説明

MLL−AF4のRNAi調節およびその使用方法

【課題】本研究において出願人は、t(4;11)細胞内におけるMLL−AF4遺伝子発現を特異的に阻害するためにRNAiを用いた。出願人は、融合転写MLL−AF4の枯渇がクローン形成能力および増殖を抑制し、t(4;11)陽性白血病細胞内においてアポトーシスを誘導し、SCIDマウス異種移植モデル内においてかかる細胞の生着を危うくすることを明らかにする。
【解決手段】本発明は、MLL−AF4融合遺伝子の発現を調節するための組成物及び方法に関し、より詳細には、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドによりMLL−AF4の下方制御を調節する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MLL−AF4の発現を調節するための組成物および方法に関するものであ
り、より詳細には、化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドによるMLL−AF4の下方
制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願は、2004年12月14日出願の米国仮特許出願第60/635,936号、2
005年4月5日出願の米国仮特許出願第60/668,392号および2005年7月
12日出願の米国仮特許出願第60/698,414号の利益を主張する。3つすべての
仮特許出願は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0003】
種々の異なる白血病に関して、融合遺伝子を発生させる染色体異常が観察されている(
非特許文献1)。仮に、これらの発癌遺伝子が白血病の表現型を維持するために重要であ
れば、かかる腫瘍特異性の発癌遺伝子は、強い特異性を有する新たな治療アプローチのた
めの有望な標的となるはずである。しかしながら、白血病の進行とは対照的に、白血病の
持続に関する中心的役割は、少数の白血病融合遺伝子について確立されているのみである

【0004】
染色体11q23に位置する混合系統白血病(MLL)遺伝子は、ヒト白血病に関連す
る多数の染色体転座に関与している(非特許文献2)。それらの中で最も一般的なものは
、転座t(4;11)(q21;q23)であり、かかる転座はMLL遺伝子を、染色体
4q21に位置するAF4遺伝子と融合させる(非特許文献3、非特許文献4、非特許文
献5)。この転座は、高リスクの急性リンパ芽球性白血病(ALL)の顕著な特徴であり
、特に乳児では予後不良をもたらす(非特許文献6)。
【0005】
野生型MLL遺伝子は、トリソラックス遺伝子群(family)の一員であり、43
1kDのタンパク質をコード化する。かかるタンパク質はタンパク質分解処理され、互い
にヘテロ二量化した2つの断片−300kDおよび180kDになる(非特許文献7、非
特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。MLLタンパク質は、DNA結合のため
のATフック・ドメイン、DNAメチル転移酵素(DMT)およびメチル結合ドメインタ
ンパク質1(MBD1)との相同性を示すMTドメイン、ジンク・フィンガーを含む植物
ホメオドメイン(PHD)、並びにSETヒストン・メチル転移酵素ドメインを含む複雑
な構造を有する(非特許文献2)。MLLは、ホックス遺伝子の転写を制御するメカニズ
ムに関与している(非特許文献11)。興味深いことに、ホックス遺伝子Hoxa7およ
びHoxa9とホメオティック遺伝子Meis−1との組み合わせは、異なる幾つかのM
LL融合遺伝子によって誘導される形質転換のために必要である。このような決定的な役
割は、MLL−AF4に関してはまだ報告されていない。にもかかわらず、3つすべての
ホメオティック遺伝子の発現レベルは、初代t(4;11)ALLにおいて上昇する。
【0006】
AF4遺伝子は、核局在化シグナルおよびGTP結合ドメインを含むセリン/プロリン
・リッチタンパク質をコード化する。かかるタンパク質は細胞核に局在し(非特許文献1
2)、おそらく、転写活性化機能に関与するのであろうと思われる。MLLノックアウト
・マウスが胚致死であるのに対し(非特許文献13)、AF4欠乏マウスは、不完全なT
細胞発生、およびB細胞発生の適度の改変を示す(非特許文献14)。
【0007】
特に、t(4;11)転座は2つの融合遺伝子、AF4−MLLおよびMLL−AF4
を生み出す。白血病誘発に関するいずれの融合遺伝子の重要性も、まだ完全には理解され
ていない。AF4−MLLは、ユビキチン媒介AF4分解に干渉してマウス胚由来線維芽
細胞を形質転換することが最近になって示された(非特許文献15)。しかしながら、t
(4;11)陰性白血病細胞系でのMLL−AF4の異所性発現は、細胞周期進行を阻害
し、アポトーシスを引き起こす(非特許文献16)。皮肉なことに、すべての(4;11
)ALL患者の20%は、転写レベルまたはゲノム・レベルでAF4−MLLを欠くのに
対して、MLL−AF4は、異所性発現時の前アポトーシス活性にもかかわらず、常に検
出可能である(非特許文献17、非特許文献18)。興味深いことに、いくつかの研究は
、MLL−AF4融合発癌遺伝子がt(4;11)の状況において細胞生存を支援するこ
とを示唆する。t(4;11)転座のある細胞は、長期間にわたる血清枯渇を生き延び(
非特許文献19)、CD95媒介アポトーシスに対して耐性である(非特許文献20)。
【0008】
白血病誘発に関するこの融合発癌遺伝子の役割をより正確に定義するべく、出願人は、
白血病細胞内におけるMLL−AF4発現を阻害するためにRNA干渉(RNAi)を適
用した。RNAiは、mRNAの酵素開裂および破壊を生じる細胞プロセスであって、配
列特異性を有する2本鎖の小さな干渉性RNA(siRNA)によって導かれる(非特許
文献21)。細胞にsiRNAをトランスフェクトすると、RNA誘導型サイレンシング
複合体と称される細胞質に位置付けられた(cytoplasmatically lo
cated)リボ核タンパク質複合体が発生する。siRNA鎖の一方を捨てることによ
りこの複合体が活性化され(非特許文献22、非特許文献23)、残鎖はRISCを、相
補性を有するRNA配列に向かわせ、RISC成分Ago−2により、標的RNAのエン
ドヌクレアーゼ分解による開裂をきたす(非特許文献24、非特許文献25、非特許文献
26)。外来的に追加された合成siRNAは、遺伝子発現をサイレンシングさせるため
の非常に有力な、配列特異性の薬剤として働くことが示されており(非特許文献27)、
遺伝子機能の分析ののみならず、遺伝子特異性の治療アプローチにとっても大きな可能性
を秘めていることが明らかとなった(非特許文献28、非特許文献29)。
【非特許文献1】ラビッツ(Rabbitts),T.H.、「Nature」第372巻、143−149頁(1994年)
【非特許文献2】エルンスト(Ernst),P.ら、「Curr Opin Hematol」、第9巻、282〜287頁(2002年)
【非特許文献3】グゥ(Gu),Y.ら、「Cell」第71巻、701〜708頁(1992年)
【非特許文献4】マッカーブ(McCabe),N.R.ら、「Proc Natl Acad Sci USA」第89巻、11794〜11798頁(1992年)
【非特許文献5】ドーマー(Domer),P.H.ら、「Proc Natl Acad Sci USA」第90巻、7884〜7888頁(1993年)
【非特許文献6】プイ(Pui),C.H.ら、「Lancet」第359巻、1909〜1915頁(2002年)
【非特許文献7】ナカムラ(Nakamura),T.ら、「Mol Cell」第10巻、1119〜1128頁(2002年)
【非特許文献8】ヨコヤマ(Yokoyama),A.ら、「Blood」第100巻、3710〜3718頁(2002年)
【非特許文献9】シー(Hsieh),J.J.ら、「Cell」第115巻、293〜303頁(2003年)
【非特許文献10】シー(Hsieh),J.J.ら、「Mol Cell Biol」第23巻、186〜194頁(2003年)
【非特許文献11】エートン(Ayton),P.M.およびクリアリー(Cleary),M.L.「Oncogene」第20巻、5695〜5707頁(2001年)
【非特許文献12】リー(Li),Q.ら、「Blood」第92巻、3841〜3847頁(1998年)
【非特許文献13】ユー(Yu),B.D.ら、「Proc Natl Acad Sci USA」第95巻、10632〜10636頁(1998年)
【非特許文献14】イスナール(Isnard),P.ら、「Blood」第96巻、705〜710頁(2000年)
【非特許文献15】バーセン(Bursen),A.ら、「Oncogene」第23巻、6237〜6249頁(2004年)
【非特許文献16】カスリーニ(Caslini),C.ら、「Leukemia」第18巻、1064〜1071頁(2004年)
【非特許文献17】ダウニング(Downing),J.R.ら、「Blood」第83巻;330〜335頁(1994年)
【非特許文献18】ライヘル(Reichel),M.ら、「Oncogene」第20巻、2900〜2907頁(2001年)
【非特許文献19】カージー(Kersey),J.H.ら、「Leukemia」第12巻、1561〜1564頁(1998年)
【非特許文献20】デリエ(Dorrie),J.ら、「Leukemia」第13巻、1539〜1547頁(1999年)
【非特許文献21】ダイクスフーム(Dykxhoom),D.M.ら、「Nat Rev Mol Cell Biol」第4巻、457〜467頁(2003年)
【非特許文献22】コヴォロヴァ(Khvorova),A.ら、「Cell」第115巻、209〜216頁(2003年)
【非特許文献23】シュバルツ(Schwarz),D.S.ら、「Cell」第115巻、199〜208頁(2003年)
【非特許文献24】マイスター(Meister),G.ら、「Mol Cell」第15巻、185〜197頁(2004年)
【非特許文献25】ランド(Rand),T.A.ら、「Proc Natl Acad Sci USA」第101巻、14385〜14389頁(2004年)
【非特許文献26】ソング(Song),J.J.ら、「Science」第305巻、1434〜1437頁(2004年)
【非特許文献27】エルバシール(Elbashir),S.M.ら、「Nature」第411巻、494〜498頁(2001年)
【非特許文献28】チェン(Cheng),J.C.、ムーア(Moore),T.B.およびサカモト(Sakamoto),K.M.「Mol Genet Metab」第80巻、121〜128頁(2003年)
【非特許文献29】ハイデンライヒ(Heidenreich),O.「Curr Pharm Biotechnol」第5巻、349〜354頁(2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本研究において出願人は、t(4;11)細胞内におけるMLL−AF4遺伝子発現を
特異的に阻害するためにRNAiを用いた。出願人は、融合転写MLL−AF4の枯渇が
クローン形成能力および増殖を抑制し、t(4;11)陽性白血病細胞内においてアポト
ーシスを誘導し、SCIDマウス異種移植モデル内においてかかる細胞の生着を危うくす
ることを明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象の、例えばヒトのような哺乳動物の、MLL−AF4レベルを低減する
ための組成物および方法を提供する。この方法は、MLL−AF4融合遺伝子の発現を(
例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20%またはそれ以上)低下さ
せる、またはt(4;11)陽性細胞の増殖率を抑制する、あるいはその両方を行うiR
NA剤を、対象に投与することを含む。かかるiRNA剤は、本明細書に記載されている
ものであり得るか、または、活性配列の1つに基づくdsRNAであってMLL−AF4
融合遺伝子の、例えばヒトのMLL−AF4融合遺伝子のような哺乳動物MLL−AF4
融合遺伝子の、同一の領域を標的とするdsRNAであり得る。iRNA剤は、鎖当たり
30個未満のヌクレオチドを、例えば21〜23個のヌクレオチドを含み、表1の薬剤番
号1乃至12で提供される薬剤の1つから構成されるか、1つを含むか、または1つから
誘導され得る。2本鎖iRNA剤は平滑末端を有するか、または、より好ましくは、同薬
剤の3’末端の一方または両方からヌクレオチド1〜4個の突出部分を有することができ
る。これらの好ましいiRNA剤は、対象内のすべての非MLL−AF4遺伝子配列に対
して4個以上のヌクレオチド・ミスマッチを含むことが好ましい。
【0011】
第1の態様において、本発明は特に、センス鎖であってかかるセンス鎖が、表1で提供
される薬剤番号1乃至12のセンス鎖配列(配列番号5、10、12、14、18、20
、22、24、26、30および32)からの少なくとも15個の連続したヌクレオチド
であるヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、アンチセンス鎖であってかかるアンチセンス
鎖が、表1で提供される薬剤番号1乃至12のアンチセンス配列(配列番号6、7、11
、13、15、19、21、23、25、27、31および33)からの少なくとも15
個の連続したヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖と、を含むiRNA剤、例えば、薬
剤番号5、センス鎖配列5’−AAGAAAAGCAGACCUACUCCA−3’(配
列番号14)、アンチセンス鎖配列5’−UGGAGUAGGUCUGCUUUUCUU
UU−3’(配列番号15)、を提供する。表1の薬剤番号1乃至12のiRNA剤は、
培養ヒトSEM細胞(白血病細胞系)内に存在するMLL−AF4mRNAの量を、これ
らの薬剤とのインキュベーション後、かかる薬剤と共にインキュベーションされなかった
細胞に比べて40%超低減するという有利なかつ驚くべき能力を有する(図1参照)。
【0012】
第2の態様において本発明は、センス鎖内のヌクレオチド配列とアンチセンス鎖内のヌ
クレオチド配列とを含むiRNA剤であって、各鎖が少なくとも16、17または18個
のヌクレオチドの配列を含み、かかる配列が、培養ヒトSEM細胞内においてMLL−A
F4発現を阻害するための能力を本質的に保持しながら鎖当たり1、2または3個以下の
ヌクレオチドがそれぞれ他のヌクレオチドと置換されている(例えばアデノシンがウラシ
ルに置き換えられている)点を除いて、表1の薬剤1乃至12の配列(センス鎖:配列番
号5、10、12、14、18、20、22、24、26、30および32、アンチセン
ス鎖:配列番号6、7、11、13、15、19、21、23、25、27、31および
33)の1つと本質的に同一である、iRNA剤を提供する。
【0013】
本発明のiRNA剤は、表1で提供される薬剤1、2、5および9のセンス鎖配列(配
列番号5、14および24)から得られた少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含
むセンス鎖と、表1で提供される薬剤1、2、5および9のアンチセンス鎖配列(配列番
号6、7、15および25)の少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含むアンチセ
ンス鎖とを含むことができ、かかるiRNA剤は、これらの薬剤とのインキュベーション
後に培養ヒトSEM細胞内に存在するMLL−AF4mRNAの量を、かかる薬剤と共に
インキュベーションされなかった細胞に比べて60%超低減する。本発明のiRNA剤の
アンチセンス鎖は、30個以下のヌクレオチド長であり得、かかるiRNA剤の2本鎖領
域は、15〜30対のヌクレオチド対長であり得る。iRNA剤は、少なくとも1つのヌ
クレオチド突出部分(overhang)を含むことができ、かかる突出部分は、1〜4
個の不対ヌクレオチドを、好ましくは2または3個の不対ヌクレオチドを有する。ヌクレ
オチド突出部分は、iRNA剤のアンチセンス鎖の3’末端に位置することができる。
【0014】
さらに、本発明のiRNA剤は、(a)センス鎖配列の配列番号5、10、12、14
、18、20、22、24、26、30および32の(5’から3’へ向かって)1位〜
19位または1位〜21位のヌクレオチド配列の群から選択されるヌクレオチド配列を有
するセンス鎖と、センス鎖が前記センス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチド配列を有す
ることが選択された場合にはアンチセンス鎖配列の配列番号6、11、13、15、19
、21、23、25、27、31および33の(5’から3’へ向かって)1位〜21位
または3位〜21位のヌクレオチド配列、並びに、センス鎖が前記センス鎖配列の1位〜
19位のヌクレオチド配列を有することが選択された場合にはアンチセンス鎖配列の配列
番号6、11、13、15、19、21、23、25、27、31および33の3位〜2
1位のヌクレオチド配列、の群から選択されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖
と、により形成される2本鎖構造と、(b)かかるセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖
の3’末端に1〜4個の不対ヌクレオチドからなる少なくとも1つの1本鎖突出部分であ
って、同1本鎖突出部分は、センス鎖の3’末端にある場合には、前記センス鎖配列20
位および21位のヌクレオチドを各位置に選択的に含み、および/または、アンチセンス
鎖の3’末端にある場合には、前記アンチセンス鎖配列の22位および23位のヌクレオ
チドを各位置に選択的に含む、1本鎖突出部分と、から構成されており、かかる2本鎖構
造が、前記センス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチド配列を有するセンス鎖、および前
記アンチセンス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖により
形成される場合には、かかるiRNA剤はセンス鎖の3’末端に1〜4個の不対オリゴヌ
クレオチドの1本鎖突出部分を含んでいない。特に、センス鎖のヌクレオチド配列は、配
列番号14のヌクレオチド配列から構成され得、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は、
配列番号14のヌクレオチド配列から構成され得る。
【0015】
本発明のiRNA剤は、培養ヒトSEM細胞内に存在するMLL−AF4mRNAの量
を、このiRNA剤とのインキュベーション後、かかる薬剤と共にインキュベーションさ
れなかった細胞に比べて40%より多く低減するように意図されている。それらのiRN
A剤は、生体試料内において同iRNA剤の安定性を増大させる修飾をさらに含むことが
でき、かかる修飾は、ホスホロチオエートまたは2’修飾ヌクレオチドであり得る。例え
ば、iRNA剤は、ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−ウ
リジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’−
修飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG
−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’−修飾ヌクレオチドである少なくとも一
つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド;又は5’−
ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−ウリジン−ウリジン−
3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチドを更に含むことができる。2’修飾は、2’−
デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエ
チル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−
ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(
2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DM
AEOE)および2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)の群から選択
できる。
【0016】
iRNA剤はさらに、コレステロール部分を含むことができ、かかるコレステロール部
分は、iRNA剤のセンス鎖の3’末端に結合することが好ましい。iRNA剤は、肝臓
の細胞または消化管の細胞による取り込みに対して標的化され得る。
【0017】
第3の態様において本発明は、医薬組成物であって、(a)本発明のiRNA剤と、(
b)薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
この医薬組成物は、ヒト血清またはマウス血清、あるいはヒト血清およびマウス血清内
においてiRNA剤の半減期を延長させるかまたは細胞内へのiRNA剤の取り込みを促
