説明

MIMOシステムにおける出力制御のためのシステム及び方法

マルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システムのリターンチャネルを使用して、個々のチャネルごとに信号情報を提供する。1つの実施形態では、制御された工場環境内でこの情報を使用して、MIMO送信機及び/又は受信機の可変利得増幅器及び/又は電力増幅器を増分又は減分し、通常動作中に使用するためのデフォルト信号出力オフセットを生成する。その後、リターンチャネルを介してこのような信号情報を同様に提供し、これを使用して送信パラメータをさらに調整し、位置にまつわる信号状態を明らかにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システムにおいて個々のチャネルの送信出力を制御及び/又は調整することに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチ入力及びマルチ出力システム、すなわちMIMOシステムは、送信機側及び受信機側の両方において複数アンテナを使用することに依拠する。MIMO技術は、非MIMO構成を介した追加の送信出力を必要とせずにデータスループット及びリンク範囲を増加させる傾向にあるので、このような技術は数多くの無線通信アプリケーションにますます採用されている。特に、MIMOシステムは、フェージング効果を低減させることにより、高いスペクトル効率及び向上したリンク信頼性が得られる傾向にある。
【0003】
図1を参照すると、典型的なMIMO通信システム100では、送信機側110が、(当業で公知のように)各々が独自のアンテナ及び関連する信号送信回路を有する複数の個々の送信機(TX1〜TXn)で構成される。受信機側120も、(当業で公知のように)やはり各々が独自のアンテナ及び関連する信号受信回路を有する複数の受信機(RX1〜RXn)で構成される。MIMO通信システム100は、送信機側110の複数の送信アンテナを使用して複数の通信ストリームを送信するという概念に基づく。これらの通信ストリームは、送信機側110の様々な送信アンテナと受信機側120の対応する受信アンテナとの間に延びる複数の通信経路から構成されるチャネルマトリクス130を通過する。MIMO通信システム100はまた、送信機側にフィードバックを提供するために使用するリターンチャネル140も含む。このようなフィードバックの例として、認証、受信品質及び新しいチャネルへの周波数ジャンプの調整が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、送信機(TX1〜TXn)の各々は、独自の電力増幅器(PA)及び可変利得増幅器(VGA)を有するのに対し、個々の受信機(RX1〜RXn)は独自のVGAを有する。1つのチャネルの性能が別のチャネルよりも優れていること、又はあるチャネルのグループの性能が別のチャネルのグループよりも優れていることは珍しくない。理想的には、送信機(TX1〜TXn)の全てが出力特性において非常に厳密に一致すべきである。実際には、ある出力許容範囲を上回る送信機チャネルが、メーカーの品質管理要件を満たさないこともある。従って、MIMO送信機の出力特性を向上させて、システムパフォーマンスを向上させ、及び/又は製造関連コストを削減する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、MIMOシステムにおいて出力制御を行うためのシステム及び方法を開示して特許請求する。1つの実施形態では、MIMO通信システムにおいて出力制御を行う方法が、MIMO通信システムの複数の個々の送信機を含む送信機側により提供される複数の信号強度を測定するステップを含む。次に、この複数の信号強度を、複数の個々の送信機のうちの対応する送信機に相関付けることができる。この方法は、複数の信号強度のいずれかが所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するステップと、複数の信号強度に関するフィードバックをリターンチャネルを介して送信機側に提供するステップと、その後所定の許容範囲を上回る複数の信号強度のいずれかに対応する複数の個々の送信機の各々の信号出力オフセットを調整するステップとをさらに含む。
【0006】
別の実施形態では、環境が制御されていないユーザ位置及び環境が制御されている製造位置の一方において上述の方法を実施することができる。また、この方法は、テスト装置によって行われる工場較正プロセス、又は通常動作中に実施される出力制御スキームを含むことができる。別の実施形態では、この方法を受信機側で実施することができる。
