説明

MMSETを阻害するための組成物および方法

本発明は、癌の治療、管理、および/または研究において用途を見出す薬剤に関する。具体的には、本発明は、MMSETの発現または活性に影響を与える薬剤(例えば、小分子、核酸)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年2月19日に出願された特許出願第61/306,251号に対する優先権を主張するものであり、当該出願は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたCA69568に基づいて、連邦政府の支援のもとに実施された。連邦政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、癌の治療、管理、および/または研究において用途を見出す治療剤に関する。具体的には、本発明は、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、他の固形腫瘍、多発性骨髄腫)におけるMMSETの発現を標的とする小分子および核酸に関する。
【背景技術】
【0004】
65歳を超える男性の9人に1人が罹患する前立腺癌(PCA)は、肺癌の次に多い男性の癌による死亡原因である(Abate−Shen and Shen,Genes Dev 14:2410[2000]、Ruijter et al.,Endocr Rev,20:22[1999])。米国癌協会は、2001年には約184,500人の米国人男性が前立腺癌であると診断され、39,200人が死亡すると推定している。
【0005】
前立腺癌は、典型的には、直腸指診および/または前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングによって診断される。血清PSAレベルの上昇は、PCAの存在を示唆する場合がある。PSAは、前立腺細胞によってのみ分泌されるため、前立腺癌のマーカーとして用いられる。正常な前立腺は、一定量、典型的には1ミリリットル当たり4ナノグラム未満、すなわち「4」以下のPSA読み取り値を生成するのに対し、癌細胞は、癌の重症度に応じて上昇する量を生成する。4〜10のレベルは、医師に患者が前立腺癌に罹患していることを疑わせ、50を超える量では、身体の他の箇所に広がっていることを示す可能性がある。
【0006】
PSAまたは指診によって癌が存在する高い可能性が示された場合、経直腸超音波法(TRUS)を用いて前立腺のマッピングを行い、あらゆる疑わしい領域を示す。前立腺の種々の箇所の生検を用いて前立腺癌が存在するかどうかを判定する。治療の選択肢は、癌の段階に依存する。余命10年以下で、グリーソン値が低く、腫瘍が前立腺以外には転移していない男性には、慎重な経過観察で対応することが多い(治療は行わない)。より悪性度の高い癌に対する治療の選択肢として、(神経温存術を用いるかまたは用いずに)前立腺を完全に除去する根治的前立腺摘除(RP)等の外科的治療、および体外から前立腺に線量を導く外部ビームによって、または癌細胞を局所的に死滅させるために前立腺内に移植される低線量の放射線シードを介して適用される、放射線が挙げられる。また、抗アンドロゲンホルモン療法も、単独で、または手術もしくは放射線と組み合わせて用いられる。ホルモン療法は、下垂体がテストロン生成を刺激するホルモンを生成するのを阻止する黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)類似体を用いる。患者は、一生、LH−RH類似体の注射を受けなければならない。
【0007】
手術およびホルモンによる治療は局在性PCAには有効であることが多いが、進行した疾患は、本質的に治癒不能のままである。アンドロゲン除去は、進行したPCAに対する最も一般的な治療法であり、アンドロゲン依存性悪性細胞の大規模なアポトーシスを引き起こし、腫瘍の一時的な退縮をもたらす。しかしながら、ほとんどの場合、腫瘍はすさまじい勢いで再発し、アンドロゲンシグナルとは関係なく増殖する可能性がある。
【0008】
前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングの出現は、PCAの早期発見をもたらし、PCAに関連する死亡率が大幅に減少した。しかしながら、PSAスクリーニングが癌特異的な死亡率に与える影響は、前向き無作為化スクリーニング試験の結果が出るまでは未知のままである(Etzioni et al.,J.Natl.Cancer Inst.,91:1033[1999]、Maattanen et al.,Br.J.Cancer 79:1210[1999]、Schroder et al.,J.Natl.Cancer Inst.,90:1817[1998])。血清PSA検査の主な限界は、特にPSA検出における中程度の範囲(4〜10ng/ml)で、前立腺癌に対する感受性および特異性が不足していることである。血清PSAレベルの上昇は、良性前立腺過形成(BPH)および前立腺炎等の非悪性の病態を有する患者においても検出されることがあり、検出された癌の悪性度に関する情報がほとんど得られない。血清PSA検査の増加と同じ時期に、前立腺針生検が行われる数が劇的に増加した(Jacobsen et al.,JAMA 274:1445[1995])。これにより、不確かな前立腺針生検が急増する結果となった(Epstein and Potter J.Urol.,166:402[2001])。そのため、新しい治療標的および薬剤の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、癌の治療、管理、および/または研究において用途を見出す治療剤に関する。具体的には、本発明は、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、他の固形腫瘍、多発性骨髄腫)における多発性骨髄腫SETドメイン保有タンパク質(MMSET)の発現を標的とする小分子および核酸に関する。
【0010】
MMSET(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群候補1(WHSC1)または核内SETドメイン保有タンパク質2(NSD2)としても知られる)は、リシン36のヒストンH3をジメチル化することで知られるヒストンメチルトランスフェラーゼ(H3−K36−ジメチルまたはH3−K36−Meと称される修飾)である。MMSETは、染色体完全性を促進し、複数の癌において異常に発現される。多発性骨髄腫において、MMSETがt(4;14)(p16q32)染色体転座に関与する患者は、そのような転座のない多発性骨髄腫患者と比較して15%の再発率および予後の悪化を経験する(Intini et al.(2004)Brit.J.Haematol.126:437、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。転座陽性多発性骨髄腫細胞におけるMMSETノックダウンは、そのような細胞の増殖および腫瘍形成能に強い影響を与える(Brito et al.(2009)Haematologica 94:78、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。本発明のいくつかの実施形態を開発する過程で実施した実験により、転移性前立腺癌および乳癌におけるMMSETの過剰発現が示された(図8)。別のヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2の発現と相関する発現(図8)。さらに、MMSETノックダウンは、高悪性度の前立腺癌細胞株の細胞増殖および浸潤の低下をもたらし(図5)、癌細胞の増殖におけるMMSETの重要な役割を裏付けた。したがって、この酵素を阻害することは、治療的な影響を有する。いくつかの実施形態において、MMSETの阻害剤(例えば、低分子阻害剤、siRNA阻害剤、抗体阻害剤)は、これらに限定されないが、前立腺癌、乳癌、および多発性骨髄腫を含むMMSETに関連する状態および疾患の治療において用途を見出す。
【0011】
本発明の方法および組成物は、対象における種々の癌の種類において用途を見出す。いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、前立腺癌の治療または予防において用途を見出す。いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、乳癌の治療または予防において用途を見出す。いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、多発性骨髄腫の治療はまたは予防において用途を見出す。対象は、本明細書に記載される化合物の投与から恩恵を受けることができるあらゆる動物である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物であり、例えば、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、例えばラットまたはマウス等のげっ歯類である。典型的には、対象はヒトである。
【0012】
本発明の方法は、MMSET活性(例えば、MMSETを阻害する)薬剤に関する投薬、製剤、投与経路、または時間的な投与計画に限定されない。いくつかの実施形態において、MMSET活性薬剤の投与量は、1日あたり約2mg〜約2,000mgであり、疾患の標的、患者、および投与経路に依存して必然的に変動が生じる。いくつかの実施形態において、投与量は、1日体重1kg当たり約0.05mg/kg〜約20mg/kgの範囲、より好ましくは約0.05mg/kg〜約2mg/kgの範囲、最も好ましくは約0.05mg/kg〜約0.2mgの範囲で経口投与される。投与経路は、これらに限定されないが、経口、局所、および非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、くも膜下腔内、動脈内、経鼻、または肺内投与)を含む。本発明は、MMSET活性薬剤(例えば、MMSET阻害剤)の投与の時間的態様によって制限されない。MMSET活性薬剤は、単独で、または1つ以上の他の薬剤(複数可)、例えば、1つ以上の他の化学療法剤(複数可)と組み合わせて投与されてもよい。別の薬剤(複数可)と組み合わせて投与される場合、投与の順序に関係なく、そのような投与は同時にまたは逐次的に起こってもよい。MMSET活性薬剤療法は、1日当たり1〜50回、またはそれよりも少ない回数で(例えば、隔日、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、週1回、月1回、3ヵ月毎)投与されてもよい。MMSET活性薬剤療法は、1日、1週間、1ヶ月間、1年間、10年間、または10年以上継続されてもよい。
【0013】
本発明の文脈内で「治療する」とは、疾患もしくは障害と関連する症状の全体的または部分的な軽減、あるいはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を遅延、阻害、または停止すること、あるいはその疾患もしくは障害を発症するリスクのある対象における疾患または障害の防止または予防を意味する。したがって、例えば、転移性前立腺癌の治療は、癌の転移を阻害または防止すること、転移の速度および/または数の減少、転移した前立腺癌の腫瘍量の減少、転移した前立腺癌の全体的または部分的な寛解、あるいは任意の他の治療効果を含み得る。本明細書において使用される場合、「治療的に有効な量」の本発明の化合物とは、疾患もしくは障害と関連する症状を全体的にまたは部分的に軽減する、あるいはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を遅延、阻害、または停止させる、あるいはその疾患もしくは障害を発症するリスクのある対象において疾患または障害を防止または予防する化合物の量を指す。
【0014】
本発明の実施形態の方法および組成物は、それらがMMSETに影響を与える機構によって限定されない。いくつかの実施形態において、MMSETのmRNA発現(例えば、癌細胞における発現)(例えば、前立腺癌細胞またはそれらの前駆体における発現、乳癌細胞またはそれらの前駆体における発現、形質細胞または形質細胞前駆体における発現)が影響を受ける。いくつかの実施形態において、MMSETのmRNA転写率が変化する(例えば、低下する)。いくつかの実施形態において、MMSETのmRNA転写安定性が変化する(例えば、MMSETのmRNA転写物が不安定になるか、または分解しやすくなる)。いくつかの実施形態において、MMSETのタンパク質レベルが影響を受ける(例えば、低下する)(例えば、前立腺癌細胞またはそれらの前駆体において低下する、乳癌細胞またはそれらの前駆体において低下する、形質細胞またはそれらの前駆体において低下する)。いくつかの実施形態において、MMSETのタンパク質分子の安定性が変化する(例えば、低下する)。いくつかの実施形態において、MMSETのタンパク質の1つ以上の活性が変化する。いくつかの実施形態において、MSETのメチル化活性が阻害される。いくつかの実施形態において、MMSETと基質との相互作用が影響を受ける(例えば、阻害される、促進する、不可逆性になる、弱まる、非特異性になる、特異性がより高くなる)。いくつかの実施形態において、MMSET制御因子の活性(例えば、正の制御因子、負の制御因子)が影響を受ける。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、細胞の増殖を阻害する方法であって、MMSETを発現する細胞を細胞中のMMSETの少なくとも1つの活性を阻害する薬剤に接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、MMSET薬剤は、小分子、siRNA、または抗体等の種類であるが、他も企図される。いくつかの実施形態において、小分子は、3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオールである。いくつかの実施形態において、細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態において、癌細胞は、前立腺癌細胞、前立腺癌細胞前駆体、乳癌細胞、乳癌細胞前駆体、形質細胞、または形質細胞前駆体等の種類のものである。いくつかの実施形態において、癌細胞は、前立腺癌細胞である。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、ヒストンH3のリシン36のメチル化を阻害することを含む、細胞の増殖を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ヒストンH3のリシン36のメチル化は、ジメチル化からなる。いくつかの実施形態において、ヒストンH3のリシン36のメチル化は、トリメチル化からなる。いくつかの実施形態において、阻害は、MMSETの少なくとも1つの活性を変化させることによって起こる。例えば、いくつかの実施形態において、MMSETの活性は、MMSETの酵素活性、MMSETの転写レベル、またはMMSETのタンパク質レベルである。いくつかの実施形態において、MMSET酵素活性は、メチル化を含む。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、細胞中のMMSETの少なくとも1つの活性を阻害する薬剤を含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、薬剤は、核酸である。いくつかの実施形態において、薬剤は、小分子である。いくつかの実施形態において、薬剤は、小分子である。いくつかの実施形態において、薬剤は、3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオールである。
【0018】
本明細書に含まれる教示を踏まえると、関連技術分野の当業者にはさらなる実施形態が明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】前立腺癌におけるWhsc1(MMSET)の過剰発現を示す。発現レベルは、公的に利用可能なデータ(Oncomine)(Varambally et al.(2008)Science 322:1695−1699、Yu et al.(2007)Neoplasia 9:292−303、Lapointe et al.(2007)Cancer Res.67:8504−8510、Lapointe et al.(2004)PNAS 101:811−816、各々は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を用いて調査した。
【図2】前立腺試料全体にわたるMMSET発現を示す。
【図3】前立腺細胞株のパネルにおけるMMSET発現を示す。
【図4】MMSETノックダウンが、H3K36のジメチル化を特異的に減少させることを示す。
【図5】MMSETノックダウンが、DU145細胞の増殖を減少させることを示す。
【図6】MMSETノックダウンがPC3細胞に与える影響を示す。
【図7】MCTP39がDU145細胞の増殖および浸潤に与える影響を示す。
【図8】切除した前立腺の転移性組織におけるWHSC1(MMSET)およびEzh2の過剰発現を示す。TaqManリアルタイムPCRを行って、MMSET1およびEzh2 mRNAの発現を判定した。
【図9】MCTP39(3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオール)で処理したDU145細胞に示された位置におけるヒストンH3のメチル化修飾のレベルを示す。
【図10】MCTP39(3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオール)の化学構造を示す。
【図11】EZH2の標的としてのH3K36me2マーカーの同定を示す。
【図12】EZH2が、MMSETを制御することによってH3K36me2に間接的に影響を与えることを示す。
【図13】EZH2が、正常細胞においてMMSETの発現を誘導することを示す。
【図14】EZH2が、miRNAのMMSET標的化を抑制したことを示す。
【図15】MMSETノックダウンが、前立腺癌の増殖、浸潤、および遊走に影響を与えることを示す。
【図16】MMSETの減少が、CAMモデルにおける基底膜の浸潤および転移を減衰させることを示す。
【図17】MMSETの過剰発現が、H3K36me2マーク、ならびにより高い細胞増殖および浸潤を誘導することを示す。
【図18】MMESTノックダウンが、EZH2媒介性細胞浸潤を減衰させることを示す。
【図19】複数の癌におけるMMSETの高い発現を示す。
【図20】前立腺癌試料におけるEZH2とMMSETの発現との相関を示す。
【図21】前立腺癌におけるEZH2およびMMSETの発現のqPCRバリデーションを示す。
【図22】複数の癌細胞株および前立腺組織におけるEZH2およびMMSETの発現を示す。
【図23】MCTP39がMMSETの活性に与える影響を示す。
【図24】MCTP39が、H3Kのメチル化、ならびに癌細胞の増殖および浸潤に与える影響を示す。
【図25】MCTP39が転座陽性MM細胞株に対して特異性を示すことを示す。
【図26】MCTP39が、異種移植腫瘍の腫瘍量を減少させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本発明を理解しやすくするために、いくつかの用語および表現を以下の通り定義する。
【0021】
