説明

MPHOSPH1またはDEPDC1ポリペプチドを発現する癌に対するペプチドワクチン

本発明は、配列番号7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255に記載のアミノ酸配列を有するペプチドのほか、前記のアミノ酸配列を有するペプチドの1、2またはいくつかのアミノ酸が置換、欠失、または付加されたペプチドであって、細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドを提供する。本発明はまた、活性成分としてこれらのペプチドを含む、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)の治療または予防のための薬剤を提供する。本発明のペプチドは、ワクチンとしても用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2006年10月17日に出願した米国仮出願No.60/852,575の恩典を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は生物科学の分野、より具体的には癌治療の分野に関する。特に、本発明は、極めて有効な癌ワクチンとして役立つ新規なペプチド、そして当該ペプチドを含む腫瘍を治療および予防する薬剤に関する。
【背景技術】
【0003】
CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)がMHCクラスI分子に提示される腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識して、腫瘍細胞を溶解させることが証明されている。TAAの最初の例としてのMAGEファミリーの発見以来、多くの他のTAAが、免疫学的方法を用いて発見された(Boon T.(1993)Int J Cancer 54:177-80.;Boon T.et al.(1996)J Exp Med 183:725-9.;van der Bruggen P et al.(1991)Science 254:1643-7.;Brichard V et al.(1993)J Exp Med 178:489-95.;Kawakami Y et al.(1994)J Exp Med 180:347-52.)。それらの一部は、現在免疫療法の標的として、臨床開発中である。今までに発見されたTAAは、MAGE(van der Bruggen P et al.、(1991)Science 254:
1643-7.)、gp100(Kawakami Y et al.(1994)J Exp Med 180:347-52.)、SART(Shichijo S et al.(1998)J Exp Med 187:277-88.)、そして、NY―ESO―1(Chen Y.T.et al.(1997)Proc. Natl. Acd.Sci. USA、94:1914-8.)を含む。一方、腫瘍細胞においてある程度特異的に過剰発現することが示された遺伝子産物は、細胞免疫反応を誘導する標的として認識されることが示されている。この種の遺伝子産物には、p53(Umano Y et al.Br J Cancer(2001)、84:1052-7.)(HER2/neu)(Tanaka H et al.Br J Cancer(2001)、84:94-9.)、CEA(Nukaya I et al.Int. J. Cancer(1999)80、92-7.)などがある。
【0004】
TAAの基礎および臨床研究における著しい進展にもかかわらず、癌の治療に適した現在利用可能なTAA候補は非常に限られた数しかない(Rosenberg SA et al.Nature Med(1998)、4:321-7. Mukherji B. et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA、 Res(1996)、56:2479-83.)。癌細胞において多量に発現され、そしてその発現が癌細胞に限定されるTAAは、免疫療法の標的として有望な候補である。
【0005】
HLA―A24およびHLA―A0201は、日本人および白色人種の集団の一般のHLAアレルである(Date Y et al.(1996)Tissue Antigens 47:93-101.Kondo A et al.(1995)J Immunol 155:4307-12.; Kubo RT et al.(1994)J Immunol 152:3913-24.; Imanishi et al.Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference Oxford University Press, Oxford, 1065 (1992);Williams F et al.(1997)Tissue Antigen 49:129-33.)。従って、これらのHLAアレルによって提示される癌の抗原ペプチドは、日本人および白色人種の患者の癌治療において特に有用性を見いだすことができる。更に、インビトロでの低親和性CTLの誘導は通常、これらのCTLを効果的に活性化する抗原提示細胞(APC)上に生じる高レベルの特定ペプチド/MHC複合体の高濃度のペプチドに曝すことでなしうることが知られている(Alexander-Miller et al.(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:4102-7.)。
【0006】
cDNAマイクロアレイ技術の近年の発達の結果、正常細胞と比較した悪性細胞の遺伝子発現の包括的なプロファイルの構築を可能にした(Okabe、H.et al.(2001)Cancer Res.61、2129-37.Lin YM.et al.Oncogene(2002)、21;4120-8.Hasegawa S.et al.(2002)Cancer Res 62:7012-7.)。この方法は、癌細胞の複雑な性質および発癌の機序の理解を可能にし、腫瘍において無秩序に発現する遺伝子の識別を容易にする(Bienz M.et al.Cell(2000)103、311-20.)。癌において上方制御さていると確認された転写産物より、MPHOSPH1(M期リン蛋白1;GenBankアクセッション番号NM_016195;配列番号:1、2)、そして、DEPDC1(DEP領域含有1;GenBank Accession番号BM683578)、が近年発見された。WO2004/031413、WO2006/085684およびWO2,007/013,665を参照(全コンテンツが本願明細書において引用されたものとする)。DEPDC1は、2つの異なるトランスクリプショナルバリアント(DEPDC1 V1(配列番号:3、4)およびDEPDC1 V2(配列番号:5、6))として記載されている。これらの遺伝子は、解析されたさまざまな癌組織の腫瘍細胞において特異的に上方制御されることを示した(下記参照);しかしながら、ノーザンブロット解析は、これらの遺伝子産物が正常な重要臓器では見られないことを示す(PCT/JP2006/302684を参照)。MPHOSPH1およびDEPDC1由来の抗原性ペプチドが、それらの抗原を発現している腫瘍細胞を殺傷するという有用性を見出すことができるという点で、これらの遺伝子は本発明者らにとって特別な興味のあるものである。
【0007】
例えばM―VACのような細胞障害性の薬剤によってしばしば重篤な副作用が生じるため、よく検討した作用機構を基に新規な標的分子を注意して選択することが負の副作用のリスクを最小限にする有効な抗癌剤の開発において重要であることは明白である。この目的に向けて、発明者は、以前にさまざまな癌および正常な人体組織の発現プロファイル解析を行い、癌において特異的に過剰発現する複数の遺伝子を見出した(Lin YM、et al.Oncogene.2002 Jun 13;21:4120-8.; Kitahara O、et al.Cancer Res. 2001 May 1;61:3544-9.; Suzuki C, et al., Cancer Res. 2003 Nov 1;63:7038-41.; Ashida S, Cancer Res. 2004 Sep 1;64:5963-72.; Ochi K, et al., Int J Oncol. 2004 Mar;24(3):647-55.; Kaneta Y, et al., Int J Oncol. 2003 Sep;23:681-91.; Obama K, Hepatology. 2005 Jun;41:1339-48.; Kato T, et al., Cancer Res. 2005 Jul 1;65:5638-46.; Kitahara O, et al., Neoplasia. 2002 Jul-Aug;4:295-303.; Saito-Hisaminato A et al., DNA Res 2002, 9: 35-45.)。これらの中で、MPHOSPH1(In house No.C2093)、そして、DEPDC1(In house No.B5860N)は、さまざまな癌において過剰発現する遺伝子と同定された。特に、MPHOSPH1は膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、軟組織腫瘍において過剰発現することが、確認された。
同様に、DEPDC1は膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、SCLC、軟組織腫瘍において過剰発現することが、確認された。
【0008】
MPHOSPH1は、以前に、特異的にG2/M期移行でリン酸化される、プラス方向誘導キネシン関連のタンパク質として特徴づけられるタンパク質の1つとして同定された(Abaza A et al.J Biol Chem 2003、278:27844-52.)。より詳細には、MPHOSPH1は、以前、細胞分裂において重要な役割を果たす、プラス方向誘導分子モーターであり、HeLa細胞において後期から終期の間に、紡錘体の中心に集積すると証明された(Abaza A et al. J Biol Chem 2003、278:27844-52;Kamimoto T et al.J Biol Chem 2001、276:37520-8)。MPHOSPH1cDNAは、下記3つの領域から成る1780アミノ酸タンパク質をコードする:NH2―kinasinモータードメイン(NH2-kinasin motor domain)、中心高次コイル―軸ドメイン(central coiled coil-stalk domain)およびC球状尾部ドメイン(C-globular tail domain)。同時に、このデータは、MPHOSPH1がNH2タイプキネシン関連のタンパク質であることを示唆する。
【0009】
DEPDC1に関しては、その機能は、未だ不明である。このタンパク質に含まれるDEPドメインは、Dishevelled、Egl―10およびPleckstrinにおいても見られる。ショウジョウバエのdishevelledのDEPドメインは、平面極性欠損の救済およびJNKシグナリングの誘導において欠くことのできない役割を果たしている;それにもかかわらず、ヒトにおけるその機能は、まだ明らかにされていない。
しかしながら、PCT/JP2006/302684の中に開示されているように、DEPDC1のsiRNAは、癌細胞の増殖を抑制することができる。これらの結果は、DEPDC1が多くの癌細胞の増殖において重要な役割を果たすことを証明する。
【発明の概要】
【0010】
上記の如く、MPHOSPH1(M期リン蛋白1)およびDEPDC1(DEPドメイン含有1)はさまざまな癌において上方制御されることが確認されている。より詳細には、これらの遺伝子は、ゲノムワイドなcDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルを使用して確認された。上記のように、MPHOSPH1およびDEPDC1の発現は肺癌および膀胱癌を含むさまざまな腫瘍細胞において特異的に上方制御されることを示されている。表1に示されるように、MPHOSPH1の発現は、31の膀胱癌中30、36の乳癌中8、18の子宮頸癌中18、17の胆管細胞癌中5、31のCML中25、11の結腸直腸癌中6、14の胃癌中6、5つのNSCLCs中5、7つのリンパ腫中7、10の骨肉腫中6、22の前立腺癌中7、18の腎癌中10および21の軟組織腫瘍中15において有意に上昇することが示された。同時に、DEPDC1の発現は、表1に示されるように、25の膀胱癌中23、13の乳癌中6、12の子宮頸癌中12、6の胆管細胞癌中6、4のCML中3、4の結腸直腸癌中2、6のNSCLCs中6、7のリンパ腫中7、14の骨肉腫中10、24の前立腺癌中11、14のSCLCs中14および31の軟組織腫瘍中22において有意に上昇することを示した。
【0011】
本発明は、少なくとも一つには、対応する分子に特異的な細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導する能力を備えているこれらの遺伝子(MPHOSPH1およびDEPDC1)の遺伝子産物の特定のエピトープペプチドを同定したことに基づく。以下に詳細に述べられるように、健常者ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)はMPHOSPH1またはDEPDC1由来のHLA―A*2402およびHLA―A*0201結合性候補ペプチドを使用して刺激された。CTLクローンおよび/またはラインは、それぞれの候補ペプチドでパルスされたHLA―A24またはHLA―A2陽性標的細胞に対する特異的な細胞障害性を有するものが樹立された。これらの結果は、これらのペプチドが、HLA―A24またはHLA―A2拘束性エピトープペプチドでありMPHOSPH1またはDEPDC1を発現する細胞に対して有効な特異性免疫応答を誘導することができるということを示す。
【0012】
したがって、本発明は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)を治療または予防する方法を提供する。当該方法はそれを必要とする対象に本発明のMPHOSPH1および/またはDEPDC1ポリペプチドを投与するステップを含む。当該ペプチドの投与は、抗腫瘍免疫を誘導結果となる。このように、本発明は対象に抗腫瘍免疫を誘導する方法を提供する。当該方法は例えば対象にMPHOSPH1および/またはDEPDC1ポリペプチドだけでなくMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)を治療または予防するためのMPHOSPH1および/またはDEPDC1ポリペプチドを含む医薬品組成物を投与するステップを含む。癌には例えば、限定するものではないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍が含まれる。
【0013】
すなわち、本出願は、以下の態様およびそれらのいかなる組み合わせも含む。
[1]
細胞障害性T細胞誘導能を有する単離ペプチドであって、配列番号:2、4または6のアミノ酸配列由来である前記ペプチド。
[2]
配列番号:7、8および12のアミノ酸配列を含むペプチドからなるグループから選択される約15アミノ酸未満の単離ペプチド、または細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、以下を含む前記ペプチド:
配列番号:7、8および12からなるグループから選択され、1、2またはいくつかのアミノ酸が、置換、欠失、または、付加されたアミノ酸配列。
[3]
細胞障害性T細胞誘導能を有する、N末端からの第2位のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニンまたはトリプトファンである〔2〕に記載のペプチド。
[4]
細胞障害性T細胞誘導能を有する、C末端アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンである〔2〕に記載のペプチド。
[5]
配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、253、254および255、のアミノ酸配列を含むペプチドからなるグループから選択された約15アミノ酸未満の単離ペプチド、または細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、以下を含む前記ペプチド:
配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、253、254および255、からなるグループから選択され、1、2またはいくつかのアミノ酸が、置換、欠失、または、付加されたアミノ酸配列。
[6]
細胞障害性T細胞誘導能を有する、N末端からの第2位のアミノ酸は、ロイシンまたはメチオニンである〔5〕に記載のペプチド。
[7]
細胞障害性T細胞誘導能を有する、C末端アミノ酸は、バリンまたはロイシンである〔5〕に記載のペプチド。
[8]
DNAが〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドをコードするベクター。
[9]
配列番号:1、3および/または5の遺伝子の過剰発現と関連した疾患を治療または予防するための医薬組成物であって、前記組成物が〔1〕から〔7〕のいずれか一つのペプチドを一つ以上含む医薬組成物。
[10]
疾患が癌である〔9〕に記載の医薬組成物。
[11]
癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される〔10〕に記載の医薬組成物。
[12]
〔1〕から〔7〕のいずれか一つのペプチドおよびHLA抗原から成る複合体を表面に提示するエキソソーム。
[13]
HLA抗原がHLA―A24である、〔12〕に記載のエキソソーム。
[14]
HLA抗原がHLA―A2402である、〔13〕に記載のエキソソーム。
[15]
HLA抗原がHLA―A2である、〔12〕に記載のエキソソーム。
[16]
HLA抗原がHLA―A0201である、〔13〕に記載のエキソソーム。
[17]
〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドを抗原提示細胞と接触させる工程を含む、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法。
[18]
〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドとT細胞を接触させることにより、細胞障害性T細胞を誘導する方法。
[19]
抗原提示細胞に〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入する工程を含む、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法。
[20]
請求項1から7のいずれかのペプチドとT細胞を接触させることにより、または、請求項1から7のいずれかのHLA―A24またはHLA―A2のペプチドと結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を導入することにより、誘導される単離された細胞障害性T細胞
[21]
HLA抗原と〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドとで形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
