイッチの可動構造体と固定電極との間の距離(ギャップ長)を示している。初めに、従来のMEMSスイッチの駆動法(直流電圧のみを印加)を説明する。同図(b)において、曲線27に示すように、当該MEMSスイッチへの印加電圧を増加させると静電引力により可動構造体が固定電極側に引き寄せられて、両者の間の距離(ギャップ長)が減少する。当該距離が、ギャップ長の初期値(当該直流電圧が0ボルトの時の値である)の約2/3程度になると、突然、可動電極は固定電極にきわめて近い距離まで近づく(「プルイン」である)。この時の印加電圧をプルイン電圧と呼ぶ。その後、印加電圧を増加させても当該両者間の距離の変化はきわめて小さい。同図(b)の曲線28は、「プルイン」状態で、印加電圧を減少させたときの当該両者間の距離の変化を示している。印加電圧を減少させるとプルイン電圧を超えてしばらくの間、両者の距離の変化は小さい。しかし、印加電圧が特定の電圧よりも小さくなると、突然に可動構造体は固定電極から大きく離れる(「リリース」である)。この時の印加電圧をリリース電圧と呼ぶ。プルイン電圧とリリース電圧の差は通常15ボルトを超える大きな値である。このため、一般的には、プルイン電圧には30ボルトを超える大きな電圧が要求される。
【0052】
次に、図2(b)を用いて、本発明によるMEMSスイッチの駆動法を説明する。本発明では、MEMSスイッチを「プルイン」させるため、当該可動構造体の振動現象を利用している。このため、図1に示した駆動源を使用する。すなわち、MEMSスイッチには直流電圧に交流電圧が重畳された電気信号を印加している。この交流電圧の周波数を、当該可動構造体の機械共振周波数の「近傍」に設定すると、可動構造体は大きな振幅で振動する。同図(b)の曲線29に示すように、前記したギャップの初期値の約1/2程度まで振動する状態になると、印加している電気信号の成分である直流電圧の静電気力に引き込まれて「プルイン」が発生する。この駆動法におけるプルイン電圧の値は、従来の駆動法によるプルイン電圧(曲線27参照)と比べて低くなることが重要である。また、「プルイン」状態では、当該交流電圧をゼロにして、直流電圧の印加のみでも「プルイン」状態が維持される。かかる交流電圧の印加を停止することは、当該MEMSスイッチの駆動系での消費電力を抑えることができ、さらには、当該MEMSスイッチの周辺に配置されている回路系への交流電圧の不要な輻射が抑制できるという利点もある。なお、本段落では「交流電圧の周波数を、当該可動構造体の機械共振周波数の「近傍」に設定する」と記載したが、これは、交流電圧の周波数を厳密に共振周波数と一致させるとは限らないからである。例えば、共振周波数の前後20%の範囲の周波数を交流電圧としても構わない。当該範囲は、前記可動構造体の振動の減衰係数などにも依存している。要は、印加した交流電圧成分に対して、当該可動構造体の振動振幅が大きくなり、プルイン電圧の低減に寄与できることである。
【0053】
前段落に記載した駆動法でも、「プルイン」状態で、印加した直流電圧を減少させ、特定の電圧よりも小さくなると、「リリース」が発生する。この時のリリース電圧は、従来の駆動法におけるリリース電圧と同一である。
【0054】
前段落までの記載で明らかなように、「プルイン」状態を維持し続ける(可動構造体を固定電極の近くに維持し続ける、あるいは、「メイク状態」を維持する)ためには、リリース電圧よりも大きい直流電圧を印加し続けることが必要である。この「プルイン」状態を維持する電圧をホールド電圧と呼ぶ。ホールド電圧は、リリース電圧よりも大きく、好ましくはプルイン電圧よりも小さく設定する。
【実施例2】
【0055】
<共振を利用したMEMSスイッチの動作>
前段落までの記載で、本発明によるMEMSスイッチの駆動形態が明らかにされた。当該スイッチに要求される動作シークエンスを実現するためには、多種の駆動手順がある。なお、「動作シークエンス」とは、スイッチのメイクとブレーク状態の順序である。ここで、「メイク状態」は「プルイン」状態に、「ブレーク状態」は「リリース」状態に、それぞれ対応している。本段落では、実施例2として、図3を用いて、当該シークエンスの例を記載する。図3(a)はスイッチのメイク状態とブレーク状態に対応したMEMSスイッチのプルイン、ホールド、リリースの各状態と、それぞれの状態で印加する直流電圧および交流電圧の値を一覧表で例示したものである。なお、ここでは、前記可動構造体の振動を利用した駆動法での、プルイン電圧は5.5ボルト、リリース電圧は4.0ボルト、また、従来の駆動法におけるプルイン電圧は30ボルトであると仮定している。図3(a)の「動作点」欄に記載した、AからEまでの記号は、図3(b)の図面内にも動作点として表示されている。
第一の時刻(初期状態):「第一の時刻」は、MEMSスイッチが搭載されている回路系に電源が投入された時刻である。この時の動作点はAであり、駆動のための電気信号は全く印加されておらず、MEMSスイッチはリリース状態である。
第二の時刻(「メイク」動作):リードリレーでの接点が繋がった状態に相当している。交流電圧(AC電圧と表記、電圧値としては例えば0.6ボルトppである)が重畳された6.0ボルトの直流電圧(DC電圧と表記)が印加されると直ちに「プルイン」が誘起される。動作点はBである。また、この場合では、第一の交流電圧は0.6ボルトpp、第一の直流電圧は6.0ボルトである。