進する処方化剤を更に含むことができる。処方化剤はポリカチオンを含むことができる。
かかる医薬組成物は、増殖性疾患の、例えば癌腫、好ましくは白血病、より好ましくは急
性リンパ芽球性白血病の、治療に役立つものであることが好ましい。医薬組成物は、対象
、例えばヒトに、医薬組成物が投与されると、対象の細胞または組織内におけるMLL−
AF4融合遺伝子発現を(例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20
%またはそれ以上)低下させる、またはt(4;11)陽性細胞の増殖率を抑制する、あ
るいはその両方を行う能力を備えることが好ましい。
【0018】
第4の態様において本発明は、増殖性疾患に罹患しているか、または同疾患を発症する
危険性のあるヒト対象を治療する方法であって、かかるヒト対象に本発明のiRNA剤を
投与する工程を含む方法を提供する。かかる増殖性疾患は好ましくは癌腫であり、より好
ましくは急性リンパ芽球性白血病である。その場合、iRNA剤は、対象の細胞または組
織内におけるMLL−AF4の発現を(例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、
15%、20%またはそれ以上)低下させるために、またはt(4;11)陽性細胞の増
殖率を抑制するために、あるいはその両方を行うために十分な量にて投与できる。
【0019】
第5の態様において本発明は、医薬組成物を作成する方法であって、本発明のiRNA
剤の1つを医薬担体と共に処方する工程を含む方法を提供し、選択的に、ヒト血清または
マウス血清、あるいはヒト血清およびマウス血清内においてiRNA剤の半減期を延長さ
せるかまたは細胞内へのiRNA剤の取り込みを促進する処方化剤とともにiRNA剤を
処方する工程をさらに含む。処方化剤はポリカチオンを含むことができる。本発明の方法
の医薬組成物は、増殖性疾患の治療に役立つものであることが好ましく、増殖性疾患は、
好ましくは癌腫であり、より好ましくは白血病であり、最も好ましくは急性リンパ芽球性
白血病である。ある好ましい実施形態では、本発明の方法の医薬組成物は、対象、例えば
ヒトに、同医薬組成物が投与されると、対象の細胞または組織内におけるMLL−AF4
融合遺伝子発現を(例えば、少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20%また
はそれ以上)低下させること、またはt(4;11)陽性細胞の増殖率を抑制すること、
あるいはその両方を行うことができる。
【0020】
第6の態様において本発明は、細胞内におけるMLL−AF4RNAの量を(例えば、
少なくとも2%、4%、6%、10%、15%、20%またはそれ以上)低減する、また
はt(4;11)陽性細胞の増殖率を抑制する、あるいはその両方を行う方法であって、
かかる細胞を本発明のiRNA剤に接触させる工程を含む方法を提供する。一実施形態で
は、この方法はインビトロにて行われる。代替的に、細胞は対象の細胞であって、対象は
増殖性疾患を、好ましくは癌腫を、より好ましくは急性リンパ芽球性白血病を、罹患して
いると診断されている。細胞は、腫瘍内に位置することができるか、またはマイクロクロ
ーン細胞であり得る。
【0021】
第7の態様において本発明は、本発明のiRNA剤を作成する方法であって、かかる方
法が、iRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖を合成する工程を含み、かかるセンス
鎖及び/またはアンチセンス鎖が少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含み、好ましくは
前記ヌクレオチド修飾が生体試料内においてiRNA剤の安定性を増大させる修飾である
方法を提供する。前記の方法は、対象にiRNA剤を投与する工程をさらに含む。一実施
形態では、対象は増殖性疾患を、好ましくは癌腫、より好ましくは急性リンパ芽球性白血
病を罹患していると診察される。その場合、対象はヒトであり得る。
【0022】
【表1】


第8の態様において本発明は、MLL−AF4遺伝子の発現を阻害すると考えられるi
RNA剤を評価する方法であって、かかる方法が、(a)iRNA剤を提供する工程と、
同工程において、第1の鎖が、MLL−AF4mRNAのヌクレオチド配列に対して十分
な相補性を有し、第2の鎖が、第1の鎖とハイブリダイズするために同第1の鎖に対して
十分な相補性を有することと、(b)MLL−AF4遺伝子を含む細胞にiRNA剤を接
触させる工程と、(c)iRNA剤を細胞に接触させる前のMLL−AF4遺伝子発現ま
たは接触していない対照細胞のMLL−AF4遺伝子発現と、iRNA剤を細胞に接触さ
せた後のMLL−AF4遺伝子発現と、を比較する工程と、(d)iRNA剤が、MLL
−AF4遺伝子発現を阻害するために有用であるかどうかを判定する工程であって、細胞
中に存在するMLL−AF4RNAの量、または細胞により分泌されるタンパク質の量が
、iRNA剤を細胞に接触させる前の存在量もしくは分泌量よりも少ないか、またはその
ように接触していない細胞による存在量もしくは分泌量よりも少ない場合に、同iRNA
剤が有用であると判定する工程とを含む方法、を提供する。
【0023】
本方法の一実施形態では、iRNA剤は、上記の通りの本発明のiRNA剤である。
iRNA剤は、天然型のリボヌクレオチド・サブユニットのみを含み得るか、または、
iRNA剤に含まれる1つ以上のかかるリボヌクレオチド・サブユニットの糖もしくは塩
基に対する修飾を1つ以上含むように合成され得る。iRNA剤は、かかる薬剤の安定性
、分布または細胞への取り込みを改善するために選択されるリガンド、例えばコレステロ
ールに付着するようにさらに修飾され得る。かかる薬剤はさらに、単離形態であり得るか
、または、本明細書に記載されている方法に用いられる医薬組成物の一部であり得る。
【0024】
別の実施形態では、本明細書に記載されているように、コレステロール部分(例えばセ
ンス鎖の3’末端に)、2’修飾(例えば2’−O−メチルまたは2’−デオキシ−2’
−フルオロ−修飾)およびホスホロチオエート(例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖
の3’−端の1個または2個のヌクレオチド上に)が、同一iRNA剤内に存在する。
【0025】
iRNA剤、例えば本明細書に記載されているiRNA剤は、MLL−AF4融合遺伝
子発現がある種の役割を演じる対象内に存在する疾病または疾患の治療のためのものであ
ることが好ましい。iRNA剤の投与は、MLL−AF4融合により媒介される疾患の予
防的治療のためにも実施できる。
【0026】
本発明は、MLL−AF4の調節例えば阻害を行うiRNA剤の調製物であって、かな
り純粋な調製物または薬学的に許容可能な調製物を含む調整物を特徴とする。MLL−A
F4を標的とするiRNA剤が対象に投与でき、その対象は、MLL−AF4融合遺伝子
またはその他のt(4;11)染色体転座の存在を特徴とする疾患を、発症する危険性が
あるかまたは罹患している(例えば、罹患していると診断されている)。iRNA剤は、
かかる疾患またはその症状の開始を遅らせるために、かかる疾患と診断されたかもしくは
かかる疾患を罹患しているかまたはかかる疾患の危険性のある個人に投与できる。これら
の疾患は、急性リンパ芽球性白血病を含む、t(4;11)関連の白血病のような増殖性
疾患を含む。例えば、MLL−AF4を標的とするiRNA剤は、1つ以上の器官(骨髄
外での血液細胞の形成)、例えば脾臓、肝臓またはリンパ節において乳児急性リンパ芽球
性白血病、白血球増加症または髄外疾患を罹患している(例えば、罹患していると診断さ
れた)対象に投与できる。
【0027】
また、iRNA剤は、骨髄のような特定の組織を標的とすることもでき、組織(例えば
組織の腫瘍)内のMLL−AF4発現レベルは、MLL−AF4iRNA剤の投与後、低
下する。iRNA剤は、iRNA剤が血流内に広がっている時間を最大にするために修飾
されることが好ましい。例えばiRNA剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)と結合する
ことができる。
【0028】
本発明の方法および組成物では、iRNA剤は、送達剤、例えば、本明細書に記載され
ている送達剤で、例えばリポソームで修飾されるか、またはかかる送達剤と結合され得る
。かかる修飾は、かかる薬剤の循環時間を増大させるために、血清アルブミン(SA)、
例えばヒト血清アルブミン(HSA)、またはその断片との結合を媒介し得る。
【0029】
本薬剤、本方法および本組成物は、細胞内においてMLL−AF4融合mRNAを選択
的に分解するために、RNA干渉に関与する細胞メカニズムを利用する。従って、本発明
の方法は通例、本発明のiRNA剤の1つに細胞を接触させる工程を含む。かかる方法は
、細胞に対して直接実施できるか、または、本発明のiRNA剤の1つを対象に投与する
ことにより、哺乳動物対象に対して実施できる。好ましい実施形態では、細胞は少なくと
も2回、好ましくは48時間間隔で、iRNA剤に接触させられる。細胞内においてML
L−AF4融合mRNAが減少すると、生成されるMLL−AF4融合タンパク質の量が
低減し、生物ではMLL−AF4融合物媒介型疾病の効果を減らすことができる。
【0030】
本発明の特徴である方法および組成物、例えば、本明細書に記載されている増殖性疾患
を治療するための方法および組成物は、記載されたiRNA剤のいずれかと共に利用でき
る。加えて、本発明の特徴である方法および組成物は、本明細書に記載されている疾病ま
たは疾患の治療、および対象、例えば動物、ヒトのような哺乳動物の治療に利用できる。
【0031】
本発明の特徴である方法および組成物、例えば、本明細書に記載されている増殖性疾患
を治療するための方法およびiRNA組成物は、本明細書に記載されている用量及び/ま
たは処方で、そして、本明細書に記載されている投与経路でも利用できる。
【0032】
本発明の特徴である1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の詳細な説明
に記される。本発明のその他の特徴、目的および利点は、この詳細な説明、図面および請
求項から明らかになるであろう。本願はすべての目的のために、引用された全ての参照、
特許および特許出願を参照により全体として組み込む。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
表1(配列番号5、10、12、14、18、20、22、24、26、30及び32)
に提供された薬剤番号1乃至12のセンス鎖配列からの少なくとも15個の連続したヌク
レオチドであるヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、表1(配列番号6、7、11、13
、15、19、21、23、25、27、31及び33)に提供された薬剤番号1乃至1
2のアンチセンス鎖配列からの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含むアンチセ
ンス鎖と、とからなるiRNA剤。
(項目2)
各々が、表1(センス鎖:配列番号5、10、12、14、18、20、22、24、2
6、30及び32並びにアンチセンス鎖:配列番号6、7、11、13、15、19、2
1、23、25、27、31及び33)の薬剤番号1乃至12の配列のうちの一つと本質
的に同一である少なくとも16、17又は18個のヌクレオチドの配列を含むセンス鎖中
のヌクレオチド配列とアンチセンス鎖中のヌクレオチド配列とを含むiRNA剤であって
、鎖あたり1、2又は3個以下のヌクレオチドがそれぞれ他のヌクレオチドによって置換
されている(例えば、アデノシンがウラシルによって置換されている)が、培養ヒトSE
M細胞中におけるMLL−AF4の発現を阻害する能力をほぼ維持している、iRNA剤

(項目3)
前記センス鎖は、表1に提供された薬剤番号1、2、5及び9のセンス鎖配列(配列番号
5、14及び24)からの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記アンチ
センス鎖は表1に提供された薬剤番号1、2、5及び9のアンチセンス鎖配列(配列番号
6、7、15及び25)からの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記i
RNA剤は、同剤とのインキュベーション後に、培養ヒトSEM細胞中のMLL−AF4
mRNAの量を、同剤とともにインキュベーションしなかった細胞と比較して60%超減
少させる、項目1に記載のiRNA剤。
(項目4)
前記アンチセンスRNA鎖は長さが30ヌクレオチド以下であり、前記iRNA剤の二重
鎖領域の長さが15乃至30ヌクレオチド対である、項目1乃至3のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目5)
1乃至4個の不対ヌクレオチドを有する少なくとも一つのヌクレオチド突出部分を含む、項目1乃至3のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目6)
前記ヌクレオチド突出部分が2又は3の不対ヌクレオチドを有する、項目5に記載のiRNA剤。
(項目7)
前記ヌクレオチド突出部分iRNA剤のアンチセンス鎖の3’末端に存在する、項目5又は6に記載のiRNA剤。
(項目8)
項目1に記載のiRNA剤であって、
前記iRNA剤は、
(a)センス鎖配列の配列番号5、10、12、14、18、20、22、24、26、
30及び32の(5’から3’へ向かって)1位〜19位又は1位〜21位のヌクレオチ
ド配列の群から選択されるヌクレオチド配列から構成されたセンス鎖と、前記センス鎖が
同センス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチドの配列を有することが選択された場合には
アンチセンス鎖配列の配列番号6、7、11、13、15、19、21、23、25、2
7、31及び33の(5’から3’へ向かって)1位〜21位又は3位〜21位のヌクレ
オチドの配列、並びに前記センス鎖が同センス鎖配列の1位〜19位のヌクレオチド配列
を有することが選択された場合にはアンチセンス鎖配列の配列番号6、7、11、13、
15、19、21、23、25、27、31及び33の3位〜21位のヌクレオチドの配
列、の群から選択されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖と、により形成される
2本鎖構造と、
(b)前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖の少なくとも一方の3’−末端に1乃至4個
の不対ヌクレオチドからなる少なくとも1つの1本鎖の突出部分であって、前記1本鎖突
出部分は、前記センス鎖の3’−末端にある場合には同センス鎖配列の20位及び21位
のヌクレオチドを各位置に選択的に含むことと、前記アンチセンス鎖の3’−末端にある
場合には同アンチセンス鎖配列の22位及び23位のヌクレオチドを各位置に選択的に含
むここと、のうちの少なくとも一方である、1本鎖の突出部分と、
から構成されており、
前記2本鎖構造が前記センス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチド配列を有するセンス
鎖と、前記アンチセンス鎖配列の1位〜21位のヌクレオチド配列を有するアンチセンス
鎖と、により形成されている場合には、前記iRNA剤は、同センス鎖の3’−末端に1
乃至4個の不対オリゴヌクレオチドの1本鎖突出部分を含んでいない、iRNA剤。
(項目9)
前記センス鎖のヌクレオチド配列は配列番号14のヌクレオチド配列から構成され、かつ
前記アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は配列番号15のヌクレオチド配列から構成され
る、項目8に記載のiRNA剤。
(項目10)
前記iRNA剤は同剤とのインキュベーション後に、培養ヒトSEM細胞中のMLL−A
F4mRNAの量を、同剤とともにインキュベーションしなかった細胞と比較して40%
超減少させる、項目1乃至9のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目11)
前記iRNA剤に生物試料中での高い安定性を与える修飾を更に含む、項目1乃至10のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目12)
ホスホロチオエート又は2’−修飾ヌクレオチドを含む、項目1乃至11のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目13)
ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−ウリジン−アデニン−
3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドで
ある少なくとも一つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオ
チド;5’−シチジンが2’−修飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−シチジン
−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド;又は5’−ウリジンが2’−修
飾ヌクレオチドである少なくとも一つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−
3’)ジヌクレオチド、を含む、項目1乃至12のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目14)
前記2’−修飾が、2−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル
、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−
O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジ
メチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシ
エチル(2’−O−DMAEOE)、及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O
−NMA)からなる群より選択される、項目12又は13に記載のiRNA剤。
(項目15)
コレステロール部分を含む、項目1乃至14のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目16)
前記コレステロール部分が前記iRNA剤のセンス鎖の3’−末端に結合している、項目15に記載のiRNA剤。
(項目17)
前記iRNA剤は肝臓の細胞により取り込まれるように標的化されている、項目1乃至16のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目18)
前記iRNA剤は消化管の細胞により取り込まれるように標的化されている、項目1乃至16のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目19)
(a)項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤と、
(b)製薬的に許容可能な担体と、
からなる製薬組成物。
(項目20)
前記iRNA剤のヒト及びマウスの少なくとも一方における血漿中での半減期を延長させ
るか、又は細胞中における同iRNA剤の取り込みを容易にするための処方化剤を更に含
む、項目19に記載の製薬組成物。
(項目21)
前記処方化剤はポリカチオンを含む、項目20に記載の製薬組成物。
(項目22)
前記製薬組成物は増殖性疾患の治療に有用である、項目19乃至21のいずれか一項に記載の製薬組成物。
(項目23)
前記増殖性疾患は、癌、好ましくは白血病、より好ましくは急性リンパ芽球性白血病である、項目22に記載の製薬組成物。
(項目24)
前記製薬組成物は、例えばヒトのような対象に同製薬組成物を投与することにより、同対
象の細胞又は組織中でのMLL−AF4融合遺伝子の発現を低減すること及びt(4;1
1)−陽性細胞の増殖率を抑制することのうちの少なくとも一方を可能にする、項目19乃至23のいずれか一項に記載の製薬組成物。
(項目25)
増殖性疾患を有するヒト対象または同増殖性疾患の発生する危険性のあるヒト対象を治療
するための方法であって、項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤を同ヒト対象に投与する工程を含む、方法。
(項目26)
前記増殖性疾患は、癌、好ましくは急性リンパ芽球性白血病である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記iRNA剤は対象の細胞又は組織中でのMLL−AF4の発現を低減すること及びt
(4;11)−陽性細胞の増殖率を抑制することのうちの少なくとも一方を可能にするの
に十分な量にて投与される、項目25又は26に記載の方法。
(項目28)
項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤の一つを製薬的に許容可能な担体と
処方化させる工程を含む、製薬組成物を製造するための方法。
(項目29)
前記iRNA剤のヒト及びマウスの少なくとも一方における血漿中での半減期を延長させ