[22]
〔17〕の方法により誘導される、〔21〕に記載の抗原提示細胞。
[23]
活性成分として〔1〕から〔7〕のいずれかのペプチドを含む、配列番号:1、3および/または5の遺伝子を発現している細胞の細胞増殖を阻害するためのワクチン。
[24]
細胞が癌細胞である、〔23〕に記載のワクチン。
[25]
癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される、〔24〕に記載のワクチン。
[26]
HLA抗原がHLA―A24またはHLA―A2である対象への投与のために調製される、〔23〕に記載のワクチン。
[27]
対象に〔1〕から〔7〕のいずれか一つ以上のペプチド、その免疫学的活性断片、または前記ペプチドまたは活性断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを投与することを含む、配列番号:1、3および/または5の遺伝子の過剰発現と関連した疾患を治療または予防する方法。
[28]
疾患が癌である、〔27〕に記載の方法。
[29]
癌が膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される〔28〕に記載の方法。
【0014】
あるいは、本発明は、〔19〕の方法によって作製される抗原提示細胞とT細胞を接触させる段階を含む細胞障害性T細胞を誘導する方法にも関する。
【0015】
以下の詳細な説明が添付の図および実施例と連動して読まれるときに、これらの、そしてまた他の、目的および発明の特徴はより十分に明らかになる。
しかしながら、前述の本発明の開示および以下の詳細な説明は好適な態様であって、本発明の、または本発明の他の態様にも限定されものではないことを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは、IFN―γELISPOT検査法によるエピトープペプチドのスクリーニングの結果を表しており、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)がIFN―γの有力な生産体であることを証明する。MPHOSHP1由来のそれらのペプチドに対するCTLは、下記の実施例の「材料および方法」部分に記載されているプロトコールに従って生成された。結果として検出可能な特異的なCTL活性を有するCTLが示された。特に、MPHOSPH1―A24―9―278によって刺激されたウェルナンバー#4の細胞は、コントロールと比較して、ペプチドをパルスした標的細胞を認識して強力なIFN―ガンマを産生することを示した。図1Bは、限界希釈後(MPHOSPH1―A24―9―278 CTLクローン)、CTLクローンのスクリーニングのIFN―γELISPOT検査法の結果を表す。陽性ウェルの細胞は拡張され、限界希釈された。表された結果に示されるように、ペプチドパルスをしていない標的に対する活性と比較して、ペプチドパルスされた標的に対してより高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンが樹立された。
【図2】図2Aはエピトープペプチド細胞障害性のスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表し、MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8)がIFN―γの有力な生産体であることを証明する。MPHOSHP1由来のそれらのペプチドに対するCTLは、下記の実施例の「材料および方法」部分に記載されているプロトコールに従って生成された。結果として検出可能な特異的なCTL活性を有するCTLが示される。特に、MPHOSPH1―A24―10―278によって刺激されたウェルナンバー#8の細胞は、コントロールと比較して、強力なIFN―ガンマ産生を示した。図2Bは、限界希釈(MPHOSPH1―A24―10―278 CTLクローン)の後、CTLクローンのスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表す。陽性ウェルの細胞は拡張され、そして、限界希釈された。結果が示すように、ペプチドパルスをしない標的に対する活性と比較して、MPHOSPH1―A24―10―278をパルスした標的に対するより高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンが樹立された。
【図3】図3Aは、MPHOSPH1―A24―9―278によって刺激されたCTLクローンの樹立を表す(配列番号:7)。このCTLクローンが、MPHOSPH1―A24―9―278をパルスした標的細胞(A24LCL)に対して高い特異的なCTL活性を示したが、ペプチドをパルスしない同じ標的細胞(A24LCL)に対しては著しいCTL活性を示さないことを証明した。図3Bは、MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8)によって刺激されたCTLクローンの確立を示す。このCTLクローンが、MPHOSPH1―A24―10―278によってパルスされた標的細胞(A24LCL)に対して高い特異的なCTL活性を示したが、ペプチドをパルスしない同じ標的細胞(A24LCL)に対しては著しいCTL活性を示さなかった。Rは、レスポンダーを意味する:CTLクローン。Sは、スティミュレーターを意味する:ペプチドパルスされたA24―LCL(1x10/ウェル)。
【図4】図4は、HLA―A24を有する標的細胞表面上におけるMPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)の発現を表す。全長MPHOSPH1遺伝子とHLA―A*2402分子を両方トランスフェクトしたCOS7に対する特異的なCTL活性は、MPHOSPH1―A24―9―278によっておこされたCTLクローンをエフェクター細胞として使用して評価された。全長MPHOSPH1によってトランスフェクトするがHLA―A*2402はしないCOS7、およびHLA―A*2402によってトランスフェクトするが全長MPHOSPH1はしないCOS7は、コントロールとして調整された。CTLクローンは、MPHOSPH1およびHLA―A24の両方によりトランスフェクトしたCOS7に対して、高い特異的なCTL活性を示した。しかし、MPHOSPH1もHLA―A24もトランスフェクトさせないCOS7に対しては著しい特異的なCTL活性は示さなかった。Rは、レスポンダーを意味する:CTLクローン。Sは、スティミュレーターを意味する:COS7トランスフェクタント(1x10/ウェル)。
【図5】図5は、MPHOSPH1を内因的に発現している膀胱癌細胞株に対するCTL活性を表す。MPHOSPH1―A24―9―278ペプチドによって誘導されて確立されたCTLクローンは、MPHOSPH1を内因的に発現している腫瘍細胞を認識した。HT1376、RT―4およびJ82細胞は、内因的にそれぞれMPHOSPH1を発現した。CTLクローンは、HLA―A*2402遺伝子型を有するHT1376に対するIFN―ガンマの産生を示したが、HLA―A*2402遺伝子型を有しないRT―4およびJ82に対しては反応を示さなかった。
【図6】図6は、MPHOSPH1―A24―9―278ペプチドを用いたインビボの免疫原性解析を表す。IFA複合ペプチドは、皮下に0日目および7日目にBALB/cマウスに注射された。ワクチン接種されたマウスの脾細胞は14日目に収集されてレスポンダー細胞として用いられ、MPHOSPH1―A24―9―278ペプチドをパルスされた1x10のRLmale1細胞はIFN―γELISPOTアッセイのスティミュレーターとして用いられた。スポットフォーミングカウント(SFC)は、それぞれのマウスのケースで示された;5匹のマウス(Ani1〜Ani5)はエピトープペプチドをワクチン接種され、3匹のマウス(nega1〜nega3)は陰性コントロールとしてモックIFAエマルジョンをワクチン接種された。
【図7】図7はエピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表しており、MPHOSPH1―A2―9―282(配列番号:9)、MPHOSPH1―A2―9―638(配列番号:10)およびMPHOSPH1―A2―10―1714(配列番号:11)が強力なIFN―ガンマ産生能を有することを証明する。MPHOSHP1由来のそれらのペプチドに対するCTLは、以下に述べる実施例の「材料およびMethods」部分に記載されているプロトコールに従って生成された。結果として検出可能な特異的なCTL活性を有するCTLが示される。特に、図7Aは、MPHOSPH1―A2―9―282によって刺激されたウェルナンバー#1および#5の細胞が、コントロールと比較すると、標的細胞にパルスしたペプチドを認識するのに十分な強力なIFN―ガンマの産生を示したことを証明する。図7Bは、MPHOSPH1―A2―9―638によって刺激されたウェルナンバー#8の細胞が、コントロールと比較して、ペプチドをパルスした標的細胞を認識するのに十分な強力なIFN―ガンマの産生を示したことを証明する。図7Cは、MPHOSPH1―A2―10―1714によって刺激されたウェルナンバー#4の細胞が、コントロールと比較して、ペプチドをパルスした標的細胞を認識するのに十分な強力なIFN―ガンマを産生することを示したことを証明する。
【図8】図8は、MPHOSPH1―A02―9―282(配列番号:9)、MPHOSPH1―A02―9―638(配列番号:10)およびMPHOSPH1―A02―10―1714(配列番号:11)によって刺激されたCTLラインの樹立を表す。陽性ウェルの細胞は拡張され、そして、結果が示すように、ペプチドパルスをしない標的に対する活性と比較して、MPHOSPH1―A02―9―282をパルスした標的(A)、MPHOSPH1―A02―9―638をパルスした標的(B)またはMPHOSPH1―A02―10―1714をパルス化した標的(C)に対する高い特異的なCTL活性を有するCTLのラインが樹立された。Rは、レスポンダーを意味する:CTLライン。Sは、スティミュレーターを意味する:ペプチドパルス化されたT2(1x10/ウェル)。
【図9】図9Aは、限界希釈(MPHOSPH1―A2―9―282 CTLクローン)後のCTLクローンのスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表す。陽性ウェルの細胞は拡張され、そして限界希釈された。表された結果が示すように、ペプチドパルスをしない標的に対する活性と比較して、MPHOSPH1―A2―9―282をパルスした(配列番号:9)標的に対する高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンが樹立された。図9Bは、MPHOSPH1―A02―9―282によって刺激されたCTLクローンの樹立を表す。当該CTLクローンは、MPHOSPH1―A2―9―282によってパルスした標的細胞(T2)に対する高い特異的なCTL活性を示したが、ペプチドがパルスされない同じ標的細胞(T2)に対しては著しいCTL活性を所有しなかったことを証明した。Rは、レスポンダーを意味する:CTLクローン。Sは、スティミュレーターを意味する:ペプチドパルス化されたT2(1x10/ウェル)。
【図10】図10AはエピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表しており、DEPDC1―A24―9―294(配列番号:12)がIFN―γの強力な生産体であることを示す。DEPDC1由来のそれらのペプチドに対するCTLは、以下に述べる実施例の「材料および方法」部分に記載されているプロトコールに従って生成された。結果として検出可能な特異的なCTL活性を示すCTLが示された。コントロールと比較して、DEPDC1―A24―9―294によって刺激されたウェルナンバー#10の細胞は、ペプチドをパルスした標的細胞を認識して強力なIFN―ガンマを産生することを示した。図10Bは、限界希釈(DEPDC1―A24―9―294 CTLクローン)後の、CTLクローンのスクリーニングのためのIFN―γELISPOTアッセイの結果を表す。陽性ウェルの細胞は拡張され、そして、限界希釈された。結果が示すように、ペプチドパルスをしない標的に対する活性と比較して、DEPDC1―A24―9―294をパルスした標的に対する高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンが樹立された。
【図11】図11は、DEPDC1―A24―9―294(配列番号:12)によって刺激されたCTLクローンの樹立を表す。このCTLクローンはDEPDC1―A24―9―294によってパルスされた標的細胞(A24LCL)に対して高い特異的なCTL活性を示したが、それはペプチドをパルスしない同じ標的細胞(A24LCL)に対しては、有意なCTL活性を示さなかった。Rは、レスポンダーを意味する:DEPDC―A24―9―294 CTLクローン。Sは、スティミュレーターを意味する:ペプチドパルスされたA24―LCL(1x10/ウェル)。
【図12】図12は、HLA―A24を有する標的細胞表面上のDEPDC1―A24―9―294(配列番号:12)の発現を示す。全長DEPDC1遺伝子およびHLA―A2402分子の両者によってトランスフェクトしたCOS7に対する特異的なCTL活性は、DEPDC1―A24―9―294によって上がるCTLクローンをエフェクター細胞として用いて検定した。全長DEPDC1によってトランスフェクトしたが、HLA―A2402はしないCOS7、およびHLA―A2402をトランスフェクトしたが全長DEPDC1はしないCOS7は、コントロールとして調整された。樹立されたCTLクローンは、DEPDC1およびHLA―A24の両者によってトランスフェクトしたCOS7に対して、高い特異的なCTL活性を示した。しかしながら、DEPDC1もHLA―A24によってもトランスフェクトしないCOS7に対しては、有意な特異的CTL活性を示さなかった。Rは、レスポンダーを意味する:DEP―A24―9―294 CTLクローン。Sは、スティミュレーターを意味する:COS7トランスフェクタント(1x10/ウェル)。
【図13】図13は、DEPDC1を内因的に発現している膀胱癌細胞に対するCTL活性を示す。DEPDC1―A24―9―294ペプチドによって誘導された樹立したCTLクローンは、DEPDC1を内因的に発現している腫瘍細胞を認識した。HT1376、RT―4およびJ82細胞は、それぞれが、内因的にDEPDC1を発現した。CTLクローンは、HLA―A*2402遺伝子型を有するHT1376に対するIFN―ガンマ産生を示したが、HLA―A*2402遺伝子型を有しないRT―4およびJ82に対しては反応しないことを示した。
【図14】図14は、DEPDC1―A24―9―294ペプチドを用いたインビボの免疫原性解析を示す。IFA複合ペプチドは、0日目および7日目にBALB/cマウスに皮下注射された。14日目に、ワクチン接種を受けたマウスの脾細胞は集められて応答細胞として用いられ、DEPDC1―A24―9―294ペプチドをパルスした1x10のRLmale1細胞は刺激因子細胞としてIFN―ガンマELISPOTアッセイに用いられた。スポット形成カウント(SFC)は、それぞれのマウスで示された;5匹のマウス(Ani1〜Ani5)はエピトープペプチドをワクチン接種され、そして、2匹のマウス(nega1およびnega2)は陰性対照としてMock IFAエマルジョンを注入された。
【図15】図15は、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN―ガンマELISPOTアッセイによる、DEPDC1―A02―10―644―10―575―10―506―10―765―10―395―10―224―9―297―10―296および―10―302の強力なIFN―ガンマ生産を示す。DEPDC1由来のそれらのペプチドに対するCTLは、「材料および方法」に記載されている方法で生成された。DEPDC1―A02―10―644で刺激されたウェルナンバー#4と#7の細胞、DEPDC1―A02―10―575で刺激されたウェルナンバー#2の細胞、DEPDC1―A02―10―506による#7の細胞、DEPDC1―A02―10―765による#1の細胞およびDEPDC1―A02―10―395による、#1の細胞、DEPDC1―A02―10―224による#1と#2の細胞、DEPDC1―A02―9―297による#4の細胞、DEPDC1―A02―10―296による#3と#4の細胞およびDEPDC1―A02―10―302による#2、#3、#5および#7の細胞は、コントロールと比較して有力なIFN―ガンマ生産を示した。
【図16】図16は、DEPDC1―A02―10―296ペプチドによって生成されたCTLラインのIFN―ガンマ産生を示す。DEPDC1―A02―10―296ペプチドによって高められ樹立したCTLラインは、強力なIFN―ガンマ産生活性を有する。それは、ペプチドパルスされた標的細胞に対してIFN―ガンマ産生を示したが、ペプチドをパルスしない標的に対しては、示さなかった。標的細胞は、細胞表面でHLA―A2分子を発現するT2細胞を用いた。
【図17】図17は、DEPDC1およびHLA―A2分子を内因的に発現している標的に対する、CTL活性を示す。DEPDC1―A02―10―296ペプチドにより生成されて樹立したCTL株がDEPDC1V2およびHLA―A2を内因的に発現した標的細胞に対してIFN―ガンマ産生活性を有したことは、上方パネルにおいて示された。このDEPDC1―A02―10―296ペプチドを用いたケースは、下方パネルに示された。DEPDC1V1―9―674またはDEP―9―462のペプチドパルスの処理によるHLA―A2のみ発現する標的細胞およびDEPDC1V2だけを発現する標的細胞は、陰性対照として調整された。標的細胞は、HLA―A2またはモックを安定的に発現するHEK293トランスフェクタントより調整された。
【図18】図18は、症例2における抗原発現を示す。症例2において、MPHOSPH1およびDEPDC1の両者が、強く発現された。従って、MPHOSPH1およびDEPDC1由来の2種類のエピトープペプチドがワクチン接種された。
【図19】図19は、症例2における膀胱癌の局所再発の臨床評価を示す。症例2は、RECIST基準によるとSD評価であった。
【図20】図20は、症例3の抗原発現を示す。症例3において、DEPDC1が強く発現された。従って、DEPDC1由来のエピトープペプチドを単独でワクチン接種した。
【図21】図21は、症例3の転移肺の右葉に対する臨床評価を示す。この進行率は、ワクチン接種の後低下した。とりわけ、腫瘍のサイズは、第3コース後に減少した。
【図22】図22は、症例3の転移肺の左葉に対する臨床評価を示す。この進行率は、ワクチン接種の後低下した。特に、腫瘍のサイズは、第3コース後に減少した。
【図23】図23は、症例3における抗腫瘍効果を示す。転移性腫瘍の進行率は、ワクチン接種の後低下した。
【図24】図24は、症例3の特異的なCTL反応を示す。特異的なCTL反応がワクチン接種の後強く示された。
【図25】図25は、症例4の抗原発現を示す。症例4において、MPHOSPH1およびDEPDC1が発現された。従って、MPHOSPH1およびDEPDC1由来の2種類のエピトープペプチドがワクチン接種された。
