MEMSデバイスおよびその製造方法
【課題】基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを容易に製造する。
【解決手段】MEMSデバイスの製造方法は、基材と、浮き構造体と、浮き構造体の一部の領域に対して離隔対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、SOI基板を用意する工程S1と、第1シリコン層をパターニングすることによって、かさ上げ対向部、支持梁部などを形成する工程S2と、第1領域を厚み方向の途中までエッチング除去する工程S3と、中間絶縁層の少なくとも一部をエッチングしてかさ上げ対向部と第2シリコン層との間の接続を断つ工程S4と、基材を貼り付ける工程S5と、第2シリコン層をパターニングすることによって浮き構造体を形成するとともに、かさ上げ対向部を外枠部から分離させる工程とを含む。
【解決手段】MEMSデバイスの製造方法は、基材と、浮き構造体と、浮き構造体の一部の領域に対して離隔対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、SOI基板を用意する工程S1と、第1シリコン層をパターニングすることによって、かさ上げ対向部、支持梁部などを形成する工程S2と、第1領域を厚み方向の途中までエッチング除去する工程S3と、中間絶縁層の少なくとも一部をエッチングしてかさ上げ対向部と第2シリコン層との間の接続を断つ工程S4と、基材を貼り付ける工程S5と、第2シリコン層をパターニングすることによって浮き構造体を形成するとともに、かさ上げ対向部を外枠部から分離させる工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体分野における微細加工技術を利用して、微細な機械構造を電子回路と一体化して形成するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が開発されており、フィルタや共振器への応用が検討されている。
【0003】
なかでもこのようなMEMS技術で作成されたマイクロメカニカル共振器は、リモートキーレスエントリシステム、スペクトラム拡散通信等のRF無線に好適に使用される。このようなMEMS技術で作成されたマイクロメカニカル共振器を利用したMEMSフィルタの一例が特開2006−41911号公報(特許文献1)に開示されている。この文献に記載されたMEMSフィルタ装置は、共振器を備える。この共振器に含まれる振動子は、正方形の板状のものであって、基板表面と平行で、なおかつ基板から離隔するように配置され、基板表面に連結された円柱で支持されている。共振器の各辺に対して所定間隔を隔てて対向するように形成された固定電極に交流電圧を印加することによって、この振動子と固定電極との間に静電気力が発生し、共振器が振動する仕組みとなっている。この場合、振動子の各辺の中心と角とが水平振動する。共振器同士が連結体で連結されている場合は、連結体は縦振動を伝えることとなる。
【0004】
また、半導体プロセスと親和性が高いシリコンプロセスを用いたRF−MEMSフィルタが、橋村 昭範ら、「ねじり振動を用いたRF−MEMSフィルタの開発」,信学技報,社団法人電子情報通信学会発行,IEICE Technical Report MW2005-185(2006-3)(非特
許文献1)で提案されている。この文献では、小型化と高Q値化の両立にねじり振動モードを利用した共振器が有効であることが紹介されている。
【0005】
ここで例に挙げた共振器のように、MEMS技術を用いて作られる装置を「MEMSデバイス」と呼ぶ。MEMSデバイスを製造するために、シリコン層をパターニングすることで形成した何らかの構造体と、絶縁性の表面を有する基材とを重ね合わせて接合する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−41911号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】橋村 昭範ら、「ねじり振動を用いたRF−MEMSフィルタの開発」,信学技報,社団法人電子情報通信学会発行,IEICE Technical Report MW2005-185(2006-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ねじり振動モードを利用したMEMSデバイスとしては、基板上に梁状の振動部材を設置したものが考えられる。その場合、この梁状の振動部材に振動を付与するための電極が、基板の表面に設けられるか、または、基板の表面にある程度の高さで設けられた部材の上面に設けられる。振動部材の下面はこのような電極に対して離隔して対向するように配置される。
【0009】
このような構造を作製するためには、まず、振動部材の部分はSiで独自に形成される
。一方、別途用意されたガラス基板の表面には導電体膜によって所望の電極パターンや引出配線が形成される。このように別々に作製された振動部材とガラス基板とが互いに陽極接合されることとなる。このとき、振動部材の下面は基板の表面に対してなるべく狭い間隙を介して対向することが望まれるが、従来、間隙を1μm未満とすることは困難であった。
【0010】
また、脚部と振動部材とを組み合わせた構造体を一体物として、脚部の下面と振動部材の下面との高低差が正確に1μm未満になるように作製できたとしても、陽極接合の工程では、数百℃の条件下で数百Vの電圧が印加されるので、振動部材と基板表面の電極との間で固着が生じるなどの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能な、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを提供すること、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に基づくMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、上記主表面から離隔するようにして上記基材に相対的に固定され、上記主表面に平行に延在する浮き構造体と、上記主表面に固定され、上記浮き構造体から離隔しつつ、上記浮き構造体の一部の領域に対して上記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法である。この製造方法は、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程と、上記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、上記かさ上げ対向部、および、上記かさ上げ対向部と上記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程と、上記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を上記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程と、上記中間絶縁層のうち少なくとも上記かさ上げ対向部と上記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって上記かさ上げ対向部と上記第2シリコン層との間の接続を断つ工程と、上記第1シリコン層の上記外枠部および上記かさ上げ対向部に対して、上記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように上記基材を貼り付ける工程と、上記第2シリコン層をパターニングすることによって上記浮き構造体を形成し、さらに上記支持梁部のうち上記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、上記かさ上げ対向部を上記外枠部から分離させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層がパターニングされた状態を示す平面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層がパターニングされた状態の斜視図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で厚み方向の途中までエッチングによって除去される予定の第1領域を示す説明図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で第1領域を厚み方向の途中までエッチングした状態の斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4で中間絶縁層を等方的にエッチングした後の状態の斜視図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に関する矢視断面図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S5で基材を貼り付けた状態の断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中で第2シリコン層を研磨して薄くした状態の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中で第2シリコン層の上面にマスクパターンを形成した状態の断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングの途中で、第2シリコン層のパターニングが完了し、第1シリコン層のパターニングはまだされていない状態の平面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングが終了した状態の断面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態での斜視図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法で得られたMEMSデバイスの平面図である。
【図16】図15におけるXVI−XVI線に関する矢視断面図である。
【図17】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で厚み方向の途中までエッチングによって除去される予定の第1領域を示す説明図である。
【図18】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4で中間絶縁層のエッチングを施した後の状態の断面図である。
【図19】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングを始める前の状態の断面図である。
【図20】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングを終えた状態の断面図である。
【図21】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態の断面図であり、実施の形態4におけるMEMSデバイスの断面図でもある。
【図22】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態の平面図であり、実施の形態4におけるMEMSデバイスの平面図でもある。
【図23】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層に形成されるパターンの部分拡大図である。