「メイク」状態:「プルイン」状態に到達後、交流電圧の印加はなくなり、6.0ボルトの直流電圧だけが印加されている。上記各電圧値の例から明らかなように、MEMSスイッチは「ホールド」状態に移行するが「メイク状態」は維持されている。動作点はCである。この場合では、第二の交流電圧は0ボルトpp、第二の直流電圧は6.0ボルトである。なお、当該直流電圧は6.0ボルトではなく、リリース電圧より大きい電圧(例えば、4.5ボルト)であっても、「ホールド」状態は維持される。この時には、前記第二の直流電圧は4.5ボルトになる。
第三の時刻(「ブレーク」動作):リードリレーでの接点が離れた状態に相当している。直流電圧を3.0ボルト(前記リリース電圧以下である)まで低下させると、MEMSスイッチは直ちに「リリース」が誘起される。動作点はDである。この場合において、第三の交流電圧は0ボルト、第三の直流電圧は3.0ボルトである。
「ブレーク」状態:「リリース」状態に到達すると、次の「メイク」動作のために、6.0ボルトの直流電圧が印加される。ただし、交流電圧は印加されておらず、さらに、従来の駆動法におけるプルイン電圧(30ボルト)以下なので、「リリース」状態は継続する。動作点はEである。
2回目の第二の時刻(「メイク」動作):前の状態で、交流電圧が新たに印加されるので、前記可動構造体は振動を開始し、「プルイン」条件を満足しているので、ただちに「プルイン」が誘起され、「メイク状態」に入る。この時の動作点はBである。
以上の動作により、MEMSスイッチは所定の動作を繰り返すことができる。なお、本段落で例示したシークエンスと直流電圧、交流電圧の値はあくまでも動作を説明するための一例に過ぎず、これらに限られることはない。
【0056】
本段落では、前記の「交流電圧」について記述する。本発明では前記可動構造体を当該交流電圧で機械的に振動させることに特徴がある。かかる機械的振動を効率良く発生させるためには、当該可動構造体が持つ共振周波数(1次の共振周波数が好ましいが、この限りではない)を供給することが好ましい。しかし、MEMSスイッチの製造過程では加工誤差が避けられないので、当該可動構造体のサイズ(例えば、その長さや幅)は個々のMEMSスイッチで異なることになる。この結果、当該可動構造体の共振周波数は個々のMEMSスイッチで異なってしまう。このため、共振周波数を中心とする特定の幅(例えば、プラス20パーセント、マイナス20パーセント)の中にある周波数を用いることにより、当該MEMSスイッチの駆動系が簡略化される。一例を挙げるならば、当該可動構造体の共振周波数が13キロヘルツ(kHz)の場合は、10.4キロヘルツから15.6キロヘルツの間の周波数を前記交流電圧の周波数とする。
【0057】
本段落では前段落までに記載した当該MEMSスイッチの他の動作例を説明する。以下では、図3(a)に例示したシークエンスに従った各時刻における各電圧値を例示する。
第一の時刻(初期状態):「第一の時刻」は、MEMSスイッチが搭載されている回路系に電源が投入された時刻である。電源投入後、直ちに第一の交流電圧(0.5ボルトpp)を供給する。ただし、重畳する直流電圧はないので「メイク動作」は誘起されない。すなわち、MEMSスイッチはリリース状態である。
第二の時刻(「メイク」動作):すでに供給されている第一の交流電圧に、第一の直流電圧(6.0ボルト)を重畳させる。この結果、直ちに「プルイン」が誘起される。
「メイク」状態:「プルイン」状態に到達後、第一の交流電圧と第一の直流電圧は継続して供給されるので、MEMSスイッチは「ホールド」状態に移行し、「メイク状態」は維持されている。なお、この状態で、交流電圧を0ボルトppにしても、直流電圧(6.0ボルト)が当該「ホールド」状態を維持できる。
第三の時刻(「ブレーク」動作):当該第一の交流電圧(0.5ボルトpp)を維持したまま、第一の直流電圧を第三の直流電圧(3.0ボルト)まで低下させると、MEMSスイッチは直ちに「リリース」が誘起される。この場合では、第三の交流電圧は当該第一の交流電圧と同じ値である。
「ブレーク」状態:「リリース」状態に到達すると、次の「メイク」動作のために、6.0ボルトの直流電圧が印加される。交流電圧は前記第三の交流電圧のままであるが、直流電圧がプルイン電圧(30ボルト)以下なので、「リリース」状態は継続する。この状態は、続いて発生する「2回目の第二の時刻(「メイク」動作)」に備えてスタンバイしている状態である。
以上のシークエンスでは、供給する交流電圧は一定であり、直流電圧の値を制御することにより、MEMSスイッチを動作させている。
【0058】
本段落では当該MEMSスイッチの他の動作例を説明する。以下では、図3(a)に例示したシークエンスに従った各時刻における各電圧値を例示する。
第一の時刻(初期状態):「第一の時刻」は、MEMSスイッチが搭載されている回路系に電源が投入された時刻である。電源投入後、直ちに第一の直流電圧(6.0ボルト)を供給する。ただし、重畳する交流電圧はないので「メイク動作」は誘起されない。すなわち、MEMSスイッチはリリース状態である。
第二の時刻(「メイク」動作):すでに供給されている第一の直流電圧に、第一の交流電圧(0.5ボルトpp)を重畳させる。この結果、直ちに「プルイン」が誘起される。
「メイク」状態:「プルイン」状態に到達後、第一の交流電圧を第二の交流電圧(0ボルトpp)に変化させ、第一の直流電圧は継続して供給する(第二の直流電圧でもある)。MEMSスイッチは「ホールド」状態に移行し、「メイク状態」は維持されている。なお、この状態では、交流電圧を0.5ボルトppのままにしても構わない。
