説明

MEMSデバイスの製造方法

【課題】犠牲層を自己制御的に除去することができるMEMSデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】MEMSデバイス50の製造方法は、まず、第1シリコン酸化膜51上に、アルミ又はアルミ系合金からなる第1犠牲層52aを形成する。第1犠牲層52aは、ゲート電極の形成と同時に形成する。次に、第1犠牲層52a上に、ITOからなる第2犠牲層52bを形成する。第2犠牲層52bは、画素電極の形成と同時に形成する。このような犠牲層52上に、錘58として機能する第2シリコン酸化膜53、シリコン膜54を形成し、所定の形状にパターンニングする。その後、電食反応を利用して、犠牲層52に王水を接触させることにより、自己制御的に犠牲層52を除去し、錘58の下側に空洞を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に可動可能な状態で配置される可動物体を備えたMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスは、微細加工技術を利用して形成され、例えば、加速度センサやジャイロセンサとして用いられる。具体的には、MEMSデバイスは、半導体プロセスを利用して基板上に可動可能な状態で可動物体が配置される(例えば、梁によって錘が可動可能に支持されている)構造となっている。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1に記載のように、基板上に後で除去する犠牲層が形成されており、犠牲層上に残す膜が形成されている。犠牲層は、例えば、シリコン酸化膜である。膜は、錘(可動物体)として機能させるものであり、例えば、シリコン膜である。
【0004】
そして、犠牲層をエッチング溶液(例えば、フッ酸)を用いて除去して空洞化することにより、錘が膜からなる梁で支持され浮いた状態となる。そして、この浮いた膜を、可動可能な錘として機能させる。具体的には、この錘の変動を検知して、例えば、加速度や移動した方向等を求める。
【0005】
【特許文献1】特開2007−165583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、犠牲層を除去した後の空洞にエッチング溶液が表面張力によって残り、これにより、錘として機能する膜がエッチング液によって引き寄せられ、膜と基板とが密着する(スティッキング)。これにより、錘が可動しなくなるという問題がある。また、エッチング液が隙間に入りにくいという問題がある。このような問題を避けるために、空洞の高さを高くすると、エッチングの処理時間が長くなる。また、気相エッチングを用いた場合、使用できる材料が限定されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係るMEMSデバイスの製造方法は、基板上に電食反応を生じる犠牲層を形成する工程と、前記犠牲層上に機能膜を形成する工程と、前記犠牲層を前記電食反応を用いて除去し前記機能膜の下に空洞を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、電食反応を利用することにより、自己制御的に犠牲層を除去する(侵食する)ことが可能となるので、犠牲層が除去された後の空洞化した領域にエッチング液が貼り付くことを抑えることが可能となる。よって、機能膜がエッチング溶液によって引き寄せられて、基板と機能膜とが密着すること(スティッキング)を防ぐことができる。その結果、機能膜の下を空洞化することができる。また、電食反応を利用するので、僅かな厚みの犠牲層を除去することができたり、エッチング処理時間を短縮したりすることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記機能膜は、可動可能に支持されていることを特徴とする。
【0011】
この方法によれば、機能膜が可動可能に周囲に支持されているので、機能膜の下側を空洞化させることにより、機能膜を可動する膜として機能させることができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記犠牲層は、アルミ又はアルミ系合金とITO合金とを含んで構成されることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、アルミ又はアルミ系合金とITO合金とを用いるので、例えば、液晶装置等の電気光学装置の製造と一緒に、MEMSデバイスを製造することができる。よって、新たな材料を準備することなく、効率的にMEMSデバイスを製造することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記アルミ又はアルミ系合金は、ゲート電極と同時に形成することが好ましい。
【0015】
この方法によれば、ゲート電極と同時に犠牲層の一方を形成できるので、別に専用の製造工程を設けることなく、効率的にMEMSデバイスを製造することができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記アルミ又はアルミ系合金は、ソース電極又はドレイン電極と同時に形成することが好ましい。
【0017】