【図24】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4を終えた状態のかさ上げ対向部近傍の斜視図である。
【図25】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6を終えた状態の断面図であり、実施の形態5におけるMEMSデバイスの断面図でもある。
【図26】図25の中央部の拡大図である。
【図27】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法で得られたMEMSデバイスの平面図であり、実施の形態5におけるMEMSデバイスの平面図でもある。
【図28】参考技術に基づくMEMSデバイスの斜視図である。
【図29】参考技術に基づくMEMSデバイスの平面図である。
【図30】図29におけるXXX−XXX線に関する矢視断面図である。
【図31】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で用いられるSOI基板の断面図である。
【図32】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法でSOI基板の第1シリコン層をパターニングした後の状態の平面図である。
【図33】図32におけるXXXIII−XXXIII線に関する矢視断面図である。
【図34】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で中間絶縁層を等方的にエッチングした後の状態の断面図である。
【図35】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で用いられる基材の平面図である。
【図36】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で基材を貼り付けた状態の断面図である。
【図37】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で第2シリコン層をパターニングした後の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をなす上で発明者らはまず、MEMSデバイスの構造として、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える構造を想定した。これを以下、「参考技術」というものとする。この参考技術は、上述した本発明の目的を達成するためにひとまず考えられるものである。このような条件を満たす構造は、たとえばMEMSデバイスが共振器である場合にありうるが、共振器以外のMEMSデバイスにおいても同様の要件を満たす構造が求められうる。
【0016】
MEMSデバイスが共振器である場合を例にとって、参考技術に基づく構造の具体例を説明する。この構造を図28、図29、図30に示す。図29は図28に示した構造の平面図であり、図30は図29におけるXXX−XXX線に関する矢視断面図である。MEMSデバイスとしての共振器901は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する振動部としての浮き構造体2と、主表面20aに固定され、浮き構造体2から離隔しつつ、浮き構造体2の一部の領域2vに対して前記主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。共振器901は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。共振器901は、基礎シリコン層21と中間絶縁層22と高架シリコン層23とを備える。共振器901は浮き構造体2を取囲む外壁部9を備える。外壁部9は切欠き部10を有する。かさ上げ対向部5は間隙6を介して浮き構造体2の領域2vに対向している。かさ上げ対向部5は、領域2vに上下方向の振動を生じさせるためのブロックである。電極パターン4はかさ上げ対向部5と浮き構造体2との間に電圧を印加するためのものである。かさ上げ対向部5と浮き構造体2との間に電圧が印加されることによって領域2vに上下方向の振動が生じ、この振動が浮き構造体2の全体に伝わり、浮き構造体2の中のいくつかの領域においてはねじり振動が生じる。
【0017】
MEMSデバイスとして上述の共振器を製造する場合を想定し、その製造方法について説明する。まず図31に示すようなSOI基板100を用意する。SOI基板100は第1シリコン層101と中間絶縁層102と第2シリコン層103とを含む。SOI基板100の第1シリコン層101をパターニングして、図32、図33に示す構造を得る。図33は図32におけるXXXIII−XXXIII線に関する矢視断面図である。第1シリコン層101から形成された基本パターン510は中央の開口部を横切るように梁状部14を有する。さらにこの構造のうち中間絶縁層102を等方的にエッチング除去することによって図34に示す構造体を得る。すなわち、梁状部14の下側においては中間絶縁層102が除去されたことによって梁状部14と第2シリコン層103とが分離する。
【0018】
図35に示すように主表面20aに電極パターン4が形成された基材20を用意する。図34に示した構造体を図35に示す基材20の主表面20aに貼り付ける。貼り付けた後の様子を図36に示す。図36に示した状態から第2シリコン層103を研磨することによって所望の厚みにまで薄くする。さらに第2シリコン層103をパターニングする。こうして図37に示す構造が得られる。第1シリコン層101は基礎シリコン層21となり、中間絶縁層102は中間絶縁層22となり、第2シリコン層103は高架シリコン層23となっている。第2シリコン層103をパターニングする際には、第2シリコン層103から浮き構造体2が振動部として形成されるが、同時に梁状部14のうちの不用部分も除去され、梁状部14の一部がかさ上げ対向部5となって残る。さらにいくつかの工程を施すことによって、図28〜図30に示す構造を得る。
【0019】
上述したMEMSデバイスの製造方法においては、第2シリコン層103から振動部としての浮き構造体2を形成するためのマスクをそのまま利用して、浮き構造体2より基材20寄りに位置する梁状部14の露出部も続けてエッチングされる。これによって、梁状部14の露出部においては、梁状部14を厚み方向の全てにわたって除去することが想定されている。なぜなら、梁状部14の一部によって形成されるかさ上げ対向部5を他の部分から電気的に分離させるために、梁状部14は完全に分断する必要があるからである。しかし、梁状部14の露出部において梁状部14を完全に分断するまでエッチングしようとすればエッチングに長い時間がかかる。長時間にわたるエッチングを行なえば、本来は所定パターンで残すべき浮き構造体2においてもオーバエッチングとなり、浮き構造体2の形状精度を劣化させてしまうおそれがある。
【0020】
そこで、本発明は、発明者らが想定した参考技術において発明者らが自ら見出した問題点を解消することをさらに進んだ目的とする。すなわち、MEMSデバイスにおいてかさ上げ対向部を分離させるためのエッチングによって浮き構造体がオーバエッチングされることを防止するためのMEMSデバイスおよびその製造方法を提供することをさらに進んだ目的とする。
【0021】
(実施の形態1)
(製造方法)
図1〜図16を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートを図1に示す。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程S1と、前記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、前記かさ上げ対向部、および、前記かさ上げ対向部と前記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程S2と、前記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を前記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程S3と、前記中間絶縁層のうち少なくとも前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程S4と、前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して、前記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように前記基材を貼り付ける工程S5と、前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記かさ上げ対向部を前記外枠部から分離させる工程S6とを含む。
【0022】
各工程について以下に詳しく説明する。
工程S1としては、図31に示したようなSOI基板が用意される。このSOI基板100は、第1シリコン層101と第2シリコン層103とで中間絶縁層102を挟み込むように積層されたものである。
【0023】
工程S2としては、図2に示すように、パターニングされる。すなわち、第1シリコン層101がパターニングされることによって、外枠部16、かさ上げ対向部5および支持梁部15が形成される。外枠部16の外周の1ヶ所には切欠き部10が設けられている。支持梁部15は、かさ上げ対向部5と外枠部16とを接続する。図2に示した例では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが同じ幅で一直線上に並ぶように形成されているが、これはあくまで一例である。本発明を適用する上では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが同じ幅でなくてもよい。本発明を適用する上では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが一直線上に並ぶような位置関係でなくてもよい。たとえば、中央に配置されるかさ上げ対向部5に対して支持梁部15が放射状に接続するように配置された構造であってもよい。
【0024】
図2に示した構造の斜視図を図3に示す。パターニングされたのは第1シリコン層101のみであって、中間絶縁層102および第2シリコン層103は全面に残っている。
【0025】
工程S3としては、図4に示すように、支持梁部15の少なくとも一部である第1領域17を第2シリコン層103から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチングによって除去される。図4では、支持梁部15のうち第1領域17に該当する部分をわかりやすく示すために、第1領域17にハッチングを付している。第1領域を厚み方向の途中までエッチングした結果、図5に示すような構造となる。さらに図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図を図6に示す。支持梁部15のうち第1領域17に該当する部分においては、第1シリコン層101が厚み方向の途中までエッチングされて薄くなっている。この時点では、中間絶縁層102および第2シリコン層103は全面に残っている。
【0026】
