説明

MEMS振動子および発振器

【課題】高い周波数精度を有するMEMS振動子を提供する。
【解決手段】本発明に係るMEMS振動子100は、基板10と、基板10の上方に配置され、開口部22が形成された第1絶縁層20と、開口部22を覆って、第1絶縁層20の上方に配置された第2絶縁層30と、第2絶縁層30の上方に配置された第1電極40と、第1電極40との間に空隙を有した状態で配置され、基板10の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部52、梁部52の一端を支持し第2絶縁層30の上方に配置された第1支持部54、および梁部52の他端を支持し第2絶縁層30の上方に配置された第2支持部56を有する第2電極50と、を含み、基板10の厚み方向からの平面視において、開口部22の少なくとも一部は、第1支持部54と第2支持部56との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS振動子および発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小構造体形成技術の1つで、例えば、ミクロンオーダーの微細な電子機械システムを作る技術やその製品のことをいう。
【0003】
特許文献1には、固定電極および可動電極を有し、両電極間に発生する静電力により可動電極を駆動させるMEMS振動子が開示されている。特許文献1では、このようなMEMS振動子を、フィールド絶縁膜および下地層などの絶縁層上に形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−105157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MEMS振動子として、可動電極の両端を支持部によって固定された両持ち梁構造のMEMS振動子が知られている。このようなMEMS振動子が絶縁層上に形成された場合、例えば、熱などによって発生した絶縁層の応力が、可動電極の両端の支持部に加わり、これによってMEMS振動子の共振周波数が所望の値から変動してしまうことがあった。その結果、MEMS振動子の周波数精度が低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い周波数精度を有するMEMS振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るMEMS振動子は、
基板と、
前記基板の上方に配置され、開口部が形成された第1絶縁層と、
前記開口部を覆って、前記第1絶縁層の上方に配置された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、前記梁部の一端を支持し前記第2絶縁層の上方に配置された第1支持部、および前記梁部の他端を支持し前記第2絶縁層の上方に配置された第2支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部の少なくとも一部は、前記第1支持部と前記第2支持部との間に配置されている。
【0008】
このようなMEMS振動子によれば、仮に、MEMS振動子に熱が加わり、第2絶縁層が熱膨張したとしても、開口部によって、熱膨張により発生した第2絶縁層の面内方向の応力を、緩和することができる。さらに、開口部によって、第1絶縁層の応力を緩和することができる。これにより、第1支持部および第2支持部に加わる応力を低減することができる。したがって、梁部に加わる応力を低減することができ、共振周波数の変動を抑制することができる。その結果、このようなMEMS振動子は、高い周波数精度を有することができる。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0010】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第1絶縁層の材質は、酸化シリコンであり、
前記第2絶縁層の材質は、窒化シリコンであってもよい。
【0011】
このようなMEMS振動子によれば、第1絶縁層によって、MEMS振動子を基板に形成された他の素子と電気的に分離させつつ、第2絶縁層によって、後述するリリース工程において、第1絶縁層がエッチングされて第1電極が剥離することを抑制できる。
【0012】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部は、前記第1支持部および前記第2支持部を避けて、前記梁部と交差していてもよい。
【0013】
このようなMEMS振動子によれば、効率よく、第1絶縁層および第2絶縁層に発生する応力を、緩和することができる。
【0014】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部の少なくとも一部は、前記第1電極と重なっていてもよい。
【0015】
このようなMEMS振動子によれば、開口部を配置するためのスペースを別途設ける必要がなく、小型化を図ることができる。
【0016】
本発明に係る発振器は、
本発明に係るMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む。
【0017】