本明細書において使用される場合、「MMSETの少なくとも1つの生物学的活性を阻害する」という用語は、MMSETタンパク質に直接接触するか、MMSETのmRNAもしくはゲノムDNAに接触するか、MMSETのポリペプチドの立体構造的変化を引き起こすか、MMSETのタンパク質レベルを低下させるか、またはシグナルパートナーとのMMSETの相互作用に干渉して、MMSET標的遺伝子の発現に影響を与えることにより、MMSETのあらゆる活性(例えば、これに限定されないが、本明細書に記載される活性を含む)を低下させる任意の薬剤を指す。また、阻害剤は、上流または下流のシグナル分子を妨害することによってMMSETの生物学的活性を間接的に制御する分子も含む。
【0022】
本明細書において使用される場合、「対象」とは、これらに限定されないが、特定の治療のレシピエントとなる、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類等を含むあらゆる動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」および「患者」という用語は、本明細書においてヒト対象を指して交換可能に用いられる。
【0023】
本明細書において使用される場合、「癌マーカー遺伝子」という用語は、その発現レベルが、単独でまたは他の遺伝子と合わさって、癌または癌の予後と相関する遺伝子を指す。相関性は、遺伝子発現の低下または増加のいずれかに関する可能性がある。例えば、遺伝子の発現は、癌の予兆であり得るか、または遺伝子の発現不足は、癌患者の予後不良と相関する可能性がある。いくつかの実施形態において、癌マーカー遺伝子は、抗癌剤の標的としての役割を果たす。いくつかの実施形態において、癌マーカー遺伝子は、癌の悪性度(例えば、侵襲性)の指標としての役割を果たす。
【0024】
本明細書において使用される場合、「癌と診断された対象」という用語は、検査を受け、癌性細胞を有することが発見された対象を指す。癌は、これらに限定されないが、生検、X線、血液検査、および本発明の診断法を含むいずれの好適な方法を用いて診断されてもよい。
【0025】
本明細書において使用される場合、「ヒト以外の動物」という用語は、これらに限定されないが、げっ歯類、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類等の、脊椎動物を含む全てのヒト以外の動物を指す。
【0026】
本明細書において使用される場合、「遺伝子導入システム」という用語は、核酸配列を含む組成物を細胞または組織に送達する任意の手段を指す。例えば、遺伝子導入システムは、これらに限定されないが、ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および他の核酸ベースの送達システム)、裸の核酸の微量注入、ポリマーベースの送達システム(例えば、リポソームベースおよび金属粒子ベースのシステム)、バイオリスティック注入等を含む。本明細書において使用される場合、「ウイルス遺伝子導入システム」という用語は、所望の細胞または組織への試料の送達を促進するためのウイルス要素(例えば、無傷のウイルス、変化したウイルス、および核酸またはタンパク質等のウイルス成分)を含む遺伝子導入システムを指す。本明細書において使用される場合、「アデノウイルス遺伝子導入システム」という用語は、アデノウイルス科に属する無傷のウイルスまたは変化したウイルスを含む遺伝子導入システムを指す。
【0027】
本明細書において使用される場合、「核酸分子」という用語は、これに限定されないが、DNAまたはRNAを含む、任意の核酸含有分子を指す。この用語は、これらに限定されないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5´−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンを含む、DNAおよびRNAの既知の塩基類似体のうちのいずれかを含む配列を包含する。
【0028】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の生成に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。全長または断片の所望の活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性等)が保持される限り、ポリペプチドは、全長コード配列、またはコード配列の任意の部分によってコード化することができる。また、この用語は、構造遺伝子のコード領域、ならびに、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するように、いずれかの末端に約1kb以上の距離で5´および3´末端の両方のコード領域に隣接して位置する配列も包含する。コード領域の5´に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、5´非翻訳配列と称される。コード領域の3´または下流に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、3´非翻訳配列と称される。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コード配列によって分断されるコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサー等の制御要素を含み得る。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去されるか、または「スプライシングで切り出され」、したがって、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物には含まれない。mRNAは、翻訳の間に、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するよう機能する。
【0029】
本明細書において使用される場合、「遺伝子発現」という用語は、遺伝子内でコードされた遺伝子情報を、遺伝子の「転写」により(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA)に変換するプロセス、またタンパク質コード遺伝子の場合には、mRNAの「翻訳」によってタンパク質に変換するプロセスを指す。遺伝子発現は、プロセスにおける多くの段階で制御することができる。「上方制御」または「活性化」は、遺伝子発現産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の生成を増加させる制御を指し、「下方制御」または「抑制」とは、生成を低下させる制御を指す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば、転写因子)は、それぞれ「活性化因子」および「抑制因子」と称されることが多い。
【0030】
イントロンを含むことの他に、遺伝子のゲノム形態は、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列も含み得る。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と称される(これらのフランキング配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’または3’に位置する)。5’フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するかまたはそれに影響を与えるプロモーターおよびエンハンサー等の制御配列を含み得る。3’フランキング領域は、転写の終了、転写後切断、およびポリアデニル化を指示する配列を含み得る。
【0031】
「野生型」という用語は、天然の発生源から単離された遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察される遺伝子であり、したがって、任意に設計される「正常な」または「野生型」の遺伝子の形態である。反対に、「修飾された」または「変異体」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列または機能特性における修飾(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に発生する変異体を単離することができることに留意されたい;これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、変化した特徴(核酸配列の変化)を有するという事実によって同定される。
【0032】
本明細書において使用される場合、「〜をコードする核酸分子」、「〜をコードするDNA配列」、および「〜をコードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、DNA配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0033】
本明細書において使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、1本鎖ポリヌクレオチド鎖の長さの短いものを指す。オリゴヌクレオチドは、典型的には200残基長未満(例えば、15〜100)であるが、本明細書において使用される場合、この用語は、より長いポリヌクレオチド鎖を包含することも意図する。オリゴヌクレオチドは、その長さで称されることが多い。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24塩基長」と称される。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズすることによって、または他のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることによって、2次および3次構造を形成することができる。そのような構造は、これらに限定されないが、2本鎖、ヘアピン、十字型、屈曲型、および3本鎖を含むことができる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対合規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関連して使用される。例えば、配列「5’−A−G−T−3’」は、配列「3’−T−C−A−5’」に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、核酸の塩基の一部のみが塩基対合規則に従ってマッチする。または、核酸間には「完全」または「全」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に著しい影響を有する。このことは、増幅反応、および核酸間の結合に依存する検出方法において、特に重要である。
【0035】
「相同性」という用語は、相補性の程度を指す。部分相同性および完全相同性(すなわち同一性)が存在し得る。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な核酸分子が「実質的に相同」である標的核酸にハイブリダイズするのを少なくとも一部阻害する核酸分子である。完全に相補的な配列の標的配列へのハイブリダイゼーションを阻害することは、低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット法、溶液ハイブリダイゼーション等)を用いて調べることができる。実質的に相同である配列またはプローブは、低ストリンジェンシー条件下における完全に相同な核酸分子の標的への結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)と競合しかつそれを阻害する。これは、低ストリンジェンシー条件が非特異的結合を可能にするような条件であることを意味するものではない:低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が特定の(すなわち選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合が存在しないことは、実質的に非相補的(例えば、同一性が約30%未満)である第2の標的の使用によって検査することができ、非特異的結合が存在しない場合、プローブは、第2の非相補的な標的にハイブリダイズしない。
【0036】
cDNAまたはゲノムクローン等の2本鎖核酸配列に関連して使用される場合、「実質的に相同である」という用語は、上述のような低ストリンジェンシー条件下で2本鎖核酸配列の一方または両方の鎖にハイブリダイズできる任意のプローブを指す。
【0037】
遺伝子は、一次RNA転写物の差次的スプライシングによって生成される複数のRNA種を生成し得る。同じ遺伝子のスプライス変異体であるcDNAは、配列同一性または完全相同性の領域(同じエクソンまたは両cDNA上の同一エクソンの一部の存在を表す)および完全非同一性の領域(例えば、cDNA1上にエクソン「A」の存在を示し、代わりにcDNA2はエクソン「B」を含む)を有する。2つのcDNAが配列同一性の領域を含むため、これらはどちらも、遺伝子全体または両方のcDNAに見られる配列を含む遺伝子の一部に由来するプローブにハイブリダイズする:2つのスプライス変異体は、このようなプローブに対しておよび互いに実質的に相同である。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的な核酸の対合に関連して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関連条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比等の要因によって影響を受ける。その構造内に相補的な核酸の対を含む単一分子は、「自己ハイブリダイズ」していると言われる。
【0039】
本明細書において使用される場合、「Tm」という用語は、「融解温度」に関連して用いられる。融解温度は、2本鎖核酸分子の集団が半分融解して一本鎖になる温度である。核酸のTmを算出するための方程式は、当該技術分野において周知である。標準的な参考文献によって示されるように、核酸が1M NaClの水溶液中にある場合、Tm値の単純推定値は、方程式Tm=81.5+0.41(%G+C)によって算出することができる(例えば、Anderson and Young,Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization[1985]を参照のこと)。他の参考文献は、Tmの算出のために構造的および配列的特性を考慮に入れたより複雑な計算を含む。
【0040】
本明細書において使用される場合、「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる温度、イオン強度、および有機溶媒等の他の化合物の存在といった条件に関連して使用される。「低ストリンジェンシー条件」下において、対象とする核酸配列は、その完全な補体、単一の塩基ミスマッチを有する配列、密接に関連する配列(例えば、90%以上の相同性を有する配列)、および部分的な相同性のみを有する配列(例えば、50〜90%の相同性を有する配列)とハイブリダイズする。「中程度のストリンジェンシー条件」下において、対象とする核酸配列は、その完全な補体、単一の塩基ミスマッチを有する配列、および密接に関連する配列(例えば、90%以上の相同性)とのみハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」下において、対象とする核酸配列は、その完全な補体、および(温度等の条件に依存して)単一の塩基ミスマッチを有する配列とのみハイブリダイズする。換言すると、高ストリンジェンシーの条件下では、単一の塩基ミスマッチを有する配列とのハイブリダイゼーションを排除するために温度を上昇させることができる。
【0041】
ヌクレオチド配列に関連して本明細書において使用される「一部」という用語(「所与のヌクレオチド配列の一部」のように)は、その配列の断片を指す。断片は、4ヌクレオチド〜全ヌクレオチド配列から1ヌクレオチドを差し引いた範囲のサイズであり得る(10ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200等)。
【0042】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、1つの細胞から別の細胞にDNAセグメント(複数可)を移す核酸分子に関連して用いられる。「ビヒクル」という用語が、「ベクター」と交換可能に用いられることがある。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、または植物性もしくは動物性ウイルスに由来することが多い。
【0043】
本明細書において使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列および特定の宿主生物において操作可能に連結されたコード配列の発現に必要な、適切な核酸配列を含む組換えDNA分子を指す。通常、原核生物における発現に必要な核酸配列は、多くの場合は他の配列に沿って、プロモーター、オペレーター(任意選択的)、およびリボソーム結合部位を含む。真核生物細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終止およびポリアデニル化シグナルを利用することが分かっている。
【0044】
「過剰発現」および「過剰発現する」という用語ならび文法上の均等物は、対照または非トランスジェニック動物における所与の組織に観察されるよりも約3倍高い(またはそれを上回る)発現のレベルを意味するためにmRNAのレベルに関連して用いられる。mRNAのレベルは、これに限定されないがノーザンブロット分析を含む当業者に既知の多くの技術のうちのいずれかを用いて測定される。分析される各組織からローディングされたRNAの量の違いと照合するために、ノーザンブロットに適切な対照が含まれる(例えば、各試料中に存在する、全ての組織中に本質的に同じ量で存在する豊富なRNA転写物である28SのrRNAの量を、ノーザンブロット上で観察されるmRNA特異的シグナルを正規化または標準化するための手段として用いることができる)。正しくスプライスされた導入遺伝子のRNAに大きさが対応するバンドに存在するmRNAの量を定量化する:導入遺伝子のプローブとハイブリダイズする他の微量なRNA種は、導入遺伝子のmRNAの発現の定量化においては考慮されない。
【0045】
本明細書で使用される「トランスフェクション」という用語は、真核生物細胞への外来性DNAの導入を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム−DNA共沈降、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、ポリブレン媒介性トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および微粒子銃を含む、当該技術分野で既知の様々な手段によって達成することができる。
【0046】
「安定したトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムへの外来性DNAの導入および組込みを指す。「安定したトランスフェクタント」という用語は、外来性DNAがゲノムDNAに安定に組み込まれた細胞を指す。
【0047】