工程S4としては、中間絶縁層102のうち少なくともかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分をエッチング除去することによってかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間の接続を断つ。このエッチングは等方的に行なわれる。中間絶縁層102のエッチングをした結果、図7に示すようになる。中間絶縁層102が露出していた領域においては中間絶縁層102は全て除去されたので、図7では中間絶縁層102は見えていない。図7においては、外枠部16の下の一部の領域に中間絶縁層102が残っているが、中間絶縁層102は外枠部16に隠れて見えていない。図7におけるVIII−VIII線に関する矢視断面図を図8に示す。工程S4において中間絶縁層102をエッチング除去すべき部分は、少なくともかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分であるが、このエッチングの結果、図7、図8に示したように、他の部分の中間絶縁層102も除去されてもよい。たとえば支持梁部15の第2シリコン層103に対する投影領域において中間絶縁層102が完全に除去されていてもよい。ただし、外枠部16の下には中間絶縁層102が一部残存すべきである。
【0027】
工程S5としては、第1シリコン層101の外枠部16およびかさ上げ対向部5に対して、第2シリコン層103とは反対の側から一括して被覆するように基材20が貼り付けられる。基材20は図35に示したようなものであってよい。基材20は主表面20aを有する。基材20は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。工程S5により基材20を貼り付けた結果、図9に示す構造となる。図9では、基材20を下側とし、第2シリコン層103を上側とする姿勢で表示している。図9では、かさ上げ対向部5の断面が見えている。支持梁部15はかさ上げ対向部5に接続する形で紙面に垂直な方向に延在している。第1シリコン層101の外枠部16の少なくとも1ヶ所には予めトンネル31が形成されている。工程S5の結果、引出配線7はトンネル31を通って外部に引き出される形となる。工程S5の結果、かさ上げ対向部5は、間隙6を介して第2シリコン層103の表面と対向することとなる。
【0028】
図10に示すように、基材20と反対の側から第2シリコン層103を研磨し、第2シリコン層103を所定の厚みとなるよう薄くする。
【0029】
工程S6としては、図10に示した状態から第2シリコン層103をパターニングすることによって浮き構造体2を形成し、さらに支持梁部15のうち浮き構造体2に覆われていない領域を除去することによって、かさ上げ対向部5を外枠部16から分離させる。そのためにはまず、図10に示した状態の第2シリコン層103の上面にレジストによりマスクパターンが形成される。このマスクパターンは、浮き構造体の平面的形状に対応したものである。すなわち、図11に示すようにマスクパターン18が形成される。図11は図10とは90°異なる向きに切ったときの断面図である。第1領域17は、第2シリコン層103がマスクパターン18に覆われていない領域に対応する。マスクパターン18をマスクとしてシリコン層のエッチングが行なわれる。このエッチングでは、第2シリコン層103および第1シリコン層101の両方がマスクパターン18によってパターニングされる。工程S6のエッチングの途中段階で、第2シリコン層103のパターニングが完了し、かつ、第1シリコン層101のパターニングはまだされていない状態の平面図を図12に示す。図12ではマスクパターン18は図示省略している。図12では、浮き構造体2の隙間からその背後の支持梁部15が部分的に見えている。支持梁部15のうち見えている部分は、いずれも第1領域17である。さらにエッチングが進行することによって、図12において支持梁部15のうち浮き構造体2に覆われていない部分はエッチング除去される。すなわち、支持梁部15のうち第1領域17にあった部分が除去される。
【0030】
工程S6のエッチングが終了した時点では、図13に示すように、第2シリコン層103からは、部分2a,2b,2cが残るようにパターニングされ、これらは浮き構造体2となる。部分2a,2cの下部には部材19b,19cが残っている。部材19b,19cはもはや不用の部材であるが、残っていても問題はない。このパターニングにより、第1シリコン層101は、「基礎シリコン層21」となり、第2シリコン層103は、「高架シリコン層23」となる。基礎シリコン層21と高架シリコン層23との間に部分的に残存する中間絶縁層102は、説明の便宜上、「中間絶縁層22」と呼び名を改める。
【0031】
図13に示した状態からマスクパターン18を除去する。マスクパターン18を除去した状態での斜視図を図14に示す。この時点でMEMSデバイスとしての共振器901が出来上がっている。この共振器901を平面図で示すと図15に示すとおりである。浮き構造体2が外壁部9によって取り囲まれた構造となっている。浮き構造体2の下にはかさ上げ対向部5および部材19b,19cが隠れている。工程S6のエッチングの結果、かさ上げ対向部5は外枠部16から既に分離している。外壁部9に含まれる2層のシリコン層のうち主表面20aに近い側の1層が外枠部16である。かさ上げ対向部5も外枠部16も元々、第1シリコン層101から形成されたものである。工程S6のエッチングの結果、部材19b,19cも外枠部16から分離して独立した形となっている。かさ上げ対向部5には引出配線7が接続されている。部材19b,19cには何の配線も接続されていない。図15におけるXVI−XVI線に関する矢視断面図を図16に示す。
【0032】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを容易に提供することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態によれば、工程S6におけるエッチング、すなわち、MEMSデバイスにおいてかさ上げ対向部を分離させるためのエッチングを開始する時点には、支持梁部15の一部である第1領域17は既に薄くされているので、短いエッチング時間のみで第1領域17は分断されることとなる。第1領域17が分断されることによって、かさ上げ対向部5を外枠部16から分離させるという目的は達成され、エッチングを終えることができるので、エッチングにかける総時間を短く済ませることができる。したがって、工程S6におけるエッチングによって浮き構造体2がオーバエッチングされることを防止することができる。
【0034】
なお、第1領域17は、支持梁部15のうち浮き構造体2の辺と重なる領域を避けて配置されていることが好ましい。工程S6で、支持梁部15がエッチングにより分断される場所は、浮き構造体2に覆われない場所である。したがって、エッチング時間短縮のためには、支持梁部15を予め薄くしておく領域である第1領域17は、浮き構造体2に覆われない場所と一致させておくことが好ましい。言い換えれば、上述のように、第1領域17は、支持梁部15のうち浮き構造体2の辺と重なる領域を避けて配置されていることが好ましい。図11、図12に示したように、本実施の形態は、この好ましい条件が満たされた例を示したものである。
【0035】
(実施の形態2)
(製造方法)
図17〜図22を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、基本的には実施の形態1で説明したものと同様であるが、工程S3で設定される第1領域17の位置が異なる。実施の形態1では、工程S3においては図4に示したように第1領域17が設定されていたが、本実施の形態では、好ましいことに、図17に示したように第1領域17が設定される。すなわち、第1領域17は、かさ上げ対向部5となるべき部分の端からかさ上げ張出部51を介在するように離隔して配置されている。かさ上げ張出部51は支持梁部15の一部である。この状態で工程S3のエッチングをすることによって支持梁部15のうち第1領域17は、薄くなるが、かさ上げ張出部51は薄くならない。さらに、工程S4のエッチングにより中間絶縁層102の一部が除去される。この結果、本実施の形態では、図18に示したようになる。かさ上げ対向部5の両脇にかさ上げ張出部51が設けられている。支持梁部15はかさ上げ対向部5と接続されている。
【0036】
本実施の形態では、工程S6のエッチングを始める時点では、図19に示すようになる。かさ上げ張出部51はマスクパターン18の投影領域からはみ出している。工程S6のエッチングを終えた時点では、図20に示すようになる。支持梁部15のうち第1領域17にあった部分はマスクパターン18に覆われておらず、しかも薄かったので、このエッチングによって既に除去されている。かさ上げ張出部51は、元々かさ上げ対向部5と同程度の厚みを有していたが、マスクパターン18に覆われずに工程S6のエッチングにさらされていたのであるから、かさ上げ対向部5に比べて薄くなっている。さらにマスクパターン18を除去し、図21に示すようになる。得られたMEMSデバイスは共振器902である。この状態での共振器902の平面図は図22に示すようになる。かさ上げ対向部5は浮き構造体2に覆われて隠れているが、かさ上げ張出部51は浮き構造体2に覆われず見えている。
【0037】
本実施の形態で最終的に得られるMEMSデバイスの構造としては、かさ上げ対向部5に隣接してかさ上げ張出部51があるという点以外は、実施の形態1で示したMEMSデバイスと同じである。本実施の形態では、かさ上げ対向部5の両側にかさ上げ張出部51がほぼ同じ幅で隣接している構成を示したが、かさ上げ対向部5の一方の側と他方の側とでかさ上げ張出部51の幅が異なっていてもよい。また、かさ上げ対向部5の一方の側にのみかさ上げ張出部51があり、他方の側にはかさ上げ張出部51がない構成であってもよい。
【0038】
(作用・効果)
本実施の形態でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、第1領域17は、かさ上げ対向部5となるべき部分の端からかさ上げ張出部51を介在するように離隔して配置されているので、工程S6のパターニングの位置が多少ずれても、かさ上げ張出部51が新たにかさ上げ対向部5の一部となることにより、かさ上げ対向部5としての役割を果たすことができる。言い換えれば、かさ上げ張出部51は、かさ上げ対向部5のパターニング位置ずれを吸収するためのマージンとしての役割を果たすことができる。
【0039】
(実施の形態3)
(製造方法)
図23〜図27を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、基本的には実施の形態2で説明したものと同様であるが、工程S2でエッチングされるパターンが異なる。工程S2において第1シリコン層101をパターニングする際の中央のかさ上げ対向部5および支持梁部15に相当する領域のみを取り出して拡大したところを図23に示す。本実施の形態では、好ましいことに、第1シリコン層101をパターニングする工程S2は、図23に示すように、かさ上げ張出部51のかさ上げ対向部5から離隔した部分である第2領域52には貫通孔を設けず、かさ上げ対向部5と、支持梁部15のうち第2領域52以外の部分とに複数の貫通孔35を設ける工程を含む。かさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間の接続を断つ工程S4においては、第2領域52には中間絶縁層102を残す。本実施の形態において工程S4を終えた状態での、かさ上げ対向部5の近傍の斜視図を図24に示す。第2領域52には貫通孔35が設けられていないので、工程S4を行なう際に、第2領域52においては、支持梁部15の下の中間絶縁層102のエッチング除去の速度が遅く、その結果、第2領域52のみに中間絶縁層102を残すことができる。他の部分においては、貫通孔35が設けられているので、中間絶縁層102に対するエッチングが効率良く進行し、その結果、第2領域52以外では中間絶縁層102は十分に除去され、第1シリコン層101と第2シリコン層103とは既に分離している。
