説明

MEMS振動子およびその製造方法、並びに発振器

【課題】梁部が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子を提供する。
【解決手段】本発明に係るMEMS振動子100は、シリコン基板10と、シリコン基板10の上方に配置された窒化シリコン層30と、窒化シリコン層30の上方に配置された第1電極40と、第1電極40との間に空隙を有した状態で配置され、シリコン基板10の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部54、および窒化シリコン層30の上方に配置され、梁部54を支持する支持部56を有する第2電極50と、を含み、第1電極40および第2電極50の材質は、導電性を有する単結晶シリコンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS振動子およびその製造方法、並びに発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小構造体形成技術の1つで、例えば、ミクロンオーダーの微細な電子機械システムを作る技術やその製品のことをいう。
【0003】
特許文献1には、半導体基板の表面に、片持ち梁状のMEMS振動子を形成しつつ、同一チップ内にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)も形成することが記載されている。このMEMS振動子は、導電性が付与された多結晶シリコンからなる上部MEMS構造層および下部MEMS構造層で構成されており、上部MEMS構造層を屈曲振動させることで、共振周波数を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−105157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなMEMS振動子は、梁部が繰り返し屈曲振動することにより、疲労破壊を起こす場合がある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、梁部が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、梁部が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子の製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記のMEMS振動子を有する発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るMEMS振動子は、
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上方に配置された窒化シリコン層と、
前記窒化シリコン層の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記シリコン基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記窒化シリコン層の上方に配置され、前記梁部を支持する支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極および前記第2電極の材質は、導電性を有する単結晶シリコンである。
【0008】
このようなMEMS振動子によれば、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンである場合に比べて、梁部が疲労破壊することを抑制できる。これにより、例えば、梁部の機械特性を向上させることができ、長寿命化を図ることができる。例えば、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンの場合は、屈曲振動によって、粒界で梁部が折れたりすることがあり、単結晶シリコンに比べて、疲労破壊しやすい。
【0009】
さらに、このようなMEMS振動子によれば、上述のように梁部が疲労破壊することを抑制できるので、梁部が繰り返し屈曲振動しても、梁部の位置精度が低下することを抑制できる。
【0010】
また、単結晶シリコンは、多結晶シリコンに比べて、平坦性が高い。そのため、このようなMEMS振動子によれば、例えば、第1電極および第2電極の周囲にガスが発生したとしても、第1電極および第2電極にガスがトラップされることを抑制できる。
【0011】
さらに、このようなMEMS振動子によれば、第1電極および第2電極は、窒化シリコン層上に配置されている。そのため、梁部がシリコン基板にくっ付いてしまうこと(すなわちプルイン)を抑制することができる。
【0012】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0013】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記シリコン基板と前記窒化シリコン層との間に配置されたバッファー層を、さらに含み、
前記バッファーの材質は、単結晶シリコンであってもよい。
【0014】
このようなMEMS振動子によれば、後述する第1シリコンゲルマニウム層の平坦性を向上させることができるため、第1電極の平坦性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法は、
シリコン基板の上方に、第1絶縁層を成膜する工程と、
前記第1絶縁層をパターニングして前記シリコン基板を露出する工程と、
露出された前記シリコン基板の上方に、第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第1シリコンゲルマニウム層上に、第1単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第1単結晶シリコン層を覆うように、第2絶縁層を成膜する工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をパターニングして、前記第1シリコンゲルマニウム層の側面を露出する工程と、
前記第2絶縁層および前記第1単結晶シリコン層に貫通孔を形成して、前記第1シリコンゲルマニウム層を露出する工程と、