【0007】
当業者には、以下の本発明の詳細な説明に照らして本発明の他の態様、特徴、及び技術が明らかになるであろう。
【0008】
以下に示す詳細な説明を、全体を通じて対応するものを同様の参照符号で識別する図面と併せて読めば、本発明の特徴、目的、及び利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】典型的なMIMO通信システムの送信機側及び受信機側を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による、送信機側のためのMIMO信号較正プロセスを工場レベルで実施するためのプロセスを示す図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による、受信機側のためのMIMO信号較正プロセスを工場レベルで実施するためのプロセスを示す図である。
【図4】本発明の1つの実施形態による、通常動作中にMIMO信号較正スキームを実施するためのプロセスを示す図である。
【図5】本発明の1つの実施形態に基づいて構成されたMIMO送信機側システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示の概観
本開示の1つの態様は、MIMO通信システムにおいて各個々のチャネルの信号強度情報に関するフィードバックを提供することに関する。1つの実施形態では、このフィードバックを有線又は無線リターンチャネルを介して提供することができ、工場での較正プロセスとして、及び/又はユーザ位置での通常動作中に実施することができる。工場で実施する場合、このようなフィードバック情報を使用して、デフォルト又は初期信号出力オフセットを設定することができる。通常動作中にユーザ位置で実施する場合、このようなフィードバックを使用して、位置にまつわる干渉及びユーザ位置に固有の関連信号の異常を明らかにすることができる。いくつかの実施形態では、MIMO通信システムが通常動作を行っている間に、このプロセスを連続して実施することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、上述したフィードバックを使用して、MIMOシステムの送信機側における個々の送信機の各々の送信パラメータを制御又は較正することができる。同様に、別のフィードバックを使用して、MIMOシステムの受信機側における個々の受信機のパラメータを制御又は較正することができる。1つの実施形態では、このような制御が、MIMOシステムを構成するMIMO送信機及び/又は受信機の1又はそれ以上のVGA及び/又はPAオフセットを調整するステップを含むことができる。これらの調整又はオフセットは、PGA及び/又はVGAを所定量だけ増分又は減分することにより、或いは測定した信号強度が何らかの許容範囲値を上回る量の関数として行うことができる。
【0012】
この較正プロセスを工場レベルで実施する場合、メーカーの信号出力許容範囲の品質管理要件を上回る装置の数を最小化することができる。その後、MIMOシステム(すなわち、送信機側及び受信機側の両方)が通常動作に入ったときに使用できるように、これらの結果としての又はデフォルトの工場レベルのオフセットを記憶することができる。
【0013】
また、送信機ごとではなく(或いは送信機ごとに加えて)、送信機側全体に対してシステムレベルの利得制御対策を使用することができる。いくつかの実施形態では、全ての信号出力利得レベルをともに上下に調整することにより、システム制御をより良好にし、信号受信をより容易にし、及び/又は送信ストリームをより容易に元々の個々のストリームに分離することができる。
【0014】
本明細書で使用する「1つの(英文不定冠詞)」という用語は、1又は1よりも多くの、と定義される。「複数の」という用語は、2又は2よりも多いことを意味する。「別の」という用語は、第2の又はそれ以上の、と定義される。「含む(including)」及び/又は「有する(having)」という用語には(備える(comprising)のように)制限がない。本明細書で使用する「又は」という用語は包括的なものとして解釈すべきであり、すなわちいずれか1つ又はあらゆる組み合わせを意味する。従って、「A、B又はC」は、「A、B、C、AとB、AとC、BとC、AとBとC、のいずれか」を意味する。この定義に対する例外は、要素、機能、ステップ又は行為の組み合わせが何らかの点で本質的に互いに相容れない場合にのみ生じる。
【0015】
