説明

MEMS振動子、発振器、およびMEMS振動子の製造方法

【課題】信頼性が高く、周波数特性の管理が容易なMEMS振動子を提供する。
【解決手段】MEMS振動子100は、基板10と、基板10の上方に配置された第1電極20と、第1電極20との間に空隙を有した状態で配置され、基板10の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部32、および梁部32を支持する支持部34を有する第2電極30と、を含み、第1電極20の側面22は、第1電極20の上面21に接続された第1面22aと、第1面22aおよび基板10の上面11に接続された第2面22bと、を有し、第1面22aは、基板10の上面11に対して傾斜し、基板10の上面11に対する第1面22aの角度は、第1角度αであり、基板10の上面11に対する第2面22bの角度は、第1角度αよりも大きい第2角度βである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS振動子、発振器、およびMEMS振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製作されたMEMS振動子が注目されている。MEMS振動子は、例えば、発振器に用いられ、高い信頼性が要求される。特許文献1には、MEMS振動子の信頼性を高める技術として、製造工程において、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防止する技術が開示されている。具体的には、特許文献1では、固定電極、および静電力によって振動する梁を有する可動電極を備えたMEMS振動子において、固定電極の側面部を基板に対して傾斜した傾斜面にすることにより、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、MEMS振動子の周波数特性は、可動電極の梁の長さ(静電力によって実質的に可動する梁の長さ)に依存する。したがって、可動電極の梁の長さを測定することは、MEMS振動子の周波数特性を管理するうえで重要である。可動電極の梁の長さを測定する方法として、SEM(Scanning Electron Microscope)等を用いて、可動電極の梁を平面観察する(基板の上面側から観察する)方法がある。この可動電極の梁を平面観察する方法によれば、MEMS振動子を破壊することなく、容易に梁の長さを測定することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のMEMS振動子のように、固定電極の側面部が傾斜している場合、側面部に沿って可動電極の梁も傾斜しているため、SEMを用いた平面観察では、梁の境界(梁と、梁を支持する支持部との境界)が明瞭に観察できない場合があった。したがって、特許文献1に記載のMEMS振動子では、可動電極の梁を平面観察する方法を用いることができない場合があり、周波数特性の管理が難しいという課題があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、信頼性が高く、周波数特性の管理が容易なMEMS振動子およびその製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記MEMS振動子を有する発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るMEMS振動子は、
基板と、
前記基板の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記梁部を支持する支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極の側面は、
前記第1電極の上面に接続された第1面と、
前記第1面および前記基板の上面に接続された第2面と、
を有し、
前記第1面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記基板の上面に対する前記第1面の角度は、第1角度であり、
前記基板の上面に対する前記第2面の角度は、前記第1角度よりも大きい第2角度である。
【0008】
このようなMEMS振動子によれば、第1電極の側面を構成する第1面が基板の上面に対して傾斜していることにより、サイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。さらに、第1電極の側面が第1面と第2面とを有することにより、第1電極の側面に、第1角部を形成することができる。第1電極の側面に第1角部が形成されることにより、第2電極の上面に第2角部を、容易に形成することができる。第2角部は、梁部の境界に対応するため、MEMS振動子の周波数特性に寄与する梁部の長さを、例えばSEMを用いた平面観察によって測定することができる。したがって、周波数特性を容易に管理することができる。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の上方に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0010】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第1電極の側面には、前記第1面と前記第2面とがなす第1角部が形成され、
前記第2電極の上面には、前記第1角部の形状が転写された第2角部が形成されていてもよい。
【0011】
このようなMEMS振動子によれば、第2電極の上面に第2角部が形成されることにより、梁部の長さを、例えばSEMを用いた平面観察によって測定することができる。したがって、周波数特性を容易に管理することができる。
【0012】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第1角度は、5°以上45°以下であってもよい。
【0013】
このようなMEMS振動子によれば、サイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【0014】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第2角度は、80°以上90°以下であってもよい。
【0015】
このようなMEMS振動子によれば、第2電極の上面に転写された第2角部を、例えばSEMを用いた平面観察により、明瞭に観察できる。したがって、MEMS振動子の周波数特性に寄与する梁部の長さを容易に測定することができ、周波数特性を容易に管理することができる。
【0016】
本発明に係る発振器は、
本発明に係るMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む。
【0017】
このような発振器によれば、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性の管理を容易化することができる。
【0018】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法は、
基板の上方に第1半導体層を成膜する工程と、
前記第1半導体層をパターニングして、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆う被覆層を形成する工程と、