【図26】図26は、症例4の膀胱癌の局所再発のための臨床評価を示す。腫瘍サイズは、第1コースのワクチン接種後RECIST基準に基づくと20%減少した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本明細書で用いられる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の単語は、とくに別段の明示がない限り、「少なくとも一つ」を意味する。
【0018】
別途定められない限り、本願明細書において用いられるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
新しいTAA、特に、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するTAAの同定により、様々な型の癌におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床での応用のさらなる進歩が保証される(Boon T et al.(1996)J Exp Med 183:725-9.van der Bruggen P et al.((1991)Science 254):1643-7.Brichard V et al.((1993)J Exp Med 178):489-95.Kawakami Y et al.((1994)J Exp Med 180):347-52.Shichijo S et al.((1998)J Exp Med 187):277-88.Chen YT et al.(1997)Proc.Natl.Acd.Sci.USA、94:1914-8.Harris CC((1996)J Natl Cancer Inst 88):1442-55.Butterfield LH et al.((1999)Cancer Res 59):3134-42.Vissers JL et al.((1999)Cancer Res 59):5554-9.van der Burg SH et al.((1996)J. Immunol 156):3308-14.Tanaka F et al.((1997)Cancer Res 57):4465-8.Fujie T et al.((1999)Int J Cancer 80):169-72. Kikuchi M et al.((1999)Int J Cancer 81):459-66.Oiso M et al.((1999)Int J Cancer 81):387-94)。
上記の如く、MPHOSPH1(M期リン蛋白1;GenBankアクセッション番号NM_016195;配列番号:1、2)およびDEPDC1(DEP領域含有1;GenBankアクセッション番号:BM683578)、特に、その2つのバリアント(DEPDC1V1(配列番号:3、4)およびDEPDC1V2(配列番号:5、6)は、以前、cDNAマイクロアレイ技術を用いて、さまざまな癌において過剰発現するものとして同定された。MPHOSPH1は、以前G2/M移行で特異的にリン酸化されるタンパク質のうちの1つとして同定され、プラス方向誘導キネシン関連のタンパク質として特徴づけられた(Abaza A et al. J Biol Chem 2003、278:27844-52.)。特に、MPHOSPH1は、以前、細胞分裂において重要な役割を果たすプラス方向誘導分子モーターであり、HeLa細胞の終期までの後期の間に、紡錘体の中心部に集積すると実証された(Abaza A et al. J Biol Chem 2003、278:27844-52; KamimotoT et al. J Biol Chem 2001、276:37520-8.)。
MPHOSPH1のcDNAは、3つの領域、:NH2―kinasinモータードメイン(NH2-kinasin motor domain)、中心高次コイル―軸ドメイン(central coiled coil-stalk domain)およびC球状尾部ドメイン(C-globular tail domain)、から成る1780アミノ酸のタンパク質をコードする。これらのデータは、MPHOSPH1がNH2タイプキネシン関連のタンパク質であることを示唆する。
【0020】
DEPDC1タンパク質の機能は、いまだ明らかでない。このタンパク質に含まれるDEP領域はDishevelled、Egl―10およびPleckstrinにおいて見られる。特に、ショウジョウバエのdishevelledのDEPドメインは、平面極性欠損の救済およびJNKシグナリングの誘導において欠くことのできない役割を果たしている;にもかかわらず、ヒトにおけるその機能は、まだ明らかにされていない。しかしながら、PCT/JP2006/302684に開示されているように、DEPDC1(In House No.:B5860N)は、DEPDC1V1およびV2に対応するそれぞれ12と11のエキソンからなる2つの異なるトランスクリプショナルバリアントを有する。V1のエキソン8における変異が認められており、そして、他の残りのエキソンは両方のバリアントに共通であることが見いだされた。V2異型は、V1のエキソン8を有しないが、最後のエキソン内で同じ終止コドンを生成する。B5860NV1およびB5860NV2バリアントの全長cDNAシーケンスは、それぞれ5318のおよび4466のヌクレオチドから成る。これらのバリアントのORFはそれぞれのエキソン1内で始まる。最終的に、V1およびV2の転写産物は、それぞれ811および527のアミノ酸をコードする。siRNAは癌細胞の増殖を抑制した。これらの結果はDEPDC1が殆どの癌細胞の増殖において重要な役割を果たしていることを示す。
【0021】
PCT/JP2006/302684に開示されているように、MPHOSPH1およびDEPDC1は、膀胱癌においては過剰発現するが、正常組織では軽微な発現のみ示す。加えて、これらの遺伝子は、細胞増殖に関連した重要な機能を有するとされた。
【0022】
本発明において、MPHOSPH1またはDEPDC1由来のペプチドは、日本人および白色人種の集団において共通に見いだされるHLAアレルであるHLA―A24およびHLA―A2によって拘束されたTAAエピトープとなることを示す。とくに、HLA―A24およびHLA―A2へのそれらの結合能を用いて、MPHOSPH1またはDEPDC1由来のHLA―A24およびHLA―A2結合ペプチドの候補が同定された。これらのペプチドを負荷された樹状細胞(DCs)によるT細胞のインビトロ刺激の後、CTLは、MPHOSPH1―A24―9―278(IYNEYIYDL(配列番号:7)、MPHOSPH1―A24―10―278(IYNEyIYDLF(配列番号:8)、MPHOSPH1―A2―9―282(YIYDLFVPV(配列番号:9)、MPHOSPH1―A2―9―638(RLAIFKDLV(配列番号:10)、MPHOSPH1―A2―10―1714(TMSSsKLSNV(配列番号:11)、DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12)、DEPDC1―A02―10―644(SLMIhTFSRC(配列番号:240)、DEPDC1―A02―10―575(SLLPaSSMLT(配列番号:241)、DEPDC1―A02―10―506(QLCRsQSLLL(配列番号:243)、DEPDC1―A02―10―765(KQFQkEYPLI(配列番号:244)、DEPDC1―A02―10―395(IMGGSCHNLI(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(NMANtSKRGV(配列番号:253)、DEPDC1―A02―9―297(ELFVNILGL(配列番号:226)、DEPDC1―A02―10―296(YELFvNILGL(配列番号:254)、DEPDC1―A02―10―301(NILGlLQPHL(配列番号:255)、DEPDC1―A2―9―589(LLQPHLERV(配列番号:192)、DEPDC1―A2―9―619(LLMRMISRM(配列番号:195)、DEPDC1―A2―9―290(LLTFEYYEL(配列番号:197)、DEPDC1―A2―9―563(RLCKSTIEL(配列番号:209)、DEPDC1―A2―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225)、DEPDC1―A2―10―674(FLMDhHQEIL(配列番号:228)およびDEPDC1―A2―10―302(ILVVcGYITV(配列番号:230)を用いて、成功裡に樹立された。これらのCTLは、ペプチドパルスされたA24LCLおよびT2細胞に対して、強力な細胞障害活性を示した。さらにまた、これらの細胞由来のCTLクローンも、それぞれ、MPHOSPH1またはDEPDC1を発現しているHLA―A24またはHLA―A2陽性細胞に対して特異的な細胞障害性を示した。しかしながら、これらのCTLクローンはHLA―A24、HLA―A2、MPHOSPH1およびDEPDC1のペプチドのうちの1つのみ発現する細胞に対しては、細胞障害活性を示さなかった。同時に、これらの結果は、MPHOSPH1およびDEPDC1の癌細胞に対するTAAとしての有用性を示唆し、そして、MPHOSPH1―A24―9―278(IYNEYIYDL(配列番号:7))、MPHOSPH1―A24―10―278(IYNEyIYDLF(配列番号:8))、MPHOSPH1―A2―9―282(YIYDLFVPV(配列番号:9))、MPHOSPH1―A2―9―638(RLAIFKDLV(配列番号:10))、MPHOSPH1―A2―10―1714(TMSSsKLSNV(配列番号:11))、DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))、DEPDC1―A02―10―644(SLMIhTFSRC(配列番号:240))、DEPDC1―A02―10―575(SLLPaSSMLT(配列番号:241))、DEPDC1―A02―10―506(QLCRsQSLLL(配列番号:243))、DEPDC1―A02―10―765(QFQkEYPLI(配列番号:244))、DEPDC1―A02―10―395(IMGGSCHNLI(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(NMANtSKRGV(配列番号:253))、DEPDC1―A02―9―297(ELFVNILGL(配列番号:226))、DEPDC1―A02―10―296(YELFvNILGL(配列番号:254))、DEPDC1―A02―10―301(NILGlLQPHL(配列番号:255))、DEPDC1―A2―9―589(LLQPHLERV(配列番号:192))、DEPDC1―A2―9―619(LLMRMISRM(配列番号:195))、DEPDC1―A2―9―290(LLTFEYYEL(配列番号:197))、DEPDC1―A2―9―563(RLCKSTIEL(配列番号:209))、DEPDC1―A2―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))、DEPDC1―A2―10―674(FLMDhHQEIL(配列番号:228))およびDEPDC1―A2―10―302(ILVVcGYITV(配列番号:230))は、HLA―A24またはHLA―A2に拘束されるそれぞれのTAAのエピトープペプチドである。これらの抗原が多くの癌において過剰発現して、腫瘍細胞増殖と関係しているので、それらは癌に対する免疫療法の標的として有用性を提供する。例えば癌には、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が含まれるが限定するものではない。
【0023】
したがって、本発明は更に、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した対象における疾患(例えば癌)を治療または予防する方法であって約40アミノ酸未満、しばしば、約20アミノ酸未満、通常は約15アミノ酸未満であり、かつ配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255のアミノ酸配列を含む免疫原性ペプチドを、必要としている対象に投与する段階を含む方法を提供する。あるいは、免疫原性ペプチドは、結果として生じる変異体ペプチドが免疫原性活性(すなわち、肺癌細胞に特異的なCTLを誘導する能力)を保持するとの条件で、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されている、配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255の配列を含みうる。置換、除去、または付加される残基の数は、一般的に、5アミノ酸またはそれ未満、好ましくは4アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは3アミノ酸またはそれ未満、よりいっそう好ましくは1アミノ酸もしくは2アミノ酸である。 意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0024】
変異体ペプチド(すなわち、本来のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基の置換、除去、または付加を行うことにより改変されたアミノ酸配列を含むペプチド)は、本来の生物活性を保持することが知られている(Mark DF et al.(1984)Proc Natl Acad Sci USA 81:5662-6.Zoller MJ and Smith M((1982)Nucleic Acids Res 10):6487-500.Dalbadie-McFarland et al.((1982)Proc Natl Acad Sci USA 79):6409-13.)。
本発明の文脈において、アミノ酸改変は、結果として、本来のアミノ酸側鎖の性質を保存することが好ましい(保存的アミノ酸置換として公知の方法)。アミノ酸側鎖の性質の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および共通して、以下の官能基または特性を有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシ基含有側鎖(S、T、Y);イオウ原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。ただし、括弧でくくられた文字は、アミノ酸の一文字記号を示す。
【0025】
好適な態様において、免疫原ペプチドは、ノナペプチド(9―mer)またはデカペプチド(10―mer)である。
【0026】
本発明はさらに、対象においてMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した主題の疾患(例えば癌)対する抗腫瘍免疫を誘導する方法であって、本発明の免疫原性ペプチド、すなわち7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加を含む)を含むペプチドを、それを必要としている対象に投与する段階を含む方法を提供する。 意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0027】
本発明の文脈において、対象は、好ましくは哺乳類である。典型的な哺乳類は、例えば、人間、人間以外の霊長類、マウス、ネズミ、イヌ、ネコ、ウマまたはウシを含むが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明において、ペプチドは、インビボまたはエクスビボで対象に投与することができる。さらに、本発明はまた、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)の処置または予防するための免疫原性組成物を製造するための7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254および255のアミノ酸配列(ならびにそれらの変異体)を含むペプチドから選択されるノナペプチドまたはデカペプチドの使用を提供する。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0029】
MPHOSPH1―A24―9―278(IYNEYIYDL(配列番号:7))、MPHOSPH1―A24―10―278(IYNEyIYDLF(配列番号:8))、MPHOSPH1―A2―9―282(YIYDLFVPV(配列番号:9))、MPHOSPH1―A2―9―638(RLAIFKDLV(配列番号:10))、MPHOSPH1―A2―10―1714(TMSSsKLSNV(配列番号:11))、DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))、DEPDC1―A2―9―589(LLQPHLERV(配列番号:192))、DEPDC1―A2―9―619(LLMRMISRM(配列番号:195))、DEPDC1―A2―9―290(LLTFEYYEL(配列番号:197))、DEPDC1―A2―9―563(RLCKSTIEL(配列番号:209))、DEPDC1―A2―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))、DEPDC1―A2―10―674(FLMDhHQEIL(配列番号:228))、DEPDC1―A2―10―302(ILVVcGYITV(配列番号:230))DEPDC1―A02―10―644(SLMIhTFSRC(配列番号:240))、DEPDC1―A02―10―575(SLLPaSSMLT(配列番号:241))、DEPDC1―A02―10―506(QLCRsQSLLL(配列番号:243))、DEPDC1―A02―10―765(KQFQkEYPLI(配列番号:244))、DEPDC1―A02―10―395(IMGGSCHNLI(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(NMANtSKRGV(配列番号:253))、DEPDC1―A02―9―297(ELFVNILGL(配列番号:226))、DEPDC1―A02―10―296(YELFvNILGL(配列番号:254))およびDEPDC1―A02―10―301(NILGlLQPHL(配列番号:255))の相同性解析は、それらにはいかなる公知のヒト遺伝子産物由来のペプチドとも有意な相同性がないことを証明する。従って、これらの分子に対する免疫療法での未知の、または望ましくない免疫応答の可能性は、著しく低減される。
【0030】