前記貫通孔にエッチング液またはエッチングガスを通して、前記第1シリコンゲルマニウム層を除去する工程と、
前記第1シリコンゲルマニウム層が除去された前記シリコン基板と前記第1単結晶シリコン層との間に、窒化シリコン層を成膜する工程と、
前記第2絶縁層を除去する工程と、
前記第1単結晶シリコン層をパターニングして、第1電極および第2電極の固定部を形成する工程と、
前記第1電極を覆うように、第2シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2シリコンゲルマニウム層および前記固定部を覆うように、第2単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2単結晶シリコン層をパターニングして、前記第1電極の上方に、前記シリコン基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる前記第2電極の梁部を形成し、前記固定部上に、前記梁部を支持する前記第2電極の支持部を形成する工程と、
前記第2シリコンゲルマニウム層を除去する工程と、
を含む。
【0016】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、シリコン基板の上方に、単結晶シリコン層を第1電極および第2電極としたMEMS振動子を形成することができる。
【0017】
さらに、このようなMEMS振動子の製造方法によれば、貫通孔にエッチング液またはエッチングガスを通して、シリコン基板と第1単結晶シリコン層との間の第1シリコンゲルマニウム層を除去することができる。したがって、平面視における面積が大きい第1電極および第2電極を形成する場合であっても、例えば貫通孔の数を増やすことにより、シリコン基板と第1単結晶シリコン層との間の第1シリコンゲルマニウム層を除去することができる。また、例えば貫通孔の数を増やすことにより、第1シリコンゲルマニウム層のエッチング時間を短縮することができ、エッチング液によって、第1単結晶シリコン層がダメージを受けることを抑制できる。
【0018】
さらに、このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンである場合に比べて、梁部が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子を形成することができる。
【0019】
さらに、このようなMEMS振動子の製造方法によれば、シリコン基板と、第1電極および第2電極と、の間に、窒化シリコン層を形成することができる。そのため、第2シリコンゲルマニウム層を除去するリリース工程において、窒化シリコン層がエッチングされることがなく、第2電極の梁部がシリコン基板にくっ付いてしまうこと(プルイン)を抑制できる。
【0020】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程の前に、前記シリコン基板上にバッファー層をエピタキシャル成長させる工程を、さらに含み、
前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程では、
前記バッファー層上に、前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させ、
前記バッファーの材質は、単結晶シリコンであってもよい。
【0021】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第1シリコンゲルマニウム層の平坦性を向上させることができる。したがって、第1シリコンゲルマニウム層上にエピタキシャル成長される第1単結晶シリコン層の平坦性を向上させることができ、高い平坦性を有する第1電極を形成することができる。
【0022】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記窒化シリコン層を成膜する工程の前に、前記第1単結晶シリコン層に形成された前記貫通孔を塞ように、前記第1単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程を、さらに含んでもよい。
【0023】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、貫通孔が塞がれない場合に比べて、第1電極および第2電極の強度を大きくすることができる。
【0024】
本発明に係る発振器は、
本発明に係るMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の、前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む。
【0025】
このような発振器によれば、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図2】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図3】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図4】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図5】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図6】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図7】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図8】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図9】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図10】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図11】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図12】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図13】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図14】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図15】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図16】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図17】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図18】実験例1のSEM観察結果。