前記被覆層の上方に第2半導体層を成膜する工程と、
前記第2半導体層をパターニングして、前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記梁部を支持する支持部を有する第2電極を形成する工程と、
前記被覆層を除去する工程と、
を含み、
前記第1電極を形成する工程において、
前記第1電極の側面を、前記第1電極の上面に接続された第1面と、前記第1面および前記基板の上面に接続された第2面と、を有するように形成し、
前記第1面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記基板の上面に対する前記第1面の角度は、第1角度であり、
前記基板の上面に対する前記第2面の角度は、前記第1角度よりも大きい第2角度である。
【0019】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第1電極の第1面が基板の上面に対して傾斜するように形成される。これにより、第2半導体層をパターニングする工程において、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。さらに、第1電極を形成する工程において、第1電極の側面が第1面と第2面を有するように形成される。これにより、第1電極の側面に第1角部を形成することができる。第1角部が形成されることにより、第2半導体層を成膜する工程では、第2電極の上面に第2角部を、容易に形成することができる。そのため、MEMS振動子の周波数特性に寄与する梁部の長さを、例えばSEMを用いた平面観察によって測定することができる。したがって、周波数特性を容易に管理することができる。
【0020】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層の上方にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第1半導体層をドライエッチングする工程と、
を含み、
前記第1半導体層をドライエッチングする工程は、塩素、六フッ化硫黄、臭化水素、および酸素、を含むガスを用いて行われてもよい。
【0021】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、例えばマスク層を複数回形成したり、エッチングに用いるガスを切り換えたりすることなく、第1面および第2面を有する第1電極の側面を、容易に形成することができる。
【0022】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層を、第1ガスを用いてドライエッチングして、前記第1面を形成する第1ドライエッチング工程と、
前記第1半導体層を、前記第1ガスとは異なる第2ガスを用いてドライエッチングして、前記第2面を形成する第2ドライエッチング工程と、
を有してもよい。
【0023】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、1つのマスク層で、第1面および第2面を有する第1電極の側面を、形成することができる。
【0024】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層の上面側の不純物濃度を、前記第1半導体層の下面側の不純物濃度より高くなるように、前記第1半導体層に不純物を注入する工程と、
前記第1半導体層の上方にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第1半導体層をドライエッチングする工程と、
を有してもよい。
【0025】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図2】第1実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図3】第1実施形態に係るMEMS振動子の第1電極の一部を拡大して示す断面図。
【図4】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】第1実施形態に係るMEMS振動子の製造工程において、第2半導体層を成膜した後の様子を模式的に示す断面図。
【図11】第1電極の側面が基板の上面に対して垂直な面である場合において、第2半導体層を成膜した後の様子を模式的に示す断面図。
【図12】第1実施形態の第1変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】第1実施形態の第1変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】第1実施形態の第2変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図15】第1実施形態の第2変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図16】第1実施形態の第3変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図17】第1実施形態の第3変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図18】第1実施形態の第3変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図19】第1実施形態の第4変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図20】第1実施形態の第4変形例に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図21】第2実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図22】第2実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図23】第3実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図24】第3実施形態に係るMEMS振動子の第1電極の一部を拡大して示す断面図。
【図25】第4実施形態に係る発振器を示す回路図。
【図26】第4実施形態の変形例に係る発振器を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
1. 第1実施形態
1.1. MEMS振動子
まず、第1実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す平面図である。図2は、MEMS振動子100を模式的に示す断面図である。なお、図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、MEMS振動子100の第1電極20の一部を拡大して示す断面図である。なお、図3では、便宜上、第2電極30の図示を省略している。
【0029】
MEMS振動子100は、図1〜図3に示すように、基板10と、第1電極20と、第2電極30と、を含む。
【0030】
基板10は、支持基板12と、第1下地層14と、第2下地層16と、を有することができる。
