説明

MEMS振動子およびその製造方法、並びに発振器

【課題】ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制できるMEMS振動子を提供する。
【解決手段】本発明に係るMEMS振動子100は、ねじり振動する可動電極30と、可動電極30と間隙を介して形成された第1固定電極40および第2固定電極50と、を含み、可動電極30は、第1面32と、第1面32に接続され互いに反対を向く第2面34および第3面36と、を有し、第1固定電極40は、第1面32と対向する第4面42と、第2面34と対向する第5面44と、を有し、第2固定電極50は、第1面32と対向する第6面52と、第3面36と対向する第7面54と、を有し、第2面34と第5面44との間隔D2は、第1面32と第4面42との間隔D1よりも大きく、第3面36と第7面54との間隔D4は、第1面32と第6面52との間隔D3よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS振動子およびその製造方法、並びに発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小構造体形成技術の1つで、例えば、ミクロンオーダーの微細な電子機械システムを作る技術やその製品のことをいう。
【0003】
MEMS技術を用いて作製されたMEMS振動子は、例えば、交流電圧に基づく静電力により振動体の機械的振動を励起することができ、安定的に共振することで発振器として用いられることができる。
【0004】
例えば特許文献1には、振動子が2つの固定電極の間に配置され、振動子がねじり振動することが開示されている。例えば特許文献2には、共振子が2つの電極の間に配置され、共振子が水平方向(X方向)に伸縮して振動することが開示されている。このように、MEMS振動子は、所定のモードで振動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−206140号公報
【特許文献2】特開2005−303706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ねじり振動可能な可動電極を備えたMEMS振動子において、ねじり振動の他に別の振動モードが励振されると、Q値が低下してしまうことがある。また、周波数変動が生じることがある。したがって、ねじり振動可能な可動電極を備えたMEMS振動子では、ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制することが重要である。
【0007】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制できるMEMS振動子およびその製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記のMEMS振動子を有する発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るMEMS振動子は、
ねじり振動する可動電極と、
前記可動電極と間隙を介して形成された第1固定電極および第2固定電極と、
を含み、
前記可動電極は、
第1面と、
前記第1面に接続された第2面と、
前記第1面に接続され、前記第2面の反対側の第3面と、
を有し、
前記第1固定電極は、
前記第1面と対向する第4面と、前記第2面と対向する第5面と、を有し、
前記第2固定電極は、
前記第1面と対向する第6面と、前記第3面と対向する第7面と、を有し、
前記第2面と前記第5面との間隔は、前記第1面と前記第4面との間隔よりも大きく、
前記第3面と前記第7面との間隔は、前記第1面と前記第6面との間隔よりも大きい。
【0009】
このようなMEMS振動子によれば、第2面と第5面との間に生じる静電力は、第1面と第4面との間に生じる静電力よりも小さく、第3面と第7面との間に生じる静電力は、第1面と第6面との間に生じる静電力よりも小さい。したがって、このようなMEMS振動子では、可動電極に、ねじり振動と別モードの振動(第2面と第5面との間および第3面と第7面との間の静電力に起因する振動)が励振されることを抑制できる。
【0010】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第5面および前記第7面は、凹曲面であってもよい。
【0011】
このようなMEMS振動子によれば、ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制できる。
【0012】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第2面および前記第3面は、凹曲面であってもよい。
【0013】
このようなMEMS振動子によれば、ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制できる。
【0014】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記可動電極は、
前記第1面と前記第4面との間の静電力、および前記第1面と前記第6面との間の静電力によって、ねじり振動してもよい。
【0015】
このようなMEMS振動子によれば、ねじり振動と別の振動モードが励振されることを抑制できる。
【0016】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法は、
基板の上方に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上方に可動電極を形成する工程と、
前記可動電極の側方および上方に第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の側方および上方に、第1固定電極および第2固定電極を形成する工程と、
前記第1絶縁層の前記基板と前記可動電極との間の部分、および前記第2絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第2絶縁層を形成する工程では、
前記可動電極の上方に第1寸法の厚みを有し、前記可動電極の側方に前記第1寸法よりも大きい第2寸法の幅を有する前記第2絶縁層を形成する。
【0017】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第2面と第5面との間に生じる静電力を、第1面と第4面との間に生じる静電力よりも小さく、さらに、第3面と第7面との間に生じる静電力を、第1面と第6面との間に生じる静電力よりも小さくすることができる。したがって、可動電極に、ねじり振動と別モードの振動(第2面と第5面との間および第3面と第7面との間の静電力に起因する振動)が励振されることを抑制できる。
【0018】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0019】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法は、
