説明

MEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイス、及び超音波トランスデューサー

【課題】均一厚み寸法を有する機能膜を備えたMEMSデバイスを製造するMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイス、及び超音波トランスデューサーを提供する
【解決手段】MEMSデバイスの製造方法は、基板11の第一面11Aに、平坦な先端面と側面部とを有する凸部を形成する凸部形成工程と、第一面11Aに側壁部121及びメンブレン122を有する支持膜12を形成する成膜工程と、突出先端面と重なる位置に孔部31を有するマスク層を形成するマスク工程と、孔部から支持膜12のメンブレン122までを、厚み方向に沿ってエッチングした後、メンブレン122の表面に沿って側壁部121までをサイドエッチングしてキャビティCを形成するエッチング工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な機能膜を備えたMEMSデバイスを製造するMEMSデバイスの製造方法、当該製造方法により製造されたMEMSデバイス、及び超音波トランスデューサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、均一な膜厚寸法を有する機能膜(メンブレン)を備えたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1は、ダイアフラム上に圧電体を積層した超音波センサーである。この超音波センサーは、圧電体に電圧を印加してダイアフラム(機能膜)を振動させて超音波を出力したり、超音波の受信により振動されるダイアフラムの変位量を圧電体で電気信号に変換して出力したりするセンサーである。このような超音波センサーでは、平板上のSi基板の一面側(第一面)を酸化してSiO膜を形成し、SiO膜が形成された面とは反対側の面(第二面)に、ダイアフラムの形成位置に孔部を有するマスクを形成する。そして、Si基板の第二面側をエッチング処理することで、マスクの孔部に対応する部分が、SiO膜をエッチングストッパーとしてエッチングされ、SiO膜のダイアフラムが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−147658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の超音波センサーでは、ダイアフラムの形成領域の全域に対応して、マスクの孔部を設け、当該孔部から露出する部分をダイアフラムまでをエッチングしている。
ここで、ダイアフラムを均一膜厚に形成するためには、エッチング液を確実にエッチングストッパーであるSiO膜に到達させる必要がある。しかしながら、各エッチング位置において、それぞれエッチングレートを同一にすることは困難であり、エッチングストッパーであるSiO膜までエッチング処理が完了している位置と、Siが残留し、ダイアフラムの膜厚が大きくなる部分とが生じる。このような場合、ダイアフラムの膜厚が不均一となるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、均一厚み寸法を有する機能膜を備えたMEMSデバイスを製造するMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイス、及び超音波トランスデューサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のMEMSデバイスの製造方法は、基板の第一面に、平坦な先端面と側面部とを有する凸部を形成する凸部形成工程と、前記第一面に、少なくとも前記凸部を覆う機能膜を形成する成膜工程と、前記基板の前記第一面とは反対側の第二面にマスク層を形成し、当該マスク層に孔部を形成するマスク工程と、前記孔部を介し前記機能膜をエッチングストッパーとして前記基板をエッチングするエッチング工程と、を備え、前記成膜工程は、前記凸部の前記先端面に接する主膜部と、前記凸部の前記側面部に接する側壁部と、を有する前記機能膜を形成し、
前記マスク工程は、前記基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記先端面と重なる位置に、前記先端面の面積よりも小さい面積の前記孔部を形成し、前記エッチング工程は、前記基板の前記第二面側から前記機能膜の前記主膜部までを、前記基板の厚み方向にエッチングした後、前記主膜部の表面に沿って前記側壁部までをエッチングすることで、前記主膜部、前記側壁部により囲われる領域を含む開口空間を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、凸部形成工程により、基板の第一面に凸部を形成し、成膜工程により、当該基板に機能膜を成膜する。これにより、凸部の表面形状に対応して、凸部の先端面に接する主膜部、及び凸部の側面部に接する側壁部を備える機能膜が形成される。
この後、マスク工程において、基板の第二面側にマスク層を形成して、当該マスク層に孔部を形成し、エッチング工程において、孔部から基板をエッチングする。この時、孔部の形成位置を、センサー平面視において、凸部の先端面の形成領域内とし、孔部の開口面積を先端面よりも小さくする。これにより、エッチング工程において、例えばサイクルエッチング等の異方性エッチングを実施することで、孔部からエッチングストッパーである主膜部まで、基板厚み方向に沿ってエッチングが進行する。また、エッチング工程では、この後、更にエッチング処理を継続して、主膜部の表面に沿って側壁部までをエッチングする。これにより、エッチングガスにより主膜部の表面に沿って側壁部まで基板がエッチングされることで、主膜部を底面とし、側壁部を筒内周面とした、筒状のキャビティ部を有する開口空間が形成される。
このようなMEMSデバイスの製造方法では、エッチングガスが主膜部に到達した後、オーバーエッチングすることで、主膜部に沿って側壁部が露出するまでエッチング処理が継続されるため、主膜部上に残留する基板の構成成分をエッチングにより除去することができる。したがって、エッチングレートによる主膜部の厚み寸法のバラつきを抑制することができ、均一な厚み寸法の機能膜(主膜部)を有するMEMSデバイスを製造することができる。
【0008】
ところで、支持膜上に残留する基板成分を除去するために、オーバーエッチング処理を行う場合、側壁部がない場合では、支持膜に沿ってエッチングを進行するため、開口空間の形成面積が、所望の面積領域を超えてしまい、所望の膜性能が得られないという問題もある。これに対して、本発明では、主膜部の外周縁に沿って側壁部が設けられるため、主膜部に沿ってエッチングを進行させた場合でも、側壁部をエッチングストッパーとして、エッチングにより形成される開口空間の形成領域(基板を厚み方向から見た平面視における開口空間の面積)の増大を抑えることができる。すなわち、基板を厚み方向から見た平面視において、キャビティの形成領域と、主膜部の形成領域とを同一にすることができるため、所望の膜性能の機能膜を有するMEMSデバイスを製造することができる。
【0009】
本発明のMEMSデバイスの製造方法では、前記孔部を前記先端面に投影した領域を孔部投影領域とし、前記先端面の外周縁上に位置する点から前記孔部投影領域の外周縁までの最短距離をアライメント設定値とした場合、前記マスク工程は、アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値が、前記凸部の高さ寸法よりも小さくなるように、前記孔部を形成することが好ましい。
ここで、凸部の高さ寸法とは、凸部の側面部の下端位置(第一面に接する位置)から、凸部の先端面までの基板厚み寸法に沿う距離を指す。
【0010】
本発明によれば、アライメント設定値の最大値および最小値の差分値が、凸部の突出寸法よりも小さくなるように、孔部の形成位置が設定される。
ここで、例えば円形状の突出先端面に対して、矩形状の孔部を有するマスク層が形成される場合など、アライメント設定値にバラつきがある場合では、突出先端面の外周縁上の点のうち、アライメント設定値が小さい点が先にエッチングされ、アライメント設定値が大きい点のエッチングが完了するまでの時間が長くなる。ここで、主膜部に接する先端面の基板成分を確実に除去するためには、アライメント設定値が最大値となる最大アライメント設定点がエッチングされる必要があり、この最大アライメント設定点に合わせてエッチング時間を設定する必要があり、かつこのエッチング時間内で、アライメント設定値が最小値となる最小アライメント設定点が、側壁部を超えてエッチングされないように、凸部の突出寸法(側壁部の高さ寸法)及びアライメント設定値を設定する必要がある。