【図19】実験例2のSEM観察結果。
【図20】本実施形態に係る発振器を示す回路図。
【図21】本実施形態の変形例に係る発振器を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
1. MEMS振動子
まず、本実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI−I線断面図である。
【0029】
MEMS振動子100は、図1および図2に示すように、シリコン基板10と、窒化シリコン層30と、第1電極40と、第2電極50と、を含む。さらに、MEMS振動子100は、バッファー層20と、酸化シリコン層32と、絶縁層34(第1絶縁層34ともいえる)と、を有することができる。
【0030】
シリコン基板10は、例えば、単結晶のシリコンからなる基板である。
【0031】
酸化シリコン層32は、シリコン基板10上に配置されている。酸化シリコン層32は、例えば、酸化シリコンからなる層である。より具体的には、酸化シリコン層32としては、例えば、LOCOS(local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層、トレンチ絶縁層を形成する際に用いるパッド酸化膜である。酸化シリコン層32によって、第1電極40および第2電極50は、他の素子(例えばトランジスター、図示せず)と電気的に分離されていてもよい。
【0032】
絶縁層34は、酸化シリコン層32上に配置されている。絶縁層34は、例えば、窒化シリコンからなる層である。
【0033】
バッファー層20は、シリコン基板10上に配置されている。図示の例では、バッファー層20は、シリコン基板10の酸化シリコン層32が設けられていない面に、形成されている。バッファー層20の上面は、例えば、酸化シリコン層32の上面と連続している。バッファー層20の厚みは、例えば、0.01μm以上0.1μm以下である。バッファー層20の材質は、単結晶シリコンであり、バッファー層20は、単結晶のシリコンからなる層である。バッファー層20は、後述する第1シリコンゲルマニウム層60の平坦性を向上させることができる。
【0034】
窒化シリコン層30は、バッファー層20上に配置されている。図2に示す例では、平面視において、窒化シリコン層30の両側に絶縁層34が形成されている。窒化シリコン層30の上面は、例えば、絶縁層34の上面と連続している。窒化シリコン層30の厚みは、例えば、0.1μm以上1μm以下である。窒化シリコン層30は、例えば、窒化シリコンからなる層である。
【0035】
第1電極40は、窒化シリコン層30上に配置されている。第1電極40の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極40の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。第1電極40の平面形状は、第2電極50の梁部54と空隙を空けて対向する面を有していれば、特に限定されない。
【0036】
第2電極50は、窒化シリコン層30上に、第1電極40と空隙を空けて配置されている。第1電極40および第2電極50の材質は、導電性を有する単結晶シリコンである。より具体的には、電極40,50の材質は、所定の不純物(例えばボロン)をドーピングすることにより導電性が付与された単結晶のシリコンである。
【0037】
第2電極50は、シリコン基板10上に固定された固定部52と、第1電極40と対向配置された梁部54と、固定部52上に配置され梁部54を支持する支持部56と、を有することができる。
【0038】
梁部54は、第1電極40との間に空隙を有した状態で配置されている。梁部54は、第1電極40の上方に、第1電極40と所定の間隔を空けて形成されている。梁部54と第1電極40との間の距離は、例えば、0.01μm以上1μm以下である。梁部54は、支持部56から延出している。第2電極40は、梁部54の一端を支持部56で固定し、梁部54の他端を自由にした片持ち梁状(カンチレバー状)に形成されている。梁部54の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、四角形である。梁部54の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
【0039】
固定部52は、支持部56を窒化シリコン層30の上方に固定している。固定部52の厚みは、例えば、第1電極40の厚みと同じである。固定部52の形状は、支持部56を窒化シリコン層30の上方に固定できれば、特に限定されない。
【0040】
支持部56は、固定部52上に配置され、固定部52に固定されている。支持部56の厚みは、例えば、梁部54の厚みと同じである。支持部56の形状は、梁部54を支持できれば、特に限定されない。
【0041】
MEMS振動子100では、第1電極40および第2電極50の間に電圧(交番電圧)が印加されると、梁部54は、電極40,50間に発生する静電力により、基板10の厚み方向に振動することができる。なお、ここで、基板10の厚み方向とは、基板10の主面(電極40,50が形成される面)の垂線Pに沿う方向であるということができる。これにより、例えば、第1電極40から所定の周波数(梁部54の固有振動数に応じた周波数)の信号(出力信号)を出力することができる。MEMS振動子100は、静電力によって動作する静電型のMEMS振動子である。第1電極40、および第2電極50の固定部52は、電極40,50間に電圧を印加するための配線(図示せず)に接続されることができる。
【0042】