「一過性のトランスフェクション」または「一過性にトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに外来性DNAが組み込むことができない場合の、外来性DNAの細胞への導入を指す。外来性DNAは、トランスフェクトされた細胞の核に数日間留まる。この間、外来性DNAは、染色体において内因性遺伝子の発現を司る調節制御を受ける。「一過性のトランスフェクタント」という用語は、外来性DNAを取り込んだが、このDNAを組み込むことができなかった細胞を指す。
【0048】
本明細書において使用される場合、「細胞培養物」という用語は、任意のインビトロ細胞の培養物を指す。この用語には、連続細胞系(例えば、不死化表現型を有する)、初代細胞培養物、形質転換細胞系、有限細胞系(例えば、非形質転換細胞)、およびインビトロで維持される任意の他の細胞集団が含まれる。
【0049】
使用される場合、「真核生物」という用語は、「原核生物」と区別可能な生物を指す。この用語は、通常の真核生物の特徴、例えば、その中に染色体が存在する、核膜によって仕切られた真核の存在、膜結合細胞小器官の存在、および真核生物において一般的に観察される他の特徴を示す細胞を有する全ての生物を包含することが意図される。したがって、この用語は、これらに限定されないが、真菌、原生動物、および動物(例えば、ヒト)等の生物を含む。
【0050】
本明細書において使用される場合、「インビトロ」という用語は、人工的な環境、および人工的な環境内で起こるプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は、これらに限定されないが、試験管および細胞培養物から構成され得る。「インビボ」という用語は、天然の環境(例えば、動物または細胞)、および天然の環境内で起こるプロセスまたは反応を指す。
【0051】
「試験化合物」および「候補化合物」という用語は、疾患、疾病、病気もしくは身体機能の障害(例えば、癌)を治療または予防するために用いられる任意の化学物質、医薬品、薬物等を指す。試験化合物は、既知の治療化合物および潜在的な治療化合物の両方を含む。試験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いたスクリーニングによって治療効果があるかどうかを判定することができる。本発明のいくつかの実施形態において、試験化合物は、アンチセンス化合物を含む。
【0052】
本明細書において使用される場合、「試料」という用語は、その最も広義において用いられる。1つの意味において、それは、任意の源から得られた検体または培養物、ならびに生物学的試料および環境試料を含むことを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から得られてもよく、流体、固体、組織、および気体を包含する。生物学的試料は、血漿、血清等の血液製剤を含む。しかしながら、このような例は、本発明に適用可能な試料の種類を限定するものであると解釈されるべきではない。
【0053】
「化学部分」という用語は、少なくとも1つの炭素原子を含有む任意の化学化合物を指す。化学部分の例として、これらに限定されないが、芳香族化学部分、硫黄を含む化学部分、窒素を含む化学部分、親水性化学部分、および疎水性化学部分が挙げられる。
【0054】
本明細書において使用される場合、「脂肪族」という用語は、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、脂環を含む基を意味する。
【0055】
本明細書において使用される場合、「アリール」という用語は、フェニル環等の単一芳香族環、または2つ以上の芳香族環(例えば、ビスフェニル、ナフタレン、アントラセン)、または芳香族環および1つ以上の非芳香族環を意味する。アリール基は、任意選択的に低級脂肪族基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、または脂環)で置換されてもよい。また、脂肪族およびアリール基は、これらに限定されないが、−NH、−NHCOCH、−OH、低級アルコキシ(C−C)、ハロ(−F、−Cl、−Br、または−I)を含む1つ以上の官能基でさらに置換されてもよい。
【0056】
本明細書において使用される場合、「置換脂肪族」という用語は、脂肪族水素原子のうちの少なくとも1つが、例えば、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、もしくは置換環状脂肪族等)で置換されたアルカン、アルケン、アルキン、または脂環族部分を示す。そのような例として、1−クロロエチル等が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
本明細書において使用される場合、「置換アリール」という用語は、環炭素上の水素原子のうちの少なくとも1つが、例えば、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、もしくは置換環状脂肪族)で置換された、芳香族環または少なくとも1つの芳香族環からなる縮合芳香族環系を指す。そのような例として、ヒドロキシフェニル等が挙げられるが、これに限定されない。
【0058】
本明細書において使用される場合、「環状脂肪族」という用語は、縮合環系を含む脂肪族構造を指す。そのような例として、デカリン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0059】
本明細書において使用される場合、「置換環状脂肪族」という用語は、脂肪族水素原子のうちの少なくとも1つが、ハロゲン、ニトロ、チオ、アミノ、ヒドロキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、もしくは置換環状脂肪族)で置換された環状脂肪族構造を指す。そのような例として、1−クロロデカリル、ビシクロ−ヘプタン、オクタン、およびノナン(例えば、ノルボルニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書において使用される場合、「複素環」という用語は、例えば、1つ以上のヘテロ原子を含む芳香族または非芳香族環を意味する。ヘテロ原子は、互いに同じかまたは異なり得る。ヘテロ原子の例として、これらに限定されないが、窒素、酸素、および硫黄が挙げられる。芳香族および非芳香族複素環は、当該技術分野において周知である。芳香族複素環のいくつかの非限定的な例として、ピリジン、ピリミジン、インドール、プリン、キノリン、およびイソキノリンが挙げられる。非芳香族複素環化合物の非限定的な例として、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジン、およびピラゾリジンが挙げられる。酸素含有複素環の例として、これらに限定されないが、フラン、オキシラン、2H−ピラン、4H−ピラン、2H−クロメン、およびベンゾフランが挙げられる。硫黄含有複素環の例として、これらに限定されないが、チオフェン、ベンゾチオフェン、およびパラチアジンが挙げられる。窒素含有複素環の例としての例として、これらに限定されないが、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、トリアゾール、およびトリアジンが挙げられる。2つの異なるヘテロ原子を含む複素環の例として、これらに限定されないが、フェノチアジン、モルホリン、パラチアジン、オキサジン、オキサゾール、チアジン、およびチアゾールが挙げられる。複素環は、任意選択的に、脂肪族、ニトロ、アセチル(すなわち、−C(=O)−CH)、またはアリール基から選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよい。
【0061】
本明細書において使用される場合、「置換複素環」という用語は、環炭素原子のうちの少なくとも1つが、酸素、窒素、または硫黄で置換され、脂肪族水素原子のうちの少なくとも1つが、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、もしくは置換環状脂肪族)で置換された複素環構造を指す。そのような例として、2−クロロピラニルが挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
本明細書において使用される場合、「リンカー」という用語は、2つの異なる構造部分を接続する最大8個の近接する原子を含む鎖を指し、この場合、そのような原子は、例えば、炭素、窒素、酸素、または硫黄である。エチレングリコールは、1つの非限定的な例である。
【0063】
本明細書において使用される場合、「低級アルキル置換アミノ」という用語は、最大8個の炭素原子を含み、脂肪族水素原子のうちの1つがアミノ基で置換された、任意のアルキル単位を指す。そのような例として、エチルアミノ等が挙げられるが、これに限定されない。
【0064】
本明細書において使用される場合「低級アルキル置換ハロゲン」という用語は、最大8個の炭素原子を含み、脂肪族水素原子のうちの1つがハロゲンで置換された、任意のアルキル単位を指す。そのような例として、クロロエチル等が挙げられるが、これに限定されない。
【0065】
本明細書において使用される場合、「アセチルアミノ」という用語は、アセチル化された任意の一級または二級アミノを意味する。そのような例として、アセトアミド等が挙げられるが、これに限定されない。
【0066】
本明細書において使用される場合、「水素結合に関与する部分」または「水素結合に関与する化学部分」という用語は、プロトンを受容するかまたは供与し、それによって水素結合を形成する基を意味する。水素結合に関与する部分のいくつかの具体的な非限定的な例として、当技術分野で周知のフルオロ、酸素含有基および窒素含有基が挙げられる。水素結合に関与する酸素含有基のいくつかの例として、以下が挙げられる:ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級カルボニル、低級カルボキシル、低級エーテル、およびフェノール基。本明細書で使用される「低級」という修飾語は、それぞれの酸素含有官能基が結合した低級脂肪族基(C〜C)を指す。このように、例えば、「低級カルボニル」という用語は、とりわけ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを指す。水素結合形成に関与する窒素含有基のいくつかの非限定的な例として、アミノおよびアミド基が挙げられる。さらに、酸素原子および窒素原子の両方を含む基も、水素結合の形成に関与することができる。そのような基の例として、ニトロ、N−ヒドロキシ、および亜硝酸基が挙げられる。また、本発明における水素結合受容体は、芳香族環のπ電子である可能性もある。
【0067】
化合物の「誘導体」という用語は、本明細書において使用される場合、化学修飾された化合物を指し、該化学修飾は、化合物の官能基または骨格のいずれかで起こる。そのような誘導体として、これらに限定されないが、アルコール含有化合物のエステル、カルボキシ含有化合物のエステル、アミン含有化合物のアミド、カルボキシ含有化合物のアミド、アミノ含有化合物のイミン、アルデヒド含有化合物のアセタール、カルボニル含有化合物のケタール等が挙げられる。
【0068】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与されると、本発明の化合物またはその活性代謝産物もしくは残渣を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者には既知であるように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基に由来してもよい。酸の例として、これらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。シュウ酸等の他の酸は、それら自体は薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において用いられてもよい。
【0069】
塩基の例として、これらに限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW(式中、WはC1−4アルキル等である)の化合物等が挙げられる。
【0070】
塩の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:アセテート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ブチラート、シトレート、カンフォレート、カンフォスルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、フマレート、フルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロイオダイド、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレアート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、オキサレート、パルモアート、ペクチネート、ペルスルフェート、フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、スクシネート、タルトレート、チオシアネート、トシレート、ウンデカノアート等。塩の他の例として、Na、NH、およびNW(式中、WはC1−4アルキル基である)等の好適なカチオンと配合した本発明の化合物のアニオン等が挙げられる。
【0071】
治療上の用途のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されることが意図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において用途を見出すことができる。
【0072】
本明細書において使用される場合、「siRNA」という用語は、低分子干渉RNAを指す。いくつかの実施形態において、siRNAは、約18〜25ヌクレオチド長の2本鎖または2本鎖領域を含む:siRNAは、各鎖の3´末端に約2〜4個の不対ヌクレオチドを含むことが多い。siRNAの2本鎖または2本鎖領域のうちの少なくとも1つの鎖は、標的RNA分子に実質的に相同であるか、または実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス」鎖であり、標的RNA分子に相同的な鎖は「センス」鎖であり、それはsiRNAアンチセンス鎖に相補的でもある。また、siRNAは、付加的な配列を含み得る:そのような配列の非限定的な例として、連結配列またはループ、ならびにステムおよび他の折り畳み構造が挙げられる。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物においてRNA干渉を引き起こす際、ならびに植物において転写後遺伝子サイレンシングの間に配列特異的RNA分解を引き起こす際に、重要な中間体として機能すると考えられる。
【0073】
「RNA干渉」または「RNAi」という用語は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは減少を指す。これは、その2本鎖領域内で、サイレンシングされる遺伝子の配列に相同なsiRNAによって開始される、動物および植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。遺伝子は、その生物に内因性または外来性であり得、染色体に組み込まれて存在するか、またはゲノムに組み込まれていないトランスフェクションベクター中に存在してもよい。遺伝子の発現は、完全にまたは一部阻害される。また、RNAiは、標的RNAの機能を阻害するとも考えられ得、標的RNAの機能は、完全または部分的であり得る。
【0074】
本発明は、癌の治療、管理、および/または研究において用途を見出す治療剤に関する。具体的には、本発明は、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、他の固形腫瘍、多発性骨髄腫)におけるMMSETの発現を標的とする小分子および核酸に関する。
【0075】
多発性骨髄腫SETドメイン(MMSET)(FLJ23286、KIAA1090、MGC176638、NSD2、核内SETドメイン保有タンパク質2、タンパク質トライソラクス−5、REIIBP、TRX5、WHS、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群候補1タンパク質、NSD2、およびWHSC1としても知られる)は、t(4;14)に関連する多発性骨髄腫(MM)におけるIgH遺伝子座への融合によって同定され、染色体制御因子内に見られるドメイン(SETドメインを含む)を保有する。MMSETは、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群において欠失した、ヒストンメチルトランスフェラーゼである。その基質特異性は異なる。H3K36のジメチル化活性およびH3K36のトリメチル化活性の両方が報告されている。MMSETは、そのHMGドメインを介してアンドロゲン受容体(AR)と相互作用し、受容体媒介性の転写を増強する。MMSETは、HDAC1およびHDAC2、mSin3a、ならびにLSD1と複合体を形成し、MM細胞における機能の研究に基づいた細胞周期の正の制御因子である。
【0076】
本発明の実施形態を開発する過程で実施した実験により、前立腺組織試料(転移性組織を含む)および細胞株中に著しく高いMMSETの発現が同定された(図1、図2、図3、図8)。MMSETのノックダウンは、転移性前立腺癌細胞株DU145およびPC3の増殖および浸潤の低下をもたらした。MMSETのノックダウンは、H3K36のジメチル化を特異的に低下させ、Ezh2(zeste2のエンハンサー)のノックダウンでも同じ効果を観察することができた(図4)。また、MMSETノックダウンは、DU145細胞の増殖能および侵襲性(図5)ならびにPC3細胞の侵襲性(図6)も減少させた。MCTP39とも称されるN39(MMSET阻害剤)は、非常に低い濃度でDU145細胞事象の増殖および浸潤に影響を与えた(図7)。N39は、DU145細胞においてH3K27のトリメチル化、H3K36のトリメチル化、およびH3K36のジメチル化を低下させた(図9)。
【0077】
I.MMSETを標的とする癌治療
いくつかの実施形態において、本発明は、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、他の固形腫瘍、多発性骨髄腫)の治療を提供する。いくつかの実施形態において、治療は、MMSET、MMSETの制御因子、MMSETと相互作用するタンパク質、および/またはMMSETの標的(複数可)を標的とする。
【0078】
A.低分子療法
いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETの発現または活性の低分子阻害剤を提供する。例示的な低分子化合物として、本明細書に記載されるものが挙げられるが(例えば、MCTP39(3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオール)およびその誘導体)、これに限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態において、これらの化合物は、単独で、または本明細書に記載される追加の治療剤と組み合わせて、MMSETの阻害に(例えば、癌治療薬として)おいて用途を見出す。
【0080】