【0031】
支持基板12としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。支持基板12として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0032】
第1下地層14は、支持基板12上に形成されている。第1下地層14としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1絶縁層20の材質は、例えば、酸化シリコンである。第1下地層14は、MEMS振動子100と支持基板12に形成された他の素子(図示しない)とを電気的に分離することができる。
【0033】
第2下地層16は、第1下地層14上に形成されている。第2下地層16の材質としては、例えば、窒化シリコンが挙げられる。第2下地層16は、後述するリリース工程においてエッチングストッパー層として機能することができる。
【0034】
第1電極20は、基板10上に配置されている。第1電極20の平面形状は、例えば、図1に示すように、長方形である。第1電極20は、長方形の4つの辺に対応する4つの側面を有している。なお、第1電極20の平面形状は、特に限定されず、例えば、長方形以外の多角形であってもよい。
【0035】
第1電極20の側面22は、図2および図3に示すように、第1面22aと、第2面22bと、を有する。
【0036】
第1面22aは、第1電極20の上面21と第2面22bとに接続されている。第1面22aは、第1電極20の側面22のうち、上側(上面21側)に位置する面である。第1面22aは、基板10の上面11に対して傾斜している。基板10の上面11に対する第1面22aの角度αは、例えば、5°以上45°以下である。第1面22aの角度αは、25°であることが望ましい。第1面22aの角度αは、基板10の上面11に対する第1面22aの傾斜角ともいえる。
【0037】
第2面22bは、第1面22aと基板10の上面11とに接続されている。第2面22bは、第1電極20の側面22のうち、下側(基板10側)に位置する面である。基板10の上面11に対する第2面22bの角度βは、例えば、80°以上90°以下である。すなわち、基板10の上面11に対する第1面22aの角度αは、基板10の上面11に対する第2面22bの角度βよりも大きい。第2面22bの角度βは、90°であることが望ましい。すなわち、第2面22bは、基板10の上面11に対して垂直な面であることが望ましい。第2面22bの角度βは、第2面22bと基板10の上面11とがなす角度である。
【0038】
第1面22aの角度αと第2面22bの角度βとは、大きさが異なるため、第1電極20の側面22には、第1面22aと第2面22bとがなす第1角部25aが形成される。第2電極30は、基板10の上面11、第1電極20の側面22および上面21に沿って形成されるため、第2電極30の上面には、第1電極20の第1角部25aの形状が転写されて、第2角部35aが形成される。そのため、第2電極30の第2角部35aは、第1電極20の第1角部25aの形状を反映している。
【0039】
また、基板10の上面11に対する第1電極20の上面21の角度(図示の例では、0°)と、第1面22aの角度αとは、大きさが異なる。そのため、第1電極20には、上面21と第1面22aとがなす第3角部25bが形成される。したがって、第2電極30には、第1電極20の第3角部25bの形状が転写されて、第4角部35bが形成される。そのため、第2電極30の第4角部35bは、第1電極20の第3角部25bの形状を反映している。
【0040】
図3に示すように、第1角部25aの高さ(基板10の上面11と第1角部25aとの間の距離)L1は、例えば、第1電極20の膜厚(基板10の上面11と第1電極20の上面21との間の距離)L2の1/2以下である。第1角部25aの高さL1は、第1電極20の膜厚L2の1/3程度が望ましい。第1電極20の膜厚が300nmの場合、第1角部25aの高さL1は、例えば、10nm以上150nm以下である。
【0041】
第2電極30は、第1電極20との間に空隙を有した状態で配置された梁部32と、梁部32を支持する支持部(固定部)34と、を有する。第2電極30は、図示の例では、片持ち梁状に形成されている。電極20,30間に電圧が印加されると、梁部32は、電極20,30間に発生する静電力により、基板10の厚み方向に振動することができる。
【0042】
図示の例では、第2電極30は、1つの第1電極20に対して2つ設けられている。この2つの第2電極30は、異なる固有振動数を有していてもよいし、同じ固有振動数を有していてもよい。なお、1つの第1電極20に対する第2電極30の数は、特に限定されない。
【0043】
梁部32は、支持部34から延出している。梁部32は、第1電極20と対向配置されている。梁部32の厚み(基板10の厚み方向の大きさ)は、例えば、一定である。梁部32は、第1電極20の上面21に沿って設けられた第1部分32aと、第1電極20の第1面22aに沿って設けられた第2部分32bと、を有する。
【0044】
第1部分32aは、第2部分32bから第1電極20の上面21に沿って延出している。第1部分32aと第1電極20との間には、空隙がある。第1部分32aは、第1電極20の上面21と対向する内面33aを有している。
【0045】
第2部分32bは、支持部34から第1電極20の第1面22aに沿って延出している。第2部分32bと第1電極20との間には、空隙がある。第2部分32bは、支持部34と第1部分32aとを接続している。第2部分32bは、第1電極20の第1面22aと対向する内面33bを有している。
【0046】
支持部34は、基板10上に配置されている。支持部34は、梁部32を支持している。支持部34は、例えば、基板10上に固定されている。支持部34は、第1電極20の第2面22bと対向する内面33cを有している。
【0047】
なお、MEMS振動子100は、第1電極20および第2電極30を減圧状態で気密封止する被覆構造体を有していてもよい。これにより、梁部32の振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0048】
第1電極20および第2電極30の材質は、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンである。
【0049】
MEMS振動子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0050】
MEMS振動子100では、第1電極20の側面22を構成する第1面22aが、基板10の上面11に対して傾斜している。これにより、サイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。この理由については、後述する。
【0051】
さらに、MEMS振動子100では、基板10の上面11に対する第1面22aの角度が、第1角度であり、基板10の上面11に対する第2面22bの角度は、第1角度よりも大きい第2角度である。これにより、第1電極20の側面22には、第1面22aと第2面22bとがなす第1角部25aが形成される。第1電極20に第1角部25aが形成されることにより、第2電極30の上面に角部(第2角部35a)を、容易に形成することができる。