第三の時刻(「ブレーク」動作):交流電圧を0ボルトppのまま(すなわち、第三の交流電圧は前記第二の交流電圧と同じである)、当該第一の直流電圧(あるいは第二の直流電圧)を第三の直流電圧(3.0ボルト)まで低下させると、MEMSスイッチは直ちに「リリース」が誘起される。この場合では、第三の交流電圧は0.5ボルトppであっても構わない。
「ブレーク」状態:「リリース」状態に到達すると、次の「メイク」動作のために、6.0ボルトの直流電圧が印加される。交流電圧は前記第三の交流電圧のままである。当該直流電圧は従来の駆動法でのプルイン電圧(30ボルト)以下なので、「リリース」状態は継続する。この状態は、続いて発生する「2回目の第二の時刻(「メイク」動作)」に備えてスタンバイしている状態である。
以上のシークエンスでは、「メイク動作」を誘起する短い時間だけ0.5ボルトppの交流電圧を供給することにより、当該MEMSスイッチは所望の動作を行うことができる。この結果、MEMSスイッチの駆動系での消費電力を抑えることが可能となる。さらに、「メイク動作」の瞬間だけ交流信号が印加されるので、当該MEMSスイッチが配置されている周囲の領域への電界の不要輻射が抑えられる利点もある。
【実施例3】
【0059】
<MEMSスイッチの構成例>
図4は、本発明の実施例3であるMEMSスイッチの構成例を説明する図である。本実施例3では、金属などの導電性材料で構成された可動構造体を用いたMEMSスイッチが例示されている。同図(a)は当該MEMSスイッチの上面から見た平面図であり、A−A’に沿った断面図が同図(b)である。また、図4(a)の右側には、当該平面図の中央部のみを拡大した平面図が拡大表示されている。図において、45は可動構造体、46は支持体、48はガラス基板である。当該ガラス基板48の上側表面には、高周波信号が伝播する信号線40と、その両側に配置されたグランド41から構成されたコプレーナ導波路が配置されている。さらに、当該ガラス基板の上側表面には、駆動のための固定電極42が配置され、当該固定電極42の表面には電気的な短絡を防止するための絶縁膜43が設けられている。可動構造体45は、サスペンション34を介して支持体46に結合され、当該支持体46は前記ガラス基板48に接合されている。すなわち、当該可動構造体45は当該ガラス基板48の上方に浮き上がって配置され、さらに、ガラス基板48の表面に設けられた前記コプレーナ導波路を覆うように作製されている。前記支持体46は前記ガラス基板48の上側表面に配置されたグランド41に接合されている。当該可動構造体45が導電性材料で構成されているので、当該可動構造体45は常にグランド電位(一般的には0ボルト)である。前記固定電極42は導電性のパターン47に接続されている。また、当該可動構造体45は、同図(b)での上下方向に変位するので、当該可動構造体45の周囲に存在する空気層のダンピングを抑制するため、多数の小さな貫通孔(付番せず)が設けられている。さらに、当該可動構造体45の下側表面には接点44が設けられている。当該接点44は、信号線40の上方に位置するよう設計されており、当該可動構造体45がガラス基板48側に変位してプルイン状態になった時に、信号線40と電気的に接触するようになっている。
【0060】
本段落では図4の実施例3の動作を説明する。前記したように、当該可動構造体45の電位はグランド電位である。導電性のパターン47は、交流電圧源と直流電圧源とからなる駆動源(図示せず)に接続されている。このため、当該可動構造体45と当該固定電極42間には互いに引き合う静電気力が発生し、当該可動構造体45と当該固定電極42との間の距離(ギャップ長)が減少する。前記駆動源からの電気信号(交流電圧および直流電圧)の大きさが「プルイン」を誘起する条件を満足するならば、当該可動構造体45は当該固定電極42と接触(あるいは極度に近接)し、「プルイン」が発生し、MEMSスイッチの「メイク動作」が誘起される。かかる状態で、機械的、電気的な接触が発生すると、当該可動構造体45と当該42固定電極間に過大な短絡電流が流れることになるので、これを防止するために、当該固定電極42の表面には絶縁膜43が配置されている。プルイン状態になると、当該接点44は、前記した信号線40に接触(あるいは極度に接近)する。この結果、信号線40はグランド電位に固定される。すなわち、当該信号線40に流れ込んでいる高周波信号は当該接点44を介してグランド側へ伝播し、前記したコプレーナ導波路を伝播できなくなる。かかる動作により、スイッチの「オフ」(高周波信号が遮断される)の機能が達成される。一方、前記駆動源からの電気信号の大きさが「リリース」状態を誘起する条件になると、当該接点44と当該信号線40との接触は解除され、「ブレーク動作」が誘起される。この結果、当該信号線40も流れ込んでいる高周波信号は、当該コプレーナ導波路を伝播し続けることになる。かかる動作により、スイッチの「オン」(高周波信号が繋がる)の機能が達成される。
【0061】
前記ガラス基板48の素材はガラスに限ることなく、高抵抗シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)などの半導体材料や、セラミック、樹脂など、比抵抗が大きな材料であればよい。さらに、正接損失(tanδ)の小さな材料であれば、高周波信号の減衰が抑えられるため、より好ましい。
【0062】