基板の上方に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上方に可動電極を形成する工程と、
前記可動電極の側方に第2絶縁層を形成する工程と、
前記可動電極の上方に第3絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の側方および前記第3絶縁層の上方に、第1固定電極および第2固定電極を形成する工程と、
前記第1絶縁層の前記基板と前記可動電極とに挟まれた部分、前記第2絶縁層、および第3絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第2絶縁層および前記第3絶縁層を形成する工程では、
前記可動電極の上方に第1寸法の厚みを有する前記第3絶縁層を形成し、前記可動電極の側方に前記第1寸法よりも大きい第2寸法の幅を有する前記第2絶縁層を形成する。
【0020】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、ねじり振動と別モードの振動が励振されることを抑制できるMEMS振動子を形成することができる。
【0021】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記可動電極を形成する工程は、
前記第1絶縁層の上方に半導体層を形成する工程と、
前記半導体層に不純物を注入する工程と、
不純物が注入された前記半導体層をドライエッチングする工程と、
を含み、
前記不純物を注入する工程は、
前記半導体層の上面を含む第1部分の不純物濃度、および前記半導体層の下面を含む第2部分の不純物濃度よりも、前記第1部分と前記第2部分とに挟まれた前記半導体層の第3部分の不純物濃度の方が高くなるように行われてもよい。
【0022】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、ねじり振動と別モードの振動が励振されることを抑制できるMEMS振動子を形成することができる。
【0023】
本発明に係る発振器は、
本発明に係るMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の、前記可動電極、前記第1固定電極、および前記第2固定電極と電気的に接続された回路部と、
を含む。
【0024】
このような発振器によれば、安定して発振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図3】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図4】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図5】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図6】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図7】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図8】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】第2の実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図11】第2の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】第2の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】第2の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】第2の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図15】第3の実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図16】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図17】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図18】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図19】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図20】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図21】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図22】第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図23】第4の実施形態に係る発振器を示す回路図。
【図24】第4の実施形態の変形例に係る発振器を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
1. 第1の実施形態
1.1. MEMS振動子
まず、第1の実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す断面図である。図2は、第1の実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI−I線断面図である。また、便宜上、図1〜図3および後述する図4〜図22では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。
【0028】
MEMS振動子100は、図1および図2に示すように、可動電極30と、第1固定電極40と、第2固定電極50と、を含む。さらに、MEMS振動子100は、基板10と、絶縁層20と、配線層60,62,64と、パッシベーション層66と、層間絶縁層70を有することができる。なお、図2では、便宜上、配線層62,64,66、パッシベーション層66、および層間絶縁層70の図示を省略している。
【0029】
基板10としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いる。基板10として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0030】
絶縁層20は、基板10上に形成されている。絶縁層20としては、例えば、LOCOS(local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層、トレンチ絶縁層を用いる。絶縁層20によって、可動電極30および固定電極40,50は、他の素子(例えばトランジスター、図示せず)と電気的に分離されていてもよい。
【0031】