るか、又は細胞中における同iRNA剤の取り込みを容易にするための処方化剤とともに
同iRNA剤を処方化する工程を更に含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記処方化剤はポリカチオンである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記製薬組成物は増殖性疾患の治療に有用である、項目28乃至30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記増殖性疾患は、癌、好ましくは白血病、より好ましくは急性リンパ芽球性白血病であ
る、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記製薬組成物は、例えばヒトのような対象に同製薬組成物を投与することにより、同対
象の細胞又は組織中でのMLL−AF4融合遺伝子の発現を低減すること及びt(4;1
1)−陽性細胞の増殖率を抑制することのうちの少なくとも一方を可能にする、項目2
8乃至32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
細胞中のMLL−AF4RNAの量を低減すること及びt(4;11)−陽性細胞の増殖
率を抑制することのうちの少なくとも一方を実施するための方法であって、前記単数又は
複数の細胞を項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤と接触させる工程を含む、方法。
(項目35)
前記方法はインビトロにて実施される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記細胞が対象の細胞であり、かつ前記対象が増殖性疾患、好ましくは癌、より好ましく
は急性リンパ芽球性白血病に罹患していると診断されている、項目34に記載の方法。
(項目37)
項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤を製造する方法であって、前記方法
は、同iRNA剤のセンス鎖及びアンチセンス鎖を合成する工程を含み、前記センス鎖及
び前記アンチセンス鎖のうちの少なくとも一つは少なくとも一つのヌクレオチド修飾を含
む、方法。
(項目38)
前記ヌクレオチド修飾は、前記iRNA剤に生物試料中での高い安定性を与える修飾であ
る、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記iRNA剤を対象に投与する工程を更に含む、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記対象は増殖性疾患、好ましくは癌に罹患しているものとして診断されている、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記対象は急性リンパ芽球性白血病に罹患しているものとして診断されている、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記対象がヒトである、項目39に記載の方法。
(項目43)
MLL−AF4遺伝子の発現を阻害すると考えられているiRNA剤を評価するための方
法であって、前記方法は、
(a)iRNA剤を提供する工程であって、第一の鎖がMLL−AF4mRNAのヌクレ
オチド配列と十分に相補的であり、かつ第二の鎖が第一の鎖とハイブリダイズするべく同
第一の鎖と十分に相補的である、工程と、
(b)前記iRNA剤をMLL−AF4遺伝子を含む細胞と接触させる工程と、
(c)細胞と前記iRNA剤を接触させる前のMLL−AF4遺伝子の発現又は接触させ
ていない対照細胞のMLL−AF4遺伝子の発現と、細胞と前記iRNA剤を接触させた
後のMLL−AF4遺伝子の発現と、を比較する工程と、
(d)前記iRNA剤がMLL−AF4遺伝子の発現を阻害するのに有用であるかどうか
を判定する工程であって、細胞中に存在するMLL−AF4RNAの量又は同細胞によっ
て分泌されるタンパク質の量が、細胞とiRNA剤とを接触させる前の存在量若しくは分
泌量よりも少ない場合、又はそのような接触を受けていない細胞による存在量若しくは分
泌量よりも少ない場合、同iRNA剤は有用であると判定する工程と、
からなる方法。
(項目44)
前記iRNA剤は項目1乃至18のいずれか一項に記載のiRNA剤である、項目43に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。MLL−AFmRNA融合部位のsiRNAスキャンを示す。GAPDHmRNAレベルにより正規化されたMLL−AF4mRNAレベルが示される。表示したsiRNAの標的部位は、1個の単一ヌクレオチドだけ融合部位のAF4部分からMLL部分に移された。総RNAは、500nMのsiRNAを用いたエレクトロポレーションの24時間後に単離され、リアルタイムRT−PCRにより分析された。X軸の数字は、表2のsiRNAの付番に対応する(siMAn、n=1〜14)。エラー・バーは標準偏差を示す。
【図1B】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。MLL−AF4枯渇の経時変化を示す。総RNAは、モックエレクトロポレーションまたは750nMのsiRNAであるsiMA6もしくはミスマッチ対照siMAmmを用いたエレクトロポレーションの後、表示した時点で単離された。リアルタイムRT−PCRは、図1Aの通りに行われた。
【図1C】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。SEM細胞内のMLL−AF4、AF4およびMLLのmRNAレベルに対するMLL−AF4siRNAsiMA6およびミスマッチ対照siMMの効果を示す。分析は図1Aの通りに行われた。
【図1D】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。siRNAトランスフェクションによるMLL−AF4タンパク質の枯渇を示す。総細胞溶解物は、モックエレクトロポレーションまたは500nMのsiRNAsiMA6もしくはミスマッチ対照siMAmmを用いたエレクトロポレーションの48時間後に単離された。MLL−AF4は、AF4のC末端を標的とする抗体を用いて検出された。GAPDHはローディングコントロールとして、また、正規化のために提供された。正規化MLL−AF4タンパク質レベルは下部に表示されている。
【図1E】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。RS4;11細胞内のMLL−AF4、AF4およびMLLのmRNAレベルに対するMLL−AF4siRNAであるsiMA6およびsiMARS並びにミスマッチ対照siMMの効果を示す。分析は図1Aの通りに行われた。siMA6は、SEM細胞内で発現したMLL−AF4変種と相同であり、siMARSは、RS4;11細胞内に存在する変種を標的とする。
【図1F】MLL−AF4siRNAの活性および特異性を示す。MLL−AF4siRNAは、インターフェロン応答を誘導しない。SEM細胞は、表示したRNAでトランスフェクションされた。ポリIC(7.5μg/mg)は、インターフェロン応答遺伝子OAS1およびSTAT1の誘導に対する陽性対照として提供されている。分析は図1Aの通りに行われた。
【図2A】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性白血病細胞のコロニー形成および増殖を阻害することを示す。MLL−AF4およびAML1/MTG8 siRNAの特異性を示す。SEM細胞はMLL−AF4を発現するのに対して、Kasumi−1細胞はAML1/MTG8を発現する。siMA6処理済みSEM細胞またはsiAGF1処理済みKasumi−1細胞により形成されたコロニーの数は、各々のミスマッチ対照で処理された細胞による数よりも顕著に少ない(p<0.001)。
【図2B】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性白血病細胞のコロニー形成および増殖を阻害することを示す。RS4;11クローン形成能力の阻害は、MLL−AF4融合部位に対する完全な相同性に依存する。siMARS処理済みRS4;11細胞により形成されたコロニーの数は、モック処理済みRS4;11細胞、e9−e4変種特異的なsiMA6で処理されたRS4;11細胞、またはe9−e4ミスマッチ対照siMAmmによる数よりも顕著に少ない(p<0.0001)。
【図2C】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性白血病細胞のコロニー形成および増殖を阻害することを示す。MLL−AF4を標的とするsiRNAは、初代ヒトCD34+造血細胞のコロニー形成に影響を与えない。初代ヒトCD34+造血細胞は、750nMのsiMA6(SEM細胞内で発現したMLL−AF4e9−e4変種を標的とするsiRNA)、siMARS(RS4;11細胞内で発現したMLL−AF4e10−e4変種を標的とするsiRNA)、またはe9−e4ミスマッチ対照siMMを用いてエレクトロポレーションされた。エラー・バーは標準偏差を示す。
【図2D】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性白血病細胞のコロニー形成および増殖を阻害することを示す。siRNA処理済みのSEM細胞およびRS4;11細胞の成長曲線を示す。細胞は1日おきに、モックエレクトロポレーションされたか、または750nMのsiMA6、siMARSもしくはミスマッチ対照siMAmmを用いてエレクトロポレーションされた。細胞数は、MTT試験を用いて割り出された。各々の細胞系に存在する融合部位変種に対して相補性を有するsiRNAのみが、成長を抑制した。エラー・バーは標準偏差を示す。
【図2E】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性白血病細胞のコロニー形成および増殖を阻害することを示す。SEM細胞およびRS4;11細胞の細胞周期分布に対するMLL−AF4siRNAの効果を示す。グラフは、表示した周期相(cycle phase)における細胞の割合を示す。細胞周期分布は、図2Dに示された経時変化実験から得られた細胞を用いて、表示された日にフロー・サイトメトリーにより割り出された。
【図3A】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性SEM細胞およびRS4;11細胞のアポトーシスを誘導することを示す。サブG1細胞の画分に対するMLL−AF4抑制の効果を示す。図2Dおよび2Eに示された経時変化から得られた細胞が、フロー・サイトメトリーによりDNA量について分析された。
【図3B】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性SEM細胞およびRS4;11細胞のアポトーシスを誘導することを示す。SEM細胞のアネキシンV染色を示す。アネキシンV陽性SEM細胞は、表示したsiRNAの750nMを用いた2回目のエレクトロポレーションの4日後にフロー・サイトメトリーにより定量化された。アネキシンVおよびアネキシンV/ヨウ化プロピジウム陽性細胞の割合が、対応する象限に示されている。
【図3C】MLL−AF4枯渇が、t(4;11)陽性SEM細胞およびRS4;11細胞のアポトーシスを誘導することを示す。MLL−AF4抑制は、カスパーゼ3の活性化を引き起こし、Bcl−XLタンパク質レベルを低下させる。免疫ブロットは、タンパク質分解により活性化されたカスパーゼ3およびBcl−XLタンパク質を示す。チューブリンおよびGAPDHは、ローディングコントロールとして提供されている。
【図4】MLL−AF4抑制が、Hoxa7およびHoxa9の遺伝子発現に影響を与えることを示す。総RNAは、表示されたsiRNAの500nMを用いた2回目のエレクトロポレーションの48時間後に単離され、リアルタイムRT−PCRにより分析された。エラー・バーは標準偏差を示す。
【図5A】MLL−AF4抑制が、白血病性細胞の生着を減少させることを示す。SEM細胞を移植されたSCIDマウスの生存曲線を示す。SEM細胞は移植前に、2回モックエレクトロポレーションされたか、またはsiRNAsiMA6またはそのミスマッチ対照siMAmmを用いて2回エレクトロポレーションされた。MLL−AF4e9−e4特異的siRNAsiMA6での事前処理は、モック事前処理または対照siRNA事前処理に比べて顕著に、生存時間の中央値を延長し、生存率全体を増大させた(ログランク検定によればp<0.01)。
【図5B】MLL−AF4抑制が、白血病性細胞の生着を減少させることを示す。骨髄のFACS分析を示す。動物の骨髄細胞が、非ヒトCD45抗体で染色され、フロー・サイトメトリーにより分析された。siMA6で処理された動物は、CD45陽性細胞の数がかなり少なかった。
【図5C】MLL−AF4抑制が、白血病性細胞の生着を減少させることを示す。肝臓および脾臓の組織構造を示す。原倍率:200倍、縮尺バー:50μm。モック細胞またはsiMM事前処理済み細胞を移植されたマウスは、分析の時点で瀕死状態であった。siMA6事前処理済み細胞を移植された動物は、白血病関連の病的状態の徴候を示すことなく、移植から228日後に死亡した。
【図5D】MLL−AF4抑制が、白血病性細胞の生着を減少させることを示す。脾臓サイズの比較を示す。左側の脾臓は、モック処理済み動物に由来し、中央の脾臓は、ミスマッチ対照siRNAsiMMで処理された動物に由来し、右の脾臓は、MLL−AF4に特異的なsiRNAsiMA6で処理された動物に由来する。
【図5E】MLL−AF4抑制が、白血病性細胞の生着を減少させることを示す。器官重量のグラフを表示する。器官重量は全体重に対して正規化された。生存siMA6群動物の肝臓および脾臓の正規化重量は、モック群またはsiMMミスマッチ対照群の重量よりも顕著に小さかった(各々、p<0.05およびp<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
解説を容易にするために、本明細書では時として、「ヌクレオチド」または「リボヌク
レオチド」という用語を、RNA剤の1つまたは複数の単量体サブユニットに関して使用
する。本明細書では、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語の使用は
、修飾RNAまたはヌクレオチド代替物に関する場合、以下でさらに記載するように、1
つまたは複数の位置における、修飾ヌクレオチドまたは代替置換部分も指すことがあると
理解されよう。
【0035】
本明細書で使用される場合、「RNA剤」は、無修飾RNA、修飾RNA、またはヌク
レオシド代替物であり、これらはすべて本明細書に記載されている。多数の修飾RNAお
よびヌクレオチド代替物が記載されているが、好ましいものの例には、ヌクレアーゼ分解
に対して、無修飾RNAが有するものより大きな抵抗性を有するものが含まれる。好まし
いものの例には、2’糖修飾、単一鎖突出部分内、好ましくは3’単一鎖突出部分内の修
飾、あるいは、特に1本鎖の場合、1つもしくは複数のリン酸基または1つもしくは複数
のリン酸基類似体を含有する5’修飾を有するものが含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「iRNA剤」(「干渉RNA剤」の略)は、標的遺伝子
、例えば標的融合遺伝子MLL−AF4の発現を下方制御できるRNA剤である。理論に
拘泥するものではないが、iRNA剤は、当技術分野では時にRNAiと呼ばれる標的m
RNAの転写後の切断、または転写前もしくは翻訳前の機構を含めた多数の機構のうちの
1つまたは複数によって作用し得る。iRNA剤は、2本鎖iRNA剤であり得る。
【0037】
「ds iRNA剤」(「2本鎖iRNA剤」の略)は、本明細書で使用される場合、
複数、好ましくは2本の鎖を含み、その中で鎖間ハイブリダイゼーションが2本鎖構造領
域を形成できるiRNA剤である。本明細書では、「鎖」は、連続したヌクレオチド(天
然には存在しないヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドも含まれる)の配列を指す。2本
以上の鎖が別々の分子であっても、それらの各鎖が別々の分子の一部を形成してもよく、
また、それらが、例えばリンカー、例えばポリエチレングリコールリンカーによって共有
結合で相互連結され、1分子のみを形成していてもよい。少なくとも1本の鎖は、標的R
NAに十分に相補的な領域を含むものであり得る。そのような鎖は「アンチセンス鎖」と
称される。アンチセンス鎖に相補的な領域を含むdsRNA剤中に含まれている第2の鎖
は「センス鎖」と称されている。しかしながら、ds iRNA剤は、少なくとも一部が
自己相補的であり、2本鎖領域を含む、例えばヘアピンまたはフライパンハンドル構造を
形成する単一のRNA分子から形成されていてもよい。そのような場合、「鎖」という用
語は、同一RNA分子の別の領域に相補的なRNA分子の領域の1つを指す。
【0038】
哺乳動物細胞では、長いds iRNA剤によってインターフェロン応答が誘導される
ことがあり、それがしばしば有害であるが、短いds iRNA剤は、インターフェロン
応答を、少なくとも細胞および/または宿主に有害となる程度までには誘導しない(マン
シュ エル(Manche,L.)ら、Mol.Cell Biol.1992年、第1
2巻、5238頁;リー エスビー(Lee,SB)、エステバン エム(Esteba
n,M)、Virology、1994年、第199巻、491頁;キャステリ ジェー
シー(Castelli,JC)ら、J.Exp.Med.1997年、第186巻、9
67頁;チェン エックス(Zheng、X.)、ベビラクア ピーシー(Bevila
cqua,PC)、RNA、2004年、第10巻、1934頁;ハイデル(Heide
l)ら、Nature Biotechn.、2004年、第22巻、1579頁)。本
発明のiRNA剤は、十分に短い分子を含有しており、それらは正常な哺乳動物細胞で有
害な非特異的インターフェロン応答を誘発しない。したがって、対象へのiRNA剤組成
物(例えば本明細書に記載の通り製剤化されたもの)の投与を用いて、インターフェロン
応答を回避しながら、上記対象に含まれているMLL−AF4融合発現細胞におけるML
L−AF4融合遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。十分に短くて、有害な
インターフェロン応答を誘発しない分子を、本明細書では、siRNA剤またはsiRN
Aと称する。「siRNA剤」または「siRNA」は、本明細書で使用される場合、十
分に短くて、ヒト細胞で有害なインターフェロン応答を誘導しないiRNA剤、例えばd
s iRNA剤を指し、それは例えば60ヌクレオチド対未満、好ましくは50、40、
または30ヌクレオチド対未満の2本鎖領域を有する。
【0039】
ds iRNA剤およびsiRNA剤を含めた、本明細書に記載の単離されたiRNA
剤は、例えばRNA分解によるMLL−AF4融合遺伝子のサイレンシングを媒介するこ
とができる。便宜のために、そのようなRNAは、本明細書では、サイレンシングされる
RNAとも称される。そのような遺伝子は、標的遺伝子とも称される。サイレンシングさ
れるRNAは、例えば白血病細胞のような細胞に対して内因性であるMLL−AF4融合
遺伝子の遺伝子産物であることが好ましい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「RNAiを媒介する」という用語は、薬剤が標的遺伝子
を配列特異的な様式でサイレンシングする能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングす
る」とは、それによって、上記薬剤に接触していないときに標的遺伝子の特定の産物を含
有および/または分泌する細胞が、上記薬剤に接触しているときに、上記薬剤に接触して
いない同様な細胞と比較して、そのような遺伝子産物を少なくとも10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%少なく含有および/または
分泌するであろう過程を意味する。標的遺伝子のそのような産物は、例えば、メッセンジ
ャーRNA(mRNA)、タンパク質、または調節エレメントであり得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、本発明の化合物と標的RNA分
子、例えばMLL−AF4mRNA分子との間で安定かつ特異的な結合が生じるのに十分
な程度の相補性を示すのに使用される。特異的な結合は、特異的な結合が望ましい条件下
で、すなわちインビボ試験または治療処置の場合には生理条件下で、あるいはインビトロ
試験の場合では同試験が実施される条件下で、非標的配列へのオリゴマー化合物の非特異
的結合を回避するのに十分な程度の相補性を必要とする。非標的配列は、通常、少なくと
も4ヌクレオチドの相違を有する。
【0042】
本明細書で使用される場合、iRNA剤が標的RNA、例えば標的mRNA(例えば標
的MLL−AF4mRNA)に「十分に相補的である」のは、上記iRNA剤によって、
細胞内での、上記標的RNAによってコードされたタンパク質の産生が減少する場合であ
る。上記iRNA剤は、標的RNAに「正確に相補的」(サブユニットを含むSRMSを
除く)であってもよく、例えば上記標的RNAと上記iRNA剤とがアニールするもので
もよい。正確に相補的な領域では、ワトソンクリック塩基対のみでハイブリット形成され
ていることが好ましい。「十分に相補的な」iRNA剤は、標的MLL−AF4RNAに