なお、図示はしないが、MEMS振動子100は、第1電極40および第2電極50を減圧状態で気密封止する被覆構造体を有していてもよい。これにより、梁部54の振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0043】
MEMS振動子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0044】
MEMS振動子100によれば、第1電極40および第2電極50の材質は、導電性を有する単結晶シリコンである。そのため、MEMS振動子100は、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンである場合に比べて、梁部54が疲労破壊することを抑制できる。これにより、例えば、梁部54の機械特性を向上させることができ、長寿命化を図ることができる。例えば、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンの場合は、屈曲振動によって、粒界で梁部が折れたりすることがあり、単結晶シリコンに比べて、疲労破壊しやすい。
【0045】
さらに、MEMS振動子100によれば、上述のように梁部54が疲労破壊することを抑制できるので、梁部54が繰り返し屈曲振動しても、梁部54の位置精度が低下することを抑制できる。
【0046】
また、単結晶シリコンは、多結晶シリコンに比べて、平坦性が高い。そのため、MEMS振動子100によれば、例えば、電極40,50の周囲にガスが発生したとしても、電極40,50にガスがトラップされることを抑制できる。電極にガスがトラップされるとMEMS振動子の周波数が変動し、所望の周波数を得ることができない場合がある。なお、ガスの発生源は、特に限定されないが、例えば、電極40,50を気密封止する被覆構造体(図示せず)から発生する場合がある。
【0047】
さらに、MEMS振動子100によれば、電極40,50は、窒化シリコン層30上に配置されている。そのため、第2電極50の梁部54がシリコン基板10(図1に示す例では、バッファー層20)にくっ付いてしまうこと(すなわちプルイン)を抑制することができる。例えば、電極とシリコン基板との間に窒化シリコン層が形成されておらず、電極がシリコン基板と空隙を空けて配置されている場合は、グランド電位を有するシリコン基板に電極が引っ張られ、プルインが発生してしまう。
【0048】
なお、窒化シリコン層を設けず、シリコン基板に接して(バッファー層に接して)第1電極および第2電極を配置させると、シリコン基板を介して(バッファー層を介して)第1電極と第2電極とが短絡してしまう場合がある。
【0049】
また、窒化シリコン層の代わりに酸化シリコン層を用いた場合は、後述するリリース工程において、酸化シリコン層がエッチングされてしまう場合があり、プルインを抑制できない場合がある。
【0050】
MEMS振動子100によれば、シリコン基板10と窒化シリコン層30との間には、バッファー層20が配置されることができる。これにより、後述する第1シリコンゲルマニウム層60の平坦性を向上させることができるため、第1電極40の平坦性を向上させることができる。例えば、第1電極の平坦性が低く、表面に凹凸がある場合は、梁部が屈曲振動する際に第1電極と梁部とが接触し、第1電極と第2電極とが短絡してしまう可能性がある。
【0051】
2. MEMS振動子の製造方法
次に、本実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3〜図17は、本実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す図である。なお、図3〜図17では、図中の(a)に平面図を示し、図中の(b)に(a)で示した平面図のB−B線断面図を示している。さらに、図7〜図11では、図中の(c)に(a)で示した平面図のC−C線断面図を示している。
【0052】
図3に示すように、シリコン基板10上に、酸化シリコン層32および第1絶縁層34を、この順で成膜する。酸化シリコン層32は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法、熱酸化法により成膜される。第1絶縁層34は、例えば、CVD法、スパッタ法により成膜される。
【0053】
図4に示すように、酸化シリコン層32および第1絶縁層34をパターニングして、シリコン基板10の面12を露出する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。
【0054】
図5に示すように、露出されたシリコン基板10の面12上に、バッファー層20をエピタキシャル成長させる。次に、バッファー層20上に、第1シリコンゲルマニウム層60をエピタキシャル成長させる。次に、第1シリコンゲルマニウム層60上に、第1単結晶シリコン層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organinc Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法が挙げられる。
【0055】
図示の例では、バッファー層20の上面は、酸化シリコン層32の上面と連続しており、第1シリコンゲルマニウム層60の上面は、第1絶縁層34の上面と連続している。第1シリコンゲルマニウム層60の厚みは、例えば、窒化シリコン層30(図1参照)の厚みと同じである。第1単結晶シリコン層22の厚みは、例えば、第1電極40(図1参照)の厚みと同じである。バッファー層20、第1シリコンゲルマニウム層60、第1単結晶シリコン層22の平面形状は、特に限定されないが、図示の例では、長方形である。
【0056】
第1シリコンゲルマニウム層60は、例えば、単結晶のシリコンゲルマニウムからなる層である。第1シリコンゲルマニウム層60のシリコンとゲルマニウムと比は、特に限定されないが、例えば、シリコン:ゲルマニウム=7:3である。第1単結晶シリコン層22は、例えば、単結晶のシリコンからなる層である。
【0057】
なお、図示はしないが、シリコン基板10上にバッファー層20をエピタキシャル成長させず、シリコン基板10上に直接第1シリコンゲルマニウム層60をエピタキシャル成長させてもよい。
【0058】