ここで、アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値が凸部の突出寸法よりも大きい場合、最小アライメント設定点では、機能膜の側壁部を超えてエッチングが進行する場合がある。この場合、キャビティの形成領域が所望の範囲に収まらず、機能膜の膜性能が低下してしまう。
これに対して、上記のように、アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値が凸部の突出寸法よりも小さい場合では、エッチング工程において、主膜部の全体がキャビティに接するようにエッチングを行った場合でも、機能膜の側壁部を超えてエッチングが進行することがなく、所望の面積の形成領域にキャビティを形成することができる。したがって、所望の膜性能の機能膜を形成することができ、例えば機能膜として主膜部によりダイアフラムを形成する場合、所望面積を有し、安定した膜振動が可能なダイアフラムを精度よく形成することができる。
【0011】
本発明のMEMSデバイスの製造方法では、前記孔部を前記先端面に投影した領域を孔部投影領域とし、前記先端面の外周縁上に位置する点から前記孔部投影領域の外周縁までの最短距離をアライメント設定値とした場合、前記凸部形成工程は、前記凸部の突出寸法が、前記アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値よりも大きくなるように、前記凸部を形成することが好ましい。
【0012】
この発明では、凸部形成工程において、凸部の突出寸法がアライメント設定値の最大値および最小値の差分値よりも大きくなるように、当該凸部を形成する。これにより、上述した発明と同様に、エッチング工程において、主膜部の全体が開口空間に接するようにエッチングを行った場合でも、機能膜の側壁部を超えてエッチングが進行することがなく、所望の面積領域にキャビティを形成することができる。
【0013】
また、マスク工程において孔部を形成する際、通常では、平面視において、先端面と同一形状の孔部を、先端面の重心位置と孔部の重心位置とが重なるように形成することが好ましい。すなわち、アライメント設定値が各孔外周点において同値となることが好ましい。しかしながら、これらの重心位置を完全に一致させることは困難であり、実際には僅かなアライメントのずれが発生し、上述のようにアライメント設定値のバラつきが生じる。
このようなアライメントのずれが発生した場合の、当該アライメント設定値の最大値、および最小値は、例えばシミュレーション等により予め求めることができる。したがって、凸部の突出寸法を、このようなアライメント誤差の最大値に応じて設定することで、アライメント誤差が発生した場合でも、主膜部と開口空間とを、平面視において同一形成領域に形成することができ、所望の膜性能の機能膜を形成することができる。
例えば、孔部が一方向に所定のアライメント誤差値だけ位置ずれした場合、アライメント設定値の最大値と最小値の差分値は、アライメント誤差値の2倍となる。したがって、凸部形成工程では、アライメント誤差値の2倍以上となる突出寸法の凸部を形成することが好ましく、これにより、アライメントずれが発生した場合でも良好な膜性能の機能膜を得ることができる。
【0014】
本発明のMEMSデバイスの製造方法では、前記先端面の外周縁上の各点における前記アライメント設定値は、同一値であることが好ましい。
【0015】
この発明では、凸部の先端面の外周縁上の各点におけるアライメント設定値が同値である。この場合、エッチング工程において、先端面の外周縁上の各点に略同時にエッチングガスが到達することとなり、エッチング工程における処理時間を短くすることができ、生産効率を向上させることができる。
【0016】
本発明のMEMSデバイスは、基板と、前記基板の第一面に設けられた機能膜とを備えたMEMSデバイスであって、前記機能膜は、平面状の主膜部と、前記主膜部の外周縁から当該主膜部に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、を有し、前記基板は、前記側壁部に接し、前記主膜部及び前記側壁部とともにキャビティを形成するキャビティ形成部と、当該基板の前記第一面とは反対側の第二面から前記キャビティ形成部に向かって設けられ、前記キャビティと前記第二面の外側の空間とを連通させる連通孔と、を有することを特徴とすることを特徴とする。
【0017】
この発明では、主膜部、側壁部及びキャビティ形成部によりキャビティを形成することで、主膜部の面積を側壁部により囲われる面積に設定することができる。また、主膜部が側壁部により囲われているため、主膜部及び側壁部をエッチングストッパーとして、エッチングによりキャビティを形成することで、上述したように、主膜部上の残留する基板成分を確実に除去することができ、主膜部の膜厚を均一厚みに形成することができる。したがって、例えば主膜部をダイアフラムとして用いる場合、所望の面積領域にダイアフラムを形成でき、かつダイアフラムの厚みを均一にすることができるため、当該ダイアフラムの振動量(変位量)がダイアフラム上の各位置によってばらつくことがない。
また、主膜部、側壁部及び基板のキャビティ形成部により形成されるキャビティは、連通孔を通じて基板の第二面の外側に連通しているため、キャビティ内の圧力を外部の圧力を同値にすることができる。したがって、例えば主膜部をダイアフラムとして用いる場合でも、ダイアフラムの変位量がキャビティの内部圧力により変動することない。
【0018】
本発明のMEMSデバイスでは、前記キャビティ形成部は、前記連通孔側から前記主膜部に向かう方向に開口面積が増大する内壁面を有することが好ましい。
本発明によれば、キャビティ形成部は、連通孔側から主膜部に向かうに従って、基板の厚み方向に直交する面内における開口面積が増大する内壁面(テーパ面)が設けられている。このような構成では、キャビティ内の空気をスムーズに連通孔から流出、吸引することができ、外気の振動を均一に機能膜に伝達することができる。例えば、主膜部を膜厚方向に対してキャビティ側に変位させる場合、キャビティ内の空気が主膜部により押し出されて連通孔から外気に流出するが、この際、キャビティ内の空気は、傾斜面に沿ってスムーズに連通孔に流れ、連通孔から外部に排出される。このため、キャビティ内における圧力の変動が微小となり、主膜部の変位の阻害を妨げることがないため、主膜部の変位を均一にすることができる。
【0019】
本発明の超音波トランスデューサーは、基板と、前記基板の第一面に設けられた機能膜と、前記機能膜上に設けられた圧電体とを備えた超音波トランスデューサーであって、前記機能膜は、平面状の主膜部と、前記主膜部の外周縁から当該主膜部に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、を有し、前記基板は、前記側壁部に接し、前記主膜部及び前記側壁部とともにキャビティを形成するキャビティ形成部と、当該基板の前記第一面とは反対側の第二面から前記キャビティ形成部に向かって設けられ、前記キャビティと前記第二面の外側の空間とを連通させる連通孔と、を有し、前記圧電体は、前記主膜部の前記キャビティ形成部が設けられる側の面とは反対側の面に下部電極層、圧電層、及び上部電極層を順に積層して構成されることが好ましい。
【0020】
この発明では、主膜部上に圧電体を設けられることで、超音波トランスデューサーが構成されている。ここで、上記発明と同様に、超音波トランスデューサーにおいて、主膜部の膜厚を均一厚みに形成することができるため、主膜部の応力バランスが均一であり、安定して振動させることができる。また、側壁部があるため、平面視において、キャビティの形成領域と、主膜部の形成領域とが同一領域となり、所望の面積に設定された主膜部を形成することができる。
したがって、当該超音波トランスデューサーにより超音波の発信する場合では、所望の周波数の超音波を安定して発信させることができ、当該超音波トランスデューサーにより超音波の受信する場合では、受信感度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第一実施形態の超音波トランスデューサー(MEMSデバイス)の概略構成を示す断面図及び平面図。
【図2】第一実施形態の超音波トランスデューサーの製造工程を示すフローチャート。
【図3】図2の各工程における超音波トランスデューサーの断面図であり、(A)は、凸部形成工程における断面図、(B)は、成膜工程における断面図。