可動電極30は、基板10の上方に基板10と間隙を介して形成されている。可動電極30の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、矩形である。可動電極30は、図2に示すように、支持部38,39によって支持されている。支持部38,39は、可動電極30と一体的に形成されており、可動電極30から延出して絶縁層20上に固定されている。より具体的には、支持部38は、可動電極30から+Y方向に延出し、支持部39は、可動電極30から−Y方向に延出している。支持部38,39によって、可動電極30は、基板10と間隙を介して配置されることができる。図示の例では、支持部38,39のX軸方向の長さは、可動電極30のX軸方向の長さよりも小さい。
【0032】
可動電極30は、図1に示すように、例えば板状(より具体的には直方体)であり、第1面32と、第2面34と、第3面36と、を有している。第2面34は、第1面32に接続された面である。第3面36は、第1面32に接続され、第2面34の反対側の面である。第1面32は、可動電極30の上面ともいえ、第2面34および第3面36は、可動電極30の側面ともいえる。図示の例では、第1面32、第2面34、および第3面36は、平坦な面であり、第1面32は、XY平面と平行であり、第2面34および第3面36は、YZ平面と平行である。
【0033】
第1固定電極40は、可動電極30と間隙を介して形成されている。第1固定電極40の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、矩形である。第1固定電極40は、図2に示すように、支持部48によって支持されている。支持部48は、第1固定電極40と一体的に形成されており、可動電極40から延出して(例えば−X方向に延出して)絶縁層20上に固定されている。図示の例では、支持部48のY軸方向の長さは、第1固定電極40のY軸方向の長さよりも小さい。
【0034】
第1固定電極40は、図1に示すように、可動電極30の第1面32と対向する第4面42と、可動電極30の第2面34と対向する第5面44と、を有している。第4面42は、第1面32の上方に配置され、第5面44は、第2面34の側方に配置されている。図示の例では、第5面44は、平坦な面であり、第2面34と平行な面である。
【0035】
図1に示すように、第1面32と第4面42との間隔をD1とし、第2面34と第5面44との間隔をD2とすると、少なくとも可動電極30を振動させるための電圧を印加していない状態において、間隔D2は間隔D1よりも大きい。例えば、間隔D1は、数十nm程度であり、間隔D2は、数百nm程度である。なお、ここでは、間隔D1とは、第1面32と第4面42との間の最短距離とし、間隔D2とは、第2面34と第5面44との間の最短距離とする。
【0036】
第2固定電極50は、可動電極30と間隙を介して形成されている。第2固定電極50は、第1固定電極40と離間しており、図示の例では、第1固定電極40と対向配置されている。第2固定電極50の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、矩形である。第2固定電極50は、図2に示すように、支持部58によって支持されている。支持部58は、第2固定電極50と一体的に形成されており、可動電極50から延出して(例えば+X方向に延出して)絶縁層20上に固定されている。図示の例では、支持部58のY軸方向の長さは、第2固定電極50のY軸方向の長さよりも小さい。
【0037】
第2固定電極50は、図1に示すように、可動電極30の第1面32と対向する第6面52と、可動電極30の第3面36と対向する第7面54と、を有している。第6面52は、第1面32の上方に配置され、第7面54は、第3面36の側方に配置されている。図示の例では、第7面54は、平坦な面であり、第3面36と平行な面である。
【0038】
図1に示すように、第1面32と第6面52との間隔をD3とし、第3面36と第7面54との間隔をD4とすると、少なくとも可動電極30を振動させるための電圧を印加していない状態において、間隔D4は間隔D3よりも大きい。例えば、間隔D3は、数十nm程度であり、間隔D4は、数百nm程度である。なお、ここでは、間隔D3とは、第1面32と第6面52との間の最短距離とし、間隔D4は、第3面36と第7面54との間の最短距離とする。また、間隔D3は、間隔D1と同じ寸法であってもよく、間隔D4は、間隔D2と同じ寸法であってもよい。
【0039】
可動電極30、固定電極40,50、および支持部38,39,48,58の材質としては、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンが挙げられる。
【0040】
可動電極30と固定電極40,50との間に交流電圧を印加することにより、可動電極30と固定電極40,50との間に静電力が生じ、可動電極30は、ねじり振動する。図1に示す破線は、ねじり振動で励振された状態の可動電極30を示している。
【0041】
より具体的には、可動電極30と第1固定電極40との間に、第1位相の交流電圧を印加し、可動電極30と第2固定電極50との間に、第1位相と逆位相である第2位相の交流電圧を印加する。これにより、第1面31と第4面42との間、および第1面31と第6面52との間に静電力が生じ、可動電極30には、図1に示すように可動電極30の中心Oを通る軸(Y軸に平行な軸)を回転軸とする回転モーメントが生じる。そして、可動電極30は、間隔D1が間隔D3よりも大きい第1状態、および間隔D3が間隔D1よりも大きい第2状態を有することができ、第1状態と第2状態とを交互に繰り返す。このように、可動電極30は、第1面31と第4面42との間の静電力、および第1面31と第6面25との間の静電力によって、ねじり振動することができる。
【0042】
層間絶縁層70は、支持部48および58の上方に形成されている。層間絶縁層70としては、例えば、酸化シリコン層を用いる。
【0043】
配線層60は、層間絶縁層70上に形成されている。
【0044】
配線層62は、配線層60上に形成され、さらに、間隙を介して可動電極30および固定電極40,50の上方に配置されている。配線62の、可動電極30および固定電極40,50の上方に位置する部分には、複数の貫通孔63が形成されている。貫通孔63の数は、特に限定されない。
【0045】
配線層64は、配線層62上に形成されている。配線層64は、貫通孔63を塞いで配置されている。
【0046】
配線層60,62,64としては、例えば、アルミニウム層、銅層、チタン層、またはこれらの積層体を用いる。
【0047】
図示の例では、基板10、絶縁層20、固定電極40,50、配線層60,62,64、および層間絶縁層70によって、空洞部1が形成されている。可動電極30は、空洞部1内に配置され、空洞部1内で動作(振動)することができる。空洞部1内は、例えば、減圧状態に保たれ、これにより可動電極30の動作精度の向上を図ることができる。
【0048】