B.RNA干渉およびアンチセンス療法
いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETの発現を標的とする。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETをコードする核酸分子の機能を調節し、最終的には発現されるMMSETの量を調節する際に使用するための、オリゴマーアンチセンスまたはRNAi化合物、特に、オリゴヌクレオチド(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物を用いる。
【0081】
1. RNA干渉(RNAi)
いくつかの実施形態において、MMSETタンパク質の機能を阻害するためにRNAiが用いられる。RNAiは、ヒトを含むほとんどの真核生物における外来遺伝子の発現をコントロールするための進化する上で保存された細胞防御を表す。RNAiは、典型的には2本鎖RNA(dsRNA)によって誘導され、dsRNAに応じて相同な1本鎖標的RNAの配列特異的なmRNA分解を引き起こす。mRNA分解の介在物質は、通常、細胞中の酵素切断によって長鎖dsRNAから生成される低分子干渉RNA(siRNA)2本鎖である。siRNAは、一般に、約21ヌクレオチド長(例えば21〜23ヌクレオチド長)であり、2つのヌクレオチド3’−オーバーハングによって特徴付けられる塩基対構造を有する。低分子RNAまたはRNAiの細胞内への導入後、この配列は、RISC(RNA誘導型サイレンシング複合体)と称される酵素複合体に送達されると考えられる。RISCは、標的を認識し、エンドヌクレアーゼで切断する。より大きなRNA配列が細胞に送達される場合、RNaseIII酵素(Dicer)は、より長いdsRNAを21〜23ntのds−siRNA断片に変換することに留意されたい。
【0082】
化学的に合成されたsiRNAは、培養体細胞における哺乳類の遺伝子機能の全ゲノム的解析のための強力な試薬となっている。遺伝子機能を検証するためのそれらの価値以外にも、siRNAは、遺伝子特異的治療薬としての大きな可能性も有する(Tuschl and Borkhardt,Molecular Intervent.2002;2(3):158−67、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0083】
動物細胞へのsiRNAのトランスフェクションは、特定の遺伝子の強力で長期的な転写後サイレンシングをもたらす(Caplen et al,Proc Natl Acad Sci U.S.A.2001;98:9742−7、Elbashir et al., Nature.2001;411:494−8、Elbashir et al.,Genes Dev.2001;15: 188−200、およびElbashir et al.,EMBO J.2001;20:6877−88、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる)。siRNAを用いてRNAiを行うための方法および組成物は、例えば米国特許第6,506,559号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
siRNAは、伸長タンパク質によって、多くの場合は検出不能なレベルまで、標的となるRNAの量を減少させる際に極めて効果的である。サイレンシング効果は、数ヶ月間持続し得、標的RNAとsiRNAの中心領域との間の1つのヌクレオチドミスマッチがサイレンシングを防ぐのに十分であることが多いため、極めて特異的である(Brummelkamp et al,Science 2002;296:550−3、およびHolen et al,Nucleic Acids Res.2002;30:1757−66、これらは両方とも、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0085】
siRNAの設計における重要な要因は、siRNA結合のための到達可能な部位の存在である。Bahoia et al.,(J.Biol.Chem.,2003;278:15991−15997、参照により本明細書に組み込まれる)は、効果的なsiRNAを設計するためにmRNA内の到達可能な部位を見つけるための、走査アレイと称される一種のDNAアレイの使用について記載している。これらのアレイは、物理的バリア(マスク)を使用して、配列に各塩基を段階的に加えることによって合成される、モノマーから特定の最大サイズにまで及ぶオリゴヌクレオチド、通常はコマー(comer)を含む。したがって、これらのアレイは、標的遺伝子の領域の完全なオリゴヌクレオチド補体を表す。これらのアレイとの標的mRNAのハイブリダイゼーションは、標的mRNAのこの領域に関する徹底した到達性プロファイルを提供する。そのようなデータは、有効性および標的特異性を保持するためにオリゴヌクレオチド長と結合親和性との間の妥協点に達することが重要であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(7塩基長〜25塩基長の範囲)の設計に有用である(Sohail et al,Nucleic Acids Res.,2001;29(10):2041− 2045)。siRNAsを選択するためのさらなる方法および検討事項は、例えば、国際公開第WO05054270号、第WO05038054A1号、第WO03070966A2号、J Mol Biol.2005 May 13;348(4):883−93,J Mol Biol.2005 May 13;348(4):871−81、およびNucleic Acids Res.2003 Aug 1;31(15):4417−24に記載され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、siRNAを選択する際に使用するためのソフトウェア(例えば、MWGオンラインsiMAX siRNAデザインツール)が市販されているかまたは一般に入手可能である。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、平滑末端(例えば、米国特許第20080200420号を参照のこと(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる))、オーバーハング(例えば、米国特許第20080269147A1号を参照のこと(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる))、固定核酸(例えば、国際公開第WO2008/006369号、第WO2008/043753号、および第WO2008/051306号を参照のこと(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))を含むsiRNAを用いる。いくつかの実施形態において、siRNAは、遺伝子発現を介して、または細菌を使用して送達される(例えば、Xiang et al.,Nature 24:6(2006)および国際公開第WO06066048号を参照、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0087】
他の実施形態において、shRNA法(例えば、第20080025958号を参照、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が用いられる。低分子ヘアピンRNAまたはショートヘアピンRNA(shRNA)は、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするために使用することができる急なヘアピンカーブを形成するRNAの配列である。shRNAは、細胞に導入されたベクターを使用し、shRNAが常に発現されていることを確実にするためにU6プロモーターを用いる。このベクターは、通常、娘細胞に継承され、遺伝子サイレンシングが受け継がれることを可能にする。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によってsiRNAへと切断され、次いで、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体は、それに結合するsiRNAにマッチするmRNAに結合して切断する。shRNAは、RNAポリメラーゼIIIによって転写される。
【0088】
好ましい実施形態において、siRNAベースの治療薬は、後に記載するように薬学的組成物として調剤される。好ましい実施形態において、本発明のsiRNA組成物の投与は、癌において測定可能な減少(例えば、腫瘍の減少または排除、形質細胞の過剰増殖の減少)をもたらす。
【0089】
2. アンチセンス
他の実施形態において、MMSETタンパク質の発現は、MMSETをコードする1つ以上の核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を使用して調節される。オリゴマー化合物のその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、核酸の正常な機能を妨げる。特異的にハイブリダイズする化合物によるこの標的核酸の機能の調節は、一般的に「アンチセンス」と称される。妨げられるDNAの機能は、複製および転写を含む。妨げられるRNAの機能は、例えば、タンパク質翻訳部位へのRNAの転座、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のmRNA種を生じるようなRNAのスプライシング、およびRNAに関与し得るまたはRNAによって促進され得る触媒活性等の全ての重要な機能を含む。標的核酸の機能に対するこのような干渉の全体的な影響は、MMSETの発現の調節である。本発明の文脈において、「調節」とは、遺伝子の発現における増大(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。例えば、発現は、腫瘍増殖を防ぐために阻害され得る。
【0090】
アンチセンスに特異的な核酸を標的とすることが好ましい。本発明の文脈において、特定の核酸に対するアンチセンス化合物を「標的化する」ことは、多段階にわたるプロセスである。通常、このプロセスは、機能が調節される核酸配列の同定から始まる。これは、例えば、特定の疾患または病態に関連する細胞遺伝子(もしくは遺伝子から転写されたmRNA)、または感染病原体由来の核酸分子であってもよい。本発明において、標的は、MMSETをコードする核酸分子である。また、標的化プロセスは、所望の効果、例えば、タンパク質の発現の検出または調節がもたらされるようにアンチセンスの相互作用を生じさせるための遺伝子内の1つの部位または複数の部位の特定も含む。本発明の文脈において、好ましい遺伝子内の部位は、遺伝子の翻訳領域(ORF)の翻訳開始コドンまたは終止コドンを包含する領域である。翻訳開始コドンは、典型的には5´−AUG(転写されたmRNA分子において、対応するDNA分子においては5´−ATG)であるため、翻訳開始コドンは「AUGコドン」、「開始コドン」、または「AUG開始コドン」とも称される。少数の遺伝子は、RNA配列5´−GUG、5´−UUGまたは5´−CUG、および5´−AUAを有する翻訳開始コドンを有し、5´−ACGおよび5´−CUGは、インビボで機能することが分かっている。したがって、各場合において、開始アミノ酸が典型的にはメチオニン(真核生物において)またはホルミルメチオニン(原核生物において)であっても、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」という用語は、多くのコドン配列を包含することができる。真核生物および原核生物の遺伝子は、2つ以上の代替の開始コドンを有し得、これらのうちのいずれか1つが、特定の細胞型もしくは組織において、または特定の条件下で、翻訳開始に優先的に用いることができる。本発明の文脈において、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」とは、そのようなコドンの配列に関係なく、本発明の腫瘍抗原をコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を開始するためにインビボで使用される1つまたは複数のコドンを指す。
【0091】
遺伝子の翻訳終止コドン(または「停止コドン」)は、3つの配列(すなわち、5´−UAA、5´−UAG、および5´−UGA、対応するDNA配列は、それぞれ5´−TAA、5´−TAG、および5´−TGA)のうちの1つを有し得る。「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5´または3´)に約25〜約50個の近接するヌクレオチドを包含するそのようなmRNAまたは遺伝子の一部分を指す。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(すなわち、5´または3´)に約25〜約50個の近接するヌクレオチドを包含するそのようなmRNAまたは遺伝子の一部分を指す。
【0092】
翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間の領域を指す翻訳領域(ORF)または「コード領域」とは、効果的に標的とされ得る領域でもある。他の標的領域は、翻訳開始コドンから5´方向にあるmRNAの部分を意味し、したがって、5´キャップ部位とmRNAの翻訳開始コドンとの間のヌクレオチドまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドを含む5´非翻訳領域(5´UTR)と、翻訳終止コドンから3´方向にあるmRNAの部分を意味し、したがって翻訳終止コドンとmRNAの3´末端との間のヌクレオチドまたはその遺伝子上の対応するヌクレオチドを含む3´非翻訳領域(3´UTR)とを含む。mRNAの5´キャップは、mRNAの最も5´側の残基に5´−5´トリホスフェート結合を介して結合するN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5´キャップ領域は、5´キャップ構造自体、およびそのキャップに隣接する第1の50ヌクレオチドを含むと考えられる。キャップ領域も、好ましい標的領域であり得る。
【0093】
真核生物のmRNA転写物の中には直接的に翻訳されるものもあるが、その多くは、翻訳される前に転写物から切除される「イントロン」として知られる1つ以上の領域を含む。残りの(したがって翻訳された)領域は、「エクソン」として知られ、ともにスプライスされて連続的なmRNA配列を形成する。mRNAスプライス部位(すなわち、イントロン−エクソン接合部)も、好ましい標的領域であり得、異常なスプライシングが疾患と関連する状況、または特定のmRNAスプライス産物の過剰生成が疾患と関連している状況において、特に有用である。再配列または欠失による異常な融合接合部も、好ましい標的である。イントロンは、例えば、DNAまたはプレmRNAを標的とするアンチセンス化合物の、効果的な、したがって好ましい標的領域であり得ることも分かっている。
【0094】
いくつかの実施形態において、アンチセンス阻害のための標的部位は、市販のソフトウェアプログラム(例えば、Biognostik、Gottingen(Germany)、SysArris Software、Bangalore(India)、Antisense Research Group、University of Liverpool(Liverpool,England)、GeneTrove(Carlsbad,CA))を使用して同定される。他の実施形態において、アンチセンス阻害のための標的部位は、国際公開第WO0198537A2号に記載される到達可能部位法を用いて同定され、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0095】
一旦、1つ以上の標的部位が同定されると、所望の効果を付与するように、標的に十分相補的な(すなわち、十分に、かつ十分な特異性を持って、ハイブリダイズする)オリゴヌクレオチドが選択される。例えば、本発明の好ましい実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、開始コドンまたその近くを標的とする。
【0096】
この発明の文脈において、アンチセンス組成物および方法に関する「ハイブリダイゼーション」とは、相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間でのワトソン−クリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合等の水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成によって対合する相補的な核酸塩基である。標的核酸が特異的にハイブリダイズ可能な核酸であるために、アンチセンス化合物の配列がその標的核酸の配列に100%相補的である必要はないことを理解されたい。アンチセンス化合物は、標的DNAまたはRNA分子への化合物の結合が、標的DNAまたはRNAの正常な機能を妨げて有用性の損失を引き起こし、アンチセンス化合物の非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある場合に、特異的な結合が所望される条件下で(すなわち、インビボアッセイまたは治療処置の場合は生理学的条件下で、またインビトロアッセイの場合は、アッセイが実施される条件下で)、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0097】
アンチセンス化合物は、研究試薬および診断薬として一般的に使用される。例えば、特異性を持って遺伝子発現を阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定の遺伝子の機能を解明するために使用することができる。また、アンチセンス化合物は、例えば、種々の生物学的経路の機能を識別するためにも使用される。
【0098】
アンチセンスの特異性および感度は、治療上の用途にも適用される。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトにおける病態の治療における治療部分として用いられてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、安全かつ効果的にヒトに投与されてきており、現在、数多くの臨床試験が行われている。したがって、オリゴヌクレオチドは、細胞、組織、および動物、特にヒトの治療のための治療計画において有用であるように構成することができる、有用な治療様式であることが確立されている。
【0099】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがアンチセンス化合物の好ましい形態である一方で、本発明は、これに限定されないが、後に記載するようなオリゴヌクレオチド模倣体を含む他のオリゴマーのアンチセンス化合物を包含する。より長い配列およびより短い配列のどちらも本発明とともに使用され得るが、この発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは約8〜約30個の核酸塩基(すなわち、約8〜約30個の結合塩基)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、さらにより好ましくは、約12〜約25の核酸塩基を含む化合物である。
【0100】