【図4】図2の各工程における超音波トランスデューサーの断面図であり、(A)は、圧電体形成工程における断面図、(B)は、研削工程における断面図。
【図5】図2の各工程における超音波トランスデューサーの断面図であり、(A)は、マスク工程における断面図、(B)は、エッチング工程における断面図。
【図6】図2の各工程により製造された超音波トランスデューサーの断面図。
【図7】本発明に係る第二実施形態の超音波トランスデューサーの概略構成を示す断面図。
【図8】第二実施形態の超音波トランスデューサーの製造工程を示すフローチャート。
【図9】図8の各工程における超音波トランスデューサーの断面図であり、(A)は、凸部形成工程における断面図、(B)は、第一成膜工程における断面図、(C)は、第二成膜工程における断面図。
【図10】図8の各工程における超音波トランスデューサーの断面図であり、(A)は、研削工程の後における断面図、(B)は、エッチング工程における断面図、(C)は、更にエッチング工程を進めた状態における断面図。
【図11】本発明に係る第三実施形態の超音波トランスデューサーのエッチング工程における概略構成を示す断面図。
【図12】本発明に係る第四実施形態のMEMSデバイスである圧力センサーの概略構成を示す断面図。
【図13】第四実施形態の圧力センサーの製造工程を示すフローチャート。
【図14】図13の各工程における状態を示す断面図であり、(A)は、下部基板形成工程における断面図、(B)は、下部支持膜形成工程における断面図、(C)は、下部電極形成工程における断面図。
【図15】図13の各工程における状態を示す断面図であり、(A)は、下部研削工程における断面図、(B)は、マスク工程における断面図、(C)は、エッチング工程における断面図。
【図16】図13の各工程における状態を示す断面図であり、(A)は、上部支持膜形成工程における断面図、(B)は、上部電極形成工程における断面図、(C)は、上部研削工程における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
[超音波トランスデューサーの構成]
図1は、本発明の第一実施形態の超音波トランスデューサー(MEMSデバイス)の概略構成を示す断面図及び平面図である。
超音波トランスデューサー10は、図1に示すように、開口部111を有する基板11と、基板11の一面側(第一面11A)に形成された支持膜12(機能膜)と、支持膜12上に形成された圧電体20とを備えている。この超音波トランスデューサー10は、圧電体20に電圧を印加することで、支持膜12を振動させて超音波の出力する装置である。
なお、本実施形態では、MEMSデバイスとして、超音波トランスデューサー10を例示するが、これに限定されない。本発明のMEMSデバイスとしては、超音波を支持膜12で受信し、圧電体20から振動に応じた電気信号を出力する超音波受信用の超音波トランスデューサーや、超音波の送受信の双方を実施可能な超音波トランスデューサーに対しても適用することができる。また、MEMSデバイスとして、超音波トランスデューサー以外にも、例えば、支持膜12に加わる応力を、圧電体20に基づいて検出する応力検出素子や、圧電体20を駆動させることで支持膜12に接触した対象物に駆動力を付与する駆動力発生素子などとして用いることができる。
また、本実施形態では、1つの超音波トランスデューサー10の構成のみを例示するが、実際には、複数の超音波トランスデューサー10がアレイ状に配列されて超音波トランスデューサー群を形成している。
【0024】
基板11は、例えばエッチングなどにより加工が容易なシリコン(Si)などの半導体形成素材により形成される。また、基板11に形成される開口部111は、当該基板11を厚み方向からみた平面視(センサー平面視)で円形状に形成されることが好ましい。これにより、開口部111を閉塞する支持膜12のメンブレン122(主膜部)において、メンブレン122の撓みに対する応力を均一にすることができる。なお、本実施形態では、センサー平面視において、開口部111が円形である例を示すがこれに限定されず、例えば、短冊状(矩形状)に形成される構成としてもよい。
より具体的には、基板11の開口部111は、支持膜12の後述する側壁部121の内周面から当該開口部111の中心軸に向かうに従って、メンブレン122から離れる方向に傾斜するテーパ形状のキャビティ形成部112と、開口部111の中心軸に沿ってキャビティ形成部112から基板11の支持膜12が設けられた第一面11Aとは反対側面である第二面11Bに向かって延出する連通孔113とを備えている。すなわち、キャビティ形成部112は、連通孔113側からメンブレン122に向かう方向に、基板11の厚み方向に直交する面内における開口面積が増大する内壁面を備えている。
【0025】
支持膜12は、基板11上で、開口部111を閉塞する状態に成膜されている。この支持膜12は、SiO膜により形成される第一支持膜12Aと、ZrO層により形成される第二支持膜12Bとの2層構造により構成されている。ここで、第一支持膜12A層は、基板11がSi基板である場合、基板表面を熱酸化処理することで成膜することができる。また、第二支持膜12Bは、SiO層上に例えばスパッタリングした後に熱酸化するなどの手法により成膜される。ここで、ZrO層は、圧電体20を構成する圧電層22として例えばPZTを用いる場合に、PZTを構成するPbがSiO層(第一支持膜12A)に拡散することを防止するための層である。また、ZrO層(第二支持膜12B)は、圧電層22の歪みに対する撓み効率が向上させるなどの効果もある。
【0026】
そして、支持膜12は、基板11の開口部111の形成位置に対応して、素子構成部120を備えている。この素子構成部120は、基板11から離れる方向に突出する円筒状の側壁部121と、側壁部121の突出先端部に連続して形成され、側壁部121の突出先端部を閉塞するメンブレン122と、を備えている。
側壁部121は、メンブレン122の有効径を決定するための部分である。また、側壁部121は、基板11から基板11の厚み方向に対して立ち上がって形成されている。このため、側壁部121は、基板11の厚み方向(メンブレン122の膜厚方向)に対する応力が強く、メンブレン122が振動した場合でも側壁部121が基板厚み方向に対して伸縮することはない。
なお、図1では、説明のため側壁部121の厚み方向の寸法を大きく表示しているが、実際には例えば3μm程度に形成されている。また、メンブレン122のセンサー平面視における直径は、例えば20〜100μmである。
【0027】
メンブレン122は、圧電体20が積層されることで、圧電体20の駆動により膜厚方向に振動して超音波を出力する部分である。このメンブレン122は、上記のように側壁部121の円筒内径により有効径が決定されており、当該有効径に応じた周波数の超音波を出力する。
また、側壁部121の円筒内周面には、上述したように、基板11のキャビティ形成部112が接続されている。これにより、素子構成部120の側壁部121、メンブレン122、及び基板11のキャビティ形成部112により囲われる領域にキャビティCが形成され、当該キャビティCと、連通孔113の孔内部空間とにより、本発明の開口空間が構成される。
【0028】
圧電体20は、支持膜12のメンブレン122において、キャビティCが形成される面とは反対側の面に形成されている。この圧電体20は、下部電極層21と、圧電層22と、上部電極層23とを備えている。
下部電極層21は、センサー平面視において、メンブレン122の内側領域に形成され、上層に圧電層22が積層される。また、下部電極層21の外周縁からは、下部電極線211が接続され、当該下部電極線211は、支持膜12の外周端縁に設けられた下部電極端子(図示略)に接続されている。
【0029】
圧電層22は、下部電極層21上に積層形成されている。この圧電層22は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、圧電層22としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面内方向に収縮することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)などを用いてもよい。
そして、この圧電層22は、下部電極層21と、上部電極層23とに電圧が印加されることで、面内方向に伸縮する。このとき、圧電層22の一方の面は、下部電極層21を介して支持膜12のメンブレン122に接合されるが、他方の面には、上部電極層23が形成されるものの、この上部電極層23上には他の層が積層形成されないため、圧電層22の支持膜12側が伸縮しにくく、上部電極層23側が伸縮し易くなる。このため、圧電層22に電圧を印加すると、キャビティC側に凸となる撓みが生じ、メンブレン122を撓ませる。したがって、圧電層22に交流電圧を印加することで、メンブレン122が膜厚方向に対して振動し、このメンブレン122の振動により超音波が出力される。