前記した可動構造体45、サスペンション34、および、支持台は、種々の金属や半導体、導電性プラスチック等の材料を利用することができる。金属材料の中では、ヤング率が大きく、密度が小さいニッケル(Ni)が特に好ましい。ニッケルは「めっき」によって作製することができるために、当該MEMSスイッチを半導体集積回路と同一半導体基板上に集積化する構成に適している。接点の材料も種々の金属(例えば、金、プラチナ)や半導体、導電性プラスチックなどを利用することができる。接触抵抗を小さくできることから、金および金合金が特に好ましいが、この限りではない。
【0063】
実施例3では、印加した電気信号で発生する静電力を利用して当該可動構造体45を共振させているが、他の物理現象を利用して当該共振を起こさせても構わない。例えば、当該可動構造体45の上側表面に圧電薄膜を堆積し、当該薄膜に電気信号を印加することにより発生する機械的な変形(歪)で当該共振を励起することも可能である。かかる構成の一変形例として、当該可動構造体45そのものを圧電材料で構成し、その表面に導電性を付与することが挙げられる。また、磁界の中に配置された導電路には機械的な力(ロレンツ力)が誘起されることを利用して、当該共振を誘起しても構わない。以上のように、本発明では、共振を起こさせる「原動力」については特定の方法に限ることはない。
【0064】
図4に示した構造のMEMSスイッチの設計例を以下に示す。
伝送線路(信号線40とグランド41)、および、固定電極42:1ミクロン厚の金
絶縁膜43:0.1ミクロン厚のシリコン窒化膜
可動構造体45、サスペンション34、および、支持台46:12ミクロン厚のニッケル
接点44:0.15ミクロン厚の金
可動構造体と固定電極との間の距離の初期値:1ミクロン
【0065】
前段落に例示した設計値で設計したMEMSスイッチは、1ボルトの直流電圧に1ボルト(Peak-to-Peak)の交流電圧を重畳させることによりプルインが生じ、当該スイッチのオン、オフの繰り返し動作を行うことが明らかとなった。また、当該可動構造体の共振周波数(基本波)は21.4kHzであったので、スイッチング時間は約50μ秒相当である。
【実施例4】
【0066】
<MEMSスイッチの作製方法>
MEMSスイッチの作製方法の一例を図5(a)〜(h)を用いて詳述する。なお、これらの図において、同一番号は同一構成要素を示している。
(1)厚さ500ミクロンのガラス基板50の上にクロム薄膜(厚さ0.02ミクロン)51と第一の金薄膜(厚さ1ミクロン)52を蒸着によって作製する。この後、第二のクロム薄膜(厚さ0.02ミクロン)53とCVD装置を利用してシリコン窒化膜(厚さ0.2ミクロン)54を堆積し、当該シリコン窒化膜54と当該第二のクロム薄膜53を周知の技術を用いてパターニングする(図5(a))。
(2)当該金薄膜52およびクロム薄膜51を周知の技術(フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ技術である)を用いてパターニングを行う。続いて、この上にアルミニウム薄膜(厚さ0.02ミクロン)55を蒸着した後、前記フォトレジストを剥離する(いわゆる「リフトオフ」である)。この結果、当該ガラス基板50が露出していた領域にのみ前記アルミニウム薄膜55が積層されることになる(図5(b))。
(3)図5(b)に示した構造の上側表面全面に第一の銅薄膜を蒸着した後、研磨装置を用いて、当該銅薄膜の表面を研磨し、当該シリコン窒化膜54の上面と同じ高さになる(すなわち、当該シリコン窒化膜54の表面が露出する)まで研磨する。56はこの研磨工程が完了した時点での第一の銅薄膜である(図5(c))。
(4)当該銅薄膜56に表面に厚さ0.05ミクロンの銅を蒸着して第二の銅薄膜57を積層する。続いて、当該銅薄膜57の領域に直径20ミクロンの開口58を作製する(図5(d))。
(5)当該第二の銅薄膜57の表面に厚さ1ミクロンの銅を蒸着して第三の銅薄膜59を作製する。続いて、第二の金薄膜を積層してから、周知の技術により、当該開口58の領域に金接点60を作製する(図5(e))。
(6)当該銅薄膜59(実際は、当該第一から当該第三の銅薄膜で構成されている)の領域の一部をエッチングして支持台開口61を作製する(図5(f))。
(7)図5(f)に示した構造の上側表面全面に厚さ20ミクロンのレジストを積層してからパターンニングする(図示せず)。当該レジストパターンの開口部に厚さ12ミクロンのニッケルめっきを行い、ニッケル薄膜62を作製する。続いて、当該レジストを除去する(図5(g))。
(8)最後に、当該銅薄膜59(実際は、当該第一から当該第三の銅薄膜で構成されている)を硝酸によって除去(犠牲層エッチである)する(図5(h))。
以上のプロセスにより、MEMSスイッチは作製される。
【実施例5】
【0067】
<MEMSスイッチの駆動動作範囲>