本発明を用いると有用である好ましいアンチセンス化合物の具体例として、修飾された主鎖または非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書において定義されるように、修飾された主鎖を有するオリゴヌクレオチドは、主鎖中にリン原子を保持するものおよび主鎖中にリン原子を有さないものを含む。本明細書の目的のために、それらのヌクレオシド主鎖中にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドと見なすことができる。
【0101】
好ましい修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホネート(3´−アルキレンホスホネートおよびキラルのホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホロアミデート(3´−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデート、チオノホスホロアミデートを含む)、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および正常な3´−5´結合を有するボラノホスフェート、これらの2´−5´結合類似体、ならびにヌクレオシド単位の隣接する対が結合5´−3´に対しては3´−5´または5´−2´に対しては2´−5´である反転極性を有するものを含む。種々の塩、混合塩類、および遊離酸型も含まれる。
【0102】
その中にリン原子を含まない好ましい修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間の結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成される主鎖を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される)、シロキサン主鎖、硫化物、スルホキシドおよびスルホン主鎖、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルファメート主鎖、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖、スルホネートおよびスルホンアミド主鎖、アミド主鎖、ならびにN、O、SおよびCH2成分の部分を混合して有する他のものを有するものを含む。
【0103】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合(すなわち、主鎖)の両方が、新規の基で置換される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが分かっているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖は、アミドを含む主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換される。核酸塩基は、保持されて、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許として、これらに限定されないが、米国特許第5,539,082号、第5,714,331号、および第5,719,262号が挙げられ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.,Science 254:1497(1991)に見出すことができる。
【0104】
本発明の最も好ましい実施形態は、ホスホロチオエート主鎖を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子主鎖を有するオリゴヌクレオシドであり、特に、−−CH、−−NH−−O−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−O−−CH−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られる]、−−CH−−O−−N(CH)−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−N(CH)−−CH−−、上述の米国特許第5,489,677号記載の−−O−−N(CH)−−CH−−CH−−[式中、未変性のホスホジエステル主鎖は−−O−−P−−O−−CH−−で表される]、および上述の米国特許第5,602,240号記載のアミド主鎖を有するものである。また、上述の米国特許第5,034,506号記載のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0105】
修飾されたオリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換された糖部分を有してもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、以下のうちの1つを2´位に有する:OH;F;O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;O−、S−、もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または未置換のC10アルキルまたはC−C10アルケニルおよびアルキニルであってもよい)。特に好ましいものは、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、およびO(CHON[(CHCH)]であり、式中、nおよびmは1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、以下のうちの1つを2´位に有する:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルもしくはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を向上させるための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を向上させるための基、および同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾は、2´−メトキシエトキシ(2´−O−−CHCHOCHであり、2´−O−(2−メトキシエチル)または2´−MOEとしても知られている)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta 78:486[1995])、すなわち、アルコキシアルコキシ基を含む。さらに好ましい修飾は、2´−DMAOEとしても知られる2´−ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、O(CHON(CH基)、および2´−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において2´−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2´−DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2´−O−−CH−−O−−CH−−N(CHを含む。
【0106】
他の好ましい修飾は、2´−メトキシ(2´−O−−CH)、2´−アミノプロポキシ(2´−OCHCHCHNH)、および2´−フルオロ(2´−F)を含む。同様の修飾が、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3´末端ヌクレオチドまたは2´−5´結合オリゴヌクレオチド上の糖の3´位、および5´末端ヌクレオチドの5´位にも形成され得る。また、オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分等の糖模倣体を有していてもよい。
【0107】
また、オリゴヌクレオチドは、核酸塩基(当該技術分野において、単純に「塩基」と称されることが多い)の修飾または置換を含んでもよい。本明細書において使用される場合、「未修飾の」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ(特に5−ブロモ)、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニン等の、他の合成および天然の核酸塩基を含む。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されるものを含む。これらの核酸塩基のうちのいくつかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるために特に有用である。それらは、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6およびO−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃で核酸2本鎖の安定性を増加させることが分かっており、現在のところ好ましい塩基置換であり、特に、2´−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合により一層好ましい。
【0108】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、または細胞内取り込みを増強する1つ以上の部分またはコンジュゲートのオリゴヌクレオチドへの化学的結合に関与する。そのような部分は、これらに限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪族鎖、(例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基)、リン脂質、(例えば、ジヘキサデシル−rac‐グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac‐グリセロ−3−H−ホスホネート)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分を含む。
【0109】
関連技術分野の当業者は、上記修飾を含むオリゴヌクレオチドの生成の仕方を十分に分かっている。本発明は、上述のアンチセンスオリゴヌクレオチドに限定されるものではない。任意の好適な修飾または置換が用いられ得る。
【0110】
所与の化合物におけるすべての位置が均一に修飾される必要はなく、実際、上記修飾のうちの1つ以上が、オリゴヌクレオチド内の単一化合物または単一ヌクレオシドにさえも組み込まれ得る。本発明は、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も包含する。本発明の文脈において「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」は、アンチセンス化合物であり、特に、各々が少なくとも1つのモノマー単位(すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチド)からなる、化学的に異なる2つ以上の領域を含むオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞内取り込みの増加、および/または標的核酸に対する結合親和性の増大をヌクレオチドに付与するようにオリゴヌクレオチドが修飾された、少なくとも1つの領域を含む。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素の基質としての役割を果たし得る。例として、RNaseHは、RNA:DNA2本鎖のRNA鎖を切断する細胞内エンドヌクレアーゼである。したがって、RNaseHの活性化は、RNA標的の切断を生じ、それによって遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大幅に高める。その結果、同じ標的領域にハイブリッド形成するホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比べて、キメラオリゴヌクレオチドを用いた場合、より短い鎖のオリゴヌクレオチドで同程度の結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動によって、また必要に応じて、当該技術分野において既知である関連する核酸ハイブリダイゼーション技法によって、ルーチン的に検出することができる。
【0111】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、2つ以上のオリゴヌクレオチド、修飾されたオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/または上述のようなオリゴヌクレオチド模倣体の複合構造として形成され得る。
【0112】
本発明は、以下に記載する本発明のアンチセンス化合物を含む薬学的組成物および製剤も含む。
【0113】
C.遺伝子療法
本発明は、MMSETの発現を操作する際に使用するための任意の遺伝子操作の使用を企図する。遺伝子操作の例として、これらに限定されないが、遺伝子ノックアウト(例として、例えば組換えを用いて、染色体からMMSET遺伝子を除去する)、誘導性プロモーターを含む/含まないアンチセンスコンストラクトの発現等が挙げられる。インビトロまたはインビボでの核酸コンストラクトの細胞への送達は、任意の好適な方法を用いて実施され得る。好適な方法とは、所望の事象(例えば、アンチセンスコンストラクトの発現)が起こるように核酸コンストラクトを細胞に導入する方法である。また、遺伝子療法は、(例えば、誘導性プロモーター(例えば、アンドロゲン応答性プロモーター)による刺激の際に)インビボで発現されるsiRNAまたは他の干渉する分子を送達するためにも用いられ得る。
【0114】
遺伝子情報を保有する分子の細胞内への導入は、これらに限定されないが、裸のDNAコンストラクトの直接注入、該コンストラクトを添加した金粒子を用いた打ち込み、および例えば、リポソーム、生体高分子等を用いた、巨大分子の介在による遺伝子導入等を含む種々の方法のうちのいずれかによって達成される。好ましい方法は、これらに限定されないが、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、およびアデノ随伴ウイルス等の、ウイルス由来の遺伝子送達ビヒクルを用いる。レトロウイルスと比較すると効率がより高いため、アデノウイルス由来のベクターは、核酸分子をインビボで宿主細胞に導入するための好ましい遺伝子送達ビヒクルである。アデノウイルスベクターは、動物モデルにおける様々な固形腫瘍および免疫欠乏マウスにおけるヒト固形腫瘍異種移植片に、非常に効率的なインビボ遺伝子導入を提供することが分かっている。遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターおよび方法の例は、国際公開第WO00/12738号および第WO00/09675号、ならびに米国特許出願第6,033,908号、第6,019,978号、第6,001,557号、第5,994,132号、第5,994,128号、第5,994,106号、第5,981,225号、第5,885,808号、第5,872,154号、第5,830,730号、および第5,824,544号に記載され、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
ベクターは、様々な方法において対象に投与され得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ベクターは、直接注射を用いて、腫瘍または腫瘍を伴う組織に投与される。他の実施形態において、投与は、血液またはリンパ循環を介する(例えば、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第99/02685号を参照)。アデノウイルスベクターの例示的な投与レベルは、好ましくは灌流液に添加された10〜1011のベクター粒子である。
【0116】
D.抗体療法
いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETを発現する腫瘍または細胞(例えば、前立腺腫瘍、乳癌腫瘍、形質細胞)を標的とする抗体を提供する。任意の好適な抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、または合成)が、本明細書に開示される治療法に用いられ得る。好ましい実施形態において、癌治療に使用される抗体は、ヒト化抗体である。抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,180,370号、第5,585,089号、第6,054,297号、および第5,565,332号を参照のこと、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0117】
いくつかの実施形態において、治療抗体は、MMSETに対して産生される抗体を含み、該抗体は、細胞毒性薬物とコンジュゲートされる。そのような実施形態において、正常細胞を標的としない腫瘍特異的治療剤が生成され、したがって、従来の化学療法の有害な副作用の多くを軽減する。特定の用途の場合、治療剤は、抗体への付加に有用な薬剤としての役割を果たす薬理学的薬剤であり、特に、内皮細胞を死滅させるか増殖または細胞分割を抑制する能力を有する細胞毒性またはさもなければ抗細胞剤(anticellular agent)であることが構想される。本発明は、抗体にコンジュゲートし、活性型で送達される、任意の薬理学的薬剤の使用を企図する。例示的な抗細胞剤として、化学療法剤、放射性同位元素、および細胞毒が挙げられる。本発明の治療抗体は、これらに限定されないが、例えば放射性同位元素(例えば、ヨウ素−131、ヨウ素−123、テクニシウム−99m、インジウム−111、レニウム−188、レニウム−186、ガリウム−67、銅−67、イットリウム−90、ヨウ素−125、またはアスタチン−211)、ステロイド等のホルモン、シトシン等の代謝拮抗剤(例えば、アラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、またはアミノプテリン;アントラサイクリン;マイトマイシンC)、ビンカアルカロイド(例えば、デモコルチン、エトポシド、ミトラマイシン)、およびクロラムブシルまたはメルファラン等の抗腫瘍アルキル化剤を含む、様々な細胞毒性部分を含んでもよい。他の実施形態は、血液凝固剤、サイトカイン、増殖因子、細菌性内毒素、または細菌性内毒素の脂質A部分等の薬剤を含む。例えば、いくつかの実施形態において、数個の例を挙げると、治療薬剤として、A鎖毒素、リボソーム失活性タンパク質、αサルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、またはシュードモナス外毒素等の、植物、真菌、または細菌由来の毒素が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態において、脱グリコシル化リシンA鎖が用いられる。
【0118】
いずれの場合においても、それらのような薬剤は、所望の場合、既知のコンジュゲーション技術を用いて、必要に応じて、標的とされる腫瘍細胞の部位での標的化、内部移行、血液成分に対する遊離または提示を可能にする様式で、抗体と良好にコンジュゲートさせることができることが提唱されている(例えば、Ghose et al.,Methods Enzymol.,93:280[1983]を参照)。