上部電極層23は、センサー平面視において、圧電層22上に積層され、かつ下部電極層21と絶縁される配置位置にパターニングされている。また、上部電極層23の外周縁からは、上部電極線231が接続され、当該上部電極線231は、支持膜12の外周端縁に設けられた上部電極端子に接続されている。
【0030】
[超音波トランスデューサーの製造方法]
次に、上述のような超音波トランスデューサー10の製造方法について、図面に基づいて説明する。
図2は、超音波トランスデューサー10の製造工程を示すフローチャートである。図3から図7は、図2の各工程における状態を示す断面図である。
超音波トランスデューサー10を製造するためには、図2に示すように、まず、例えば厚み寸法が625μmに設定された基板11(Si)の第一面11Aをパターニングし、図3(A)に示すように、素子構成部120の形成位置に円柱状の凸部114を形成する(凸部形成工程S1)。
この凸部形成工程S1では、例えば、平板状の基板11に対して、素子構成部120の形成位置にレジスト層を形成し、エッチングにより素子構成部120の形成位置に凸部114を形成する。
【0031】
この後、成膜工程S2を実施する。
成膜工程S2では、基板11を熱酸化処理し、基板11の第一面11AにSiO層(第一支持膜12A)を形成する。さらに、この第一支持膜12A上にZr層をスパッタリングにより成膜し、このZr層を酸化することで第二支持膜12Bを形成する。これにより、図3(B)に示すように、例えば厚み寸法が3μmの支持膜12が形成される。この時、凸部114の突出先端部分及び当該突出先端部分に積層された第二支持膜12Bが、素子構成部120のメンブレン122となり、凸部114の凸部外周面及び当該凸部外周面に積層された第二支持膜12Bが、素子構成部120の側壁部121となる。また、熱酸化処理により形成された第一支持膜12Aのメンブレン122に相当する部分と、凸部114と境界が平坦な先端面114Aとなり、熱酸化処理により形成された第一支持膜12Aの側壁部121に相当する部分と、凸部114と境界が凸部外周面である側面部114Bとなる。また、この時、凸部114の先端面114Aの径寸法(L)がメンブレン122の径寸法となり、側面部114Bの突出寸法(高さ寸法H)が側壁部121の高さ寸法となる。ここで、凸部114の突出寸法Hは、最大アライメント誤差(1μm程度)の2倍である2μm程度になるように、凸部形成工程S1における凸部114の突出寸法、及び成膜工程S2における熱酸化処理の処理時間を設定することが好ましい。
なお、本実施形態では、凸部114の表面が酸化されることで第一支持膜12Aを形成するが、例えば凸部114の表面に第一支持膜12Aをスパッタリング等により積層形成してもよい。
【0032】
この後、圧電体形成工程S3を実施する。この圧電体形成工程S3では、まず、例えばスパッタリング等により導電層を一様に形成し、例えばフォトリソグラフィ法を用いたパターニングにより、下部電極層21を形成する。なお、下部電極層21を形成するための導電層としては、導電性を有する膜であれば特に素材は限定されないが、本実施形態ではTi/Ir/Pt/Tiの積層構造膜を用い、圧電体層の焼成後で例えば0.2μmの膜厚寸法となるように形成する。
この後、基板11の第一面11A上にPZTを成膜し、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして圧電層22を形成する。なお、圧電層22の成膜では、MOD(Metal Organic Decomposition)法を用い、支持膜12層の膜により、例えばトータル厚み寸法が1.4μmとなるように形成する。
この後、基板11の第一面11A上に、例えばスパッタリングなどにより導電層を均一に成膜し、例えばフォトリソグラフィ法を用いて上部電極層23を形成する。この上部電極層23を形成用の導電性膜は、下部電極層21と同様に、導電性を有するいかなる素材を用いてもよい。なお、本実施形態では、Ir膜を用い、厚み寸法が例えば50nmとなるように形成する。
以上により、図4(A)に示すように、メンブレン122上に下部電極層21,圧電層22,上部電極層23の積層体である圧電体20が形成される。
【0033】
圧電体形成工程S3の後、図4(B)に示すように、基板11の第二面11Bを研削する研削工程S4を行う。これにより、基板11の厚み寸法を設定された寸法、例えば200μmに形成する。そして、この研削工程S4の後、マスク工程S5を実施する。
マスク工程S5では、まず、基板11の第二面11Bにマスク層30を形成し、図5(A)に示すように、当該マスク層30に孔部31を形成する。この時、マスク工程S5では、センサー平面視において、当該孔部31の中心軸が凸部114の中心軸Pと同軸となり、先端面114Aよりも小径となる直径Lの円形状の孔部31を形成する。
また、孔部31の形成時において、当該孔部31の中心軸を凸部114の中心軸Pに一致させることが好ましいが、実際には、アライメントずれが発生する。このアライメントずれによるアライメント誤差としては、孔部31の形成方法等にもよるが、上述のように、最大で1μm程度となる。したがって、アライメントずれが発生した場合でも、センサー平面視において、先端面114Aの領域内に孔部31を形成するために、孔部31の外周縁から先端面114Aの外周縁までの距離L(31の外周縁上の所定の孔外周点から当該孔外周点に最も近い先端面114Aの外周縁までの距離L)が、最大アライメント誤差の2倍以上(例えば、2μm)となるように設定することが好ましい。
【0034】
この後、エッチング工程S6を実施する。
エッチング工程S6では、第二面11B側から基板11に開口部111を形成する。
ここで、エッチング工程S6では、まず、例えばSF等のエッチングガスを用いたエッチング処理と、例えばC等のデポジションガスを用いたデポジション処理とを繰り返し実施する、いわゆるボッシュプロセスと呼ばれるサイクルエッチング処理を実施する。これにより、図5(B)に示すように、支持膜12のメンブレン122をエッチングストッパーとし、マスク層30の孔部31からメンブレン122までに亘って均一径寸法の内周円筒状の連通孔113が形成される。なお、この連通孔113に露出されたメンブレン122の領域が、本発明の孔部投影領域Aとなる。
【0035】
また、エッチング工程S6では、この後、更にエッチングガスによるオーバーエッチング処理を実施し、凸部114の先端面114Aに沿って基板11がエッチングされる。ここで、オーバーエッチング処理により、H/2程度の高さ寸法の側壁部121が露出するように、凸部114をエッチングにより除去する。これにより、凸部114の先端面114Aが完全に除去されることとなり、支持膜12のメンブレン122には基板11のSi成分が残留せず、均一な厚み寸法に形成される。
また、当該オーバーエッチング処理により、基板11にテーパ状のキャビティ形成部112が形成され、当該キャビティ形成部112、側壁部121、及びメンブレン122によりキャビティCが形成され、図6に示すような超音波トランスデューサー10が製造される。
【0036】
なお、通常、メンブレン122に沿ってエッチングが進行する際のエッチング量(寸法)は、基板厚み方向に直交する方向への寸法と、基板厚み方向に沿う寸法とで同程度の寸法となる。したがって、孔部31の外周縁から先端面114Aの外周縁までの距離Lがオーバーエッチングされた場合、キャビティ形成部112と連通孔113との接続点は、メンブレン122から距離Lとなる位置に形成される。本実施形態では、オーバーエッチングにより、側面部114Bの高さの半分(H/2)の位置までエッチングされるので、キャビティ形成部112と連通孔113との接続点は、メンブレン122から距離(L+H/2)となる位置に形成される。
【0037】
[第一実施形態の作用効果]
上述したように、第一実施形態の超音波トランスデューサー10は、凸部形成工程S1,成膜工程S2,圧電体形成工程S3,研削工程S4,マスク工程S5,エッチング工程S6により製造される。この時、マスク工程S5において、センサー平面視において、先端面114Aの内周側領域に孔部31を形成し、エッチング工程S6において、この孔部31から支持膜12のメンブレン122をエッチングストッパーとして、サイクルエッチング処理を実施する。このため、センサー平面視において、先端面114Aの内周側領域に連通孔113を形成することができる。