図6に示すように、第1単結晶シリコン層22を覆うように、第2絶縁層36を成膜する。より具体的には、第1単結晶シリコン層22の上、および第1絶縁層34上であって第1単結晶シリコン層22の側方に第2絶縁層36を成膜する。第2絶縁層36は、例えば、CVD法、スパッタ法により成膜される。第2絶縁層36は、例えば、酸化シリコンからなる層である。
【0059】
図7に示すように、絶縁層34,36をパターニングして、第1シリコンゲルマニウム層60の側面60a,60b、および第1単結晶シリコン層22の側面22a,22bを露出する。また、該パターニングによって、図7(c)に示すように酸化シリコン層32の上面が露出される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。
【0060】
図7(a)に示す例では、第1シリコンゲルマニウム層60の側面60a,60bは、互い対向する面であり、平面視において第1シリコンゲルマニウム層60の長辺をなす面である。また、第1単結晶シリコン層22の側面22a,22bは、互い対向する面であり、平面視において第1単結晶シリコン層22の長辺をなす面である。平面視において、第1シリコンゲルマニウム層60の短辺をなす面60c,60d、および第1単結晶シリコン層22の短辺をなす面22c,22dは、本パターニング工程において露出されない。側面60a,60b,60c,60dは、それぞれ側面22a,22b,22c,22dと連続していてもよい。
【0061】
なお、図示はしないが、第1シリコンゲルマニウム層60の側面60a,60bが露出されれば、第1単結晶シリコン層22の側面22a,22bは、露出されなくてもよい。また、第1シリコンゲルマニウム層60の長辺をなす側面60a,60bではなく、第1シリコンゲルマニウム層60の短辺をなす側面60c,60dが露出されてもよい。また、後述する窒化シリコン層30を成膜する工程において、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間に窒化シリコン層30を成膜することができれば、第1シリコンゲルマニウム層60の2つの側面が露出される必要はなく、第1シリコンゲルマニウム層60の側面のうちの一部が露出されればよい。
【0062】
次に、第2絶縁層36をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングし、パターニングされた第2絶縁層36をマスクとして、第1単結晶シリコン層22をエッチング技術によりパターニングする。これにより、第2絶縁層36および第1単結晶シリコン層22に貫通孔70を形成することができ、第1シリコンゲルマニウム層60の上面を露出させることができる。貫通孔70は、例えば複数形成される。図示の例では、貫通孔70は、マトリックス状に配置されているが、その数および形状は、後述するように、貫通孔70を通して第1シリコンゲルマニウム層60を除去することができれば、特に限定されない。
【0063】
なお、貫通孔70の深さは、第1シリコンゲルマニウム層60が露出されれば特に限定されず、例えば、貫通孔70の底面が、第1シリコンゲルマニウム層60の上面と下面との間に位置していてもよい。
【0064】
また、第1単結晶シリコン層22の側面22a,22bおよび第1シリコンゲルマニウム層60の側面60a,60bを露出するパターニング工程と、貫通孔70を形成するパターニング工程とは、先後を問わない。
【0065】
図8に示すように、貫通孔70にエッチング液またはエッチングガスを通して、第1シリコンゲルマニウム層60を除去する。より具体的には、貫通孔70にフッ硝酸を通して、第1シリコンゲルマニウム層60を除去する。第1シリコンゲルマニウム層60は、露出された側面60a,60bからもエッチングされてもよい。これにより、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間に、空洞部72を形成することができる。
【0066】
図9に示すように、第1単結晶シリコン層22に形成された貫通孔70を塞ぐように、第1単結晶シリコン層22をエピタキシャル成長させる。より具体的には、貫通孔70を規定する第1単結晶シリコン層22の側面(すなわち貫通孔70の内面)を、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法やMOCVD法やMBE法などによって、選択的に横方向エピタキシャル成長(Epitaxial Lateral Overgrowth;ELO)させて、貫通孔70を塞ぐ。
【0067】
図10に示すように、第1シリコンゲルマニウム層60が除去されたシリコン基板10と第1単結晶シリコン層22との間(図示の例では、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間)の空洞部72に、窒化シリコン層30を成膜する。窒化シリコン層30は、例えば、CVD法により形成される。窒化シリコン層30は、第1シリコンゲルマニウム層60の側面60a,60b(図7参照)が形成されていた部分から回り込んで、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間に成膜される。図示の例では、第2絶縁層36上、第2絶縁層36に形成された貫通孔70内、第1単結晶シリコン層22の側面22a,22b、および上記の側面22a,22b,60a,60bを露出するパターニング工程において露出された酸化シリコン層32上(図10(c)参照)にも、窒化シリコン層30が成膜される。
【0068】
図11に示すように、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間、および酸化シリコン層32上に窒化シリコン層30が残るように、窒化シリコン層30をパターニングする。より具体的には、第2絶縁層36上の窒化シリコン層30と、貫通孔70内の窒化シリコン層30と、側面22a,22bの窒化シリコン層30と、を除去する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。次に、公知の方法により第2絶縁層36を除去する。
【0069】
図12に示すように、第1単結晶シリコン層22を覆うように、第3絶縁層38を成膜する。より具体的には、第1単結晶シリコン層22上、および第1絶縁層34上であって第1単結晶シリコン層22の側方に、第3絶縁層38を成膜する。第3絶縁層38は、例えば、CVD法、スパッタ法により形成される。第3絶縁層38は、例えば、酸化シリコンからなる層である。