【0119】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETを標的とする免疫毒素を提供する。免疫毒素は、典型的には腫瘍指向性の抗体または断片である特異的標的薬剤の毒素部分等の細胞毒性薬とのコンジュゲートである。標的化薬剤は、標的とされる抗原を保持する細胞に毒素を誘導し、それによって選択的に該細胞を死滅させる。いくつかの実施形態において、治療抗体は、高いインビボ安定性を提供する架橋剤を用いる(Thorpe et al.,Cancer Res.,48:6396[1988])。
【0120】
特に固形腫瘍の治療に関与する他の実施形態において、抗体は、血管内皮細胞の増殖または細胞分裂を抑制することによって、腫瘍脈管構造に対して細胞毒性またはさもなければ抗細胞効果を有するように設計される。この攻撃は、腫瘍細胞、特に脈管構造の遠位の腫瘍細胞から、酸素および栄養分を奪い、最終的には細胞死および腫瘍壊死をもたらす、腫瘍に局在化する血管崩壊を引き起こすことを意図する。
【0121】
好ましい実施形態において、抗体ベースの治療薬は、後に記載するように薬学的組成物として調剤される。好ましい実施形態において、本発明の抗体組成物の投与は、癌において測定可能な減少(例えば、腫瘍の減少または排除、形質細胞の過剰増殖の減少)をもたらす。
【0122】
E.薬学的組成物
化合物は、好ましくは好適な薬学的担体と組み合わせて治療用途に用いられる。そのような組成物は、有効量の化合物、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。製剤は、投与の様式に適合するように作製される。薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によってある程度決定され、また該組成物を投与するために用いられる特定の様式によっても決定される。したがって、核酸を含む薬学的組成物の多種多様な好適な製剤があり、そのうちのいくつかは本明細書に記載される。
【0123】
miRNA治療薬の使用に関して、当業者は、インビボで投与された核酸が取り込まれ、細胞および組織に分配されることを理解する(Huang, et al.,FEBSLett.558(l−3):69−73(2004))。例えば、Nyceらは、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が吸入されると、内因性界面活性剤(肺細胞によって生成される脂質)に結合し、さらなる担体脂質を必要とせずに肺細胞によって取り込まれることを示した(Nyce and Metzger,Nature,385:721−725(1997)。小さな核酸は、T24膀胱癌組織の培養細胞に容易に取り込まれる(Ma,et al.,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.8:415−426(1998)。siRNAは、全身投与による内因性遺伝子の治療的サイレンシングに用いられてきた(Soutschek,et al.,Nature 432,173−178(2004))。
【0124】
化合物は、好適な薬学的担体中の、局所的、局部的、または全身的な投与のための製剤中に存在してもよい。E.W.MartinによるRemington´s Pharmaceutical Sciences,15th Edition(Mark Publishing Company,1975)は、典型的な担体および調製方法を開示している。また、化合物は、細胞を標的化するための生分解性もしくは非生分解性のポリマーまたはタンパク質またはリポソームで形成される好適な生体適合性マイクロカプセル、微粒子、またはマイクロスフェア中に封入されてもよい。そのようなシステムは、当業者には周知であり、適切な核酸とともに使用するために最適化することができる。
【0125】
核酸送達のための種々の方法は、例えば、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New YorkおよびAusubel et al.,1994,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New Yorkに記載されている。そのような核酸送達システムは、限定ではなく例として、「裸の核酸」として「裸」の形態で、または陽イオン性分子もしくはリポソームを形成する脂質との複合体中等の送達に好適なビヒクルに配合されて、またはベクターの成分として、または薬学的組成物の成分としてのいずれかで、所望の核酸を含む。核酸送達系は、それを細胞と接触させることによって等、直接的に、またはいずれかの生物学的プロセスの作用を通して等、間接的に細胞に提供することができる。限定ではなく例として、エンドサイトーシス、受容体標的化、天然または合成の細胞膜断片との結合、エレクトロポーレーション等の物理的手段、核酸送達システムのポリマー担体(例えば、制御放出フィルムまたはナノ粒子もしくは微粒子等)との組み合わせ、ベクターの使用、細胞を取り囲む組織または流体への核酸送達システムの注入、細胞膜を横切る核酸送達システムの単純拡散、あるいは細胞膜を横切る任意の能動的または受動的な輸送機構によって、核酸送達システムを細胞に提供することができる。さらに、核酸送達システムは、ウイルスベクターの抗体に関連する標的化および抗体媒介性固定化等の技術を用いて細胞に提供することもできる。
【0126】
局所投与のための製剤は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液剤および散剤を含み得る。従来の薬学的担体、水性、粉末状または油状基剤、増粘剤等が、必要に応じて用いられてもよい。
【0127】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路等の非経口投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性の等張無菌注射液、ならびに、懸濁剤、溶解剤、増粘剤、分散剤、安定剤、および保存剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液、溶液、または乳濁液を含む。注射用製剤は、添加される保存剤とともに、例えばアンプル中または多回投与用容器内に、単位剤形で提供され得る。組成物は、このような形態をとり得る。
【0128】
調製物は、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液および乳濁液を含み、それらは特定の実施形態において対象の血液と等調性であり得る。非水性溶媒の例として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、ピーナッツ油等)、鉱油、オレイン酸エチル等の注射用有機エステル、または合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む不揮発性油が挙げられる。水性担体は、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる(生理食塩水および緩衝液を含む)。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、1,3−ブタンジオール、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油を含む。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補充液、電解質補充液(リンガーデキストロースに基づくもの等)を含む。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等も存在し得る。また、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として従来通り用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油が用いられてもよい。さらに、オレイン酸等の脂肪酸が、注射剤の調製に使用されてもよい。担体製剤は、Remington´s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(Easton,Pa)に見出すことができる。当業者は、過度の実験を行うことなく、組成物の調製および配合のための種々のパラメーターを容易に決定することができる。
【0129】
単独のまたは他の好適な成分と組み合わされた化合物は、吸入によって投与されるエアロゾル製剤にすることもできる(すなわち、それらは「噴霧」され得る)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧された許容される噴霧剤中に入れることができる。吸入による投与では、化合物は、好適な噴霧剤を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達される。
【0130】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、塩、担体、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、賦形剤、キレート化剤、増量剤、乾燥剤、抗酸化剤、抗菌剤、保存剤、結合剤、膨張剤、シリカ、溶解剤、または安定剤等の配合成分とともに薬学的に許容される担体を含んでもよい。一実施形態において、化合物は、細胞への取り込みを向上させるために、コレステロール、ならびにC32官能基を有するラウリン酸導体等およびリトコール酸誘導体等の親油基にコンジュゲートされる。例えば、コレステロールは、siRNAの取り込みおよび血清安定性を、インビトロ(Lorenz, et al.,Bioorg.Med.Cheni.Lett.14(19):4975−4977(2004))およびインビボ(Soutschek,et al.,Nature 432(7014):173−178(2004))で促進することが示されている。また、ステロイドとコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドがLDL等の血流中の異なるリポタンパク質に結合することで、完全性を保護し、生体内分布を促進することも示されている(Rump, et al.,Biochem.Pharmacol.59(11):1407−1416(2000))。上記化合物に結合またはコンジュゲートし、細胞への取り込みを増加させることができる他の群は、アクリジン誘導体、架橋剤(ソラレン誘導体、アジドフェナシル、プロフラビン、およびアジドプロフラビン等)、人工エンドヌクレアーゼ、金属錯体(EDTA−Fe(II)およびポルフィリン−Fe(II)等)、アルキル化部分、ヌクレアーゼ(アルカリホスファターゼ等)、末端トランスフェラーゼ、アブザイム、コレステリル部分、親油性担体、ペプチドコンジュゲート、長鎖アルコール、リン酸エステル、放射性マーカー、非放射性マーカー、炭水化物、およびポリリジンまたは他のポリアミンを含む。
【0131】
Levyらに対する米国特許第6,919,208号(参照により、本明細書に組み込まれる)も、送達の増強のための方法を記載している。これらの薬学的製剤は、従来の混合、溶解、造粒、研和、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥のプロセスを用いる等、それ自体が既知である様式で製造されてもよい。
【0132】
本明細書に記載される核酸の製剤は、核酸の融合または核酸の修飾を包含し、核酸は、別の部分もしくは部分、例えば、標的化部分、または別の治療剤に融合される。そのような類似体は、活性および/または安定性等の特性の改善を示し得る。核酸と結合してもまたは結合しなくてもよい部分の例として、例えば、特定の細胞への核酸の送達を提供する標的化部分、例えば、膵臓細胞、免疫細胞、肺細胞、または任意の他の好ましい細胞型に対する抗体、ならびに好ましい細胞型に発現する受容体およびリガンドが挙げられる。好ましくは、部分は、癌または腫瘍細胞を標的とする。例えば、癌細胞はグルコースの消費が高いため、核酸はグルコース分子に結合することができる。癌または腫瘍細胞を標的とするヒト化モノクローナル抗体は、好ましい部分であり、核酸と結合してもまたはしなくてもよい。癌治療の場合、標的抗原は、典型的には、腫瘍細胞に特有および/または必須のタンパク質(例えば、受容体タンパク質HER−2/neu)である。
【0133】
一般に、核酸を含む化合物を投与する方法は、当該技術分野において周知である。特に、現在使用されている製剤とともに核酸治療のために既に使用されている投与経路は、上記核酸のための好ましい投与経路および製剤を提供する。
【0134】
組成物は、これらに限定されないが、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または直腸手段を含む多数の経路によって投与することができる。また化合物は、リポソームを介して投与されてもよい。そのような投与経路および適切な製剤は、当業者に一般的に知られている。
【0135】
本明細書に記載される製剤の投与は、化合物(例えば、miRNAもしくは分子(例えば、小分子)をコードするmiRNAまたは核酸)が、その標的に到達できるようにする任意の許容される方法によって達成されてもよい。
【0136】
選択される特定の様式は、当然のことながら、特定の製剤、治療を受ける対象の状態の重症度、および治療有効性のために必要な投与量等の要因に依存する。本明細書において一般的に使用される場合、「有効量」とは、製剤が投与される対象において、化合物を投与されていない対応する対象と比較して、MMSET関連疾患の1つ以上の症状を治療することができるか、MMSET関連疾患の1つ以上の症状を逆転させることができるか、MMSET関連疾患の1つ以上の症状の進行を停止させることができるか、またはMMSET関連疾患の1つ以上の症状の発生を防止することができる量である。
【0137】
化合物の実際の有効量は、用いられる特定の化合物またはそれらの組み合わせ、配合される特定の組成物、投与の様式、個体の年齢、体重、状態、および治療される症状または状態の重症度に応じて異なり得る。
【0138】
当業者に既知の任意の許容される方法が、対象に製剤を投与するために用いられてもよい。治療される状態に応じて、投与は、局所的(すなわち、特定の領域、生理系、組織、器官、もしくは細胞型)、または全身的であり得る。
【0139】
注射は、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内であり得る。組成物は、例えば、加齢関連疾患の治療または防止のために皮内注射することができる。いくつかの実施形態において、注射は複数箇所に打たれてもよい。移植は、移植可能な薬物送達システム(例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、高分子リザーバー、コレステロールマトリックス)、ポリマー系(例えば、マトリックス侵食および/または拡散系)、ならびに非ポリマー系(例えば、圧縮された、融合された、または部分的に融合されたペレット)を挿入することを含む。吸入は、組成物を単独でまたは吸収され得る担体に結合させて、吸入器内のエアロゾルとともに投与することを含む。全身投与では、組成物がリポソーム中に封入されることが好ましいかもしれない。
【0140】
化合物は、薬剤の組織特異的な取り込みを可能にする様式で送達されてもよい。化合物が核酸であるいくつかの実施形態において、核酸送達システムが用いられ得る。技術は、創傷包帯法もしくは経皮送達システム等の組織または器官を局在化するデバイスの使用、血管カテーテルまたは尿路カテーテル等の侵襲性デバイスの使用、薬物送達能を有し、拡張可能なデバイスまたはステントグラフトとして構成されるステント等の介入的デバイスの使用を含む。
【0141】
製剤は、生侵食性インプラントを使用して拡散によって、またはポリマーマトリックスの分解によって送達されてもよい。特定の実施形態において、製剤の投与は、特定の期間、例えば、数時間、数日間、数週間、数ヶ月、または数年にわたって化合物への逐次的暴露をもたらすように設計されてもよい。これは、例えば、製剤の反復投与によって、または化合物が反復投与なしで長期にわたって送達される持続放出送達システムもしくは制御放出送達システムによって達成され得る。そのような送達システムを使用した製剤の投与は、例えば、経口剤形、ボーラス注入、経皮パッチまたは皮下インプラントによるものであり得る。実質的に一定である組成物の濃度を維持することは、いくつかの場合において好ましいかもしれない。
【0142】
他の好適な送達システムは、徐放、遅延放出、持続放出、または制御放出の送達システムを含む。そのようなシステムは、多くの場合において反復投与を回避することができ、対象および医師にとっての利便性を高める。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に既知である。それらは、例えば、ポリ乳酸および/もしくはポリグリコール酸、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、コポリオキサレート、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ならびに/またはこれらの組み合わせ等の、ポリマーベースのシステムを含む。
【0143】
核酸を含む前述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されており、参照により、本明細書に組み込まれる。他の例として、ステロール(例えばコレステロール、コレステロールエステル等)、ならびに脂肪酸または中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド等)を含む脂質ベースの非ポリマーシステム、ヒドロゲル放出システム、リポソームベースのシステム、リン脂質ベースのシステム、シラスティックシステム、ペプチドベースのシステム、ワックスコーティング、従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠、または部分的に融合したインプラントが挙げられる。特定の例として、化合物がマトリックス内で製剤中に含まれる侵食システム(例えば、米国特許第4,452,775号、第4,675、189号、第5,736,152号、第4,667,013号、第4,748,034号、および第5,239,660号(参照により、本明細書に組み込まれる)に記載されるような)、または活性成分が放出速度を制御する拡散システム(例えば、米国特許第3,832,253号、第3,854,480号、第5,133,974号、および第5,407,686号に記載されるような)が挙げられる。製剤は、例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、高分子リザーバー、コレステロールマトリックス、またはポリマーシステムであってもよい。いくつかの実施形態において、システムは、例えば、化合物を含む製剤の拡散または浸食/分解速度の制御を介して、組成物の持続放出または制御放出を可能にすることができる。また、ポンプベースのハードウェア送達システムは、1つ以上の実施形態を送達するために使用され得る。
【0144】