【0038】
また、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理において、基板11の第二面11Bから支持膜12のメンブレン122に亘って形成された連通孔113に対して更にエッチング処理を行うことで、側壁部121をエッチングストッパーとして、基板11をメンブレン122に沿ってサイドエッチングすることができる。これにより、メンブレン122に接触する基板11をエッチングにより確実に除去することができ、当該メンブレン122は第一支持膜12Aおよび第二支持膜12Bにより厚み寸法が決定されることとなる。また、第一支持膜12Aは、熱酸化処理により均一厚みに形成することができ、第二支持膜12Bは、スパッタリングした後に熱酸化する等により均一厚み寸法に形成することができるため、これらの第一支持膜12A及び第二支持膜12Bにより構成される支持膜12の厚み寸法を均一にすることができる。したがって、上記のような製造方法により製造された超音波トランスデューサー10では、圧電体20によりメンブレン122を駆動させた際、安定してメンブレン122を振動させることができ、超音波を安定して出力させることができる。
【0039】
また、側壁部121をエッチングストッパーとしてサイドエッチングを規制しているため、側壁部121の外側領域がエッチングされることがない。したがって、超音波トランスデューサー10における超音波を発信する駆動部分は、メンブレン122の形成領域内となる。すなわち、メンブレン122を発信周波数に応じた適切な径寸法に形成することで、超音波トランスデューサー10から当該発信周波数の超音波を精度よく出力させることができる。
【0040】
また、このような製造方法により製造された超音波トランスデューサー10では、上記のように、キャビティCが連通孔113により外部空間と連通しているため、キャビティCの内圧によりメンブレン122の振動が阻害されず、音圧の大きい超音波を出力することができる。
これに加え、キャビティ形成部112が、当該キャビティ形成部112と連通孔113との接続位置から、側壁部121に向かうに従って、メンブレン122に近接する方向に傾斜するテーパ状に形成されている。このため、メンブレン122を振動させた際に、キャビティC内部の空気がキャビティ形成部112のテーパ面に沿ってスムーズに連通孔113に移動することができる。
【0041】
さらに、マスク工程S5において、円形状の孔部31の中心軸が、円筒形状の凸部114の中心軸Pと同軸となるように、当該孔部31を形成している。すなわち、先端面114Aの外周縁上の各点から、孔部投影領域Aの外周縁までの最短距離をアライメント設定値とした場合、本実施形態では、各点におけるアライメント設定値が同一値となる。
このような場合、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理において、孔部投影領域Aから先端面114Aの外周縁までをエッチングするために要する時間が略同じとなるため、エッチング時間を短縮させることができ、生産効率の向上に貢献できる。
なお、実際には、孔部31の形成時にアライメントずれが発生すると、当該アライメントずれによる誤差分だけ、孔部31の中心軸が凸部114の中心軸Pから微小寸法だけずれることが考えられる。しかしながら、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理において、このような微小寸法のずれにより、側壁部121を超えてエッチング領域が拡がることはない。
【0042】
そして、凸部114の突出寸法Hが、孔部31の形成において発生する最大アライメント誤差の2倍以上に設定されている。このため、孔部31にアライメント誤差が発生し、エッチングされる領域が一方向に偏った場合でも、側壁部121をエッチングストッパーとしてオーバーエッチング処理を規制することができる。つまり、側壁部121を超えて素子構成部120の外側領域までオーバーエッチングされて、メンブレン122の有効面積が増大してしまう不都合を回避できる。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る超音波トランスデューサー(MEMSデバイス)は、第一実施形態の超音波トランスデューサー10と略同様の構成及び機能を有する。ここで、前述の超音波トランスデューサー10は、側壁部121及びメンブレン122を有する素子構成部120が、基板11の第一面11Aからが突出する構成とした。これに対して、第二実施形態の超音波トランスデューサーでは、素子構成部が基板から突出せず、基板の第一面側が平坦面となる構成を有する。この点で、本実施形態に係る超音波トランスデューサーと、前述の第一実施形態の超音波トランスデューサー10とは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0044】
[超音波トランスデューサーの構成]
図7は、本発明に係る第二実施形態の超音波トランスデューサー10Aの概略構成を示す断面図である。
本実施形態の超音波トランスデューサー10Aは、図7に示すように、基板11と、支持膜13(機能膜)と、圧電体20と、を備えている。
支持膜13は、基板11上で、開口部111を閉塞する状態に成膜されている。この支持膜13は、SiO膜により形成される第一支持膜13Aと、ZrO層により形成される第二支持膜13Bとの2層構造により構成されている。
【0045】
そして、支持膜13は、基板11の開口部111の形成位置に対応して、素子構成部130を備えている。この素子構成部130は、第一支持膜13Aの一部が基板11の第一面11Aから離れる方向に内周円筒状の凹溝が形成されることで構成されている。すなわち、素子構成部130は、凹溝の底部により構成されるメンブレン132と、凹溝の内周側面により構成される側壁部131とを備えている。
また、第一支持膜13Aの基板11側とは反対側の面は平坦面であり、この平坦面上に第二支持膜13Bが積層されている。これにより、第二支持膜13Bの表面が平坦面となり、素子構成部130の第二支持膜13B上に圧電体20が積層形成されることで超音波トランスデューサー10Aが構成されている。
【0046】
[超音波トランスデューサーの製造方法]
次に、上記のような超音波トランスデューサー10Aの製造方法について図面に基づいて説明する。
図8は、超音波トランスデューサー10Aの製造工程を示すフローチャートである。図9から図10は、図8の各工程における状態を示す超音波トランスデューサー10Aの断面図である。
超音波トランスデューサー10Aは、図9に示すように、凸部形成工程S1、第一成膜工程S21、膜研磨工程S22、第二成膜工程S23、圧電体形成工程S3、研削工程S4、マスク工程S5、及びエッチング工程S6の各工程により製造される。ここで、凸部形成工程S1,圧電体形成工程S3,研削工程S4,及びマスク工程S5は、上記第一実施形態における超音波トランスデューサー10の製造と同様の工程である。なお、第一成膜工程S21、膜研磨工程S22、及び第二成膜工程S23により、本発明の成膜工程が実施される。
【0047】
すなわち、超音波トランスデューサー10Aの製造では、まず凸部形成工程S1により、基板11(Si)の第一面11Aをパターニングし、図9(A)に示すように、素子構成部130の形成位置に円柱状(直径L、高さH)の凸部114を形成する。
ここで、前述の超音波トランスデューサー10の製造と同様に、凸部114の突出寸法(高さ)Hは、最大アライメント誤差の2倍である2μm程度に設定することが好ましい。
【0048】
この後、第一成膜工程S21により、基板11熱酸化処理し、基板11の第一面11AにSiO層(13A)を形成する。この時、図9(B)に示すように、第一支持膜13Aの膜厚寸法が凸部114の突出寸法よりも大きくなるように、熱酸化処理の処理時間を制御する。
次に、膜研磨工程S22により、第一支持膜13Aの表面を研削して、第一支持膜13Aの突出部分を除去し、平坦面に加工する。ここで、上述したように、第一支持膜13Aの膜厚寸法は、凸部114の突出寸法よりも大きく形成されているため、第一支持膜13Aの突出部分を除去しても、凸部114が露出しない。
この後、第二成膜工程S23により、図9(C)に示すように、第一支持膜13A上に第二支持膜13Bを積層する。これにより、表面が平坦面となる支持膜13が形成される。
【0049】
この後、上記第一実施形態と同様の工程を実施して超音波トランスデューサー10Aを製造する。