この方法によれば、ソース電極又はドレイン電極と同時に犠牲層の一方を形成できるので、別に専用の製造工程を設けることなく、効率的にMEMSデバイスを製造することができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記アルミ又はアルミ系合金は、反射電極と同時に形成することが好ましい。
【0019】
この方法によれば、反射電極と同時に犠牲層の一方を形成できるので、別に専用の製造工程を設けることなく、効率的にMEMSデバイスを製造することができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記ITO合金は、画素電極と同時に形成することが好ましい。
【0021】
この方法によれば、画素電極と同時に犠牲層の一方を形成できるので、別に専用の製造工程を設けることなく、効率的にMEMSデバイスを製造することができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記機能膜は、梁で支持された錘として機能し、センサの一部として用いられることが好ましい。
【0023】
この方法によれば、機能膜が方向や加速度等を検出するための可動可能な錘として用いられるので、機能膜の下側を電食反応によって空洞化させることにより、錘を撓ませる(変動させる)ことが可能となり、センサとして有効に機能させることができる。
【0024】
[適用例9]上記適用例に係るMEMSデバイスの製造方法において、前記犠牲層を形成する工程の前に、前記犠牲層と接触する前記基板又は前記基板上に形成された膜の表面を荒らすことが好ましい。
【0025】
この方法によれば、犠牲層と接触する基板又は膜の表面に荒らした処理を施すことによって、エッチング液を分離させやすくすることが可能となり、基板又は膜と機能膜とが密着すること(スティッキング)を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、液晶装置の構成を示す模式断面図である。以下、液晶装置の構成を、図1を参照しながら説明する。なお、図1に示す液晶装置は、図示上側が視認側(観察者側)、図示下側が光入射側である場合を示している。
【0027】
図1に示すように、液晶装置11は、素子基板12と、対向基板13と、素子基板12と対向基板13との間に挟持された液晶層14とを有する。
【0028】
素子基板12は、ガラス等の透光性材料からなる基板としての第1基板15と、第1基板15の液晶層14側に形成されたTFT素子16と、その液晶層14側に形成された画素電極17及び第1配向膜18と、を主体に構成されている。
【0029】
具体的には、第1基板15上(液晶層14側)に、シリコン酸化膜等からなる下地保護膜(緩衝膜)21が形成されており、下地保護膜21上には、多結晶シリコンからなる半導体膜22が所定のパターンで形成されている。半導体膜22上には、シリコン酸化膜等からなるゲート絶縁膜23が形成されており、このゲート絶縁膜23上には、ゲート電極24が形成されている。ゲート電極24は、例えば、アルミ膜からなる。
【0030】
ゲート電極24の側面は、例えば、ゲート絶縁膜23の表面に対してテーパー状となっている。また、半導体膜22のうち、ゲート絶縁膜23を介してゲート電極24と対向する領域が、ゲート電極24からの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域25となっている。
【0031】
半導体膜22において、チャネル領域25の一方側(図示左側)には、ソース領域26が形成され、他方側(図示右側)にはドレイン領域27が形成されている。そして、ゲート電極24、ゲート絶縁膜23、ソース電極28、ドレイン電極29、半導体膜22のソース領域26、チャネル領域25、ドレイン領域27等により、画素スイッチング用のTFT素子16が構成されている。ソース電極28及びドレイン電極29は、例えば、アルミで構成されている。
【0032】
画素スイッチング用のTFT素子16は、LDD構造を有するものとなっている。詳述すると、ソース領域26には、不純物濃度が相対的に高いソース側高濃度領域26と、相対的に低いソース側低濃度領域31(LDD領域)とが形成されている。ドレイン領域27には、不純物濃度が相対的に高いドレイン側高濃度領域27と、相対的に低いドレイン側低濃度領域32(LDD領域)が形成されている。
【0033】
また、ゲート電極24等が形成されたゲート絶縁膜23上には、シリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁膜33が形成されており、この第1層間絶縁膜33上に、ソース電極28及びドレイン電極29が形成されている。ソース電極28は、半導体膜22のソース側高濃度領域26に電気的に接続されている。ドレイン電極29は、半導体膜22のドレイン側高濃度領域27に電気的に接続されている。
【0034】
また、ソース電極28、ドレイン電極29が形成された第1層間絶縁膜33上には、シリコン窒化膜等からなる第2層間絶縁膜34が形成されており、第2層間絶縁膜34上に、画素電極17が形成されている。画素電極17は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明導電性材料からなり、第2層間絶縁膜34に形成されたコンタクトホール35を介して、ドレイン電極29に電気的に接続されている。画素電極17上には、液晶層14内の液晶分子の配列を制御するための第1配向膜18が形成されている。
【0035】