【0040】
本実施の形態では、この後、実施の形態1で説明したのと同様に、工程S5によって基材20を貼り付ける。基材20は図24における上側から被せるように貼り付けられる。さらに、基材20と反対の側から第2シリコン層103が研磨され、第2シリコン層103が薄くなる。工程S6によって第2シリコン層103をパターニングする。工程S6では、第2シリコン層103をパターニングすることによって浮き構造体2が形成されるが、浮き構造体2のうちかさ上げ対向部5と重なる辺は、支持梁部15と直交する方向を長手方向として延在する。工程S6が完了し、浮き構造体2が形成された状態での断面図を図25に示す。こうして、MEMSデバイスとしての共振器903を得ることができた。さらに、図25における中央部を拡大したところを図26に示す。かさ上げ張出部51の大部分は工程S6のエッチングによって上面からある程度の部分が除去され、その結果、かさ上げ対向部5より低くなっている。かさ上げ張出部51のうち第2領域52は中間絶縁層102によって覆われているので、この部分では、工程S6のエッチングの際に中間絶縁層102が第1シリコン層101を保護するマスク代わりとなる。その結果、第2領域52では、中間絶縁層102によって覆われていた部分のみ第1シリコン層101が凸状となっている。ただし、第2領域52の内部でも中間絶縁層102に覆われていない部分では第1シリコン層101が薄くなっている。得られたMEMSデバイスとしての共振器903の平面図を図27に示す。
【0041】
(作用・効果)
本実施の形態でも、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、工程S4において図24に示したように第1シリコン層101と第2シリコン層103との間の一部に中間絶縁層102を残すこととなるので、工程S5の際に、支持梁部15に支持されたかさ上げ対向部5は、第2シリコン層103の表面から離隔して宙に浮く形ではなく、中間絶縁層102を脚代わりとして第2シリコン層103の表面に固定される形となる。したがって、かさ上げ対向部5は安定して支持される。表面張力によって支持梁部15がたわんでかさ上げ対向部5が第2シリコン層103に接触してしまうといった事態を防止することができる。
【0042】
本実施の形態では、最終的には、図25〜図27に示したように中間絶縁層102がかさ上げ対向部5の近傍に残存することとなるが、この残存した中間絶縁層102は、浮き構造体2のいずれの部分からも平面的に見て離隔したところに位置することとなるので、浮き構造体2のねじり振動にとって妨げとなるものではない。
【0043】
(実施の形態4)
(構成)
本発明に基づく実施の形態4におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態2で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができるMEMSデバイスである。このMEMSデバイスとしての共振器902の断面図は図21に示したとおりであり、平面図は図22に示したとおりである。本実施の形態におけるMEMSデバイスとしての共振器902は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、主表面20aに平行に延在する浮き構造体2と、主表面20aに固定され、浮き構造体2から離隔しつつ、浮き構造体2の一部の領域に対して主表面20aに近い側から対向するかさ上げ対向部5と、かさ上げ対向部5と連続し、かつ、浮き構造体2の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部51を備える。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスとすることができる。
【0045】
本実施の形態におけるMEMSデバイスは、浮き構造体2の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部51を備えるので、工程S6のパターニングの位置が多少ずれても、かさ上げ張出部51が新たにかさ上げ対向部5の一部となることにより、かさ上げ対向部5としての役割を果たすことができる。言い換えれば、組立時の浮き構造体2とかさ上げ対向部5との位置ずれ誤差をかさ上げ張出部51によって吸収することができる。したがって、浮き構造体2に対して確実にかさ上げ対向部5が対向する構造とすることができるので、製造しやすく、信頼性が高いMEMSデバイスとすることができる。
【0046】
(実施の形態5)
(構成)
本発明に基づく実施の形態5におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態3で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができるMEMSデバイスである。このMEMSデバイスとしての共振器903の断面図は図25に示したとおりであり、平面図は図27に示したとおりである。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、かさ上げ張出部51の上面のうち浮き構造体2の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層としての中間絶縁層22によって覆われている。
【0047】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態におけるMEMSデバイスは、かさ上げ張出部51の上面のうち浮き構造体2の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層によって覆われているので、この構造のMEMSデバイスは、製造途中の段階で、かさ上げ対向部5が絶縁層を脚代わりとして第2シリコン層103の表面に固定される形となる。したがって、かさ上げ対向部5は安定して支持される。これにより、表面張力によって支持梁部15がたわんでかさ上げ対向部5が第2シリコン層103に接触してしまうといった事態を防止することができるので、製造しやすく、信頼性が高いMEMSデバイスとすることができる。
【0048】
なお、上記各実施の形態では、MEMSデバイスの構造として、外壁部9に取り囲まれた内側に浮き構造体2が露出するように配置された構造を示したが、外壁部9に取り囲まれた空間を覆い隠すように、カバー部材が取り付けられてもよい。このカバー部材は、外壁部9に取り囲まれた空間を、浮き構造体2に接触しないように封止するものであることが好ましい。このようなカバー部材が取り付けられることによって、浮き構造体2の周辺に異物が侵入することを防止することができる。
【0049】
なお、上記各実施の形態では、本発明に基づくMEMSデバイスが共振器である例を示したが、本発明に基づくMEMSデバイスは共振器以外であってもよい。
【0050】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
2 浮き構造体、2a,2b,2c (浮き構造体の)部分、2v (かさ上げ対向部が対向する)領域、4 電極パターン、5 かさ上げ対向部、6 間隙、7 引出配線、8 外部接続端子、9 外壁部、10 切欠き部、14 梁状部、15 支持梁部、16 外枠部、17 第1領域、18 マスクパターン、19b,19c 部材、20 基材、20a 主表面、21 基礎シリコン層、22 中間絶縁層、23 高架シリコン層、31 トンネル、35 貫通孔、51 かさ上げ張出部、52 第2領域、100 SOI基板、101 第1シリコン層、102 中間絶縁層、103 第2シリコン層、901,902,903 共振器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体分野における微細加工技術を利用して、微細な機械構造を電子回路と一体化して形成するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が開発されており、フィルタや共振器への応用が検討されている。
【0003】
なかでもこのようなMEMS技術で作成されたマイクロメカニカル共振器は、リモートキーレスエントリシステム、スペクトラム拡散通信等のRF無線に好適に使用される。このようなMEMS技術で作成されたマイクロメカニカル共振器を利用したMEMSフィルタの一例が特開2006−41911号公報(特許文献1)に開示されている。この文献に記載されたMEMSフィルタ装置は、共振器を備える。この共振器に含まれる振動子は、正方形の板状のものであって、基板表面と平行で、なおかつ基板から離隔するように配置され、基板表面に連結された円柱で支持されている。共振器の各辺に対して所定間隔を隔てて対向するように形成された固定電極に交流電圧を印加することによって、この振動子と固定電極との間に静電気力が発生し、共振器が振動する仕組みとなっている。この場合、振動子の各辺の中心と角とが水平振動する。共振器同士が連結体で連結されている場合は、連結体は縦振動を伝えることとなる。
【0004】
また、半導体プロセスと親和性が高いシリコンプロセスを用いたRF−MEMSフィルタが、橋村 昭範ら、「ねじり振動を用いたRF−MEMSフィルタの開発」,信学技報,社団法人電子情報通信学会発行,IEICE Technical Report MW2005-185(2006-3)(非特
許文献1)で提案されている。この文献では、小型化と高Q値化の両立にねじり振動モードを利用した共振器が有効であることが紹介されている。
【0005】
ここで例に挙げた共振器のように、MEMS技術を用いて作られる装置を「MEMSデバイス」と呼ぶ。MEMSデバイスを製造するために、シリコン層をパターニングすることで形成した何らかの構造体と、絶縁性の表面を有する基材とを重ね合わせて接合する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−41911号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】橋村 昭範ら、「ねじり振動を用いたRF−MEMSフィルタの開発」,信学技報,社団法人電子情報通信学会発行,IEICE Technical Report MW2005-185(2006-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ねじり振動モードを利用したMEMSデバイスとしては、基板上に梁状の振動部材を設置したものが考えられる。その場合、この梁状の振動部材に振動を付与するための電極が、基板の表面に設けられるか、または、基板の表面にある程度の高さで設けられた部材の上面に設けられる。振動部材の下面はこのような電極に対して離隔して対向するように配置される。
【0009】
このような構造を作製するためには、まず、振動部材の部分はSiで独自に形成される