HLA抗原に関して、ここで提示されるデータは、A―24タイプまたはA―2タイプ抗原(日本人の中で多く発現しているといわれている)が有効な結果を得ることに好都合であることを証明する。A―2402およびA―0201のようなサブタイプの使用は、さらに好ましい。一般に、臨床において、治療を必要としている患者のHLA抗原のタイプが前もって調べられ、患者抗原に対する高い結合能を有する、または、抗原提示による細胞障害性T細胞(CTL)誘導能を有する適切なペプチドの選択を可能にする。さらに、高い結合親和性およびCTL誘導能を示すペプチドを得るために、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、除去、または付加が、天然に存在するMPHOSPH1およびDEPDC1の部分的ペプチドのアミノ酸配列に基づいて行われうる。本明細書において、「数個の」という用語は、5個またはそれ未満、より好ましくは3個またはそれ未満を指す。さらに、天然で示されるペプチドに加えて、HLA抗原への結合により示されるペプチドの配列の規則性は既知であるため(Kubo RT、et al. J.Immunol.(1994)、152、3913-24.Rammensee HG、et al.、 (1995)Immunogenetics.41:178-228.;Kondo A、et al.、(1995) J. Immunol.155:4307−12.)、そのような規則性に基づいた改変を、本発明の免疫原性ペプチドに対して行うことができる。例えば、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンで置換されている、高いHLA-24結合親和性を示すペプチドは、有利に用いられうる。同様に、C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンによって置換されるペプチドは、有利に用いられうる。一方、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンによって置換されたペプチド、そして、C末端アミノ酸がバリンまたはロイシンによって置換されたペプチドを有する高いHLA―A2結合能を有しているペプチドは有利に用いられうる。さらに、1〜2のアミノ酸は、ペプチドのN末端またはC末端に加えられることができる。
【0031】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能をもつ内因性または外因性のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、特定の物質に対する自己免疫異常またはアレルギー症状のような副作用が引き起こされうる。それゆえに、免疫原性配列が公知のタンパク質のアミノ酸配列に一致する状況は避けることが好ましい。この状況は、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行うことにより避けられうる。相同性検索で、1個、2個、または数個のアミノ酸が異なるペプチドが存在しないことが確認される場合、例えば、HLA抗原との結合親和性を増加させる、および/またはCTL誘導能を増加させる上記のアミノ酸配列の改変による危険性が避けられうる。
【0032】
上記のようなHLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは、癌ワクチンとして大いに効果的であることが期待されるが、高い結合親和性の存在を指標とし、それに応じて選択される候補ペプチドは、実際のCTL誘導能の存在について調べる必要がある。CTL誘導能は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)、またはより具体的には、ヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を誘導し、関心の対象のペプチドによる刺激後、CD8陽性細胞と混合し、標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することにより確認されうる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現させるように作製されたトランスジェニック動物(例えばBenMohamed L、et al.Hum.IMMUNOL.(2000);61の(8):764-79 Related Articles、Books、Linkout.に記載)が用いられうる。例えば、標的細胞は、51Crなどで放射標識することができ、細胞傷害活性は、標的細胞から放出された放射能から計算することができる。あるいは該標的細胞は、固定化ペプチドを有する抗原提示細胞の存在下でCTLにより産生および放出されたIFN-γを測定し、抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害ゾーンを可視化することにより調べることができる。
【0033】
上記の通りにペプチドのCTL誘導能を調べた結果として、HLA抗原に対する高い結合能を有するそれらのペプチドが高い誘導性を必ずしも有するというわけではないということが見出された。しかしながら、IYNEYIYDL(配列番号:7)、IYNEyIYDLF(配列番号:8)、YIYDLFVPV(配列番号:9)、RLAIFKDLV(配列番号:10)、TMSSsKLSNV(配列番号:11)EYYELFVNI(配列番号:12)LLQPHLERV(配列番号:192)LLMRMISRM(配列番号:195)LLTFEYYEL(配列番号:197)RLCKSTIEL(配列番号:209)CVLCCAEEV(配列番号:225)FLMDhHQEIL(配列番号:228)ILVVcGYITV(配列番号:230)DEPDC1―A02―10―644(SLMIhTFSRC(配列番号:240))、DEPDC1―A02―10―575(SLLPaSSMLT(配列番号:241))、DEPDC1―A02―10―506(QLCRsQSLLL(配列番号:243))、DEPDC1―A02―10―765(KQFQkEYPLI(配列番号:244))、DEPDC1―A02―10―395(IMGGSCHNLI(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(NMANtSKRGV(配列番号:253))、DEPDC1―A02―9―297(ELFVNILGL(配列番号:226))、DEPDC1―A02―10―296(YELFvNILGL(配列番号:254))およびDEPDC1―A02―10―301(NILGlLQPHL(配列番号:255))により示されたアミノ酸配列を含むペプチドから選択されたノナペプチドまたはデカペプチドは、特に高いCTL誘導能を示した。
【0034】
上記のように、本発明は、細胞傷害性T細胞誘導能をもつペプチド、すなわち、配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254もしくは255のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、除去、または付加されているアミノ酸配列)を含むペプチドを提供する。配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254もしくは255に示される9アミノ酸もしくは10アミノ酸を含むアミノ酸配列またはそれらの変異体は、別の内因性タンパク質と関連したアミノ酸配列と一致しないことが好ましい。特に、N末端から2番目のアミノ酸におけるロイシンまたはメチオニンへのアミノ酸置換、またはC末端アミノ酸におけるバリンまたはロイシンへのアミノ酸置換、ならびにN末端および/もしくはC末端における1〜2アミノ酸のアミノ酸付加が、好ましい例である。当業者は、アミノ酸置換および付加に加え、ペプチドの免疫学的活性断片が本発明の方法においても使われうると認識する。活性断片を決定する方法は、公知技術である。これらの改変ペプチドによる刺激によって得られたCTLクローンは、もとのペプチドを認識でき、本来のペプチドを発現している細胞に、傷害を与えることができる。
【0035】
本発明のペプチドは、公知技術を用いて調整されうる。例えば、該ペプチドは、組換えDNA技術または化学合成のいずれかを用いて、合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個々に、または2つもしくはそれ以上のペプチドを含むより長いポリペプチドとして、合成されうる。本発明のペプチドは、好ましくは単離される、すなわち、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含まない。
【0036】
本発明のペプチドは、改変が本明細書に記載されているようなペプチドの生物活性、すなわち、HLA抗原に結合する能力やCTLを誘導する能力、を破壊しない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化のような改変を含みうる。他の改変は、例えば、ペプチドの血清半減期を増加させるために用いることができるD-アミノ酸または他のアミノ酸模倣体の取り込みを含む。
【0037】
本発明のペプチドは、インビボでCTLを誘導しうるMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)のためのワクチンとして使用するために、本発明のペプチドの2つまたはそれ以上を含む組み合わせとして調製することができる。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。該ペプチドは、カクテルであってもよく、または標準的な技術を用いて互いに結合させてもよい。例えば、該ペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現しうる。組み合わせにおける該ペプチドは、同じまたは異なりうる。本発明のペプチドを投与することにより、ペプチドは、抗原提示細胞のHLA抗原上において高密度で提示され、続いて、示されたペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体に対して特異的に反応するCTLを誘導する。あるいは、対象から樹状細胞を取り出すことにより得られた、本発明のペプチドをその細胞表面上に固定化している抗原提示細胞が、本発明のペプチドにより刺激されうる。それぞれの対象へのこれらの細胞の再投与はCTLを誘導し、その結果、標的細胞に対する攻撃性を増加させることができる。
【0038】
より具体的には、本発明は、本発明のペプチドを1つまたは複数含む、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)を処置するための、または腫瘍の増殖、転移などを予防するための薬剤を提供する。本発明のこのペプチドは、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)の治療の特定の有用性を提供する。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0039】
本発明のペプチドは、従来の製剤方法により製剤した薬学的組成物として対象へ直接投与することができる。そのような場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常用いられる担体、賦形剤などを、特別な制限なしに、必要に応じて含むことができる。本発明の免疫原組成物は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患の処理および予防のために用いられうる。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0040】
活性成分として本発明のペプチドを1つまたは複数含む、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)の処置および/または予防のための免疫原性組成物は、さらに、細胞性免疫を効果的に確立するためにアジュバントを含むことができる。あるいは、該組成物は抗癌剤のような他の活性成分と共に投与されうる。
意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。適切な製剤には顆粒も含まれる。適切なアジュバントは、文献(Johnson AG.(1994)C1in.Microbio1.Rev.7:277-89.)に記載されている。例示的なアジュバントは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびミョウバンを含むが、これに限定されない。さらに、リポソーム製剤、薬物が直径数μmのビーズへ結合している顆粒製剤、および脂質が前記ペプチドに結合している製剤が、便利に用いられうる。投与の方法は、経口投与、皮内注射、皮下注射、静脈内注射などであってもよく、全身投与または標的腫瘍の付近への局所的投与を含みうる。本発明のペプチドの用量は、処置すべき疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などにより適切に調整することができる。用量は、普通、0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、好ましくは数日に1回から数ヶ月に1回投与されるが、当業者は適切な用量および投与の方法を容易に選択することができ、これらのパラメーターの選択および最適化は、十分に通常の技術の範囲内である。
【0041】
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原で形成された複合体をその表面上に提示するエキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、国際公開され、日本語翻訳されて公開された特表平11−510507号および特表2000−512161号の公報に詳細に記載された方法を用いることにより調製することができ、好ましくは、処置および/または予防の標的である対象から得られた抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、癌ワクチンとしてワクチン接種することができる。
【0042】
用いられるHLA抗原の型は、処置および/または予防を必要とする対象のHLA抗原の型と一致しなければならない。例えば、日本人集団においては、HLA―A24またはHLA―A2、特にHLA―A2402またはHLA―A0201が、多くの場合適当である。
【0043】
いくつかの態様において、本発明のワクチン組成物は、細胞傷害性Tリンパ球を初回抗原刺激する構成要素を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを初回抗原刺激する能力がある作用物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リシン残基のε−アミノ基およびα−アミノ基に付着し、その後、本発明の免疫原性ペプチドに連結することができる。脂質化ペプチドは、その後、ミセルまたは粒子に入れる、リポソームに取り込ませる、またはアジュバント中に乳化するかのいずれかで、直接投与することができる。CTL反応の脂質初回抗原刺激のもう一つの例として、適切なペプチドに共有結合的に付着している場合、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)のような大腸菌(E.coli)リポタンパク質を、CTLを初回抗原刺激するために用いることができる(例えば、Deres K、et al. (1989)Nature 342:561-4.を参照)。
【0044】
本発明の免疫原性組成物はまた、本明細書に開示された免疫原性ペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を含みうる。Wolff JA et al.(Science (1990) 247)1465-8;米国特許第5,580,859号;5,589,466;5,804,566; 5,739,118; 5,736,524; 5,679,647;、WO98/04720参照。
DNAに基づいた送達技術(delivery technologies)の例は、「ネイキッドDNA(naked DNA)」、促進化ブピビカイン(bupivicaine)、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「ジーンガン(gene gun)」)または圧力媒介性送達を含む(例えば、米国特許第5,922,687号参照)。
【0045】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターにより発現させることができる。適切な発現ベクターの例は、ワクシニアまたは鶏痘のような弱毒性ウイルス宿主を含む。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させうるベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を含む。宿主への導入により、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現させ、それにより、免疫応答を誘発する。免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。もう一つの適したベクターは、BCG(カルメット・ゲラン菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover CK、et al.、Nature(1991)351:456-60に記載されている。
治療的投与または免疫化に有用な幅広い種類の他のベクター、例えば、アデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、解毒化炭疽毒素ベクターなどが、当技術分野において公知である。例えばShata MT、et al. (2000)Mol. Med. Today 6:66-71; Shedlock DJ and Weiner DB. et al. (2000)J Leukoc.Biol.68:793-806;そして、Hipp JD、et al.、In Vivo 14(2000):571-85を参照。
【0046】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いて抗原提示細胞を誘導する方法を提供する。抗原提示細胞は、末梢血単球から樹状細胞を誘導し、その後それらを、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させる(刺激する)ことにより誘導することができる。本発明のペプチドを対象へ投与すると、自身に固定化されている本発明のペプチドを有する抗原提示細胞が、対象の体内において誘導される。
あるいは、本発明のペプチドを抗原提示細胞へ固定化した後、細胞をワクチンとして対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含みうる:
a:対象から抗原提示細胞を収集する段階、および
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階。
【0047】
段階bにより得られた抗原提示細胞は、対象へワクチンとして投与することができる。
【0048】
本発明はまた、高レベルの細胞傷害性T細胞誘導能をもつ抗原提示細胞を誘導するための方法であって、インビトロで、本発明の1つまたは複数のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ移入する段階を含む方法を提供する。導入された遺伝子は、DNAまたはRNAの形をとりうる。導入の方法について、特別な制限なしに、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法のような、当分野において通常行われる様々な方法が適切に用いられうる。より詳しくは、トランスフェクトは、Reeves ME et al. (1996) Cancer Res. 56:5672-7.; Butterfield LH et al. (1998) J. Immunol. 161:5607-13.; Boczkowski D et al. (1996) J.Exp.Med. 184:465-72. ;国際公開され、日本語翻訳されて公開された特表2000-509281号公報;に開示されているように、実行されうる。遺伝子を抗原提示細胞へ移入することにより、遺伝子は、細胞において転写、翻訳などを受け、その後、得られたタンパク質は、MHCクラスIまたはクラスIIによりプロセシングされ、提示経路を通って進み、部分ペプチドを提示する。