配線層60,62,64には、一定の電位(例えば接地電位)が与えられることが望ましい。これにより、配線層60,62,64を、電磁シールドとして機能させることができる。そのため、可動電極30を外部と電気的に遮蔽することができ、可動電極30は、より安定した特性を有することができる。
【0049】
パッシベーション層66は、配線層62上に形成されている。パッシベーション層66としては、例えば、窒化シリコン層を用いる。
【0050】
なお、図示の例では、MEMS振動子100は、3層の配線層60,62,64を有しているが、空洞部1を形成することができれば、その数は特に限定されず、適宜変更可能である。
【0051】
第1の実施形態に係るMEMS振動子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0052】
MEMS振動子100によれば、可動電極30の第2面34と第1固定電極40の第5面44との間隔D2は、可動電極30の第1面32と第1固定電極40の第4面42との間隔D1よりも大きい。そのため、第2面34と第5面44との間に生じる静電力は、第1面32と第4面42との間に生じる静電力よりも小さい。さらに、可動電極30の第3面36と第2固定電極の第7面54との間隔D4は、可動電極30の第1面32と第2固定電極50第6面52との間隔D3よりも大きい。そのため、第3面36と第7面54との間に生じる静電力は、第1面32と第6面52との間に生じる静電力よりも小さい。したがって、MEMS振動子100では、可動電極30に、ねじり振動と別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動(例えばX軸方向に変位する振動))が励振されることを抑制でき、中心Oを通る軸を回転軸とする回転モーメントによって、安定してねじり振動することができる。その結果、MEMS振動子100は、高いQ値を有することができ、所望の周波数で振動することができる。
【0053】
例えば、間隔D2,D4が、それぞれ間隔D1,D3以下である場合は、第2面と第5面との間の静電力、および第3面と第7面との間の静電力が大きくなり、X軸方向に変位する振動が励振されることがある。すなわち、可動電極に、ねじり振動の他に、別の振動モードが励振され、Q値が低下することがある。
【0054】
1.2. MEMS振動子の製造方法
次に、第1の実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3〜図9は、第1の実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す図である。なお、図3〜図7では、図中の(a)に断面図を示し、図中の(b)に平面図を示している。図8および図9では、断面図を図示している。図3〜図9において、断面図は図1に対応し、平面図は図2に対応している。
【0055】
図3に示すように、基板10上に絶縁層20(第1絶縁層20)を形成する。絶縁層20は、例えば、LOCOS法、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成される。
【0056】
図4に示すように、絶縁層20上に、可動電極30を形成する。より具体的には、絶縁層20上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法などによって半導体層(例えば多結晶シリコン層、図示せず)を成膜する。次に、該半導体層に対して、導電性を付与するために所定の不純物(例えばボロン)を注入する。次に、不純物が注入された該半導体層をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングする。以上により、可動電極30を形成することができる。さらに、本工程において、絶縁層20上に、可動電極30と一体的に支持部38,39を形成することができる。なお、不純物の注入は、半導体層をパターニングした後に行ってもよい。
【0057】
図5に示すように、可動電極30を覆うように、絶縁層21を成膜する。絶縁層21は、例えば、CVD法、スパッタ法により成膜される。絶縁層21は、可動電極30上に、第1寸法L1の厚み(Z軸方向の長さ)を有することできる。
【0058】
図6に示すように、絶縁層21をパターニングして、可動電極30の上および側方に絶縁層22(第2絶縁層22)を形成する。より具体的には、絶縁層21を、可動電極30の側方に第2寸法L2の幅(X軸方向の長さ)を有するようにパターニングする。第2寸法L2は、第1寸法L1より大きい。例えば、第2寸法L2を、パターニングされることにより露出した絶縁層22の露出面22aと、側面34,36と、の間の距離とすることができる。以上により、可動電極30上に第1寸法L1の厚みを有し、可動電極30の側方に第2寸法L2の幅を有する絶縁層22を形成することができる。第1寸法L1によって、間隔D1,D3(図1参照)が規定され、第2寸法L2によって、間隔D2,D4(図1参照)が規定される。なお、便宜上、図2では、絶縁層22の図示を省略している。
【0059】
図7に示すように、絶縁層22の上および側方に、第1固定電極40および第2固定電極50を形成する。より具体的には、絶縁層22を覆うように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法などによって半導体層(例えば多結晶シリコン層、図示せず)を成膜する。次に、該半導体層に対して、導電性を付与するために所定の不純物(例えばボロン)を注入する。次に、不純物が注入された該半導体層をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングする。以上により、固定電極40,50を形成することができる。さらに、本工程において、絶縁層20上に、第1固定電極40と一体的に支持部48を形成することができ、また、絶縁層20上に、第2固定電極50と一体的に支持部58を形成することができる。なお、不純物の注入は、半導体層をパターニングした後に行ってもよい。
【0060】
なお、図示はしないが、基板10にトランジスターを形成する場合、固定電極40,50を形成する工程において、トランジスターのゲート電極を形成してもよい。これにより、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0061】
図8に示すように、可動電極30および固定電極40,50を覆うように、層間絶縁層70を形成する。次に、層間絶縁層70上に配線層60を形成する。次に、層間絶縁層70上に層間絶縁層74を形成する。次に、層間絶縁層74をパターニングして、配線層60上にコンタクトホール76を形成する。そして、コンタクトホール76内および層間絶縁層74上に配線層62を形成する。
【0062】
層間絶縁層70,74は、例えば、CVD法や塗布(スピンコート)法などで形成することができる。層間絶縁層70,74の各々を形成した後に、層間絶縁層70,74の各々の表面を平坦化する処理を行ってもよい。配線層60,62は、例えば、スパッタ法、めっき法により形成される。