一気に放出が起こるシステムの例として、例えば、ポリマーマトリックスに封入されたリポソームに中に組成物が封入される、該リポソームが特定の刺激(例えば、温度、pH、光、または分解酵素)に感受性であるシステム、およびマイクロカプセルのコア分解酵素でイオン的に被覆されたマイクロカプセルによって組成物が封入されるシステムが挙げられる。インヒビターの放出が段階的かつ継続的なシステムの例として、例えば、組成物がマトリックス内にある形態で含まれる侵食システム、および組成物が、例えば、ポリマーを通って、制御された速度で浸透する浸出システムが挙げられる。このような持続放出システムは、例えば、ペレットまたはカプセルの形態であり得る。
【0145】
長期放出インプラントの使用は、いくつかの実施形態において特に好適であるかもしれない。本明細書において使用される場合、「長期放出」とは、組成物を含むインプラントが、少なくとも30日間もしくは45日間、好ましくは少なくとも60日間もしくは90日間、またはいくつかの場合においてはさらにそれよりも長く、治療的に有効なレベルの組成物を送達するように構築および配置されることを意味する。長期放出インプラントは、当業者に周知であり、上記放出システムのいくつかを含む。
【0146】
特定の個体のための投与量は、従来の検討事項を用いて(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコルにより)、当業者によって決定され得る。医師は、例えば、最初に比較的低用量を処方し、その後、適切な応答が得られるまで用量を増加させてもよい。個体に投与される用量は、用途に応じて、個体において経時的に有益な治療反応をもたらすか(もしくは、例えば、症状を軽減する)、または他の適切な活性をもたらすのに十分である。用量は、特定の製剤の有効性、ならびに用いられる化合物の活性、安定性、または血清半減期および個体の状態、そして治療を受ける個体の体重または体表面積によって決定される。また、用量の大きさは、特定の個体における特定のベクター、製剤等の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。
【0147】
1つ以上の核酸を含む治療組成物は、当該技術分野において周知の方法に従って有効性、組織代謝を確認するためおよび投与量を推定するために、1つ以上の適切なインビトロおよび/またはインビボの疾患動物モデルにおいて任意選択的に調査される。具体的には、関連するアッセイにおいて、治療対無治療の活性、安定性、または他の好適な尺度(例えば、治療された細胞または動物モデル対治療されていない細胞または動物モデルの比較)によって、最初に投与量が決定され得る。製剤は、例えば、個体の質量および相対的な健康に適用されるように、関連する製剤のLD50によって、および/または、種々の濃度における核酸の任意の副作用の観察によって決定される速度で投与される。投与は、単一用量または分割用量によって達成され得る。
【0148】
実施例に記載されるように、潜在的な加齢関連疾患の治療としての核酸の有効量を決定するためにインビトロモデルを使用することができる。疾患の治療または予防において投与されるべき化合物の有効量を決定する際に、医師は、循環血漿レベル、製剤の毒性、および疾患の進行を評価する。非限定的な例において、核酸の場合、70キログラムの個体に投与される用量は、典型的には、現在使用されている治療的アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、サイトメガロウイルスRNAの治療についてFDAによって認可され、関連する組成物の活性または血清半減期の改変のために調節されたVitravene(登録商標)(ホミビルセンナトリウム注射)等の投与量と等しい範囲内である。
【0149】
本明細書に記載される製剤は、これらに限定されないが、抗体投与、ワクチン投与、細胞傷害性薬剤、天然アミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド類似体、および生物学的応答修飾物質の投与を含む、任意の既知の従来の治療による治療条件を補うことができる。組み合わされた2つ以上の化合物は、一緒にまたは経時的に使用され得る。例えば、抗加齢関連疾患カクテルの一部として治療的に有効な量の核酸を投与することもできる。
【0150】
本発明の特定の実施形態は、(a)1つ以上のMMSETを標的とする核酸または低分子化合物および(b)1つ以上の他の化学療法剤を含む薬学的組成物を提供する。そのような化学療法剤の例として、これらに限定されないが、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン,6−チオグアニン、シタラビン(CA)、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、およびジエチルスチルベストロール(DES)等の抗癌剤が挙げられる。これらに限定されないが、非ステロイド系抗炎症剤および副腎皮質ステロイドを含む抗炎症剤、およびこれらに限定されないが、リビビリン、ビダラビン、アシクロビル、およびガンシクロビルを含む抗ウイルス剤も、本発明の組成物と組み合わされてもよい。他の非アンチセンス化学療法剤も、本発明の範囲内である。組み合わされた2つ以上の化合物は、一緒にまたは経時的に使用され得る。
【0151】
F.併用療法
いくつかの実施形態において、本発明は、追加の薬剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて、本明細書に記載される1つ以上の組成物を含む治療法を提供する。本発明は、特定の化学療法剤に限定されるものではない。
【0152】
種々のクラスの抗腫瘍性(例えば、抗癌性)薬剤が、特定の本発明の実施形態において使用するために企図される。本発明の実施形態とともに使用するのに好適な抗癌剤は、これらに限定されないが、アポトーシスを誘導する薬剤、アデノシンデアミナーゼの機能を阻害する薬剤、ピリミジン生合成を阻害する、プリン環生合成を阻害する、ヌクレオチド相互変換を阻害する、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害する、チミジンモノホスフェート(TMP)合成を阻害する、ジヒドロフォレート還元を阻害する、DNA合成を阻害する、DNAとの付加体を形成する、DNAを損傷する、DNA修復を阻害する、DNAとインターカレートする、アスパラギン類を脱アミノ化する、RNA合成を阻害する、タンパク質の合成または安定性を阻害する、微小管の合成または機能を阻害するもの等を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、本発明の実施形態の組成物および方法において使用するのに好適な例示的な抗癌剤として、これらに限定されないが、1)アルカロイド、例えば、微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビンデシン等)、微小管安定剤(例えば、パクリタキセル(タキソール)、およびドセタキセル、等)、およびクロマチン機能阻害剤、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)、およびテニポシド(VM−26)等)、ならびにトポイソメラーゼIを標的とする薬剤(例えば、カンプトテシンおよびイリノテカン(CPT−11)等)、2)共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤)、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、およびブスルファン(マイレラン)等)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびセムスチン等)、ならびに他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、およびマイトシシン等)、3)非共有結合性DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質)、例えば、核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD等)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン、およびセルビジン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、およびイダルビシン(イダマイシン)等)、アントラセンジオン(例えば、アントラサイクリン類似体、例えば、ミトキサントロン等)、ブレオマイシン(ブレノキサン)等、ならびにプリカマイシン(ミトラマイシン)等、4)代謝拮抗物質、例えば、葉酸代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、フォレックスおよびメキサート等)、プリン代謝拮抗薬(例えば、6−メルカプトプリン(6−MP、プリントール)、6−チオグアニン(6−TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2−クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2´−デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)等)、ピリミジン拮抗薬(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5−フルオロウラシル(アドルシル)、5−フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロクスウリジン)等)、ならびにシトシンアラビノシド(例えば、シトサール(ara−C)およびフルダラビン等)、5)酵素、例えば、L−アスパラギナーゼ、およびヒドロキシ尿素等、6)ホルモン、例えば、グルココルチコイド、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン等)、非ステロイド性抗アンドロゲン(例えば、フルタミド等)、およびアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(アリミデックス)等)、7)白金化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン等)、8)抗癌剤、毒素、および/または放射性核種等とコンジュゲートしたモノクローナル抗体、9)生物学的応答調節因子(例えば、インターフェロン(例えば、IFN−α)等]およびインターロイキン(例えば、IL−2等)等)、10)養子免疫療法、11)造血成長因子、12)腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えば、オールトランスレチノイン酸等)、13)遺伝子療法の技法、14)アンチセンス療法の技法、15)腫瘍ワクチン、16)腫瘍転移に対する薬剤(例えば、バチマスタット等)、17)血管新生阻害剤、18)プロテオソーム阻害剤(例えば、VELCADE)、19)アセチル化および/またはメチル化の阻害剤(例えば、HDAC阻害剤)、20)NF−κBの調節因子、21)細胞周期制御の阻害剤(例えば、CDK阻害剤)、22)p53タンパク質機能の調節因子、そして23)放射線が挙げられる。
【0154】
癌治療の状況においてルーチン的に使用される任意の腫瘍退縮剤を、本発明の実施形態の組成物および方法において使用することができる。例えば、米国食品医薬品局は、米国内での使用が認可された腫瘍退縮剤の処方集を維持する。米国F.D.Aと同等の国際機関が、同様の処方集を維持する。下の表は、米国内での使用が認可された例示的な抗腫瘍剤のリストを提供する。当業者は、米国で認可された全ての化学療法剤に必要とされる「製品ラベル」が、例示的な薬剤について認可された適応症、投与情報、毒性データ等を記載していることを認識するであろう。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
【表6】

【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
【表9】

【0164】
本発明の方法および組成物が前立腺癌の治療または防止のために使用される場合、前立腺癌の治療のための既存の治療が本発明の方法と組み合わせて用いられてもよい。したがって、転移性前立腺癌を治療または阻害する方法は、前立腺癌の治療のための第2の治療とともにMMSET阻害剤を投与することをさらに含み得る。第2の治療は、別のMMSET阻害剤であってもよいが、典型的には異なる治療である。好適な異なる治療は、放射線治療および前立腺摘除からなる群から選択される1つ以上の治療を含む。使用され得る別の第2の治療は、抗アンドロゲン療法である。抗アンドロゲン療法は、ロイプロリドおよびゴセレリンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を対象に投与することを含み得る。使用され得る別の第2の治療は、ケトコナゾール、ビカルタミド(カソデックス)、ミトキサントロン(ノバントロン)、リン酸エストラムスチン(エムサイト)、エトポシド(ベプシド)、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、またはビンブラスチン(ベルバン)を含むがこれに限定されない1つ以上のホルモン剤または化学療法剤を投与する等の化学療法である。
【0165】
II.抗体
本発明は、単離された抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETの少なくとも5つのアミノ酸残基で構成される単離されたポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。このような抗体は、本明細書に記載される治療および薬物スクリーニングの方法において用途を見出す。
【0166】
本発明のタンパク質に対する抗体は、該タンパク質を認識できる限り、いずれのモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用いて、従来の抗体または抗血清の調製プロセスに従って製造することができる。
【0167】
本発明は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方の使用を企図する。本発明の方法および組成物において使用される抗体を産生するために、これに限定されないが、本発明に開示されるものを含む任意の好適な方法が用いられてもよい。例えば、モノクローナル抗体の産生のためには、抗体の産生が可能な条件下で、タンパク質を単独で、または好適な担体もしくは希釈剤とともに、動物(例えば、哺乳動物)に投与する。抗体産生能を高めるために、完全または不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。通常、2週間〜6週間毎に1回、全部で約2回〜約10回タンパク質を投与する。そのような方法に好適な動物は、これらに限定されないが、霊長類、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等を含む。
【0168】
モノクローナル抗体を産生する細胞を調製するためには、最終免疫の2日〜5日後に、抗体価が確認された個々の動物(例えば、マウス)を選択し、脾臓またはリンパ節を採取し、その中に含まれる抗体を産生する細胞を骨髄腫細胞と融合させて、所望のモノクローナル抗体産生株であるハイブリドーマを調製する。例えば、本明細書に後述されるように標識されたタンパク質と抗血清を反応させ、次いで、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによって、抗血清中の抗体価の測定を行うことができる。細胞融合は、例えば、KoehlerおよびMilstein(Nature 256:495[1975])によって記載される方法等の既知の方法に従って実施することができる。融合プロモーターとして、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)、好ましくはPEGが使用される。
【0169】
骨髄腫細胞の例として、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1等が挙げられる。用いられる抗体産生株細胞(脾臓細胞)の数と骨髄腫細胞の数との比率は、好ましくは約1:1〜約20:1である。PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)は、好ましくは約10%〜約80%の濃度で添加される。細胞融合は、両方の細胞の混合物を約20℃〜約40℃、好ましくは約30℃〜約37℃で約1分〜10分インキュベートすることによって効率的に行うことができる。
【0170】
抗体(例えば、腫瘍抗原または本発明の自己抗体に対する)を産生するハイブリドーマをスクリーニングするために種々の方法が用いられてもよい。例えば、抗体を直接または担体とともに吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)にハイブリドーマの上清を添加し、次いで、放射性物質または酵素で標識した抗免疫グロブリン抗体(マウス細胞を細胞融合に用いる場合は、抗マウス免疫グロブリン抗体を使用)またはプロテインAを添加して、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。代替として、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマの上清を添加し、放射性物質または酵素で標識したタンパク質を添加して、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。
【0171】
モノクローナル抗体の選択は、任意の既知の方法またはその変形例に従って行うことができる。通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞のための培地が用いられる。ハイブリドーマが増殖できる限り、いずれの選択および成長培地が用いられてもよい。例えば、1%〜20%、好ましくは10%〜20%のウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地、1%〜10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地、ハイブリドーマ培養のための無血清培地、(SFM−101、Nissui Seiyaku)等を用いることができる。通常、培養は、約5%のCOガス下で、20℃〜40℃、好ましくは37℃で、約5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間行われる。ハイブリドーマ培養物の上清の抗体価は、抗血清中の抗タンパク質の抗体価に関して上述したのと同じ様式に従って測定することができる。
【0172】
モノクローナル抗体(例えば、MMSET、MMSETと相互作用するタンパク質、またはMMSETの標的に対する)の分離および精製は、免疫グロブリンの分離および精製等の従来のポリクローナル抗体と同じ様式に従って行うことができ、例えば、塩析法、アルコール沈殿法,等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えば、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲル濾過法、または、抗原と結合する固相、プロテインAまたはプロテインG等の活性吸着剤で抗体のみを収集し、結合を溶解して抗体を得る特異的精製法を含む。
【0173】