【0049】
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いてCTLを誘導するための方法を提供する。本発明のペプチドが対象に投与された場合、CTLは、対象の体内において誘導され、腫瘍組織におけるMPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現する細胞(例えば癌細胞)を標的とする免疫系の強さは、それにより増強される。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。あるいは、本発明のペプチドは、対象由来の抗原提示細胞およびCD8陽性細胞または末梢血単核白血球がインビトロで本発明の1つまたは複数のペプチドと接触させられ(刺激され)、CTLを誘導した後、細胞が対象へ戻される、エクスビボ治療方法との関連において用いられうる。
例えば、本方法は以下の段階を含みうる:
a:対象から抗原提示細胞を収集する段階、
b:段階aの抗原提示細胞を本発明のペプチドと接触させる段階、
c:細胞傷害性T細胞を誘導するために、段階bの抗原提示細胞をCD8陽性T細胞と混合し共培養する段階、および
d:段階cの共培養物からCD8陽性T細胞を収集する段階。
段階dにより得られた細胞傷害活性をもつCD8陽性T細胞は、ワクチンとして対象に投与することができる。
【0050】
本発明は更に、本発明のペプチドを用いた活性化細胞障害性T細胞を生成する方法を提供する。例えば、前記方法は、以下の段階を含むことができる:
a:対象からT細胞を収集する段階、そして、
b:T細胞を以下のペプチドと接触させる段階。
(1)
配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254および255のアミノ酸配列を有するペプチドからなるグループから選択される約15アミノ酸未満の単離ペプチド。
(2)
細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、253、254および255、からなるグループから選択され、1、2またはいくつかのアミノ酸が、置換、欠失、または、付加された、アミノ酸配列を有する前記ペプチド。
【0051】
本発明はまた、本発明のペプチドを用いて活性T細胞の誘導能を有するAPCを生成する方法を提供する。例えば、当該方法は、表面上にペプチドおよびHLA抗原を提示する抗原提示細胞を生産するためにペプチドと抗原提示細胞を接触させる段階を含みうる。
本発明の文脈において、「活性された細胞障害性T細胞」は、IFN―ガンマ産生、IFN―ガンマ放出および腫瘍細胞の細胞死を誘導する。
【0052】
本発明は、更に、本発明のペプチドを用いて誘導される単離された細胞障害性T細胞を提供する。本発明の1つまたは複数のペプチドを提示する抗原提示細胞での刺激により誘導された細胞傷害性T細胞は、好ましくは、処置および/または予防の標的である対象由来であり、単独で、または本発明の1つもしくは複数のペプチドまたは抗腫瘍活性をもつエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与することができる。得られた細胞傷害性T細胞は、本発明のペプチド、または好ましくは誘導に用いられたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的である。標的細胞は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1を内因的に発現する細胞またはMPHOSPH1および/またはDEPDC1遺伝子がトランスフェクトされている細胞でもよい。これらのペプチドによる刺激により本発明のペプチドを細胞表面上に提示する細胞もまた、攻撃の標的になりうる。
【0053】
本発明はまた、HLA抗原と本発明の1つまたは複数のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞を提供する。本発明のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするヌクレオチドとの接触を通して得られた抗原提示細胞は、好ましくは、処置および/または予防の標的である対象に由来し、単独で、または本発明のペプチド、エキソソーム、もしくは細胞傷害性T細胞を含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0054】
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成することができるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物およびその使用方法を提供する。当該TCRサブユニットは、MPHOSPH1またはDEPDC1を提示する腫瘍細胞に対してT細胞を特異的にするTCRsを形成する能力を有する。従来技術において公知の方法を用いることにより、本発明の一つまたは複数のペプチドによって誘導されるCTLのTCRサブユニットのα鎖およびβ鎖の核酸は同定されうる(WO2007/032255およびMorgan et al. J Immunol 171 3288no(2003))。誘導体TCRは、好ましくは高い結合活性を有してMPHOSPH1またはDEPDC1ペプチドを提示している標的細胞と結合し、そして、任意にインビトロでMPHOSPH1またはDEPDC1ペプチドを提示している標的細胞の効果的な殺傷をもたらす。
【0055】
TCRサブユニットをコードしている核酸は、適切なベクター(例えばレトロウイルスベクタ)に組み込むことができる。これらのベクターは、当該技術分野において公知である。
核酸またはそれらを含むベクターは有効にT細胞に導入することができる、ここで、T細胞は好ましくは患者由来である。都合のよいことに、本発明は、迅速にまた容易に強い癌細胞殺傷特性を持つ改変T細胞を供給するため患者自身のT細胞(または他の哺乳類のそれら)を迅速に改変することができるoff−the−shelf組成物を提供する。
【0056】
また、本発明は、MPHOSPH1またはDEPDC1ペプチド(例えば、HLA―A24またはHLA―A2との関係において配列番号:7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255である)と結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードしている核酸の形質導入によって調整されるCTLを提供する。形質導入されたCTLは、インビボで癌細胞にホーミングができ、よく知られた培養方法によりインビトロで拡張される(例えば、Kawakami et al. J Immunol.142 3452-3461no(1989))。本発明のT細胞は、治療または保護を必要とする患者の癌の治療または予防に役立つ免疫原組成物を形成するために用いることができる(WO2006/031221)。
【0057】
本発明の文脈において、「ワクチン」という用語(免疫原組成物とも称される)は、抗腫瘍免疫の誘導または動物へのワクチン接種に応じて癌を抑制する物質を指す。本発明により、配列番号:7、8または12のアミノ酸配列を有するポリペプチドはHLA―A24拘束性エピトープペプチド、そして、配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255のそれはHLA―A2拘束性エピトープペプチドであり、MPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現している細胞(例えばMPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現している癌細胞)に対して有力および特異的な免疫応答を誘導することができることが示唆された。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。したがって、本発明はまた、配列番号7、8、9、10、11、12、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、249、253、254または255のアミノ酸配列またはその変異体(すなわち、1、2またはいくつかのアミノ酸置換、欠失または付加を含む)を有するポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法を含む。
一般に、抗腫瘍免疫は、以下のような免疫応答を含む:
MPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現している細胞を含む腫瘍に対する細胞障害性リンパ球の誘導、
MPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現している細胞を含む腫瘍を認識する抗体の誘導、そして、
抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
【0058】
従って、特定のペプチドが動物へのワクチン接種によりこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのペプチドは、抗腫瘍免疫誘導効果をもつと決定される。ペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、インビボまたはインビトロで、ペプチドに対する宿主における免疫系の応答を観察することにより、検出することができる。
【0059】
例えば、細胞毒性Tリンパ球の誘導を検出する方法は、公知である。生体に侵入する異物は、抗原提示細胞(APC)の作用により、T細胞およびB細胞へ提示される。抗原特異的な様式でAPCにより提示された抗原に対して応答するT細胞は、抗原による刺激により、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球またはCTLとも呼ばれる)へ分化し、その後増殖する;この過程は、本明細書では、T細胞の「活性化」と呼ばれる。従って、特定のペプチドによるCTL誘導は、以下によって評価することができる:APCによってT細胞にペプチドを提示し、そして、CTLの誘導を検出する。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。
CD4+ T細胞はまた抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0060】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いるCTLの誘導作用を評価するための方法は、当技術分野において周知である。DCは、APC中で最も強いCTL誘導作用をもつ代表的なAPCである。この方法では、試験ポリペプチドを最初にDCに接触させ、その後、該DCをT細胞と接触させる。DCとの接触後の、対象となる細胞に対する細胞傷害性効果をもつT細胞の検出は、試験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性をもつことを示している。瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。あるいは、H−チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞損傷の程度を評価することは周知である。 さらに、ELISPOTアッセイのような坑IFNガンマ抗体を用いた視覚化によって、固定化したペプチドを担持する抗原提示細胞の存在下で、CTLによって産生、放出されるIFN―ガンマを測定することによって、検討することができる。
【0061】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)もまた、APCとして用いられうる。CTLの誘導は、GM−CSFおよびIL−4の存在下でPBMCを培養することにより増強されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL−7の存在下で、PBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0062】
これらの方法によりCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性効果およびその後のCTL誘導活性をもつポリペプチドである。従って、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)に対するワクチンとして有効である。さらに、ポリペプチドと接触させることによってMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患に対してCTLを誘導する能力を得たAPCは、疾患に対するワクチンとして有効である。APCによるポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもまた、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患に対するワクチンとして利用できる。APCおよびCTLのため抗腫瘍免疫を用いるMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患のためのそのような治療法は、細胞免疫療法と呼ばれる。意図される癌としては、限定はされないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLC、軟組織腫瘍が挙げられる。
【0063】
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導の効率は、異なる構造をもつ複数のポリペプチドを組み合わせ、それらをDCと接触させることにより、増加させることができる。それゆえに、タンパク質断片でDCを刺激する場合、複数の型の断片の混合物を用いることが有利である。
【0064】
ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって、更に確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、ポリペプチドで免疫された実験動物において誘導される場合、ならびに、腫瘍細胞の成長、増殖、および/または転移がそれらの抗体により抑制される場合、ポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導すると決定される。
【0065】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することにより誘導することができ、抗腫瘍免疫の誘導は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)の治療および予防を可能にする。MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)に対する治療または発症の予防は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1を発現する細胞(例えば癌細胞)の成長の阻害、それらの細胞の退縮、およびそれらの細胞(例えば癌細胞)の発生の抑制を含みうる。MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患を有する個人の死亡率の減少、血液中の疾患マーカーの減少、疾患に伴う検出可能な症状の軽減などもまた、疾患(例えば癌)の治療または予防に含まれる。そのような治療的または予防的効果は、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)に対するワクチンの治療的または予防的効果がワクチン投与なしの対照と比較される場合に統計学的に有意であること、例えば5%またはそれ未満の有意レベルで観察されることが好ましい。例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーU検定、またはANOVAが、統計学的有意性を決定するために用いられうる。
【0066】
本発明がMPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現に関連した疾患(例えば癌)を治療または予防する方法を提供するという点で、治療的な化合物または組成物は予防的に、または、治療的に疾患の発達に苦しんでいるまたはその危険におかれている(または、受けやすい)対象に投与されうる。当該対象は、標準的臨床方法を用いて同定されうる。本発明の文脈において、予防的投与は疾患の明らかな症状が現れる前に行われ、そうすることで、疾患が予防されるかまたはその進行が遅らされる。医学の分野の文脈において、「予防する」という用語は、疾患による死亡率または罹患率の負荷を減少させるいかなる活性も含む。予防は、"t第一次、第二次および第三次予防レベルを生じうる。第一次予防は疾患の発達を避けるが、第二次および第三次レベルの予防は疾患の進行や症状の発生を予防し、またすでにおきている疾患の悪影響を、修復機能や合併症を減少させることにより、減少することを意図した活性を含む。
【0067】
癌治療の文脈において、「有効である」という用語は、対象における癌のサイズ、罹患率または転移の可能性の減少につながる処理に関連する。治療が予防的に適用される場合、「有効である」は治療が非癌の発生を遅延または防止するかまたは癌の臨床症状を軽減することを意味する。癌の評価は、標準的な臨床プロトコールを用いて行うことができる。さらにまた、治療の効用は、癌を診断または治療するいかなる公知の方法と共同しても決定されうる。例えば、癌は、組織病理学的に、または、対症異常を同定することによって診断することができる。
【0068】
免疫学的活性を有する前記のペプチド、または当該ペプチドをコードしているポリヌクレオチドまたはベクターは、アジュバントと組み合わすことができる。アジュバントとは、免疫学的活性を有するペプチドによって同時に(または連続して)投与されるときに、ペプチドに対して免疫応答を強化する化合物を指す。適切なアジュバントの例としては、コレラ毒素、サルモネラ菌毒素、ミョウバンおよびそのようなものを含むが、それに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適切に組み合わせられうる。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液などである。さらに、ワクチンは、必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤などを含みうる。ワクチンは、全身的にまたは局所的に投与される。ワクチン投与は、単回投与により行われるか、または複数回投与により追加免疫されうる。