【0063】
図9に示すように、配線層62をパターニングして、配線層62の、可動電極30および固定電極40,50の上方に位置する部分に、貫通孔63を形成する。これにより、層間絶縁層74の一部が露出される。次に、配線層62上に、CVD法やスパッタ法などによりパッシベーション層66を形成する。パッシベーション層66は、貫通孔63を塞がないように形成される。
【0064】
図1に示すように、貫通孔63を通して、層間絶縁層70,74、絶縁層22、および絶縁層20の少なくとも可動電極30下の部分(可動電極30と基板10との間の部分)をエッチングすることにより除去して、空洞部1を形成する(リリース工程)。これにより、可動電極30および固定電極40,50が露出される。リリース工程は、例えば、フッ化水素酸や緩衝フッ酸(フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを用いたウェットエッチングによって行われる。なお、リリース工程では、配線層60の下に層間絶縁層70が残るように行われる。
【0065】
次に、配線層62およびパッシベーション層66上に、貫通孔63を塞ぐように、配線層64を形成する。配線層64は、例えば、スパッタ法、めっき法により形成される。
【0066】
以上の工程により、第1の実施形態に係るMEMS振動子100を製造することができる。
【0067】
MEMS振動子100の製造方法によれば、可動電極30上に第1寸法L1の厚みを有し、可動電極30の側方に第1寸法L1よりも大きい第2寸法L2の幅を有する絶縁層22を形成することができる。これにより、第2寸法L2によって規定される間隔D2,D4を、第1寸法L1によって記載される間隔D1,D3よりも大きくすることができる。そのため、第2面34と第5面44との間に生じる静電力を、第1面32と第4面42との間に生じる静電力よりも小さく、さらに、第3面36と第7面54との間に生じる静電力を、第1面32と第6面52との間に生じる静電力よりも小さくすることができる。したがって、可動電極30に、ねじり振動と別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動)が励振されることを抑制でき、安定してねじり振動するMEMS振動子100を形成することができる。特に、MEMS振動子100の製造方法では、絶縁層22の第1寸法L1を、パターニングする際のマスク層(フォトレジスト)の形状で決定することができ、間隔D2,D4を任意に設定することができる。
【0068】
2. 第2の実施形態
2.1. MEMS振動子
次に、第2の実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2の実施形態に係るMEMS振動子200を模式的に示す断面図である。以下、MEMS振動子200において、上述したMEMS振動子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0069】
MEMS振動子100では、図1に示すように、第1固定電極40の第5面44および第2固定電極50の第7面54は、平坦な面であり、可動電極30の第2面34および第3面36と平行な面であった。これに対し、MEMS振動子200では、第1固定電極40の第5面44および第2固定電極50の第7面54は、凹曲面である。
【0070】
ここで、間隔D2とは、第2面34と第5面44との間の最短距離とし、図示の例では、第1面32と第2面34との接続部から、X軸に沿って第5面44まで引いた線分Aの長さである。同様に、間隔D4とは、第3面36と第7面54との間の最短距離とし、図示の例では、第1面32と第3面36との接続部から、X軸に沿って第7面54まで引いた線分Bの長さである。
【0071】
MEMS振動子200によれば、MEMS振動子100と同様に、間隔D2は、間隔D1よりも大きく、間隔D4は、間隔D3よりも大きい。そのため、MEMS振動子200では、可動電極30に、ねじり振動と別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動(例えばX軸方向に変位する振動)が励振されることを抑制でき、安定してねじり振動することができる。
【0072】
MEMS振動子200によれば、第5面44および第7面54は、凹曲面であり、第2面34および第3面36と平行な場合に比べて(YZ平面と平行な面である場合に比べて)、可動電極30に、X軸方向に変位する振動が励振されることを、よりいっそう抑制できる。
【0073】
2.2. MEMS振動子の製造方法
次に、第2の実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図11〜図14は、第2の実施形態に係るMEMS振動子200の製造工程を模式的に示す断面図である。以下、MEMS振動子200の製造方法において、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0074】
図11に示すように、基板10上に絶縁層20(第1絶縁層20)を形成し、絶縁層20上に可動電極30を形成する。可動電極30を形成する工程において、絶縁層20上に可動電極を支持する支持部を、可動電極30と一体的に形成することができる。絶縁層20および可動電極30は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0075】
次に、可動電極30の側方に絶縁層24(第2絶縁層24)を形成する。絶縁層24は、絶縁層20上であって可動電極30の側面34,36に形成されている。より具体的には、絶縁層24は、可動電極30を覆うようにCVD法やスパッタ法などにより絶縁層(図示せず)を成膜し、側面34,36に該絶縁層が残るようにエッチングすることによって形成される。図示の例では、絶縁層24は、サイドウォール形状であり、絶縁層24をサイドウォール24ということもできる。絶縁層24としては、例えば、酸化シリコン層を用いる。
【0076】
図12に示すように、例えば可動電極30を熱酸化して、可動電極30上に絶縁層26(第3絶縁層26)を形成する。
【0077】
図12に示す状態において、絶縁層26は、可動電極30の上に、第1寸法L1の厚みを有している。絶縁層24は、可動電極30の側方に第2寸法L2の幅(X軸方向の長さ)を有している。第2寸法L2は、第1寸法L1より大きい。図示の例では、第2寸法L2は、例えば、図12に示すように断面視において、第1面32と第2面34との接続部から、X軸に沿って絶縁層24の外壁面25まで引いた線分の長さであり、また、第1面32と第3面36との接続部から、X軸に沿って絶縁層24の外壁面25まで引いた線分の長さである。第1寸法L1によって、間隔D1,D3(図10参照)が規定され、第2寸法L2によって、間隔D2,D4(図10参照)が規定される。
【0078】