また、半導体膜22のドレイン側高濃度領域27からの延設部分36(下電極)に対して、ゲート絶縁膜23と一体形成された絶縁膜(誘電体膜)を介して、ゲート電極24と同層に形成された容量線37が上電極として対向配置されており、これら延設部分36と容量線37により蓄積容量38が形成されている。
【0036】
一方、対向基板13は、ガラス等の透光性材料からなる第2基板41と、その液晶層14側表面に形成された共通電極42と、第2配向膜43と、を主体として構成されている。
【0037】
具体的には、第2基板41の液晶層14側表面に、液晶装置11に太陽光等の入射した光が、少なくとも、半導体膜22のチャネル領域25及び低濃度領域31,32に入射することを防止するための遮光膜44が形成されている。また、遮光膜44が形成された第2基板41上には、その略全面に渡って、ITO等からなる共通電極42が形成されている。共通電極42上(液晶層14側)には、液晶層14内の液晶分子の配列を制御するための第2配向膜43が形成されている。
【0038】
図2及び図3は、MEMSデバイスの製造方法を工程順に示す模式図である。各図(a)はMEMSデバイスの模式平面図であり、各図(b)は各図(a)のA−A'断面に沿う模式断面図である。以下、MEMSデバイスの製造方法を、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図2及び図3に示すMEMSデバイス50は、センサとして用いられ、例えば、図1に示す液晶装置11の一部の領域に形成される。MEMSデバイス50の製造方法は、半導体製造プロセス及びMEMS製造プロセスが用いられる。
【0039】
図2に示すように、MEMSデバイス50の製造方法は、第1基板15(図1参照)上にセンサを構成する錘(機能膜)として機能させる膜を形成する。具体的には、まず、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法等により、第1基板15上に第1シリコン酸化膜(SiO2)51を成膜する。なお、第1シリコン酸化膜51は、液晶装置11を構成する下地保護膜21やゲート絶縁膜23を形成する際に、一緒に成膜するようにしてもよい。
【0040】
次に、第1シリコン酸化膜51上に犠牲層52を形成する。犠牲層52は、例えば、アルミ又はアルミ系合金からなる第1犠牲層52aと、ITO等の第2犠牲層52bとからなる。例えば、アルミ膜からなるゲート電極24の形成と同時に、第1犠牲層52aを形成する。第1犠牲層52aの厚みは、例えば、100nmである。第1犠牲層52aは、例えば、スパッタ法により形成することができる。
【0041】
次に、例えば、画素電極17の形成と同時に、第1犠牲層52a上に第2犠牲層52bを成膜技術を用いて形成する。第2犠牲層52bの厚みは、例えば、100nmである。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとからなる犠牲層52を所定の形状にパターンニングする。
【0042】
次に、第1シリコン酸化膜51及び犠牲層52上に、プラズマCVD法やスパッタ法等により、シリコン酸化膜からなる第2シリコン酸化膜53を形成する。その後、第2シリコン酸化膜53上に、プラズマCVD法やスパッタ法等により、シリコン膜(Si)54を形成する。
【0043】
その後、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、及びMEMS技術を用いて、シリコン膜54及び第2シリコン酸化膜53の一部の領域を櫛歯状にパターンニングしたり、第1空洞部55及び第2空洞部56を形成したりする。
【0044】
以上により、シリコン膜54からなる梁57によって、シリコン膜54と第2シリコン酸化膜53とからなる錘58が支持される構成が完成する。
【0045】
次に、図3に示すように、犠牲層52を除去して、錘58の下側に空洞61を形成する。犠牲層52を除去する方法として、電食反応を利用する。
【0046】
電食反応とは、異なる金属同士の電位差を利用し、この金属にエッチング液を接触させることにより自己制御的に金属を除去する。エッチング液は、例えば、王水である。王水は、濃塩酸と濃硝酸とが1:3の割合で混合された溶液である。具体的には、王水を電解液として、第1犠牲層52aの腐食(酸化)と第2犠牲層52bの溶解(還元)とによって、第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとが侵食する。
【0047】
まず、犠牲層52(第2犠牲層52b)に王水を接触させる。第2犠牲層52bは王水により除々に溶解されていき、第1犠牲層52aに王水が接触した時点で、電食反応により、第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとが除去(侵食)される。もしくは、第1犠牲層52aが第2犠牲層52bに覆われていない部分を予め形成しておき、第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとを王水に接触させることにより、電食反応で第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとが除去(侵食)される。より具体的には、王水の中における第1犠牲層52aの酸化電位と第2犠牲層52bの還元電位との電位差が反応の駆動力となって、第1犠牲層52aの酸化と第2犠牲層52bの還元が促進される。