【0052】
第2電極30の上面に形成された第2角部35aは、SEM等で平面観察した場合(基板10の上面11側から観察した場合)、エッジ効果(SEM観察において、試料表面に突起やステップ状の構造があると、突起の先端やエッジ部分が、ある幅を持って明るくなる現象)により、明瞭に確認することができる。そのため、第2角部35aと梁部32の先端部との間の距離L32を、SEM等を用いた平面観察により、測定することができる。ここで、第2角部35aは、梁部32と支持部34との境界に対応し、距離L32は、MEMS振動子の周波数特性に寄与するMEMS振動子の梁部の長さに対応している。したがって、MEMS振動子100によれば、周波数特性を容易に管理することができる。
【0053】
MEMS振動子100では、基板10の上面11に対する第1面22aの角度αは、5°以上45°以下であることができる。これにより、後述するように、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【0054】
MEMS振動子100では、基板10の上面11に対する第2面22bの角度βは、例えば、80°以上90°以下であることができる。これにより、梁部32の長さ(第2角部35aと梁部32の先端部との間の距離L32)を、容易に測定することができる。例えば、第2面22bの角度βが80°よりも小さい場合、第1面の角度αと第2面の角度βとの差(角度の大きさの差)が小さくなり、第1電極の側面が滑らかになる。そのため、第2角部が形成されにくくなる。また、第2角部が形成されたとしても、エッジ効果が得られにくくなる。MEMS振動子100では、第2面22bの角度βが、80°以上90°以下であるため、このような課題が生じず、SEM等を用いた平面観察によって、第2角部35aを明瞭に確認することができる。したがって、MEMS振動子100によれば、梁部32の長さ(第2角部35aと梁部32の先端部との間の距離L32)を、容易に測定することができる。
【0055】
1.2. 第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法
次に、第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4〜図9は、第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0056】
図4に示すように、支持基板12上に、第1下地層14および第2下地層16をこの順で形成して、基板10を得る。第1下地層14は、例えば、LOCOS法により形成される。第2下地層16は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法により形成される。
【0057】
次に、基板10上に第1半導体層2を成膜する。第1半導体層2の成膜は、例えば、CVD法、スパッタ法により行われる。第1半導体層2の材質は、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)である。
【0058】
次に、第1半導体層2に不純物を注入する。これにより、第1半導体層2に対して導電性を付与することができる。注入される不純物としては、例えば、リン(P)やボロン(B)が挙げられる。また、不純物を活性化するための熱処理を行ってもよい。
【0059】
図5および図6に示すように、第1半導体層2をパターニングして、第1電極20を形成する。
【0060】
まず、図5に示すように、第1半導体層2上にマスク層Mを形成する。マスク層Mとしては、公知のレジスト等を用いることができる。マスク層Mは、例えば、レジストをスピンコーター、吹き付け等によって塗布した後、露光、現像することによって形成される。
【0061】
次に、図6に示すように、マスク層Mをマスクとして、第1半導体層2をドライエッチングする。ドライエッチングは、例えば、ノンドープ(不純物が注入されていない)ポリシリコンをエッチングするために用いるガスと、ドープ(不純物が注入された)ポリシリコンをエッチングするために用いるガスと、を混合したガスを用いて行われる。
【0062】
ここで、ノンドープポリシリコンをエッチングするために用いるガス(以下「ノンドープポリシリコン用ガス」ともいう)とは、ドライエッチングにおいて、ノンドープポリシリコンを垂直にエッチングするためのガスである。すなわち、ノンドープポリシリコン用ガスは、ノンドープシリコンに対してサイドエッチングが小さくなるように設定されたガスである。そのため、ノンドープポリシリコン用ガスを用いた場合、ドープポリシリコンに対しては、サイドエッチングが大きくなる。
【0063】
ドープポリシリコンをエッチングするために用いるガス(以下「ドープポリシリコン用ガス」ともいう)とは、ドライエッチングにおいて、ドープポリシリコンを垂直にエッチングするためのガスである。すなわち、ドープポリシリコン用ガスは、ドープシリコンに対してサイドエッチングが小さくなるように設定されたガスである。そのため、ドープポリシリコン用ガスを用いた場合、ノンドープポリシリコンに対しては、サイドエッチングが大きくなる。
【0064】
ノンドープポリシリコン用ガスは、例えば、塩素(Cl)と六フッ化硫黄(SF)の混合ガスである。ドープポリシリコン用ガスは、例えば、塩素(Cl)、臭化水素(HBr)、および酸素(O)の混合ガスである。したがって、第1半導体層2をエッチングするガスは、例えば、塩素、六フッ化硫黄、臭化水素、および酸素、を含むガスである。
【0065】
このガスを用いて第1半導体層2をエッチングすることにより、図6に示すように、マスク層Mと第1半導体層2との境界付近では、サイドエッチングが進み、基板10の上面11に対して傾斜した面があらわれる。また、基板10と第1半導体層2との境界付近では、基板10の上面11に対して垂直または垂直に近い角度(80°以上90°以下)の面があらわれる。これにより、第1面22aおよび第2面22bを有する側面22が形成される。
【0066】
なお、第1半導体層2をドライエッチングするときの条件としては、例えば、チャンバー内の圧力が10〜20mTorr、高周波電力(RF−POWER)が、200〜300W程度である。また、第1面22aの角度αおよび第2面22bの角度βは、例えば、エッチングガスの割合やエッチング時間を調整することより制御できる。
【0067】
以上の工程により、第1電極20を形成することができる。
【0068】
図7に示すように、第1電極20を覆う被覆層(犠牲層)4を形成する。被覆層4は、例えば、酸化シリコン層である。被覆層4は、例えば、第1電極20を熱酸化することにより形成される。被覆層4の厚みによって、第1電極20と第2電極30との間の距離が決定される。
【0069】
図8に示すように、被覆層4上に第2半導体層6を成膜する。図示の例では、第2半導体層6は、被覆層4上および基板10上(上面11上)に形成される。具体的には、第2半導体層6は、被覆層4を介して、基板10の上面11、第1電極20の第1面22a、第2面22b、および上面11に沿って形成される。第2半導体層6の成膜は、例えば、CVD法、スパッタ法により行われる。第2半導体層6の材質は、例えば、多結晶シリコンである。
【0070】