すなわち、圧電体形成工程S3により、図10(A)に示すように、メンブレン132の第二支持膜13B上に下部電極層21,圧電層22,上部電極層23の積層体である圧電体20を形成する。そして、研削工程S4を実施することで、基板11の第二面11Bを研削し、基板11の厚みを例えば200μmにする。
【0050】
そして、マスク工程S5を実施して、基板11の第二面11Bにマスク層30を形成し、孔部31を形成する。また、エッチング工程S6のサイクルエッチング処理を実施することで、孔部31からメンブレン132までに亘って均一径寸法の内周円筒状の連通孔113を形成する。この後、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理を実施することで、凸部114の先端面114Aに沿って基板11をエッチングさせて、先端面114A上のSi成分を確実に除去し、キャビティ形成部112を形成する。
以上により、超音波トランスデューサー10Aが製造される。
【0051】
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態の超音波トランスデューサー10Aは、凸部形成工程S1,第一成膜工程S21、膜研磨工程S22、第二成膜工程S23,圧電体形成工程S3,研削工程S4,マスク工程S5,エッチング工程S6により製造される。したがって、上記第一実施形態と同様に、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理において、基板11の第二面11Bから支持膜13のメンブレン132に亘って形成された連通孔113に対して更にエッチング処理を行うことで、側壁部131をエッチングストッパーとして、基板11をメンブレン132に沿ってエッチングすることができる。これにより、メンブレン132に接触する基板11をエッチングにより確実に除去することができ、当該メンブレン132は第一支持膜13Aおよび第二支持膜13Bのみにより厚み寸法が決定されることとなる。したがって、圧電体20によりメンブレン132を駆動させた際、安定してメンブレン132を振動させることができ、超音波を安定して出力させることができる。
【0052】
また、側壁部131をエッチングストッパーとして基板厚み方向に直交する横方向へのエッチングを規制しているため、側壁部131の外側領域がエッチングされることがない。したがって、メンブレン132を発信周波数に応じた適切な径寸法に形成することで、超音波トランスデューサー10Aから当該発信周波数の超音波を精度よく出力させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第一実施形態のように素子構成部130が基板11の第一面11Aから突出せず、平坦面であるため、振動や外部応力に対して強くなる。
なお、前述の超音波トランスデューサー10では、側壁部121が基板11から突出しているが、当該側壁部121は、突出寸法が例えば2μmと極めて小さいため、側壁部121が外部応力や振動による影響により変形することはほぼない。しかしながら、素子構成部120が僅かに突出する構成であるため、突出部分に僅かな応力を受けることになり、安定した超音波の阻害要因になることも考えられる。これに対し、本実施形態では、第二支持膜13Bの表面が平坦面となるため、上述のような外部応力を受けることなく、安定して素子構成部130のメンブレン132を駆動させることができる。
【0054】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る超音波トランスデューサー(MEMSデバイス)は、第一実施形態の超音波トランスデューサー10と略同様の構成及び機能を有する。ここで、前述の超音波トランスデューサー10の製造では、マスク工程S5において、孔部31の中心軸が凸部114の中心軸Pと同軸となるように、当該孔部31を形成し、キャビティ形成部112が素子構成部130の中心軸P上に沿って形成された。これに対して、第三実施形態の超音波トランスデューサーの製造では、マスク層に形成する孔部を、凸部の中心軸から偏心させて形成する。この点で、本実施形態に係る超音波トランスデューサーの製造方法と、前述の第一実施形態の超音波トランスデューサー10の製造方法とは相違する。なお、以下の説明にでは、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0055】
図11は、第三実施形態の超音波トランスデューサー10Bのエッチング工程S6における概略構成を示す断面図である。
このような超音波トランスデューサー10Bでは、マスク工程S5において、孔部31は、当該孔部31の中心軸Qが凸部114の中心軸Pから僅かに偏心するように形成されている。ここで、中心軸Qの偏心量をΔLとする。また、センサー平面視において、メンブレン122上で孔部31と重なる領域を孔部投影領域Aとし、先端面114Aの外周縁上の各点から、当該孔部投影領域Aまで最短距離をアライメント設定値とし、このアライメント設定値が最小値となる点を最小アライメント点A1、アライメント設定値が最大値となる孔外周点を最大アライメント点A2とする。
この時、最小アライメント点A1におけるアライメント設定値L´は、L−ΔLとなり、最大アライメント点A2におけるアライメント設定値L´´は、L+ΔLとなる。
【0056】
ここで、エッチング工程S6では、サイクルエッチング処理により孔部31からメンブレン122までに亘って基板11の厚み方向に沿うエッチングを行った後、オーバーエッチング処理により、孔部投影領域Aからメンブレン122に沿って、基板11を横方向にエッチングする。この時、最小アライメント点A1には、最大アライメント点A2よりも先にエッチングガスが到達してエッチングされる。したがって、素子構成部120の領域内にキャビティCを形成するためには、最大アライメント点A2に到達した時点で、最小アライメント点A1におけるエッチング領域が側壁部121を超えていないことが必要となる。
つまり、L´´<L´+Hの条件式を満たす必要があり、凸部114の突出寸法Hと、アライメント設定値とは、以下の式(1)を満たす必要がある。
【0057】
[数1]
´´−L´<H
(又は、ΔL<H/2) …(1)
【0058】
したがって、本実施形態では、凸部形成工程S1における凸部114の形成時、または、マスク工程S5の孔部31の形成時に、上記関係式を満足するように、適宜凸部114の突出寸法H、最大アライメント設定値及び最小アライメント設定値(又は偏心量ΔL)を設定する。
【0059】
上述したような第三実施形態の超音波トランスデューサー10Bでは、マスク工程S5において孔部31が中心軸Pから偏心して形成され、キャビティ形成部112が中心軸Pから偏心した位置に形成された場合であっても、上述の式(1)の関係式を満たすことで、第一実施形態の超音波トランスデューサー10と同様の効果を奏することができる。
すなわち、エッチング工程S6のオーバーエッチング処理において、基板11の第二面11Bから支持膜12のメンブレン122に亘って形成された連通孔113に対して更にエッチング処理を行うことで、側壁部121をエッチングストッパーとして、基板11をメンブレン122に沿って横方向にエッチングすることができる。これにより、メンブレン122に接触する基板11をエッチングにより確実に除去することができ、当該メンブレン122の厚み寸法を均一にできる。したがって、圧電体20によりメンブレン122を駆動させた際、安定してメンブレン122を振動させることができ、超音波を安定して出力させることができる。
また、側壁部121をエッチングストッパーとして横方向へのエッチングを規制しているため、側壁部121の外側領域がエッチングされることがない。したがって、メンブレン122を発信周波数に応じた適切な径寸法に形成することで、超音波トランスデューサー10Bから当該発信周波数の超音波を精度よく出力させることができる。
【0060】
また、マスク工程S5において、孔部31を形成する際、アライメントずれによる誤差(アライメント誤差)が発生する。このようなアライメント誤差の最大値は、例えばシミュレーション等により予め求めることができるため、このようなアライメントずれが発生した場合を想定して、凸部114の突出寸法Hや、アライメント設定値を設定することで、当該アライメントずれの影響をなくすことができ、キャビティCの形成領域と同一領域に均一膜厚のメンブレン122を備えた超音波トランスデューサー10Bを製造することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、センサー平面視において、円形状の凸部114に対して、円形状の孔部31を偏心させた場合を例示したが、例えば、メンブレン122の平面形状が矩形状である場合など、中心軸Pから外周縁までの距離が異なる場合においても、上記条件式(1)を満たすように、凸部114の突出寸法Hや、アライメント設定値を設定することで、好適に素子構成部120を形成することができる。