このような発振器によれば、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図2】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図3】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の変形例に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図11】本実施形態に係る発振器を示す回路図。
【図12】本実施形態の変形例に係る発振器を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
1. MEMS振動子
まず、本実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係るMEMS振動子100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI−I線断面図である。また、図2では、便宜上、層間絶縁層60、コンタクト部72,76、および配線層80,82,84,86の図示を省略している。
【0021】
MEMS振動子100は、図1および図2に示すように、基板10と、第1絶縁層20と、第2絶縁層30と、第1電極40と、第2電極50と、を含む。
【0022】
基板10としては、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。基板10として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0023】
第1絶縁層20は、基板10上に配置されている。第1絶縁層20としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1絶縁層20の材質は、例えば、酸化シリコンである。第1絶縁層20は、MEMS振動子100と、基板10に形成された他の素子(例えばトランジスター、図示せず)と、を電気的に分離することができる。
【0024】
第1絶縁層20には、開口部22が形成されている。開口部22の少なくとも一部は、基板10の厚み方向(Z軸方向)からの平面視において(以下、単に「平面視において」ともいう)、第2電極50の第1支持部54と第2支持部56との間に配置されている。すなわち、開口部22の少なくとも一部は、図2に示すように平面視において、第2電極50と重なっている。さらに、図示の例では、開口部22の少なくとも一部は、平面視において、第1電極40と重なっている。なお、図示はしないが、開口部22は、平面視において、支持部54,56と重なっていてもよい。
【0025】
開口部22は、図2に示すように平面視において、例えば、第2電極50の第1支持部54および第2支持部56を避けて、梁部52と交差している。図示の例では、開口部22は、Y軸方向に沿って延在しており、開口部22のY軸方向の長さは、第2電極50のY軸方向の長さよりも大きい。
【0026】
図示の例では、開口部22は、2つ形成されているが、その数は特に限定されない。また、図2に示す例では、開口部22の平面形状は、長方形であるが、その形状は特に限定されない。また、図1に示す例では、開口部22は、基板10の上面まで貫通しているが、基板10の上面まで貫通していなくてもよい。
【0027】
第2絶縁層30は、開口部22を覆って、第1絶縁層20上に配置されている。より具体的には、第2絶縁層30は、開口部22の内面を構成する第1絶縁層20の側面および基板10の上面を覆っている。第2絶縁層30は、図1に示すように、開口部22を埋めて形成されていてもよい。第2絶縁層30には、例えば、窪み部32が形成されている。窪み部32は、開口部22の上方に配置されている。窪み部32は、開口部22の形状が転写されて形成されることができる。
【0028】
第2絶縁層30の材質は、例えば、窒化シリコンである。第2絶縁層30は、後述するリリース工程において、エッチングストッパー層として機能することができる。
【0029】
第1電極40は、第2絶縁層30上に配置されている。第1電極40は、第2絶縁層30上に固定されていてもよい。第1電極40の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、長方形である。第1電極40には、例えば、窪み部42が形成されている。窪み部42は、窪み部32の上方に配置されている。窪み部42は、窪み部32の形状が転写されて形成されることができる。第1電極40の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。
【0030】
第2電極50は、第2絶縁層30の上方に配置されている。第2電極50の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、長方形である。第2電極50は、梁部52と、第1支持部54と、第2支持部56と、を有する。
【0031】
梁部52は、第1電極40との間に空隙を有した状態で配置されている。梁部52は、例えば、第1電極40の上方に配置され、第1電極40と対向配置されている。梁部52の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。梁部52は、基板10の厚み方向に静電力によって振動可能となる。
【0032】