なお、可動電極30の側方に絶縁層24(第2絶縁層24)を形成する工程と、可動電極30上に絶縁層26(第3絶縁層26)を形成する工程とは、先後を問わず、例えば、可動電極30を熱酸化して絶縁層26(第3絶縁層26)を形成した後に、サイドウォール形状の絶縁層24(第2絶縁層24)を形成してもよい。
【0079】
図13に示すように、絶縁層24の側方および絶縁層26上に、第1固定電極40および第2固定電極50を形成する。図示の例では、絶縁層24はサイドウォールの形状であるので、第1固定電極40の第5面44および第2固定電極50の第7面54は、絶縁層24の形状が転写されて、凹曲面となる。本工程において、絶縁層20上に、第1固定電極40と一体的に支持部48を形成することができ、また、絶縁層20上に、第2固定電極50と一体的に支持部58を形成することができる。固定電極40,50は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0080】
なお、図示はしないが、基板10にトランジスターを形成する場合、絶縁層26を形成する工程において、トランジスターのゲート酸化膜を形成してもよいし、固定電極40,50を形成する工程において、トランジスターのゲート電極を形成してもよい。これにより、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0081】
図14に示すように、可動電極30および固定電極40,50を覆うように、層間絶縁層70を形成する。そして、層間絶縁層70上に配線層60を形成する。次に、層間絶縁層70上に層間絶縁層74を形成し、層間絶縁層74にコンタクトホール76を形成する。そして、コンタクトホール76内および層間絶縁層74上に配線層62を形成する。次に、配線層62をパターニングして、貫通孔63を形成する。次に、配線層62上にパッシベーション層66を形成する。
【0082】
層間絶縁層70,74、配線層60,62、およびパッシベーション層66は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0083】
図10に示すように、貫通孔63を通して、層間絶縁層70,74、絶縁層24,26、および絶縁層20の少なくとも可動電極30下の部分(可動電極30と基板10との間の部分)をエッチングすることにより除去して、空洞部1を形成する(リリース工程)。これにより、可動電極30および固定電極40,50が露出される。リリース工程は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0084】
次に、貫通孔63を塞ぐように配線層64を形成する。配線層64は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0085】
以上の工程により、第2の実施形態に係るMEMS振動子200を製造することができる。
【0086】
MEMS振動子200の製造方法によれば、可動電極30上に第1寸法L1の厚みを有する絶縁層26を形成し、可動電極30の側方に第1寸法L1よりも大きい第2寸法L2の幅を有する絶縁層24を形成することができる。これにより、第2寸法L2によって規定される間隔D2,D4を、第1寸法L1によって記載される間隔D1,D3よりも大きくすることができる。そのため、第2面34と第5面44との間に生じる静電力を、第1面32と第4面42との間に生じる静電力よりも小さく、さらに、第3面36と第7面54との間に生じる静電力を、第1面32と第6面52との間に生じる静電力よりも小さくすることができる。したがって、可動電極30に、ねじり振動と別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動)が励振されることを抑制でき、安定してねじり振動するMEMS振動子200を形成することができる。特に、MEMS振動子200の製造方法では、絶縁層24をサイドウォールの形状とすることにより、第5面44および第7面54を、凹曲面とすることができる。
【0087】
3. 第3の実施形態
3.1. MEMS振動子
次に、第3の実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図15は、第3の実施形態に係るMEMS振動子300を模式的に示す断面図である。以下、MEMS振動子300において、上述したMEMS振動子100,200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0088】
MEMS振動子100では、図1に示すように、可動電極30の第2面34および第3面36、第1固定電極40の第5面44、および第2固定電極50の第7面54は、平坦な面であり、第2面34と第5面44とは平行であり、第3面36と第7面54とは平行であった。これに対し、MEMS振動子300では、MEMS振動子200と同様に、第1固定電極40の第5面44および第2固定電極50の第7面54は、凹曲面であり、さらに、可動電極30の第2面34および第3面36は、凹曲面である。
【0089】
MEMS振動子300では、可動電極30は、厚み方向に、導電性を付与するために注入された不純物の濃度分布を有する。これにより、第2面34および第3面36を、凹曲面とすることができる(詳細は後述)。
【0090】
MEMS振動子300によれば、MEMS振動子200と同様に、間隔D2は、間隔D1よりも大きく、間隔D4は、間隔D3よりも大きい。そのため、MEMS振動子300では、可動電極30に、ねじり振動とは別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動(例えばX軸方向に変位する振動))が励振されることを抑制でき、安定してねじり振動することができる。
【0091】
MEMS振動子300によれば、第2面34および第3面36は、凹曲面であり、YZ平面と平行な面である場合に比べて、可動電極30に、X軸方向に変位する振動が励振されることを、よりいっそう抑制できる。
【0092】
3.2. MEMS振動子の製造方法
次に、第3の実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図16〜図22は、第3の実施形態に係るMEMS振動子300の製造工程を模式的に示す断面図である。以下、MEMS振動子300の製造方法において、上述したMEMS振動子100,200の製造方法で説明した部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略する。
【0093】
図16に示すように、基板10上に絶縁層20(第1絶縁層20)を形成する。絶縁層20は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0094】
次に、絶縁層20上に、半導体層31(多結晶シリコン層)を成膜する。半導体層31は、例えば、CVD法、スパッタ法により形成される。
【0095】