例えば、中心軸Pに重心が設定された矩形状のメンブレン122に対して、中心軸Pに重心が設定された矩形状の孔部31を形成し、エッチング工程S6を実施する場合、メンブレン122の角部におけるアライメント設定値は、メンブレン122の辺の中間部に位置する点のアライメント設定値よりも大きくなる。この場合、上記(1)を満たすように、孔部31及び凸部114を形成することで、メンブレン122の全領域に亘ってサイドエッチングが行き渡り、均一膜厚のメンブレン122を形成することができる。また、センサー平面視において、メンブレン122の形成領域とキャビティCの形成領域とを、同一領域にすることができ、メンブレン122の膜性能の低下を防止できる。
【0062】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一から第三実施形態では、MEMSデバイスとして、超音波トランスデューサー10,超音波トランスデューサー10A,超音波トランスデューサー10Bを例示した。これに対して、本実施形態では、MEMSデバイスの他の例として、圧力センサーの構成、及びその製造方法について説明する。
【0063】
[圧力センサーの構成]
図12は、第四実施形態のMEMSデバイスである圧力センサーの概略構成を示す断面図である。
圧力センサー40は、下部開口部411を有する下部基板41と、上部基板42と、下部開口部411を閉塞する下部支持膜43と、上部支持膜44と、下部支持膜43上に設けられた下部電極45と、上部支持膜44上に設けられた上部電極46と、を備えて構成されている。
【0064】
下部基板41は、例えばエッチング等により加工が容易なシリコン(Si)などの半導体形成素材により形成される。また、下部基板41の上部基板42に対向する面(第一面)には、上部基板42から離れる方向に凹状となる凹溝412が設けられている。また、下部基板41の上部基板42に対向する第一面において、凹溝412の外側領域は、上部基板42に接合される接合部413を構成し、当該接合部413上に積層形成された下部支持膜43が、上部基板42に積層形成された上部支持膜44に接合されることで、下部基板41および上部基板42が接合される。
そして、下部開口部411は、凹溝412の底部において、例えば当該下部基板41を厚み方向からみたセンサー平面視で円形状に形成されている。この下部開口部411は、前述の超音波トランスデューサー10における開口部111と同様の構成を有し、キャビティ形成部411Aと連通孔411Bとを有している。
【0065】
下部支持膜43は、下部基板41の第一面側に、下部開口部411を閉塞する状態に成膜されている。この下部支持膜43は、例えばSi基板である下部基板41の第一面を熱酸化処理することで形成される。
そして、この下部支持膜43は、前述の超音波トランスデューサー10における支持膜12と略同様の構成を有し、下部基板41の下部開口部411の形成位置に対応して、下部素子構成部430を備えている。この下部素子構成部430は、下部基板41から離れる方向に突出する円筒状の下部側壁部431と、下部側壁部431の突出先端部に連続して形成され、下部側壁部431の突出先端部を閉塞する下部メンブレン432と、を備えている。
また、下部側壁部431の円筒内周面には、下部基板41のキャビティ形成部411Aが接続されている。これにより、下部素子構成部430の下部側壁部431、下部メンブレン432、及び下部基板41のキャビティ形成部411Aにより囲われる領域にキャビティC1が形成される。
そして、下部支持膜43は、上部基板42に対向する面上に、下部電極45が積層形成されている。
【0066】
上部基板42は、例えばSi等により形成される。また、上部基板42の下部基板41に対向する面のうち、接合部413に対応する領域は、接合部423を構成し、当該接合部423上に積層形成された上部支持膜44が、接合部413上の下部支持膜43に接合されることで、前述のように下部基板41および上部基板42が接合される。
【0067】
上部支持膜44は、例えば酸化膜により形成されている。そして、この上部支持膜44は、下部基板41の凹溝412に対向する部位において、下部支持膜43との間に閉空間C2を形成する。
また、上部基板42及び上部支持膜44には、閉空間C2と上部基板42の外側の空間とを連通する図示しない貫通孔が設けられている。これにより、閉空間C2と上部基板42の外側の空間との圧力が同圧となる。
そして、上部支持膜44の下部支持膜43に対向する面上には、上部電極46が積層形成されている。
【0068】
このような圧力センサー40では、上部開口部421が、例えば大気圧等の基準圧力に設定された基準空間に連通され、下部開口部411に、圧力測定対象となる圧力媒体が導入されることで、下部メンブレン432が変位する。その変位量を、下部電極45及び上部電極46間に保持される電荷保持量の変動値を計測し、計測された変位量から圧力値を算出する。
【0069】
[圧力センサーの製造方法]
次に、上述のような圧力センサー40の製造方法について、図面に基づいて説明する。
図13は、圧力センサー40の製造工程を示すフローチャートである。図14及び図15は、下部形成工程の各工程の状態を示す断面図であり、図16は、上部形成工程の各工程の状態を示す断面図である。
圧力センサー40は、図13に示すように、下部形成工程(S31〜36)、上部形成工程(S37〜S39)、及び接合工程S40の各工程により製造される。
【0070】
下部形成工程は、下部基板形成工程S31(凸部形成工程)、下部支持膜形成工程S32(成膜工程)、下部電極形成工程S33、下部研削工程S34、マスク工程S35、エッチング工程S36を実施する。
下部基板形成工程S31は、例えば500μmのSi基板である下部基板41の一面側をエッチングし、図14(A)に示すように、凹溝412及び凸部414を形成する。
下部支持膜形成工程S32は、第一実施形態の成膜工程S2と同様、下部基板41の前記一面側を熱酸化処理し、図14(B)に示すように、下部基板41の表面に均一厚みの下部支持膜43を形成する。
下部電極形成工程S33は、下部支持膜43の下部メンブレン432上に、下部電極45を形成するための導電層を成膜し、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして、図14(C)に示すように、下部電極45を形成する。
【0071】
下部研削工程S34、マスク工程S35、及びエッチング工程S36は、第一実施形態の研削工程S4、マスク工程S5、及びエッチング工程S6と同様の処理を実施する。すなわち、下部研削工程S34は、図15(A)に示すように、下部基板41を研削し、例えば200μm程度の厚み寸法に形成する。マスク工程S35は、図15(B)に示すように、下部基板41の上部基板42に接合される面とは反対側の面に孔部31を有するマスク層30を形成する。エッチング工程S36は、下部基板41に対して、孔部31からサイクルエッチング処理、及びオーバーエッチング処理を実施して、図16(C)に示すように、均一厚み寸法の下部メンブレン432を形成する。
【0072】
上部形成工程は、例えば500μmのSi基板である上部基板42に、上部支持膜形成工程S37、上部電極形成工程S38、及び上部研削工程S39の各工程により処理を実施する。
上部支持膜形成工程S37は、第一実施形態の成膜工程S2と同様、上部基板42の下部基板51に接合される一面側を熱酸化処理し、図16(A)に示すように、上部基板42の表面に均一厚みの上部支持膜44を形成する。
上部電極形成工程S38は、上部支持膜44上に上部電極46を形成するための導電層を成膜し、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして、図16(B)に示すように、上部電極46を形成する。
上部研削工程S39は、第一実施形態の研削工程S4と同様の処理であり、図16(C)に示すように、上部基板41を研削して、例えば200μm程度の厚み寸法に形成する。
【0073】
接合工程S40は、下部支持膜43及び上部支持膜44を介して、下部基板41及び上部基板42を接合する。ここで、接合工程S40における接合方法としては、例えば接着材や樹脂等による接着接合や陽極接合等、各種接合方法を用いることができる。以上により、図12に示すような圧力センサー40が製造される。