【0048】
このように、電食反応を利用して犠牲層52(第1犠牲層52a、第2犠牲層52b)を除去することにより、犠牲層52が除去された後に、錘58と第1シリコン酸化膜51との間にエッチング液が残ることによる、スティッキング現象等の発生を抑えることができる。また、僅かな厚みの犠牲層52であっても、電食反応により除去することができる。その結果、錘58の下側に空洞61が形成でき、MEMSデバイス50をセンサとして機能させることができる。
【0049】
以上により、犠牲層52が除去され、MEMSデバイス(センサ)を構成する錘58として機能する、第2シリコン酸化膜53とシリコン膜54とからなる積層体が浮いた状態となる。錘58の形状は、図3(a)に示すように、前後左右方向の感度を見ることから、例えば、平面視で正方形であることが好ましい。また、液晶装置11に上記のようなセンサを内蔵させるので、例えば、複数個のセンサを内蔵させることもできる。
【0050】
次に、上記したセンサの一つである加速度センサについて説明する。加速度センサは、例えば、上記したように、錘58を梁57で支持する構成となっている。梁57は、例えば、櫛歯形状に形成されている。また、櫛歯形状の梁57に隣接して固定電極59が設けられている。加速度センサは、例えば、静電容量型で検出しており、梁57と固定電極59の間の静電容量で変位を計測する。また、加速度センサに限定されず、ジャイロセンサなど各種のセンサに適用することもできる。
【0051】
このようなMEMSデバイス50を液晶装置11に内蔵させることにより、例えば、液晶装置11を備えた携帯電話を落下した際に、センサが落下を検知し、これにより、メモリが破損しないように保護するような使い方に適用できる。また、例えば、携帯電話の向きをセンサで検知し、この向きに応じて表示の向きを変えるような使い方に適用できる。
【0052】
以上詳述したように、本実施形態のMEMSデバイス50の製造方法によれば、以下に示す効果が得られる。
【0053】
(1)本実施形態によれば、電食反応を利用することにより、自己制御的に犠牲層52を除去する(侵食する)ことが可能となるので、犠牲層52が除去された後の空洞61部分に王水が貼り付くことを抑えることが可能となる。よって、第2シリコン酸化膜53とシリコン膜54とで積層された錘58が王水によって引き寄せられて、第1シリコン酸化膜51と錘58とが密着すること(スティッキング)を防ぐことができる。その結果、錘58の下を空洞化することができ、積層された膜を可動する錘58として機能させることができる。また、電食反応を利用するので、僅かな厚みの犠牲層52を除去することができたり、エッチング処理時間を短縮したりすることができる。
【0054】
(2)本実施形態によれば、液晶装置11に用いる材料で犠牲層52(アルミ膜からなる第1犠牲層52a、ITOからなる第2犠牲層52b)を構成するので、他の材料を新たに準備することなく、また、液晶装置11の製造方法のプロセスと一緒に犠牲層52を形成することが可能となり、効率よくMEMSデバイス50を形成することができる。
【0055】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0056】
(変形例1)
上記したように、比較的平坦化されている第1シリコン酸化膜51上に犠牲層52(52a,52b)を形成することに代えて、例えば、図4及び図5に示すように、ディンプル加工のような凸凹状62の上に犠牲層52を形成するようにすることが好ましい。図4は、犠牲層52を除去する前のMEMSデバイス50の構造を示す模式断面図である。図5は、犠牲層52を除去した後のMEMSデバイス50の構造を示す模式断面図である。第1シリコン酸化膜51における犠牲層52と接触する部分を凸凹状62にする方法として、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて形成するようにしてもよい。凸凹状62の形状は、不規則に荒らすようにしてもよい。第1犠牲層52aは、第1シリコン酸化膜51の凸凹形状が反映されて、凸凹状に成膜される。凸凹形状は、丸形状でもいいし波形状でもよい。これによれば、表面張力の力が王水に伝わりにくく、王水を分離しやすくできる。その結果、犠牲層52のエッチング性が向上し、スティッキングが発生することをより抑えることができる。
【0057】
(変形例2)
上記したように、犠牲層52は、第1犠牲層52aであるアルミ膜と第2犠牲層52bであるITOとの組み合わせに限定されず、例えば、ディスプレイに用いる材料に限定されなければ、以下のような組み合わせの材料であってもよい。例えば、一方の金属材料を、金(Au)又は白金(Pt)で構成し、他方の金属を、ニクロム(NiCr)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)又はタンタル(Ta)で構成した組み合わせで使用するようにしてもよい。
【0058】
(変形例3)
上記したように、ゲート電極24と一緒に第1犠牲層52aを形成することに限定されず、例えば、ソース電極28又はドレイン電極29と一緒に形成するようにしてもよい。また、上記の他に、反射電極(図示せず)と一緒に形成するようにしてもよい。この場合、例えば、第2層間絶縁膜34と画素電極17との間に反射電極が形成されている。
【0059】
(変形例4)