。一方、別途用意されたガラス基板の表面には導電体膜によって所望の電極パターンや引出配線が形成される。このように別々に作製された振動部材とガラス基板とが互いに陽極接合されることとなる。このとき、振動部材の下面は基板の表面に対してなるべく狭い間隙を介して対向することが望まれるが、従来、間隙を1μm未満とすることは困難であった。
【0010】
また、脚部と振動部材とを組み合わせた構造体を一体物として、脚部の下面と振動部材の下面との高低差が正確に1μm未満になるように作製できたとしても、陽極接合の工程では、数百℃の条件下で数百Vの電圧が印加されるので、振動部材と基板表面の電極との間で固着が生じるなどの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能な、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを提供すること、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に基づくMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、上記主表面から離隔するようにして上記基材に相対的に固定され、上記主表面に平行に延在する浮き構造体と、上記主表面に固定され、上記浮き構造体から離隔しつつ、上記浮き構造体の一部の領域に対して上記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法である。この製造方法は、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程と、上記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、上記かさ上げ対向部、および、上記かさ上げ対向部と上記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程と、上記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を上記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程と、上記中間絶縁層のうち少なくとも上記かさ上げ対向部と上記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって上記かさ上げ対向部と上記第2シリコン層との間の接続を断つ工程と、上記第1シリコン層の上記外枠部および上記かさ上げ対向部に対して、上記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように上記基材を貼り付ける工程と、上記第2シリコン層をパターニングすることによって上記浮き構造体を形成し、さらに上記支持梁部のうち上記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、上記かさ上げ対向部を上記外枠部から分離させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層がパターニングされた状態を示す平面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層がパターニングされた状態の斜視図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で厚み方向の途中までエッチングによって除去される予定の第1領域を示す説明図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で第1領域を厚み方向の途中までエッチングした状態の斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4で中間絶縁層を等方的にエッチングした後の状態の斜視図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に関する矢視断面図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S5で基材を貼り付けた状態の断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中で第2シリコン層を研磨して薄くした状態の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中で第2シリコン層の上面にマスクパターンを形成した状態の断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングの途中で、第2シリコン層のパターニングが完了し、第1シリコン層のパターニングはまだされていない状態の平面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングが終了した状態の断面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態での斜視図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法で得られたMEMSデバイスの平面図である。
【図16】図15におけるXVI−XVI線に関する矢視断面図である。
【図17】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S3で厚み方向の途中までエッチングによって除去される予定の第1領域を示す説明図である。
【図18】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4で中間絶縁層のエッチングを施した後の状態の断面図である。
【図19】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングを始める前の状態の断面図である。
【図20】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6のエッチングを終えた状態の断面図である。
【図21】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態の断面図であり、実施の形態4におけるMEMSデバイスの断面図でもある。
【図22】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の途中でマスクパターンを除去した状態の平面図であり、実施の形態4におけるMEMSデバイスの平面図でもある。
【図23】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S2で第1シリコン層に形成されるパターンの部分拡大図である。
【図24】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S4を終えた状態のかさ上げ対向部近傍の斜視図である。
【図25】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法の工程S6を終えた状態の断面図であり、実施の形態5におけるMEMSデバイスの断面図でもある。
【図26】図25の中央部の拡大図である。
【図27】本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法で得られたMEMSデバイスの平面図であり、実施の形態5におけるMEMSデバイスの平面図でもある。
【図28】参考技術に基づくMEMSデバイスの斜視図である。
【図29】参考技術に基づくMEMSデバイスの平面図である。
【図30】図29におけるXXX−XXX線に関する矢視断面図である。
【図31】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で用いられるSOI基板の断面図である。
【図32】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法でSOI基板の第1シリコン層をパターニングした後の状態の平面図である。
【図33】図32におけるXXXIII−XXXIII線に関する矢視断面図である。
【図34】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で中間絶縁層を等方的にエッチングした後の状態の断面図である。
【図35】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で用いられる基材の平面図である。
【図36】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で基材を貼り付けた状態の断面図である。
【図37】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法で第2シリコン層をパターニングした後の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をなす上で発明者らはまず、MEMSデバイスの構造として、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える構造を想定した。これを以下、「参考技術」というものとする。この参考技術は、上述した本発明の目的を達成するためにひとまず考えられるものである。このような条件を満たす構造は、たとえばMEMSデバイスが共振器である場合にありうるが、共振器以外のMEMSデバイスにおいても同様の要件を満たす構造が求められうる。
【0016】
MEMSデバイスが共振器である場合を例にとって、参考技術に基づく構造の具体例を説明する。この構造を図28、図29、図30に示す。図29は図28に示した構造の平面図であり、図30は図29におけるXXX−XXX線に関する矢視断面図である。MEMSデバイスとしての共振器901は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する振動部としての浮き構造体2と、主表面20aに固定され、浮き構造体2から離隔しつつ、浮き構造体2の一部の領域2vに対して前記主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。共振器901は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。共振器901は、基礎シリコン層21と中間絶縁層22と高架シリコン層23とを備える。共振器901は浮き構造体2を取囲む外壁部9を備える。外壁部9は切欠き部10を有する。かさ上げ対向部5は間隙6を介して浮き構造体2の領域2vに対向している。かさ上げ対向部5は、領域2vに上下方向の振動を生じさせるためのブロックである。電極パターン4はかさ上げ対向部5と浮き構造体2との間に電圧を印加するためのものである。かさ上げ対向部5と浮き構造体2との間に電圧が印加されることによって領域2vに上下方向の振動が生じ、この振動が浮き構造体2の全体に伝わり、浮き構造体2の中のいくつかの領域においてはねじり振動が生じる。
【0017】