第1支持部54は、梁部52の一端(例えば、梁部52の−X側の端)を支持し、第2絶縁層30上に配置されている。第2支持部56は、梁部52の他端(例えば、梁部52の+X側の端)を支持し、第2絶縁層30上に配置されている。すなわち、第2電極50は、両持ち梁構造を有している。第1支持部54および第2支持部56は、第2絶縁層30上に固定されていてもよい。第1支持部54および第2支持部56は、図2に示すように平面視において、例えば、梁部52を挟んで配置されている。図示の例では、第1支持部54および第2支持部56は、梁部52をX軸方向から挟んでいる。
【0033】
第1電極40および第2電極50の材質は、例えば、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンである。第1電極40と第2電極50との間に電圧が印加されると、梁部52は、電極40,50間に発生する静電力により振動することができる。
【0034】
図1に示す例では、第1電極40は、コンタクト部70を介して、配線層80に電気的に接続されている。さらに、配線層80は、コンタクト部72を介して、配線層82に電気的に接続されている。第2電極50は、コンタクト部74を介して、配線層84に電気的に接続されている。さらに、配線層84は、コンタクト部76を介して、配線層86に電気的に接続されている。配線層82,86は、電極40,50間に電圧を印加するための電源部(図示せず)に電気的に接続されている。これにより、電極40,50間に電圧を印加し、梁部52を振動させることができる。コンタクト部70,72,74,76、および配線層80,82,84,86の材質は、導電性であれば、特に限定されない。
【0035】
第1電極40および第2電極50は、図1に示すように、層間絶縁層60に形成された開口部62内に、配置されていてもよい。層間絶縁層60は、第2絶縁層30上に配置されている。層間絶縁層60の材質は、例えば、酸化シリコンである。
【0036】
なお、図示はしないが、開口部62は、減圧状態で気密封止されていてもよい。これにより、梁部52の振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0037】
本実施形態に係るMEMS振動子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0038】
MEMS振動子100によれば、第1絶縁層20には開口部22が形成され、第2絶縁層30は、開口部22覆って配置されている。さらに、平面視において、開口部22の少なくとも一部は、第1支持部54と第2支持部56との間に配置されている。そのため、仮に、MEMS振動子100に熱が加わり、第2絶縁層30が熱膨張したとしても、開口部22によって、熱膨張により発生した第2絶縁層30の面内方向の応力(例えばXY面内の方向の応力)を、緩和することができる。さらに、開口部22によって、第1絶縁層20の応力を緩和することができる。これにより、支持部54,56に加わる応力を低減することができる。したがって、梁部52に加わる応力を低減することができ、共振周波数の変動を抑制することができる。その結果、MEMS振動子100は、高い周波数精度を有することができる。
【0039】
例えば、一般的に、両持ち梁構造の振動子では、第1支持部および第2支持部は、絶縁層上に固定されているため、平面視において、第1支持部および第2支持部の間の絶縁層に応力(引っ張り応力や圧縮応力)が発生しても、該応力は開放され難い。そのため、第1支持部および第2支持部に応力が加わり、さらに梁部にも応力が加わってしまう。MEMS振動子100によれば、開口部22によって、このような支持部54,56間の絶縁層20,22に発生する応力を、緩和することができる。
【0040】
MEMS振動子100によれば、第1絶縁層20の材質は、酸化シリコンであり、第2絶縁層30の材質は、窒化シリコンであることができる。これにより、第1絶縁層20によって、MEMS振動子100を基板10に形成された他の素子と電気的に分離させつつ、第2絶縁層30によって、後述するリリース工程において、第1絶縁層20がエッチングされて第1電極40が剥離することを抑制できる。なお、酸化シリコンからなる絶縁層と窒化シリコンからなる絶縁層とでは、例えば熱膨張によって発生する応力は、窒化シリコンからなる絶縁層の方が大きくなる。
【0041】
MEMS振動子100によれば、開口部22は、平面視において、第1支持部54および第2支持部56を避けて、梁部52と交差することができる。そのため、効率よく、支持部54,56間の絶縁層20,22に発生する応力を、緩和することができる。
【0042】
MEMS振動子100によれば、開口部22の少なくとも一部は、平面視において、第1電極40と重なっていることができる。例えば、開口部を第1電極と重ならないように配置する場合は、開口部を配置するためのスペースが必要となるが、MEMS振動子100では、そのようなスペースを別途設けなくてもよい。そのため、MEMS振動子100では、小型化を図ることができる。
【0043】
2. MEMS振動子の製造方法
次に、本実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3〜図9は、本実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0044】
図3に示すように、基板10上に第1絶縁層20を形成する。第1絶縁層20は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法、LOCOS法により形成される。
【0045】
図4に示すように、第1絶縁層20に開口部22を形成する。開口部22は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0046】