本文書全体を通じて、「1つの実施形態」、「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」又は同様の用語への言及は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて至るところに出現するこのような語句は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及するものではない。さらに、特定の特徴、構造又は特性を、本発明を限定することなく1又はそれ以上の実施形態にあらゆる好適な態様で組み合わせることができる。
【0016】
コンピュータプログラミングの当業者の手法に従って、以下、コンピュータシステム又は同様の電子システムにより実行される動作を参照しながら本発明について説明する。このような動作を、コンピュータ実行型と呼ぶこともある。符号で表される動作として、中央処理装置などのプロセッサによるデータビットを表す電気信号の操作、及びシステムメモリ内などの記憶場所におけるデータビットの保持、並びにその他の信号の処理が挙げられることが理解されよう。データビットを保持する記憶場所とは、データビットに対応する特定の電気的、磁気的、光学的、又は有機的特性を有する物理的場所のことである。
【0017】
ソフトウェアの形で実現される場合、基本的に本発明の要素は、必要なタスクを行うためのコードセグメントである。このコードセグメントはプロセッサ可読媒体に記憶することができ、或いはコンピュータデータ信号により送信することができる。「プロセッサ可読媒体」は、情報を記憶又は転送できるあらゆる媒体を含むことができる。プロセッサ可読媒体の例として、電子回路、半導体メモリ装置、ROM、フラッシュメモリ又はその他の不揮発性メモリ、フロッピーディスク、CD−ROM、光ディスク、ハードディスク、光ファイバ媒体、無線周波数(RF)リンクなどが挙げられる。
【0018】
例示的な実施形態
ここで図2を参照すると、本発明の原理によるMIMO信号較正スキームを実施するためのプロセスの1つの実施形態を示している。1つの実施形態では、プロセス200を、このようなMIMO通信システム100などのMIMO通信システムの送信機側のための工場較正プロセスとして実施することができる。詳細には、プロセス200はブロック210から開始し、ここで(TX1〜TXnなどの)MIMO送信機の各々がテスト信号を生成することができる。次にブロック220において、これらのテスト信号を専用のテスト装置により測定することができる。1つの実施形態では、有線又は無線チャネルのいずれかを介してテスト信号をテスト装置に提供することができる。無線で送信する場合、制御された環境内でテスト信号を送信して、周囲の干渉及び位置にまつわる信号の異常を最小化することができる。しかしながら、個々のMIMO送信機の各々により、1又はそれ以上の有線接続を介してテスト信号をテスト装置に同様に提供することもできる。有線接続を介して送信する場合、テスト信号が生成された後ではあるがアンテナに到達する前のポイントでテスト信号を捕捉することができる。この信号捕捉プロセスは、テスト中のユニットの送信機側における個々の送信機の各々にテスト装置を接続することによって行うことができる。なお、テスト装置は、テスト信号を受信してその信号強度特性を測定できる(スペクトルアナライザ、ネットワークアナライザなどの)あらゆる公知の装置を含むことができる。
【0019】
信号を測定し終えると、プロセス200はブロック230へ進むことができ、ここで、測定した信号強度を、これらの信号を生成するとともにMIMOシステムの(送信機側110などの)送信機側を構成する個々の送信機に相関付けることができる。或いは、ブロック220の測定動作の前に、個々の送信機をこれらのそれぞれの信号に相関付けることができる。
【0020】
次に、プロセス200はブロック240へ進むことができ、ここで、送信機側の個々の送信機のいずれかが、他の送信機から(±XdBなどの)所定の許容範囲外にある信号強度を示すかどうかを判定することができる。1つの実施形態では、この許容範囲をメーカーが設定することができる。
【0021】
1つの実施形態では、送信機全ての信号強度を加算し平均して信号平均値を出すことにより、ブロック240での判定を行うことができる。次に、個々の送信機の各々の信号強度を、この計算した信号平均値と比較して、個々の送信機のいずれか1つが、計算した信号平均値から(±XdBなどの)所定の許容範囲よりも大きく異なるかどうかを調べる。或いは、ブロック240の判定は、ブロック220において送信機の各々の信号強度を数回サンプリングすることに基づくことができる。その後、これらのサンプルを、送信機の各々の標準偏差値と比較することができる。
【0022】