【0070】
図13に示すように、第3絶縁層38をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングし、パターニングされた第3絶縁層38をマスクとして、第1単結晶シリコン層22をエッチング技術によりパターニングする。これにより、窒化シリコン層30上に、第1電極40および第2電極50の固定部52を形成することができる。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。
【0071】
図14に示すように、第1電極40および固定部52の側面に、シリコンゲルマニウム層62をエピタキシャル成長させる。より具体的には、LPCVD法やMOCVD法やMBE法などによって、シリコンゲルマニウム層62を横方向エピタキシャル成長(ELO)させる。なお、第1電極40の上面および固定部52の上面には、第3絶縁層38が形成されているため、シリコンゲルマニウム層62は成長されない。
【0072】
図15に示すように、第3絶縁層38を公知の方法により除去した後、固定部52を覆うように、第4絶縁層39を形成する。より具体的には、固定部52上、および第1絶縁層34上であってシリコンゲルマニウム層62の側方に第4絶縁層39を形成する。第4絶縁層39は、例えば、CVD法やスパッタ法などにより絶縁層(図示せず)を成膜した後、該絶縁層をパターニングすることによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。第4絶縁層39は、例えば、酸化シリコンからなる層である。
【0073】
なお、第3絶縁層38を除去した後であって第4絶縁層39を形成する前に、第1電極40および固定部52に所定の不純物(例えばボロン)をドーピングして、導電性を付与することができる。不純物をドーピングする工程の順番は、特に限定されず、例えば、第3絶縁層38を成膜する前に(図12参照)、第1単結晶シリコン層22にドーピングしてもよい。
【0074】
次に、第1電極40上に、シリコンゲルマニウム層63をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法が挙げられる。シリコンゲルマニウム層62,63によって、第1電極40を覆う第2シリコンゲルマニウム層64を形成することができる。シリコンゲルマニウム層62,63のシリコンとゲルマニウムとの比は、特に限定されないが、例えば、シリコン:ゲルマニウム=7:3である。シリコンゲルマニウム層63の厚みによって、第1電極40と第2電極50の梁部54との間隔が決定される。
【0075】
図16に示すように、第2シリコンゲルマニウム層64(シリコンゲルマニウム層62,63)および固定部52を覆うように、第2単結晶シリコン層24をエピタキシャル成長させる。より具体的には、シリコンゲルマニウム層63上、固定部52上、および第1絶縁層34上であってシリコンゲルマニウム層62の側方に、第2単結晶シリコン層24をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法が挙げられる。
【0076】
なお、第2単結晶シリコン層24をエピタキシャル成長させた後に、第2単結晶シリコン層24に所定の不純物(例えばボロン)をドーピングして、導電性を付与することができる。不純物をドーピングする工程の順番は、特に限定されず、例えば、後述する第2電極50の梁部54および支持部56を形成する工程(図17参照)の後に行ってもよい。
【0077】
図17に示すように、第2単結晶シリコン層24をパターニングして、第2電極50の梁部54および支持部56を形成する。これにより、梁部54、支持部56、および固定部52を有する第2電極50を形成することができる。
【0078】
図1に示すように、第2シリコンゲルマニウム層64(シリコンゲルマニウム層62,63)を除去して、梁部54と第1電極40との間に空隙を形成する(リリース工程)。例えば、フッ硝酸を用いてリリース工程を行うことができる。
【0079】
以上の工程により、MEMS振動子100を製造することができる。
【0080】
MEMS振動子100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0081】
MEMS振動子100の製造方法によれば、シリコン基板10の上方に、単結晶シリコン層を第1電極40および第2電極50としたMEMS振動子100を形成することができる。
【0082】
MEMS振動子100の製造方法によれば、貫通孔70にエッチング液またはエッチングガスを通して、シリコン基板10と第1単結晶シリコン層22との間(より具体的には、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間)の第1シリコンゲルマニウム層60を除去することができる。したがって、MEMS振動子100の製造方法では、平面視における面積が大きい電極40,50を形成する場合であっても、例えば貫通孔70の数を増やすことにより、バッファー層20と第1単結晶シリコン層22との間の第1シリコンゲルマニウム層60を除去することができる。また、例えば貫通孔70の数を増やすことにより、第1シリコンゲルマニウム層60のエッチング時間を短縮することができ、エッチング液によって、第1単結晶シリコン層22やバッファー層20などがダメージを受けることを抑制できる。
【0083】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第1電極および第2電極の材質が多結晶シリコンである場合に比べて、梁部54が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子100を形成することができる。
【0084】
MEMS振動子100の製造方法によれば、シリコン基板10と電極30,40との間(より具体的には、バッファー層20と電極30,40との間)に、窒化シリコン層30を成膜することができる。そのため、リリース工程において、窒化シリコン層30がエッチングされることがなく、第2電極50の梁部54がシリコン基板10に(より具体的にはバッファー層20に)くっ付いてしまうこと(プルイン)を抑制できる。例えば、窒化シリコン層30の代わりに酸化シリコン層を用いた場合は、リリース工程において、酸化シリコン層がエッチングされてしまう場合があり、プルインを抑制できない場合がある。