第2半導体層6が、被覆層4上に形成されることにより、第2半導体層6の上面には、第1角部25aの形状が転写されて第2角部35aが形成され、かつ第3角部25bの形状が転写されて第4角部35bが形成される。
【0071】
次に、第2半導体層6に不純物を注入する。これにより、第2半導体層6に対して導電性を付与することができる。注入される不純物としては、例えば、リン(P)やボロン(B)が挙げられる。また、不純物の活性化を活性化するための熱処理を行ってもよい。
【0072】
図9に示すように、第2半導体層6をパターニングして、梁部32および支持部34を有する第2電極30を形成する。第2半導体層6のパターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により行われる。第1電極20の第1面22aは、基板10の上面11に対して傾斜しているため、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができる。詳細は後述する。
【0073】
図2に示すように、被覆層4を除去する(リリース工程)。被覆層4の除去は、例えば、フッ化水素酸や緩衝フッ酸(フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを用いたウェットエッチングにより行われる。このとき、第2下地層16は、エッチングストッパー層として機能することができる。
【0074】
以上の工程により、MEMS振動子100を製造することができる。
【0075】
第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0076】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第1電極20の第1面22aが、基板10の上面11に対して傾斜するように形成される。これにより、第2半導体層6をパターニングする工程において、第1電極20の周囲(第2電極30と重なる領域を除く)に、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。以下、その理由について説明する。
【0077】
図10は、本実施形態に係る製造方法において、第2半導体層6を成膜した後の様子を模式的に示す断面図である。図11は、比較例であり、第1電極20の側面22が基板10の上面11に対して垂直な面である場合の、第2半導体層6を成膜した後の様子を模式的に示す断面図である。なお、図10および図11は、第2半導体層6をパターニングした後に、第1電極20と第2電極30とが重ならない領域の断面図である。例えば、図1に示すX−X線の断面に対応する。
【0078】
図11に示すように、第1電極20の側面22が基板10の上面11に対して垂直な面である場合、側面22近傍に形成された第2半導体層6の膜厚T1は、基板10上の他の領域や被覆層4上に形成された第2半導体層6の膜厚T2に比べて、大きい。したがって、第2半導体層6をドライエッチングでパターニングすることにより、第1電極20の側面22近傍にサイドウォール状のエッチング残り7が発生する。このエッチング残り7が基板10上から離れて電極20,30等に付着することにより、電極20,30間の短絡や、梁部32の振動特性の変化等を起こし、MEMS振動子の信頼性が低下する場合がある。
【0079】
これに対して、MEMS振動子100では、図10に示すように、第1電極20の側面22を構成する第1面22aが、基板10の上面11に対して傾斜しているため、図11の例と比べて、第2半導体層6の膜厚Tを均一化することができる。したがって、第2半導体層6をパターニングする工程においてエッチング残りが発生することを防ぐことができる。
【0080】
MEMS振動子100の製造方法では、第1電極20を形成する工程において、第1電極20の側面22が第1面22aおよび第2面22bを有するように形成される。これにより、第1電極20の側面22に第1角部25aを形成することができる。第1角部25aが形成されることで、第2半導体層6を成膜する工程において、第2電極30の上面に第2角部35aを、容易に形成することができる。そのため、第2角部35aと梁部32の先端部との間の距離L32(図1、図2参照)を、例えばSEMを用いた平面観察により測定することができ、周波数特性を容易に管理することができる。
【0081】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第1半導体層2をドライエッチングする工程は、塩素、六フッ化硫黄、臭化水素、および酸素、を含むガスを用いて行われる。このようなガスを用いてドライエッチングを行うことにより、例えば、マスク層を2回成膜したり、エッチングに用いるガスを切り換えたりすることなく、第1面22aおよび第2面22bを有する第1電極20の側面22を、容易に形成することができる。
【0082】
MEMS振動子100の製造方法によれば、図6に示すように、第1半導体層2をパターニングする工程において、第1電極20の側面22に第2面22bを形成することにより、マスクMの幅WMと、第1電極20の幅W20を、同じ大きさにすることができる。これにより、第1半導体層2をパターニングする工程において、第1電極20の幅W20の精度を高めることができる。なお、第1電極20の幅W20とは、互いに反対方向を向く第2面22b間の距離である。第1電極20の幅W20は、MEMS振動子の周波数特性に影響を与えるため、MEMS振動子100の製造方法によれば、周波数特性のばらつきが少ないMEMS振動子を製造することができる。
【0083】
ここで、第1半導体層2をパターニングする工程において、第1電極の側面が傾斜面であった場合、エッチング量が変動すると第1電極の幅も変動してしまう。MEMS振動子100の製造方法によれば、エッチング量が変動した場合、第1角部25aの高さL1(図3参照)は変動するが、第1電極20の幅W20は変動させないことができる。したがって、MEMS振動子100の製造方法によれば、第1電極20の幅W20の精度を高めることができる。
【0084】
1.3. 第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法の変形例
次に、第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法の変形例について、図面を参照しながら説明する。以下、上述した図4〜9に示した第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程と異なる点について説明し、同様の点についてはその説明を省略する。
【0085】
(1)まず、第1変形例について説明する。図12および図13は、第1変形例に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0086】
上述した第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造方法において、第1電極20を形成する工程は、図12に示すように、第1半導体層2を第1ガスを用いてドライエッチングして、第1面22aを形成する第1ドライエッチング工程と、図13に示すように、第1半導体層2を第1ガスとは異なる第2ガスを用いてドライエッチングして、第2面22bを形成する第2ドライエッチング工程と、を有する工程であってもよい。