図5に示すように、開口部22を覆うように、第1絶縁層20上に第2絶縁層30を形成する。第2絶縁層30は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法により形成される。例えば、開口部22の形状が転写されることにより、第2絶縁層30に、窪み部32が形成される。
【0047】
図6に示すように、第2絶縁層30上に第1電極40を形成する。より具体的には、第1電極40は、CVD法やスパッタ法などによって成膜された後、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。次に、例えば多結晶シリコンからなる第1電極40に対して、導電性を付与するために所定の不純物(例えばボロン)をドーピングする。例えば、窪み部32の形状が転写されることにより、第1電極40に、窪み部42が形成される。
【0048】
図7に示すように、第1電極40を覆うように犠牲層45を形成する。犠牲層45は、例えば、第1電極40を熱酸化することにより形成される。犠牲層45の材質は、例えば、酸化シリコンである。犠牲層45の厚みは、例えば、0.01μm以上100μm以下である。犠牲層45の厚みによって、第1電極40と第2電極50との間の距離が決定される。
【0049】
図8に示すように、犠牲層45および第2電極50上に、第2電極50を形成する。より具体的には、第2電極50は、CVD法やスパッタ法などによって成膜された後、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。次に、多結晶シリコンからなる第2電極50に対して、導電性を付与するために所定の不純物(例えばボロン)をドーピングする。
【0050】
図9に示すように、第1電極40および第2電極50を覆うように、第2絶縁層30上に、層間絶縁層60を形成する。層間絶縁層60は、例えば、CVD法や塗布(スピンコート)法などで形成することができる。層間絶縁層60を形成した後に、層間絶縁層60の表面を平坦化する処理を行ってもよい。
【0051】
層間絶縁層60は、例えば、複数の絶縁層を積層されて形成される。例えば、第1層目の絶縁層を形成した後、該第1層目の絶縁層にコンタクト部70,74を形成することができる。そして、第1層目の絶縁層上に、コンタクト部70,74と接続する配線層80,84を形成することができる。次に、第2層目の絶縁層を形成した後、該第2層目の絶縁層にコンタクト部72,76を形成することができる。そして、第2層目の絶縁層上に、コンタクト部72,76と接続する配線層82,86を形成することができる。コンタクト部70,72,74,76、および配線層80,82,84,86は、例えば、スパッタ法、めっき法により形成される。
【0052】
図1に示すように、梁部52の周囲および上方の層間絶縁層60を除去して、開口部62を形成し、かつ犠牲層45を除去する(リリース工程)。リリース工程は、例えば、レジスト層(図示せず)をマスクとして、フッ化水素酸や緩衝フッ酸(フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを用いたウェットエッチングによって行われる。リリース工程において、第2絶縁層30は、エッチングストッパーとして機能することができ、第1絶縁層20がエッチングされて第1電極40が剥離することを抑制できる。
【0053】
以上の工程により、本実施形態に係るMEMS振動子100を製造することができる。
【0054】
MEMS振動子100の製造方法によれば、周波数精度の高いMEMS振動子100を得ることができる。
【0055】
3. MEMS振動子の変形例
次に、本実施形態の変形例に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の変形例に係るMEMS振動子200を模式的に示す平面図であって、図2に対応するものである。以下、本実施形態の変形例に係るMEMS振動子200において、本実施形態に係るMEMS振動子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
MEMS振動子100の例では、図2に示すように平面視において、開口部22は、Y軸方向に沿って延在し、梁部52と交差していた。これに対し、MEMS振動子200は、図10に示すように平面視において、梁部52の外周の内側に配置された開口部22を有する。
【0057】
MEMS振動子200によれば、MEMS振動子100と同様に、高い周波数精度を有することができる。
【0058】
4. 発振器
次に、本実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態に係る発振器600を示す回路図である。
【0059】
発振器600は、図11に示すように、例えば、本発明に係るMEMS振動子(例えばMEMS振動子100)と、反転増幅回路(回路部)610と、を含む。
【0060】
MEMS振動子100は、第1電極40と電気的に接続された第1端子100aと、第2電極50と電気的に接続された第2端子100bと、を有している。MEMS振動子100の第1端子100aは、反転増幅回路610の入力端子610aと少なくとも交流的に接続する。MEMS振動子100の第2端子100bは、反転増幅回路610の出力端子610bと少なくとも交流的に接続する。
【0061】