ブロック240において判定を行うためのさらに別の方法は、この場合もブロック220において送信機の各々の信号強度を数回サンプリングすることである。しかしながら、標準偏差値を直接比較するのではなく、まず個々の送信機のサンプルを加算して平均し、その後送信機全ての標準偏差を使用して所定の許容範囲を上回るかどうかを判定することができる。なお、当然ながら、個々の送信機のいずれかの信号強度が所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するための方法は他にも数多く存在する。
【0023】
ブロック240における判定をどのように行うかに関わらず、個々の送信機が所定の許容範囲を上回っていないと判定された場合、プロセス200はブロック250へ進み、ここでプロセスを終了することができる。一方で、送信機のいずれか1つ又はそれ以上が信号強度許容範囲を上回ると判定された場合、プロセス200はブロック260へ進むことができ、ここで、この判定を表すフィードバックをリターンチャネルを介して送信機側に提供することができる。このようなフィードバックは、テスト装置により有線又は無線リターンチャネルを介して送信機側に提供できることが好ましい。
【0024】
引き続図2を参照すると、プロセス200は、その後ブロック270へ進むことができ、ここでブロック240において許容範囲を上回ったいずれかの個々の送信機の送信パラメータを上下に調整することができる。1つの実施形態では、このような調整が、問題の特定の送信機の(VGA及び/又はPAオフセットなどの)出力オフセットを調整するステップを含むことができる。1つの実施形態では、信号出力利得を所定量だけ増分又は減分することにより、このような較正を行うことができる。或いは、較正の量を、所与の送信機が所定の許容範囲を上回る量の関数とすることができる。ブロック210〜270の動作は、個々の送信機の各々の信号強度が正常化される(すなわち、各々が許容範囲内の信号強度を示す)まで繰り返すことができる。その後、結果として得られる最終的な信号出力オフセットの組(すなわち、PA及び/又はVGAの調整)を特定のMIMOシステムによって記憶し、MIMOシステムが通常動作に入ったときにデフォルト信号出力オフセットとして使用することができる。
【0025】
ここで図3を参照すると、本発明の原理に基づいてMIMO信号較正スキームを実施するためのプロセスの別の実施形態を示している。上記の図2のプロセスは、このようなMIMO通信システムの送信機側のための工場較正プロセスに関するものであるが、プロセス300は、このようなMIMO通信システムの受信機側のための帰結的工場較正プロセスである。
【0026】
上記のプロセス200と同様に、ブロック310において生成したテスト信号を、有線又は無線チャネルのいずれかを介してテスト装置に提供することができる。無線で送信する場合、制御された環境内でテスト信号を送信して、周囲の干渉及び位置にまつわる信号の異常を最小化することができる。しかしながら、テスト装置により、テスト信号を1又はそれ以上の有線接続を介して個々のMIMO受信機の各々に同様に提供することもできる。このようなテスト装置は、テスト信号を生成できるあらゆる公知の装置を含むことができる。
【0027】
受信されると、ブロック320においてこれらのテスト信号を受信機側で測定することができる。なお、信号強度の測定には、あらゆる数の公知の手段を使用することができる。
【0028】
信号を測定し終えると、プロセス300はブロック330へ進むことができ、ここで、個々の測定した信号強度を、MIMOシステムの(受信機側120などの)受信機側を構成する個々の受信機に相関付けることができる。
【0029】
次に、プロセス300はブロック340へ進むことができ、ここで、個々の受信機のいずれかが、他の受信機から(±XdBなどの)所定の許容範囲外にある受信信号強度を示すかどうかを判定することができる。1つの実施形態では、この許容範囲をメーカーが設定することができるが、同様にユーザプリファレンスなどに基づくこともできる。
【0030】
上記の図2のブロック240における判定と同様に、ブロック340の判定は、ブロック240に関して上述した技術の各々を含むいくつかの異なる技術を使用して行うことができる。説明を簡略にするために、ここでは上記のブロック240での開示を繰り返さないが、ブロック340の動作にもこれらの同じ技術又は方法を適用することができる。
【0031】