正確に相補的な内部領域(例えば少なくとも10ヌクレオチド)を含み得る。さらに、一
部の実施形態では、上記iRNA剤が単一ヌクレオチドの相違を特異的に識別する。この
場合、上記iRNA剤は、単一ヌクレオチド相違の(例えば7ヌクレオチド以内の)領域
で正確な相補性が存在する場合にのみRNAiを媒介する。好ましいiRNA剤は、表1
に示すセンス配列およびアンチセンス配列に基づいているか、もしくはそれからなるか、
もしくはそれを含むであろう。
【0043】
本明細書での使用において、「本質的には同一」は、第2のヌクレオチド配列と比較し
て第1のヌクレオチド配列に関して使用される場合、最大1、2、または3ヌクレオチド
までの置換(例えばアデノシンがウラシルで置換されている)を除いて、第1のヌクレオ
チド配列が第2のヌクレオチド配列に同一であることを意味する。「培養ヒトSEM細胞
でMLL−AF4発現を阻害する能力を本質的に保持している」ということは、ヌクレオ
チドの欠失、添加または置換によって、表1のiRNA剤のうちの1つに同一ではないが
、それに由来するiRNA剤に関して本明細書で使用される場合、それが由来した表1の
iRNA剤との比較における、得られたiRNA剤の阻害活性の低下が20%阻害以下で
あることを意味する。例えば、培養ヒトSEM細胞中に存在するMLL−AF4mRNA
の量を40%低下させる、表1のiRNA剤に由来するiRNA剤は、培養ヒトSEM細
胞中でMLL−AF4発現を阻害する能力を本質的に保持しているものとみなされるため
には、それ自体が、培養ヒトSEM細胞中に存在するMLL−AF4mRNAの量を少な
くとも40%低下させなければならない。選択的に、本発明に特徴的なiRNA剤は、培
養ヒトSEM細胞中に存在するMLL−AF4mRNAの量を少なくとも40%低下させ
るものでもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対象」は、MLL−AF4融合タンパク質発現によって
媒介された障害の治療を受けている哺乳類生物を指す。対象は、ウシ、ウマ、マウス、ラ
ット、イヌ、ブタ、ヤギ、または霊長類など、いかなる哺乳動物でもよい。好ましい実施
形態では、対象はヒトである。
【0045】
本明細書で使用される場合、MLL−AF4融合発現に関連した障害は、1)、MLL
−AF4融合タンパク質の存在によって一部媒介され、かつ2)存在している、MLL−
AF4融合タンパク質のレベルを低減することによって結果に影響を与えることができる
いかなる生物学的または病理学的状態も指す。MLL−AF4融合発現に関連した特定の
障害について以下に述べる。
【0046】
(MLL−AF4誤発現に関連した障害)
MLL−AF4融合産物は、乳児急性リンパ芽球性白血病のような急性リンパ芽球性白
血病(ALL)に関連していた。ALLに罹患した患者は典型的には顕著な白血球の増加
と複数の器官における髄外疾患とを呈し、化学療法に対する応答不良であり、予後不良で
ある。
【0047】
(iRNA剤の設計および選択)
本発明は、iRNA剤でインキュベートした後の培養細胞における、インビトロでのM
LL−AF4融合遺伝子サイレンシングの実証、およびその結果である増殖抑制効果に基
づいている。
【0048】
配列情報と望ましい特徴とに基づいて、iRNA剤を合理的に設計することができる。
例えば、候補となる2本鎖の相対的融解温度に従ってiRNA剤を設計することができる
。通常、2本鎖は、アンチセンス鎖の3’末端より、アンチセンス鎖の5’末端で、より
低い融解温度を有するはずである。
【0049】
また、例えば、標的遺伝子として働くであろう遺伝子の遺伝子歩行分析を行うことによ
っても、候補となるiRNA剤を設計することができる。転写領域のすべてまたは一部に
相当する、オーバーラップ、隣接、または近接した候補薬剤を生成させ、試験することが
できる。各iRNA剤を、標的遺伝子発現を下方制御する能力に関して試験および評価す
ることができる(下記、「候補となるiRNA剤の評価」を参照)。
【0050】
以下に示す実施例1は、遺伝子歩行のアプローチをヒトMLL−AF4mRNAの融合
部位を標的とする潜在的なiRNA剤を評価するために使用したことを示す。与えられた
結果に基づいて、表1はMLL−AF4を標的とする活性iRNA剤を提供している。以
下の実施例に示されるように、表1の薬剤番号1乃至12のiRNA剤は、これらの薬剤
と共にインキュベーションした後の培養MLL−AF4融合遺伝子発現細胞中に存在する
MLL−AF4融合mRNAの量が、上記薬剤と共にインキュベートされていない細胞と
比較して40%超低減するという長所および驚くべき能力を有する。
【0051】
これらの結果に基づいて、本発明は、表1に示されている薬剤のセンス鎖配列における
少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、表1に薬剤番号1−12に
て示されている薬剤のアンチセンス鎖配列における少なくとも15の連続したヌクレオチ
ドを有するアンチセンス鎖とを含有するiRNA剤を特に提供する。
【0052】
以下の実施例1に示したiRNA剤は、薬剤番号2のものを除いて、長さ21ヌクレオ
チドのセンス鎖と、長さ23ヌクレオチドのアンチセンス鎖とで構成されている。しかし
ながら、これらの長さは潜在的に最適であり得るが、上記iRNA剤はこれらの長さに限
定されない。長さが特定の範囲内である場合には、有効性は鎖の長さより、むしろヌクレ
オチド配列の関数であるので、当業者は、より短いiRNA剤またはより長いiRNA剤
も同様に有効であり得ることを十分に認識している。例えば、ヤン ディ(Yang,D
.)ら(PNAS、2002年、第99巻、9942〜9947頁)は、長さが21塩基
対と30塩基対との間にあるiRNA剤が同様な効力を有することを実証した。他では、
長さ約15塩基対にまで短くしたiRNA剤による効果的な遺伝子サイレンシングが示さ
れている(バイロム ダブリュ.エム.(Byrom,W.M.)ら、「Inducin
g RNAi with siRNA Cocktails Generated by
RNase III」、Tech Notes、第10(1)巻、アンビオン社(Am
bion,Inc.)、米国テキサス州オースティン(Austin)所在)。
【0053】
したがって、表1に提示した配列の1つに由来するiRNA剤を産生するために、表1
に提示した配列から、15〜22ヌクレオチドの間の部分配列を選択することが可能であ
り、かつ本発明で企図されている。代替的に、表1に提示した配列のうちの1つに1個ま
たは数個のヌクレオチドを添加してもよい。この場合、必須ではないが、添加されたヌク
レオチドが標的遺伝子、例えばMLL−AF4融合遺伝子のそれぞれの配列に相補的とな
るような様式が好ましい。このようにして派生するすべてのiRNA剤もそれらが培養ヒ
トSEM細胞におけるMLL−AF4発現を阻害する能力を本質的に保持するという場合
には、本発明のiRNA剤に含まれる。
【0054】
iRNA剤のアンチセンス鎖は、長さが14、15、16、17、18、19、25、
29、40または50ヌクレオチド以上であるべきである。上記アンチセンス鎖は、長さ
が60、50、40、または30ヌクレオチド以下であるべきである。好ましい長さの範
囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドである。
【0055】
iRNA剤のセンス鎖は、長さが14、15、16、17、18、19、25、29、
40または50ヌクレオチド以上であるべきである。上記センス鎖は、長さが60、50
、40または30ヌクレオチド以下であるべきである。好ましい長さの範囲は、15〜3
0、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドである。
【0056】
iRNA剤の2本鎖部分は、長さが15、16、17、18、19、20、21、22
、23、24、25、29、40または50ヌクレオチド対以上であるべきである。上記
2本鎖部分は、長さが60、50、40または30ヌクレオチド対以下であるべきである
。好ましい長さの範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌク
レオチド対である。
【0057】
通常、本発明のiRNA剤は、MLL−AF4融合遺伝子と十分な相補性を有する領域
を含み、上記iRNA剤またはその断片がMLL−AF4融合遺伝子の下方制御を媒介で
きる十分なヌクレオチドの長さを有する。表1のiRNA剤のアンチセンス鎖は、ヒトM
LL−AF4融合遺伝子のmRNA配列に完全に相補的であり、それらのセンス鎖は、上
記アンチセンス鎖上の2つの3’末端ヌクレオチドを除いて、上記アンチセンス鎖に完全
に相補的である。しかしながら、上記iRNA剤と上記標的との間に完全な相補性が存在
している必要はなく、但し、それらの対応性は、上記iRNA剤またはそれの切断産物が
、例えばMLL−AF4mRNAのRNAi切断による配列特異的なサイレンシングを誘
導するのを可能にするのに十分でなければならない。
【0058】
したがって、本発明のiRNA剤には、培養ヒトSEM細胞におけるMLL−AF4発
現を阻害する能力を本質的に保持しながら、それぞれ、鎖当たり1、2、または3つ以下
のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されている(例えばアデノシンがウラシルで置
換されている)ことを除いて、下記に定義する通り、それぞれが、表1の配列の1つに本
質的に同一である少なくとも16、17または18ヌクレオチドの配列からなるセンス鎖
およびアンチセンス鎖からなる薬剤が含まれる。したがって、これらの薬剤は、表1の配
列の1つに同一であるが、標的MLL−AF4mRNA配列に関して、もしくはセンス鎖
とアンチセンス鎖との間に、1、2または3塩基のミスマッチが導入されている少なくと
も15ヌクレオチドを有するものであろう。標的MLL−AF4mRNA配列とのミスマ
ッチ、特にアンチセンス鎖におけるミスマッチは、末端領域で最もよく許容され、存在す
る場合には、1箇所または複数の端末領域内、例えば5’および/または3’末端の6、
5、4、または3ヌクレオチド以内にあることが好ましく、センス鎖の5’末端またはア
ンチセンス鎖の3’末端の6、5、4、または3ヌクレオチド以内にあることが最も好ま
しい。上記センス鎖は、分子の全体的な2本鎖特性を維持するのに十分なだけアンチセン
ス鎖に相補的であればよい。
【0059】
上記センス鎖およびアンチセンス鎖は、上記iRNA剤が、その分子の一端または両端
に単一鎖または不対領域を含有するように選択されることが好ましい。したがって、iR
NA剤は、好ましくは突出部分、例えば1または2つの5’または3’突出部分、但し好
ましくは2〜3ヌクレオチドの3’突出部分1つを含有するように対合したセンス鎖およ
びアンチセンス鎖を含有する。ほとんどの実施形態は、3’突出部分を有するであろう。
好ましいsiRNA剤は、上記iRNA剤の各末端に長さが1〜4ヌクレオチド、好まし
くは2または3ヌクレオチドの1本鎖の突出部分、好ましくは3’突出部分を有するであ
ろう。上記突出部分は、一方の鎖がもう一方より長い結果、または同じ長さの2本の鎖が
ずれている結果であり得る。5’末端はリン酸化されていることが好ましい。
【0060】
2本鎖領域の好ましい長さは、15から30ヌクレオチドの間、最も好ましくは18、
19、20、21、22および23ヌクレオチドの長さ、例えば上記に論じたsiRNA
剤の範囲である。siRNA剤は、長いdsRNAからの天然Dicer調製物に長さお
よび構造が類似したものでよい。siRNA剤の2本の鎖が、例えば共有結合によって、
連結されている実施形態も含まれる。ヘアピン構造、または必要な2本鎖領域と、好まし
くは3’突出部分とを提供する他の1本鎖構造も本発明に包含される。
【0061】
(候補となるiRNA剤の評価)
候補となるiRNA剤を、それが標的遺伝子発現を下方制御する能力に関して評価する
ことができる。例えば、候補となるiRNA剤を用意し、標的遺伝子、例えばMLL−A
F4融合遺伝子を内因的に発現するか、あるいはMLL−AF4融合遺伝子をそれから発
現することができるコンストラクトでトランスフェクションされていることによって発現
する細胞、例えばSEM細胞に接触させることができる。上記候補となるiRNA剤との
接触の前および後の標的遺伝子発現のレベルを、例えばmRNAまたはタンパク質レベル
で比較することができる。標的遺伝子から発現されたRNAまたはタンパク質の量が、上
記iRNA剤と接触した後に低下していると判定された場合、上記iRNA剤が標的遺伝
子発現を下方制御すると結論付けることができる。細胞中の標的MLL−AF4RNAま
たはMLL−AF4タンパク質のレベルは、いかなる望ましい方法でも測定できる。例え
ば、標的RNAのレベルは、ノーザンブロット解析、逆転写連結ポリメラーゼ連鎖反応(
RT−PCR)、またはRNアーゼプロテクションアッセイで測定することができる。タ
ンパク質のレベルは、例えば、ウェスタンブロット解析または免疫蛍光によって測定する
ことができる。
【0062】
(iRNA剤の安定性試験、修飾、および再試験)
候補となるiRNA剤を、そのiRNA剤が対象の体内に導入された際などの安定性、
例えばエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼによる切断に対する感受性に関して
評価することができる。同方法は、修飾、特に切断、例えば対象の体内に存在する成分に
よる切断の影響を受けやすい部位を同定する方法を利用することができる。
【0063】
切断の影響を受けやすい部位が同定された場合、例えば切断部位への2’修飾、例えば
2’−O−メチル基の導入によって、上記潜在的切断部位が切断に抵抗性を有するように
作製された、さらなるiRNA剤を設計および/または合成することができる。このさら
なるiRNA剤を、安定性に関して再試験することができ、あるiRNA剤が望ましい安
定性を示すことが見出されるまで、この工程を繰り返すことができる。
【0064】
(インビボ試験)
MLL−AF4遺伝子発現を阻害できるものとして同定されたiRNA剤を、動物モデ
ル(例えばマウスまたはラットなどの哺乳動物)中でのインビボでの機能に関して試験す
ることができる。例えば、上記iRNA剤を動物、例えばMLL−AF4融合遺伝子を発
現するように作製された動物に投与して、その生体内分布、安定性、およびそれがMLL
−AF4遺伝子発現を阻害する能力に関して評価することができる。
【0065】
上記iRNA剤は、注射などによって標的組織に直接投与することができ、あるいは上
記iRNA剤を、それがヒトに投与されるのと同じ様に動物モデルに投与することもでき
る。
【0066】
上記iRNA剤を細胞内分布に関して評価することもできる。この評価には、上記iR
NA剤が細胞内に摂取されたかどうかの判定も含めることができる。この評価には、上記
iRNA剤の安定性(例えば半減期)の測定も含めることができる。iRNA剤のインビ
ボ評価は、追跡可能なマーカー(例えば、フルオレセインなどの蛍光マーカー:35S、
32P、33P、もしくはHなどの放射性標識;金粒子;または免疫組織化学用抗原粒
子)に結合したiRNA剤の使用によって容易に行うことができる。
【0067】
上記iRNA剤を、それがMLL−AF4遺伝子発現を下方制御する能力に関して評価
することができる。インビボでのMLL−AF4遺伝子発現のレベルは、例えば、in
situハイブリダイゼーション、または上記iRNA剤への組織の曝露の前および後に
おける同組織からのRNAの単離によって測定することができる。組織を採取するために
動物を屠殺する必要がある場合、未処置のコントロール動物が比較対象となろう。標的M
LL−AF4mRNAは、限定されるものではないが、RT−PCR、ノーザンブロット
、分岐DNAアッセイ、またはRNアーゼプロテクションアッセイを含めたいかなる望ま
しい方法でも検出することができる。代替的又は付随的に、上記iRNA剤で処理された
組織抽出物のウェスタンブロット解析を行うことによって、MLL−AF4遺伝子発現を
モニタリングすることもできる。
【0068】
(iRNA化学)
ここでは、RNAiを媒介して、MLL−AF4の発現を阻害する単離されたiRNA
剤、例えばdsRNA剤について述べる。
ここで論じるRNA剤には、他には無修飾のRNAに加えて、例えば効力を向上させる
ために修飾されたRNA、およびヌクレオチド代替物のポリマーも含まれる。無修飾のR
NAは、その中で、核酸成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸部分が天然に存在して
いるもの、好ましくはヒト体内に生来的に存在しているものと同じであるか、もしくは本
質的に同じである分子を指す。当技術分野は、まれであるか、もしくは一般的でないが、
天然に存在するRNAを修飾RNAと称することがある。例えば、リンバッハ(Limb
ach)ら(1994年)、Nucleic Acids Res.第22巻、2183
〜2196頁を参照されたい。しばしば修飾RNAと称される(明らかに、それらが通常
は転写後修飾の結果であるため)、そのようなまれであるか、もしくは一般的でないRN
Aは、本明細書で使用される場合、無修飾RNAという用語の範囲内にある。本明細書で
使用される場合、修飾RNAは、その中で、1つまたは複数の核酸成分、すなわち、糖、
塩基、およびリン酸部分が、天然に存在しているもの、好ましくはヒト体内に生来的に存
在しているものと異なる分子を指す。それらは修飾「RNA」と称されるが、それらには
修飾によりRNAではない分子も当然ながら含まれる。ヌクレオチド代替物は、その中で
、ハイブリダイゼーションが実質的にリボリン酸骨格で見られるものと類似するように、
それらの塩基の正しい空間的関係での提示が可能となっている非リボリン酸骨格構造物、
例えばリボリン酸骨格の非荷電模倣体で、リボリン酸骨格が置換されている分子である。
上記のすべての例が本明細書に論じられている。
【0069】
本明細書に記載の修飾は、本明細書に記載のいかなる2本鎖RNAおよびRNA様分子
、例えばiRNA剤にも組み入れら得る。上記修飾は、iRNA剤のアンチセンス鎖およ
びセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましい。核酸が重合体のサブユニットま
たは単量体である場合には、下記の修飾の多くは核酸中で反復される位置で起こり、例え
ば、塩基もしくはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合性Oの修飾である。一部の場合
には、上記修飾が核酸中の対象となる位置のすべてで起こるであろうが、多くの場合、そ
して実際にはほとんどの場合には、そうならないであろう。一例として、修飾は、3’ま
たは5’末端位置でのみ起こることもあり、あるいは末端領域、例えば鎖の末端ヌクレオ
チドの位置または最終2、3、4、5、または10ヌクレオチドでのみ起こることもある
。修飾は、2本領域に起こっても、1本鎖領域に起こっても、あるいはそれら両方に起こ
ってもよい。例えば、非結合性Oの位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または両方
の末端で起こることも、あるいは末端領域、例えば鎖の末端ヌクレオチドの位置または最
終2、3、4、5、または10ヌクレオチドでのみ起こることも、あるいは2本鎖および
1本鎖領域、特に末端で起こることもある。同様に、修飾は、センス鎖で起こることも、
アンチセンス鎖で起こることも、それら両方で起こることもある。一部の場合には、セン
ス鎖およびアンチセンス鎖が同じ修飾または同じクラスの修飾を有するであろう。しかし
ながら、他の場合には、センス鎖およびアンチセンス鎖は異なった修飾を有するであろう
。例えば、一部の場合には、一方の鎖、例えばセンス鎖のみを修飾することが望ましい場
合がある。
【0070】
iRNA剤に修飾を導入する2つの主要な目的は、生物学的環境における分解に対する
それらの安定化、および下記に詳細に論じる薬理学的特性、例えば薬動力学的特性の改良
である。iRNA剤の糖、塩基、または骨格への他の適当な修飾は、共有されている20
04年1月16日出願の国際出願第PCT/US2004/01193号パンフレットに
記載されている。iRNA剤は、共有されている2004年4月16日出願の国際出願第
PCT/US2004/011822号パンフレットに記載の塩基のような天然に存在し
ない塩基を含有することもできる。iRNA剤は、非糖質環状担体分子のような天然に存
在しない糖を含むこともできる。iRNA剤で使用する天然に存在しない糖の例示的特性
は、共有されている2003年4月16日出願の国際出願第PCT/US2004/11
829号パンフレットに記載されている。
【0071】
iRNA剤は、ヌクレアーゼ抵抗性の増強に有用なヌクレオチド間結合(例えばキラル
ホスホロチオエート結合)を含有できる。付随的に、又は代替的に、ヌクレアーゼ抵抗性
を増強させるために、iRNA剤にリボース摸倣体を含有させることができる。ヌクレア
ーゼ抵抗性を増強させるための例示的ヌクレオチド間結合およびリボース模倣体は、共有
されている2004年3月8日出願の国際出願第PCT/US2004/07070号パ
ンフレットに記載されている。
【0072】
iRNA剤は、リガンド結合単量体サブユニットおよびオリゴヌクレオチド合成用の単
量体を含有できる。例示的な単量体は、共有されている2004年8月10日出願の米国
特許出願第10/916185号明細書に記載されている。
【0073】