図6は、図4に例示した構成のMEMSスイッチを、図2を用いて記載した本発明による駆動法で駆動した時の実測結果であり、作製したMEMSスイッチの動作範囲を示している。同図のグラフの横軸は印加した直流電圧の値、縦軸は印加した交流電圧の値(Peak−to−Peak)を示す。同図の◆印は、MEMSスイッチが「プルイン」を起こして当該可動構造体が当該固定電極に「接触」(極度な近接も含む)し、かつ、その「接触」が維持されたことを示している。すなわち、「メイク状態」が行われる条件を示している。なお、ここでの「接触」は、図4(b)に示した接点44と、信号線40との間の電気抵抗を測定することにより、当該「接触」の発生を確認している。図6のグラフより、◆印は3つの直線65、66、および、67で囲まれた領域に存在している。当該直線65は、印加直流電圧がMEMSスイッチのホールド電圧と等しい場合を示している。もし、動作条件(当該直流電圧値と当該交流電圧値の組合せとなる)が、この直線より左側にある場合には当該MEMSスイッチの「ホールド」は生じない(当然のことながら「プルイン」も発生しない)。また、直線66は、直流電圧に重畳された交流電圧波形のプラス側のピーク値(波形の「山」に対応)がスイッチの「プルイン」電圧を等しい場合を示している。すなわち、当該MEMSスイッチが「プルイン」するためには、この直線の上側に動作条件を設定する必要がある。さらに、直線67は、直流電圧に重畳された交流電圧波形のマイナス側のピーク値(波形の「谷」に対応)が「リリース」電圧以下となる条件を示している。このため、この直線よりも上側に動作条件が設定された場合には、当該MEMSスイッチは「プルイン」(瞬間的ではあるが)するが、安定した「ホールド」が起こらず、スイッチとして正常な機能が達成されないことになる。
【0068】
本段落では、図6の結果より得られる当該MEMSスイッチの駆動法について例示する。(1)直流電圧を一定にし、交流電圧を印加することにより、スイッチを「プルイン」させる。スイッチを「ホールド」するには、このままでも良いし、あるいは、交流電圧の振幅を減少させても良い。これは、交流電圧値、直流電圧値、および、ホールド電圧の相互の関係に従って決定される。一方、「ホールド」状態のスイッチは、この直流電圧を減少させることにより「リリース」させることができる。
(2)交流電圧を一定にし、直流電圧を印加することにより、スイッチを「プルイン」させる。スイッチを「ホールド」するには、このままでも良いし、あるいは、直流電圧を減少させても良い。これは、交流電圧値、直流電圧値、および、ホールド電圧との関係に従って決定される。一方、「ホールド」状態のスイッチは、この直流電圧の値を減少させることによって「リリース」させることができる。
(3)直流電圧を一定にし、当該可動構造体の共振周波数付近(厳密に記載するならば、共振周波数の前後20%の範囲の周波数である)の交流電圧を重畳することにより、スイッチを「プルイン」させる。スイッチを「ホールド」するには、このままでも良いし、あるいは、交流電圧の振幅を減少させても良い。これは、交流電圧値、直流電圧値、および、ホールド電圧との関係に従って決定される。一方、「ホールド」状態のスイッチは、この交流電圧の周波数を共振周波数から離す(厳密に記載するならば、共振周波数の前後20%の範囲の外に設定することである)ことによって「リリース」させることができる。当該MEMSスイッチの駆動には、上記した代表的な3例以外にも、直流電圧値、交流電圧値、周波数、および、それぞれの印加タイミングなどの組合せには多く変形があるが、これらは本発明に含まれるものである。
【0069】
なお、印加する交流電圧の周波数については、単一の周波数ではなく、当該可動構造体の共振周波数付近の複数の周波数を「同時に含む」信号であっても構わない。かかる手法を用いれば、交流電源の設計が簡略化されるという利点がある。さらに、印加する交流電圧の周波数については、当該可動構造体の共振周波数付近の複数の周波数を「時間的に順次含む」信号(すなわち、時間軸で周波数が変化する信号である)を利用することも可能である。ここでは、周波数を順次に増加させても、あるいは、減少させても構わない。
【実施例6】
【0070】
<MEMSスイッチの他の駆動法>
当該可動構造体が当該固定電極の近くにあり、未だ「プルイン」していない状態では興味深い現象が起こることが知られている。これは、非線形共振現象と呼ばれるものである。図7は、当該非線形共振現象を利用したスイッチの駆動法の原理を示す図である。同図は、試作したMEMSスイッチを実際に測定した結果を示したものであり、横軸は交流電圧の周波数、縦軸は当該可動構造体の機械的な振動の振幅(レーザドップラ装置で計測)である。同図に示すように、(1)交流電圧の周波数を上昇させ、当該可動構造体の共振周波数に近づけていくと、振幅が増大する(曲線81)。(2)当該周波数が共振周波数を超えて高くなると、振幅の減少が起こる(曲線82)。かかる条件下においては、MEMSスイッチの「プルイン」は生じていない。(3)当該周波数が共振周波数を超えた状態で、当該周波数を減少させると、非線形現象のため振幅が増大する(曲線83)。(4)さらに当該周波数を低下させていくと、「プルイン」が発生する(曲線84)。かかる非線形現象を利用した駆動法では、当該非線形現象を利用しない駆動法における「プルインが生じない駆動条件」においても、当該MEMSスイッチの「プルイン」を起こさせることが可能であることを示しており、駆動電圧のさらなる低減に役立つものである。なお、試作したMEMSスイッチでは、交流電圧の周波数を増大させた後に減少させるという駆動法で「プルイン」を起こすことが確認されている。また、これとは逆に交流信号の周波数を減少させ、共振周波数より小さくなった段階で周波数を増大させる操作法により「プルイン」が発生することも確認された。かかる非線形現象を利用した駆動法も本発明に含まれる。
【実施例7】
【0071】
<MEMSスイッチの他の構成>