ブロック340における判定をどのように行うかに関わらず、個々の受信機が所定の許容範囲を上回っていないと判定された場合、プロセス300はブロック350へ進み、ここでプロセスを終了することができる。一方で、受信機のいずれか1つ又はそれ以上が受信信号強度許容範囲を上回ると判定された場合、プロセス300はブロック360へ進むことができ、ここで、受信した問題の信号強度を表すフィードバックをリターンチャネル(有線又は無線)を介してテスト装置に提供することができる。なお、ブロック360のフィードバックをテスト装置に提供した後にブロック340の判定を行ってもよい。すなわち、受信機側は、受信機の各々の情報信号フィードバックをテスト装置に提供することができ、この結果、テスト装置は、これらの信号強度情報を既知の値と比較して、所定の許容範囲を上回るかどうかを判定することができる。
【0032】
引き続き図3を参照すると、プロセス300は、その後ブロック370へ進むことができ、ここでブロック340において許容範囲を上回ったいずれかの個々の受信機の受信パラメータを上下に調整することができる。1つの実施形態では、このような調整が、問題の特定の受信機のVGAオフセットを調整するステップを含むことができる。1つの実施形態では、利得を所定量だけ増分又は減分することにより、このような較正を行うことができる。或いは、較正の量を、所与の受信機が所定の許容範囲を上回る量の関数とすることができる。ブロック310〜370の動作は、個々の受信機の各々の信号強度が正常化される(すなわち、各々が許容範囲内の受信信号強度を示す)まで繰り返すことができる。
【0033】
ここで図4を参照すると、本発明の1つの実施形態による、通常動作中にMIMO信号出力制御スキームを実施するためのプロセスを示している。詳細には、プロセス400は、ユーザ位置での場合のような、制御されていない環境内での通常動作中に実施することができる。プロセス400は、MIMOシステムの動作中に連続して又は定期的に実施できることが好ましい。
【0034】
プロセス400は、ブロック410から開始し、(TX1〜TXnなどの)MIMO送信機の各々が受信機側へトレーニング信号を送信する。1つの実施形態では、トレーニング信号が、受信機側が予測する又は別様に認識する事前に定めたパターン又はシーケンスを含むことができる。なお、上記でプロセス200及び/又は300に基づいて求められたいずれかの事前に記憶したデフォルト信号出力オフセットを使用してトレーニング信号を送信することもできる。これらのトレーニング信号は、MIMOシステムの動作中に連続して又は定期的に生成することができる。
【0035】
受信されると、ブロック420において、これらのトレーニング信号を(受信機側120などの)受信機側で測定することができる。なお、信号強度の測定には、あらゆる数の公知の手段を使用することができる。信号を測定し終えると、プロセス400はブロック430へ進むことができ、ここで、測定した信号強度を、これらの信号を生成するとともにMIMOシステムの(送信機側110などの)送信機側を構成する個々の送信機に相関付けることができる。或いは、ブロック420の測定動作の前に、個々の送信機をこれらのそれぞれの信号に相関付けることができる。
【0036】
次に、プロセス400はブロック440へ進むことができ、ここで、送信機側の個々の送信機のいずれかが、他の送信機から(±XdBなどの)所定の許容範囲外にある信号強度を示すかどうかを判定することができる。この許容範囲はメーカーが設定することができ、或いはユーザ定義とすることができる。
【0037】
図2及び図3のブロック240及び340の判定とそれぞれ同様に、ブロック440の判定も、ブロック240に関して上述した技術の各々を含むいくつかの異なる技術を使用して行うことができる。
【0038】
ブロック440における判定をどのように行うかに関わらず、個々の送信機が所定の許容範囲を上回っていないと判定された場合、プロセス400は経路450をたどって、ブロック410〜440の動作を連続して又は定期的に繰り返す。ブロック410〜440を繰り返すための時間増分は、工場に基づくものであっても又はユーザに基づくものであってもよい。
【0039】
一方で、ブロック440において送信機のいずれか1つ又はそれ以上が信号強度許容範囲を上回ると判定された場合、プロセス400はブロック460へ進むことができ、ここで任意の受信機補償動作を開始することができる。詳細には、この受信機補償動作は、受信機側がブロック440からの識別された(単複の)許容範囲外信号を補償できるかどうかを判定することにより、ブロック460において開始することができる。受信機側が補償できると判定された場合、プロセス400はブロック470へ進むことができ、ここでこのような補償を行うことができる。1つの実施形態では、このような補償が、受信機側を構成する個々の受信機の1又はそれ以上のVGAを調整するステップを含むことができる。1つの実施形態では、このような補償が、受信機側の個々の受信機の1又はそれ以上のVGAオフセットを調整するステップ(例えば、増分又は減分するステップ)を含むことができる。