iRNA剤は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願第PCT/US20
04/07070号パンフレットに記載されているようなZXY構造を有することができ
る。
【0074】
iRNA剤は、両親媒性部分と複合体形成され得る。iRNA剤と共に使用するための
例示的な両親媒性部分は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願第PCT/
US2004/07070号パンフレットに記載されている。
【0075】
iRNA剤のセンス配列及びアンチセンス配列はパリンドロームであり得る。パリンド
ロームiRNA剤の例示的な特徴は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願
第PCT/US2004/07070号パンフレットに記載されている。
【0076】
別の実施形態では、iRNA剤は、モジュール複合体の特性を有する送達薬剤と複合体
形成され得る。この複合体は、(a)濃縮剤(例えば、核酸を、例えばイオンまたは静電
気相互作用を介して、誘引、例えば結合できる薬剤);(b)融合誘導剤(例えば、細胞
膜に融合し、かつ/またはそれを通って輸送される性能を有する薬剤):および、(c)
標的化化学基、例えば細胞または組織標的化剤、例えば特定の細胞型に結合するレクチン
、糖タンパク、脂質、またはタンパク質(例えば抗体)、のうちの1つまたは複数(好ま
しくは2つ以上、より好ましくは3つすべて)に結合される担体物質を含み得る。送達物
質と複合体形成されるiRNA剤は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願
第PCT/US2004/07070号パンフレットに記載されている。
【0077】
iRNA剤は、iRNA2本鎖のセンス配列とアンチセンス配列との間などに、非標準
的な対合を備え得る。非標準的なiRNA剤の例示的特徴は、共有されている2004年
3月8日出願の国際出願第PCT/US2004/07070号パンフレットに記載され
ている。
【0078】
(ヌクレアーゼ抵抗性の強化)
iRNA剤、例えばMLL−AF4融合体を標的とするiRNA剤は、同薬剤が有する
ヌクレアーゼ抵抗性を強化することができる。
抵抗性を強化する方法の1つは、共有されている2004年5月4日に出願の米国特許
仮出願第60/559917号明細書に記載の通り、切断部位を同定し、そのような部位
を修飾して、切断を阻害することである。例えば、ジヌクレオチド5’−UA−3’、5
’−UG−3’、5’−CA−3’、5’−UU−3’、又は5’−CC−3’を切断部
位として利用できる。特定の実施形態では、iRNA剤のすべてのピリミジンが、2’修
飾を有し、そのため、そのiRNA剤は、エンドヌクレアーゼに対する抵抗性が強化され
る。ヌクレアーゼ抵抗性の強化は、例えば、共有されている2004年5月27日出願の
米国特許仮出願第60/574744号明細書に記載の通り、ウリジンが2’修飾ヌクレ
オチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)
ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’
−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2
’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−
CA−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくと
も1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチド;または
5’−シチジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−シチ
ジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチドをもたらす5’ヌクレオチド修飾を行う
ことによって実現できる。上記iRNA剤は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なく
とも4つ、または少なくとも5つのそのようなジヌクレオチドを含み得る。
【0079】
2’修飾ヌクレオチドは、例えば2’修飾されたリボース単位を含み、例えば2’ヒド
ロキシ基(OH)は、種々の異なった「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または
置換され得る。
【0080】
「オキシ」−2’ヒドロキシ基修飾の例には、アルコキシもしくはアリールオキシ(O
R、例えばR=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール
、または糖);ポリエチレングリコール(PEG)、すなわちO(CHCHO)
CHOR;例えばメチレン架橋によって2’ヒドロキシ基が同じリボース糖の4’
炭素に連結されている「ロックト」核酸(LNA)、O−AMINE、およびアミノアル
コキシ、すなわちO(CHAMINE(例えば、AMINE=NH;アルキルア
ミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、
ヘテロアリールアミノ、またはジへテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ
)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)(OCHCHOCH、PEG誘導体)
のみを含有するオリゴヌクレオチドは、強固なホスホロチオエート修飾で修飾されたもの
に匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは、注目に値する。
【0081】
「デオキシ」修飾には、水素(すなわち、デオキシリボース糖、これらは部分的dsR
NAの突出部分に特に重要である);ハロ(例えばフルオロ);アミノ(例えば、NH
;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールア
ミノ、ヘテロアリールアミノ、ジへテロアリールアミノ、またはアミノ酸);NH(CH
CHNH)CHCH−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジ
アルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロア
リールアミノ、またはジへテロアリールアミノ)、−NHC(O)R(R=アルキル、シ
クロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ;メルカプト
;アルキル−チオ−アルキル:チオアルコキシ;及びアルキル、シクロアルキル、アリー
ル、アルケニル、およびアルキニルが含まれ、これらは、選択的に、例えばアミノ官能基
で置換することができる。
【0082】
好ましい置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH、2’−O−アリル、2’
−C−アリル、および2’−フルオロである。
オリゴヌクレオチド骨格におけるフラノース糖の包含も、エンドヌクレオチド鎖切断を
低減できる。iRNA剤は、さらに3’陽イオン基を包含させることによって、あるいは
3’−3’連結を伴う3’末端でのヌクレオシドの反転によって修飾され得る。別の代替
法では、アミノアルキル基、例えば、3’C5−アミノアルキルdTで3’末端をブロッ
クすることができる。他の3’結合体も、3’−5’エキソヌクレオチド分解性の切断を
阻害できる。理論に拘泥するものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの
3’結合体は、エクソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’末端に結合するのを立体
的にブロックすることによって、エキソヌレオチド分解性の切断を阻害し得る。小さなア
ルキル鎖、アリール基、または複素環式結合もしくは修飾糖(D−リボース、デオキシリ
ボース、グルコースなど)でさえも、3’−5’エクソヌクレアーゼをブロックすること
ができる。
【0083】
ヌクレオチド分解性の切断はまた、リン酸リンカーの修飾、例えばフォスフォロチオエ
ート結合を導入することにより阻害され得る。従って、好ましいiRNA剤は、通常は酸
素が占めている架橋部以外の位置にヘテロ原子を含有する修飾リン酸基の特定のキラル形
に関して豊富または純粋であるヌクレオチド2量体を含有する。ヘテロ原子は、S、Se
、Nr又はBrであり得る。へテロ原子がSである場合、Sp連結に関して豊富であ
るか、純粋なキラルであることが好ましい。豊富であるとは、少なくとも70、80、9
0、95、または99%が好ましい形態であることを意味する。修飾リン酸結合は、5’
−又は3’−末端、好ましくは、iRNA剤の5’−末端の位置付近に導入された場合エ
キソヌクレオチド分解性の切断を阻害する上においては特に効果的である。
【0084】
5’−結合は、5’−3’−エキソヌクレオレチド分解性の切断も阻害する。理論に拘
泥するものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの5’結合体は、エクソ
ヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’末端に結合するのを立体的にブロックすること
によって、エキソヌクレオレチド分解性の切断を阻害し得る。小さなアルキル鎖、アリー
ル基、または複素環式結合もしくは修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコー
スなど)でさえも、3’−5’−エクソヌクレアーゼをブロックすることができる。
【0085】
iRNA剤は、2本鎖iRNA剤が少なくとも一方の末端に1本鎖ヌクレオチド突出部
分を含有している場合に、ヌクレアーゼに対する抵抗性を増大させることができる。好ま
しい実施形態では、上記ヌクレオチド突出部分は、1乃至4個の、好ましくは2乃至3個
の不対ヌクレオチドを含有する。好ましい実施形態では、末端ヌクレオチド対に直接隣接
している上記1本鎖の突出部分の不対ヌクレオチドがプリン塩基を含有し、上記末端ヌク
レオチド対がG−C対であるか、もしくは相補的な最終4ヌクレオチド対のうち少なくと
も2対がG−C対である。さらに別の実施形態では、上記ヌクレオチド突出部分は、1ま
たは2つの不対ヌクレオチドを有することがあり、例示的実施形態では、上記ヌクレオチ
ド突出部分が5’−GC−3’である。好ましい実施形態では、上記ヌクレオチド突出部
分が、上記アンチセンス鎖の3’端にある。一実施形態では、上記iRNA剤は、2nt
の突出部分5’−GC−3’が形成されるように、上記アンチセンス鎖の3’末端に5’
−CGC−3’というモチーフを含有する。
【0086】
したがって、iRNA剤は、例えば対象の体内に存在するヌクレアーゼ、例えば、エン
ドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼによる分解を阻害するように修飾された単量体
を含有できる。これらの単量体は、本明細書ではNRMすなわちヌクレアーゼ抵抗性促進
単量体と称され、対応する修飾は、NRM修飾と称される。多くの場合、これらの修飾は
、iRNA剤の他の特性、例えばタンパク質、例えば運搬体タンパク質、例えば血清アル
ブミンまたはRISCのメンバー、と相互作用する能力、または第1の配列および第2の
配列の、お互いと2本鎖を形成する能力、もしくは別の配列、例えば標的分子と2本鎖を
形成する能力、も調節するであろう。
【0087】
1つまたは複数の異なったNRM修飾を、iRNA剤の中、または、iRNA剤の配列
の中に導入することができる。1つの配列中またはiRNA剤中で1つのNRM修飾を複
数回用いることができる。
【0088】
NRM修飾には、末端にのみ配置できる一部のものも、いかなる位置にも配置できる他
のものも含めることができる。一部のNRM修飾は、ハイブリダイゼーションを抑制する
可能性があり、したがって、それらは末端領域のみで使用するのが好ましく、それらを切
断部位、または対象の配列もしくは遺伝子を標的とする配列、特にアンチセンス鎖上の切
断領域にて用いないことが好ましい。それらは、上記ds iRNA剤の2つの鎖の間で
十分なハイブリダイゼーションが維持される場合に、センス鎖の任意の場所にて使用でき
る。一部の実施形態では、NRMが標的外のサイレンシングを最小にし得るので、NRM
を切断部位またはセンス鎖の切断領域に配置するのが望ましい。
【0089】
ほとんどの場合、NRM修飾は、それらがセンス鎖に含まれるか、もしくはアンチセン
ス鎖に含まれるかに応じて異なって分配されるであろう。アンチセンス鎖に含まれる場合
には、エンドヌクレアーゼ切断を妨害または阻害する修飾は、RISC媒介の切断を受け
る領域、例えば切断部位または切断領域に挿入されるべきでない(本願明細書に援用する
、エルバシル(Elbashir)ら、2001年、Genes and Dev.第1
5巻、188頁に記載されている)。標的の切断は、20または21ntのアンチセンス
鎖のほぼ中央、すなわち上記アンチセンス鎖に相補的な標的mRNAの最初のヌクレオチ
ドの上流のほぼ10または11ヌクレオチドで起こる。本明細書で使用される場合、切断
部位は、標的またはそれにハイブリダイズするiRNA剤の鎖における、切断部位のいず
れかの側のヌクレオチドを指す。切断領域は、いずれかの方向における、上記切断部位の
1、2、または3ヌクレオチド以内にあるヌクレオチドを意味する。
【0090】
そのような修飾は、末端領域、例えばセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端位置、また
は上記末端の2、3、4、もしくは5番目の位置を含めた位置に導入することができる。
(テザーリガンド)
薬理学的特性を含めたiRNA剤の特性は、リガンド、例えば、テザーリガンドを導入
することによって、影響を受け、調整され得る。
【0091】
多種多様な構成要素、例えば、リガンドを、iRNA剤、例えば、リガンド結合単量体
サブユニットの担体に連結することができる。リガンド結合単量体サブユニットの場合に
ついて以下にその例を説明するが、これは単に好適な例に過ぎず、同構成要素はiRNA
剤のその他の点にも結合することができる。
【0092】
好ましい部分は、干渉テザー(tether)を介して直接的または間接的に担体に、
好ましくは共有結合するリガンドである。好ましい実施形態では、このリガンドは干渉テ
ザーを介して担体に結合される。リガンド結合単量体が伸長する鎖に取り込まれるとき、
リガンドまたはテザーリガンドは、リガンド結合単量体上に存在し得る。いくつかの実施
形態では、このリガンドは、「前駆体」リガンド結合単量体サブユニットが伸長する鎖に
取り込まれた後で、同「前駆体」リガンド結合単量体サブユニットに取り込まれる。例え
ば、TAP−(CHNHなどのアミノ末端テザーなどを有する単量体は、伸長す
るセンスまたはアンチセンス鎖に取り込まれてよい。その後の操作において、すなわち、
前駆体単量体サブユニットが鎖に取り込まれた後で、求電子基、例えば、ペンタフルオロ
フェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドは、リガンドの求電子基と前駆体
リガンド結合単量体サブユニットテザーの末端求核基との結合によって、その後前駆体リ
ガンド結合単量体に結合され得る。
【0093】
好ましい実施形態では、リガンドは、取り込まれたiRNA剤の分布、標的化または寿
命を改変する。好ましい実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドを備え
ていない種と比較して、選択した標的、例えば、分子、細胞または細胞種、細胞区画もし
くは器官区画などの区画、組織、器官または身体の領域に対する親和性を増強する。
【0094】
好ましいリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーションおよび特異性の特性を改善するこ
とができ、得られた天然もしくは修飾オリゴリボヌクレオチド、または本明細書で説明し
た単量体および/または天然もしくは修飾リボヌクレオチドの任意の組合せを含むポリマ
ー分子のヌクレアーゼ抵抗性も改善することができる。
【0095】
一般的に、リガンドは、例えば、取り込みを高めるための治療調節剤、例えば、分布を
モニタリングするための診断用化合物もしくはレポーター群、架橋剤、ヌクレアーゼ抵抗
性を付与する部分および天然もしくは通常にはない核塩基を含むことができる。一般的な
例には、脂溶性分子、脂質、レクチン、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン(
hecigenin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サ
ルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミ
ン、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロ
デキストリンまたはヒアルロン酸)、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的
化分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミンおよびペプチド模倣体が含まれる。
【0096】
リガンドは、天然物質または組換えもしくは合成分子、例えば、合成ポリアミノ酸など
の合成ポリマーであり得る。ポリアミノ酸の例には、ポリリジン(PLL)、ポリL−ア
スパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L
−ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマ
ー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエ
チレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(
2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーまたはポリホスファ
ジンが含まれる。ポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、ス
ペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチドポリアミン、ペプチド様ポリア
ミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン部分、例
えば、陽イオン性脂質、陽イオン性ポルフィリン、ポリアミンの4級塩またはアルファヘ
リックスペプチドが含まれる。
【0097】
リガンドにはまた、標的化化学基、例えば、細胞または組織標的化剤、例えば、甲状腺
刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、サーファクタントタンパク質A、ムチン炭水
化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン、ビスホスホン酸、ポリグルタミン
酸、ポリアスパラギン酸、またはRGDペプチドもしくはRGDペプチド模倣体が含まれ
る。
【0098】
リガンドは、例えば糖タンパク質、例えば低密度リポタンパク質(LDL)のようなリ
ポタンパク質、ヒト血清アルブミン(HSA)のようなアルブミン、又はペプチドのよう
なタンパク質、コ−リガンドに対して特異的な親和性を有する分子、或いは癌細胞、内皮
細胞又は骨細胞のような特定のタイプの細胞に結合する抗体のような抗体であり得る。リ
ガンドはまた、ホルモン及びホルモン受容体を含み得る。それらはまた、補因子、多価ラ
クトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサ
ミン、多価マンノース又は多価フコースのような非ペプチド種を含み得る。リガンドは、
例えばリポ多糖体、p38MAPキナーゼのアクチベータ又はNF−κBのアクチベータ
であり得る。
【0099】
リガンドは、例えば、細胞骨格を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、微小
繊維および/または中間径繊維を破壊することによって、細胞へのiRNA剤の取り込み
を増加させることができる物質、例えば、薬剤であり得る。この薬剤は、例えば、タキソ
ン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリ
ド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホライ
ドA、インダノシンまたはミオセルビン(myoservin)であり得る。
【0100】
一態様では、リガンドは脂質または脂質をベースにした分子である。このような脂質ま
たは脂質をベースにした分子は、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA
)に結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば、肝臓の実質細