図17に示すように、半導体層31に、導電性を付与するために所定の不純物(例えばボロン)を注入する。不純物の注入は、半導体層31の上面32(第1面32ともいえる)を含む第1部分31aの不純物濃度、および半導体層31の下面37を含む第2部分31bの不純物濃度よりも、第1部分31aと第2部分31bとに挟まれた半導体層31の第3部分31cの不純物濃度が高くなるように行われる。例えば、不純物を注入する際の加速電圧を制御することにより、第3部分31cの不純物濃度を、第1部分31aおよび第2部分32bの不純物濃度よりも高くすることができる。
【0096】
図18に示すように、不純物が注入された半導体層31をパターニングして、可動電極30を形成する。パターニングは、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術によって行われる。ここで、不純物濃度が高い第3部分31cは、第1部分31aおよび第2部分31bに比べて、エッチング速度が大きい。そのため、可動電極30の第2面34および第3面36は、凹曲面となる。なお、可動電極30を形成する工程において、絶縁層20上に可動電極を支持する支持部を、可動電極30と一体的に形成することができる。
【0097】
図19に示すように、例えば可動電極30を熱酸化して、可動電極30上に絶縁層26(第3絶縁層26)を形成し、可動電極30の側方に(第2面34および第3面36に)絶縁層24aを形成する。絶縁層26は、可動電極30の上に、第1寸法L1の厚みを有している。
【0098】
図20に示すように、絶縁層24aの側方に絶縁層24bを形成して、可動電極30の側方に絶縁層24(第2絶縁層24)を形成する。より具体的には、絶縁層24bは、絶縁層24a,26を覆うようにCVD法やスパッタ法などにより絶縁層(図示せず)を成膜し、絶縁層24aの側方に該絶縁層が残るようにエッチングすることによって形成される。図示の例では、絶縁層24bは、サイドウォール形状であり、絶縁層24bをサイドウォールとよぶこともできる。
【0099】
絶縁層24は、可動電極30の側方に第2寸法L2の幅(X軸方向の長さ)を有している。第2寸法L2は、第1寸法L1より大きい。図示の例では、第2寸法L2は、例えば、図20に示すように断面視において、第1面32と第2面34との接続部から、X軸に沿って絶縁層24の外壁面25まで引いた線分の長さであり、また、第1面32と第3面36との接続部から、X軸に沿って絶縁層24の外壁面25まで引いた線分の長さである。第1寸法L1によって、間隔D1,D3(図15参照)が規定され、第2寸法L2によって、間隔D2,D4(図15参照)が規定される。
【0100】
なお、絶縁層24a,26を形成する工程と、絶縁層24bを形成する工程とは、その先後を問わない。
【0101】
また、熱酸化膜である絶縁層24a,26、およびサイドウォールである絶縁層24bを形成する代わりに、図6に示したように、可動電極30上に第1寸法L1の厚みを有し、可動電極30の側方に第1寸法L1よりも大きい第2寸法L2の幅を有する絶縁層22を形成してもよい。
【0102】
図21に示すように、絶縁層24の側方および絶縁層26上に、第1固定電極40および第2固定電極50を形成する。図示の例では、絶縁層24bはサイドウォールの形状であるので、第1固定電極40の第5面44および第2固定電極50の第7面54は、絶縁層24bの形状が転写されて、凹曲面となる。本工程において、絶縁層20上に、第1固定電極40と一体的に支持部48を形成することができ、また、絶縁層20上に、第2固定電極50と一体的に支持部58を形成することができる。固定電極40,50は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0103】
図22に示すように、可動電極30および固定電極40,50を覆うように、層間絶縁層70を形成する。そして、層間絶縁層70上に配線層60を形成する。次に、層間絶縁層70上に層間絶縁層74を形成し、層間絶縁層74にコンタクトホール76を形成する。そして、コンタクトホール76内および層間絶縁層74上に配線層62を形成する。次に、配線層62をパターニングして、貫通孔63を形成する。次に、配線層62上にパッシベーション層66を形成する。
【0104】
層間絶縁層70,74、配線層60,62、およびパッシベーション層66は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0105】
図15に示すように、貫通孔63を通して、層間絶縁層70,74、絶縁層24,26、および絶縁層20の少なくとも可動電極30下の部分(可動電極30と基板10との間の部分)をエッチングすることにより除去して、空洞部1を形成する(リリース工程)。これにより、可動電極30および固定電極40,50が露出される。リリース工程は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0106】
次に、貫通孔63を塞ぐように配線層64を形成する。配線層64は、上述したMEMS振動子100の製造方法で説明した方法で形成される。
【0107】
以上の工程により、第3の実施形態に係るMEMS振動子300を製造することができる。
【0108】
MEMS振動子300の製造方法によれば、MEMS振動子100の製造方法と同様に、間隔D2を、間隔D1よりも大きくし、間隔D4を、間隔D3よりも大きくすることができる。そのため、可動電極30に、ねじり振動とは別モードの振動(面34,44間および面36,54間の静電力に起因する振動)が励振されることを抑制でき、安定してねじり振動するMEMS振動子300を形成することができる。特に、MEMS振動子300の製造方法では、厚み方向に濃度分布を有するように、半導体層31に不純物を注入することにより、可動電極30の第2面34および第3面36を、凹曲面とすることができる。
【0109】
4. 第4の実施形態
次に、第4の実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図23は、第4の実施形態に係る発振器400を示す回路図である。
【0110】
発振器400は、図23に示すように、例えば、本発明に係るMEMS振動子(例えばMEMS振動子100)と、反転増幅回路(回路部)410と、を含む。
【0111】
MEMS振動子100は、可動電極30と電気的に接続された第1端子100aと、固定電極40,50と電気的に接続された第2端子100bと、を有している。MEMS振動子100の第1端子100aは、反転増幅回路410の入力端子410aと少なくとも交流的に接続する。MEMS振動子100の第2端子100bは、反転増幅回路410の出力端子410bと少なくとも交流的に接続する。
【0112】
図示の例では、反転増幅回路410は、1つのインバーターから構成されているが、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。
【0113】
発振器400は、反転増幅回路410に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図23に示す例では、反転増幅回路410の入力端子と出力端子とが抵抗420を介して接続されている。