【0040】
一方、ブロック460において、識別された許容範囲外信号を受信機側が補償できないと判定された場合、或いは任意の受信機補償機能がプロセス400の一部として行われない場合、プロセス400はブロック480へ進むことができ、ここで、(受信機側120などの)受信機側が、MIMOシステムの(無線リターンチャネル140などの)リターンチャネルを介して代表的フィードバックを提供することができる。なお、ブロック440の判定は、受信機側で行ってもよいし、或いは送信機側で行ってもよい。送信側で行う場合、ブロック480のフィードバック動作をブロック440の判定前に行うことができる。
【0041】
引き続き図4を参照すると、プロセス400は次にブロック490へ進むことができ、ここで、ブロック440において許容範囲を上回ったいずれかの個々の送信機の送信パラメータを上下に調整することができる。1つの実施形態では、この調整が、問題の特定の送信機の(VGA及び/又はPAオフセットなどの)出力オフセットを調整するステップを含むことができる。1つの実施形態では、信号出力利得を所定量だけ増分又は減分することにより、このような較正を行うことができる。或いは、較正の量を、所与の送信機が所定の許容範囲を上回る量の関数とすることができる。ブロック410〜490の動作は、MIMOシステムが動作している間、連続して又は定期的に継続することができる。
【0042】
図4には示していないが、別の実施形態では、図4の個々の送信機調整プロセスではなく(或いはこのプロセスに加えて)、送信機側全体に対してシステムレベルの利得制御スキームを使用することができる。この出力利得制御スキームは、送信機側からの全体の信号強度を許容できるかどうか(例えば、所望の範囲内にあるか、最低レベルよりも上にあるかなど)を(ブロック440などにおいて)判定するステップを含むことができる。この判定は、ユーザプリファレンス、特定の通信アプリケーションなどに基づくことができる。
【0043】
全体の信号強度を許容できないと判定された場合、受信機側は、同様にMIMOシステムのリターンチャネルを介してその効果に対するフィードバックを提供することができる。このフィードバックを送信機側で使用して、送信機の全てに適用できる送信パラメータを制御することができる。特に、送信機側の送信機全ての送信機利得を同じ量だけ上下に調整して、システム制御をより良好にし、信号受信をより容易にし、及び/又は送信ストリームをより容易に元々の個々のストリームに分離するようにすることができる。
【0044】
なお、MIMOシステムの(リターンチャネル140などの)無線リターンチャネルは、受信機側の単一の送信機及び送信機側の単一の受信機で構成される。このように、プロセス400を使用して、リターンチャネルを構成する送信機及び受信機を同様に較正することができる。
【0045】
ここで図5を参照すると、本発明の原理に基づいて構成された例示的なMIMO送信機側システム500を示している。送信機側システム500は、複数の個々のアンテナ、及び図5に送信機TX1〜TXnとして示す(VGA、PAなどの)関連する信号送信回路を含む。送信機のVGA、PA及びその他の信号送信回路の詳細は当業で公知である。
【0046】
送信機側システム500は、各個々の送信機TX1〜TXnのVGA及び/又はPAを、リターンチャネル520(有線でも又は無線でもよい)からのフィードバックに基づいて及び図2又は図4のプロセス200又は400それぞれに基づいて制御/調整するための出力制御論理510をさらに含む。具体的には、詳細に上述したように、出力制御論理510を使用して信号出力オフセットを調整することができる。別の実施形態では、例えば、上述したブロック240及び/又は440の判定動作を送信機側で行う場合、このような動作を出力制御論理510によって同様に行うことができる。
【0047】
特定の例示的な実施形態について説明し添付図面に示したが、このような実施形態は、幅広い本発明を例示するものにすぎず、本発明を限定するものではないこと、及び当業者には様々な他の修正が思い浮かぶと考えられるので、本発明が、図示及び説明した特定の構造及び構成に限定されるものではないことを理解されたい。本明細書で参照した商標及び著作権は、これらのそれぞれの所有者の所有物である。
【符号の説明】
【0048】
400 プロセス
410 個々のMIMO送信機がトレーニング信号を生成
420 個々のMIMO送信機の信号強度を測定
430 測定した信号強度を個々の送信機に相関付け
440 いずれかの送信機が許容範囲を上回るか?