MEMSデバイスとして上述の共振器を製造する場合を想定し、その製造方法について説明する。まず図31に示すようなSOI基板100を用意する。SOI基板100は第1シリコン層101と中間絶縁層102と第2シリコン層103とを含む。SOI基板100の第1シリコン層101をパターニングして、図32、図33に示す構造を得る。図33は図32におけるXXXIII−XXXIII線に関する矢視断面図である。第1シリコン層101から形成された基本パターン510は中央の開口部を横切るように梁状部14を有する。さらにこの構造のうち中間絶縁層102を等方的にエッチング除去することによって図34に示す構造体を得る。すなわち、梁状部14の下側においては中間絶縁層102が除去されたことによって梁状部14と第2シリコン層103とが分離する。
【0018】
図35に示すように主表面20aに電極パターン4が形成された基材20を用意する。図34に示した構造体を図35に示す基材20の主表面20aに貼り付ける。貼り付けた後の様子を図36に示す。図36に示した状態から第2シリコン層103を研磨することによって所望の厚みにまで薄くする。さらに第2シリコン層103をパターニングする。こうして図37に示す構造が得られる。第1シリコン層101は基礎シリコン層21となり、中間絶縁層102は中間絶縁層22となり、第2シリコン層103は高架シリコン層23となっている。第2シリコン層103をパターニングする際には、第2シリコン層103から浮き構造体2が振動部として形成されるが、同時に梁状部14のうちの不用部分も除去され、梁状部14の一部がかさ上げ対向部5となって残る。さらにいくつかの工程を施すことによって、図28〜図30に示す構造を得る。
【0019】
上述したMEMSデバイスの製造方法においては、第2シリコン層103から振動部としての浮き構造体2を形成するためのマスクをそのまま利用して、浮き構造体2より基材20寄りに位置する梁状部14の露出部も続けてエッチングされる。これによって、梁状部14の露出部においては、梁状部14を厚み方向の全てにわたって除去することが想定されている。なぜなら、梁状部14の一部によって形成されるかさ上げ対向部5を他の部分から電気的に分離させるために、梁状部14は完全に分断する必要があるからである。しかし、梁状部14の露出部において梁状部14を完全に分断するまでエッチングしようとすればエッチングに長い時間がかかる。長時間にわたるエッチングを行なえば、本来は所定パターンで残すべき浮き構造体2においてもオーバエッチングとなり、浮き構造体2の形状精度を劣化させてしまうおそれがある。
【0020】
そこで、本発明は、発明者らが想定した参考技術において発明者らが自ら見出した問題点を解消することをさらに進んだ目的とする。すなわち、MEMSデバイスにおいてかさ上げ対向部を分離させるためのエッチングによって浮き構造体がオーバエッチングされることを防止するためのMEMSデバイスおよびその製造方法を提供することをさらに進んだ目的とする。
【0021】
(実施の形態1)
(製造方法)
図1〜図16を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートを図1に示す。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程S1と、前記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、前記かさ上げ対向部、および、前記かさ上げ対向部と前記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程S2と、前記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を前記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程S3と、前記中間絶縁層のうち少なくとも前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程S4と、前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して、前記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように前記基材を貼り付ける工程S5と、前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記かさ上げ対向部を前記外枠部から分離させる工程S6とを含む。
【0022】
各工程について以下に詳しく説明する。
工程S1としては、図31に示したようなSOI基板が用意される。このSOI基板100は、第1シリコン層101と第2シリコン層103とで中間絶縁層102を挟み込むように積層されたものである。
【0023】
工程S2としては、図2に示すように、パターニングされる。すなわち、第1シリコン層101がパターニングされることによって、外枠部16、かさ上げ対向部5および支持梁部15が形成される。外枠部16の外周の1ヶ所には切欠き部10が設けられている。支持梁部15は、かさ上げ対向部5と外枠部16とを接続する。図2に示した例では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが同じ幅で一直線上に並ぶように形成されているが、これはあくまで一例である。本発明を適用する上では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが同じ幅でなくてもよい。本発明を適用する上では、かさ上げ対向部5と支持梁部15とが一直線上に並ぶような位置関係でなくてもよい。たとえば、中央に配置されるかさ上げ対向部5に対して支持梁部15が放射状に接続するように配置された構造であってもよい。
【0024】
図2に示した構造の斜視図を図3に示す。パターニングされたのは第1シリコン層101のみであって、中間絶縁層102および第2シリコン層103は全面に残っている。
【0025】
工程S3としては、図4に示すように、支持梁部15の少なくとも一部である第1領域17を第2シリコン層103から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチングによって除去される。図4では、支持梁部15のうち第1領域17に該当する部分をわかりやすく示すために、第1領域17にハッチングを付している。第1領域を厚み方向の途中までエッチングした結果、図5に示すような構造となる。さらに図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図を図6に示す。支持梁部15のうち第1領域17に該当する部分においては、第1シリコン層101が厚み方向の途中までエッチングされて薄くなっている。この時点では、中間絶縁層102および第2シリコン層103は全面に残っている。
【0026】
工程S4としては、中間絶縁層102のうち少なくともかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分をエッチング除去することによってかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間の接続を断つ。このエッチングは等方的に行なわれる。中間絶縁層102のエッチングをした結果、図7に示すようになる。中間絶縁層102が露出していた領域においては中間絶縁層102は全て除去されたので、図7では中間絶縁層102は見えていない。図7においては、外枠部16の下の一部の領域に中間絶縁層102が残っているが、中間絶縁層102は外枠部16に隠れて見えていない。図7におけるVIII−VIII線に関する矢視断面図を図8に示す。工程S4において中間絶縁層102をエッチング除去すべき部分は、少なくともかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分であるが、このエッチングの結果、図7、図8に示したように、他の部分の中間絶縁層102も除去されてもよい。たとえば支持梁部15の第2シリコン層103に対する投影領域において中間絶縁層102が完全に除去されていてもよい。ただし、外枠部16の下には中間絶縁層102が一部残存すべきである。
【0027】
工程S5としては、第1シリコン層101の外枠部16およびかさ上げ対向部5に対して、第2シリコン層103とは反対の側から一括して被覆するように基材20が貼り付けられる。基材20は図35に示したようなものであってよい。基材20は主表面20aを有する。基材20は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。工程S5により基材20を貼り付けた結果、図9に示す構造となる。図9では、基材20を下側とし、第2シリコン層103を上側とする姿勢で表示している。図9では、かさ上げ対向部5の断面が見えている。支持梁部15はかさ上げ対向部5に接続する形で紙面に垂直な方向に延在している。第1シリコン層101の外枠部16の少なくとも1ヶ所には予めトンネル31が形成されている。工程S5の結果、引出配線7はトンネル31を通って外部に引き出される形となる。工程S5の結果、かさ上げ対向部5は、間隙6を介して第2シリコン層103の表面と対向することとなる。
【0028】
図10に示すように、基材20と反対の側から第2シリコン層103を研磨し、第2シリコン層103を所定の厚みとなるよう薄くする。
【0029】
工程S6としては、図10に示した状態から第2シリコン層103をパターニングすることによって浮き構造体2を形成し、さらに支持梁部15のうち浮き構造体2に覆われていない領域を除去することによって、かさ上げ対向部5を外枠部16から分離させる。そのためにはまず、図10に示した状態の第2シリコン層103の上面にレジストによりマスクパターンが形成される。このマスクパターンは、浮き構造体の平面的形状に対応したものである。すなわち、図11に示すようにマスクパターン18が形成される。図11は図10とは90°異なる向きに切ったときの断面図である。第1領域17は、第2シリコン層103がマスクパターン18に覆われていない領域に対応する。マスクパターン18をマスクとしてシリコン層のエッチングが行なわれる。このエッチングでは、第2シリコン層103および第1シリコン層101の両方がマスクパターン18によってパターニングされる。工程S6のエッチングの途中段階で、第2シリコン層103のパターニングが完了し、かつ、第1シリコン層101のパターニングはまだされていない状態の平面図を図12に示す。図12ではマスクパターン18は図示省略している。図12では、浮き構造体2の隙間からその背後の支持梁部15が部分的に見えている。支持梁部15のうち見えている部分は、いずれも第1領域17である。さらにエッチングが進行することによって、図12において支持梁部15のうち浮き構造体2に覆われていない部分はエッチング除去される。すなわち、支持梁部15のうち第1領域17にあった部分が除去される。
【0030】
工程S6のエッチングが終了した時点では、図13に示すように、第2シリコン層103からは、部分2a,2b,2cが残るようにパターニングされ、これらは浮き構造体2となる。部分2a,2cの下部には部材19b,19cが残っている。部材19b,19cはもはや不用の部材であるが、残っていても問題はない。このパターニングにより、第1シリコン層101は、「基礎シリコン層21」となり、第2シリコン層103は、「高架シリコン層23」となる。基礎シリコン層21と高架シリコン層23との間に部分的に残存する中間絶縁層102は、説明の便宜上、「中間絶縁層22」と呼び名を改める。
【0031】