【0114】
発振器400は、反転増幅回路410の入力端子410aと基準電位(接地電位)との間に接続された第1キャパシター430と、反転増幅回路410の出力端子410bと基準電位(接地電位)との間に接続された第2キャパシター432と、を含んで構成されている。これにより、MEMS振動子100とキャパシター430,432とで共振回路を構成する発振回路とすることができる。発振器400は、この発振回路で得られた発振信号fを出力する。
【0115】
発振器400を構成するトランジスターやキャパシター(図示せず)等は、例えば、基板10上に(図1参照)形成されていてもよい。これにより、MEMS振動子100と反転増幅回路410をモノリシックに形成することができる。
【0116】
発振器400によれば、ねじり振動とは別モードの振動が励振されることを抑制できるMEMS振動子100を含む。そのため、発振器400は、安定して発振することができる。
【0117】
なお、発振器400は、図24に示すように、さらに、分周回路440を有していてもよい。分周回路440は、発振回路の出力信号Voutを分周し、発振信号fを出力する。これにより、発振器400は、例えば、出力信号Voutの周波数よりも低い周波数の出力信号を得ることができる。
【0118】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0119】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0120】
1 空洞部、10 基板、20,21,22 絶縁層、22a 露出面、
24,24a,24b 絶縁層、25 外壁面、30 第1固定電極、31 半導体層、
31a 第1部分、31b 第2部分、31c 第3部分、32 第1面、
34 第2面、36 第3面、37 下面、38 支持部、39 支持部、
40 第1固定電極、42 第4面、44 第5面、48 支持部、
50 第2固定電極、52 第6面、54 第7面、58 支持部、
60,62 配線層、63 貫通孔、64 配線層、66 パッシベーション層、
70 層間絶縁層、74 層間絶縁層、76 コンタクトホール、
100 MEMS振動子、100a 第1端子、100b 第2端子、
200,300 MEMS振動子、400 発振器、410 反転増幅回路、
410a 入力端子、410b 出力端子、420 抵抗、430 第1キャパシター、
432 第2キャパシター、440 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじり振動する可動電極と、
前記可動電極と間隙を介して形成された第1固定電極および第2固定電極と、
を含み、
前記可動電極は、
第1面と、
前記第1面に接続された第2面と、
前記第1面に接続され、前記第2面の反対側の第3面と、
を有し、
前記第1固定電極は、
前記第1面と対向する第4面と、前記第2面と対向する第5面と、を有し、
前記第2固定電極は、
前記第1面と対向する第6面と、前記第3面と対向する第7面と、を有し、
前記第2面と前記第5面との間隔は、前記第1面と前記第4面との間隔よりも大きく、
前記第3面と前記第7面との間隔は、前記第1面と前記第6面との間隔よりも大きい、MEMS振動子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第5面および前記第7面は、凹曲面である、MEMS振動子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2面および前記第3面は、凹曲面である、MEMS振動子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記可動電極は、
前記第1面と前記第4面との間の静電力、および前記第1面と前記第6面との間の静電力によって、ねじり振動する、MEMS振動子。
【請求項5】
基板の上方に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上方に可動電極を形成する工程と、
前記可動電極の側方および上方に第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の側方および上方に、第1固定電極および第2固定電極を形成する工程と、
前記第1絶縁層の前記基板と前記可動電極との間の部分、および前記第2絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第2絶縁層を形成する工程では、
前記可動電極の上方に第1寸法の厚みを有し、前記可動電極の側方に前記第1寸法よりも大きい第2寸法の幅を有する前記第2絶縁層を形成する、MEMS振動子の製造方法。
【請求項6】
基板の上方に第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上方に可動電極を形成する工程と、
前記可動電極の側方に第2絶縁層を形成する工程と、
前記可動電極の上方に第3絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層の側方および前記第3絶縁層の上方に、第1固定電極および第2固定電極を形成する工程と、
前記第1絶縁層の前記基板と前記可動電極とに挟まれた部分、前記第2絶縁層、および第3絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第2絶縁層および前記第3絶縁層を形成する工程では、
前記可動電極の上方に第1寸法の厚みを有する前記第3絶縁層を形成し、前記可動電極の側方に前記第1寸法よりも大きい第2寸法の幅を有する前記第2絶縁層を形成する、MEMS振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記可動電極を形成する工程は、
前記第1絶縁層の上方に半導体層を形成する工程と、
前記半導体層に不純物を注入する工程と、
不純物が注入された前記半導体層をドライエッチングする工程と、
を含み、
前記不純物を注入する工程は、
前記半導体層の上面を含む第1部分の不純物濃度、および前記半導体層の下面を含む第2部分の不純物濃度よりも、前記第1部分と前記第2部分とに挟まれた前記半導体層の第3部分の不純物濃度の方が高くなるように行われる、MEMS振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の、前記可動電極、前記第1固定電極、および前記第2固定電極と電気的に接続された回路部と、
を含む、発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−106053(P2013−106053A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246197(P2011−246197)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】