説明

MIMO通信装置

【課題】使用環境により電波状況が変化したとしても、通信性能の低下を抑制する。
【解決手段】MIMO通信装置10は、第1のアンテナ部12と、第1のアンテナ部12から離間して配された第2のアンテナ部14と、第1のアンテナ部12と第2のアンテナ部14との間の位置関係を変える可動部16と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO通信装置に関し、特にUSB型のMIMO通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多重入出力(Multi Input Multi Output:MIMO)通信装置は、無線信号を送信および受信するアンテナを複数備えている(特許文献1参照)。複数のアンテナは、時間符号化(STC)の技術を用いて、それぞれ別の信号を同時に送信する。
【0003】
受信側のアンテナは、送信側の複数のアンテナから送信された複数の信号を同時に受信する。無線信号の伝送経路は、送信側のアンテナと受信側のアンテナの数の積だけ存在する。つまり、受信側の各アンテナは、全ての送信側のアンテナから送信された複数の信号が混在した混在信号を受信する。
【0004】
受信側のアンテナで受信した複数の混在信号は、時間複合化(STD)の技術、つまりマルチパス伝送路に応じた行列計算を行うことによって個々の信号に分離される。このようにして、複数のアンテナによって異なる信号を同時に送信および受信できるため、MIMO通信装置は、伝送容量の増大を実現することが可能である。
【0005】
このようなMIMO通信装置として、パーソナルコンピュータなどの情報機器に着脱可能なUSB型のMIMO通信装置も存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−049982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MIMO通信装置において、符号化および/または複合化は、無線信号の伝送経路、いわゆるマルチパス伝送路に応じた行列計算によって行われる。そのため、使用環境の変化に応じて電波状況が変化した場合、複数の混在信号を完全に個々の信号に分離することができず、ノイズの原因となるという課題がある。
【0008】
符号化および/または複合化は、アンテナ間の位置関係の相違に基づいて行われる。そのため、小型のMIMO通信装置ではアンテナ間の距離が短くなり、複数の混在信号を精度良く個々の信号に分離することは難しいという課題もある。
【0009】
本発明の目的は、上記課題の少なくとも1つを解決するMIMO通信装置を提供することにある。その目的の一例は、使用環境により電波状況が変化したとしても、通信性能の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様におけるMIMO通信装置は、第1のアンテナ部と、第1のアンテナ部から離間して配された第2のアンテナ部と、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部との間の位置関係を変える可動部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用環境により電波状況が変化したとしても、通信性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るMIMO通信装置の概略平面図である。
【図2】図1に示すMIMO通信装置において、アンテナ部の位置関係が変えられることを説明する図である。
【図3】比較例におけるMIMO通信装置の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るMIMO通信装置の概略平面図である。図2は、図1とは異なる面から見た、MIMO通信装置の概略平面図である。
【0015】
MIMO通信装置10は、第1のアンテナ部12および第2のアンテナ部14を備えている。第2のアンテナ部14は、第1のアンテナ部12から離間して配されている。図2に示すように、第1のアンテナ部12と第2のアンテナ部14との間の位置関係は、可動部16によって変えられるようになっている(図2(a)および図2(b)参照)。可動部16は、第1のアンテナ部12と第2のアンテナ部14との間の位置関係を変えることが出来る限り、どのような構成であっても良い。
【0016】
MIMO通信装置10は、送信回路34および受信回路32を備えている。送信回路34は、複数のデータを同時に送信するため、これらのデータを符号化する。符号化されたデータは、アンテナ部12,14から送信される。
【0017】
アンテナ部12,14は、別の通信機器から送信されたデータを受信するためにも用いられる。受信したデータは、複数のデータが混在した混在信号であり、受信回路32はこの混在信号を各々の信号に分離する。
【0018】
本発明によれば、使用環境の変化などにより電波状況が変わったとしても、通信性能の低下を抑制するように、第1のアンテナ部12と第2のアンテナ部14との間の位置関係を調整することができる。これにより、受信回路32は、混在信号を精度良く各々の信号に分離することができるようになる。
【0019】
図3は比較例におけるMIMO通信装置40の概略平面図である。図3において、図1および図2と同じ構成要素には同じ符号を付している。比較例のMIMO通信装置40は、アンテナ部12,14の位置関係が本発明のMIMO通信装置10と異なっている。比較例では、2つのアンテナ部12,14が近接して設けられており、アンテナ部12,14間の位置関係は固定されている。したがって、比較例のMIMO通信装置40では、使用環境の変化などにより電波状況が変わったときに、通信性能が低下してしまう。