【0074】
以上説明したような圧力センサー40においても、上記第一実施形態の超音波トランスデューサー10と同様の効果を得ることができる。
すなわち、圧力センサー40は、S31〜S40の各工程により製造される。したがって、エッチング工程S36において、サイクルエッチング処理により、下部基板41の上部基板42とは反対側の面から、下部支持膜43の下部メンブレン432に亘って開口部を形成し、オーバーエッチング処理により、更に、下部側壁部431をエッチングストッパーとして、下部基板41を下部メンブレン432に沿って横方向へエッチングすることができる。これにより、下部メンブレン432に接触する下部基板41をエッチングにより確実に除去することができ、当該下部メンブレン432の厚み寸法を均一に形成することができる。また、下部側壁部431をエッチングストッパーとして横方向へのエッチングを規制しているため、下部側壁部431の外側領域がエッチングされることがなく、下部メンブレン432を所望の面積に形成することができる。
【0075】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0076】
例えば、MEMSデバイスとして、超音波発信用の超音波トランスデューサー10,超音波トランスデューサー10A,超音波トランスデューサー10B、及び圧力センサー40を例示したが、これに限定されない。超音波トランスデューサーとしては、超音波受信用の超音波トランスデューサーや、超音波送信及び受信の双方を実施可能な超音波トランスデューサーに本発明を適用してもよい。また、このような超音波トランスデューサーや圧力センサーに限られず、ダイアフラム形状の主膜部を有するいかなるMEMSデバイスにも適用することができる。
【0077】
また、上記各実施形態では、側壁部121,131,431が基板11,41に対して直交する方向に立ち上がり、当該側壁部121,131,431の立ち上がり方向がメンブレン122,132,432に対して直交する構成を例示したが、これに限定されない。
側壁部121,131,431は、エッチング工程において、オーバーエッチング処理のエッチングストッパーとして機能すれば、メンブレン122,132,432に対して交差する角度に形成されていてもよい。特に、側壁部121,131,431と、メンブレン122,132,432との間の角度が鋭角である場合、オーバーエッチング処理において、側壁部121,131,431に沿うエッチングの進行速度が低下する。したがって側壁部121,131,431を超えてエッチングされる不都合をより確実に防止することができる。
【0078】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0079】
10,10A,10B…超音波トランスデューサー(MEMSデバイス)、11…基板、111…開口部、112,411A…キャビティ形成部、113,411B…連通孔、114,414…凸部、114A…先端面、114B…側面部、11A…第一面、11B…第二面、12,13…支持膜(機能膜)、121,131,431…側壁部、122,132,432…メンブレン(主膜部)、20…圧電体、21…下部電極層、22…圧電層、23…上部電極層、30…マスク層、31…孔部、41…下部基板(基板)、411A…キャビティ形成部、C,C1…キャビティ、S1…凸部形成工程、S2…成膜工程、S5,S35…マスク工程、S6,S36…エッチング工程、S21…第一成膜工程(成膜工程)、S22…膜研磨工程(成膜工程)、S23…第二成膜工程(成膜工程)、S31…下部基板形成工程(凸部形成工程)、S32…下部支持膜形成工程(成膜工程)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第一面に、平坦な先端面と側面部とを有する凸部を形成する凸部形成工程と、
前記第一面に、少なくとも前記凸部を覆う機能膜を形成する成膜工程と、
前記基板の前記第一面とは反対側の第二面にマスク層を形成し、当該マスク層に孔部を形成するマスク工程と、
前記孔部を介し前記機能膜をエッチングストッパーとして前記基板をエッチングするエッチング工程と、を備え、
前記成膜工程は、前記凸部の前記先端面に接する主膜部と、前記凸部の前記側面部に接する側壁部と、を有する前記機能膜を形成し、
前記マスク工程は、前記基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記先端面と重なる位置に、前記先端面の面積よりも小さい面積の前記孔部を形成し、
前記エッチング工程は、前記基板の前記第二面側から前記機能膜の前記主膜部までを、前記基板の厚み方向にエッチングした後、前記主膜部の表面に沿って前記側壁部までをサイドエッチングすることで、前記主膜部、前記側壁部により囲われる領域を含む開口空間を形成する
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1のMEMSデバイスの製造方法において、
前記孔部を前記先端面に投影した領域を孔部投影領域とし、前記先端面の外周縁上に位置する点から前記孔部投影領域の外周縁までの最短距離をアライメント設定値とした場合、
前記マスク工程は、アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値が、前記凸部の高さ寸法よりも小さくなるように、前記孔部を形成する
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のMEMSデバイスの製造方法において、
前記孔部を前記先端面に投影した領域を孔部投影領域とし、前記先端面の外周縁上に位置する点から前記孔部投影領域の外周縁までの最短距離をアライメント設定値とした場合、
前記凸部形成工程は、前記凸部の突出寸法が、前記アライメント設定値の最大値及び最小値の差分値よりも大きくなるように、前記凸部を形成する
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法において、
前記先端面の外周縁上の各点における前記アライメント設定値は、同一値である
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
基板と、前記基板の第一面に設けられた機能膜とを備えたMEMSデバイスであって、
前記機能膜は、平面状の主膜部と、前記主膜部の外周縁から当該主膜部に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、を有し、
前記基板は、
前記側壁部に接し、前記主膜部及び前記側壁部とともにキャビティを形成するキャビティ形成部と、
当該基板の前記第一面とは反対側の第二面から前記キャビティ形成部に向かって設けられ、前記キャビティと前記第二面の外側の空間とを連通させる連通孔と、を有する
ことを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のMEMSデバイスにおいて、
前記キャビティ形成部は、前記連通孔側から前記主膜部に向かう方向に開口面積が増大する内壁面を有する
ことを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項7】
基板と、前記基板の第一面に設けられた機能膜と、前記機能膜上に設けられた圧電体とを備えた超音波トランスデューサーであって、
前記機能膜は、平面状の主膜部と、前記主膜部の外周縁から当該主膜部に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、を有し、
前記基板は、
前記側壁部に接し、前記主膜部及び前記側壁部とともにキャビティを形成するキャビティ形成部と、
当該基板の前記第一面とは反対側の第二面から前記キャビティ形成部に向かって設けられ、前記キャビティと前記第二面の外側の空間とを連通させる連通孔と、
を有し、
前記圧電体は、前記主膜部の前記キャビティ形成部が設けられる側の面とは反対側の面に下部電極層、圧電層、及び上部電極層を順に積層して構成された
ことを特徴とした超音波トランスデューサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−5250(P2013−5250A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134863(P2011−134863)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】