胞を含めた肝組織との結合体の分布を可能にする。HSAに結合できるその他の分子もリ
ガンドとして使用できる。例えば、ネプロキシン(neproxin)またはアスピリン
を使用できる。脂質または脂質をベースにしたリガンドは、(a)結合体の分解に対する
抵抗性を増強し、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増強し、および/
または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することが
できる。
【0101】
脂質をベースにしたリガンドは、標的組織に対する結合体の結合を調節するために、例
えば、制御するために使用され得る。例えば、HSAに一層強力に結合する脂質または脂
質をベースにしたリガンドは、腎臓を標的とする傾向が少なく、したがって、身体から排
出される傾向が低い。HSAにあまり強く結合しない脂質または脂質をベースにしたリガ
ンドは、結合体を腎臓に対する標的とするために使用することができる。
【0102】
好ましい実施形態では、脂質をベースにしたリガンドはHSAに結合する。これは、結
合体が好ましくは腎臓以外の組織に分布するような十分な親和性で同HSAに結合するこ
とが好ましい。しかしながら、この親和性はHSAリガンドの結合が離れることできない
ほど強力ではないことが好ましい。
【0103】
別の態様では、リガンドは、標的細胞によって、例えば増殖細胞によって取り込まれる
部分、例えば、ビタミンまたは栄養素である。これらは、例えば、悪性型または非悪性型
の、例えば、癌細胞の、望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を治療するために特に有
用である。ビタミンの例には、ビタミンA、EおよびKが含まれる。その他のビタミンの
例は、ビタミンB群、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール
または癌細胞によって取り込まれるその他のビタミンもしくは栄養素である。
【0104】
別の態様では、リガンドは、細胞透過性薬剤、好ましくはヘリックス細胞透過性薬剤で
ある。この薬剤は両親媒性であることが好ましい。薬剤の例は、tatまたはアンテナペ
ディアなどのペプチドである。この薬剤がペプチドの場合、修飾可能であり、ペプチジル
模倣体、反転異性体(invertomer)、非ペプチドまたは偽ペプチド結合が含ま
れ、Dアミノ酸も使用できる。ヘリックス剤は、好ましくは親油性相および疎油性相を有
するアルファヘリックス剤であることが好ましい。
【0105】
(5’−リン酸修飾)
好ましい実施形態では、iRNA剤は、5’がリン酸化されているか、または5’プラ
イム末端にホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5’−リン酸修飾には、RISC
媒介遺伝子サイレンシングに適合したものが含まれる。適切な修飾には、5’−モノホス
ファート((HO)2(O)P−O−5’);5’−ジホスファート((HO)2(O)
P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−トリホスファート((HO)2(O)P
−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャッ
プ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(
HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Ap
pp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(H
O)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−モノ
チオホスファート(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P−O−5’);5’−モノ
ジチオホスファート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、
5’−ホスホロチオラート((HO)2(O)P−S−5’);酸素/硫黄で置換された
モノホスファート、ジホスファートおよびトリホスファート(例えば、5’−アルファ−
チオトリホスファート、5’−ガンマ−チオトリホスファートなど)の任意の更なる組み
合わせ、5’−ホスホロアミデート((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(NH
2)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチ
ル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−、(OH)
2(O)P−5’−CH2−)、5’−アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエ
ーテル=メトキシメチル(MeOCH2−)、エトキシメチル、など、例えば、RP(O
H)(O)−O−5’−)が含まれる。
【0106】
センス鎖は、同センス鎖を不活性化し、活性型RISCの形成を阻止し、それによって
標的外効果を潜在的に減少させるために修飾され得る。これは、センス鎖の5’−リン酸
化を阻止する修飾によって、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドで修飾すること
によって実現することができる(ニカネン(Nykaenen)ら、2001年、「AT
P requirements and small interfering RNA
structure in the RNA interference pathw
ay.」Cell、第107巻、309〜321頁を参照のこと)。リン酸化を阻止する
その他の修飾、例えば、O−MeよりもHによる5’−OHの簡単な置換も使用され得る
。代替的に、大きな嵩高い基を5’−リン酸塩に添加して、ホスホジエステル結合に変更
してもよい。
【0107】
(iRNA剤の細胞への輸送)
理論に結びつけることは望まないが、コレステロール結合iRNA剤とリポタンパク質
のある種の成分(例えば、コレステロール、コレステリルエステル、リン脂質)との間の
化学的類似性は、iRNA剤と血液中のリポタンパク質(例えば、LDL、HDL)との
結合および/またはiRNA剤とコレステロールに親和性を有する細胞成分、例えば、コ
レステロール輸送経路の成分との相互作用を引き起こす可能性がある。リポタンパク質な
らびにその成分は、細胞によって、様々な能動的および受動的輸送機構によって、例えば
、限定はしないが、LDL受容体結合LDLのエンドサイトーシス、酸化された、もしく
はその他の修飾をされたLDLのスカベンジャー受容体Aとの相互作用によるエンドサイ
トーシス、肝臓におけるHDLコレステロールのスカベンジャー受容体B1の媒介による
取り込み、ピノサイトーシスまたはABC(ATP結合カセット)輸送タンパク質、例え
ば、ABC−A1、ABC−G1もしくはABC−G4によるコレステロールの膜通過輸
送によって取り込まれ、処理される。したがって、コレステロール結合iRNA剤は、こ
のような輸送機構を有する細胞、例えば、肝臓の細胞による取り込みの促進を受けること
ができた。このように、本発明は、このような成分(例えば、コレステロール)の天然リ
ガンドをiRNA剤に結合させるか、またはこの成分(例えば、LDL、HDL)の天然
リガンドと関連する、もしくは結合するiRNA剤に化学的部分(例えば、コレステロー
ル)を結合させることによって、ある種の細胞表面成分、例えば、受容体を発現する細胞
にiRNA剤を標的化させる証拠および一般的方法を提供する。
【0108】
(その他の実施形態)
RNA、例えば、iRNA剤は、インビボにおいて、例えば、細胞に送達された外来D
NA鋳型から細胞内で産生され得る。例えば、このDNA鋳型は、ベクターに挿入され、
遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局
所投与によって(米国特許第5328470号)、または定位注射によって(例えば、チ
ェン(Chen)ら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA、第91巻、30
54〜3057頁、1994年)対象に送達され得る。遺伝子治療ベクターの医薬調製物
は、許容できる希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達担体
が包埋された徐放性マトリックスを含み得る。DNA鋳型は、例えば、2個の転写単位を
含むことができ、一方はiRNA剤の上鎖を含む転写物を生成し、他方はiRNA剤の下
鎖を含む転写物を生成する。この鋳型が転写されたとき、iRNA剤が生成され、遺伝子
サイレンシングを媒介するsiRNA剤断片に処理される。
【0109】
(製剤)
本明細書で説明したiRNAは、対象に投与するために製剤化することができる。
説明を容易にするために、この項における製剤、組成物および方法は、ほとんどは無修
飾iRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、その
他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、このような実施は本発
明の範囲内であることを理解されたい。
【0110】
製剤化されたiRNA剤組成物は、様々な状態をとることができる。いくつかの例では
、この組成物は少なくとも部分的な結晶、均一な結晶、および/または無水物(例えば、
水分が80、50、30、20または10%未満)である。他の例では、iRNA剤は水
相、例えば、水を含む溶液に含まれている。
【0111】
水相または結晶組成物を、例えば、送達媒体、例えば、リポソーム(特に水相用)また
は粒子(例えば、結晶組成物に適し得る微粒子)に取り込むことができる。一般的に、i
RNA剤組成物は、企図した投与方法に適合する方法で製剤化される。
【0112】
iRNA剤調製物は、他の薬剤、例えば、他の治療剤またはiRNA剤を安定化する薬
剤、例えば、iRNPを形成するためにiRNA剤と複合体化するタンパク質と、組み合
わせて、製剤化することができる。さらに他の薬剤には、キレート剤、例えば、EDTA
(例えば、Mg2+などの2価陽イオンを除去するため)、塩、RNアーゼ阻害剤(例え
ば、RNAsinなどの特異性の広いRNアーゼ阻害剤)などが含まれる。
【0113】
一実施形態では、iRNA剤調製物には、2個以上のiRNA剤(類)、例えば、第2
の遺伝子に関して、又は同一遺伝子に関してRNAiを媒介する第2のiRNA剤を含む
。更に他の調製物には、少なくとも3個、5個、10個、20個、50個または100個
以上の異なるiRNA剤種を含めることができる。このようなiRNA剤は、同数の異な
る遺伝子に関してRNAiを媒介することができる。
【0114】
このような調製物中の2個以上のiRNAが同一遺伝子を標的とする場合、それらは重
複も隣接もしていない標的配列を有すること可能で、あるいはこの標的配列は重複してい
ても隣接していてもよい。
【0115】
選択的に、本発明のiRNA剤は、リポソームを用いて製剤化され得る。種々の組成の
リポソームが種々の製薬的に活性な成分を部位特異的に送達するために使用され得る(ヴ
ィッチ,シー.(Witschi C)ら、Pharm.Res.、1999年、第16
巻、382−390頁、イェ,エム.ケイ.(Yeh,M.K.)ら、Pharm.Re
s.、1996年、1693−1698頁)。リポソームとカーゴ(cargo)との間
の相互作用は通常、特にカチオン性脂質送達系では疎水性の相互作用又は電荷の引力に依
存する(ゼルファティ,オー.(Zelphati,O.)ら、J.Biol.Chem
.、2001年、第276巻、35103−35110頁)。HIV tatペプチド保
持リポソームはまた、エンドサイトーシス経路を迂回して、カーゴを直接細胞質に送達す
るために構築され、かつ使用されてきた(トルチリン,ブイ.ピー.(Torchili
n、V.P.)ら、Biochim.Boiphys.Acta−Biomembran
es、2001年、第1511巻、397−411頁、トルチリン,ブイ.ピー.ら、P
roc.Natl.Acad.Sci.USA、2001年、第98巻、8786−87
91頁)。糖グラフトリポソームに封入されると、イセチオン酸ペンタミジン及び誘導体
は、通常のリポソームに封入された薬物或いはフリーの薬物と比較してより効果的である
ことが発見された(バネリー,ジー.(Banerjee,G.)ら、J.Antimi
crob.Chemother.、1996年、第38(1)巻、145−150頁)。
温度感受性のタキソールのリポソーム製剤(熱媒介型標的化薬物送達)は、局所的な高温
療法と組み合わせて腫瘍を有するマウスにインビボで投与したところ、高温療法を組み合
わせた、又は組み合わせていない、同用量のフリーのタキソールと比較して、腫瘍体積が
有意に低減し、生存時間の増加が観察された(シェルマ,ディー.(Sherma,D.
)ら、Melanoma Res.、1998年、第8(3)巻、240−244頁)。
インシュリン、IFN−α、IFN−γ、及びプロスタグランジンE1の送達のためにリ
ポソーム製剤を局所に適用することは、ある程度の成功を収めている(セビッチ ジー.
(Cevc G.)ら、Biochim.Biophy,Acta、1998年、第13
68巻、201−215頁、フォルドバリ エム.(Foldvari M.)ら、J.
Liposome Res.、1997年、第7巻、115−126頁、ショート エス
.エム.(Short S.M.)ら、Pharm.Res.、1996年、第13巻、
1020−1027頁、フォルドバリ エム.ら、Urology、1998年、第52
(5)巻、838−843頁、米国特許第5853755号明細書)。
【0116】
抗体は、リポソームを組織特異的又は細胞特異的に取り込む別の標的装置の代表である
(マストロバティスタ,イ−.(Mastrobattista,E.)ら、Bioch
im.Biophy,Acta、1999年、第1419(2)巻、353−363頁、
マストロバティスタ,イ−.ら、Adv.Drug Deliv.Rev.、1999年
、第40(1−2)巻、103−127頁)。リポソームのアプローチは、封入された活
性成分が徐々に放出されるという能力、免疫系及びタンパク質分解酵素を回避できるとい
う能力、腫瘍を標的化して腫瘍組織への優先的な蓄積及びその漏出しやすい新生血管から
の管外遊出による転移を引き起こす能力を含む種々の利点を提供する。例えばポリビニル
ピロリドンナノ粒子及びマレイレート化ウシ血清アルブミンのようなその他の担体も抗癌
剤を新生物細胞に送達するために使用され得る(シャルマ,ディ.(Sharma、D.
)ら、Oncl.Res.、1996年、第8(7−8)巻、281−286頁、ムクホ
パディアイ,エイ.(Mukhopadhyay,A.)ら、FEBS Lett.、1
995年、第376(1−2)巻、95−98頁)。従って、非常に多様性かつ合理的な
設計及び修飾が容易である標的化及び封入技術を使用して、本発明のiRNA剤の所望と
する細胞への送達が容易になる。
【0117】
上記したように、本発明の製薬組成物はリポソーム成分を含み得る。本発明に従って、
リポソームは細胞の原形質膜と融合可能な脂質成分からなり、それにより、同リポソーム
がカーゴ、即ち核酸分子組成物を細胞に送達可能となる。幾らかの好ましいリポソームは
、当業者に周知である遺伝子送達法において一般的に使用されるリポソームを含む。幾ら
かの好ましいリポソーム送達ビヒクルは、多重膜リポソーム(MLV)、脂質及び押出脂
質(Extruded lipid)を含むが、本発明はそのようなリポソームに限定さ
れるものではない。MLVを調製する方法は当業者には周知である。押出脂質もまた意図
される。押出脂質は、MLV脂質と同様に調製される脂質であるが、その全体の内容が本
明細書において援用されているテンプレトン(Templeton)らの文献(Natu
re Biotech.、1997年、第15巻、647−652頁)に記載されている
ように、調製後にサイズの小さいフィルタから押し出されるものである。小さな単層リポ
ソーム(SUV)もまた、本発明の組成物及び方法において使用され得る。その他好まし
いリポソーム送達ビヒクルはポリカチオン脂質組成物を有するリポソーム(即ち、カチオ
ン性リポソーム)を含む。例えば、カチオン性リポソーム組成物は、コレステロールと複
合体化される任意のカチオン性リポソームを含むが、限定されることなく、DOTMA及
びコレステロール、DOTAP及びコレステロール、DOTIM及びコレステロール、及
びDDAB及びコレステロールを含む。本発明で使用されるリポソームは、約10乃至1
000ナノメートル(nm)の範囲を含む任意のサイズ又はその間の任意のサイズであり
得る。
【0118】
リポソーム送達ビヒクルは、哺乳動物の特定の部位を標的化するために修飾され得、そ
れによりその部位において本発明のiRNA剤を標的化し、かつ使用する。適切な修飾は
、送達ビヒクルの脂質部分の化学式を操作することを含む。送達ビヒクルの脂質部分の化
学式の操作は、同送達ビヒクルの細胞外及び細胞内標的化を誘導する。例えば、リポソー
ムの脂質二重層の電荷を変える化学物質をリポソームの脂質の化学式に加え、それにより
同リポソームは特定の電荷特性を有する特定の細胞と融合する。一実施形態において、外
因性の標的分子をリポソームに添加することによる標的化(即ち、抗体)のようなその他
の標的化機構は本発明のリポソームの必要な成分とはならない。その理由は、免疫学的に
活性な器官における効果的な免疫活性は、送達経路が静脈内又は腹腔内である場合には、
更なる標的化機構の援助がなくても組成物により既に提供され得るからである。しかしな
がら、幾らかの実施形態において、リポソームは、標的分子が結合し得る特定の細胞又は
組織を標的化するために、同リポソームに組み込まれ得る抗体、可溶性レセプター又はリ
ガンドのような標的化剤を使用して、特定の標的細胞又は組織に指向され得る。リポソー
ムの標的化は、例えば、ホ(Ho)ら、Biochemistry,1986年、第25
巻、5500−6頁、ホら、J Biol Chem、1987年a、第262巻、13
979−84頁、ホら、J Biol Chem、1987年b、第262巻、1397
3−8頁及びハン(Huang)らの米国特許第4957735号明細書に記載されてお
り、それらの各文献は、本明細書においてその全体が参照により援用される。一実施形態
において、血漿タンパク質又はその他の要因によるリポソームのオプソニン化に起因する
細網内皮系細胞による注入リポソームの効果的な取り込みを回避することが望ましい場合
には、ガングリオシド(アレン(Allen)ら、FEBS Lett、1987年、第
223巻、42−6頁)又はポリエチレングリコール(PEG)由来の脂質(クリバノフ
(Klibanov)ら、FEBS Lett、1990年、第268巻、235−7頁
)のような親水性の脂質が従来のリポソームの二重層内に組み込まれ、いわゆる立体的に
安定化した、即ち「ステルス」リポソームが形成される(ウッドル(Woodle)ら、
Biochim.Biophy Acta、1992年、第1113巻、171−99頁
)。そのようなリポソームの変更例は、例えば、ウンガー(Unger)らに付与された
米国特許第5705187号明細書、チョイ(Choi)らに付与された米国特許第58
20873号明細書、チロシュ(Tirosh)らに付与された米国特許第581785
6号明細書、タガワ(Tagawa)らに付与された米国特許第5686101号明細書
、ハンらに付与された米国特許第5043164号明細書及びウッドルらに付与された米
国特許第5013556号明細書に記載されており、それらの全ては本明細書においてそ
の全体が参照により援用される。
【0119】
(治療方法および送達経路)
iRNA剤、例えば、MLL−AF4を標的とするiRNA剤を含む組成物は、様々な
経路によって対象に送達することができる。例示的な経路には、クモ膜下、実質、静脈内
、経鼻、経口および眼内送達が含まれる。本発明のiRNA剤を投与する好ましい手段は
、非経口投与によるものである。
【0120】
iRNA剤は、投与に適した医薬組成物に取り込むことができる。例えば、組成物は、
1種または複数種のiRNA剤および薬学的に許容される担体を含むことができる。本明
細書では、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品投与に適合した任意の、お
よびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤及び吸収
遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性のある物質のためにこのような媒体および作
用物質を使用することは、当該技術分野では周知である。従来の媒体または作用物質が活
性化合物に不適合である場合を除いて、それらは組成物に使用されるものとする。補充的
な活性化合物もこの組成物に組み入れることができる。
【0121】
本発明の医薬品組成物は、局所治療または全身治療が望ましいかどうかに応じて、およ
び治療する部位に応じていくつかの方法で投与することが可能である。投与は、局所投与
(眼内、経鼻、経皮を含む)、経口投与又は非経口投与であり得る。非経口投与には、静
脈点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射、またはクモ膜下腔内もしくは心室内投与が含