【0087】
本変形例に係る第1電極20を形成する工程は、まず、図12に示すように、第1半導体層2を、第1ガスを用いてドライエッチングして、第1面22aを形成する(第1ドライエッチング工程)。第1ガスは、例えば、上述したノンドープポリシリコン用ガスである。具体的には、第1ガスは、例えば、塩素と六フッ化硫黄の混合ガスである。第1半導体層2は、ドープポリシリコンであるため、第1ガスを用いることにより、サイドエッチングが進む。これにより、第1半導体層2には、図12に示すように、基板10の上面11に対して傾斜した第1面22aが形成される。
【0088】
次に、図13に示すように、第1半導体層2を、第2ガスを用いてドライエッチングして、第2面22bを形成する(第2ドライエッチング工程)。第2ガスは、例えば、上述したドープポリシリコン用ガスである。具体的には、第2ガスは、例えば、塩素、臭化水素、および酸素の混合ガスである。第1半導体層2は、ドープポリシリコンであるため、第2ガスを用いることにより、図13に示すように、第1半導体層2には、基板10の上面11に対して垂直な第2面22bが形成される。
【0089】
以上の工程により、第1電極20を形成することができる。
【0090】
本変形例によれば、ドライエッチングに用いるガスを切り替えることにより、1つのマスク層Mで、第1面22aおよび第2面22bを有する第1電極20の側面22を、形成することができる。
【0091】
本変形例によれば、上述した第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法と同様に、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性を容易に管理することができる。
【0092】
(2)次に、第2変形例について説明する。図14および図15は、第2変形例に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0093】
上述した第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造方法において、第1電極20を形成する工程は、第1半導体層2の上面側の不純物濃度を、第1半導体層2の下面側の不純物濃度より高くなるように、第1半導体層2に不純物を注入する工程と、第1半導体層2の上方にマスク層Mを形成する工程と、マスク層Mをマスクとして、第1半導体層2をドライエッチングする工程と、を有する工程であってもよい。なお、本変形例では、上述した第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法で示した第1半導体層2に不純物を注入する工程は行わない。
【0094】
本変形例に係る第1電極20を形成する工程は、まず、図14に示すように、第1半導体層2の上面側の不純物濃度を、第1半導体層2の下面側の不純物濃度より高くなるように、第1半導体層2に不純物を注入する。これにより、第1半導体層2の上面側に不純物濃度の高い領域2aが形成され、第2半導体層2の下面側に、領域2aと比べて、不純物濃度の低い領域2bが形成される。
【0095】
次に、図15に示すように、第1半導体層2上にマスク層Mを形成する。マスク層Mは、例えば、レジストをスピンコーターや吹き付け等によって塗布した後、露光、現像することによって形成される。
【0096】
次に、マスク層Mをマスクとして、第1半導体層2をドライエッチングする。第1半導体層2は、例えば、ノンドープポリシリコン用ガスを用いて行う。これにより、第1半導体層2の上面側の領域2aでは、サイドエッチングが進み、基板10の上面11に対して傾斜した第1面22aが形成される。また、第1半導体層2の下面側の領域2bでは、基板10の上面11に対して垂直な第2面22bが形成される。
【0097】
以上の工程により、第1電極20を形成することができる。
【0098】
本変形例によれば、第1半導体層2の上面側の不純物濃度を、第1半導体層2の下面側の不純物濃度より高くなるように、第1半導体層2に不純物を注入することにより、例えば、マスク層を2回成膜したり、エッチングに用いるガスを切り換えたりすることなく、第1面22aおよび第2面22bを有する第1電極20の側面22を、容易に形成することができる。
【0099】
本変形例によれば、上述した第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法と同様に、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性を容易に管理することができる。
【0100】
(3)次に、第3変形例について説明する。図16〜図18は、第3変形例に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0101】
上述した第1実施形態に係るMEMS振動子100の製造方法において、第1電極20を形成する工程は、第1半導体層2の上方に酸化シリコン層8を成膜する工程と、酸化シリコン層8の上方にマスク層Mを形成する工程と、マスク層Mをマスクとして、酸化シリコン層8の幅W8がマスク層Mの幅WMよりも小さくなるように、酸化シリコン層8をエッチングする工程と、マスク層Mおよび酸化シリコン層8をマスクとして、第1半導体層2をエッチングする工程と、を有していてもよい。
【0102】
本変形例に係る第1電極20を形成する工程は、まず、図16に示すように、第1半導体層2上に酸化シリコン層8を成膜する。成膜は、例えば、CVD法、スパッタ法により行われる。
【0103】
次に、酸化シリコン層8上にマスク層Mを形成する。マスク層Mは、例えば、レジストをスピンコーターや吹き付け等によって塗布した後、露光、現像することによって形成される。
【0104】
次に、図17に示すように、マスク層Mをマスクとして、酸化シリコン層8の幅W8がマスク層Mの幅WMよりも小さくなるようにエッチングする。酸化シリコン層8を、サイドエッチングが進むようにエッチングすることにより、酸化シリコン層8の幅W8をマスク層Mの幅WMよりも小さくすることができる。これにより、平面視において、酸化シリコン層8がマスク層Mの内側に位置し、マスク層Mと第1半導体層2との間に間隙を設けることができる。
【0105】
次に、図18に示すように、マスク層Mおよび酸化シリコン層8をマスクとして、第1半導体層2をエッチングする。第1半導体層2のエッチングは、例えば、ドライエッチングにより行われる。これにより、マスク層Mと第1半導体層2との間の間隙に積極的にガスが供給され、第1半導体層2は間隙に隣接する領域からエッチングされる(マイクロローディング効果)。したがって、図18に示すように、第1面22aおよび第2面22bが形成される。なお、第2面22bは、例えば、第1面22aを形成した後、異方性を高めたドライエッチングを行うことにより形成してもよい。
【0106】
以上の工程により、第1電極20を形成することができる。
【0107】
本変形例によれば、上述した第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法と同様に、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性を容易に管理することができる。