上記したように、犠牲層52を第1犠牲層52aと第2犠牲層52bとの2層構造にしたことに限定されず、例えば、3層構造など複数層の構造にするようにしてもよい。
【0060】
(変形例5)
上記したように、液晶装置11を製造する際一緒に、第1犠牲層52a、第2犠牲層52b、第1シリコン酸化膜51を形成することに限定されず、第2シリコン酸化膜53やシリコン膜54も一緒に形成するようにしてもよい。
【0061】
(変形例6)
上記したように、犠牲層52の周囲に形成された材料は、シリコン酸化膜(51,53)やシリコン膜(54)で構成することに限定されず、例えば、以下のような材料を用いるようにしてもよい。シリコンウエハやSOI(Silicon On Insulator)を用いる場合では、シリコン酸化膜に代えて、シリコンを用いてもよい。また、ディスプレイの材料を使用する場合であれば、第1シリコン酸化膜に代えて、感光性アクリル樹脂を用いるようにしてもよい。また、シリコン膜に代えて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜(SiN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)で構成するようにしてもよい。
【0062】
(変形例7)
上記したように、MEMSデバイス50を液晶装置11に内蔵させることに限定されず、例えば、有機EL装置など電気光学装置に内蔵させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の構成を示す模式断面図。
【図2】MEMSデバイスの製造方法を工程順に示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図3】MEMSデバイスの製造方法を工程順に示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図4】MEMSデバイスの製造方法の変形例を示す模式断面図。
【図5】MEMSデバイスの製造方法の変形例を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0064】
11…液晶装置、12…素子基板、13…対向基板、14…液晶層、15…基板としての第1基板、16…TFT素子、17…画素電極、18…第1配向膜、21…下地保護膜、22…半導体膜、23…ゲート絶縁膜、24…ゲート電極、25…チャネル領域、26…ソース領域、27…ドレイン領域、28…ソース電極、29…ドレイン電極、31…ソース側低濃度領域、32…ドレイン側低濃度領域、33…第1層間絶縁膜、34…第2層間絶縁膜、35…コンタクトホール、36…延設部分、37…容量線、38…蓄積容量、41…第2基板、42…共通電極、43…第2配向膜、44…遮光膜、50…MEMSデバイス、51…第1シリコン酸化膜、52…犠牲層、52a…第1犠牲層、52b…第2犠牲層、53…第2シリコン酸化膜、54…シリコン膜、55…第1空洞部、56…第2空洞部、57…梁、58…機能膜としての錘、61…空洞、62…凸凹状。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電食反応を生じる犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層上に機能膜を形成する工程と、
前記犠牲層を前記電食反応を用いて除去し前記機能膜の下に空洞を形成する工程と、
を有することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記機能膜は、可動可能に支持されていることを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記犠牲層は、アルミ又はアルミ系合金とITO合金とを含んで構成されることを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記アルミ又はアルミ系合金は、ゲート電極と同時に形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記アルミ又はアルミ系合金は、ソース電極又はドレイン電極と同時に形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記アルミ又はアルミ系合金は、反射電極と同時に形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記ITO合金は、画素電極と同時に形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記機能膜は、梁で支持された錘として機能し、センサの一部として用いられることを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のMEMSデバイスの製造方法であって、
前記犠牲層を形成する工程の前に、前記犠牲層と接触する前記基板又は前記基板上に形成された膜の表面を荒らすことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−136934(P2009−136934A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313146(P2007−313146)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】