450 経路
460 受信機は補償を行うことができるか?
470 受信機の信号出力オフセットを調整
480 リターンチャネルを介してフィードバックを送信機側に提供
490 個々の送信機の信号出力オフセットを調整

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システムにおいて出力制御を行う方法であって、
前記MIMO通信システムの複数の個々の送信機を含む送信機側により提供される複数の信号強度を測定する動作と、
前記複数の信号強度を前記複数の個々の送信機のうちの対応する送信機に相関付ける動作と、
前記複数の信号強度のいずれかが所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する動作と、
前記複数の信号強度に関するフィードバックをリターンチャネルを介して前記送信機側に提供する動作と、
前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の送信機の各々の信号出力オフセットを調整する動作と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法が、環境が制御されていないユーザ位置、及び環境が制御されている製造位置の一方で行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号出力オフセットの前記調整に基づくデフォルト信号出力オフセットを、前記MIMO通信システムの通常動作中に使用するために記憶するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フィードバックを提供するステップが、前記複数の信号強度に関するフィードバックを前記リターンチャネルを介して前記送信機側に提供するステップを含み、前記リターンチャネルが有線又は無線通信チャネルの一方である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の信号強度のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する前記ステップが、
前記複数の信号強度を加算し平均して信号平均値を生成するステップと、
前記信号平均値を前記所定の許容範囲と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記複数の送信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の信号強度を測定するステップが、前記複数の信号強度を数回サンプリングして前記複数の送信機の各々の複数の信号サンプルを生成するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の信号サンプルに基づいて、前記複数の送信機の各々の複数の標準偏差を計算するステップと、
前記複数の標準偏差を加算し平均して標準偏差平均値を生成するステップと、
前記標準偏差平均値を前記所定の許容範囲と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記複数の送信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号出力オフセットが、前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の送信機の各々の可変利得増幅器及び電力増幅器の少なくとも一方を調整するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記信号出力オフセットを調整するステップが、前記信号出力オフセットを所定の増分だけ調整するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記信号出力オフセットを調整するステップが、前記複数の信号強度のうちの対応する信号強度が前記所定の許容範囲を上回る量に基づいて前記信号出力オフセットを調整するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フィードバックを提供する前記ステップが、前記複数の信号強度のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する前記ステップの前に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、テスト装置により実施される工場較正方法を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
マルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システムにおいて出力制御を行う方法であって、
前記MIMO通信システムの複数の個々の受信機を含む受信機側が受信した複数の信号強度を測定する動作と、
前記複数の信号強度を前記複数の個々の受信機のうちの対応する受信機に相関付ける動作と、
前記複数の信号強度のいずれかが所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する動作と、
前記複数の信号強度に関するフィードバックをリターンチャネルを介して前記受信機側から提供する動作と、
前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の受信機の各々の信号出力オフセットを調整する動作と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法が、環境が制御されていないユーザ位置、及び環境が制御されている製造位置の一方で行われる、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号出力オフセットの前記調整に基づくデフォルト信号出力オフセットを、前記MIMO通信システムの通常動作中に使用するために記憶するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
フィードバックを提供するステップが、前記複数の信号強度に関するフィードバックを前記リターンチャネルを介して前記受信機側に提供するステップを含み、前記リターンチャネルが有線又は無線通信チャネルの一方である、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の信号強度のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する前記ステップが、
前記複数の信号強度を加算し平均して信号平均値を生成するステップと、