【0069】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いるときに、MPHOSPH1および/またはDEPDC1の過剰発現と関連した疾患(例えば癌)は例えば、エクスビボの方法によって処置または、予防することができる。より具体的には、処置または予防を受ける対象のPBMCを収集し、エクスビボで本発明のペプチドと接触させる。APCまたはCTLの誘導後、細胞を対象に投与する。APCはまた、ペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCへ導入することにより誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与の前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷する高い活性をもつ細胞をクローニングおよび増殖させることにより、細胞免疫療法をより効果的に行うことができる。さらに、この方法で単離されたAPCおよびCTLは、細胞が由来している個体に対する細胞免疫療法だけでなく、他の個体における類似した型の疾患に対する細胞免疫療法にも用いられうる。
【0070】
本発明の態様は以下の実施例において説明され、その実施例は、本発明を例証するため、および同じものの作製および使用において当業者を援助するためにのみ示される。本実施例は、いかなる形であれ本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0071】
本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることができるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。
【0072】
実施例
本発明は以下の実施例により例証されるが、それらに限定されない。しかしながら、本願明細書において記載されている材料、方法およびそのようなものは、本発明の態様を例示しているが、決して本発明の範囲を制限することを意図しない。よって、そのときに記載されている材料、方法およびそれらと同様または同等なものは、本発明の実施をまたは試験に用いうる。
【0073】
実施例1
材料および方法
細胞株
A24LCL細胞(HLA―A24/24)、ヒトB―リンパ芽球腫細胞株、T2細胞およびCOS7は、ATCCから購入された。
【0074】
MPHOSOH1およびDEPDC1由来ペプチドの候補選択
HLA―A*2402およびHLA―A*0201分子に結合するMPHOSOH1またはDEPDC1由来の9―merおよび10―merペプチドは結合予測ソフトウェア「BIMAS」(bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)を用いて予測された(Parker KC et al. J Immunol. (1994);152no(1):163-75. Kuzushima K et al. Blood. (2001); 98 no(6):1872-81.)。これらのペプチドは、Sigma(札幌、日本)によって、標準的な固相合成方法に従って合成されて、逆相HPLCによって精製された。
純度(>90%)およびペプチドの同一性はそれぞれ、HPLC分析およびマススペクトル分析によって決定された。ペプチドは、20mg/mlでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解されて―80度Cで保存された。
【0075】
生体外CTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)は、HLAに提示されるペプチドに対するCTL反応を誘導する抗原提示細胞(APC)として用いられた。
DCは他で報告されているように、インビトロで生成された。(Nukaya I et al.、Int. J. Cancer (1999)80、92-7.Tsai V et al. J.Immunol (1997)158:1796-802.)簡潔には、Ficoll―Paque(Pharmacia)溶液によって正常なボランティア(HLA―A*2402および/またはHLA―A*0201)から分離された末梢血単核細胞(PBMCs)は、それらを単球画分について濃縮するために、プラスチック組織培養フラスコ(Becton Dickinson)への粘着性により分離した。単球の濃縮集団を、2%加熱不活性化自己血清(AS)を含むAIM−V(Invitrogen)中、1000U/mlのGM−CFS(Kirin Brewery Companyより提供)および1000U/mlのIL−4(Genzyme)の存在下で培養した。
培養7日後、サイトカイン産生DCを、AIM−V中、3mcg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下に、20 mcg/mlの合成ペプチドを用いて20℃、4時間パルスした。これらのペプチドパルスされたDCは、MMC(30分間の30mcg/ml)によって不活性化されて、Dynabeads M―450 CD8(Dynal)およびDETACHa BEADTM(Dynal)による陽性選択によって得られた自己由来CD8+T細胞と1:20の比率で混合された。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)に配置した;各ウェルには、AIM-V/2%AS0.5ml中、1.5×104個のペプチドパルスしたDC、3×105個のCD8+ T細胞、および10ng/mlのIL-7(Genzyme)を含む。3日後、これらの培養物に、最終濃度20IU/mlのIL-2(CHIRON)を追加した。7日目および14日目に、T細胞を、自己ペプチドパルスしたDCでさらに再刺激した。DCは、上記と同じ方法により毎回調製した。CTLは、21日目における3回目のペプチド刺激後に、ペプチドパルスしたA24LCL細胞またはT2細胞に対して試験した。
【0076】
CTL展開手順
CTLは、Riddell SR et al.(Walter EA et al. (1995)N Engl J Med 333:1038-44.; Riddell SR、et al. (1996)Nature Med. 2:216-23.)に記載された方法と類似の方法を用いた培養で拡張させた。合計5×104個のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、二種のヒトB―リンパ芽球腫細胞株を含む25mlのAIM-V/5%AS中に再懸濁した。培養の開始から1日後、120IU/mlのIL-2を培養物に加えた。培養物に、5日目、8日目、および11日目に30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%ASを供給した。
【0077】
CTLクローンの樹立
希釈は、96ウェルの丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)において0.3個、1個、および3個のCTL/ウェルになるように行なわれた。CTLは、7×104細胞/ウェルの二種のヒトB―リンパ芽球腫細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、および125U/mlのIL-2と共に、5%AS含む合計150 mcl/ウェルのAIM-V中で培養された。10日後、50 mcl/ウェルのIL-2を、IL-2が最終濃度において125U/mlになるように培地へ加えた。CTLのCTL活性は14日目に試験され、CTLクローンは上記と同じ方法を用いて拡張された。
【0078】
特異的CTL活性
特異的なCTL活性を検討するために、IFN―ガンマELISPOTアッセイおよびIFN―ガンマELISAが行われた。簡潔には、ペプチドパルスされたA24―LCLまたはT2細胞(1x10/ウェル)は、スティミュレーター細胞として調製された。
48ウェルの培養細胞または限界希釈後のCTLクローンは、レスポンダー細胞として用いられた。IFN―ガンマELISPOTアッセイおよびELISAは、製造手順に基づき行われた。
【0079】
細胞培養およびトランスフェクション
イプシュタインバーウイルス(Epstein Bar virus)が変換されたHLA―A24 B―LCLs(A24LCL)は、樹立された。Jiyoye、EB―3、COS7、HT1376、RT―4およびJ82は、アメリカンタイプカルシャーコレクション(Rockville、MD)から購入された。A24LCL、JiyoyeおよびEB―3は、10%のウシ胎児血清(GEMINI Bio製)および1%の抗生剤溶液(シグマ)を含むRPMI1640において維持された。COS7、HT1376、RT―4およびJ82は、適切な培地および抗生物質において維持された。COS7およびHEKのトランスフェクションは、FUGENE6(ロシュ)を用いて行われた。HLA―A*0201分子を発現している安定的クローン、HEK―A2細胞は、pcDNA6.2―HLA―A2プラスミドのトランスフェクションによって樹立され、5mcg/mlのBlastcidinSの存在下で、限界希釈法によって分離された。
【0080】
BALB/cマウスにおけるエピトープペプチドの免疫原性
ペプチド特異的なCTLの誘導のために、免疫処置は、マウスごとに、50mcl(100mcg)のHLA―A24拘束性ペプチドおよび50mclのIFAを含む、100mlのワクチンの混合物を用いてされた。ワクチンは、0日目に最初の免疫を右側腹部において、そして、二回目を7日目に左の横腹において皮下注射された。14日目、ワクチン接種されたマウスの脾細胞は、いかなるインビトロ刺激もしないで、レスポンダー細胞に用いられ、ペプチドの有無にかかわらずパルスされたRLmale1細胞はIFN―ガンマELISPOTアッセイのスティミュレーター細胞として用いられた。
【0081】
結果
癌におけるMPHOSPH1およびDEPDC1発現上昇
cDNA―マイクロアレイを用いてさまざまな癌から得られた網羅的遺伝子発現プロプロファイルデータは、MPHOSPH1(GenBankアクセッション番号:NM_016195;配列番号:1)、そして、2つの異型を有したDEPDC1(GenBank Accession番号:BM683578);DEPDC1 V1(配列番号:3)およびDEPDC1 V2(配列番号:5)の発現が上昇することを示した。MPHOSPH1発現は、31の膀胱癌中30、36の乳癌中8、18の子宮頸癌中18、17の胆管細胞癌中5、31のCML中25、11の結腸直腸癌中6、14の胃癌中6、5つのNSCLC中5、7つのリンパ腫中7、10の骨肉腫中6、22の前立腺癌中7、18の腎癌中10および21の軟組織腫瘍中15において、対応する正常組織と比較して有意に上昇した。DEPDC1発現は、25の膀胱癌中23、13の乳癌中6、12の子宮頸癌中12、6つの胆管細胞癌中6、4のCML中3、4の結腸直腸癌中2、6のNSCLC(非小細胞肺癌)中6、7のリンパ腫中7、14の骨肉腫中10、24の前立腺癌中11、14のSCLC(小細胞肺癌)中14および31の軟組織腫瘍中22において、対応する正常組織と比較して有意に上昇した(表1)。
【0082】
(表1)対応する正常組織と比較して癌組織でMPHOSPH1またはDEPDC1の上方制御が観察された症例の割合

【0083】
MPHOSPH1またはDEPDC1に由来するHLA―A24およびHLA―A2結合ペプチドの予測
表2は、結合親和性の順にMPHOSPH1に対するHLA―A*2402結合ペプチドを記載する。
表2AはMPHOSPH1由来の9―merペプチド、そして、表2BはMPHOSPH1由来の10―merペプチドを記載する。
表3は、結合親和性の順にMPHOSPH1に対するHLA―A*0201結合ペプチドを記載する。
表3AはMPHOSPH1由来の9―merペプチド、そして、表3BはMPHOSPH1由来の10―merペプチドを記載する。
表4は、結合親和性の順にDEPDC1 V1およびV2に対するHLA―A*2402結合ペプチドを記載する。
表4AはDEPDC1 V1およびV2由来の9―merペプチド、そして、表4BはDEPDC1 V1由来の10―merペプチドを記載する。
表5はDEPDC1V1およびVに対するペプチド、表5AはDEPDC1 V1およびV2由来の9―merペプチド、そして、表4BはDEPDC1 V1およびV2由来の10―merペプチドを記載する。
【0084】
(表2A)MPHOSPH1由来HLA-A*2402結合性ペプチド (9mer ペプチド)

開始位置は、MPHOSPH1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0085】
(表2B)MPHOSPH1由来HLA-A*2402結合性ペプチド (10mer ペプチド)

開始位置は、MPHOSPH1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0086】
(表3A)MPHOSPH1由来HLA-A*0201結合性ペプチド (9mer ペプチド)

開始位置は、MPHOSPH1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0087】
(表3B)MPHOSPH1由来HLA-A*0201結合性ペプチド (10mer ペプチド)

開始位置は、MPHOSPH1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0088】
(表4A)DEPDC1由来HLA-A*2402結合性ペプチド (9mer ペプチド)

開始位置は、DEPDC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0089】
(表4B)DEPDC1由来HLA-A*2402結合性ペプチド (10mer ペプチド)

開始位置は、DEPDC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0090】
(表5A)DEPDC1由来HLA-A*0201結合性ペプチド (9mer ペプチド)

開始位置は、DEPDC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0091】
(表5B)DEPDC1由来HLA-A*0201結合性ペプチド (10mer ペプチド)

開始位置は、DEPDC1のN末端からのアミノ酸の数を示す。
結合スコアは、材料および方法に記載されている「BIMAS」に由来する。
【0092】
HLA―A*2402拘束性MPHOSPH1から予測されたペプチドを用いたT細胞の刺激
MPHOSHP1(SEQ ID No:2)由来のそれらのペプチドに対するCTLは、上記の「材料および方法」の項に記載されるプロトコールに従って生成された。
結果として生じるIFN―ガンマELISPOTアッセイによって評価されるように、検出可能な特異的なCTL活性を有するCTLは、図1Aおよび図2Aに示される。
図1Aにおいて、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)によって刺激されたウェルナンバー#4の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ生産を示した。
図2Aにおいて、MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8)によって刺激されたウェルナンバー#8の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ生産を示した。次に、陽性ウェルのこれらの細胞は拡張され、限界希釈された。
図1B(MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7))および図2B(MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8))に示すように、ペプチドパルスのない標的に対する活性と比較して、ペプチドパルスされた標的に対する高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンが樹立された。
【0093】
MPHOSPH1―A24―9―278(IYNEYIYDL(配列番号:7))(図3A)およびMPHOSPH1―A24―10―278(IYNEYIYDLF(配列番号:8))(図3B)によって刺激されたCTLクローンは、いずれのペプチドにもパルスされない標的に対して少しも有意な特異的CTL活性を示すことなく、ペプチドパルスされた標的に対して、強力な特異的なCTL活性を示した。これは、当該CTLクローンがペプチド特異的な細胞障害性を有することを示唆する。
【0094】
MPHOSPH1を発現している標的細胞に対する特異的なCTL活性
これらのペプチドに対して高められた樹立したCTLクローンは、MPHOSPH1およびHLA―A*2402を内因的に発現している標的細胞を認識する能力について検討された。
MPHOSPH1およびHLA―A*2402を内因的に発現する標的細胞の特異的モデルであるところの、全長MPHOSPH1遺伝子およびHLA―A*2402分子によってトランスフェクトされたCOS7に対する特異的CTL活性を、MPHOSPH1-A24-9-278 (SEQ ID NO: 7)で高められたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。
全長MPHOSPH1によってトランスフェクトしたがHLA―A*2402はしないCOS7およびHLA―A*2402でトランスフェクトしたが全長MPHOSPH1はしないCOS7をコントロールとして調製した。
COS7に対する最も高い特異的なCTL活性を有するCTLクローンは、MPHOSPH1およびHLA―A24の両者によってトランスフェクトしたものであった。しかしながら、MPHOSPH1もHLA―A24によってもトランスフェクトしないCOS7に対しては有意な特異的CTL活性を示さなかった(図4)。
【0095】
これらの結果は、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)がHLA―A24分子とともに標的細胞表面に自然に発現され、CTLが認識されたことを明確に示す。
【0096】
MPHOSPH1を内因的に発現している膀胱癌細胞株に対するCTL活性
MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)ペプチドに対して高められた樹立したCTLクローンは、MPHOSPH1を内因的に発現している腫瘍細胞を認識するための能力を検討された。MPHOSPH1およびHLA―A24を内因的に発現するHT1376細胞に対するCTL活性は、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)により高められたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験された。
内因的にMPHOSPH1を発現するが、HLA―A24を発現しないJ82細胞およびRT―4細胞は標的細胞として用いられた。樹立したCTLクローンは、MPHOSPH1およびHLA―A24を両者とも発現するHT1376細胞に対して、高いIFN―ガンマ産生を示した。一方、このCTLは、MPHOSPH1を発現するがHLA―A24を発現しないJ82およびRT―4細胞に対しては有意なCTL活性を示さなかった(図5)。それは、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)ペプチドがHLA―A24分子とともに腫瘍細胞表面に自然に加工され、CTLによって認識されることを明確に証明した。
【0097】