ポリクローナル抗体は、患者から抗体を得ることを含む、いずれの既知の方法またはこれらの方法の変更例によって調製されてもよい。例えば、免疫原(タンパク質に対する抗原)と担体タンパク質との複合体を調製し、上記モノクローナル抗体の調製に関して上述したのと同じ様式に従って、該複合体により動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体含有物質を回収し、抗体を分離および精製する。
【0174】
動物の免疫化に使用される免疫原と担体タンパク質との複合体に関して、ハプテン(担体上にクロスリンクされ、免疫化に用いられる)に対する抗体が効率的に産生される限り、任意の担体タンパク質、および担体とハプテンとの任意の混合比を用いることができる。例えば、ウシ血清アルブミン、ウシシクログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニン等が、ハプテン1部当たり約0.1部〜約20部、好ましくは約1部〜約5部の重量比でハプテンとカップリングさせてもよい。
【0175】
また、ハプテンと担体をカップリングさせるために種々の縮合剤を使用することができる。例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基またはジチオピリジル基を含む活性エステル試薬等が本発明とともに用途を見出す。縮合物は、単独で、または好適な担体もしくは希釈剤とともに、抗体の産生が可能な動物の部位に投与される。抗体産生能を高めるために、完全または不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。通常、2週間〜6週間毎に1回、全部で約3回〜約10回タンパク質を投与する。
【0176】
ポリクローナル抗体は、上記方法で免疫化した動物の血液、腹水等から回収される。抗血清中の抗体価は、ハイブリドーマ培養物の上清に関して上述したのと同じ様式に従って測定することができる。抗体の分離および精製は、モノクローナル抗体に関して上述したのと同じ免疫グロブリンの分離および精製に従って行うことができる。
【0177】
本明細書において免疫原として用いられるタンパク質は、いずれか特定の種類の免疫原に限定されない。例えば、本発明の癌マーカー(部分的に変更されたヌクレオチド配列を有する遺伝子をさらに含む)が免疫原として用いられてもよい。さらに、タンパク質の断片が使用されてもよい。断片は、これらに限定されないが、遺伝子断片の発現、タンパク質の酵素処理、化学合成を含むいずれの方法によって得られてもよい。
【0178】
III.薬物スクリーニング用途
いくつかの実施形態において、本発明は、薬物スクリーニングアッセイ(例えば、抗癌剤のスクリーニング)を提供する。本発明のスクリーニング法は、MMSETを用いる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、MMSETの発現を変化させる(例えば減少させる)化合物のスクリーニング法を提供する。化合物または薬剤は、例えば、プロモーター領域との相互作用によって、転写を妨げることができる。化合物または薬剤は、MMSETから生成されるmRNAを妨げることができる(例えば、RNA干渉、アンチセンス技術等により)。化合物または薬剤は、MMSETの生物学的活性の上流または下流である経路を妨げることができる。いくつかの実施形態において、候補化合物は、MMSETに対するアンチセンスまたは干渉RNA剤(例えば、オリゴヌクレオチド)である。他の実施形態において、候補化合物は、MMSET制御因子、MMSETの標的(複数可)、またはそれらの異なる発現産物に特異的に結合し、それによって生物学的機能を変化させる(例えば、阻害する)抗体または小分子である。
【0179】
あるスクリーニング法において、候補化合物は、MMSETを発現する細胞に化合物を接触させ、次いで、候補化合物が発現に与える影響を評価することによって、MMSETの発現を変化させる能力について評価される。いくつかの実施形態において、候補化合物がMMSET遺伝子の発現に与える影響は、細胞によって発現されるMMSETのmRNAのレベルを検出することによって評価される。mRNAの発現は、任意の好適な方法によって検出することができる。mRNAの発現を分析するための方法は、当該技術分野において周知であり、これらに限定されないが、RT−PCR、定量(例えば、TaqMan)RT−PCRアッセイ、SAGE、アレイ法、トランスクリプトームシーケンシング、ノーザンブロット等を含む。
【0180】
他の実施形態において、候補化合物がMMSET遺伝子の発現に与える影響は、MMSETによってコードされるポリペプチドのレベルを測定することによって評価される。発現されるポリペプチドのレベルは、本明細書に開示されるものを含むが、これらに限定されない任意の好適な方法によって測定することができる。ポリペプチドレベルを分析する方法は、当該技術分野において周知であり、これらに限定されないが、免疫ブロット法、ELISA、ドットブロット、タンパク質アッセイ、免疫沈降、ビーズベースアッセイ等を含む。
【0181】
具体的には、本発明は、修飾物質、すなわち、MMSETに結合し、例えば、MMSETの発現またはMMSETの活性に対する阻害(または促進)効果を有するか、あるいは、例えば、MMSET基質またはMMSETの制御因子の発現または活性に対して促進または阻害効果を有する候補化合物もしくは試験化合物または薬剤(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、小分子、または他の薬剤)を同定するためのスクリーニング法を提供する。したがって、同定された化合物は、標的遺伝子産物の生物学的機能を生成するため、または正常な標的遺伝子の相互作用を妨げる化合物を同定するために、治療プロトコルにおいて標的遺伝子産物(例えば、MMSET遺伝子)の活性を直接的または間接的に調節するために使用することができる。MMSETの活性または発現を阻害する化合物は、増殖性疾患、例えば、癌(例えば、前立腺癌、乳癌、他の固形腫瘍癌、多発性骨髄腫)の治療において有用である。
【0182】
一実施形態において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物学的活性部分の基質である候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。別の実施形態において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物学的活性部分に結合するかまたはそれらの活性を調節する候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0183】
本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー、ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有する分子のライブラリーであるが、酵素分解に耐性を示すにもかかわらず生物活性を保持する、新規の非ペプチド主鎖を有する、例えば、Zuckennann et al.,J.Med.Chem.37:2678−85[1994])を参照)、空間的に位置指定可能な平行固相または溶液相ライブラリー、逆重畳を必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティクロマトグラフィ選別を用いた合成ライブラリー法を含む、当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における数多くのアプローチのうちのいずれかを用いることによって得ることができる。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリーのアプローチは、ペプチドライブラリーとともに用いるのが好ましく、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー、または低分子化合物ライブラリーに適用される(Lam(1997)Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0184】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該技術分野において、例えば、 DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909[1993]、Erb et al.,Proc.Nad.Acad.Sci.USA 91:11422[1994]、Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678[1994]、Cho et al.,Science 261:1303[1993]、Carrell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33.2059[1994]、Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061[1994]、およびGallop et al.,J.Med.Chem.37:1233[1994]に見ることができる。
【0185】
化合物のライブラリーは、例えば、溶液中(例えば、Houghten,Biotechniques13:412−421[1992])、またはビーズ上(Lam,Nature 354:82−84[1991])、チップ(Fodor,Nature 364:555−556[1993])、細菌または胞子(米国特許第5,223,409号、参照により、本明細書に組み込まれる)、プラスミド(Cull et al.,Proc.Nad.Acad.Sci.USA 89:18651869[1992])、またはファージ上(Scott and Smith,Science 249:386−390[1990]、Devlin Science 249:404−406[1990]、Cwirla et al.,Proc.NatI.Acad.Sci.87:6378−6382[1990]、Felici,J.Mol.Biol.222:301[1991])に存在し得る。
【実施例】
【0186】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を示し、またさらに例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を限定するものであると見なされるべきではない。
【0187】
実験1
前立腺癌組織および細胞株におけるMMSET発現の分析
方法
MMSETおよびEzh2のmRNA検出のためのTaqMan定量PCR
組織検体由来の全RNAをmiRNeasyキット(Qiagen)を用いて抽出し、得られたcDNA試料をSuperScript(商標)II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を用いて調製した。Assay−on−Demandプライマー/プローブ(Applied Biosystems)を用いて定量RT−PCRを行った。MMSETおよびEzh2のmRNAレベルを定量化し、2−ΔΔCT法を用いてGAPDHに正規化した。
【0188】
結果
TaqMan定量リアルタイムPCRにより、切除した前立腺の転移性組織試料において、良性またはPCA組織試料と比較してMMSETおよびEzh2の相対的な発現の増加が示された(図8)。
【0189】
実験2
細胞浸潤に影響を与えるMMSETノックダウン
方法
基底膜マトリックス浸潤アッセイ
浸潤アッセイにはDU145細胞を用いた。いくつかの実験において、2つの異なるMMSET特異的siRNAで細胞をトランスフェクトすることにより、MMSETノックダウンを行った。トランスフェクションから48時間後、24ウェル培養プレートのインサート中に存在する基底膜マトリックス(EC matrix、Chemicon、Temecula,CA)上に細胞を播種した。いくつかの実験において、低分子阻害剤(MCTP39)を用いてMMSETを阻害した。2用量の低分子阻害剤を含むかまたは含まない化学誘引物質として、ウシ胎仔血清を下のチャンバに加えた。48時間後、非浸潤細胞およびECマトリックスを綿棒で穏やかに除去した。チャンバの下側に位置する浸潤細胞を150μlの10%酢酸で処理することにより比色測定で測定し、分光光度計を使用して560nmで吸光度を測定した。
【0190】
結果
siRNA媒介性のMMSETノックダウンは、DU145細胞の浸潤の低下をもたらした(図5)。同様に、基底膜マトリックス浸潤アッセイにおいて、DU145細胞をMMSETの低分子阻害剤で処理することにより浸潤の低下がもたらされた(図7)。
【0191】
実験3
細胞生存率アッセイ
方法
MMSET阻害剤が細胞の生存率に与える作用を調べるために、WST−1細胞生存率アッセイ(Roche)を行った。製造者のプロトコルに従ってWST−1アッセイを行う96時間前に、DMSO中に溶解した異なる用量の小分子で高悪性度の前立腺細胞株DU145を処理した。各実験を8回行い、450nmで吸光度を測定した。
【0192】
結果
MMSETの低分子阻害剤であるMCTP39に関する生存率アッセイの結果を図7に示す。MCTP39のIC50値は<3μMであった。
【0193】
実験4
MMSET阻害剤で処理したまたは未処理の細胞におけるヒストンのメチル化修飾
方法
免疫ブロット解析
DU145細胞を複数用量の小分子阻害剤で96時間インキュベートするか、または本明細書に記載されるようなsiRNA媒介性MMSETノックダウンに供した(例えば、sh1 GGUCCAAAGUGUCGGGUUAまたはsh2 GUCAGUGGAGGAGCGGAAを使用)。Complete Proteinase Inhibitor混合物(Roche、Indianapolis,IN)を含むNP40溶解緩衝液(50mM Tris−HCl、1% NP40、pH7.4、Sigma、St.Louis,MO)中で細胞を均質化した。10マイクログラムの各タンパク質抽出物を試料用緩衝液中で沸騰させ、SDS−PAGEにより分離し、ポリフッ化ビニリデン膜(GE Healthcare)上に移した。ブロッキング溶液中で膜を1時間インキュベートし、以下の抗体を用いて4℃で一晩インキュベートした:抗モノメチル化、ジメチル化、およびトリメチル化H3−27、抗ジメチル化およびトリメチル化H3−k36、ならびに抗トリメチル化H3−K9。TBS−Tで洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体でブロットをインキュベートした。製造者(GE Healthcare)によって記載されるように、化学発光の増強によりシグナルを可視化した。抗H3およびβアクチンを用いてブロットを再度プローブし、ローディングが等しいことを確認した。
【0194】
結果
MMSETのノックダウンは、H3K36のジメチル化の低下をもたらした(図4)。MMSET阻害剤MCTP39を用いたインキュベーションにより、H3K36のジメチル化の用量依存性低下とともに、H3K27のジメチル化、H3K27のトリメチル化、およびH3K36のトリメチル化の用量依存性の低下がもたらされた(図9)。
【0195】
図11〜26は、複数の癌におけるMMSET発現のさらなる特徴付けおよびMCTP39による阻害を示す。MCTP39は、異種移植腫瘍において細胞生存率および腫瘍サイズを減少させた。
【0196】
上記明細書で述べた全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。記載される本発明の方法およびシステムの種々の変更例および変形例が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者には明白であろう。特定の好ましい実施形態と関連させて本発明を記載してきたが、請求されるような本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、関連技術分野の当業者には明白である記載される本発明を実行するための様式の種々の変更例は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の増殖を阻害する方法であって、MMSETを発現する細胞を、前記細胞中のMMSETの少なくとも1つの活性を阻害する薬剤に接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記薬剤は、小分子、siRNA、および抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子は、3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は、癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌細胞は、前立腺癌細胞、前立腺癌細胞前駆体、乳癌細胞、乳癌細胞前駆体、形質細胞、および形質細胞前駆体からなる群から選択される種類のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞は、前立腺癌細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ヒストンH3のリシン36のメチル化を阻害することを含む、細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項8】
前記ヒストンH3のリシン36のメチル化は、ジメチル化からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒストンH3のリシン36のメチル化は、トリメチル化からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害は、MMSETの少なくとも1つの活性を変化させることによって起こる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記MMSETの活性は、MMSETの酵素活性、MMSETの転写レベル、およびMMSETのタンパク質レベルからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記MMSETの酵素活性は、メチル化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞中のMMSETの少なくとも1つの活性を阻害する薬剤を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬剤は、核酸である、請求項13に記載の薬学的化合物。
【請求項15】
前記薬剤は、抗体である、請求項13に記載の薬学的化合物。
【請求項16】
前記薬剤は、小分子である、請求項13に記載の薬学的化合物。
【請求項17】
前記薬剤は、3−ヒドラジニルキノキサリン−2−チオールである、請求項13に記載の薬学的化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−520169(P2013−520169A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553943(P2012−553943)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024436
【国際公開番号】WO2011/103028
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【Fターム(参考)】