まれる。
【0122】
送達の経路は、患者の障害に応じて変更され得る。一般的に、本発明のiRNAの送達
は、対象への全身送達を実現するために実施される。これを実現する好ましい手段は、非
経口投与による。
【0123】
非経口投与用製剤には、緩衝剤、希釈剤およびその他の適切な添加物も含有できる滅菌
水性溶液が含まれる。静脈内注射は、例えばリザーバに取り付けられた心室内カテーテル
により促進され得る。静脈内での使用では、溶質の総濃度は、調製物を等張にするために
制御されるべきである。
【0124】
投与は、対象によって提供され得るか、または例えば治療奉仕者のような別の人によっ
て提供され得る。治療奉仕者は、人に治療を提供することに関与する任意の存在、例えば
、病院、ホスピス、診療所、外来患者向け診療所で医療に従事する人、例えば、医者、看
護師もしくはその他の専門家などの医療従事者、または配偶者または親などの保護者であ
り得る。投薬は、測定された用量で、または計測された用量を送達する分配器で提供され
得る。
【0125】
「治療有効量」という用語は、望ましい生理学的応答をもたらすために、治療する対象
において所望するレベルの薬剤を提供するのに必要な、組成物中に存在する量のことであ
る。
【0126】
「生理学的有効量」という用語は、所望とする緩和または治療的効果を与えるために対
象に送達される量である。
「薬学的に許容される担体」という用語は、その担体が肺に著しく有害な毒性効果を与
えず肺に取り込まれることが可能であることを意味する。
【0127】
「共投与」という用語は、2種以上の薬剤、特に2種以上のiRNA剤を対象に投与す
ることである。薬剤は、単一の医薬組成物に含有され、同時に投与され得るか、または薬
剤は別々の製剤に含有され、順番に対象に投与され得る。2種の薬剤が同時に対象にて検
出されることができる限り、2種の薬剤は共投与されたと言える。
【0128】
担体として有用な医薬賦形剤の種類には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの安定化
剤、炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの賦形剤、pH調整剤または緩衝剤;塩
化ナトリウムなどの塩などがある。これらの担体は、結晶形であっても、アモルファス形
であってもよく、2つの混合物であってもよい。
【0129】
特に有用である賦形剤には、適合性のある炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはそ
れらの組合せが含まれる。適切な炭水化物には、ガラクトース、D−マンノース、ソルボ
ースなどの単糖類、ラクトース、トレハロースなどの二糖類、2−ヒドロキシプロピル−
β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、およびラフィノース、マルトデキス
トリン、デキストランなどの多糖類、マンニトール、キシリトールなどのアルジトール類
が含まれる。好ましい炭水化物群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マル
トデキストリンおよびマンニトールが含まれる。適切なポリペプチドには、アスパルテー
ムが含まれる。アミノ酸には、アラニンおよびグリシンが含まれ、グリシンが好ましい。
【0130】
適切なpH調整剤または緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム
などの有機酸および塩基から調製された有機塩が含まれ、クエン酸ナトリウムが好ましい

【0131】
投与量。iRNA剤は、体重1kg当たり約75mg未満、または体重1kg当たり約
70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、
0.01、0.005、0.001または0.0005mg未満の単位用量で、および体
重1kg当たりiRNA剤200nmol未満(例えば、約4.4×1016コピー)の
単位用量で、または体重1kg当たりiRNA剤1500、750、300、150、7
5、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.007
5、0.0015、0.00075、0.00015nmol未満の単位用量で投与され
得る。例えば、この単位用量は、注射(例えば、静脈内もしくは筋肉内注射、クモ膜下注
射、または器官への直接注射)によって、吸入投与、または局所塗布によって投与され得
る。
【0132】
器官へ直接(例えば、肝臓に直接)iRNA剤を送達することは、器官当たり約0.0
0001mg〜約3mg、または好ましくは器官当たり約0.0001〜約0.001m
g、器官当たり約0.03〜3.0mg、眼当たり約0.1〜3.0mgまたは器官当た
り約0.3〜3.0mgの程度の投与量であり得る。
【0133】
投与量は、疾患または障害を治療または予防するのに有効な量であり得る。
一実施形態では、単位用量を1日1回より少ない頻度で、例えば、2日、4日、8日ま
たは30日毎に1回より少ない頻度で投与する。他の実施形態では、単位用量は一定頻度
(例えば、規則正しい頻度)では投与されない。例えば、単位用量を1回で投与すること
が可能である。iRNA剤が媒介するサイレンシングは、iRNA剤組成物を投与した後
、数日間維持され得るので、多くの場合、1日1回より少ない頻度で、場合によっては全
治量期間中1回のみ組成物を投与することが可能である。
【0134】
一実施形態では、例えば、2本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、
例えば、siRNA剤中に処理されることができるより大きなiRNA剤、またはiRN
A剤、例えば、2本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコ
ードするDNA)の初回量および1回または複数の維持用量が対象に投与される。一回又
は複数回の維持用量は、一般的に初回量よりも少なく、例えば、初回量の2分の1少ない
。維持治療計画は、1日当たり体重1kgに対して0.01〜75mgの範囲、例えば、
1日当たり体重1kgに対して70、60、50、40、30、20、10、5、2、1
、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001または0.0005m
gの一回又は複数回の用量で対象を治療することを含み得る。維持用量は、5、10また
は30日毎に1回以下投与することが好ましい。さらに、治療計画は、特定の疾患の性質
、重症度および患者の全体的状態に応じて変化し得る期間の間、維持され得る。好ましい
実施形態では、投与量は1日1回以下、例えば、24、36、48時間以上に1回以下、
例えば、5日または8日毎に1回以下にて送達され得る。処置後、患者の状態の変化およ
び疾患状態の徴候の軽減をモニタリングすることができる。化合物の投与量は、患者が現
在の用量レベルに有意に応答しない場合増加させることができ、あるいは疾患状態の徴候
の軽減が認められた場合、疾患状態が消失した場合、または望ましくない副作用が認めら
れた場合、用量を減少させることができる。
【0135】
効果的な用量は、特定の環境下で所望するように、または適切だと考えられるように、
単回投与で、または2回以上の投与で投与することができる。反復注入又は頻繁な注入を
促進することが望ましい場合、送達装置、例えば、ポンプ、半永久的ステント(例えば、
静脈内、腹腔内、嚢内または関節包内)またはリザーバを埋め込むことが適切であり得る

【0136】
処理が成功した後、疾患状態の再発を防ぐために、本発明の化合物を体重1kg当たり
0.001g〜100gの範囲の維持用量で投与する維持治療を患者に受けさせることが
望ましい(米国特許第6107094号)。
【0137】
iRNA剤組成物の濃度は、障害を治療もしくは予防するのに有効であるか、またはヒ
トの生理学的状態を調節するために十分な量である。投与するiRNAの薬剤の濃度また
は量は、薬剤について測定されたパラメータ、および経鼻、頬側または肺投与などの投与
方法に依存される。例えば、経鼻用製剤は、鼻孔の刺激または灼熱感を回避するために、
いくつかの成分をはるかに低い濃度にしなければならない傾向がある。適切な経鼻用製剤
を提供するために、経口用製剤を10〜100倍希釈することが時として望ましい。
【0138】
非限定的ではあるが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療法、対象の一般的健康状
態および/または年齢、その他の既存の疾患を含めたある種の因子が、対象を効果的に治
療するために必要な投与量に影響を及ぼし得る。治療に使用するsiRNAなどのiRN
A剤の効果的投与量は、特定の治療の期間中、増加または減少し得ることも理解されたい
。投与量の変化は、本明細書に記載されているように、診断試験法の結果から得られ、明
らかとなり得る。例えば、iRNA剤組成物投与後に対象をモニタリングすることができ
る。モニタリングからの情報に基づいて、iRNA剤組成物の追加量を投与することがで
きる。
【0139】
投薬は、数日から数ヶ月続く治療期間中、または全治するまで、もしくは疾患状態の消
失が実現するまで、治療する疾患状態の重症度および応答性に左右される。最適な投薬計
画は、患者の身体における薬剤蓄積の測定によって計算することができる。当業者であれ
ば、最適な投与量、投薬方法および反復率を容易に決定することができるだろう。最適な
投与量は、個々の化合物の相対的能力に応じて変更可能であり、前述したようにインビト
ロおよびインビボ動物モデルにおいて効果的であることが発見されたEC50に基づいて
一般的に判断することができる。
【0140】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらはさらに限定するもので
はない。
【実施例】
【0141】
試薬の入手先
試薬の入手先が本明細書に具体的に挙げられていない場合、このような試薬は、分子生
物学用試薬の任意の供給元から、分子生物学での適用に標準的な量/純度で入手すること
ができる。
【0142】
実施例1:siRNA合成
1本鎖RNAは、Expedite 8909合成機(アプライドバイオシステムズ、
アプレラドイチュランド社(Applied Biosystems、Applera
Deutschland GmbH)、[ドイツ国、ダルムシュタット(Darmsta
dt)所在]および固相担体として微細孔性ガラス(CPG、500Å、グレンリサーチ
社(Glen Reserach)、[米国バージニア州スターリング(Starlin
g)所在])を使用して、1μmoleのスケールで固相合成によって作製された。RN
Aおよび2’−O−メチルヌクレオチドを含有するRNAは、それぞれ対応するホスホラ
ミダイトおよび2’−O−メチルホスホラミダイトを使用して固相合成によって作製され
た(プロリゴバイオケミ社(Proligo Biochemie GmbH)、[ドイ
ツ国、ハンブルク(Hamburg)所在])。これらの構成単位を、「Current
protocols in nucleic acid chemistry」、ボカ
ージュ エス.エル.(Beaucage、S.L.)ら(編)、John Wiley
& Sons、Inc.[アメリカ合衆国ニューヨーク]に記載されたような標準的ヌ
クレオシドホスホラミダイト化学物質を使用してオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選
択部位に取り込ませた。ホスホロチオエート結合は、ヨウ素酸化剤溶液をアセトニトリル
(1%)に溶解したボカージュ試薬(クルアケム社(Chruachem Ltd)[英
国グラスゴー(Glasgow)所在])の溶液と置換することによって導入された。他
の付随する試薬は、マリンクロットベーカー社(Mallinckrodt Baker
)[ドイツ国、グリサイム(Griesheim)所在]から入手した。
【0143】
粗オリゴリボヌクレオチドの陰イオン交換HPLCによる脱保護および精製は、確立さ
れた方法に従って実施された。収率および濃度は、分光光度計(DU 640B、ベック
マンコールター社(Beckman Coulter GmbH)、[ドイツ国、アンタ
ーシュリースハイム(Unterschlieβheim)所在])を使用して、波長2
60nmでそれぞれのRNAの溶液のUV吸収によって測定した。2本鎖RNAは、アニ
ーリング緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム、pH6.8、100mMの塩化ナトリウ
ム)中において相補鎖の等モル溶液を混合し、85〜90℃の水浴中で3分間加熱し、3
〜4時間かけて室温まで冷却することによって作製した。精製したRNA溶液を使用する
まで−20℃で保存した。
【0144】
実施例2:siRNAのデザイン
効率的なMLL−AF4siRNAを同定するために、MLL−AF4融合部位のいず
れかの側を含み、かつ側面に位置する配列のsiRNAのスキャンを実施した(非特許文
献5、非特許文献3、マシャレク(Marshalek)ら、Br.J.Haemato
logy、第90巻、308−320頁(1995年))。スキャンを実施するために、
本願の発明者らは、MLL−AF4融合部位を含む配列と重複し、かつ同配列から1つの
ヌクレオチドずつ段階的に下流側に移動させた標的部位を有する14個の異なるsiRN
Aを合成した。siRNA配列及びそれらの融合mRNAの標的部位を表2に示した。表
2に示されるsiRNAの2本鎖は、以下においてはsiMAXと参照され、Xは表2に
おいて示されるそれぞれの対応する2本鎖を構成するセンス及びアンチセンス鎖の単位に
おける整数を意味する。例えば、siMA5は、MA5s及びMA5asから形成された
2本鎖を意味する。しかしながら、siMAxはMA3s及びMAxas(表1における
薬剤番号2)により形成される2本鎖を意味し、siMAmmは、MAmms及びMAm
masにより形成されるミスマッチ2本鎖を意味する。
【0145】
加えて、一つのsiRNAがRS4;11細胞における融合部位変種と相同して合成さ
れた(本明細書においてはsiMARS)。siMARSのセンス鎖の位置1乃至21は
、Genbank登録番号L22179の位置4338−4358に対応する(バージョ
ン番号.L22179.1 GI:347376、非特許文献5)。
【0146】
【表2】


対照として、ミスマッチsiRNA siMAmm、siRNA siAGF1及びそ
のミスマッチ対照siAF6(AML/MTG8を標的とするもの)並びにsiRNA
siK4及びsiGL2(ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼmRNAを標的と
するもの)(ハイデンライヒ(Heidenreich)ら、Blood、第101巻、
3157−3163頁(2003年))を使用した。siAGF1のセンス鎖の1乃至2
1位は、AML1/MTG8(Genbank取得番号D13979)の2102乃至2
122位に対応する。siAGF6はsiAGF1とは、センス鎖配列の8及び13位に
おけるAからUへの変更及びアンチセンス配列に対する対応する変化を除いては、同一で
ある。siGL2のセンス鎖の1乃至21位は、P.pyralis lucifera
se(Genbank取得番号M15077)の514乃至533位に対応する。siK
4のセンス鎖の1乃至21位は、ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼII(Ge
nbank取得番号L11017)の4184乃至4202位に対応する。
【0147】
siMAx、siAGF1、siAGF6及びsiGL2を除くsiRNAは、21の
ヌクレオチド長のセンス鎖と23のヌクレオチド長のアンチセンス鎖から構成されており
、siRNAはアンチセンス鎖により2個のヌクレオチドが一つの3’−突出部分を形成
する。siMAx、siAGF1、siAGF6及びsiGL2は、21のヌクレオチド
長のセンス鎖及びアンチセンス鎖から構成されており、両端に2個のヌクレオチドの3’
−突出部分を形成する。
【0148】
実施例3:細胞培養
研究された複数の遺伝子から発現されたmRNAのレベルを低減する種々のsiRNA
の効果を細胞株SEM(グレイル(Greil)ら、Br J Haematol.、第
86巻、275−283頁、1994年)、RS4;11(ストング,アール.シー.(
Stong,R.C.)ら、Blood、第65巻、21−31頁、1985年)(ドイ
ツ国、ブラウンシュワイクに所在のDSMZから入手した)及びMV4;11(ランゲ,
ピー.エイチ.(Lange,B.H.)及びウィンフィールド,エイチ.エヌ.(Wi
nfield,H.N.)、Cancer、第60巻、464−472頁、1987年)
(ドイツ国ハノーバー医学校のジェイ.クラウター(Krauter)から入手した)で
試験した。これらは染色体転座t(4;11)(q21;q23)を保持するが、異なる
切断点により異なるMLL−AF4変種を発現する。更に、本研究にて使用された白血病
細胞株はHL60(コリンズ,エス.ジェイ.(Collins,S.J.)ら、Nat
ure、第270巻、347−349頁、1977年)、K562(ロツィオ,シー.ビ
ー.(Lozzio,C.B.)及びロツィオ ビー.ビー.(Lozzio,B.B.
)、J.Natl Cancer Inst、第50巻、535−538頁、1973年
)、Kasumi−1(アソウ,エイチ.(Asou,H.)ら、Blood、第77巻
、2031−2036頁、1991年)、SKNO−1(マトザキ,エス.(Matoz
aki,S.)ら、Br J Haematol、第89巻、805−811頁、199
5年)及びU937(サンドストローム,シー.(Sundstrom,C.)及びニル
ソン,ケイ.(Nilsson,K.)、Int J Cancer、第17巻、565
−577頁、1976年)であった。SKNO−1細胞は20%FCS(SeraPlu
s、パンバイオテック社(PANBoitech GmbH))及び7ng/mlのGM
−CSFを補充したRIMI1640Glutamax培地(インビトローゲン(Inv
itrogen),ドイツ国カールスルーエ所在)で維持され、その他の細胞株の全ては
、37℃及び5%COにて10%のFCSを補充したRIMI1640Glutama
x培地で維持された。健全な患者の骨髄からの初代ヒトCD34+細胞は、チュービンゲ
ン(Tuebingen)に所在の大学小児病院から凍結したストックとして入手した。
【0149】
実施例4:siRNA処理
SEMのsiRNAエレクトロポレーションを既に述べたように実施した(ドゥネ(D
unne)ら、Oligonucleotides、第13巻、375−80頁、200
3年及びハイデンライヒら、Blood、第101巻、3157−3163頁、2003
年)。エレクトロポレーションは、10msで350Vの矩形パルスを使用したFisc
herのエレクトロポレータ(フィッシャー(Fischer)、ドイツ国、バイデルベ
ルグ所在)にて実施した。室温にて15分間インキュベートした後に、細胞を培地で20
倍に希釈して、37℃の5%CO下にてインキュベートした。
【0150】
実施例5:RT−PCR
内因性MLL−AF4、MLL、AF4、HOXA7、HOXA9、OAS1及びST
AT1のレベルをリアルタイムのPCRにて試験した。RNAの全抽出をRNイージー(
Rneasy)キット(キアーゲン(Quiagen)、ドイツ国、ヒルデン所在)を使
用して、製造者により提案されたように実施した。次に、全RNAの1mgを、ポリメー
ラーゼ連鎖反応と組み合わせられたリアルタイムの逆転写(RT−PCR)に使用した。
逆転写反応は、25mMのランダム6量体、5xRT緩衝液、1mMのdNTPMix、
20UのRNase阻害剤(MBI)及び100UのMMLV−RT、RNaseH(プ
ロメガ(Promega)、ドイツ国、ハイデルベルグ所在)を使用して実施した。混合
物を室温にて10分間、42℃にて45分間、そして99℃にて3分間インキュベートし
た。それぞれの遺伝子のmRNAレベルはGAPDHmRNAレベルに正規化した。
【0151】
リアルタイムのPCR反応は、MLL−AF4、MLL、AF4、HOXA7、HOX
A9、OAS1及びSTAT1に対するプライマーを使用して実施した。GAPDHとハ
イブリダイズするプライマーを対照として使用した。TaqManリアルタイムPCR反
応に対するマスターミックス(MLL−AF4)は、62.5nMのフォワードプライマ
ー及びリバースプライマー、62.5%(v/v)のSybr−GreenMixを含ん
でいた。GAPDH反応に対するマスターミックスは、375nMのフォワードプライマ
ー及びリバースプライマー及び62.5%(v/v)のSybr−GreenMixを含
んでいた。そうでない場合には、RT−PCRは、マルチネス(Martinez)らの
BMC Cancer、第4巻、44頁(2004年)の記載に従って実施した。使用し
たプライマーの配列を表3に列挙した。
【0152】
【表3】


プライマーはPRIMER−EXPRESSソフトウェア(アプライドバイオシステム
ズ(Applied Biosystems)、アメリカ合衆国カリフォルニア州フォス
ターシティ所在)を使用して設計した。
【0153】
実施例6:コロニー形成試験
siRNAを用いた細胞エレクトロポレーションの24時間後に10000個の細胞を
、24ウェルプレート中にて、20%FCS及び0.56%メチルセルロースを含む0.