図13に示した状態からマスクパターン18を除去する。マスクパターン18を除去した状態での斜視図を図14に示す。この時点でMEMSデバイスとしての共振器901が出来上がっている。この共振器901を平面図で示すと図15に示すとおりである。浮き構造体2が外壁部9によって取り囲まれた構造となっている。浮き構造体2の下にはかさ上げ対向部5および部材19b,19cが隠れている。工程S6のエッチングの結果、かさ上げ対向部5は外枠部16から既に分離している。外壁部9に含まれる2層のシリコン層のうち主表面20aに近い側の1層が外枠部16である。かさ上げ対向部5も外枠部16も元々、第1シリコン層101から形成されたものである。工程S6のエッチングの結果、部材19b,19cも外枠部16から分離して独立した形となっている。かさ上げ対向部5には引出配線7が接続されている。部材19b,19cには何の配線も接続されていない。図15におけるXVI−XVI線に関する矢視断面図を図16に示す。
【0032】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、基板側の電極表面と振動部材の下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスを容易に提供することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態によれば、工程S6におけるエッチング、すなわち、MEMSデバイスにおいてかさ上げ対向部を分離させるためのエッチングを開始する時点には、支持梁部15の一部である第1領域17は既に薄くされているので、短いエッチング時間のみで第1領域17は分断されることとなる。第1領域17が分断されることによって、かさ上げ対向部5を外枠部16から分離させるという目的は達成され、エッチングを終えることができるので、エッチングにかける総時間を短く済ませることができる。したがって、工程S6におけるエッチングによって浮き構造体2がオーバエッチングされることを防止することができる。
【0034】
なお、第1領域17は、支持梁部15のうち浮き構造体2の辺と重なる領域を避けて配置されていることが好ましい。工程S6で、支持梁部15がエッチングにより分断される場所は、浮き構造体2に覆われない場所である。したがって、エッチング時間短縮のためには、支持梁部15を予め薄くしておく領域である第1領域17は、浮き構造体2に覆われない場所と一致させておくことが好ましい。言い換えれば、上述のように、第1領域17は、支持梁部15のうち浮き構造体2の辺と重なる領域を避けて配置されていることが好ましい。図11、図12に示したように、本実施の形態は、この好ましい条件が満たされた例を示したものである。
【0035】
(実施の形態2)
(製造方法)
図17〜図22を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、基本的には実施の形態1で説明したものと同様であるが、工程S3で設定される第1領域17の位置が異なる。実施の形態1では、工程S3においては図4に示したように第1領域17が設定されていたが、本実施の形態では、好ましいことに、図17に示したように第1領域17が設定される。すなわち、第1領域17は、かさ上げ対向部5となるべき部分の端からかさ上げ張出部51を介在するように離隔して配置されている。かさ上げ張出部51は支持梁部15の一部である。この状態で工程S3のエッチングをすることによって支持梁部15のうち第1領域17は、薄くなるが、かさ上げ張出部51は薄くならない。さらに、工程S4のエッチングにより中間絶縁層102の一部が除去される。この結果、本実施の形態では、図18に示したようになる。かさ上げ対向部5の両脇にかさ上げ張出部51が設けられている。支持梁部15はかさ上げ対向部5と接続されている。
【0036】
本実施の形態では、工程S6のエッチングを始める時点では、図19に示すようになる。かさ上げ張出部51はマスクパターン18の投影領域からはみ出している。工程S6のエッチングを終えた時点では、図20に示すようになる。支持梁部15のうち第1領域17にあった部分はマスクパターン18に覆われておらず、しかも薄かったので、このエッチングによって既に除去されている。かさ上げ張出部51は、元々かさ上げ対向部5と同程度の厚みを有していたが、マスクパターン18に覆われずに工程S6のエッチングにさらされていたのであるから、かさ上げ対向部5に比べて薄くなっている。さらにマスクパターン18を除去し、図21に示すようになる。得られたMEMSデバイスは共振器902である。この状態での共振器902の平面図は図22に示すようになる。かさ上げ対向部5は浮き構造体2に覆われて隠れているが、かさ上げ張出部51は浮き構造体2に覆われず見えている。
【0037】
本実施の形態で最終的に得られるMEMSデバイスの構造としては、かさ上げ対向部5に隣接してかさ上げ張出部51があるという点以外は、実施の形態1で示したMEMSデバイスと同じである。本実施の形態では、かさ上げ対向部5の両側にかさ上げ張出部51がほぼ同じ幅で隣接している構成を示したが、かさ上げ対向部5の一方の側と他方の側とでかさ上げ張出部51の幅が異なっていてもよい。また、かさ上げ対向部5の一方の側にのみかさ上げ張出部51があり、他方の側にはかさ上げ張出部51がない構成であってもよい。
【0038】
(作用・効果)
本実施の形態でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、第1領域17は、かさ上げ対向部5となるべき部分の端からかさ上げ張出部51を介在するように離隔して配置されているので、工程S6のパターニングの位置が多少ずれても、かさ上げ張出部51が新たにかさ上げ対向部5の一部となることにより、かさ上げ対向部5としての役割を果たすことができる。言い換えれば、かさ上げ張出部51は、かさ上げ対向部5のパターニング位置ずれを吸収するためのマージンとしての役割を果たすことができる。
【0039】
(実施の形態3)
(製造方法)
図23〜図27を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、基本的には実施の形態2で説明したものと同様であるが、工程S2でエッチングされるパターンが異なる。工程S2において第1シリコン層101をパターニングする際の中央のかさ上げ対向部5および支持梁部15に相当する領域のみを取り出して拡大したところを図23に示す。本実施の形態では、好ましいことに、第1シリコン層101をパターニングする工程S2は、図23に示すように、かさ上げ張出部51のかさ上げ対向部5から離隔した部分である第2領域52には貫通孔を設けず、かさ上げ対向部5と、支持梁部15のうち第2領域52以外の部分とに複数の貫通孔35を設ける工程を含む。かさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間の接続を断つ工程S4においては、第2領域52には中間絶縁層102を残す。本実施の形態において工程S4を終えた状態での、かさ上げ対向部5の近傍の斜視図を図24に示す。第2領域52には貫通孔35が設けられていないので、工程S4を行なう際に、第2領域52においては、支持梁部15の下の中間絶縁層102のエッチング除去の速度が遅く、その結果、第2領域52のみに中間絶縁層102を残すことができる。他の部分においては、貫通孔35が設けられているので、中間絶縁層102に対するエッチングが効率良く進行し、その結果、第2領域52以外では中間絶縁層102は十分に除去され、第1シリコン層101と第2シリコン層103とは既に分離している。
【0040】
本実施の形態では、この後、実施の形態1で説明したのと同様に、工程S5によって基材20を貼り付ける。基材20は図24における上側から被せるように貼り付けられる。さらに、基材20と反対の側から第2シリコン層103が研磨され、第2シリコン層103が薄くなる。工程S6によって第2シリコン層103をパターニングする。工程S6では、第2シリコン層103をパターニングすることによって浮き構造体2が形成されるが、浮き構造体2のうちかさ上げ対向部5と重なる辺は、支持梁部15と直交する方向を長手方向として延在する。工程S6が完了し、浮き構造体2が形成された状態での断面図を図25に示す。こうして、MEMSデバイスとしての共振器903を得ることができた。さらに、図25における中央部を拡大したところを図26に示す。かさ上げ張出部51の大部分は工程S6のエッチングによって上面からある程度の部分が除去され、その結果、かさ上げ対向部5より低くなっている。かさ上げ張出部51のうち第2領域52は中間絶縁層102によって覆われているので、この部分では、工程S6のエッチングの際に中間絶縁層102が第1シリコン層101を保護するマスク代わりとなる。その結果、第2領域52では、中間絶縁層102によって覆われていた部分のみ第1シリコン層101が凸状となっている。ただし、第2領域52の内部でも中間絶縁層102に覆われていない部分では第1シリコン層101が薄くなっている。得られたMEMSデバイスとしての共振器903の平面図を図27に示す。
【0041】
(作用・効果)
本実施の形態でも、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、工程S4において図24に示したように第1シリコン層101と第2シリコン層103との間の一部に中間絶縁層102を残すこととなるので、工程S5の際に、支持梁部15に支持されたかさ上げ対向部5は、第2シリコン層103の表面から離隔して宙に浮く形ではなく、中間絶縁層102を脚代わりとして第2シリコン層103の表面に固定される形となる。したがって、かさ上げ対向部5は安定して支持される。表面張力によって支持梁部15がたわんでかさ上げ対向部5が第2シリコン層103に接触してしまうといった事態を防止することができる。
【0042】
本実施の形態では、最終的には、図25〜図27に示したように中間絶縁層102がかさ上げ対向部5の近傍に残存することとなるが、この残存した中間絶縁層102は、浮き構造体2のいずれの部分からも平面的に見て離隔したところに位置することとなるので、浮き構造体2のねじり振動にとって妨げとなるものではない。
【0043】
(実施の形態4)
(構成)
本発明に基づく実施の形態4におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態2で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができるMEMSデバイスである。このMEMSデバイスとしての共振器902の断面図は図21に示したとおりであり、平面図は図22に示したとおりである。本実施の形態におけるMEMSデバイスとしての共振器902は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、主表面20aに平行に延在する浮き構造体2と、主表面20aに固定され、浮き構造体2から離隔しつつ、浮き構造体2の一部の領域に対して主表面20aに近い側から対向するかさ上げ対向部5と、かさ上げ対向部5と連続し、かつ、浮き構造体2の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部51を備える。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、ねじり振動を利用するMEMSデバイスとすることができる。
【0045】