【0020】
本実施形態では、第1のアンテナ部12は第1の筐体22に内蔵されていることが好ましい。第2のアンテナ部14は第2の筐体24に内蔵されていることが好ましい。アンテナ部12,14が内蔵されているため、MIMO通信装置10の強度、設計上の自由度およびデザインの向上を図ることができる。
【0021】
この場合、第1の筐体22と第2の筐体24とは可動部16によって互いに接続されている。図に示すように、可動部16は、第2の筐体24に対して第1の筐体22を回動させる回動軸であって良い。これにより、容易に、第1のアンテナ部12と第2のアンテナ部14との間の位置関係を変えることが出来る。
【0022】
図1および図2に示すように、第2の筐体24は概ね長い直方体形状になっていることが好ましい。第2の筐体24の長手方向の一端付近に第2のアンテナ部14が設けられており、第2の筐体24の長手方向の他端付近に第1の筐体22が位置している。これにより、2つのアンテナ部12,14間の距離が確保されるため、アンテナ特性の相関を低くすることができる。したがって、多重入出力方式の通信速度と通信品質の両方を向上させることが可能である。
【0023】
第1の筐体22にはUSBコネクタ18が設けられていることが好ましい。MIMO通信装置10は、USBコネクタ18を介して、パーソナルコンピュータなどの情報機器38に接続される。
【0024】
具体的には、第2の筐体24は、略直方体形状をしており、直方体形状の一端面(第1の端面)から突出した突出部25を有している。USBコネクタ18は、第1の筐体22の先端に設けられている。第1の筐体22は、第2の筐体24の上記第1の端面と第2の筐体24の突出部25とに隣接して配置されており、回動軸16によって第2の筐体の突出部25と接続されている。回動軸16は、第1の筐体22の中心付近に設けられている。USBコネクタ18は、第1の筐体22の一端に設けられており、第1のアンテナ部12は第1の筐体22の他端付近に設けられている。第1の筐体22が第2の筐体24に対して回動することによって、USBコネクタ18の先端が第2の筐体24で覆われた状態(図2(a)参照)と、USBコネクタ18の先端が露出した状態(図2(b)参照)とに変えられる。これにより、未使用時に、USBコネクタ18の先端を覆った状態で保管することができるという利点がある。
【0025】
図1では、第2の筐体24の一端面(第1の端面)から突出した突出部25は2つ存在している。しかしながら、突出部25は、第1の筐体22を回動可能に保持できれば1つであっても良い。
【0026】
上記実施形態では、2つのアンテナ部を備えたMIMO通信装置10について説明したが、本発明は、3つ以上のアンテナ部を備えたMIMO通信装置にも適用できる。この場合、少なくとも特定の2つのアンテナ部の位置関係が可変に構成されていれば良い。また、任意のアンテナ部の位置関係を変えられるように、可動部は、2箇所以上に存在していても良い。
【0027】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
10 MIMO通信装置
12 第1のアンテナ部
14 第2のアンテナ部
16 可動部
18 コネクタ
22 第1の筐体
24 第2の筐体
25 突出部
32 受信回路
34 送信回路
38 情報機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナ部と、
前記第1のアンテナ部から離間して配された第2のアンテナ部と、
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部との間の位置関係を変える可動部と、を備えたMIMO通信装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナ部が内蔵された第1の筐体と、前記第2のアンテナ部が内蔵された第2の筐体とを有し、
前記可動部は、前記第1の筐体と前記第2の筐体との位置関係を変える、請求項1に記載のMIMO通信装置。
【請求項3】
前記可動部は、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体を回動させる回動軸である、請求項2に記載のMIMO通信装置。
【請求項4】
前記第1の筐体の先端に設けられたUSBコネクタを有し、
前記第2の筐体は直方体形状の第1の端面から突出した突出部を有し、
前記第1の筐体は、前記第2の筐体の前記第1の端面と前記第2の筐体の前記突出部とに隣接して配置され、
前記第2の筐体の前記突出部と前記第1の筐体とは前記回動軸で接続されており、
前記第2の筐体に対して前記第1の筐体が回動することによって、前記USBコネクタの先端が前記第2の筐体で覆われた状態と、前記USBコネクタの先端が露出した状態とに変えられる、請求項3に記載のMIMO通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−4804(P2012−4804A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137374(P2010−137374)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】