BALB/cマウスにおけるMPHOSPH1―A24―9―278ペプチドによるインビボのCTL誘導
H―2Kd分子(マウスMHCクラスIの1つ)がHLA―A24分子に対するペプチド・アンカーのモチーフに似ており、HLA―A24拘束性ペプチドと一部交差反応することは公知である。本発明者らは、次に、MPHOSPH1―A24―9―278ペプチドがインビボでCTLを誘導するかどうかを、このペプチドをBALB/cマウス(H―2kd)にワクチン接種することによって検討した。IFA接合ペプチドは、0および7日目にBALB/cマウスに皮下注射された。14日目に、脾細胞は収集され、ELISPOTアッセイのためのレスポンダー細胞として用いられた。ペプチドを注入されたすべてのマウス(Ani1〜5)の脾細胞は、IFA単独を注入されたコントロールマウス(nega1〜3)と比較して強力なIFN―ガンマの産生を示した。(図6)。このデータは、MPHOSPH1―A24―9―278ペプチドがインビボでもCTL反応を誘導できることを示した。
【0098】
HLA―A*0201拘束MPHOSPH1由来予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
結果として、IFN―ガンマELISPOTアッセイによって評価された検出可能な特異的CTL活性を有するCTLは、図7に示される。図7Aに示すように、MPHOSPH1−A2−9−282(YIYDLFVPV(配列番号:9))で刺激されたウェルナンバー#1および#5の細胞は、コントロールと比較して、強力なIFN―ガンマ生産を示した。図7Bに示すように、MPHOSPH1―A2―9―638(RLAIFKDLV(配列番号:10))によって刺激されたウェルナンバー#8の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ生産を示した。図7Cに示すように、MPHOSPH1―A2―10―1714(TMSSsKLSNV(配列番号:11))によって刺激されたウェルナンバー#4の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ生産を示した。
【0099】
図8A(MPHOSPH1―A2―9―282(配列番号:9))、図8B(MPHOSPH1―A2―9―638(配列番号:10))および図8C(MPHOSPH1―A2―10―1714(配列番号:9))に示すように、陽性ウェルのこれらの細胞は拡張され、そしてペプチドパルスしていない標的に対する活性と比較してペプチドパルスされた標的に対する高い特異的なCTL活性をもつCTL株が樹立された。
【0100】
MPHOSPH1―A2―9―282(YIYDLFVPV(配列番号:9))(図9Aおよび9B)によって刺激されたCTLクローンは、いかなるペプチドもパルスしない標的に対しては、いかなる有意な特異的CTL活性を示さず、ペプチドパルスされた標的に対して強力な特異的なCTL活性を示した。
【0101】
HLA―A*2402拘束性DEPDC1由来予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
DEPDC1由来のそれらのペプチドのためのCTLは、上記の「材料および方法」の項目に記載されているプロトコールに従って生成された。結果としてIFN―ガンマELISPOTアッセイによって評価されるように、検出可能な特異的CTL活性を有するCTLは図10に示される。図10Aに示すように、DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))によって刺激されたウェルナンバー#10の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ生産を示した。したがって、陽性ウェルのこれらの細胞は拡張され、限界希釈された。図10B(DEPDC1―A24―9―294(配列番号:12))に示すように、ペプチドをパルスしない標的に対する活性と比較してペプチドパルスされた標的に対して高い特異的CTL活性を有するCTLクローンが樹立された。DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))(図11)によって刺激されたこのCTLクローンは、いずれのペプチドもパルスしない標的に対しては、少しも有意な特異的CTL活性を示さず、ペプチドパルスされた標的に対して強力な特異的なCTL活性を示した。この結果は、このCTLクローンがペプチド特異的な細胞障害性を有することを示唆する。
【0102】
DEPDC1およびHLA―A*2402を発現している標的細胞に対する特異的なCTL活性
これらのペプチドに対して高められた樹立したCTLクローンは、DEPDC1およびHLA―A*2402を内因的に発現している標的細胞を認識するための能力が検討された。標的細胞が内因的にDEPDC1およびHLA―A*2402発現する特異的なモデルである、全長DEPDC1遺伝子およびHLA―A*2402分子によってトランスフェクトするCOS7、に対する特異的なCTL活性は、エフェクター細胞としてDEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))により増えたCTLクローンを用いて、試験された。全長DEPDC1によってトランスフェクトするがHLA―A*2402はしないCOS7およびHLA―A*2402をトランスフェクトさせるが全長DEPDC1はしないCOS7はコントロールとして調製された。CTLクローンは、DEPDC1およびHLA―A24の両者をトランスフェクトさせたCOS7に対して高い特異的なCTL活性を示した。しかしながら、DEPDC1もHLA―A24によってもトランスフェクトしないCOS7に対しては有意な特異的CTL活性を示さなかった(図12)。
【0103】
これらの結果は、DEPDC1―A24―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))が、HLA―A24分子とともに標的細胞表面に自然に発現されそしてCTLを認識したことを明確に示す。
【0104】
DEPDC1を内因的に発現している膀胱癌細胞株に対するCTL活性
DEPDC1―A24―9―294ペプチドに対して高められた樹立したCTLクローンは、DEPDC1を内因的に発現している腫瘍細胞を認識するための能力が検討された。DEPDC1およびHLA―A24を内因的に発現するHT1376細胞に対するCTL活性は、DEPDC1―A24―9―294によって高められたCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験された。J82細胞およびRT―4細胞は、内因的にDEPDC1を発現するがHLA―A24を発現しない標的細胞として用いられた。樹立したCTLクローンは、DEPDC1およびHLA―A24を発現するHT1376細胞に対して、高いIFN―ガンマ産生を示した。一方、DEPDC1を発現するがHLA―A24は発現しないJ82およびRT―4細胞に対しては、有意なCTL活性を示さなかった(図13)。それは、DEPDC1―A24―9―294がHLA―A24分子を有する腫瘍細胞表面に自然に加工され、CTLによって認識されることを明確に証明した。
【0105】
BALB/cマウスにおけるDEPDC1―A24―9―294ペプチドによるインビボのCTL誘導
H―2Kd分子(マウスMHCクラスIの1つ)がHLA―A24分子に対するペプチド・アンカーのモチーフに似ており、HLA―A24拘束性ペプチドと一部交差反応することは公知である。本発明者らは、次に、MPHOSPH1―A24―9―294ペプチドがインビボでCTLを誘導するかどうかを、このペプチドをBALB/cマウス(H―2kd)にワクチン接種することによって検討した。IFA接合ペプチドは、0および7日目にBALB/cマウスに、皮下注射された。14日目に、脾細胞は収集されて、ELISPOTアッセイのためのレスポンダー細胞として用いられた。ペプチドを注入されたすべてのマウス(Ani1〜5)の脾細胞は、IFA単独を注入されたコントロールマウス(nega1〜3)と比較して強力なIFN―ガンマの産生を示した。(図14)。このデータは、DEPDC1―A24―9―294ペプチドがインビボでもCTL反応を誘導することができることを示した。
【0106】
HLA―A*0201拘束性DEPDC1由来予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
IFN―ガンマELISPOTアッセイによる選択時に、検出可能な特異的CTL活性を有しているCTLは、図15および表6に示される。DEPDC1―A02―10―644((SLMIHTFSRC配列番号:240))によって刺激されたウェルナンバー#4および#7の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマの産生を示した。DEPDC1―A02―10―575(SLLPASSMLT(配列番号:241))によって刺激されたウェルナンバー#2の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―10―506(QLCRSQSLLL(配列番号:243))によって刺激されたウェルナンバー#7の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―10―765(KQFQKEYPLI(配列番号:244))によって刺激されたウェルナンバー#1の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―10―395(IMGGSCHNLI(配列番号:249))によって刺激されたウェルナンバー#1の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。
DEPDC1―A02―10―224(NMANTSKRGV(配列番号:253))によって刺激されたウェルナンバー#1および#2の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―9―297(ELFVNILGL(配列番号:226))によって刺激されたウェルナンバー#4の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―10―296(YELFVNILGL(配列番号:254))によって刺激されたウェルナンバー#3および#4の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。
DEPDC1―A02―10―301(NILGLLQPHL(配列番号:255))によって刺激されたウェルナンバー#2、#3、#5および#7の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマに産生を示した。DEPDC1―A02―9―598(LLQPHLERV(配列番号:192))によって刺激されたウェルナンバー#6の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。DEPDC1―A02―9―619(LLMRMISRM(配列番号:195))によって刺激されたウェルナンバー#6の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。DEPDC1―A02―9―290(LLTFEYYEL(配列番号:197))によって刺激されたウェルナンバー#2の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。DEPDC1―A02―9―563(RLCKSTIEL(配列番号:209))によって刺激されるウェルナンバー#5の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。DEPDC1―A02―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))によって刺激されたウェルナンバー#1および#3の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。DEPDC1―A02―10―674(FLMDhHQEIL(配列番号:228))によって刺激されたウェルナンバー#1の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。最後に、DEPDC1―A02―10―302(ILVVcGYITV(配列番号:230))によって刺激されたウェルナンバー#2および#6の細胞は、コントロールと比較して強力なIFN―ガンマ産生を示した。
【0107】
DEPDC1―A02―10―296(YELFVNILGL(配列番号:254))およびDEPDC1―A02―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))(図16)によって刺激したCTL株は、いずれのペプチドによってもパルスされない標的に対しては有意な特異的なCTL活性を示さず、ペプチドパルスされた標的に対して、強力な特異的CTL活性を示した。これはCTLクローンがペプチド特異的な細胞障害性を有することを示す。
【0108】
(表6)DEPDC1由来HLA-A*0201拘束性候補ペプチド

【0109】
DEPDC1およびHLA―A*0201を発現している標的細胞に対する特異的CTL活性
DEPDC1―A02―10―296ペプチド(YELFVNILGL(配列番号:254))およびDEPDC1―A02―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))に対して高められた樹立したCTL株は、DEPDC1およびHLA―A2を内因的に発現している標的細胞を認識する能力について検討された。最初に、我々は、効率的に特異的なCTL反応を測定するためにHLA―A*0201(HEK―A2)を構成的に発現するHEK293細胞株を樹立した。DEPDC1およびHLA―A2を発現する標的細胞の特異的なモデルである、全長DEPDC1遺伝子をトランスフェクトさせたHEK―A2細胞に対する特異的なCTL活性は、エフェクター細胞としてDEPDC1―A02―10―296(YELFVNILGL(配列番号:254))またはDEPDC1―A02―9―653(CVLCCAEEV(配列番号:225))によって高めれた樹立したCTL株を用いて試験された。Mock発現ベクターをトランスフェクトしたHEK―A2、そして、DEPDC1由来のものに対応しないペプチドでパルスしたHEK―A2はネガティブコントロールとして調製された。樹立したCTL株は、DEPDC1をトランスフェクトしたHEK―A2に対して特異的なCTL活性を示した。一方で、当該CTL株は、トランスフェクトしたMock発現ベクターおよびDEPDC1―A02―9―674ペプチドまたはDEPDC1―A02―9―462ペプチドがパルスされたHEK―A2に対して、有意な特異的CTL活性を示さなかった(図17)。それは、DEPDC1―A02―10―296DEPDC1―A02―9―653ペプチドが、HLA―A2分子とともに標的細胞表面に自然に加工され、CTLによって認識されることを明確に証明した。
【0110】
抗原ペプチドの相同性解析
本発明のペプチドに対して樹立されるCTLは、強力な特異的CTL活性を示した。
これはMPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)、MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8)、MPHOSPH1―A2―9―282(配列番号:9)、MPHOSPH1―A2―9―638(配列番号:10)、MPHOSPH1―A2―10―1714(配列番号:11)、DEPDC1―A24―9―294(配列番号:12)、DEPDC1―A2―9―589(配列番号:192)、DEPDC1―A2―9―619(配列番号:195)、DEPDC1―A2―9―290(配列番号:197)、DEPDC1―A2―9―563(配列番号:209)、DEPDC1―A2―9―653(配列番号:225)、DEPDC1―A2―10―674(配列番号:228)、DEPDC1―A2―10―302(配列番号:230)DEPDC1―A02―10―644(配列番号:240)、DEPDC1―A02―10―575(配列番号:241)、DEPDC1―A02―10―506(配列番号:243)、DEPDC1―A02―10―765(配列番号:244)、DEPDC1―A02―10―395(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(配列番号:253)、DEPDC1―A02―9―297(配列番号:226)、DEPDC1―A02―10―296(配列番号:254)およびDEPDC1―A02―10―301(配列番号:255)のシーケンスがヒト免疫系を感作することが知られている他の分子由来のペプチドに相同であることを示唆する。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて、ペプチド配列をクエリーとして相同性解析が行われた。有意な配列相同性は、示されなかった。
【0111】
これらの結果は、MPHOSPH1―A24―9―278(配列番号:7)、MPHOSPH1―A24―10―278(配列番号:8)、MPHOSPH1―A2―9―282(配列番号:9)、MPHOSPH1―A2―9―638(配列番号:10)、MPHOSPH1―A2―10―1714(配列番号:11)、DEPDC1―A24―9―294(配列番号:12)、DEPDC1―A2―9―598(配列番号:192)、DEPDC1―A2―9―619(配列番号:195)、DEPDC1―A2―9―290(配列番号:197)、DEPDC1―A2―9―563(配列番号:209)、DEPDC1―A2―9―653(配列番号:225)、DEPDC1―A2―10―674(配列番号:228)、DEPDC1―A2―10―302(配列番号:230)DEPDC1―A02―10―644(配列番号:240)、DEPDC1―A02―10―575(配列番号:241)、DEPDC1―A02―10―506(配列番号:243)、DEPDC1―A02―10―765(配列番号:244)、DEPDC1―A02―10―395(配列番号:249)、DEPDC1―A02―10―224(配列番号:253)、DEPDC1―A02―9―297(配列番号:226)、DEPDC1―A02―10―296(配列番号:254)およびDEPDC1―A02―10―301(配列番号:255)のシーケンスがユニークで、いかなる関連のない分子にたいして予期しない免疫反応を起こすリスクが低いことを示唆する。
【0112】
考察