5mlのRPMI1640培地中に接種した。RS4;11の場合、細胞数はウェル当り
20000個に増加した。接種してから14日後に、20個以上の細胞を含むコロニーを
計数した。これらの条件で、モック−トランスフェクト細胞(siRNAを使用しないで
エレクトロポレーションした場合)は、試験した細胞株に応じてウェル当り50乃至10
0のコロニーを形成した。ヒトコロニー形成細胞試験はMethoCult(登録商標)
メチルセルロースベースの培地(セルシステムズ(CellSystems)、ドイツ国
、セントカタリーネン所在)を使用して実施した。エレクトロポレーションの後、500
0個のヒト初代CD34+細胞を、1mlのメチルセルロース培地を含む35mmの培養
皿中に二つずつ接種した。CFU−GEMMs及びCFU−GMsの数は接種してから1
0日後に計数した。
【0154】
実施例7:MTT試験
細胞は48時間以内に2回エレクトロポレーションして、96ウェルのプレートに、ウ
ェル当り100μlにて0.5×10個の細胞密度にて接種した。各24時間後に10
μlのMTT溶液(ロッシュ(Roche)、ドイツ国、マンハイム所在)を加えた。3
7℃にて4時間インキュベーション後、細胞を製造業者の指示に従って可溶化溶液で溶解
した。対照波長として、560nm及び650nmにて、ELISAリーダ(ダイネック
ス(Dynex)、ドイツ国、フランクフルト/M所在)を用いてOD測定を実施した。
細胞数は細胞希釈系列により計数した。ヒトコロニー形成細胞試験は、MethoCul
t(登録商標)メチルセルロースベースの培地(セルシステムズ、ドイツ国、セントカタ
リーネン所在)を使用して実施した。ヒト初代細胞をエレクトロポレーションし、続いて
、5000個の細胞を、1mlのメチルセルロース培地を含む35mmの培養皿中に接種
した。各サンプルは2つずつ接種し、CFU−GEMMs及びCFU−GMsの数は接種
してから10日後に計数した。
【0155】
実施例8:細胞周期分析及びアポトーシス試験
細胞周期分析は、既に記載したように(32)実施した。次に、得られたデータを分析
し、ModFitプログラム(ベリティ(Verity)、アメリカ合衆国、トップシャ
ム所在)を使用して評価した。アポトーシスは、供給者の指示に従って、ヒトアネキシン
(Annexin)V/FITCキット(ベンダーメドシステムズ(Bender Me
dSystems)、オーストリア国ウィーン所在)を使用して試験した。要約すると、
2−5×10個の細胞をエレクトロポレーション後、指示された時点にてPBSで洗浄
し、室温にて10分間、アネキシンV−FITC溶液の存在下にてインキュベーションし
た。細胞をPBSで再び洗浄し、ヨウ化プロピジウムで染色した。次にサンプルを、FA
CSCalibur(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、
ドイツ国、バイデルベルク所在)を使用したフローサイトメトリーにて直ちに分析した。
【0156】
実施例9:ウェスタンブロッティング
細胞の全タンパク質量を得るために、RNイージー(RNeasy)カラムのフロース
ルー部分に存在するタンパク質を2容量のアセトンで沈殿させ、尿素緩衝液(9Mの尿素
、4(w/w)%の3−[(3−クロラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−プロパ
ンスルホネート(CHAPS)、1(w/w)%ジチオスレイトール)中に溶解した。全
溶解物(MLL−AF4検出に対しては50μg、その他の全てのイムノブロットに対し
ては10μg)を(32)に記載したように分析した。イムノブロットの検出に以下の抗
体を使用した:切断したカスパーゼ−3(Asp175)(1:1000、Cell S
ignaling Tecnology、#9661);チューブリンAb−4(1mg
/l、NeoMarkers MS−719−P0、アメリカ合衆国フレモント所在)B
cl−XL(1:500、BDPharMingen、#556499);MLLT2(
1:600、Orbigen、#10852);GAPDH(1:20,000、HyT
est、#5G4)。
【0157】
実施例10:SCIDマウスの異種移植術
4−5週齢の雌のCB−17/lcrCrj−SCID/SCIDマウスをチャールズ
リバージャーマニー(Charles River Germany)から入手した。S
EM細胞(20×10)を1日目にエレクトロポレーションし、3日目に指定されたs
iRNAの500nMを使用しない(モック)か、又は使用した。4日目に細胞をマウス
の腹腔内に注射した。動物は、チュービンゲン(Tuebingen)の地方審議会によ
り承認されたプロトコルに従って維持及び処理した。
【0158】
実施例11:組織学
器官を除去し、室温にて中性に緩衝化された4%のホルマリンにて4−5日固定し、脱
水し、パラフィン中に埋め込み、切断した。組織はヘマトキシリン(Meyerのヘマル
ム溶液、メルク(Merck)、ドイツ国ダルムスタッド所在)及びエオシン(Eosi
n Y、メルク、ドイツ国ダルムスタッド所在)を使用して、光学顕微鏡法のために染色
した。光学顕微鏡法は、20×Plan−Neofluar又は40×Plan−Neo
fluar 1.3オイルレンズを使用して、Zeiss Axioplan顕微鏡(ツ
ァイス(Zeiss)、ドイツ国、グッティンゲン所在)を使用して実施した。画像は、
顕微鏡に備えられたAxio Vision 4 Software及びAdobe P
hotoshop(アドーベシステムズ(Adobe Systems)、アメリカ合衆
国、カリフォルニア州、サンホセ所在)を使用して捕捉した。
【0159】
実施例12:統計学的分析
コロニー形成試験は、対応のないスチューデントt検定により分析した。生存曲線は、
ログランク試験により分析した。
実施例13:MLL−AF4発現の阻害に対する活性を備えたsiRNAの同定
高効率MLL−AF4siRNAを同定するために、MLL−AF4融合部位のsiR
NAスキャンを実施した。そのために、本願の発明者らは、各々が一つのヌクレオチドず
つ移動している標的部位を備えた14個の異なるsiRNAを合成した。異なるsiRN
Aの効果は、5歳のALL再発患者から得られたt(4;11)−陽性白血病細胞株SE
Mにて試験した(グレイル(Grail)、ジェイ.ら、Br J Jaematol、
第86巻、275−283頁、1994年)。試験した14の全てのsiRNAのうち、
二つのsiRNA、即ち、siMA3及びsiMA6は、MLL−AF4mRNAレベル
が60%超減少した(図1A)。MLL−AF4転写レベルの低減は用量依存性であり、
750nMのsiRNAで70%の最大値に達した(データは図示せず)。経時変化の実
験では、siRNAトランスフェクション後24乃至48時間の間にMLL−AF4 m
RNAの量がその最小値に達し、4日にて通常にレベルに回復することが示された(図1
B)。更に、siMA6は野生型のAF4にもMLL mRNAレベルにも影響を与えな
かった(図1C)一方で、siMA3はAF4レベルを実質的に低減した(データは図示
せず)。ミスマッチ対照siRNAであるsiMMはMLL−AF4にも対応する野生型
の対立遺伝子転写産物にも影響を与えなかった。MLL−AF4 mRNAのレベルの低
減は、MLL−AF4タンパク質中の付随物の67%の減少により反映されている(図1
D)。
【0160】
MLL−AF4融合部位は、異なるt(4;11)陽性細胞株の間にて変化する。SE
M細胞はMLLエクソン9AF4エクソン4(e9−e4)融合を含む転写物を発現し、
RS4;11はエクソン10−エクソン4(e10−e4)変種を発現する。67%の相
同性にも関わらず、siMA6はRS4;11細胞中におけるe10−e4イソ型のレベ
ルを低減しなかった(非特許文献5)のに対し、完全に相同性であるsiRNA、siM
ARSは、AF4又はMLLの発現に影響を与えることなく、RS4;11におけるML
L−AF4 e10−e4を60%低減した。
【0161】
siMA6もsiMMもSTAT1又は2’−5’−オリゴアデニレートシンターゼ1
の発現を誘導せず(図1F)、それは、これらのsiRNAがインターフェロンの応答を
誘発しないことを示している(スレッツ、シー.エー.(Sledz,C.A.)ら、N
at Cell Biol、第5巻、834−839頁、2003年)。polyICで
のトランスフェクションはOAS1の転写レベルを50倍以上も増大し、STAT1 m
RNAのレベルを10倍以上も増大し(図1F)、これらの白血球細胞においてインター
フェロン応答経路を誘導することを示す。それらの高い特異性により、MLL−AF4
siRNAであるsiMA6及びミスマッチ対照siRNAであるsiMMは、白血病性
表現型のためのMLL−AF4発現の重要性を証明するために選択されている。
【0162】
実施例14:MLL−AF4は白血病性クローン形成能力に影響を与える
白血病性クローン形成能力(clonogenicity)に対するMLL−AF4の
適合性を研究するために、本願の発明者らはt(4;11)−陽性SEM細胞をsiRN
Aでトランスフェクトし、半固体の培地にてインキュベートした。SiMA6−媒介型の
MLL−AF4の枯渇は、コロニーの数を5倍低減した(図2A)。この影響は特異的で
ある。その理由はt(8;21)−陽性白血球細胞株Kasumi−1のコロニー形成は
siMA6により影響されなかったからである。逆に、AML1/MTG8特異的siR
NAであるsiAGF1でのトランスフェクションは、SEMコロニー形成を干渉するこ
となくKasumi−1のコロニー形成を損ねた(マルチネス エヌ.(Martine
z,N.)ら、BMC Cancer、第4巻、44頁、2004年)。ミスマッチ対照
(siMM及びsiAGF6)はいずれも白血病性クローン形成能力に影響を与えなかっ
た。さらに、t(4;11)−陰性白血病性細胞株HL60、K562、SKNO−1及
びU937も、siMA6により影響を受けないMLL−AF4変種を発現するt(4;
11)−陽性白血病性細胞株RS4;11及びMV4;11も、siRNAトランスフェ
クションによりコロニー形成が損なうことのなかったことが示された(データ図示しない
)。特に、MLL−AF4e10−e4変種のsiMARS媒介型抑制はRS4;11の
コロニー形成を2倍も低減し、別のt(4;11)細胞株に対するMLL−AF4のコロ
ニー形成効率の依存性を示す(図2B)。初代ヒト造血性CD34+細胞のMLL−AF
4siRNAのエレクトロポレーションは、GEMMコロニー数にもGMコロニー数にも
影響を与えなかった(図2C)。このように影響を与えないことは、非効率的なsiRN
Aのトランスフェクションに寄与していない。その理由は、本明細書で使用される細胞株
もヒト造血性CD34+細胞も機能的なsiRNAで効率的にトランスフェクトされたか
らである(シェア エム.(Sherr,M.)ら、Blood、第101巻、1566
−1569頁、2003年、ハイデンライヒ オー.ら、Blood、第101巻、31
57−3163頁、2003年、ドゥネ ジェイ(Dunne,J.)ら、Oligon
ucleotides、第13巻、375−380頁、2003年)。
【0163】
実施例15:MLL−AF4の抑制が、白血病性の増殖及び細胞周期の進行を阻害する
次に、懸濁した培地での白血病性の増殖の制御におけるMLL−AF4の役割を調べた
。siMA6の単回のエレクトロポレーションはt(4;11)−陽性SEM細胞の倍加
時間に影響を与えなかった(データ図示しない)が、2日おきにsiRNAのエレクトロ
ポレーションを繰り返すと、siMA6によるSEM細胞の増殖及びsiMARSによる
RS4;11細胞の増殖の阻害が維持された(図2D)。従って、増殖は、対応するML
L−AF4融合部位に相同性を有するsiRNAにより阻害されるのみであり、これらM
LL−AF4siRNAの特異性を示す。モック又はsiRNAでエレクトロポレーショ
ンされたSEM又はRS4;11細胞は1.4日の倍加時間で増殖し、エレクトロポレー
ションの繰り返しがその増殖に重大な影響を与えないことを示す。
【0164】
MLL−AF4の枯渇によるt(4;11)−陽性細胞の増殖の低減は、細胞周期の分
配における変化に匹敵していなかった。MLL−AF4siRNAの反復的なエレクトロ
ポレーションを伴う10日間の経時変化の間、S相細胞のフラクションは、SEM及びR
S4;11細胞のいずれにおいても、それぞれ50乃至30%及び20%減少し、G0/
G1相のフラクション細胞における増大を伴っていた(図2E)。特に、siMA6は、
SEM細胞においてのみ細胞周期の分配に影響を与えた一方、siMARSはRS4;1
1細胞においてのみそれらの変化を引き起こした。従って、MLL−AF4の枯渇は、G
1相からS相までt(4;11)−陽性細胞の進行に否定的に干渉する。G1/Sの遷移
を損なうことは、細胞の老化には関係していない。それは、β−ガラクトシダーゼ活性に
関連した老化は、MLL−AF4の枯渇により増大しないからである(データ図示しない
)。
【0165】
実施例16:MLL−AF4の枯渇は、t(4;11)−陽性SEM細胞のアポトーシ
スを誘導する
SEM及びRS4;11細胞の細胞周期の分析は、10日間にわたるMLL−AF4の
連続的な枯渇が対照と比較してサブ(sub)G1細胞の数を10倍も増大し、アポトー
シス細胞の数を増大したことを示した(図3A)。アネキシンV及びヨウ化プロピジウム
での染色は、MLL−AF4細胞の4日間の抑制がアポトーシス細胞における3倍の増大
をSEM細胞にて示し、それにより、同時点にて見られるsubG1細胞の増大と一致し
た(図3B)。特に、ほとんど不活性なsiRNAであるsiMA13(図1Aを参照)
は、アポトーシス細胞の数に僅かに影響を与えるのみであり、MLL−AF4の枯渇の程
度とアポトーシスの速度との間には直接相関関係のあることを示唆している。この結果は
、カスパーゼ−3のタンパク質分解活性及びsiMA6でのトランスフェクションによる
抗アポトーシスタンパク質Bcl−XLの量の低減により確証された(図3C)。
【0166】
実施例17:MLL−AF4の抑制はHox遺伝子の発現を増大する
MLL−AF4を含むMLL癌タンパク質の発現はHoxa7及びHoxa9を含む数
種類のHox遺伝子並びに別のホメオティック遺伝子であるMeis1の発現の増大と関
連している。従って、本願の発明者らは、MLL−AF4レベルに依存するこれら3種類
の遺伝子の発現を分析した。MLL−AF4siRNAであるsiMA6でSEM細胞を
2回連続してトランスフェクションすると、Hoxa7mRNAのレベルが二倍減少した
(図4)。Hoxa9の僅かの低減も観察された。RS4;11細胞において、Hoxa
9はsiMRASのトランスフェクションにより低減したが、Hoxa9は低減しなかっ
た。RS4;11細胞中にてHoxa9が低減しないことは、SEM細胞中と比較して、
MLL−AF4の抑制の効果が低いことによるものであろう(図1D,E)。
【0167】
実施例18:MLL−AF4はt(4;11)−陽性細胞の白血病性細胞の生着に対し
て重要である
SCIDマウスにおける白血病性細胞の成長は、高リスクのB−ALLと関係している
ことが示されてきた(ウックン,エフ.エム.(Uckun,F.M.)ら、Blood
、第85巻、873−878頁、1995年)。従って、本願の発明者らはsiRNAの
媒介するMLL−AF4の枯渇が細胞の生着(engraftment)及びインビボに
おける白血病の進行に影響を与えるかどうかを調べるためにt(4;11)−SCIDマ
ウスのモデルを使用した(ポークック,シー.エフ.(Pocock,C.F.)ら、B
r J Haematol、第90巻、855−867頁、1995年)。モック、或い
は対照のsiRNAで処理されたSEM細胞のSCIDマウスへの腹腔内移植は移植後7
0日以内において白血病に関連して100%死亡し、生存日数の中央値はそれぞれ52及
び52日であった(図5A)。MLL−AF4が枯渇したSEM細胞の異種移植術は、生
存日数の中央値が82日であり、125日での全体に対する生存率が38%(pは0.0
1未満)で、あまり深刻でない表現型を引き起こした。疾病にて死亡した動物は、卵巣腫
瘍と、脾腫と、骨髄、脾臓及び肝臓における重篤な白血病性芽球浸透と、を示す一方、s
iMA6群の生存動物の器官は移植後228日において白血病性浸透の兆候を全く示さな
かった(図5B,C)。結論として、siRNA媒介型MLL−AF4の抑制は、異種移
植型SCIDマウスにおけるt(4;11)陽性細胞の白血病性細胞の生着を低減した。
【0168】
実施例19:結論
MLL−AF発現の阻害は、培養懸濁液中における白血病性の増殖並びにt(4;11
)細胞株のコロニー形成を減少した。このコロニー形成能力及び増殖の低減は、アポトー
シスの増大に付随して起こった。更に、MLL−AF4の枯渇は、Hoxa7、Hoxa
9及びMeis−1の発現の低減に付随して起こり、それが同様にアポトーシスに寄与し
ていると思われる。最後に、siRNA媒介型MLL−AF4の抑制は、異種移植SCI
Dマウスにおける白血病性細胞の生着を重大に損ねるものであった。SCIDマウスにお
ける効果的な細胞の生着はALL患者における再発の可能性が予測されているので(ウッ
クン,エフ.エム.ら、Blood、第85巻、873−878頁、1995年)、これ
らのデータはMLL−AF4機能の干渉が患者の転帰を改善し得ることを示唆している。
【0169】
t(4;11)白血病細胞においてのみ発現することと、白血病の維持におけるその中
心的な役割とにより、MLL−AF4はこの非常に進行性の白血病の治療に対する優れた
標的である。しかしながら、この融合タンパク質に特異的な小さな分子の阻害剤は現在の
ところ利用可能ではない。本願の発明者らは、この融合部位と相同であるsiRNAがM
LL−AF4を効果的に抑制することを示している。更に、本願の発明者らは、この融合
遺伝子の二つの異なる変種が高効率かつ排他的な特異性にて標的化され得ることを示して
いる。この排他的な特異性はまた、これらのsiRNAの観察された抗白血病性特性が直
接的にMLL−AF4の抑制によるものであり、他の遺伝子の意図していない阻害又はイ
ンターフェロンの応答の誘導のような標的以外の効果によるものでないことを証明した。
本願の発明者らの結果は、MLL−AF4siRNAが特異的ではあるが、柔軟性であり
、よってt(4;11)ALLの治療に対する優れた治療のツールを提供することを示唆
している。
【0170】
その他の実施形態
本発明の種々の実施形態を記載してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲を逸脱
することなく種々の変更がなされることは理解されよう。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2011−254840(P2011−254840A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−208167(P2011−208167)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2007−546979(P2007−546979)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】