本実施の形態におけるMEMSデバイスは、浮き構造体2の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部51を備えるので、工程S6のパターニングの位置が多少ずれても、かさ上げ張出部51が新たにかさ上げ対向部5の一部となることにより、かさ上げ対向部5としての役割を果たすことができる。言い換えれば、組立時の浮き構造体2とかさ上げ対向部5との位置ずれ誤差をかさ上げ張出部51によって吸収することができる。したがって、浮き構造体2に対して確実にかさ上げ対向部5が対向する構造とすることができるので、製造しやすく、信頼性が高いMEMSデバイスとすることができる。
【0046】
(実施の形態5)
(構成)
本発明に基づく実施の形態5におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態3で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができるMEMSデバイスである。このMEMSデバイスとしての共振器903の断面図は図25に示したとおりであり、平面図は図27に示したとおりである。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、かさ上げ張出部51の上面のうち浮き構造体2の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層としての中間絶縁層22によって覆われている。
【0047】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態におけるMEMSデバイスは、かさ上げ張出部51の上面のうち浮き構造体2の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層によって覆われているので、この構造のMEMSデバイスは、製造途中の段階で、かさ上げ対向部5が絶縁層を脚代わりとして第2シリコン層103の表面に固定される形となる。したがって、かさ上げ対向部5は安定して支持される。これにより、表面張力によって支持梁部15がたわんでかさ上げ対向部5が第2シリコン層103に接触してしまうといった事態を防止することができるので、製造しやすく、信頼性が高いMEMSデバイスとすることができる。
【0048】
なお、上記各実施の形態では、MEMSデバイスの構造として、外壁部9に取り囲まれた内側に浮き構造体2が露出するように配置された構造を示したが、外壁部9に取り囲まれた空間を覆い隠すように、カバー部材が取り付けられてもよい。このカバー部材は、外壁部9に取り囲まれた空間を、浮き構造体2に接触しないように封止するものであることが好ましい。このようなカバー部材が取り付けられることによって、浮き構造体2の周辺に異物が侵入することを防止することができる。
【0049】
なお、上記各実施の形態では、本発明に基づくMEMSデバイスが共振器である例を示したが、本発明に基づくMEMSデバイスは共振器以外であってもよい。
【0050】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
2 浮き構造体、2a,2b,2c (浮き構造体の)部分、2v (かさ上げ対向部が対向する)領域、4 電極パターン、5 かさ上げ対向部、6 間隙、7 引出配線、8 外部接続端子、9 外壁部、10 切欠き部、14 梁状部、15 支持梁部、16 外枠部、17 第1領域、18 マスクパターン、19b,19c 部材、20 基材、20a 主表面、21 基礎シリコン層、22 中間絶縁層、23 高架シリコン層、31 トンネル、35 貫通孔、51 かさ上げ張出部、52 第2領域、100 SOI基板、101 第1シリコン層、102 中間絶縁層、103 第2シリコン層、901,902,903 共振器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な主表面を有する基材と、
前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、
前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、
第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程と、
前記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、前記かさ上げ対向部、および、前記かさ上げ対向部と前記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程と、
前記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を前記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程と、
前記中間絶縁層のうち少なくとも前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程と、
前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して、前記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように前記基材を貼り付ける工程と、
前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記かさ上げ対向部を前記外枠部から分離させる工程とを含む、MEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1領域は、前記支持梁部のうち前記浮き構造体の辺と重なる領域を避けて配置されている、請求項1に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1領域は、前記かさ上げ対向部となるべき部分の端からかさ上げ張出部を介在するように離隔して配置されている、請求項1または2に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1シリコン層をパターニングする工程は、前記かさ上げ張出部の前記かさ上げ対向部から離隔した部分である第2領域には貫通孔を設けず、前記かさ上げ対向部と、前記支持梁部のうち前記第2領域以外の部分とに複数の貫通孔を設ける工程を含み、
前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程においては、前記第2領域には前記中間絶縁層を残す、請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
平坦な主表面を有する基材と、
前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、
前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部と、
前記かさ上げ対向部と連続し、かつ、前記浮き構造体の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部を備える、MEMSデバイス。
【請求項6】
前記かさ上げ張出部の上面のうち前記浮き構造体の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層によって覆われている、請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項1】
平坦な主表面を有する基材と、
前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、
前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、
第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程と、
前記第1シリコン層をパターニングすることによって、外枠部、前記かさ上げ対向部、および、前記かさ上げ対向部と前記外枠部とを接続する支持梁部を形成する工程と、
前記支持梁部の少なくとも一部である第1領域を前記第2シリコン層から遠い側の表面から厚み方向の途中までエッチング除去する工程と、
前記中間絶縁層のうち少なくとも前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程と、
前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して、前記第2シリコン層とは反対の側から一括して被覆するように前記基材を貼り付ける工程と、
前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記かさ上げ対向部を前記外枠部から分離させる工程とを含む、MEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1領域は、前記支持梁部のうち前記浮き構造体の辺と重なる領域を避けて配置されている、請求項1に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1領域は、前記かさ上げ対向部となるべき部分の端からかさ上げ張出部を介在するように離隔して配置されている、請求項1または2に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1シリコン層をパターニングする工程は、前記かさ上げ張出部の前記かさ上げ対向部から離隔した部分である第2領域には貫通孔を設けず、前記かさ上げ対向部と、前記支持梁部のうち前記第2領域以外の部分とに複数の貫通孔を設ける工程を含み、
前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間の接続を断つ工程においては、前記第2領域には前記中間絶縁層を残す、請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
平坦な主表面を有する基材と、
前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、前記主表面に平行に延在する浮き構造体と、
前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向するかさ上げ対向部と、
前記かさ上げ対向部と連続し、かつ、前記浮き構造体の投影領域からはみ出すように張り出したかさ上げ張出部を備える、MEMSデバイス。
【請求項6】
前記かさ上げ張出部の上面のうち前記浮き構造体の投影領域から離隔した部位において少なくとも一部が絶縁層によって覆われている、請求項5に記載のMEMSデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2012−178710(P2012−178710A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40473(P2011−40473)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、委託研究、「重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、委託研究、「重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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