新規なTAA(特に強力および特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導するそれら)の同定は、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン接種戦略の臨床応用の更なる発達を保証する(Boon T.et al.、(1996)J Exp Med 183:725-9. van der Bruggen P et al.((1991)Science 254):1643-7. Brichard V et al.((1993)J Exp Med 178):489-95. Kawakami Y et al.((1994)J Exp Med 180):347-52. Shichijo S et al.((1998)J Exp Med 187):277-88. Chen YT et al.,(1997)Proc.Natl.Acd.Sci. USA、94:1914-8. Harris Cc.((1996)J Natl Cancer Inst 88):1442-5. Butterfield LH et al.((1999)Cancer Res 59):3134-42. Vissers JL et al.((1999)Cancer Res 59):5554-9. van der Burg SH et al.((1996)J.Immunol 156):3308-14. Tanaka F et al.((1997)Cancer Res 57):4465-8. Fujie T et al.((1999)Int J Cancer 80):169-72. Kikuchi M et al.((1999)Int J Cancer 81):459-66. Oiso M et al.((1999)Int J Cancer 81):387-94.)。
【0113】
cDNAマイクロアレイ技術は、悪性細胞の遺伝子発現の包括的なプロファイルを開示することができる(Lin YM, et al., Oncogene.2002 Jun 13;21:4120-8. Kitahara O, et al., Cancer Res. 2001 May 1;61:3544-9. Suzuki C、et al.,Cancer Res.2003 Nov 1;63:7038-41. Ashida S(Cancer Res.2004 Sep 1);64:5963-72.Ochi K、et al.、Int J Oncol.2004 Mar;24(3):647-55. Kaneta Y、et al.、Int J Oncol.2003 Sep;23:681-91. Obama K(Hepatology.2005 Jun);41:1339-48. Kato T, et al.,Cancer Res. 2005 Jul 1;65:5638-46. Kitahara O、et al.、Neoplasia.2002 Jul-Aug;4:295-303. Saito-Hisaminato A et al.、DNA Res 2002、9:35-45.)。そして、TAA候補の同定において有用なものを見いだす。さまざまな癌において上方制御される転写産物の中で、2つの新規ヒト遺伝子(それぞれMPHOSPH1およびDEPDC1と称される)は、これらの技術を用いて同定された。
【0114】
上記で示したように、MPHOSPH1およびDEPDC1はさまざまな癌において過剰発現するが、正常組織ではごく僅かな発現のみを示す。加えて、これらの遺伝子は細胞増殖に関連した重要な機能を有することが示されている(PCT/JP2006/302684を参照)。したがって、MPHOSPH1およびDEPDC1由来のペプチドはTAAエピトープとして役立ち、癌細胞に対して有意および特異的な免疫応答を誘導するために用いることができる。
【0115】
したがって、MPHOSPH1およびDEPDC1は新規TAAとして、これらのエピトープペプチドを用いるワクチンは、これらの分子を発現しているさまざまな癌腫または他の疾患に対する免疫治療法としての有用性を見出す。
【0116】
実施例2
材料および方法
ペプチドおよびアジュバント
合成されたGMPグレードのペプチドは、ネオマルチペプタイドシステム(Neo Multi Peptide System)(MPS)(サンディエゴ、CA)より購入された。アジュバントとして、不完全フロイントアジュバント(IFA)(MONTANIDE*ISA51)が、用いられた。1mgの適切なペプチドは、1mgのIFAによって乳化された。
【0117】
抗原発現
本発明者らは、免疫組織化学的解析を行った。手術または生検から得られた膀胱癌由来の腫瘍細胞または腫瘍組織は、それぞれのMPHOSPH1およびDEPDC1特異的ポリクローナル抗体によって染色された。染色のプロトコールは、以前に述べられたように(Kanehira M et al. Cancer Res.;67(7):3276-3285, 2007., Kanehira M et al. Oncogene. 2007 Apr 23; [Epub ahead of print])東京大学医科学研究所ヒトゲノムセンターにおいて確立された。HLA―A*2402発現は、SRL(立川、日本)で、行われ試験された
【0118】
登録される患者
登録基準は、以下の通り;
1. 標準的な化学療法によって過去に治療をうけて失敗となった手術不能の再発性膀胱癌患者。
2. 日本の判定基準において一般状態が0または1である患者。
3. 20歳から80歳の患者
4. RECISTガイドラインは考慮しないが、治療前に画像検査(CT/MRI)によって原発腫瘍または転移と認められた患者
5. 前治療(手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、他の免疫療法その他)後4週以上経過した患者
6. 3ヵ月以上の予後が予測される患者
7. 骨髄機能(白血球数2000以上、15000以下、血小板50000以上を)、肝機能(GOT150以下、GPT150以下、T―bil3.0以下)、腎機能(Cr3.0以下)の患者
8. HLA―A*2402を有する患者
9. MPHOSPH1および/またはDEPDC1の発現を有する患者の腫瘍
【0119】
除外基準は、以下の通り;
1. 妊娠中の患者
2. 授乳中の患者
3. 妊娠の意思のある患者
4. 制御困難な感染症を有する患者
5. 臨床試験期間中に以下の薬剤を必要とする患者
ステロイドの全身投与
免疫抑制薬の全身投与
6. 医師または治験責任医師によってこの試験に登録するべきと思われない患者
【0120】
プロトコール
腫瘍がM phase phosphoprotein 1(MPHOSPH1)および/またはDEP domain containing 1 (DEPDC1)を発現する、 HLA―A*2402を有する登録された膀胱癌患者は、HLA―A*2402―拘束性エピトープペプチドMPHOSPH1―9―278(IYNEYIYDL(配列番号:7))および/またはDEPDC1―9―294(EYYELFVNI(配列番号:12))によって免疫された。それぞれのペプチドは、1mLの不完全フロイントアジュバント(IFA、MONTANIDE*ISA51)と組み合わせられて、週に一度腋窩あるいは鼠径部の病変に、皮下注射された。1コース4回注射と規定され、続いて1コース後、免疫学的および臨床的評価のため、採血並びにCT/MRIが行われた。
【0121】
安全性の評価
副作用の評価は、国立癌研究所―共通毒性判定基準第3版(NCI―CTC ver.3)に従って行われた。
【0122】
免疫学的評価
これはこの研究のセカンダリーエンドポイントの1つで、我々はペプチド特異的なCTL反応が発生したかどうかを確認する。特異的なCTL反応の計測は、以下の通り;
末梢血単核細胞は回収され、適切なペプチドによって再刺激された。CTL反応は、IFN―ガンマELISPOTアッセイによって、14日目に試験された。
【0123】
抗腫瘍効果の評価
臨床反応の評価は、RECIST基準に従って行われた。
【0124】
結果
表7は、本臨床研究の概要を示す。症例3のグレード2の発疹を除き、重篤な副作用はなかった。マイナーレスポンス(症例3)およびミックスレスポンス(症例4)が得られた。MPHOSPH1の発現は5症例中4症例であったが、DEPDC1のそれは5症例中5症例であった。
【0125】
(表7)本臨床研究の概要

【0126】
症例2
症例2において、標準化学療法の失敗でかなり進行した膀胱癌をもつ72歳の女性が本臨床試験に登録された。図18において、彼女の腫瘍の抗原発現は、MPHOSPH1およびDEPDC1が強く発現することを示した。従って、我々はMPHOSPH1およびDEPDC1由来のエピトープペプチド2種をワクチン接種した。症例2は、膀胱癌の局所再発を有した。それは、RECIST基準基づき安定(SD)と評価された(図19)。
【0127】
症例3
症例3において、標準化学療法の失敗でかなり進行した膀胱癌をもつ49歳の男性が、本臨床試験に登録された。DEPDC1のみが強く発現された(図20)。従って、我々は、DEPDC1由来のエピトープペプチドを単独でワクチン接種した。症例3は、膀胱癌の複数の肺転移を有した。右(図21)および左(図22)の肺葉転移において、進行率がワクチン接種後に低下した。特に、腫瘍のサイズが3コース後に減少した。図23は、RECIST基準に基づいた抗腫瘍効果を示す。転移性腫瘍の進行率がワクチン接種後に低下したことが明らかにされた。
それは、DEPDC1由来のエピトープペプチドを用いているワクチン接種によってマイナーレスポンスが得られることを示した。症例3の免疫学的評価に関して、特異的CTL反応は、ワクチン接種の前後で測定された。特異的CTL反応はワクチン接種後強く示された(図24)。それは、DEPDC1由来のエピトープペプチドによって誘導されるCTLが抗腫瘍効果を示しうることを明確に示した。
【0128】
症例4
症例4において、標準的化学療法の失敗でかなり進行した膀胱癌をもつ74歳の男性が本臨床試験に登録された。MPHOSPH1およびDEPDC1は、彼の腫瘍で発現した(図25)。従って、我々は、MPHOSPH1およびDEPDC1由来の2種類のエピトープペプチドをワクチン接種した。症例4は、膀胱癌の局所再発を有していた。1コースのワクチン接種後、腫瘍のサイズは、RECIST基準に基づき、20%減少した(図26)。しかしながら、肺の新しい転移性病変が発生した。それは、MPHOSPH1およびDEPDC1由来の2種類のエピトープペプチドを用いるワクチン接種によってまちまちの反応が得られることを示した。
【0129】
考察
本臨床試験の理論的根拠は、以下に述べられる;
1. MPHOSPH1およびDEPDC1は精巣を除く正常組織においては発現されないので、両抗原は非常に腫瘍特異的である。
2. 強力で特異的なCTLはこれらのエピトープペプチドによって樹立されたことから、これらのペプチドは強い免疫原性を有すると考えられる。
3. 日本人集団の60%がHLA―A*2402をもつ。
4. これらのペプチドは、臨床試験に適用するのに化学的に十分安定である。
本研究の目的は、その毒性、免疫学的応答および抗腫瘍活性の臨床的な情報を得ることである。
【0130】
以前に報告されたペプチドを用いた臨床試験のワクチンの副作用は、熱、頭痛および不快のようなfur-like symptomである。まれに、注射された部位に一時的な交差反応性と考えられる水疱を伴う過激な皮膚反応が報告された。この試験において、症例3のグレード2の発疹を除いて、重篤な副作用はなかった。この患者は、化学療法中、発疹を示す病歴があった。それはこの副作用がこのワクチン接種によるものでないことを示唆し、したがって、このプロトコールは安全でありうる。
【0131】
免疫学的解析は、ワクチン接種後、特異的CTL誘導によって行われた。症例1において、特異的CTL反応は、ワクチン接種後得られなかった(データ非表示)。症例3において、DEPDC1由来のペプチドに対する特異的なCTL反応は、第1および第2コースのワクチン接種後、明確に示された。症例3において、抗腫瘍効果は、ワクチン接種によって得られた。それは、当該DEPDC1由来のペプチドが特異的なCTLの誘導によって膀胱癌に対して抗腫瘍効果を示すことを明確に証明した。
【0132】
症例4において、1コースのみのワクチン接種後、抗腫瘍効果は、膀胱癌の局所再発に対して明らかに得られた。この証拠は、これらのエピトープペプチドが膀胱癌に対して抗腫瘍効果を示すことを強く支持する。
【0133】
結論として、本エピトープ治療は安全であり、さらに、重篤な副作用のない強い抗腫瘍効果が示されることが明らかにされた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、新規なTAA、特に、強力な特異的抗腫瘍免疫応答を誘導するそれを同定する。
当該TAAは、MPHOSPH1および/またはDEPDC1に関連する疾患(例えば癌)に対するペプチドワクチンとして、更なる発展を保証する。
【0135】
本願明細書において引用されるすべての特許、特許出願および刊行物は、参照により組み入れられる。
【0136】
本発明が、その特定の実施態様に関して詳細に述べられたが、上記記述は、事実上例示的および説明的なものであり、本発明およびその好適な態様を具体的に説明することを意図することが理解されるべきである。ルーチン実験によって、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、さまざまな変更や修正がなされうることを、当業者は容易に認識するであろう。したがって、本発明は、上記記載によって限定されるのでなく、以下請求項およびそれらの同等物によって限定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞障害性T細胞誘導能を有する単離ペプチドであって、配列番号:2、4または6のアミノ酸配列から誘導される前記ペプチド。
【請求項2】
配列番号:7、8および12のアミノ酸配列を含むペプチドからなるグループから選択される約15アミノ酸未満の単離ペプチド、
または配列番号:7、8および12からなるグループから選択されるアミノ酸配列であって、そのうちの1、2または数個のアミノ酸が、置換、欠失、または、付加されたアミノ酸配列を含む細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチド。
【請求項3】
細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、N末端からの第2位のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニンまたはトリプトファンである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
細胞障害性T細胞誘導性を有するペプチドであって、C末端アミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、253、254および255のアミノ酸配列を含むペプチドからなるグループから選択された約15アミノ酸未満の単離ペプチド、
または配列番号:9、10、11、192、195、197、209、225、226、228、230、240、241、243、244、253、254および255からなるグループから選択されるアミノ酸配列であって、そのうちの1、2または数個のアミノ酸が、置換、欠失、または、付加されたアミノ酸配列を含む細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチド。
【請求項6】
細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、N末端からの第2位のアミノ酸が、ロイシンまたはメチオニンである、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、C末端アミノ酸が、バリンまたはロイシンである、請求項5に記載のペプチド。
【請求項8】
DNAが請求項1〜7のいずれか一項に記載のペプチドをコードするベクター。
【請求項9】
配列番号:1、3および/または5の遺伝子の過剰発現と関連した疾患を治療または予防するための医薬組成物であって、請求項2あるいは5に記載のペプチドを一つ以上含む前記医薬組成物。
【請求項10】
疾患が癌である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項2あるいは5に記載のペプチドおよびHLA抗原からなる複合体を表面に提示するエキソソーム。
【請求項13】
HLA抗原がHLA―A24である、請求項12に記載のエキソソーム。
【請求項14】
HLA抗原がHLA―A2402である、請求項13に記載のエキソソーム。
【請求項15】
HLA抗原がHLA―A2である、請求項12に記載のエキソソーム。
【請求項16】
HLA抗原がHLA―A0201である、請求項13に記載のエキソソーム。
【請求項17】
請求項2または5に記載のペプチドを抗原提示細胞と接触させる工程を含む、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項18】
請求項2または5に記載のペプチドとT細胞を接触させることにより、細胞障害性T細胞を誘導する方法。
【請求項19】
抗原提示細胞に請求項2または5に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入する工程を含む、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドとT細胞を接触させることにより誘導された、または、HLA―A24またはHLA―A2との関連において請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドと結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸が導入された、単離された細胞障害性T細胞。
【請求項21】
HLA抗原と請求項2または5に記載のペプチドとの間で形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
【請求項22】
請求項17に記載の方法により誘導される、請求項21に記載の抗原提示細胞。
【請求項23】
配列番号:1、3および/または5の遺伝子を発現している細胞の細胞増殖を阻害するためのワクチンであって、活性成分として請求項2または5に記載のペプチドを含むワクチン。
【請求項24】
細胞が癌細胞である、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される、請求項24に記載のワクチン。
【請求項26】
HLA抗原がHLA―A24またはHLA―A2である対象への投与のために調製される、請求項23に記載のワクチン。
【請求項27】
対象に請求項2または5に記載の1つ以上のペプチド、その免疫学的活性断片、または前記ペプチドもしくは免疫学的活性断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを投与することを含む、配列番号:1、3および/または5の遺伝子の過剰発現と関連した疾患を治療または予防する方法。
【請求項28】
疾患が癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
癌が膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、胃癌、NSCLC、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、腎癌、SCLCおよび軟組織腫瘍からなるグループから選択される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−506826(P2010−506826A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516776(P2009−516776)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/JP2007/001122
【国際公開番号】WO2008/047473
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】