【0108】
なお、ここでは、酸化シリコン層8をマスクとして用いた例について説明したが、酸化シリコン層に限定されず、その他の材質の層を用いてもよい。
【0109】
(4)次に、第4変形例について説明する。図19および図20は、第4変形例に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0110】
上述したMEMS振動子100の製造方法において、第1電極20を形成する工程は、第1半導体層2の上方に第1マスク層M1を形成する工程と、第1マスク層M1をマスクとして、第1半導体層2をパターニングして第1面22aを形成する工程と、第1面22aが形成された第1半導体層2上に第2マスク層M2を形成する工程と、第2マスク層M2をマスクとして、第1面22aが形成された第1半導体層2をパターニングして、第2面22bを形成する工程と、を有していてもよい。
【0111】
本変形例に係る第1電極20を形成する工程は、まず、図19に示すように、第1半導体層2上に第1マスク層M1を形成する。第1マスク層M1は、例えば、レジストをスピンコーター、吹き付け等によって塗布した後、露光、現像することによって形成される。第1マスク層M1の材質は、例えば、上述したマスク層Mと同じである。
【0112】
次に、第1マスク層M1をマスクとして、第1半導体層2をパターニングする。第1半導体層2のパターニングは、例えば、ノンドープポリシリコン用ガスを用いたドライエッチングにより行われる。これにより、第1半導体層2では、サイドエッチングが進み、基板10の上面11に対して傾斜した第1面22aが形成される。その後、第1マスク層M1を除去する。
【0113】
次に、図20に示すように、第1面22aが形成された第1半導体層2上に第2マスク層M2を形成する。第2マスク層M2は、例えば、レジストをスピンコーター、吹き付け等によって塗布した後、露光、現像することによって形成される。第2マスク層M2の材質は、例えば、上述したマスク層Mと同じである。
【0114】
次に、第2マスク層M2をマスクとして、第1半導体層2をパターニングする。第1半導体層2のパターニングは、例えば、ドープポリシリコン用ガスを用いたドライエッチングにより行われる。これにより、基板10の上面11に対して垂直な第2面22bが形成される。
【0115】
以上の工程により、第1電極20を形成することができる。
【0116】
本変形例では、上述した第1実施形態に係るMEMS振動子の製造方法と同様に、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性を容易に管理することができる。
【0117】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図21は、第2実施形態に係るMEMS振動子200を模式的に示す平面図である。図22は、MEMS振動子200を模式的に示す断面図である。なお、図22は、図21のXXII−XXII線断面図である。以下、第2実施形態に係るMEMS振動子200において、MEMS振動子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0118】
上述した第1実施形態に係るMEMS振動子100では、図1および図2に示すように、第2電極30は、1つの第1電極20に対して2つ設けられていた。
【0119】
これに対して、MEMS振動子200では、図21および図22に示すように、第2電極30は、1つの第1電極20に対して1つ設けられている。
【0120】
第2実施形態に係るMEMS振動子200によれば、MEMS振動子100と同様の作用効果を奏することができる。
【0121】
なお、MEMS振動子200の製造方法は、上述したMEMS振動子100の製造方法と、1つの第1電極20に対して1つの第2電極30を設ける点を除いて同様であり、その説明を省略する。
【0122】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図23は、第3実施形態に係るMEMS振動子300を模式的に示す断面図である。図24は、MEMS振動子300の第1電極20の一部を拡大して示す断面図である。なお、図24では、便宜上、第2電極30の図示を省略している。以下、第3実施形態に係るMEMS振動子300において、MEMS振動子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0123】
上述したMEMS振動子100の例では、図2および図3に示すように、第1電極20の第1面22aは、平面であった。
【0124】
これに対して、MEMS振動子300では、第1電極20の第1面22aは、曲面である。図示の例では、第1面22aは、凹面であるが、凸面であってもよい。例えば、第1面22aは、第1半導体層2をエッチングする工程において、ドライエッチングに用いるガスの種類やその他の条件を制御することにより、任意の形状の面とすることができる。
【0125】
第1電極20の上面21と第1面22aとがなす第3角部25bと、第1面22aと第2面22bとがなす第1角部25aと、を結んだ線を直線Lαとすると、第1面22aが曲面である場合、基板10の上面11に対する第1面22aの角度αは、例えば、基板10の上面11と直線Lαとがなす角度である。
【0126】
第3実施形態に係るMEMS振動子300によれば、MEMS振動子100と同様の作用効果を奏することができる。
【0127】
なお、MEMS振動子300の製造方法は、上述したMEMS振動子100の製造方法と、同様であり、その説明を省略する。
【0128】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図25は、第4実施形態に係る発振器400を示す回路図である。
【0129】
発振器400は、図25に示すように、本発明に係るMEMS振動子(例えばMEMS振動子300)と、反転増幅回路410と、を含んで構成されている。
【0130】
MEMS振動子300は、第1電極20に電気的に接続された第1端子300aと第2電極30に電気的に接続された第2端子300bとを有している。MEMS振動子300の第1端子300aは、反転増幅回路410の入力端子410aと少なくとも交流的に接続する。MEMS振動子300の第2端子300bは、反転増幅回路410の出力端子410bと少なくとも交流的に接続する。
【0131】
図示の例では、反転増幅回路410は、1つのインバーターから構成されているが、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。
【0132】
発振器400は、反転増幅回路410に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図25に示す例では、反転増幅回路410の入力端子と出力端子とが抵抗420を介して接続されている。
【0133】
発振器400は、反転増幅回路410の入力端子410aと基準電位(接地電位)との間に接続された第1キャパシター430と、反転増幅回路410の出力端子410bと基準電位(接地電位)との間に接続された第2キャパシター432と、を含んで構成されている。これにより、MEMS振動子100とキャパシター430,432とで共振回路を構成する発振回路とすることができる。発振器400は、この発振回路で得られた発振信号fを出力する。