【0085】
MEMS振動子100の製造方法によれば、シリコン基板10上にバッファー層20をエピタキシャル成長させ、バッファー層20上に第1シリコンゲルマニウム層60をエピタキシャル成長させることができる。これにより、第1シリコンゲルマニウム層60の平坦性を向上させることができる(以下に示す実験例参照)。したがって、第1シリコンゲルマニウム層60上にエピタキシャル成長される第1単結晶シリコン層22の平坦性を向上させることができ、高い平坦性を有する第1電極40を形成することができる。例えば、第1電極の平坦性が低く、表面に凹凸がある場合は、梁部が屈曲振動する際に第1電極と梁部とが接触し、第1電極と第2電極とが短絡してしまう可能性がある。
【0086】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第1単結晶シリコン層22に形成された貫通孔70を塞ぐように、第1単結晶シリコン層22をエピタキシャル成長させることができる。これにより、貫通孔70が塞がれない場合に比べて、電極40,50の強度を大きくすることができる。
【0087】
なお、上記には、第1単結晶シリコン層22に形成された貫通孔70を、第1単結晶シリコン層22をエピタキシャル成長させることによって塞ぐ例について説明したが(図9参照)、第1単結晶シリコン層22に形成された貫通孔70は、第1単結晶シリコン層22をエピタキシャル成長させることによって塞がれなくてもよい。この場合、シリコンゲルマニウム層62をエピタキシャル成長させる工程において(図14参照)、第1単結晶シリコン層22(第1電極40および固定部52)に形成された貫通孔は、シリコンゲルマニウム層62により塞がれる場合があるが、シリコンゲルマニウム層62,63を除去するリリース工程において(図1参照)、貫通孔内のシリコンゲルマニウム層62は除去されることができる。その結果、少なくとも第1電極40に貫通孔が形成されたMEMS振動子(図示せず)を形成することができる。
【0088】
3. 実験例
次に、実験例について説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0089】
実験例1として、単結晶シリコン基板上に、単結晶シリコンからなるバッファー層をMOCVD法によりエピタキシャル成長させ、バッファー層上に、単結晶シリコンゲルマニウム(Si0.7Ge0.3)からなるシリコンゲルマニウム層をMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。バッファー層の厚みを5nmとし、シリコンゲルマニウム層の厚みを15nmとした。
【0090】
実験例2として、単結晶シリコン基板上に、直接、単結晶シリコンゲルマニウム(Si0.7Ge0.3)からなるシリコンゲルマニウム層をMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。すなわち、実験例2では、単結晶シリコンからなるバッファー層を形成しなかった。シリコンゲルマニウム層の厚みを15nmとした。
【0091】
図18は、実施例1のSEM観察結果である。図19は、実験例2のSEM観察結果である。図18および図19より、実験例1は、実験例2に比べて、シリコンゲルマニウム層の平坦性が高いことがわかった。すなわち、単結晶シリコンからなるバッファー層は、シリコンゲルマニウム層の平坦性を向上させることがわかった。
【0092】
シリコンゲルマニウム層は、下地の表面(単結晶シリコン基板の表面)状態に敏感であり、異物等が単結晶シリコン基板の表面に付着している場合は、該異物が転写されて、シリコンゲルマニウム層の表面には凹凸が形成されると考えられる(図19参照)。しかしながら、単結晶シリコンからなるバッファー層は、シリコンゲルマニウム層ほど下地の表面状態に影響されないため、仮に、単結晶シリコン基板の表面に不純物が付着していても、平坦性の高い表面を形成することができる。そのため、バッファー層上のシリコンゲルマニウム層も高い平坦性を有することができると考えられる。
【0093】
4. 発振器
次に、本実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図20は、本実施形態に係る発振器600を示す回路図である。
【0094】
発振器600は、図20に示すように、例えば、本発明に係るMEMS振動子(例えばMEMS振動子100)と、反転増幅回路(回路部)610と、を含む。
【0095】
MEMS振動子100は、第1電極40と電気的に接続された第1端子100aと、第2電極50と電気的に接続された第2端子100bと、を有している。MEMS振動子100の第1端子100aは、反転増幅回路610の入力端子610aと少なくとも交流的に接続する。MEMS振動子100の第2端子100bは、反転増幅回路610の出力端子610bと少なくとも交流的に接続する。
【0096】
図示の例では、反転増幅回路610は、1つのインバーターから構成されているが、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。
【0097】
発振器600は、反転増幅回路610に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図20に示す例では、反転増幅回路610の入力端子と出力端子とが抵抗620を介して接続されている。
【0098】
発振器600は、反転増幅回路610の入力端子610aと基準電位(接地電位)との間に接続された第1キャパシター630と、反転増幅回路610の出力端子610bと基準電位(接地電位)との間に接続された第2キャパシター632と、を含んで構成されている。これにより、MEMS振動子100とキャパシター630,632とで共振回路を構成する発振回路とすることができる。発振器600は、この発振回路で得られた発振信号fを出力する。
【0099】
なお、発振器600は、図21に示すように、さらに、分周回路640を有していてもよい。分周回路640は、発振回路の出力信号Voutを分周し、発振信号fを出力する。これにより、発振器600は、例えば、出力信号Voutの周波数よりも低い周波数の出力信号を得ることができる。