図示の例では、反転増幅回路610は、1つのインバーターから構成されているが、所望の発振条件が満たされるように、複数のインバーター(反転回路)や増幅回路を組み合わせて構成されていてもよい。
【0062】
発振器600は、反転増幅回路610に対する帰還抵抗を含んで構成されていてもよい。図11に示す例では、反転増幅回路610の入力端子と出力端子とが抵抗620を介して接続されている。
【0063】
発振器600は、反転増幅回路610の入力端子610aと基準電位(接地電位)との間に接続された第1キャパシター630と、反転増幅回路610の出力端子610bと基準電位(接地電位)との間に接続された第2キャパシター632と、を含んで構成されている。これにより、MEMS振動子100とキャパシター630,632とで共振回路を構成する発振回路とすることができる。発振器600は、この発振回路で得られた発振信号fを出力する。
【0064】
なお、発振器600は、図12に示すように、さらに、分周回路640を有していてもよい。分周回路640は、発振回路の出力信号Voutを分周し、発振信号fを出力する。これにより、発振器600は、例えば、出力信号Voutの周波数よりも低い周波数の出力信号を得ることができる。
【0065】
発振器600を構成するトランジスターやキャパシター(図示せず)等は、例えば、基板10上に(図1参照)形成されていてもよい。これにより、MEMS振動子100と反転増幅回路610をモノリシックに形成することができる。
【0066】
MEMS振動子100と反転増幅回路610を、モノリシックに形成する場合、発振器600を構成するトランジスター等の部材を、上述したMEMS振動子100を形成する工程と同一の工程で形成してもよい。具体的には、犠牲層45を形成する工程において(図7参照)、トランジスターのゲート絶縁層を形成してもよい。さらに、第2電極50を形成する工程において(図8参照)、トランジスターのゲート電極を形成してもよい。このように、MEMS振動子100と反転増幅回路610の製造工程を共通化することで、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0067】
発振器600によれば、周波数精度の高いMEMS振動子100を含む。そのため、発振器600は、周波数精度の高い信号を出力することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0069】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0070】
10 基板、20 第1絶縁層、22 開口部、30 第2絶縁層、32 窪み部、
40 第1電極、42 窪み部、45 犠牲層、50 第2電極、52 梁部、
54 第1支持部、56 第2支持部、60 層間絶縁層、
70,72,74,76 コンタクト部、80,82,84,86 配線層、
100 MEMS振動子、100a 第1端子、100b 第2端子、
200 MEMS振動子、600 発振器、610 反転増幅回路、
610a 入力端子、610b 出力端子、620 抵抗、630 第1キャパシター、
632 第2キャパシター、640 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置され、開口部が形成された第1絶縁層と、
前記開口部を覆って、前記第1絶縁層の上方に配置された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極との間に空隙を有した状態で配置され、前記基板の厚み方向に静電力によって振動可能となる梁部、前記梁部の一端を支持し前記第2絶縁層の上方に配置された第1支持部、および前記梁部の他端を支持し前記第2絶縁層の上方に配置された第2支持部を有する第2電極と、
を含み、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部の少なくとも一部は、前記第1支持部と前記第2支持部との間に配置されている、MEMS振動子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1絶縁層の材質は、酸化シリコンであり、
前記第2絶縁層の材質は、窒化シリコンである、MEMS振動子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部は、前記第1支持部および前記第2支持部を避けて、前記梁部と交差している、MEMS振動子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記基板の厚み方向からの平面視において、前記開口部の少なくとも一部は、前記第1電極と重なっている、MEMS振動子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のMEMS振動子と、
前記MEMS振動子の前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続された回路部と、
を含む、発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−38530(P2013−38530A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171617(P2011−171617)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】