【0134】
発振器400を構成するトランジスターやキャパシター等の素子(図示せず)は、例えば、基板10上に(図1参照)形成されていてもよい。これにより、MEMS振動子300と反増幅回路410をモノリシックに形成することができる。
【0135】
発振器400を構成するトランジスター等の素子を基板10上に形成する場合、発振器400を構成するトランジスター等の素子を、上述したMEMS振動子100を形成する工程と同一の工程で形成してもよい。具体的には、被覆層4を形成する工程において(図7参照)、トランジスターのゲート絶縁層を形成してもよい。さらに、第2電極30を形成する工程において(図8および図9参照)、トランジスターのゲート電極を形成してもよい。このように、MEMS振動子300の製造工程と発振器400を構成するトランジスター等の素子の製造工程を共通化することで、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0136】
発振器400によれば、信頼性が高く、周波数特性の管理が容易なMEMS振動子100を含む。そのため、信頼性を高めることができ、かつ周波数特性の管理を容易化することができる。
【0137】
発振器400は、図26に示すように、さらに、分周回路440を有していてもよい。分周回路440は、発振回路の出力信号Voutを分周し、発振信号fを出力する。これにより、発振器400は、例えば、出力信号Voutの周波数よりも低い周波数の出力信号を得ることができる。
【0138】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0139】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0140】
M マスク層、M1 第1マスク層、M2 第2マスク層、2 第1半導体層、
2a,2b 領域、4 被覆層、6 第2半導体層、7 エッチング残り、
8 酸化シリコン層、10 基板、11 上面、12 支持基板、14 第1下地層、
16 第2下地層、20 第1電極、21 上面、22 側面、22a 第1面、
22b 第2面、25a 第1角部、25b 第3角部、30 第2電極、32 梁部、
32a 第1部分、32b 第2部分、33a,33b,33c 内面、
35a 第2角部、35b 第4角部、100,200,300 MEMS振動子、
300a 第1端子、300b 第2端子、400 発振器、410 反転増幅回路、
410a 入力端子、410b 出力端子、412,414,416 インバーター、
420,422,424 抵抗、430 第1キャパシター、
432 第2キャパシター、440 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記梁部を支持する支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極の側面は、
前記第1電極の上面に接続された第1面と、
前記第1面および前記基板の上面に接続された第2面と、
を有し、
前記第1面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記基板の上面に対する前記第1面の角度は、第1角度であり、
前記基板の上面に対する前記第2面の角度は、前記第1角度よりも大きい第2角度である、MEMS振動子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1電極の側面には、前記第1面と前記第2面とがなす第1角部が形成され、
前記第2電極の上面には、前記第1角部の形状が転写された第2角部が形成されている、MEMS振動子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1角度は、5°以上45°以下である、MEMS振動子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第2角度は、80°以上90°以下である、MEMS振動子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む発振器。
【請求項6】
基板の上方に第1半導体層を成膜する工程と、
前記第1半導体層をパターニングして、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆う被覆層を形成する工程と、
前記被覆層の上方に第2半導体層を成膜する工程と、
前記第2半導体層をパターニングして、前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記梁部を支持する支持部を有する第2電極を形成する工程と、
前記被覆層を除去する工程と、
を含み、
前記第1電極を形成する工程において、
前記第1電極の側面を、前記第1電極の上面に接続された第1面と、前記第1面および前記基板の上面に接続された第2面と、を有するように形成し、
前記第1面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記基板の上面に対する前記第1面の角度は、第1角度であり、
前記基板の上面に対する前記第2面の角度は、前記第1角度よりも大きい第2角度である、MEMS振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層の上方にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第1半導体層をドライエッチングする工程と、
を含み、
前記第1半導体層をドライエッチングする工程は、塩素、六フッ化硫黄、臭化水素、および酸素、を含むガスを用いて行われる、MEMS振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層を、第1ガスを用いてドライエッチングして、前記第1面を形成する第1ドライエッチング工程と、
前記第1半導体層を、前記第1ガスとは異なる第2ガスを用いてドライエッチングして、前記第2面を形成する第2ドライエッチング工程と、
を有する、MEMS振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項6において、
前記第1電極を形成する工程は、
前記第1半導体層の上面側の不純物濃度を、前記第1半導体層の下面側の不純物濃度より高くなるように、前記第1半導体層に不純物を注入する工程と、
前記第1半導体層の上方にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして、前記第1半導体層をドライエッチングする工程と、
を有する、MEMS振動子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−34156(P2013−34156A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170094(P2011−170094)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】