図8は、先に記載した実施例3と異なる構成を有するMEMSスイッチである。本実施例における当該MEMSスイッチの平面図は図4と同じであるが、A−A’に沿った断面図は異なっている。図8には当該断面図が示されている。図8において、図4と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、固定電極72の厚さが図4に示した実施例(固定電極42)と比べて厚くなっているのが特徴である。かかる構成により、当該可動構造体45と当該固定電極72との間の間隔(ギャップ長)を小さく設定することが可能となる。この結果、駆動のための電気信号(前記した直流電圧や交流電圧である)の大きさを低減でき、駆動電圧の低減という課題の解決に有効である。さらに、当該可動構造体45に配置された接点74の高さを可動電極と固定電極のギャップに一意的に制限されることなく設計するため、設計の自由度が増すという利点もある。
【0072】
図8に示す構成でMEMSスイッチを設計した例を以下に示す。
伝送線路(信号線40とグランド41):1ミクロン厚の金
固定電極72:1.44ミクロン厚の金
絶縁膜43:0.05ミクロン厚のシリコン窒化膜
可動構造体45、サスペンション34、および、支持台46:4ミクロン厚のニッケル
接点74:厚さ0.5ミクロン厚の金
可動構造体45と固定電極72との間の距離の初期値:0.21ミクロン
【0073】
前段落に例示した設計値で設計したMEMSスイッチは、0.96ボルトの直流電圧に30ミリボルト(実効値、rms)の交流電圧を重畳させることによりプルインが生じ、当該スイッチのオン、オフの繰り返し動作を行うことが明らかになった。また、当該可動構造体の共振周波数(基本波)は168kHzであったので、スイッチング時間は約10μ秒相当である。さらに、当該信号線を伝播する高周波信号が2Wもの大電力であっても、当該高周波信号の制御が可能であった。
【実施例8】
【0074】
<MEMSスイッチの他の構成>
図9は、先に記載した実施例3と異なる構成を有するMEMSスイッチである。本実施例における当該MEMSスイッチの平面図は図4と同じであるが、A−A’に沿った断面図は異なっている。図9には当該断面図が示されている。図9において、図4と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、前記した実施例3(例えば図4)と下記の諸点が異なっている。(1)図4の絶縁膜43に代えて、金属バンプ80aおよび80bが設けられている。(2)図4の固定電極42は、固定電極81aと82a、および、固定電極81bと82bとして設けられている。当該固定電極81aと当該固定電極82aは電気的に接続されており(図示せず)、当該固定電極81bと当該固定電極82bも同様に接続されている。当該金属バンプ80a、および、金属バンプ80bの高さは、当該固定電極81a、81b、82a、82bの高さよりも大きく設定されている。(3)当該可動構造体45の中央領域には接点44が設けられており、当該可動構造体45がプルインした状態では、当該接点44が伝送線路40と接触するようになっている。(4)当該金属バンプ80a、および、80bは、電気的にフローティングの状態、あるいは、当該可動構造体45と同じ電位に設定されている。かかる構成においては、当該可動構造体45が「プルイン」すると、当該可動構造体45の変位(あるいは移動)は当該金属バンプ80aと80bとで制限される。前記したように、当該金属バンプ80a、80bと当該固定電極81a、81b、82a、82bとの高さの差により、「プルイン」状態で、当該可動構造体45が当該固定電極81a、81b、82a、82bと接触することは避けられる。このため、図4では、短絡防止のために設けられていた絶縁膜43が不要となる利点がある。
【0075】
本実施例では、絶縁膜を用いることなく、可動構造体と固定電極の短絡を金属バンプで防止したことに特徴がある。このため、絶縁膜の帯電(チャージアップ)現象により、固定電極に可動構造体が付着することが無くなり、MEMSスイッチの長期信頼性を増大できるという利点がある。
【実施例9】
【0076】
<MEMSスイッチの他の構成>
図10は、先に記載した実施例3と異なる構成を有するMEMSスイッチである。本実施例における当該MEMSスイッチの平面図は図4と同じであるが、A−A’に沿った断面図は異なっている。図10には当該断面図が示されている。図10において、図4と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、前記した実施例3(例えば図4)と下記の諸点が異なっている。(1)可動構造体45に配置された接点が3個ある。それぞれは95、96a、96bである(図10参照)。当該3個の接点は、同一の可動構造体45(導電体である)と一体化されているので、同一電位である。(2)コプレーナ導波路は、信号線90(信号線40と対応)と、その両側に配置されたグランド91(グランド41と対応)で構成されている。(3)当該可動構造体45が「プルイン」した状態では、当該接点95は信号線90と接触する。また、当該接点96aと96bは当該グランド91と接触する。この結果、コプレーナ導波路を構成する当該信号線90は当該グランド91と短絡されることになる。(4)当該可動構造体45が「3点」でコプレーナ導波路に接触するため、当該可動構造体45が当該固定電極72と接触することはない。参考までに記すと、接点が1個である構成(図4の実施例3である)では、当該可動構造体45は「シーソー」のように一方に傾き、どちらかの固定電極72と接触する危険がある。図10に示した構成により以下の利点が発生する。(1)本実施例では当該固定電極72との接触の可能性はないので、図4の絶縁膜43が不要になる。この結果、絶縁膜のチャージアップ現象により、固定電極72に可動構造体45が付着することが無くなり、MEMSスイッチの長期信頼性を増大できるという利点もある。(2)「プルイン」状態でコプレーナ導波路は短絡されるが、当該信号線90と当該グランド91間に流れる短絡電流は、当該接点95から当該接点96a、あるいは、当該接点96bへの電流路を通過する。このため、従来例での短絡電流路のパス(電流路の長さ)が短くなり、高周波特性が大きく改善できるという利点がある。