前記信号平均値を前記所定の許容範囲と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記複数の受信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の信号強度を測定するステップが、前記複数の信号強度を数回サンプリングして前記複数の受信機の各々の複数の信号サンプルを生成するステップを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の信号サンプルに基づいて、前記複数の受信機の各々の複数の標準偏差を計算するステップと、
前記複数の標準偏差を加算し平均して標準偏差平均値を生成するステップと、
前記標準偏差平均値を前記所定の許容範囲と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記複数の受信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記信号出力オフセットが、前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の送信機の各々の可変利得増幅器を調整するステップを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、テスト装置により実施される工場較正方法を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項22】
マルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システムであって、
対応する複数の信号強度を有する信号を送信するようにされた複数の個々の送信機を含む送信機側と、
前記信号を受信するようにされた複数の受信機を含む受信機側と、
を含み、前記受信機側がさらに、
前記送信機側から受信した前記複数の信号強度を測定し、
前記複数の信号強度を複数の個々の送信機のうちの対応する送信機に相関付け、
前記複数の信号強度に関するフィードバックを前記MIMO通信システムのリターンチャネルを介して前記送信機側に提供する、
ようにされ、さらに、前記送信機側及び受信機側の少なくとも一方が、
前記複数の信号強度のいずれかが所定の許容範囲を上回るかどうかを判定し、
前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の送信機の各々の信号出力オフセットを調整する、
ようにされた、
ことを特徴とするマルチ入力及びマルチ出力(MIMO)通信システム。
【請求項23】
前記信号出力オフセットが、環境が制御されていないユーザ位置、及び環境が制御されている製造位置の一方で調整される、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項24】
前記調整された信号出力オフセットに基づくデフォルト信号出力オフセットが、前記MIMO通信システムの通常動作中に使用される、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項25】
前記リターンチャネルが、有線又は無線通信チャネルの一方である、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項26】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、
前記複数の信号強度を加算し平均して信号平均値を生成し、
前記信号平均値を前記所定の許容範囲と比較し、
前記比較に基づいて、前記複数の送信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する、
ことにより、前記複数の信号強度のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項27】
前記受信機側が、前記複数の信号強度を数回サンプリングすることにより前記複数の信号強度を測定して前記複数の送信機の各々の複数の信号サンプルを生成するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項28】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、
前記複数の信号サンプルに基づいて前記複数の送信機の各々の複数の標準偏差を計算し、
前記複数の標準偏差を加算し平均して標準偏差平均値を生成し、
前記標準偏差平均値を前記所定の許容範囲と比較し、
前記比較に基づいて、前記複数の送信機のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する、
ようにされたことを特徴とする請求項27に記載のMIMO通信システム。
【請求項29】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、前記所定の許容範囲を上回る前記複数の信号強度のいずれかに対応する前記複数の個々の送信機の各々の可変利得増幅器及び電力増幅器の少なくとも一方を調整することにより、前記信号出力オフセットを調整するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項30】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、前記信号出力オフセットを所定の増分だけ調整することにより前記信号出力オフセットを調整するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項31】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、前記複数の信号強度のうちの対応する信号強度が前記所定の許容範囲を上回る量に基づいて前記信号出力オフセットを調整することにより、前記信号出力オフセットを調整するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。
【請求項32】
前記送信機側及び前記受信機側の少なくとも一方がさらに、前記複数の信号強度のいずれかが前記所定の許容範囲を上回るかどうかを判定する前に前記フィードバックを提供するようにされた、
ことを特徴とする請求項22に記載のMIMO通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514895(P2012−514895A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544636(P2011−544636)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/000017
【国際公開番号】WO2010/080689
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(593181638)ソニー エレクトロニクス インク (371)
【Fターム(参考)】