【0100】
発振器600を構成するトランジスターやキャパシター(図示せず)等は、例えば、基板10上に(図1参照)形成されていてもよい。これにより、MEMS振動子100と反転増幅回路610をモノリシックに形成することができる。
【0101】
発振器600によれば、上記のとおり梁部54が疲労破壊することを抑制できるMEMS振動子100を含む。そのため、発振器600は、高い信頼性を有することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0103】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0104】
10 基板、12 基板の面、20 バッファー層、22 第1単結晶シリコン層、
22a,22b,22c,22d 側面、24 第2単結晶シリコン層、
30 窒化シリコン層、32 酸化シリコン層、34 第1絶縁層、36 第2絶縁層、
38 第3絶縁層、39 第4絶縁層、40 第1電極、50 第2電極、
52 固定部、54 梁部、56 支持部、60 第1シリコンゲルマニウム層、
60a,60b,60c,60d 側面、62 シリコンゲルマニウム層、
63 シリコンゲルマニウム層、64 第2シリコンゲルマニウム層、70 貫通孔、
72 空洞部、100 MEMS振動子、100a 第1端子、100b 第2端子、
600 発振器、610 反転増幅回路、610a 入力端子、610b 出力端子、
620 抵抗、630 第1キャパシター、632 第2キャパシター、
640 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上方に配置された窒化シリコン層と、
前記窒化シリコン層の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記シリコン基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、および前記窒化シリコン層の上方に配置され、前記梁部を支持する支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極および前記第2電極の材質は、導電性を有する単結晶シリコンである、MEMS振動子。
【請求項2】
請求項1において、
前記シリコン基板と前記窒化シリコン層との間に配置されたバッファー層を、さらに含み、
前記バッファーの材質は、単結晶シリコンである、MEMS振動子。
【請求項3】
シリコン基板の上方に、第1絶縁層を成膜する工程と、
前記第1絶縁層をパターニングして前記シリコン基板を露出する工程と、
露出された前記シリコン基板の上方に、第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第1シリコンゲルマニウム層上に、第1単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第1単結晶シリコン層を覆うように、第2絶縁層を成膜する工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をパターニングして、前記第1シリコンゲルマニウム層の側面を露出する工程と、
前記第2絶縁層および前記第1単結晶シリコン層に貫通孔を形成して、前記第1シリコンゲルマニウム層を露出する工程と、
前記貫通孔にエッチング液またはエッチングガスを通して、前記第1シリコンゲルマニウム層を除去する工程と、
前記第1シリコンゲルマニウム層が除去された前記シリコン基板と前記第1単結晶シリコン層との間に、窒化シリコン層を成膜する工程と、
前記第2絶縁層を除去する工程と、
前記第1単結晶シリコン層をパターニングして、第1電極および第2電極の固定部を形成する工程と、
前記第1電極を覆うように、第2シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2シリコンゲルマニウム層および前記固定部を覆うように、第2単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2単結晶シリコン層をパターニングして、前記第1電極の上方に、前記シリコン基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる前記第2電極の梁部を形成し、前記固定部上に、前記梁部を支持する前記第2電極の支持部を形成する工程と、
前記第2シリコンゲルマニウム層を除去する工程と、
を含む、MEMS振動子の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程の前に、前記シリコン基板上にバッファー層をエピタキシャル成長させる工程を、さらに含み、
前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させる工程では、
前記バッファー層上に、前記第1シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させ、
前記バッファーの材質は、単結晶シリコンである、MEMS振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記窒化シリコン層を成膜する工程の前に、前記第1単結晶シリコン層に形成された前記貫通孔を塞ように、前記第1単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させる工程を、さらに含む、MEMS振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の、前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む、発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−110623(P2013−110623A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254710(P2011−254710)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】