【実施例10】
【0077】
<MEMSスイッチの他の構成>
図11は、先に記載した実施例3と異なる構成を有するMEMSスイッチである。本実施例における当該MEMSスイッチの平面図は図4と同じであるが、A-A’に沿った断面図は異なっている。図11には当該断面図が示されている。図11において、図4と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、前記した実施例3(例えば図4)と下記の諸点が異なっている。(1)信号線100(信号線40と対応)の上側表面には絶縁膜101が配置されている。当該絶縁膜101の素材は窒化膜、酸化膜、セラミクス、樹脂材料など周知の材料である。(2)固定電極42の上側表面に絶縁膜が存在しない。かかる構成では、「プルイン」状態で、当該可動構造体45に設けられた接点44は当該絶縁膜101を介して当該信号線100と機械的に接触することになる。かかる接触では、電気的な接触は発生しない。しかし、当該絶縁膜の厚さが1μm以下である場合には、当該接点44と信号線100との間に形成される静電容量値は大きくなるので、高周波信号に対しては、電気的な接触(いわゆる「静電結合」である)が達成されることになる。本実施例の構成では、電気的な接触が「間接的」であり、実施例3のような金属(接点44の金)と金属(信号線40の金)の接触ではない。このため、金属・金属の接触抵抗の変動がなく、高周波特性の劣化を抑制することが可能となる。すなわち、MEMSスイッチ特性の向上が可能である。
【実施例11】
【0078】
<MEMSスイッチの他の構成>
図12は、複数の接点を可動構造体に配置し、信号線と複数個所で接触が起こることを特徴とするMEMSスイッチを示している。実施例9ではコプレーナ導波路に跨って接点を3個配置する構成が示されており、その平面図は図4、断面図は図10に記載されている。本実施例は、実施例9をさらに発展させた構成を有している。本実施例の構成で、接点が配置された領域を斜め上から俯瞰した図が図12である。同図は、図4(a)の右側に図示した拡大図を俯瞰したものに相当している。同図において、110は信号線であり、4本に分岐された構成が例示されている。111は可動構造体である。112の領域の下側には接点が配置されている。113の領域の下側には固定電極が配置されている。図12の領域112には、4×4個の当該接点が二次元配列されている。当該接点の数は4×4個に限定されず、また、その配列が一次元であっても構わない。特に当該配列が一次元であり、さらに、その配列方向が当該信号線の方向と一致している場合には、図12の110で示したような「信号線の分岐」を行う必要はない。本実施例では、複数個の当該接点を同時に当該信号線に接触させることに特徴がある。このため、当該接点が占有する領域の面積が小さく、個々の場所での許容電流が小さくなっても、全体として許容電流値を大きくすることが可能である。また、個々の接点の「接触」は並列的に行われるので、接触の信頼性を高めることも可能(数個の接点が「接触」不良を起こしても全体への影響は少ない)である。さらに、この実施例では個々のスイッチ寸法を小さくすることができるため、各々の接点を「接触」させるためのバネ定数を大きく設定できる利点もある。
【0079】
なお、本明細書では、両端固定ビーム型のMEMSスイッチを例として挙げているが、当該MEMSスイッチにはこれら以外にも多くの形態がある。例えば、ディスク型(円板形状等)、リング型、「魚の骨」型、および、隣接して配置された複数のMEMSスイッチの可動構造体領域を機械的に結合させた「連結型スイッチ」などがある。これらの多くの形態に対しても、本発明を実施することが可能である。
【0080】
また、本明細書では、接点をもつ抵抗型のMEMSスイッチを例として挙げたが、接触部にキャパシタンスを設けた静電容量型のMEMSスイッチにも容易に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、静電型アクチュエータの駆動電圧を大幅に低減することが可能となり、MEMSスイッチに適用した場合の効果は大きい。特に、MEMSスイッチに適用した場合には、低い駆動電圧で、「ばね」定数が大きい可動構造体を駆動することができるため、スイッチング速度と長期信頼性が向上し、かつ、大電力の信号を扱うことが可能となる。さらに、当該MEMSスイッチは、シリコン半導体技術を用いて作製されるので、シリコン基板上にMEMSスイッチを作製した場合、駆動回路や信号処理回路とのワンチップ集積化が可能であり、半導体集積回路の高度化にも有効である。この場合、1ボルト〜2ボルトの駆動電圧でMEMSスイッチが駆動できるという本発明の効果が非常に有効になる。かかる機能の向上は、可搬型機器、特に、携帯型通信機などの高機能化に多大に貢献できる。また、コグニティブ通信に代表される多周波数通信では、機器の小型化、低消費電力化が促進され、ユビキタス環境の構築に利用できる。さらに、本発明のMEMSスイッチを用いてスイッチマトリックスを構成すると、小型のスイッチングボードを作製することができる。MEMSスイッチの高周波特性が優れていることから、このスイッチングボードは高周波回路の信号を切り替えるのに利用することができる。さらに、高周波信号線に本発明のMEMSスイッチを多数配列することにより、インピーダンスマッチング回路、フィルタ、さらにアンテナの移相器などにも広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
11 入力する端子
12 出力する端子
13 MEMSスイッチ
14 交流電圧源
15 直流電圧源
16 駆動スイッチ
17a、17b 伝送線路
20、48、50、190 ガラス基板
21、45、111、199 可動構造体
22、46、195a、195b 支持台
23、42、72、81a、81b、82a、82b、193a、193b 固定電極
24、44、74、95、96a、96b、198 接点
25、40、90、100、110、191 信号線
27、28、29、81、82、83、84 曲線
34、196a、196b サスペンション
41、91、192a、192b グランド
43、101 絶縁膜
47 導電性のパターン
51、53 クロム薄膜
52 金薄膜
54 シリコン窒化膜
55 アルミニウム薄膜
56、57、59 銅薄膜
58、61 開口
60 金接点
62 ニッケル薄膜
65、66、67 動作限界を決める直線
80a、80b 金属バンプ
112、113 領域
194a、194b バンプ接触部
197a、197b バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動構造体と固定電極を有するMEMSスイッチにおいて、
指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、
前記可動構造体を機械的に振動させることにより、メイク動作を誘起し、
前記第一の交流電圧を指定された第二の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を指定された第二の直流電圧に変化させた信号により、
前記メイク動作を維持し、
前記第二の交流電圧を指定された第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第二の直流電圧を指定された第三の直流電圧に変化させた信号により、
ブレーク動作を誘起する
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項2】
前記可動構造体を振動させる前記第一の交流電圧は、
前記可動構造体の共振周波数を中心としてプラス20パーセント、および、マイナス20パーセントを超えない周波数範囲内の周波数を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のMEMSスイッチ。
【請求項3】
指定された第一の時刻に前記第一の交流電圧を供給し、
指定された第二の時刻に前記第一の直流電圧を前記第一の交流電圧に重畳させることによりメイク動作を誘起し、
指定された第三の時刻に前記第一の交流電圧を前記第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を前記第三の直流電圧に変化させることによりブレーク動作を誘起する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSスイッチ。
【請求項4】
指定された第一の時刻に前記第一の直流電圧を供給し、
指定された第二の時刻に前記第一の交流電圧を前記第一の直流電圧に重畳させることによりメイク動作を誘起し、
指定された第三の時刻に前記第一の交流電圧を前記第三の交流電圧に変化させ、かつ、前記第一の直流電圧を前記第三の直流電圧に変化させることによりブレーク動作を誘起する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSスイッチ。
【請求項5】
指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、
前記可動構造体を機械的に振動させることにより、メイク動作を誘起し、
前記第一の交流電圧の周波数を増加、あるいは、低減させることにより、ブレーク動作を誘起する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSスイッチ。
【請求項6】
指定された第一の交流電圧と指定された第一の直流電圧とを重畳させた信号を供給し、
前記第一の交流電圧の周波数を、前記可動構造体の共同周波数を超えるまで増加させてから前記第一の交流電圧の周波数を低減させることにより、メイク動作を誘起する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSスイッチ。
【請求項7】
前記第一の交流電圧は、前記共振周波数を含む周波数範囲にある複数の周波数成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate